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帝都櫻大戰③〜頂にたどり着きし者に与える悪魔のメダル

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第一戦線 #帝都タワー #ビームスプリッター

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●超超巨大悪魔降臨
 見よ、かの世界最大級の電波塔、『帝都タワー』を。
 何よりも赤く目立つように鎮座するその塔が、地震とはまた違う揺れを見せる。
 おお、なんということだ。帝都タワーの下より出ずるは触手を多数持った1体の超・超巨大|悪魔《ダイモン》。

 そう、帝都タワーは人工物に非ず。
 エンシェント・レヰス『|悪魔《ダイモン》』の最高指導者、デビルキングワールドの6thKING。
 『通信』を司りし|悪魔《ダイモン》、『ビームスプリッター』、その頭部なり……!

●グリモアベースにて
「現在、サクラミラージュの帝都が凄まじい桜に覆われているのは知ってる?」
 水島・可奈(少女自由に夢幻を掴め・f01117)はそう語り始めた。
「これは端的に言えば桜の下に埋められたサクラミラージュの『帝』によるものだ」
 諸悪の根源とも言われているその存在。サクラミラージュの不死の帝。
「帝都を治めているはずの帝……諸悪の根源、『幻朧帝イティハーサ』。それが今、蘇ろうとしている」
 これを阻止するため、超弩級戦力たる猟兵の力が求められている、今のサクラミラージュはそんな時勢だと語る。

「イティハーサが蘇ると言われている理由なんだけど、『エンシェント・レヰス』っていう種族が関係しているらしい。そのうちの1体がこいつ、ビームスプリッター」
 彼はサクラミラージュ――|櫻花幻朧界《サクラミラージュ》が誕生した時からずっと帝都港区芝公園に存在し、『如何なる遠隔地へも遅延なく通信を繋ぐ』力によって帝都の世界統一を支えていた。そのうえで戦闘となれば高さ2000mの巨体を活かしながら光線銃を雨あられと放ってくる。もはや到底倒せる糸口が掴めない……と思われていた。
「ただ、ちょっと、胡乱というか半信半疑な予知が私達グリモア猟兵に降ってきてね……」

 曰く。
 彼の頭部である『帝都タワー』の最上階の展望台へたどり着き。
 なぜかそこにある記念メダル刻印機で『名前入り記念メダル』を作る。
 するとなぜか彼は消えるという。

「……マジで? ってみんな思うよね。大丈夫、私もだ」
 げんなりした顔をする可奈……しかしこれ以外に方法が見当たりにくいのも事実だ。
 勿論最上階まで行くのに激しい攻撃はついてくるだろう。道中油断できるはずなどない。
「真偽は気になるけど、どうにかメダルを作ってきてほしい。多分それで奴も消える……はず」

 ちなみに。
「実はこいつ、あの|黯党《あんぐらとう》の首魁、本田・英和が支配しようとしていたんだけどどうもあいつは別の悪魔に乗り換えたから支配権は現在空白状態みたいなんだ」
 これもまた穴になるかもしれない。或いは猟兵達がビームスプリッターを支配ないし配下にしようと持ち掛ける……そのようなことを考えても、もしかしたらいいのかもしれない。
「まあ、これはできるかもしれないっていう、オプションくらいに考えておくといいと思う。
 というわけで、みんなお願いね!」
 超巨大な姿に怯えちゃだめだよー、と可奈は最後に皆を鼓舞してグリモアを展開した。

●ビームスプリッターかく語り
『号外! 号外! 大号外!
 超・超巨大|悪魔《ダイモン》ビヰムスプリッタァ、遂ニ帝都ニ姿ヲ晒ス!
 |悪魔《ダイモン》ハ「デビルキングワァルド」ノ悪魔ニアラズ、「サイキックハァツ」ニ繋ガル者ニアラズ。
 ヨリ未分化デ原初ナル、古代種族「エンシェント・レヰス」ノ壱種族也!』
 芝公園でうねうねするビームスプリッターは『号外』を大声で発信していく。

『吾輩ラ|悪魔《ダイモン》、個々ノ意志思考嗜好ハアレド、原則トシテ召喚者ノ要請ヲ以テ力ヲ振ルフ。
 吾輩ニ至リテハ、召喚ニ応ジ「デビルキングワァルド」ニ赴キシ事モアル「モダンボーイ」!』
 どやぁ、とばかりに自分語りをしていくビームスプリッター。
『サレド吾輩ノ召喚予定者、|黯党《アングラトウ》ノ姿ガ見エズ。一族郎党死ニ絶ヘタカ!?』
 彼を支配しようとしていた本田・英和は異世界より骸の海へと消えた。一族郎党かはわからないが、黯党に彼を支配する余力がないのは確かだろう。
『故ニ吾輩、次ノ主ヲ求ムルモノ也!』

 ――号外! 号外! 大号外!


