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帝都櫻大戰①~その桜を守る、その為に

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 ――帝都桜學府本部を少し離れた駐屯地で。
「……やれやれ。此では貴奴等に合わせる顔が無いでありんすな」
 自らの持つ『琴』の弦を張り直しながら、その女はそう微苦笑を零す。
(「まあ……此もまた、予測通りと言われてしまえば……如何しようもないでありんすが」)
 油断していると、そうさらりと言ってしまいそうな存在のことを思い出し、彼女はクスクスと嫋やかに笑う。
 それにしても……と着物の裾から雅な仕草で取り出した扇を広げ、パタパタと自らに風を送る人形の様に整った美しい横顔を持った女が、それで……と隣にいた娘に問いかける。
「主は此処で諦めるでありんすか、水仙。あの方が形こそ違えど守りたいと願ったこの世界を」
 その何処か高貴で何処か艶然とした空気を漂わせながら問いかけてくるその女に。
 その隣で、顰め面をしながらもじっ、と『帝都桜學府本部』を睨み続けていた娘とその配下達が軽く頭を横に振った。
「……そこまで私も、白紅党も諦めの悪い者達の集まりだと思って?」
 その何処か挑戦する様な水仙と呼ばれた娘の問いかけに。
 カラコロと鈴の鳴る様な声で笑った女がそうでありんすな、と首肯した。
「道理でありんすな、水仙。わっしも此処で諦めてやれる程の根性無しではないつもりでありんすよ」
 その言の葉と共に。
 何処か『花魁』と言う言葉がしっくり来そうな女をみて、水仙ははぁ、と嘆息と同時に頭を抱えた。
「とは言え、見えない敵を斬るのは私達には難しいのよね……協力してくれる人が居てくれると良いのだけれども」
 そう嘗ては『白紅党』と呼ばれた組織を率いる帝都桜學府學徒兵の1人である『水仙』の言の葉に。
「全くでありんすな、水仙」
 そう女がカラコロと鈴の鳴る様な声で笑うのに、『水仙』と呼ばれた娘は再び嘆息を零すのだった。


 ――グリモアベースの片隅で。
「……成程。だとしたら陽動としては相当大きかった気もするけれど」
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が誰に共無く嘆息しながら、その双眸を開いている。
 漆黒から蒼穹へと輝きを変えたその瞳に気が付いたか。はたまた別の理由であろうか。
 気が付けば自らの周囲に集まっていた猟兵達の姿を見て、皆、と優希斗が言の葉を続けた。
「|櫻花幻朧界《サクラミラージュ》の今後の趨勢を決する帝都櫻大戰が開戦されたよ」
 その優希斗の言の葉に。
 それぞれの表情を浮かべる猟兵達を見ながら。その内の1つとして、と軽く頭を横に振って話を続けた。
「その大戦の戦略の一環として、青山にある帝都桜學府本部が透明軍神『ソウマコジロウ』と透明魂魄軍団によって制圧されてしまったんだ。あまりにも鮮やかな奇襲だったと正直俺は思っているよ」
 そう微苦笑と共に『敵』の動きに敬意を示す優希斗のそれに猟兵達が何とも言えない表情を浮かべるが。
「が……無論、帝都桜學府學徒兵達が、それに対して抵抗しない理由は全くないよね。実際、『ソウマコジロウ』の率いる透明魂魄軍団を倒し、帝都桜學府本部を取り戻そうという気概ある帝都桜學府學徒兵も数多いる訳だし」
 そう、何処か嬉しそうな表情を浮かべて告げる優希斗。
 けれどもその表情を直ぐに引き締めて、優希斗が皆には、と言の葉を紡いだ。
「その気概ある帝都桜學府學徒兵の『軍団』に協力して、『ソウマコジロウ』が率いてきた『透明魂魄軍団』の一群を撃破してきて欲しい。『ソウマコジロウ』本人を叩けば良いだけかも知れないけれど……そもそも『ソウマコジロウ』本人と戦うことに皆が注力できる様にするためにもその軍団を叩くのも当然重要だからね」
 その『ソウマコジロウ』率いる軍勢そのものを叩く事で『ソウマコジロウ』本人を叩く以上に、幻朧帝の戦略に鏨の一撃を与えるだけの可能性も十分にあるのだ。
 本来、戦術的勝利は戦略的勝利には意味を成さないことは多いが……。
「今回は、戦術的勝利を積み重ねることが、最終的に戦略的勝利に繋がる可能性が高いことは既に皆にも示されていることだからね」
 そう微笑を浮かべて告げる優希斗のそれに、猟兵達がそれぞれの表情を浮かべるのを見つめながら、改めて、と優希斗が続けた。
「皆には、『ソウマコジロウ』率いる『透明魂魄軍団』の一部と戦い、帝都桜學府本部を奪還しようとしているとある帝都桜學府勢力に協力して欲しい。此処には、2人の強い指揮官がいる。彼女達が対策しあぐねている、透明魂魄軍団の『透明な敵を捕捉する手段を講じる』を皆がその指揮官達に与えることが出来れば、尚更だ」
 因みに優希斗が予知した戦場には嘗て『白紅党』と呼ばれた帝都桜學府生達の一派が帝都桜學府本部を『人類』の為に取り戻すための大規模な戦闘を計画している様だ。
 その指揮官の名は……。
「皆の中には、会った事があるかも知れない人もいるだろう。嘗て、影朧に利用された『白紅党』の党首『水仙』と言う娘と、もう1人は『白蘭』と言うそれなりに帝都桜學府の内情に詳しい2人の『ユーベルコヲド』使いだ」
 その優希斗の言の葉に。
 それぞれの表情を浮かべる猟兵達に苦笑を零しながらいずれにせよ、と優希斗が続ける。
「まあ、嘗ては皆とも敵対したことがある人達でもあるから、違和感を覚える人もいるかも知れないけれどね。でも……彼女達は、彼女達なりにきちんと|櫻花幻朧界《サクラミラージュ》を愛している。だから、今回の戦において協力できるのは間違いない」
 ――だからこそ。
「皆には水仙と白蘭、そして彼女達の率いる『白紅党』……いや、『元』と言うべきか? そんな帝都桜學府の一派と協力して『ソウマコジロウ』の率いてきた『透明魂魄軍団』の一部を撃破してきて欲しい。……頼んだよ」
 その優希斗の言の葉と共に。
 ――グリモアベース内に蒼穹の風が吹き荒れて……猟兵達は姿を消した。


