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帝都櫻大戰③~華は狂い、光は躍る

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第一戦線 #帝都タワー #ビームスプリッター

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●号外! 号外! 大号外!
 帝都の夜空を光が乱舞していた。
 今、周囲は狂ったように吹き荒れる桜吹雪が覆っており、その花弁の一つ一つが、光を浴びて妖しく煌めいていた。
 ──サクラミラージュとは、こんな世界だっただろうか?
 帝都タワーの根本からおびただしい数の、長く太い触手が生え、その間から光線銃がビヰムを発し、のたうつ触手の滑らかな表面が光を反射していやらしく光っている。そんな存在が、そこにいた。
 その体高たるや、2000m。
 でかいッッ説明不要!
 これこそが超・超巨大悪魔、ビームスプリッターだ。
 それは、こう見えても太古の昔、悪に立ち向かい、それを封じた存在だったという。
 オブリビオンとして、世界の敵として現れた今、何を思うのか。
 その意志を反映してか、それとも裏腹にか、幾筋もの光線が空を乱舞する……。

●太古の巨大生物というとロマンではあるが……。
「エンシェントビヰム? エンシエントビヰムではなく?」
 サクラミラージュの仮名遣いがわからない。
 穂照・朱海は集まった猟兵に説明の途中で詰まった。
「皆、もしかしたらもう知っているかもしれないが……」
 仕切り直して、手にしたメモを読み上げる。
「別名「帝都タワー」と呼ばれる世界最大級の電波塔……しかし実は、その正体はなんと、エンシェント・レヰス『悪魔ダイモン』の最高指導者、通信を司るダイモン『ビームスプリッター』の『頭部』だったのです!!(棒読み)……意味わかった?」
 朱海はいまだによくわからない。
「このビームスプリッターはかつて悪である存在、幻朧帝イティハーサと戦い、他のエンシェント・レヰス四種族全ての命と引換えに創造された『幻朧櫻』の根本に封じたという。
 そしてその上に、幻朧帝を永代に渡り埋葬すべく建立された仮初の大地、 それこそがこの地、『|櫻花幻朧界《サクラミラージュ》』なのだという……。
 しかし今、ビームスプリッターはオブリビオンとして出現している以上は世界の敵だ。
 ……情報が多すぎるとは思う。
 だが要は単純だ。このビームスプリッターをぶっ倒す」
 朱海はさっきのメモを勢いよく引き裂いた。
「ここからが重要だからよく聞いてほしい。
 ビームスプリッターの倒し方についてだ。
 もしかしたら、もうよくご存知かもしれないが……。

『ビームスプリッターは彼の頭部である「帝都タワー」の最上階展望台まで辿り着き、記念メダル刻印機で「名前入り記念メダル」を作ってもらえば消滅させられる』

 何でだろうね?
 皆、くれぐれも……名前を打ち間違えないように気をつけて欲しい」
 朱海は深刻な顔で注意換気をする。
 またとない記念にはなりそうだ。なりそうだが……。
「勿論エレベーターなどない。体の大部分は触手だ。これを登っていかなくてはならない……もしくは空を飛ぶという手もある。しかし空から迫れば光線銃の格好の的だろうし、至近距離を飛んでいても触手ではたき落とそうとしてくるだろう……登っても同じことだが。
 方法は任せるよ。
 ただ、普通に戦って倒すのは現実的ではないと思う」
 咳払いをひとつ。
 まとめる準備だ。
「作戦名はビームスプリッター&帝都タワー見学ツアー~死の行軍~。君達の成功を祈っている!」


デイヴィッド
 ハーイ!デイヴデース!
 すでに踏破済みの方も何周でもどうぞ。
 果たして猟兵達は無事記念メダルを作ることは出来るのか。
 状況はグリモア猟兵が説明している通りです。
 時間帯は夜ですが、アホみたいに明るいです。
 なおメダルを作れるのは全員とは限らず、一人でも作れれば勝利です。

 プレイングボーナス:敵の超・超巨大に対処する/光線銃に対処する/帝都タワー目指して駆け上がる。

 また、ビームスプリッターを配下にしたい! とお考えの方は、プレイングにそれとわかるようにその意志を示す行動をお書きください。
 それで何が起こるのか……実はMSも知りません。
 加えて敵の攻撃の対処方、登り方なども書いておくとよいでしょう。
 9月8日中の完結を目指します。よろしくお願いします!
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第1章 ボス戦 『ビームスプリッター』

POW   :    光線銃ヲ撃チマクル!
【無数の光線銃】から、着弾地点で爆発する【エンシェントビヰム(ギザギザの光線)】を連射する。爆発は敵にダメージを、地形には【ビリビリ罠化】効果を与える。
SPD   :    此処ハ結界、ビームノ檻
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【リフレクトビヰム(細くてよく曲がる光線)】で包囲攻撃する。
WIZ   :    ICBM(インフォコネクトビームマキシマイザー)
自身の【リングビヰム(輪っか型の光線)】が触れた対象に【通信傍受で得た莫大な情報】を注ぎ込み、身体部位をねじ切り爆破する。敵との距離が近い程威力増大。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──号外! 号外! 大号外!
 ──超・超巨大悪魔ビヰムスプリッタァ、又モヤ帝都ニ姿ヲ晒ス!
 ──猟兵達ハ果敢ニ戦ヘドモ、骸ノ海ヨリ出デシ我輩ヲ無力化セシムルニハ未ダ及バズ!
 ──我ガ召喚者、不在ナレバ!
 ──我輩ハ、オブリビオントシテ現在ヲ否定スルヨリ他ニ無シ!
 ──次ノ主ヲ求ムルモノ也!
 ──号外! 号外! 大号外!

