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帝都櫻大戰⑭〜水面の月に祈り映して

#サクラミラージュ #カクリヨファンタズム #帝都櫻大戰 #第二戦線 #山本五郎左衛門

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 なんでも、妖怪たちの世界には、お月様が遊びにやってくる場所があるのだそうな。
 すすき野に囲まれた、知っている者しか通れない獣道の向こう側。
 拓けたその場所にあるのは、小さな池が一つと。大きな桜が一本。
 蛍火の舞う頃、その場所を訪れると。
 大きなお月様が、池の水面に姿を現すのだと言う。

 もしもキミ達がその場所で、お団子を食べて。お酒やジュースを飲み交わして。
 楽しい時を過ごしたのなら。
 はらりと舞う桜の花弁が、水面に落ちて。ゆらり、ゆらゆら。
 水面のお月様も、楽しそうに笑うから。
 上機嫌なお月様に、聞いてみると言い。
 例えば、遠くに霞んでしまった過去の想い出や、訪れるかもしれない未来のお話。
 お月様は物知りだから、答えてくれるかもしれないよ。

「今となっては、この古めかしい儀式を覚えてるやつなんて、儂以外に誰もおらんじゃろうからにゃ〜」

 それは、カクリヨファンタズムの妖怪たちの、ほとんどが知らない。
 けれど、知っている者は知っている噂。
 その本質は、『諸悪の根源』の滅殺を可能にする儀式であると言う――。


「まぁ……占いとか、まじないのようなものなんだが」
 良かったら協力してくれると助かる、と。
 羅刹のグリモア猟兵――蛍火・りょう(ゆらぎきえゆく・f18049)は話を続ける。

 場所はカクリヨファンタズム。
 『諸悪の根源の滅殺を可能にする儀式』を妨害するため、送り込まれたエンシェント・レヰス『イザナミ』によって絶賛ピンチのこの世界だが。
「一先ずそちらへの対処は、新し親分『バズリトレンディ』方でしてくれている。なので、ここに集まってくれたキミたちには、東方親分『山本五郎左衛門』と共に儀式の完遂をお願いしたいと言う訳だ」

 儀式と言っても、難しい事をする必要は無い。
 すすき野に囲まれた、とある場所。
 傍に幻朧桜が咲く、小さな池のほとりで。まずは、儀式の時間が訪れるのを少し待つ。
 お団子やお酒。ジュースなどを楽しみながら、のんびり待つと良いだろう。
「みたらし、餡子、ずんだと胡麻に……団子も飲み物も、色々用意しておいたからな」
 この後、他の戦場に向かう者もいるだろうし。
 しっかり美味しく腹ごしらえをしていくと良いと、りょうは言う。

 空の月が、中天にかかる頃になったら。
 その池の水面にも、真ん丸の大きな月が姿を見せるから。
 手を合わせて、『見たい』と思うものを見せて欲しいと。水面の月にお願いする。
 儀式の手順は、ただそれだけ。
 酔っぱらった人が饒舌になるように。
 噂によれば、地上にやって来てご機嫌なお月様は、その人の見たいものを映しだしてくれるのだと言う。

「手順として大事なのは、水面の月に祈る事だそうだから。お願いする内容は何でもいいとの事だ」
 過去、現在、未来。
 前世の自分から、明日の献立。
 真剣に見たいものでも、何となく見て見たいものでも。何でも。

「最も、あくまで答えてくれるのはお月様だからな」
 好きなあの子の、セクシーな姿とか。
 そういうマナー違反なお願いには、お月様も怒って沈黙するかもしれないし。
 何かを見せてくれたとしても、それが100%絶対の真実であるとは限らない。
「だから占いとか、まじないみたいなものなんだ」
 当たるも八卦、当たらぬも八卦。
 見えたものをどう受け止め、どう活かすのはかその人次第。
「あまり深刻にならず、ちょっとした占い付きのお月見と思って。気軽に試して来るといい」
 それが儀式の力となるから、よろしく頼むと笑って。
 りょうは、猟兵達を送り出すのだった。


音切
 音切と申します。
 水面のお月見をお届けにあがりました。
 本シナリオは、1章のみで完結する戦争シナリオとなります。

 東方親分『山本五郎左衛門』と共に、お月見、お花見をしたり。
 水面の月に祈り、儀式完遂を目指します。
 お団子も飲み物の色々ありますが、飲酒可能なのは成人のみです。

 お目に留まりましたら、よろしくお願いいたします。
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プレイングボーナス……山本と一緒に儀式の手順を成就させる。
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第1章 日常 『中秋の名月』

POW   :    月見団子を添えて月見を楽しむ

SPD   :    ススキを飾り月見を楽しむ

WIZ   :    妖怪達と月見を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

布原・理馮
儀式を完遂させるには
数多の手順が必要と聴いている
俺も手伝わせてもらうぞ

此処の手順は…ほう、風流だな。嫌いじゃない
みたらし団子と熱いお茶をいただきつつ
儀式の時間を待とう
ガキの頃からの好物でな
昔は曾祖父さんに連れられて
今日の日と同じように月を眺めたものだ

さて、月への願いか…
過去は胸の内に秘めておきたい
未来は己の手で掴みたい
となると、現在の困りごとを問うてみるか

月よ、月よ
どうやら俺にはいつの間にか
七不思議が憑いているらしい(※装備欄参照)
恥ずかしいのか一向に姿を見せてくれないのだが
此奴はいったい、何者なんだ?

