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Flower Fortune Telling

#アックス&ウィザーズ #夕狩こあら #ゴブリン #ゴブリンキング #精霊花で占いを

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「アックス&ウィザーズのある場所に、ある特別な日にしか咲かない『虹色の精霊花』があるって知ってる?」
 続々とグリモアベースに集まる猟兵の精悍を花の咲みに迎えるニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)。彼女がいつになく昂奮している様に見えるのは、間違いない――花に関する予知を得たからだ。
 花屋を営むニコリネは幾許にも興奮して、つい早口になりそうな処を抑えて語り、
「深い森を越えた先、支流の谷あいに群生する『虹色の精霊花』は、満月の夜、一際さやかな月光を浴びて咲くと言われているの」
 また件の花は、春を迎える前に風の精霊の祝福を――つまり温かい東風が谷あいに吹かねば蕾も膨らまず、毎年必ず咲くとは限らない。その為、今年の開花日を予知できた事は、彼女にとってとても嬉しい事だった。
 唯、ひとつ懸念があるとは、猟兵に声を掛けた事からも判る。
 彼女は広げた地図を指先で擦って、
「でもね、この『虹色の精霊花』が咲く谷間に行くには危険があって、ゴブリン達が棲む森を抜ける他ないの」
 と、問題の森を示して見せる。
「勿論、気配を殺して通り抜ける事も出来るけど、音や匂いに敏感な彼等が何事もなく縄張りを通してくれるとは思えなくて……接触や戦闘の準備はしていった方が良いと思うの」
 緑色の肌をした亜人型モンスター、ゴブリン。
 成長が早く、異種族間での交配による高い繁殖力を持つ彼等は、個体としての戦闘力は低いとはいえ、とにかく数が多いので注意が必要だ。
「厳しい冬の寒さに耐え、繁殖の季節を迎えようとしているゴブリンは中々に厄介だし、彼等を束ねるボス、この森の王たるゴブリンキングともなれば、猟兵と互角か、それ以上の強さを持つ筈」
 高い知能とカリスマ性で数多のゴブリン達を束ねるゴブリンの王。
 王の存在するゴブリンの群れは、急激に規模を拡大する傾向にあり、時には騎士団等の戦力を擁する大都市ですら深刻な被害を被る事がある。
「それでも皆には、この森を越えた先にある『虹色の精霊花』の美しさを見て欲しいの」
 ニコリネが語気を強くするのは、その美しさだけに拠らず。
 七色の光に揺れる精霊花は、摘んだ者の心によって色が変わり、この時の色で特別な『花占い』が出来ると言うのだ。
 更に二人で同時に触って摘めば、お互いの相性まで占えるとならば、ニコリネに限らず気になるという者は居るだろう。
「月光の下に咲く精霊花は、眺めるだけで穏かな気持ちになれるけど、命が息吹く春に運勢を占って標を得るのも良いし、二人で摘めば絆だって深まる筈!」
 幽玄の谷間に行くには長い道のりを歩かねばならないが、労力に見合う感動が必ず其処にある。虹色に煌く優艶の花は、秘境を往き奇跡を求める冒険者の期待に、きっと応えてくれるだろう。
 ニコリネはわくわくと語り終えると、ここに花型のグリモアを召喚し、
「アックス&ウィザーズにテレポートします。心躍る冒険に行きましょう!」
 準備はいい? と白磁の繊手を差し伸べた。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、アックス&ウィザーズで強力なモンスター集団を作ったオブリビオンに決戦を挑み、集団ごと討伐する、荒野の決戦シナリオです。
 純戦闘シナリオになりますので、ご自身の戦い方やユーベルコードを存分に、格好良く、プレイングにぶつけて頂ければ幸いです。

●戦場の情報
 アックス&ウィザーズの辺境、人里離れた森を抜けて幽谷へ向います。
 戦場となる森には猟兵の他に人や妖精の類は居ません。

●第一章(集団戦)
 鬱蒼の森で『ゴブリン』の群れと戦います。
 視覚・聴覚・嗅覚に優れ、縄張りに踏み込む冒険者に集団で襲い掛かってくるでしょう。
 知能は低く、意志を疎通する事は出来ません。

●第二章(ボス戦)
 ある程度ゴブリンの群れをやっつけると、彼等のボス『ゴブリンキング』が現れます。
 多くのゴブリンは知能が低いものの、稀に長生きして高い知能を獲得する個体があり、集団を纏めて王になったのが『ゴブリンキング』です。人語を喋りますが、交渉して見逃してくれるかは分かりません。
 ゴブリンキングを倒せば森は安全になり、幽谷へ向かう事が出来ます。

●第三章(日常パート)
 月夜の下、幽谷に咲く虹色の精霊花で花占いをします。
 必ずしもPOW、SPD、WIZに従う必要はなく、相性診断や金運なども占う事が出来ます。
 触れた時の色を指定していただくか、夕狩がダイスの数値で色を決定します。
 「占い」にあたる部分は、色の明度や光の揺れ具合をフィーリングでお受け取り頂ければ幸いです(そのようにしてプレイングをかけて下さい)。
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 ニコリネを話し相手に指定することも出来ます。目安の400字に描写をプラスし、お客様分の字数を削る事はございません。指定のない場合は登場せず、見守り役となります。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 集団戦 『ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
綺麗な花を見てみたいし、人々を泣かそうとする悪いオブリビオンを今の内に退治できるのなら一石二鳥だぜ!

障害物が多い森の中で、しかもオレらを発見しやすいゴブリンの数が多いとなると、速やかに倒すことよりもこっちがやられないようにするのが大事そうだ。
UCの『商竜印の竜騎士装備』を防御力重視……マフラーから竜の氷の力で身を固めながら周囲を探索していくぞ
ゴブリンを発見または戦闘になっても別のゴブリンに不意打ちや囲まれないように気をつけながら戦っていくぜ

なるべく他の猟兵と連携していきたいが、とりあえず一人の場合であってもゴブリンの攻撃や移動の要である手足を重点的に攻撃して戦闘を優位にしていきたいぜ


ナミル・タグイール
レア花デスにゃ!?綺麗そうにゃー!見に行きたいにゃ!
邪魔なゴブリンはザクザクデスにゃー。
・行動
ゴブリンいすぎにゃー!
森のなかでわらわらされても戦いづらいデスにゃ。
【野生の勘】で周りを警戒しながら斧でザクザク
…きりがないにゃ!めんどくさいにゃー!
【堕獣の腕輪】を使ってモフ度アップにゃ暴走モードにゃ!
敵の攻撃なんて無視にゃ!
動くものは全部敵デスにゃー!飛びかかってザックリぐっしゃりにゃ!


北条・優希斗
虹色の精霊花の花占いについてはさておき
ゴブリン退治の手伝い位はしても良いよね?
仲間との連携・声掛けOK
……そう言えば、ゴブリンと退治するのは初めてだったな
まっ、不意打ちなら十八番だよ
地形の利用を使って予め周囲の情報収集
奇襲に備えつつゴブリン達に見えない位置から夕顔を放って、纏めて身動きできなくする
その後は仲間と連携しつつダッシュで接近してそのまま二回攻撃、グラップル等を使用してゴブリン達の群れの中央へ
夕顔を使って敵を盾にして同士討ちも誘う
ある程度群れの中央に辿り着いたらUC発動で纏めてゴブリン達を襲撃する
足払いは見切り、残像で標的をずらして回避
出来るならカウンターも積極的に狙っていくね


エル・クーゴー
●SPD
ステルスモード(迷彩&目立たない)を施したサーチドローン・マネギを飛ばし、撃ち下ろしポジションが取れる高度を有する地形を探査
【情報収集】完了次第当機は【スナイパー】として布陣します

アンチマテリアルライフル、展開
【武器改造】により現環境に併せ最適化した照準を増設
キリングレンジ半径529m
ロングレンジファイアワークスドライブ、始動します

友軍の進行を補佐すべく、敵性に対し適宜狙撃を敢行(援護射撃)
盾をパージした敵性は脅威度を鑑み優先度高く照準します


死角となる位置へは敢えて射線をずらし発砲
弾体が遮蔽の脇を通過した所で【誘導弾】として管制
即ち「曲がる電脳の魔弾」により遮蔽を盾にした敵をも穿ちます


ミンリーシャン・ズォートン
知り合いのナット・パルデ(f05999)さんと参加
呼び方はナットさん

―月の光で咲くという虹色の精霊花。とても、とても見たいです!ナットさん、付き合っていただいて、ありがとうございますね。(知り合いのケットシーさんを見ながらふわりと綻んで感謝を伝え)

ゴブリンさん、まだ見たことがないんですけど…怖いんでしょうか?

【戦闘】
ゴブリンが現れ攻撃してくれば仕方なく応戦

ナットさんと協力し、自分は身の軽さをいかした体術を―。
ふわりと跳ねて避けては蹴り技を繰り出し

身の危険やキリがないと判断した場合には【*.+~星屑の天の川~+.*】を使用し拘束を試みる

私達は侵入者なので、なるべく不要な争いは避けて通りたいです。


ナット・パルデ
精霊花、確かにあまり出回らない花だ
……たまには採取に出るか


ミンリーシャン(f06716)と参加
ちょうど暇だったからな。こういう冒険も悪くない。
道中はやんわりと談笑しながら進もう


不要な争いは避けたいがゴブリンを見かけたら仕事だ
一応、退治を依頼されているもんでな

ゴブリンと対峙したならミンリーシャンと協力を
低い身長とジャンプを駆使して体術に動きを合わせ、【アネステジア】で攻撃を行う
足払いをする敵には逆に尻尾の鈴を頭にぶつけ衝撃をお見舞いだ


尚、ミンリーシャンに気づかれないようにトドメは刺しておく
争いを避けるという理想を掲げる彼女に命を奪う行為は……俺も甘いな


※諸々アドリブ歓迎


宇冠・由
(虹色の精霊花、是非ともお母様へのプレゼントにしたいです)

普段は親子で一緒に依頼をこなしていますが、今日は私一人でのデビュー戦
保護者同伴でなくとも戦えることを証明して、お母様に一人前だと認めてもらいたいですわ

「戦場は森ですか……」
ブレイズキャリバーとしての炎は延焼起こすので不利
であれば【十六夜月】にて、狼の群れを召喚
嗅覚や夜目に優れ、かつ集団での狩りをこなす狼は鬱蒼とした森でも遅れはとりません

私は全身が炎で森中でも目立つでしょう
視覚に優れたゴブリンなら発見は容易
私があえて囮となることで、狼の包囲網で一網打尽にします

防御は得意です
傷は滅多に負いませんことよ


蘭・七結
ナハトさん(f01740)と
アドリブ等歓迎

月下に咲き誇る虹の花
虹という、極彩色
鮮やかな色彩には、とても疎いの
一体、どんな色なのかしら
誘いの手を取ってくれた、彼へと尋ねて

共に進みゆく鬱蒼の森内
粗雑な攻撃は舞い踊るように見切って
『彼岸』と『此岸』の双刀で峰打ちを
亜人なれど命は命。無下に散らせはしないわ
領域に踏み込んでしまったことを詫びましょう
代わりに、美しいものをお見せするわ

ナハトさんの手を取り、森奥へとおびき寄せ
あなたの輝きが、導を与えてくれる
あかい花嵐に乗せて、彼らを無力化しましょう
美しき〝あか〟を刻んでちょうだい
〝紅恋華〟

さあ、先へ進みましょう
〝虹色〟を、この目に焼き付けたいわ


ナハト・ダァト
ナユ君(f00421)と参加
アドリブ歓迎

以前、花畑を紹介へ導いただろウ?
あの風景ガ、全テその一輪に込められていル
そう考えておこうカ
後は辿リ着くまでノ動機にしよウ
目的に思いを馳せてこソ、冒険らしいと思わないかイ

暗い森の中を無限光で照らしながら進む
優しいのだネ、ナユ君
でハそのまま進み給エ
道行きは私が照らすヨ
「瞳」と「啓示」はその為にあル
亜人の医術を極めた私ニ
君達の動きが見切れない筈がないだろウ

取られた手から叡智を伝える
彼女の”華”が、より美しく咲く為ニ
『美麗』という輝きを添えようカ

あア。そうしよウ。
その華ハきっト美しイ。断言するヨ


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

――虹色の精霊花、
心によって色が変わるとは興味深いですよね
幸いなるかな、今年咲き初めたというので、
足を運んでみたくなりました
あなたもこういう物には興味があるでしょう

とはいえ、先ずは道々の災いを振り払わねば
俺は後ろから援護しますので、
オルハさんは好きに動いてください

指輪から闇を解き、呪詛を絡ませ
醜い者どもの足止めに注力します。
彼女に危害が加えられそうになったら、
その防御を第一に
近付く者は影より出ずる者で動きを封じます
トドメ、お願いしますね

幽谷へ向かうにも一苦労ですね
期待に見合う花が見れるといいですけど
怪我があったら見るので言ってくださいね
それでは、先に進みましょうか


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

もちろん興味あるよ
摘んだ人の心で色を変えるなんて素敵
しかも占いまでできるんでしょ?
とっても楽しみ!早く着かないかなー!

精霊花までの道のりは、平坦ではないみたい……
縄張りに踏み込むのは申し訳ないけど
ここで倒れるわけにはいかないんだよね
それじゃ、私は前線で暴れちゃおうかな
援護よろしく!

愛用の三叉槍を両手に構えて
【範囲攻撃】で複数の敵を効率よく【なぎ払い】
自分への攻撃は【見切り】を狙って
ヨハンへの攻撃には【かばう】の後に【カウンター】
させないよ、絶対に
動きを封じられた敵にはとどめの一撃を

怪我はない?
まだ先は長そうだけど、頑張ろう
綺麗な精霊花がきっと疲れを吹き飛ばしてくれるよ


糸縒・ふうた
■綾(f01786)と一緒
アドリブ歓迎

邪魔をしてくるならしょうがないけど
そうじゃないのにまで手を出す必要はないよね

困ったやつにだけバイバイしよう

まずは【動物と話す】で聞き込みしつつ
【野生の勘】と森での経験を生かして塒を探そう


オレの方が鼻が効くに決まってるもん
綾の意地悪にぷっくり頬を膨らませて

ほらみてあそこ、ごはん食べて寝ちゃってる

寝込みを襲うのは気が引けるけど
捕まった仔たちがいるなら仕方ない

【疾風】の背に乗り飛び込むよ
【勇気】があれば崖から降りるのも怖くない

綾が眠らせてくれたのを中心に
逃げる奴までは追わない

戦闘が終わったら開放してあげて
もう捕まるんじゃないぞ、って伝えながら逃がしてあげよう


都槻・綾
f09635/ふうたさん

易々と過ぎる訳には行かぬとしても
過分な諍いは回避したいところ

共に動物達と話したり
地縛鎖「幽」にて地祇へ祈り、付近の情報を乞う
聴覚に優れる彼らにも
捩花が風に揺れる微音、程度の油断を誘えれば重畳

身を潜めそうな岩場や
囲まれずに済む路状を読んで地形利用

嗅覚は――ふうたさんとゴブリン達の勘比べ、でしょうか?

