KiraKira✨OSHIKATUSummer🎤!!
性差を感じさせず“好き”に振舞う姿は、いつだって勇気をくれる。
どこまでもカッコいくてカワイイ“あなた”に、私たちはいつだって釘付けなの。
「——で!!! 聞け皆の者――! や~~~~っと藍ちゃんくんサマライ平日アリーナお席ご用意いただけましたやったね!!!」
『え、やば、リユちゃん半分座らせて』
『うわ~~~最の高でムカつきますわリユさんおめでとう感想聞かせろ終わったら』
『やばい。え、リユがアリーナ?! あれじゃん今年の運死んだね』
「とーーーーーっぜん! みんなで共有しよ! あ、席半分残念ながらご用意できませんでしたあとあたしの運はまだ死んでねぇ! カウコン行く予定なんでぇ!!!」
『『『ムリユ乙』』』
「ムリユってゆーなぁーーーー!!」
ヴィランもヒーローも関係ない、ただ紫・藍——いや推し藍ドルたる“藍ちゃんくん”のサマーライブ!!!
ちなみに、藍を表現する場合は“アイドル”ではなく“藍ドル”という表記が正しい表記であり、ファンの間では常識である。
チケは運と言っても、藍のライブチケが連続で当たることは早々無い。管理会社がいつのチケットが当たったかを把握し、等しく当たるようにしているらしい。
「そーゆーとこが、藍ドルファンやっててハッピーとこだよねぇ……マジ推し」
下手な管理会社では当たりに偏りが出て辛い時もあるが、概ね3回以上逃すとアリーナが当たる! なんて伝説がファンの間ではまことしやかに有名だった。
「去年のおたおめライもバレライも逃してひなライも雨ライも逃したし……! こんだけ逃せば当たるだろーって思ったけどっ、アリーナ!!」
ライブのお席用意されなさ過ぎ案件のおかげで、ユーリリアがSNSで繋がるファン仲間につけられたあだ名が“ムリユ”。自身のSNSネーム リユと無理をかけて――ムリユ。
チケットが当たらない悲しさと辛さのあまりついヴィラン活動に熱が入り過ぎたし、“無理”という言葉に過剰反応しそうになるわ、ある少女ヒーローが何故か憎たらしくて割と本気で殴り合いになりかけるわで最悪な日々を過ごしていたのだ。
「……なんだっけ、なーんであの子が憎たらしかったんだっけ」
今となっては思い出せないほど些末ではあったが、まぁあっちも職業柄だしアタシも殴られたしいっか! とまたチケット当選告知メールを眺めていた少女——ユーリリアは、やはりニヤニヤしてしまう。
ヒーローとヴィランの争いは本気で危険な事件もあるものの、所属する事務所では活動はアトラクション・イベント系重視! という活動方針があった。それを逸脱しすぎだ先輩に叱られ、半ば無理やり取らされた反省兼強制休暇最終日の今日——チケットの結果発表日。
“厳正なる~”という当選特有の文面でユーリリアは飛んだ。
縦に。まっすぐ。
そしてベッドへ倒れこみ、起動したソコンを叩いて同胞に喜びを叫んだのだ。
「は~……どーしよ、ううう藍ちゃんくんめっちゃ近いよね? アタシ一人でライブいけるかな? うう~~……誰か当たってる人いないかなぁ~~!」
当たった通知の喜びのままにSNSで繋がりのある藍ちゃんくんファンクラブのメンバーと語り合い、チケットが当たった喜びを分かち合いどうにか収めたものの、今度ユーリリアの心を襲ったのは二週間後のライブのまで自分がヴィランらしく振舞えるのか……。それが心配で、今度はスマートフォンに指を滑らせ見つけたのは一つの通知。
「んー……ん? あ、マリリンちゃんオンじゃん!」
SNSのファン会メンバーであり、話のテンポが合ったことから行き統合し別のSNSまで交換した友達へ挨拶のスタンプを送れば、同じく挨拶スタンプの後にポンポンと押されたのは何やら喜び飛び跳ねるキャラクターのスタンプ。
『リユさんあっち見ました! チケ当選おめでとうございます! 実は今度のライブ、わたしもアリーナがあたったんですよーーー!』
「うっそマジ。やばい同志めっちゃ近くにいたわ……おめでとー! あ、そだ。“いっしょにいかない?”っと」
おめでとう! とクラッカーを弾けさせる猫キャラスタンプをユーリリアはぺたぺた。次に急いでフリック操作で思いをつづれば、わーい!と喜び飛び跳ねるキャラのスタンプが。
『ほんとですか! 久々のライブで不安だったんですー!』
「マジか。“あたしもー!”」
ワイワイ、キャアキャア。スタンプと簡単な言葉の応酬は、チケット当選の喜びからアリーナのお互いの席公開、そして奇跡のように隣同士であったことに更なる盛り上がりを見せてしまう。
しかも、ユーリリアがライブのチケットが当たらなくなった時期からマリリンも当たらなくなったと共通点も多く、顔も本名も知らない間柄ながらただ純粋に“藍ちゃんくんのファン”という繋がりだけでユーリリアとマリリンは意気投合し、数十年来の友人のように語り明かした。
「わかる!! あの雨ライの防水ウォッチほんと再販してほしい!!」