結衣謙太郎
 |ヤウコソ《ようこそ》、帝都電波塔へ。
 結衣(戦争モード)です。
 なんか観光地とかでよくあるよねこういうメダル。
 以下詳細。

●メイン目標
『ビームスプリッター』の頭部分の帝都タワーの最上階展望台にたどり着き、名前入りメダルを作成する。

●章構成
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「帝都櫻大戰」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 ロケーションは港区芝公園。しかし現在ビームスプリッターがそのほとんどを占めています。横にもでかすぎるのでビームスプリッター。
 高さ2000mの巨体、その最上階展望台へどうにか到達して刻印機でメダルを作る必要がありますが、ビームスプリッターは大きいうえに光線銃を自在に雨あられと放ってきたり己の体を活かした動きをしたりする他にも、|ICBM《インフォコネクトビームマキシマイザー》という強力な技も使うので、ただの観光地気分で登ろうとするとひどい目にあいます。そこだけは気をつけてください。
 メダル作成は最終的に誰か1人でも完成すればOKです。ただしメダル作成中も安全とは限りません。どうかお気を付けを。

 特別プレイングボーナス:敵の超・超巨大に対処する/光線銃に対処する/帝都タワー目指して駆け上がる。
 今回少しいつもより多いです。

●備考
 プレイングはオープニング公開後から受け付け開始します。
 ただし全採用できない可能性がいつもより大きい点、ご了承ください。
 オーバーロードは納期の都合により後回しになる可能性もあります。
 また、『戦線』があるので時期によっては完結優先で待てない場合がございます。

 このシナリオは(一応)有力敵決戦依頼です。
 判定がいつもより少し辛くなります。ご注意ください。

 さあ、誰が栄光のメダルを手にするのだろうか。
 以上、プレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ビームスプリッター』

POW   :    光線銃ヲ撃チマクル!
【無数の光線銃】から、着弾地点で爆発する【エンシェントビヰム(ギザギザの光線)】を連射する。爆発は敵にダメージを、地形には【ビリビリ罠化】効果を与える。
SPD   :    此処ハ結界、ビームノ檻
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【リフレクトビヰム(細くてよく曲がる光線)】で包囲攻撃する。
WIZ   :    ICBM(インフォコネクトビームマキシマイザー)
自身の【リングビヰム(輪っか型の光線)】が触れた対象に【通信傍受で得た莫大な情報】を注ぎ込み、身体部位をねじ切り爆破する。敵との距離が近い程威力増大。

イラスト:V-7

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヒカル・チャランコフ
【安地】で参加

「んじゃよ、初のトレジャーハントと参りましょうか?」

話は登ってからね?
エルンスト。オレは出来たら、取れたら、そういう控えめじゃねーから
|命令《オーダー》だ、全力で取りに行くぜ
譲りがちのアイツにこれがまずは一手

オレ?ガムゴム人の収集癖の真髄みせてやンよ!
高い塔?わっか潜りぃ?伸縮自在粘着自由の|体質《ガムゴムフォーム》なんだよ、こっちはよ
誰がまともに梯子なんか登るかっツーの!
とはいえ仲間は置いていかない、メダル作る時アイツに守ってもらうから
仲間の為にも曲芸で気ぃ引いて、言われりゃロープ張ってやって、急がば回れで登ってくわ


メダル作れたら
「今時、人踊らすなら号外よりミュージックだぜ、モダンボーイ!おめぇの電波のバイブスで、愉快にお届けぶち上げグルーヴ!
いーい自分語りだけどよぉ、エンシェント・レヰスノ壱種族なんていわねーで、唯一!ビームスプリッターなんだってもっと世界に叫びな!オレがそれを歌ってやる、ユニット組んでオレらで頂点目指そうぜ!」

ダチになろ?とりま!ギャハハ!


エルンスト・ノルテ
【安地】で参加

ヒカルの動機はともあれ、この無差別の塔を放っておけぬのは確か
リーダーの言葉に了解を返して

みなぎる力は、スピードへ変えたい
お宝を狙うというなら、いるのは、地力に加えて《幸運》か
危ないことは重々。それでも檻の《抜け道探し》、時にはヒカルにロープ張ってもらって、伝うか登るかぶらり高いほうへ飛ぶか、出来る時にはショートカットも狙う《勇気》も持ちたいね

無事に上まで辿り付けたなら、ヒカルのメダルの作り終わるまで、気を引かねばな
ご老体、無理召されるなと自称モダン『ボーイ』に声掛けようか
光線は吹き飛ばせるかね? できる限りをハルバードで試みるとするよ


ツォーナ・ロチェアーダ
こんにちはビームスプリッターさん!
残念ながら今日はお友達になりに来たわけでも遊びに来た訳でもありません。
ただガジェットを自慢しにきました!

出でよ、|翠玉瞳の虹光龍《エメラルドアイズ・プリズムドラゴン》!
光速飛行できるこの子の背中に乗って行けば頂上までは一瞬です!
おまけにこの身体はプリズム、光を屈折させるので光線だってへっちゃらですよ!
なんなら次元すら裂く程の翼撃で触手も切り落としちゃいます!

頂上に付いたら刻印している間は守ってもらたり触手を落としたりしてもらいましょう!
今のボクの力でも2分は留まってくれますしね!

え、時間が足りない時は?
その時はガジェッティアの技術で刻印機を改造しちぃます!


シズホ・トヒソズマ
※連携・アドリブ歓迎

見慣れてたタワーが実はアレの頭部とかまた凄い話ですね…
まあどうするにしてもまずは落ち着いて貰わないとですね!

デカブツにはデカブツです!
UCを発動
幼女総統『ギガンティック』の能力を幻影を実体化し
巨体をそのまま再現し使用
流石に反動もきついですがコレくらいは耐えますよ!

