1
納涼のアナグラ

#昭和レトロスチィムパンク怪奇PBW『ヤケアト』

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#昭和レトロスチィムパンク怪奇PBW『ヤケアト』


0




「あー……暑いな……」
 炎天下の中、巻端・磯路は、ぐったりとしながら地上を歩く。
 涼もうにも素寒貧、サテどうしたもんかと思案中。
 ――あ、そうだ。
 良いアイデアが浮かんだ。そうだ、それがいい!


「ってェ……アナグラも充分アチィじゃねぇか! なんなんだよ! 地下だから涼しいかと思ったのに!」
「そりゃァ奇怪絡繰に燃料もある、涼しい場所もあるっちゃあるが、常にひんやりとは限らねェぜ」
 巻端の態度に、ライデンは呆れつつも、涼しい……涼しいか、と口の中でつぶやいた。
「納涼になるかはわからねェが……うんにゃ、そうだな。そろそろ盆祭りの時期だな」
「うん? それが涼しさとどう関係があるんだ」
「まァ聞けや聞けや。アナグラにも盆の概念はあってな。とはいえ区画によって信じてるモノは混沌としているし、どれもこれもというわけではない。でも、場所によっちゃア奇怪絡繰で冷やした水を打ち水にして、それと一緒に祭りをするんだ」
「へェ、そりゃまたいいじゃねェか!」
「さらに! 最近は氷菓子が振る舞われる! アイスもソーダもな! 涼むってンなら、これ以上無ェぜ!」
「おいおい、アナグラってなかなかどうして悪かねェじゃねぇか……」
「手の平がクルックルだな、テメェ……」
 調子の良い巻端、しかし自分の住まいが褒められることは、べつに悪い気はしない雷電ではある。
「へへっ、そうすっと……」
 そうして巻端を案内しようと身を乗り出した。次いで、書類整理をしていた区切・始(緩々悠々・f42846)も顔を覗かせる。
「なにー? お祭り? 始さんも気になる気になる!」
「よしよし、じゃあなァ……」


「……」
 異様なナリの男がいる。包帯まみれ、白髪だが、老人にしては背がしゃんとしている――多くの人は、その顔を見ると視線を避けた。
「おーい! ホータイ男! お菓子寄越せー!」
「……今回きり、な」
 男――黒武者・徹は深くため息をつく、子供のお守りじゃないんだぞ、そうぼやきながら。


tk
 tkです! まだまだ暑い季節ですので、ちょっと時期をずらした納涼シナリオです。
 時間軸は夏真っ盛りのいずこかということにしてください。
 当シナリオでは、NPCのライデン、巻端・磯路、黒武者・徹と接触することが可能です。
 オープニングの通り、アナグラ流の夏を楽しみましょう!
29




第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

イラスト:ヒトリデデキルモン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

江田島・榛名
アドリブなど️⭕️

へぇ、お祭りねぇ……まあ、確かに暑いし、氷菓子とかいいでありますな。

屋台なんかが出てるなら、冷やかしついでに少し回ってみようかな?
まあ、射的はあっても自重するでありますよ。

っと、賑やかでありますなぁって子供たちに囲まれてる黒武者殿に話しかけようかなぁ
まぁ、ここでは……世間話のひとつ、ふたつ、ぽつぽつと、ね?



「へぇ、お祭りねぇ……まぁ、確かに暑いし、氷菓子とか良いでありますな」
 賑わいを見せるアナグラの祭りの中、江田島・榛名(強化人間のガンスリンガー・f43668)は自然と笑みを浮かべていた。
 人間というものは周囲が浮き足立っているとおのれもまたうきうきとしてしまうものかもしれない――足取り軽く、行列に並んで、氷菓子の順番が来るのを待つ。
 明らかに合成の着色料をふんだんにつかったシロップと氷は美味い、このまま射的でも行ってみようか? それは流石に大人気ないか?
 平らげてゴミ捨て場にカラの容器を捨てる。アナグラの中は狭い、清掃については場所によるが徹底されている場合もある。少なくとも、ここはそのようだ。
「さて……うん?」
 子供達の元気な声がする。あーだこーだと一人の大人を引っ張っていた。子供は宝とも言う、それが連れている相手とは――。
「おや、黒武者殿」
「……!」
 名を呼ばれ、黒武者・徹は眉間に皺を寄せた。
「まぁまぁ、そんなに怖い顔をせずに」
「……ホータイ男、この人知り合い?」
「いや……」
 子供達と江田島の視線にうろたえる黒武者は、聞いている印象とはまた随分と違っていて、なんだか面白い。夏の暑さか、それとも場の賑わいがそうさせているのか、こころなしか黒武者の態度は柔らかかった。
「ね! ガンタイのにーちゃん! ホータイ男とお話したいの!?」
「そうでありますなぁ……」
 ちら、と子供から黒武者に視線を寄越せば、気まずそうに目を逸らされる。……成程、子供に弱いという噂は本当のようであった。

