帝都櫻大戰㉑〜誰がために星は輝く
●歴史
天と地を覆う櫻が散る。
それは乖離された空を開放するようでもあり、猟兵たちは見上げた。
櫻に覆われていた空の先にあるのは星。
その一つ一つが新たなる可能性を示すようでもあった。
「空に浮かぶ星は全て可能性」
グリモア猟兵、ノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)は薄紅色の瞳に星を写す。
侵略新世界を創造するという恐るべき力を持つ『幻朧帝イティハーサ』は、『悪魔王を獲得せし者』がエンシャント・レヰス『ビームスプリッター』を獲得することにより、融合を果たせなかった。
それ故に、侵略新世界を砕いた猟兵達の前に広がっているのは新世界の虚であった。
「『ビームスプリッター』を獲得せしめるほどの熱を持ちえるのだとしても、全ての生命はやがて冷めゆき……その全てがオブリビオンになるのだ」
『幻朧帝イティハーサ』は、彼が生み出せなかった新世界が空白のような虚へと変じたのを見やり、苦し紛れのような言葉を紡ぐ。
これまで第三戦線が始まって以来、彼は常々猟兵たちが戦うことの無意味さを説いてきた。
無意味であると。
可能性はすでに得られているし、己が新世界を創造する姿を以てすれば、諦観に塗れるはずであると。
だが、今まさに新世界の虚の空に星がまばゆくように猟兵たちの瞳もまたユーベルコードに輝いていた。
誰一人として諦めては居ない。
世界を創造するほどの強大な敵である『幻朧帝イティハーサ』を前にしても、誰もが歩みを止めなかったのだ。
「その言葉こそが最早無意味でしょう。そして、世界を創造しうるのはあなただけではないのです」
ノインの言葉と共に新世界の虚に広がるのは広大無辺な客席と舞台と舞台装置……世界大魔術『スタアラヰトステエジ』である。
そう、『幻朧帝イティハーサ』が新世界を創造に失敗した膨大な力を逆に利用し、サクラミラージュの大劇場をも凌ぐ舞台が今まさに顕現するのだ。
「号外! 号外! 大号外! 新世界ノ虚ニ、世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』出現ス! 吾輩ハ『サハリエ・ステーロ』ヲ召喚者ニ定メ、此処ニ広大ナル、ステエジヲ拵エル者也!」
響き渡る『ビームスプリッター』の声と共に機械仕掛けの舞台装置が動き出す。
周囲に立ち上るは、書き割り。
そこに描かれていたのは、無限に広がる大宇宙。
舞うは、赤と青の鋼鉄の巨人『セラフィム』。
それだけではない。猟兵たちは己の思い描いたものが機械仕掛けの舞台装置にて生み出されていくのを見ただろう。
「これは……『興行魔法』か。儂の新世界創造のエネルギーを斯様に使うか」
「生命の可能性は創造性ではなく、想像性。故に、あなたの言うところの可能性の断片を常に上回るのではなく、更新していくのです」
「戯言だな。今まさにお前たちが更新したという可能性すらも、骸の海はいずれ飲み干していくだろう。己の影をお前たちは踏んだだけに過ぎない」
「ですが、見上げる空にあるものを見るとよいのです」
「何を言っている」
ノインが天を指差し、示すは新たなる世界の星空。
今は『興行魔法』によって映し出される仮初の星空でしかないのかもしれない。
この舞台装置さえも仮初の『楽園』なのかもしれない。
「星は輝くのです。生命の瞬きと同じように」
「だから何だというのだ。傷つき、死に絶えるという結末は変えられない。過去には戻れない。如何にお前たちが理想を掲げ、明日を想うのだとしても、運命は変わらない」
「いいえ。『ヘリオライトが照らす光が、誰かの未来へ届くように』」
『幻朧帝イティハーサ』の言葉にノインは笑む。
長く苦しく険しい戦いがまだ続く。
けれど、笑ったのだ。
そして、彼女は告げる。
その言葉を。
「誰かの創造した世界ではなく、誰かの想像した未来は、『いつか彼ら自身の手で本当につくられる』のです――」
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『帝都櫻大戦』の戦争シナリオとなります。
エンシェント・レヰス『ビームスプリッター』と『幻朧帝イティハーサ』の融合は阻まれ、その主である『サハリエ・ステーロ』さんによって、新世界の創造に失敗したエネルギーを逆に利用し、新世界の虚にて、広大無辺の客席と舞台と舞台装置の広がる世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』が生み出されました。
これより始まるのは最高のステエジ。
この広大な『スタアラヰトステエジ』の上では、そこに立つ『演者』即ち皆さんの想像力に応じる形で絶えず巨大な機械仕掛けの舞台装置が駆動しています。
これらを利用して華麗なショウを演じながら戦うことで、『興行魔法』が皆さんを大幅に強化し、『幻朧帝イティハーサ」と渡り合うことができるはずです!
さあ、ここからが反撃の時です!
プレイングボーナス……華麗なショウを演じながら戦う/舞台装置を戦闘に利用する。
それでは、幻朧櫻舞い散る帝都にて戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『幻朧帝イティハーサ』
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POW : 天羽々矢 undefined arrow
【矢】を非物質化させ、肉体を傷つけずに対象の【生命】のみを攻撃する。
SPD : 征服せし神鷹 undefined falcon
【神鷹】による超音速の【飛翔突撃】で攻撃し、与えたダメージに応じて対象の装甲を破壊する。
WIZ : 歴史を見る骸眼 undefined eye
対象の周りにレベル×1体の【滅びし歴史上の強者達】を召喚する。[滅びし歴史上の強者達]は対象の思念に従い忠実に戦うが、一撃で消滅する。
イラスト:炭水化物
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バルタン・ノーヴェ
イザナミ殿の仇!!!
何を言うかというと、今しがた滑り込みで参戦間に合うかなーと思って向かったら間に合わなかったので仇討ちデース!
そのうち他のイザナミ殿にトンチキを叩き込みに行きマス。
それではさておき生命の輝きを披露しマース!
すなわちブレイクダンスッ!
超高速回転がイティハーサを襲いマース!
さあセラフィムもご一緒に!
戯言上等残骸上質! 興行魔法の具合は向上!
無駄無為無価値無意味はモーマンタイ!
終わりも滅びも死に絶えも、今を諦める理由にナッシング!
エンジョイできないイティハーサ、延長理由はいったいなにさ!
イェーイ!
という感じにノリノリのショウで体当たりしマース!
こう、回転するベイなブレードのように!