映し出された其の姿が如何なるものでも
真実でも、虚構でも受け入れよう
さあ、俺の百鬼夜行に加われ



 拓けた視界の向こう。
 黄色味を帯びた柔らかなすすきの白に、藍の宵闇。
 銀の月明かりの下で、舞う花弁は薄紅色。

「猟兵の各々方。よく来てくれたにゃ」
 さぁさ、こちらだと。
 山本五郎左衛門が猟兵達を手招く、その場所は。
 布原・理馮(行雲流水・f44508)にとって、初めて来た場所の筈なのに。
(「懐かしいものだ」)
 このカクリヨファンタズムの夜空に浮かぶ月は、丸く。大きく。
 曾祖父に連れられて、共に眺めたあの頃と変わらぬまま。

 あの頃は、随分と大きく見えていた。曾祖父の手の温もりを思い出しながら。
 少なくとも体の大きさ位は、曾祖父に近づけているだろうかと。
 みたらし団子へ伸ばした。
 それなりに成長したはずの己の手を見つめて、ふと思う。

 ならば実力の方は、どれ程追い付けているのか。何処まで行けるか。
 甘じょっぱいタレの絡みつく団子を、一つ頬張ばれば。
 理想への道のりは、見上げた月よりもなお遠そうで。思わず笑ってしまいそうになるけれど。
(「まずはこの儀式の完遂……だな」)
 今は、今出来る事を一つずつこなすのみ。

「俺も手伝わせてもらうぞ」
「よろしく頼むにゃ」
 水面に映る。大きな大きな月に、手を合わせる。
 山本五郎左衛門より聞いた儀式の所作は、東方妖怪たる理馮からすれば慣れ親しんだもので。風情を感じさせてくれる。
(「嫌いじゃない」)
 自ずと、穏やかに凪いでゆく。
 理馮の心を表すかのように、池の水面が凪いだ時。
 静止した水面が鏡のように映す、大きな月に問う。

「月よ、月よ」
 いつからと言われても、とんと覚えのない。
 いつの間にやら、この身に憑いていた七不思議。
「此奴はいったい、何者なんだ?」
 理馮の問いに、月が示す答えとは――。

(「月が……消えてゆく?」)
 水面にじわじわと、闇が広がって。月を覆い隠してゆく。
 すわ、空の月が隠れたのかと。慌てて空を見上げても。
 空の月は、何も変わらず。何事もないかのように、そこに輝いているから。
(「これが七不思議の姿? もしや……」)
 『映せないのか?』と。思い至った瞬間に、理馮は答えを得た。
 
 人々の間でよく語られる七不思議の中でも、誰も姿を知らない。名前も知らない怪異。
 だって、それを知った者は、みんな命を取られてしまうから。
 お月様ですら、その姿を映す事が出来ない怪異。
 今宵新たに、理馮の百鬼夜行へと加わる。
 其は――。
(「そのような七不思議なら、こう呼ぶしかあるまいな」)
 『誰も見てはならぬ』と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
お猪口いっぱいの日本酒を舐めるように飲みながら待ちましょう。
お酒はあまり得意ではないけれど、でも今はほんのちょっとでもその力を借りたい気分。
私が見たいものは宝物。
過去世の私の宝物を見せて欲しいの。
記憶でも確かに嬉しいとか楽しいとか哀しいとかいろいろ思い出すものはあったけど、今の私が私のままで見たいなって思って。

映し出されたものは満月。その光の下で行われている宴会。
人々の姿はとても小さくて詳しくは姿形は確認できないけれど、宴席の輪の中に私と同じ銀髪が見える。
声は聞こえなくとも雰囲気からとても楽しんでるのはわかる。
やっぱり人と共にあって、だからこそ誰か人の為に生きる事を選んだのね。
それで十分だわ。



 はらりと舞う、薄紅の花びらが。
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の手にするお猪口に――なみなみと注がれた酒の上に落ちたなら。
 この花は……幻朧桜は、どんな世界でも変わらず美しく咲くのだと。
 無意識に肩に入っていた力が、少し抜けた気がする。

 本当は、あまりお酒が得意ではないのだけれど。
(「でも、今は……」)
 猪口に唇を付ければ、ひやりと冷たくて。
 けれど、馴染んだ桜の香りと共に、芳醇な香りが鼻をくすぐって。
 ほう、と。
 零した息には、熱が籠るから。
 熱に浮かされるままに、一歩、二歩。
 藍は、月を映す池へと近づいてゆく。

 見下ろした視界に。
 今という時に確かに存在している、自分の両手をしばし見つめて。
 ゆっくりと、合わせたのなら。

(「私が見たいものは……」)
 お月様に見せて欲しいと願うのは、大切な宝物。
 影朧から転生したと言う、今の自分のものではなくて。
(「過去世の私の宝物を、見せて欲しいの」)

