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帝都櫻大戰㉕〜おもかげのうた

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第三戦線 #幻朧帝イティハーサ #神王サンサーラ

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 その世界は既に、過去で満たされていた。
 金色に輝く神王サンサーラの威光。それにより広がり続ける骸の海は、今や世界の隅々にまで行き渡っている。
 具現化した骸の海とも呼ぶべきこの世界で、何の痛痒も感じず動く者がただ一人だけいた。
 幻朧帝イティハーサ。
 エンシェント・レヰスたる神王サンサーラと融合し、意志を獲得した者。広がり続ける侵略世界『サンサーラナーカ』を作り出した者。
 サンサーラの威光を背から溢れさせ、イティハーサは口角を僅かに持ち上げた。
「来るならば来るがよい、六番目の猟兵達よ」
 灰に染まった手が、無造作に骸の海へ潜る。
「もう未来はいらぬ……過去の断片で全てを作り出せると、その身に教えてやろう」
 イティハーサの手が、骸の海から一体のオブリビオンを引きずり出した。

「皆さん、お集まり頂きありがとうございます」
 神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は、グリモアベースに集まった猟兵達へそう言って一礼した。
「幻朧帝イティハーサがエンシェント・レヰスをはじめとした存在と融合し、幾つもの侵略新世界を創り出した事は、ご存知かと思います」
 イティハーサは創造した新世界で、他世界への侵略を企てている。ここで完全に止めなければ、たとえ帝都櫻大戰に勝利したとしても、他世界が危機に晒される事になるだろう。
「皆さんに行って頂きたいのは、イティハーサが神王サンサーラと融合する事で創られた、サンサーラナーカという世界です」
 神王サンサーラの圧倒的な威光により、サンサーラナーカは完全に骸の海で満たされている。猟兵といえども、その中で戦うのは容易ではない。
「皆さんがサンサーラナーカへ到着すると、イティハーサは骸の海から強力なオブリビオンを引きずり出します」
 形を持った過去から生み出されるそれは、相対する猟兵の『過去の姿』そのものだという。しかし、外見や思考こそ猟兵にとっては『過去の自分』だが、戦闘能力は現在の猟兵自身にも引けを取らない。
「この『過去の自分』を倒すか、消滅させない限り、イティハーサに攻撃が届く事はありません」
 向き合わなければならない『過去の自分』。その性質は、恐らく猟兵達自身がよく知っている事だろう。その性格や、思考の癖なども。そこに弱点を見出す事が出来れば、戦いは猟兵にとって有利になる。
「辛い思いをされる方も、いらっしゃると思います。それでも……お願い致します」
 この世界を止めて下さい。
 薙人はそう言って、グリモアを掌に浮かべた。


牧瀬花奈女
 こんにちは。牧瀬花奈女です。このシナリオは一章で完結する戦争シナリオとなります。断章無し・オープニング公開直後からプレイングを受け付けます。

●プレイングボーナス
 自身の「過去の姿」を描写し、これに打ち勝つ/過去の自分の性格や思考の裏をかく。

●その他
 完結を優先して執筆を行います。そのため、タイミングによってはプレイングに問題が無くとも不採用となってしまう場合がございます。ご了承下さい。
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第1章 ボス戦 『イティハーサ・サンサーラ』

POW   :    天矢『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【大焦熱地獄の炎を纏った天羽々矢】で包囲攻撃する。
SPD   :    神鷹『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内を【神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気】で覆い、[神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気]に触れた敵から【生命力や意志の熱】を吸収する。
WIZ   :    骸眼『サンサーラナラーカ』
【神王サンサーラの力を再現した姿】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【完全性】に比例し、[完全性]が損なわれると急速に弱体化する。

イラスト:炭水化物

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

現れる過去の自分とやらは、アレしかねぇ
暗殺者“null”…無感情で冷酷非道、任務とあらば誰でも殺す暗殺者だ
(※nullの容姿は陽太真の姿イラスト参照)

奴は暗殺者だ
常に俺の背後を、死角を取ろうと動く
ならば俺自身も「オーラ防御」で護りを固めて大やけど覚悟で挑む
「高速詠唱、言いくるめ」+指定UCでアスモデウス召喚
nullが俺の背後を取った瞬間、俺とnull、そして幻朧帝を巻き込むように「属性攻撃(炎)、範囲攻撃」の獄炎を吐くよう命じる
少しでも傷を負えば完全性とやらは損なわれるはず
その隙を狙って二槍伸長「ランスチャージ、暗殺」でnullと幻朧帝、双方の喉元を貫いてやらあ!




