帝都櫻大戦㉕〜狂苦を蝕む骸の底に
「新しい事件を予知したわよ。」
天黒・氷海(ロストヴァンプ・f42561)はいつものバーの中で、ゆったりと猟兵たちを見回しながらよく通る声で告げる。
ただ、今回はいつもと少し様子が異なるようで。
「今回のは…ちょっとばかりやばいかもしれないわね。」
猟兵たちの視線が集まったのを確認してから、咳払いを一つして真剣な目付きへと変える。
「とりあえず説明に移るわ。」
カウンターテーブルの上に小さな陣を描いて、そこに映像を流す──氷海が説明の時にた要する|立体映像《ホログラム》だ。
そこには金色の光を纏う神王サンサーラ──と一体化した、白い煙を纏う老人の姿。
「今回の敵はこいつよ。最近戦ったものもいるだろうこいつ…『神王サンサーラ』を『|幻朧帝イティハーサ《いちばんやばいやつ》』が強引に融合した相手よ。」
幻朧帝イティハーサ。
この世界の根源とは別の場所に位置する、『世界を創造するもの。』
「サンサーラ自体、滅茶苦茶とも言えるほど強い相手だったけれど、今回それよりも酷いわ。なんというか、骸の海そのものみたいな感じだわ。」
相手は世界を作る力を持つ『創造神』であり、そして骸の海を無限に広げる能力を持つ存在の「意志」と「力」を求める猟兵の敵。
「イティハーサ・サンサーラは骸の海とはまた異なる、『サンサーラナラーカ』とかいう世界を作って侵略してくるらしいのよね。で、その奥にいるイティハーサ・サンサーラ……イティサーラでいいわね。イティサーラに殴り込みをかけてもらうわ。」
倒すのか。倒せるのか。方法は存在するのか。それすらわからない、真性のバケモノとでもいうべき存在。
それに、『サンサーラナラーカ』という場所で戦うことも問題だ。
イティサーラが作り出した世界であり、その世界は骸の海に沈んでいる。一歩踏み出すだけで全身が骸の海に汚染されてしまうことだろう。
「こいつを倒す方法は、サンサーラと似たようなものだけれど…少し面倒臭くなって、傷をつけただけじゃ帰らないわ。」
倒す方法はあるらしい。だが、そこに至る道程が決して簡単なもので無いことくらい、想像がつく。
しかし、氷海はそれでも“いつも通り”に猟兵たちに語りかける。
「傷をつければつけるほど、大きく弱体化するから守るより攻めて、積極的に削っていきたいわね。…というか、あれが万全な時のユーベルコードなんか喰らったら、余程の策でも無いと一発アウトだから、気をつけなさいよ?」
正確に情報を伝達しながら、圧倒的な戦力に対して戦意を折らないための、「猟兵」にとって全く必要のない気遣い。
過去を背に、未来を歩むもの。
猟兵たちにとって、そのような気遣いなど不要。そうだろう?
「それと、貴方達にはあまり問題にならないかもしれないけれど──」
「今回は、骸の海に塗れながら戦うことになるわ。当然、その影響ももろに受けてしまう。狂気や苦痛と共に、各人の|内なる力《真の姿》を無理やり引き摺り出された状態での戦闘になるから、一応気にしておきなさいよ。」
骸の海に塗れながら戦う、とのこと。
苦痛や狂気に蝕まれることになるだろうが、猟兵であるならばその程度。
逆に、向こうから自分たちの「真の姿」を引き出してくれるのだ。流ようしない手は無いというものだろう。
現状からして、それを厭っている余裕はない。
「話はここまでにしましょう。今は少しでも時間が惜しい。一刻も早くあのバケモノを討伐して来なさいな。───武運を祈るわよ。」
パンパンと手を叩きながら立ち上がり、バーの一角にグリモアによる門を創造する。
通ずる先は、荒地の広がる広野。その先に、サンサーラナラーカへと通じる歪みが開いている。
足を踏み出し、飛び込むのだ。もはや勝利も敗北も、安寧も破滅すらも手に入らぬ骸に染まってしまう前に。
カスミ
カスミです。サクラミラージュの戦争も第三戦線にまで至り、どこか最終回じみた主要人物&重大設定のオンパレードとなり…正直歴の浅い私としては把握に時間を取られている現状ですが、頑張ってシナリオはお出ししていくつもりです! ですので、シナリオ参加の程、よろしくお願いしますね。
それでは、説明に移らせていただきます。
帝都櫻大戦、戦争シナリオとなっております。
なので、一章完結の短いシナリオとなっております。ご了承ください。
第一章:『イティハーサ・サンサーラ』を倒せ!