 その人物は。過去世の自分は。
 一体、どんな人物だったのだろう。
 いろいろと、思い出す記憶もあったけれど。
 その記憶の中で、笑っていた私も、泣いていた私も。
 私だけれど、私じゃないから。

 降ろした瞼の闇に、大切な家族の姿を描いたのなら。
(「今の私が、私のままで」)
 過去世の私―貴女―の事を教えてと。お月様に祈る。

「……?」
 水面の月が僅かに揺らいで、色を変えてゆく。
 その変化に気付くのが遅れたのは、月が映しだした映像にも月が映っていたから。
 まるで今の猟兵達の姿を、鏡で映したかのように。真円の月の下に集う、人々の姿。
 映し出された映像の方が、色彩が賑やかな所を見ると宴席だろうか。

「っ」
 思わず、息を呑む。
 池に身を乗り出すようにして、凝らした宙色の瞳に。
 あまりに小さな出席者達の姿形は、不鮮明だけれど……一人だけ、ハッキリと分かる。

 この映像の中では、まるで小さな箒星のような銀の髪。
 今の藍と、同じ髪。
(「やっぱり」)
 ふと。心が軽くなるような心地と共に。安堵が吐息となって零れた。

 お月様が見せてくれる映像では、声は聞こえないし。
 表情だって不鮮明だけれど。
(「だからこそ、誰か人の為に――」)
 そこから伝わってくるのは、紛れもなく『楽しい』という気持ち。
 それはきっと、藍が藍として。今ここに立っていられる理由だから。

「それで十分だわ」
 背筋を伸ばして、胸を張り。視線を上げれば。
 過去の中に見たものとよく似た満月が、晴れやかな藍の表情を優しく照らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アーヴァ・ミミルブルナ
※アドリブ連携歓迎
まあまあ
これは水鏡と月影を用いた占術儀式じゃないかしら~
この手の術式は精度を上げようとすると規模がドンドン大きくなるから、最適な土地と時間を見出すのが大変なのよね~
|西方《あっち》に比べると|東方《こちら》は自然そのものを活かす事が多いし、神秘力もより通りやすいでしょう~
ううーん、いい儀式構築
眼福だわ~
あ、そうね、邪魔しない程度にお手伝いさせてもらっても?
さあおいで、護法たち~

方針:【指定UC】で儀式補助(給仕や余興)を行う

期待・高揚・集中
宴や踊りは儀式を継続する上で必要なもの

さあほら、月が昇ったわ
ここ一番の静寂に、祈りの結果は如何ほどかしら?

月よ、叶うなら笑顔の未来の道標を



「まぁまぁ……」
 グリモアに導かれ、降り立ったその地は。
 一面が、黄色味を帯びた柔らかな白色。
 巨人であるアーヴァ・ミミルブルナ(善き西の魔法使い ~儀式魔術師~・f29829)の、一際高い視点からみれば。すすきの草原は、波立つ白い海原のよう。
(「そう。ここは、隠された場所なのねぇ」)
 きっとこれは、儀式場を囲む天然の結界なのだろうと。
 アーヴァは穏やかに、目を細める。

「そしてこっちが、噂のお池ねぇ~」
 儀式完遂の為に集う、他の猟兵達とぶつからぬように。
 ゆっくりと膝を付いて、覗き込んだ池は。
 明るい月明かりの下で鏡のように、アーヴァの姿を映して。

(「やっぱりこれって……」)
 古くから伝わる魔術に……特に儀式魔法について精通している、アーヴァの目から見て。今回この場所で行われる『諸悪の根源の滅殺を可能にする儀式』は、恐らく占術儀式に分類されるべきもの。
 それならば、時間にもかなり気を遣う訳だと。
 この儀式を差配する山本五郎左衛門へと、視線をちらり。

(「この手の術式は、精度を上げようとすると規模がドンドン大きくなるから……」)
 儀式を正しく完遂する事は、勿論それ自体、簡単な事ではないけれど。
 ならば、その手順を完成させるのには。
 最適な場所と時間を導き出すまでには、一体どれだけの苦労があったのだろうか。
「ううーん、いい儀式構築」
 魔法陣を描くでもなく、呪物を用いる事もなく。
 これぞ東方の儀式様式と言える、自然そのものを活かした儀式場は。考案者の情熱が表れているようで。
(「眼福だわ~」)
 アーヴァの頬も、つい嬉しく緩んでしまう。

「ねぇ、親分さん」
 ならば、その完成した図式を使わせてもらう側として。
「邪魔しない程度にお手伝いさせてもらっても?」
「勿論だにゃ。こちらからもお願いするにゃ」
 先達に敬意を払い、恙なく。より良く。儀式の完遂を目指したい所。

「さあ、おいで」
 アーヴァの呼びかけに応えて。
 高まるユーベルコードに応えて、ぴょこりと飛び出すは。三頭身の護法童女たち。
 遊びにやって来たお月様が、楽しんでくれるように。
 儀式を補佐する護法童女たちの舞いは、本日は東方風に。
 ひらりひらりと、胡蝶のごとく。

