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帝都櫻大戰⑤〜漆辜宮桜前秘湯奇譚

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第一戦線 #セヴン・デッドリヰ・シンズ

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「全員揃ったな。今回集まって貰ったのは他でもない……我等の管轄にある冬桜が、影朧の集団を伴って飛来していると云う事態だが」
 地下集会を思わせる、少ない明かりの中で卓を囲む男女七人。
 内、人間離れした美貌と色気、そして鍛え上げられ均整の取れた体躯を兼ね備えた、魔性とも呼ぶべき男が声を上げる。
「どうにも此度の影朧、その一個体ずつが並外れた力を有しているそうじゃあないか……私の『力』が何処まで通用するものか、試してみたいが……」
「莫迦なの? 確かにお前の『力』は異常だけれど、もう他の連中からも報告上がってるでしょ。物量攻めで圧し潰されるのが落ち、これだからなまじ変な力持ってる連中は……」
 肌に鱗を宿した少女のような形をした人物が、恨みがましく異を唱える。
 だが、その反応は想定内と言わんばかりに最初の男は続けた。
「『幻朧封じの儀』を執り行うしかあるまい。お前達にも協力して貰うぞ」
「はぁ!? 何でさ!? 勝手に巻き込まないでよね!! お前はいつもいつもそう!!」
「そもそも、あの冬桜の管轄は手前だけだろ。勝手に俺達を一緒くたにすんじゃあねえよ」
 続いて、色素は薄いがこちらもまた整った顔立ちと体躯の少年が、気怠げに不平を口にした。
 すると、他の面々も口々に不満を……と言うより、各々が好き勝手に喋り始めた。
「丹桜、頬杖つくのやめなさいよ。行儀悪いわ」
「あ? うるせえ、指図すんな傲慢女」
「は? ほんっと品がないわねヒステリイ男」
「まあまあ、若い者同士仲良くしないと駄目だよ〜」
「うるせえ!!」
「うるっさい!!」
「はは、元気が良くて何よりだ。それに何だかんだ息もぴったりだしね〜」
「なーなーその影朧連中、なんか珍しいモンとか持ってねーの!? 亜米利加から来たんだろ、ちょっくら頂戴しに行こうぜ!!」
「お前も話聞いてなかったの!? 僕等じゃあ太刀打ち出来ないって言ってんじゃん!!」
「あの〜、収集つかないなら帰っていいですか……? 小説の続き書きたいんですけど……」
「諸君」
 しん、と。
 最初の男が口を開けば、全員が凍りついたように押し黙った。
「仲良くしようじゃあないか。我等『漆辜宮』と呼ばれ結ばれた間柄だろう?」
「………………」
 男は笑顔だったが、纏う空気は刺すように冷えており、凍て殺すような悪寒を全員に齎していた。
「そうでなければ私自ら諸君等を『大人しくさせなければ』ならなくなる。……協力してくれるな?」
 それでいて、その声音と言葉には、毒林檎のような甘さがあった。
 斯くして、七人の皇族は浮島を目指す。
 『漆辜宮』の管轄下にある冬桜の下へ。