巨体幻影で幼女キーックも含めて組み付いて格闘戦
触手を力尽くで押さえ込み光線銃の動ける範囲を制限
怪獣映画みたいになってますね!

包囲光線攻撃は巨大砲シュリヒトゲヴェーアから放つ超超巨大ビームを放ったまま回転し全て光線銃ごと薙ぎ払います!

幻影頭上からバイクに変形したライダで飛び出し一気に頂上へ
メダル頂きましたよ!


ヴィヴ・クロックロック
いいかんじ!いいかんじのやつだして…こう。なんとかしよう!

ビームスプリッターの攻撃は光線、故に【おやつ生成装置】で美味なるおやつにして防ぐ。不必要な情報を脳に捻じ込まれるのはたまったものではないからな…。
そしてUCでいいかんじのヤツが出てくると信じていいかんじに使っていいかんじに対処だ!私の【第六感】と【野生の勘】が行けると吠えている!

実は契約書を持参しているんだ…私の配下になるつもりがあるならここにサインを、コインでもいいぞ!私と共に来てほしい、いや来い!!

(アドリブ連携歓迎です)


鬱塁・神荼
下手な山よりデカいんだけど……よくこんなのが埋まってたね?
アレの天辺まで登るのか……。


まぁ、取っ掛かりになる触手に事欠かないのは幸いかな。
「飛燕刃・尖爪」の短剣部分を投擲して触手に突き刺ったら、鎖の長さの設定を変えて身体を引き寄せる。これを繰り返して登って行こう。
UCで出す騎槍は威力度外視で数を出して、適宜足場にしたり引っ掛ける場所にしたりで。
短剣は一対だから、引き寄せ途中に攻撃されてももう片方を別の方向へ引っ掛けて軌道変えるのも出来るだろうし。


アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

|我が欲望は止まることを知らず❤《フリーダムケイオス》
私が欲望解放してる限り私が死ぬことはないわよ♪
爆発四散はするけど肉体は飾りだからのぉ、そのままビームスプリッターさんの|精神世界にリポップするわ♪《継戦能力、精神汚染、降霊、召喚術夢の中に入る》で化術肉体変異で男の娘化させつつ魂の契約で配下になってよとおねだりして”なかよし”になりましょ❤
精神世界経由で展望台に|転移《召喚術×応用力》してメダルをゲットだぜ♪


大町・詩乃
《神性解放》発動

ビームスプリッターさんに「主を求めるのであれば、神である私が手を挙げましょう。デビルキングワァルドは私も何度も行きました。きっと話も合うでしょう。」と立候補。

第六感・心眼で敵攻撃を予測し、武器巨大化した天耀鏡の盾受けで光線を反射して対応。
オーラ防御も纏います。
光線以外の攻撃は見切り・ダンス・軽業で舞うように回避。

UC効果の高速飛行と空中戦能力で素早く最上階展望台まで移動。
あちこちに残像を残す事で相手を混乱させます。

障害物は光の属性攻撃を宿した煌月による鎧無視攻撃・衝撃波とUC効果で破砕して進む。

最上階展望台に着けば天耀鏡と結界術・高速詠唱で護りつつ、『SIINO』と打刻します。


日野・尚人
ポーラ(f06947)と参戦

よーし!俺たちも帝都タワーの天辺目指して駆け上がるぜ、ポーラ!
ポーラをパーカーのフードに突っ込み全力<ダッシュ>。
<軽業>と<足場習熟>で動くビームスプリッターの体表も何のその♪
寧ろレーザーの雨霰を<見切り>、<アクセルコンボ>の急加速回避で|自爆を狙うぞ《<敵を盾にする>》♪

あ!ビームスプリッターって何処かで聞いた名前だって思ってたけど|腹からビーム《6thKING》!
へ?それモダン・・・なのか?
なら俺も彼方此方の世界を飛び回って冒険するのが趣味だからモダンボーイだな♪へへ♪
もし良けりゃお前も俺たちと一緒に来るか?
1人より2人、2人より3人、仲間が居ると楽しいぜ♪


ポーラリア・ベル
なおなお(f01298)と参戦
ふぇあー!ビームのすごい悪魔さんだわ!頂上までかっ飛ばすのよ!

おわたた(フードの中にしがみつき)
素早く駆け抜ける最中に万一ビームが飛んできても大丈夫な様
UC発動して鏡の様な氷の結晶を適時作って【見切り】で、飛んできたビームを鏡の氷で跳ね返したり光の粒子を粉砕していくね!
なんなら【天候操作】で追い風を作って加速したり、びりびり罠を【凍結攻撃】で凍らせたりして、
最上階で一緒に名前入り記念メダルを刻印してもらうの!おそろい♪

モダンなノリでKINGになるとかすごい悪魔さんだわ!
そのビーム、冬にピカピカ光るととっても綺麗なの!仲間になってくれたら嬉しいな……どうかしら……!