 地上より遥か上より、人ならざる声が帝都に轟く。
 ビームスプリッターの出自が何であれ、戦果を上げられねば、戦いに勝利することはできないのだ。

 一際強い旋風が巻き起こる。
 桜吹雪は濃さを増し、一帯を夥しい桜の花弁が完全に覆い尽くした──。
結衣浜・アトゥル
※アドリブ連携歓迎
普段はサイバーザナドゥで活動してるんだが…
面妖なものがいるもんだな
いや、こっちにもいるか…?まあ、いい

育ちが悪いもので、塔の観光や記念メダルというのはよく分からないんだ
そうだな…気を引く役なら、幾分か助けになれると思う

方針:外部戦闘での囮役になり、味方の負担を減らす

駆け寄りつつ【指定UC】発動
〔念糸〕を蓮華状に展開しながら、空中を跳躍する形で飛び上がる
初撃は回避に集中し、隙を見て飛ばした念糸で光線銃を一つロック、使用不能にする事で注意を引く

【陽動・軽業・心眼】で触手と光線の軌道を【解読】
頃合いを見て〔千斬刀〕で光線を【見切り・早業・切断】して見せていく
触手の猛攻は、念糸と〔糞掃衣の首巻〕を絡ませ瞬間的な【捕縛・受け流し】
間隙をつき光線銃を短時間でもロックしていく

ん、妙な間だ、飛びすぎたか――?
っ!全方位からの光線…!
保てよ、俺の身体!
〔Is-Ds〕を【瞬間思考力・操縦】
無理矢理体勢を変え――!

悪いな
穿ったのは〔実体投影機構〕の鏡に映った俺だ
俺たち流の身代わりの術、ってな


御形・菘
いや~、2000mの超高いタワーなんてロマンがあって素晴らしい!
是非とも記念にてっぺんまで駆け登って記念のメダルを貰わんとな
妾は、二本足で地面を駆け抜ける者たちとは異なる独自のルートで突っ込むとしよう
掴める左手と巻き付ける尾を駆使して、よじ登る感じでゴーだ!

よいしょよいしょと登攀してる間に迫るビームは、一喝して消し飛ばす!
手や尾が塞がっていても、頭はフリーだからな
はーっはっはっは! 妾をビーム程度でどうにかできると思わんことだ!

当然だがビームスプリッターは配下にしたいぞ
はっはっは、キマフュに呼び寄せたらバズりの名所として大爆発間違いなし!
でもってオーナーは妾! 平和的な観光名所となるがよい!


有坂・紗良
あのタワーが全部頭部?マジで言ってんスか?スケールでっか…
とりあえず頂上まで上がれば大人しくなってくれるんスよね?だったらやるしかなさそうっスねぇ…

流石にこの弾幕をまっすぐ抜けるは無理そうっスからねぇ
ならUCのドローンの搭載物を『グレネードポーチ』の煙幕手榴弾に《武器改造》で換装
そのまま周囲を走らせてボクの通り道を煙幕で《目潰し》と行くっスかね
歩いて上るのが厳しいなら『サメボード』に乗って駆け上がり、障害物は手持ちの銃火器ブッ放して退いてもらいましょ

んで…本当に記念メダル作れば解決するんスよね?
せっかくだからボクの名前入れとこ…


ウルマリカ・ラム
(ですますのすがカタカナ)
まあ、まあ、なんて素晴らしい!
あのように大きな悪魔は初めて目にしまス!

現在フリーなのであれば、ぜひ当会に勧誘したいところ!
ごきげんよう! あなたのお力を活かせる場所にご興味は?
好待遇をお約束致しましょう! あなたが望むものあれば、もちろんそちらもご用意を!

自身の体を水に戻して、触手を伝い登っていきまス
リングビヰムへの対応は最小限にし、踏破することを最優先に
もし攻撃を受けて多少水を失っても、完全に消されない限りは問題はありません
それに爆破の痛みだけでなく、多くの情報を頂けたり、情報の注入という得難い体験をすることができたりと、むしろ得ばかりでスとも!


