帝都櫻大戰①〜だが、そこにいる
かつて、帝都を制圧した『ソウマコジロウ』という存在があった。
歴史に語られることのない彼の目的こそ、封印された幻朧帝の完全なる滅亡――!
「されど今、その封印は破られようとしている。我も間もなく彼奴の傀儡と化すであろう……心ある者達よ、命ある者達よ、いまこそ『帝都櫻大戦』が始まるのだ……!」
「ついにサクラミラージュでの戦争が始まった。幻朧帝によって望まぬ蘇生を果たした透明軍神『ソウマコジロウ』は、青山に存在する『帝都桜學府本部』を制圧してサクラミラージュの大地破壊儀式を遂行しようとしている」
サクは、桜學府本部の場所を示した。
「既にソウマコジロウの能力によって透明化した『見えない影朧』の群れ――すなわち『透明魂魄軍団』に埋め尽くされているようだ。このままでは儀式の場にされてしまうだろう。これを奪還するため、立ち上がった學徒兵と共に戦ってもらいたい」
「急げ、持ち場に着くんだ!!」
「中に入れるな! 門の外に押しとどめろ!」
『帝都桜學府本部』にサイレンが鳴り響いた。
終結した影朧は現在、本部を埋め尽くすほど。にも関わらず、何も見えない――それが何よりも學徒兵士を追い詰める。
「見えない敵を相手に、どうやって?」
不可視と化した影朧は口々に笑った。
まるでスイカとカボチャを足して二で割ったような見た目をしている。彼らは透明化しているのをいいことに、最高に暴れ回るつもりなのだ。
「げひゃひゃ! 俺達を止められる者は誰もいなーいのだ!」
「やれ! 本部を制圧して儀式を始めるんだ!」
「ひゃはーい!!」
ツヅキ
プレイングが送れる間は人数に関わらず受付中です。
共同プレイングをかけられる場合は、冒頭にお相手の呼び名とIDもしくは団体名をお願いします。
こちらのシナリオのプレイングボーナスは『學徒兵達と協力して戦う/透明な敵を捕捉する手段を講じる』となっています。
透明化した影朧を學徒兵と共に食い止め、帝都桜學府本部を守り抜きましょう。
第1章 集団戦
『果実的野菜『すいかぼちゃ』』
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POW : 闇討ち攻撃
技能名「【先制攻撃/2回攻撃/マヒ攻撃/闇に紛れる】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : ゴールデンすいかぼちゃ
【ゴールデンすいかぼちゃ】に変身し、武器「【三叉槍】」の威力増強と、【蝙蝠の翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ : 癒し蜘蛛
【癒し蜘蛛】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
イラスト:kamiya jun
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フィーナ・シェフィールド
帝が悪なるものだったなんて…
帝のために戦ったことは無いですけど、市民の皆さんにとってはショックでしょうね…
平穏に暮らす民の明日のため、わたしはこの戦争を戦い抜きます!
シュッツエンゲルにオーラを纏わせて攻撃を受け流す防御結界を形成。左右にツウィリングス・モーントを配置。インストルメントを構えて演奏開始です!
見えなくても音は届きます。それなら、この聖なる旋律も!
「魔を祓い、傷つきし者を癒す。響け、聖なる旋律!」
【交響詩『天秤の女神』】を発動。影朧と敵の放った蜘蛛には破魔の旋律により存在そのものにダメージを、味方には癒しを与えます。
「皆さんの怪我はわたしが癒します!誰一人、命を落とさせはしません!」
なんてことだろう。
シュッツエンゲルにオーラを纏わせ、フィーナは結界によって眠りを与える蜘蛛から身を護るための布石を整える。
――帝が悪なるものであった。
あまりにも衝撃的に過ぎる事実は、帝のために戦ったことのないフィーナですらも驚きを隠せない。そうと知ればこの世界の市民にとって脅威となるのはまず間違いなかった。
できれば知らせたくないとも思う。
彼らには平穏に暮らしてほしいから。けれど、それが叶わないのであれば、フィーナは戦い抜くつもりだ。
「いきます」
ツウィリングス・モーント、配置完了。
インストルメントに指を乗せ、演奏開始。
「な、なにい!?」
容赦なく襲いかかる破魔の旋律にやられたすいかぼちゃは激しく動揺した。
「見えないのにどうして攻撃が当たるんだよ! はっ、まさか!?」
「ええ、見えなくても音は届きます」
フィーナは胸いっぱいに息を吸い込んだ。
聖なる旋律に乗せ、交響詩『天秤の女神』をここに奏でよう。
「魔を祓い、傷つきし者を癒す。響け、聖なる旋律!」
てっきり勝利は確実だと思っていたすいかぼちゃ達にとって、『音』を武器にするフィーナの戦いは完全に想定外であったらしい。
逃げ惑っても意味はなかった。
交響詩の旋律は彼らを捉えて破魔の力を発揮する。蜘蛛が呻き、身をよじる。悪しき眠りよりも慈愛の旋律の方が桜學府の學徒にとってもいいだろう。彼らはフィーナの旋律に力をもらい、再び立ち上がり、雄々しく戦った。
「皆さんの怪我はわたしが癒します! 誰一人、命を落とさせはしません!」
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
どうやって、でっすかー?