尻尾揺れる少年へ
悪戯っぽく笑んで見せつつ
膨れる様子が可愛らしい、と思った事は内緒

急襲に備えた第六感
見切り回避
自他オーラ防御
声を掛け合い死角を補う

戦闘を避けれぬ際は
麗らかな春薫る白梅の「馨遙」を高速詠唱
周囲の敵を眠りへ誘い戦意を封じる

争いで気の乱れた大地が少しでも安らぎますように


荒谷・つかさ
小鬼の群れ、か。
数が多いとなると。油断は命取りね。

鬱蒼とした森ということで、遮蔽物となる木は多そうね。
だったら、纏めて薙ぎ倒すわ。

零式・改二を担ぎ【剣刃一閃】を発動
まずはゴブリンを狙いつつ、同時に周縁の木々をなるだけ低い所から切り倒すわ。
こういう手合いは木を登って上から仕掛けてくるなんてこともあるでしょうしね。
とはいえ、もしそれをやられても遅れをとるつもりはないけれど。
上から飛び掛かってきたならそれはそれで、軌道がわかりやすいから迎撃もしやすいもの。

兎に角、正面から大剣を振り回して力任せに戦うわ。
囲まれたら、拳や蹴りも状況に応じて。
お前たちの粗雑な腕と装備で、この剣を止められると思わない事ね。




 光を拒む様に繁る鬱蒼の森も、入りて暫くは明るい緑を見せてくれる。
 僅かに降り注ぐ木漏れ日を集めるよう繊手を広げ、樹枝のアーチを潜ったミンリーシャン・ズォートン(綻ぶ花人・f06716)は、大木の根に斑と落ちる光を青瞳に追う。
 少女は小さな羽翼をはたはたと揺り動かしながら森を進み、
「――月の光で咲くという虹色の精霊花。とても、とても見たいです!」
 一体どんな輝きを見せてくれるのだろうと、期待に弾む花人の足取りに、ナット・パルデ(廻雪・f05999)の静かな歩みが続く。
「精霊花か。確かにあまり出回らない花だ」
 隊商が集まる交易都市でも余程見ない希少種。
 幽谷に群生する姿は望まねば見られぬものだけに、「偶には採取に出るか」と足が向く。
 何より此度の相伴は、花を想わせる愛らしさで、
「ナットさん、付き合っていただいて、ありがとうございますね」
「ちょうど暇だったからな。こういう冒険も悪くない」
 振り向き様、ふわり綻ぶ少女の靨笑を穏やかな笑みに受け止めた剣士は、それから談笑しつつ森を進む。
「これってレア花デスにゃ!?」
 月下に咲く虹色の精霊花――その美しさを、ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)の鋭い嗅覚が逃す筈もない。
「きっと綺麗にゃー! 必見にゃ!」
 希少価値があるもの、キラキラなものに目が無い艶猫は、自身の金瞳も黄金の様にピカピカと輝かせながら、音を立てぬ猫脚で軽やかに森を分ける。
「ああ、どんなに綺麗な花なのか、見てみたいぜ!」
 食う寝る遊ぶ、何事も全力で楽しむグァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)は好奇心も旺盛に、花顔いっぱいに咲みを湛えて。足取りも軽快に、堂々昏がりを進む。
「月下に咲き誇る虹の花。一体、どんな色なのかしら」
 虹という、極彩色――。
 蘭・七結(恋一華・f00421)が鮮やかな色彩にとんと疎いのは、彼女を染める色が唯ひとつなる故に。
 ことり、僅かに首を傾げる凄艶の隣、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は穏かに問いに答え、
「以前、花畑を紹介へ導いただろウ? あの風景ガ、全テその一輪に込められていル」
 そう考えておこうカ、と『医神のローブ』を揺らして往く足は、後は辿リ着く迄の動機にしようと巨樹の根を跨ぐ。
 彼も期待に胸を膨ませているとは声色が示そう、
「目的に思いを馳せてこソ、冒険らしいと思わないかイ」
 僅かに持ち上がった語尾に視線を繋いだ七結が、淡い艶笑を浮かべた。

 ――春を前にゴブリン達が鋭気を養ってるって?
 ――そう、君のお仲間も捕まっちゃったの。
「今頃お肉になってないか心配なんだって」
 森に入るより前、野ネズミとそう話した糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)は、同じく動物への聞き込みと、地縛鎖『幽』にて地祇へ祈り、付近の情報を集めた都槻・綾(夜宵の森・f01786)と共に鬱蒼を往く。
「聴覚に優れる彼らにも、捩花が風に揺れる微音、程度の油断を誘えれば重畳」
 深い森の地形を活かし、巨樹の陰や枝葉の間を縫う様に影を滑らせる二人は、此処を塒にするゴブリンの鋭覚を擦り抜けて進む。
 闇を先行する綾は時に悪戯な微笑を浮かべて、
「嗅覚は……ふうたさんとゴブリン達の勘比べ、でしょうか?」
「む。オレの方が鼻が効くに決まってるもん」
 ピョコリ尻尾を立て、ぷっくり頬を膨らませるふうたを青磁色の双眸に愛でた。
 森が密度を増して光を拒むにつれ、冒険者は慎重になるものだが、ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)は闇こそ安らぐと、閑々たる声を暗晦に解かす。
「――虹色の精霊花、心によって色が変わるとは興味深いですよね」
 開花の報に誘われたという足は静かに、少し前を往く軽快を追って、
「あなたもこういう物には興味があるでしょう」
 彼らしい沈着のテノールに振り返ったオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は、「もちろん」と花の咲みを零して答える。
「摘んだ人の心で色を変えるなんて素敵! しかも占いまでできるんでしょ?」
 鬱蒼を潜る声は美しく澄み渡り、音調は嬉々と弾んで。
「とっても楽しみ! 早く着かないかなー!」
 オルハなら生い茂る枝葉に袖を引っ掛ける事もなかろうが、ヨハンは大木の根が彼女の爪先を躓かせぬよう目を配りながら後に続く。
 斯くして森を往く猟兵の頭上、微かな気送音を風に流してウイングキャット『マネギ』――デブ猫型ドローンが飛行するとは幾人が気付こうか。
「ステルスモードにて巡航中のサーチドローン・マネギより地理情報を取得します」
 電子に生成される佳声に告ぐはエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)。
 彼女は電脳ゴーグルに光を往復させながら、早くも当該の地形で優位を得る機動・戦術を弾き出している。
 エルの隣を歩く荒谷・つかさ(焼き肉担当・f02032)も、この森に棲むゴブリンが易々と通行を許すとは思えぬ一人。
「小鬼の群れ、か。数が多いとなると、油断は命取りね」
 彼女は樹陰に潜む邪の気配と、彼等を隠す巨木そのものを、じっと観察する。
「……今日は私一人でのデビュー戦になるでしょうか」
 親子で依頼を請けてきた宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)は、此度は単身の冒険。
 保護者同伴でなくとも戦えることを証明し、一人前と認めてもらうには、幽谷に咲く『虹色の精霊花』の優美が証左となろうか。
(「お母様へのプレゼントに出来れば、きっと」)
 家族であり恩人である竜人の母を思い、強い決意を秘める。
「……もしゴブリンと接触するとなれば、対峙するのは初めてになるな」
 同道する猟兵の溌溂とした顔を眺めながら森を往くは北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)。
 彼は森の深奥に踏み入るにつれ、その息吹が漸う不穏な――魔物の住み処へと近付いていく感覚に五感を研ぎ澄ました。


「ゴブリンさん、まだ見たことがないんですけど……怖いんでしょうか?」
 ふうわりと足取り軽く森を分けていたミンリーシャンが、鈴振る様な声のトーンを落したのは、光も届かなくなった奥部に至って。
 談笑に和らいでいたナットも優艶のテノールをやや固くして、
「不要な争いは避けたいが、接触すれば仕事に掛かる他ない」
 命を通行手形に通る訳にも往かぬと、雪白の毛を漸う蹴立てる。
「深い森がゴブリンを隠す一方で、連中は木々の間からオレらに眼を光らせているとしたら……速やかに倒すことより、こっちがやられないようにする方が大事そうだ」
 グァーネッツォはゴブリンの縄張りを通る危険性を十分に理解している。
 彼女は防禦を高めるに【商竜印の竜騎士装備】を召喚し、此度は氷竜のマフラーを首に巻いて、鼻梁まで摘まみ上げる。
 桜脣を隠し、夏色の小麦肌を昏がりに溶かし、大きな金瞳だけを煌々とさせるグァーネッツォ。
 彼女が索敵に瞳を光らせる傍ら、暗澹の森を敢えて光に暴いて往く者も居る。
 七結は此度誘いの手を取ってくれたナハトに白磁の繊指を差し出して、
「あなたの輝きが、導を与えてくれる」
「優しいのだネ、ナユ君。でハそのまま進み給エ」
 彼女の意を汲んだナハトは、我が身より溢れる『無限光』に道行きを照らす。
 彼の『瞳』と『啓示』は正に標と成ろう。其の燦然は闇に隠れる諸々の情報を明るみに出す一方、樹陰より鋭眼を注ぐ魔の警戒を集める。
 そうして猟兵が森の深部に至って四半刻、木々の間の更に奥――黒檀の闇に影が蠢く。
 昏い森の中、ざわざわと蠢く影が、漸う膨らむ怒気に息を荒げた。
『……フゥ、ッ……』
『フ……ォ――ッッ』
 凡そ人ならぬ息遣い――其はゴブリン。
 地の利があれば彼等も奇襲や急襲が掛けられようが、これまでの道程で粗方の地形を把握した優希斗がそうはさせまい。
 寧ろ彼は逆――。
「不意打ちは俺の十八番だよ」
 森を往くがてら集めた情報を基に、蔭に潜む敵群へと紫の鋼糸『夕顔』を放つ。
 繊指を離れて闇に伸びた贖罪の糸は、ゴブリン達の死角より迫って身を縛り、一絡げにして挙措を奪う。
『ギッ、ギギ……ッ!』
『イギギギ!!』
「虹色の精霊花の花占いはさておき、ゴブリン退治の手伝い位はしても良いよね?」
 手伝いとは謂うが、その封縛は激甚にして熾烈。
 白皙に際立つ濡烏の髪、漆黒の瞳がゆらり、暗闇に解けた。


 侵入者の悲鳴でなく、同胞の絶叫を以て森の異変を知らしめたとは皮肉だが、之に逆立ったゴブリン達が、刻下、群れを成して現れる。
 オルハは愛用の三叉槍『ウェイカトリアイナ』を中段に構えて吶喊に備え、
「縄張りに踏み込んだのは申し訳ないけど、ここで倒れるわけにはいかないんだよね」
「俺は後ろから援護しますので、好きに動いてください」
 ヨハンは彼女の意を汲むや、繊指に環した黒光石『蠢闇黒』より闇を解き放ち、前線に躍り出る佳人を援くべく敵の足止めに掛かる。
『嗚嗚オオヲヲ!!』
『餓ァアア亜亜!!』
 衝突――!!
 鬱蒼に紛れて這い寄る闇が邪の足に絡むと、蹈鞴を踏んだ瞬間に槍の穂先が脛を斬って走る。
 敵前線が崩れると同時、後続が飛び掛かるが、ヨハンの闇は盾と変わってオルハを護り、またオルハは彼に向かう攻撃を庇う代わり、反撃の槍を衝き入れて邪を組み伏せる。
 声が重なるのも息の合った証拠。
「怪我はない?」
「怪我があれば見せてくださいね」
 二人は一瞬、瞠目を揃えると、再び視線を分けてゴブリンの群れの駆逐に掛かった。
『シィギャアア!!』
『ホォォオヲヲ!!』
 地を疾り、或いは巨樹の枝伝いに飛び交って次々現れるゴブリン達。
 由は醜い吶喊を耳に地獄の炎を赫然と、蓋し佳声は極めて怜悧に言を置いて、
「ブレイズキャリバーとしての炎は、延焼を起こすので森では不利……」
 なればと喚ぶは狼の群れ――【十六夜月】(ムーン)に解き放たれた狼らは、嗅覚や夜目に優れ、且つ集団で狩りをこなす狡知にて、鬱蒼の森にあっても後れは取らず。
 巨樹が揺れ、枝葉が騒めいたのは、其の衝撃に。
 彼等の猛爪と鋭牙はゴブリンの狂気を迎え撃ち、森に渦巻く殺気をぶわり発憤させた。
 ――時に。
「遮蔽物となる木がこれだけ多いのなら、纏めて薙ぎ倒すわ」
 森が敵を隠しているなら、木を伐採して敵を暴けば佳い。
 そう言って大剣『零式・改二』を担いだつかさは、【剣刃一閃】――先ずは猛進するゴブリンを薙ぎ払い、剣圧はそのまま周縁の木々を低所から切り倒す。
「こういった手合いは樹上から仕掛けてくることもあるでしょうしね」
 全き明察。
 敵の足場から崩すとは機智が利いていよう、彼女は繊手に大刀を軽々振い、屈強なる樵と化して巨樹をザクザク伐採していく。
『ギャギャギャッ!』
『ゲゲァッ!』
 高みの枝に隠れていたゴブリンは堪らない。
 彼等は大木が傾くより先、飛び降り様に襲い掛かるが、軌道の読み易い墜下攻撃ではつかさを組み伏せられまい。
「態々倒されに来るなんてね」
 刻下、木樵は剣豪となり、冴ゆる一太刀をくれてやる。
『ギギャアアッッ!』
 巨樹が倒れるに合わせ、ゴブリンも鬱蒼の繁みに沈んだ。
「ナットさん……応戦、しますか……?」
「一応、退治を依頼されているもんでな」
 敵対関係にある訳で無し、向い来る矛に逡巡するミンリーシャン。
 ナットも要らぬ殺生は躊躇われるものの、数が増えれば必ずや脅威になると討伐を任された身なれば、腰より抜いた『薄氷の細剣』は凍気を放ち始める。
 二人が無言の是を重ねて間もない。
 ゴブリンらが棍棒や斧を振りかぶって迫れば、先ずはミンリーシャンが空色のリボンをひらり舞わせて身躱し、
「縄張りに侵入したのは私達の方。なるべく不要な争いは避けて通りたいです」
 嫋やかに、靱やかに。
 何より強烈な蹴撃を墜下して邪を攪乱する。
『ゲギャアッ!』
 彼等が激痛を叫ぶ間、ナットは颯の如く疾駆して邪膚を刺突し、その須臾――魂も凍る程の冷気を漂わせる。
「一瞬でも永遠の夢を」
 ユーベルコード【アネステジア】は、創痍を負った対象を深い眠りへと誘う。
 痛痒を絞ったゴブリンは、次の瞬間には呻く様に膝折って、
『ォ、グ……ッ……』
 巨樹の根を枕に沈み込んだ。
『ギィアァァ亜亜!!』
『轟ヲヲォォオオ!!』
 然し未だ数は多く、久方の獲物に垂涎する代わり、醜声を上げるゴブリン達。
 ナハトの瞳には、武器を振り被る邪の怪腕ひとつも筋組織ごとの運動に分けられようか、
「亜人の医術を極めた私ニ、君達の動きが見切れない筈がないだろウ」
 彼は迫る剣圧に『上位者の叡智』を揺らしながら、然しその一切を断ち切らせず、流水の如く躱し、擦り抜け、掻い潜る。
『ッ、クッッ……!』
 猛撃が空を切って爪先を止めれば、風に翻る花弁の様に差し入った七結が『彼岸』と『此岸』の双刀で峰打ち、
「亜人なれど命は命。無下に散らせはしないわ」
『ッ、ヲッッ――』
 今は唯その牙を折るのみ、と崩れる躯を紫晶石の瞳に見送った。
 愈々殺気立つ森に淡然を置くはエル。
「当機は射手として布陣します」
 言うや佳人は『L95式アンチマテリアルライフル』を展開し、現下の環境に最適化した照準を増設する。
 間際に機装人形の透き通る肌が白んだとは、誰ぞ見たろうか。
「キリングレンジ半径529m――ロングレンジファイアワークスドライブ、始動します」
 閃光――!
 エルの電脳は視認し得る限りのゴブリンをターゲットに、死の中心点めがけて灼弾を撃ち出す。
『ズァ――ッ!』
『グ、ブゥ!』
 事前に撃ち下ろしポジションが取れる高度を確認・確保せねば叶わぬ精確。
 エルは次々悲鳴を上げて倒れる邪を敷きながら、「範囲64%を制圧しました」と告げた。
「易々と過ぎる訳には行かぬとしても、過分な諍いは回避したいところ」
「うん。邪魔をしてくるならしょうがないけど、そうじゃないのにまで手を出す必要はないよね」
 包囲されぬよう進路を選んでいた綾とふうたなれば、向かい来る敵は絞られるが、それでも互いが損耗せぬよう、死角を補いながらゴブリンの群れを邀撃する。
「困ったやつにだけバイバイしよう!」
 無益な殺生を好まぬふうたは、全てを駆逐しようとは思わない。
 キャスケット帽より覗く前髪を風に揺らした少年は、透徹たる紫瞳に光を湛え、
「――駆けよう、一緒に」
 瑞々しいテノールが囁いたとは、怒声を上げる邪は気付かなかったろう。
 ゴブリンは暗澹たる森から突如現れた大きな狼――【疾風】(イダテン)の背に飛び乗ったふうたに吃驚し、中には怯んで踵を返す個体もある。
 それでも剣を振るう者だけ相手すれば良かろう、綾は粗野な攻撃を見切りつつ、躱し様に冴刀に斬って別れる。
 その視界の端に映るはグァーネッツォか、
「人々を泣かそうとする悪いオブリビオンを、今の内に退治できるのなら一石二鳥だぜ!」
 戦闘を、強者を好む竜騎士は、鬱蒼に隠るる狂邪の気配に義気凜然、巨樹を背に鋭い槍撃を繰り出す。
 ピカピカへと向かう道を遮るは敵と、ナミルは野生の勘鋭く邪の気配を辿るや全身の毛を逆立て、
「邪魔なゴブリンはザクザクデスにゃー!」
 間もなく襲い掛かったゴブリンを黄金の巨斧『カタストロフ』に迎え撃つ。
 妖しげなルーンを刻む呪いの斧撃は重く鋭く、ゴブリンが握る棍棒ごと砕いて昏い大地に叩き付ける。
『ギャヒッ!』
 一方、狂邪の群れを颯の如く抜ける優希斗は、己が残像に斬撃を代わらせ、また敵の剣筋を見切るや、躱す様に痛撃を置いて疾る妙々たる機動。
 集団へと割り入る彼には、左右より剣戟が差し込むが、其は神速を穿つ楔と成るか――否。
「代わってくれるかな」
『ギギャアッ!』
 優希斗は昏がりに色を隠す『夕顔』を操り、敵を盾にして損耗を逃れた。


