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美味し楽しい、涼やかな夏

#ダークセイヴァー #ノベル #猟兵達の夏休み2024

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ルーシー・ブルーベル



朧・ユェー




 空を見上げれば、太陽もさんさんと輝く夏の晴天。
 吹き抜ける風も熱を帯びて温く、ジリジリと鳴く蝉の声が聞こえる。
 そんな、夏休みのある日。
「ふはー……夏ねえ、ゆぇパパ。最近はとっても暑くてくらくらしちゃう」
 ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が思わずそう紡ぐほどに、この日も暑くて。
 朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は頷いて返しながらも、ふと時計をちらり。
「夏ですねぇ。暑くなってきましたので食事もサッパリなものにしましょうか」
 今は午前中で、お昼ごはんまでにはもう少し時間はあるのだけれど。
 こんな暑い日は食欲もあまり起こらないから、さっぱりといただけるものをユェーは考えてみてから。
「サッパリ! ルーシー、大賛成よ」
「素麺も良いですね。流し素麺で食べると面白いですよね」
 まず思いついたのは、素麺。
 そして、夏のイベントといえば、流し素麺! なのだけれど。
 ユェーの言葉に、ルーシーはきょとり。
「う? ナガシソウメン……、って、なあに?」
「おや? ルーシーちゃんは流し素麺をした事ないのでしょうか?」
 そんな反応や言葉から、ユェーはそう察して。
「うん、無いわ。素麺は知ってるけれど、それとは違うの?」
 素麺は知っているけれど、素麺流しは知らないから。
 素麺と素麺流しの違いを訊いてみたルーシーだけれど。
 ユェーはそんな彼女へとこう返すのだった。
「ふむ、それでは一から作りましょう」
 そう聞けば、ぱっとルーシーも興味津々、嬉し気な表情を咲かせるけれど。
「わあい、ありがとう! ルーシー頂いてみたいわ、作るのもお手伝いする!」
「ルーシーちゃんは危ないのでそこで見ててくださいね。あっ、黒雛と黒子も一緒に見といてください」
「……むう、はぁーい。お手伝いしたかったのにな」
 お手伝いはどうやらさせて貰えないようで、ちょっぴりだけしょぼん。
 そして、両手に黒雛を乗っけられ、頭の上に黒子……黒雛そっくりの式神がちょこんと乗っけられれば。
「ねー? 黒ヒナさん、黒コさん?」
 同じく見学組の黒雛と黒子へと同意を求めてみて。
 ――ぴぃぴぃ、ぴぃぴぃ、と同時に鳴く二匹。
「ふふ、いいお返事」
 ちょっとだけ残念だけれど、ルーシーは黒雛と黒子と一緒に、ユェーの様子を眺めつつ待つことに。
 というわけで、一から流し素麺の準備を始めるユェー。
 まずは何本か切って持ってきたのは、竹。
 それからその葉を取り除き、真っ二つに割って、中のふしを取り除く。
 そんな手際のよい作業を、じぃとルーシーは目にしながら。
「滑らかな手つきだわ。竹って、中はそんな風になっているのね」
 なおいっそう――じぃ、じいいぃぃぃ……と見つめていたら。
「お手伝いしたいですか?」
 ついに、お手伝いの出番がきたみたいです……!
 ユェーのその声を聞けば、勢いよくこくこくとルーシーは頷いて。
「! うん、お手伝いしたい!」
「でしたらこの竹を綺麗に洗ってください」
「これを洗うのね、お任せあれよ」
 張り切ってお手伝い開始――ぴっかぴかにしましょう! って。
 そして、うきうきとごしごし、きゅっきゅ。
「結構長くて洗いがいがあるのね」
 ルーシーがそうしっかりと洗っている間に。
 ユェーは竹を切っては葉や中のふしを取り除いて、何個か同じものを作れば。
「……わ! パパがもうあんなに竹を割ってる」
 急いで洗って彼の所へ。
 そんなルーシーに、ありがとうねぇ、と礼を告げるユェーだけれど。
「おや? 大丈夫ですか?」
 小さく首を傾けつつもそっと手を伸ばし、彼女の頭を撫で撫でしてあげる。
「ふう、ふう……えへへ、この位へっちゃらよ」
 急いで洗ってくれて息があがっちゃっている姿に。
 けれど、お手伝いができて、とても嬉しそうで。
 ユェーは、ルーシーが洗った竹を貰って。
 それらを繋げていけば――完成です!
 そしてルーシーは完成を喜びつつも、大きくこてり。
「でもこれで完成? 小さな滑り台みたいね」
 長く繋がった滑り台のような竹に。

