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帝都櫻大戰⑦〜花と修羅

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第一戦線

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●花と修羅
 千代田区にそびえ立つ城郭の端にも、世界最大の幻朧桜の花弁は舞い散っている。烈しい喧騒のなかで、男はひっそりと佇んでいた。
 彼は、それをうつくしいとは思わない。ましてや、この城郭に閉じ込められた帝のために働こうとも思わない。
 けれど男は、それができたから。文字を書くように、人を斬ることができたから。
 城郭の壁に亀裂を入れるたび、思うのは。

「――来い、強者よ」

●刃と信念
「帝都櫻大戰、お疲れ様です。新たな敵をほろぼすため、力を貸してください」
 鎹・たから(雪氣硝・f01148)がまっすぐに猟兵達を見つめ、すぐさま説明を始めた。

「千代田区に帝城という、世界最大の幻朧桜が咲き誇る城郭があります。そこには“不死の帝”が居り、幻朧桜に祈りを捧げ続けていると伝えられていましたが、実は幻朧帝イティハーサを封じ込めるための封印碑だったそうです。今は幻朧帝によって、内部から多数の影朧達が溢れてきています。強力な影朧が帝城に現れ、建物そのものを外側から破壊することで、幻朧帝を復活させようとしているようですね」
 ですが、と羅刹は続ける。
「どうやら、世界最大の幻朧桜から舞い落ちている花弁が、影朧を強化しているのです。これをなんらかの方法で一時的に減らすことが出来れば、影朧を弱体化できるはずです」
 影朧の詳細は、と猟兵が尋ねれば、たからはこくりと頷いた。
「大海原・玄五郎、という名の男性です。かつては剣術においてとても強い人でしたが、サクラミラージュが平和になったことで刀一本の時代が終わった結果、無名のまま亡くなったようですね」
 誰にも知られることはなかったものの、剣聖と呼ぶにふさわしい実力は、花弁による強化によって格段に上がっているのだろう。
「たからは彼のことがよくわかりません。ただ、剣の道に打ち込み続けた想いと実力は影朧となった今でも本物でしょう。どうか、くれぐれも気をつけてください」

 季節外れの雪を散らすグリモアは、やがて季節外れの桜へと変わる。
 愚道の剣聖に、最期の強者達を送り届けるように。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●注意事項
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「帝都櫻大戰」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 プレイングボーナス:幻朧桜の花弁に対処する。

 シナリオ公開時からプレイングを募集します。

 戦争シナリオのため、少人数の受付となります。
 再送のお手間をおかけすることもあります。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『『愚道の剣聖』大海原・玄五郎』

POW   :    神速(偽)
敵より【自身の行動速度が遅い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
SPD   :    斬鉄
【斬撃】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    愚道剣
技能名「【剣術】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。

イラスト:田口 マサチヨ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアストリッド・サンドバックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

国栖ヶ谷・鈴鹿
欲しいものは、強者だったのなら、今すぐに叶えるよ。

新世界ユウトピア、展開、桜の花は領域外へ吹き飛ばし、領域の中は活人術のみが有効化される世界に改変。

二丁の機関銃に、捕縛用のワイヤー、浄化弾を込め、片方は細い絡みつく糸、跳弾と死角からの射撃の変則射撃術、攻め込むのは立体的な縦横、前後から飛び交う弾丸の群れ。

ぼく自身はきこやんの結界術|神気《オーラ防御》で防ぎつつみ、近距離では、閃光で視界を塞ぎつつ、即席の音響弾で耳を封じて。

現代において銃が主戦場になり、いずれ戦車、航空機、それすらも不要となる時代がくる。
そうなった時に強いのは変われる強さ、剣をラケットに持ち替える程の決断が、強さになる。