骸の海を無限に広げる「神王サンサーラ」に、世界を創造する存在「幻朧帝イティハーサ」が融合した存在……を、骸の海に沈んだ別世界で叩きのめしましょう!
今回は誰の協力も得られませんが、その代わり(?)に骸の海に突入した段階で猟兵達が真の姿を解放します!(強制イベです!)
普段なら厳しい相手も、真の姿を解放した今ならばどうにかなるかもしれません! 囲んでボコってしまいましょう!
プレイングボーナス:苦痛と狂気に耐え、真の姿を晒して戦う。
第1章 ボス戦
『イティハーサ・サンサーラ』
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POW : 天矢『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【大焦熱地獄の炎を纏った天羽々矢】で包囲攻撃する。
SPD : 神鷹『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内を【神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気】で覆い、[神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気]に触れた敵から【生命力や意志の熱】を吸収する。
WIZ : 骸眼『サンサーラナラーカ』
【神王サンサーラの力を再現した姿】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【完全性】に比例し、[完全性]が損なわれると急速に弱体化する。
イラスト:炭水化物
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
生憎、俺の身体は既に骸の海に侵されている
サイバーザナドゥで過去を思い出した際
骸の海を含む違法薬物を大量に投与されちまっているからな
だからこの程度の苦痛、短時間ならどうってことねぇ…!
『零』、俺に力を貸してくれ!(真の姿解放)
短期決戦必至なら、暗殺者の権能より悪魔召喚で戦ったほうがいいか
「高速詠唱、言いくるめ」+指定UCでスパーダ召喚
さらに「魔力溜め」で俺の全魔力をスパーダに注ぎ込み能力を強化し
「属性攻撃(聖)、破魔」の聖なる光を纏わせた紅剣を限度いっぱいまで召喚させた上で
「範囲攻撃、制圧射撃、蹂躙」で周囲の骸の海ごと一掃する勢いで紅剣の雨を降らせるよう命じよう
柳・依月
神王サンサーラ……また会ったと思えば、幻朧帝に強引に融合させられているとは。
かなり手強い相手だが、なんとしても俺たちが止めなくてはな。
怪異としての真の姿を晒すのは気が乗らないが、言っている場合じゃあない。
ぐ、キツイな……怪異である俺が蝕まれるなんてなあ……【呪詛耐性】【環境耐性】【邪心耐性】でなんとか。
違う……俺の力は人を傷つけるためじゃなく、守るためにあるんだ。
お出ましか。
まず化術で俺の偽物を大量に出し、攻撃を撹乱させよう。
俺自身は姿をくらましながらも、禍魂を盾と【精神汚染】の【呪詛】をかけた無数の刀剣に変化させ、奴を集中攻撃する。
(普段の仕込み番傘・呪髪糸使いません)
アドリブ・連携歓迎!