「『イザナミ』殿の仇!!!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は集中線を発しながら、新世界の虚たる『スタアラヰトステエジ』にて瞳孔開きっぱなしのキマった顔をしていた。
何故かと問われたのならば、これには海よりも深い事情があるのである。
何処かの世界の海溝よりも、そりゃ深い深い事情があるのである。
此処では割愛させていただくが、しかし、間に合わなかったのならば仕方ない。
タイミングというのは、いつだって奇天烈複雑怪奇なのだ。
そんなわけで、バルタンは気持ちを切り替える。
切り替えって大事である。
どんなものにだって緩急って必要だし、それがあるからこ物語は生きて来ると思うのだ。
故に、バルタンは己の想像力の翼を広げる。
諸々の無念。
それは他でぶつけるとして、今此処でぶつけなければならない相手とは誰か。
問うまでもない。
エンシャント・レヰス『ビームスプリッター』との融合を果たせなかったことにより、宙ぶらりんになったエネルギーを以て放たれた『興行魔法』を利用し、『幻朧帝イティハーサ』そのものにぶつけるのである。
「というわけで、これが我輩の生命の輝きなのデース! それすなわち!」
「如何に『興行魔法』とて、歴史そのものたる儂を上回る道理などない。生命の輝きも『意志』なくば、今の儂には意味をなさない」
「そんなことは百も承知! ですが、この生命の輝きは! 即ち、ブレイクダンスッ!!」
超高速回転。
大地に頭を擦り付けるかのような高速回転でもってバルタンは舞台装置を遺憾なく駆使する。
せり上がる舞台。
浴びるスポットライト。
何故か舞う紙吹雪。
豪華絢爛たるショウは、未だ始まりを告げたばかりであるが、すでにバルタンはフルスロットル。エンジン全開。客席があったまってようが、冷えていようが関係ない。
「さあ『セラフィム』もご一緒に!」
バックダンサーのように赤と青の鋼鉄の巨人がバルタンとともに踊る。
なんかすごい。
すごいことになっちゃったぞ?
「戯言ばかりの虚言満ちる物言いを」
「戯言上等残骸上質! 興行魔法の具合は向上!」
ライムに乗ってリリックを叩きつけrお!
「無駄無為無価値無意味はモーマンタイ! 終わりも滅びも死に絶えも、今を諦める理由にナッシング!」
詰め寄るバルタン。
ショウの舞台から、ずびし、と指差すは『幻朧帝イティハーサ』。
非物質化した矢がバルタンの生命を穿つ。
だが、バルタンは止まらなかった。
リリックが止まらない。ライムは途切れない。
「エンジョイできないイティハーサ、延長理由はいったいなにさ! イェーイ!」
もうやりたい放題である。
いぇいいぇいと舞台はホットな空気に満ちる。
たとえ、生命を穿つ矢であっても、今のバルタンを止められない。
盛り上がれば盛り上がるほどに『興行魔法』は、その力をましていくのだ。
「乗りに乗ってるぜ、デース! スリー、ツー、ワン!」
ゴー?
どこか遠くで転移を維持しているグリモア猟兵が掛け声をかける。
これなんの掛け声?
「ゴーシュート! デース! この身を回転するベイなブレードのように! これぞブレイクダンスの真髄なのデース!」
絶対違う。
けれど、違うとも言い切れない凄まじい説得力でもってバルタンは、その回転体当たりでもって『幻朧帝イティハーサ」をエクストリームフィニッシュするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
…わし、何故か陰海月に助手指定されたのだが?
まあよい、UC…うん、なるほど。
跳ねながら回転薙ぎ払いなぞすれば、ええと、『映える』であろうな?
わしの炎、ぬいぐるみは焼かぬし。
一撃で消滅する強者たちも巻き込んで、さらに黒燭炎を叩きつけるように。
幻朧帝は、わしも嫌いでな。逃すはずはないのだよ。
※
陰海月「ぷきゅ!」
『あつあつおじーちゃん』は機械壊すけど…多分、大丈夫!
ぼくのクッション利用して、飛んで攻撃してね!
指定したのは、槍の炎との共演狙いだよ!
ふふんふんふん♪ぼくは光りながら踊る!そして、触腕で薙いじゃえ!
何故、という思いがある。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『侵す者』は何故か自分が『陰海月』の助手に指定されたのかを思う。
いや、選ばれたこと事態はいいのだ。
けれど、何故?
理由が思い当たらない。
「ぷきゅ」
そんな心を知ってか知らずか『陰海月』は、エンシャント・レヰス『ビームスプリッター』が『幻朧帝イティハーサ』の新世界を生み出すためのエネルギーが宙に浮いた状態から『興行魔法』によって、新世界の虚に『スタアラヰトステエジ』を創り上げたのだ。
広大無辺に広がるのは、舞台と舞台装置。そして客席である。
オーディエンスはないが、会場は何故か大盛りあがり。
すでに猟兵の一人が『幻朧帝イティハーサ』との戦いを行い、場はホットになっているのだ。
「……まあよい」
「ぷきゅ~」
「これは……いつのまに作ったのだ?」
周囲を埋め尽くすのはカラフルな動くミズクラゲ型のぬいぐるみであった。
ユーベルコード。
これは紛れもなくユーベルコードである。
しかし、舞台を埋め尽くすぬいぐるみの数に圧倒される。
「数など無意味。歴史たる儂が生み出すのは、圧倒的強者よ」
現れるのは、無数の徒手空拳の人間たちであった。
彼等は体躯の違いはあれど、しかし、その瞳に爛々と輝く光を灯していた。
名を『■■■』という。
既に失われてしまった名であるが、しかし、その強者たちをひと目見て『侵す者』は理解しただろう。
「幻朧帝よ、おぬしは確かに嫌いだ。だが、強者を生み出しておきながら、完全に再現できうぬというのは、あまりにも不手際が過ぎるのではないか?」
『侵す者』は、周囲に満ちたぬいぐるみたちを利用して、飛ぶ。
振るう槍の冴えわたるは苛烈。
叩きつけ、突き穿つ。
その所作によって歴史上の強者として再現された『■■■』たちは、次々と一撃のもとに消滅していくのだ。
「ただの一撃で消えるのはもったいない。力の持ち腐れというのではないか?」
「……だろうな。だが」
「逃すはずはないのだよ」
『侵す者』はクッションにしたぬいぐるみを蹴って飛ぶ。
距離を詰めるためだ。
如何に強者たちが迫るのだとしても、己が槍の一薙ぎでもって消えゆく。
これが真の強者たちの駆体を再現したのであれば、当然己が届くはずもない。
だが、一撃で消滅するということは、ただの一撃でもいいのだ。
振りかぶった炎とぬいぐるみたちが煌めく。
『陰海月』と『侵す者』の共演。
応援するように触腕が輝いて、強者たちを薙ぎ払いながら『侵す者』は己が一撃を『幻朧帝イティハーサ』へと届かせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
歴史神のおっさん相手に舞台装置で対抗て発想がすごいよなー
倦むほど永い歴史の中でこんなの初体験じゃない?