 ●
「……で、何を聞きたいんだ」
「世間話でありますよ。お祭りは楽しいでありますか?」
「さあ、な。少なくとも、子供のお守りをするつもりは無かった」
「なのに、面倒を見ている」
 くすくすと笑う江田島に、また渋面を作る黒武者、失敬失敬、と謝罪する。
「……それならば、何故人さらいの手伝いなどをするのでありますか」
「乞われたらする。……」
 そう一言。ああ、油断ならぬ相手ではあるが――その目は確かに揺れていた。
「ま! それではソーダでも酌み交わすでありますか!」
「何故そうなる」
「まぁま、ここは子供の手前……ね?」
 影からひそひそとこちらを見る小さな影に向けて言う。黒武者は盛大にため息をつくと、確かにソーダの容器をかちんと合わせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴生・ナナキ
いつのまにか、黒武者をかこむ子どもの中に、童がひとり紛れ込んでいます
「ナアナアあれ何だ?われたち初めて見るー!」
特に会いに来たわけでなし、ただお祭りの賑やかさにつられてきたら、知った顔がいたので来た童です

お祭りなんてものは初めてでワクワク
おいしそうな食べ物があったら、ふたつ買って、ひとつ渡してあげましょう
「黒のおじさんのぶん!」
だって前に飴をもらったので
ナナキは者や物やモノが集まった恨み深き悪霊、受けたことは忘れないのです。それが例えなんであれ。えっへん



 黒武者・徹がソーダを飲みきって、相手と別れて、それから。
 ――子供達に絡まれ続けている。……振りほどく気が今のところない、というのが事実なのであるが。
「はぁ……こんな落ちぶれたのとと遊んで何が楽しいんだか」
「たのしーぞー? はい、黒のおじさんのぶん!」
 かき氷を差し出されて、ああ、と受け取って、それからその相手を凝視した。
「……お前……」
「ん? どうしたー?」
 ニカッ、と笑ってみせるの鈴生・ナナキ(七宿し・f44279)に、黒武者は渋い顔をする。
「……いや、何でも。……フクロウの使いか?」
「そんなものじゃない! ただ遊びに来ただけだぞ!」
「……そんな馬鹿な……こともあるか……」
 頭を軽く抱えたのち、子供達に絡まれながらついてこい、と一言言った。

 ●
「ナアナアあれ何だ? われたち初めて見るー!」
「射的屋だ。……多少は面白いものを見せてやる」
 そう言って片手で銃を手に取る。そのまま的へ銃を向けた。
「おやっ、お客さん、隻腕かな? もっと的を近づけようか?」
「いや、このままで」
 そしてそのまま引き金に指をかけ――。
「ど真ん中だ!」
「よくわかんないけど、すごーい!」
 パン! という景気の良い音と共に、的の真ん中が撃ち抜かれていた。当たり~!という明るい声、渡されるのは片腕では収まりきらないほどの景品だ。
「……くれてやる」
「え!? いいのか!?」
「ああ」
「んーとんーと……じゃあみんなでわけっこだ! 黒のおじさんももちろんもつんだぞ!」
「……俺も?」
「うむ! こういうのはわけっこするものだ!」
「俺は……」
「いらない、はナシだぞ! われたちは受けたことは忘れない! それがなんであれ! えっへん!」
 そう言われた黒武者は、その顔に柔らかな笑顔をたたえようとして、は、と気を取り直したように首を振る。
「いいか。ナナキ」
「なんだー?」
 景品を他の子供達と分け合う中、声をかけられる。
「俺は、今の平和を壊そうとする人間だ。……いいや、もうすでに壊している人間だ。こうして囲まれる価値はない」
「われたちにそんなことはカンケーない! ……ちょっとカンケーあるかもしれないけれども……」
 ――価値だとか、そんなものを、悲しい基準で決めてほしくない。
「わるいことをしたらわるいことしたなりに、そういうことはきちんと決めてくれるひとがいるはずなのだ! だから……」
「だから、おめおめと首を差し出せと?」
「えっと……」
「すまない。意地悪を言った」
 ぽふ、と鈴生の頭に、黒武者は手を置いた。
「……ああ、その時は――もしかしたら、大人しく『悪かった』と認めるかもな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

羽咲・壱妃
※開眼NG
※見えている描写OK(不思議な力で現実が見えています)