●ビームスプリッター攻略作戦
『号外! 号外! 大号外!』
 未だ号外を叫ぶビームスプリッター、その勢いは、五月蠅さは衰えることを知らない。
 そんな元気でかつ超・超巨大な相手の頭頂部へ登ろうという話、至極困難であることは言うまでもないだろう。
 それでも、いくら難題でも、不可能を可能にしてみせるのが猟兵というものだ。
 現にこの高度2000mを誇るビームスプリッターにだって挑む者が山ほど現れているのだから。

●登る者達
「んじゃよ、初のトレジャーハントと参りましょうか?」
「ま、出来れば良しの精神で行きまし」
「エルンスト」
 ガムゴムの体を捻りながらトレジャーハンター……ヒカル・チャランコフ(巡ル光リ・f41938)が注意する。
「オレは出来たら、取れたら、そういう控えめじゃねーから。|命令《オーダー》だ、全力で取りに行くぜ」
「はあ……承知しました」
 ため息をついたのは彼と共に来ていたエルンスト・ノルテ(遊子・f42026)。一応はヒカルの命令を承諾する。動機はともあれ、このビームスプリッターを放っておけないのは確かだ。息をひとつ吐くと、彼の体が銀の光で縁取られる。これは彼のユーベルコード、|Pleasure of OBEDIENT《シルバーライニング》。命令承諾で技能が上がる系のユーベルコードだ。
「ま、話は登ってからね?」
 それでも何か言いたげなエルンストにぴしゃりと言えばヒカルはもう今は聞かないよとばかりにガムゴムの体を伸ばす。ガムゴム人であるヒカルの体はユーベルコードの力もあり伸縮自在であり、だいたい143mくらいまでなら余裕で行ける。とはいえビームスプリッターの高さは約2000mだ、全然足りないので一気に最上階へ、とはいけない。だがそれでも途中に自分の体を絡ませて登りに行くことはできる。
『号外! 号外! 大号外! 猟兵、梯子ノヒトツモ使用セズ吾輩ヲ登ル!』
「はっ、誰がまともに梯子なんか登るかっツーの!」
 ヒカルがビームスプリッターの声に反応するように吠えた。
 一方エルンストはというと、彼はエンドブレイカーではあるがガムゴム人ではなく、流石にヒカルのように伸縮自在になることはできない。なので真っ当に登るしかない。しかし、下から見るからこそ危なっかしいヒカルを下から声掛けすることもできる。例えばビームスプリッターの放つ細くて曲がる光線を警戒して伝えることも、ビームスプリッターが放つビームでできた檻の抜け道を指示することもできていた。先行する者を遠くからサポートすることは踏破のためにも大事なことだ。
「苦労してそうだね」
 先行するヒカルを見ながら嘆息しつつ指示をするエルンストにかかる一つの声。鬱塁・神荼(|語り部《ストーリーテラー》・f41177)の声だ。
「にしてもこいつ、下手な山よりデカいんだけど……よくこんなのが埋まってたね? アレの天辺まで登るのか……」
「まあ、ヒカルみたいな体質でもこれは苦戦するでしょう。ましてや私達みたいな普通に登るしかない者にとっては」
「大変な事はこの上ない、な……まぁ、とっかかりになる触手に事欠かないのは幸いかな」
 伸縮自在の細鎖で繋がった一対の短剣、複雑な形状の刃はフックの代わりにもなる、と神荼が呟けばその通りの短剣が神荼の手の内に生まれる。神荼は本来無手であり、こうやって設定文やフレーバーテキストを呟くことで対象を具現化する電脳魔術を使い必要な武装を生み出している。これもその1つだ。
「では、俺はお先に」
 神荼が短剣を触手に投擲して突き刺せば鎖の長さを変えることで己の体を引き寄せていく。ある種のクライミングだ。鎖がやられれば一巻の終わりだが。エルンストは見るべきものがもう1つ増えたことに嘆息するしかなかった。苦労人である。
『激痛! 激痛! 大激痛! 吾輩ノ触手ハ「クラヰミング」ノタメノ岩壁ニ非ズ!』
 ビームスプリッターが痛みに悶えながらビームを放っていく。一応この触手たちビームスプリッターの体なので、突き刺されたりすれば普通に痛い。抵抗されたり悶えるのもそれはそうだ。
『反撃! 反撃! 大反撃! 激痛ヲ与ヱシ者ニ吾輩ノ超弩級必殺技ヲ放ツ也!』
 ビームスプリッターが今までとは違うリングビームを放つ、それを見てエルンストが警戒の声をあげた。
「お2人とも気をつけてください、強い攻撃が来ます!」
 しかし、2人はそんなのまるで予測済みかのように動く。
「はっ、わっか潜りぃ? 伸縮自在粘着自由の|体質《ガムゴムフォーム》なんだよ、こっちはよ」
 にゅるんと自在に体を伸縮させてリングビームをくぐるヒカル。
「――それは、盾であり矛。そして断つ刃」
 騎槍を数多く生み出して引き寄せ途中の短剣のもう片方――彼の短剣は一対である――をそれらの方向へ放ち騎槍の1つに引っかければそっちへ体を引き寄せてリングビームを大きく回避する神荼。
 気合でどうにか潜り抜けたエルンストは2人のやり方にどこか危なっかしさを覚え再び嘆息しながら登っていった。

