帝都櫻大戰⑯〜どこまでも、どこまでも
●黄金の神王と黄金の竜神
サイバーザナドゥ。
元より降り続く「骸の海」に汚染された世界で、人々は汚染のない|電脳空間《サイバースペース》へ安寧を求めていた。
その電脳空間の娯楽エリアに出現した遅効性のプログラム『ヤマラージャ・アイビー』は接続した者の思考を破壊する危険なものであり、かねてより猟兵が対応に当たっていた。
その一点より突如、桜の花弁が散る。
一枚、二枚……瞬く間に桜吹雪となると、辺りには無数の幻朧桜が生じていた。
その中央に座したまま浮かぶのは、金色の神王。
名をサンサーラ。滅びた世界|広大無辺の仏国土《サンサーラディーヴァ》の創造主であり、今は|櫻花幻朧界《サクラミラージュ》よりこの世界へオブリビオンとして侵略するものである。
ただ、ただ。黄金の光と共に広がる千尋の海を眺めながら。
「無常に、無量に、広がりゆく。私の骸の海を阻む術は無い……」
「あ~、なるほどな。だから山本親分は俺をここに……」
神王は僅かに視線を上げた。自分しかいなかったはずの場所に、同じく黄金の少年がいたからだ。
ただの少年ではない。カクリヨファンタズムより連れてこられた竜神の長、雷を纏う竜神親分『|碎輝《さいき》』だ。
「サンサーラ、悪いが俺は|世界最弱の《・・・・・》『|お前を止められる男《・・・・・・・・・》』なんだ」
「汝の力は戦いと共に成長を続けるもの……成長が間に合わねば骸の海に呑まれ、成長が過ぎても汝自らが滅びの種となろう」
「その点はあんまり心配してないんだ。確かに俺一人で戦えって言われたら、どこまでも成長して戻れなくなって、この世界ごと吹っ飛ばしちまうかもしれないが」
碎輝の槍に電流が奔る。電流は足元を、腕を、やがて彼の周辺を巻き込んで暴れ始めた。
「それくらいしないと、お前は止められないし……そうなる前に、|あいつら《・・・・》がきっと来る!」
――もしかしたら、今度こそは元の|最弱《・・》に戻れなくなってしまうかも知れない。
――それでも、『無限成長』を持つ俺がやるしかない!
昨日より今日。今日より明日。
今を、未来に向けて走り続けてきた猟兵達を信じて。
●骸を喰らう電流
「皆、予兆は見たか」
集まった猟兵達へ、グリモア猟兵の出水宮・カガリが深刻な表情を向ける。
「神王サンサーラ。いるだけで骸の海を世界へ流し込み続ける、恐るべきオブリビオン。……元は、オブリビオンの存在すら摂理のひとつとする、今は無き世界の創造主だったのだが。
それが、幻朧桜と共に。サイバーザナドゥのサイバースペースへ現れた。
無限に広がり続ける骸の海は。放っておけば、サイバースペース全域……では済まない。現実まで侵して、滅ぼすだろう」
もちろん、骸の海に生身で触れれば猟兵とて無事では済まない。サイバーザナドゥの民も、現実で降り続ける骸の海に対して機械化義体に換装せねばならなかったのだから。
「サンサーラ自身の、ユーベルコードも。自身へ到達不能にさせたり、五感を封じたり、強制的に消滅させたり、と。非常に、強力なのだが。欠点がない、わけではない」
自身の強大さのあまり、他の世界で顕現を続けるには「自身が完全に無傷な状態」を維持する必要があるらしい。一撃でも攻撃を当てることができたなら、彼は撤退を余儀なくされるだろう。
『一撃を当てる』――触れてはいけない骸の海が彼の周囲に無限に広がり続け、それを超えてもユーベルコードに打ち勝って、ようやく達成できるそれが、どれほど難しいか。
「幸い。カクリヨファンタズムから、竜神親分の碎輝が加勢に来ている。彼は、無限成長といって。まあ。戦っていると、どんどん成長して、強くなる能力を持っているのだが。無限に広がる、骸の海に対して。彼の成長が、追い付けば。勝機も、見えてくるのではないかな、と」
ただし、戦闘を始めたばかりの碎輝は自他共に認める「最弱」で、守ってやらねばならないほど弱く。天井知らずに強くなりすぎると、封印せねばならないほど凶悪な存在になってしまう。一度強くなってもこれまでは猟兵が打ち負かすことで最弱に戻ることができていたが、今回は相手が相手だ。生半可な成長具合では相手にならないだろう。
「竜神親分も、『最悪』は覚悟の上、のようだ。彼の期待に応えるためにも。何より、サイバーザナドゥを救うためにも。サンサーラを、退けて欲しい」
説明を終えると、黄金の門のグリモアが輝きを増す。
次に目覚めれば、そこは――幻朧桜の花が舞う、黄金の戦場だろう。
●雷竜未だ幼く
碎輝は、成長しなければ比喩抜きに最弱である。竜神の長でありながら、並の竜神よりも遥かに弱いのだ。
「見栄だけでは私に届かぬ」
早速神王に五感を奪われ、前後不覚になっていた。
足元に骸の海が迫るが、全ての感覚を失っている今気付く術が無い。
「くっそ……こんな、卑怯な手で……!」
――昨日より今日。今日より明日。俺はどこまでも強くなる。
――昨日より今日。今日より明日。俺はどこまでも強くなる。
「六番目の猟兵を、待つまでもなかった」
――昨日より、今日! 今日より、明日! 俺は、どこまでも……!