「皆は『|漆辜宮《しちこのみや》』の皆様をご存知?」
 初耳だ、と告げれば花神・玉恵(花竜の乙女・f41618)がにこりと咲う。
「それじゃあ、お話させて頂くわね。漆辜宮は、七名の皇族の方から成る集団よ。と言っても、これは皇家で正式に呼ばれているものではないの」
 そもそも、宮とは邸宅を持つ皇族の尊称である。漆辜、即ち『七』の『罪』――邸宅に用いるには余りに不適であるし、何より尊称として論外だ。
 ならば何故、彼等はそう呼ばれているのか。
「彼等をそう呼んだのはね、幻朧戦線なの。漆辜宮の皆様は、独自に幻朧戦線のテロル活動を度々阻止していたわ。ただ、皆様かなり癖が強くてね。その大半が大正の世の為と言うよりは、個人の利害の為に動いていたようなのね。だから皮肉を込めて……七つの大罪に擬えて、そう呼ばれるようになったそうよ」
 そしてそれを、首領格である『色欲宮』が面白がり、自ら名乗るようになったと言う。尤も、他の六名は巻き込まれただけのようだが。
「中でも『憤怒宮』の丹桜様は、私達猟兵とは縁があるわね。その関係で連絡を頂いたのよ。『幻朧封じの儀』を行うから、護衛の名目で参加して欲しいって」
 聞けば丹桜達漆辜宮は、亜米利加から飛来した『冬桜』とその周辺の土地から成る『浮島』の対処に向かうらしい。其処には幻朧帝に呼応したのか、儚い存在とは思えぬ程の力を持つ影朧の集団が満載されているのだとか。
 其処で漆辜宮の七人は冬桜を前に神前試合、ならぬ桜前試合を行い、浮島の送還を試みると言う。
「皆にはね、その場にいて欲しいんですって」
 成程、試合を見届ければ良いのか。いや、護衛と言うからには矢張り、周囲に気を配り襲撃があればそれを阻止するまでが必要か。
「ううん、その場にいてくれれば『良い』の」
 え?
「あのね、冬桜の近くに天然の温泉があるそうよ! 試合は目の届く場所で行うらしいから、のんびり温泉を楽しんでくれば良いと思うわ! 漆辜宮の皆様も、試合が終わったら汗を流しに入るらしいし、その皆様から許可が取れているのだもの。……あ、帰りはグリモアがあるから安心してね。漆辜宮の皆様は流石に船を使うけれど……」
 いや、あの、とんでもなく強いらしい影朧は。黙っていないのでは。
「確かに強いらしいけれど、どうも慎重派でもあるらしくて、超弩級戦力の皆の姿を見れば、何か察するらしくて近寄ってこないみたいだわ」
 ……それは本当に強いのだろうか。
 いや、色々と突っ込みたい所ではあるが、襲撃が無いに越した事はない。何も言うまい。
「温泉……温水プウルと言った方が良いかしら。元は洞窟の中にあったのが崩落して出来た半地下のものなの。だから地層の窪みの中にエメラルドグリインの澄んだ水面が綺麗な場所でね、眺めているだけでも癒されると思うわ。あ、入るのなら水着をちゃんと着てね。実質混浴になってしまうから。それと神聖な儀式の前でもあるからね、無いと思うけれど、如何わしい事したら駄目よ」
 今年の水着コンテストの水着を着ていくのも良いかも知れないわね、と既に現地に思いを馳せている様子の玉恵である。引率のつもりなのだろうか。
「兎に角、折角のお誘いだから楽しみましょうね。細かい事は考えっこなし! 皆が来てくれる事が、漆辜宮の皆様の身を守る事に繫がるんだから」
 まあ、グリモア猟兵の彼女がそう言うなら大丈夫なのだろう。
 思わぬ展開にはなったが、温泉を楽しむとしようか。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあです。
 少し離れていた間に色々と勝手を忘れている。

 戦争シナリオのため、今回は1章構成です。

 第1章:日常『秘境行楽奇譚』

 秘境にある天然の温水プールです。
 イメージとしてはハ○ルトン・プールの温水版。
 地層と澄んだエメラルドの水面が景観としても美しい場所です。
 男女の別なし、当然ながら水着着用必須。

 ※いるだけで抑止力になるので、影朧への警戒プレイングは不要です。
 (寧ろ警戒している描写をしてほしい、という場合は話が別ですが)

 お声掛けありましたら、拙宅グリモア猟兵(慧、シトロン以外)もご一緒させていただきます。
 丹桜を含む漆辜宮の面々とも会話可能ですが、特に何か秘匿情報を握っているなどはございません。

 公開された時点で受付開始です、が。
 今回もかなり書けるタイミングにムラが出そうです。
 その為、採用出来るかどうかは人数とタイミングと内容次第でまちまちになります。ご了承ください。
 (〆切までには何とかします。場合によっては逆にサポート多めでお届けする可能性もございます)
 そして例の如くオーバーロードでも余り採用率に変化は出ない可能性が高いです。
 何故ならやっぱり〆切が早いから。悲しみを背負った。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『秘境行楽奇譚』

POW   :    兎に角全力で遊ぶ! 楽しむ!

SPD   :    日々の忙しさを忘れ癒されたい

WIZ   :    自然の神秘を感じながら過ごす

イラスト:由季

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

国栖ヶ谷・鈴鹿
ペンギン🐧カムパニー集合!

総勢157ペンギンと1ハイカラさんが温水プールで寛ぎながら、漆辜宮様方の桜前試合を見守る、もとい観戦するのが目的!