「それにしても、この数……キリがありません……」
「戦争でも仕掛けるつもりか」
 個の感情が個に伝染り、集団で敵意を増幅するゴブリン達。
 縄張りを侵された怒りもあろう、猟兵を包囲に掛かるゴブリンの狂気に触れたミンリーシャンは、きゅ、と眉根を寄せると、次の瞬間には透徹たる青瞳に凛烈を湛える。
 桜脣は静かに囁(つつや)いて、
「――参ります」
 言うや瞬刻、神秘の光を揺らす羽衣が宙を舞い、鬱蒼の森を白ませる――其は宛ら星屑の天の川。
 邪気を組み敷いた天の川はミンリーシャンの戦闘力を増強する傍ら、敵躯を次々に拘束し、次撃を継ぐナットに処断を託した。
「――音を聴かせてやる」
 躰を捻って勢いをつけた彼が振り落とすは尻尾。
 強い衝撃を起こすべく撓った尾に着けられた『破魔の大鈴』は、ゴブリンの頭上で稀有の音を響かせ、鼓膜も脳天も震盪させた邪が一体、また一体と大地に転輾つ。
 この時、ナットが命を摘んだとは少女は知るまい。
 氷雪の剣士は、ゴブリンが絶叫するより早く喉笛を裂き、
「争いを避けるという理想を掲げる彼女に命を奪う行為は……俺も甘いな」
 細身の剣に帯びる冷気『静の刻』を以て、安らかなる「止」を与えた。
「ゴブリンいすぎにゃー!」
 あまりの数に煩わしくなるあたり、やはり猫科キマイラ。
「……きりがないにゃ! めんどくさいにゃー!」
 ナミルは尻尾をピンと蹴立てると、【堕獣の腕輪】(タグイール)に籠められた魔獣化の呪いに身を任せ、モフ度アップ、暴走モードにスイッチする。
 ギラ、と沸き立つ野生が理性を飲み込めば、闘争は痛撃を凌駕する。
「敵の攻撃なんて無視にゃ! 動くものは全部敵デスにゃー!」
 漆黒の艶髪は踊る毛先を暗闇に溶かし、鋭い跳躍で飛び掛かるや、黄金の巨斧が光の帯を引いて闇を疾り肉を裂く――速く動く物を攻撃し続ける様は、まるで狂猫。
『ギャアァァッッ!!』
「ザックリにゃ! ぐっしゃりにゃ!」
『グゥオオヲ!!』
 本能の暴走に邪の群れは悉く蹴散らされる。
 グァーネッツォは間もなく我が身に迫るゴブリンにぶわり闘志を迸らせ、
「ゴブリンの攻撃や移動の要である手足が狙い目……!」
 限りなく存在感の薄い『幽冥竜槍ファントムドラゴンランス』はここぞと活躍しよう。ゴブリンが剣を振るにも足を蹴り出すにも、竜槍の鋒は彼等のリーチに勝り、須臾に懐を犯して緑色の肌を刺突する。
『ギャアァ唖唖ッ!!』
『牙ァッ!!』
 畢竟、智慧の差か――グァーネッツォは自ら流血する事なく、ただ返り血を浴びるのみ。
「私の躯を覆う炎は、昏がりの森でも目立つでしょう」
 と、敢えて囮となるは由。
 視覚に優れたゴブリンなれば遠目にも分かる光熱の標は、やはり数多の敵を呼び集めるが、無論、好餌と屠られる由では無い。
「防御は得意でして。傷は滅多に負いませんことよ」
 彼女の義体はオーラに守られ、単純な打撃で砕ける堅牢に非ず。
 ゴブリンはその鉄壁を打ち破るより先、狼の群れに囲繞され、一網打尽に捕えられた。
『オオヲヲ……ッ!』
『アャアア嗚呼!!』
 樹木や植物が視界を遮り、射線を隠す森林戦。
 大規模な範囲攻撃は行えず、伏撃等のゲリラ戦こそ有利になる戦局に於いて、遠距離攻撃を得意とするエルは苦戦したろうか。
 答えは否。
「盾をパージした敵性は脅威度を鑑み、優先度高く照準します」
 死角となる位置へは敢えて射線をずらして発砲するエル。
 唯の弾丸なら命中には至らぬが、彼女が撃つは「電脳の魔弾」――弾体が遮蔽物の脇を通過した瞬間、誘導弾として管制された其は、軌道を穹窿に曲げて急所を貫く、必中の死弾となる。
「お前たちの粗雑な腕と装備で、この剣を止められると思わない事ね」
 つかさは怪力で押し込むタイプだが、閃く剣筋は幾許にも精緻。
 其は研鑽されたパワーとスピードの賜物か、斬撃は聢と敵躯を両断し、囲まれて尚も繰り出る拳撃と蹴撃は、ゴブリンの醜顔を痛烈に歪める。
『ホガァ、ッ!』
『嗚嗚ォオオヲヲ!!』
 闇雲に往けば四面楚歌にも成り得る処、敢えて敵群の中央へと向かった優希斗には策がある。
「――多元世界で生まれし刃よ、我が下に集いて踊れ」
 静謐の声に喚ばれるは、優に百を超す刀剣――【神技・剣王乱舞】は時空を繋いで冴刃を集め、その鋒を艶々妖々踊らせてゴブリン達を斬り刻む。
『牙ァア唖唖!!』
『ゲギ戯ギッッ!!』
 醜悪な声が次々に絞られるが、ヨハンの麗顔は眼前の惨憺にも終ぞ歪まない。
「――鳴け」
 彼は短く告ぐや、【影より出ずる者】(シャドウ・ルーラー)を五指に操り、無数の黒刃がゴブリンの緑膚を刺突する直前まで森の闇に隠す。
『戯ャアア!!』
 冴撃が邪の突貫を鮮血に留めても彼は冷静。
 美し白皙は返り血を浴びて愈々怜悧に、
「トドメ、お願いしますね」
「任せて」
 オルハもまた短く佳声を置いたなら、【フィロ・ガスタ】――春告ぐ東風の如く翔けて神速の槍撃を衝く。
『ギャアア嗚呼ッッ!!』
『グゥオ嗚嗚ヲヲヲ!!』
 二人の視界から光が消えたのは、ゴブリンの怒りに燃える邪眼の光や、彼等が手にする武器の類が殲滅されたから。
「幽谷へ向かうにも一苦労ですね。期待に見合う花が見れるといいですけど」
「綺麗な精霊花がきっと疲れを吹き飛ばしてくれるよ」
 頬に滴る鮮血を手の甲に拭うヨハン。
 オルハは清涼漂うプレナイトの瞳を細め、見事連携した彼を労った。
『轟ォォヲヲ!』
『嗚嗚ォォオオッ』
 魔眼を光らせ突貫するゴブリン達は、多分に意識を手放す瞬間まで綾の【馨遙】(ユメジコウ)――麗らかな春薫る白梅の馨香に気付かなかったかもしれない。
「神の世、現し臣、涯てなる海も、夢路に遥か花薫れ――」
 艶やかな低音が囁(つつや)き誘うは春暁の眠り。
 鎮静を齎す匂袋『馨』は人も亜人も等しく戦意を封じ、穏かな眠りに揺蕩わせる。
 半数が巨樹を枕に眠りこければ、残る半数はふうたが預り、相棒であり家族でもある狼と共に群れを追い払う。
 粗方を駆逐し終えた時、檻に囚われた野ネズミを見つけた彼は解放してやり、
「もう捕まるんじゃないぞ」
 少年の安堵の表情に艶笑を注いだ綾は、長躯を屈めて大地を慰める。
「争いで気の乱れた大地が少しでも安らぎますように」
 其が実質、猟兵の勝利を示す事となった。
 その同刻、
「領域に踏み込んでしまったことを詫びましょう」
 七結が粗相を贖うに見せたのは絢爛。
 佳人は『紅恋の和衣』をひらり踊らせるや、【紅恋華】(デア・ロンド)――牡丹一花の花時雨を降らせ、見目は頗る麗しく、攻撃は至極熾烈に鮮血を噴かせる。
「美しき〝あか〟を刻んでちょうだい」
『ギャヒッッ!!』
『ガァア嗚呼……ッッ!』
 いつにも増して血花が躍ったのは、ナハトが彼女の戦闘力を増強したからだろう。
「彼女の“華”が、より美しく咲く為ニ。『美麗』という輝きを添えようカ」
 希望に光灯す【六ノ叡智・美麗】(セフィラ・ティファレト)は半径29m内に在する全ての生命体に力を授け、ここに覆らぬ優勢を――相当数の撃破を以て突き付ける。
 戦意を失ったゴブリンは遂に彼等に道を明け渡し、
「さあ、先へ進みましょう。――〝虹色〟を、この目に焼き付けたいわ」
「あア。そうしよウ。その華ハきっト美しイ」
 断言するヨ、と足される声が、漸く訪れた静寂に沁みた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ゴブリンキング』

POW   :    ゴブリン親衛隊の召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【杖を持ち、炎の魔法を放つ、ゴブリンメイジ】と【剣、盾、鎧で武装した、ゴブリンナイト】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    王の激励
【王による、配下を鼓舞する言葉】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    ゴブリン戦奴の召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【奴隷ゴブリン】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 閑寂が森に満ち、先往く猟兵の跫音も明らかになる頃、未だ仄暗い森の奥から声が降る。
「そのつよさ、ただものではあるまい」
 上か――!
 弾かれる様に顎を持ち上げた猟兵らは、枝葉の鬱蒼より現れる緑の影に鋭眼を絞る。
 間もなく影は大地に降り立ち、幽谷に向かう猟兵の進路を塞いで、
「わしはしっておる。きさまらがイェーガーなるつはものと」
 人語を喋る――つまり知能を有す亜人。
 一語一語ゆっくりと紡ぐ拙さながらも、古風な語り口が生きた年数を感じさせる――其は此の森の王、ゴブリンの首領。
 誰ぞより奪った王の証を冠した緑邪は、髑髏の杖に同胞の亡骸を示して、
「わがどうほうをあやめたものたち。むくろをみるだにはがゆいが、わしはきさまらをとがめはしない」
 畢竟、万物の命は弱肉強食。
 弱者が強者に屠られるが世界の理なれば、同族と雖も逃れられぬと、王は猟兵の強さを認めた上で、更に言を継ぐ。
「ただ――このさきにゆくことはゆるさぬ。きさまらは、わがゴブリンぞくのたねとなりはらとなり、つよきしそんをのこしてもらおう」
 森を抜けること能わず。
 その精強を次代に注ぐ為、猟兵は須く礎と成る可し――。
 ゴブリンの王はそこまで言うと、尋常ならぬ数のゴブリンを召喚し、王よ王よと湧き上がる歓声を力に、刻下、猟兵らに襲い掛かった――!
白斑・物九郎
辺境でイキったゴブリンキングがナンボのモンですかよ

光栄に思いなさいや
嵐の王が蹂躙しに来てやりましたでよ


●WIZ
一撃で消滅するが、数は多い
なら範囲攻撃こそが適解ですわな

【砂嵐の王】!
モザイク空間をバラ撒いて(投擲)、頭数を片ッ端から薙いでやりますわ

ココはあちらさんのホームグラウンドなワケでしょうしな
敵勢がどこにどんな風に潜んでいるやら、どいつがどう飛び出して来るか、【野生の勘】を張って警戒&迎撃っスよ

キング相手に突っ掛ける時は、キングが動く先を予測して、地形効果敷設目的でモザイク空間を投射
モザイク空間で自己強化を得ながら(地形の利用)、ド至近距離からメイスと併せてモザイク塊をブチ込んでやりまさァ


北条・優希斗
……成程、如何にもゴブリンの王らしい思考だな
ならば容赦なく刈れるってものだ、行くよ
仲間との連携・声掛けOK
数の暴力は怖いな
薙ぎ払い、範囲攻撃で二回攻撃を行い周囲のゴブリンを掃討しつつゴブリンの王の所へ急ぐ
時に夕顔で敵を盾にしたり、或いは衝撃波で鼓舞しようとする王を牽制したり地形を利用したりダッシュを活用したりしてね
王の所に辿り着いたら月桂樹で騙し討ちにしてそれを起点にしてUC使用
UC使用後も二回攻撃からの傷口を抉る、鎧破壊で追撃を
情報収集、戦闘知識などで得られた情報は仲間と共有
防御はゴブリンの群れの攻撃を見切り、残像で攻撃の軸を外す
必要ならば武器受け、オーラ防御で負傷を最小限に抑えてカウンター