旭吉
|旭吉《あさきち》です。
辰年なんだし絶対いいとこ見せてくれると信じてました碎輝親分。なかなかの危機ですが。
サイバーザナドゥでの『神王サンサーラ』戦、竜神親分『碎輝』との共闘をお届けします(WPはサクラミラージュに入ります)
●状況
サイバーザナドゥのサイバースペース。生身もキャバリアもOKです。
幻朧桜の花弁が舞っていますが、神王の周囲は既にかなり広く骸の海が覆っています。その範囲は広がり続けているようで、飛んでいこうとすると骸の海が持ち上がって捉えようとします。
シナリオ開始時点での碎輝はまだ小学生形態(デフォルト全身図より幼い状態)ですが、猟兵が時間を稼いでくれる間に文字通りどんどん成長します。
骸の海の拡大速度に碎輝の成長が追い付くと、骸の海を狭めることができるようです。
弱い彼を守り通したり、強くなった彼と共に戦ったりしましょう。
ちなみに碎輝は「かっこいい」「真っ正面」な戦い方が好きです。
ユーベルコードは黄金竜に変身して猟兵へだんだん強くなるバフをかけたり(POW)、自分が強くなったり(SPD)、槍から電流を放ったり(POW、WIZ)、いっぱい紫電の紋章を展開したり(SPD)、滅びのドラゴンブレス(WIZ)を使ったりします。
(超電竜撃滅形態、成長電流形態の両方を使いますが、弱い内は使えないユーベルコードもあります)
どなたかとご一緒に参加される場合、お相手のIDか【】で括ったチーム名をお願いします。特殊な呼び名などあれば書いて頂けると助かります。
●プレイング受付
11日8:31~の受付とします。採用順は執筆開始時点で届いているプレイングのうち想定されている碎輝の強さが弱い順です。
なるはや完結を目指しますが筆は速くないです(内容、キャパ共に問題なければ失効前には採用します)
●プレイングボーナス
このシナリオでのプレイングボーナスは、以下の通りです。
『弱い状態の碎輝を守って戦う/強力に成長した碎輝と協力して戦う』
第1章 ボス戦
『神王サンサーラ』
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POW : サンサーラディーヴァ
自身の【眼前】を【広大無辺の仏国土】化して攻撃し、ダメージと【神王サンサーラへの到達不能】の状態異常を与える。
SPD : サンサーラノヴァ
【かざした両掌の間】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【五感封じ】の状態異常を与える【神王光】を放つ。
WIZ : 強制転生光
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【サンサーラの光】を放つ。発動後は中止不能。
イラスト:ぽんち
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空桐・清導
POW
「待たせたな碎輝!世界を!
そしてお前を救うヒーローが来たぜ!!」
二人の主人公が今ここに揃う
「昨日より今日!そして少しだけ良い明日!
どこまでも行けたとしても、それじゃ寂しいだろうが!
だから!オレがついて行ってやるよ!」
彼らは共に無限に成長する属性を持っていた
「まずはアンタを成長させなきゃ始まらねえ。
此処は任せな!行くぜ!シン・超変身!」
碎輝をおぶってUC発動
全てを護るヒーローがここに降臨
「お前が無限に世界を広げるなら、
オレはその全てから世界を護る!
それがブレイザインだ!」
世界流出という無尽蔵の攻撃を[勇気]を滾らせた拳で殴って相殺
[気合]と[根性]で出鱈目な奇跡を起こしながら碎輝を護る!