ショウていやぁオレらのエンパイアでも人気だ
星空の装置はなかなかイイ
魅せる星ならプラネタリウム
今宵は降る星
UCに装置の強化を乗せて敵に高威力の彗星化して撃つ
これは的当ても兼ねてるから的になって盛り上げてよ翁殿【念動力で投擲】
敵UCの鷹に相棒のユキエが【激痛耐性、受け流し】舞台強化得て対抗
突撃エネルギーを鷹に跳ね返し狙い翔ぶ
装甲を削られてもユキエをキャッチ
『ユキエ、鷹相手でもたたかうし!』
おや
可愛い上に勇敢なユキエ
頼もしいけど心配させんなー
さあ仕上げは七葉隠
翁を箱に詰めての串刺しショウだ
アドリブ可
なんていうか、と鹿村・トーゴ(鄙の伏鳥・f14519)は発想の凄さに目を見開く。
新世界の虚。
それは『幻朧帝イティハーサ』がエンシャント・レヰス『ビームスプリッター』と融合を果たせなかったことにより生まれた世界になりきれなかった空洞である。
しかし、その空洞に満ちるエネルギーを逆に『ビームスプリッター』は利用し、世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』を生み出してみせたのだ。
広大無辺の客席。
そして、舞台に舞台装置。
絡繰り仕掛けの装置が一体どのような原理で、どのような理屈で、どのような術理でもって、この光景を生み出しているのかさっぱりわからない。
「いや、倦むほど永い歴史の中で、こんなの初体験じゃない?」
トーゴの言葉に舞台の上に立たされることになった『幻朧帝イティハーサ』は己が肩に止まった神鷹をけしかけさせる。
超拘束の神鷹の突進をトーゴは書割の中で躱す。
恐るべき速さである。
「無限に広がる大宇宙っていうのもロマンがあっていいよなー。ショウは、オレらのエンパイアでも人気だ。星空の装置はなかなかイイ」
「斯様な子供だましなど」
「そうかな?」
トーゴは身を翻し、絢爛たる星空の書き割りの中に立つ。
舞台は光り輝いている。
「魅せる星ならプラネタリウム。今宵降る星は、羅刹には馴染み深い石だ」
懐から取り出したのは黒曜石の鏃。
そう、馴染が深い、と言ったのは彼の羅刹の種族としての特徴。
額から生える黒曜石の角。
それに似た鏃を『興行魔法』によって強化されたユーベルコードの輝きとともに投げ放つのだ。
鋭い一投。
それによって神鷹を射抜きながら、トーゴは大当たりだと笑う。
「翁殿よ、的を用意してくれるなんて、あんたもそれなりに興行を盛り上げようとしてくれてんのかい?」
「戯れるつもりなどない。如何に『興行魔法』とて、お前たちが儂にかなう道理などないのだ」
「そうかな? その割には焦ってんじゃあないのかい?」
トーゴは己を襲う神鷹を見やる。
確かに射抜いたはずだが。なるほど、あれが歴史の力というやつか、とトーゴは理解する。
『幻朧帝イティハーサ』の力。
それは創造の力である。
神鷹もまたその一つなのだろう。
「ユキエ、鷹相手でもたたかうし!」
トーゴの肩より飛ぶのは、白い鸚鵡。
頭上で鷹と鸚鵡が嘴と爪でもって激突している。
「おや、可愛い上に勇敢なユキエ。頼もしいけど心配はさせんなー」
放つ黒曜箭(コクヨウセン)の一撃。
それが再び神鷹を射抜く。
「ユキエ、がんばる!」
「おー、ありがとな。けどまあ、射的ショウはこれにて閉幕。これより行われるのは串刺しショウだ!」
トーゴは巨大忍刀を構える。
長大な刀身は、しかし透明で見えることはない。
振るう斬撃は、刺突の一撃。
「翁は箱に詰めて、と」
想像によってショウの絡繰りじかけが動き出し『幻朧帝イティハーサ』を包み込む。
箱詰めショウ。
脱出不可能なる仕掛け。
されど、あれ不思議。串刺しになっても無事にでてまいりました、というのがショウ。
「でもまあ、ショウに失敗はつきものだよな
そう言ってトーゴは己が忍刀を箱に詰められた『幻朧帝イティハーサ』へと突き出し、その肉体を貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユウ・リバーサイド
UCで“縁”と名付けた『見た目は8歳の男の子』を召喚
手伝ってくれるかい
(都市伝説が笑顔で頷き)
楽しい舞台にしよう
演題はミュージカル
妻の連れ子を愛そうと
不器用に接する青年の葛藤を歌い上げダンスで魅せる
「正解なんて分からない
それでも僕は」
敵UCは心眼で見切り避け
カウンターで蹴り飛ばし
ダンスの振りに混ぜてエンを引き寄せて庇う
絶対に傷つけさせない!
時に抱き上げ
軽技などのパフォーマンスで喜ばせ
エンも声は出せずとも表情豊かに
途中からスクーターに
エンは補助席に
映し出されるサクミラの景色
「君と美しい景色をこれからも眺めていきたい」
一気にスクーターを加速
エン、しっかり捕まって
心眼で敵の急所を見抜き革命剣で貫く!
「手伝ってくれるかい」
言葉はなくとも解ったような気がした。
いいよ。
そういう言葉が聞こえたような気がした。
笑顔はきっと了承の証であっただろう。
頷く姿に、ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)は新世界の虚にて『幻朧帝イティハーサ』と対峙する。
「じゃあ、楽しい舞台にしよう」
ユウの想像力が『興行魔法』によって具現化されていく。
此処は舞台だ。
絡繰り仕掛けの舞台装置が書き割りを生み出していく。
「演題はミュージカル」
ユウは静かに語り始める。
何が始まるのか『幻朧帝イティハーサ』には理解できなかった。
『ビームスプリッター』の世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』は、想像によってあらゆるショウを生み出す。
ユウが語るのはあらすじだった。
プロットと言ってもいい。
妻の連れ子。
彼女にとっては再婚。血の繋がらない親子が生まれる。
親子というものが血縁のみにて成り立つのならば、家族というものは成り立たない。
最初に出会う父と母とがそもそも赤の他人なのだ。
なら、父と子とだって血の繋がり以上の絆が生み出せるはずなのだ。
「僕は不器用だ。どうしたってあの子の心を解きほぐすことはできないかもしれない。だが、親子の縁を結びたいと思うんだ」
身一つで愛情を表現する。
ダンスは、言葉で語る以上に感情を雄弁に語るものである。
七不思議の召喚(コール・アーバンレジェンド)によって召喚された都市伝説が生み出した男の子は頭を振る。
不器用な行いは、対する子に不信を抱かせるだろう。
閉ざされた扉をなんとか開いてほしいと苦心するのは、滑稽であったかもしれない。
「正解なんてわからない。それでも僕は」
それでも。
それでも。
それでも。
何度の苦境があっただろうか。
「何度も同じことを続けて何になる。可能性にすらならぬショウが一体何になる」
『幻朧帝イティハーサ』より放たれる神鷹の超音速攻撃が身を撃つ。
舞台の上に転ぶ。
ころんだのは、子を傷つけさせないためだ。
己が傷ついても守らなければならない。親だというのならば、子を守られなばならない。
言葉でならなんとでも取り繕うことができる。
それがセリフ出会ったのならばなおのことであろう。
抱き上げ、踊るように周囲を飛び回る神鷹の攻撃から身を挺して守る。
行動こそが、誰かの心を開かせる手段。
だが、ユウにはそういうことはもうどうでもよかった。
今己は踊っているのだ。
誰かを喜ばせるのではなく、唯一人の眼の前の子を喜ばせたいと思うのだ。
超えなくても、表情が豊かだ。
笑っている。
笑っているのだ。笑顔は己の心を照らす。
舞台装置から現れるのはスクーター。
「君と美しい景色をこれからも眺めていきたい」
言葉は返ってこない。
わかっていたことだ。これは演目なのだ。ならばこそ、舞台装置のスクーターは加速する。
言葉無くとも伝わるものがある。
手にした剣が煌めいた――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
まあね、別に細かいことはどうだっていいんですよ。とりあえずフォーミュラであるあなたを殲滅すればそれで一件落着ってことで!