 他方、こちらでも2名……2名? による登頂計画が。
「よーし! 俺たちも帝都タワーの天辺目指して駆け上がるぜ、ポーラ!」
「ふぇあー! ビームのすごい悪魔さんだわ! 頂上までかっ飛ばすのよ!」
 日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)と幼馴染のポーラリア・ベル(冬告精・f06947)の2名だ。とはいえ相手も強いだろうから、悠長にしている暇は恐らくない。なので尚人はコードを発動し深黒のオーラを纏い、守りを捨てて全力でダッシュすることにした。ちなみにポーラリアはというと尚人のパーカーのフードの中で必死にしがみついている。ポーラリアがフェアリーで23.9cmしかないからこそできることである。人間の服の中に妖精が潜んでいるのは創作とかでもままあることだ。
「ポーラ、準備はいいか?」
「勿論よ、なおなお!」
「よし……いくぜ!」
 うおおおおーっと波打つビームスプリッターの体表を一気に駆け上がっていく尚人。軽やかな技でビームスプリッターの体表という不安定な足場を諸共せずに駆け上がっていき、さらにポーラリアが追い風を吹かせることでより尚人を加速させていく。
『真正面カラノ攻略法、吾輩ハ感心也! サレド吾輩ハソレニ手ヲ緩メルコト非ズ!』
 ビームスプリッターは正攻法での攻略に感心しながらそれを邪魔するように光線銃を構え――放つ!
「ビームは任せてなおなお!」
 ポーラリアが尚人のパーカーの中からコードを発動すれば鏡のような氷の結晶が。それらは飛んできたビームを跳ね返して逆にビームスプリッターの体へと当てていく。適当に反射しても当たるっていうのはビームスプリッターが巨大な体だからこそできることだ。勿論対処しきれないビームもあるが、それについては尚人がうまく見切って急加速回避をする事で曲がり切れなかったビームをビームスプリッターの体へと当てていった。
『吾輩ノ光線銃ヲ前ニ恐レモセズ立チ向カイ、登ツテイクトハ、天晴也!』

●飛ぶ者達
 ビームスプリッターの頭頂部へと登る方法は何も普通に登ることが全てではない。
 例えばガムゴムの体を活かして一気に進むことができるのであれば、単純に空を飛んでいくこともできるのではないか?
 それを実践してみせるのが若草色のオーラを纏う大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)とプリズムで出来た巨大な竜型ガジェット『|翠玉瞳の虹光龍《エメラルドアイズ・プリズムドラゴン》』に乗ったツォーナ・ロチェアーダ(世界を渡る大海の剣・f01913)だ。
「こんにちはビームスプリッターさん!
 残念ながら今日はお友達になりに来たわけでも遊びに来た訳でもありません。
 ただガジェットを自慢しにきました!」
「マイペースですねツォーナさんは……」
 ツォーナに思わず苦笑する詩乃。
 そんな空から頭頂部を目指す2人にも容赦なくビームの嵐は襲い掛かる。
「天耀鏡よ、輝け!」
 ビームの嵐に対して残像を残しながらの軽やかな飛翔もしながら天耀鏡を展開しビームを反射していく詩乃はもう空中戦なんてお手の物といった感じであろう、実際ビームが彼女へと当たることはない。反射方向を決めていないため反射したビームの一部がツォーナへとも向かうのだが、ツォーナはツォーナで対策済み。
「ふっふっふ、この子の身体はプリズム、光を屈折させるので光線だってへっちゃらですよ! なんなら触手使ってきても翼撃で切り落としちゃいます!」
「ほんとそれはありがたいですね……私も|煌月《なぎなた》があるのである程度は大丈夫ですが……」
 詩乃があはは、と苦笑する。こういう時に使役系っていうのはありがたいものだ。しかも屈折となれば反射と違い他の味方に被害が及ぶこともないだろう。
「じゃ、お先にー!」
「あっ、待ってください!」
 極めつけに、このガジェットは光速飛行が可能だ。詩乃は今ユーベルコードを使ってるがそれでも15600km/hが最大だ。時速約10億8000万kmの光速と比べればその差は歴然。例え飛翔系のコードを使っても光速にはなかなか敵わないのが実情である。
「……」
 ツォーナの全速力により空に一人取り残された、それでも尚ビームスプリッターへと向かう詩乃。
 しかし空を進むのは、彼女達だけではなかった。触手のような障害物を煌月で斬りながら空を高速で進む詩乃の背後に、巨大な影が現れることを彼女はまだ知らない。