グリモアの門を抜けた先、そして白く異質な“歪み”を抜けた先。
白い煙のような、高密度の“骸の海”が永遠に広がり、そして拡大を続ける異常な世界。
『サンサーラナラーカ』
この世界を構成するのは「過去」と「意志」であり、そのどちらにしても限りがあるように感じられない。
ただ白き、無限の世界にて──幻朧帝イティハーサは佇む。
操る身体は神王サンサーラと自身の融合体。溢れ出る黄金の光は白い霧に阻まれ、光は白く変じて降り注ぐ。
そんな場所に、二人の猟兵が降り立った。
両者共に自らを貫く狂気と苦痛の奔流にその表情を険しくさせる。
──ここが……『サンサーラナラーカ』
森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)は周囲を軽く見回しつつ、警戒を張り巡らせる。
その身を蝕む骸の海の苦痛は如何ともし難いが──それは、そこらの猟兵よりも慣れている。
陽太の体はここにくるより前から骸の海に侵食されている。
サイバーザナドゥ世界にて、骸の海を含む違法薬物を大量に投与されているから。
当時の苦痛も狂気も鮮明に思い出せる故に警戒はより高まるが──
「だからこの程度の苦痛、短時間ならどうってことねぇ…!」
強制的な、“真の姿”への変化。
だが、それに甘んじることはない。
それより先に、自らの奥底にある力の奔流へと手を伸ばすのだ。
「『零』、俺に力を貸してくれ!」
──神王サンサーラ……また会ったと思えば、幻朧帝によって強引に融合させられているとは。
柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・f43523)は苦痛に苛まれつつも呑まれることはなく、ひとつため息をつく。
「怪異としての姿を晒すのは気が乗らないが、言っている場合じゃあない。」
骸の海に全方位をくまなく囲まれている以上侵食は必至であり、依月を構成する姿が少しずつ剥がれ落ち始めている。
現れ出ようとしているのはある怪異の姿。人ならざる姿。
「ぐ、キツイな……怪異である俺が蝕まれるなんてなあ……」
骸の海は心を蝕む。
自身を制御する理性が削られていくのがわかる。
より、本質に近い姿へ削られるにつれてそれは大きくなっていく。
人間を殺せと|こえ《幻聴》がきこえる
──違う。俺の力は人を傷つけるためじゃなく、守るためにあるんだ。
両雄は蝕まれつつも、自らの意思を強く保つ。
侵食を、狂気を拒み正しい未来を見ることができる者たち。
「そのような存在は、不要なのだ。」
「…お出ましか」
ゆらり、と。
二人の前に、イティハーサ・サンサーラが現れる。
彼の周囲にはより濃度の高い骸の海が満ち、それはサンサーラの力が故に限りはない。
「未来など不要。生命など不要。可能性など害悪でしかないのだ。」
陽太も、依月も、その言葉に何も返さない。
今は時間が惜しいこともある。だが、それよりも──
話し合いすら意味を為さない、完全に相反する敵であると心のどこかで認識してしまったから。
陽太は──否、零は持ち得る手札で最良の結果を齎すもののみを選択し、その力を振るう。
躊躇もない。どうせこの場所は敵が作り出した世界であり、存在そのものが自分たちの意義に反するから。
「顕現せよ。」
わずか一言、高速詠唱により唱えられた召喚の呪文。
魔法陣もなく、空間を引き裂くように現れた悪魔「スパーダ」は同じく骸の海に侵されつつ、零の背後に備える。
「解き放て、蹂躙せよ…!」
スパーダに命令を下すと、スパーダはその権能を振るう。
空中に現れた千を優に超える紅き短剣は、降り注ぐ光など存在しない故にただ紅い線だけを残して音もなく飛び交う。
敵だけを襲う広範囲攻撃が向かう先はイティハーサしか存在しない。
骸の海を斬り裂き抉り、イティハーサを貫かんと襲いかかる。
「この程度の力など。我が世界を、骸の海を、貫けるはずがないのだ。」