荒谷・つかさ
ふうん?
要するに、私を嫁にしたい、って事かしら。
それ自体は別に構わないわ。
より強い子供を残したい……それは、私も思っている事。
だから……
(構えを取り直す)
完膚なきまでに私を打ちのめして、力ずくでモノにする事ね。
そうしたら、喜んで従ってあげるわ。

召喚されるゴブリンに素手で真っ向から飛び掛かっていく
まずは武器持ちから「見切り」技能で攻撃を躱しつつ「怪力」「グラップル」技能で肉弾戦に持ち込み、「早業」で関節技を仕掛けるわ。
魔法の援護が来たら技かけてるゴブリンで「武器受け」し、適当なとこで【鬼神剛腕砲】でメイジに投げつけて攻撃よ。
キングにも肉弾戦を狙っていくわ。

悪いけど。
私より弱い雄に、興味無いのよ。


宇冠・由
「弱肉強食ですか……確かにその通りですわ」
ですがタダで食べられるほど安い女にはなりたくありませんの

頭上を取られている間はこちらが不利。王様を引きずりおろして他の方が攻撃しやすいようにサポート
私は空飛ぶヒーローマスク。そして全身炎のブレイズキャリバー
ゴブリンキングが立つ木の表面すれすれを飛びながら昇っていきます
木に私の炎を燃え移らせながら接近。相手から見える面積が小さければ回避もしやすい。ましてや私は空中戦は得意ですの

火炎剣を一振り王に投擲。恐らく親衛隊に邪魔されるでしょうが時間稼ぎは十分。足場たる木が燃えてダメージを受ければ親衛隊も消えます
他の木に乗り移ろうものなら、もう一振りの火炎剣を投擲


ナミル・タグイール
喋れるゴブリンにゃ!レアモノにゃー!
でも言ってること全然わからないにゃ。所詮ゴブリンデスにゃ?(難しい言葉は適当に聞き流す猫)
…よく見たらなかなか良さそうな王冠つけてるにゃ!欲しいにゃー!
寄越せにゃ!!
・行動
キング以外は眼中にないにゃ。王冠貰いに行くにゃ!
親衛隊とか雑魚ゴブリン呼ばれても無視にゃー
【捨て身の一撃】で王様狙いにゃ!斧ぶんぶんして突撃にゃ

隙があれば【黄金の鎖】でじゃらっと繋いで力比べ
【呪詛】の金ぴか鎖で行動阻害にゃ。
もう逃さないにゃ!こっち来いデスにゃー!
欲しいのは王冠だけにゃ。邪魔な部分はザックリデスにゃー。
・何でも歓迎


グァーネッツォ・リトゥルスムィス
そっちが人類や自然と共存を目指してくれたら良かったが、
支配する事しか頭に無いのなら因果応報、再び滅ぼさせて貰うぜ!

キングと同じ強さ、タフさの親衛隊2体を先に倒すのはさすがに無謀だな
だったらキングに逐一傷を与えて親衛隊召喚を維持を防ぐか

風竜の狩猟鱗を敵に枚数を数えられない様に複数召喚、
メイジ・ナイト・キング目掛けて囮用の3枚を目立つ様に直線に投げつつ、
本命の1枚を森に隠れる様に弧を描いて敵に気づかれない様に投げる!

これを親衛隊と戦いつつ何セットか投げて、
囮のブーメランが親衛隊に阻まれてキングに当たらなくても
本命のブーメランをキングへ時間差で連続命中を狙うぜ
「悪知恵ならオレのほうが上回ってたな!」




 まるで先程の集団戦に巻き戻された様な錯覚に襲われるが、王の親衛隊たるゴブリンメイジとゴブリンナイト、そして戦闘に特化したゴブリン戦奴は気迫が違う。
『わがせいえいよ。だいちにしみたどうほうのちがかわかぬうち、しんかをもやせ』
 更に王の激励によって配下達は戦闘力を増し、どろどろと進軍を始める。
「辺境でイキったゴブリンキングがナンボのモンですかよ」
 ここに幾分にも無愛想に声を投げるは白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)。
 草臥れた甚平に袖通した左腕は早くも狂熱に反応し、闘争の刻印を励起させるや白い虎縞模様を侵食させている。
 炯々たる金瞳は緑邪の群れに在る王を睨め、
「光栄に思いなさいや。嵐の王が蹂躙しに来てやりましたでよ」
 王は二人も要らず――と、広げた五指を鉤爪の如くさせる。
 蓋し森の王は彼の不遜も小気味佳いと、迸る鏖殺の気に口角を持ち上げ、
『ゴブリンぞくにせいきょうをもたらすたねうまとこぶくろなれば、ころさぬていどにもてなすべし』
 損耗させた後に生け捕れと、念を押す嗤笑には余裕さえ覗える。
「……成程、如何にもゴブリンの王らしい思考だな」
 略奪と異種族間交配で繁栄を築く亜人の王。
 彼の身を飾る人の頭蓋骨を炯眼に射た優希斗(f02283)は、その姿が緑邪の群れに隠れぬうち爪先を弾き、王の所へと翔る。
 合わせたのはナミル(f00003)。
 寇掠の証たる王冠を見た彼女は、年代を感じる黄金と宝石にオッドアイを煌めかせ、
「喋るゴブリンにゃ! レアモノにゃー! それに良さそうな王冠つけてるにゃ! 欲しいにゃー!」
 猫まっしぐら、王の首ごと狩らんと飛び掛かる。
 直ぐさま戦奴が壁を成すが、優希斗は『夕顔』を闇に躍らせ縊殺し、ナミルは『カタストロフ』を叩き付けて刃殺し、一撃で消滅する身ではとても両者を止められまい。
『ギャアアッ!』
『オオヲヲッ!』
 然し王へと向かう敵意は親衛隊が通さない。
 ゴブリンナイトは射線を遮るやナミルの斧撃を盾に跳ね返し、ゴブリンメイジは炎を繰り出して優希斗の俊敏を牽制する。
「にゃにゃっ!」
「、っ」
 宙に躍して一回転、悔しげに大地に着地するナミルと、ひらり外套を飜して延焼を逃れる優希斗。
 二人に追撃が迫れば、グァーネッツォ(f05124)が竜槍を割り入れて衝撃を払い、
「キングと同じ強さ、タフさの親衛隊を相手取るのは流石に骨が折れるな。ここはキングに逐一ダメージを与えつつ、親衛隊の維持と召喚を防ぐか――」
 実質三体の強敵と戦う負担は大きいと、昏がりに揺れる赭き魔眼を睨めれば、これに是を添えるように差し入った由(f01211)が、漸近する戦奴を地獄の炎に焼き払う。
 彼女はマスクの下から佳声を紡いで、
「ええ、王がダメージを受ければ親衛隊も消えます。王と彼等を引き離す戦術が要るかと」
 金銀なくては、王手も叶おう。
 なればと他の猟兵は各々の駒を標的に決め、鬱蒼の森を戦盤にして動き出す。
 その間、由とグァーネッツォは、第二波――同胞の骸を踏み越えて迫る戦奴に対峙し、
「慥かにこの世は弱肉強食……ですがタダで食べられるほど安い女にはなりたくありませんの」
 言うや由は焔の義手に握った左右の『火炎剣』を十字に赫々、グァーネッツォは柄を回して旋風を起こし、ぶわり迸る熱気に牽制する。
「そっちが人類や自然と共存を目指してくれたら良かったが、支配する事しか頭に無いなら因果応報、再び滅ぼさせて貰うぜ!」
 畢竟、猟兵とオブリビオンは倶には未来を戴かず。
 殺気と闘志が渦巻くや、会戦――! 閃光火花が暗澹の森を白ませた。


 野性の塊たる物九郎は本能で狩りの要領を心得ている。
「一撃で消滅するが、数は多い――なら範囲攻撃こそが適解ですわな」
 読みは至当。
 黒猫は前線に踊り出るなり、デッドリーナイン・ナンバーゼロ――【砂嵐の王】(ワイルドハント)の気迫に圧し、波濤と押し寄せる緑邪をモザイクに呑む。
『ギャア唖唖ッ!!』
『戯ィィイイ!!』
 縄張りに踏み入った自覚も十分。ヒゲがあればヒクヒクと動いたろうが、其に代わる野生の勘は、次なる敵襲に備えて常に冴え渡る。
『ふむ……しかし、せいえいはなんどでもよみがえる。わしをまもるたてとなり、きさまらをとらえるあみとなる』
 王が狙うは猟兵の損耗――彼は髑髏を飾る杖を振って次々戦奴を召喚し、激励して前線に送り出す。
『ォォオオヲヲ……!』
『シギャァァア!』
 そして戦奴も易々と王の元へは行かせまいと、群れを成して行く手を阻むが、先の戦闘でゴブリンの間合いや戦闘癖を分析していた優希斗なれば、我が残像に攻撃の軸を外す事は容易い。
『ガァアアッッ!!』
「――はずれ」
 凝縮された時の中で、怜悧の声は随分とゆっくり聞こえた様な――蹈鞴を踏んだゴブリンは、声の方向を辿るより早くカウンターに刃撃を喰らい、一体、また一体と大地に沈んでいく。
 斯くして戦奴があしらわれる中、親衛隊はどうだったろうか。
 ゴブリンナイトとゴブリンメイジは王を護る役儀にて、主と切り離すのは難しいが、彼等を幾許にも惹き付けたのがつかさ(f02032)。
 先には巨木を薙ぎ倒し、今も戦奴相手に無双する彼女に強い脅威と魅力を感じ得た緑邪は、王の為にと執拗に捕獲の手を伸ばす。
「……ふうん? 要するに、私を嫁にしたい、って事かしら」
 つかさは先の王の言葉を反芻するに、嫌悪も憤怒も抱かない。
 より強い子を残したいと思う彼女は、彼等に多少の共感を寄せるものの、蓋し言われる儘に服従する娘ではなかろう。
 美し羅刹は生け捕りにせんと迫るゴブリンナイトに正対すると、威風凜然、構えを取り直し、
「完膚なきまでに私を打ちのめして、力ずくでモノにする事ね」
 そうしたら、喜んで従ってあげる――。
 桜脣を擦り抜けた言は末語を疾風に掠めつつ、素手にて真っ向から飛び掛かった華奢は、振り下ろされる魔剣を颯爽と躱しながら関節を取り、極め、怪力に任せてヘシ折る。
 余りの激痛に剣は離れて巨樹の根に刺さり、
『ギャアアアッ!!』
 間もなく邪が激痛を叫べば、彼女は残念そうに嘆息する。
「悪いけど。私より弱い雄に興味無いのよ」
 ゴブリンナイトを関節技で組み伏せたつかさには、続いてゴブリンメイジが炎を繰り出して来るが、赫炎を掣肘するに彼女の【鬼神剛腕砲】(オウガアーム・カタパルト)は王の映し身たるゴブリンナイトを投擲する豪胆。
「私を打ちのめせないなら、私が打つのめすのみね」
『――ッッ、ッ!!』
 ゴブリンメイジは吃驚するや我が身に飛び込むゴブリンナイト共々、大地にどう、と転がった。
 腰を擦りつつも起き上がる二体のタフさに上等、と笑みを浮かべたグァーネッツォは、ここで【風竜の狩猟鱗】(ウィンド・ドラゴン・ブーメラン)を複数召喚する。
「王と強さは同じらしいが、知恵の方はどうかな」
 枚数は、動きは読めるかと、多分に挑発的な金瞳がブーメランの軌跡を密かに追う。
『む。このぶきはてもとにもどるとしっておる。なげてうしなうことをおしむ、かりうどがかんがえたものぞ』
 王と二体の親衛隊めがけて真っ直ぐに向かった三枚は囮――本命の一枚は彼等に気付かれぬよう弧を描きながら昏き森を擦り抜ける。
『せいえいよ、はらいおとせ。あのものがまるごしになったときにとらうがよい』
 王は親衛隊を差し向けて鱗を落とし、グァーネッツォを追わせるが、彼女は剣と炎を躱しながら、本命が時間差で王の脳天に命中する瞬間を聢と見届ける。
『ふんお!』
「はは、悪知恵ならオレのほうが上回ってたな!」
 大きなコブが現れると同時、二体の精鋭は消滅し、ドワーフの少女はニッと悪戯な笑みを浮かべた。


『ギャアア嗚呼ァァァ!!』
『グッ……ッ……!!』
 猟兵の攻撃に蹴散らされ、次々斃れる戦奴。
 親衛隊は二度目の召喚に成功したものの、彼等の機智に翻弄される始末。
『これほどまでとは。ひとすじなわではゆかぬか』
 緑邪の群れに紛れていたゴブリンキングは、手勢が乏しくなると大地を離れ、隠れ場所を森の鬱蒼に変える。
「頭上を取られている間はこちらが不利。引きずり降ろしましょう」
 時に須臾、樹木の表皮すれすれを飛んで昇るは由。
「私は空飛ぶヒーローマスク、そして全身炎のブレイズキャリバー。寧ろ空中戦は得意ですの」
 彼女にとって天地の感覚や重力は枷と為らない。
 敵が視認し得る面積が小さければ回避もし易かろう、巨樹に地獄の炎を燃え移らせながら接近した彼女は、ここで一振りの『火炎剣』を王に投擲する。
『お――っ!』
 迫る赫然、焦熱は凄まじく、王は堪らず別なる枝に飛び移ろうとするが、心理と軌道を読み切った由が何枚も上手で、もう一振りの『火炎剣』が行く先から迫ってくる。
『っ、っあああぁぁ!!』
 間もなく親衛隊が王を護るべく動き出すが、由の炎を移した巨樹が燃え、足場を無くす方が早い。
『――く、おぉぉお!!』
 王が木より落ちて尻を打つ光景はさぞかし滑稽であったろう。
 彼が痛みを叫べば、疲弊した親衛隊はまたも消滅し、守備が限りなく手薄になる。
 畳み掛けるのは今であろうと誰もが思った瞬間だった。
 遂に王に至る射線が切り開かれた――刹那、優希斗の『月桂樹』が時を殺す。
 赭眼の視界に映り込んだ漆黒の短剣は、フォワードグリップで刺突に掛かるや、直前でエッジ・イン――逆袈裟に疾走して邪血を噴かせると、其を起点に【夢月蒼覇斬】を発動する。
「――躍るよ、蒼き月の舞を」
 刻下、花脣を滑る言が連れるは斬撃の乱舞。
 無心で繰り出される超速の剣閃は暗澹に光を弾いてさやかに、激痛を叫ぶ悲鳴も置き去りに踊る、躍る。
『ずっ、あああっっ!!』
 王が叫んだ時には既に遅く、その躯には呪詛の籠められた錠が掛かっており、反撃しようにも腕は動かない。
「もう逃さないにゃ! こっち来いデスにゃー!」
『んっ! んんんっ……!!』
「ピカピカ王冠、寄越せにゃ!!」
 ゴブリンキング以外、いや王冠以外は眼中にないナミルは、奪う瞬間のみを待っていた故に決してこの機を逃さない。
『どろぼうねこめ、きさまもわしのたねをうけるはらにしてやるもの、おうのおうたるあかしをうばってなんとする……!』
「ちょっと言ってること全然わからないにゃ。所詮ゴブリンデスにゃ」
『んな!』
 じゃらっと張り詰める【黄金の鎖】(グレイプニール)を引張る腕力は圧倒的で、身動ぐ王を手繰り寄せたナミルは、右の怪腕より斧撃を振り下ろし、
「欲しいのは王冠だけにゃ。邪魔な部分はザックリデスにゃー」
 ざっくり鎖骨に刃を喰い込ませると、ガクンと顎を振る王より王冠を奪取する!
『んおおおおっっ!!』
 この時、鎖の緊張が解け、王の躯が激痛に弾かれる。
 喉元を抑えたゴブリンキングは、転倒はすまいとその場で大きく蹈鞴を踏み――、
「ドンピシャあ!」
 物九郎が肉薄したのはこの時。
 敵のホームグラウンドたる森を、色彩と輪郭を狂わせたモザイク空間に席巻した物九郎は、我が王土より【心を抉る鍵】を取り出し、強靱を得た膂力と腕力、ガチ鈍器の硬質まで全てモザイクの塊にして叩き込む。
 ド至近距離からブチ込まれる猛撃は禦ぎようも無く――。
『――っ、っっ!』
 果して絶命の一撃を許した迂闊を呪うか。
 或いは致命打を懐まで届けた戦術を讃えるか。
『ず、あ……っっ、っ……――!!』
 否。
 緑邪は逡巡する間もなく歪の空間に呑まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナハト・ダァト
ナユ君(f00421)と参加
アドリブ歓迎

