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【黒武者戦】戦場の亡霊

#昭和レトロスチィムパンク怪奇PBW『ヤケアト』

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#昭和レトロスチィムパンク怪奇PBW『ヤケアト』


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 蒸気の包囲網。連中も良く考えたものだ。
 黒武者はその暑さの中で考える。ここが死地となるか、それとも――。
 否、ここを死地とせねばならぬのだ。そのためならば、何でも。
 男は昏い眼でそこに立っている。
 ただ、死を目的として、そこに立っている。
 立っている――はずなのだが。
「迷うな。戦う。俺は、ここで戦う」

 ●
「……動かねぇな」
 区切・終(飢餓文学・f42796)は厳しい表情で蒸気包囲網越しに黒武者・徹を見つめている。
 ゴウンゴウンと蒸気を発する奇怪絡繰は、魔術の類が施されているのか札なども貼られていた。
「やっぱり、直接対決しかありませぬか」
「そうなるねぇ……フクロウの諸君には手間をかけるが、よろしいか」
 真剣な表情のハラナキと匙・当適も現場に立っている。
 後方支援が主となるが、作戦に必要な物資はこちらが用意するだろう。
「原則、ボクらは後方支援に徹するから、主な作戦はフクロウ諸君に任せることになる。……ごめんね、術式の維持に手一杯なんだ」
 目を伏せる匙、黒武者を包囲するためとはいえ、スラムのそれなりの広範囲が指定されている。事前避難は済ませてあるために、近隣住民が巻き込まれる危険性は薄いだろうが、確かにこの範囲で能力者の類を脱出させないようにするのには骨が折れるのだろう。
「いい、フクロウは元よりそういうのが役目だ。……さて……」
 報告では、どこか揺らいでいる様子があるとも聞いていた。
 どうか、生存確保のために動ければいいが――。

 ●
「……よう」
 現れたフクロウを、男はその眼で一瞥した。
「加減はしない。お前にも――俺にも」
 爆発する音が、響き渡る。


tk
 tkです! 黒武者戦となります。
 黒武者の攻撃パターンは下記となります。
 【縛(バク)】……束縛攻撃です。これを使用してから爆破することも多いです。
 【爆(バク)】……文字通り爆破する攻撃です。非常に火力が高く、多用してきます。
 【幕(バク)】……彼の行動パターンにしては珍しいですが、布のような魔術で防御します。
 これらの攻撃を使ってくるため、うまく対応しながら戦闘していただけると幸いです!
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

イラスト:ヒトリデデキルモン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

江田島・榛名
アドリブ、共闘️⭕️

はぁ、やっぱこうなったでありますか
ため息をこぼしてライフルを構える。
だが、敵ならば仕方ない。
死に場所を求めてるやつの手伝いなんて本来真っ平なんだが、それで被害が出る方がまずいというものだ。

こういう時、本当は一対一、正々堂々とかのがいいんだろうけど、生憎と今の自分はしがない狙撃手なのである。
故に、物陰に隠れて狙うは彼の頭のみ。

もし居場所がバレたら向こうからの攻撃を瞬間思考で把握、威嚇射撃をしつつ、ヘッドショットで狙うでありますかね


鷹奈部・庸一
……また会ったな。戦場で死に行くはずだった我々の戦争は、まだ終わっていないのだろう。
俺は上からお前の逮捕を命じられてる。だが、俺はお前の意思を尊重する。
この戦場で、生き死にを決めたい。
俺もお前も。

行こう、我が護国の鬼達よ。
ユーベルコードを発動しつつ、同時に突貫。
黒武者の攻撃パターンは布を使う様に見える。同時に爆破系統。
近づき過ぎず、距離を取り各機突撃を開始。
俺は……誘導爆破を狙って奴の装甲を削る。

