帝都櫻大戰⑯〜喰電の疾駆
●砕けようと尚輝き溢すもの
夜さえ焼くネオン煌めくサイバーザナドゥへ、その輝きを上塗りなお昏きを齎す者が無数の幻朧桜と共に降臨する。
『私の放つ骸の海は無限に広がりゆく。それを阻む術は無い……』
悠然と言い放った存在こそ——エンシェント・レヰス 神王サンサーラ――!
サイバースペース内部に存在する遅効性の思考破壊プログラム“ヤマラージャ・アイビー”を起点とし、サンサーラの放つ骸の海がサイバースペース全域……ひいてはサイバーザナドゥの|現実《リアル》をも|噛み砕き《破壊》し、呑まんとしていた。
そこへ、一条の稲妻が奔る!
『あ〜、なるほど』
『……』
その稲妻の名は“竜神親分 砕輝”。
小さな紫電を放つ得物を肩に担いだ砕輝が首を回しじっと見据えようと、ただサンサーラは一瞥に止めその弱き気配を鼻で笑い視線を逸らした。
——だが、それでいい。
砕輝は燃えるような琥珀の瞳を細め、全てを察した表情で静かに構え口角を上げる。
『なるほどな、だから山本親分は俺をここに……さて、一生懸命なとこ悪いが——俺は、世界最弱“お前を止められる男”なんだ』
『……無駄なことを』
『どうだろうな? よし、始めるぞ!』
未だ悠然とした構え崩さぬサンサーラは、砕輝の輝ける本質を知らない。
そして砕輝は早鐘打つ胸に手を添え、小さく苦笑いしていた。
『……俺、いやっ! やるしかないな!!』
小さな不安と弱気を吐きかけ呑み込み、砕輝は思いのままに走り出す。
●護る者よ
「神王サンサーラ、骸の海、ねぇ……」
いやあ困っちゃうねぇと笑った都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)が、灰皿へ煙草を潰しながら“いらっしゃあい”と嫌に甘やかな声で手招く。
「で、当該は厄介なことに骸の海を駄々漏らし……よーは広げまくりって感じなワケ」
“資料見て”と渡された紙は梓の言葉とは裏腹にひどく簡潔にまとめられていた。
曰く、“神王 サンサーラ”以下当該は極めて強大なオブリビオンである。
だがその余りの強大さ故に|当該《神王 サンサーラ》は“完全に無傷の状態”でない限り、現場――サイバーザナドゥへの顕現を維持することができないと判明。
猟兵は即時広がり続ける骸の海を乗り越え、|当該《神王 サンサーラ》に一撃でも与え|当該《神王 サンサーラ》は一旦撤退させること。
シンプルに、だが規格外な内容に梓を見れば、にこりとわらった梓が髪をかき上げ音もなく椅子から立ち上がる。
そして、先程とは少し異なる口調で微笑み、手にした資料を淡々と読み上げていった。
「記載の通り、|当該《神王 サンサーラ》は“骸の海を無限に広げる”という規格外かつ制御不能のユーベルコードを保有。存在するだけで世界の悉くを破壊してしまいまう。実に厄介。ですが、」
そこで言葉を切った梓が取り出したのは一枚の写真。写る少年めいたその笑顔は、東方親分 砕輝!
「この厄介と、事と次第によっては唯一対等に渡り合える“幽世の竜神親分 碎輝”がキャンピーくんの力で送り込まれました」
知っての通り、砕輝は戦い始めこそ極めて弱い。だが砕輝の持つ“無限に成長する”という特性こそ、戦いが長引けば長引くほど有利となる。
「我々猟兵は、碎輝が無限に広がる骸の海に対抗できる程に成長し終えるまで彼を守り抜ければ勝機が見いだせる。……ただ、一つ気になるのは、彼の親分の言いかけた“戻れるのかな”という言葉でしょうか」
だが。
だがそれでも踏み出した砕輝の元へ赴かねばならない——そんな心を感じた梓が困ったように笑み“始めましょうか”と笑った梓の描いた紋章が広がり門を成す。
「行きましょう今一時“世界を守る”ために」
皆川皐月
お世話になっております、皆川皐月です。
どうかだれか、わたしをとめてください。わたしにわたしがあるうちに。
●注意:こちら一章のみの『帝都櫻大戰』戦争シナリオです。
●プレイングボーナス!:弱い状態の碎輝を守って戦う/強力に成長した碎輝と協力して戦う。
砕輝は最初は弱い存在ですが、後半につれ強くなっていきます。
前半戦は砕輝を守り・時間を稼ぐ戦いをし、後半は強くなった砕輝と共に一緒に戦いましょう!