 娘が生まれた時、それよりもずうっと昔から。この街ではいつでも桜吹雪が降りしきっている。国栖ヶ谷・鈴鹿はこの戦いで、そのうすべにを否定する。
「欲しいものは、強者だったのなら、今すぐに叶えるよ」
 ハイカラさんの後光は煌々と、彼女のためだけの新世界を創りあげる。それが一時的なものだとしても、鈴鹿の夢見た理想郷のかがやきは、桜の雨を吹き飛ばす。人を殺めるのではなく、活かすための|術《すべ》のみが適応される領域が生み出される。
「……ほう」
 男はわずかに眉を上げ、ちょうどいい、と呟く。
「花吹雪が鬱陶しいと思っていたところだ」
 たん、と一気に地を蹴り、抜刀。瞬時にこちらへと距離を縮めた男に対し、娘の耳に宿る稲荷狐の結界術が発動する。窓硝子が割られるように神気で練りあげられた壁は破壊されるも、鈴鹿の後光が輝きを増すことで視界を塞ぐ。
 二丁の機関銃にそれぞれに込められるのは絡みつく捕縛の糸、浄化の弾丸。地面を跳ね飛ぶ弾丸の雨を躱した男の足を、縦横無尽に舞う糸が引きずり落とす。
 娘の手にするふたつの銃を、男は忌々しげに睨む。そうだ、彼は置いていかれた。
「現代において銃が主戦場になり、いずれ戦車、航空機――それすらも不要となる時代が来る」
 パーラーメイドは知っている、そうなった時に本当に強いのは、変われる強さだと。
「剣をラケットに持ち替える程の決断が、キミにはなかったんでしょう」
 きよらかな弾丸雨が、彼に降り注ぐ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
かつての剣聖……。同じく刀を振るう者として興味はある
尤も、俺は誰も武器を取らずにいられるなら、その世界の方が良いと思うけど……ま、それぞれだな

舞い散る桜への対応策は――正直に言って、ない
刀で斬ってどうにかできる量じゃなし
仮にできたとしても、対処しながらの片手間では攻撃を凌げまい
なので、不利であっても真っ向勝負……なに、小細工なしの剣術勝負なら寧ろ望む所だ

利剣を構えて、弐の型【朧月:周】の構えで敵と相対(指定技能:見切り+受け流し、心眼、集中力、瞬間思考力、カウンター)
とにかく集中して敵の斬撃を防ぎ、受け流し、僅かな隙にカウンター
一手でも失敗すれば致命的――だが、なんとか勝機を見出そう



 かつて、剣聖の名を冠することだってありえた程の実力者。同じく刀を振るう者として、夜刀神・鏡介も興味はある。
 けれど青年は、誰も武器を取らずにいられるならば、そんな世界のほうが良いと思う。
「……ま、それぞれだな」
 男に祝詞をあげるように強化を与える桜吹雪。グリモア猟兵に提案された対応策を――鏡介は持っていない。刀ひと振りで斬り捨てられる量でもなければ、仮に対処したとして、片手間では敵の攻撃を凌げまい。
 静かに刀を構えた様子に、男が口を開く。
「何の術も使わないつもりか」
「なに、小細工なしの剣術勝負なら寧ろ望むところだ」
 お前もそうだろう、と鋼と金の色をした双眸が問い返せば、男は目を細めた。ひどく、満足そうに。
「さぁ、お相手つかまつろう」
「ならば――参る」
 男が駆けたのと、鏡介の持つ刃が淡紅色に輝いたのは同時。凄まじい剣戟の光が桜吹雪のなかでちらつく。
 弐の型、朧月、|周《あまね》。
 一生を懸けて鍛えあげられた剣筋を、若輩ながらも剣の道を歩む青年は確かに受け流した――が、最後の一閃が腕を赤く染める。
 けれど鏡介は迷うことなく、たった一度のチャンスでもって斬り返す。彼よりも大きな一撃をまともに喰らった男の肉体から、桜よりも圧倒的に濃い赤が飛び散った。
「はっ、その心意気や良し……!」
 傷が深いのは男のほうであったのに、鏡介へと告げる彼の言葉はやたらに高みの存在からあるようで。
「無名だからこそ、ってことか」
 その身を痛めながらも、すこしだけ笑んだのはどちらだったか。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィルバー・セラ
【アドリブ連携歓迎】
生まれた時代を間違えちまったって奴かね。
生まれることが間違いだったどっかのダンピール(※=自分)と違って可哀想なこった。
とはいえオブリビオンとして蘇ったのは運の尽き……
悪いが地獄に案内させてもらうぜ。