とりあえず興行魔法で【限界突破・リミッター解除】!ブーストされた状態の【高性能を駆使】して、舞台装置のシステムを【ハッキング】!そしてアース系世界で流行のテクノサウンドで場を持ち上げていきましょう!(【楽器演奏・パフォーマンス・ブームの仕掛け人・注目を集める】)
そしてクライマックスは舞台装置を最終殲滅モードにトランスフォーム!(ぇ)「対オブリビオン」属性のUCの【一斉発射】で、召喚された強者達諸共【蹂躙】しちゃいましょうか!(【属性攻撃・2回攻撃・乱れ撃ち・制圧射撃・レーザー射撃・零距離射撃・覚悟】)
※アドリブ・連携歓迎
細かいことはどうだっていい。
それがシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)の思う正直なところであった。
サクラミラージュにて勃発した帝都櫻大戦。
その経緯は聞きかじったものであったし、ここまで戦線が進んだ経緯もまた頭に入っている。だが、それはどれもが細かいことだった。
己がしなければならないことはただ一つ。
「とりあえずフォーミュラであるあなたを殲滅すれば、それで一件落着ってことで!」
考えるな。
感じるのだ。
新世界の虚にはエネルギーが満ちている。
『幻朧帝イティハーサ』は『ビームスプリッター』と融合を果たすことができなかった。
そのために新世界を創造するためのエネルギーが宙に浮いた状態なのだ。
このエネルギーを『ビームスプリッター』は世界型大魔術『スタアラヰトステエジ」に用いた。
広大無辺な客席と舞台、絡繰り仕掛けの舞台装置。
これによって猟兵の想像力が『興行魔法』によって力と変わるのだ。
「殲滅だと? この歴史そのものたる儂を殲滅する、と?」
「そりゃそうでしょ。あなたが諸悪の根源だっていうのなら、当然倒すでしょう」
そう言ってシャルロッテは己の前に居並ぶ歴史上の強者たちを見やる。
だが、何の問題もない。
なぜなら、どれだけ歴史上の強者とはいえ、一撃で消えるのだ。
なら、やりようはいくらでもある。
「限界突破、リミッター解除!」
シャルロッテの電脳ゴーグルに内蔵された超高度コンピューターがなりを上げる。
そこに『興行魔法』が上乗せされる。
圧倒的高性能。
それによってシャルロッテは、舞台装置をハッキングし、さらに次々とスピーカーとアンプをせり上がらせるのだ。
即席であっても、ここはシャルロッテのブースへと様変わりするのだ。
「音、だと……? これが何になるのだ」
「歴史と言う割に流行には疎いんですね! 最新のテクノサウンドで場をぶち上げていきましょう!」
唸るは大音量のサウンドにビートがグルーヴを生み出す。
体を撃つ音の衝撃にシャルロッテは、体が自然に動き出すのを感じただろう。
腹に響く音。
音響は、耳で聞くものではない。
体で感じるものだ。
故にシャルロッテは、舞台装置をトランスフォームする。
もうやりたい放題であった。だが、それが『興行魔法』。彼女の想像力によって後押しされた舞台装置は変形し、最終殲滅モードへと移行する。
この音の洪水の前に歴史上の強者たちは、ただ音の一撃に撃たれる度に霧散していくのだ。
「この程度の音で、ただこれだけで強者たちが消えていくだと……?」
「歴史そのものなんて言いながら、大したことないんですね! さあ、ここからノッていきますよ! 攻撃プログラム展開。敵に直接コマンド入力といきますよ! ――ATTACK COMMAND(アタックコマンド)!!」
シャルロッテは、一気に攻撃用プログラムを実体化させる。
「蹂躙しはいましょう!」
乱れ打たれるのは、攻撃用プログラムによって実体化したビーム。
レーザー光線の演出のように乱舞する光。
『スタアラヰトステエジ』はこれまでにない盛り上がりを見せる。
シャルロッテは、大したことをしていないと思っていた。
自分がしたことは、このステージ、舞台を盛り上げることだけ。そして、それはこんなにも容易いことなのだ。
「難しいことなんてかんがえなくっていいんですよ。音を楽しめば。けれど、楽しめないのなら、あなたはここまでですよ」
シャルロッテは音の洪水の中に立つ。
楽しむこと。
ただそれだけをする者に、この時間を阻むことなんてできやしないのだ。
笑って、笑って、笑い続けて、そうして前に進んでいくのが、いつだって明るい未来を創る秘訣なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ルシアナ・フローレス
|未だ幕は降りてはいない《The Show Must Go On》……と、いうことですね。
それならば判りました、参りましょう。
夢と幻想をこの場に満たすのが、私の責務です。
一呼吸おいて
「大変長らくお待たせいたしました――」
いつも通りの幕間開けの口上ののち、UCを発動。
劇場で積み上げた研鑽と、その粋。
そして、興行魔法のちからを拝借して、自分だけでなく|演ずる者《猟兵達》を皆綺羅星の如く輝かせ。
レイピアと形をかえた武器を手に、舞うように殺陣のように攻撃を。
世界に舞う櫻華と、世界を渡った菫華の共演。お楽しみ頂けましたでしょうか。
例え終わりが来たとしても、抱いた夢は別の誰かを導いて、世界は続くのですよ。
ユーベルコードの光明滅するショウはまだ続く。
『幻朧帝イティハーサ』は確かに強大な存在だ。圧倒的と言ってもいい。
歴史そのものと語る言葉に誇張はなく、彼の力は世界すら創造しうる。
これまで猟兵たちが見てきた侵略新世界は、かつて在りし可能性たちの焼きましのようなものであった。だが、確かに世界を生み出すだけのエネルギーがそこに存在していたのだ。
しかし、エンシャント・レヰス『ビームスプリッター』が猟兵に獲得されたことによって、その『意志』と融合することができなかった。
ならば、その新世界創造のエネルギーはどうなるのか。
「|未だ幕は降りていない《The Show Must Go On》……と、ういうことですね」
ルシアナ・フローレス(菫華劇場の支配人・f42641)は生まれることのなかった新世界、その虚にて宙に浮いたエネルギーが『ビームスプリッター』の世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』によって広大無辺な客席と舞台、そして絡繰り仕掛けの舞台装置へと変わるのを見て、恭しく一礼する。
全て理解した。
己がしなければならないこと。
彼女は、舞台の中心に立つ。
スポットライトが照らし、彼女の姿を示す。
「それならば判りました、参りましょう」
そう、彼女は激情の支配人。
ならば、その一礼を持って幕間を示すのだ。
激情に訪れる者たちは皆、日常とは乖離した非日常と非現実を味わう。けれど、それは全てにおいて乖離したものではない。
地続きであることが肝要なのだ。
幕が閉じれば、それぞれの現実に戻らなければならない。
そうした時に乖離したままでは足下がおぼつかない。
帰り道に転ばれるなんて、あってはならない。
だが、浮足立つような感情を得てもらうこともまた支配人として求める所。
そして、夢と幻想を満たすのが己の役目。
一呼吸老いて、幕間は終わり、新たなる物語が紡がれるのを示す。
「大変長らくおまたせいたしました――」
いつもどおりの口上。
見つめるは『幻朧帝イティハーサ』。
迫る矢は物理的な障壁では止められない。ルシアナの胸を穿つ矢。
生命を抉る一撃にルシアナはうめかなかった。
意地でも己は、この物語を紡がなければならない。
「生命削られても、立つか。その行いにどれだけの意味がある」
「簡単なことです。夢と幻想をこの場に満たすこと。皆様に夢と現を想起していただく。それこそが」
ルシアナは『興行魔法』を手繰る。
彼女の身が星の輝を宿す。そして、レイピアを手に取る。
こうなった以上、己もまた演者。
そして、彼女の手繰る魔法は他の猟兵たちにも輝きを宿す。
正しく綺羅星のような輝き。
「舞え、菫華」
菫華乱舞(キンカランブ)。
花吹雪が舞い、花弁は『幻朧帝イティハーサ』を取り囲む。
そして、ルシアナは舞うように『幻朧帝イティハーサ』の放つ矢を躱しながら、レイピアの刺突を繰り出す。
殺陣を思わせる動きだった。
目にも止まらぬ、ではない。目に止まるように動く。
「世界に舞う櫻華と世界を渡った菫華の共演。お楽しみいただけましたでしょうか。たとえ終わりが着たとしても、抱いた夢は別の誰かを導いて、世界は続くのですよ」
ルシアナはレイピアの刀身で風を切って一礼する。
それもまた彼女の矜持。
未だ幕はおりていない。
なら、己たちの敗北もまた決まっていないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
えっ。
開幕雄叫ばないと思ったら、メンヘラ系できましたか!?
