●夏彩の海、青空散策
晴れ渡った空も、眼前に広がる海も、突き抜けるように青くて。
燦燦と輝く太陽の光に照らされた風景は、キラキラと煌めいている。
けれど、うだるような暑さではなく、からっとした空気は思ったよりも過ごしやすく。
熱を帯びた夏の風が吹き抜ければ、並んで歩くふたりの頬をふいに撫ぜて。
栗色と灰色の髪を仲良く一緒に攫えば、青く澄み渡った空へふわりと靡かせる。
そう――季節は夏真っ盛り、そして今は夏休みだから。
早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・f40842)とアンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)が足を運んだのは、シルバーレイン世界のハワイである。
今年の夏休みはふたりで、降り注ぐ太陽の下、開放的な海や空が美しく広がるこの地へと、バカンスにやって来たのだ。
そして周囲の風景に合わせて、ふたりの装いも、いつもとはちょっぴり違った印象。
「アロハシャツを着てみたけど、似合ってるかな?」
リカが纏うのは、お洒落な印象のアロハシャツ。
洒落た色柄を選んでみたのだけれど、アンジェリカにも似合っているかチェックしてもらいたくて、そう訊いてみつつも。
隣を歩く彼女の姿を見つめ、続けるリカ。
「アンジェのセラスク水着も……うん、似合っていると思うよ」
……ハワイだけあって開放的だね、なんて。
そうちょっぴり、密かにドキドキしながらも。
そんな彼の言葉に、アンジェリカも瞳を細めて返す。
「リカのアロハシャツも似合いますわね」
そして、これから食事を取る予定ではあるのだけれど、まだ少し時間的に早いから。
「波打ち際を歩いてみようか」
「波の音が心地良いですわね」
互いに夏の装いで歩いてみるのは、ハワイのビーチや公園。
波打ち際を歩けば、寄せてはかえす波にちゃぷりと足が浸されて。
ひやりとした足元の気持ち良い水の感触や、優しい波の音、潮の香りがする海風。
そんな夏の海を存分に満喫するように、海岸を暫し散歩していれば。
次に辿り着いたのは、海を臨む緑豊かな公園。
そして木陰で少し休憩しながらも大きく吸い込んでみるのは、ハワイの新鮮な|空気《マナ》。
それからリカは、ふと何かを見つけて、屈んで手を伸ばして。
「綺麗だし、甘い香りがするね」
「プルメリアですわね。見た目も香りもハワイらしい花ですわ」
手にしたのは、木の下に綺麗な状態でたくさん落ちているプルメリアの花。
そんなふたりに、通りかかった地元の人が教えてくれる。
プルメリアの花を耳に飾る時の、位置の意味を。
それを聞けば、アンジェリカもひとつ、綺麗な状態の花をそっと手に取って。
互いに飾り合いっこするのは、相手の左耳。
右に付ければ、恋人募集中のサインで。
左に付ければ、I'm taken.――結婚相手や恋人がいます、という意味だというから。
それから、波の音や鳥の声、夏の風を感じながら、海や公園を食事までの間、散歩していれば。
ふと見つけたのは、新鮮な果物が並ぶマーケット。
この後、食事の予定だから、とりあえずぐるりと見て回ってみるだけにしていたふたりだけれど。
「ちょっと喉が渇いたね。飲み物くらいなら食事にも影響ないかな」
「そうですわね、冷たい飲み物で休憩しましょうか」
のんびりではあるとはいえ、太陽の下を歩いていれば、喉も乾くから。
食事にも影響なさそうな、マーケットの新鮮な果物などが使われた、小さめサイズのスムージーを注文してひと休み。
「ん、アップルバナナとマンゴーの味が甘くて美味しい。アンジェのも美味しそうだね」