魔弾は使わず剣で相手してやる。
『無銘の刻印剣』を構え、攻撃は【武器受け】で基本流す。
ある程度相手の土俵に立ったと思わせるまでは魔術の類は使わない。
防戦に見せかけ相手が調子に乗ったタイミングで【指定UC】発動して【カウンター】、花弁ごと【焼却】だ。

――ああ。
剣で相手するとは言ったが「剣一本だけで相手する」とは一言も言ってないぜ?
愚直なのは悪くねえが、それが命取りになったな。



「生まれた時代を間違えちまったって奴かね」
 フィルバー・セラはなんてことのないように告げる。生まれることが間違いだった、どこかのよく知るダンピールと違って可哀想だと。
 彼のどこまでが本気でそう思っているかは、彼しか知らない。目の前に相対するのはオブリビオンとして蘇った存在。猟兵として、なすべきことを果たすのみ。
「悪いが、地獄に案内させてもらうぜ」
 無銘の剣を構えたフィルバーに、男は刀を構えてちいさく尋ねる。
「その懐にあるものはどうした?」
「こっちは使わねえ、せめててめぇに合わせてやるさ」
「要らぬ気遣いだがな」
 桜降る戦場を俊足が征く。いつの間にか抜刀された刃がフィルバーへと斬りかかれば、キィンと刃同士のぶつかる音と光が散る。男の攻撃を後押しするように、薄紅の花弁が更に舞う。
「ちっ」
 防戦一方のフィルバーへ、男は迷わず斬り込み続ける。やがて一瞬の隙を見つけたように、大きく刀が振るわれた。
「調子に乗るのが早すぎるぜ」
 刃と刃が再びぶつかる。散った火花は鋼が削れあったからではなくて、剣自身が焔を生んだからだった。ごうごうと燃え盛るそれは憎悪の火炎で、男を花弁の嵐ごと包み込む。
「――ああ、剣で相手するとは言ったが、“剣一本だけで相手する”とは一言も言ってないぜ?」
 獄炎にもまれる男に嗤って告げて、フィルバーは戦場をあかあかと燃やす。
「……それでいい、本気で殺しに来るのであればな」
 全身を焔で焼かれる男は言葉を吐く。ダンピールは、花弁の灰を吹いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
彼の姿と生き方は重なるところがあると感じています。
…私も一振りの刀で生きているようなものですから…。

リミッター解除の後に限界突破して準備を整えます。
一礼の後に『国綱』の柄に手を添えて構えますね。

…彼との闘いの前にまずは桜花をなんとかしませんと…。
幻朧桜自体に影響がないようにし【蓑火】の火を花弁に。
舞う花弁を焼くことで一時的に桜の力を軽減させてみます。
さて。
上手く言ったら次は目の前の剣客さんと勝負がしてみたいです。
もし叶うなら強化技能を止め最小限のもので戦いたいと考えます。
…いざ!
ダッシュで間合いを詰め早業で抜刀。見切りと野生の勘で対応。
ユーベルコードは使用せずに斬り合いたいと思っています。
上の腕前の方と戦うのは何度経験しても身になりますね。