ぼくも水着に着替えて、応援します!
ペンギン🐧カムパニーのみんなも神聖な儀式だから、しっかり見守るんだよ。
(何ペンギンかは寛いでる)

応援も派手に、ではなくて、一本で、盛大な拍手を!

ぼくと真面目なペンギン🐧で、宮様達に試合後におつかれを労わるお飲み物ご用意しようね。

素晴らしい腕前でした、ペンギン🐧たちも、ぼくも良い緊張感と白熱した試合を拝見させて頂きました。

試合がつつがなく進行する助力になれれば幸いです。
(ペンギン🐧たちと礼をして)



「ペンギン🐧カムパニー集合!」
 軽やかに朗々と、乙女の声が響き渡る。
 総勢157ペンギン🐧が、エメラルドの中を泳ぐ。その中心にいるのは、1ハイカラさんこと国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)だ。
 彼女達が見守る、もとい観戦するのは冬桜に奉納される、漆辜宮の七人による、桜前試合。強大かつ膨大な影朧を乗せたこの浮島を、在るべき場所へと送還する為の、大切な儀式だ。
「ぼくも応援します! ペンギン🐧カムパニーのみんなも神聖な儀式だから、しっかり見守るんだよ」
 勿論、水着の方も抜かりなく準備万端。
 何種類かの花飾りをふんだんにあしらいつつも、神聖ささえ感じさせる和の出で立ちは、可憐にして上品。纏う紅がひらりと水面を泳ぐ。
 ペンギン🐧たちもしっかりと整列し、試合が無事に終わるよう見守りの姿勢へ。……あら、何ペンギン🐧かは温水の誘惑に抗えず、寛いでいる様子。
 そんな中、桜前試合が始まった。最初に前に出た二人は確か、『嫉妬宮』|挿頭《かざし》と『怠惰宮』|佐夢《たすめ》だったか。
 挿頭が派手で見栄えのする技を絶え間なく繰り出す一方、佐夢は淡々と静かにそれを往なしている。
 思わず鈴鹿とペンギン🐧たちの応援にも力が入りそうになる、が。
(「応援も派手に、ではなくて」)
 冬桜に奉納される桜前試合、それは神聖で重要な『儀式』であるからして。
 試合は静かに見守り、そして一本――勝敗が決した時点で。
「!」
 鈴鹿とペンギン🐧たちが、盛大な拍手を送った。
 そして、真面目なペンギン🐧達と一緒に鈴鹿が用意したのは、試合を終えた漆辜宮達を労う為の飲み物だ。
 鈴鹿はひとつ、挿頭と佐夢に礼をして。
「素晴らしい腕前でした、ペンギン🐧たちも、ぼくも良い緊張感と白熱した試合を拝見させて頂きました」
 労いの言葉をかければ、まずは挿頭がぱちりと大きく丸い目を瞬かせて。
「お前……ああ、丹桜が呼んだって超弩級戦力の。素晴らしいなんて言ったって、お前達の方がよっぽ……もごっ!?」
「駄目ですよ、挿頭くん。ごめんなさいね、この人何かにつけて妬ましがるから。今、帝都を脅かす脅威に立ち向かえる貴女達が、羨ましいんでしょうね」
 成程、確かに癖が強い。
 しかし特級パーラーメイドとして様々な客に対応し、何より皇族を敬愛する気持ちの強い鈴鹿は挿頭の恨み言(未遂)にもへこたれず、寧ろ一切の陰りない笑顔を向けて。
「こちら、試合がつつがなく進行する助力になれれば幸いです」
 再び、ペンギン🐧たちとひとつ礼を。
 すると、佐夢は眠たげながら穏やかに微笑んで。
「有難く頂きますね。優しい貴女に桜の加護がありますように」
 挿頭もじっとりとした視線を向けてきてはいるが、飲み物は受け取ってくれた。
 そんな二人に――そして漆辜宮達に、鈴鹿は笑顔の花を咲かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

…いや本当にいろいろありますねー?
ですが、折角なんです。その景色を見に行きましょう。

というわけで、陰海月と霹靂も出てきての観光ですねー。
ええ、この緑…エメラルドグリインでしたか。本当に綺麗なもので…。
ふふ、たまにはこうしてのんびりするのも良いですねー?


