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帝都櫻大戰⑯〜誰がために名乗るのか

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●その名は
 失われても失われても、消えないものが在るのならば、それは何か。
「記憶である」
 エンシェント・レヰス『神王サンサーラ』はあらゆるものを時間さえ掛ければ殺して見せる遅効性思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』を起点としてサイバーザナドゥ世界のサイバースペースに降臨する。
 彼の黄金の瞳が輝く。

「私はサンサーラ。かつては神王とも呼ばれていた」
 記録は失われても、記憶は消えることはない。
 例え、記憶を保持する生命が死に、骸の海に至るのだとしても、歪められても、記憶は過去の集積地にて残り続ける。
 そして、『名前を覚えるもの』が存在しているのならば、ことさらに名前という記憶は消えない。

 嘗て在りし名『|アズマ《■■■》』は『スナークゾーン』にて消えゆく。
 神々の雷鳴、魔法の如き拳、世界を分かつ一撃、それらは罪過を穿つための知られざる証であり、善悪は知らしめるのだ。均衡あれば消えゆく、その名があると。
「故にオブリビオンもまた摂理の一つ。故に殺すことはできない。摂理とは即ち名である。故に、オブリビオンもまた摂理の名。彼等が生命とであわなければ、世界の破滅は起こり得ない。出会うとは即ち引力。引力は、距離を持って隔てれば弱まる」
『神王サンサーラ』はそれ故に、ひたすらに|『広大無辺の仏国土』《サンサーラディーヴァ》を広げた。
 際限なく命とオブリビオンとの距離を隔てれば、出会うことはない。
 悲劇も破滅も起こりえない。
 ――はずだった。

「だが、それは誤りだった。時は無限に過去を産み続け、遂には私の力も翳りを迎えたのだ」
 どうしようもないことだ。
 時の速さは一定であっても、そもそも『神王サンサーラ』の広げることのできる世界はただ一つ。
 だが、世界は無数に骸の海に浮かぶ。
 今や三十六世界を数えるまでに至ってしまったが、彼の力は無限であれど、ただ一つの無限。
 究極の一と、凡百なる無限。
 いずれが勝利を得るのかなど、あらゆる生命万象において結論は出ている。

 単一の生命が栄えた試しなどない。
 唯一無二は完結する。だが、凡百と連なる幾千万は紡がれ続けて不滅を凌駕する。
「そして、あなたは今もっとも大きな誤りを犯そうとしているのですね」
 転移を維持するグリモア猟兵、ノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)は薄紅色の瞳でもって黄金の瞳を見つめる。

「そうだ。オブリビオンと化した今、私のユーベルコードは『骸の海を無限に広げる能力』と化した。命が尽きるまで、時が絶えることはない。私は、無限の力を手にしてしまったのだ」
「果たして、そうっスかね!?」
 その言葉に待ったを掛けるのは、魔界裁判長『ジャッジメントガール』であった。
「おはようございます、魔界裁判長。今回は職務怠慢でお越しなられないと思っていました」
「それはなかなか魅力的なワルっスけども、自分、こうして『キャンピーくん』によって他世界のサイバースペースにやってきたのにはワケがあるっス!」
 彼女の言葉にずらりと居並ぶのは、サイバーザナドゥのサイバースペースにダイブしてきた数人の人物たちであった。
「無駄だ。『ヤマラージャ・アイビー』を起点として、サイバースペースに骸の海が広がってゆく……遠からず、この世界は|破壊《カタストロフ》を迎えるであろう。それが世界の|法則《ルール》なのだ」
『神王サンサーラ』の言葉に亜麻色の髪の青年が星映す黒い瞳を輝かせて笑う。
「だろうな。緩やかに滅びゆく世界だということはわかってんよ。けどよ、それは今じゃあない。そんでもって、こういう時はこういうのが常ってもんだろう? ――『それを決めたのは誰なのですか』ってな!」
 亜麻色の髪の青年『メリサ』は、その瞳に不屈の|意志《ガッツ》を見せる。

「そうッス! この世界がカタストロフを向けるルールを持つと仰るならば、この自分!『ジャッジメントガール』の出番ッス! 曲解・こじつけ・拡大解釈、このサイバースペースを書き換えて見せましょう!」
「そこで私の出番てわけね」
『ケートス』、『アイレオ』と呼ばれる殺し屋がサイバースペースを足を踏み出す。
 骸の海が広がっているのに、彼等は侵食されない。
 何故か。
「名は体を現すって言うっス! その格言、拡大解釈すれば、その名が示す通りの力を発揮することができるってワケっス! 現実世界では無理でも、このサイバースペース、仮想空間ならばそれが出来るっス!」
『ジャッジメントガール』の言葉に『メリサ』は頷く。

「つまりこういうことだってな!」
 彼の体が無数に増えていく。
 彼の名は『メリサ』――即ち『蜂』である。蜂は毒を持ち、群れる。のなら、彼はこのサイバースペースにて、同一でありながら複数であるという性質を持つことになる。
 そして、蜂は二度刺すことで、アレルギー反応を引き起こす。
 一度で殺せぬのならば、二度で殺す。
 そういう殺し屋なのだ。

 加えて|『ケートス』《鯨》、|『アイレオ』《怪力》を持つ殺し屋も、その名を拡大解釈し、サイバースペース内にて広がる骸の海を飲み干し、捻じ曲げる。
「できないことは、やればできるまでやれば、できないことなんてないって証明できるっス!」
「つまり?」
 ノインの言葉に『ジャッジメントガール』は笑む。
「下手にルールとかって言い出すから、こうなるッス! 敢えて、自分も言わせていただくっス!この世界は破壊を迎えるだろう?『それを決めたのは誰なのですか』っス――!!」


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝都櫻大戦』の戦争シナリオとなります。

 エンシェント・レヰス『神王サンサーラ』が、無数の幻朧桜と共にサイバーザナドゥのサイバースペース内部に降臨し、遅効性思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』を起点として骸の海を無限に広げようとしています。
 彼は極めて強大なオブリビオンです。
 ですが、そのあまりの強さ所以い、『神王サンサーラ』は『完全に無傷の状態』でなければ、この世界の顕現を維持することができないようです。

 しかし、そんなルールさえも無に等しい無体の如き無限に広がる骸の海。
 これを乗り越えて『神王サンサーラ』に一撃を叩き込まねばなりません。

 ――そこで『ジャッジメントガール』の出番っス!
 自分、魔界裁判長してるっス。その職務上『あらゆるルールの曲解、拡大解釈、こじつけ、すり替え、些細な孔の悪用』に長けてるっス!
 サイバースペースは仮想空間っス!
 なんなら言ったもん勝ちっス!
 自分に出来るのは『名は体を表す』っていうルールの書き換えっス! これもルールの曲解、拡大解釈にこじつけのちょっとした応用ってやつっス!
 なんとかデビルキングの皆様方には『神王サンサーラ』に迫って頂きたいっス!

 プレイングボーナス……屁理屈をこねてでもサイバースペースの世界法則をすり抜ける/ジャッジメントガールと協力して戦う。

 それでは、幻朧櫻舞い散る帝都にて戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばりるっす!
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第1章 ボス戦 『神王サンサーラ』

POW   :    サンサーラディーヴァ
自身の【眼前】を【広大無辺の仏国土】化して攻撃し、ダメージと【神王サンサーラへの到達不能】の状態異常を与える。
SPD   :    サンサーラノヴァ
【かざした両掌の間】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【五感封じ】の状態異常を与える【神王光】を放つ。
WIZ   :    強制転生光
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【サンサーラの光】を放つ。発動後は中止不能。

イラスト:ぽんち

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ブリュンヒルデ・ブラウアメル
我が名はブリュンヒルデ・ブラウアメル!
即ち、蒼き翼の戦乙女!
故に具現化するはーーヴァルキリー・フォーミュラ!
世界は全て滅びる?
それに対して我は告げよう…其れを決めたのは、誰なのだ…ではなく
ーー其れならば、何故初めて見たあの青空はあんなにも美しかったのだ?

瞬間、飛翔…『理と言う『空』を『飛ぶ』』事であらゆる理…ルール、骸の海の理を無視して行く!
これが我の名…ブリュンヒルデ・ブラウアメル!
蒼き翼の飛翔を持って、エンディングを破壊する
それが我のーーヴァルキリー・フォーミュラの名の意味だ!

サンサーラディーヴァの到達不能というエンディングを破壊し、サンサーラに傷を与えていくーー



 答えは出ている。
 すでに世界は三十六を切った。
 破滅を迎えるのは必定。生まれ出るのならば、死に向かうのが生命の宿命であるというのならば骸の海が失われることはない。
 失われた命さえも骸の海は内包していくからだ。
 有限ではない。
 無限なのだ。
 故にエンシャント・レヰス『神王サンサーラ』は己が過ちが故に、『無限に骸の海を拡大する』。
「私の眼前は無限に広がる骸の海。何人たりとて、それを渡りきることなどできない」

 彼の言葉は事実であった。
 無限に広がる骸の海。
 踏み込めば、それは耐え難い苦痛となって身を苛むだろう。
「世界は全て滅びる。生まれたのならば、その理から逃れることはできない」
「それに対して我は告げよう……其れを決めたのは、誰なのだ……ではなく――其れならば、何故初めて見たあの青空はあんなにも美しかったのだ?」
 ブリュンヒルデ・ブラウアメル(蒼翼羽剣ブラウグラムの元首『剣帝』・f38903)は言う。
 己の名を示し、その名の通り青空がサイバースペースに広がっていく。
 初めて見た青空。
 どこまでも広がっていく空は、自由に思えた。
 涙が出るほどの美しさを感じたのは如何なるか。