それはもちろん!
歌で、なのでっす!
それでは皆様、ご一緒に!
藍ちゃんくんでっすよー!
歌うのでっす、學徒兵の皆々様と!
藍ちゃんくんたちの合唱は戦場全体に響き渡るのでっしてー。
見えてるとか見えてないとか、敵が飛んでるとか関係ないのでっす!
本部を埋め尽くすほどの透明な敵による突然の襲撃。
それ程の事態でさえも追い詰められようとも折れずに立ち上がった皆々様の魂はとってもキラキラしてるのでっす!
その輝きっぷりを歌にするのでっす!
藍ちゃんくんたちの歌は攻撃だけではないのでっす!
本部で戦う他の皆様方を癒やす歌にもなるのでっす!
威力増強してこようともそれ以上の癒やしで治しちゃうのです!
「どうやって、でっすかー? と聞かれたらそれはもちろん! 答えはひとつなのでっすよー!」
歌を歌おう。
藍は|皆《・》に語りかけた。
臨戦態勢で緊張していた學徒たちは驚いたようだ。
「歌を、ですか?」
「ええ、皆様ご一緒に!」
せーの、で。
「藍ちゃんくんでっすよー!」
桜學府本部に響き渡る歌声に彼らは目をみはり、やがて、ひとりまたひとりと歌い始めた。最初は戸惑っていた者もつられるように声を重ねる。
歌が苦手な者も、藍がウインクして手を差し伸べると恥ずかしそうに口を開いた。合唱。重なる歌声と歌声が響き合い、學府全体を包み込む。
――キラキラしている。
本部を埋め尽くすほどの敵、それも透明な目に見えない脅威にも関わらず心折れることなく立ち上がった學徒たちの魂の強さが表れているのだ。
「シャイニングなのでっすよー!」
藍は即席で彼らの雄姿を歌詞として紡ぎ、押し寄せる影朧の攻勢を留める。
「う、うぐぐ……」
「こいつら、攻撃しても攻撃しても立ち上がってくるぜ!?」
藍は得意そうに笑った。
攻撃だけでは手落ちである。
エールを伴ってこそ、歌の力を十全に発揮できるといえよう。
「ぬぬ……!」
当初は優勢だったはずの影朧勢がじわりじさりと押し返され始めた。これが歌だ。直接心に響く歌の力の前に影朧は劣勢となりつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
よぉ、頑張ってるじゃねえか
通りすがりの猟兵が助けに来たぜ
今日のお菓子であるキャラメルを頬張りつつ
ちなみにコレは食えば【第六感】が冴え渡り【悪を嗅ぎつける】事が出来るすごいキャラメルだ
…と語って學徒兵達にもわけてやる
嘘じゃないぞ、少なくともオレには効くから
そも、植物や食物が基礎のオブリビオンは匂いを完全には消せねえ
キャラメルの甘みに、悪を煮出したような苦味が加わり始めたら近くにいる証拠だ
あとは…素早く飛んでる敵には、地から昇る光の範囲攻撃で当てる!