『ですです! あれ転売ヤーは全部藍ちゃんくんが退治してくださったそうですよ……!』
「あ~~~~!! 知ってる! 新興系のアホでしょ! 他所でもやってて、藍ちゃんくんが気づいてやってくれたんだよねーーー!」
『ですですです! ほんっとにああいうのが減るほど嬉しいことはないけどっ! けどっ!』
『「おかげで人気がまた爆上がり~~……!! でもそんなとこも推せる!!」』
ド、と笑いあえるのも共通の好きなものあればこそ。
今度のライブでアクスタを買おう! やら、タオルはマスト! サマライのペンラはヒマワリと太陽が二種類もあるーー! などなど、尽きぬ話は延々、雀がちゅんと鳴いてスマートフォンのアラームが鳴り響いて初めて二人は飛び跳ねた。
「『あ゛』」
「っやばいやばいやばい今日休暇明けなんだわ!!」
『わ、私も今日は朝一招集がーー!!』
「じゃあまたね!」
『こちらこそ、また!』
そうしてあわただしい日々が過ぎてゆく。
夏のパトロールに精を出すヒーローたちや、悪戯まがいから本気の悪事と多岐に渡るヴィランの行為も花火大会で悪戯花火やプールサイドの流れるプールの逆回し。などなどエトセトラ。
「この花火大会はワタシたち“ロザリアマスカレード”がいただくわ! さぁ、始めましょう! ワタシたちの炎の花祭りを!」
ドォン! と空で爆ぜる花火がヴィラン ロザリアマスカレードのユーベルコードで青いバラや青い向日葵など、青い花ばかりに変えられてしまう。
「(う゛……どうしよ、藍ちゃんくんサマライ楽しみ過ぎて全部メインカラーの青にしちゃう~~!!)」
「お待ちなさーい!!」
ロザリアマスカレードことユーリリアがUCに自身の趣向が反映され過ぎることに頭を悩ませた時、颯爽と現れた白マント。
「あ」
「ロザリアマスカレード、その花火はすっごくステ……おっほんゲッホン! 皆が楽しみにしていたキャンディ花火! 返してもらいます!」
「また来たわね、マリンホワイト!」
お決まりのセリフをぶつけ合って、互いのユーベルコードをダンスのようにぶつけ合う。
マリンホワイトことマリリンの触れたものをシャボン玉に変えるUCと指を鳴らし火花の花を咲かせるロザリアマスカレードことユーリリアはいつだって派手で人気なのだ。
「(——あの子、今素敵って言わなかった?)」
「(うぅ……危ないです、藍ちゃんくんブルーをサマライ前に見ちゃうとかっ)」
|仮面《メイク》の下は、お互い友人なんて露知らず。
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ライブ当日、|仮面《メイク》がないのに互いがヴィランとヒーローと分かった瞬間、ユーリリアとマリリンが呆然としたのは本当の話。
けれど。
「みんなーーー! 楽しんでまっすかーー!!」
藍の声がヒマワリのバルーンや入道雲、太陽、青空のネオンで彩られたライブ会場に響き渡った瞬間——!
「「楽しんでまーーーーーーっす!!」」
――会場にはヴィランもヒーローもない。二人はただ、藍ドルのファンだった。
並んでゲットしあったヒマワリと太陽のペンラを輝かせ、会場限定チケット代わりのヒマワリカラーのLEDブレスレットがお揃いで二人の腕に輝いている。
「今年のスーパーサマライは~~~……、 みんなの心に夏花火! さぁ!!」
喝采と歓声、そして藍の合図で弾けた花火とシャボン玉雨が、七色のきらめきを纏い降り注ぐ!
「……あの時、派手な花火が邪魔ですって失礼なことを言ってしまってすみませんでした」
「いいわよ。何の役にも立たないシャボン玉って、アタシもあの時言ったし。ごめんなさい」
喧噪の中でもいやにハッキリと聞こえたお互いのごめんなさいがどこか気恥ずかしくていれば、ステージ上で手を掲げた藍が今日のバンドメンバーとハイタッチ!
そんな姿に感化されるように、ユーリリアとマリリンはハイタッチ!
さぁさぁペンラの点灯OK! ネックタオルは首に! SNSで散々相談しあったうちわは左手!
「藍ちゃんくーん!!」
「ウインクしてーーー!」
声の限り叫んじゃえ!
どこまでも、貴方にも貴女にも誰彼問わず全ての人へ歌声を届けたい藍だからこそ、きっときっと見つけてくれる!
翼のようなリボンの蝶結びはしっかりと! 翻したフリル裾には自信と誇りを!
全力でKAWAII!! を込めたばっちりステージメイクで瞬くウインクは何度でも!
「さぁ、みんなも歌ってくっださいねーー!」
ワァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!
「キャアアアアアアアアアアア!!」
「藍ちゃんくーーん!! ありがとーーー!!」
あぁ今日もなんて素敵な日!!!!
°˖✧ 𝕎𝕖𝕝𝕔𝕠𝕞𝕖 𝕥𝕠 𝕥𝕙𝕖—— ✧˖°
°˖✧ 𝕊𝕦𝕡𝕖𝕣 ☀ 𝕊𝕦𝕞𝕞𝕖𝕣 𝕃𝕚𝕧𝕖!!! ✧˖°
成功
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