●目的:神王 サンサーラに一撃を与え撤退させろ!
●戦場:サイバーザナドゥ
●敵
👿:神王 サンサーラ
かつて|広大無辺の仏国土《サンサーラディーヴァ》を広げていた存在。
オブリビオンとなった所為か、反転したように骸の海を広げ続ける存在と化しました。
第1章 ボス戦
『神王サンサーラ』
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POW : サンサーラディーヴァ
自身の【眼前】を【広大無辺の仏国土】化して攻撃し、ダメージと【神王サンサーラへの到達不能】の状態異常を与える。
SPD : サンサーラノヴァ
【かざした両掌の間】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【五感封じ】の状態異常を与える【神王光】を放つ。
WIZ : 強制転生光
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【サンサーラの光】を放つ。発動後は中止不能。
イラスト:ぽんち
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空桐・清導
POW
「心配すんな、戻れるさ。
或いは、キッチリ後始末はつけるからよ。
今はアンタが頼りだ!頼むぜ!」
砕輝に声を掛ける
自身も無限に[限界突破]する事で彼と同じことが出来るかもしれない
だが、砕輝以上に博打になる
故に此処は彼に希望を託すのだ
「ブレイザインが護る。
その意味を教えてやるよサンサーラ!」
UC発動
黄金の[オーラ防御]を砕輝と自身に纏わせる
[気合い]と[根性]で出力を無限に上げていき、世界の流出攻撃を空間ごと殴り抜ける
圧倒的な個の力で物理空間を超越して骸の海を消滅
必ず護るという意思で絶対の盾となって砕輝を護る
「安心しろ砕輝。
この通り、ヒーローは居る!
色々不安だろうけど、大丈夫だぜ!」
笑顔で励ます
●輝ける炎より
「心配すんな」
降り立った赤き仮面——ブレイザインが静かにファイテンぐポーズを取りながら砕輝に並び立つと、確かな声で口にした。
サンサーラの放つ輝きに機械鎧 超鋼真紅ブレイザインを炎のごとく輝かせる青年 空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の信じるものはただ一つ!
「俺が砕輝、アンタを……いや、」
——猟兵として、人として、清導は“他者を傷つける”オブリビオンが一つ、大切なことを忘却したことを知っている。それは“支えあい生きること”。
清導の心に燃える血潮が今、“砕輝を守る”と叫ぶから——!
「|ブレイザイン《空桐 清導》が、必ずアンタを守り通す! それに今はアンタが頼りなんだ、頼むぜ!」
『——おう! よろしくな!』
交わした拳の意味は、サイバースペース暴き壊し続けるサンサーラを止めるために!