敵が離れていくんなら、匂いのある方向にいる學徒兵達に【情報伝達】する
戦場の混乱の最中でも注意喚起の【声を届かせる】ことは出来るからな
ん、キャラメルがうまいぜ……。
甘味は脳を刺激する。
即ち、ギュスターヴの直感は冴えわたるというわけ。
「よぉ、頑張ってるじゃねえか」
軽く手を挙げ、臨戦態勢の學徒たちに挨拶ひとつ。ほっとしたのか、學徒は緊張を解いて帽子を脱いだ。礼儀正しく頭を下げる。
「来て下さったんですね、ありがとうございます!」
「ま、通りすがりってやつよ。そら、皆に分けてくれ」
「なんですかこれ?」
すると、ギュスターヴはちょっと悪い顔で笑った。
「コレを食うと第六感がピキーンっとなって、悪を嗅ぎつけることができる凄いキャラメルなんだ」
「え、えぇ?」
「騙されたと思って食ってみろよ。毒なんて入ってないさ」
ギュスターヴはキャラメルを舌の上で転がした。半信半疑の學徒らは顔を見合わせていたが、「えい!」と最初のひとりが思いきって食べたのを見て、我もと試してみることにしたようだ。
(さて、手掛かりは匂いだな……)
|鼻を澄ませる《・・・・・・》と、野菜由来の微かな苦み。
まるで悪を煮出したかのような。
近い、とギュスターヴが呟けば、學徒の間に再び緊張が走った。
「気をつけろ、いつでも戦えるようにしとけ!」
「はいッ」
ギュスターヴは先陣を切って、そこ、と目星をつけた場所に光を降らせた。
「ぎゃッ」
「あ、いま悲鳴が聞こえましたよ!」
「当たりだな。他にもいるぞ!」
空中を目掛け、今度は大地から迸る光が波のように周囲を薙ぎ払う。死角となる足元からの攻撃を受け、影朧は慌てふためいた。
「に、逃げろ。戦略的撤退って奴だ」
「お、おう」
だが、ギュスターヴは敵の動きを読んでいた。事前に學徒たちに伝達し、先回りさせていたのである。しかもギュスターヴと同じように彼らの感覚も研ぎ澄まされているのだから、勝負あった。
「悪いな、オレってばソツがなくてね」
顔の横で人差し指と中指を揃え、にやっと笑う。
「戦場の混乱の中だろうが、俺の声は――届く。もうアンタらに逃げ場はないぜ。観念したらどうだい、影朧さんよ?」
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
桜學府の本部を襲撃してくるとは……。仮に儀式を防いだとしても、此処が壊滅すれば後々大変な事になるのは想像に難くない
確実に守っていかないとな
學徒兵は適度に固まって、互いをフォローしてもらう形で。無理に攻めて貰う必要はないだろう
神刀の封印を解除して、廻・弐の秘剣【金翼閃】を発動。金色の斬撃波で周辺をざっと攻撃
当たって倒せれば最上だが、外れたとしても斬撃波の軌跡上は斬撃痕が残る
敵が接近してくる時に、それに触れれば勝手にダメージを受けてくれる。落ちてきた奴は學徒兵に任せられるかな
後は声や飛翔音、気配などを頼りに敵の位置を把握
斬撃痕を足場にジャンプして敵の元に接近して、直接の斬撃を叩き込んでいこう
「それでは、適度に固まって互いにフォローし合える距離感を保ってくれるかい? 無理はしないように」
「はい、わかりました!」
鏡介の指示に學徒兵は素直に従った。
「うん。確実に守っていこう」
穏やかに微笑み、自らは神刀を鞘から引き抜いた。
――帝都桜學府の校庭にて、学徒兵と合流した鏡介がまず行ったのは、金翼閃による出し抜けの攻撃であった。
「ひゃっ!?」
速過ぎて、影朧たちは躱す暇もない。
「手ごたえがあったな」
鏡介はあっさりと頷いた。
敵はこの場所を制圧することに血道を上げている。それだけ重要だということだ。たとえ儀式が阻止できたとしても、破壊されるのは極力避けたい。
「此処が壊滅すれば、後々が危ういのは間違いないからね。確実に守らないと」
「はい!」
學徒兵は自ら武器を持ち、戦場に残った衝撃波の軌道に引っかかって落下した影朧の始末をして回った。
「あとは、と……」
「何!?」
もう少しで三叉槍が届くという距離にまで近づいていた影朧は驚いた。見えないはずなのに鏡介はさっき残した軌道の後を足場にして、逆に近づいてきたからだ。
「姿は見えずとも、声や飛翔音、気配。手掛かりはいくらでもある」
再び、金色の翼が羽搏くように斬撃が奔って影朧を仕留める。
「さあ、この調子で数を減らしていこうか」
大成功
🔵🔵🔵
柳・依月
さてはて……帝都櫻大戰、開戦か。
前回の戦争じゃまだ猟兵として目覚めたばかりで、あまり力になれなかったからな。
今回の戦争では少しでも貢献できるといいんだが。
さてと、透明化能力か。
あいにく透明になった敵を暴く手段は持っちゃいないが……
あれを使うか。
UC【絡新婦】。
見えなくても、感知が不可能でも。
この蜘蛛の巣の如く張り巡らされた糸から逃れることが、果たして出来るかな?