テリブル・カトラリー
……一人でも最上階に辿り着ければいいのだったな。

『ハイ・オーバーコート』を発動。
【継戦能力】無敵の超巨大機械兵器となり、
超巨大絶対物質盾で光線攻撃を【盾受け】ブースター【推力移動】
ビームスプリッターの距離を詰め、超巨大機械刀で【属性攻撃】
【破壊工作】再生困難なよう奴の触手を焼き斬り払い、注意を引き、
可能な限り耐え、自らを囮になる事で味方に向かう光線を減らし昇りやすくする。

もしビームスプリッターが自身ではなく味方に注意を向けるようなら、
巨体を活かし組み付き、大量の流動黒剣を放ち触腕を【切断】しつつ、
【早業】巨大兵器から最上階に飛び乗り移りテリブル・カトラリーのメダルを作る。


ロロ・ラリルレーラ
「あが、ぎ、ミ、あはきゃはァ……☆★☆★」
「カンじるツタわるワかるシってるヒロがるヒラけるメザめるワかれるナニもかも☆★☆★☆
 オオきいキミ、ナガいキミ、フルいキミ、ケタタマしいキミ、トメドないキミ★☆
 きっときっと、ロロとトモダチになりたいんだねッ★☆★」

ロロ自身は展望室には入れるサイズではないので、目立って騒いでヘイトを稼ぐ。
もちろん意図しているわけではないけれど、誰かの役に立つかもしれない。

そんなわけで融和な電波でご挨拶、400倍の超巨大なんて物ともしないのが通信技術。
浴びればきっとめろめろどろどろロロに夢中。銃口まとめてこちらへどうぞ。

ドーナツみたいな輪っかのビヰムはもちろん避けたりなんてしない。
だって捩じ切れるほどの|情報量《おへんじ》、親愛のハグに他ならないから。
パンクした脳も身体も電波を注げば元通り。どっちにしても|過剰受信《オーバードーズ》。

配下だとか契約だとかよく分からないけれど、オトモダチになれるならなんだって。
見学ツアーの果てまで|毒電波《ラブコール》を送信します。


アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

よーし、今回は化術で風になりましょ。わっはっは、風になってしまえばビームで捉えることは不能。莫大な情報はカウンターハックでお返ししましょ。それ以外になにかされても通常攻撃無効なので無視できるわね。
風になれば距離も関係無く展望台までイケるわね。
さて、ビームスプリッターさんアリスと魂の契約を結んで配下になってよとおねだりしてみるわ、|”なかよし”《頭セカンドカラー》になりましょ❤