サイバースペースを舞い踊る桜の雨を意にも介さず駆け出す清導が、竜神親分 砕輝を呑まんと放たれるビームめいた仏国土を弾くように、オーラ防御に包まれたその身を挺す。
『……無駄な足搔きだな』
「逆だ、サンサーラ。俺たちのこの足掻きには、ちゃんと意味がある! それに——ブレイザインが護る、その意味を教えてやるよ!」
軽やかに地を蹴った砕輝より前を行く清導は背に沿い、じっとサンサーラを観察し続ける砕輝にも、黄金に輝くオーラ防御を纏わせ走り続けていた。
無尽蔵に迫る攻撃に即時対応し続ける精神の集中。
出力を変えず一定の力を維持し続ける行為。
……砕輝が傷つかぬよう身を挺し、迫る広大な仏国土を気合と根性で底上げした機械鎧 ブレイザインの拳で幾度目か殴り上げた清導は徐々に息切れしつつあった。
「(っ、重てぇ……!)」
『諦めよ。既に——』
清導も、出力の限界は分かっている。
だが——清導は“ヒーロー”だ。臨界点など、とうに超える準備はできていた。
「砕輝、アンタは俺と俺の仲間が必ず守る。だから、心配すんな! 色々不安だろうけど、“大丈夫”だ!!」
『——!』
砕輝が息をのむ。
赤きフェイスマスク越し、確かに輝く清導の心を感じたから。
「っ、おぉぉおおおおおおおおおおおおお!!! ヒーローはっ! ここに居る!!」
『あぁ……、そうだな!』
凄まじい速度で迫りくる仏国土を限界まで気力振り絞り遥か彼方へ殴り上げた清導は、確かに未知の不安に揺れる砕輝の心に光を届けていた。
見えなかったはずの道に光が灯され、今確かに繋げられた。
大成功
🔵🔵🔵
一ノ瀬・漣
神王とかなんか凄いの出てきちゃったな…
神様とか王様とかに太刀打ちできんの!?って気持ちもあるけど…
依頼にも慣れてきたし
連れがいないのは初めてだけど
…ふふ、あの説明のときの顔…
思い出したらなんかソロでも頑張れそうで
砕輝さん
ここはオレが時間稼ぎます!
早業でUC
【Shut Your Mouth】で音を封じつつ
【Highway Star】の歌唱&楽器演奏でダメージとオマケに超麻痺も
詠唱が必要、なんだよね?それ(にま
なら、声が出なきゃ少なくとも範囲拡大はしない―でしょ?
五感が封じられたって畏れはしない
音は、鼓動は、いつだってオレの裡にあるから
唄えてると、奏でてると信じて
情熱のシャウトと演奏で音を紡ぐだけ
●託された光は音速に
「……カミサマ、かぁ」
ふと最近よく耳にした言い方を真似した一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)は、短く息を吐くとライブ前よりも緊張した心で愛器 Abbandoneの弦を爪弾き——笑った。
「まったく。神王とかなんかすごいの出てきちゃう|ライブ《依頼》にソロで、しかも連れじゃなくてお供する側とか、」
飛び込むように漣の元へ転がり込み、“すまん!”と汗をかいた砕輝に漣は笑う。
「いいですよ。オレ、ここに来る直前面白いものが見られたんで気分が良いんです……えぇ、それも——」
“リクエスト聞けるくらいには!”
UC—|I Want It All《スベテガホシイ》—!!
『まだ足搔くのならば——……その感覚の一切を捨てよ』
『っ、猟兵!』
「分かってます! 砕輝さんはオレの後ろにいてくださいっ、オレが時間を稼ぎます!!」
五感奪うその神玉の“ひどく繊細な弱点”を漣は見た。
「(——そう、オレは“まだ”奪われていない)」
もう発動しているはずのサンサーラのユーベルコード “サーンサーラノヴァ”は、|詠唱時間《・・・・》に応じて範囲が変化する!
『———、』
「(オレのが、先なんですよ!!)」
UCを即座に発動しなければならない状況ばかり体験してきた漣は、サンサーラのように悠長に待つ気などなかった。
“いーことおしえたげる”
それは現場へ向かう漣の背中を押す|際《きわ》で笑ったあの瞳が、““そこ”ばっか見ちゃダメだからね”と言った意味。|眼前のこと《力》に捕らわれ、|それ《UC》が“本当の力を発揮”するまでに“止める僅かな隙”は、実は最も手前に——……サンサーラの口元にあったのだ!
「カミサマは知りませんよねぇ——……アンタたちのお説教は誰も彼もが順番待ち。でも、俺たちアーティストのライブハウスは椅子の奪い合い。その日その瞬間、“一番”イイ曲が即興できてこそなんで!!」
『なっ、』
「——|Shut Your Mouth《その口は閉じてろよ》」
UC—|Shut Your Mouth《シャット・ユア・マウス》—!
一瞬一瞬に客の心を射止更なる高みへ駆けあがることを夢見る漣は止まらない。お喋りするヒマなんかあるわけない、さぁさぁ雁首並べて耳だけ出してろ無知共め!!
爆ぜ渦巻く音の嵐が全てを呑み、サンサーラの放つはずだったあらゆる音を不幸へと換装する!