女性を誘うにハ最低の言葉ダ
生まれ直しテき給エ

悪いが彼女にハ、
先約が居るのでネ

蛮行の数々は聞いているヨ
裁きの時間ダ、許しを請えるとハ思わない事ダ

今度は私ガ歩調を取ろウ
ナユ君、宜しく頼むヨ

十ノ叡智で小鬼を洗脳
同士討ちに向わせよウ
所詮は魔性、叡智の光ニ眩むと良イ

三ノ叡智、ニノ叡智
全ては『瞳』に映っていル
魔法も剣モ、私と彼女ニ届きはしないヨ

一ノ叡智、五ノ叡智
その知性デここまで統率したことハ、褒めてあげよウ
しかし領分を履き違えたネ
罪にハ罰ヲ、完全な裁キ「厳正」に受け止め給エ

あア、進もうカ。
終着点には果たしテ、どんな花が待っているのだろうネ


蘭・七結
ナハトさん(f01760)と
アレンジ等歓迎

繁栄を求むる声に、首を横に振って
残念だけれど。お断りだわ
あなたたちが阻む道の先
幽谷の虹を、あなたと見届けたいの

今度は、ナユが標となりましょう
あかい羽織を宙に遊ばせて
主を守護する配下をいざなうようおびき寄せ
戯れに舞いながら、早業で毒香を散布し

〝明けぬ黎明〟
これは精神に呼び掛ける催眠毒
毒耐性のないあなたたちには、刺激的でしょう
惑わう小鬼たちを薙ぎ払うように散らして
首魁へと続く道を切り拓くわ
――さあ、どうぞ。光樹の君主
厳正なる一撃を、目に焼き付けて

さあ。行きましょう、ナハトさん
お月さまは、待ってはくれないわ
先を越されてはいけないもの
極彩の花は、もう目の前だわ




 若しか聖泥たるナハト(f01760)に感情を映す貌があったなら、彼は柳眉を顰めたろうか――艶帯びたバリトンも何処か重い。
「女性を誘うにハ最低の言葉ダ。生まれ直しテき給エ」
 亜人とて種と胎より生れるものを。
 命を軽んじる物言いに瞋恚でなく罪を感じ得た聖者は、傍らに咲く一華、七結(f00421)が漸う首を横に振る姿に視線を落とす。
 灰色の髪に冠した牡丹一花もそよと揺れて、
「残念だけれど。お断りだわ」
 柔い佳声ながら聢と謝絶した麗人は、徐に長い睫を持ち上げ、隣するナハトを瞶める。
「この森を抜けた先――幽谷の虹を、あなたと見届けたいの」
 森には残らない。
 妻にはならない。
 我が答えが緑邪の王に鉾を突き付けるものと識る七結は、やおら『紅恋の和衣』を翻す。
「今度は、ナユが標となりましょう」
 暗澹の森に遊ぶ赤の色彩は戦奴を誘い、優艶の舞戯が彼等の隊列を乱し始める。
 鋭い嗅覚が追ったのは芳し花の匂いに非ず、香水瓶から闇へと解けた毒香――【明けぬ黎明】(デア・グロウ)は精神に呼び掛ける催眠毒につき、耐性を持たぬ戦奴は佳人の裾を掴むより早く膝折る。
『グッ、ゥ……!』
『ォ、ヲヲッッ――』
 霞む眼には判明らぬが、目下〝あか〟は双刀を閃かせて小鬼の群れを薙ぎ、王に繋がる道を切り拓く。
「――さあ、どうぞ。光樹の君主」
 厳正なる一撃を、目に焼き付けて――。
 斯くして送り出されたナハトは、眼前で未だ異様を成す緑邪の塊に手を広げ、手か――いや、叡智を顕した生命の樹が、目も眩む燦光に森を裂く。
「蛮行の数々は聞いているヨ。裁きの時間ダ、許しを請えるとハ思わない事ダ」
 彼は昏きを往く毎に邪に楔して、
「小鬼には十ノ叡智を。所詮は魔性、叡智の光ニ眩むと良イ」
 種蒔けば出ずる芽は蒔き人の命ずる儘に、醜悪なる身に相応しい同士討ちを始める。
 彼は交錯する刃撃と悲鳴を潜り、
「魔剣ノ輩に三ノ叡智を、邪炎ノ輩にはニノ叡智ヲ」
 全ては『瞳』に映っていル――と、親衛隊のこれまでの戦闘を洞察したナハトは、彼等の攻撃を見切って回避し、或いはタリオ(同害報復)を以て相殺する。
「その知性デここまで統率したことハ、褒めてあげよウ」
 首魁へと至った時は、幾分声は和らいだか。
『……ぐぐぐ。きさまもイェーガーにとどまらねばはんえいをきわめられようものを』
「領分を履き違えたネ。罪にハ罰ヲ、完全な裁キ『厳正』に受け止め給エ」
 最期は一ノ叡智、五ノ叡智が相応しかろうと断した聖者は、トリニティに強化した聖体より触腕を伸ばし、緑邪の王を巨樹の幹に叩き付ける。
『ずあぁぁああっっ!!』
 他の猟兵の攻撃に挟まれた二人の連携もまた死に至らしめる致命打。
 暫しして七結は真に訪れた静寂に佳声を染ませ、
「行きましょう。お月さまは、待ってはくれないわ」
「あア、進もうカ。終着点には果たしテ、どんな花が待っているのだろうネ」
 その音色に幾許の昂揚を感じたナハトもふうわり和らいで、爪先を動かした。

 ――極彩の花は、もう目の前。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

そう?可愛くはないと思うけど……
私達、この先に用があるの
どいてくれない?
駄目って言うなら、強引にでも通してもらうよ!

配下が多すぎる
面倒な戦いになりそうだね……
でも、ヨハンが道を切り開いてくれるなら何とかなりそう
あの親玉の相手は任せて!

万一にも雑魚がヨハンを襲おうとしたら
ダガーを首に投げて息の根を止めるよ
切り開いてくれた道を【早業】で駆け抜けたら
三叉槍で【2回攻撃】
迷わず親玉の喉と目元を狙う

片付いたらヨハンに駆け寄って、怪我をしていないか確認しよう
もし傷があったら救急箱を開けて応急処置
なかったらほっと一息吐いて
もうすぐ精霊花が見られるんだね!
さ、早く行こう!


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

人語を操る首魁か
知能無い蛮勇のみであればまだ可愛らしかったですけど。
弱肉強食というなら食われる覚悟も疾うに出来ているだろう
さっさと片付けてしまいましょう

数を増やされるのも、増やした個体を強化されるのも厄介ですね
首魁までの道は切り開きますから、
オルハさんは奴の首を狙ってください

指輪の闇を這わせ、戦場に目を走らせる
捉えきれないものは【蠢く混沌】で確実に穿ち
雑魚を散らせばあとは首魁のみ
間違っても彼女の道を邪魔する者のないように

静寂が訪れれば、指輪を秘めるように手袋を嵌めて
後は精霊花の色を見るのみ
彼女の無事な姿を見れば自然表情も和らいで、
その姿の後を追おう




 稀に高い知能を有する個体があっても良い。
 唯、人語を介するだけでなく語る様になるとは、つまり、それだけ人との関わりを――主に略奪などの悪事によって重ねてきたと言う事だ。
「人語を操る首魁か――。知能無き蛮勇のみであればまだ可愛げもあったものを」
「そう? 可愛くはないと思うけど」
 多くを受け取ってしまうのも己が性分かと、オルハ(f00497)の佳声を傍らに聴いたヨハン(f05367)は思ったろうか――藍に染まる瞳は今は唯、緑邪の王冠を睨める。
 時にオルハはゴブリンの王に正対して、
「私達、この先に用があるの。どいてくれない?」
『ならぬ。きさまはゆうようなにえとなるゆえ、もりをでることかなわぬ』
「駄目って言うなら、強引にでも通してもらうよ!」
 と、覆らぬ王の邪意に堂々たる闘志を見せる。
 三叉槍の鋒を迫り出す佳人は凜々しく美しく、王は「女傑斯くある可し」と満足した表情を浮かべると、次いで髑髏の杖を高く掲げる。
『ゴブリンのせいえいよ。われらのはんえいのためにイェーガーをとらえよ』
 刻下、王の激励に雄渾を得た戦奴らが、暗澹の森にどろり動き出す。
『ガァァァアア!!』
『オオヲヲォォ!!』
 緑邪の群れはその多さに忽ち王の影を隠そう。
 オルハは王を見失わぬよう前線に槍の穂先を衝き入れ、ヨハンは呪詛を絡めた闇を操って彼女を援護する――が、この儘では損耗は必至。
「配下が多すぎる……面倒な戦いになりそうだね」
「数を増やされるのも、増やした個体を強化されるのも厄介です」
 蓋しこの短い会話で二人が戦術を摺り合せたとは敵も知るまい。
 狙うは一点突破――。
「首魁までの道は切り開きますから、オルハさんは奴の首を狙ってください」
 ヨハンは颯爽と翔るオルハの双翼を見送るや、彼女に迫る緑邪を【蠢く混沌】(ケイオティック・ダークネス)――邪の影より這い出る黒闇を以て捉え、穿ち、
「ヨハンが道を切り開いてくれるなら何とかなりそう。あの親玉の相手は任せて!」
 力強い羽撃きで敵軍を駆け抜けたオルハは、風を集めて【フィロ・ガスタ】を一閃――『ウェイカトリアイナ』の鋒を王の喉に、そして目玉に突き付ける。
『げぇぁぁああっっ!』
 其は他の猟兵らとも死の瞬間を合わせた至妙の一撃、いや二撃。
 ヨハンは冴ゆる穂先が鮮血を繁噴かせる景に嘆声を添え、
「弱肉強食というなら食われる覚悟も出来ていたろう」
 オブリビオンも万物の理には抗えぬ――と、指輪を秘めるように手袋を嵌める。
 其が戦闘の終了と彼等の勝利を示したろう、
「ヨハン、怪我は……無いなら良かった」
 救急箱を持って駆け寄るオルハの無事な姿に自然と表情を和らげたヨハンは、彼女の佳声に静かに頷いて、
「もうすぐ精霊花が見られるんだね! さ、早く行こう!」
「――足下に気を付けて」
 楽しみだとは言わぬ己が無藍想を密かに嗤った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミンリーシャン・ズォートン
アドリブ可
ナット(f05999)さんと

私達が何者か知りつつ怒りを露にする事も無い強き王と、その王を慕い倒れた配下達を見て、ぎゅ、と唇を噛みしめ

―森の王よ、勝手に貴殿方の森へ入り込み、仕方が無かったとはいえ多くの同胞を手にかけた事、心から謝罪致します。

私はミンリーシャンと申します。 どうか…其処を通しては頂けませんか?我々とて、無益な殺生を望んではおりません。

強き王よ私達の強さを認めたならばどうかこれ以上は争いを止め、此の美しい森で静かに過ごしては頂けませんか―?

無理矢理攻撃してくる相手には蹴り技で応戦しつつなるべく説得を試みます

ナットさん―
私がパートナーだと、苦労をおかけして申し訳ないです…


ナット・パルデ
ミンリーシャン(f06716)と参加

対話による融和が可能なら、旧き頃より争いなど起こりえない
だが行いたいという強い想い、それに応じるのが大人の役目か
依頼も森で問題が起きなくなれば文句は言われないだろう

説得の目処がつくまでは積極的な攻勢には出ずに露払い

仮に説得が通じたとしても油断はできんがな
少なくとも有事の際に動けるようにはしておかんとな
マタタビを咥え、不意にくる王の攻撃より届くより先に攻撃

※台詞や詠唱、諸々臨機応変に




 ミンリーシャン(f06716)より幾分か長く生き、世の清濁を経験則として識るナット(f05999)は、対話による融和が可能なら、旧き頃より争いなど起こりえぬとは理解っている。
 蓋し知識が及ぶとはいえ、刻下、緑邪に歩み寄ろうとする少女の勇気を止めようとは――思わない。
(「対話したいという強い想い……其に応じるのが大人の役目か」)
 然う。
 氷雪を操る魔法剣士は細剣の柄に手を掛けた儘、ミンリーシャンの佳声に耳を澄ましている。
 ゴブリンの王の前に立った少女は、幾許の緊張を嚥下した後は、泉の如く澄む声に言を解き、
「――森の王よ、断りなく貴領へ踏み入り、仕方が無かったとはいえ多くの同胞を手にかけた事、心から謝罪致します」
『……ほう。むほうもののあつまりかとおもえば、れいをわきまえるものもいると』
 全き対話が通用せぬ相手でもないか、とナットの聡い耳がひくり動く。
 蓋し会話が出来ても意志の疎通が叶うとは限らない。
 ナットの雪白の指先は焼け付くほど緊迫しつつ、続く言を聴き、
「私はミンリーシャンと申します。どうか……其処を通しては頂けませんか? 我々とて、無益な殺生を望んではおりません」
『ミンリーシャンよ、なをきけばなおのこととおせぬ。つよきしゅうだんをたもつわれらなれば、よわきどうほうをぎせいにしても、つはものをえんとするのだ』
 同胞を殺められながら怒りを露にする事も無い王と、彼を慕い倒れた配下を見て、ぎゅ、と花唇を噛みしめる少女。
 言を交しながらも交わらぬ会話にそっと瞼を伏せたナットは、緑邪の王が髑髏の杖を掲げた瞬間、細身の剣を暴いて臨戦態勢を取る。
 王が決裂を選んだのだ。
『せいえいよ、かならずやイェーガーをいけどりにしてゴブリンぞくのはんえいをみるのだ』
 須臾に戦奴が森に溢れ、親衛隊が盾を成し、激励の声に殺気立つ。
 どろり、緑邪の群れが迫れば、ナットは【ドーピング・マタタビ】――マタタビを咥えて脳の正常な統御を外し、魔の手が迫る前に鋭い切先を衝き入れる。
 彼は声を張って、
「ミンリーシャン、自分の身を護れ」
 戦え、と言えば少女は苦しめられる。
 ナットの声に弾かれたミンリーシャンは直ぐさま宙に躍し、迫る剣撃を蹴撃に払うが、尚も声は王へと向かって、
「強き王よ。私達の強さを認めたならば、どうかこれ以上は争いを止め、此の美しい森で静かに過ごしては頂けませんか――!」
 ナットは少女の声が醜声に掻き消されぬよう緑邪を打ち倒す――これも配慮。
 畢竟、ミンリーシャンの希いは叶わず、ゴブリンの王は己が求めた「つはもの」に倒れる事となったのだが――今の静寂に胸を締められたのは少女だけではなかろう。
「ナットさん……私がパートナーだと、苦労をおかけして申し訳ないです」
 ぽつりと言を零し、ぺこりと頭を下げた少女は、剣を鞘に収めた優艶の声を聴き、
「森で問題が起きなくなれば文句は言われないだろう」
 俺も――、と続く言にほろり、花を濡らした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