 足が灰の過去を踏む。
 森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)がサンサーラナーカへ降り立つと、イティハーサは無造作に骸の海へ手を突っ込んだ。
 現れる過去の自分とやらは、アレしかねぇ。
 陽太の予想通り、引きずり出されたのは“null”――全身を黒で包み、顔を白一色のマスケラで覆った青年だった。両手には、現在の陽太が持つものと同じ、濃紺と淡紅の槍を握っている。
「よう。また誰かを殺して来たのか?」
 nullの持つ槍の穂先から滴る赤を見て、陽太は努めて軽い調子で呼び掛けた。nullは暗殺者だ。感情を持たず、任務とあらば誰でも殺す。
 nullからの答えは無い。陽太もそれ以上は何も言わず、素早く防御用のオーラを身にまとった。
 先に動いたのは、果たしてどちらであったか。暗殺者としての性質通り、nullは陽太の背後を取るべく骸の海を駆ける。陽太はイティハーサへ向かって走り、銃型のダイモンデバイスの引き金を絞った。
 高速で為された詠唱により現れるのは、悪魔アスモデウスだ。獄炎の悪魔を前に、陽太は軽く唇の端を持ち上げる。
「さあ……俺もろともやっちまえ!」
 そう叫んだ時、nullは陽太の背後へ回っていた。更にその後ろには、イティハーサがいる。炎の力を感じ取って、イティハーサが金色にきらめくサンサーラの姿へと変化した。
 瞬き一度の後、アスモデウスの獄炎が勢い良く噴き出す。炎はnullのみならず、真正面にいた陽太をも巻き込んで焦がして行った。
 頬や耳が熱でぴりりと痛むが、元より大火傷覚悟の作戦だ。人工皮膚の表面が焦げるのも構わず、陽太は体ごと後ろを振り返る。
 焼かれたnullの向こうに、未だ金色に輝き続けるイティハーサがいた。nullが存在している以上、イティハーサには攻撃が届かない。陽太は左右の手に握った槍をぐいと前方へ突き出した。
「二人まとめて貫いてやらあ!」
 二色の槍がnullの喉を突く。獄炎に焼かれたnullは、それがとどめとなって消滅する。
 勢いを殺さぬまま突き進む槍が、イティハーサの喉元へ突き立った。