 その問いかけに『神王サンサーラ』は無限の彼方で頷く。
「それは己の心が鏡であるからだ。空とは海の陰りではなく、光反らすもの。なら、それはきっと君の心が青かったからだ。その心のあり方を美しいと思えるのならば、きっと空の青さも美しいものであったのだろう」
 ブリュンヒルデは飛ぶ。
 骸の海は、海。
 ならば、空と乖離した空白を飛ぶ。

「これが我が名……ブリュンヒルデ・ブラウアメル! 蒼き翼の飛翔を持って、エンディングを破壊する」
「結末を破壊しても、新たなる結末が生まれるだけだ。骸の海という最果て。その最果てまで君は飛び、そして何を思う」
「それでも破壊する。それが我の――ヴァルキリー・フォーミュラの名の意味だ!」
 無限を破壊するのは如何なるものだっただろうか。
 骸の海は広大無辺へと変わりゆく。
 それを無視する飛翔。
 骸の海を速度を上げたブリュンヒルデが行く。

「蒼翼の終焉破壊・戦の世界そのものを変える我が翼(ブラウアフリューゲル・チェンジザワールド)、翼を広げ、戦場に蔓延る全ての悲劇の終焉を打ち砕き改変する事を以て、その終焉に終焉を!」
 骸の海が終焉を迎えたものの集積であるというのならば、それ自体を破壊する。
 広大無辺と広がる仏国土が骸の海に変わるのならば、それ自体を破壊していく。
 距離が如何に広がろうとも、破壊し続ければ届く。
 其れ故にブリュンヒルデは迫る骸の海を切り裂きながら、黄金の瞳に至る道筋を切り拓くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柳・依月
チート相手に名前の拡大解釈で対抗?
面白ぇじゃねえか……怪異にとっても名は重要なもんだぜ。

俺は「公園のお兄さん」という名のネットロアでな?
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=57704
ならその名前から逆算して、俺がいるところは即ち“何の変哲もない町の公園”だよな?
無限に広がる骸の海じゃあない。
当然普通に存在可能だし何なら歩けるよな?

ここは公園、俺の領域だ。加えて電子世界なら俺の方に利があるのは必定……という主張で自身を強化する。
もう遠慮はいらねえな、光だけ気をつけつつ一撃入れちまおう。(UC使用)
俺の名を覚えてくれる皆の為にも、ここはお帰り願おうか。



 黄金の輝きは闇を照らし、晴らす。
 エンシャント・レヰス『神王サンサーラ』の両掌の間から放たれる光は、容易く五感を奪い去る。
 視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、その全てが奪われた柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・f43523)は、なるほどこれはチートだと理解しただろう。
 まぎれもなく『神王サンサーラ』は究極の一。
 唯一無二たる存在であろう。
 その力は強大極まるものであり、到底敵うべくもない相手であった。

 失われた聴覚は『神王サンサーラ』の言葉すら知覚させない。
「面白ぇじゃねえか……」
 名を以て相対する。
 その名事態が意味を持ち、力となる。
 それは即ち、怪異に通じるものであった。なんと呼ばれているのか、ということは何と認識されているのかということにほかならない。
 即ち、新しい妖怪である依月にとって、姿を変容させることは容易い。
 しかし、名こそが彼を縛り上げる鎖でもあった。

 その鎖を力に変える。
 拡大解釈。
 ならば、己の名を知らしめる。
 広大無辺に広がっていく骸の海はまるで濁流であったし、激流でもあった。
 この流れに抗うことはできないと思うほどの圧倒的な勢い。
 けれど、その中で依月は佇んでいた。

 何故、という『神王サンサーラ』の言葉は聴覚を失った依月に届かない。
 しかし、理解はできる。
 己が何故、骸の海の激流の中にあって佇むことができるのか。無事でいられるのか。
 人は物語を通して何者にも成れる。
 なら、己は何だ。
 依月という名は己を猟兵として象るもの。
 しかし、新しい妖怪である彼の本質は、『公園のお兄さん』。
 ネット・ロア。
 語られることで変容していくもの。

 物語の外殻さえも変わる。
 しかし、それは時に枝葉のようなもの。
 根たる原点にして原典は変わらない。
 一葉たる物語をたどりゆけば、それは必ず|状況《シチュエーション》という舞台に辿り着く。

 故に。
「俺が立つのは、公園だ。そこが舞台だ。なら、無限に広がる骸の海じゃあない。」
 何の変哲もない街の公園。
 オーソドックスすぎて、ステレオタイプを地で行く公園。
 古典的である、ということは即ち、誰もの心にも浮かぶものであるということ。ディティールが異なっても、本質は変えられないという証左。
 故に、笑む。
「当然、普通に存在可能だし何なら歩けるよな? だって、此処は公園なんだ。俺の領域だ。つまり」
 必然、怪異は舞台によって地力を強化される。
 舞台に立つ以上、あらゆるものが役者と成り果てる。
 究極の唯一無二であろうがなかろうが関係ない。

「もう遠慮はいらねえな?」
 見えない。聞こえない。触れてもわからない。無論、味覚などあてになろうはずもない、匂いだってそうだ。
 だが、ここが公園だというのならば。
 己の体は演目が体に染み付いたように動く。

 公園に疾風迅雷(シップウジンライ)たる斬撃波が走る。
 それは骸の海を切り裂く。
 広大無辺に広がる骸の海に一点の染みのように広がっていく公園。
 それは重なり合い、コピー&ペーストしたように数珠つなぎになっていく。
「俺の名を憶えてくれる皆の為にも、ここはおかえり願おうか。公園っていうのは、訪れたら帰るものだ」
 そうだろう? と依月は骸の海を覆う公園のテクスチャ渦巻く世界にて笑むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
アドリブ歓迎

ドーモ、サンサーラ殿!
そしてこんにちは、ジャッジメントガール殿!
ルールは現在進行形でアップデートするものデース!
レッツ、カタストロフ・ブレイカー!

無限に広がる骸の海!
ならば、無限に増える増殖をぶつければ!
∞×∞で、四つ葉のクローバー染みたデザインに早変わり!
花言葉は『私のものになって』!
UC発動、模倣様式・混沌魔法!

ヒャッハー!
混沌魔法カオスヘッダー発動!
サイバースペースなら、コピー&ペーストもお安い御用のはずデスネ、ジャッガ殿!
那覇鯛を現す裁判長判断により、花言葉が発動!
これでサンサーラ殿はワタシになり、我輩は神王になり!
すぐそばにいることになるので到達完了!
渾沌なる攻撃デース!



「ドーモ、サンサーラ殿! そして、こんにちは、『ジャッジメントガール』殿!」
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は挨拶を欠かさない。
 礼儀とは即ち、人と人とのコミュニケーションの手段の一つにすぎないが、しかして大前提でもある。
 知性宿すのならばなおのことであろう。
「こんにちはっス、デビルキング! そんなわけで状況はご理解いただけているっスか!」
『ジャッジメントガール』の言葉にバルタンは力強く頷く。
 猟兵たちのユーベルコードがきらめき、広大無辺に広がる骸の海を切り開いている。
 敵はエンシャント・レヰス『神王サンサーラ』。
 彼のユーベルコードは嘗ての仏国土を無限に広げるものから、骸の海を無限に広げるものへと変容していた。

 それ故に『神王サンサーラ』へと近づくことさえできないのだ。
「もちろんデース! ルールは現在進行形でアップデートするものデース! レッツイ、カタストロフ・ブレイカー!」
 バルタンは目の前の骸の海を見やる。
 広大無辺とはこのことであろう。
 亮平たちのユーベルコードで切り開いても、無限に湧き出すようにして広がっていくのだ。
「無限! ならば、無限に増える増殖をぶつければ!」
「どういうことっスか!」
「こういうことデース! カオスメモリ、ロゴスイグニッション!」
 バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
 模倣様式・混沌魔法(イミテーションスタイル・スーパーカオスマジシャン)――それはカオスを具現させる混沌魔術。
「こ、これは『スーパーカオスドラゴン』さんの!」
「そうデース! ∞×∞! 即ち、四葉のクローバーデース!」
 煌めくは混沌魔術。

「花言葉は『私のものになって』!」
「つまり?!」
「ヒャッハー1 混沌魔法カオスヘッダーでワタシをコピー&ペーストデース! ここがサイバースペースであれば、なおのことデース!」
「ですが、カオスヘッダーは、一体でも倒されると連鎖して全て倒されてしまう両刃の剣っス!」
「ジャッガ殿!」
「その略し方ちょっとワルっスね!」
「出鱈目、こじつけ、拡大解釈! つまりは、この花言葉の意味が、ワタシの混沌魔法なのデース」
 サイバースペース内にて書き換えられる常識。

 つまり。
『私のものになって』とは、バルタンが『神王サンサーラ』をものにするということ。
 自分のものであるというのならば、あなたがわたしで、わたしがあなた!
「これでサンサーラ殿はワタシになり、我輩は神王になり! すぐ傍にいるということになるので到達完了デース!」
「私自身になりかわることで、距離を無にするか」
 煌めくは混沌魔法。
 今更距離を稼がれても意味がない。無限増殖し続けるバルタンあらため『神王サンサーラ』。
 その姿は骸の海を埋め尽くし、混沌に塗る変える一手として、黄金の輝きをほとばしらせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
名は体を表すか
思っきし自虐で躊躇うけど是非もない
頑張るよ

ジャッジメントガールの前で名乗ろう
「俺は葛城時人、だよ」

多分さ…魔界でも問題なってると思うんだよね
あんま言いたくないけど
ぶっちゃけ単に地名だけど
そもそも地名になるぐらい生えてる訳で

「…だから俺は」
どんだけ駆除されても生き残り
信じらんない速度で広がる葛使えるよね
名前もまあ目立つから
嫌でも見えて絶対駆除できない『葛城』を作り出せる!