陰海月「ぷきゅ!」
霹靂「クエッ!」
うわーっ!綺麗!と見とれてる。



「……いや本当にいろいろありますねー?」
 『幻朧封じの儀』は皇族によりその手法は様々である、とは聞いていたものの。
 目の前に広がる天然温泉、ないし温水プウル。メインは漆辜宮達による桜前試合とは言え、戦争中らしからぬ光景に流石の|馬県・義透《疾き者》(死天山彷徨う四悪霊・f28057)も毒気を抜かれた。
 ただ、まあ。グリモア猟兵も『いる事が護衛になる』と言っていたし。折角だからと陰海月、霹靂と共に見に来た景色は確かに絶景だった。
 眺めているだけでも楽しめる、との言葉は過言ではなかったようだ。
「ぷきゅ!」
「クエッ!」
 ミズクラゲの陰海月、ヒポグリフの霹靂も見惚れているよう様子。『うわーっ! 綺麗!』なんて声まで聞こえてきそうだ。
 そんな二匹に、義透ものほほんと微笑んで。
「ええ、この緑…エメラルドグリインでしたか。本当に綺麗なもので……」
 緑は目に優しい色、とはよく言ったもので、その清らかでありながら神秘的な彩は、心まで澄んでいくような心地にさせてくれる。
 白や灰、茶と幾つもの色合いが織り成す地層とのコントラスト、洞窟の名残で生まれる光と影もまた見事だ。小さな滝や泉を源として流れる小川も見受けられ、よく見れば魚や亀等も泳いでいるようである。
「ふふ、たまにはこうしてのんびりするのも良いですねー?」
 サクラミラージュでの戦いは、これから更に激化していくのだろうが。
 だからこそ、英気を養う事の出来る時間を大切に。そして次の戦いへの、活力としていくのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
今年の水着を着用して温水プールへ

すごーい!綺麗…
こんな場所があるんだ
所謂絶景スポットってやつ?
あんまりこういう場所に来る機会って無いから、いい思い出かも

とはいえ…なんか、許可付きとはいえ
頑張ってる横でのんびりするのもちょっと申し訳ない気もしちゃうよね

プールの中をゆらゆら泳いで端っこへ

目に届くところで試合するって言ってたし
ここからも見えるのかな

折角なら漆辜宮の皆さんともお話ししたいな
お疲れ様と労ったり
かっこよかった、綺麗だった等思うままに試合の様を褒めたり

こんな素敵な場所に招待して頂いたお礼
周りの迷惑にならないよういつもより控えた声だけれど
指定UCで奏でる歌唱で
皆さんの傷や疲れを癒せれば、と



 純白と奇跡の青をドレスのようにはためかせ、それでいてその双眸を琥珀の如く丸め煌めかせ、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は感嘆の溜息と共に声を上げた。
「すごーい! 綺麗……」
 思わず、といった風情で漏れたその声は、広がる澄んだエメラルドの水面の輝きと、影を作り出し透明な光を際立たせる地層によって生み出された光景へと吸い込まれていった。
(「こんな場所があるんだ……所謂絶景スポットってやつ? あんまりこういう場所に来る機会って無いから、いい思い出かも。とはいえ……」)
 聞けば、誘いを掛けてくれたのは皇族の一人である『憤怒宮』と呼ばれる男であるらしいが。
 元は彼等の行う『桜前試合』の護衛という名目である。いや、実際、いるだけで護衛にはなっているとグリモア猟兵は言ったが。
(「なんか、許可付きとはいえ頑張ってる横でのんびりするのもちょっと申し訳ない気もしちゃうよね」)
 漆辜宮達も後で入るらしいとは聞いているが、あくまでも試合が終わってからであって、それ以前に自由に出入りは出来ないのだろう。
 それを思えば堂々と寛ぐのも気が引けたので、澪はエメラルドの水面をゆらゆらと泳いで端っこへと向かい、其処に落ち着く。
(「目に届くところで試合するって言ってたし、ここからも見えるのかな」)
 元は洞窟だったのだろう、地層に背を向ける形で冬桜へと視線を向ければ、丁度『憤怒宮』|丹桜《あきお》と『傲慢宮』|雪黎《きより》が鎬を削っているようである。
(「折角なら漆辜宮の皆さんともお話ししたいな。休憩中なら声をかけられるかな?」)
 試合が終わり、二人が入ってくるのを待つ。どうやら今回は丹桜に軍配が上がったようだ。
 水音の方を見遣れば着替えた二人がそこにいて、澪は二人に声をかけた。雪黎は深海人なのか、脚が魚の尾に変化していた。
「丹桜さん、雪黎さん、お疲れ様」
「ン」
「愛想無しでしょこの男。労い甲斐がないわ」
「手前に言われたくねえな」
「何ですって?」
 何やら雲行きが怪しい。
 初対面の澪が目の前にいるのにこの有様。確かに癖が強い。
 だが、澪は驚きこそすれ動じはせず、宥めの言葉の代わりに静かに歌い始めた。周りの迷惑にならないよういつもより控えた声ではあれど、確かに心に響くように。
 それは天使の歌声、聖なる祈り。目に見える痛みのみならず、波立った心も穏やかに凪ぐように。
 声を荒げかねなかった二人は、今や言葉も忘れたように瞬きながら澪を見ている。
「こんな素敵な場所に招待して頂いたお礼……皆さんの傷や疲れを癒せれば、と」
 それに丹桜の力強い動きは迫力があってかっこよかった、雪黎の技――演奏も清く美しく、その音色は綺麗だったと惜しみなく賛辞を贈れば。
「……ありがと。ま、今回は後れを取ったけど、次は負けないわ」
「何度やったって譲るかよ」
 まだ二人共応酬はしていたけれど、纏う空気は和らいでいて。
 話せてよかったなと、澪は心から思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
……どうにも想像以上に癖が強い人達だな。なんというか、交流するには少々骨が折れそうではある
でもまあ、秘境の天然温泉には興味を惹かれるし。ま、どうにかやるとしよう(温泉マニア)