 ──そして桜吹雪が弱まると、そこには7人の人影が姿を現していた。

 サイバーグラスで目元を隠した、極端に白い肌の、濡れそぼったコートを纏った男。

   無垢なる刃影 |Z-sk《ゼシキ》-Ex・f42882
      結衣浜・アトゥル

 禍禍しい角と翼、蛇の下半身、爬虫類の特徴を備えたキマイラの女。

   邪神様のお通りだ・f12350
      御形・菘

 黒の"仕事着"を身に纏い、重火器を備えた緑色の瞳に赤茶色の髪の少女。

   天性のトリガーハッピー人間・f42661
      有坂・紗良

 瀟洒なフリル付きのシャツとスカート姿の、青い髪の女。

   よくばりメイルストロム・f30328
      ウルマリカ・ラム

 口元をガスマスク状のもので隠し、武骨なコートとブーツを身につけた大柄な女。

   女人型ウォーマシン・f04808
      テリブル・カトラリー

 赤と青の瞳をグルグルさせた、とにかくカラフルな巨人の女。

   猛毒電波を送信します・f36117
      ロロ・ラリルレーラ

 説明不要……もとい子供の如き無邪気さと小悪魔の如き妖艶さを併せ持つ少女。

   不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202
      アリス・セカンドカラー

 以上7名、ビームスプリッターを相手に挑まんとするものである。

「……スケールでっか……」
 ビームスプリッターの偉容を目の当たりにした、紗良の第一声である。
 初めて聞いた時はマジで言ってんすか、と言いたくなったが、マジだった。
 これが帝都の真の姿だ。
「ああ……面妖なものがいるものだな」
 アトゥルも同調する。サイバーザナドゥで主に活動する彼だが、出身世界ではああいったものは……いや、カオス具合では引けを取らないか、と思い直す。
「良いな! 実にロマンがある!」
 一方で菘。
「いや~、2000mの超高いタワーなんてロマンがあって素晴らしい!」
 こういった状況は美味しくいただける趣味嗜好である。
 しかも周囲には吹き荒れる桜吹雪。花が好きなこともあって、菘はテンション↗️アゲアゲ↗️MAXだった。
「ええ、ほんと、じつに素晴らしいでスね!
 あのように大きな悪魔は初めて目にしまス!」
 それに同調するように興奮を口にするウルマリカ。
 対象が悪魔である、という点が彼女にとっては重要だった。ウルマリカは冒険商人であるが、同時に悪魔召喚師でもある。
「そうね、主が欲しいだなんて可愛いわね……❤️」
 アリスも無邪気な笑いとともに同意する。これはただのKENZENな感想である。
「うむ! 桜吹雪! 暴れまわる巨大タワー! 乱舞する光線! これは動画映えするシチュエーションだな、はーっはっは!」
「あ、動画配信者の方なんっスね」
「動画配信……? ライブストリーマーか……?」
 興奮する菘に対する紗良とアトゥル。そういうものがあることは猟兵の間では割と周知の事実である。
「分かるッス、楽しいのは大事ッス」
 快楽主義者の紗良は同意を示す。
「でしたら後でその動画ファイル、分けて頂けませんか? 加工許可付きで是非……お代は払いまスよ!」
 CMに使えそうだと感じたウルマリカは、早速菘相手に商談を持ちかけた。
「配信できない内容にしちゃったらごめんなさいね❤️」
 アリスは少女らしく(しかしよく見ると妖艶に)笑いながら言った。
「お主いったい何をする予定だ……?」
 菘は流石に怪訝な顔になる。
「俺は育ちが悪いものでそういうものはよくわからないんだ……ともかく、近づいてあの光線をどうにかする」
「了解。先は長いけど慎重に進むッス」
「うむ、解った! メダルを作るのは任せよ」
「ワタシも登ることに専念しまス」
 アトゥルの言葉に紗良、菘、ウルマリカが同意を示す。
「……一人でも最上階に辿り着ければいいのだったな」
 ここで、それまで一言も発さなかったテリブルが、口を開いた。
「そう聞いたッスよ」
 紗良が答えると、テリブルはうなづく。
「私は外から敵の注意を引き付ける」
 そして、それだけ言った。
「あが、ぎ、ミ、あはきゃはァ……☆★☆★」
 猟兵達の頭上から幼い笑いを含んだ声が聞こえた。ロロが目を大きく見開き、歓喜に満ちた表情をしていた。
「カンじるツタわるワかるシってるヒロがるヒラけるメザめるワかれるナニもかも☆★☆★☆
 オオきいキミ、ナガいキミ、フルいキミ、ケタタマしいキミ、トメドないキミ★☆
 きっときっと、ロロとトモダチになりたいんだねッ★☆★」
 とめどない言葉の奔流は、どうやらビームスプリッターに向けられているらしかった。
「ロロは、ここで、オハナシするよぉ……☆★☆★」
 これは猟兵達に向けられたものらしかった。
 傍からは同じ目的を共有しているのかわからないように見えたが、猟兵ならば何か考えがあってのことだろう、とみんな思ったので、深く追求はされなかった。

 かくして……猟兵一同、光の乱舞の中に飛び込む覚悟は決まった。 

 ──号外! 号外! 大号外!
 再びビームスプリッターの巨大音声が帝都の夜空に木霊する。
 ──猟兵7名を確認! 結衣浜・アトゥル、御形・菘、有坂・紗良、ウルマリカ・ラム、テリブル・カトラリー、ロロ・ラリルレーラ、アリス・セカンドカラー、デアルト思ハレル!
 ビームスプリッターは通信で得た膨大な情報から、猟兵の名前や特徴を割り出した。
 猟兵たちのうち、何人かがビームスプリッターに向かって駆け出す。その場に残るものもいた。
 アリスはその一人だった。
 次の瞬間、アリスの姿は一陣の風とともに消え去った。
 否、アリスは風になったのだ。化術を使って。
(わっはっは、風になってしまえばビームで捉えることは不能)
 勝ち誇った笑いとともに展望台へと向かうアリス。果たして、目的地には一瞬にしてたどり着いた。
(あら? 展望台は窓が締め切ってあって入れないわね……)
 ならばと常時外に通じているトイレの換気扇など、内部に通じている穴を探すが、換気扇は何かで封印されていて、結局中に入る隙は無かった。
 ビームスプリッターは通信を通じて猟兵の情報を得ているのである。己の敗北条件も知っていた。一瞬で勝利に繋がるような手に対しては、対策がなされていた。
(一人でここに残っても仕方がないし、戻りましょう……)
 アリスは一旦諦め、新たな手段を模索することにした。

 テリブルもまたビームスプリッターには向かわず、その場でユーベルコードを発動した。
 物理法則を無視して奇跡が現れる。
 帝都のビル群を見下ろす威容。
 それは巨大剣と巨大盾を備えた、超巨大機械兵器だった。
 テリブルは発同時にその中に転送され、それを操縦している。
「これ見よがしに真っ向勝負を仕掛けようという私を、無視できるか……?」
 盾を前にして半身になり、じりじりと距離を詰めた。