「月よ」
 舞は終わり。風も止み。
 その静けさに、水面さえも沈黙する時。
 アーヴァは、水鏡に浮かぶ月に問う。
「叶うなら――」
 それは。
 護法童女たちの見事な舞に対する、拍手の代わりか。
 月からの返事は、沢山の笑顔で溢れていたと言う――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
この穏やかな儀式と「滅殺」という言葉はいまいち結びつかないけれど
ま、おどろおどろしい何かをやるより気持ちは楽だからな。この方が良いだろう

などと考えながら、まずはお茶と団子をつまんで時間が来るのを待つ事に
それでなんだっけ。水面の月に祈りを捧げて、見たいものを見せて欲しいと祈る……か
とはいえ、特別見せて欲しいものがある訳じゃないんだが
大切な事は覚えているから過去を見せてもらう必要はないし、未来は自分の手で切り開くもの

でもま、気楽な事で良いって話ではあったし……とりあえず「妖怪親分達の好きな団子はなにか教えてくれ」とかで良いか
この戦いが終わったら、お礼として差し入れでもしようかなと



 随分と、夜風も涼しくなってきたと。
 ぱくり。お団子を頬張りながら。
 夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は、風に揺れるすすきの囁きに耳を澄ます。
 今現在、世界の命運を賭けた戦争の真っただ中……の、筈なのだが。
 何ともまぁ、のんびりしたものだと。思わず少し笑ってしまう。
 勿論、サボっている訳ではなく。
 これも立派な、『諸悪の根源』の滅殺を可能にする儀式の一つ。

 月が静かに地を照らし、桜と蛍火が優雅に舞う。
 この景色の何処に、『滅』だの『殺』だの言う要素があるのかと。首を傾げる所だけれど。
 生贄を捧げよとか言われるよりは、ずっといいと。
 もちもち、お団子を噛み締めれば。その甘さが身に染みる。

「さて。それじゃ、始めるとするか」
 甘味の後に啜るお茶は、苦みが増して。
 口の中に残っていた甘みと一緒に、気分もスッキリとさせてくれるから。
 軽い足取りで池へと向かい、鏡介が祈るのは……。

(「見たいもの、か」)
 さて、何を祈ったものか。
(「特別見せて欲しいものがある訳じゃないんだが……」)
 『何でもいい』が一番困ると言うのは、よくある話。
 折角ならば、普段は見る事の出来ない、何か特別なものをリクエストした方がいいのだろうかと思いつつ。
(「でもなぁ」)
 過去を見せて貰うにしても、大事な記憶は大事だからこそ、しかと心に刻み込まれているもの。
 わざわざ見せてもらう必要はない。
 では、未来はどうかという考えも一瞬過るが……。
(「それは自分の手で切り開くものだろ」)
 仮にそれで、望む未来が見えたとしても。見えなかったとしても。
 自分の場合、欲しい未来があるのなら、その為に出来る事をするだけなのだから。
 やはり、わざわざ見せてもらう必要はないように思う。

 ……で。結局、何を祈ったものか。
 他の猟兵達は、どんな感じだろうかと見回す視界で。
 ぴょこぴょこと元気に揺れ動く、猫の尾が目に留まる。
(「妖怪親分達も忙しそうだ」)
 新たにやって来た猟兵を迎えたり、手順を説明したり。
 儀式完遂の為に動く山本五郎左衛門の姿に、それならばと。

「妖怪親分達の好きな団子はなにか教えてくれ」
 変に気負わず、素朴な願いを口にしてみる。

 しかし、『一番好きな』と限定しなかったからだろうか。
 月からの返答は、みたらしに、餡子に、ずんだに。
 定番の団子から、アイスやフルーツを乗せた変わり種まで。
 多彩なお団子に囲まれ、笑顔を浮かべている親分たちの賑やかな姿が映っていたと言う――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・シェフィールド
アドリブ歓迎!

カクリヨにはお月様も遊びに来るんですね。
過去、現在、未来。
お願いしたら、見たいものが見える。
わたしは、何をお願いしようかな…?

池のほとりでお団子を食べながら、その時が来るのを待ちます。

水面に願う、『見たい』もの。

本当なら未来、って言いたいけど。
明日は自分たちで切り拓くものだから。

わたしの前から居なくなって、どこかに行ってしまった大切な人。
…ううん、きっとどこかで元気にしてる。

だから、わたしが願うのは。
「今、いくつもの世界で、自分たちの世界を守るために立ち上がった人達の姿を…」
きっと、その姿を見たら、また戦う勇気が湧いてくるから。

もしそんな人が居なかったら?ううん。絶対いるから!