「あ、桜も全部覆える」
これで幻朧桜も全部葛の絨毯の下
今此処は俺が体現する​|葛《くづら》の城
「何されてもすぐ蔓延るし永遠無限に締め上げるよ!」

攻撃の起点になれたら嬉しいよ
勿論白燐奏甲で
ガール達に活力と攻撃力付与も!



 名は体を表す。
 それは単純な言葉だ。しかし、同時に正しくもない。
 名は人を示すものであって、その性質を示すものではないからだ。
 ならば、何故そのような言葉が生まれるのか。
 至極当然の成り行きでもあるだろう。
 名とは己を認識する符号。
 そして、そこに意味を見出すのならば、人は必ず意義へと至る。意義を得たものは、自ずと模倣する。
 そのように生きるように、と。

 だからこそ、子を産んだ親は、願うのだ。
 その名の通りに子に幸いあれ、と。
「思っきし自虐で躊躇うけど是非もない」
 葛城・時人(光望護花・f35294)はエンシャント・レヰス『神王サンサーラ』と己を隔てる広大無辺の骸の海を見やり、ジャッジメントガールに視線を向ける。
「おっと、何か思いついたっスね!」
「俺は葛城・時人、だよ」
「名乗りどうもっス! そんで、何をあなたは思うっスか!」
「簡単さ……多分さ……魔界でも問題になってると思うんだよね。あんま言いたくないけど、ぶっちゃけ単に地名だけど。そもそも地名になるぐらい生えてる訳で」
「つまり、それは!」
 そう、葛城。
 葛。
 蔓性の多年草。
 その繁殖性の高さ、拡散の速さ、ある種の脅威である。
 緑化、というのならばこれに勝るものはない。まさしく侵略性植物とでも言うべき品種。

 それは時に他の環境を破壊してでも覆い尽くしていく。
 人の文明ですら、だ。
「……だから俺は」
「なるほどっス!」
 時人の身より蔓延るは葛。蔓を伸ばし、はびこり、骸の海すら覆っていく。
 それはサイバーザナドゥのサイバースペースであっても例外ではない。どんなに骸の海が溢れても、それを時人の蔓は伸びて、蔓延るのだ。
「今、此処は俺が体現する|葛《かづら》の城」
 そびえるは、葛の山。
 駆除しようとしてもできぬ影。けれど、それを『神王サンサーラ』が放つ光が消滅させる。

「これなるはサンサーラの光。我が光の前に存在できるものはなし」
「わかっているよ。でも、言ったろ。駆除しても駆除しても繁殖と拡散は止まらないって! 何をされてもすぐ蔓延る。永遠無限に、この骸の海を覆い続ける!」
 時人の瞳がユーベルコードに輝き、白燐奏甲(ビャクリンソウコウ)が『ジャッジメント』の体を覆っていく。
「『ジャッジメントガール』、君がこの戦いの起点だ! だから、必ず君をククルカンは守ってくれる!」
 時人は己が名を示すように『ジャッジメントガール』を葛の城で覆い『神王サンサーラ』の放つ光から守り切る。
 彼女を失っては、この戦いに勝利することは難しい。

 だからこそ、守るのだ。
『神王サンサーラ』はただの一撃を叩き込むだけでいい。
 けれど、広大無辺なる骸の海こそが彼の守り。
 これを覆すにはまだ遠く。されど、時人は要として『ジャッジメントガール』を『神王サンサーラ』の攻撃から守り切るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

哀川・龍
【WE】
失せろ哀川龍
おまえには荷が重い

おれはこの男の裡に残存する闇の人格
遍く世界に降る不幸という通り雨
逃げたくば逃げろ
天災は善にも悪にも等しく降り注ぐ

おまえが司るものが骸の海ならば
この躰の名が司るのはさしずめ嘆きの川
無作為に累積された過去とは異なる
「哀」という統一された感傷を持ち流れる大河

過去という歴史が語る
いかに広大であろうと
時に天災は国土と民を容易く理不尽に滅ぼす
川はやがて海へ合流しその水質を汚染する
おまえは意思の下に流れる事が出来ないのだから

鷹神豊…
おまえたちがおれを封じなければ
この躰はおれのものだった
再度このおれを退けるか

最後に残る怪物
嘆きの川に潜む「龍」が
おまえたちを等しく襲うだろう


鷹神・豊
【WE】
哀川め怖気づいたか
まあこうなるのも予想の範囲内だ
ダークネスの貴様と共闘する
不可能を可能にしてこその口八丁だろう

だが説明するまでもなく
この空間における俺は「鷹」
鷹は古来より縁起物とされ
運気上昇や勝負強さを象徴する鳥だ
おまけに「神」ときた
此れ以上豪運な名はそう無かろう

貴様らの展開する海やら川やら
そんな湿った代物は苦にもならん
過去も不運も豊麗たる翼で飛び越え
神王に下剋上を挑む
それが神の威を狩る鷹の意志だ

UC使用
貴様らがどんな攻撃を行おうと
今の俺には全く当たる気がしない
俺を倒したくば己の力を
何より他者の力を信じる事だ

幸福が勝手に降ってくるのは一部の者だけだぞ
君達も龍や神なら
自らの意思で勝ち取れ



 一つの戦いの終わりがもたらしたのは平和。
 しかし、平和の後先にあるのは必ず争いである。それが大きいか小さいかは、相対するものの認識に寄るものであろう。
 どちらにせよ、それは不可避なる運命である。
 哀川・龍(降り龍・f43986)は本来臆病な灼滅者である。
 戦いも得意とは言い難い。苦手と言い切ってもいい。
 身に降りかかる不幸は数しれず。
 そして、集めに集めた開運グッズが漏れなく意味をなさないのは、彼の不運を増長させるだけであった。

 そして、彼は思う。
 己の闇を思う。
『己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力』
 闇堕ち(リュウ)する、という自覚すらなかった。それはユーベルコードであったから。心の裡にありし闇を思う。
 臆病風に吹かれたと他者は思うだろう。
 怖気づいたのだ、と。
 けれど、それがユーベルコードとなっている時点で、闇堕ち――即ち、ダークネスの人格は敗着していると言っていい。
 それを認められぬだろうが、と鷹神・豊(蒼天の鷹・f43985)は共にサイバーザナドゥのサイバースペースに踏み込んだ龍の姿が変容したことに驚くことはなかった。
「哀川め」
「この男には荷が重い。ただそれだけのことだ」
「したり顔で言う。こうなるのは予想の範囲だ」
「それで? このおれを御せるとでも?」
 龍と豊の間に流れるひりつくような空気。

 間に挟まれた『ジャッジメントガール』は目をぎゅっと瞑って言う。
「なんなんスか! 仲良しじゃないんスか! こういうのって犬猿の仲とか、そういうんじゃないんっスか!」
「おれはこの男の裡に残存する闇の人格。あまねく世界に降る不幸という通り雨。逃げたくば逃げろ。天災は善にも悪にも降り注ぐ」
「できるんスか、共闘なんて!? めちゃ敵意まんまんっスけど!?」
「不可能を可能にしてこその口八丁だろう。ダークネスの貴様と共闘する」
 あ、と『ジャッジメントガール』は口を開く。
 そう、ここにはルールが存在いている。口八丁でもってルールを拡大解釈するのならば、豊かはダークネスト共闘するという強引な縛りでもって龍に内在していたダクネスを味方につけたのだ。

 そして、広がるは広大無辺なる骸の海。
 猟兵たちのユーベルコードに寄って切り開かれていく骸の海の先にエンシャント・レヰス『神王サンサーラ』がいる。 
 だが、遠い。
 あまりにも遠いのだ。
 このままでは己たちはたどり着けない。
「おまえが司るのが骸の海ならば、この躰の名が司るのはさしずめ嘆きの川。無作為に累積された過去とは異なる」
 龍は己が手を掲げる。
 骸の海は過去の集積地。
 されど、彼の名が体現するのは、『哀』という感情に統一され、それ以外を許さぬ大河。濁流ではない。ある種の清流とさえ思えるほどの一色。

「過去という歴史が語る。如何に広大であろうと、時に天災は国土と民を容易く理不尽に滅ぼす」
 自然とは猛威。
 恵みをもたらすと共に破滅をももたらす。
 その二面性に人は神を見た。
 川は海へと流れ着き、海洋すら汚していく。
 それは止められるものではない。川の流れは海につながる。逆流して遡ることはない。

「だろうな。だが、気がついているか」
 豊は笑む。
 彼は飛翔し、骸の海を蹴るようにして疾駆する。
 過去も不運も己が翼で飛び越える。
 敵が神王であろうと関係ない。
 人類が神と決別したように、己もまた神の威を狩る鷹の意志を宿したもの。
 鷹の目は見据えている。
 今だ遠くても、そこにあるとわかれば進まずにはいられない。
 鷹は古来より縁起物。
 そして、人の傍らにあったものであり、力の象徴でもある。
「おまけに神と来た。これ以上豪運な名はそうなかろう」
「その豪運がおれを封じた。この躰はおれのものだったはずだ。それが」
「言っただろう。今の俺は豪運だ。貴様らの呪詛や攻撃、その他諸々の全ては、俺には届かない」
 豊は振りまかれる呪詛を身一つで躱しながら、骸の海を進む。

「今再びこのおれを退けるか」
「わかっているだろう、龍。君たちも龍や神の名を持つのならば、自らの意志で勝ち取りれ」
 それが人間というものだ。
 人間の強さであり、その生命の讃歌だ。
「だまれ。そのような戯言を聞くなど。おまえたちを等しく襲う『龍』は」
 呪詛が止まる。
 龍のダークネストしての人格が軋むようだった。
 ユーベルコードの輝きが瞳の奥に輝く。
 己の不運から真正面から向き合う日々であったことだろう。幸せは、向こうからやってこないし、掲げた手に落ちてくることなんてない。
 なら、と豊は頷く。

