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帝都櫻大戰⑳〜誰がために君は立つ

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第三戦線 #幻朧帝イティハーサ #ソウマコジロウ

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●しあわせなゆめをみる
 違和感。
 人の輪に囲まれながら『ソウマコジロウ』は、ちりつくようなものを感じた。
 それは過去に感じていたものにも似ていた。
 使命から来る焦燥。
 生命儚く、己が成さねばならぬこと。
 宿命と呼んでもいい星の元に己が生まれたことは、取り立てて恨むこともなければ憂うこともなかったのだ。

 己が成さねばならぬ。
『幻朧帝の封印』
 それこそが己が帯びたる使命であった。
 だが、違和感は時折浮かび上がるのだ。
 眼の前に広がるのは『輝けるサクラミラージュ』。
「『幻朧帝』は封ぜられ、テロルや猟奇事件は平定された。発生する影朧も速やかに癒やすことができている」
 転生によって引き起こされた人口の増加は、即ち繁栄につながる。

 発展。
 それは生命が求めるものである。
 より良き明日を、今日よりも明日を良きものにするために邁進する。
 己の可能性を信じ、それを原動力として未来へと進んでいく。
 それは血脈に血潮が流れ込むのと同じように『サクラミラージュ』にも起こっていたのだ。
 世界の隅々まで『平和』が広がっていく。
 理想と呼ぶに相応しい世界だった。
「幻朧桜は影朧たちを導いてくれている……」
 喜ばしいことだ。
 だが、違和感を覚える。

 何故、と問いかける者がいない世界の中で『ソウマコジロウ』は己の胸中に浮かぶものがなんであるのかを知る術を持ち得なかった。
「言葉に出さずとも、あなたの感じたそれは正しい」
「誰だ」
「歓喜の悪魔。もしくは第九の悪魔」
『ソウマコジロウ』は、声の主であるグリモア猟兵、ノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)の薄紅色の瞳を振り返って見つめた。
 敵意はない。
 敵意があるのならば、己の刀が彼女を逃すわけがなかった。

「この世界は造られたるもの。侵略新世界……ですが、あなたは幻朧帝の意に反して、この理想世界を生み出した。『将来のサクラミラージュ』……これがきっと帝都櫻大戦の集結と共に生み出されるものなのでしょう。ですが、そこに『あなたはもうそこにいない』」
 ノインの言葉に『ソウマコジロウ』は訝しむ。
 いる。
 己は確かにここにいる。
 怪奇人間――透明人間たる己は、確かにここにいるのだ。
 皮肉を言われているのかと思ったが、そうではないらしいことは、彼女の瞳を見ればわかることであった。

「『ソウマコジロウ』殿! 影朧出現の報あり。至急、この事態の収束にご尽力頂きたく」
 声が聞こえる。
 あの薄紅色の瞳の猟兵の姿が消えている。
 何故、と想うより先に『ソウマコジロウ』は動いていた。
 影朧は周囲の住人たちへの被害が出る前に、処置しなければならない。
 癒やしを与え、転生を促す。
 今までもそうしてきたはずだ。これからもそうすることで、この理想の如き世界は発展を遂げていくのだ。
 こんな『しあわせなゆめ』のような世界が……。

「……」
「……」
「……」
 その『しあわせなゆめ』のような世界の中に、存在しえないものたちがいる。
『帝都制圧』。
 その大いなる使命に挑んだ同志たち。
 英霊とも言うべきものたちの姿が、この世界にはない。
 己という存在はあっても、彼等の姿が見えない。
「どうなされた『ソウマコジロウ』殿! 影朧は眼の前に!」
 學徒兵たちの声に目を見開く。
 そうだ、影朧である。これを調伏せしめねばならぬのだ。刀を握りしめる。

 だが、その前に現れるのは薄紅色の瞳を保つノインだった。
 そして、その眼前に次々と転移していくる猟兵たち。
 彼等の瞳が告げている。
 この『しあわせなゆめ』のような世界は、『輝けるサクラミラージュ』は、壊さねばならない。
 どれだけ他の世界を侵略する意志を持たぬのだとしても、幻朧帝の力によって造られた贋物の世界なのだ。

「どれだけ『しあわせなゆめ』であろうと、覚めるもの。そして、それはあなた達の為した偉業に報いるもの。故に、私はこの言葉を送りましょう」
 ノインは静かに告げる。
 いつかの誰かの言葉。
 そして、今、理想の世界に沈まんとしている嘗ての叛逆の意志を救う言葉。
「『戦いに際しては心に平和を』」
 報われなかった生命がある。
 ひどく傷ついた生命がある。
 何れもが癒やされなければならないし、癒やさねばならない。
 けれど、生命の回帰は、転生を果しても真に全てが同じであることはないのだ。

 故に可能性。生命は可能性。
 鋼は散り、それでも君は進む。
 涯を目指し、星の輝を標にし大海を征く。
 そして、英霊たちは問いかけるのだ。
 |君《ソウマコジロウ》よ。
「誰がために君は立つ――」


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝都櫻大戦』の戦争シナリオとなります。

『ソウマコジロウ』は骸の海そのものである『幻朧帝イティハーサ』の唯一の器として造られた存在でした。
 彼は『幻朧帝イティハーサ』によって再孵化され、融合を果しましたが、彼の意志は幻朧帝の望まぬ世界を生み出しました。
 それは『輝けるサクラミラージュ』。
 幻朧帝の封印という使命から解き放たれた大地でさらなる発展を遂げる世界。
 理想の世界とも言うべき侵略新世界なのです。

 この世界でも影朧は生まれていますが、尽く鎮められ転生を果しています。
 ですが、そうして発生する影朧の中に『帝都制圧』に『ソウマコジロウ』と共に挑んだ英霊たちが紛れ込んでいます。
 影朧発生の報を受けて『ソウマコジロウ』はこれを調伏せんとしています。
 かつての同志である英霊たちの影朧と共に『ソウマコジロウ』の記憶を揺さぶることができれば、彼自身が幻朧帝に融合された状況を正しく理解し、この侵略世界の消滅を願うことでしょう。
 とは言え、彼は透明人間の怪奇人間。
 自身とユーベルコードを透明化する力を持っています。加えて幻朧帝のちからも併せ持つため、強敵です。
 これを討ち倒し、最後の偽りの世界を破壊しましょう!

 プレイングボーナス……英霊達の影朧と協力し、ソウマコジロウの記憶を揺さぶる/ソウマコジロウと共にいる幻朧帝の力だけを攻撃する。

 それでは、幻朧櫻舞い散る帝都にて戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『ソウマコジロウ幻朧態』

POW   :    透明逆転剣
【舞い散る幻朧桜】が命中した敵を一定確率で即死させる。即死率は、負傷や射程等で自身が不利な状況にある程上昇する。
SPD   :    透明魂魄刀
【鷹の如く飛翔する、無数の透明な日本刀】で攻撃する。命中すると【世界創造の力】を纏い、レベル分間[鷹の如く飛翔する、無数の透明な日本刀]の威力と切断力が上昇する。
WIZ   :    透徹たる眼光
戦場内に、見えない【幻朧桜の花弁】の流れを作り出す。下流にいる者は【オブリビオンと化す運命】に囚われ、回避率が激減する。

イラスト:炭水化物

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メンカル・プルモーサ
…良い世界は良い世界なんだけど…
良すぎて違和感が凄い…これは私の心が捻くれてるとかじゃ無い…筈…たぶんきっとめいびー

…なんにせよ…理想の世界とて夢想の贋作である以上消さないといけないね…
操音作寂術式【メレテー】と電子型解析眼鏡【アルゴスの眼】で簡易的なソナーを作り花弁の流れや相手の状況把握…
…【起動:応用術式『星符』】を使用…【面影映す虚構の宴】をカード化するよ…
…これは『自分の記憶を元にした』精巧な幻影を創るユーベルコード…
このカードを英霊の影朧に渡してソウマコジロウの記憶を刺激する光景の幻影を作って貰ってその記憶を揺さぶるとしよう…
こればかりは私がではどうにもならないからね…



