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前略、今すぐ水遊びをしにドラゴンの住処に来い!

#ゴッドゲームオンライン #ノベル #猟兵達の夏休み2024

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ミノア・ラビリンスドラゴン




 ゴッドゲームオンライン。
 娯楽が次々と規制され、管理社会と化した統制機構の人間が、自由を求めてやってくる仮想空間。それがこの世界であり、人々はアバターを用いて、最終クエスト『ゴッドゲームオンライン』をクリアするのが目的であるという。
 なぜ、今更そんな話をするかと言われれば、今回の物語の主役と言ってもいい一般プレイヤーたちは、そんな当たり前のチュートリアルからさほど時間がたっていない程の、ほぼ始めたてに毛が生えた程度だからだ。
 少女の名前は、玉城凛音。ゴッドゲームオンラインでは『リオン』というアバターを用いて三人組のパーティを率いることとなった。
 彼らは、初めて受けたクエストでいきなりバグプロトコルに遭遇するという不幸に見舞われたのだが、猟兵たちの助けもあって、今も元気にゲームを続けている。
 苦難を乗り越えたことでより仲良しになったし、それに、妙な縁もできた。
 今回もその一つで……リオン一行は、猟兵にしてドラゴンプロトコル──つまり、ダンジョンマスターの一角であるミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)に目を付けられ……もとい、気に入られたのが発端であった。
「ここで、間違いないんだよね……」
 夏の暑い日に、三人はミノアから招待状を受けることとなった。彼女のダンジョンへと、遊びに来いという挑戦状であった。
 異様に厳かな扉を、三人は緊張の面持ちで開くと、そこには──、
 眩いばかりのだだっ広いスパリゾートが広がっていた。
 入り組んだウォータースライダーに、謎の南国植物が生い茂った、それはリゾートという他にないが、判定はどうやらダンジョン。
『オーッホッホッホ、よくぞ招待に応じてくださいましたわ。来なければどうしようかと不安になっていたところでしてよー、オホホホ』
 夏の眩しい空と思いきや、よく磨かれた石のような壁に精巧に描かれた絵であることに感心していると、ダンジョンマスターのミノアの声が響く。
『このドラゴンプロトコル直々の、激レアも激レアイベントは、超特別仕様……現在の皆様にはちょ~っと難しいと思いますが、その分、お宝も経験値もザックザクですわ。しかも、これは秘密なのですけれど、更衣室に用意した水着を着用すれば、驚きのバフが乗って、あ、もしかして頑張れば行けるのでは~などと夢を抱いてしまう事、請け合いでしょう。さあ、我が城を、夏を、存分に堪能なさって。そして、我が前に立ちはだかるのですわ~、オーホホホ!』
 優雅に、そしてちょっと早口に概要を述べていくと、ミノアの声は遠ざかっていく。
「うーん、明らかに私たちのレベルを超えてるところだと思うんだけどな……」
「まあ、ええんちゃう? 折角の招待、受けへんかったらあのドラゴンちゃんかわいそうやん」
「めっちゃノリノリだったもんなぁ……えと、それで、着替える?」
 リオン達は、ミノアのテンションに若干引いていたものの、クエスト自体に興味が無い訳ではない。
 レアイベントには変わりないし、それに、いつもの使い古し装備ではなく、コスチュームも配布されると聞いてはそわそわする気持ちを抑えきれない。
 そして、ややあって、
「……ちょっと、大胆かも」
「なんや、けっこうシャレきいとるやん。どうよ、サバミソ少年」
「いや、その……お二人とも、よくお似合いです。うん」
 某有名RPGを思い起こさせるような、ビキニアーマーを彷彿とさせる光沢のあるトップスにスカートアーマーを思わせるフリルが可愛らしいリオンに、こちらも古の僧侶の装束を思わせるタバードに似たデザインを入れた水着がすらりとした痩身によく似合うネモ。
 それに比べればサバミソはシンプルなハーパンに「Time of The Sage」と描かれているだけで、直訳すると下世話な事にか思い浮かばないので閉口していた。
 そして、健康的な色香を放つようになった二人のパーティーメンバーに目が移らぬよう、誠実なサバミソは精一杯目を泳がせていた。
 まあ、そんなことは置いておいて。華やかな水着姿に、武器を持つ姿は大変シュールではあったものの、その性能はどうやら本当にガチらしく、こと、今回の為に私財を擲ったリゾートダンジョンには覿面の効果を発揮した。
「すごい、いつもの装備より、ずっと強い!」
「あかん、リオンが力に溺れそうや。限定装備にNTRや」
「リオンに変なこと教えないでくれよ。頼むからさ」
「はー、お尻にばっか目が行っとるくせに、よう言うわ」
「……そりゃ、後衛だもん」
「……えっち」
 という甘酸っぱいやり取りのみに聞こえるかもしれないが、その戦いは、珍しく調整に力を入れたお陰もあってか、ミノアの想定通りに、初心者にはやや歯ごたえのあるものであるらしく、窮地を迎えながらも、なんとか頑張れなくもないという、目先のニンジンを思わせる絶妙なものがあった。
 幸いにして、一部屋ごとに休憩ポイントもあってか、ついつい三人は頑張って躍起になっていた。
 そんな姿を、ミノアは玉座の間からアイスクリーム片手に愉悦のスタイルで見守っていた。
「頑張ってくださいましー! 危ない! そこですわー!」
 いや、余裕を演じていたのもほんのひと時で、いつしか身を乗り出し、傍目にはご無体に見えるような過激な水着からなんかこう、こぼしそうになるような前かがみで、小さな英雄たちの活劇を応援していた。
 クエストボスとして作られたミノアは、いつの日か討伐されてしまうのが宿命。
 それゆえに、プレイヤーの成長には目を見張らずにはいられないのである。
 興奮のあまり、うっかり、ひじ掛けに仕込んでおいた禁断の奥の手カード【黄金瞳の白銀龍】を発現させてしまう。
「いけいけーっ!」
『御意に』
「へ?」
 召喚した後に、血の気が引いた。自分が持ち得る現状最強モンスター、輝ける統制者。あんなもの、初心者にはひとたまりもない。
「やっちまいましたわー!!
 リソース供給を切ったので10秒! 10秒だけ生き残ってくださいましー!!」
 頭を抱えるミノアは、縋るような目線をモニタに向けるが、やはりリオン達の攻撃ではびくともしない。
 即時撤退を選んだのは賢いが、最早逃げられないだろう。どうする……そこで取った三人の行動にミノアははっとする。
 ウォータースライダーだった。それは言うなれば、ダンジョンの構造物。
 破壊不能とは言わないが、ミノアに守られていると言っても過言ではない。
「申し訳ありませんでしたわ~!! つい興が乗ってしまい……これはせめてもの補填ですわ~!!!」
 息も絶え絶え、装備もぼろぼろの状態でスライダーを滑り終えた三人を待ち受けていたのはミノアの姿だった。
 家主が直接顔を出しに来たとあらば、それは心からの謝意だったのだろうと理解した三人は、顔を見合わせて力が抜けたように破顔した。
 そして、クリア報酬にいくらか色を付けられた物品の数々を受け取り、健闘を分かち合うのであった。
 その様子にミノアも満足。
 が、
「新しい水着は皆様方に似合うよう、わたくし自身がデザインした特注品でしてよ~!!」
「いや、元のやつで……これはちょっと、その……」
「ウチはええけど、こんなん着たら、サバミソくん、辛抱たまらんもんな~」
「ノーコメントで」
 過激な(抑えた表現)水着だけは、なぜか不評だったという。なぜだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年09月17日


挿絵イラスト