スプラッシュ・フルーツサマー!
キラキラと弾ける水飛沫に、楽しそうな人々の声。
暑い夏を目一杯満喫する人で賑やかな、キマイラフューチャーでも話題の熱い場所。
そんな『スプラッシュレジャーパーク』へと今年もやって来たのは、ラピーヌ・シュドウエスト(叛逆未遂続きの闇執事ウサギ・f31917)。
色々と過去があり保護観察処分となった後、現在執事として働いている彼女であるが。
口実を見つけてはサボろうとしているのは相変わらずなものの、今年も模範囚さながらの勤務ぶりが評価されて勝ち得た、長期休暇の|仮釈放《ボーナス》。
というわけで、そんな夏休みを利用して。
昨年の夏と同じように、笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)と共に、この場所に遊びにきたわけであるが。
「ラピーヌ、ならぼ!」
早速、きなこがうきうきと列に並ぶのはそう――スプラッシュ・スゴイタカイウォータースライダー!
このパークでも大人気の、すごい高いスライダーです!!
いや、昨年もふたりはこのスライダーを滑ったわけで。
これでもかと絶叫しまくり、逆にその後は魂の抜けたような屍状態になったことを思い出して、ラピーヌは一瞬怯んだものの。
うきうきなきなこにすちゃっとすかさず並ばれてしまっては、一緒に列に並ぶしか選択がなく。
「昨年も愉しかったから、滑るの楽しみだべなぁ! ラピーヌ」
「ま、まぁ初めてではないし、ボクにとっては物足りないくらいだ」
そう澄ました顔をしてみせつつも、並んでいる間、いつもの如く饒舌に喋るラピーヌ。
「今年も水着を新調してみたんだけど、見てくれ、このスタイリッシュかつ上品な水着を。頭から足元まで、完璧なコーディネートだろう? これほどまでにこの水着を着こなせるのは、まぁ有能な執事なボクくらいだろうけどね?」
確かに、美意識が高いだけあり、今年仕立てた彼女の水着も、とてもお洒落で完成度は高く。胸元に咲く花と腰の装飾が涼やかで、懐中時計がまた良いアクセントになっているし、有能な執事である彼女らしいデザインで。それをばっちりと着こなせているのは、体型維持に余念がないスレンダーなスタイル故にであろう。
それからラピーヌは、同じく今年新調したばかりのきなこの水着にも目を向ければ。
「君の今年の水着も良いね。昨年は白だったけど、今年は黒基調だね。君の肉体美が協調されたデザインは目を惹くし、やはり和や中華を思わせる要素は似合っていて、キューブの髪飾りやリボンも洒落ているよ」
美点や長所などのお洒落ポイントをあれこれ見つけては絶賛する。
そしてもう慣れっこになっているきなこは何とも思わず彼女の言葉を聞きながら、スライダーにわくわく。
「ラピーヌ、列が進んだべ!」
意外とさくさくと列は進んで、いよいよふたりの番……になったものの。
ベラベラとお喋りに夢中で今までは意識していなかったが。
「……え、こんな高かった……?」
ラピーヌは改めて、すごい高いスライダーの天辺でそう驚愕しつつ。
「いやぁ、ボクとしたことがうっかりだよ。じゅ、準備体操をしていなかったから、一旦下に……」
また性懲りもなく逃亡しようとするも。
「2回目だから大丈夫だろぉ?」
「ま、まぁ当然、ボクにとってはなんともないんだけどね? でもほら、君の足が攣ったりしたら大変……ぎゃあっ!!?」
――いいから早くいけやぁ!!!
またまた、げしいっ!! とラピーヌに蹴りを入れて滑らせるきなこ。
そして、うわぁああ!!! という絶叫を聞きながら、うきうきと自分も滑り出して。
「わああああっ!! ぎゃあぁぁ!?」
「あ、やっぱり絶叫するんだ」
今年も叫びまくるラピーヌの様子と、そしてスライダーのスピード感を、キャッキャッと女児のように楽しむのであった。
そしてスゴイタカイスライダーを楽しんだ後、お昼のピークもすぎた頃であったから。
きっと、人の混雑も解消しているだろうと。
パークのフードコーナーへと足を運ぶふたりであるが。
「スライダー楽しかったなぁ、ラピーヌ!」
「ハハ……そ、そうだね……」
うきうきのきなこと、よろよろのラピーヌ。
とはいえ、去年はそれはそれはBUZAMAな叫びっぷりで、終わった時は声を発することさえできなかったラピーヌも。
今年は、よろよろはしつつも行動は普通にできているし、幾分かは馴れたようで、絶叫しつつも少しはスライダーを楽しんでいた……かもしれない。
というわけで、昼下がりのランチタイムをゆっくりと……と思っていたのだが。
「あれ? 何してるんだろう? イベント?」
「さながら、お昼の掻き入れ時な盛況っぷりだね?」
思ったよりも混んでいる様子に、首を傾けるふたり。
けれど、それもそのはず――『ひやしゅわフルーツポンチ』というイベントが行なわれているのだから。
これは文字通り、好みのトッピングをしてオリジナルフルーツポンチを作ろう! という内容だが。
何せ、ここはキマフュ……如何にSNS映えするか、ということは勿論。
コンコンせずに自分だけのフルーツポンチを作るという趣旨がウケているらしく。
何がバズるか本当にわからない物である……なんて思って見ていたラピーヌだが。
「あ! そう言えばラピーヌは執事やってんだろォ? 任せた!」
そうきなこに無茶振りされれば、執事魂に火もつくというもの。
器は、豪華で映えるミニメロン。そして選ぶ果物の色味は敢えて上品に派手にならないようにして、その分形を星やハート型にして映えを意識。
自分の美的感覚でシャレオツな大人のフルーツポンチをトッピングしてから。
最後にサイダーを加える際は、執事のスキルを活かして、魅せる注ぎ方を。
そして、周囲も大注目の、高い完成度のものが出来上がれば……ここでちょっとした、意趣返し。
「いかがでしょう、お嬢様?」
きなこへとそう優雅な振舞いで、給仕しちゃったり。
そんなお嬢様扱いに、乙女チックになるにはそっちの人生経験が足りないみたいではあるものの。
「本当に執事の仕事してるんだなぁーっ」
無茶振りさせるも給仕をするラピーヌの姿に、感心するきなこ。
そして自分もフルーツポンチ作りに挑戦。
ベースはレモンスカッシュにして、そこにおしゃれと料理の技能を駆使し作成!
ちなみに、おしゃれ1と料理36です。
そしてフードファイターらしく、果物も飾り切りにしてみて。
「……どう?」
そうラピーヌをチラ見して、感想をもとめれば。
「素晴らしい出来です、お嬢様。今、スプーンをお持ちいたしますね」
完璧な有能執事です!
それからふたりで、ひやっとしゅわしゅわ――美味しく楽しく、夏を満喫です!
――そして。
「あ! ラピーヌ、食べたらあれにいこう!」
執事として給仕中であったため、その時のラピーヌはよく見ていなかった。
きなこの指す「あれ」が、最恐と謳われる新アトラクション『モノスゴイタカイ・バクソクカイテン・ウォーターコースター』であることを。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