「カクリヨには、お月様も遊びに来るんですね」

 人前に立つお仕事は、信用が大事。
 遅刻は厳禁……と。早めに現場に入れたのは、いいけれど。
(「わたしは、何をお願いしようかな……?」)
 実はまだ、お月様に何をお願いするか決められていなくて。
 フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は、こくりと首を傾げる。

 お月様が到着するには、まだ時間がありそうだけれど。
 しっかり儀式を完遂できるように、到着までには決めないと……と。
「まぁ、これでも食べながら。のんびり待つのがよろしいにゃ」
 山本五郎左衛門から受け取ったお団子を、まずは一口。
 もちもちと、頬張って。糖分を補給したのなら。
 よし、と。
 小さく拳を握り、フィーナは自身の望みと向き合う。

(「水面に願う、『見たい』もの……」)
 咄嗟に思い浮かんだのは、『未来』の事だけれど。
 同時に、それを願ってしまうのは何だかズルいような。怖いような。
(「明日は、自分たちで切り拓くものだから」)
 上手く言葉に出来ないもやもやが、胸の中に湧いてくる。

(「それなら」)
 二つ目のお団子を、ぱくりと口に入れて。
 その甘味を味わうように、瞼を閉じたなら。
 降りて来た暗闇に浮かぶのは、懐かしい面影。
 手を伸ばしても、今は届かない。どこかに行ってしまった、大切な人。
 あの人は……。
(「……ううん」)
 きっと、どこかで元気にしていると。
 一瞬浮かびそうになった怖い想像を、首を横に振って振り払う。

 未来を見せてもらったら。
 あの人の現在を、見せてもらったら。
 望む景色が見えたのならば、安心は得られるかもしれないけれど。
 それだけでは、前へは進めないから。

 欲しい未来は、切り拓くものなら。
 会いたい人には、いつか会いに行けばいい。
(「なら、わたしが願うのは――」)
 最後のお団子を、よーく噛み締めて。
 未来を見たいなんて、甘えた気持ちと一緒に。ごくりと飲み込んだなら。
 ようやく遊びにやって来たお月様に、フィーナが願うのは――。

「今、いくつもの世界で、自分たちの世界を守るために立ち上がった人達の姿を」
 何も映らないかもしれない……なんて。
 そんな不安は、欠片も無い。
 だって、懸命な人の声は確かに届くものだと。フィーナは信じているから。
 猟兵達の声は、きっと人々に届いている。
 そして……。

(「私も、まだまだ頑張るね」)
 お月様でも映しきれない程の、多くの人々の姿が。
 フィーナの胸にもまた、勇気の炎を灯してくれるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
見たいものを映す…か……

なんだか落ち着く、綺麗な場所
紅茶とお団子でちまちま時間潰し
今日のところはみたらしと胡麻を

未来を見るのは、ちょっと怖い
戦いで、或いは持病の心臓が悪化して
その未来に僕は居ないかもしれない
それが怖いから

ならば、過去を
手を合わせて

……あのね、お月様
昔、僕の夢に必ず出て来てくれる人がいたの
必ず迎えに行くって言ってくれる男の人の夢
声も顔も、起きた時には忘れてたし
救われたその日から見れなくなっちゃったけど
でもなんだか…雰囲気とか、差し出される手の感じとか
今の彼に似てる気がして

あれは…僕の前世なのかな
彼も、隣にいてくれたのかな

真実かはわからなくても
自分なりの希望になる気がするから



 随分と涼しくなった、静かな夜。
 緑の蛍火。桜の薄紅。
 夜風に揺れるすすき達は、黄色味がかった柔い白。

(「綺麗な場所」)
 季節は何ともチグハグなのに、不思議と違和感は無くて。
 そこに、紅茶の香りが加われば。
(「なんだか落ち着く」)
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の心に兆す不安感も、柔く解けてゆく。

「見たいものを映す、か……」
 お月様へお願いする事は、もう決めている。
 誰もが、一度は知りたいと考えるだろう未来の景色を、澪は選ばない。
 ぱくりと口に運んだ。みたらしのお団子は甘いけれど、しょっぱくて。
 もしもお月様に、未来を見せてとお願いしたら。
 見えるのは甘い未来と、しょっぱい未来。果たしてどちらになるだろうか。
(「未来を見るのは、ちょっと怖い」)
 所詮は、占いのようなもの。
 悪い結果なら、信じなければいい……なんて。
 そんな風に強気にはなれないと。澪の手はぎゅっと、胸元を握る。

 戦いはいつだって命がけだし。
 最近一つ年を重ねて、なんとか成人を迎える事はできたけれど。
 この体も、人並みに丈夫とは言い難い。
 もしも、自分の居ない未来が見えてしまったら?
 それを、どう受け止めたらいいのか。答えを出せそうにないから。

「……あのね、お月様」
 澪がお月様に願うのは、過去の事。
 世界がこんなに広いなんて、知らなかった頃の夢。
『必ず迎えに行く』
 毎夜、必ず現れてはそう言ってくれた。男の人の夢。
 目が覚めると、あっという間に記憶は遠のいて。
 顔も声も、分からなくて……それでも。
 独りぼっちじゃないと。そう感じさせてくれた、優しい夢の話。

(「あれは……僕の前世なのかな」)
 水面の月が震えるように揺らめき、像が結ばれてゆく。
 救われた日から、ぱたりと見なくなってしまった夢だけれど。
 あの時に。
 差し出された手を見た時に、似ている……と。そう思ったのだ。