とりあえず水着は用意するけれど。一度は試合を覗いてから温泉に向かう事にする
変な事にならないとは聞いていたけど念の為な。それに、そっちの方にも興味はあるしな

そちらを終えたら着替えて温泉へ……話に聞いてはいたが、想像以上だな
今はゆっくりと、英気を養う事にしよう

漆辜宮の方々と積極的に交流するとまでは言わないが
とはいえ、ちょっとくらい雑談するのは良いだろう。なにせこの温泉を使わせてもらった恩もあることだしな



(「……どうにも想像以上に癖が強い人達だな。なんというか、交流するには少々骨が折れそうではある」)
 漆辜宮達がしたと言う遣り取りを聞いた夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)の、率直な感想である。
 この桜と共に在る世界の出身ではあるが、皇族にも本当に色々居るのだなと改めて噛み締める事となった。
(「でもまあ、」)
 それでも、鏡介がこの誘いに応じる事にしたのは。
(「秘境の天然温泉には興味を惹かれるし。ま、どうにかやるとしよう」)
 控えめに言って彼は、温泉マニアなのである。
 まだ見ぬ秘湯と聞けば、確かめてみない訳にはいかないのだった。それに、それ自体が皇族たる漆辜宮の護衛になると言うなら一挙両得と言うもの。
 早速現地に向かい、水着に着替えて温泉へ――と、その前に。
「とりあえず水着は用意してきたけれど」
 まずはひとつ試合を覗いてから向かおうと。
(「変な事にならないとは聞いていたけど、念の為な。それに、そっちの方にも興味はあるしな」)
 桜前試合ともなれば、皇族にとって、そして帝都に生きる者にとって神聖な儀式である事だし。
 流石に超弩級戦力、即ち猟兵達のように強力な影朧と渡り合うまでは行かないだろうが、皇族の中でも彼等は比較的戦える部類なのだろう。その戦いぶりも気になる処だ。
 今は『強欲宮』|曙銀《あかね》と『暴食宮』|徒重《ともえ》が試合を行っているらしい。防御を一切捨てた曙銀の猛攻を、徒重が身体能力を強化して防御、反射も狙っているらしい。
 その試合を見届けて、水着に着替える。蘇芳の羽織は畳んで、纏う藍染を水面に漂わせる。
(「話に聞いてはいたが、想像以上だな」)
 揺らぐエメラルドが目を、そこから張り詰めていた神経を癒し、身体もまた心地良い温度に解れると同時、清められていくかのようだ。
(「今はゆっくりと、英気を養う事にしよう」)
 そうして身体を休めていると、曙銀達も入ってきたので。
 積極的に交流するとまでは言わないが、ちょっとくらい雑談するのは良いだろうと声を掛け。
「失礼します。試合を拝見させて頂きました、お見事でした。それにこの度はお招き頂き、感謝を」
 そう、この温泉を使わせてもらった恩もあることだから。
「ああ、君は丹桜君の話していた超弩級戦力の方だね? この機会に癒やされて行ってくれたら嬉しいよ」
「超弩級戦力!? なーなー、影朧との戦い聞かせてくれよ! どんなユーベルコヲド使うのとか興味ある!!」
 騒がしくも、平和な時間になりそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪華・風月
ほぅ…洞窟の中の天然温泉…まさに秘湯といった感じの素晴らしい大自然との調和された景色ですね…
と軽く浮いて足をパチャパチャと
水着は白いパレオ付きのものを…むぅ…流石に4年前のものですから来年には新しく用意したほうが良いかもですね