『輝けるサクラミラージュ』。
 それは可能性として存在しうるサクラミラージュの最良たる世界。
 影朧は発生すれど速やかに転生を果たす。
 転生により人口は増加し、発展していく。
 世界の隅々まで発展の兆しは駆け抜けてゆき、平和と呼ぶに相応しい光景がどこまでも広がっていく。
『帝都制圧』を果した『ソウマコジロウ』が勝ち得たかもしれない世界。
 それが今まさに眼の前に広がっている。
 けれど、とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は思う。

「……良い世界は良い世界なんだけど……良すぎて違和感がすごい……これは私の心がひねくれているとかじゃない……筈……たぶんきっとめいびー」
 メンカルは頭を振る。
 そう、この違和感は『幻朧帝イティハーサ』唯一の器たり得る存在『ソウマコジロウ』が再孵化によって生み出した侵略新世界なのだ。
 他世界に害がなくとも、これを破壊しなければならない。
 そのためには『ソウマコジロウ』を打倒しなければならないのだ。
「……理想の世界とて夢想の贋作である以上消さないといけないね……」
 周囲を見回す。
『ソウマコジロウ』は自身の体だけではなく、ユーベルコードさえも透明化することのできる恐るべき怪奇人間。
 最初にして最高とも言うべき力は、メンカルにとってたやすき敵ではないことを知らしめていた。

「術式を圧縮、星符に接続。魔女が望むは運命拓く星の札」
 起動:応用術式『星符』(ラン・エンチャントカード)によって己のユーベルコードと術式をひとまとめに圧縮し、カード化する。
 どこから来るかわからないというのならば、あらゆる状況に対策を打つのは当然のことだった。
 簡易敵であるがソナーを術式で生み出し、見えぬ幻朧桜の花弁の流れを見定める。
 体がひりつく。
 オブリビオン化。
 それは猟兵であっても逃れ得ぬ運命の潮流めいたものであった。

「運命には逆らえない」
 それは『ソウマコジロウ』の言葉だっただろうか。
 それとも彼を器として移ろいゆく力の残滓、残穢でもって侵食せんとする『幻朧帝イティハーサ』の言葉だっただろうか。
 メンカルにとってはどちらでもいい。
 彼女がやらなければならないことはただ一つ。
 この世界に出現した影朧たち。
 彼等こそが嘗て『帝都制圧』を共に行い、散っていった英霊たちである。

 彼等は物言わぬ。
 だからこそ、自分が示さねばならない。
「……これを。私の言葉では彼を揺らがせることはできない。けれど、君たちならできる……このカードがあるのなら」
 カード化されたユーベルコードをメンカルは英霊たる影朧たちに手渡す。
「……」
「……頼んだよ。彼だって、贋物の世界で生きていくことを望んでいるわけじゃあない……なら、嘗ての同志である君たちが……彼を」
「……」
 頷く影朧たち。

 自分にはその声は聞こえないだろう。
 聞こえなくてもいい。
「……お前たちは……いや、しかし、どうして我の前に……諸君らは!」
「……」
 見えぬ姿。
 けれど、メンカルは確かに感じ取っていた。
『ソウマコジロウ』の力、そのユーベルコードが生み出す潮流が弱まっているのを。
 彼もまたどこかで違和感を感じているのかも知れない。
 それ故に、メンカルが託したカードは、精巧なる嘗ての『帝都制圧』を共に戦い抜いた同志たちの姿を彼に示し、この偽りを暴くように、声を響かせたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

森宮・陽太
確かにこの世界は理想世界かもしれねぇ
だが、絵に描いたような理想は…いらねぇよ

俺は記憶を揺さぶりつつ幻朧帝の力への攻撃も狙おう
影朧の英霊を庇いながらソウマコジロウに声をかけるぞ

ソウマコジロウ
この世界は確かにお前が望んだ世界かもしれねぇ
ここにいる影朧の英霊たちを見ろよ…見覚えねぇか?
…てめぇの同志だよ

ここでてめぇが影朧を討てば
同志の英霊たちは調伏され転生の輪に乗り…てめぇのことを忘れてしまう
てめぇを慕う同志をてめぇ自身が裏切ることになるぜ
…本当にそれでいいのか?

ソウマコジロウの記憶を揺さぶったら指定UCでアスモデウス召喚
幻朧帝に向けて破魔浄化特化の白炎を浴びせつつ
二槍を伸長させぶち抜いてやる!



 穏やかなる風が吹いている。
 散る幻朧桜は、発生する傷ついた魂である影朧たちを癒やし、転生を促す。
 生命の回帰。
 それによってもたらされる発展は、言うまでもなく世界全体を豊かにしていくことだろう。
 これが理想。
 これが楽園。
 そう思わせるほどの光景を目の前にして森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)は思う。
「これは絵に描いたような理想。けどよ……」
 陽太は頭を振る。

 共に並び立つのは英霊たる影朧たち。
 彼等の言葉は己には聞こえない。
 けれど、彼等の言わんとしていることがわかる。
 これは偽りの世界だ。
「『ソウマコジロウ』」
「我が名を呼ぶか。ここは魂の安寧たる世界。この世界にて、お前たちは何をする」
 散る幻朧桜の花弁。
 それが時の潮流のように陽太の肉体をオブリビオン化せんと迫っている。

 だが、ここで退くわけにはいかない。
 己の体躯がオブリビオン化の兆しを見せているのならば、己より高き場所に見えぬ『ソウマコジロウ』がいる。
「この世界は確かにお前が望んだ世界かもしれねぇ。ここにいる影朧の英霊たちを見ろよ……見覚えねぇか? 見覚えがねぇとは言わせねぇよ。こいつらは」
 陽太は告げる。
「……てめぇの同志だよ」
「だが、『帝都制圧』は成ったのだ。覆るべくもない。我が同志たちは、今も」
「今もなんだ? 影朧担っているわけがないとでもいいたいのか。たしかにてめぇは見えない。怪奇人間だろう。だがよ、ここでてめぇが影朧を討てば、同志の英霊たちは調伏され転生の輪に乗り……てめぇのことを忘れてしまう」
 それは裏切りではないのかと陽太は言う。
 いや、本当にそれでいいのか、と。

 確かに争いの後に兵士はいらぬ。
 去るばかりである。
 だが、とも思うのだ。それは彼等が誰かのために戦ったものたちの前からであって、共に戦ったものたちの元からではない。
「いいわけがない」
「そうだろ。だからよ、獄炎操る悪魔アスモデウスよ、その炎で魔と闇を打ち砕き、希望を齎せ!」
 煌めくはユーベルコードの輝き。
 祈りを込めたダイモンデバイスより出現するのは、白色の獄炎を噴出させる『アスモデウス』。
 その悪魔の力によって幻朧桜の花弁が燃え、そして残穢として『ソウマコジロウ』の体躯、その器に縋る『幻朧帝イティハーサ』の力へと迸る。
「お前も、こいつらも懸命に生きた。その結果が今のサクラミラージュだ。確かに為し得なかったことだ。けれど、それでも消えて言い訳がない。理想に塗りつぶされて言い訳がない」
 故に、と陽太は駆け抜ける。
 手にしたアリスランスは二振り。
 濃紺と淡紅。
 振りかぶった槍の柄が伸び、『ソウマコジロウ』の見えぬ体躯を貫く。
 血潮が溢れ、その決して見ることのできぬ透明人間の輪郭を赤く染めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪華・風月
柳緑花紅の『焼却』の霊力にて見えない花弁を燃やし
流れを見えるように…その後は下流に立たないよう立ち回りを

透明でも殺気や足音、息遣い…それらは隠すことができないはず【気配感知】
それらを元に位置を大雑把に把握して雪解雫にて『武器受け・受け流し』…
攻撃を捌き時間を稼ぎます…
その間に同志である英霊たちの方には記憶を揺さぶってもらいましょう

隙が出来たら更に一手を
魂護道断!肉体を傷つけず幻朧帝の力…戦意を絶たせて頂きます

確かに幸せな夢は覚めるものです
ですが…それを実現、現実にすることはできます…
このような平和なサクラミラージュを今に生きるわたし達…そして未来に生きる者達がいずれ…