成功 🔵​🔵​🔴​

布原・理馮
新たな未来など必要ない
予兆で確かにそう言ってたな、幻朧帝の野郎は

冗談じゃない
俺の歴史は俺が紡ぐものだ
他の奴らだって同じだ
生命を燃やす権利を奪おうってんなら
侵略新世界ごと此処で殺してやるよ、幻朧帝

過去:
14〜15歳の少年の姿
今より幾分か背が低く
瞳は諦めに満ちている

曾祖父さんが消えて何年もの間
自暴自棄だった頃の俺
にも関わらず、剣術の修行に明け暮れてたな

…ああ、そうだ。諦めきれなかったんだろ?
お前は立ち上がる。未来でな
それを証明してやるよ

過去の俺は捨て身で剣を振るうだけ
妖としての特性は使い切れていない
のらりくらりと『受け流し』て一閃
さて、道が開いたな

UC発動し、ボスを斬りに行く
未来の為。憧れを掴む為




 新たな未来など必要ない。
 多くの猟兵が視た予兆の中で、幻朧帝はそう言っていた。
「……冗談じゃない」
 布原・理馮(行雲流水・f44508)は吐き捨てるように言葉を紡ぐ。
「俺の歴史は俺が紡ぐものだ。他の奴らだって同じだ」
 幻朧帝は何ひとつ答える事無く、無造作に骸の海からオブリビオンを引きずり出した。
 生命を燃やす権利を奪おうってんなら。
 理馮は斬霊刀を鞘から抜き放つ。曾祖父から受け継いだその一振りを、背をまっすぐに伸ばして構えた。
「侵略新世界ごと此処で殺してやるよ、幻朧帝」
 理馮の前に現れたのは、少年だった頃の自分だ。歳の頃は十四、五といったところか。今より幾分か背が低い。緩やかに瞬きをする灰眼は、諦念の色を宿していた。
 力ある妖怪として名を馳せた曾祖父が消え、一族が衰退の一途を辿っていた時。もはや生き延びるだけで精一杯で、自分もいずれは消滅すると静かに確信を抱いていた時の理馮だ。
 けれども過去の理馮の手には、剣がある。自暴自棄であったにも関わらず、剣術の修行に明け暮れていたのだ。
「……ああ、そうだ。諦めきれなかったんだろ?」
 過去の己に理馮は呼び掛ける。答えは無い。けれど、灰の瞳に僅かな揺らぎが生まれた。
「お前は立ち上がる。未来でな」
 それを証明してやるよ。
 一歩を踏み出した理馮に、過去の理馮が突き進む。理馮はその一突きを、ひらと身を傾けるだけで回避した。
 過去の理馮は捨て身で剣を振るうだけで、妖としての特性は使い切れていない。それを知っていれば、現在の理馮が過去を凌駕するのは何も難しい事ではなかった。
 何度目かの斬撃を受け流し、隙を見せたところで腹を一閃する。少年の理馮は、音も無く過去へ還って行った。
「さて、道が開いたな」
 ゆらりと理馮の周囲で空気が揺らぐ。瞬きを一度するだけの時間が過ぎた後、理馮の体は幻影をまとっていた。
 幻朧帝が背負う、サンサーラの威光が急速に輝きを失う。
 今、かの敵の目に、この白い髪は、灰の目は、どのように映っているのか。理馮に分かるのは、それが幻朧帝にとって『死を齎す存在』という事だけだ。
 だがそれでいい。幻影に身を包んだ理馮を見て、幻朧帝は命の危険を感じ取ったのだろう。それが克服されるまで、ユーベルコードが飛んで来る事は無い。
 理馮は黒い着物の裾が乱れるのも構わず、幻朧帝の元へと走った。
 未来の為。憧れを掴む為。
 実体なきものをも切る刀は、確かに幻朧帝の腕を裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山吹・夕凪
向き合うは骸の海に映る過去の私
私と等しい力を持ち、思考と剣術を持つ
難敵だからこそ、だからこそです
全ては過去でよいと言うイティハーサに、未来へと進み続ける命の輝きを示しましょう

私の過去の姿
穏やかながら揺れない芯を持ち、懸待表裏の刀で挑むもの
まるで水面に映る影と斬り合うものですが、互いに心眼にて身体だけではなく気や感情の揺れを見切りつつ、互いに同じUCで斬り結びます

攻防にて刹那に綻んだ急所を見抜くのはどちらが先か
ですが、過去は前へと進まぬもの
剣戟を重ねる中、限界突破を遂げた私がこの瞬間に成長し、『過去の私の剣』を越えて見せましょう

八寒地獄の冷気に耐え、途中では止められない高速連撃の隙に破邪の一閃を




 骸の海に、過去の自分が映っている。山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)が碧眼を瞬かせる間に、イティハーサはそこから過去の夕凪を引きずり出した。
 雪のように白い髪も、瑠璃めいた色の瞳も、携える黒刀さえも。過去の夕凪は鏡で映したかのように、今の姿とよく似ていた。
 自分と等しい力を持ち、思考と剣術を操る。難敵だと悟りながらも、夕凪の心は揺らぐ事は無かった。
 難敵。だからこそ、なのだ。
「全ては過去でよい……あなたはそう言いましたね」
 夕凪が呼び掛けるのは、過去の自分ではなくイティハーサだ。背から零れる金色の光にも怯まず、夕凪は黒刀の鞘を払う。
「あなたに、未来へと進み続ける命の輝きを示しましょう」
 言葉が終わるのと、二人の夕凪が動き出すのとは、ほぼ同時だった。
 向き合う己は、穏やかな面差しながらも、揺れない芯を瞳に映し出している。敵の攻めに応じて、自在に攻撃を変えて来る相手だと、夕凪は理解していた。
 それはさながら、水面に映る影と斬り合うようなもの。二人の夕凪は、互いに心眼で相手の動きを捉え、不可視の剣撃で斬り結んだ。
 瑠璃の瞳が、過去の自分をしかと見据える。身体だけではなく、気や感情の揺れすらも見切ろうとする夕凪の視界の端で、イティハーサの持つ弓から神鷹が飛び立った。
 呼吸を一つする間に、戦場が地獄の如き冷気に包まれる。夕凪は白い息を吐き、凍て付くような冷たさに耐えた。
 冷え切った空間で、黒刀同士が冴え冴えとした音を響かせる。斬撃を打ち返した時の、ほんの僅かな隙を見付けたのは、現在の夕凪だった。
「……過去は前へと進まぬもの」
 意志の熱を奪われながらも、夕凪は前へと踏み込む。その時、夕凪の力は定められた限界を突破していた。
 高速の攻撃が、不可視の斬撃となって過去の夕凪を斬り捨てる。止まらぬ連撃は、その奥にいるイティハーサへと向かった。
「これが、今この瞬間に成長した私です」
 生命力を奪われようとも、最後の一振りを終えるまで刃の攻撃が止む事は無い。
 濡れたかのように艷やかな黒が、前へと進む夕凪の一撃をイティハーサへ叩き込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・シェフィールド
アドリブ歓迎!