ステラさん、それいよいよやべーですから。
って、雄叫んだからやべー度が低くなるわけでもないですよ!?
むしろ初手からのコンボでやべー度上がってますから!
それにしても。
善と悪の間を揺れるって、そんな当たり前のことを言われましても。
どっちにも傾くのが人ですよね。
勇者だって、敵がいるときは頼られて、
敵がいなくなれば脅威って思われるんです。
人ってそんなものです。
ふっ。今日はノインさんの経費で落とした練乳がたくさんあるんです。
いつものわたしとはひと味違いますよ!
ステラさんもサポートしてくれてますし、
久々に演奏しない勇者で一撃行きますよー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
空に浮かぶ星は全て可能性……
つまり、メイド!!
え? |ステラ《星》ですけども?
誰がやべーメイドですか
まったく
|エイル様《主人様》の!
香りがしまぁぁぁすっ!!
毎回初手で叫ぶと思わないことですね!
さて
ノイン様のいう通り
|赤《悪性》と|青《善性》の間を揺れるのが人の良心ならば
それを扱うのは人の想像性
生命の可能性は樹木の枝葉のごとく広がっていく
それを導くは光――ええ、ルクス様のような|理不尽《勇者》なのです!
ルクス様がシリアスで死にかけてます?
もう一回叫びます?え?いらない?
セラフィムっ!
支援をお願いします!
【アウクシリウム・グロウバス】でルクス様の行動を支援
さぁ決めてくださいませ勇者様!
煌めく新世界の虚の空。
そこに浮かぶのは星空。
「空に浮かぶ星は全て可能性……」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は万感の思いを込めてつぶやく。
「つまり、メイド!!」
「じゃないですけど!?」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はシリアスアレルギーであったが、これがそういうあれじゃないということだけはわかっていた。
あれっていうのは、つまりTPO的な意味合いでの時と場合によるっていう。
「え? |ステラ《星》ですけども?」
「そういうんじゃないと思うんですけど。開幕雄叫ばないと思ったら、メンヘラ系できましたか!?」
ポエミィである。
「ステラさん、それいよいよやべーですから」
「誰がやべーメイドですか」
まったく、とステラは憤慨する。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!」
「いえ、叫んだからってやべー度が低くなるわけでもないですよ。むしろ、やばくなってますよ。初手からのコンボでやべーですよ!」
「毎回初手で叫ぶとは思わないことですね!」
恒例になっていたから、つい。
毎度のことかと思っていたので。
しかし、ステラは新世界の虚にて生み出された『スタアラヰトステエジ』を見やる。
広大無辺なる客席と舞台、絡繰り仕掛けの舞台装置。
世界型大魔術であるという、この舞台は新世界を一つ丸ごと創造するエネルギーが用いられているのだという。
ステエジの上にて猟兵たちの想像が煌めくようにして明滅し、実現していく。
「|赤《悪性》と|青《善性》の間を揺れるのが人の良心ならば、それを扱うのは人の想像性」
「だが、人はその良心を得ることで永遠に苦しみ続けることになる。己の為した悪を許せぬという心と、悪に流されることの快楽の間にあることになる。そうした苦しみこそが可能性を生むのならば、骸の海にてあらゆるものが歪むのもまた道理であろう」
『幻朧帝イティハーサ』の言葉にステラは、瞳をユーベルコードに輝かせる。
「そんなの当たり前のことですよ。どっちにも傾くの人ですもん」
勇者として、ルクスは告げる。
必要とされるのは敵がいるときだけ。
いなくなれば必要とされなくなる。必要とされなくなるように戦うのだから、それは自己矛盾だ。
求められたい。必要とされたい。
だが、為すことは己が不要になる世界を求めること。
「人ってそんなものです」
「生命の可能性は樹木の枝葉のごとく広がっていく。それを導くのは光――ええ、ルクス様のような|理不尽《勇者》なのです!」
「だからルビ! でも、経費で落とした練乳で、いつものわたしとは一味違いますよ!」
むん、とルクスは張り切っている。
大暴れする気満々である。
いや、演奏する気満々である。
ステラの耳がやばい。ネガティヴな意味でやばい。鼓膜が保つのか保たないのか。
その瀬戸際でステラは己の想像をもって『興行魔法』を手繰る。
どんなに『幻朧帝イティハーサ』の力が強大であったとしても、それでも負けるつもりなどないのだ。
「『セラフィム』っ!」
想像から生み出された鋼鉄の巨人たちが戦場を疾駆する。
迫る矢の透過は防げない。
生命を削る一撃であるが、ルクスの瞳はユーベルコードに燦然と輝く。
「世界を正しき姿に! それが光の勇者の役目です!」
放つは、世界調律(セカイチョウリツ)。
響き渡る音は、新世界の虚に反響して膨れ上がっていく。
虚は埋めなければならない。
『幻朧帝イティハーサ』が歴史そのものであるというのならば、それもまた過去。過ぎ去りリものであり、今に滲み出すものではないのだとルクスは世界を調律する――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
2P「確かに過去は大事っすけどね。名作リメイクとか最新機種への移植とか」
3P「いやそういう話では」
(無視)さあ、こっからがボス戦です!