「ふ、ふふ、ぎゃっぎゃ☆★」
 超巨大兵器内部に転送されたテリブルの足元で、ロロがビームスプリッターを眺めていた。
「イマ、トドけるからねぇ……☆★」
 パラボランスの切っ先をビームスプリッターに向ける。
 未だ距離があったが、そんなことは関係ない。
 送るのは、|毒電波《ラブコール》。
 時間と空間を超越して、ロロは想いを届ける。
 果たして電波塔である帝都タワー、すなわちビームスプリッターは受信した。それは甘ったるくて柔らかい、温かで、痺れるような融和電波。
 ──今、神ガ我輩ヲ貫ヒテ踊ル!
 ──空気ト空ト桜トガ溶ケ合ッテ、ヒトツニナル!
 ──ソコニ我輩ハイナイ! 汝モイナイ!
「そうだよぉ☆★だってキミとロロはおんなじなんだから☆★☆★」
 ──我輩ハ汝!
 ──汝ハ我輩!
 ──ソコニ区別ハ非ズ!
 あろうことか、ビームスプリッターはロロの毒電波を受信して自我と外界の垣根が曖昧になってしまったようだ。
 ──我輩ハ何ヲ?
 ──汝ハ危険極マリナシ!
 毒電波を送信し続ける電波塔など危険以外の何であろう。
 流石は古の種族、悪魔の王。ビームスプリッターは短時間で我に帰った。
 ──外道退散! ICBM!
 相手が電波塔ならばと、リングビームを介さずに通信傍受で得た莫大な情報を直接送信する。
 超・超巨大要領のメールボムだ。
 真っ向から受信したロロの上半身はねじ切れて爆発した。
 笑顔のままのロロが下半身から解き放たれ、地面に落ちる。
「でもダイジョーブだよ☆★☆★パンクしたノウもカラダもデンパをソソげばモトドオリなんだからッ☆★☆★☆」
 上半身が起き上がって、歩いてきた下半身に掴まる。
「何が大丈夫なのか? まるでわからん……」
 巨大兵器の中のテリブルが心配したら良いのか呆れてよいのかわからないといった風にロロを見る。
 本人が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。
 さすがにリタイアかと思われたロロだが、こう続けた。
「このヨのオワリまでラブコール、おくりつづけるよッ☆★☆★☆」
 行ったり来たりの|過剰受信《オーバードーズ》。
 電波の|隨《まにま》に。
「……ともかく、こちらも仕掛けさせてもらう」
 テリブルは『ロロは問題なし』と判断し、ビームスプリッターに向かって距離を詰めた。
 あまり派手に動くと味方を巻き込みかねなかったが、剣のリーチを考えれば、全速前進など必要ない。
 案の定、ビームスプリッターの光線銃のうち何丁かが、テリブルに向けられる。
 ──光線銃ヲ撃チマクル!
 三千世界を焼き尽くす。常世之闇を切り払う。
 触手が巻き付く無数の光線銃が一気にエンシェントビヰムを放つ。稲妻のごときギザギザした光線が夜空を乱舞した。
 テリブルは超巨大絶対物質盾で光線攻撃を受け止める。
(この熱量では……あまり長持ちはしそうに無い)
 いつまでも食らっていては熱伝導で機体がオーバーヒートしかねない。幸い、照射時間はそこまで長くはなかった。
「今度はこちらから行くぞ」
 巨体に相応しい重厚な踏み込みと共に超巨大機械刀を振るう。
 凄まじい剣圧が地上を叩き、桜の花弁を舞い上がらせた。
 狙いは確かだった。だが、ビームスプリッターの柔軟な触手は自由自在にくねり、剣を避けてみせる。
「それでも避けている間は攻撃できまい」
 注意を引くという役割自体は、果たせていると言えた。
 だが触手の何本かは地上を行く仲間に向けられていた。
「こいつらは……触手の一本一本が違う目的を持って動くことができるのか」
 テリブルは悟る。何も埒外なのは猟兵だけではないのだと。