(「ぁ、やっぱり」)
 お月様の見せる映像が、少しぼやけているのは。
 水面が揺れているせいか、それとも。
 記憶の持ち主が、この時に泣いていたのか……分からないけれど。
 不鮮明ながらも、その面差しが。差し出される手が。
 今の彼と良く似ていて。
 澪の脳に、あの時の記憶が鮮明に浮かんで。映像と重なり合う。

(「彼も、隣にいてくれたのかな」)
 真実は、分からないけれど。
 そんな可能性がある……と言うだけで、不思議と心は温かくて。
 夜風が優しく、澪の頬を撫でたなら。
 無意識に少し強張っていた表情も、柔く解けてゆく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

壽春・杜環子
【空環】

ふふ、まぁ素敵
そらくんは—…あら、わたくしとお揃いね
ふふ、わたくしこの粒餡の絶妙な塩味…結構好きやも
お団子をもちもちしつつクスクス笑ってそらくんと月を待つ

案外と時間が経つことの早いこと…貴方とだからかしら?
ふむ願い…
何かしら、ついそらくんの笑顔—…ん?
ん、
ん??
まっ、(待って)
なん、(なんで)
そっ、(そんな)
そらくんっ!
そんな…、
真っ赤な顔を袖で隠し恥ずかしい反面
内心嬉しいような複雑な心で双良に凭れ隠れるように小さく
えぇ…うん、寧ろ…そらくんは、わたくしにどういうのが似合うと思います…?
だって…自分に似合う物って、案外分からないでしょう?
教えて?とそろりと見上げ、キスにぎゅっと目を瞑る


蓮見・双良
【空環】

折角のお月見ですし、お団子食べ比べ…なんてどうでしょう?
これだけの種類のを食べる機会も
そうそうありませんし
一通り全種類取り分け二人でシェア

杜環子さんはどの味が好きですか?
僕は…やっぱり餡子かな
甘さの加減や深みとか…
作り手の味の工夫が見えやすいので

…あ。月、出てきましたね
手を合わせ願うのは
『未来の杜環子さんの花嫁姿。和装と洋装を数種類ずつ』
え?ああ、ずっと悩んでたんです
どちらも凄く似合うだろうから、決めきれなくて…(本気

あ、勿論杜環子さんの意見を一番に取り入れますよ
どれが良いと思いますか?
凭れる彼女の肩を抱き
愛おしさに額に口付け
清楚なのも良いですし華やかなのも絶対似合うし(以下長々と続く



 空には、まんまるお月様。
 そして、地上に視線を降ろせば――。
「折角のお月見ですし」
 餡子に、みたらし。蓬に胡麻に。
 色とりどりの、まんまるなお団子たちが揃い踏み。
 ならば。
「お団子食べ比べ……なんてどうでしょう?」
 一人でよりも、二人でならば。
 色んな美味しいを分け合えるからと。
「まぁ、素敵」
 蓮見・双良(夏暁・f35515)の手で、取り分けられてゆく。
 お団子たち賑やかな彩を、藍の瞳に映して。壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)は『ふふ』と、穏やかに微笑む。

「杜環子さんはどの味が好きですか?」
「そうね……」
 定番の味はほっとするし。
 見た目も華やかなフルーツ餡も、新鮮味があって捨てがたい。
 これだけの種類があると、少し迷ってしまうけれど。
「この絶妙な塩味……結構好きやも」
 杜環子が指し示すのは、粒餡のお団子。
「そらくんは?」
「僕は……」
 そう尋ねられて。
 双良の吐息には、笑みが混じる。
 だって、これだけの種類があるお団子の中で。
「やっぱり餡子かな」
「あら」
 わたくしとお揃いね、なんて言われたら。
 好きが重なるのは、嬉しくて。
「甘さの加減や深みとか……作り手の味の工夫が見えやすいので」
 価値観や感性の近さは。
 相手の心も、近くに感じられる気がするから。
 どちらからともなく零れる笑い声は、夜風に乗って優しく響く。

 けれど、そんな楽しい時間が過ぎるのは、いつだってあっという間。
「……あ。月」
 出てきましたね、と。双良に示されて。
 池に満ちる、月の姿に気付いたら。
(「……貴方とだからかしら?」)
 あらあら、どうしましょうかと。杜環子は思案顔。
 だって月へのお願いは、ゆっくり決めれば大丈夫だと思っていたから。

「行きましょう。杜環子さん」
 対して。杜環子の手を引く双良の表情には、迷いがないようだから。
(「もうお願いを決めているのかしら……?」)
 ちらり。様子を窺うように、見上げたら。
「では……」
 やはり、既に願う事は決まっているらしい双良は、何の迷いもなく。
 躊躇いも無く。
 何やらとてもいい笑顔を浮かべて、月に願う。