わー、キラキラしてる…かわいい…
さすがわたし、国民的スタアにしてトップアイドルは戦場でも健在ですね。
歌と演奏で味方を鼓舞し、敵を討ち払う。
…なんて厄介なんでしょうか、過去の自分…

でも、過去の自分と現在の自分の決定的な違い。
それは実戦で使ったことがない、まだ昨日編み出したばかりのこの技です!

シュッツエンゲルを纏い、破魔の歌を歌いながら包囲を突破、純白の翼を羽ばたかせて神王の手の届く距離まで一気に接近。
【断帝櫻花剣】を発動し、至近距離の空中から悪しき者を断罪する長大な桜色の光の聖剣を引き抜き、そのまま過去のわたしごと一刀両断します。
「愛の心で、悪しき者を断つ!」
さようなら、幻朧帝!




 骸の海より引きずり出されたフィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)の過去の姿は、星のようなきらめきをまとって見えた。今よりも幼いながらも、その歌と演奏は天賦の才を感じさせる。
「さすがわたし、国民的スタアにしてトップアイドルは、戦場でも健在ですね」
 髪に咲く彼岸桜の花弁がはらりと落ちる様を見て、フィーナは満面に笑みを浮かべた。
 歌と演奏で味方を鼓舞し、敵を討ち払う。それは今のフィーナと変わらぬ戦い方だった。
「……なんて厄介なんでしょうか、過去の自分……」
 ふっと、またたき一度の間だけ、青い瞳からきらめきが失せる。
 それでも今のフィーナには、過去の自分との決定的な違いが存在するのだ。
「まだ実戦で使ったことがない、この技で挑みます!」
 言うが早いか、フィーナはマルチドローンプレートを宙に舞わせた。数十枚に及ぶそれは、翼を羽ばたかせたフィーナを守るべく共に上空へと飛び立つ。
 破魔の力を載せた静かな歌が、骸の海の表面を撫でる。過去のフィーナがそれに反応して、純白の翼を動かした。瞬き一度の後に、フィーナは過去の自分と向き合う。
 脇をすり抜けようとしても、過去のフィーナはオリジナルデバイスの弦を爪弾きされを許さない。
 過去の自分を倒すか消滅させない限り、幻朧帝に攻撃が届く事は無い。グリモア猟兵の説明が脳裏に蘇る。
「仕方ありません……!」
 右手を挙げたフィーナのすぐ傍で、ふわと空間が揺らいだ。そこから呼び出された桜色の光を放つ聖剣を引き抜き、過去の自分へと振るう。
 両断された過去のフィーナが骸の海へと落ち行くと、幻朧帝が弓弦を鳴らした。呼吸を一つするいとまも無く、地獄の炎を纏った矢が無数に飛んで来る。
 幾本かの矢に翼を焼かれながらも、フィーナは幻朧帝へ肉薄した。今一度、悪しき者を断罪する長大な剣を振り上げる。
「愛の心で、悪しき者を断つ!」
 さようなら、幻朧帝。
 淡紅の刃は、サンサーラの威光ごと幻朧帝を斬り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜刀神・鏡介
他者との強制的な融合……。どうも嫌な事を思い出すけれど、それを考えている状況じゃない
全力を出して、この戦いに勝つ