その言葉は一部正しく、イティハーサを守る高密度の骸の海を貫通するに至ってはいないが、零の狙いはそこではない。
未だ小さいこの世界を広げさせる前に、世界を構成する骸の海を一掃するための紅剣の雨。いくら源が無限であろうと、イティハーサはこれに対処しないわけにはいかないのだ。
その瞬間、必ず隙が生まれる───
「ユーベルコード…面倒だが、それだけだ。そこに意味など存在しない。」
そしてその隙を待ち続けた存在が居る。
鬱陶しげに骸の海の放出を強め、その代わりに自らの守りを薄くするイティハーサ。
それを狙うのは───依月。
自らの姿をくらまし、自らの呪いを研ぎ澄まし続け、この瞬間に意識を集中し続けたのだ。
白い霧と骸の海に隠された、無数の刃は気づかれぬままにイティハーサの全方位を完全に囲い込み──放たれる。
「ぬ…この刃は…!」
「はっ、届くのか? お前が言った意味の無い刃だろ?」
依月は嗤う。この刃が届くと確信して。
この一撃で決め切れるわけではないが、相手が完全でなければそれだけ力は削げるのだ。
依月が放った千を越える刃は骸の海に阻まれるが、その中の一本が音もなくイティハーサの脇腹を切り裂いた。
結果として、サンサーラという肉体に刻まれた縛りに引き摺られてイティハーサの力が大きく封じられる。
「…これが狙いか、『第六猟兵』。 だが、サンサーラと違い儂はそれだけでは倒せぬぞ。」
「知っているさ。 力さえ削げれば、それでいいんだよ。」
依月は単独で戦っているわけではない。
共に戦う仲間も、自身が退場した後を背負う後続もいる。
ならば、自らの力で倒し切る必要はないのだ。
戦況は大きく猟兵たちの方へと傾く──
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクサンドロ・ロッソ
【アドリブ歓迎】
サンサーラナラーカへと踏み込む
「世界を造る、か」
(気に入らないな。我が母と同等の事を成すほどの力がありながら、行うことが侵略など…)
もはやそれは神に対する侮辱に他ならない
骸の海の影響が肉体を蝕む
絶え間ない苦痛と魔力を抑え込む術式が強制的に解除されるのを感じる
(元より痛みで膝を折るほど弱くはない
そしてここは異世界だ、被害を気にする必要もない
ならば──少しばかり本気を出しても問題ないな)
久方ぶりの【全力】に、自然と口元が弧を描いた
枷を失い、溢れ出す魔力が髪や目、世界すらも深紅に染める
「さあ、全力で相手をしてやろう!」
その膨大な魔力を体内で圧縮し、イティサーラに【龍の吐息】を放った
白き世界に、また新たな水音が響く。
骸の海に哀れな獲物が落ちた音? 否。
それは猟兵が一歩、未来へと踏み出した音だ。
滅びを導く過去の化身を滅ぼす為に。
アレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)は大鎌を軽々と担ぎ、骸の海に閉ざされた世界を認識する。
その瞬間、アレクサンドロの肉体を、魔力を、精神を、骸の海は蝕み始める。
耐えることのない苦しみと、精神を揺さぶって剥ぎ取ってしまうような狂気の奔流。
だがそれにも、冷静な表情は崩さない。
少し険しくなった目つきで見据える先に、幻朧帝イティハーサは存在する。
その身はまさしく幻や朧のように揺らいでは、骸の海に溶け込むように白く濁る。
イティハーサが発する根源の気配も、無限とも思える骸の海も。
ここは全てが猟兵にとっての“敵”であり、許してはならない存在だ。
「世界を造る、か。」
だが、アレクサンドロにとってはまた別の写り方をする。
アレクサンドロは半神として、力というものを深く識る存在。
だからこそ──アレクサンドロですら及ばぬ、世界を創造する力を未来ではなく過去のために、平和ではなく侵略のために使うことが許せないのだ。
もはや、神に対する侮辱に他ならないのだ、と。