長野聖夜
 ――其も、『世界』を愛する者達故に。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言う訳で、帝都櫻大戰始まりましたね。
 このシナリオは下記タグの拙著シリーズと設定を多少リンクしております。
 ですが旧作未参加者でも、参加は歓迎致します。
 参考タグシリーズ:桜シリーズ
 尚、今回のプレイングボーナスは下記となります。
 プレイングボーナス:學徒兵達と協力して戦う/透明な敵を捕捉する手段を講じる。
 今回の敵は集団戦ですが、『透明化』と言う能力を持っているため、それにきちんとした対策を講じないと勝てない相手となります。
 尚、このシナリオには2名のNPCが登場します。
 どちらにより重きを置いて協力するかをプレイング冒頭に記載するアルファベットと共に入れて頂けると、恐らくより活躍の機会が増えると思われます。
 因みにどちらも超弩級戦力の事は良く存じておりますので、それについて説明する必要はありません。
 a.水仙
 嘗て『革命』の意志を抱いた『白紅党』と呼ばれる一派を率いた女性です。
『革命』を阻止された後は、帝都桜學府の學徒兵として活動しておりましたが、今回の件から世界を守る為に『白紅党』を再結成して決起致しました。
 尚、彼女には野心はありません。純粋に世界を救いたいと願っています。
 彼女に協力を要請した場合、下記UCで協力してくれます。
 UC名:桜花風斬波
 【刀】を巨大化し、自身から半径130m内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
 *水仙は敵味方の区別をします。其の為、『白紅党』の党員達や皆様に被害は及びません。

 b.白蘭
 『帝都桜學府諜報部』に現在は所属している、嘗ては『スパヰ』だった花魁です。彼女と協力する場合、彼女は下記UCのどちらかで皆様を援護してくれます(基本的には2で援護してくれます。1は透明化ボーナスを使わないと不可能です)
 1.白蘭の魅惑(【魅惑の視線】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能))
 2.白蘭の琴弾(【平和を願う白蘭の琴に惹かれて共に戦う仲間】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[平和を願う白蘭の琴に惹かれて共に戦う仲間]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化)

 プレイング受付期間はタグ及びマスターページにてお知らせ致します。

 ――それでは、良き戦いを。
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第1章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・大和組隊員』

POW   :    強化阿片摂取
【特殊強化阿片を摂取して身体能力】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
SPD   :    限界突破
【特殊強化阿片を過剰摂取する】事で【肉体のリミッターを解除した姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    殲滅斬
自身の【赤い瞳】が輝く間、【装備武器による攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。

イラスト:サツキナポ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウィリアム・バークリー
b

ご機嫌よう、白蘭さん。手こずっているみたいですね。少しお手伝いさせてください。

「天候操作」「範囲攻撃」雪の「属性攻撃」「凍結攻撃」でPermafrost。
凍りつき雪に覆われた地面に、足跡だけが記されます。それが影朧がそこにいるという証。どこにいるか分かれば、何とか対応出来ますよね。
「寒冷適応」の魔法を込めたタリスマンも多めに用意してきました。これで、氷雪の世界でも皆さんは問題なく行動出来ます。

ぼくも足跡を頼りに「見切り」、透明魂魄軍団と戦います。
凍結の「武器に魔法を纏う」ルーンソードで、影朧に刺突攻撃を加えます。
目に見えないだけなら、やりようは幾らでもあるんですよ。
このまま押し切りましょう。


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

真っ先に帝都桜學府を狙うとは
…影朧たちも分かっているな

俺の立場だと、水仙と白蘭、どっちに協力するのも気まずい
というわけで、切込隊長兼ねて先陣を切ろう
これで他猟兵が動きやすくなればそれで良いさ

透明化していても、音や気配までは完全に消せないはず
スピードに乗って移動するなら風圧も消し切れないだろう
指定UC発動後、耳を澄まし「第六感」を働かせ
敵の気配や音、風圧を感知し居場所を把握できないか試みる

居場所感知か指定UCの先読みに引っ掛かったら即座に方向転換
「武器に魔法を纏う」で炎を黒剣に纏わせ
「2回攻撃、範囲攻撃、怪力」で斬りつけつつ「属性攻撃(炎)」の「衝撃波」で吹き飛ばす!


馬県・義透
a.水仙
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎

ふむ、ここで貴殿らと会うとは。いや、会うのは当然であったか。
ふふ、なれば…共闘しよう。

四天霊障を広域展開し、敵の場所を確認後にUCを使用。
この炎が燃えている場所を薙ぐがよい。あれはな、オブリビオン…つまりは影朧しか燃やさぬのよ。
それに、わしも黒燭炎で突いていくからのう!


陰海月「ぷきゅ!」
霹靂「クエッ!」
あ、水仙さんだー!防御は任せて!雷の海色結界張ってるから!


夜刀神・鏡介
b.白蘭

状況を考えれば一度撤退したところで誰も責めないだろうけど
それでも戦う人達がいるというのは……やはり、嬉しいもんだな

敢えて刀を抜かずに、無手の状態で敵と相対。静かに集中しながら敵の攻撃を待ち受けて
気配その他で先んじて察知するか、或いは一撃を食らった瞬間に攻撃が来た方向に対して素早く手を伸ばし。无の型【旋渦】
見えざる敵の体勢を崩して体勢を崩しながら學徒兵達の方へと突き飛ばす
一連の流れで學徒兵達も敵の位置は大まかに把握できるだろうから、そこで止めを刺してもらおう

一撃であっても敵の攻撃を受ける訳で、それを繰り返すのは流石に結構しんどいのだが
白蘭の支援によって能力強化もあるし、上手く捌けるだろう


彩瑠・姫桜
【二桜】
b.白蘭さんと協力
必要応じ猟兵仲間と連携し、臨機応変対応意識

白蘭さんは、お久しぶりよね
お元気そうで何よりだわ
今回は一緒に戦えるのなら、こんな心強いことはないわ
微力ながらだけど、私とあおも協力させてもらうわね

透明化してても実体があれば敵の動きを止めることはできるかもしれない
闇雲に攻撃するより敵が攻撃するタイミングを[第六感]で察知して
同じタイミングでUC+[範囲攻撃]と掛け合わせて、敵全体の動きを止められるか試してみる
ダメなら仲間の対策に乗りながら敵を倒していくわね

防御(白蘭さん護衛含む)>攻撃の優先度で動く
防御:[かばう,武器受け]を掛け合わせ対応
攻撃:ドラゴンランスでの[串刺し]実施


榎木・葵桜
【二桜】
a.水仙さんと協力
必要応じ猟兵仲間との連携

わー、水仙さんだ!元気してた?
えへへ、今回は共闘なんだよね?嬉しいな!
一緒にこの世界守るためにがんばろーね!