 時は少し巻き戻って。
「見慣れてたタワーが実はアレの頭部とかまた凄い話ですね……まあどうするにしてもまずは落ち着いて貰わないとですね!」
 シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)が腕を組んで2000mの高さを誇るビームスプリッターを見上げる。
「じゃあいいかんじ! いいかんじのやつだして……こう。なんとかしよう!」
「私のことをなんでもできる方と思ってません? まあ、半ば合ってはいるんですが」
 IQが下がったような感じでシズホに言葉を続けたヴィヴ・クロックロック(世界を救う音(仮)・f04080)にシズホもため息。まあできなくはないだろう、割とシズホは使う人形次第では多芸な方だから。
「ですが、今回は人形自体にはあまり頼りません!」
「おぉー?」
「デカブツにはデカブツです! 人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
 からくり人形から徐々に大きな幻影の姿が浮かんでいく。
「さあ乗ってください、すぐに大きくなりますよ!」
「お? おお」
 シズホが慌ててヴィヴを引き上げて幻影に乗せる。幻影に乗れるのかと思ったが、徐々に実体化、そして巨大化しているようでどうにか頭の上に乗ることができた。その幻影は、何を隠そう。
「どうです! 前回の経験から再現した『幼女総統「ギガンティック」』は!」
 幼女総統『ギガンティック』。前回の戦争で有力敵として出た存在だ。成程あれも確かに超・超巨大にあたるだろう。これなら巨体同士でやりあえる!
『号外! 号外! 大号外! 超・超巨大|悪魔《ダイモン》、吾輩ノ他ニモ存在セリ!』
「悪魔じゃありません。これは――魔女です!」
『魔女!? 疑問、疑問、大疑問! 吾輩ハ魔女ノ存在ヲ知ラズ!』
「ならばその身で味わって見なさいビームスプリッター! やっちゃいなさい、幼女キーック!」
 シズホが言うや否や幻影のギガンティックが跳び蹴りをビームスプリッターに繰り出す――手応えあり。ビームスプリッターが怯んだ隙にギガンティックが組み付けばどうにかそこから逃れようとビームスプリッターが触手を繰り出し、操縦者の猟兵を倒そうとビームを放っていく。
「私が言うのも難ですが怪獣映画みたいになってますね!」
「おー、凄い。だけどキツくない?」
「キツいですよ流石に! ですがコレくらいは!」
 シズホが汗を流す中、ギガンティックがギガンティックサイズのライフル――つまり超巨大ライフルであるシュリヒトゲヴェーアを構え、ビームを放つ。本来はこれで光線銃ごと薙ぎ払うはずだった――が。
「ん? 光が出ませんね。でも奴のビームも消えてる……」
 はてなマークを出しながらシズホがヴィヴの方を見ると。
「美味い……美味なおやつがこんなに……天国かここは……」
 ヴィヴの傍の謎の装置に両者の光が取り込まれており、そこからおやつが大量に生成されていた。
「なんですかそれ」
「ん? 光子変換式多目的携帯おやつ精製装置だけど?」
「光子変換式多目的携帯おやつ精製装置」
「うん、願望と光を取り込み食料を精製する画期的装置だ」
 頭を抱えるシズホ。つまりこれでシュリヒトゲヴェーアのビームも相手のビームも吸収したという事か。
「そんなメタれる物があるならもっと早くから……」
「いや、ここでならいい感じだと思ったんだ! 私の第六感が」
「はぁ……まぁ、いいです。そんな凄いものがあるなら、一気に行きましょう」
 シズホがため息をつきながら騎乗機械変形人形『ライダ』をバイクに変形させて乗る。
「それ稼働させたまま乗ってください、一気に頂上へ行きますよ!」
「お? おお」
 正直半信半疑のままヴィヴも装置と共に乗る。ヴィヴはここからすることには察しがついていたが、このままでは上手くいかないと思っていた。なぜならここから飛んでも――
「行きますよ、エンジン全開、頂上までひとっとび――」

 ――超巨大同士なだけあって、距離が足りなそうに見えたからだ! そして予感は的中、頭頂部の帝都タワー部分にたどり着けないまま2人の超巨大存在の間にバイクが落ちようとしている……!
「はは、失敗しましたかねこれは……」

 だが。
「……なんとか、なぁれ!」
 もしここでヴィヴの目が輝いた。そしてなぜかヴィヴの肌の一部から物凄い勢いのロケット噴射が放たれる。目にも炎が宿り、気が付けばヴィヴは落ちるバイクのハンドルを掴んでいた。
「おおおおおおっ!!」
 ロケット噴射が2人の体とバイクを持ち上げ、ビームスプリッターの頭頂部へと向かっていく!
 ――コード名『ROCKET DIVE!』。ロケット噴射によりレベル×100km/hで飛翔し、装備重量×スピードに比例した激突ダメージを与える。
 ヴィヴの元々発動したコードはランダムなコードを発動するコード……それがこのように発動し、本当に『なんとかしてみせ』ようとしているのだ!
「はっ、やるじゃないですかっ……!」
 状況を把握したシズホがヴィヴの手が離れないよう上から自分の手も被せる。
「ぶつかる勢いで行きましょう、私達は――」
「あぁ、今の私達はまさにロケットガールズだ!」
 そしてビームスプリッターの頭頂部へとバイクは向かっていく!