きゅ、っと依月は黒手袋を嵌め直した。
鳴り響くサイレンが告げるのは帝都櫻大戦の開幕だ。はてさて一体どうなることやら。できれば力になってやりたいところだが。
學徒兵の様子を見ながら、そんなことを考える。
サクラミラージュにおいては異邦人の依月にとって、この世界はなかなかに興味深い。まるで過去の歴史にタイムスリップして来たような。
それに猟兵としての戦いに馴染んできた頃合いでもあった。
「ミリタリーの次は大正時代か。そんじゃ、前回の分まで働くとしますかね」
……今、何かが光ったような。
気を取られた影朧は首を傾げる。蜘蛛の糸? こんな校庭のど真ん中に――?
「はっ!?」
気が付けば身動きが取れないでいる。
おかしい。
なんだこれは!?
「蜘蛛の糸がこんなに強靭なわけが、まさか、じゃあ、こいつは蜘蛛じゃなくて!?」
「お、そこにいるのか」
「しまッ……」
おやおや、と依月は呆れる。
「いま、そっちで声がしただろ?」
「だ、誰もいませんよ……」
「そうか、じゃあ気のせいか」
「ほっ」
「――なわけねえだろが!」
「やっぱりー!?」
依月は周囲に張り巡らせた蜘蛛の糸を絡めた指を握り締め、にやりと笑った。透明化したところで体自体はそこにあるのなら、こういう罠がさぞかし効くだろう。
締め付ける糸ごしに生命力を根こそぎ奪う。見た目とは裏腹にうまくもない味だが、まあ、贅沢は言ってられない。
「あいにくと見えないことそれ自体を暴くのは無理だがな、搦め手ならこの通り得意なのさ。悪く思わないでくれよな?」
大成功
🔵🔵🔵
楊・暁
【朱雨】
藍夜の呟きに思わずちょっと笑っちまうけど
気持ち引き締めていかねぇとな
へぇ、透明化か(にまり
残念だったな
透明化はお前等だけの専売特許じゃねぇんだよ…!
學徒兵達や一般人を含めて“同伴者”扱いでUC
回復用のエナジードリンク(俺の好みで苺味)もバラ撒いて
安心しろ
これでお前等もあいつらからは見えねぇ
まずは一息ついとけ
同時に、耐水性のペンキ(発光塗料)で範囲攻撃もお見舞いしてやる
これなら藍夜の作った夜の中でも目立つだろ
ペンキに塗れた奴からは生命力吸収
敵の攻撃は見切り
早業で同伴者全員にオーラ防御
…って藍夜、お前眠くねぇのか…?
ばっ…!ばかそんなこと公衆の面前で…!(真っ赤
ああもう!さっさと片付るぞ!
御簾森・藍夜
【朱雨】
なんだこの夏休みとハロウィン捏ねて失敗した感じは…
いや、気のせいか
まぁいい
学生に心音の範囲から出ないように指示をし、俺はUCを引き連れ南瓜…いや西瓜…ええいすいかぼちゃをぶち壊す
眠気は自身もUCの狼も不眠不休で対処
眠くないことを心音に気づかれギクり
いや
あの
その
寝―てないわけないだろ!なにいってんだ!いつも一緒に寝てるだ…おっと失礼
忘れろ
全員だ。南瓜も西瓜も何もかも全部、今の俺の話は忘れるんだ(威圧
塗料塗れのすいかぼちゃは只管グラップルと怪力のリミッターを解除し力任せに殴り壊す
決して後ろを向いて心音の怒った可愛い顔を見るのが怖いとかそういうのじゃないぜんぜんないったらない
ないったら、ない
「なんだこの夏休みとハロウィン捏ねて失敗した感じは……」
忌憚のない藍夜の評に暁はもう少しで吹き出すところだった。
「藍夜、笑わせないで……」
こほん、と咳払い。
「ん? 何か変なことを言ったか? ところでお前たち、集団行動は得意だな? よし、ちゃんと離れずについて来いよ」
「了解です!」
學徒兵は素直に敬礼し、暁に従った。
「残念だったな、透明化はお前等だけの専売特許じゃねぇんだよ……!」
狐の巣籠もりの効果によって、暁は藍夜と學徒兵も含めた同伴者を透明空間内へ包み込む。これで条件は同じになったというわけだ。
「むむむ!」
姿を消した相手を前に、影朧は攻めあぐねる。
一方の藍夜は先手を取って氷月狼の群れをけしかけた。
「南瓜……いや西瓜……ええいすいかぼちゃか! そいつをぶち壊すぞ心音!」
「ああ、まずはこいつで――!」