透明化して相手の位置が分かりづらいけど、
見えないだけで攻撃は当たるんじゃないかって思うから
[衝撃波]と[なぎ払い]とを掛け合わせて[範囲攻撃]仕掛けてみるよ
うまく対象に当たるなら、範囲内の対象めがけてUC発動
少しでも数を減らす様にするね

あとは、防御(水仙さん護衛)>攻撃で対応するね
防御:[見切り,かばう,武器受け]
攻撃:[衝撃波]と[なぎ払い]とを掛け合わせて[範囲攻撃]

特に敵の殲滅斬で水仙さんに
ダメージ行かないように気をつける!


フェル・オオヤマ
b.白蘭
WIZ

・心境
雅人殿達とも合流するためにはここを奪還しなくちゃ!
貴女が竜胆さんが言ってた白蘭さんですね。私はフェル・オオヤマ
帝都桜學府本部を奪還する手伝いに来ました!


・戦闘
透明になる敵が相手か…あっ!敵の目が赤く光った!
位置が分かればこれで!
[銀の星]を構えて
最初に目を光らせた敵を対象に広範囲に巻き込むように[我竜・月歌氷唱<]を発動!
透明になろうが身体や足元を凍らせたら位置は捕捉出来る!
みんな!あの敵を狙って!

敵からの攻撃には回避や気合で耐えて指定UCを連続発動するのを優先します

【凍結攻撃/風を操る/魔力増強/2回攻撃/連携攻撃/激痛耐性/高速詠唱】


他キャラとの連携・アドリブ歓迎


紅島・絵梨華
【a】
帝都桜學府とサクラミラージュを守る為、わたしも参戦いたしましょう。
わたしは水仙さんに協力いたします。
敵が透明魂魄軍団……これも因果なのでしょうか。
わたし自身も『透明人間』の怪奇人間である以上、対策は心得ています。

わたしのユーベルコヲド《呻吟霧明》は敵に淡く光る毒霧を纏わせます。透明になったからと言えども肉体は存在しますから、区別は容易になるはずです。敵からわたし達の姿も隠してくれますよ。
水仙さんのユーベルコヲドで軍団を出来る限り削っていだだきます。
そこからは残敵掃討ですね。
“雀蜂”で急所を狙う[暗殺]と、[心眼]で動きを読みつつ”白鷹”で[浄化射撃]をし、敵を着実に減らしましょうか。


亞東・霧亥
aと。

本部上空に配置した宙界の瞳から俺の戦場に向けて音響弾を放つ。
宙界の瞳の探査機能とリンクし索敵開始。
大きさは犬笛程度の音響だが、透明であれ確実に反響し敵の姿は浮き彫りになるはず。

クリエイトフォースを起動。
形状を毛筆にして、敵の上部にあるくびれに向けて弾道計算後一斉発射。
くびれに着弾時、永遠に消えない朱色で無駄に達筆な首の字を残す。

マーキングは済んだ。
水仙の手が届く範囲は任せる。

【UC】双針乱舞
「今この瞬間、戦意喪失した者も居るかもしれない。だが、俺の敵意は君達に・・・その先に向いたままだ。故に全ての首級を落とすまで俺は止まらぬ。心せよ、ソウマコジロウ。」
抜刀する、君達は散る。


藤崎・美雪

【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

…まー、竜胆さんが中にいなかっただけましか
竜胆さんからは鎮魂の儀(と言う名のお茶対決?)で何となく奪還を頼まれた気がするので手を貸すが
…私、どうやって透明化に対抗しよう(汗)
単に視認できないだけでも大きなハンデになるからなぁ…

私自身が透明化への対策を練るより
皆の行動機会を増やす方が結果的に早く事が片付くだろう
ここは水仙さん通して學徒兵達に協力を申し出よう
私と面識あるかと言われると微妙だが…

「歌唱、勇気」+指定UCでトッカータを歌い上げ
皆の傷を癒しながら行動機会を増やそう
効果対象には水仙さんや白蘭さん、學徒兵も含めるぞ

殲滅斬が私に来たら…気合で回避するしかあるまい


森宮・陽太

【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

いや、俺…水仙も白蘭も顔合わすの気まずいんだが
そんなこと言ってる場合じゃねぇよな…はぁ(嘆息
ひとまず白蘭に協力すっか

透明化しても気配や体温、音までは消せねぇだろうが
乱戦になると敵味方の気配を識別するのに一苦労だな
…先にわかりやすくしとくか?

「範囲攻撃」+指定UCで、漆黒の雷を全方位に発射
サイキックエナジーを得たら、俺自身に向けられる殺気から敵の位置を把握し
背後に回り込み頭を鷲掴みにする
とにかく奴らの頭を掴めればいいから
最悪、相討ちになっても構わねえ

頭を掴んだら即座に洗脳し、同士討ちを命じる
透明化している者同士はお互いの居場所はわかるはず
これで炙りだしてやらあ!