●獲得・『成長電流』
目映い黄金と風に舞う桜吹雪に支配されたサイバースペース。
元は何らかの娯楽が提供されるエリアだったのだろうが、今やそのほとんどは骸の海に呑み込まれかつての面影は窺い知れない。神々しいような風景も、これが世界を滅ぼすものと知っている以上は敵意しか感じさせなかった。
その中で、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は二つの黄金を目にする。ひとつは、広がり続ける骸の海の中心に不動であるもの。いまひとつは――幼くも、それに立ち向かおうとするもの。何より、立ち向かおうとする黄金は今にも呑まれてしまいそうではないか。
ならば、ヒーローの取る行動はひとつだ。
「碎輝――!」
触れれば唯では済まない骸の海の前に身を躍らせ、聴覚と視覚が不自由なままの少年を素早く背負う。間一髪のところで少年――竜神親分『碎輝』を救出すると、骸の海から距離を取りながら声をかけ続けた。
「聞こえるか碎輝! 待たせたな、もう大丈夫だ! 世界を! そしてお前を救うヒーローが来たぜ!!」
「聞こえない……見えないし、わからないが、この感じ……お前、多分猟兵だな!?」
「ああそうさ! 聞こえなくたっていい、此処は任せな!」
感覚で清導を信じた碎輝が背から強く捕まってくるのを感じると、清導もしっかりと腕で支えながら真紅の機械鎧と魂を共鳴させる。
「行くぜ! シン・超変身!!」
共鳴した機械鎧がフォームチェンジし、清導の顔もフルフェイスで覆う。
誰かを護る、助けるために決して諦めない――それが超鋼真紅ブレイザインを纏う、清導というヒーローなのだ。
「その竜神は何もできぬ。ユーベルコードも使えぬ弱体状態……。それを背負ったまま、我が骸の海に抗うか……」
「うるさい! お前が無限に世界を広げるなら、オレはその全てから世界を護る! それがブレイザインだ!」
サンサーラの静かな言葉と裏腹に、容赦なく迫り来る骸の海。近付くことも許さないそれを、清導は勇気の拳で殴りつけた。
触れた部分が火傷したように熱く、凍ったように冷たく、蝕まれるような感覚がする。この海に落ちたものは全て等しく『過去』となり、『現在』へ存在できなくなるのだ。
(それでも……オレはブレイザインだ!)
誓いを新たにすると、燃えるような気迫が満ちてくる。自分がまだ『過去のもの』ではないと実感できる。『過去のもの』でないなら、まだ骸の海には呑まれていない!
「……よし! 感覚戻ってきた……って、何やってんだ!?」
奪われていた五感が復活し、清導の音と姿、そして感触を知り、彼の行動に碎輝は驚いていた。
「いくら猟兵でも、骸の海に直接触ったら!」
「無限に成長するのは、アンタだけじゃない。戻れなくなるかもって心配も何となくはわかるつもりだ」
背中からの声に応えながら、清導は再び骸の海を殴る。機械鎧越しとは言え、また存在が揺らぎそうな感覚がある。
だが、今度は初めてではない。既に経験のある感覚なら慣れる。慣れれば怖くない。
それが、『成長』ということだ!
「昨日より今日! そして少しだけ良い明日! どこまでも行けたとしても、それだけじゃ寂しいだろうが!
だから! オレがついて行ってやるよ!」
「猟兵がそこまでしてくれるんなら……俺も弱いまんまじゃいられないよな」
ふと、背中から電流が漏れてくる。少年を支えていた腕の負担も明らかに軽くなり、清導は思わず振り返った。
そこに、小さな少年はいなかった。
代わりに空にいたのは、小さな仔竜の黄金竜だ。
『一緒に強くなろうじゃないか猟兵!』
黄金竜から放たれた微弱な電流が広く戦場を奔る。火花のような、少し痺れる程度の弱い『成長電流』はしかし、確実に清導にも力をもたらしていた。
大成功
🔵🔵🔵
ニャーゴ・ヘブンリーレイン
☆アドリブ、連携歓迎
碎輝ー、遅くなってごめんね。
(滅茶苦茶狭い狭いUFO(所持装備)に乗って来る。着いたら降りる)
ここまで来てくれてありがとうね。
ボクの【毎日15分の勉強の成果】を披露する日が来たね!
あ!あの掌の構えは…!これチャレンジゼミでやったところだ!碎輝、五感封じの光が来るよ!あっちに避けて!