あの日、海で散れなかった命。
俺もまた、お前と同じだ。



 ――やっぱこうなったでありますか。
 単純な呆れか。それともあわれな男への同情か。
 江田島・榛名(強化人間のガンスリンガー・f43668)は、ため息をこぼしてライフルを構える。
 『生存と逮捕』が対策部の掲げた目的ではあるが――相手も狙撃手に頭を狙われるのは承知の上であろう、容赦なく行く。
「……江田島……」
「……殺らなければ殺られる」
 ぽつりとごぼした相手の狙撃姿勢からして、対象のクリティカルなところを狙っているのは見てとれた。
 鷹奈部・庸一(空に散るはずだった命・f43545)は深呼吸して、相手へと歩を進める。
「……また会ったな」
「――あまり、会いたくはなかった」
 ぽつり、黒武者・徹はそう呟く。
「戦場で死に行くはずだった我々の戦争は、まだ終わっていないのだろう」
 ――俺は上からお前の逮捕を命じられてる。だが、俺はお前の意思を尊重する。
「この戦場で、生き死にを決めたい。――俺も、お前も」
「――……」
 相手は意表を突かれたような表情になって、それからゆるく笑みをこぼした。
「ならば、これ以上の戦場はないな――」
 戦場の亡霊達の戦いが、始まる――。

 ●
 頭に向けての正確な射撃。
 ――この距離なら外すわけがない。
 しかし――。
 相手は不意の即死を避けるためか、布のようなものがそれを受け止める。
「狙撃手も居る、か……周到だな」
 落ちた弾丸を見つめ、それが発射された方向を特定しようとする黒武者に向かって、鷹奈部が『桜花』を放つ。
 爆ぜるそれを一瞥して、黒武者からもまた爆発が起きた。
 爆音が響き渡る戦場――そう、ここは間違いなく戦場と化していた。
「――……」
 爆発の中、江田島は狙いを澄ます。頭部は狙えない、であれば相手の脚を!
 サイレンサーが備え付けられている銃から、音無き一撃が黒武者の脚を穿つ。
「――!」
 痛みに顔を歪めるものの、より――もっと、と言いたげにその表情は獰猛になる。
「いいぞ! そうだ、ここでくたばるのも悪くない! ああ――もっと来い!」
 鷹奈部が誘導爆破を繰り出しながらその防御を削っていく。装甲の術式が削られている感覚を確認しながら、黒武者は心の底から願っていた――殺してくれ、と。
「こちらも手心は加えない……いや、加えられないのが正しいのでありますが……」
 作戦の本位と実際の戦闘の両立は、至極難しいものだと痛感する。ぼやきながらも援護射撃の手は止めない。鷹奈部の攻撃の爆発音に紛れて射撃が叶う。狙撃手としては願ったり叶ったりの状況であるが、その中でも相手の爆発がここの至近距離まで届く。ここで攻撃の手を止めれば場所が悟られる。狙撃の手は止めない。
 爆ぜる炎の感覚が戦場を想い起こす。
 ――ああ、本当に、この世は地獄でありますなぁ。
「……そんなものか……!」
 脚を負傷しながらも黒武者は爆破の手を止めない、常に一定の距離を取る鷹奈部にしびれを切らしたのか急接近した。脚から血が吹き出るのも構わず。
「――……!」
 目を見開く鷹奈部に、黒武者は一言呟いた。
 ――捕まえた、と。
 爆発音、転がり出るように鷹奈部はなんとか桜花で爆発同士をぶつけ、その場から脱した。
 自身の爆発で服がこげる、構わなかった、黒武者は幽鬼のように立っている。
 ――ああ、この世は本当に、地獄だ。
 鷹奈部はまた武器を構える。……戦いは、続く。

 ●
「生存と逮捕……は、『理想』だからね」
 戦場の音を聞きながら、匙・当適はぽつりとぼやいた。
「ニホンは立派な法治国家だ。だから、生きて捕まえなきゃいけない。でも、それが叶わないこともある。だから……全部、皆次第さ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴生・ナナキ
「おじさんおはなししよー!」
何も持たずにぺしょと座ります
もし何かあったらカラスの翼を生やし逃げ回りましょう。鬼ごっこです
おじさんの言うことはまだよくわからないから、おしゃべりしたいなと思いました
死にたいなんて死んだモノの集まりなナナキには不思議です