「未来の杜環子さんの花嫁姿。和装と洋装を数種類ずつ」

(「…………ん?」)
 双良の口から飛び出した『お願い』に。
 杜環子さん。ちょっと状況が理解できずに、首を傾げてお目々をぱちぱち。
「??」
 別に、双良の言葉が聞き取れなかったとか、そういう事ではないし。
 なんならアナウンサーかと思う程に、明瞭な声であったのだけど。
「まっ……!」
 しかし聞こえたその内容が、あまりに想像外過ぎて。
 思考はぐるぐる空回り。
「なんっ……!!」
 情報が何も入って来なくて、頭は真っ白。
 なのに感情は勝手に暴走して、心臓をガンガン叩いてくるから。
 急速に。頬や頭に、熱が回って。
「そっ、――――っ!!!」
 抗議すればいいのか、どうすればいいのか。
 言葉もさっぱり出て来ない。(ちなみに上から、『まって』『なんで』『そんな』であったもよう)

「―――っ、そらくんっ!」
 ようやく絞り出した、杜環子の精一杯の呼びかけに。
「え? ああ」
 ずっと悩んでたんです、と。
 笑顔でさらりと返されてしまっては、どうにも感情のやり場がない。
「悩む……と言うのは、お月さまへのお願いを?」
 他に選択肢があったなら、なんでこんな……と。
 熱い頬を隠すように、双良へと凭れる。

「いえ。そちらではなくて」
 そんな杜環子の様子に。
 つい、手を伸ばしてしまいそうになるのを抑えながら、双良は首を横に振る。
 いつかの、未来に。
 共に迎えたいと思うその日に。
 和装も洋装も、杜環子ならばどちらも凄く似合うだろうから。
「どちらがいいか、決めきれなくて……」
 だから、グリモア猟兵から此度の話を聞いた瞬間に、これを願おうと。
 即決だったのだと、至って真剣な。大真面目な顔で双良は言う。

 纏う者の立ち振る舞いも大事な和装ならば、杜環子の内面の美しさまで引き立ててくれるだろうし。
 しかし、洋装は洋装で。普段とは違う杜環子の新鮮な美しさを引き出す無限の可能性を秘めている。
(「ほら、やっぱり」)
 水面の月が映してくれる杜環子の姿は、頭の中で何度もシミュレートしていた通り……いや、それ以上に美しく。
 最早、甲乙をつけようと思うこと自体が烏滸がましいとすら思う。
 どうせならばもっと欲張って『数十種類ずつ』と言うべきだったかと。そう思うくらいだ。

「あ、勿論杜環子さんの意見を一番に取り入れますよ」
 そんな風に。
 星屑を散りばめたような、キラキラした目で言われたら。
「えぇ……うん、寧ろ……そらくんは、わたくしにどういうのが似合うと思います……?」
 だって、自分に似合うものと言うのは、案外分からないものなのだと。
 杜環子の口からは、何だか言い訳っぽい言葉が、もごもご。
「教えて?」
 視線を返すので、精一杯……そんな姿を見せられたら。
 これ以上は抑えきれない、溢れる愛しさでどうにかなってしまいそうだから。

 月明かりの下。
 細い肩を抱き寄せて。その額に、口づけを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・明莉
東方親分とは一度顔を合わせたし、儀式の手伝いもしておきたい
思いつつ来た先は薄と桜が共存する不思議な景色で
や、これはこれで風情があるな
現実には有り得なさそうなこのひと時、のんびり楽しませてもらおうか

親分の姿を見れば、日本酒入った盃片手に挨拶を
親分も呑めるなら一献どうだ?
桜酒に誘ってみようか
酒のつまみは醤油の串団子と、ゆるり流れる静かな時間はらはら舞い散る桜の花弁が池の水面にも幾重にも重なって
戦いの合間の休息を楽しもう

水面に月の姿を見れば手を合わせ
そうだな…
月面で餅つきしてる兎達の姿?
昔からある迷信だとはわかってるけど、いざ猟兵なんてのになり色んな世界を見たら、月に兎位いるんじゃないかなーって



 ぽん、と。放り出されたその場所は。
 はらはらと、薄紅色の桜が舞って。
 薄黄色の柔いすすきが、さわさわと囁く。妖怪達の住む世界。
「や、これはこれで風情があるな」
 季節感はあべこべなのに、不思議と違和感はなくて。
 木元・明莉(蒼蓮華・f43993)にとっては初めて来た場所なのに、何処か懐かしい。
 そんな、感傷にも少し似た感情に。
(「のんびり楽しませてもらおうか」)
 思わず、明莉の表情も緩む。

 勿論、明莉がこの場所へやってきた主目的は、此処で行われる儀式を手伝うため。
 見回す視界に、見知った姿を見つけたら。
「おや? そっちの兄さんはこの間ぶりだにゃあ」
 明莉の存在に気付いた山本五郎左衛門が、「此度も世話になるにゃ」と。
 団子を手に歩み寄ってくる。
「健勝なようで、何よりだ。親分も呑めるなら一献どうだ?」
 初めて顔を合わせた時は、ゆっくり話が出来る状況でもなかったけれど。
「兄さん、話せる奴だにゃ」
 これも、儀式の一環と。
 芳醇な香りを放つ杯を、まずは桜に掲げてから。ぐいと、一杯。
 夏の名残を感じる。少しぬるい夜風の中で呷る酒は、ひやりと冷たく。
 後から鼻をくすぐる香りが、何とも心地よい。