神刀の封印を解除。神気の力で身体能力を強化
過去の俺は14~5歳くらい。刀を習い始めて2,3年って所だな

イティハーサから放たれる矢を躱し、同時に過去の俺の剣戟を刀で受け流して
折を見て、受けそこねたフリをして神刀を手放し
そのまま利剣に手をかけ、居合いの構え

だが昔の俺は斬り込んでくる――澪式・漆の型【居待】。先手を取って斬り倒し
当時の俺は純粋というか単純というか。簡単な手にもよく引っかかったのさ

神刀を拾いなおしたら改めて
此方に向かってくる矢を斬撃波で弾きながらイティハーサの元へ斬り込もう




 神王サンサーラと融合した幻朧帝イティハーサを前にして、夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は軽く眉を寄せた。
 他者との強制的な融合。それは、鏡介の中のあまり触れたくない記憶を刺激する。
 しかし今は、それを考えている状況ではない。イティハーサが骸の海から過去の己を引きずり出す間に、鏡介は白鞘から神刀を解放した。溢れる神気が鏡介の身体能力を引き上げる。
「全力を出して、この戦いに勝つ」
 宣言するように告げた鏡介の前に、過去の鏡介が道を塞ぐが如く立った。
 年齢は十四、五歳くらい。刀を習い始めて二、三年って所だな。
 瞬き一度の間に、鏡介は過去の自分をそう判断する。イティハーサの持つ弓が弦を鳴らし、それを合図として過去の鏡介が突き進んで来た。
 地獄の炎を纏う矢をかわしつつ、鏡介は過去の自分の剣を神刀で受け流す。複雑に飛翔する矢を全て避ける事は出来なかったが、それでも構わなかった。
「なるほど。膂力は今の俺と変わりないな」
 刃が刃の上を滑る音を聞きながら、鏡介は独り言つ。
 避け損ねた火矢を払い落としたところに、過去の鏡介が突きを放った。鏡介はそれを刀の平で迎え――そして、受け切れなかったふりをして神刀を手放す。骸の海が飛沫を上げて、神刀が沈んだ。
 短く息を吐き、もう一振りの佩刀である利剣の柄に手を掛ける。流れるように居合の構えを取って、過去の自分を見据えた。
 今の鏡介ならば、二振り目の刀を最初から警戒していたろう。だが、いま相対しているのは、未だ少年と呼ばれる年頃の鏡介だ。その頃の自分の思考の動きを、取るであろう行動を、鏡介は知っている。
 過去の鏡介は迷い無くこちらの射程に踏み込み、斬り込んで来た。その刹那、淡紅の刃が閃く。
 ユーベルコヲドによる先制攻撃。過去の鏡介は、それを認識出来たろうか。胴を真横に斬られた少年は、大きく体を傾がせ、そうして骸の海へ溶けるように消えた。
「昔の俺は純粋というか単純というか。簡単な手にもよく引っかかったのさ」
 利剣を鞘に戻し、神刀を拾い上げる間にも、イティハーサからの矢の射出は続いている。鏡介は神刀を振るい、斬撃波で矢を弾きながらイティハーサへ迫った。
 近接攻撃が届く位置まで到達すると、神刀をもう一度鞘へ収める。今度は森羅万象の悉くを斬る刃が、横薙ぎに振るわれた。
 神刀の刃は因果と法則を越え――イティハーサの弓手を深く斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

過去に戻ってはならない

其処を越えたからこそ今を生きる己を
自分で否定してどうする
そう思うから

「俺は抗う」
短く相棒に告げる
「過去は選ばない」
過去だけなら絶対に今の俺はいない!

力強い頷き一つ
武器を合わせ真の姿を解放し
過去と向き合おう

幾度か戦った事もあるけど
今度は特に闇の濃い俺
強いね
激烈な闇手と黒影剣
どちらも奥義だ

躱し飛び退り同じ大鎌を構えて一閃
黒の俺は防御をせず踏み込んでくる

「…ああ、そうだったな」

相打ちで殺し殺され楽に逝きたい
ただ暗い虚無
けど
「俺は生きる!」
闇手の毒が蝕むけど
大鎌で過去の喉を掻き切って
「生きて未来へ往く!」

陸井もほぼ同時に脱したね
傷だらけでも誇らかな顔を見て

同時にイティハーサへ!