「わたくしのは、シトラスがさっぱりとした味わいですわ」
そして喉も潤って休憩もできたから、食事ができそうな店が並ぶ方へと向けてぼちぼち歩きながら。
道すがら、海の風景を眺めつつ、並ぶ店をふたりで覗いてみたりと、夏の散歩を存分にふたりで楽しむ。
●美味と海と、ふたりの時間
ハワイの海や街並みを沢山満喫した後、次はお待ちかねの楽しい食事の時間。
ちょうど散歩をした後だから、いい具合におなかもすいてきたから。
「流石はハワイのオーシャンビュー。絶景ですわね」
ふたりが選んで入店したのは、海が見える雰囲気の良い店。
そして海を見ながら、やはり折角だからいただきたいのは、ハワイならではの料理。
リカはメニューへと目を向けながらも、早速、何を頼むかを吟味してみて。
「僕はロコモコやマヒマヒ料理を中心に注文するつもりだよ」
まずは、ハワイ料理といえばの、白飯の上にハンバーグと目玉焼きを乗せてグレイビーソースをかけた、ロコモコ。
それに、ハワイの名物でもある魚のマヒマヒを使った料理。
マヒマヒ料理定番のフライも美味しそうであるし、マヒマヒのタコスも食べてみたいと思ったから。
折角だから、フライとタコスをどちらも頼んでみることにして。
「わたくしはハワイの海鮮丼、アヒポケに挑戦ですわ」
「アンジェはアヒポケだね。そっちも美味しそうかな」
アンジェリカが選んだのは、ハワイアンのローカルフードであるアヒポケ。
ハワイで言うアヒ、マグロの刺身を小さく切って、醤油ベースのタレや香味野菜、アボカドや紫玉ねぎ、ナッツなどで和えたものである。
そして、アンジェリカが注文したのは、もうひとつ。
「コーラもお願いしますわ」
結構沢山の量を頼んだリカが料理を完食できるようにと、コーラも追加で。
それから運ばれて並べられた、ロコモコに、マヒマヒのフライとタコスはボリュームもやはり満点ではあるけれど。
(「少し量が多いかもしれないけれど、ここは男らしく完食だね」)
リカはそう気合十分、いただきます!
アヒポケを口へと運ぶアンジェリカと一緒に、ハワイならではなグルメも存分に満喫するべく、はむりとハワイ料理を味わってみる。
ロコモコは、本場のものはハンバーグは小さめで、ハンバーグや野菜や目玉焼きと白飯を混ぜて食べるのがハワイ流。
マヒマヒのフライは、マヒマヒ自体はあっさりした白身魚で、ソースやケチャップや醤油、タルタルソースとの相性も抜群で味変もできるし。
マヒマヒのフィッシュタコスはスパイスが良い具合に効いていて野菜も沢山、おつまみ感覚でいただける逸品。
アンジェリカのアヒポケも、ハワイの人気グルメだけあって、あっさりした風味で食べやすくて。
且つ、ねっとりとろけるような口触りの濃厚なマグロの味わいは、白飯にもぴったり。
そんな美味しい食事と、眼前に広がる青い海が楽しめるのだから。
(「折角の料理だし慌てずにゆっくりと食べさせてもらうよ」)
リカはアンジェリカの頼んでくれたコーラも口に運びつつ、ゆっくりと食事の時間も堪能するつもり。
だって、並んだ料理は勿論のこと。
「ハワイのコーラも一味違うかな」
「絶景を見ながらいただく料理、より美味しく感じますわね」
……アンジェとこうしていられる時間を少しでも長く堪能したいしね、って。
アヒポケを口に運ぶ彼女を見つめれば、そう何よりも思うから。
美しい海とこの地ならではな美味を、ゆったり贅沢に、ふたりじめ。
●涼やかで甘やかな夏の時間
美味しい食事に舌鼓を打ちつつ、ふたりで海を眺め、美味しく楽しい満腹で満足なひとときを味わい尽くして。
時間をかけてゆっくりと食べたこともあって、きっちりときれいに完食もしたから。
楽しい食事を終えた後、ご馳走様と店を出れば。