碎輝と一緒に敵の攻撃を避けて反撃のチャンスを伺おう。
特に碎輝へ来る攻撃は防げるように勉強した傾向と対策を活かさなくちゃ。
ボクは光線銃で応戦するよ。
ボクは碎輝より小さくて神でもなんでもないただの猫だけど、ボクも努力して勉強すれば頑張れるって所を見せたい。
まあ、チャレンジゼミがすごいだけかも…?
イージー・ブロークンハート
◯⭐︎
こんちは竜神親分、猟兵の端くれがお邪魔すんぜ!
立ち向かわなきゃ、立ち続けて前進しなきゃいけない時ってあるよな。
そんなわけで助太刀致す。
碎輝が一撃喰らわすことができるまで、どうなろうが守っちゃる。
五感が封じられようが、光が放たれるんなら熱により空気は震える。
振動は発生するよな?術は機能するはず。
てなわけで結界をオレと碎輝、他に誰かいるなら誰かまでカバー…いける?
なるべく庇えるよう最前線に立ちたい。
もし五感封じられてる間範囲がずれるなら、第六感でちょっとでもカバーできたら万々歳。
今日は泣くのも喚くのもナシで行きたいけど、ま、泣こうが喚こうが盾になるのは代わりないかな。
譲れんことってあるよな。
●獲得・『黄金竜神』
桜吹雪と黄金の輝きで意識が戻る。
地平には遠くまで骸の海を湛えながら、その中空で対峙するふたつの黄金があった。
片や、骸の海の中央に浮かび座する神王『サンサーラ』。片や、僅かに力を取り戻し黄金の仔竜の姿を得た竜神親分『碎輝』。
「竜神親分……ちょっとは成長できたんだな、よかった」
少しだけ胸を撫で下ろすイージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)。
しかし、手放しで安堵するにはまだ早い。所詮は竜神の「仔竜」に過ぎず、神王サンサーラと渡り合うには到底及ばないのだろうから。現に碎輝は骸の海を飛んで近付こうとしても叶わず、対してサンサーラの方は悠然と掌を構えていた。
「碎輝、五感封じの光が来るよ! あっちに避けて!」
『あっちってどっち……うおお!?』
ニャーゴ・ヘブンリーレイン(黒猫の独り立ち・f02274)に振り返った碎輝が慌てて退くと、直前まで仔竜がいた場所を金色の光が迸った。
狭くて小さなUFOに乗ってきたニャーゴは、降りるなりサンサーラの構えを見ると|毎日15分の勉強《ユーベルコード》で見た構えだと確信したのだ。それで咄嗟に回避を促したのだがうまく伝わらず、応戦用の光線銃を放って危険を知らせ強制的に避けてもらったのである。
ちなみに神王のユーベルコードの構えまで載っている教材はチャレンジゼミというらしい。
「ごめんね碎輝ー、時間がなかったから……ここまで来てくれてありがとうね」
『いや助かった! まだまだこんなもんじゃあいつに届かないが!』
仔竜は火花を散らしながら電流を纏い、翼を広げる。成長電流により成長したことで頼りなかった翼は少し骨格が太くなり、牙や爪は鋭さを増し、丸かった角も尖り始めた……ように見えるが、それでもサンサーラの威容には足りないと一目見てわかる。
「……それでも立ち向かわなきゃ、立ち続けて前進しなきゃいけない時ってあるよな」
銃を構えるニャーゴより、宙で『成長』し備える碎輝より前に出て、イージーは拡がる骸の海の向こうに神王を見る。五感を奪うあの光は、発動の容易さの割りに影響が深刻すぎる。発動の度に避けるだけでは足りないかも知れない。
イージーにはひとつ、考えがあった。
(五感が封じられようが、光が放たれるんなら熱により空気は震える。つまり振動は発生するよな?)
如何に小さな、例え分子レベルのものであっても『振動』があるなら、可能性はある。
「……染まり、映す」
目を閉じ、意識を広げながら集中する。
足元から広がる結界はイージーと碎輝、ニャーゴを取り込み、更に広がって戦場を覆い尽くす。
無限に広がる骸の海の向こうであろうと、そこにイージーが敵と認識する者が存在する戦場なのであれば、結界はこれを捉えるのである。
イージーの結界は味方には癒しを、敵には炎と刃の攻めをもたらすものである――が。
「あの構え、やっぱりチャレンジゼミでみたところだ! また来るよ碎輝、イージー!」
結界による攻めを骸の海に吸収され、その下から掌が翳される。
その狙いは、神王光の煌めきは、過たずイージーを狙っている。
『イージー!』
「絶対出てくんなよ! あんたが一撃喰らわすことができるまで、どうなろうが守っちゃる……!」
怖くないと言えば嘘だ。不安が無いと言えば嘘だ。許されるなら泣いて喚いて、しゃがみこんでしまいたい。
しかし、今日だけは、今だけは。自分にも、誰にも、譲れない――!