骸の海の侵食が続き、アレクサンドロの肉体は侵されていく。
だが、それは敵にとって良いこととは限らない。
アレクサンドロが意識せずとも自らの大きすぎる力を封じる、枷とも言える術式すらも、剥がれ落ちてゆくのだから。
──元より痛みで膝を折るほど弱くはない。 そしてここは異世界だ、被害を気にする必要もない。
肉体の苦痛も、精神の苦痛も、長い時の中で幾度となく味わってきた。
膝をついたことも、心が折れたこともある。
だから、|この程度《骸の海に精神を蝕まれる程度》で折れることなどない。
──ならば、少しばかり本気を出しても問題ないな。
普段は出せない、出せるはずもない──久方ぶりの“全力”に、自然と口元が弧を描く。
骸の海が剥がした封印は、アレクサンドロの魔力を解き放つ。
|世《・》|界《・》|が《・》|紅《・》|に《・》|染《・》|ま《・》|る《・》。
それは比喩でも強調でもなく、文字通りの光景だ。
アレクサンドロから溢れ出した紅色の魔力は髪や瞳を真紅に染め上げ、迸り出た余波だけで世界を染め上げた。それだけの話。
「さあ、全力で相手をしてやろう!」
イティハーサは、解いてはならない封印を解いたのだ。
軽く魔力を集中させ、5つに纏めた魔力弾を放てば──骸の海は弾け飛ぶ。
指向性を持たせ一点に集中したならば、万物を貫く破滅の光線となる。
その攻撃は無限のリソースを僅かに削るだけ──なのだが、それ以上の意味がある。
「なんだというのだ、神などと、無限などと…!」
「無限の力を持ってしても、その身に縛りがあるのだろう? 源に限りなどなくとも、その出力には限りがある。 俺の力に限界はあるが、今の俺は貴様より出力が高い──それだけだ!」
イティハーサが放つ、無数の天羽々矢でさえも──紅を帯びた無数の魔力弾が一つ残らず叩き落としていく。
戦場の主導権を完全に握ったのはアレクサンドロだ。
そして、アレクサンドロはこれまでの攻撃とは比較にならない魔力を込め上げ、圧縮を重ねていく。
深く息を吸い込み、骸の海の混じる吐息に魔力を混ぜ合わせ、神としての威厳をそのまま叩きつけるような──圧倒的な一撃を。
【|竜の吐息《ソフィオ・デル・ドラーゴ》】────!!
魔力を束ねて放った紅の光線はイティハーサの右腕を貫き、広がり続ける世界すらも抉り、紅い残光をその瞳に刻みつける。
「──避けたか。これ以上は自分でも制御できるか分からんな。味方を巻き込みかねん。………潮時か。」
アレクサンドロは戦場を離脱する。
|白《・》|か《・》|っ《・》|た《・》|世《・》|界《・》を残して。
イティハーサの力は大きく削がれた。
彼の身に課された縛りも相まって、果たした役割は非常に大きいものと言えるだろう。
だが、戦いは未だ終わっていない。
王手をかけたのは事実だが、まだ“詰み”ではないのだから。
大成功
🔵🔵🔵
山吹・夕凪
骸の海より染み出す狂苦
魂さえ苛むような悲しさは、壊れてしまった誰かの祈りなのか
けれど私は未来を、『さいわい』を、手放せません
求める想いにて、今の私の限界突破
至る真の姿は夜の姫君の如き、艶やかな黒髪と白い肌の姿
変わらない瑠璃の双眸を以て、静かに幻朧帝を見つめ
「過去を使い、世界を紡ぐと仰る」
迫る八寒地獄の冷気は、浄化を乗せた『涙切』の刀身を振るい、風を操る術にて起こした旋風で打ち払い
「その過去は貴方のものではない。誰かの残した思い、願い、魂。それを狂わせる事は許せません」
UC一閃
刃と共に、これほどに世界の脅威となる者は瑠璃の炎が裁く
「貴方だけの大切なものなど、過去より紡いだ世界にはないでしょうに」
永久に広がり、限りはなく、慈悲もなく。
立ち入るものを許しはせず、外に或るものを許しはせず。
須くを侵略し、過去のものとする為に。生命を消し去る為に。
サンサーラナラーカとは──全てを飲み込む意思そのもの。
骸の海より出でし全てがここに。