 それから不思議そうにする彼女へと、ユェーは告げる。
「次に素麺を茹でましょう」
 きっと流し素麺でも、主役であると思われる素麺!
 知っている素麺と流し素麺がどう違うのか、ルーシーはわくわくと視線を向けるも。
「素麺! は、普通の素麺なのね。あ、ピンク色や黄色、水色のお素麺発見」
 知っているままの素麺と変わらず……?
 たくさんの白の中に、ピンク色や黄色、水色のものが混ざっている、ごく普通のもの。
 それから大きな鍋にたっぷりのお湯を沸騰させれば。
「ルーシーちゃん鍋に入れてください。火傷しない様に気をつけて」
「はーい、気を付けるわ」
 ぱらぱらと素麺を鍋へと投じた彼女に、ルーシーちゃんありがとう、とユェーは言葉を向けた後。
 茹でた素麺をザルに入れて、冷たい水でよく冷やす。
 さらに、タレを作り、具や薬味も用意して。
「タレも他も見慣れたもの。では「流し」って……、まさか?」
 ルーシーはそこでハッとする。
「それでは今から流し素麺をしますね」
 そう告げるやいなや、ユェーが竹に水を流して、素麺を流してみせて。
「わああ、流れてる! すごいすごい!」
 やはり先程思った通り、それは素麺たちの滑り台。
 それから見つめる姿に……驚いてますね、と。
 ユェーは満足気にふふっと笑み落とした後、告げる。
「はい、ルーシーちゃん素麺が流れてくるので箸で掬ってください」
「えっ、ルーシーが掬うの?」
 ということで、ちょっぴりだけ、おっかなびっくり。
 流し素麺に初挑戦! ……である、ルーシーだけれど。
 慌てて箸で麺を追うも、すいっと流れていってしまって。
 そんな素麺たちを見送った後、ユェーをわたわたと見上げれば。
「……パ、パパどうしよう!?」
「大丈夫。何度でも流しますから」
 優しい笑みと共に返る言葉に、改めて気合いを入れなおして。
「分かったわ、次は絶対に掴まえてみせるから!」
 もう一度、挑んでみれば――スッと。
 今度は無事に掬えました!
 そして、見て! と彼へと近づいていけば。
「上手に取れましたね」
 その言葉に、えへへ、と笑んだ後、頑張ったからかおなかもすいてきた気がして。
 つるつるいただけば、ひんやりサッパリ。
「ふふー……おいしい!」
「どうですか? 美味しいのと楽しいのが一緒に出来て良いでしょう」
 ユェーはにこにこと、初めての流し素麺を楽しむルーシーを見守っていた――のだけど。
 ふいに、くらりと世界が廻ったかと思った、瞬間。
 彼曰く、でしゃばって来たのは、そう――。
「あぁ? 何やってるんだ?」
「う? あらら? もしかして黒パパに変わった?」
 同じパパはパパでも、白いパパから変わった、黒いパパ。
(「最近は表情を見たら何となく解るようになって来たのよね」)
 ルーシーは同じ外見でも、表情ががらりと変わった、そんな黒パパを見つめながら。
「ごきげんよう! 黒パパ。今はね、白パパと流し素麺をしていた所よ」
「流し素麺? また変な事し始めたな」
「変じゃないわ。とても楽しいんだから」
 その言葉を聞けば、黒ユェーはニヤリと笑って。
「ふーん、おいちびっこいの。今度は俺が流してやるよ」
 その表情を見て、ルーシーはピンとくる。
(「む、パパのそのお顔は絶対に悪いコト考えてるわね」)
 そのことも、お顔を見ればわかるようになってきたのだけれど。
 ユェーが瞬間、流したのは――。
 ――ぴぃーーー!
 ――ぴぃーーー!!
 黒い物体1号と2号こと、黒雛と黒子……!?
 まあるい2匹は、同じ悲鳴を上げながらも、ころころと竹の滑り台を転がっていく。
 そしてそんな悪戯に、ほらー! って。
「黒ヒナさんと黒コさん流しちゃダメ!!」
 ルーシーが慌てて救出しつつも、こう続ければ。
「まん丸だから凄く転がってしまうし、お箸で掬えるわけないじゃない」
「あ? 箸でブッ刺せば?」
 ……俺がしてやろうか? なんて。
 箸で刺す気満々で笑えば。
「刺すのも、だ、め、で、す!!」
 金の妖艶な瞳で見遣るのは、そういつもの如くぷんすか怒るルーシーの姿。
 そして、ぷるぷる震える黒ヒナさんと黒コさんを、拭き拭きしてあげた後。
「……じゃ、今度はルーシーが流すわ」
 また黒いパパが何か悪いことをしないよう、次はルーシーが流す役を担う。
「パパが食べる役よ!」
「あー、はいはい。ちゃんと流し素麺すればいいんだろ?」
 そう溜息をついてみせるユェーに、つけ汁の入ったお椀を手渡しながらも。
 こくりと頷いて返すルーシーが流す係を買って出たのは、黒パパの悪戯阻止のためだけではなくて。
 流した素麺の中にこっそりと――とっておきの黄色の一本を混ぜておく。
 そしてパパをちょっぴりどきどき見つめてみれば、流れてくる素麺をひょいと難無く掬って。
「パパ、掬えた? 食べれた? おいしい?」
 そうそわそわと訊いてくるルーシーと掬った素麺を順に見遣れば、ユェーは気づく。
「ん? 黄色……? なるほどな」
 それから黄色の素麺をつるり、もぐもぐと食べれば。
「……えへへへー、そう」
 ルーシーは、ほわっと嬉し気に笑ってから。
 次は、可愛らしい色の麺を。
「黒ヒナさん達もお素麺たべる? ピンク色の流してあげる」
 ――ぴぃ! ぴぃ! とやっぱり一緒に鳴いてお返事する2匹へと流してあげれば。
 嘴でつついて器用にすっと掬えば、嬉し気にぴぃぴぃと食べている。
 それからルーシーは、ふと白パパが用意してくれた具材に気づいて。
「パパ、また流すから掬ってね」
 そう次に流すのは、素麺ではなくて――。
「あーはいはい……、!」
 難易度が何気に高い、ころころっと素早く流れていくプチトマト!
 そんなまさかの不意打ちに、思わず瞳を一瞬見開くユェーだけれど。
「わ、パパ、お上手!」
 反射的に手が動いて、何とか掬うことに成功!
 黒雛や黒子も、ルーシーの声に合わせて、ぴぃぴぃ楽しそうに鳴いて。
「トマト掴んだだけで、そんな喜ぶことか?」
 ちょっぴりふいはつかれたものの、掬ったプチトマトをぱくり。
 言葉とは裏腹に少しだけ、喜ぶ彼女達の姿を見ては満足そうに。