 理想の世界に幻朧桜の花弁が散る。
 時の潮流のように舞う花弁は、雪華・風月(若輩侍少女・f22820)の体躯をオブリビオン蚊せんと蝕むようであった。
 見えぬ体躯。
 最初の怪奇人間にして透明人間たる『ソウマコジロウ』のユーベルコードに苛まれながらも、風月は鞘よりぬき払った大太刀たる刀身を持つ妖刀の力で花弁を燃やす。
 散る花弁。
 されど、未だ濁流のように迫りくる花弁は彼女の体躯を蝕んでいく。
「確かに幸せな夢は覚めるものです」
 風月は短くつぶやく。

 そう、この侵略新世界『輝けるサクラミラージュ』は、しあわせなゆめそのものだ。
 満ちる光景は全て誰もが望んだ平和そのものたるものであっただろう。
「だが見果てぬ夢がある。これはその悲願。我が同志たちが……同志たちが……」
『ソウマコジロウ』の戸惑うような声が聞こえる。
 影朧たちの声を風月は聞くことはできなかった。
 けれど、彼等と相対し、その本来の記憶を揺さぶることで『ソウマコジロウ』は動揺し始めているようだった。
『帝都制圧』という大願を果し、『幻朧帝イティハーサ』の封印という役目から開放された彼は、同志たちと共に穏やかなる日々を過ごしているはずなのだ。
 だが、彼の傍に同志たちはいない。

 なぜなら、この世界が偽りそのものであるからだ。
 本来の可能性の中で、彼等は『幻朧帝イティハーサ』によって滅ぼされ、『ソウマコジロウ』もまた大逆人として転生を禁じられている。
 故に、彼には見えない。
 見えぬ透明人間であるがゆえの皮肉である。
 迫りくる斬撃を風月は己が二振りの刀で受け止める。
 そこにいる。
 見えていないが、そこに確かに『ソウマコジロウ』がいるのだと彼女は理解しただろう。
「そうです。そこにあなたの同志たちがいる。かつて共に戦った同志たちが。これは幸せな夢。覚めてしまうもの」
 夢は夢のままだ。
 けれど、と彼女は告げる。
「それを実現、現実にすることはできます……」
 己たちは示されたのだ。

『幻朧帝イティハーサ』を打倒し、帝都櫻大戦を戦い抜いた先にある未来が如何なるかを。
『ソウマコジロウ』が生み出した『輝けるサクラミラージュ』。
 それは彼女の瞳にいち早く示された未来。
 故に彼女は告げる。
「このような平和なサクラミラージュを、今を生きるわたしたち……そして、未来に生きる者たちがいずれ……」
 必ず実現して見せる。
 風月の瞳がユーベルコードに輝く。

「故に、『幻朧帝イティハーサ』、その残穢を断つ……!」
 器として誰がために立ち上がった者を操らんとすることなど、魂護道断(ゴンゴドウダン)。
 彼女のユーベルコードは『ソウマコジロウ』にこびりつく『幻朧帝イティハーサ』の残穢を断ち切るように放たれ、その一閃を持って未来への路を示すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
武器:漆黒風

幻朧帝にとっても、この『しあわせなゆめ』は…予想外だったのでしょうね。
でも、あり続けるとこは…望まない、と。

ええ、この影朧の声を届けるために。呪詛で強化した声を、風に乗せましょう。
ソウマコジロウ殿があり続けるのは、幻朧帝もあり続けるということですからねー。

ええ、だからこそ。忍びたる私も来たのですよ。
舞い散る幻朧桜、先程の風で飛ばしてますからねー。ええ、影朧にも当たらぬように。
漆黒風を、UC付きで投げますね。…これが、私が贈れるものですのでー…。



 侵略新世界『輝けるサクラミラージュ』。
 それは『幻朧帝イティハーサ』の望まぬ世界であった。
『帝都制圧』を為し得た『ソウマコジロウ』が望んだ世界。
 まるで『しあわせなゆめ』のような世界だ。
 全てが思い通りではない。
 影朧は出現する。けれど、そこに癒やしがあるのだ。
 転生という癒やし。
 それによって世界には発展という恩恵が満ちていく。
「幻朧帝にとっても、この『しあわせなゆめ』は……予想外だったのでしょうね」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』はつぶやく。

 どこまでも広がる平穏。
『ソウマコジロウ』が求めたのもの。成そうとしたもの。
 エンシャント・レヰスたちが己が身を犠牲にしても封印し、大地となった世界を支配ではなく、人の手によって未来に進ませる。
 そのための世界を彼は為したのだ。
 悲願であったと言ってもいい。
 けれど、と『疾き者』は思う。
 幻朧桜が散る世界にて、彼はこれが造られた新世界であるのならば望まないだろうと。

「彼等もそうなのでしょうね」
 隣に立つのは『帝都制圧』の同志たる英霊たち。
 影朧として紛れ込んだ彼等の声は聞こえない。けれど、感じることができる。
 彼等はこのような世界を求めて立ち上がったのだ。
 けれど、それは造られるものではなく、共に立つ者たちと共に作り上げるものであったのだ。
『ソウマコジロウ』もまた動揺であったはずだ。

 風が吹いている。
 その風は優しくもあり、厳しくもあった。
「『ソウマコジロウ』殿がありつづけるのは、幻朧帝もあるつづけるということですからねー」
 だからこそ、と己は立ち向かうのだ。
「我は為しえたはずだ。恒久たる平和を。悲願を。幻朧帝を……!」
「それこそが求めたもの。けれど」
 握りしめた棒手裏剣。
 力が手に籠もる。
 刀が翻り、己を斬り裂く斬撃が迫る。
 けれど、幻朧桜の花弁は舞い散る。
 風に舞い上げられ、彼の視界を覆う。そう、この桜の花弁こそが幻朧帝の力。
 立ち向かうべきもの。

 忘れたわけではないのだ。
 共に並び立つものたちの顔を。
「……これが、私が贈れるものですので」
 放つは、四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)の一投。
 風が吹き、花弁を散らしながら『ソウマコジロウ』を穿つ。
 これ以上奪われないように。
 尊厳も、心も、かつてあった想いも。
 そう思わずにはいられない。
 そうであってほしいという願いを込めた一投は、見えぬ『ソウマコジロウ』の血潮をもって結実するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
輝けるサクラミラージュ
私はその世界を否定したくはない
でもこれは彼の人が見ている夢
目を覚まして貰わなくては

転移と共に影朧とソウマコジロウの間へ移動
ソウマコジロウ
聞いて下さい
貴方が斬ろうとしているのは
かつて貴方と共に戦った仲間達です
彼らの声が聞こえませんか
仲間であった貴方が一番分かるでしょう
彼らの嘆きに気付いて下さい
声が届くまで英霊達へ攻撃が届かないよう
斜線上に立って妨害

この世界は幻想です
今はまだ
この理想の世界は
私達が築き上げます
だから目を覚まして下さい
貴方の安寧を願う人のためにも

ソウマコジロウの攻撃は見えない
それはとても怖い
リアライズ・バロックを使用し
レギオン召喚
全てを後ろの幻朧帝へ叩き込みます



 否定したくない。
 それが最初に思い浮かべたものであった。
 神臣・薙人(落花幻夢・f35429)はこの侵略新世界『輝けるサクラミラージュ』こそが『ソウマコジロウ』たちと共に立ち上がった英霊たちが求めたものであると知っているからだ。
 幻朧帝の封印。
 それが如何にして成り立ったのかをしれば、なおのことである。
 だから否定はしたくない。
「けれどこれは彼の人が見ている夢。夢は、覚めなくてはならない。目を覚ましてもらわなくては」
 そうでなくては、共に戦い散っていった同志たる英霊たちが浮かばれない。
 彼等の生命は確かに散った。
 だが、同時に生き抜いたとも言えるだろう。
 人の尊厳を踏みにじるような行いをする『幻朧帝イティハーサ』の残穢が『ソウマコジロウ』にまとわりついている。