暑いのも寒いのも得意ではないのじゃ。
故、陽がささぬならばと来てみたら…地下でも暑いんじゃなぁ。
地熱かえ?とかく祭りとな?妾、大好きじゃ!
あいす?そーだ?のうのう、これはなんじゃ?
そーだとは口の中もしゅわしゅわするのう!面白い!
妾が知らぬものばかりで楽しいのう。
他に何があるんじゃ?いつも連れてる護衛は今は留守じゃ。
おお、そこの子守り中の男!妾を案内してたもれ。
こういった祭りは初めてでなぁ、妾、わからぬのじゃ。
お腹が減ってのう、美味しいものが食べたのじゃよ。
なあなあ、連れてってたもれ。連れてってたもれ。



 暑いのも、寒いのも、得意ではない。
 地下ならば涼しいだろうか、と来てみれば、そこもそこで暑かった。
 羽咲・壱妃(禍夢孕む巫女姫・f42837)は困り果てながらうろうろと歩いていく、そうすると、涼しい風が祭りの屋台からふうと飛んできた。
「祭だ祭! 楽しまなきゃ損だ損!」
 気前の良い声に、羽咲は顔を明るくして、そこへと向かう。――妾、祭は大好きじゃ!
「アイスにソーダがあるよー! 寄ってらっしゃいみてらっしゃい!」
「あいす? そーだ? のうのう、これはなんじゃ?」
「おう、ソーダははじめてかい? こいつぁ冷たくてうめぇんだ、ま、とりあえずお試しで飲んでみな!」
 手渡されたきんきんに冷えている容器。……いったい、どんな味がするのだろう? 羽咲はそれを口にしてみる。
 ――口の中でしゅわしゅわするのう! 面白い!
 これがそーだ! 覚えた! と、足取り軽く、ソーダの瓶を手にして歩いていく。
 ――他に何があるんじゃ? いつも連れてる護衛は、今は留守じゃ。どうしたものかのう――。

 ●
 子供達がわいわいと楽しんでいる声がする。
 包帯まみれの男がひっぱりだこの状態であった。
「おお、そこの子守り中の男! 妾を案内してたもれ」
「……俺のことか?」
 眉間にこれでもかと皺を寄せる男は、また面倒を見るべき者が増えたのか、と、眉間を揉む。
「……ならこの先に良いふかし芋の屋台がある。……食っていくか」
「おお! おお! ちょうど、お腹が減ってのう、美味しいものが食べたかったのじゃよ!」
「……ついてこい」
 大きなため息の元へついていく。
 ――他にも楽しいものはあるかのう?
 ――アナグラははじめてか。……楽しいかどうかは、この子供らに聞いてくれ。
 ――そうか! なあなあ、連れてってたもれ。連れてってたもれ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

刻谷・楓
邪魔にならないのであればライデンさん達に同行させて貰ってもよろしいでしょうか?
|不審者《黒武者》のウワサも聞きます。護衛がいてもいいでしょう。それに私もまだまだアナグラに来てから日が浅く地理について把握出来てない部分が多いのでお二人と共に一緒に町を散策したいです。

氷菓子が美味しいですね。この町もお祭りも記憶のない私には新鮮ですが、誰かとの食事はいつも懐かしい感じがします。



「おう? ライデン様と一緒に行くのかい? 構わねぇぜ! 良いところ紹介してやるよ!」
 意気揚々、といった様子でライデンは刻谷・楓(楓・f43562)の案内を買って出る。というよりは、刻谷が一緒に行きたいと要望を出したという方が正しいのであるが。アナグラに愛着の強いライデンだ、ウキウキとした様子で歩いている。黒武者の噂の警戒はライデンもしているが、流石に祭で野暮な真似はしないのか、荒くれた話題は聞かない。
「よし! アイスだ!」
 どうだ! と渡された、キンキンに冷やされたガラスの容器にバニラのアイスクリーム。スプーンですくって食べてみればほどよい甘みが染み渡る。
「……美味しいです。この町もお祭りも記憶のない私には新鮮ですが、誰かとの食事は――いつも懐かしい感じがします」
「……そっか……!」
 ライデンは、それは良かった、とはにかんでみせると、刻谷が食べ終わるのを待って、それからその手を引いた。
「いっちばん良いところがある! 来い!」
 手を引かれるがまま、刻谷はライデンに連れられて歩いていく。

 ●
 向かった先は、アナグラの中でも小高い山のようになっている場所だった。祭の様子が一望できて、灯りが暗い中を暖かく照らしているのが見える。
「ライデン様はここが大好きだ。こうしていると、皆があーんなに楽しく過ごしてるのを見れる! ……どうかな、テメーはよ」
「……素敵なところだと存じます」
「こういうところをさー……守っていきたいんだ。ライデン様はよ。天才メカニックとして! ここのアナグラの住人として! ……な!」
「ふふ、私も、それにお力添えできたら」
「本当に、よろしく頼むぜ~?」
 こうして、時間は穏やかに過ぎていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年10月31日


挿絵イラスト