 それからも、つるつるさっぱりと。
「驚いた事もあったけれど、ナガシソウメンって、誰かと一緒で初めて出来ることなのね」
 白パパの言っていた通り、美味しいのと楽しいのが一緒に出来る流し素麺がすっかりお気に入りになって。
 そして満面の笑みで続ける――うん、ルーシー大好きかも! って。
 そんな楽しそうにしている姿を見れば、ユェーはふっと金の色を細めて。
「そうか、それは良かったな」
「あっ! もうっ、パパったら……!」
 ふいに伸ばした大きな手で、彼女の頭を乱雑に撫でてはぐしゃぐしゃにして。
 くくっと笑った後、こう口にする。
「これは白はいじけるなぁ」
 その言葉に、髪を整えつつもルーシーは再び微笑んで。
「白パパともまたやれば良いのよ」
 つるつると美味しくて楽しい夏を引き続き満喫しながらも、彼へと言葉を向ける。
 ――黒パパとも……もし良かったら、またしてくれる? って。
 白と黒、性格は違えど、どちらも大切なパパだって、そう思っているし。
 それに、ルーシーは知っているから。
 黒ヒナさんや黒コさんに悪戯するのは、ちょっぴり油断ならないとはいえ。
 優しい白パパは勿論のこと……そんなそっけなく遠慮のない黒パパも、何だかんだ相手をしてくれるってことを。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年09月15日


挿絵イラスト