 ──迎撃ヲ開始スル!
 一方で、ビームスプリッターに向かったもの達に向けて、無数の触手に握られた無数の光線銃が光線を放った。
 向かったのはアトゥル、菘、紗良、ウルマリカの4名である。
「|特攻小隊《スウォームチーム》、|出撃《ロールアウト》!」
 対して真っ先に動いたのは紗良。
 要請を受け周囲に自立ドローンが出現した。ドローンは煙幕を吹き出しながら飛び、自身の姿をビームスプリッターから覆い隠す。
 自身の視界も遮られるが、ビームスプリッターの巨体を見失うはずもない。
 これで敵が狙い撃つことは困難になった。しかし狙いなどつけずに周囲に撃ちまくられる光線はそれだけで脅威だ。慎重に避けつつ近づく。
 アトゥルはアクロバティックな動きで光線を回避し、無駄のない動きで距離を詰めていく。彼はサイバーザナドゥで暗躍するニンジャである。痩身でありながら、インナーに着こんだパワーアシストスーツに強化された身体能力を活かし、超人的な動きで回避していく。
 ウルマリカは攻撃をいなすために、ユーベルコードLoad the Bulletを発動、人の姿を手放した。彼女の肉体を構成するソーダ水そのままの姿となり、液体のまま流れて形を千変万化させながら張り巡らされたビームの隙間を縫うように進む。
 菘もまたこういう状況には慣れた歴戦の猟兵。蛇身をくねらせ、翼をたたみ、安全な箇所を見切っては素早く入り込ん……
「ええい面倒だ! ダメージ覚悟で突き進む! はーっはっは!」
 菘は途中で強硬案にチェンジした。
 頑強な肉体は光線を受けようと簡単に焼き切れるものではない。
 いち早くビームスプリッターの根本へとたどり着いた。
「ユーベルコードでもない攻撃など何発食らおうが……妾は倒せぬ!」
 磊磊落落。
 その声に応えるように、光線銃が菘の正面から向けられた。
 ──ナラバ、汝ノ望ムママニ!
 ──邪神退散! ICBM!
 大胆不敵に告げる。それは通信手段のハイカラ革命。
 膨大な情報を送り込んで体をねじ切る暴力的な通信手段が、幾重もの光の輪の波紋となって菘に迫った。
 配信している動画にもその情報の余波が及び、無秩序な単語の羅列が画面を覆い尽くす。
 菘はその発動の瞬間、少しも動じず、
「喝ぁぁぁぁーーーーーーーーーーーつ!!!!!!!!!」
 ただ、一喝した。
 するとビームスプリッターのリング状のビームは、一瞬にして掻き消えた。同時に周囲の桜の花弁も弾かれたように飛び散り、菘の周囲から離れた所ではらりと落ちた。配信している動画も、一瞬にしてクリアな戦場の状況に戻る。
「はーっはっはっは! 出直して来るがいい」
 高笑いとともに勝ち誇る。
 ユーベルコード・神の専売特許はユーベルコードを大音声の一喝により相殺するもの。
 まさに──邪神転生戦国無双。
 ビームなど夏の夜の蛍の如しだ。
「なあ、ビームスプリッターよ!」
 声が届く所まで来たと判断した菘は、呼びかけた。
「お主、妾の配下にならぬか?
 はっはっは、キマフュに呼び寄せたらバズりの名所として大爆発間違いなし!
 でもってオーナーは妾! 平和的な観光名所となるがよい!」
 少しして、勧誘の返答は帰ってきた。
 ──感激! 感激! 感激ノ至リ!
 ──汝ノ申シ出ニ千億ノ感謝ヲ!
 大音声が、歓喜に震えていた。
 しかし、攻撃の手が緩んだ様子はない。今しばらくは、敵同士の関わりは続くだろう。
 その時にはウルマリカもビームスプリッターの根本に到着していた。
 ここで液状となっていた彼女は人の姿に戻る。それは、ビームスプリッターに言葉を届けるためだった。
「ごきげんよう! あなたのお力を活かせる場所にご興味は?
 好待遇をお約束致しましょう! あなたが望むものあれば、もちろんそちらもご用意を!」
 冒険商人にして悪魔召喚師であるウルマリカが、この機会を逃すはずがない。
 彼女は言わば、契約のプロだ。
 果たして返答はすぐに返った。
 ──汝ガ提案、我輩ノ望ムル所也!
 ──願ハクハ、汝ラガノ望ミノママニ。
 ──サレド今ハ、戦イヲ続ケルヨリ他ニナシ!
 ビームスプリッターは嬉々とした声であったが、それはそれとしてという風に、ウルマリカに光線銃を向けてくる。
 ──水害退散! ICBM!
 光線銃より光の輪が幾重にも発され、波紋となってウルマリカに向かっていく。
 ウルマリカはその内側に巻き込まれる瞬間、体をまた液状に変じた。
 リングビームの内側で液体の体がねじれて爆ぜた。
 …………だが次の瞬間、液体が集まって一つに戻った。
 熱量によって蒸発させる光学兵器であればともかく、|ICBM《インフォコネクトビームマキシマイザー》は莫大な情報を注ぎ込むことで身体部位をねじ切り爆破する攻撃手段(因果関係が謎だが……)。
 液体がねじれて弾けても、その総量は変わらない。
 さらに莫大な情報を処理する困難ですら、ウルマリカは『利益』と受け取ってしまえる人種であった。
 情報が莫大すぎて処理不能ならば、情報ごと肉体を切り離すことだって出来た。
「得難い体験をすることができました! ありがとうございまス!」
 液体のまま礼を言って、ビームスプリッターの触手に飛びつくと、液体が物体を流れるのとは逆に、重力に逆らって上へとその体を持ち上げていく。
 他の猟兵達もビームスプリッターを登り初めていた。体高2000mは確かに巨大だが、道程と考えればそこまで長い距離とは言えない。
 菘は巨大な左手で触手に掴まると、蛇身を巻き付かせ、走るのと同様の早いスピードで登る。
 紗良は飛行可能なボード・サメボードに乗って上昇していた。両手は自由なため、ビームを避けつつアサルトライフルTAQ-Hで光線銃を撃ち落とす。特攻小隊のドローンも光線銃めがけて突っ込ませ、敵の武器破壊に勤めた。
 そしてアトゥルは、ユーベルコード|五色蓮華・浄土共命鳥《パシフィストストリングス・カルダ》を発動することで念糸を飛ばし、蓮花状に展開して足場にしたり、触手に巻き付けて跳び移ったりして登っていた。
 軽業で移動し、心眼で触手と光線の軌道を解読、時には千斬刀で光線の狙いを見切り、焼かれるより早く光線を切断する早業を見せる。
 また、ユーベルコードの効果により光線銃を一つ一つ使用不能にしつつ、念糸と首巻きで触手同士を括ることで、味方への攻撃を遮る。
 だが、ビームスプリッターも黙ってはいない。
 ──此処ハ結界、ビームノ檻!
 ──其ヲ断頭台ニ|誘《いざな》ワン!
 光線銃を備えた触手が突如して動いたかと思うと、突如としてビームを照射する。細く、良く曲がる光線が、さながらシューティングゲームのボス戦か光の祭典かといった具合に、夜空に光の幾何学紋様を描いた。
 狙いは紗良とアトゥルだ。
 光の筋がそれぞれを檻のごとく囲みこんだ。
 収縮すれば檻から断頭台へ一直線、体と泣き別れした首が地上を見下ろすであろう。
 アトゥルはその檻から抜け出すことは敵わず、体を千々に焼き刻まれた。