山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)はそんな地獄へと踏み出し、骸の海にその身を浸す。
──骸の海より染み出す狂苦。魂さえ苛むような悲しさは、壊れてしまった誰かの祈りなのか。
立ち入った過去ではない異物を骸の海が許すことはなく、その身を過去に変えようと、自らと同質のものに変えようと、夕凪の身を、心を、蝕んでいく。
そこには遥かに大きい狂気があった。遥かに大きい苦痛があった。
普通に生きていては味わう事はないと断言できるほどの狂苦が夕凪を蹂躙する。
だが、夕凪はその表情を僅かに険しくしただけ。
──けれど私は未来を、『さいわい』を、手放せません。
夕凪の抱える意思より、覚悟より、小さき痛みなど意味はない。
もはや自分を縛るが如くに強固な意思で、柔らかな、涼やかな表情を浮かべる。
骸の海は尚も侵食を続け、夕凪の表面を押し流す。
心の表層を剥がした先に現れるのは──ほんの少しだけ雰囲気の変わった、しかし瞳に灯る火はむしろ強く輝く姫君の如き姿。
白かった髪は艶やかな黒に染まり、絹のような白い肌はそのままに。
以前と変わらない瑠璃の双眸は、ただ視線の先に居る幻朧帝のみを見つめて。
「過去を使い、世界を紡ぐと仰る。」
「あぁ、|この世界《サンサーラナラーカ》はもはや過去そのもの。如何な過去をも繋ぎ、如何な未来も必要としない世界。」
老練な顔立ちから放たれる言葉。その眼窩に光は無く、全てを飲み込む闇を湛えて。
だが、一つだけ明らかなこと。
幻朧帝イティハーサの言葉の先に、自らが望む『さいわい』は存在しない。
世界の敵、猟兵の敵である以前に、夕凪自身の敵なのだ。
目を細め、長い息を吐き出して、刀を握る。
迫り来る八寒地獄の冷気は、握り締めた刀を軽く振るい纏わせた旋風で打ち払う。
「その過去は貴方のものではない。誰かの残した思い、願い、魂。それを狂わせる事は許せません。」
息を吐き切って、小さく息を吸う。その度に骸の海を吸い込むことになるが、もはや痛いと感じることすら無い程の“集中”。
心を研ぎ澄まし、魂を研ぎ澄まし──ただ一つ考えることは、目の前の相手を斬ることのみ。
抜き身の刀を構え──動く。
気配もなく、ただ研ぎ澄ました魂を以て──
その一撃を、魂を踏み躙るが如く傲慢を撒くイティハーサに見切れるものか。
反応すらも許さない、神速の一太刀。其の手に持つは、退魔神器『涙切』。
黒き太刀筋は瑠璃の炎を纏い、蒼く美しい残光を残して──振り抜かれる。
「ぐ、何が…」
『さいわい』へ向かう、それだけを胸に刀を振るうが故の、迷いの無さ。
自らをどのような苦痛の中においても構わないという覚悟。
それはひとえにたった一つの大切なものを渇望するが為の、遥か固い意思。
「貴方だけの大切なものなど、過去より紡いだ世界にはないでしょうに。」
夕凪の声が、イティハーサの背後で響く。
イティハーサの目論見など、最終の目標など、真の意味で知る事はない。
だがそれは骸の海に漂ってなどいないと、断言できるから。
キン、と音を鳴らして刀を仕舞えば、瑠璃の炎は勢いを増して燃え盛る──
大成功
🔵🔵🔵
ゼロ・ブランク
アドリブ連携大歓迎!
真の姿:うさ耳と白狐の尻尾を生やし、勾玉を沢山着けた姿
[元気]で笑顔をいつも以上に絶やさず、苦痛も忘れたように
『未来など不要』かぁ~~そんな事言ったって、アタシの過去は忘れちゃったし?未来と可能性しかないのがアタシなんだよねぇ~~♪
(真の姿を解放、勾玉を見て、ふと先日夢で見た両親と思われる姿を思い出す)
力を貸してくれるんだねぇ!ありがとう!
よーし、イティハーサ・サンサーラ、覚悟ぉ!!
UC発動、めちゃくちゃ強そうな龍を描いて敵へ飛ばすよ
【真の姿】だから、いつもより手の込んだ絵が仕上がっちゃった!
[魔力供給]で龍に力を与えて炎を吐かせたり、敵に巻き付かせて攻撃させるねぇ!