「……碎輝! 今の君なら……!」
イージーに回避の意志がないことを見たニャーゴが、咄嗟に碎輝に提案する。こんな時のアドバイスとして例の教材に載っていた方法だ。
「ボクは碎輝より小さくて、神でもなんでもないただの猫だけど……努力して、勉強すれば、ボクだって……っ、飛んで!」
直後、神王光が奔り照らし出す。ニャーゴはイージーに護られたことでいくらか光が軽減され、五感は半減程度で済んだ。イージーは全ての感覚を失ったが、辛うじて働く第六感で周囲の状況を把握しようとする。
「皆、いるか……?」
「ボクはいるよ。半分くらいしか聞こえないし、見えないけど、何とか大丈夫」
「碎輝はどうなった?」
「碎輝は……」
ニャーゴが答え方に迷っている間に、空から声が降ってきた。
『これで、どうだ――!!』
半分残ったニャーゴの視覚でも眩んでしまうような稲光が奔る。
仔竜から少し成長して若い雷竜となった碎輝が、稲妻の一閃として爪を振るったのだ。
稲妻は押し寄せる骸の海を次々と穿ち、あと少しでサンサーラ本体に届く――というところで海へ堕ちた。
「成長はしているようだが……やはり骸の海に呑まれるのが早いか」
『ちくしょう、まだ足りないか!』
サンサーラの言葉に歯ぎしりする碎輝。しかし、そんな彼を猟兵の二人が激励する。
「でも、結構遠くまでいったよ! すごいよ碎輝!」
「結界で五感も早めに戻るはずだ。この調子でいこうぜ竜神親分」
『そうだな……俺達はまだ、こんな程度じゃない……!』
自信と実力を少しずつ取り戻し、確実にサンサーラへ迫りつつあるという確信を得た碎輝。
彼の雷は必ずや更なる成長を遂げるだろう。これだけの猟兵が、彼の力となることを望んでいるのだから!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
空澄・万朶
○☆
記憶はほとんど失ってしまったけれど、オレはかつて、幽世の竜神だったんでね
竜神親分・碎輝様と共に戦えるだなんてとても光栄だよ
捕らえようとしてくる骸の海を躱しながら翼で飛んでいき、骸の海に飲み込まれそうになっている碎輝様を颯爽とお助けする
「ご無事で何よりです、碎輝様」
彼を安全な場所に降ろし
「このユーベルコードはね、貴方に憧れて作ったものなんですよ」
昨日より今日。今日より明日!
オレは……いや、私は……貴方のように、どこまでも強くなる……!
風を操る東洋龍型のファードラゴンに変身し、暴風による【範囲攻撃】と【吹き飛ばし】で骸の海から碎輝様をお守りする
さあ、碎輝様の渾身の一撃、期待していますよ……!
クウガ・フジバヤシ
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
サイバーザナドゥの危機、拙者自身も出ないわけにはいかぬ
碎輝殿、助太刀に馳せ参じた!