 この世界を壊す必要はない。
 それでも、壊さなければならない。
「『ソウマコジロウ』、聞いて下さい。貴方が斬ろうとしているのは」
「黙れ。我は、この『輝けるサクラミラージュ』に仇為すものを打倒さねばならぬ」
 なんのために?
 誰がために?
 失われた生命に報いなければならないために。
 幻朧桜の花弁が流れ込むようにして薙人へと迫る。身を苛む痛み。オブリビオン化の痛みだ。
 呻くようにしながら、続ける。
「かつて貴方と共に戦った仲間たちです。彼等の声が、聞こえませんか……この声は、貴方が一番わかるでしょう。彼等の嘆きに気づいてください」
 薙人は思う。

 痛みは恐れだ。
 そして、見えぬユーベルコードを手繰り、その体躯すら不可視たる存在である『ソウマコジロウ』は恐ろしい。
 故に己を苛む痛みすら恐怖に変え、ユーベルコードに輝く瞳で見えぬものを見る。
 そこにいるのだろう。
 英霊たちの声は己には聞こえない。
 けれど、彼等の訴えは、叫びは、『ソウマコジロウ』を揺るがせる。
 薙人の言葉にのって、彼等の嘆きが届いているのだ。
「この声はなんだ。この、見知った、けれど、知らぬはずの声は……!」
「それが貴方の同志たちの声です。この世界は幻想です。今はまだ」
 そう、幻想なのだ。
 どう足掻いても、今は為し得ぬ世界。

 けれど、己達は思う。
 思うことで築き上げることのできるものがある。
「目を覚ましてください。貴方の安寧を願う人のためにも」
 煌めくユーベルコードがバロックレギオンを生み出す。
 恐怖を糧とする軍勢は、薙人とともに見えぬ『ソウマコジロウ』を圧倒する。
 その身に宿した『幻朧帝イティハーサ』の残穢を打ち払うように。
 人は安寧を得なければならない。
 傷ついた魂は癒やされなければならない。

 器として転生すら奪われた彼の魂を導くのは、己達ではない。
 かつての同志。
 英霊たちだ。だから届け。そう願うように薙人はバロックレギオンと共に『ソウマコジロウ』の背後にある残穢へと己が全てを叩き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・シェフィールド
アドリブ歓迎
これで、最期になるかな…この世界、好きだったよ。

あえて第一戦線と同じ戦法を取り、ソウマコジロウさんの記憶に呼びかけます。
散開したシュッツエンゲルを基点にモーントシャインによるオーラ防御の結界を構築、見えない幻朧桜の流れを逸らし、攻撃の方向からソウマコジロウさんの位置を特定。
英霊達の声をツウィリングス・モーントで増幅し、コジロウさんに届けます。
「また、帝に負けるの?わたしたちの本当の故郷のために、目を覚まして!」

「人々に仇為す悪しき者、幻朧帝よ!永劫の闇へと還りなさい!」
【断罪の櫻花剣】を発動。破魔の力を込めた歌によって召喚した、桜色に輝く光の剣を構え、帝の力のみを一刀両断します。



 この世界が好きだ。
 サクラミラージュ。
 幻朧桜の花弁が常に散る世界。
 平和と呼ぶに相応しい世界であり、しかし偽りでもあった世界。
 発展は停滞し、けれど、世界に満ちるは影朧。
 侵略新世界『輝けるサクラミラージュ』はそうしたサクラミラージュを発展させたものだ。
『幻朧帝イティハーサ』の封印によって成り立つ大地。
『ソウマコジロウ』がなそうとして成せなかったもの。
 それが相成った世界の続き。
 可能性の一つ。

 けれど、そうはならなかった。
「これで、最期になるかな……この世界、好きだったよ」
 フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は万感の思いを込めてつぶやいた。
 相対するは、見えぬ『ソウマコジロウ』。
 ユーベルコードすら透明化する彼の力は圧倒的だった。
 だが、一度戦っている。
 彼の怪奇人間としての力の在り方を彼女はもう知っているのだ。

 体に痛みが走る。
 オブリビオン化。つまり、己は『ソウマコジロウ』の生み出すユーベルコードの下流にいるということだ。
 結界で防御しながら、幻朧桜の流れを阻害する。
「また、帝に負けるの?」
 その言葉に『ソウマコジロウ』は止まる。
 これまで猟兵たちと英霊たちの言葉によって彼は揺れ動いている。
 眼の前に広がる『輝けるサクラミラージュ』が造られた世界であり、可能性の一つであり、また己がそれを為し得ていないことに感づき始めているのだ。

「また、だと? 我は」
「――」
 英霊たちの声をフィーナは届ける。
 彼等の声は、共に戦った同志だからこそ真摯に響くことだろう。
 それを己は聞くことはできない。
 けれど、それでも思うのだ。
 ともにあること。並び立つこと。
 同じ目線で同じ方向を見て、共にあることのできる人がいたという事実こそが、彼の魂を癒すものなのだ。
 あの苛烈なる日々は短いものであったかもしれない。
 けれど、それでも彼等は生きたのだ。
 生きてきたのだ。

 だからこそ、今がある。
 眼の前に広がる侵略新世界ではない、本当のサクラミラージュがあるのだ。
「わたしたちの本当の故郷のために、目を冷まして!」
 フィーナの言葉と共に桜色に輝く光の聖剣――断罪の櫻花剣(エンペラー・スレイヤー)が現れる。
 柄に手を伸ばす。
 思う。思う。思う。
 それだけでいいのだ。
 誰かを思う心は力になる。

「人々に仇為す悪しき者、幻朧帝よ! 永劫の闇へと還りなさい!」
 煌めくユーベルコードの輝きを宿した瞳が見えぬ『ソウマコジロウ』の身に宿る『幻朧帝イティハーサ』の残穢を見据える。
 あれこそが己が切り裂かねばならぬもの。
 放たれた力は破魔を宿し、その残穢を払うように振り抜かれるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋山・軍犬
え?戦争始まってるん?

という訳で、これまでの事情(あらすじ)が
全く分らん軍犬に代わって
サクミラ在住の帝都桜學府の學徒兵
UCNPCの喜乃ちゃんが相手だ
だって、事情が分からないと必殺:拳で語り合うが
使えないからな

喜乃「ちょっまってまって」

だからって一般學徒兵がラスボス級と剣で語りあえ…ッ

とうっおわっぁあッ!?
あのっ! 透明になるなら殺気とか闘気とかも消してなのだわッ!(泣)
心臓と【乙女の尊厳】まろび出ちゃぁあッ!(泣)

軍犬「…」

とか言いつつ、 逆転剣の舞い散る幻朧桜を
単発でも必殺のUC:桜花爛漫の繋ぎ目の無い連撃で
全て切り落としつつ、コジロウも完全に間合いから逃す気
無いとか…この子 天才すぎひん?



「え? 戦争始まってるん?」
 秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)は残暑から始まった大いなる戦いが秋を迎えようとする頃に気がついた。
 これまでのあらすじは、よくわからない。
 事情も。
 この眼の前に広がる『輝けるサクラミラージュ』という侵略新世界がどういうものなのかも、やっぱりさっぱりであった。
 これもそれもどれもこれも、みんな食欲の秋ってやつがわるいのである。

「事情がわからないと拳で語り合うこともできないからな……っていうか、そもそも『ソウマコジロウ』ってどんな人? 見えないんだけど」
 キョロキョロと周囲を見回す。
 誰もいなくない?
「『ソウマコジロウ』とは、帝都制圧を目論んだ大逆の人だってば。そんでもって、『幻朧帝イティハーサ』の唯一の器にして、最初の怪奇人間、透明人間なんだってば! っていうか、ちょっまってまって!」
 軍犬のユーベルコードによって召喚された影討ちの少女、帝都桜學府の學徒兵『喜乃』は戸惑っていた。
 いきなり呼び出されたかと思えば、いきなり『ソウマコジロウ』と戦うように言われるのだ。
 いくらなんでも急が過ぎる。
 心の準備ってものをさせてほしいものである。