 ……否、そこにアトゥルは居なかった。
「悪いな」
 それだけ言って、アトゥルはさらに上へと登っていく。
 焼かれたのは〔実体投影機構〕の鏡に映ったアトゥルの鏡像だった。
 テクノロジーの|極楽浄土《ディストピア》に暗躍する忍、彼ら流の身代わりの術である。

 一方、紗良は、ドローンが散布した煙幕により狙いが甘くなったため、ビームの檻も必然的に大きく、間隔が広いものとなっていた。
 その檻の隙間から特効小隊のドローンを差し向け、収縮するよりも早く光線銃そのものに突っ込ませる。
 速やかに飛来したそれは搭載した爆薬によって盛大に自爆し、光線銃ごと花と散った。
「包囲してる暇があったら始めから心臓を撃ち抜くんスよ!」
 何でもないことのように言う紗良。勿論、その方が難しい。
 ともかく撃破目標も多くて紗良は上機嫌だ。
「TAQ-Hを撃ちまくる!」
 光線銃を見つけては乱射しつつ、サメボードを上昇させる。

 その頃──。
 「あら? どうしたの?」
 このタイミングで、風になっていたアリスが元の場所に戻ってきた。下半身から別れたロロを見て状況を聞く。
「ユーベルコードでねじきられたけどロロはダイジョーブだよ☆★☆★」
「そうなの! よかった」
「ロロはさっきあのコにラブコールをおくったの☆★☆★またおくるよ★☆★☆」
「あのコってビームスプリッター? ラブコールって?」
 ロロは融和電波を送った。
 するとしばらくして、ロロの両腕がねじ切れて爆発した。
 巨大なロロの右腕をアリスは両手で受け止め、そして言った。
「電波? それよ」
 閃いた。風で駄目なら今度は電波になってみよう。

 果たしてアリスは電波になって帝都タワーに受信された。そしてデータとしてビームスプリッターの記憶容量の中に入り込んだ。
 そこではアリスは主観的にビームスプリッターを見ることができた……演算装置、もしくは脳がデータ内で可視可されたのだと直感的にわかった。
 そこにはロロの姿もあった。正確には、ロロが電波に乗せて送った情報だ。
「カンじるツタわるワかるシってるヒロがるヒラけるメザめるワかれるナニもかも☆★☆★☆」
 ロロが雪崩れるようにラブコールを送っている。しばらくすると消えた。ビームスプリッターに削除されたのだろう。
「ふうん……ここなら展望台に行くより面白いことが出来そうね……?」
 しばらくして……。

 ──エッチナノウミソオイシイデス❤️
 ──性者ノ交身! 姦・通・惨・死!
「何だいきなり」
「ハレンチな……」
「惨たらしく死ぬのか……?」
 突然ビームスプリッターが訳のわからない事を言い出したので猟兵達は困惑した。
 行動もそうだ。触手で別の触手を緊縛したりしている。体が触手しかないので、触手同士が絡まり合うことになっている。
 今ビームスプリッターは俗に言う"頭セカンドカラーな状態"になっている(俗に言わない)。
 もちろんこれはアリスのユーベルコード、ヒュプノシスセカンドカラーによるものだ。

 アリスはビームスプリッターの記憶容量(脳)内で顔を紅潮させ卑猥なポーズをしていた。
 セカンドカラー脳を存分に解き放つことがこのユーベルコードの発動条件だ。効果は自身にも及び、アリスがこのユーベルコードを使っている時はセカンドカラー全開になる。
「はぁはぁ……❤️この流れで……ビームスプリッターさんアリスと魂の契約を結んで配下になってよ❤️❤️❤️|”なかよし”《頭セカンドカラー》になりましょ❤️❤️❤️」
 アリスはさらに契約を迫る。果たして、返答はすぐに返された。
 ──アァ……気持チ……イイ……❤️
 話にならない!
 いや、既に頭セカンドカラーなので契約は肯定されたと見るべきか。
 ──……ハッ……我輩ハ何ヲ……。
 ──悪魔ヲ弄ブトハ……恐ロシイ……。
 流石と言うべきか、すぐ我に帰った。
 しかし、一時的とはいえ変態だったことは、これからも皆の記憶に残り続けることだろう。
「そろそろ潮時ね……またね❤️」
 アリスは電波となって送信されて外に出ていった。