暁がぶっかけたのは、雪夜に目立つ耐水性のペンキである。
「ぶわっ!?」
「そこか!」
ペンキを目印にして、学徒兵たちがいっせいに飛び掛かった。多少攻撃されたところで、暁が配った苺味のエナジードリンクのおかげですぐに体力は回復できる。
「おのれ!」
「見え見えなんだよ!」
暁はすぐさまオーラを広げ、学徒兵たちを蜘蛛の襲撃から守った。ところで、と全然平気そうな藍夜を見上げる。
「なんでお前、眠くねぇんだ?」
「いや、あの、その」
しどろもどろになる藍夜。
「寝―てないわけないだろ! なにいってんだ! いつも一緒に寝てるだ……おっと失礼。そこの皆、今聞いたことは全て忘れろ、いいな?」
「えっ」
「全員だ」
真顔で指を振る藍夜に気圧され、學徒兵は慌てて頷いた。
「わかりました!」
「よし、いい返事だ。お前たちも!」
「えぇ……」
無茶ぶりに困惑する影朧たち。
藍夜の隣では、暁が両手に真っ赤な顔を埋めている。
「こ、公衆の面前でなんてこと……っ、ああもう! さっさと片付けるぞ藍夜!」
「了解だ、心音!」
こういう戦い方もできるんだぞ、と藍夜は問答無用で殴り倒した。ペンキに塗れた影朧は想像以上の怪力の前に呆気なくダウン。
(お、怒ってるのかな? いや、怒った可愛い顔は見たいが、それはそれとして怖い……なんて思ってないんだからな!?)
ぼかすか殴りながら、決して後ろは振り向けない藍夜であった。
大成功
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菱川・彌三八
これ…ってなァ、見えないだけかい
見えないだけで触れるってンなら相当に話ァ早いぜ
指に当たったもん手あたり次第にぶっ飛ばしゃ良いからヨ
居るなァわかってるんだろう?
しかも、山程
体がなきゃ暴れられねェものなァ
なァ?
後は平生通り
南瓜の化物…ってェ事は拳で割れるな
戦場のただ中に突っ込んで触れた所から拳を振るう
俺を止められる奴もいねぇんだよ
マ、之じゃあ取り逃す事もあらあな
拳はあくまで技じゃあねェ、手段サ
とっときは残しておくものだぜ
筆の一振りで起こすは墨の大波
体がありゃあその身も屹度浮かび上がるだろう
なくても当たるサ
俺ァ「此処に居る南瓜野郎すべて」を飲み込めって念じてあるからヨ
そら、見えるんなら後ァ任せたぜ
ふむ、と彌三八。
思案するのは、この絡繰りについて。
見えないのは確か。
だが、触れられないとは言われなかった……ということは、そういうことでいいのだろう。話が早いのは助かる。
「よしよし、手当たり次第にぶっ飛ばしゃ良いってェことだろ? なにせそこに|居る《・・》なァわかってンだからよ――なァ?」
それも、山程というのなら、遠慮はいらない。
武器はこの拳だ。
平生通りのやり方で、彌三八らしい戦い方で。
振り回した拳が何かに触れた。そこ、と見当をつけて今度は残るもう片方の拳を叩きつけてやれば、手ごたえがあった。
まるで殺陣だ。
敵の集団のただ中で、次々に襲ってくるのを順番に倒すあれ。
「やれやれ、数が減ってくると効率が悪ィな」
拳それ自体が技と思ってもらっちゃ困る。
――手段だ。
とっておきはまだ隠し玉。
彌三八はその時を待った。
ただ、漫然と泳がせる筆は三流。
一流なら、|その時《・・・》を逃さずに、一発で決めるもの。
「其処か」
筆から染み出す墨の大波がざあっと津波みたいに迸った。溺れては叶わないと顔を出した影朧はさらに高い波に呑まれた。
「あっぷ、あっぷ」
見えるも見えないも無関係に波は浚う。
「なにせ、俺ァ念じたからサ」
人差し指を立て、彌三八は唇の端を得意そうに釣り上げた。
「『此処に居る南瓜野郎すべて』を呑み込めってな。そら、後ア任せたぜ」
墨を被って黒く浮かび上がるそれを目掛け、學徒兵のユーベルコヲドが炸裂する。そうなればもう、彌三八はただ見ているだけでよかった。完勝というやつだ。
大成功
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