「そのまえに一般學徒兵がラスボスみたいなのと剣で語り合え……ッ!?」
 凄まじい斬撃が風を切って彼女を襲う。
 見えぬ『ソウマコジロウ』の力は、ユーベルコードすら不可視にしてしまうのだ。
 けれど、それを彼女は避けていた。
「とうっ、おわっ、ぁあッ!?」
「なんか一人で踊ってるみたいだな」
 うん、と軍犬は『喜乃』の挙動にうんうんと頷く。
 特に手伝うことはない。
 むしろ、今ここで自分が踏み込んだ方が邪魔になるんじゃね? とさえ思っていた。

「透明になるんなら、あのっ! 殺気とか闘気とかも、消してっ、なのだわッ!」
 涙目の彼女。
 うーん、追い詰められると輝く感じなのかな?
「心臓と|『乙女の尊厳』《ピーーーー》まろびでちゃぁあっ!」
 叫ぶ彼女に軍犬はいや、と思うのだ。
 逆転の刃。
 そのユーベルコードは確かに見えていないはずだ。
 だが、舞い散る桜の中を見極め、躱しているのだ。

 桜の息吹 漆の型 桜大刀自神(サクラノイブキ・シチノカタ・サクラオオトジノカミ)。 

 彼女はその華麗なる連続剣の超絶なる速度でもって『ソウマコジロウ』の見えぬ斬撃をいなし続けているのだ。
 切り結ぶだけではない。
 その斬撃の間合いから身を翻している。
 だが、己の斬撃の間合いには『ソウマコジロウ』を捉え続ている。
「……この子、天才すぎひん?」
「言ってる場合ですか! 時間稼ぎしかできてないんですけどぉ!」
「それもそうかも。でもさ、うん。事情知らないからなんとも言えないんだけど……」
 軍犬は深く頷いた。
 彼女の連続剣でもって『ソウマコジロウ』に他の猟兵たちと英霊たる影朧たちの声を届かせる時間を生み出しているのだ。
「なら、それもみんなのためになるっしょ」
「それで私やばすぎる状況になってるんですけど!?」
「まあ、いいじゃん――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

綾倉・吉野
マ(……この幸せな夢こそが、軍神殿だけでなくその怨敵をも|現在《いま》へと繋ぎ止めてしまっている。ここで終わらせるのです、吉野)

……綾倉吉野、桜の精としての務めを、今、果たすであります!
退魔刀を抜き、周囲を警戒!そしてUCの幻朧櫻に対しては結界術と……【桜花封神】を!!
私の周囲へと桜吹雪を放ち、触れた敵の戦闘力と力を奪っての無力化を図るであります!

戦闘の力量は恐らく彼らが上、こっちが英霊殿達に合わせるであります!
大抵の動きならばなんとか、厳しくとも気合と根性で食いついていくでありますから、英霊殿たちはこちらを気にせず語りかけとかをお願いするであります!……その為の時間は、私が稼ぐであります!



「……この幸せな夢こそが、軍神殿だけではなく、その怨敵をも|現在《いま》へと繋ぎ止めてしまっている」
 マステマは見た。
『ソウマコジロウ』の見えぬ体躯。
 けれど、その奥に『幻朧帝イティハーサ』の残穢が憑依しているのを。
 これまで生み出し続けてきていた侵略新世界の尽くを打ち破ってきた。滅ぼしきれぬはずの『幻朧帝イティハーサ』を完全に滅するための儀式は、今もなお行われている。
 己たちがそうであったように、確かに『幻朧帝イティハーサ』は消耗しているのだ。

 その証左が、この侵略新世界『輝けるサクラミラージュ』であった。
 既に残穢しかない。
『ソウマコジロウ』が望み、『幻朧帝イティハーサ』が望まなかった世界が生み出されていのが証明。
「ここで終わらせるのです、吉野」
「……」
 綾倉・吉野(桜の精の學徒兵・f28002)は、みなぎる霊力を溢れさせながら瞳を輝かせる。

「綾倉・吉野、桜の精としての務めを、今、果たすであります!」
 癒やしを与えて転生する。
 それが己の役割であり役目であり、責務である。
 ゆえに抜き払った退魔刀の刀身に宿すのは霊力と覚悟。
「……その悪しき力、封じ、鎮めさせてもらうであります!」
 見えぬ幻朧桜の花弁と吉野の放つ霊力を帯びた桜吹雪が激突する。
 互いの花弁が入り交じる。
 けれど、吉野の視界には己のユーベルコードによって生み出された桜吹雪しか映っていない。
 ユーベルコードまでも透明化させるのが『ソウマコジロウ』の力なのだ。
 己と彼とでは戦闘能力の差が歴然としている。
 わかっている。
 だからこそ、吉野は、隣に立つ英霊たる影朧たちと共に走るのだ。

「合わせるであります!」
「未熟。その力量で戦場にでてくるとは!」
 斬撃と退魔刀が激突して火花を散らす。
 花弁散る中、吉野は見えぬ斬撃を防げた事自体が奇蹟だと思った。
 けれど、それは奇蹟ではない。
 どんなに力量差が歴然んであっても、気合と根性こそが吉野を支える礎だったのだ。

 才能がなくても、力がなくても、それでも最後に遺されているのは、結局のところ、常なる鍛錬と己の意志。
 即ち、気合と根性。
 それさえあれば、彼女は『ソウマコジロウ』の斬撃に食らいついていくことができるのだ。
「私のことはお気にならさず! どうか、そのお声を届けてください!」
「……」
 英霊たちの声は聞こえない。
 けれど、頷く気配があった。
 声は届く。想いが届くよりも疾く。
 必要なのは時間だ。
 だったら。
「そのための時間は、私が稼ぐであります!」
 花弁散るさなかに響くは剣戟。
 それは戦いを終わらせるために紡がれる一幕。
 されど、その剣戟なくば紡がれることのない未来がある。それを示すように吉野の瞳は、圧倒的な力を前にしても燦然と輝き続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニールニャス・ヒサハル
あンの髭ジジイ、碌でもにぇえリューギのにぇえ略奪だにゃ
何でも根こそぎ奪えばイイってモンじゃ…

…あーもー見てられにぇえ!
ソウマコジロウの仲間だった影朧も俺様の船に乗せて往く
幽霊も影朧も変わらにぇえ、乗りてぇ奴はドンと来い!

—いくぞ、野郎ども!
見えにぇえ波なら、テメェらの肉球で読みやがれ!
俺様たちこそ海賊!この程度、俺様たちなら読み切れる!【航海術、風を操る

ソーマコジロー!オメー随分なお宝が盗まれてるじゃにぇえか!【声を届かせる
せんちょーには、忘れちゃにゃらにぇお宝がある!
そんなジジイじぇにぇえ、仲間だ!
思い出せにぇえなら!その脳天にスバーンと一発突撃にゃー!
影朧と共にUC【鎧無視攻撃、砲撃、怪力



 まったくもって碌でもない。
 諸悪の根源『幻朧帝イティハーサ』が為すのは世界の創造である。
 生み出された世界のいずれもがニールニャス・ヒサハル(全世界通貨マタタビ化計画・f33800)にとって碌でもないものばかりであった。
 その中でも侵略新世界『輝けるサクラミラージュ』は、彼の思う中でも最悪だった。
 この世界は『ソウマコジロウ』が思い描くサクラミラージュの未来だった。
 発展が世界の隅々にまで行き渡り、出現する影朧は速やかに癒やしを与えられ、転生していく。
 人が満ちていく。 
 世界が生命という可能性に満ちて、その発展を後押ししていくのだ。
 それはともすれば理想であっただろう。

 けれど、この世界は偽りだ。
 造られた世界だ。
 だからこそ。
「ろくでもにぇえ、リューギのにぇえ略奪だにゃ。なんでも根こそぎ奪えばイってモンじゃ……にぇえ!」
 未だ『ソウマコジロウ』は揺らげど、英霊たる影朧たちの声は十分に届いていない。
 猟兵たちもがんばっている。
 影朧たちも必死だ。
 そんな彼等を見て、ニールニャスの心が、その胸にいだいた義侠の心が動かぬはずがなかったのだ。