サンサーラは支配を嫌がってた
この有様は絶対本意じゃない
だからその意思を
俺達は世界と同時に最後に護る!

空中機動で肉薄して
「陸井!避けて!」
念の為叫び
UC終焉光詠唱

これは始まれば絶対止まらない

例え俺が死んでも!
158秒間貴様を!骸の海も!全てを消滅させる!
「消えて!無くなれ!」


凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と

過去は乗り越えてくものだ

こうしてどこかで
過去が進む足を掴むことがある
それでも俺は止まるつもりはない

「俺は進む」
時人に頷きを返して
「だから邪魔はさせない」
背に負う文字にかけて
強大な敵を此処で滅ぼす為に

時人と武器を合わせて
真の姿を開放
俺は俺自身を乗り越える

向こうが少し心配だけど
今は自分の過去に集中だ
過去の自分であれば
敵を確殺する為に肉薄してくる
「やっぱり近接を狙うよな」
他を護る為の捨身の戦い方
だけど今の俺は
「傷ついても、必ず帰る為に」
その覚悟を以て自分を越え
頭へ弾丸を叩き込む

時人も無茶したらしいけど無事だな
武器を構えなおしてイティハーサへ

今までの戦場でサンサーラの事も見ていた
だからこそ、こんなことは止める
前へ進み、銃弾を敵へ叩き込みながら
「解ってる!合わせるぞ!」
【戦文字「縛」】で無数の文字を空中へ
そのままイティハーサへ縛り付ける