都槻・綾
f09635/ふうたさん

第六感で見切り
オーラ防御
敵技を七縛符で相殺し、ふうたさんの援護

例え分かり合えないかもしれなくとも
王も言葉を紡いだように
智慧の証たる言語を
語り合う事を
蔑ろにしたくない

侮らず敬意を返して
領土に踏み込み荒らした事へ詫びを

然れど
王も時の領域を侵している
過去の残滓が現し世の理を崩そうとしているから

望みは種の繁殖のみなのか
先に行かせぬというのは花の守護者としてなのか

淘汰は世に絶えぬ物なれども
永き歳月で美しき情景にもまみえた事でしょう
其れらの記憶も訊ねてみたい

智を持つ者として
在るべき場所を識るも道理
骸の海へ還られますよう

鳥葬を放ち
高速詠唱、範囲攻撃にて一掃

誇りを抱きしまま
海の柩に睡れ


糸縒・ふうた
■綾(f01786)と一緒

勝手に立ち入ったことは悪いと思ってるし
お前たちが本当に害のないいきものだっていうなら
このまま、そっと……、って、考えたりもした

でも、そうじゃないから
摂理から外れたものは、正さなきゃいけない

それはオレたちにだっていえること
今回はたまたまそれが、お前たちだったってだけだ

だから、還って貰うよ


雑兵は綾に任せる
背中を預けられる相手がいるのって、心強い

【疾風】の背に乗り目指すは王一直線

多少の怪我は大目に見て
王がいなくなれば統率の取れない群れなんて怖くないよね

折角言葉が交わせるのに分かり合えないのは悲しい
だから次はせめて、共に在れるように
ゆっくり、お休み




 時に、緑邪の王が赭眼を瞠る。
 見れば綾(f01786)が玲瓏の躯を漸う屈めて立礼し、
『ほう。こうべをたれるとはしゅしょうな』
「領土に踏み入り荒らした楚忽を先ずは詫びねばと思いまして」
 揺れる濡烏の艶髪より覗く青磁色の瞳には、敬意――王が言葉を紡いだように、智慧の証たる言語を語り合う事を蔑ろにしたくないという想いが映る。
 之に気を良くした王は口角を持ち上げるが、然し彼が恭順の意を示したのではないとは、続く言からも分かろう。
 嘗ての主を写した花脣は毅然と断じ、
「然れど王よ。貴方も時の領域を侵している」
 過去の残滓が現し世の理を崩さんとするなら、漆黒の鞘は清澄なる刀身を暴かねばならぬと、白磁の繊手は柄に添えられ。
「智を持つ者として、在るべき場所を識るも道理。骸の海へ還られますよう」
『――はは、どだいむりなはなしだ』
 矢張り相容れず――王はクッと嗤笑を噛むや、髑髏の杖は戦奴を喚び衛士を呼び、決裂を示す様に両者を隔てる。
『オオオヲヲヲ……!』
『ギャァァアアッッ!』
 どろどろと迫る緑邪の群れに、ふうた(f09635)は静かに眉根を寄せて、
「勝手に立ち入ったことは悪いと思ってるし、お前たちが本当に害のないいきものだっていうなら、このまま、そっと……、って、考えたりもした」
 でも、そうじゃないと【疾風】(イダテン)を呼ぶのは、彼こそ自然の理を知るからだろう。
 黄昏と曉を秘めるアメトリンの瞳は炯々煌々、王だけを射て、
「摂理から外れたものは、正さなきゃいけない」
 還って貰うよ、と――。
 狼の背に跨がった少年は、身を低く、王へと至る道を一直線に向かった。
「王はふうたさんに任せます」
「うん、戦奴は綾に任せる」
 短く言を交して其々が位置に据わる。
 綾は護符『織』を舞わせてふうたの機動を援護し、彼の往く道を妨げんと集まる者には須臾に【鳥葬】(ヨミシルベ)を――陰陽五行を精彩と纏う鳥の羽搏きに一掃し、
「誇りを抱きしまま――海の柩に睡れ」
 時を摘むにはあまりに優艶な声。
 彼の香り立つ佳声を背に疾走ったふうたは、左右より迫る剣戟を頬に掠めながら、鮮血を手の甲に拭って王の懐に迫る。
「背中を預けられる相手がいるのって、心強い」
 痛くない。辛くない。
 狼と生命力を共有すれば、彼が追う傷も与るが、少年は痛みに端整を歪めるより眼前の王に悲哀の眼差しを注いで、
「折角言葉が交わせるのに分かり合えないのは悲しい」
『……な、にっ……っっ!!』
「だから次はせめて、共に在れるように――ゆっくり、お休み」
 刻下。
 高みより鋭爪を振り下ろし、命の摂理を翫ぶ者を骸の海に還した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『精霊花で占いを』

POW   :    健康運を占う(色は自由に指定orお任せ)

SPD   :    仕事運を占う(色は自由に指定orお任せ)

WIZ   :    恋愛運を占う(色は自由に指定orお任せ)

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 満月の夜に咲く虹色の精霊花は、深い谷間に吹く季節風が種の飛散を抑える為、別天地を求める事は難しい。
 加えて開花条件も厳しいとあらば、花を咲かせられるかどうかは死活問題――鬱蒼の森に棲まうゴブリンが略奪で繁栄を築いていたのに比べると、遙かに健気で慎ましかろう。
 然う。
 あの儘、ゴブリン族が繁殖の季節を迎えて数を増やしていたとしたら、かなり遠い地にある城塞都市も、壁を厚く高くせねば危うかったに違いない――。
 とまれ辺境に燻る脅威を取り払った猟兵は、森を抜けて幽谷に至り、其処に月光を浴びて輝く艶花を見る。
「これは――」
「わぁ……!」
 不意に歎美が脣を擦り抜ける。
 紫紺の天蓋に浮かぶ満月は、瞳に落ちてきそうなほど光をさやかに、闇に眠る幽谷を白ませている。
 眠れる花は今宵ぞ命を輝かせる時と目覚め、風の精霊に祝福を受けた蕾を開き、虹色の花弁いっぱいに月光を浴びて揺れる。
 優美にして妖艶、清楚にも婀娜にも見える姿は暫し見る者の時を奪って――。
「……嗚呼、なんて綺麗な」
 息を呑む満開の命。
 谷間に咲く花々は宛ら色彩の海。
 角度を変えて届く光は花の海原を七色に波打たせ、頭上に迫る冴月と合わせて猟兵らを別世界に誘う。
「折角だし、ゆっくり見ようよ」
「……うん」
 時を忘れる絶景に、一人、また一人と足が誘われる。
 虹色の海に繰り出た彼等は、刹那の幻想に影を溶かした――。
白斑・物九郎
●ニコリネを呼ぶ&エル(f04770)と
おう、世話ンなりましたわニコリネのねーさん
エルもザコ掃討狙撃支援、おつ

後は近場の都市に報告入れて終いってトコっスか
撤収撤収

(エルに地図をグリグリ押し付けられる)

ァ!?
なんですよ!?
花が!?
何!?

……。あー(そういやそんな話してましたわなって顔)


●SPD(仕事運・色お任せ)
今後狩りでどんだけアツい獲物とカチ合えるか占ってみましょっかな

幹が逞しけりゃそんだけ歯応えがあるフィーリングってコトにしましょっかや

ニコリネのねーさんも仕事運いっときますかよ?
なァ、あくせく自営業
そら、今ならこの花仕事運占いモードですし


ァ?(とかなんとかやってたらエルに引っ張ってかれる)


エル・クーゴー
●ニコリネを呼ぶ&物九郎(f04631)と
一帯の危険度:低~無と判定
グリモア猟兵の進路を確保します(サーチドローン・マネギを飛ばす)

これより最終目的地点、精霊花群生地への移動を開始します

座標情報、投影しま(物九郎が撤収とか言ってる)

……。(物九郎の頬に立体投影電脳地図をグリグリ押し付ける)

移動を開始します(2回攻撃で言う)


●WIZ(恋愛運・色お任せ)
幽玄な風景が確認されました
レジストリに保存します(バイザー内でシャッター音)

……。

(なんとなく物九郎を引っ張って来る
エル主導で二人で手近な花に取っ付いて摘む。相性占い)

A&W伝承の実際を検証します
相性合致率は光量・明度に比例するものと仮に定義します



 全展望型『L95式電脳ゴーグル』に周辺エリアをスキャニングしていたエル(f04770)は、一帯の危険度を『低~無』と判定し、次なるタスクを電子音声に出力する。
「グリモア猟兵の進路を確保します」
 サーチドローン・マネギ展開――と脅威を失した森に飛び立ったデブめの翼猫は、軈てその太い尻尾にニコリネを導いてくる。
 彼女は手を振って駆け寄り、
「猟団長! 副団長! わるいゴブリンをやっつけてくれてありがとう! お疲れ様!」
「おう、シバき倒してやりましたわニコリネのねーさん」
 その姿に無事を確認した物九郎(f04631)は、なれば十分と金瞳を逸らしてエルに声を投げる。
「エルもザコ掃討狙撃支援、おつ」
 其をタスクの完了と受け取ったエルは、続くプログラムの実行を告げよう。
 ゴーグルを頻りに疾走る翠光は炯々、
「これより最終目的地点、精霊花群生地への移動を開始します」
「後は近場の都市に報告入れて終いってトコっスか」
「座標情報、投影しま――」
「撤収撤収」
 然し傍らの物九郎は別方向に下駄の鼻緒を向けるものだから、エルは彼の頬に立体投影電脳地図をグリグリ押し付け、幽谷に至る道を示して見せる。
「……」
「ァ!? なんですよ!? 花が!? 何!?」
「……。……」
「……。あー」
 物九郎はぞんざいな物言いに撥ねるが、エルが折れるでも無し、結局は「そういやそんな話してましたわな」という表情で彼女の嚮導に従う。
「移動を開始します」
 押しの強さは副団長が上か。
「……ふふ、相手の扱い方を佳く知ってるのは、実は副団長の方かもしれないわねぇ」
 ニコリネは機敏に向かう足に億劫そうに続く下駄を眺めつつ、くすり笑って後を追った。

 颯爽たる跫も、歯切れの悪い下駄の音も、幽谷は等しく冒険者として迎える。
 其処に群生する虹色の精霊花は、降り注ぐ月光を慈雨と受け取め、めいっぱい花弁を広げて七色を遊ばせていた。
 遂に暴かれた絶佳の眺望を、エルはカメラに切り取って、
「幽玄な風景が確認されました。レジストリに保存します」
 バイザー内で乾いたシャッター音を鳴らす傍ら、その視覚には手頃な精霊花を物色する物九郎を映す。
 彼が占うは仕事運か、
「今後狩りでどんだけアツい獲物とカチ合えるか占ってみましょっかな」
 まるで獲物を狙うように、七色の海原を歩く物九郎。
 その基準は自ずと求める獲物を映したものになる。
「幹が逞しけりゃそんだけ歯応えがあるフィーリングってコトにしましょっかや」
 ニ、と口角を持ち上げて決めたのは、タンポポの様に逞しく根を張る一輪。
 いかにも強靭な茎の太さに増して、その巨きさにはニコリネも瞳を瞠ろう、彼女は思わず駆け寄って、
「なんて大物……!」
「おう、ニコリネのねーさんも仕事運いっときますかよ? なァ、あくせく自営業。そら、今ならこの花、仕事運占いモードですし」
「! やります。やらせて頂戴」
 顧客の定着と販路の拡大を希う彼女は、こっくり頷いて腕捲り。
「せーのでいきましょっかや」
「せーの!」
 うんとこしょ、どっこいしょ。
 然ればボゴン、と引っこ抜けた精霊花は、芯に閃光を疾走らせるや一瞬で黄色に染まり、物九郎とニコリネの顔を煌々照らす。
 花屋は嬉しそうに口を開いて、
「黄色は幸せを齎す色。ただ、濡れ手に粟とはいかなくて、其を得るには相応の消費も必要――頑張った分だけ報酬が得られる、という事ね」
 何処となく浮ついた色と思った物九郎も、戒めを帯びる光彩は悪くないと、未だ芯に残る閃雷を見つめる。
 この時、エルは物九郎をむんずと引っ張って、
「……。……」
「ァ?」
 恣意性はない。
 彼女は取得した事前情報に従って組み上げたプログラムの通り、依頼を完遂させるべく、物九郎と相性占いを実行する。
「アックス&ウィザーズ伝承の実際を検証します」
 手近な花に繊手を伸ばしたエルは、物九郎が指を差し出すに合わせて其を摘み――、触れた位置から淡く穏かに色を変える優美を記録する。
「相性合致率は光量・明度に比例するものと仮に定義します」
 目下の色を表現するに、データベースを検索した彼女が導き出すは「パライバトルマリン」(電気石)。
 ネオンを帯びる精彩は青にも緑にも輝いて、眩い光の揺籃に視線を結ぶ二人をいつまでもいつまでも照らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宇冠・由
無事にゴブリンキングを倒せました
燃やしてしまった木にごめんなさいして、虹色の精霊花を一輪だけ手に入れます。沢山の取り過ぎは欲張りですので

「触れると色が変わりますのね、一体何色になるんでしょうか」
わくわくですわ

燃やさないよう炎の身体は使わず、召喚した小動物にとって頂きます
(私のお母様の――はい、健康運にしましょうか)
大事な大事な家族の一人。私に名前と居場所をくれた方。これまで沢山傷ついて、猟兵でいる限りこれからも決して無傷で済まないと思います。ですが、ずっと元気でいてほしいのです