『———!』
「好きなように言いなよ、ディスもマイナスもオレが歌う——!」
UC—|Highway Star《ハイウェイ・スター》—!!
至極の音が、全ての垣根を超える。
嵐のように、雨のように、陽光のようで、月明かりが如く——“当たり前”の顔でサンサーラの体を芯から痺れさせる!
力強く抵抗し解かんと藻掻くサンサーラを幾度も押しとどめる度、漣は吠えた。
「この|ライブハウス《戦場》じゃ、俺のがアーティスト歴長いんで!」
——本当は、薄く細く長く紡がれたサンサーラの五感奪うUCに指先も何もかも漣は浸食され始めている。
痛い痒い寧ろ触れているのかさえ分からない。でも、相棒の弦はいつもの場所にあるのなら、ただ弾くのみ!
「サンサーラ、アンタが紡げるのは“オレまで”でしょ」
『……無意味な真似だ』
“ありがとう、猟兵”と確かに竜神親分の声を聴いた気がしたのが、倒れた感覚さえ奪われた漣のブラックアウト直前の記憶。
小さな稲妻が、確かにピリリと光を放つ。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
砕輝のおにいさんの覚悟、受け取ったのでっす!
時間稼ぎ、任されたのでっすよー!
というわけで踊っていただくのでっす!
浮いている神王さんに合わせて空中浮遊ダンス!
結跏趺坐してらっしゃるサンサーラの神王さんなら、そのまま踊れるブレイクダンスなどいかがでしょうかー!
強制転生光が藍ちゃんくんや砕輝のおにいさんに当たらぬよう上手く向きを調節するのでっす!
なんならいっそ地形を利用し、敵を盾にするならぬ骸の海へと放たせましょうか!
全てを消滅させるなら骸の海も消滅させてくれるかと!
範囲は限られてますが、それでも広がった海が減るなら時間稼ぎになりますし、おにいさんも避けやすくなりますしねー!
『ーー俺も、お前らの心に応えたい。でも、』
まだ、足りない。
サンサーラの放つ骸の海や仏国土を制すには、未だ。
「おっ待たせしました! 藍ちゃんくんでっすよー!」
『!』
颯爽と現れた紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)が、美しいアメジストパープルの瞳を綻ばせ“任せてくっださい!”と屈託なく微笑んだ。
『すまない、俺はまだーー』
「だいじょーぶでっす! さぁ、神王さんにも藍ちゃんくんと一緒におっどりっましょー!」
へこたれなくていいと、藍は敢えて口にしなかった。
砕輝は砕輝のままでいい。ーーこれからも、この先も、後も。
「砕輝さん、ここは藍ちゃんくんにお任せでっす。|時間の限り、踊る《限界まで時間稼ぎをする》のでっす!!」
『……愚かな。この骸の海に、全て等しくーー』
光が迫る。
ステージライトより遥かな質量を持つ、光が。
『こりゃあ来るぞっ……!』
砕輝が身構えるのも無理はなく、純粋に輝き増すサンサーラは正に神の威容を持つ王の如く。
ーーだが、一つ。
ほんの一つ、サンサーラはボタンを掛け違えていた。
サンサーラは、本当の意味で藍の言葉の意味を知らない。いや、アイドルというものの“力”を分かっていない。
「(きっと、それが藍ちゃんくんにとっての隙なのでっす……!)」
藍はアイドルをただの偶像崇拝でおわらせない! 求めるのは声援の記憶! 舞台がなければその足元全てを舞台にすればいい! ただひたすらに駆け抜け、“藍ちゃんくん”はその遥か先へ行き続けているだけなのだから!
囂々と迫る強制転生光は、まるで太陽の落下。
質量厚く、信仰篤く、凄まじい熱量を伴って、藍ごと砕輝を焼き払わんと迸る!
「ーー残念でっすが、」
『なんだ、』
遥たかみより睥睨するから、答えてしまう。
それこそがサンサーラの奢り。それこそがサンサーラのアイドルへの無理解。ジャッジメントガールとはまた異なる解釈の違いは藍の歩みを空へ伸ばし、サンサーラと同じ土俵に立たせるには十分!