「死んでもいいことあんまりないけどナア」
焼かれて死に、恨みの焼きついた魂が鈴生りに集まったのがナナキです
なので恨み苦しみと離れられません、変われません
今も中で人嫌いな魂が取り殺せというのですが、おじさんは殺したい人とは違うように思います
「死んだ我らはもう変われない。けど、おじさんは違うでしょう?」
我らのできないことも、おじさんはできるんじゃないかナア



「おじさん、おはなししよー!」
 ……戦場と化した場所に、能天気な声が響く。
 攻撃の手を休めた先発達は、その声に意表を突かれて攻撃の手を止めた。それは、黒武者も同じくだった。
 鈴生・ナナキ(七宿し・f44279)が、ぺしょんと座り込んでいた。黒武者は動揺しきった目でそのすがたを見ている。
 ――どうしてこんなところに? 攻撃はしてこないのか? 味方ではあるまい。
 幼い子供の霊を巻き込むわけにもいかず、周囲の攻撃の手も休まる。
「……何しに、来た」
 絞り出すような声だった、そんな相手の声に、鈴生はあっけらかんとして答える。
「おじさんの言うことがまだよくわからないから、おはなししにきたのだ!」
「……」
 頭を抱える。今の状況で攻撃が飛ぶことはあるまい、防壁はそのままに、鈴生を黒武者は見る。
「何も話すことなんて、ない」
「そんなことないはずだぞー! だって、お菓子も、おみやげもくれたのだ。そんなひととは、ふつうにおはなしできると思うのだ」
「――お前を騙すためだとしたら、どうする」
「だますひとは、そうかなしそうな顔はしない」
 そう言われて、視線が逸らされる。
 ――焼かれて死に、恨みの焼きついた魂が鈴生りに集まった存在が『彼ら』だ。
 だから、恨み苦しみと離れられず、変われない。――そんな『彼ら』の中で、取り殺せと叫ぶ声が聞こえる、けれども、目の前のおじさんは――黒武者という男は、殺したい存在とは、違うように思えた。だから。
「死んだ我らはもう変われない。けど、おじさんは違うでしょう?」
 ――我らのできないことも、おじさんはできるんじゃないかナア――そんな言葉が残って、男は今度こそ、悲痛な顔をした。
 見上げてくる鈴生を見る。近寄って歩んで、撫でてやればもっと笑顔になってくれるだろうか。でも。
 ……自分にそうする権利はない。知っている。加担していることがことなのだ。『彼ら』はそれを理解していないのだ。
 知ったらきっとおのれを糾弾するに違いない。
「……俺は、――……」
 なにか否定の言葉を吐こうとして、それが自分自身によって阻まれる。
 黒武者は確かに、この瞬間、揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳶沢・ギンコ
※アドリブ歓迎、共闘希望

「心情」
情報を集めるまでがウチの仕事で
荒事は他の連中に任せとけば済むと思ったんやけどな?
手ぇが足らんこと成って失敗しても困るし
ちっと手伝ってやるかー(しぶしぶと)

「作戦」
挑発して敵の冷静さを奪い、
自身の方へ引き付けて【落とし穴の術】で行動不能にする
確保は他PCに任せる

「行動」
1,『低級ウロ』を憑かせた「軍用エンピ」で【落とし穴】を掘っておく

2,戦闘の横から『2Bかんしゃく玉』を『パチンコ』で飛ばして牽制

3,挑発して自身の方へ引き付け、蒸気で隠れた【落とし穴】に誘導する
(使用技能:挑発、罠使い、音響弾、援護射撃、物を隠す、など)

「挑発」
(黒武者に)
やー、また会ったな、ウチも実はフクロウなんや

それでアンタ、戦って死にたいんやってな?
満足できる死に方がしたいとかなんとか……

ふざけんなや!
アンタらのせいでショバ代払えずに見せしめで死んだ
ウチの仲間の前でもういっぺん言うて見ぃ!

どれだけ生きたくても死ぬ人間がぎょうさん居る中で
そないな寝言いうんやったら一人でも首吊って死にぃ!