「折角、咲き揃ったんですもの。燃やさないようにしませんと」
 それに、沢山取り過ぎては欲張りだから。
 あなたが選んでくれたものを一輪だけ。
「私のお母様の分を――はい、健康運を見ましょうか」
 全身が地獄の炎たる由(f01211)は、群生する精霊花を焼いてしまわぬよう【可愛いは正義】(ラバーズ)を召喚し、愛くるしい小動物に一輪だけ取って来て貰う。
 鬱蒼の森を抜ける際にも、燃やしてしまった巨樹に「ごめんなさい」と頭を下げた少女だ。
 由は一際の命の輝きを見せる精霊花を慈しみつつ、その力強い生命力に母の健康を願って、小動物が運ぶ一輪を瞶める。
「一体何色になるんでしょうか……わくわくですわ」
 大事な大事な家族の一人。
 私に名前と居場所をくれた方。
 そっと胸に手を宛てて母を想えば、七色を遊ばせていた精霊花が、光を放って身を透き通らせ――、
「……クリスタルに輝く花弁に色味が挿して……」
 宛ら月光を宿した様に透徹なる花弁は、美し紫を帯び始める。
 高貴を漂わせる神秘的な色合いは然し非常に繊細で――思わずその色に母を重ねた由は、彼女の強さと儚さを映し、不意に胸に寄せた手をぎゅ、と握る。
 佳声は月下に囁(つつや)いて、
「これまで沢山傷ついてきたお母様は、猟兵でいる限りこれからも決して無傷で済まないでしょう。……ですが、ずっと元気でいてほしいのです」
 心身共に健やかであって欲しい。
 由は花弁に色付いた優婉の紫を、時の許す限り眺めた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
つかささん(焼き肉担当・f02032)と同行
ふぅ、辿り着いたね(周囲の景色を眺め見知った知人がぼんやりしているのに気がつき)
つかささん、いつも助かっています
そうですね、戦場でご一緒するのは初めてでしたね
お陰様でゴブリンキングの懐に飛び込めました、ありがとうございます
この際です、一緒に花占いでもしませんか?
……逢い引き(目を丸くして)?
いや何かの縁かな、と思ったからですよ(微笑)
ニコリネさん、そういう訳で俺達の相性占いお願いします
透き通った湖のような青色ですか
これにはどんな意味があるのでしょうね……
(結果とつかささんの意見を聞き)つかささんらしくて、とても良いと思いますよ
*他の方との絡みOKです


荒谷・つかさ
【優希斗(f02283)】と一緒に行動
占いに関してはニコリネに教えを乞う

(特に何をするでもなく一人で居る時、優希斗に声をかけられて)

お疲れ様、優希斗。
そういえば、共に轡を並べて戦うのは初めてだったわね。

一緒に、花占いを?
それ、もしかして逢引きのお誘いかしら。
……なんてね。冗談よ。
ええ、構わないわ。やりましょうか。
とはいえ、私もこの手の占いは疎いから……そうね、ニコリネに教えてもらいましょ。

占いは優希斗との相性占い
私が花に触れると、透き通った湖のような青色が、水面に触れたように波打つ

結果がどうあれ、深くは気にしないわ。
占いなんて、所詮は切っ掛け作り。
それをどう受け止め活かすかは、私達次第だもの。



「ふぅ、辿り着いたね」
 幽谷に吹く東風に濡羽色の髪を遊ばせた儘、月下に煌く虹色の精霊花を眺め見た優希斗(f02283)は、佳景に溶け込む見知った佳人に気付き、声を掛ける。
 特に何かするでもなく、光の波濤に身を委ねていたつかさ(f02032)もまた、面識ある彼に振り返って、
「つかささん、いつも助かっています」
「お疲れ様、優希斗。共に轡を並べて戦うのは初めてだったわね」
「そうですね、戦場でご一緒するのは初めてでした」
 オブリビオンに係る事件で幾度と関わった同士、既に見慣れた顔とはいえ、戦場を同じくする感覚は新鮮だと声が揃う。
 優希斗は間近に見た凄艶の無双を振り返って淡く咲み、
「お陰様でゴブリンキングの懐に飛び込めました、ありがとうございます」
「私の方こそ――」
 この時サッと吹き流れた東風に二人が視線を同じくすると、優艶のテノールが小気味佳い提案を風に運ばせる。
「この際です、一緒に花占いでもしませんか?」
「一緒に、花占いを? ――それ、もしかして逢い引きのお誘いかしら」
「……逢い引き? いや何かの縁かな、と思ったからですよ」
 お互いに語尾を持ち上げる会話が続く妙を感じつつ、目を丸くしたり、微笑したり。
 つかさは持て余した身を漸う虹色の波に差し入れ、
「……なんてね。冗談よ。ええ、構わないわ。やりましょうか」
 と、花弁を繊手に撫でつつ、瞳に留まった一輪を優希斗の前に示す。
 二人の指に摘まれた精霊花は、揺れる虹色を軈てひとつにして――透き通った湖のような青色を、水面に触れたように波打たせた。
 それはとても綺麗で、心地良いような――。
 二人は花の色を見詰めた儘、静かに言ちて、
「これにはどんな意味があるのでしょうね」
「私もこの手の占いは疎いから……そうね、ニコリネに教えてもらいましょ」
 と、目下観察に勤しんでいた花屋を手招く。
 彼女は一輪を間に指を揃えた儘の二人を見て、頬笑み、
「花の青は気品や気高さを表すの。ガードが堅めの二人が、少しずつ距離を近付けていく……そんな感じねぇ」
 戦場を同じくし、花占いに興じる――今まさに二人の距離が近付いているのだと言う。
 更にニコリネは美し花の瑞々しさに瞳を細めて、
「それにこの透明度、優希斗さんとつかささんは、まだまだ、もっと関係を深められるんじゃないかって思うの」
 青は蒼にも碧にも、藍にも染まろう。
 そこまで言うとニコリネは、「あとは二人でごゆっくり」と靨笑を置いて離れる。
 何故、彼女が小躍りしているのかと、小首を傾げた二人は視線を戻して、
「占いなんて、所詮は切っ掛け作り。それをどう受け止め活かすかは、私達次第ね」
「つかささんらしくて、とても良いと思いますよ」
 結果を気にしないと言うつかさと、彼女の言を微笑に受け止めた優希斗は、ふと、互いの距離が今までになく近い事に初めて気付く。
「あ……」
「えっ、と」
 二人の色に染めた花より、果たして指は離れただろうか。
 其は月下の二人にしか分らぬ事だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
地上のオーロラみたいな、幻想的で不思議な景色だ
ゴブリン退治の疲れが吹き飛んじまったぜ

この精霊花で占いが出来ると聞いたが、
摘まずに触れるだけで占えないだろうか?
今夜だけの命であっても、オレの我儘であるけれど、
どうしても摘むのに抵抗を感じまちまうんだ

占うのは健康運で、目を瞑って優しく触って色は運任せだ
いい結果だったら今のままの生活を心がけて
悪い結果だったら生活の改善を意識してみるぞ
占えなかったらそれはそれでよしだ

占いが終わった後は眠気覚ましのストレッチをしながら
夜明けまで谷の中を歩き回って様々な形の虹の海と月を眺めるとするか



 鬱蒼の森を抜けて直ぐ、煌々と照る月の明るさに驚いたグァーネッツォ(f05124)だが、幽谷に入りて間もなく飛び込んだ光の波濤に、彼女の花唇は先ず嘆声を滑らせた。
 後に口角はふんわりと持ち上がって、
「地上のオーロラみたいな、幻想的で不思議な景色だ……お蔭でゴブリン退治の疲れが吹き飛んじまったぜ」
 身を軽快に、然し逸る爪先が花を折らぬ様、ゆっくりと虹色の海原に分け入る。
 僅かに戦ぐ東風も優しく、グァーネッツォは小麦畑の様に輝く金髪を風に遊ばせながら、七色に揺れる花畑に身を屈める。
 蓋し指は躊躇って、
「……これ、摘まずに占えないだろうか?」
 今宵限りの命と知りつつ、己が我儘と知りつつ。
 それでも花を手折る事に抵抗を感じる彼女は、目を瞑って優しく触れるだけにする。
 占うは健康運――。
「いい結果だったら今のままの生活を心がけて、悪い結果だったら生活の改善を意識しよう」
 何せ依頼次第で昼夜を問わず世界を駆け巡る身だ。
 確り食べている自覚はあるが……と思いを巡らせていると、精霊花は閉じた瞼を刺激するように一際耀いて――、
「この目も覚めるような赤色……馴染みの市場でよく見かけた柘榴を思い出させるぜ」
 其処では転がるほどありふれた色彩だが、離れると懐かしさを感じる。
 旅に出ても原点の味を忘れるな、と言う事か――グァーネッツォは街の人々の溌溂とした姿を思い起こすと、微笑を置いて指を離す。
 それから彼女は月下の幽谷を見渡し、
「眠気覚ましにストレッチをした後は、夜明けまで絶景を眺めるとするか」
 と、大自然が生み出す奇跡に身を任せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナミル・タグイール
からふるきらきらにゃー!とっても綺麗にゃ!(ハイテンション猫)
色んな角度から見たりツンツン触って輝きを楽しむにゃー

占いもできるらしいからやってみたいにゃ!もちろん金運占いにゃ!
虹色もいいけどやっぱりらっきー金ぴかになってほしいにゃ。(完全にお任せ)
・金ぴか系の色なら大喜び
きんきらにゃー!これからも良いこといっぱいありそうにゃ!
・他の色ならその色の意味を考えてから周りの様子を見て再チャレンジ
綺麗だけど金ぴかじゃないにゃ……(周りをチラチラ見たあとにこっそり新しく摘もうと)

王冠ももらえたし綺麗な花もみれたしでほくほくにゃ。幸せにゃ!
ニコリネや他の人との絡み歓迎
何でも歓迎



 春風に揺れる木漏れ日を忙しなく追う猫などは街往く人々に笑顔を齎す妙景だが、虹色の海原に嬉々と瞳を輝かせ、キラキラを求めて駆け回るナミル(f00003)のハイテンションも、見る者に笑顔をさせたに違いない。
 彼女はゴブリンの王より奪取した王冠を片耳に引っ掛けつつ、色彩の波をずんずん掻き分け、
「からふるきらきらにゃー! とっても綺麗にゃ!」
 光に誘われる儘に右へ左へ。
 上から下からジッと瞶めた後は、指でツンツン。
 大きな瞳で微細な光彩を追う様はまるで猫のそれで、ふと気になった一輪に目を留めたナミルは、其をプチンと手折る。
「金運を占ってみるにゃ! 金ぴかゴージャスになりたいにゃ!」
 指が触れるや光を弾いて虹を揺らす精霊花。
 漸う色が定まれば、傍らで見ていたニコリネが頬笑んで、
「まぁ、五つの花弁が先往くほどにピンクに染まって……まるでペンタスね。願い事が叶うと言われる花のよう」
「ピンク……綺麗だけど金ぴかじゃないにゃ……」
 蓋しフィーリングはイマイチ。
 ナミルは周りをチラチラ見ると、新たな一輪を摘み、じっと色の変化を観察する。
「やっぱりらっきー金ぴかになってほしいにゃ……きたにゃ! きんきらにゃー!」
 先程摘んだ一輪は、早速ナミルの願いを叶えたか。
 其は彼女が望む通りの黄金色を放ち、月光を浴びて燦々と照る姿は、瞶めるオッドアイも輝かせる。
「これからも良いこといっぱいありそうにゃ! ほくほく、幸せにゃ!」
 金ピカ王冠を手に入れ、金ピカ精霊花もゲットできた。
 うっとりと瞳を細めるナミルに、笑顔を移したニコリネは言を足して、
「黄金は特別な存在感と魅力、それに豊かさを持つ色。それ故に色が持ち主を選ぶものだけど、うん」
 ナミルほど相応しい者は居まいと、力強く頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
ナハトさん(f01760)と
アレンジ等歓迎

月光を浴びて綻ぶ幻想の花
はじめて眺む極彩色に、心を奪われる
――ああ。これが、〝虹色〟
本当に、ナハトさんの言うとおりだわ
嘗て訪れた、色彩の花園を連想して

ナユのココロを表す色
それは、どんな色なのかしら
咲いた艶花を、1輪手折って
ココロを映す花を、じいと見つめる
占う内容は口にせず
唯、静かに花弁を散らして

ナハトさんは、鮮明なココロをお持ちだわ
共に過ごした時間は、僅かだけれど
ナユのココロには、あなたとの思い出が刻まれてゆく
あなたの光が、ナユに標をくださったように
きっと、ステキな人を導くことでしょう
眩い光を宿した、心優しいあなた
溢れんばかりの幸せが降り注ぎますように


ナハト・ダァト
ナユ君(f00421)と参加
アドリブ歓迎

…いけなイ。思わず目を奪われテしまった様ダ。
それにしてモ。想像以上の美しさダ。

私の花畑ニ勝る程ノ色合いガ、この地に存在していようとハ

花占イ?
勿論、迷信ト切り捨てる程。ロマンの欠けた精神は有していないヨ

たダ…健康モ仕事モ。今の私に必要な占いとハ、考えられなくてネ。
他ニ何があるんだイ?

恋愛?

私にハ、愛も恋モ。そう言う感情があるト理解しテ真似た物ばかりダ
正しい恋愛が出来るとハ思えないヨ

…たダ、こうしテ触れ合う事デ。
私の中にモ、それを望ム願望があるト。理解は出来タ

まダ、どんな色カ分からないけド。
こんな私でモ、受け入れてくれる者であれバ。
返す事位ハ出来るだろうネ



 人跡未踏の幽谷に至った七結(f00421)とナハト(f01760)は、東風に揺れる光の海原、その波濤に、我が影が攫われる様な錯覚を覚える。
 月光を浴びて綻ぶ幻想の花は静謐にあって驚くほど饒舌に、命の耀きを色彩に変えて揺れ、踊る。
 七結は初めて眺む極彩色に心奪われ、吐息し、
「――ああ。これが、〝虹色〟」
 本当に、彼が言った通り――と。
 優艶の少女は嘗て訪れた色彩の花園を思い起こし、隣するナハトを仰ぐ。
 見れば彼は、想像を越える絶麗に暫し時を忘れて立ち尽くしており、
「……いけなイ。思わず目を奪われテしまった様ダ」
 花を前に褒め言葉を失うとは、と紳士の苦笑を零す。
 ナハトは快い吃驚を嚥下すると、奇跡の精彩を改めて見渡し、
「私の花畑ニ勝る程ノ色合いガ、この地に存在していようとハ」
 そう言いながら七結を虹色の海にエスコートし、月下の逍遥を楽しむ。
 これだけの群生にあっても、特別な一輪に巡り合うとは数奇なもので、七結は己を呼ぶ声に足を止めると、さやかに揺れる艶花を手折って、じいと瞶める。
(「――ナユのココロを表す色は、一体どんな色かしら」)
 占う内容は口にせず、色の変化を待つ。
 然れば繊指に触れた部分からスッと透明になり、茎には血管を通した様に鮮やかな赤が疾走する――まるで生命を得たセイクリッドセブン。
 斯くも神秘的な変化を見たナハトは感歎を添え、
「勿論、迷信ト切り捨てる程。ロマンの欠けた精神は有していないヨ」
 花占いも示唆に富むものと受け取るものの、己が標に成るとは思ってない様子。
 彼は精彩の海を撫でながら言を重ねて、
「健康モ仕事モ。今の私に必要な占いとハ、考えられなくてネ」
 生きとし生けるものの為に診療所を開く身では、占いに判断を任せる訳にもいかぬ、と揺れる花弁を慰める。
 ゆっくりとした歩みに続く七結の視線を受け留めた彼は、ふんわり答えて、
「私にハ、愛も恋モ。そう言う感情があるト理解しテ真似た物ばかりダ。正しい恋愛が出来るとハ思えないヨ」
 深みある声。
 その静かな抑揚に完全なる隔絶を感じ得ぬのは、彼が纏う光からも分かる。
「……たダ、こうしテ触れ合う事デ。私の中にモ、それを望ム願望があるト。理解は出来タ」
 手は、刹那を惜しんで命を輝かせる花を愛で。
 ナハトはそれらを摘まずに送りつつ、七結に向き直って、
「まダ、どんな色カ分からないけド。こんな私でモ、受け入れてくれる者であれバ。返す事位ハ出来るだろうネ」
「ナハトさん」
 鮮明なココロを持つ人。
 二人が過ごした時間はまだ僅かに過ぎないが、共に見た景は七結の心に慈雨の如く染みて、温かな思い出として刻まれてゆく。
「あなたの光が、ナユに標をくださったように。きっと、ステキな人を導くことでしょう」
 優艶の少女は香り立つ声でそう囁いて、
「眩い光を宿した、心優しいあなた。溢れんばかりの幸せが降り注ぎますように」
 と、極彩の世界で光れる聖者に愛(いつく)しみ溢れる祝福を捧げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