行きます!『アルティメット|鎧《アーマー》』『マントヒーローのマント』『果て掴む求道のカギ』も装備した「決戦仕様のユーシアフル装備」ですよ!
【ユーシアのプレイ日記~リズムゲーム2日目】!BGMを流しながら、リズムに乗ってマントを靡かせ相手の攻撃を受け流し……反撃でパンチです!
それだけじゃありません!距離があってもアルティメット鎧の右腕からユーシアバスター(レーザー射撃)だって出ます!
そして最後は……『切り拓く冒険のカギ』を抜き、斬撃でコンボフィニッシュです!
新世界の虚に響き渡る音。
それは世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』を盛り上げるものであった。
そして、同時に『幻朧帝イティハーサ』を追い詰めるものでもあったのだ。彼はたじろぐようにして、その体を揺らす。
新世界を創造し得なかったエネルギーを用いた舞台。
全てはエンシャント・レヰス『ビームスプリッター』の『意志』を獲得できなかったためである。
「儂の世界を創造するエネルギーを利用されるとはな。だが、それも泡沫のようなものだ。その抵抗は時を重ねる事に無意味になっていく。過去は決して変えられぬ。それはこれまでの世界が歩んできた道程と変わらぬのだ」
滅びは必定。
過去は今に滲み出す。
変えられないことだという。
どうあがいても骸の海に沈む運命なのだという。
「確かに過去は大事っすけどね。名作リメイクとか最新機種への移植とか」
「いや、そういう話では」
ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)の2Pと3Pの言葉がステエジの上に響き渡る。
二人の掛け合いはこの際無視する、とユーシアは、びし、と『幻朧帝イティハーサ』を指差す。
「さあ、こっからがボス戦です!」
『スタアラヰトステエジ』は、猟兵の想像力に答えてくれる。
それだけのポテンシャルもあれば、エネルギーもあるのだ。
なら、ユーシアほど適任たる猟兵もいなかっただろう。
「無駄だ。どんな抵抗も、力も無意味だ」
「いいえ、|無限のゆめ《ゲーム》力、甘く見ちゃだめですよ!」
ユーシアとともに煌めくは『興行魔法』。
彼女の身にまとうのは鎧と外套、果て掴む求道のカギ。
究極の力、マントヒーローの万tお、それらは決戦仕様のユーシアフル装備と呼ぶに相応しい姿であった。
「フルパッケージっす! てんこ盛り装備は最終決戦の花形っすからね!」
「さあ、みなさん! まだまだノっていきましょう!」
響き渡るのはBGM。
それもOPソング。
これで燃えない者なんていない。
心から湧き上がるの勇気と夢。相対する『幻朧帝イティハーサ』が生み出した歴史上の強者たちなんて、再生怪人と同じだ。
なら!
「わたし、リズムにノッてコンボを決めましょう!」
「いきますよ! タイミングよくステップを踏んで! からの!」
マントをなびかせ、ユーシアは敵の攻撃を受け流しながら反撃の裏拳を叩き込む。
一撃で消滅する敵。
簡単だ。
なんてことはない。これもまたゲームなのだ。
「これだけじゃあありませんよ! アルティメット鎧、オプションパッケージ、オープン!」
がこ、と鎧の腕部が変形し、開口する。
そう、ユーシアの鎧の腕部は『ユーシアバスター』へと変形するのだ。
放たれたレーザーが敵を一掃し、ユーシアは『幻朧帝イティハーサ』へと迫る。
「これがコンボフィニッシュの一撃です!」
手にしたカギ。
それが闘志と戦意でもって覇気を纏う手甲の一撃。
打ち込まれた一撃は、星の輝きを明滅させながら、遂に『幻朧帝イティハーサ』を打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
綾倉・吉野
これは世界に希望を示し、かの幻朧帝の犠牲者たちの魂を慰撫する為の戦い、
未熟ではありますが、精一杯「魅せさせて」もらうであります!
綾倉吉野……いざ!
矢の軌道を見切り、退魔刀の破魔の力にて払い、あるいは桜花軽機関銃の霊力弾にて迎撃しながら、幻朧帝との距離を詰めるであります!
『ラウム殿の影』も呼び出し、更に……『星幽鎖』でラウム殿の影と私とを繋ぐであります!
後は影に引っ張ってもらって跳んだり、二人で動き間の鎖を上手く幻朧帝に引っ掛けたりして動きを鈍らせて……
!?
退魔刀からマステマ殿の力を感じるであります……これならば!
覚悟するであります、幻朧帝イティハーサ!この一刀で、決めるであります!
世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』の舞台にスポットライトが照らされる。
だが、そこには誰も居ない。
まだ、そこには誰も居ないのだ。スポットライトに照らされた舞台が割れ、せり上がるようにしてスモークが湧き出す。
スモークに照らされる影。
「これは世界に希望を示し、かの幻朧帝の犠牲者たちの魂を慰撫するための戦い」
綾倉・吉野(桜の精の學徒兵・f28002)は學徒兵制帽のつばを傾けながら、スモーク晴れるスポットライトの中心に立っていた。
未だ己は未熟である。
完成したとはい難い。
けれど、それでもやらねばならない。このときのために己は修練を重ねてきたのだ。戦うために、ではない。少しでも誰かの哀しみを減らせることができるように、哀れなる影朧たちが心穏やかに転生できるように。
誰かのためにこそ戦える者に星の光は煌めく。
「精一杯、『魅せさせて』もらうであります! 綾倉・吉野……いざ!」
「どれだけ儂に追いすがるのだとしても、歴史そのものたる重さをお前たちは退けることなどできはすまい」
「いいえ、できるできないのではないのであります。やるのであります!」
その体の内側で、『マステマ』は笑む。
「(ふふ……使いこなして見せてください吉野。この私の力を)」
良い顔をするようになった。
『興行魔法』に後押しサれているとは言え、それでも諸悪の根源たる『幻朧帝イティハーサ』に一歩も退いていないのだ。
たくましさと強さ、そして美しさを磨き上げてきたこれまでの道程が、彼女を前に進ませる。
スポットライトに照らされた吉野の影が伸び、それに引っ張られるようにして彼女は飛ぶようにして『幻朧帝イティハーサ』に迫る。
迫るやを躱し、深く沈むようにして吉野は舞台に降り立つ。
それは助走をつけるような体勢であった。
できている。
敵の攻撃を最低限にしのぎ、己の挙動は素早く。
マステマに教わってきた事の全てがここに結実している。
ならば、今こそ使えるはずだ。己の力を。
「退魔刀……これは、マステマ殿の!」
力を感じる。
「これならば!」
そう、手にした退魔刀はみなぎる力を宿している。
悪魔マステマと己の魔力、霊力を退魔刀に宿し、変形させる。
「覚悟するであります、『幻朧帝イティハーサ』! この一刀で、決めるであります!」
その斬撃は防ぐことのできにぬ斬撃。
打ち込まれた一撃は、その力を封ぜる一撃。
吉野は、今まさに「マステマの刃」(マステマノヤイバ)に到達する。
錬磨の果てにこそ、得られるものがあるというのならば、吉野は正しく今この瞬間に、その刃を得たのだ。
振り下ろした斬撃は『幻朧帝イティハーサ』の体躯を袈裟懸けに斬り裂く。
噴出する白濁する靄。
吉野は見据える。
この歴史という過去から連なる未来は、『幻朧帝イティハーサ』が生み出した侵略新世界とは違う未来を形作るだろうと――。
大成功
🔵🔵🔵
黒沼・藍亜
……もう後がないっすね、幻朧帝?