気が遠くなるほどに広く、深く、白い世界。
無限に広がり続け、しかしてその本質は過去の集積。“骸の海”。
故にそこには過去しか存在せず、未来の存在を許す事はない。
その世界を統べる存在──イティハーサ・サンサーラはただ骸の海を放出し続け、それらを紡ぎ合わせて世界を構築していく。
そうして作られた世界──サンサーラナラーカは他の世界を喰らうのだ。
だが、そのような存在は──猟兵にとって、世界にとって、害悪でしかない。
今もまた一歩、新たな猟兵が狂苦に満ちたこの世界へと足を踏み出す──
白き世界にほんのわずか、楽しげな気配。
「ここが、サンサーラナラーカかぁ〜」
能天気な声でそう呟くのは、ゼロ・ブランク(スリーオーブラック・f42919)だ。
この狂気と苦痛に満ちたこの世界で尚、楽しげな口調を、表情を、崩さない。
勿論、苦しくはある。心を掻き回すような狂気も、全身を蝕まれ剥がされるような苦痛も、全て正しく受けている。
だが、その笑顔は強き意思で保たれる。何故かと聞かれても、そこに複雑な理由もないのだろう。
「『未来など不要』かぁ〜〜そんなこと言ったって、アタシの過去は忘れちゃったし? 未来と可能性しかないのがアタシなんだよねぇ〜〜♪」
遂に、骸の海によって“真の姿”を引き摺り出される。
ゼロをそのまま表したような兎耳がひょこと生え、ふわりと白狐の尾が伸びる。
勾玉をたくさんつけて、神秘的なオーラを纏っている姿。
これが、ゼロの“真の姿”。
この姿に変じる瞬間ふと思い出したのは、夢で見た男女のこと。
ひとつの勾玉を手に、少し見つめた後握りしめて明るい声をあげる。
「力を貸してくれるんだねぇ! ありがとう!」
勾玉が手の中で淡く光る。
ゼロは真剣な表情をつくり、イティハーサに向かう。
「よーし、イティハーサ・サンサーラ、覚悟ぉ!!」
イティハーサが放つ殺気が、骸の海が、より一層濃くなる。
それでもその殺気に押される事はなく、ゼロは自らのスプレー缶を手に動き出す。
イティハーサは天に向け一本の矢を放つと、それは無数に分裂して天羽々矢となり上空からゼロを差し貫かんと降り注ぐ。
だが──それよりもゼロの方が早かった。
ゼロはスプレー缶を振るうと普段以上の精巧さで空中に絵を描いて。
右へ、左へ、尽きせぬ塗料と想像力を胸に、瞬く間にその絵は完成する。
それは、今にも動き出しそうなほどの迫力を持った、“龍”。
そしてそれは、比喩ではなかったらしい。
「動き出しちゃえ、──ドラゴンちゃんっ!!」
絵に描いた龍は動き出し、天羽々矢が降り注ぐ一瞬前に──ゼロを守ように立ち塞がる。
そして黒くいかにも硬そうな鱗が貫かれることはなく、全ての矢を防ぎ切ったのだ。
「よーし、次はこっちの番! いっけ〜〜!!」
ゼロは龍の頭に飛び乗って空を舞う。
龍角に手を添え魔力を供給すれば、幾つも打ち出されるのは全てを焼き焦がす豪炎だ。
もう既に、その力にかなりの制限を受けているイティハーサは無限の力あれどそれを振るうことは叶わず──炎を真っ向から浴びてその身にかなりのダメージを刻みつけた。
この攻撃でイティハーサが消える事はないが、それでもその身に課せられた縛りにより力はさらに封じられることになるだろう。
「ふ〜…まだまだいくよ、ドラゴンちゃn!!」
骸の海に蝕まれ続けているため疲れは蓄積するが、ここで攻撃を止めるほどゼロは弱くない。
龍の攻撃は翳りを見せず、その咆哮が響き渡るたびに、その爆炎が轟くたびに、イティハーサを追い詰める──
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
痛い
苦しい
ソレがどうした
これで止められると?
たかが世界全てがオレの敵になった程度で?