「無駄だ、ダークネス。俺を倒したくば己の力を、何より他者の力を信じることだ」
 それができないのならば、と彼の言葉通り最後に残された怪物は、そのユーベルコードの輝きの集約される瞳の奥に沈む。
 骸の海は今だ遠く。
 けれど、そこには燦然と輝く太陽の炎という標となって、続く者たちを導くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山吹・夕凪
名と言葉の持つ拡大解釈
自らに名付けて頂いた名を力とし、世界を救うということのなんと素敵なことでしょう
なら、私はこの名を以て世界の滅びを退かせてみせましょう

私の名は夕凪
あらゆる風は止まり、海さえも凪いだる様を見せる姿
つまりは、私のいる周囲はあらゆる流れは、例え骸の海であれ静まり変える

この場所、この瞬間のみは無限に広がる骸の海とて脅威にはなりません
悟りに辿り着いた者の心境は、あらゆる過去に蝕まれないように

故にとUC『黒白の風姿』で高速飛翔
神王光で五感を封じられても恐れず、心眼にてサンサーラの姿をしかりと捉え

振るうは『涙切』
こんな様を望まないサンサーラの涙の如き姿を、浄化の力を乗せた刃で斬りましょう



 広がるは骸の海。
 エンシャント・レヰス『神王サンサーラ』の力は強大そのものであった。
 彼のユーベルコードは際限なくサイバースペースという仮想現実を拡張すると同時に骸の海すらも広げていくのだ。
 その強烈な力。
 黄金の輝きを放つ掌が合わさった瞬間、山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は己の五感全てが失われたことを知る。
 視界に光なく。
 耳を打つ音は響かず。
 鼻腔に漂う香りもしれず。
 握りしめた刀の感触すらわからない。

 だが、彼女は口を開く。
 このばに置いて肝要であるのは、己が如何なる存在であるかを認識すること。
 そう、名と言葉を拡大解釈する。
 現実世界では不可能であっても、ここは仮想現実。
 自身の名を思うことこそが、勝利の光を五感失いし彼女の視界を照らすものなのだ。
「無駄だ。世界の滅びは必定」
 響かぬ声。
 本来ならば夕凪には届かないだろう。
 けれど、彼女は思う。
「あらゆる風は止まり、海さえも凪いだるさまを見せる姿。つまりは」
 彼女の周囲に迫る骸の海、そして『神王サンサーラ』の放つ光さえもが静まり返るようにして止まる。

 光届かぬのならば失われた五感は取り戻される。
 彼女は己が瞳で彼方見ゆる黄金の瞳を捉えた。
「私のいる周囲はあらゆる流れを凪いだ海面のごとく変化を失わせる。あなたはおっしゃいました。世界の破滅は必定と。聞こえずとも感じました。その嘆きを」
 故に、と夕凪の瞳がユーベルコードに輝く。

「私はこの名を以て、世界の滅びを止めてみせましょう」
 黒白の風姿(コクビャクノフウシ)へと変じた夕凪は飛翔する。
 白き雪風の姿をした精霊を身に宿し、夕凪は骸の海を飛ぶ。
 停止された骸の海の拡大。
 その上をひた走るようにして飛ぶのだ。
 だが、近づけば『神王サンサーラ』の放つ五感剥奪の光が彼女を打ち据える。

「あなたは望まない。その涙の如き姿を、私の刃は浄化の力と共に届けましょう」
「私の過ちは取り返しのつかないもの。なれば」
 奪われた五感。
 されど、残されたのは心眼。
 失って初めて開眼するもの。
 心の眼で見据えた『神王サンサーラ』は、慈愛故に道を謝ったことを悔いてた。故に彼女は『涙切』を振るう。
 膨れ上がり続ける骸の海は、彼の涙と同じ。
 ならば、己が斬撃は触れたものを凍てつかせる黒き斬風。

 即ち。
「黒き妖し刃の由来、花の由縁。雪と戯れ、風に語りましょう。私の斬撃は、骸の海すら凍てつかせる」
 その斬撃の一閃は骸の海を凍結させ、道を切り拓く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

うわ。
なんかもうこれ、なにかのハラスメントですよね。
やべーメイドでは、いろいろたりないくらいにやべーですよ。

あ、いっぱいいても持ち帰っちゃダメですからね?
ちゃんと面倒見るからー、じゃないんですよ!

それに概念ぶん殴りゲームってなんですか!?
わたし、平和的です!
演奏でみなさまの幸せを導く、可愛い光の勇者ですよ!

って、聞いてくれてないですね!

なんかこう、お二人の世界に……でもないんです!?
わたし支援していいんですか!

えっと。
これでいくと、|わたし《光》が|ステラ《花》さんを支援して、
|ステラ《花》さんが『|メリサ《蜂》』さんを支援する……みたいな?

なるほど!これが光合成アタックですね!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
メリサ様の!!オンナでーすっ!!
間違えた、香りがしまーす!!
はい、|正妻《メイド》参上しました!
メリサ様1匹持ち帰っていいですか!?(キリッ
誰がやべーメイドですか!

さておき
概念ぶん殴りゲームでルクス様に勝てるわけが
そして私の名の由来は紫苑
蜂の夫と光の相方あれば負ける事などあり得ません!

紫苑の花言葉は追憶
なれば|過去《骸の海》は花咲く栄養に過ぎず
咲いた花は|蜂《メリサ様》を支えるもの
支援は須くメイドにお任せくださいメリサ様!
ええ、旦那にできて妻に出来ない道理はないのです!
私の支援はルクス様に
今日ばかりは演奏も背中押す糧となるようです
いえ、メリサ様とのデートにコンサートは不要ですので!



 サイバースペースにおいて言葉とは実現可能なものの要因の一つでしかない。
 人の想像。
 それを仮想現実は受け止める。
 器とでも言えばいいだろうか。人は器の形を変えることで注がれたものの形を決定づける。
 なら、言葉は水。
 サイバースペースは器。
 発せられた言葉は贋であるが真に至るのだ。
「うわ、なんかゾワッとした」
 亜麻色の髪の青年『メリサ』は己の背筋に走った感触に身震いする。
「いつものでしょ」
『ケートス』の言葉に『メリサ』は頬を引きつらせた。

「『メリサ』様の!! オンナでーすっ!!」
「うぉぉぉいっ!?」
 その言葉に『メリサ』は目を見開いた。
 思ってた以上のが来た、とも言える。
「間違えた、香りがしまーす!!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びに『メリサ』は、え、うそ、そんなに匂う? と『ケートス』にたずねていたが、すんごい嫌そうな顔をされたのでちょっと傷ついていた。
「はい、|正妻《メイド》参上しました!『メリサ』様一匹持ち帰っていいですか!?」
 ステラはキリッとした顔で言い放った。
 これほどまでに言動と顔があってないことってあるのだろうか。あるんでしょうね、そこにあるので。

「うわ。なんかもうこれ、なにかのハラスメントですよね。やべーメイドでは、いろいろたりないくらいにやべーですよ」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は『メリサ』が、その名の通り『蜂』のごとく分身したときからなんだか嫌な予感がしていたのだ。
「誰がやべーメイドですか!」
「あ、いっぱいいても持ち帰っちゃダメですから?」
「ちゃんとお世話しますから!」
「じゃないんですよ!」
 いつもの漫才というか、コントというか。
 そういうのを目の当たりにしても『アイレオ』はあまり興味がなさそうだった。

「どちらでもいいが、これをなんとかしなければならないんだろう」
「そうでした!」
 ルクスは目の前に広がる骸の海を見やる。
 広大無辺なる骸の海。
『神王サンサーラ』のユーベルコードに寄ってサイバースペースに広がっていく骸の海。
 これをなんとかしなければならないのだ。
「そうでしたね。概念ぶん殴りゲームでルクス様に勝てるわけがありません」
「概念ぶん殴りゲームってなんですか!? わたし、平和的です!」
「平和的な奴が演奏でぶちのめしにくるかなぁ」
『メリサ』はげんなりしているようであった。
「そんなことありません。演奏で皆様の幸せを導く、可愛い光の勇者ですよ!」
 可愛いも光の勇者も事実なのが質悪い。

「そして私の名の由来は紫苑。蜂の夫と光の相方とあれば負けることなどありえません!」
 ステラは言い張る。
 言い切ったとも言える。
 夫、と此処で言っておけば、事実無根でも瓢箪から駒なのである。
「って、聞いてくれてないですね!」
 さらにステラは続ける。
「紫苑の花言葉は追憶。なれば|過去《骸の海》は花咲く栄養に過ぎず、咲いた花は|蜂《メリサ様》を支えるもの。支援は須くメイドにお任せください『メリサ』様!」
「ですってよ」
「いやぁ。間に合ってます、とは言い難い空気だよな」
「なんかこう、お二人の世界に……」
「あれはもうひとりの世界でしょ」
 ルクスたちは、ステラの暴走超特急な有り様におののく。

 もうなんていうか、ステラ一人でいいんじゃないかな? となる有り様であった。
 なんか、『神王サンサーラ』から放たれる五感封じの光も効いてないんじゃないか? と思えるほどであった。
「えっと。|わたし《光》が|ステラ《花》さんを支援して、|ステラ《花》さんが|『メリサ』《蜂》さんを支援する、でいいんですよね!?」
 ややこしいことこの上ない。
 だが、ルクスは任されたと言わんばかりに胸をドンと力強く叩く。

「これは噂の光合成アタックですね!」
 多分違うと思うけどなぁ、と『ケートス』は思いながらも、そんな二人が迫りくる骸の海を尽く斬り裂くのを見送るのあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御影・しおん
うふふ、それじゃあ遠慮なくUC
―――我が名は「   」
我は―――

「   」が誰か何処かを誰も知らぬ、故に「   」は誰でもあり何処にも在り得る…まあそれは別にいいの。そもそも『影刃縛』は「何らかの境界面から射出する」から「地面」がある限り何処にでも放てるし、『影竜』もまた平面を渡り敵を襲うモノ。地面が続くなら問題なく届かせられるわ?