碎輝殿は無限に成長するとは耳にしておるが
もう少し成長が必要と見た
なら、拙者の分身が時間を稼ごう
サンサーラノヴァは詠唱時間に応じて範囲が広がる
ならば、詠唱時間をゼロにし効果範囲を至近のみにする
指定UC発動、フォトン製の棒手裏剣を限度いっぱいまで召喚
棒手裏剣の3分の2は立体映像に、残り3分の1は時限爆弾に変化させておく
基本は立体映像を投影する棒手裏剣を優先して投擲し、一直線に拙者が接近するよう見せかけながら
合間に時折時限爆弾の棒手裏剣を投擲し、至近距離で爆発させ詠唱を中断させてやろう
●獲得・『撃滅放電槍』『サンダーエンブレム』
舞い散る花びらが、風圧で千切れる。
それは稲妻を纏う竜翼だった。風を切って飛ぶ竜神親分の翼だ。
急旋回と方向転換を繰り返しながら、これまでの『成長』で得た機動力で骸の海を狭めようとしているが、未だに神王サンサーラのユーベルコードが勝っており決定打に欠けている様子だった。
それどころか、今まさに空中で感覚を奪われた彼は骸の海に捉えられそうに――。
「碎輝様!」
間一髪、黒い翼が金色の翼を海より奪い去る。なおも追い縋る『波』から懸命に逃げおおせ、黒い翼のドラゴニアンである空澄・万朶(忘レ者・f02615)はようやく碎輝を地に降ろした。
「お気を確かに。私の声が聞こえますか、碎輝様」
間近で見る碎輝は予知で聞いていたよりは成長した姿で、背は万朶より少しだけ低いくらいだった。しかし体格で言えば彼の方がやや細いように見えるのはまだ『成長』が足りないのか、これが本来の姿なのか。
未だその目に何も映せない様子の碎輝に万朶は不安を募らせるが、激しく火花が散って電流が奔ると次の瞬間には碎輝が目を擦り頭を振っていた。この僅かな時間にも彼は『成長』したのだ。
「くそ……すっかり助けられちまったな、ありがとよ。けど、お前はドラゴニアンの猟兵だよな?」
竜神でもないのに様付けするのが気に掛かったようで、碎輝に訊ねられれば万朶は畏まって答えた。
「記憶はほとんど失ってしまいましたが、私はかつて幽世の竜神だったのです。竜神親分・碎輝様と共に戦えるとは、身に余る光栄です」
「そうか! 元々竜神だったなら、なおさら俺が格好悪い所は見せられないな!」
牙を見せる碎輝の笑顔は頼もしく、かつて鮮烈に憧れた記憶を万朶に思い出させた。
「碎輝殿、助太刀に馳せ参じた!」
その時、新たに降り立った猟兵が一人。
クウガ・フジバヤシ(レプリカントのサイバーニンジャ・f36777)だ。
「どうやら五感を奪う光……ユーベルコード『サンサーラノヴァ』に苦戦されておる様子。碎輝殿の危機はサイバーザナドゥの危機、ここは拙者にお任せあれ。フジバヤシ流サイバー忍術にてお助け致そう!」
「サイバー忍術……!? こんな時になんだがすごく気になるな!?」
竜神親分から少年の憧れの眼差しを向けられるクウガ。外見は成長してきてもかっこよさそうなものへの憧れは些かも衰えていないようである。
純真にして熱烈ともいえる視線に感じるものが無いでは無いが、クウガは己の仕事に集中する。
(サンサーラノヴァは詠唱時間に応じて範囲が広がるもの。ならば、詠唱時間をゼロにし効果範囲を至近のみにすることができれば)
ユーベルコードで召喚したのは117のフォトン製棒手裏剣。これらの棒手裏剣は、立体映像や時限爆弾への変形が可能なのである。
「うまくいけば、これでサンサーラノヴァを遠距離まで及ぼすことはできなくなる……はずである」
「おお! そしたら、あとは骸の海さえ何とかなれば!」
「それは私に協力させてください、碎輝様」
クウガの棒手裏剣に碎輝が興奮していると、万朶が真剣な顔で申し出る。
「必ずや貴方をお守りして、骸の海をも渡ってみせましょう。少し手荒な道中にはなりそうですが……私こそ、碎輝様の前で不甲斐ない真似はできません」
「そいつはいいな。お互いかっこいい戦いって奴を見せてやろうぜ!」
三人の作戦と決意が固まる。
その様を、彼方より神王サンサーラは静かに見渡していた。
「――!」
その彼の元へ、一直線に飛来する人影がある。距離はまだ遠く離れているが、これも神王光で落としてしまえばいいだけの話だ。
これまでと同じように掌を掲げ、距離に応じた詠唱と共に光を放てば、人影はあっけなく消え――
(……?)
すぐに来た新しい人影に対しても光を向ける。しかし、人影は次々に新しく来る。どうみても同一人物の即時復活ではない。
(これは……増えている……? 分身か)
ならばと、範囲を広げて分身をまとめて落としにかかる。
範囲を広げるには詠唱時間を伸ばさねばならないが、その時間はこの骸の海が十二分に稼いでくれよう。
「!」
――その視界の端に、黒い龍が見えた。
風を纏い操るファードラゴンの姿となった万朶は背に碎輝を乗せ、襲い来る骸の海を暴風で退けながら進んでいた。
『このユーベルコードはね、貴方に憧れて作ったものなんですよ』
「へえ? そいつは親分冥利に尽きるな!」
猟兵としての真の姿を超えた、かつての竜神としての究極体。
その姿を竜神親分に披露できた事自体が、万朶――竜神としての真名を|太刀風《たちかぜ》――には誇らしかった。
(昨日より今日。今日より明日! オレは……いや、私は……貴方のように、どこまでも強くなる……!)