「おみゃーら! 乗れ! みんなみんな俺様の船に乗せて往くにゃ! 乗りてぇ奴はドンと来い!」
 彼の言葉に影朧たちが幽霊海賊団に乗り込む。
 次々と殺到するのだ。
 彼等の意志は一つだ。
 だからこそ、ニールニャスはゲイルタクトを振るう。
「風起こせ! 帆を広げよ! 我ら荒くれ三毛猫海賊団うぃず英霊が罷り通る! 奏でよ、嵐の名を叫べ!」
 その名は、告げるまでもない。
 故に風が吹き荒れ、見えぬ幻朧桜の花弁を吹き散らす。
「――いくぞ、野郎ども! 見えにぇえ波なら、テメェらの肉球が読みやがれ! 俺様たちこそ海賊! この程度!」
「海賊が、この我に挑むか。乱世平定せし、太平の世に!」
 未だ夢より覚めぬ『ソウマコジロウ』へとニールニャスはカトラスの切っ先を向ける。
 見えないけど、見えている。

「ソーマコジロー! オメーずいぶんなお宝盗まれてるじゃにぇえか!」
「なにを」
「俺様、せんちょーには忘れちゃにゃらにぇお宝がある!」
 瞳がユーベルコードに輝く。
 そう、見えていない。でも。見えている。ニールニャスには見えぬものが見えている。それは共に並び立つ者たちとの絆だ。
 視えなくても視えている。
 だからこそ、ニールニャスは『ソウマコジロウ』に告げるのだ。

「おみゃーの後ろの薄ら髭ジジイじゃにぇえ! 仲間だ!」
「仲間、だと……我が同志の……」
「思い出せにぇなら!」
 ニールニャスは声を張り上げる。
「おみゃーら! あの脳天にスパーンと一発突撃にゃー!」
 その言葉と共に英霊たる影朧たちと共にニールニャスは『ソウマコジロウ』へと走る。

 そう。視えぬのであっても、感じ取ることのできるものがある。
 それが絆だ。
 何よりも大切なもの。
 思い出せ、とニールニャスは己が渾身の力を込めた一撃を叩きつけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・奏
私達家族の家はサクラミラージュにあります。ダークセイヴァーから長い旅を経てたどり着いた安住の地。華やかな裏にある戦禍の匂い、影朧の闇。全てを含んで受け入れてこその安住の地です。

それゆえに目の前にあるサクラミラージュは幻。そういいきれます。ソウマコジロウ、あなたの気持ちはよくわかります。その理想郷を作り出した意味も。

【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【受け流し】【ジャストガード】【鉄壁】【硬化】発動。たとえ透明化して強力な攻撃を繰り出してもこの護りはたえきってみせます。【回復力】も使います。

繰り出すは光耀の雨。過去の偉人よ。あなたの所業に深い敬意を。後はお任せを。おやすみなさい。



 家族がいる。 
 それはかけがえのないものである。
 取り替えることのできないものであり、代えの効かぬものでもある。
 そんな家族が住まうサクラミラージュを巻き込む戦いがあった。
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)にとって、それは家族を守るための戦いでもあったことだろう。
 安寧、安息、そうした言葉で表現するしかないほどにサクラミラージュは穏やかなる日々をもたらしてくれた。
 だが、華やかなる世界の景色の裏側には戦禍の匂いがしている。
 影朧の闇。
『幻朧帝イティハーサ』の為したことを知るのならば、奏では己たちの安息の下にあるものを知る。

「この『輝けるサクラミラージュ』は幻」
 そういい切る。
『ソウマコジロウ』にとっては、この『輝けるサクラミラージュ』こそが真であろう。
 けれど、これは夢だ。
 造られた世界でしかない。
 そして、『幻朧帝イティハーサ』の残穢を残らず拭い去るためには、破壊しなければならない世界でもあるのだ。
「『ソウマコジロウ』、あなたの気持ちはよくわかります。その理想郷を作り出した意味も」
「理想郷だと? これは紛れもない現実である。我らが為したもの……」
「そうです。我らと貴方は言った。ここには貴方しか居ない」
 だから、と奏での瞳がユーベルコードに輝く。
 迫る幻朧桜。

 その花弁と共に迫る視えぬ敵。
 その突撃をオーラで受け止める。
 足の骨身がきしむほどの衝撃が走り抜ける。けれど、鉄壁たる防御は、なんとか一撃を受け止めることができた。
 姿を透明化することのできる彼の力は、不可視故に何処から来るかわからない。
 一種の賭けであったが、奏は受け止めることでなんとか『ソウマコジロウ』の腕を掴むことに成功していた。
「貴方は此処にいる。けれど」
 軋む肉体。
 ユーベルコードに輝く瞳が視えぬ『ソウマコジロウ』を見据える。

 彼が為してきたこと。
 成そうとしたこと。
 それらを思う。英霊たる影朧たちの声は奏には届かない。この声を聞くことができるのは、同志である『ソウマコジロウ』だけだろう。
 なら、その声が届くように『幻朧帝イティハーサ』の残穢は拭わねばならない。
 光耀の雨(コウヨウノアメ)が降り注ぐ。
 天より注ぐ流星雨。
 その流星は『ソウマコジロウ』のユーベルコードを拭い去り、その怪奇人間たる透明化の力を濯ぐのだ。

「過去の偉人よ。貴方の所業に深い敬意を。後はお任せを」
 おやすみなさい。
 死せるものに安息は必要なのだ。
 奏のユーベルコードは星の光と共に注ぎ、『ソウマコジロウ』を照らすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンゼリカ・レンブラント
私の出身世界にも七勇者という気高き者達がいてな
お前さんの姿を見て思い出したよ
だからこそ偽りの世界というエンディング、
砕かせてもらおうか

透明人間である相手の動きは
第六感と勝負勘を全開に武器受けで凌ぎ、
鉄壁の肉体で堪え
覇気を全開に押し込んでいこう

影朧と共に記憶を揺さぶる
「時は二度と戻らない。
 だから時は美しく、残酷に光輝く」
私が学んだ言葉だがね
生命が回帰しようと、全てが元に戻ることはない

同志と共に抱いた使命を思い出せと呼びかけ
見舞うは究極の光宿す《断罪真拳》
全てを透過し諸悪の根源たる幻朧帝の力を粉砕しよう

真に幸せを掴むことは
夢に微睡むことでも、過去の海に浸かることでもない
前に進まないといけないのさ



 アンゼリカ・レンブラント(黄金戦姫・f38980)は過去を思う。
 エンドブレイカー世界においても、気高き心を持つものはいた。誰がために戦う者たち。
 そうしたものたちの志があったからこそ、紡がれてきたものがある。
「私の世界にも七勇者という気高きものたちがいた。お前さんの姿を見ると思い出す」
 光の雨に注がれた透明化。
『ソウマコジロウ』の姿を認め、アンゼリカはは笑むようだった。
 確かに、この侵略新世界『輝けるサクラミラージュ』は美しい理想そのものだ。
 だが、偽りなのだ。
 悲劇だけが人の心を殺すとは限らない。

 安寧というぬるま湯もまた人の心を死と同義たる停滞へと引きずり込むのを知っていた。
 そんな|結末《エンディング》を許せぬという意志がアンゼリカには宿っている。
 エンドブレイカーだからではない。
 アンゼリカという道程が、此処に発露する。
「この平穏を、この発展を、偽りと断じられてたまるものか。そうでなくては、我が同志たちの犠牲は……!」
 そう、犠牲。
 彼らは敗れたのだ。
 だからこそ、これは偽りの世界。

「砕かせてもらおうか」
 アンゼリカは踏み出す。
 己の鉄壁たる肉体でもって神速の如き一撃を受け止める。
 みなぎる覇気は己が五体を傷杖消させない。
「時は二度と戻らない」
 影朧たちの叫びが響き渡る。
 アンゼリカには、それが叫びにしか聞こえなかった。意味のある言葉には思えなかった。
 だが、『ソウマコジロウ』には違うようだった。
 鬨の声。
 一気呵成に帝都へと攻め入った記憶。