ああ、この後もあるのだし、境界線そのものを書き換え、引き直し、「骸の海」と「仏国土」を再定義しちゃうわ。……まあ仕切り直しぐらいにはなるでしょう?光と闇、夢と現、生と死、過去と未来、彼岸と此岸、有限と無限、二者を定め分かつは「境界線」だもの。このぐらいは、ね?



 名は体を現す。
 それがサイバースペースにおいて『ジャッジメントガール』がついたルールの穴である。
 彼女は言う。
 その名が示す力こそがサイバースペースにおいて『神王サンサーラ』を追い詰める力となることを。
 そして、事実猟兵たちは広大無辺、無限に広がりを見せる蚊のような骸の海を切り開いている。
 ただの一撃。
 そう、ただの一撃でも『神王サンサーラ』に叩き込めば、強大過ぎるがゆえに完全なる顕現を彼は果たせなくなる。
 そのためには彼と猟兵たちを隔てる骸の海を如何にかしなければならないのだ。
「うふふ、それじゃあ遠慮なく」
「な、何をされるつもりっスか!?」
『ジャッジメントガール』の言葉に御影・しおん(Unknown・f27977)は笑む。
「――我が名は『   』」
「んんんっ!? 聞き取れなかったんスけど?!」
「我は――」
 しおんは、笑むままであった。

 その瞳にはユーベルコードの輝き。
 彼女の笑みは、世界に消えるように『ジャッジメントガール』の知覚をくぐり抜けた。
 そして、それは彼女に限ったものだけではない。
 彼女は完全なる知覚、認識、把握が困難な飛行物体へと変貌している。
 見えてはいる。
 だが、彼女の姿はを認識できない。
 そこに確かにいる、とはわかるのだ。けれど、視覚情報が改ざんされているように、Unknown(アンノウン)として世界ん異存在するのだ。

 彼女という存在を誰も知らない。どこにいるのかも知らない。
 故に、誰でも有りどこにでもなり得る。
 言ってしまえば、それは不可視の怪物。
「広大無辺に広がる骸の海とて、それが広がるというのならば、未だ骸の海ではない場所がある、ということ。そこに境界線はある。そして、海は空に届かない。故に境界面が生まれる、のならば」
 骸の海から糸状の何かが走り、骸の海を切り拓く。
 そして、その切り開かれた境界から出現するのは、竜であった。
 首をもたげる影の竜。
 それは『神王サンサーラ』の放つ光を阻むものであった。

「そうだ。骸の海とそうでないないものが必ず此処には存在している。如何に広大無辺と言えど、その理は変わらない。故に」
「そう、光と闇、夢と現、生と死、過去と未来、彼岸と此岸、有限と無限、二者を定め分は『境界線』だもの」
 光に照らされぬ影の何処かに彼女がいる。
 声だけが聞こえる。
 しかし、姿は見えない。
 どこにいるのかもわからない。

 けれど、彼女は確かにそこにいる。
「仕切り直しよ、『神王サンサーラ』。私は定義する。境界線を以て反転させるわ。此処より先は『仏国土』、そして、此処より後は骸の海」
 見えぬ誰かが書き換えた境界線。
 それは広大無辺に広がる骸の海と本来あるはずの仏国土を入れ替えるもの。
 ルールの拡大解釈と盲点を突くやり方によって、しおんは『神王サンサーラ』と猟兵たちの距離を逆転させたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤柄田・焼吾
キャンピーくんのお陰で英気を養えたし
俺もまともに戦ってみようかと…っていきなりピンチ、怖い!
屁理屈通らなかったらデスじゃん…
くっそ、腹決めて無茶振りいくぜ!

サイバーザナドゥ、俺の世界とは違う歴史を歩んだ地球。
そう、地球なら俺の地元は“ある”。
それなら“ご当地ヒーロー”として、地元を脅かす存在は倒さなきゃいけない
そして、ヒーローの物語は怪人と熱いバトルをしてこそ面白くなるもの
なのに何もできず光一発で退場なんて物語として退屈だろ?
だから一発当てるまでは俺は消えないし、攻撃も絶対当たる!
出でよスーパーご当地ロボ!
ご当地パワーを込めまくったビーム発射!
仏国土のご当地怪人サンサーラ、年貢の納め時だぜ!!



 休息というのは大切なものだ。
 戦い続けることはできない。どんなに頑強なものであっても、翳りを見せる。
 それは言うまでもなく歴史が証明してきたことだ。
 過去、永遠に等しい時間を戦い続けた勇者がいた。しかし、そんな彼ですら永遠に戦うことはできなかったのだ。
 故に休息とは戦うものたちにとって必要なもの。
「『キャンピーくん』のお陰で英気を養えた! なら、俺も戦わなきゃあな!」
 藤柄田・焼吾(素敵な一品を作りたい・f44441)は意気込む。
 戦うことは恐ろしい。
 怖いと思う。
 けれど、世界の危機なのだ。
 やってやれないことはない。そのために養った英気は使うべきだと彼は思っていた。

 けれど、目の前に広がるのは骸の海。
 ここが仮想現実だと知ってはいても、恐るべきものであった。
「どれだけ領域を反転させようとも、私のユーベルコードは骸の海を無限に広げていく。その場しのぎにしかならない。仕切り直しても、おなじことだ」
『神王サンサーラ』の言葉に猟兵たちが切り開いてきた道が再び閉ざされようとしている。
 無駄だと言うものがいる。
 全ては無に帰るのと同じように破滅は必定であるから、抗うことも無意味であると。

 だが、焼吾は本当にそうか? と思う。
「諦めちゃだめっス!」
『ジャッジメントガール』の言葉に頷く。
 そうだ。諦めるのは絶望よりも人の心を縛り上げる。
「くっそ、腹決めたぜ、俺は!」
 彼の瞳がユーベルコード。
「合体せよ! スーパーご当地ロボ!」
「んえっ!? ここ、仮想現実っスよ!? ……あ、まさか!」
「そうさ。たしかに此処はサイバーザナドゥでサイバースペース。俺の世界とは違う歴史を歩んだ地球」
「地球ってんなら、勿論、あるんだろうな、アンタの地元も」
『メリサ』と呼ばれる亜麻色の髪の青年の言葉に頷く。
 そうなのだ。

 ここが地球である、というのならば、なくとも己の地元はサイバースペースで『ある』と定義すれば存在し得るのだ。
 そして。
「ご当地ヒーローとして、地元を脅かす存在は倒さなきゃいけない。そして、ヒーローの物語は怪人と熱いバトルをしてこそ面白くなるものなのに、何もできずに光一発で退場なんて物語として退屈だろ!」
 スーパーご当地ロボは、『神王サンサーラ』の一撃を受けて消滅――しない。
 そう、焼吾は思う。
 己の思うスーパーご当地ロボは、不屈の戦士。
 そして、これは不屈の闘志が紡ぐ物語。

「頼むぜ、みんな! 一緒に操縦してくれ!」
 焼吾の言葉に『ジャッジメントガール』、『メリサ』、『ケートス』、『アイレオ』が頷く。
 ご都合主義というのならば笑うがいい。
 しかし、此処には焼吾を含めて五人いる。
「いくぜ! 仏国土のご当地怪人サンサーラ」
 焼吾は、笑う。
 恐怖など笑顔で塗りつぶせばいい。
 それができるだけの力が、このご当地ロボにはあるのだ。
「これが年貢の納め時の! ご当地パンチからの! ご当地ファイナルビームだ!!」
 炸裂するユーベルコードの一撃は骸の海を押し返すようにして放たれ、その光条の先に『神王サンサーラ』を示すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
ふむ、名前ねえ。
あたしの名前は本名忘れたから適当に自分で付けただけなんだよねえ。
まあ、そう呼ばれている称号ならあるか。

あたしは「万物喰らい」にして「万象喰らい」。
全てを喰らい飲み込む混沌の獣。

全てを喰らうモノならば、骸の海も、0と1の電気信号で出来たサイバースペースの空間そのものも、
全て喰い尽くしてサンサーラまでの距離を縮めることが出来る。

そして骸の海を食ったことで【偽神変生】を発動。
戦闘力を強化して攻撃するよ。

神様が救わず滅ぼそうとするんであれば、
こっちだってどんな手を使ってでも滅びを乗り越えてみせるさ。
ヒトを、生命を、あまり甘く見ない事だね。



 名前。
 それは人を示すものであり、ものを示すものである。
 認識の共有化に使われるものであり、名を示すということは定義されるということでもある。
 なら、名のないものは定義されぬものか。
 名付けられぬ生命は生命ではないのか。
 答えは否である。
 定義は名によって決められるばかりではない。

 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は自分を知っている。
 他者から見る己の姿は不定義の怪物でしかないのかもしれない。
 己の由来も神隠しによって知る者はいない。
 なら、自分はなんなのか。
 己の本来の名を忘れた者は、再定義できないのか。
 そんなことはない。
「あたしの名前は、本名忘れたから適当に自分で付けただけなんだよねえ。まあ、そう呼ばれている称号ならあるか」
 自身を定義するもの。

 己が道を己で見つけ出すことのできるもの。
「あたしは『万物喰らい』にして『万象喰らい』。全てを喰らい飲み込む混沌の獣」
 光条の一撃が『神王サンサーラ』の広げる骸の海を切り裂いていく。
 そのさなかをペトニアロトゥシカは駆け抜ける。
 切り裂かれた骸の海が彼女を飲み込むように両側から迫る。
 けれど、彼女は止まらなかった。
「あたしは獣。全てを喰らう獣ならば、骸の海も、0と1の電気信号で出来たサイバースペースの空間そのものも」
 偽神変生(デミウルゴス・セル)によってペトニアロトゥシカの顎部が変容する。