月光に冴える虹か
……素直に綺麗な景色だと思います
行きましょうか。
彼女に続くように、花々の園へと歩みを進める
風に乗る花の香りが甘く優しい

覚えていますけど……、
服を引かれ、彼女の翠瞳を覗いて
……いいですよ。やってみましょうか。
占いは物によります。
信じるに値すると思うものもあれば、眉唾物もありますし。
ああ、それと。こういう時は良い結果の物だけ信じようと思います。

目線を合わせ、花に触れ。
触れる前に願ったのは、――

虹の花園を眺める彼女と並び、
今暫くはこの景色を目に焼き付けて

花も、この静けさも――悪くない心地だ


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

綺麗……
月下に精霊花は揺蕩う虹のよう
なんて幻想的な光景なんだろう
もっと近くで見てみようよ

ねぇヨハン。ニコリネの話を覚えてる?
ほら、精霊花で占いができるって言っていたよね
……、
彼の服の袂をくいと引いて
君との相性を占ってみたいな
なんて言ったら、迷惑?
そもそも占いなんて信じないタイプだったりして
あはっ、結果のいいものだけ信じるのは私も同じ!
悪い結果は聞かなかったことにしちゃうよね

誘いに乗ってもらえたら素直にお礼を伝えて
2人同時に摘めばいいんだったよね
合わせた目線を合図に、そっと手を伸ばす
精霊花が映したその色は――

占い終わった後も虹の花園を観賞
ヨハンと一緒に、時間を忘れるほどに



 月下に華やぐ精霊花は、七色の精彩を幽谷に敷き、東風に撫でられ光を揺らす。
 折にふあ、と躍る粉雪は花粉だろうか――風の精霊が運ぶ命の種が宙を泳ぎ、大地と月夜を繋ぐ。
「綺麗……なんて幻想的な光景なんだろう」
 まるで揺蕩う虹のよう――と、桜脣より嘆声を零すオルハ(f00497)。
 その隣で絶麗の景を眺めたヨハン(f05367)も、あまりの眩さに藍染まる瞳を細め、
「――月光に冴える虹か」
 足を運んで見る価値のある、素直に綺麗な景色だと言う科白に、彼らしい素直さと無愛嬌を見たオルハは、くすり笑って手を差し伸べる。
「もっと近くで見てみようよ」
「行きましょうか」
 今宵は彼女の往く儘に。
 オルハの軽快な足取りに続いたヨハンは、美し精彩の海を見渡す。
 風に乗る香気が甘く優しい様な――細指に眼鏡を押し上げて馨の主を辿れば、優婉の精霊花は我ぞ我ぞと身を揺り動かして。
 時にオルハはスカートの裾をふわり揺らして振り返り、
「ねぇヨハン。ニコリネの話を覚えてる? ほら、精霊花で占いができるって言っていたよね」
「覚えていますけど……」
 花へと注いでいた視線を翠瞳へと繋げば、可憐の繊指はヨハンの袂をくいと引いて、少々の間を嚥下した後に口を開く。
「君との相性を占ってみたいな、なんて言ったら、迷惑?」
「……いいですよ。やってみましょうか」
 其の翠瞳も光の揺籃に輝いているとは今は言うまいが、ヨハンは嬉しそうに咲む少女に答えて、
「そもそも占いなんて信じないタイプだったりして」
「物に依ります。信じるに値すると思うものもあれば、眉唾物もありますし」
 言を紡ぐがてら、指先は精霊花の光を慈しむ様に撫でる。
 無藍想な麗顔、静かな物言いが言を足す時こそ彼の深奥が垣間見えよう、
「ああ、それと。こういう時は良い結果の物だけ信じようと思います」
「あはっ、私も同じ! 悪い結果は聞かなかったことにしちゃうよね」
 オルハは佳声を転がすと、ふと目に留まった一輪を指差し、繋ぎ合せた目線を合図に、そっと手を伸ばす。
 ぷちん、と二人一緒に摘んだ精霊花は一瞬、眩い光を放ったかと思うと、幾許の瞬きの後に漸う色を定め、淡く柔かいピンク色をその身に映し出す。
「ほんのり、仄かなピンク……」
 オルハは触れる前に何をか願ったろう。
 甘く薫り立つような若々しい色を瞶めた少女は、ごく近い距離で優婉のテノールを聴き、
「明るく透明感もあって、悪い結果ではなさそうですね」
 と、冷静に色味を見るヨハンにきゅ、と笑顔を見せる。
 それから月夜を逍遥した少女の足が軽快を損ねなかったのは、オルハもまたこの色を「良い結果」と信じたのだろう。
「時間が経つのも忘れちゃいそう」
 彼女は虹の花園を楽し気に散策し、跫音を並べたヨハンは奇跡の佳景を瞳に焼き付けるよう観賞を深める。
「花も、この静けさも――悪くない心地だ」
 月はさやかに。花はゆかしく。
 二人の影は、夜が白むまで虹色の海原を優遊と泳いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

糸縒・ふうた
■綾(f01786)と

月光を浴びて咲く花
お陽さまはぽかぽかあたたかいけど眩しくて
ちょっと、わかる気がする
君は、おれとよく似ているね

風にそよぐ心地良さをその侭に
獣の耳を澄ますは星と花の聲

花を照らす明るい光
陽の光よりは陰るはずのそれを、眩しく感じて

つらい?

見上げた青磁の友の心遣いが優しくて

だいじょうぶ
今は、綾といるからへいきだよ

繋いだ手のぬくもりから
じんわり痛みが解けていく気がして
こんなに穏やかな満月の日は、初めてなんだと

みらい…、どうだろ
先のことはよくわからない
だから楽しいんじゃないかなって、思うかな

綾も、そうでしょ?

綾と出逢ったのは偶然だったけど
こうして今一緒にいられるから

それを、大事にしたい


都槻・綾
f09635/ふうたさん

さやさや
風に游ぐ音は
精霊達の歌聲か
花々の囁きか

獣耳を持つ彼は
私より鮮やかに花達の賛歌を聞き取れるのだろうと
微笑ましくもあるけれど
同時に
満ちる月へ微かな翳りの眼差しを向ける

――お辛くないでしょうか、

狂月病
短命の種族
せめて此のひと時
支えられるならと手を差し伸べれば
繋ぐ温度に
此方こそ心が癒えていくようで

今宵は
花を摘むのは
命を摘むのと同義に思えてしまうから
花弁をそっと指先で揺らすのみ

ふうたさんは
未来を知りたいですか?

違わぬ想いに笑み返し

――えぇ、私も、未知が楽しい
驚きに溢れた毎日を大切に
貴方と歩んでいけたら素敵ですね

花達も祝福してくれるだろう
優しき友と歩む此れからの日々を
きっと



 満月の夜。
 人跡未踏の幽谷に足を踏み入れたふうた(f09635)は、極彩と薄彩の織りなす光の海、月光を浴びて咲く花に共感を寄せる。
「君は、おれとよく似ているね」
 お陽さまはぽかぽかあたたかいけど、眩しくて――。
 春の陽光に花開くでなく、月に照らされて艶姿を暴く精霊花。聡い獣の耳には彼の者の聲が聴こえようか――ふうたは東風にそよぐ七色を瞶める。
 傍らには綾(f01786)。
 青磁香炉の麗人は、馨り立つテノールを色彩の海に揺蕩わせ、
「風に游ぐ音は精霊達の歌聲か、花々の囁きか――」
 さやさやと鼓膜を擽る精霊の聲にそっと艶笑を零す。
 蓋し僅かにも先を往く獣耳の少年は、より鮮やかに花達の賛歌を聴くだろうか――綾は自然に寄り添う彼を微笑ましく想いつつ、同時に満ちる月へ微かな翳りの眼差しを向ける。
「――お辛くないでしょうか」
 言裡に秘める狂月病への不安は、美し声音に聢と顕れよう。
 悠久の時を経た我が身に対し、彼が持つ時間はあまりに短く――せめて此のひと時を支えられるならと、手は光へと伸びる。
 然れば少年の帽子の鍔は此方を向いて、
「つらい?」
 語尾を持ち上げた己こそ言を反芻する。
 透徹たる紫瞳は、花を照らす冴光――陽の光よりは陰る筈の其の眩しさに細みつつ、眼前に差し伸べられた手を、愛(いつく)しむように取る。
「だいじょうぶ。今は、綾といるからへいきだよ」
 見上げた青磁の友の心遣いは斯くも優しくて。
 繋いだ手の温もりから、じんわり痛みが解けていく気がした少年はそと綻び、
「こんなに穏やかな満月の日は、初めてなんだ」
「ふうたさん」
 繋ぐ温度に此方こそ心が癒えていくようだと、綾も微笑を零す。
 そんな二人は花占いに興じようか――いや、今宵花を摘むのは命を摘むのと同義と避けた彼等は、花弁をそっと指先に揺らし逍遥するのみ。
 折に挟まれる会話もゆかしく、
「ふうたさんは未来を知りたいですか?」
「みらい……、どうだろ? 先のことはよくわからない。だから楽しいんじゃないかなって、思うかな。――綾も、そうでしょ?」
 透き通る声、違わぬ想いに笑み返す綾。
 凄艶は光の波濤に視線を巡らせながら、言を足して、
「――えぇ、私も、未知が楽しい。驚きに溢れた毎日を大切に、貴方と歩んでいけたら素敵ですね」
 優しき友と歩む此れからの日々を、きっと、花達も祝福してくれるだろう――と。
 芳醇なる嫣然を受け止めたふうたは、彼もまた美しく刻まれる時を噛み締め、
「綾と出逢ったのは偶然だったけど、こうして今一緒にいられるから――それを、大事にしたい」
 言は確りと。瞳は真っ直ぐに。
 精彩の揺蕩う虹色の海に、二人の視線はいつまでも結ばれていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミンリーシャン・ズォートン
ナット(f05999)さんと

月の光を浴びてその花弁を開き、夜に虹を咲かせる幻想的な景色を静かに眺め

ふわりと風が吹けば揺れる地上の虹に優しい笑みを浮かべ

ナットさんが花を丁寧に採取している姿に気付けばそっと傍でその様子を見守りつつ感謝の気持ちを伝えます

『ナットさん、今日は、一日付き合って頂いて、ありがとうございました』

ナットさんと出逢ってから付き合いはまだ短いけれど、確かに、大切だと思えるかけがえのない存在に優しい笑みを浮かべ

感謝の気持ちを歌にして

―♪―――♪♪

歌っていると、何だかどっと疲れが…

少しだけ…

花占いも、心苦しい戦闘も
今だけは忘れて

月灯りのお布団と
虹の花に抱かれる様に
小さな寝息を溢します


ナット・パルデ
ミンリーシャン(f06716)と参加


月光の下、咲き誇る幻想花
これぞ冒険の醍醐味というものだ
共に来た花の少女の目にはどのように映るのか
願わくばこれからも素敵な景色を目指して欲しいものだ


さて、本来の目的は済んだので俺個人の目的を
生態系を崩さない程度に花を採取
糧を頂くのだ。周囲の精霊に敬意は払わねばな

摘む途中色が変わるかも知れんが特には気にしない
占いはあまり信じないのでな



色々あったが
ま、こんな日も悪くはない
疲れて眠れる少女へ微笑み
花を一輪髪に添える、その色は



 満月に照る隘路を抜け、遂に幽谷に至ったナット(f05999)は、犀利な青瞳に飛び込む圧倒的絶麗に、嗚呼、と感歎を嚥下する。
「これぞ冒険の醍醐味というものだ」
 月光の下、咲き誇る幻想花。
 この霊異、奇跡の優婉こそ冒険の報酬に相応しいと、漸う口角を持ち上げた氷雪の剣士は、傍らで青瞳をキラキラと輝かせるミンリーシャン(f06716)に穏かな流眄を注ぐ。
 少女はその柔かな桜脣から歎美が擦り抜けたと自覚しようか、
「――きれい」
 月の光を浴びて開く花弁の精彩。
 月夜に虹を咲かせる幻想的な景色は、見る者の心まで七色に揺らす。
 花人の佳顔がほろ、と綻んだのは、ふわり東風が幽谷を抜けるや地上の虹が光を波打たせる――美し生命の揺籃を愛(いつく)しんで。
 ナットは冒険を共にした花の少女の瞳には今の佳景がどう映るだろうと視線はその儘、優しいテノールを添えて、
「願わくはこれからも素敵な景色を目指して欲しいものだ」
 世界には苦労して足を運ぶ価値のある場所が数多ある。
 曇りなき瞳が視るべき絶景が数多ある――と、若き冒険者に希望を見る。
「ナットさん」
 次に少女が彼を見た時には、ナットは片膝を付いて鞄を開けており、
「さて、本来の目的が済んだ今、俺個人の目的に取り掛かろうか」
 と、慣れた手つきで始めるは精霊花の採取。
 彼は周囲の精霊に敬意を払いつつ、生態系を崩さない程度に糧を頂く。
「――」
 手際良いナットがふと手を留めたのは、指に触れた瞬間に精霊花が光を弾き、色をひとつに定めたからか――然し彼は沈着を崩さず、
「占いはあまり信じないのでな」
 特に気にも留めず、蓋し佳い色だと喉奥に感歎を置いて作業を続ける。
 暴悪を斬り伏せた時分より手は軽快な様な――気付けば傍で採取の様子を見守っていたミンリーシャンは、そっと佳声を紡ぎ、
「ナットさん、今日は、一日付き合って頂いて、ありがとうございました」
 一語一語に感謝を籠める。
 ナットと出逢ってまだ日は浅いが、少女の中で確かに、大切だと思えるかけがえのない存在となった彼に、優しい笑みを浮かべる。
 温かな気持ちは旋律と変わろう、鈴振る様な声は風に乗って、
「――♪――――♪」
 其は和やかな揺籃歌であったか。
 花占いも、心苦しい戦闘も、今だけは忘れて――心地良い疲労に華奢を横たえた少女は、それから「少しだけ……」と吐息して虹の花に抱かれる。
「月は明るいが今は夜。無理もない」
 長い睫をしっとりと落した少女の肩が冷えぬよう、外套を掛けてやるナット。
 月明りに艶めく髪には、そっと先程の一輪を添えて。
 ほんのり、ゆかしく色を帯びた精霊花、その水色は宛ら爽涼の泉――純粋無垢なる精彩は、月光を集めて煌々、優しく少女を包むよう。
 ナットは彼女の髪に佳く馴染む色に微笑を零して、
「色々あったが……ま、こんな日も悪くはない」
 と、呟きを月影に隠した。

 月下に咲く虹色の精霊花。
 人知れぬ場所に群生した精彩は、生を、命を謳うように輝き、見る者の時と心を奪って次代を繋いで往く。
 其の美しさと儚さを存分に堪能した猟兵らは、思い出を胸に、棲息地は秘匿した儘――月の咲みに送られて幽谷を後にしたという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月24日


挿絵イラスト