桜前試合…あまりこう見れるものではないのでそちらが気になりますね…
剣でしょうか?武道でしょうか?

はい、実況風月、漆辜宮家の皆様の神聖な儀式の解説を(勝手に)頑張らせていただきます。解説の(グリモア猟兵さんおまかせ)さん(勝手に巻き込み)今の状況をどう見ますか?



「ほぅ……洞窟の中の天然温泉……」
 嘗て暗く静かな場所でひっそりと揺蕩っていたのであろうそれは、崩落の末に光を浴びて雪華・風月(若輩侍少女・f22820)の前に姿を晒していた。
 大自然の中に横たわる水面はエメラルドの彩を湛えながらも光を受けて澄んで底まで見通せて、幾つもの色が重なり複雑な彩を生み出した地層が落とす影との対比が神秘性を高めている。
「まさに秘湯といった感じの素晴らしい大自然との調和された景色ですね……」
 この光景を生んだ自然現象、その何が欠けてもこの絶景は生まれなかっただろう。
 風月も早速、その水面に身を委ねる。軽く浮いて足をパチャパチャと小さく跳ねさせれば、飛沫が空に舞って煌めいた。
 彼女の動きに合わせて、仄かに碧を宿した白いパレオがひらりと揺れる。純で涼し気な装いはこの翠の水面には映えたが。
(「むぅ……流石に来年には新しく用意したほうが良いかもですね」)
 何せ、用意したのは四年も前になる。状態は良く保てているが、やはりそろそろ新調も考えるべきか、なんて。
 考えていると、桜前試合が始まるようだ。『嫉妬宮』挿頭と『強欲宮』曙銀が冬桜の前に出てくる。
(「あまりこう、見れるものではないのでそちらが気になりますね……剣でしょうか? 武道でしょうか?」)
 見れば挿頭の方は剣舞用であろうか、所謂巴里で言う所の装飾された|細剣《レイピア》を抜いたのに対し、曙銀は|鉄爪《クロー》とでも言うのだろうか、爪状の刀剣四本を伸ばした篭手のようなものを嵌めている。
 武器や技……ユーベルコヲドに指定があるわけではないようだ。超弩級戦力、即ち猟兵達の模擬戦と似たようなものだろうか。
 そこで風月は正面から冬桜と、その前で試合を行う二人を真っ直ぐに見据えて。
「はい、実況風月、漆辜宮家の皆様の神聖な儀式の解説を(勝手に)頑張らせていただきます。解説の吉川さん、今の状況をどう見ますか?」
 なんか実況始まった。
 ついでに近くにいたグリモア猟兵の清志郎が巻き込まれていた。
「そうですねー! 見たところ二人共守りより攻めに重きを置くタイプですから、逆にそれが噛み合ってしまってなかなか決定打が出ないみたいですね!」
 どうやらかなりノリの良い相手を引けたようである。
 二人の実況解説を交えて、桜前試合は恙無く執り行われていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・久遠
一年に一度は温泉行かんと気ぃ済まんので、今回は渡りに船やわー
子供らと選んだ水着もちゃんと着て、いざ異世界の温泉!

おー……これは聞きしに勝る絶景やね
家族への土産話にとスマホで撮影
防水ポーチにしまったら掛け湯してゆっくり浸かる
体の力を抜いてゆるゆると天井を見上げ
崩落した地形がこんな美しいコントラストを生むとはなぁ、自然は偉大やな

……もしこれを造るなら?