 大口を開けたペトニアロトゥシカは、迫る骸の海すら飲み干すようにして喰らっていく。
 全て喰らい尽くす。
 此処まで紡いできた猟兵たちのユーベルコードの輝きは、無駄なんかではない。
 盤面を何度ひっくり返されるかのような無法を『神王サンサーラ』のユーベルコードがもたらすのだとしても、ペトニアロトゥシカには関係なかった。
「神様が救わず、滅ぼそうとするんであれば」
「私とて救うことのできぬものはある。だからこそ、私は過ちを犯した」
「いいよ。救ってもらわなくたって。こっちだって、どんな手を使ってでも滅びを乗り越えて見せるさ。それくらいのこと」
 彼女は骸の海を飲み干し、全身の細胞が偽神細胞へと変容していく。
 膨れ上がる体躯。
 骸の海さえ掻き分け、飲み干し、彼女は『神王サンサーラ』への道を切り拓く。

「どんな力も滅びの定めを持つ。私のユーベルコードが翳りを見せたように。これは必定なのだ」
「そんなの関係ないね。ヒトを、生命を、あまり甘く見ないことだね」
 無限に思える力も翳りを見せたというのならば、完全ではない、ということ。
 ならばこそ、ペトニアロトゥシカは諦めない。
 諦観とは程遠い歩みを送ってきたのだ。
 己の背にある轍の如き過去は、自分を裏切らない。裏切れない。
 故にペトニアロトゥシカは、己がもたげた顎を最大まで広げ、骸の海を飲み干すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャット・アーク
名は体を表す、ねぇ
それじゃこんなのはどう?

シュレディンガーの猫
オレは光に当たった可能性と当たってない可能性が重なり合った量子の状態になる
骸の海に呑まれたかどうかも分かんない
要は実質無敵状態だね
オレがやられちゃうって言う結果を確定させたいなら、キミ自身の目でオレを観測しなきゃ
そんな遠くにいたら見えないんじゃない?
もしかしてキミは無限の海を越えられないの?
オレはできるよ
量子もつれ……ざっくり言うと、オレはどこにでも居てどこにも居ないって状態
光速も超えるワープみたいなものだね
サンサーラの死角へ飛んで、振り向かれる前に腕に仕込んだ高周波ナイフで攻撃するよ

この世界はもうオレのもの
王様は二人もいらないよ



 猟兵たちのユーベルコードに寄って光条が骸の海を切り裂き、飲み干していく。
 その光景の中をキャット・アーク(路地裏の王様・f42296)は、しなやかささえ思わせるような疾駆でもって駆け抜けていく。
『神王サンサーラ』は確かに強大なオブリビオンである。
 広大無辺に骸の海を広げることのできる力。
 それによって彼と己を隔てる距離は、広大無辺と同じ。
 しかし、猟兵たちのユーベルコードはこれを切り開いたのだ。
 距離を縮めたのだ。
 なら、自分は疾駆する。

 強大故に完全でなければ顕現できない『神王サンサーラ』に一撃でも加えれば、それで戦いは決する。
 だが、その一撃が遠いのだ。
「だからといって諦める理由にはなってないよねぇ。だからさ」
 自分は疾駆している。
 猫のようにしなやかに迫る光を前にしても前に進むのだ。
「だが、それも無駄だ。どんな抵抗も、無限に広がりゆく骸の海の前には」
「そうかな? こんなのはどうかな?」
『神王サンサーラ』の放つ光は、あらゆるものを消滅させる。
 そして、光の速度は言うまでもない。
 躱すことなどできようはずもない。

「シュレディンガーの猫。オレは光に当たった可能性と当たっていない可能性が重なり合った粒子」
 結果が確定するまで、キャットの存在は如何なる変容も受け入れない。
 箱の中を覗き込むまで生死が決定しない猫のように。
「要は実質無敵状態だね」
 キャットは、口八丁であると思ったかもしれない。

 けれど、キャットは笑う。
 この状況でなければできないことだ。
 光は確かに照射された。けれど、その結果を観測するには、『神王サンサーラ』の眼でキャットを見なければならない。
 しかし、この距離である。
「オレと君との間を隔てる骸の海こそがオレの味方ってわけさ」
 そう、『神王サンサーラ』は骸の海を広大無辺に広げることが出来るが、広げた先まで行くことができない。
「オレはどこにでもいてどこにでもいない。つまりは粒子のもつれ。もつれた粒子は、光の速度も越える。だって、今のオレに距離は意味がないからね」
 キャットは笑う。

「猫の一声(ドミナント)ってやつさ」
 キャットは『神王サンサーラ』へと迫る。
「この世界はもうオレのもの。王様は二人もいらないよ」
「見事だ。だが、私のユーベルコードは因果を必要としない。広がる、という事象のみをもたらす」
 キャットの振るう高周波ナイフが眼前で広がる無限の骸の海を斬り裂く。
 ワープの如き移動を持ってしても『神王サンサーラ』に至らない。
 けれど、とキャットは笑った。
「オレが証明したよ。やっぱり、倒せない敵なんかじゃあない」
 あと一歩とキャットは迫ったのだ。
 それは無限にも思える戦いの結末の雛形を見せた結果となっただろう。
 届く。

 無限にも届くものがあると示して、キャットは広がる骸の海を切り裂いて、光明を示してみせたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…名前が力を持つ…か…それならばこのプルモーサの家名も力を持つという事だね…
…知により未知を切り開き未来を創る…それがプルモーサだよ…

…五感を封じて人を闇に閉ざすその光も…闇を払い朝を迎える黎明剣【アウローラ】の刃で切り開くとしよう…
…骸の海の先にサンサーラを見つけたら…重奏強化術式【エコー】で多重強化した【魔弾、侵魔を穿つ】を発動…
……あらゆる困難を打開するこの銀の魔弾はその名が示すとおりに過去…即ち骸の海を貫いてオブリビオンであるサンサーラを穿つだろうね…



 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、なるほど、と頷く。
 光速を超えた速度でもってしても『神王サンサーラ』は彼我の間に骸の海を広げることができる。
 恐るべき力だ。
 強大に過ぎるとも思えた。
 けれど、猟兵のユーベルコードの輝きは彼女に光明を見出させた。
 そして、ここがサイバースペースであり、また同時に『ジャッジメントガール』が言うところの口八丁でもって『名は体を現す』を実行するのならば、彼女は勝ち筋を見出すことができたのだ。

「……名前が力を持つ……か……それならば、このプルモーサの家名も力を持つということだね……」
「そのとーりっス! 名は体を現す。名は力の象徴っス! これがこの世界のルールってんなら!」
「……知に寄り未知を切り開き未来を創る……それがプルモーサだよ……」
 メンカルは瞳を閉じる。
『神王サンサーラ』の放つ五感封じの光。
 それに寄って彼女の五感が立たれる。
 見えない、感じない、聞こえない、匂わない、味がしない。
 無だ。
 全てが無に包まれているかのような虚構にメンカルは落とされたかのような感触を覚える。

「……五感を封じて人を闇に閉ざすその光も……」
 メンカルは己が手にした剣を掲げる。
 それがどんな形をしているのか、どんな感触なのかも、今は感じられない。
 けれど、彼女は確かに力を信じている。
 己が手にしたもの。
 その名は『黎明剣』である。
 名が力を持つのならば、己が『黎明剣アウローラ』は、闇払う刃。
「……見えた」
 メンカルの瞳が『神王サンサーラ』を見据える。
「私のユーベルコードを破るか」
 聞こえない。
 けれど、関係ない。見えたのなら、進むだけだ。

 手は自然と動いていた。
 術式を組み上げていく。術式に寄って強化された魔法陣。
 それが眼前にあると認識できれば、後は紡ぐだけだ。
「貫きの魔弾よ、狙え、穿て。汝は討滅、汝は穿孔。魔女が望むは過去を貫く銀の弾」
 放つは、魔弾。
 強化術式の魔法陣へと打ち込まれた魔弾は一気に加速し骸の海を斬り裂くようにして飛ぶ。
 大波のように骸の海が壁になるのだとしても、魔弾、侵魔を穿つ(シルバー・バレット)かのように一直線に『神王サンサーラ』と己たちを阻むものを貫くのだ。

「……あらゆる困難を打開するこの銀の魔弾は、その名が示すとおりに過去……即ち骸の海を貫いて、お前への道を切り拓くだろう……」
「これは……」
「そう、知とは轍。振り返れば、たしかにそこにあったという証明……紡ぎ、積み重ねる。骸の海が過去の集積に寄って歪むのならば、人の知は集積によって高みを目指す土台となるもの……」
 故に、とメンカルは己の一射が『神王サンサーラ』を穿つことはなくとも、骸の海という障害を穿つことを知る。
 それによって、己は道を示したのだ。
 この先に己たちが打倒すべき存在がいるのだということを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
『ジャッジメントガール』
あなたは不可能も可能にしてしまうのね

悪魔『水月』に与えられた名は『薄翅』
蝶の翅を意味し、飛び立つ為に贈られた名よ
この名がある限り、私はどこまでも飛んでいける

五感をなくしたしても
心に焼き付いた光が導いてくれる
目指すべき場所を定めたなら
『薄翅』の力を込めて、光の矢を放ちましょう
骸の海を超えて、一撃よ届け



 無限を穿つものがある。
 それは猟兵たちのユーベルコードであった。
 ただ一つの光では穿つことはできない。重ね、紡ぐこからこそ因果を結ぶことのできるものがあるのだと、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)の瞳には映る。
「もう少しっス! あと少しで『神王サンサーラ』まで届くっス!」
『ジャッジメントガール』の言葉が耳を打つ。
 そうだ。
 進まねばならない。
 どんな強大な敵であっても、迷うことはそれだけ遅くなるということだ。
 躊躇いは、死を近づけさせる。
 終わりを引き寄せる。