 そうしたものが彼の中に溢れ出す。
 生み出された世界がどんなに美しく、得難いものであったとしても、それでも忘れてはならないものがあったのだ。
「だからときは美しく、時に残酷に光り輝く」
「それでも、我は」
「ああ、だろうな。得難いものほど美しく思える。偽りと思えなくなる。私が学んだ言葉は、そうしたことを気づかせてくれる。生命が回帰しようと、全てが元に戻ることはない」
 どんなに願っても。
 願いが実直に全てを叶えるとは限らない。

 嘗ての万能宝石がそうであったように。
 この侵略新世界がそうであるように。
 そこにいないものたちがいる。影朧として叫ぶ英霊たちがいない。
 だから。
「その使命を共に抱いたものたちを思い出せ!」
 究極の光宿す拳が掲げられる。

「そこにいるな、『幻朧帝イティハーサ』!」
 振るうは断罪真拳(ダンイシンケン)。
 その拳はあらゆる物質を透過し、人を傷つける悪心を打ち据える。
 そう、『ソウマコジロウ』に残った残穢。
 それのみをアンゼリカは打ち据えたのだ。
「真に幸せを掴むことは、夢にまどろむことでも、過去の海に浸かることでもない」
 残穢として振り払い、前に進まなければならないのだとアンゼリカは黄金の輝きと共に己が拳を『ソウマコジロウ』に示すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
しあわせな未来を願い、夢見た世界
ここは確かに安寧に満ちているのに
けれど彼の変質したユーベルコードが、その歪みを教える
真実を知る私達は戦わなければならない
きっと英霊の影朧も同じ気持ちなのでしょう

思い出して、私達が戦い合う理由を
破邪の祈りを込めた雨を降らせるわ
水滴で花弁を落とし
その身に宿る『幻朧帝イティハーサ』の力を濯ぎましょう
雨の中に透明な姿が浮かび出したなら、英霊たちも見逃さない筈よ

しあわせなゆめに終わりを齎す
私の意志で選び、それを成す
私達が必ず為し得ましょう、と約束したから



 誰がために。
 いつだってそうだ。
 誰かのために立ち上がる事のできるものは、傷だらけである。そして、往々にしてそれが傷であると本人は認識しない。
 故に血を流しながら道程を進むことさえ厭わぬのだ。
『ソウマコジロウ』もまたそうであったのだ。
 怪奇人間として、己の為すべきことを成さなねばならぬという意志こそが、『幻朧帝イティハーサ』唯一たりえる可能性を凌駕したのだ。
 たとえ、死すのだとしても。
 その意志を利用されるのだとしても、彼は『輝けるサクラミラージュ』を思う。

 だからこその結実。
「それでも、その歪みが私には視える」
 薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、『ソウマコジロウ』を照らす光を見た。
 視えぬはずの透明人間。
 それを拭う星の光が有り、黄金の輝きがまばゆく輝いている。
 影朧たちの叫びが聞こえる。
 しあわせな未来を願い、夢見た世界に確かな安寧が満ちている。
 だが、それは偽りなのだと。

 真実が見えることが全て心を傷つけぬ真摯たるものであるわけがない。
 現実は残酷だ。
 少しのささくれもまた人を傷つける。傷つけられてしまうほどに繊細であることを知る。
 故に、静漓は毅然と瞳を向ける。
 真実を知るのならば、戦わなければならない。
 英霊たる影朧たちの叫びは、きっとその発露なのだ。
「あなたたちも私と同じ気持ちなのでしょうね」
 だから、と静漓は揺らめく『ソウマコジロウ』の姿を見た。

「我のなしたことは、これより満ちる世界の発展は、決して過ちではない。そうであるはずだ、だが……だが、この叫びは一体なんなのだ」
 揺らいでいる。
 彼に憑依した残穢の如き『幻朧帝イティハーサ』のちからが取り戻されようとしている。
「思い出して。私達が戦う理由を」
 静漓は、手を掲げる。
 その先にあるのは、月長石のように輝く天に配されし月齢図。

 降り注ぐは、ブルームーンの雨(ブルームーンノアメ)。
 その青き月は、ありえぬものを浮かび上がらせる。
「貴方が見える。そして、貴方にも彼らが視えているはずよ」
 蒼き月光に照らされるは、嘗ての同志たち。
 互いに何のために、誰がために戦うのかを理解している。
 誰がために立つのか。
 その問いかけは言うまでもない。
 報いるため、生命をいじめ抜く諸悪の根源を如何にかと立ち上がったあの日のことを思い出す。

 ならば、この『輝けるサクラミラージュ』は。
「だから、この『しあわせなゆめ』に終わりをもたらす。これは私の意志。私が選び、私が成す」
 そして、と静漓は青い瞳で嘗ての同志たちと邂逅を果たす『ソウマコジロウ』を見つめる。
 彼らが成さんとしたことは、今より紡がれるのだ。
「約束は果たすわ」
 なぜなら、そう約束したのだから。
 静漓は、降り注ぐ雨が残穢を洗い流すのを見た――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!
香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!
やっとエイル様要素が出て……
あれ?ルクス様ー?元気がない?
ふむ
『練乳勇者』で少し儲けましたし
いいでしょう此処のスイーツは私もちで!

さて(餌付けしながら
『しあわせなゆめ』……ええ、そうですね
同じ名前と同じ魂を持っていても
同じ『人物』とは限らない
その人の生きた道が人生なのです

ソウマコジロウ様?
貴方様はどのような人生と誰と歩んできたのですか?
そこに想いは残してないのですか?

例えこの行為が誰かにとっての悪であろうとも
『戦いに際しては心に平和を』
求めるのは戦いではなく平和
この一撃はそれを切り開く
【トニトゥルス・ルークス・グラディウス】!


ルクス・アルブス
【ステルク】

(雄叫びの衝撃波に、体育座りのままころんころんと転がって)

しりあすが……しりあすが……。
と呟きつづけちゃいます。

え。
すいーついただけるんですか?
食べさせてくれると、元気どもあっぷしちゃうかなー、なんて!
(あーんしたら食べさせてくれそうなので、ひな鳥状態に)

もっとー、もっとー、とおねだりしてたら、
ステラさん、なんかふつーのこと言ってます?

名前とか魂とかそんなの素材ですからね。
どんな人とどうしてきたかでみんなかわっちゃいますよー。

ステラさんがヤバくない世界線だってある……いえ、それはないかもですが。

ま、まぁせっかくですし、わたしの音楽の可能性(そのに)で心を平和を満たして上げましょう!



 星の光、黄金の輝き、そして青き月光の雨が『ソウマコジロウ』の視えぬ体躯を浮かび上がらせる。 
 英霊たる影朧たちと邂逅を果たす彼の心は揺らぎ、『幻朧帝イティハーサ』の残穢の力を弱めていく。
 彼らは嘗て共に立ち上がったものたち。
 その心は幾星霜、転生を重ねても薄れるものではないはずだ。
 たとえ、忘れることがあっても、魂が研磨されても。
 それでもなお、残るものがわずかでもあるはずだ。
 そうして、人の魂は癒やされていくのだ。

 可能性だけに潰されるものではない。
 それを示すような光景……に響く雄叫びがあった。
 もうこれは貰い事故である。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!」
 ご存知ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)である。
 彼女は感激していた。
 なんで?
「やっと『エイル』様要素がでて……」
 くぅ~という具合にステラは拳を握りしめていた。
 だが、その隣で雄叫びの衝撃にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はころりと転がっていた。
 体育座りのまま身が固まってしまったかのようであった。
 ちょっとサイコロっぽいな、とステラは思ったかも知れない。

「あれ? ルクス様ー? 元気がない?」
「しりあすが……しりあすが……」
 そう、シリアスアレルギーのルクスちゃんは、『ソウマコジロウ』を巡る圧倒的なシリアスな雰囲気にやられてしまっていたのである。
 そんなルクスを見下ろしてステラは、ふむと頷く。
「『練乳勇者』で少し設けましたし、いいでしょう。ここのスイーツは私もちで!」
 ほれ、と言わんばかりにステラはルクスを餌付けする。
 手ずからスイーツを食べさせている。
 悠長が過ぎる気がしないでもない。
「え。スイーツいただけるんですか? 食べさせてもくれると、元気どあっぷしちゃうかなー、なんて!」
 あーん、とひな鳥状態である。
 もうなんていうか、この二人が出てくるだけで、雰囲気は一転してほんわかしてしまうのである。