「お月さんがやってくるまで、楽しんでいくといいにゃ」
 儀式の進行もあるからと。
 少し名残惜しそうに席を立つ、親分の置き土産……醤油の串団子は。
 程好い塩っ気が、酒のあてとしても中々のもの。
(「こりゃ、いい休息だ」)
 長丁場の戦いは、張り詰めっぱなしでは身が持たない。
 たまにはこうして、思いっきり背伸びをして。夜風にあたって。
 時の流れさえ、ゆったりと流れてゆく中。
 はらりと舞う。桜たちの作る花筏が、水面の月へと漕ぎ出したなら。

(「見たいもの、なぁ。そうだな……」)
 両手を合わせ、明莉が月に願うのは。
 見えているのに、見たことがない景色。
 明莉の生まれ育った場所では、月の模様をこう例えるのだ。
 『兎が餅つきをしている』と。
(「迷信だとはわかってるけど」)
 これだけ沢山の世界があるのなら。
 ほら、水面のお月様に何かが映って……。
「え、宇宙服?」
 宇宙服を着ている兎や、時計を持った兎。
 それに、バニーガールのような兎獣人など、色々な兎がぺったんぺったん。
 お餅をつく様子が、代わる代わる映し出されて。
「マジか」
 どうやら世界は、明莉が想像する以上に果てしなく広いようだと。思わず笑みが零れたのなら。
 賑やかな景色を眺めて呷るお酒は、美味しく体に染みるのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

笹乃葉・きなこ
●アドリブとかお任せ

見たいものを見せてくれる儀式かぁ
そうだなぁ…そんじゃぁ育ての戦巫女が何処にいるかみてみるか

それじゃぁ、手を合わせて、お祈りして…

ふーん、見たことない世界だけど今はそこにいるんだべか
いつか、直接会いに行くからまってろよな

…なんだろうなぁ
久しぶりに姿をみたから安心しちゃったんだへ
元気なら今はそれでいいかなぁ…

再会したらたくさん文句言って、たくさん今までのことを話すんだべ

とりあえずコイツがいる世界が、どの世界か調べるところからはじめねーとな。それまで無事でいてくれたらいいんだけどなー。



「これが、儀式ん場所かぁ」
 グリモアの導きによって、ぽんっと放り出されたその場所は。
 周囲をぐるりと、すすきに囲まれて。
「どこまでも真っ白だべ」
 果ての見えない、一面の白色に。笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)は思わず、感嘆を零す。

「そんでこっちが、お月さんが遊びにくるっちゅう池だな」
 どれどれ、と。池の水面をのぞいてみれば。
 其処にはきなこの姿が――その肌に浮かぶ紋様まで、綺麗に映し出されていたから。
「ほんとに鏡みてぇだべ」
 高く昇ったお月様が、その水面へとやってきたら。
 両手を合わせて、儀式の始まり。

(「見たいものを見せてくれる儀式かぁ」)
 何を、どんな風に祈ったものか。少しだけ悩む、きなこだけれど。
 確かグリモア猟兵は、占いのようなものだと言っていた気がするから。
「そんじゃぁ……」

 ぎゅっと目を閉じて。
 降りて来た暗闇に思い浮かべるのは、懐かしい人の姿。
『育ての戦巫女が何処にいるか』
 見せてくんろと、繰り返し。繰り返し。
 心の中で唱えれば。
 瞼の向こうが、少し明るくなった気がして…………ちらり。

「……!」
 ゆっくりと目を開けて、拓けた視界に。
 水面の月に映っていたのは、きなこにとって全く見覚えのない景色。見知らぬ世界。
 けれど、その真ん中に。堪らなく懐かしい、後姿が見えて。
「……なんだろうなぁ」
 体から力が抜けてしまって。
 きなこはぺたりと、池の縁に座り込む。

 映像だけでは、具体的に何処に居るのかは分からないけれど。
 久しぶりに、姿を見られたら。
 数多の世界の何処かに、確かに存在してくれていると分かったら。
 それだけで嬉しくて。ほっとして。
「元気なら、今はそれでいいかなぁ」
 無事で居てくれるなら、会いに行けるという事だから。
「いつか、直接会いに行くからまってろよな」
 そう思うと。力の抜けていた体に、みるみる気力が戻って来る。

 再会したら、何を話そう。
 何処に居たとか、何で置いて行ったとか。
 言いたい文句も沢山あるし、離れている間に出来た沢山の体験や思い出も……一つ一つ挙げていたらキリがないくらい沢山話したい事がある。
「とりあえずコイツがいる世界が、どの世界か調べるところからはじめねーとな」
 果たしてその日は、いつやって来るのやら。
 それまで無事でいてくれたらいいんだけど……と。軽口を叩きながらも。
 その日が来ることを、確信しているかのように。
 立ち上がるきなこの表情は、とても晴れやかなものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月18日


挿絵イラスト