「結跏趺坐してらっしゃる神王さんなら、そのまま踊れるブレイクダンスなどいかがでしょうかー!」
『は、』
“なんだそれは”などと、口を開いている隙はなし。ステップからのパルクールにもにた藍の軽やかな歩みは止まらない!
UC ー|藍ちゃんくんと愉快な観客達!《リー・アー・アイチャンクーンッ》ー!
素早い藍の動きに翻弄され、時に外れ時に広げたはずの骸の海ををサンサーラの威光が焼いてゆく。
「……っ、まだ!!」
『小癪な真似を……っ!』
悠然としているようにも見えたサンサーラは、抗いきれぬ藍のUCに歯噛みし眉間に皺がよる。
未だ広がり続ける威光に衣装を灼かれようと、藍は決して足を止めない。緩急ある動きは指先まで神経を行き渡らせ、最後の最後までサンサーラに砕輝を見る暇を与えなかった。
『っ、猟兵! 俺が必ず……!』
「ではまた、次のステージでお会いしましょうでっすよー!」
限界まで輝いたアイドルの指先が、確かに次の道を示す。
行けと言われるまでもなく、徐々に纏う紫電の色を増す砕輝は走り出していた。
まだ、道は終わらず。
大成功
🔵🔵🔵
中靍・丹煮
よくねえ想い出もあるけどさ
好きな連中が生まれた故郷なんだよ
生みの親ってやつな
最弱で最強か
オレも戦闘特化した型じゃねえけどよ
やれる事はさせて貰うな
眩しくて綺麗な神サンだ
けど五感に頼ってねえんだ
今は妖怪なんて奇天烈を相手にしてるしな
UCを展開
そっちが一方的にルールを課すなら
盾になる間くらいオレのフィールドにしてやる
此処はサイバースペースだぜ
創りあげるのは
『芽目』『綾取』らを設置し
身近な妖怪研究で役立てた
不可視光線や感知不能な波動まで検出を試み
魔術の制御に挑むシミュレーションゲーム
『青鶴』を通じてハッキング
対超常への鉄壁の電子障壁を再現して粘るぜ
戻れるか分かんねえのに
竜神様が身体張るんだ
このくらいな
栗花落・澪
碎輝さんには沢山お世話になったし
僕…結構碎輝さんの事、気に入ってたりして
だから、信じるよ
たとえこの先何が起きたとしても
自身にオーラ防御を纏いながら空中戦
更に紅色鎌鼬を発動し
極少量の魔力で大量に鎌を増殖、盾として自在に操る
光なら刃で反射出来るし
消滅しても作り直せば良いから痛手にならない
消費少ない分持続力あるし
僕の魔力が尽きるまで……ううん
その時は代わりに僕の生命力を燃やしてでも
碎輝さんが動けるまで保たせてみせる
根比べだよ、神王さん
もし碎輝さんの強化が間に合ったのなら
高速詠唱で水魔法の属性攻撃を鎌に宿し
薙ぎ払いによる斬撃と合わせて神王さんを濡らしにかかる
彼の雷を、より通りやすくするために
「砕輝さん、無事っ?!」
『っ、おう!』
転がりながら栗花落・澪(泡沫の花・f03165)と中靍・丹煮(ニニ・f41793)の元へ辿り着いた砕輝は、徐々に纏う紫電が増していたもののまだ足りないという顔をしている。
「(……なら、僕がするのは)」
得物である鎌を澪が握りしめれば、眉間に皺寄せたサンサーラがピクリと眉を動かした。
『……猟兵とは、かくも無駄な努力を好むものなのですか』
「ーー違う。猟兵って、そういうもんじゃないんだよ」
サンサーラを見上げた丹煮が朝焼けのような瞳を細めて笑っていた。
果てしなく眩いサンサーラは、一見して“神”だ。だが、どうしてか。
「眩しい神サン、きっとアンタは光過ぎたのさ」
その一言が、戦いの火蓋を切り落とす。
『ならば、潰えよ。諸共平伏し、光に溶けるが良い』
『すまねぇ、あと少し……っ!』
手を翳し念仏を唱えながら視線で転生光を編み始めたサンサーラに澪も丹煮も内心で舌を巻くも、それは引く理由にはなり得ない。
「もちろん! それに僕、砕輝さんに沢山助けてもらったし、気に入ってるし……必ず、守るから」
砕輝目掛けて迸った一条の光を、咄嗟に澪が鎌で受け流す。
重い一撃に腕が軋み、たった一発流すだけで未だ痺れる手に、澪は流しかけた冷や汗を見ないフリ。
「ーーねぇ神王さん、僕と根比べしよっか」
『…‥良かろう』
囂々と澪を追う輝きは空へ。
挑み掛かる澪を撃ち落とさんとするサンサーラの指先が、しっかりと澪を示すから。
「っ、僕だって鎌使いなんだよ……!」
UC ー|紅色鎌鼬《ベニイロカマイタチ》ー!