 ――その戦場の目前に張られた天幕へと向かうその途中で。
「……まー、……竜胆さんが中に居なかっただけましか」
 今、正に戦端を開こうとしている指揮官『水仙』と、『白紅党』、加えて帝都桜學府諜報部に所属する皇族の配下の1人である『白蘭』の事を思い出しながら藤崎・美雪がポツリと呟く。
「うむ。そうでござるな。帝都桜學府の本部に皇族が居たままになっていたら、人質に取られて大変なことになっていたかも知れないでござる」
 その美雪の言葉に同感とばかりに首肯したのは、フェル・オオヤマ。
 どちらもほぼ同時期に浮島で行われていた『皇族』竜胆のお茶会の出席者で有り、本人から直接ある程度話は聞いている状態だ。
「ふむ、まあ、竜胆殿からの話は『我等』も聞いておったが……そう考えると彼女達と此処で出会うことになるのは偶然ではなく、当然であったのだろうな」
 そんなフェルと美雪の会話に相槌を打つ様に何処か威風堂々とされるそれを感じさせる雰囲気と共に大きく首肯したのは、馬県・義透――。
「って、また別の方でござるか、義透殿!?」
 と慣れてきている筈なのだがぎょっ、とした表情になったフェルの問いかけに、うむ、と義透――の人格術式を構成する四悪霊が1柱――『侵す者』馬舘・景雅が首肯する。
「わしと会うのも初めてであったな、オオヤマ殿。わしは、景雅。宜しく頼む」
 そう重々しく首肯する義透のそれにフェルが宜しく頼むでござる、と首肯する姿を黒い瞳で横目に見遣りながら。
 ふむ、と考え込む様な表情を浮かべて夜刀神・鏡介が思慮を巡らす様に、顎に手を当てている。
(「状況を考えれば一度撤退したところで、誰も責めないだろうけれども」)
 ――それでも。
「尚、共に戦える人達が居ると言うのは……やはり嬉しいものだな」
「そ、そうですね」
 その鏡介の呟きに。
 鏡介の耳にやや遠くから相槌を打つかの様な小さな声で、赤茶色の髪の娘が、自身の霊導の手袋をそっと撫でつつ呟いた。
 聞き馴染みの少ないその声を聞きながら、鏡介がその声がした方をチラリと見遣ると。
「ですけれど、わたしも彼女……水仙さんと同じく學徒兵ですが。そうであればこそ、帝都桜學府と|櫻花幻想界《サクラミラージュ》を守る為にこの戦いに参戦したいと、強く願って此処に来ています」
 そう声こそ小さいが、明瞭な意志を称えて訥々と語った紅島・絵梨華の姿があった。
 そんな絵梨華の言葉を聞いて。
「こうやって共に戦える同志がいると言うのは……やはり嬉しいものだな」
 その本質こそ違えど、同種族『怪奇人間』のよしみか、微笑を鏡介が浮かべた所で、水仙達がいるであろう天幕に辿り着いた時。
「ご機嫌よう、白蘭さん。どうやら手こずっている様ですね」
 その天幕の向こうから物見か、それとも出陣の直前だったか。
 琴を携えて姿を現した、人形の様に整った美しい美貌を持つ女の姿を目撃したウィリアム・バークリーが気さくに声を掛けている。
 そのウィリアムの言の葉に、カラコロと鈴の鳴る様な笑い声を上げて白蘭が目尻を和らげて。
「おや、主は確か、超弩級戦力のウィリアムであったでありんすか? おや、其方は……」
 そう白蘭がその娘に向けて声を掛けるのに。
「久しぶりね、白蘭さん。お元気そうで何よりだわ」
 そう軽く微笑を称えた彩瑠・姫桜の挨拶を聞いて、そうでありんすな、と白蘭が微笑んだ丁度、その時。
「白蘭、誰か来たの?」
 天幕の入口での一寸したやり取りに気が付いたか。
 天幕の奥からひょっこりと姿を現した……。
「あー、水仙さんだー! 久しぶりー!」
 水仙にそう快活な声と八重歯を見せた溌剌な笑顔で声を掛けたのは、榎木・葵桜。
 その葵桜からの挨拶を受けて水仙が少し驚いた様に目を丸くしながらも。
「……帝都を襲った大火災の際に、人々の避難救助に協力してくれた……?」
 そう問いかける水仙のそれに。
「そうだねー! 水仙さんとは本当にあの時以来だよねー! 元気してたー?!」
 そう葵桜が笑顔で言葉を紡ぐのに水仙が微かに困惑を表情に滲ませつつ、コクリと首肯する。
 そんな葵桜達の水仙達とのとても帝都桜學府本部奪還戦直前の緊迫した状況とは思えない、微笑ましささえ感じるやり取りを……。
「……」 
 森宮・陽太は頭を項垂れさせ、ボリボリと頭を掻きながら目を合わせぬ様にしながら見ている。
 その陽太のあまりにも気まずげにしている様子が気になったのであろうか。
「何か気になることでもあるのか、森宮」
 そう亞東・霧亥が淡々と問いかけてくるのに気が付いた陽太がガシガシと自分の頭を更に乱暴に掻き回した。
「いや……ちょっと水仙にせよ、白蘭にせよ俺は顔合わすの気まずいんだよ……あの頃の俺の状況からするとなぁ……」
 ――方や1人は、その後は協力したとは言え、『無面目の暗殺者』として暗殺しようとした相手で有り。
 ――方や1人は、まあ、本来であれば『零』として暗殺していた筈だが、自分が望んだが故に、『零』が暗殺しなかった相手。
 まあ、当時の事を思い起こせば、気まずいと感じない方が不自然な位に色々やんちゃした感があるのは確かである。
 ――ともあれ。
(「まあ、そうも言ってる場合じゃねぇよな……はぁ」)
 そう自分の胸中で結論づける陽太の嘆息に水仙達は、気が付いていないのだろう。
 改めて姫桜達猟兵が合流し、戦端を開こうと天幕から出陣した『水仙』と『白蘭』、そして40人程の『白紅党』隊員達の姿を確認し。
(「そう言えば……敬輔の奴、何処行った?」)
 一旦合流してからと言う判断を下していた自分達の中に、館野・敬輔がいない事を、微かに不審に思う陽太であった。