 この世界で最もうつくしく咲き誇る幻朧桜は、いまだに男を花弁舞う戦場に立たせている。とん、と軽い足音を立てて、浅間・墨はその場に現れた。
 娘は彼の姿と生き方に、自分と重なるようなものを感じている。戦士の一族の血をひく彼女にとって、自分自身も一振りの刀で生きているようなものだったから。
 己に課していた枷を外し、無意識につくられた限界を突破するために心のざわめきを鎮める。一礼ののち、太刀の柄に手を添える墨を見た男は、静かに構えた。
 同じく刀に生きる者として、娘の真摯な感情を捉えたのかもしれない。なにを尋ねるでもなく、冴えた眼差しがこちらを視た。
「……燃え包め」
 途端、墨の行った目にも留まらぬ速さの抜刀は、火花を散らすほどの斬撃を生む。薄紅の花弁はあっという間に火焔に巻き込まれ、戦場は火の海と化す。
 それ以上の強化付与を行うこともなく、娘は地を蹴る。黒髪から覗く赤茶の眸がわずかに見えた。
「……いざ!」
 瞬時に間合いを詰めた娘の抜刀に、男も愛刀で対応する。その対応速度はすさまじく、けれど墨も諦めることはない。
 腕前が自分よりも圧倒的に上の存在と戦うことになっても、戦巫女は自身の剣技のみに懸ける。はらはらと燃え散る花弁の焔は、あかあかとふたりの剣客にスポットライトを当てるように輝いていた。
「よく鍛えているな」
 ちいさく呟くようにこちらの実力を見極めた男の言葉に、娘の唇は動かない。大切なのは、幾度も続く斬り合いのなかでたったの一撃でも与えること。
 きぃんと、何度も聞こえる刃同士のぶつかる音と光はおそろしいほどにうつくしい。殺し合いのなかでこそより一層いのちが輝くのは、男も墨も同じだったかもしれない。
 先行した猟兵達によるダメージが蓄積されていたのだろう。ほんのわずか、男の動きが鈍った。その隙を逃すことなく、粟田口国綱の乱れ刃が揺らめく。
 男の胴に、一閃が咲く。血飛沫はまっかに、焔よりも色づいて。返り血を浴びた墨もまた、ましろの頬をくれないに染める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

午堂・七緒
【七七】/他連携◎
…は?
岬、何故ここに
――その思考は癪ですが、否定はしません
まさかとは思いますが、あちらの桜の気配が濃い方に?
はあ…相変わらずそういう鼻は効くんですね
いいでしょう、同道願います

あの影朧が今回の目標ですね
――はい?頼み事とは珍しい
…呆れました。なんとも、岬らしいこと
まあ、いいでしょう
集まる味方の支援のついでです

方針:幻朧桜の花弁を吹き散らす

今回は閻魔庁の獄卒ではなく、桜の精として行動します
岬が歩んでいくのを横目に【結界術・受け流し】で〔花舞い〕を応用展開し【指定UC】を使用開始
所属宣告しないので、威力は相当減じますが、風の結界と霊力の流れを逸らす事で花弁を阻むことはできるでしょう


七織・岬
【七七】/他連携◎
こっちのはずだが…お?ありゃあ…
よう七緒!
何って猟兵稼業だ、お前もだろ?
今回の大戦は“お前が出張らない訳がない”もんなァ?
――ああ、桜がどうかは知らねェが、あっちに「居る」のは分かるぜ

ははあ、アレだな?
ふむ。七緒よぅ、物は相談だ
『お膳立て』してくんねェか?
このままもいいが、互いに納得できるように
――はっはあ!思ってねェよ、恩に着るぜ!

よぅ。一つ聞いていいか?
アンタ『勝てれば何でもいい』方か?
それとも『|自分《てめぇ》の剣がどこまで行けるか確かめたい』クチか?
いやなに、前者なら悪ぃ事したなと思ってよ
後者なら…遠慮はいらねぇ
――やろうぜ

方針:死合う

シチ神刀流が、七緒・岬――いざ
【指定UC】を発動
〔竹光〕に〔剣気〕を纏わせ、構える
油断の余地はない
【集中力・気配感知・見切り】相手の剣気が、触れれば斬ると解る
刹那寸毫の軌跡、読み違えれば終わり
一撃を受け流し、竹光が斬り飛ばされれば――
――そこだ
【フェイント・カウンター・居合】で〔千斬刀〕を鞘走らせる