「次はどこに行こうかな?」
リカはそう口にするけれど、これだけは分かっているから。
……ハワイはあまり詳しくないけれどアンジェとならどこでも楽しめそうだよ、って。
今までだって、ふたりで楽しい夏休みの時間を過ごしてきているから。
もっとたくさんの思い出を作りたいと、そうリカが考えていれば。
「食事の後は、リゾートホテルのプールで泳ぎ涼みましょう?」
そう言ってするりと腕を組んできたアンジェリカの提案に、頷いて返す。
「リゾートホテルのプールだね。広いだろうし気持ち良く泳げそうかな」
彼女と腕を組みながら、リゾートホテルまで歩く道も楽しむように、ゆっくりとした足取りで。
それから、リゾートホテルへと到着すれば、プールで泳ぐためにと。
リカが着替えるのは、今年の水着コンテストの時に新調した水着。
フリルやリボンがあしらわれた白と青の水着は、夏にぴったりな爽やかな色合いで。
「リカの水着も良いものですわね」
可愛さ全開のデザインを着こなしている彼に、アンジェリカがそう告げれば。
アンジェの水着姿も凄く良いかな……なんて。
(「ハワイの陽気もあって平常心で泳ぐのは大変かもしれないかな」)
彼女のセーラスク水着姿を見ればやっぱり、ドキドキしてしまうリカ。
いや……その水着姿だけでも、こんなにドキドキしてしまうのに。
プールで泳ぎながら楽しんでいれば、アンジェリカがふと手を伸ばしてきて、水中で軽めのボディタッチ。
リカも軽くタッチを交わして返しながら、節度は保ちつつ、仲良くふれあったりしていれば。
尚のこと、胸の鼓動が早くなって、心拍数があがる気がするけれど。
そんな火照る頬や身体に、ひやりとしたプールの水が心地良くて。
泳いだり、フロートに乗って浮かんでみたり、プールサイドで景色を眺めながらゆったりしたり……夏らしいひとときを、ふたりで過ごしていれば。
楽しいひと時に、思わず時間も忘れてしまいそう。
そして気が付けば、あれだけ青く広がっていた空にじわりと、夕焼け色が滲み始めてきたから。
「さ、そろそろ日も傾いてきましたし……部屋に戻りましょうか」
そう紡ぐアンジェリカに頷いて、彼女を見つめた――瞬間。
思わずリカは瞳を瞬かせてしまう。
ふわりと軽く彼女から与えられた、フレンチキスに。
そんな思わぬタイミングでキスをされれば、リカは改めて思うのだった。
……アンジェの積極さにはいつも驚かされるかな、なんて。
自分の手を引く彼女の姿に瞳を細め、改めてその手をきゅっと優しく握って返しながら。
そしてこのまま、ホテルの部屋へと戻っても、いいのだろうけれど。
「折角だし、夕焼けの海を見に行きたいかな」
「昼とはまた違った絶景が見られそうですわね」
一日のうちでも短い間しか見られない、夕焼け空と海を眺めるべく、少し歩いてみることにする。
真っ赤に染まったビーチは、青さがどこまでも広がっていた日中の海とは、また全く異なる彩りをしていて。夕日に煌めく海は、息を飲むような美しさ。
途中、売っていたトロピカルドリンクを買って、ベンチに並んで身を寄せて座って。
南国の夏の夕暮れをじっくりと、ふたりだけで暫く堪能する。
それから美しいサンセットを十分に楽しんでいれば、あっという間に暗くなって。
無数の星が輝く、真夏の夜を迎える。
けれど、ホテルの部屋へと戻った後の夜になっても、まだ気分は昂る一方だから。
リカは今度は、アンジェリカを自分の元へとそっと引き寄せてから。
真夏の夜を余すことなく楽しむべく、彼女の耳元で囁くようにこう告げる。
――まだまだ夏休みはこれからだしね、って。
成功
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