 一方、その頃。
「……真っ先に帝都桜學府を狙うとは。……影朧達も分かっているな」
 自分自身の立場的に、水仙にせよ、白蘭にせよ、どうにも協力するのも気まずい。
 そう判断した敬輔は1足早く、切込み隊長宜しく、戦線に向かっていた。
「……此処で先に俺が動いて他の皆が動きやすくなれば、それで良いからな」
 そう少し言い訳がましく自分に言い聞かせる様にしながら、黒剣を抜剣し、その刀身を赤黒く光輝かせる敬輔。
 その赤と青のヘテロクロミア……左の赤眼で10秒先の未来を視覚しようとした、その時だった。
「……っ!」
 何かをゴクリ、と一斉に飲み干す不吉な音が澄ましていた耳に伝わってきたのは。
 その何かを飲み干す不吉な音と共に、敬輔の首筋をチリチリと這い寄ってくる嫌な感触。
 心臓を鷲掴みにされた様な、とは違う、この気配。
 ――刹那。
「っ!」
 超高速で肉薄と同時に、鞘走る音が敬輔の鼓膜を叩く。
 同時に轟と言う威圧の音を聞き取り……。
(「……ちっ、マズい、来る!」)
 その次の敵の未来の動きを読んでいた筈の敬輔が素早く黒剣の平の部分を風圧の先に向けた時。
 ――キーン!
 と澄んだ音が戦場に鳴り響いた。
 次々に迫り来る斬撃の速さに思わず敬輔は舌打ちをする。
(「……特殊強化阿片を過剰摂取するのに数秒、それから超高速で動き出すのに数秒……既に攻撃される未来が視えていたにも関わらず、受け止めるだけでギリギリとは……!」)
 そう敬輔が内心で臍を噛み、続けざまの敵部隊の連撃に備えるべく体勢を立て直そうとした、その時。
「……敵が透明魂魄軍団……これも、何かの因果なのでしょうか……」
 そうポツリと『透明人間』の怪奇人間である絵梨華が、敬輔の耳には届かない位の声量で呟いた次の瞬間。
 先行した敬輔ごと、|戦場全体《・・・・》を覆い尽くす様に淡く光る毒霧が広がり始めた。
 戦場全体を覆い尽くす敵に纏わり付く仄かに発光する猛毒の霧は、マーキングとしての効果が大きいのは想像に難くない。
 それと、ほぼ同時に。
「はっ!」
 叫びと共に巨大化された大刀の一閃が斬撃の波と共に、戦場の一部を抉る。
 その斬撃の波が、敬輔に畳みかける様に攻撃を仕掛けていた淡く光る猛毒の霧に覆われた隊員達を鎧袖一触の如き勢いで薙ぎ払い、彼等に確かな一撃を与えたその瞬間だった。
「猛毒の霧で完全にとは言えないけれど、此で少しは見えやすくなったならば、行けるんだよね!」
 そんな、快活な叫びと共に。
 リンリン、と敬輔が聞き慣れた神楽鈴の音が周囲に響き渡ったのは。
 その音は、敬輔の後方で巨大な退魔刀を構えていた水仙を守る様に傍に居た葵桜の胡蝶楽刀に取り付けられた鈴の音。
 その神楽鈴を鳴らし続ける葵桜が、神楽を思わせる優美な足取りでくるりとその場で一回転。
 瞬間、神楽鈴の音色に合わせる様に葵桜の周囲の大気が震撼すると同時に衝撃の波が解き放たれている。
 その衝撃の波は、水仙にその腕や足を斬られ、その身を傾がせていた山と組隊員達を纏めて打ち据えたが。
(「まあ、この位で倒れてくれるとは思っていなかったけれどさ!」)
 堪える様子も無く反撃に転じるであろう気配を察した葵桜が内心でそう舌打ちしたその直後の事だ。
 ギロリ、と先程の水仙の刃の射程範囲外に超高速移動で逃れた隊員達の赤い瞳が輝いたのは。
 ――それでも、その瞬間を。
「あっ! 敵の目が赤く光った! ならば……これで!」
 霧亥の赤・黄・緑・青・紫・白・黒の7組で1セットの宙界の瞳と共に空中から見下ろしていたフェルが確認。
 同時に敬輔の吶喊や絵梨華の毒霧で視認し易くなった大和組隊員の軍隊に向けて、銀色の宝石の装飾が施されている長杖――『銀の星』を構え滑空を開始。
「氷よ、風よ、歌え、舞え!」
 高らかに詠唱を張り上げつつ、同時に構えた『銀の星』を下方でその瞳を赤く輝かせた隊員へと突き出している。
 ――そんなフェルの詠唱と、|我竜《ラーニングアーツ》の発動に合わせる様に。
「フェルさんがそう動くのであれば、ぼくは凍てついた雪に地面を覆わせてしまいましょう。此でその足跡が残れば、それは、そこに影朧がいるという『証』となりますので」
 そう告げて。
 抜剣したルーンソード『スプラッシュ』に搭載した影朧エンジンに唸りを上げさせながら『スプラッシュ』の先端に白と緑の綯い交ぜになった巨大な魔法陣をウィリアムが描き出し。
「――Permafrost!」
 叫びと共に術を起動、視界を奪う猛吹雪を戦場全体へと迸らせたその時には。
 上空でフェルが突き出した『銀の星』の先端が蒼白い光が迸ると同時に、地上から吹雪を伴う大竜巻を発生させていた。
 全てを飲みこまんばかりの勢いの猛吹雪と蒼白い光纏った吹雪を纏う大竜巻の同時発動は、赤くその瞳を輝かせた敵達の一部を纏めて飲み込み。
 同時に、敬輔から奪った筈のイニシアティブをあっさりと奪い返している。
 ――その勢いに乗じる様に。
「では、行くとするか」
 そう義透が言の葉を紡ぐや否や、不意に157体の紅輝の魔断狼が、水仙や葵桜の少し後ろについていたその周囲に現れていた。