 だというのならば、静漓は自分が何をすべきかを理解する。
「『ジャッジメントガール』、あなたは不可能も可能にしてしまうのね」
「違うっス! 自分だけの力じゃあないっス! これは皆さんの、デビルキングである皆さんの力っス! さあ、お願いするっス! その名が示す力を、送られた力の意味を示す時っス!」
『ジャッジメントガール』の言葉に静漓は頷いた。
 そうだ。己の名。
 送られたな。
 悪魔『水月』に与えられなた名は『薄翅』。
 頼りない翅。翅脈はか細く、簡単に折れてしまいそうになる。
 蝶の羽撃き。

「これは飛び立つ為に贈られた名よ」
 羽撃け。
 その翅は空を舞うためにある。どこまでも飛んで行けと願われた名のままに静漓は、骸の海を飛ぶ。
 一直線に猟兵たちが切り開いた道をゆく。
 紡がれたのならば、己もまた紡がねばならない。
「風が吹いている。だが、その風すらも過去は」
「それは命の息吹というものであることを私は知っているわ」
 五感を封じる光が静漓を打つ。
 視界が暗闇に落ちる。
 何も聞こえない。
 何も感じない。
 匂いも、味覚も、何もかもが奪われた。

 暗闇のなかで飛ぶことはできるか。
 できないのかもしれない。
 けれど、彼女はもう、しるべ(シルベ)を得ている。
 視界が映らなくても、心に焼き付いた光が導いてくれる。彼女はもう目指すべき場所を定めているのだ。
 この『薄翅』は羽ばたくことができるのだともう知っているから。
「追いついてみせるわ」
 悪魔の加護を受けた静漓は飛ぶ。

 蝶の羽撃きは風を起こす。
 風は疾風に変わり、竜巻へと変貌する。ただの一羽撃きであっても、波及していく。
 己が手を差し伸べたことも、己が手を差し伸べられたことも。
 全てが過去になるのだとしても、無意味はないのだ。
「私は、目指すべき場所をもう知っているわ」
 だから、と骸の海を超えろというように光の矢を放つ。

 強く、強く、風が吹いた。
 それを失った五感ではなく、心で感じ取り静漓は、届けと願うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

●名は鯛を顕す?
名は体を表す?つまり神王は神の王?ボクの王様!
わーい王様王様ー!
えーそういう意味じゃないのー?そっかー

●話をしよう
そうあれは1万二千年前…ボクははるかなるサンサーラくんへの旅を始めた
なんかまあ歩いてけばそのうちたどり着くよねと確信して!
過去の…骸の海の奔流のなかに埋もれた記憶や者たちとの出会い、交流…
そして真実…なんてこったい!そういうことだったんだね!
―――いややっぱりボクが出発したのって1分前…いや5秒前?だった気がするし真実なんてどこにもなかった?なんかそんな気がしてきた!

とUC『神論』で屁理屈と世界改変と時間遡行を間に噛まして彼との距離をゼロにしよう!
そしてハイ反射バリアー!と彼の神王ビームを反射してエンド!
なんでそんなことできるのかって?はー?ボクは『神』?なんですけど!
まあ『無限』も『終わり』も、別に悲観するほどのことじゃあないってば
『無限』があるってことは『終わり』があるってことは『零』からの『始まり』もあるってことだからね!



「なになに、名は鯛を顕す? え、違う? 名は体を現す?」
 サジェスト汚染著しいことをロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は呟きながら首をかしげる。
「言ってる場合っスか!」
 音はあっていても、字面が違うってやつである。
『ジャッジメントガール』の言葉にロニはまた首を傾げた。
 自分が何かおかしなことをいっているだろうか、と言わんばかりの顔である。
「『神王サンサーラ』っスよ! あと一歩の所まで来てるっス!」
「神王、つまりは神の王? ボクの王様! わーい王様王様ー!」
「そういう意味かもしれないっスけど、この場合は間違っているっていうか、もどかしいっていうか、なんていうかっス!」
 とにかくやべーっスよ! と『ジャッジメントガール』が示した瞬間、ロニの五感が封じられる。

 見ることも、聞くことも、触れても感じられず、無味無臭。
 一瞬にしてロニは暗闇の中に落とし込まれる。
 だが、彼はふむ、と大仰に頷く。
「そうあれは一万二千年前……ボクは遙かなるサンサーラくんへの旅を始めた」
 なんか急に始まった。
 これなに? と誰もが思っただろうが、そんな反応はロニにはわからなかった。
 何せ、五感を封じられているので。
「なんかまあ歩いていけば、そのうち辿り着くよねって思ったんだよね!」
 これは思い出?
 よくわからないままにロニはつぶやき続ける。
 まるで子どもの屁理屈みたいなことを訥々と語り始めるのだ。

「過去の……骸の海の奔流のなかに埋もれた記憶や者たちとの出会い、交流……そして真実……なんてこったい! そういうことだったんだね!」
「いきなり端折るじゃん」
『メリサ』と呼ばれた青年は、急転直下どころか、絶対これ飽きただろ、と言わんばかりの話の折れ曲がり具合に息を吐き出したがロニには知る由もないとこおrである。
「いや、やっぱりボクが出発したのって一分前……いや、五秒前? だった気がするし、真実なんてどこにもなかった? なんかそんな気がしてきた!」
「何がどうなってんのよ」
「わからん」
『ケートス』も『アイレオ』の同様であった。
 そう、これはロニのユーベルコード、神論(ゴッドクィブル)。
 神の理屈など人なる身のものが理解などできようはずもない。

 子どもの屁理屈じみた、と感じたのならば当然である。
 そして、ロニは理不尽な世界改変を行う。
 ここがサイバースペースであるというのならば、造作もないこと。加えて、時間遡行に寄って己が五感封じされたという事実を破却し、なかったことにした時間を前にして頷く。
「つまり、なんとかなってってことさ!」
「どういうことっスか?」
 まるでわからん、と言わんばかりの『ジャッジメントガール』。

「まあ、無理もないさ、キミにとっては一度目だからね!」
 ロニは迫る骸の海を見やる。
 ここからだ。
 今再び、ここから始まる。
 そして、猟兵たちのユーベルコードが輝くだろう。それはどんなに時間を遡行しても変わらぬ事実だ。
 彼等は前に踏み出していく。
 たとえ、目の前に無限の如き終わりが立ちはだかったとしても。
「悲観するほどのことじゃあないよね。『無限』があるってことは、『終わり』があるってことは、『零』からの『始まり』もあるってことだからね!」
 それさえわかっていればいいのだ。
 はじまりは、いつだって唐突にやってくるけれど。
 それでもやっぱり神としてロニは思うのだ。
「それを祝福してあげなきゃってね――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

…拡大解釈ねー。
私たち…まあ陰海月と霹靂含んでなんですが。『風林火山陰雷』なんですよー。
ええ、私は風ですが?

なのでー、まあとっても素早いでしょうね。疾きこと風の如し。
だから、目で追えない。眼前が指定なら、そこから逃れる。

だからそのまま回り込んで、後ろからこのUCて穿ちましょう。


陰海月「ぷ!」
しり…何だっけ?(知り難きこと陰の如しって言いたかった)
でも、陰だから、ぼくもこーっそり後ろに回って、この触腕で薙ぎ払っちゃえ!



 名前が示すもの。
 それは己を定義するものであり、力のあり様であり、在処でもあっただろう。
 束ねられた一つは溶け合う。
 境界を曖昧にするがゆえに人格という戸田照りが必要となる。
 だが、こみ上げる呪詛は束ねたがゆえに混在し混沌。
「……拡大解釈ねー」
「そうっス!」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の言葉に『ジャッジメントガール』は頷く。
「拡大解釈するには名前が一番手っ取り早いっス! もっとも自分であると認識しながら、自分の力の由来を示すことにもなるっス!」
 彼女の言葉に『疾き者』は思う。

「風が吹いていますね」
 猟兵たちのユーベルコードが示すのは、強大なオブリビオン『神王サンサーラ』への道筋。
 彼等は強大な敵出会っても構わず前に進む。
 それが命あるものの特権であり、力強さでもあった。
 彼等は必死なのだ。
 必ず死ぬとわかっているからこそ、懸命になれる。
 死とは終わり。
 生きていれば死ぬことが結末。因果と言ってもいい。
 その過程は誰にも知られることはないのかもしれない。報われることもないのかもしれない。けれど、それでも構わぬと生きることをやめないのが生命だ。

「なれば、私は疾きこと風の如し。風は目には見えない。目で追うことは出来ない。なら」
 迫る光。
 それは広大無辺なる骸の海を生み出すもの。
 ユーベルコードに寄って切り開かれた骸の海さえも、再び広げていくのだ。
「逃れることはできます」
 広がり続ける骸の海は風であっても追い抜くことはできない。
「ぷ!」
 影より『陰海月』が頷く。 
 知り難きこと陰のごとし。
 己たちという存在を認識させない。

『神王サンサーラ』は認識することで光を己たちに放つ。
 距離は稼げなくても、敵のユーベルコードは眼前を指定している。なら、背後ならばと思ったのだ。
 だが、それはすでに他の猟兵が示している。
「回り込むのだとしても、私の手は届く」
 叩きつけられた一撃。
 それは黄金の腕によって防がれ、その腕と腕との間から骸の海が広がっていくのだ。
「きゅっ!」
『陰海月』の一撃もまた然り。
 けれど、『疾き者』は、これが致命的な『神王サンサーラ』のミスであることを知る。
 確かに己たちの攻撃は届かなかった。

「意識は私達に惹きつけられている。ならば、そこの隙を逃さぬ猟兵がまだいるのですよ」
 それで十分だというように『疾き者』たちは広がる骸の海の向う側で告げる。
 届かぬものなどない。
 到達できものもない。
 そこにあるのは、不変ではなく普遍たる事実。
 あまねく全てにおいて、滅びが必定であるというのならば、『神王サンサーラ』もまたその理から逃れられないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レーヴクム・エニュプニオン
ボクちゃん、とーじょー★
何で来たかって?興味惹かれただけなんだ★
だってさ、拡大解釈なんて、楽しいじゃん!