『ほう』
「……っ、」
重い。
その光が。
サンサーラの背負う後光が、強かに重い。
幾度も幾度も受け流し、好きを狙い澪が放った水魔法纏わせた剣圧がいとも簡単にサンサーラに受け止められようと、全てに意味がある。
「(…‥時間を稼ぎながらでも、僕も意味のあることを……!)」
一方、澪に応えながらも念仏編む口元ゆるめぬサンサーラによって丹煮と砕輝は五感を奪われていた。
何に触れても何もわからなくなる違和感に砕輝が眉間に皺を寄せるも、丹煮はどこか平然としたまま砕輝へ淡く微笑みかける。
「オイラ、ここは、好きな連中の生まれた世界なんだ」
『そうか……だから、俺を?』
丹煮にとって良い思い出ばかりの世界ではなくとも、生みの親が住まう世界が失われて良いわけがない。
眩しすぎる神は、光るべき|骸の海《場所》という|世界《フィールド》帰さねばならない。
「……最弱で最強って、面白いじゃねえか。オレも戦闘特化した型じゃねえけどーーやれる事はさせて貰うな」
そう言って飛び立った丹煮の姿を仰いだ砕輝の紫電がまた、増して行く。
徐々に空気を焼き、息さえも稲妻を抱いて。
「いやぁ眩しくて綺麗な神サンだ……けどオイラ、五感に頼ってねえんだ」
『何……?』
間断なき澪の攻撃を往なしながら、空中へ舞い上がった丹煮の言葉にサンサーラのがまた眉間に皺を寄せれば、フッと口元緩めた丹煮がうたう。
「ーーなにせ、今は妖怪なんて奇天烈を相手にしてるしな! オイラのフィールドへようこそ!」
UC ー|Hackenhack Bild《コンニチワセカイ》ー!
『……!』
世界が変わる。
暗転ではなく、これは丹煮の想像。丹煮の記憶。丹煮のルールで輝く世界!
ぎろりとサンサーラに睨まれようと丹煮は気にしない。何せ、この世界の“王”は己なのだから。
「先にルールを課したのは神サンだが、盾になる間くらいオイラのフィールドにしてやる!」
サイバースペースと化した丹煮の庭で解析カメラの“芽目”がサンサーラを分析し、蓄積データから開発された“綾取”が即座にサンサーラの織り上げる|念仏《詠唱》を記録し解析し始めていた。
「(時間は掛かる……でも、この研究は役に立つはず!)」
完璧に該当するデータが無いのなら、継ぎ接ぎしてでも似通ったデータを探し出すし、丹煮の分析し続けた妖怪データがサンサーラを追い続ける!
『酩酊せよ。例え、汝が耐えようと……ソレはどうだ』
「……っ、砕輝!」
『俺は! 平気だ!』
丹煮が振り返ろうとした直後、砕輝が立ち上がると同時にそれは発見される。
決して当該データでは無い。だが、音感の似たその言葉ーーただ、それだけ。そして澪目掛け放たれ続ける光も、どこか似ているのでは無いか? と極僅かな可能性秘めたデータが丹煮の研究から発見された。
「っ、」
「栗花落サン!」
澪がとうとう撃ち落とされ、咄嗟に身を挺し澪が地に叩きつけられるのを丹煮が防いだ時、それは迸った。
『猟兵、ありがとな。ーー始めようぜ神王 サンサーラ!』
紫電が奔り、黄金の光と果てなき暗闇とぶつかり合った。
大成功
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