 緊張感? 知らない子ですね。
「このような『しあわせなゆめ』こそが、偽り……ならば、この可能性は」
『ソウマコジロウ』の言葉にステラは頷く。
「ええ、そうですね。同じ名前と同じ魂をもっていても、同じ『人物』とは限らない。その人の生きた道が人生なのです」
「もっとー、もっとー」
 シリアスにインターセプトするひな鳥ルクス。
 微妙な空気感である。
 いや、なんかステラが普通のこと言ってるのが違和感がある。そう思うほどにルクスはステラの評価が、そのちょっとやべーメイドから覆らないのである。
 概ね正しいかも知んない。

「『ソウマコジロウ』様? 貴方様はどのような人生を誰と歩んできたのですか? そこに想いは残していないのですか?」
「そうですよー重要なのは、どんな人とどうしてきたのかですから。それでみんな同じじゃなくなってしまうんですよー。ううん、もしかしたら、ステラさんがヤバくない世界線だってある……いえ、それはないかもですが」
 ないな、とルクスは思った。
 ごすん、と抱えていたステラがルクスを落とす。
 ジと、とした視線と目があって、やべ、とルクスは思ったかも知れない。

「こほん。たとえ、この行為が誰かにとっての悪であろうとも。『戦いに際しては心に平和を』。求めるのは戦いではなく、平和」
 ステラは雷光の輝きを宿した光剣を掲げる。
 そして、ルクスの瞳が音楽の可能性・そのに(オンガクノカノウセイソノニ)に輝く。
「そうです! まあ、せっかくですから、心を平和で満たしましょう。私の演奏で!」
 それはない、とステラは思ったが、空気を読んだ。
 いつまでもやべーメイドでいられるわけがないのだ。
 振るわれる光剣の一閃が演奏に導かれ『ソウマコジロウ』を打ち据えた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
ソウマコジロウ……
帝の器として造られながらも、帝に反抗した者
しかし帝に処刑され、桜に還ることは能わず……
……いい人は、何故こうも報われないのでしょう

あなたの全てを、奴は今も利用している
帝を討つという“志を同じくした者”を、あなた自身の手で葬らせようとしている!
ソウマコジロウ、思い出してください
あなたは、たったひとりで帝都制圧をしようと、帝を討とうとしましたか
違うでしょう!
多くの“同志”が、あなたには居た筈です!
だからこそ、あなたは――あなたたちは、7日間といえど帝都制圧を成し遂げたのでしょう!

叫びと共にUC発動
周囲の舞い散る幻朧桜を吹き飛ばしてやります

……この世界を壊すのは、私だって苦しい
誰もが幸せに暮らせる世界……
きっと、怪奇人間の業病を治す術も見つかっている世界
でも、……それでも
帝を完全に殺す為に……二度と復活出来ぬように
私も、その願いを持つ者として、“志を同じくした者”として、今度こそ成し遂げてみせますから
ちゃんと見ていてくださいね、ソウマコジロウ

……失せろ、イティハーサ!!



 光あるところに影あり。
 影あるところに光あり。
 表裏一体だ。
 なら、悪も善も動揺であるはずだ。
 そして、善き人間と悪しき人間もまた同じなのだ。
 なら、因果応報たる言葉は示さねばならないはずだ。善き行いには善き結果でもって報われなければならないはずだ。
「いつだってそうだ」
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は『ソウマコジロウ』を見やる。

 連綿と紡がれてきた亮平たちのユーベルコード。そして、星の光、黄金の輝き、青き月光の雨、雷光。
 これらによって『ソウマコジロウ』の透明化は拭われてきた。
 だが、揺らいでいる。
 残穢のようにしつこく『幻朧帝イティハーサ』が『ソウマコジロウ』にまとわりついているのだ。
 砕き続けてきた侵略新世界。
 これによって如何に強大な存在であろうと消耗してきたのだろう。

「ここで終わることは許さぬ。何度でも蘇るのだ。再孵化し、何度でも儂の器として」
「違う。我は、この『輝けるサクラミラージュ』を」
 その光景をスキアファールは許せなかった。
 何故、善き者はいつだって悪しき心持つ者に弄ばれる。消費される。
 報われないなんて許せない。
 幻朧帝の器として造られながらも、叛逆したもの。
 死しても桜に還ることは許されず、転生すらも、癒やしすらも与えられなかった者。

『ソウマコジロウ』への仕打ちは、あまりにもむごたらしい。
 そして、その『意志』すらも『幻朧帝イティハーサ』は利用しようとしているのだ。
「あなたの全てを、奴は今も利用している」
 スキアファールは迫る幻朧桜の花弁を身に受け止め、さらに『ソウマコジロウ』の斬撃を同じ怪奇人間の身で受け止めた。
 影人間。
 それがスキアファール。
 己もまた同じなのだ。

「帝を討つという“志を同じくした者”を、あなた自身の手で葬らせようとしている!『ソウマコジロウ』、思い出してください。あなたは、たったひとりで帝都制圧をしようと、帝を討とうとしましたか」
 揺らぐ。
 揺らぐ。
 魂が揺らぐようだった。同時に『幻朧帝イティハーサ』の残穢が色濃くなっていく。
「違うでしょう! 多くの“同志”が! あなたには居たはずです! 視えていないわけがない。視えぬわけがない! 届かないわけがない!」
 スキアファールは喉が枯れるように思えた。

 それほどまでに己の心が籠もる。
「だからこそ、あなたは――あなた“たち”は、7日間といえど帝都制圧を成し遂げたのでしょう!」
 煌めくはユーベルコードの輝き。
 心苦しさで胸が潰れそうだった。
 涙なんてでないのに。
 心が激情に泣くようだった。
 この世界は優しすぎる。
『輝けるサクラミラージュ』は願いであり、祈りだ。
 誰もが幸せに生きる事のできる世界。
 怪奇人間の業病すら不治の病でないはずだ。それはどんなに幸いであっただろうか。

 己が見に置き換えても、この安寧たる世界に沈みたいと思える。
 安息にまどろみたい。
 けれど。
「……それでも」
 壊さねばならない。
 諸悪の根源を完全に滅ぼすためには、二度と復活させぬためには。
 この世界を壊す。
 荒狂のルドラ(ハヴォック)は、響き渡る。

 口腔より放たれるは、激情の咆哮だった。
「――」
 それは英霊たる影朧たちと重なる叫びだった。
「ああ……そうだな。そのとおりだ。この『しあわせなゆめ』は偽りだ。可能性でもあるが、しかし……やはりそうなのだな。今も歩み続けている者たちがいるのならば、我はそれに報いねばならない。己が身を捧げたのは」
『ソウマコジロウ』は面を上げる。
 その表情は、晴れやかなものであった。

 重ねてきたものがある。紡いできたものがある。
 何一つ無駄ではなかった。無為ではなかった。だからこそ、彼は告げるのだ。
「誰がために君は立つ」
 その言葉にスキアファールは応えるだろう。
 眼の前にいる誰かのために己は立つのだ。
 そして、今は、『ソウマコジロウ』と、その『志を同じくした者』たちのために、立つのだ。
「させぬ。この可能性はお前の夢そのもの。そして、儂の器としての!」
 溢れ出る残穢。
 それをスキアファールは睨めつけ、ユーベルコードの煌きの中に、己の中に宿る未練ごと――。

「……失せろ、イティハーサ!!」
 世界を砕く咆哮をほとばしらせる。
 砕け、消えゆく世界と『ソウマコジロウ』。
 その瞳の色を知ることはない。
 それが、悲しくないと言えば嘘になる。
「私は忘れない。私があなたと同じ怪奇人間であったことを」
「忘れ給え、君よ」
「人であることを謳歌するためには、我が身を知らねばなりませんから」
 だから、忘れないのだとスキアファールは、誰がために立つ者を見送る。
 桜の花弁は、無色に彩られる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月30日


挿絵イラスト