●頭頂部でメダルを作れ
 ビームスプリッターの頭頂部。
 帝都タワーとなっているそこにはいくつもの記念メダル刻印機がある。
 そしてここに一番最初に到着したのは。
「いぇーい一番乗り!」
 翠玉瞳の虹光龍に乗り光速で移動してきたツォーナだ。さすがに光速には誰もかなわなかったよ。
「さて、刻印刻印っと。この子、2分くらいしか留まれないからね、手早くやらないと」
 ガジェッティアだからこその手慣れた感じで刻印機を動かせばメダル作成が始まる。だが――そこに迫る触手と光線!
「やっぱり、この時間が隙になっちゃうよね!」
 翠玉瞳の虹光龍に素早く指令を出し、光線の屈折や触手の斬り落としをしていく。それでも、刻限――翠玉瞳の虹光龍が消えてしまうまでの時間は刻一刻と近づいている。
(まだなの……? まだできないの? もう間に合わないなら改造しちゃうよ?)
 ガジェッティア魂が疼き始めた、その時。
「ツォーナさん、お待たせしました……!」
 詩乃が遅れて空から到着した。そして状況を見るやすぐに天耀鏡を展開し――
「詩乃、メダルメダル」
「あっ、そうでしたね。えーと……これ、どう動かすんですか?」
「これをこうして……ここを押すの」
「ここを……SIINO……こうですかね?」
「そうそう」
『号外! 号外! 大号外! ウラ若キ巫女、記念メダル刻印機ノ操作方法ヲ知ラズ!』
「……若いって程でもないんですけどね」
 詩乃は神なので割と長生きな方ではある。そのため苦笑が出てしまった。
「おーっし、頂上到達ーっと!」
 次いで現れたのは伸縮自在の体で登ってきたヒカルだ、が。
(ちっ、調子乗ってたらちょっと距離が離れたな……)
 ちら、と下を見ればパートナーのエルンストと神荼が頑張って登っている。
「こっからメダル作る間アイツらに護ってもらわないといけないんだよな……安全とも限らねえし」
 ヒカルは軽く嘆息すると下の未だ登っている2人に呼びかける。
「おーい、オレはついたぞ! 今ロープを下ろすからそれ使えエルンスト!」
 言いながらロープを下ろすヒカル。この助け合いを見て仲間達も守るなら自分達もできるが……とはなかなか言い出しにくかった。
「よーし到着!」
「なの!」
 次についたのは尚人とポーラリアのペア。最後には階段を上がってきたようだ。もっとも途中までは触手だらけの体表を上がってきたのだろうが。
「せっかくだしメダルは一緒に刻印するの! おそろい♪」
「お、いいなそれ! ポーラはどんなのにするか?」
 記念メダル刻印機の前で仲睦まじい会話をする中、ロープをつたいエルンスト、そして手すりに手をかけてよじ登るように神荼が到着する。
「よしよしやっと来たなエルンスト。オレらもメダル作るから、守ってくれよ。お前の分のメダルも作っておくから」
「……了解だ」
 軽くそう返すとハルバードを構えてビームに向き合うエルンスト、と、その瞬間凄まじい衝撃が! そして投げ出されるように展望台へ2人の人影が! シズホとヴィヴだ!
「いたた……ぶつかる勢いで行きましょうと言ったとはいえ最後の最後で変な感じにぶつかっちゃいましたね……」
「何、結果たどり着ければすべて良しだ!」
「まあそれもそう、ですね……じゃあどうにかたどり着けたようですし、メダル作りますk」
『!?!?!?』
 と、シズホが記念メダル刻印機を稼働させた瞬間、ビームスプリッターが大きく揺れ、記念メダル刻印機が一斉にエラーを吐き出す。
「あれ!? エラー!?」
 ツォーナが慌てて記念メダル刻印機を見るが記念メダル刻印機自体に異常はないように見える。
「さっきのうめき声からすると……」
「何かアクシデントがあったようですね」
 一斉に視線がそれっぽい感じの事をしたシズホとヴィヴに向く。2人が慌てて否定する中、謎の空間が開く。
「いいえ違うわ。これはきっと私の力ね」
 謎の空間から出てきたアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)が得意げな顔をしながら話し始める。
「どういうことだ?」
「そうね……今のビームスプリッターがどんな見た目をしているか、それを見る方が早いわね」
「見た目?」
「なの?」
 尚人とポーラリアが共に首を傾げる中、アリスが詩乃の天耀鏡を指さす。
「ちょうどいいわ、あれでちょっと映してみてくれない?」
「え? いいですけど……」
 詩乃が天耀鏡を軽く動かし、ビームスプリッターが見えるように。
 ――鏡に映ったその姿は、触手と頭頂部の帝都タワーこそそのままなれど、その姿は……
 