相棒の攻撃で消滅しても
文字を何度も叩き込んで動かさない
この世界を止め、この戦争を終わらせる為に
「此処でお前は終わりだ!イティハーサ!」




 骸の海に立つイティハーサは、既に幾つもの傷を負っていた。これまで刃を交えた猟兵達の戦いぶりがよく分かる姿で、イティハーサは唇を歪める。
「まだ分からぬか。最早、未来など必要ないと、過去だけで十分であると、まだ理解せぬか」
 過去に戻ってはならない。
 葛城・時人(光望護花・f35294)の碧眼が、鋭い光を宿す。其処を越えたからこそ、時人は今を生きている。未来を、生命を否定する事は、その己を自分で否定する事に他ならない。握り締める大鎌の長柄が、掌の熱を吸って冷たさを失う。
 過去は乗り越えてくものだ。
 凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)もまた、イティハーサの言葉に心で否を唱える。過去が、進む足を掴む事はある。それでも陸井は止まるつもりなど無い。『護』の字を刻んだガンナイフの撃鉄を起こす音が、骸の海に満たされた世界で大きく響いた。
「俺は抗う」
 時人は、隣に並び立つ相棒へ短く告げる。
「俺は進む」
 返す陸井の言葉も、また端的だ。だからこそ、その芯に秘められた決意の重みが、互いの奥底で響き合う。
「過去は選ばない」
 ――過去だけなら絶対に今の俺はいない!
 陸井と目線を合わせ、時人は力強く頷いた。
「だから邪魔はさせない」
 背に負う文字にかけて、強大な敵を此処で滅ぼす為に。
 陸井が時人へ頷きを返す。それを合図として、二人は互いの武器を合わせて打ち鳴らした。瞬き一度の後、二人の姿は全盛期の能力者としてのものへと変化する。
 イティハーサはもはや何も言わず、骸の海から二体のオブリビオンを引きずり出した。それは、時人と陸井がこの場で討ち果たすべきもの。過去の自分自身だった。
 時人は過去と向き合い、大鎌を構える。過去の己と戦った事は幾度かあるが、今回は特に闇が濃い。
 同じ大鎌を持つ過去の時人が、足元からするりと影を伸ばした。腕の形をした影は前進する現在の時人の足首を捕え、引き裂いた箇所から毒を流し込む。
 強いね。
 闇をまとった大鎌の一撃を切っ先で受け止め、時人は内心で呟いた。繰り出された二つの攻撃は、どちらも奥義と呼ばれる領域に達している。
 相棒の身を案じながらも、陸井は敢えてそこから目線を外した。今は、自分の過去に集中すべきだ。
 過去の自分であれば、敵を確殺する為に肉薄して来る。陸井の予想通り、過去の陸井は骸の海を蹴って飛沫を上げ、距離を詰めにかかった。
「やっぱり近接を狙うよな」
 ガンナイフの刃を突き出し、陸井は過去の己の刃を受け止める。
 腕の姿をした影が、再び時人の足を狙う。今度は避け切るだけの余裕があった。飛び退ってからまた距離を詰め、過去の己を大鎌の刃で一閃する。過去の、黒そのもののような時人は、傷に頓着しない。それどころか一切の防御をせずに踏み込んで来る。
「……ああ、そうだったな」
 時人の意識が、ほんのいっとき過去へ沈んだ。
 相打ちで殺し殺され楽に逝きたい。ただ暗い虚無を、かつての時人は抱いていた。
 がつん、と刃同士を打ち合わせたのは陸井だ。他を護る為の捨身の戦い方。自分が負う傷の事など、思考の隅にも置いていない。昔の自分はそうだったと、陸井は眼鏡の奥で僅かに目を細める。
 だけど今の俺は。ガンナイフの銃口が、過去の陸井の頭部を指す。
 がんと、時人の大鎌が過去の自分の刃を振り払ったのはその時だ。
「俺は生きる!」
 影の腕によりもたらされた毒に蝕まれながらも、時人の動きは止まらない。
「生きて未来へ往く!」
 大鎌が過去の喉を掻き切り、無へと還す。
「傷ついても、必ず帰る為に」
 陸井は狙いをぴたりと定めたまま、ガンナイフの引き金に指をかけた。
 覚悟が引き金を絞り、過去の陸井の頭に弾丸を叩き込む。
 陸井の過去に穴が開き、傾いだ体が空へ溶けるように消えた。
 ほぼ同時に過去の自分を討った二人は、素早く顔を見合わせる。二人とも、無傷とは言い難い。けれどその誇らかな表情を見て、互いの無事を確信した。
 武器を構え直し、共にイティハーサの元へと駆ける。
 サンサーラが支配を拒んでいた事を、時人は覚えていた。この有様は絶対に本意ではないと芯から思える。
 陸井も、これまでの戦場でサンサーラの事も見ていた。
 だからこそ、こんなことは止める。
 ガンナイフを持つ手を前へと突き出し、立て続けに引き金を絞る。銃撃がイティハーサの肩を貫いた。
「その意思を、俺達は世界と同時に最後に護る!」
 イティハーサの後ろで揺らめくサンサーラへ向けて叫び、時人は跳躍する。
「陸井! 避けて!」
「解ってる! 合わせるぞ!」
 念の為にと上げた声に、相棒は揺らぎなど感じさせない言葉で応じてくれた。
 陸井が矢立から筆を引き抜き、戦文字を空中へ無数に記す。『縛』と書かれたその文字は、イティハーサに取り付くや動く意思を急速に奪って行った。
 時人が大鎌をイティハーサに向けて突き出す。激烈な創世光そのものが溢れるまで、瞬き一度の時間も要さない。
 強過ぎる光が、触れた部分から全てを消し去って行く。止まらない光に戦文字を掻き消されても、陸井はすぐさま新たな文字を書き上げた。
「貴様を! 骸の海も! 全てを消滅させる!」
 この光は、たとえ時人が今ここで命を落とそうとも止まる事は無い。サンサーラの力を再現しようとも、神鷹を羽ばたかせようとも、激しい光が全てを呑んで行く。
「此処でお前は終わりだ! イティハーサ!」
 この世界を止め、この戦争を終わらせる為に。
 陸井はイティハーサへ戦文字を叩き付ける。
「消えて! 無くなれ!」
 時人が叫ぶと同時、最後の光がイティハーサに直撃した。きらめく威光ごとその姿が消し飛び、骸の海が抉り取られる。
 二人が長い呼吸を二度するだけの間、静寂が辺りを満たした。イティハーサの姿は何処にも無く、骸の海はその嵩を減らしている。
 何ものも存在しない、静かな世界。それは、この侵略新世界へ一つの楔が打ち込まれた証だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月22日


挿絵イラスト