「安い絶望で世界だなイティハーサ。
アンタの台詞から察するに
要するは36世界を自分ではどうにも出来なかったんだろ?
笑わせる!そんな覚悟のない奴がオレに勝てるかよ!!」
[気合い]と[根性]で苦痛と狂気をねじ伏せて駆け抜ける
UCを発動して無限の世界を容易く突破する
天矢をそれ以上の光焔で焼却する
止まらない
誰にも止められない
真なる無限は此処に在り
「終わりだイティハーサ!
超必殺!インフィニティ・オーバー・ブレイカー!!」
無限集束した光焔を拳に宿して全力で殴り抜く
「アンタの創る世界はもう不要だ。
骸の海でキッチリ眠れ!」
悍ましいまでの骸の海に沈んだ世界。
それはさまざまな過去を紡ぎ合わせた継ぎ接ぎの世界。
そこに足を踏み入れる“過去ならざるもの”の存在を許す事はなく、ただこの毒壺に落ちた獲物を侵し染める『サンサーラナラーカ』
──そんな世界に、自らの意思で一歩を踏み出す男がいる。
──猟兵ですら気軽に触れられぬこの世界へ、望み望まれて白い骸を掻き分け進むヒーローがいる。
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は骸の海へと進み出す。
湧き出る無限の覚悟と自信をもって。
骸の海はたとえ清導といえど、ヒーローといえど、その身を蝕まれない訳はない。
濁流のような狂気と自分の姿を溶かされ剥がされるような耐え難い痛みは慈悲もなく降り注ぐ。
だがしかし、如何なる痛みも、如何なる苦しみも。
清導にとっては超えたことのある壁でしかない。
かつてはその絶望に屈し、しかし乗り越えてきた壁の一つ。
今更そんな壁が現れたところで──清導が止まる理由の一つにすらなりはしないのだ。
痛い。 苦しい。 ……なんて、ソレがどうした。
これで止められると?
たかが世界全てがオレの敵になった程度で?
笑わせてくれるな、と言わんばかりに清導は、少し離れた位置にいる幻朧帝イティハーサに気持ちの籠った声をかける。それはもはや叫びのようで。
「安い絶望で世界だなイティハーサ。
アンタの台詞華ら察するに、要するは36世界を自分ではどうにもできなかったんだろ?
笑わせる! そんな覚悟のない奴がオレに勝てるかよ!!」
「猟兵ひとりの分際で何を抜かすかと思えば。そんなに絶望が見たいならば見せてやるさ。儂の侵略は始まったばかりなのだからな。」
完全悪とは、このことを言うのだろう。
そして悪とは即ち、正義に倒される運命にあるものだ。
清導は赤い光を纏い駆け抜ける。
苦痛や狂気すら跳ね除けて、大地を踏み締め一直線に。
骸の海は清導の“真の姿”を引き摺り出すが、それよりも早く、己に秘めた力へと清導は手を伸ばす。
無限の世界があろうと、骸の海があろうと──今の清導には関係のない話。
無限に対するはこちらも無限。
放たれ降り注ぐ天羽々矢でさえも、迸る光焔に焼却されその一本すら届く事はない。
止まらない。誰にも止められない。
真なる無限は此処に在り、と紛い物を操るイティハーサに叩きつけるように。
「終わりだイティハーサ!
超必殺! インフィニティ・オーバー・ブレイカーッ!!!」
無限に収束する光焔。それが宿るは清導の拳。
なんの小細工も要さない、真っ向から最強の一撃を叩きつける。
「アンタの創る世界はもう不要だ。
骸の海でキッチリ眠れ!」
たったの一発。
それでも、そこに込められた破壊力は尋常ではなく。
もはや清導の一撃はイティハーサが防げる、耐えられるようなシロモノでは無いのだ。
骸の海も、イティハーサごと貫いてその大部分を消滅させた。
サンサーラナラーカも、構成要素が骸に還ったことで崩壊を始めている。
もう目的は果たされた。こんな世界に用はない。
破壊し尽くされた空っぽの世界を残し──清導はこの世界を去った。
大成功
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