『男の娘』だった。
 巨大な、帝都タワーを頭に生やし、触手を大量に持った、男の娘。
 
「……なんですかこれ」
「何したんだこれ」
 皆の視線がアリスを向く。アリスは得意げにウィンクした。
「なんてことないわよ? ビームスプリッターさんのビームで爆発してお飾りの肉体を捨てて精神世界にリポップ、化術と肉体変異で男の娘化させつつ魂の契約で『配下になってよ、”なかよし”になりましょ❤』とお願いしてからここに転移しただけよ?」
 アリスの凄まじい力に唖然とする皆。と、その時記念メダル刻印機が再び動き出した。
『吾輩ハ姿ガ変ワレドビヰムスプリッタァデアル事ニ変ワラズ、肉体変化ニハ驚ケド慣レレバ恐ルルモノニ非ズ、故ニコレヨリ記念メダル刻印機ノ稼働ヲ再開スル也!
 サレド安堵ニハ未ダ早シ、重ゝ注意セヨ!』
 ビームスプリッターの触手が、光線銃が、刻印機近くの皆の方を向く。
「ここがクライマックス、ってことかよ!」
 ヒカルがそう言うと前に乗り出してヘイトを引き付けようと目立つように曲芸を始める。
「危ないですよ!」
 それに応じるようにエルンストがハルバードを構えてヒカルに当たらないようにビームをハルバードの面で弾いていく。エルンストが守ってくれているのを見ながらヒカルがハッ、と一つ息をついて言い放った。
「今時、人踊らすなら号外よりミュージックだぜ、モダンボーイ! おめぇの電波のバイブスで、愉快にお届けぶち上げグルーヴ!
 いーい自分語りだけどよぉ、エンシェント・レヰスノ壱種族なんていわねーで、唯一! ビームスプリッターなんだってもっと世界に叫びな! オレがそれを歌ってやる、ユニット組んでオレらで頂点目指そうぜ!」
「あ! 私も……実は契約書を持参しているんだ……私の配下になるつもりがあるならここにサインを、コインでもいいぞ! 私と共に来てほしい、いや来い!!」
「主を求めるのであれば、神である私が手を挙げましょう。デビルキングワァルドは私も何度も行きました。きっと話も合うでしょう」
 ヒカルの煽りに次々と猟兵達がビームスプリッターを仲間に誘っていく、そんな中。
「デビルキングワールド……? あ!」
 その言葉に何か引っかかりがあったらしい尚人が手を叩く。
「ビームスプリッターって何処かで聞いた名前だって思ってたけど……|腹からビーム《6thKING》!
 というかそれモダン……なのか? なら俺も彼方此方の世界を飛び回って冒険するのが趣味だからモダンボーイだな♪ へへ♪」
「それにモダンなノリでKINGになるとかすごい悪魔さんだわ! そのビーム、冬にピカピカ光るととっても綺麗なの!」
『恐悦至極也!』
 上機嫌そうな様子に2人は揃って目を輝かせて訴えかける。
「もし良けりゃお前も俺たちと一緒に来るか? 1人より2人、2人より3人、仲間が居ると楽しいぜ♪」
「仲間になってくれたら嬉しいな……どうかしら……!」
 声がひとしきり上がったのを見てか、ヒカルがもう一度、声を上げる。
「ダチになろ? とりま! ギャハハ!」
 その声にビームスプリッターはとても嬉しそうだ。何せ主を募集したらこれだけの者から手が上がったのだから。
『吾輩ハ今至高ノ気分也! 感謝感激雨アラレ! サレド、吾輩ハ誇リ高キ古代種族「エンシェント・レヰス」ノ壱種族也! 吾輩ノ光線銃ニ耐エラレナキ者ニ吾輩ガ力ヲ振ルフ事ハ無シト思ヱ!』
 その言葉通りビームスプリッターは喜びつつもその攻撃の手を緩めることはなかった。なおも続くビームの嵐がエルンストのハルバードをボロボロにしていく。
「ちっ、まだできねえのかよ!」
 ヒカルが記念メダル刻印機の製造の進みの遅さに軽く舌打ちをする。このままじゃあ、エルンストと自分だけで守り切れるか怪しい。そう思った時、他の仲間達が次々に前に出てきた。
「助太刀します、天耀鏡よ!」
「鏡の氷で跳ね返しちゃうんだから!」
「おやつ生成装置で吸収しちゃうぞ! みんなも辛くなったら食べてくれ!」
「ギガンティックで一度押さえつけます!」
 皆の目の前でビームスプリッターと向き合っているギガンティックが男の娘となったビームスプリッターを押さえつけ、それでも尚続くビームを皆が反射したり吸収していく。
 ――そして、その後ろ、記念メダル刻印機の近くでは、ツォーナが動いていた。
(今自分にできることは……きっとこれだから)
 汗を流しながら記念メダル刻印機の傍を行ったり来たり。そして一つ、汗をぬぐい息を吐く。
「できた……!」
 ツォーナが声をあげた瞬間、ウィーンと鈍い音を立てて全員のメダルが完成した!
「改造……間に合った……!」
 その声と共に、ビームスプリッターの攻撃の手が止まった。
『号外! 号外! 大号外! 猟兵、吾輩ノ今ノ「モダンボーイ」ナ体ニ適合セシ「記念メダル刻印機」ヘト吾輩ノ其ヲ改造! 又、改造ノ終結マデ吾輩ノ光線銃ヲ食ヰ止メ続ケル猟兵ノ力、見事也!』
 ビームスプリッターは機嫌のよさそうな大声で猟兵達を讃える。
『賞賛、賞賛、大賞賛! 踏破、見事也! 「記念メダル」ハ忘レズニ持チ帰リ給ヘ!』

 皆が完成したメダルを見て様々な反応をする中、エルンストがメダルを片手に見下ろしながら一言。
「ご老体、無理召されるな」
 エルンストが軽く声をかけるそれは難しく考えないでという思いかそれとも。
『吾輩ハモダン「ボーイ」也、故ニ未ダ衰ヱル事無シ! サレド忠告ニハ感謝スル!』
 一応サクラミラージュができてからずっと頑張ってきただけあり、確かに衰えはあるのかもしれない。そう考えると彼の言葉にも一理あり、彼なりにその言葉に感謝を告げたのだった。

 ――喝采、喝采、大喝采!

 猟兵達を讃えるその言葉と共に徐々に消えていくビームスプリッター。そして訪れるのは――
「あ……」
「これ、どうするんだ!?」
「しまった考えてなかった……!」
 高度約2000mからの、フリーフォールだった。

 その後彼ら彼女らがどうなったのかは知る由はない。
 だが、刻印入りメダルという『記念品』は、彼ら彼女らに『思い出』を確かに刻み込んでいる。
 さあ猟兵達よ、その思い出を胸に、次の戦線へと向かおうではないか。
 この戦争は、まだまだ始まったばかりなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月07日


挿絵イラスト