刻谷・楓
対策局からの話だと生け捕りでしたね。
正直、記憶の無い私では彼の境遇に寄り添うことは出来ません。とりあえず強引にでも捕まえてからお話を聞きましょう。

内蔵兵器、鎖に繋がれた錨を相手の近くへ射出。【幕】を出すなら絡ませて、巻き取り飛びつきましょう。
機構に任せているので爆発で止まることはしません。
異能で選んだのは攻撃回数。束縛されても隙間から鎖を出し接近。
組み付いて黒武者を捕縛しに行きます。



「やー、また会ったな、ウチも実はフクロウなんや」
 ひら、と片手をあげて、鳶沢・ギンコ(アナグラネズミ・f43549)は黒武者と相対する。
「また子供か」
 低く唸るような声、片眉をあげてその様子を見る。
 おのれに酷く怯えるように引く相手に、一歩、近寄った。
「なんや、手加減してくれるんか?」
「……」
 無言。相手は構える。何らかの術式を使うのだろう。
「それで? アンタ、戦って死にたいんやってな? 満足できる死に方がしたいとかなんとか……」
「……そうだ。それで、俺は――楽になれるんだ」
「へぇー。ふぅーん……」
 じい、と見つめ、それから。
「ふざけんなや!」
 鳶沢の叫び声が響き渡る。びく、と、黒武者の肩が揺れた。
「アンタらのせいで、ショバ代払えずに見せしめで死んだウチの仲間の前で、もういっぺん言うて見ぃ!」
「――……ッ! それぐらい、承知している。……そうだ、俺がやっていることは許されないことだ。……許されるつもりもない……!」
 相手がいよいよ構える。
 そして爆発的に距離を詰めてきた。――噂の術の応用か。
「だが、子供をいたぶる趣味はない。……そういうのは、『別の奴』がお得意だからな」
 その言葉に鳶沢はわずかに顔をしかめた。やはり別の人員が何かしている。……おそらく人さらいの件か。何が起きているのか。それを知るためにも、相手を叩き、確保する必要がある――!
「……正直、記憶の無い私では、彼の境遇に寄り添うことはできません」
「せやろな。……ウチもしっかり話聞かんと、全然わからんし――なにより、腹の虫が収まらん!」
 刻谷・楓(楓・f43562)が並び立ち、内蔵兵器――鎖に繋がれた錨を相手の近くへ射出する。
「――!」
 相手はそれを躱す、鳶沢はそれに続けいてに2Bかんしゃく玉をパチンコで飛ばす、次々と回避される。それは二人とも承知している。戦場のプロに、はなから正確無比に当てるつもりはない。刻谷も鎖を幾重も飛ばし、かわされる中で相手の腕や脚に絡められないかと狙いを定める。
「子供相手だと、死ぬ気すら起きへんか! ――甘ったれ! だったらはなから、子供を巻き込むようなことせえへんかったらよかったやろ!」
 その言葉に相手の眼がギラついた。
「……そんな生半可な、覚悟では、ない!」
 明確な怒り、だった。挑発がようやく成功する。相手は動揺している。
 それを見逃す鳶沢と刻谷ではない。
 瞬間、刻谷の鎖が黒武者をとらえた、その体が揺れる。そして、蒸気に包まれた、鳶沢の用意した落とし穴へと叩き込む!
「どれだけ生きたくても死ぬ人間がぎょうさん居る中で、そないな寝言いうんやったら一人でも首吊って死にぃ!」
「この言葉に、一語一句同意はしかねますが――ひとつの道理とは、私も存じます」
「……俺は、俺の目的、は……」
「――どういう目的であろうと、人が死ぬような悪いことはあかん。……それが、『今』を生きるっちゅーことやないの」
 鳶沢は一言、帽子を目深に被って、ぽつりとこぼす。刻谷は、その様子に、目を閉ざした。
 ――落とし穴から、体の痛みと、心の苦悶による、うめき声が聞こえた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年10月16日


挿絵イラスト