確か依頼メールに「変わった風呂を作りたい」っちゅうのがあったな?
やるとしたらカビ対策は必須やな
湯気の抜け道と素材選び、掃除のし易さ、それから……あぁ間取りはどうやったかな

一瞬ポーチに手を伸ばしかけ
……まぁええか、無粋やわ
今はこの湯と景色に溺れましょ



(「一年に一度は温泉行かんと気ぃ済まんので、今回は渡りに船やわー」)
 若かりし日は能力者として銀の雨降る時代を駆け抜けた劉・久遠(迷宮組曲・f44175)も、今となっては二児の父。
 五歳になる双子の子供達と選んだ水着もちゃんと着て、準備は万端。いざ異世界の温泉へ出発!
 そうして辿り着いた冬桜の先、エメラルドに煌めきながらも澄んで横たわる泉が見えてきた。
「おー……これは聞きしに勝る絶景やね」
 感嘆に、溜息交じり。
 木々の中に見えてくる白や灰、茶などが織り成す洞窟の名残に、光と影を湛えながらその泉は滝から落ちる湯に揺らめく。澄んだ水面は彩を宿しながらも底まで見え、よく見れば魚や亀などの姿も見える。時折桜の花弁が着水して泳いだ。
 聞きしに勝る風光明媚は帰りを待つ妻や子供達――愛する家族への土産話になるだろうと、スマートフォンで写真をパシャリ。
 それを仕事道具入れも兼ねた防水ポーチにしまい込んで、掛湯を済ませたら、いざ中へ。
 熱すぎず温すぎず、好みはあるだろうが大抵の人は程よいと感じるだろう心地よい熱が体を解し、澄んだ水は景色と共に心を洗ってくれるようだ。
 体の力を抜いて、ゆるゆると屋根代わりになっている地層の天井を見上げて、穏やかな時を過ごす。
(「崩落した地形がこんな美しいコントラストを生むとはなぁ、自然は偉大やな」)
 その時、ふと。
 久遠の中に、ある考えが泉にも似て湧き上がった。
(「……もしこれを造るなら?」)
 確か『変わった風呂を作りたい』といった旨の依頼のメールが届いていた筈だったと思い出したのだ。
 これを再現出来るなら、顧客のニーズにも応えられるのではないか。天啓の様に閃いた。
(「やるとしたらカビ対策は必須やな。湯気の抜け道と素材選び、掃除のし易さ、それから……あぁ間取りはどうやったかな」)
 確認しようとして一瞬、ポーチに手を伸ばしかけたが。
 ふと、その手は直前で止まり。久遠は目を瞑ると、ゆるり頭を振った。
(「……まぁええか、無粋やわ」)
 折角のお誘い、折角の絶景。
 余計な事は考えず、楽しまなければ野暮と云うもの。
「今はこの湯と景色に溺れましょ」
 勝景の中で揺蕩う湯は心地良く、穏やかに緩やかに時は過ぎていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジゼル・サンドル
ミルナ(f34969)と。

黒いワンピースタイプの24年水着姿。

丹桜先輩経由での依頼なのか、あの時の御一行は元気にしているだろうか…
…ミルナはそればっかりだなぁ…

いやまあそうなのだが…温泉を楽しんでいればいいとは拍子抜けというか…いや襲撃がないならそれが一番ではあるのだが。

…まあ、悩んでいても仕方ないからな、今は温泉を楽しむとしようか。
泳いでいいんだろうか?
まだバタ足しかできないのでうるさくしないよう、ミルナに掴まってゆっくり足を動かす感じで。

海色の人魚のミルナは本当にエメラルドグリーンのこの水面に映えるなぁ…なんて思いつつ。
うん、ミルナと一緒ならどこでも。わたしももう少し泳ぎを覚えないとな。


ミルナ・シャイン
ジゼル(f34967)と。

サラシを巻いただけの水着に羽衣を纏った24年水着姿。

あらジゼルは皇族の方と面識があったんですのね。それにしても皇族の皆様顔がいい…!男性陣イケメン揃いじゃありませんの!
あら目の保養をしてるだけでしてよ?今回は戦う必要もないようですし…温泉を楽しめば良いのでしょう?