さってと。ボクちゃんの拡大解釈っていうと…名前なんだよね。
今の名前は、全て『夢』を指し示す。なら、ボクちゃんいるところ…全て夢も成り立つよね?

で、ボクちゃんは自分の腕を傷つけて…そこから【レーヴァテイン】!うん、なかなか★
夢だから、骸の海も広がらない。全ては夢だ。
眼前もなく、ただボクちゃんはそのまま斬りつけるのみ!



「ボクちゃん、とーじょー★」
 レーヴクム・エニュプニオン(悪夢喰い人・f44161)は、サイバーザナドゥの仮想現実、サイバースペースへと侵入し、その広大無辺に広がる骸の海を前にして笑う。
 ユーベルコードの明滅。
 数多の猟兵たちが切り開いた骸の海の先に『神王サンサーラ』がいる。
 あまりに強大である。
 見ただけでわかる。
 これは手に負えない敵であると。
 しかし、『神王サンサーラ』は強大すぎるあまり、完全な状態でなければ顕現できない。

 つまり、一撃与えれば、それだけで『神王サンサーラ』はこのサイバースペースから消え失せるということだ。
「単純だけど、それが一番難しいことだもんね」
 レーヴクムはうんうんと頷く。
 確かに難しいことだ。
 これまで猟兵たちのユーベルコードはなんとかして『神王サンサーラ』の不意をつかんとするものもあった。
 しかし、いずれもが阻まれている。
 とは言え、それは光明を示してみせた。
 届かなくても、距離を詰めることはできると。
 そして、立ち替わり入れ替わりと猟兵たちは戦いを挑む。

 なら、レーヴクムも同様だ。
「面白そうじゃん! 楽しいじゃん! 拡大解釈! ならさ!」
 自身の名を拡大解釈する。
 己のなは夢を示す。
 名前はない。けれど、己自身が定義するのならば、やはり『夢』だ。
「ボクちゃんがいるところ……全て夢でも成り立つよね?」
 現の夢。
 白昼夢。
 夢を示す言葉は数多有り、それをレーヴクムは拡大解釈する。
 己は夢ならば、見せなければならない。

 彼の手が切りつけられ、そこから現れるのは炎の剣。
「レーヴァテイン! うん、これは夢だ。夢だから、骸の海も広がらない」
「だが同時に私の夢でもある」
『神王サンサーラ』の言葉にレーヴクムは頷く。
「夢の中なら、互いは対応。だよね。でもさ、夢は現実に侵食なんてしない。できない。だって、夢と現はボクちゃんたちの定義によって境界を引かれているから。だから、全ては夢だ」
 レーヴクムは、己が手にした炎の剣を振るう。
 叩きつけられた炎の剣は、夢の中で『神王サンサーラ』の体躯へ迫る。
 骸の海が広がる。
 でも、これは夢だ。
 広がらない。現実を侵食できない。骸の海は過去そのもの。
 集積された過去でさえ、夢という心が見せる影法師まで塗りつぶすことはできない。

 現実のレーヴクムが出来ないことも、ここならばできる。
「夢は夢のままさ」
 叩き出すようにして『神王サンサーラ』をレーヴクムは夢の中から排除する。
『神王サンサーラ』は頷く。
「これが狙いか」
「他の猟兵さんたちが証明したのさ。君に近づけないわけじゃあないって。ならさ、あとはわかるよね!」
 夢の中から外へ。
 レーヴクムは、己が夢を檻として『神王サンサーラ』をはじき出す。
「後は任せたよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
なぁるほど…仮想空間だからこそ通せる無茶、ってコトねぇ。ホント、言ったもん勝ちにもほどがあるけれど。

まあ、あたしからするとだいぶやりやすいかしらねぇ?
だって「名は体を表す」なら――|魔術文字《名前のある文字》は、最大限に効果を発揮するってコトでしょぉ?
|浄化し《ラグ》、|悪縁を断ち《ユル》、|灼き祓い《烏枢沙摩明王印》、|正しきを顕す《五大明王印》。意味さえ通ればいいんだもの、効きそうなもの片っ端から並べて釣瓶撃ちの絨毯爆撃ねぇ。

五感封じ?れっきとした状態異常だもの、●消殺で返せるわよねぇ?
|マン《自分自身》を下地にして|拳銃の銘《オブシディアン》を触媒に|ニイド《克服》を励起、さらにもう一つ重ねましょうか。
あたしの二つ名は「イエロー・パロット」。カクテル言葉は――「騙されないわ」。
仮想空間での攻撃って要は相手のプログラム書き換えによる詐術だもの、「自分自身を十全に保って騙されなければ効かない」でしょぉ?

一つの名前が幾つもの意味を持つ――これもある意味、「凡百なる無限」の表れかしらねぇ?



 夢の檻からはじき出された『神王サンサーラ』をティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は見上げた。
 その細められた瞳の奥で彼女は思考を組み立てる。
 このサイバースペースは仮想現実。
 遅効性の思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』を起点にして広がる骸の海は、『神王サンサーラ』のユーベルコード。
 そして、此処には『ジャッジメントガール』がいる。
 法の番人。だが、同時に彼女は拡大解釈、こじつけ、曲解、あらゆる口八丁を知り尽くしたものであり、それを仮想現実でもって実現する。
「なぁるほど……あれもまた仮想現実だからこそ通せる無茶、ってコトねぇ?」
「そういうことっス!」
「言ったもん勝ちにもほどがあるけれど」
「でも、そうでもしないとあんなメチャクチャな能力を持ったやつには勝てないっス!」
 彼女の言葉にティオレンシアは頷く。

「まぁ、あたしからするとだいぶやりやすいかしらねぇ?」
「マジっスか!?」
「あらぁ、否定から入ってはダメよぉ? 言ったじゃない。言ったもん勝ちって。なら、肝持ちよう一つで形成はいくらでも覆せるってものよぉ」
 それを示したのが猟兵達である。
 はじき出された『神王サンサーラ』の掌の間から光が迸る。
「必定を覆さんとするか」
「そりゃそうよ。だって、こんな戦場……あたしにお誂え向きだものぉ?」
 魔術文字をティオレンシアは空中に刻む。
 |浄化し《ラグ》、|悪縁を断ち《ユル》、|灼き祓い《鳥枢沙摩明王印》、|正しきを顕す《五大明王印》。
 その魔術文字は意味を通す。

 現実に効果を発揮するのだとか、そういうことは全てがこじつけだ。
 迫る光は己の五感を封じる。
 これを防ぐ為にも、彼女は『神王サンサーラ』に届き得るものがないかと片っ端から放ち続けているのだ。
 いわゆる絨毯爆撃。
 骸の海がこれを阻む。
 同時に光が彼女を打つ。
 五感が失われる。
 見えない、聞こえない、感じない。無味無臭によってティオレンシアは己が立っているのか、それとも倒れているのかさえもわからなくなってしまっていた。

 けれど、彼女は不敵に笑む。
「五感封じ。それはあたしに対する状態異常。なら消殺(リタリエイト)は、このときのために仕込みよぉ」
 それは彼女が意識して行うものではなかった。
 自動的なもの。
 反射とも言っていい。
 あらかじめ仕込んでいた魔術文字と刻印。
 それによって結界が発動し、五感封じを『神王サンサーラ』へと弾き返すのだ。

「――これは、私の」
「そうよぉ。あなた自身のユーベルコード。だったらぁ、距離も関係ない。あなたはあなた自身のユーベルコードで、その五感を封じられたのよぉ……と言っても、聞こえていないでしょうけれどぉ」
 ティオレンシアは構える。
 手にした拳銃に刻まれた名は『オプシディアン』。
 黒曜の輝き放つ銃身から放たれるのは、克服すべき己。励起されたオーバーロードの力は、己自身という下地を持って生み出される礎。
「さらにもう一つ重ねましょうか」
 ティオレンシアの瞳が輝く。

「知っているかしらぁ、あたしの二つ名」

『イエロー・パロット』――黄色いオウム。
 その名を冠するカクテルが存在している。
 そして、面白いことにカクテル言葉というものがある。
 ブルームーンが『できぬこと』を示すように、彼女の二つ名は、大波のように迫る骸の海を前にしても、唯一言で突き返す。

 そう、『騙されないわ』、と。

「仮想空間の攻撃って要は相手のプログラム書き換えによる詐術だもの。なら、『騙されないわ』」
 自身を十全に保つ。
 騙されなければ、効かない。
 放たれる弾丸は、あらゆる防壁を無にして、猟兵たちのユーベルコードの光が紡いだ軌跡を駆け抜けていく。
 この銃弾は殺しきれないだろう。
 だが、十分だ。
 手傷を与えればそれでいい。
 故に。

「……私に届きうるのか」
「ええ、無限であろうともね」
 薄れゆく『神王サンサーラ』の姿。
 サイバースペースから淘汰され行く骸の海。
 それを見やり、ティオレンシアは息を吐きだす。
「一つの名前が幾つもの意味を持つ――これもある意味、『凡百なる無限』の表れかしらねぇ?」
 凡百は紡ぐ。
 凡庸であるがゆえに、唯一無二ではなく。
 されど、編み込まれるように、織り込まれるようにして紡がれていくものは、たった一つのものでは生み出せぬ景色を見せる。

 それを証明するようにサイバースペースには、骸の海は染みの一点すらなく、広がっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月18日


挿絵イラスト