その視界の中で、神王の視線がこちらへ向いていることに気付く。再び五感封じの光が来るのであれば身を挺してでも守る覚悟だが、今回は。
「汝の翼は届かぬ……」
泉のように溢れて骸の海が更に広がる。縮まっていたはずのサンサーラとの距離も遠退いていくようだ。
遠退いていくのは万朶達だけでなく、クウガが投げていた棒手裏剣も到達できずに堕ちていくものが出てくる。
それでも。
「拙者が投げていたのが人型の分身だけと思っていたなら、それは誤算である」
時限爆弾に変形させた棒手裏剣が、サンサーラの間近で堕ちて爆ぜる。万朶に気を取られてユーベルコードを発動させた一瞬に、ひとつだけ間近に堕ちたのだ。
今この時間であれば、神王光が放たれたとしても遠くへは届かない。
「感覚が封じられないなら……一気に行くぜ神王!」
万朶の背から跳び、自分の竜翼で飛び立つと、碎輝は人間体の数倍にも広がった翼から次々と紫電の紋章を展開する。
「お前の骸の海もここまでだ!!」
増え続ける無数の紋章から次々に連射される稲妻が骸の海を焼き、喰らっていく。
「骸の海が……押し返された!」
「いけます! 碎輝様の渾身の一撃、期待していますよ……!」
クウガと万朶の期待を受けて、碎輝の槍の切っ先に紫電が集まってくる。
「ここまで力が漲れば十分だ……その身に刻め、撃滅放電槍――!」
叩き付けるように放たれた紫電が、一直線にサンサーラへ迸る。辺り一面が金色と紫電の光に包まれ、勝負はあった――ように見えた。
「……言ったであろう。汝の翼は届かぬと」
あれだけの質量の紫電が、傷ひとつ付けられなかったのである。
だが、それで諦める碎輝ではない。
「昨日より今日……今日より明日……俺はどこまでも強くなる……!
届かないなら、まだ成長するだけだ!!」
あと一歩。あとひと息の成長で彼は至るだろう。
――その一歩で、踏み留まれるなら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
七那原・望
果実変性・ウィッシーズホープ!乗ってください、碎輝さん!
念動力で飛行能力を得たスケルツァンドを強化属性全力魔法で速度を限界突破させ騎乗。
碎輝さんを後ろに乗せて落ちないように固定し空中戦。
空気抵抗とかは結界術で対処。
第六感、心眼、気配感知、聞き耳で敵の行動を見切ります。
強制転生光は空中にいるから着弾のリスクこそ減っているけれど一度でも被弾すれば即死。
だから碎輝さんが十分に成長するまで超高速で空を駆けて避け続けます。
幸いスケルツァンドもどんどん強化されてるしなんとかなりますか。
碎輝さんが十分強くなったら騎乗突撃。最小の動きで強制転生光を躱しながら碎輝さんのユーベルコードを正面から叩き込みましょう。
●獲得・『|超電竜撃滅衝《ライトニングドラゴンブラスタ―》』『滅びの光』
「果実変性・ウィッシーズホープ!」
七那原・望(比翼の果実・f04836)が勝利の果実を手にすると、果実に込められた願いにより彼女の姿が変化する。あらゆる勝利も苦難も力へと変える形となった望は、純白の両翼を持つ宇宙バイク『スケルツァンド』を滑らせて急いだ。
(早く……手遅れになる前に……!)