 ビームスプリッターが変態的な行動に少しの間専念していたことで、猟兵はその間、比較的安全に先に進むことができていた。
 かくして猟兵達はビームスプリッターの頭部、帝都タワーの入り口へと至った。桜の花弁がわずかだが、ここまで吹いてきていた。下を見れば地上は遥か彼方。視線を巡らせば帝都の夜景が一望できるが、足場も不安定だし、そんなことをしている暇はない。
 入り口はシャッターが閉まっていたが、菘が左手で剥ぎ取り、全員が中へと雪崩れ込んでいく。
 さすがにエレベーターは止まっていた。階段を上らなければならなかったが、足場があるだけましだ。もっとも猟兵達は律儀に駆け上がる必要もなく、それぞれ得意な方法で内部を登り続けた。
 しかし、時折は足を止めなくてはならなかった。
 窓や壁をぶち抜いて、光線銃を持った触手が猟兵達に向けられたからだ。
「自分の頭ぶち抜いて平気なんッスか……?」
 紗良が驚嘆の声を漏らした。
「光線銃は可能な限りこちらで止める!」
 アトゥルは念糸を光線銃に巻きつけ、速やかにその機能を停止させる。
「ユーベルコードが来たら妾に任せよ! 邪神の力で打ち消してくれる!」
 菘はそう言ってさらに歩みを進めた。
「ワタシは……危なくなっても自分で切り抜けまスので!」
 ウルマリカもまた、液状のまま続いた。
 猟兵達は内部でも戦いながら上へ上へと進んだ。
 帝都タワーまでたどり着いた時点でゴールはもうすぐだ。
 やがて展望台まで登り、一行はついにお目当てのメダル刻印機を発見する。
「これが刻印機か! 使い方は……」
 菘がディスプレイを覗き込む。そこには数十年は昔のものと思わしきコンピューターグラフィックのメニュー画面が映し出されている。
「あっ、まずここでメダルを買うみたいでスよ!」
 ウルマリカがメダルの自販機を見つけた。
「よ~し……」
 近くに立っていた紗良が早速、硬貨を取り出して投入する。
 その時、轟音が轟いたかと思うと四方の壁が壊れ、猟兵達を光線銃を持った触手が取り囲んだ。

 外で戦っているテリブルは未だ健在だった。突然、ビームスプリッターが頭部の帝都タワーに触手を突っ込んだのを見て、これは何かあると思った。
 阻止しようと肉薄する。
 しかしビームスプリッターは他の触手を使ってテリブルの超巨大兵器を押し返す。
 流動黒剣を放ち触手の切断を試みるも、触手は思いの外頑丈で、切ることが出来ない。
「まともに戦うのは現実的ではないと、グリモア猟兵が言っていただけのことはある……」
 やはり決め手となるのは例の攻略法だろう。
 帝都タワー内部への干渉を止めさせるべく、テリブルは手段を尽くそうとした。

 中の猟兵達は、現れた触手に対応せねばならなかった。
「ここまで来て、邪魔はさせん!」
 アトゥルは真っ先にその一つに向かう。
「一つは妾が引き受けたぞ!」
 菘も別の触手に向かった。
「メダルの刻印、お任せしまスね……!」
 ウルマリカもまた一つへと向かう。
「残る一つに……って、えぇー?!」
 紗良は目を疑った。最後の触手は光線銃の代わりに、アリスに巻き付いていたのだから。
「ごきげんよう……❤️」
 アリスは触手にいい感じに巻き付かれていた。
 触手に対してヒュプノシスセカンドカラーを使ったのだろう。
「……残る一つに特攻小隊の残りをぶつけるッス!」
 紗良はアリスを見なかったことにして特高小隊の残りを触手にけしかけた(一応、直撃は避けて自爆させた)。そして自身はメダルの刻印機に向かった。
 そして説明を見ながら、慎重に自分の名前を入れて行く。
 こんな状況なのにわずかな間、観光気分に浸れたのだから不思議だった。
 ……そして刻印が完成。
 黄金色の、帝都タワーデザインのメダル。縁には今日の日付と紗良の名前が刻印されている。
 不思議と確かな重みを感じた。
「出来た……!」
「よし! 次は妾が」
「えっ一つでいいんじゃ」
「せっかくここまで来たのだ! 妾も作る!」
 大急ぎでメダル刻印機に向かう菘。
 もちろん触手と光線銃は無力化した後だ。

 突如として周囲の風景が変わった。
 気がつくと猟兵達は上空2000mの虚空にいた。……もちろん、足場はない。
 ビームスプリッターは影も形もなくなっていた。
「消滅って……こういう……?」
「ギリギリ間に合ったぞ! はーっはっはっは!」
「よく笑えまスね?!」
「お、落ちる……!?」
「あら……もう終わり?」

 テリブルは、突如としてビームスプリッターの猛攻が止み、それから消滅を確認した。
 テリブルの巨大兵器はそれまで立ち続け、ビームスプリッターの注意を引き続けたが、突如として空中に現れた猟兵達を救わなくてはと思うものの、突然すぎて間に合いそうもなかった。
 ロロも笑顔でそれを見つめていた。なお首から下はバラバラに千切れていた。
 実の所、彼女が送り続けた毒電波は、見えない所でビームスプリッターの精神を疲弊させ続けていた。目に見えない世界での出来事ではあったが。

 そして、まっすぐ地上へと落ちていく四人(ついでにアリス)……。

 ………………

 心配することはなかった。
 地上に激突するよりも前に、グリモア猟兵により全員が送還され、転落死は免れたのだった。
 
 かくして、|終幕《さいご》は大団円。
 拍手の合間に空を見れば、桜吹雪は未だ止まず──。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月08日


挿絵イラスト