剣客に言い訳は無用
アンタ、最高だ



 ふわり、はらりと桜が舞う。何処を歩いても桜吹雪が必ずついて回るサクラミラージュの城郭の端へと、七織・岬は歩みを進める。
「こっちのはずだが……お? ありゃあ……」
 見知った背中を見つけて、男は笑って声をかける。まるで旧友にでも会ったように。
「よう七緒!」
「……は?」
 ひどく気安い挨拶に、一瞬午堂・七緒は虚を突かれたような声を出してから、顔をしかめた。
「岬、何故ここに」
「何って猟兵稼業だ、お前もだろ? 今回の大戦は“お前が出張らない訳がない”もんなァ?」
 形式上は桜の精として認識される娘は、相変わらずの男の口ぶりに眉をひそめる。
「その思考は癪ですが、否定はしません。まさかとは思いますが、あちらの桜の気配が濃いほうに?」
 七緒の問いかけに、ああ、と岬は笑う。
「桜がどうかは知らねェが、あっちに“居る”のは分かるぜ」
 殺人鬼の言葉に、獄卒の娘はちいさくため息をつく。
「相変わらずそういう鼻は効くんですね。いいでしょう、同道願います」
 そうして、二人は道を進む。濃厚に感じる幻朧桜の気配と、ひときわ匂う死のにおいを追って。

 そこには男が一人、佇んでいる。ずいぶんとダメージを負った姿にも関わらず、なおも闘志と殺意を滾らせたまま。
「ははあ、アレだな?」
「あの影朧が今回の目標ですね」
 さて、と術式の支度を始めようとした七緒の隣、ふむ、と岬はひとり頷く。
「七緒よぅ、物は相談だ」
「――はい?」
 彼から頼み事をされるなんて、今日は桜と共に槍でも降るのだろうか。そんな風に訝しげな娘に、岬は言葉を続ける。
「ちょっとばかし、『お膳立て』してくんねェか? このままでもいいが、互いに納得できるように」
 じっとその眼差しは、無銘の剣聖へと向き続けている。その意図に、七緒は再びため息をついた。
「……呆れました。なんとも、岬らしいこと。まぁ、いいでしょう」
 きっとこれで、勝負が決まる。娘がここに来たのは、影朧を導く“桜の精”としてなのだから。
「――はっはぁ! 恩に着るぜ!」
 感謝の言葉が嘘か本当かがわかりにくい男は、ニィと口角をあげたまま、影朧の元へと歩いてゆく。
 それを横目に、七緒は桜の花弁を降り撒いたまま印を結ぶ。練りあげられた結界術は風を巻き起こし、霊力で編み込まれた花弁が器用に流れをつくりだす。幻朧桜の花吹雪は、風の流れによって戦場から弾き飛ばされていった。
 消え失せていく花嵐を見送った男に、岬は問う。
「よう、ひとつ聞いていいか?」
「――なんだ」
「アンタ、“勝てればなんでもいい”ほうか?それとも、“|自分《てめぇ》の剣がどこまで行けるか確かめたい”クチか?」
 ぴくり、わずかに影朧の眉が動く。それを見ながら、岬は笑ったまま。
「いやなに、前者なら悪ぃことしたなと思ってよ。後者なら……遠慮はいらねぇ」
 ――やろうぜ。
 そう続けた彼と影朧からは、よくよく似た死の気配がしたように七緒には思えた。
「シチ神刀流が、七緒・岬――いざ」
 独自の構えをとった時、おそろしく鋭利に仕上がった竹の刃に剣気が纏わり憑く。油断する余地は一切なく、すべての感覚を鋭敏にしていく。影朧から放たれる剣気が、触れれば斬ると確かにわかった。
 たった一度、読み違えてしまえば終わり。同時に駆けた男達のなかで先に刀を振り抜いたのは影朧だった。なんとか一撃を受け流したものの、竹刃が斬り飛ばされる。けれど、
「――そこだ」
 魔を斬り祓い続けた刀が鞘奔る。封印から抜け落ちたそれを握りこみ、岬は影朧を斬った。
「剣客に言い訳は無用――アンタ、最高だ」

 はらはらと、無数の傷にもまれた男の身体は桜に融けていく。
 自身の死をうつくしいものと感じることもなく、ただ、男は思う。

「――これで、十分だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月11日


挿絵イラスト