第一、発言が敗北して死ぬ寸前の悪役みたいな負け惜しみになってきてるっすよ。
『虚兵』を盾にUC発動まで時間稼ぎするっす。特に生命攻撃UCはそっちで受けさせる。生命力はそっちが上だし。
慌てない慌てない。主役は後から来るもんっす
十分時間を稼げればメインのショータイムの幕開けっすよ?
……さあ、あの創造主気取りに、創作のネタになるのはどっちなのかを教えてやれ
各種萌え・ゆるキャラと化した「幻朧帝軍団」を嗾け「本物」の座を賭けた「幻朧帝バトルロイヤル」開幕っすよ!
あ、この子ら同じUCを使うだけじゃなく、概念侵食で幻朧帝という概念自体を侵して段々アンタも「同じもの」にするから
斬撃が『幻朧帝イティハーサ』の体躯を斬り裂く。
噴出する白濁の靄は、血潮か。
歴史そのものであると語る彼の体躯は、半身が剥げ落ちている。その体躯に刻まれた傷跡は浅くはない。
「……もう後がないっすね、幻朧帝?」
「黙れ。儂は歴史そのもの。滅ぼしうることなどできはすまい。その意味を知らぬお前たちが」
その言葉に黒沼・藍亜(に■げ■のUDCエージェント・f26067)は鼻で笑い飛ばした。
確かに歴史そのものを語る『幻朧帝イティハーサ』の力は圧倒的だった。
世界そのものを創造しうる力。
この新世界の虚を見ればわかる。
エンシャント・レヰス『ビームスプリッター』と融合を果たせなかったことにより生み出された虚は、その新世界へとならなかったエネルギーがどれほどのものであるのかを知らしめるものであったからだ。
しかし、そのエネルギーの全ては今、猟兵たちの想像によって『スタアラヰトステエジ』に変わり果てた。
広大無辺の客席、舞台、舞台装置。
それらでもって『幻朧帝イティハーサ』を追い詰めているのだ。
「第一、発言が敗北して死ぬ寸前の悪役みたいな負け惜しみになってきているっすよ」
藍亜の言葉に『幻朧帝イティハーサ』は返す言葉はなかった。
しかし、放たれる矢が飛ぶ。
非物質たる矢は、藍亜が呼び寄せた暗く昏い黒き虚兵を貫き、さらに彼女の生命力を穿つだろう。
痛みに体がきしむ。
けれど、慌てることいはない。
主役は後から来るものなのだ。故に、彼女は集中する。
痛みも苦しみも耐えることができる。
それも全て自分のものであるからだ。
「ほざくな。この程度の力で、この儂を」
「そうっすね。確かに偉人に艦船、お城に戦闘機に動植物。神さえも“それ”からは逃げられなかったんすよ」
「何を言っている」
「簡単な話っす。あんたが創造する力を持っているっていうんなら、ボクたちは想像でもってアンタたちを堕とすんすよ」
瞬間、藍亜の瞳がユーベルコードに輝く。
「結局、どんな神様だって、どんな創造主気取りだって、人は創作のネタにしちまうってものなんですよ!」
ヴァイラスインヴェイジョンM.O.E.(オマエモモエキャラニシテヤロウカ)。
それが藍亜のユーベルコード。
彼女が耐えていたのはこのためである。
『幻朧帝イティハーサ』を元にして模した萌えゆるキャラを出現させる。
SD体型。
「アッハッハッハ! あんだけ威厳たっぷりだったにしては、ずいぶんかわいらしーじゃないっすか!」
それも一体ではない。
百を超えるSD幻朧帝イティハーサ。もとい、イティ君。
それらが軍団となって『幻朧帝イティハーサ』へと殺到するのだ。
「数など、この儂を前にして」
「それだけじゃあないっすよ。これはあんたと全く同じ身体能力、そして同じユーベルコードだけじゃなく、あんたを同じ存在に変質させる概念侵食するっす!」
そう、時間が歴史の味方なのではない。
ここに来て時間こそが藍亜の味方になるのだ。
数と時間。
それによって『幻朧帝イティハーサ』は己が体が徐々に侵食されていくことを感じただろう。
「ゆるキャラに威厳なんてないっす。そんでもって、ゆるキャラ事態の歴史はそう長いものじゃあないでしょう。なら」
歴史という重さによって強大な力を得ていたのならば、その歴史の浅さ故に『幻朧帝イティハーサ』はSDゆるキャラ、イティ君に敗れるほかないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
『――君が作り、君が戦う』
それは、私の原点
私は自分の手で作り出す楽しみを知った
思い描いたものが舞台装置から作り出されるのなら
そうね。現れるのは、きっと私の『セラフィム』
『プラクト』や『GGG』で私を助けてくれた機体
行きましょう『セラフィム』
蘇った強者達と勝負
……これが試合なら、胸が躍るところね
あなどらず、挑むわよ
疾駆し、腕部の弓を展開
相手の数が多い、それなら
放つ矢を水晶花に変えて撃ち抜くわ
圧倒的とも言えた『幻朧帝イティハーサ』の力が減ぜられてきているのを薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は見ただろう。
新世界の虚。
ここに来て『幻朧帝イティハーサ』はエンシャント・レヰス『ビームスプリッター』と融合を果たせなかった弊害が己を追い詰めていることを知っただろう。
ただ一人では為すことのできないこと。
それを猟兵たちは為してきたのだ。
そして、静漓は言葉を紡ぐ。
「――君が作り、君が戦う」
それは彼女の|原点《オリジン》だった。
心に据えたものであった。
それがあるからこそ、今日まで彼女は戦い続けることができた。ただ戦うだけであったのならば、その心は荒んで行くばかりであったことだろう。
けれど、違うのだ。
彼女は、自分の手で作り出す楽しみを知った。
教わったのだ。
「あなたは知らないのでしょうね。歴史ばかりを、可能性ばかりを見つめてきたから」
「可能性こそが生命の輝きだ。それ以上でも以下でもない。それを」
「いいえ。生命は可能性を生み出すだけではないのよ」
静漓は己の想像力の翼を広げる。
思い描いたものが世界型大魔術『スタアラヰトステエジ』の舞台装置から作り出されるのならば、彼女の心象にあるものはただ一つ。
「そうね、きっと来てくれると思っていたわ」
彼女の背後に立つのは体高5m級の鋼鉄の巨人。
それは、『静漓の』『セラフィム』だった。
他の何物でもない。どの世界を見回しても、彼女しか作り得ることのできなかったもの。
猟兵となって多くの事件を解決してきた。
助けてくれたのは、いつだって自分が生み出したものだった。
それが今、舞台装置によって等身大から本来のスケールへとなったのだ。
「いきましょう『セラフィム』」
その言葉とともにアイセンサーが煌めく。
コクピットに乗り込んだ静漓は、息を吸う。吸う。吸って、そして、吐き出す。