 義透の前方では、空中からの跳躍による奇襲等に備えて陰海月が、葵桜と水仙の頭上に海色の結界を張り巡らし。
「クエッ!」
 と一鳴きした霹靂が、戦場全体を突如包み込んだ毒霧と猛吹雪に何とも言えない表情を浮かべている敬輔の元へと飛来し、その背に乗る様に促していた。
「……道を切り開ければ上等、と思っていた俺の覚悟は何だったのか……」
 等と思わず空を仰ぎたくなる敬輔が促される儘に霹靂の背に跨がり、黒剣を青眼に構え直して態勢を整え直す、その間に。
「全く、此だけの猛吹雪と猛毒の霧に包まれても尚、まるで戦意は衰えないのだな」
 抜刀する事無く、無手の状態で敵と相対する様に水仙の近くで『静』として佇む鏡介がそうそっと嘆息を漏らしている。
 鏡介がその黒い双眸を静かに閉ざしたその先に佇むのは、『動』たる『黒』
 それが絵梨華の猛毒の霧によるマーキングの1つだとは分かるが、それでも尚、鏡介がそこに佇んでいた……その時。
 ――不意に。
 怪鳥音と共に、斬撃――それは、フェルの大竜巻と水仙の刃を見切っていたのか、被害を最小限に抑えていた隊員達による九連撃を発動させようとしている。
 幾重にも連なる九連撃を受ければさしもの超弩級戦力と言えど、倒れぬ道理は無し。
 ――その筈だった……のだけれども。
「だが――俺達は、戦意だけで何とでもなる様な相手ではない」
 その言の葉と共に。
 気が付けば、鏡介は隊員の内の1人が解き放った斬撃の起点を白羽取り、その刃ごと自らに向かってきた男を捻り上げる様にして、敵部隊に向けて放り投げていた。
 その青年隊員が他の隊員達と体をぶつけ合い、互いの体勢を崩した瞬間を。
 ――ポロン。
 まるで見計らっていたかの様に、義透達の更に後方から不意に琴が爪弾かれる音が鳴り響いたその時だった。
 ――ドォォォォォーン!
 と銅鑼の様な音が一瞬、その琴の音を合図にしたかの様に戦場に鳴り響いたのは。
 そんな銅鑼の様な音に召喚されたかの様に……。
「うおおおおおおおっ!」
 と雄叫びを上げたのは、義透と共に水仙の後に続いていた『白紅党』の隊員達。
 全部で40名の内、20名で作り上げられたその部隊が、鏡介が崩した影朧の部隊に向けて陣形を整えて襲撃をかける。
 10名の『白紅党』隊員達が、軽機関銃や光線銃を用意して後方から一斉射撃を行い。
 残りの10名が、鏡介が崩した敵部隊の一角に刀を、槍を手に次々に襲いかかり、影朧達を瞬く間に殲滅すると言う戦術で。
 ――けれども。
 それで敵部隊の一角が崩れたとは言え、特殊強化阿片を過剰摂取した『兵隊』達の群れが止まることは無い。
 ――そんな不退転の影朧達の意志を、まるで証明するかの様に。
 絵梨華の猛毒の霧による淡い光と共に、ウィリアムが戦場全体に荒れ狂わせた猛吹雪と、フェルの呼び出した大竜巻に切り刻まれながらも吹雪の中に溶け込もうとしていく部隊がある位なのだから。
「……わたし自身も『透明人間』の怪奇人間である以上、対策は心得ておりましたが、今度は風景に溶け込んで透明化と同様の効果を得ようとするとは……」
 そう自らの呼び出した癒しの霧で自らや霧亥等、望む仲間を透明化させていた絵梨華が霊弓“白鷹”を術符から解放し、構えたその時だった。
「ならば吹雪に塗れることで透明化と同等の力を得ようとする貴様達の姿、完全に浮き彫りにさせて貰う!」
 その叫びと共に。
 絵梨華によって透明化していた彼女から半径146m以内の戦場を見てその戦況を把握した霧亥が実体を持たないクリエイトフォースの形状を毛筆に変えて……。
「宙界の瞳の探査機能と毒霧の気配で貴様達の軌道は全て把握させて貰った。行くぜ!」
 霧亥が毛筆型クリエイトフォースを隊員達のくびれに向けて一斉発射し、複数の敵のくびれに永遠に消えない朱色の『首』の字を描いたのは。
 その文字は……。
「……かなり達筆だな」
 後は任せた、と言う様に絵梨華の霧の中へと姿を消した霧亥が敵のくびれに書いた朱色の『首』の字を見て、鏡介が思わず嘆息を零しているその間にも。
「……行くが良い」
 義透が自らの周囲に召喚していた、157体の紅蓮の魔断狼を解き放ち、彼等を包み込む様に炎を放っている。
 ――影朧……オブリビオン|のみ《・・》を焼き払うその炎を。
 それは、自らも透明化の加護と白蘭の琴による強化を得た『白紅党』隊員達の死角から奇襲しようとしていた霧亥にマーキングされた敵部隊の一部を焼き払う。
 それでも、そのオブリビオンのみを焼き払う炎に焼かれ苦しみ悶えながらも、尚、反撃を行おうとする大和組隊員達に向けて。
「残敵掃討……と言うには、未だ未だ数も質も揃えられている様ですけれど……帝都桜學府……わたし|達《・》の学び舎を取り返し、|櫻花幻想界《サクラミラージュ》を守る為にも、あなたがたには倒れて貰います」
 か細いが、まるで祝詞を上げる様に告げた絵梨華が、構えていた“白鷹”からひょうと浄化の矢を射り。
 続けざまに千本|“雀蜂”《すずめばち》を一斉に解き放ち、義透の浄化の炎に苦しむ隊員達の急所を射貫き、或いは穿って止めを刺したのであった。