そこへ到着した時、大きな咆哮を聞いた。
雷電だけで形作られた見上げるほどの巨竜――否、巨竜型の雷電が雷鳴のように吼えたのだ。
そしてそれを生み出していたのは一本の黄金の槍であり、その主こそは。
「碎輝さん!? もうここまで力を取り戻して……」
「|超電竜《ライトニング》……|撃滅衝《ドラゴンブラスタ―》ー!!」
碎輝の掛け声ひとつで、巨竜は更に成長しながら骸の海を渡ろうとする。骸の海が立ち上がって行く手を阻もうと、その波すら喰らって成長の糧とし更に速さと大きさを増す。
これは、自分の助力などいらなかったのではないか――と思えたのは一瞬だった。
碎輝は既に息が荒い。これまで何度も限界を超えて『成長』を続けてきた証だ。
猟兵の助力があったお陰か目立った外傷はないが、とにかく疲労が酷く流れる汗で目を閉じてしまうほどだ。
「……っ! 大丈夫ですか碎輝さん!!」
「ダメだ……」
「え?」
「まだ……届かない……はっ、流石はエンシェント・レイスってやつか」
彼の言葉通り、あれほどの威容だった雷電の巨竜がその成長を上回る速度で骸の海に呑み込まれていた。巨竜は確かに骸の海を糧にしながら成長できていたのに、単純に物量で負けたというのか。
「俺がやらないと……俺はまだ成長できる……どこまでも……ッ!」
「乗ってください、碎輝さん!」
激しく電流を滾らせ始めた碎輝を制して、望は『スケルツァンド』の後部座席を促した。
「俺は自分で飛べるが……?」
「そうではなくて、少し休んでください! サンサーラの強制転生光は一度でも被弾すれば……」
言っている間に空が急に明るくなる。元々黄金の光に満ちていた空間の空が輝いて、そこから一条の光が――。
「早く!」
碎輝が返答の代わりに乗り込むとすぐさま『スケルツァンド』を出発させる。最初から全速どころか速度を限界突破させて飛べば、何とか最初の光の直撃は回避できた。
しかし、一刻の猶予もない。光は毎秒飛来し、触れたものを否応なく平等に消滅させてしまうのである。
「運転が乱暴になると思うので、本当は固定とか、したかったのですが! しっかり捕まっていてくださいね!」
「なに、悪くない乗り心地だ! 頭も冷えてくる!」
五月蠅いほどに悲鳴を上げるエンジンは魔法で強化しているため炎上を回避している。空気抵抗も結界術で抑えている。急ハンドルの遠心力だけはどうしようもないが、竜神親分はこの重力を楽しんですらいるようだった。
(空中にいるから、強制転生光の着弾のリスク自体は下がってますし……『スケルツァンド』もこの状況でどんどん強化されてるみたいですから……時間は稼げるでしょうか)
懸念があるとすれば、碎輝の『成長』そのものだろうか。
望が到着した時点で、既に何度も限界を超えていたらしい碎輝。彼はこれ以上成長しても大丈夫なのか。
現時点の『成長』では届かないなら、成長を重ねるしかないのだろうが――。
「望、ひとついいか」
「なんでしょう」
「できるだけ時間をかけて、サンサーラの正面に付けられるか。ああ、骸の海は渡らなくていいぞ!」
「それくらいは可能ですが……っと!」
進行方向に降ってきた光を寸前で察知してドリフトで避ける。碎輝には何か作戦があるようだ。
「……止まることは難しいでしょうね。今のようなことになれば」
「だろうな! だから一瞬でいい。その場に俺を置いていってくれ!」
何でも無いことのように言っているが、それは望を危険から遠ざけるためだろうか。
自分自身、という名の。
「碎輝さ、」
聞き返そうとした時、碎輝は既に詠唱に入っていた。『できるだけ時間をかけて』とはこのことか。
言われた通りできるだけ大きくコースを取って攻撃を避け続ける間に、望の背に光が集まってくる。稲妻が奔る音がする。降り注ぐ光より真後ろの雷光の方が眩しくて、視線だけで振り返ることもできなくなる。
「……いつまでも時を稼いだとて無駄なこと」
やがて、サンサーラが骸の海を高く波打たせて望達を呑み込もうとしてきた。
「望、今だ!」
「サンサーラの正面、ですね」
碎輝の合図で、望はサンサーラの正面方向へハンドルを切る。そして――そのまま骸の海を突撃した。
「望!?」
「スピードがあった方が威力が出るでしょう。わたし、碎輝さん自身が災いになるなんて思いませんから」
さあ、決めて下さい。
振り返らないままお膳立てされれば、碎輝はニヤリと笑った。
「ああ……それなら特等席で見ていきな。これが竜神親分最大最強の必殺技……『滅びの光』!!」
稼いだ時間で十二分に増幅した成長電流が辺りを白く染め上げるほどの光を放ち、雷のドラゴンブレスとなって正面へ叩き付けられる。
滅びのドラゴンブレスは巨竜とは比べものにならないレベルで瞬時に成長を遂げながら増殖し、骸の海の波を穿ち砕くと、更にその向こう――中空に座すサンサーラへと、確かに届いたのだった。
「我に届くものが……本当にいようとは……」
信じられないものを見るように、サンサーラは竜神親分のドラゴンブレスによって傷付いた己の腕を見ていた。そしてそれ以上は恨み言も何も言わず、千尋の海と共にその姿を消したのだった。
大成功
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