ええ、せっかくの秘境の温泉ですもの!
ジゼルも少し泳げるようになりましたし、泳いでみましょうか?わたくしに掴まっても良いですわよ。
景色を楽しむようにゆったり一周、温かい温泉で泳ぐのもいいですわね。気持ちよくて…
泳げる温泉というのはなかなかないですけれど、今度温水プールにでも行ってみましょうか?



「今回は丹桜先輩経由での依頼なのか、あの時の御一行は元気にしているだろうか……」
「あら、ジゼルは皇族の方と面識があったんですのね」
 少女二人、ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)とミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)。
 ジゼルはシンプルながらも控えめなレースで愛らしい印象を与える黒のワンピース、ミルナは天女を思わせる晒布と羽衣で神秘的な出で立ちと、今年準備した水着で煌めく水面の中へ。
 温水の中から冬桜を眺めようとすれば、自然と桜前試合を行う漆辜宮達の姿も見える。
「それにしても皇族の皆様顔がいい……! 男性陣イケメン揃いじゃありませんの!」
 澄んだ水面にも負けずキラキラと碧海の瞳を輝かせるミルナの視線の先には、丹桜や曙銀、徒重や実は男性だったらしい挿頭の姿がある。中でも流石に『色欲宮』と呼ばれる|花尊《みちたか》は、伝え聞いた以上の魔性とも呼ぶべき美貌と肉体の持ち主であった。
 好みはあるだろうが、客観的に見て皆、用紙は整っていると言っても良いだろう。それはジゼルにも解る。解るのだが。
「……ミルナはそればっかりだなぁ……」
 通常営業な親友、亜米利加(浮島)に在って尚健在。
「あら、目の保養をしてるだけでしてよ? 今回は戦う必要もないようですし……温泉を楽しめば良いのでしょう?」
「いやまあそうなのだが……温泉を楽しんでいればいいとは拍子抜けというか……いや、襲撃がないならそれが一番ではあるのだが」
 良いのだろうか、と思う気持ちは拭い切れないジゼルである。真面目なのはこの親友の美徳であろうが、もう少し肩の力を抜いてもいいのではないかと思わずにいられないミルナである。
 とは言え、そんな真面目な|親友《ジゼル》も温かな湯の中では少し心に余裕が出来たのか。
「……まあ、悩んでいても仕方ないからな、今は温泉を楽しむとしようか」
「ええ、せっかくの秘境の温泉ですもの!」
 ニコニコと無邪気に笑うミルナに、ジゼルも釣られて苦笑する。
 それから、何か思いついたようにぽんと軽く両手を叩いたミルナ。
「ジゼルも少し泳げるようになりましたし、泳いでみましょうか? わたくしに掴まっても良いですわよ」
「泳いでいいんだろうか?」
 ジゼルは首を傾げたが、周りに迷惑を掛けないよう気を付ければ良さそうだ。仮にも『温水プウル』である事だし。
 とは言え、ジゼルはまだ本格的な泳ぎは未習得で、バタ足が限界だ。ミルナの言葉に甘えてその手に掴まり、景色を楽しむようにゆったり、しかしうるさくしないように気を配りつつ、泉を一周。
 ゆっくり脚を動かしながらふと、ミルナを見上げれば、その姿はお伽噺に姿を見せる人魚の様だとジゼルは思う。
(「海色の人魚のミルナは本当にエメラルドグリーンのこの水面に映えるなぁ……」)
 そんなジゼルの胸中を知ってか知らずか、ミルナはふぅとひとつ溜息を吐く。それは充足感から来るものだと、ジゼルにも感じられた。
「温かい温泉で泳ぐのもいいですわね。気持ちよくて……」
 それからまた、彼女は何か思いついたようにハッとした顔をして。
「泳げる温泉というのはなかなかないですけれど、今度温水プールにでも行ってみましょうか?」
「うん、ミルナと一緒ならどこでも。わたしももう少し泳ぎを覚えないとな」
 親友と共に何処までも行けるように。
 海の彼方へも、空の向こうへも、どんな世界の果てまでも。

 ――余談だが、桜前試合は花尊対残り六名と云う形で締め括られる事となった。
 試合は花尊の圧勝で、お見事でしたと目を輝かせるミルナの傍ら、ジゼルはこの人一体何者なんだと戦々恐々としていたと言う。
 ともあれ、此処に冬桜は鎮められ、浮島も、漆辜宮も、そして猟兵達も、在るべき場所へと還り往く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月10日


挿絵イラスト