 ――ポロン、ポロポロ……。
 琴の音が戦場全体に鳴り響く。
 それは白蘭の鳴り響かせる『平和を願う』想いの込められし音色。
 帝都櫻大戦を乗り越え、再び平和に満ちたこの世界を救おうという願いの込められた白蘭の琴に共感しながら……。
「あー……あれで良かったのか……?」
 グリモア・ムジカをいつも通り譜面を展開させ。
 同時に、自らのシンフォニック・デバイスの音律を調整してなるべく戦場全体に自らの歌が広がる準備をしながら。
 鏡介によって崩された敵部隊に向けて、『白紅党』の隊員20名を吶喊させる指示を下した美雪が何とも言えない表情を浮かべて瞬きしている。
 その美雪の隣には、先程の天幕の中に用意されていた銅鑼があった。
 ――『白紅党』への突撃命令を後方から下す為の、その道具が。
(「私、正直水仙さんと面識があったかどうかと言われれば微妙だったからなぁ……。タイミングを見誤らないかどうかが一番の問題だった訳だが……」)
 そんな何とも言えない困惑を露わにしている美雪を見て。
 琴を爪弾かせながらカラコロと白蘭が笑い、軽く片目を瞑ってみせる。
「十分でありんすよ、美雪。あのタイミングは見事だったでありんす。……寧ろ、主はてっきりわっしの琴に合わせて歌うかと思っていたでありんすが、意外でありんしたな」
 そう柔和な笑みを浮かべる白蘭のそれに、まあ、と美雪が溜息を吐いている。
「それも考えたのだが、今、このタイミングで歌うと最大限の効果を発揮できないと言う気がしてな。元々、私の歌は癒しと追い風を巻き起こす歌である以上、タイミングを計るのは重要な訳だが」
 多少弁解じみているが、あながち的外れでも無い美雪の言い分にそうでありんすか、と微笑みながら白蘭が相槌を打った、その瞬間だった。
 何時の間に近づいてきていたのだろう。
 絵梨華の敵の身体に纏わり付き仄かに発光する猛毒の霧による攻撃を受けているにもかかわらず、此方に気付かれぬ儘にその赤い瞳を敵部隊が輝かせたのは。
「! 白蘭さんはやらせないわよ!」
 その凶刃と赤目の光が白蘭を狙っていたと姫桜が気付けたのは、偏に重点的に白蘭の護衛に気を払っていたからであろう。
 思わぬ奇襲と鋭い九の斬撃を姫桜は構えたschwarzとWeißの二槍をプロペラの様に回転させて辛うじて捌くが……反撃に転じる隙が無い。
 ――と……そこで。
「てめぇらっ! これ以上、好きにはやらせねぇぜ!」
 絵梨華の霧による透明化の援護で自らの姿を透明化させていた陽太が、濃紺と淡紅色の二槍を螺旋状に回転させながら突き出し、姫桜に群がる幾人かの影朧を纏めて屠る。
「……っ! 白蘭さん、姫桜さん、大丈夫っ!?」
 その後方の剣呑な状況に気が付いたフェルが『銀の星』を突きつけ大竜巻に敵を飲み込ませながら、|後方《・・》の姫桜達へと懸念の声を上げるのに。
「私達は大丈夫よ! 幾らでも串刺しにしてあげるんだから!」
 そう上空のフェルに向けて叫んだ姫桜の言葉に同意する様に、自らの体を猛吹雪下による永久凍土と化した戦場に適応させたウィリアムが走りながら、『スプラッシュ』を撥ね上げて。
 凍てついた刀身を以て肉薄してきた敵を斬り上げ、その場にどう、と伏せさせながら軽く頭を横に振っていた。
「成程……流石にソウマコジロウに集められた精鋭の影朧でしょうか。霧亥さんやフェルさんの射程範囲の間隙を潜り抜けて攻撃してくるとは……。更に言うと、ぼくの猛吹雪や絵里香さんの霧は、確かに戦場全体に効果的ですが、打開策を打ち立てることが出来れば、ある程度対策を取って此方に近づくことも出来る様になる……」
 それは、白蘭の琴に自らの能力を強化されたウィリアムによる、それぞれが使用しているユーベルコードの『特性』の解析の結果。
 その微妙な距離外から攻撃をしてくる程度には……。
(「特殊強化阿片浸けに自分達をして限界を突破していても、彼等に理性が残っていると言う事なのでしょうか……?」)
 そう内心でウィリアムが呟いた、その時。
 ――バチリ、バチリ。
 不意に近くで何かが帯電する音を聞き、ウィリアムが反射的に其方を見遣ると。
「そうやって、ギリギリのラインを潜り抜けて攻撃してくるって言うならば……その均衡を崩してやったらどうなるのかしら?」
 それは、姫桜の持つ第六感であろうか。
 気が付けば姫桜はバリバリ、と二槍を握った両掌に、高圧電流を走らせていた。
 その姫桜の気配を感じ取ったのであろうか。
 絵梨華によって淡く仄かに発光する猛毒の霧に包まれながらも、戦場の地形等を駆使して透明化と同等の力を得ていた、自らの瞳を赤く煌めかせた隊員達が姫桜に向かって肉薄してくる。
 全てはウィリアム達猟兵側に傾きつつある戦況の打破を、自らの劣勢を覆すその為に。
 ――だが、永久凍土に足を取られた隊員達の速度では、僅かに遅い。
 何故ならば……。
「慄け、咎人! 今宵は貴方達も串刺しよ!」
 久しぶりに母がいつも言っていた台詞をアレンジした姫桜が、斬撃の前に両掌に蓄積させた高圧電流を二槍に這わせて永久凍土の雪の大地に突き立て放電していたからだ。
 高圧電流は雷の如く大地を疾駆し、白蘭を暗殺するべく肉薄していた絵梨華の霧に覆われる事で感電しやすくなっていた敵部隊を纏めて痺れさせていく。
 その姫桜の解き放った高圧電流による感電による一時的な麻痺で、その動きを影朧達が止めた瞬間を狙って。
「まっ……こう言う時は姫桜に便乗するのが一番手っ取り早いな!」
 そう明らかにほっと胸を撫で下ろす様にした陽太が、濃紺のアリスランスの先端から漆黒の雷を発射。
 全方位に向けて発射された漆黒の雷が、鏡介の極まった体術によって体勢を崩して此方の後方に向けて投げ飛ばされた敵部隊を射貫き、その生命力とサイキックエナジーを奪い。
「よし、行くぜ!」
 その間に絵梨華の透明化で再び自らの身を透明化させた陽太が姫桜の放電により感電している彼等の背後を取り、二槍をしまってその頭を掴み。
「……同士討て」
 サイキックエナジーを頭部から流し込みながら、暗示の様にその耳元で囁きかけた時。
 白蘭を狙った部隊の赤く染まった目から光が消えた。
 次の瞬間には、白蘭を狙った大和組隊員の部隊は、互いに互いを斬り合い、殺し合いを行い始めている。
 ――それは、超弩級戦力の戦力を含めた白蘭と水仙、そして『白紅党』達の紙一重の優勢の天秤が大きく鏡介達側に傾いた瞬間だった。
 その自分達への優勢に傾いた天秤を更に自分達側に傾ける、その為に。
「美雪!」
 念のため、白蘭や姫桜の周囲の敵の気配とウィリアムが作り出した永久凍土の世界の足跡の数を確認し、これ以上増えないことを確認してフェル達に合流しようとした陽太の応えに答える様に。
「――♪ ――♪」
 美雪が好機とばかりに、トッカータを勇気と諦めない意志を貫く覚悟を籠められた歌をグリモア・ムジカの奏でる旋律に合わせて歌い始めた。
(「己が意志を最後まで貫き通す者に……オーロラの加護を」)
 そんな美雪の意志の籠められた極光に包まれしトッカータに導かれる様に。
 美雪の半径153m……仲間達全員を半径内に納めた七色のオーロラ風が、猟兵達の追い風となるべく吹き荒れたのだった。