アスリートたちは呼吸している。
生きているということは、そういうことだ。息を吸うだけでは生きてはいけない。吐き出さなければならない。
故に彼女は眼の前に居並ぶ歴史上の強者たちの姿を認める。
それらもまた鋼鉄の巨人たちだった。
無数の『熾煌』たち。
「そう、あなたたちなのね。けれど」
静漓は、『幻朧帝イティハーサ』が生み出した強者たちに魂を見なかった。そこにいない。なら、それはもぬけの殻。
ただの外殻をなぞっただけのもの。
「……これが試合なら、胸が踊るところね。でも、そこに魂がないのなら」
負ける理由などない。
静漓は駆け出すようにして『セラフィム』と共に強者たうる8機の『熾煌』へと戦いを挑む。
展開した腕部の装備。
弓へと形を変えた武装につがえられるは光の矢。それは、ユーベルコードの輝きを宿し、推奨の花びらへと姿を変える。
「きれいでしょう。これが、水晶花(スイショウカ)」
放たれる花弁は一気に『熾煌』たちを穿ち、引き裂いて霧散させる。
肉薄するは『幻朧帝イティハーサ』。
追い詰めているのだ。
「あなたが過ちを起こしたのは、それを過去としてしか見ていなかったから。可能性を見ていながら、過去にあったものの再現としか思えなかったから」
同じ名を持ち、同じ姿を持ち、同じ力を持っていても。
それでも、そこに決して同一でないものを感じ取ることのできた静漓だからこそ、紡げる言葉。
その言葉と共に水晶花の花弁は、『幻朧帝イティハーサ』の体躯を斬り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
●歴史の天使
あなたが歴史というのなら
終わりを望むのも道理なのかもしれません
どれだけ瓦礫の上に瓦礫を重ねても
信頼に足る未来など無いのだと
最近はたくさんの音をこえを拾ってしまうから
わたしが同じように思ってしまう日も
そんなに遠くは無いのかもしれません
でもね
見るからに陰気なおじいさん
疲れた目をした、おじいさん
あなたが過去そのものだというのなら
知っていたでしょう
あなたの行いがどんな感情を呼ぶのか
片目は何処かになくしたの
もうだれにも会いたくなんかないの
期待することに
そうしてお腹いっぱいに詰め込まれてきたそれに、疲れてしまったの
……過去の化身でありながら
あなたはその過去でさえ、もう、大事じゃないの?
●トロイメライ
舞台装置はプラネタリウム
ほうき星に乗って
あるいは宇宙TAIYAKIにたべられて
きっとばかばかしいほどの、子どもの夢へとご案内
いつか熱的死を迎えた宇宙に辿り着いたなら
さびしいねって
でもたのしかったねって、笑って
桜の幻想、一つの世界でさえ癒せなかった|歴史《あなた》でも
せめて星を想って眠れるのなら
花弁が『幻朧帝イティハーサ』の体躯を斬り裂く。
噴出する白濁の靄は血液のようであったし、また肉体はすでに滅びかけているようにも思えた。
少なくともリア・アストロロジー(故障中・f35069)にはそう思えたのだ。
「あなたが歴史というのなら、終わりを望むのも道理なのかもしれません」
「歴史は続く。だが、これ以上は必要ない。生命の役割はすでに終わっているのだ。それを」
「ええ、だから」
リアは思う。
それが正しいことなのかどうかはわからないけれど、それでも『幻朧帝イティハーサ』にとって、これ以上生命が可能性を生み出すのは、瓦礫の上に瓦礫を重ねることと同義なのではないかと。
故に信頼にたり得る未来などない。
これ以上はない、と思うのはきっと生命の可能性を認めることができなくなったから。
「わたしが同じように思ってしまう日も、そんなに遠くはないのかもしれません」
それは同じ絶望を辿るという運命だったのかもしれない。
「必ずそれは訪れる。辟易し、疲弊し、摩耗する。時の圧力はたやすくあらゆるものを歪めさせる。そういうものなのだ」
「でもね」
リアは『幻朧帝イティハーサ』を見やる。
疲弊しているのは、これまで紡がれてきた猟兵との戦いがあったからだろう。
剥げ落ちた半身。
その眼窩は失われてしまったからか、それとも、未だ存在し得ない何かなのか。
「あなたが過去そのものだというのなら、知っていたでしょう。あなたの行いがどんな勘定を呼ぶのか」
それは数多の歴史が証明している。
思うことしかできない。
リアにとって、それは悲しいことだったのかもしれない。
歴史そのものと言う『幻朧帝イティハーサ』は疲れ果ててしまっているのかもしれないとリアには感じられた。
過去そのもの。
骸の海そのものと言う彼の言葉は、ひどく悲観的に思えてならなかったのだ。
「あなたはその過去でさえ、もう、大事じゃないの?」
リアの背後で舞台装置が動き出す。
プラネタリウムが光を放ち、新世界の虚に光による星空を映し出す。
星の輝が全て可能性だというのならば、この何も無い虚にさえ可能性が映し出される。生まれだす。
「きらきら光る星のキャンディ。うずまき銀河のロールケーキ。ふかくておおきなミルキーウェイには、きっとおさかなだっておよいでいるわ」
それは宇宙TAIYAKI。
なんとも子供らしい、ばからしいと一蹴されてしまうような夢のような光景。
それは、ほしめぐりのうた(ホシメグリノウタ)。
リアのユーベルコードが煌き、世界を変えていく。
ミニチュアの幻想的天体。
無数に新世界の虚に広がっていくのだ。
「こんな夢でさえ、冷めてしまう。どれだけの熱を生命がもっていても、いずれ冷えてオブリビオンへと変わり果てる。その無意味さを」
「そうね、それはさびしいね」
リアは頷く。
でも、と彼女は笑むのだ。
「でも、たのしかったね」
たとえ生命が尽きて終わりを迎えるのだとしても、そのときには笑ってそういいたい。
たとえ、それが諸悪の根源『幻朧帝イティハーサ』出会っても、そう思ってもらえたら嬉しいと思ってしまう。
「桜の幻想、一つの世界でさえ癒せなかった|歴史《あなた》でも、せめて星を想って眠れるのなら」
それがきっとよいことだとリアは思うのだ。
そうであったのならばいい。
そうであって欲しい。
願いは祈りに昇華する。
世界は、きっとそうやってよいものに変わっていくのだ。己の瞳が見る輝きが色褪せてしまっても。
「儂は」
数多のユーベルコードに寄る消耗が、『幻朧帝イティハーサ』の体躯を遂に追い詰め、その力の残滓、残穢とも言うべき形へと変えていく。
新世界の虚。
その虚の中で、リアは星を想う。
満天の空に浮かぶ、一つ一つが、ほうき星のように何処へでも迎えますようにと祈りながら――。
大成功
🔵🔵🔵