 ――轟々!
 ウィリアムの呼び出した猛吹雪と、フェルの召喚した吹雪の激しさ故に、風音自体は激しくこそなっているが。
 それでも美雪が呼び起こした七色のオーロラ風は負傷を回復させて行く。
 それと共に、この七色のオーロラ風が与える『再行動』の加護に導かれる様に。
「体が軽くなった! ……今なら……行けっ! フリーズ・ストローム!」
 フェルが空中でトンボ返りを1つ打って、滑空時間を稼ぎながら、連続で詠唱を続けてその呪を発動させると。
 その詠唱によって生み出された大竜巻が、周囲に渦巻く猛吹雪と永久凍土の環境そのものを取り込み……先程召喚した吹雪を伴う大竜巻と混ざり合って、更なる強化を重ね。
 その凍てついた暴威とでも評すべき蒼白い光伴う大竜巻が半径151m以内に存在する水仙を斬り裂かんとした隊員達を纏めて飲み込み、ズタズタに斬り裂き。
「続くぞ!」
 フェルの詠唱によって生み出された大竜巻に飲み込まれ、身動きの取れなくなった仲間達を救うべく急行しようとした隊員達の動きを、自らの赤眼で予知した敬輔が雷の結界を全面に展開した霹靂に跨がった儘、隊員達の前に立ちはだかり。
「燃え尽きろ……!」
 叫びと共に、赤黒く光輝く刀身に纏わせた紅蓮の炎を横薙ぎに一閃、灼熱の波を解き放つ。
 解き放たれた熱波が七色のオーロラ風に煽られて勢いを増し、纏めて隊員達を焼き払いフェルの大竜巻に巻き込まれた者達の援護を遮ったところに。
 ――カッ!
 と敬輔と霹靂の側面に向かって跳躍して、淡く煌めきつつ、尚、うなじに達筆な赤い『首』の文字が刻み込まれた隊員が超高速で襲いかかろうとするが。
「どうやら、戦意喪失をした者は居ない様だな。安心したぞ」
 不意に|透明《・・》な霧の中から朗朗とした声が響き。
 気が付けば、敬輔に襲いかかろうとしていた隊員達の首が赤い稲妻を纏った剣閃に刎ね飛ばされ、宙を舞っていた。
 それは、知覚できない速度で肉薄した霧亥の放った理外の斬撃。
 何が起こったのか分からない、と言う驚愕の表情を貼り付けた儘飛んでいった首だけの仲間を見たからであろうか。
 続けとばかりに跳躍しようとしていた隊員達の一部が一瞬、怯んだ様に高速で動くのを止めるのを見て。
「今、この瞬間、戦意喪失した者もいるかも知れない」
 ――けれども。
 それ以上の言葉を続けるよりも早く霧亥が前傾姿勢の儘に、知覚できない速度で猛吹雪の中を疾駆しつつ【雷迅】を納刀。
「俺の敵意は君達に……その先に向いた儘だ」
 理外の速度を保ったまま深紅の雷を纏った【雷迅】を抜刀したその瞬間。
 一瞬動きを止めていた影朧達の首を、深紅の雷光としか形容の出来ない一閃が続けて纏めて刎ね飛ばしている。
 それでも……尚。
 七色のオーロラ風による支援を受けた霧亥が3撃目の理外の斬撃に移ろうとする刹那の隙を突く様に。
 他の隊員の瞳が赤く輝き霧亥に九の致命の斬撃を放とうとした、その瞬間だった。
「此処まで来れば、後は俺達がその背を押すだけだ」
 その言の葉と共に。
 白蘭の琴の爪弾きに籠められた想い……『この世界の平和』を望む心と共に在った鏡介が霧亥と隊員の間に割り込み。
 黒葉のロングコヲトを風に靡かせながら、その隊員の側頭部に覇気を流し込む様に叩き込んだのは。
 叩き込まれた鏡介の裏拳に隊員が吹き飛ばされたその先では。
「おおおおおおっ!」
 後詰めとして絵梨華の透明化の霧に注意深く隠されていた残りの20名の『白紅党』隊員達が現れて、一斉にその槍を突き出している。
 それは、美雪の七色のオーロラ風を合図に戦場での勝機を一気に掴み取る為のとっておきの戦力として巧妙に隠し続けてきた『白紅党』の残存戦力。
 最前線に出て巨大な刀を振るう水仙から予め預けられていた指揮権を駆使した美雪の采配によって作り出された戦いの勝機を確実に掴み取る為の最後の一欠片。
「私は別に集団戦術が得意な訳では無いのだが……」
 自らの歌で指向性を与えたグリモア・ムジカに、自らの歌声をオルゴールの様に奏でさせながら。
 確実に戦局を覆すべく投入された最後の『白紅党』残存戦力達が敵を駆逐する様を見て。
「それでも……必要な時に投入する戦力を見極められない程、乱戦に慣れていない訳ではないぞ?」
 そう何故か紫の瞳で何処か遙か遠くを見つめる様に美雪が告げるその間に。
「後は一気に押し切るだけです! 姫桜さん、万が一奇襲があった時はお願いします!」
 そう叫んだウィリアムが永久凍土の大地を蹴って肉薄し、鏡介や後詰めの『白紅党』そして、水仙が巨大な刀で撃ち漏らした相手を『スプラッシュ』で撫で切りにして凍てつかせていく。
 ――そうして、一気呵成に勝敗の天秤が、超弩級戦力側に傾くその中で。
『未だ……未だだ……!』
 そう呻いた戦場の最奥に居たこの部隊の指揮官であろう隊長と隊員達がその瞳を赤く煌めかせたその時。
「悪いけれど、水仙さんには傷1つ付けさせないんだからね! 一緒に行こう、陰海月ちゃん!」
 そう葵桜が叫びながらリンリンと神楽鈴を鳴らして胡蝶楽刀を振るう、神楽舞を舞う。
「ぷぎゅ!」
 そんな葵桜の言葉に気合いを入れ直す様に鳴いた陰海月が海色の結界を上空のみから葵桜と水仙の双方を覆う様に大きく展開。
 そこに怒濤の九連撃が迫ったその時……。
「見せてあげるよ、桜吹雪!」
 神楽舞を舞った葵桜の叫びに合わせる様に。
 その隊員達に纏わり付くのは桜吹雪。
 桜吹雪に覆われて、自らの殲滅斬を封じられ。
 それでも尚、その封印の戒めを解こうとした隊員達に……。
「わしを忘れて貰っては困るのう」
 その言の葉と、共に。
 水仙の巨大化した刀の横一閃によって生み出された斬撃の波に乗じる様にその手の成長する炎纏う槍を義透が一閃。
 槍の穂先から迸る様に放たれた成長する炎が桜吹雪に覆われ身動きの取れなくなっている隊員達を纏めて焼き払い。
 続けて義透が繰り出した刺突によってどう、とその場に崩れ落ちた隊員を起点に、義透の周囲に追加の157体の紅輝の魔断狼の炎が現れ咆哮する様に冷えた大地を震撼させる。
 その炎が影朧……オブリビオン達に肉薄し、葵桜と水仙を狙った残存戦力たる大和組隊員であった影朧達を纏めて浄化するかの如く焼き払い。
「あと少し、ですね」
 それでも尚、僅かに生き残った影朧達に向けて、絵梨華が、千本“雀蜂”を投擲して確実に仕留め。
 続けて『白鷹』から術符に収納された矢を数本纏めて解き放った。
 解き放たれた“浄化”の矢に射貫かれた隊員達が白光に包み込まれ消滅する様を見て。
「くそっ……!」
 憤怒の叫びと共に。
 隊長格であった、最後の大和組隊員が超高速でせめて一矢報いんとその赤い瞳を輝かせようとした、その瞬間。
「……だが、俺は止まらぬ」
 それよりも、尚早く。
 知覚できない速度で放たれた【雷迅】の深紅の一閃が、何時の間にかその隊長格のくびれに描かれた朱色の『首』の一文字毎、文字通りその首を掻き切った。
 刎ねられた首が宙を舞い、それが義透のオブリビオンのみを焼く炎で焼き払われる様を見つめながら。
「全ての首級を落とすまではな。故に――心せよ」
 ――ソウマコジロウよ。
 その決意と言の葉と共に。
 霧亥が【雷迅】を納刀する音が鳴り響いたその時には。
 ソウマコジロウ配下の隊長格の首級が義透の浄化の炎によって跡形も無く焼失し――そして。
「私達の勝ちよ!」
 水仙の上げた鬨の声に呼応する様に『白紅党』党員達の勝利の雄叫びが、戦場全体を震わせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月08日


挿絵イラスト