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可惜夜の帳が下りる

#封神武侠界 #戦後 #九竜神火罩 #断章投下後より受付開始

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 人界と仙界を横断する大決戦、『殲神封神大戦』の終戦から月日は流れ、封神武侠界に一つの事件が予知された。自律型オブリビオンマシン、陸戦量産型・通称「哪吒」が大戦下に繰り出した九竜神火罩……その残骸破片が突如として「2体の強大なオブリビオン」となって蘇ってしまうという事件である。
「九竜神火罩は超高度に浮かぶ攻撃衛星。殲禍炎剣の宝貝でもあるこの脅威が万一蘇れば、封神武侠界の……ううん、この世界全体の崩壊の危機。だから、皆の力を貸して欲しい」
 襤褸を着た魂人のフィア・フルミネ(麻痿悲鳴 ・f37659)は、集った皆に深々と頭を下げると、そう話を切り出した。
 この件に噛む亡霊は件の哪吒だけではない。大戦を生き延びてなお侵略を敢行した韓信大将軍、その遺志と遺された「神器」もまた、密接に関わっているのだという。武将、租界のマフィアや南蛮魔獣や邪仙にまで力を与えてきた「神器」。なんとしても討滅しなければならない難敵であることは必至だ。
「今から二人のオブリビオンの説明をする。この二人の情報を頭に入れておいてほしい」

 一人目は『歩練師』。呉の大帝孫権の側室である。
 「神器」【渾沌の諸相】……すなわち混沌氏の影響下にあり、当人の元々の自我は不安定な状態にある。侵略を命じた韓信の野望は頓挫して久しく、ならばと目指す攻撃衛星の復元もそれを命じたオブリビオンマシンも大戦で息絶えている始末。にも関わらず、彼女は生み出され、使役され、苦痛の坩堝に飲み込まれた。もしも彼女の生が呪われていたのだとするならば、その呪詛は魂をも蝕んでいることだろう。
「このオブリビオンが戦いを拒む言動をしていたとしても、攻撃は苛烈だと思う。うん。レーザーに高速飛行、腕による殴打。まともに受けるのは望ましくない」
 技を繰り出すたびに本体もダメージを負うが、それでも彼女を倒すには至らないだろう。まずは第一のオブリビオンを消耗させて、仮に合流されても九竜神火罩が蘇らない状況を作り出すことが重要だ。
「もし……彼女の言葉を引き出そうとするなら、踊るのはどうかな。うん。想い人に歌を捧げて願い、舞い踊る。戦いの最中に、諸相に隠された本音をさらけ出せるとしたら、そういう想いの強さも重要だから」
 記憶という不確かなものを戦いで使用する魂人は、そう呟いた。

 もう1体のオブリビオンは邪仙『珪珪』。粘菌、すなわち群体生物の仙であり、その知識欲に満ちた思考は人間的なソレとはかけ離れている。
 粘菌をばら撒いて付加した対象を捕食する能力、仙丹によるドーピング、さらには群体生物らしく瀕死に陥ると代わりの自分自身を生み出す能力まである。
 何より、『歩練師』と連携して行動を行おうとするところが厄介だ。仮に二人とも健在のまま取り逃したりしようものなら、融合の儀式で蘇った九竜神火罩が、猛威を振るうに違いない。
 弱っている方を先に叩くか、分断するか。連戦になるがそこが猟兵の見せ所であろう。

「私はキミたちの生還を信じている」
 短い言葉だが、しかし並々ならぬ思いを込めて、魂人は頷いた。悪意と表現するにはあまりにどす黒い、深夜のような闇さえも猟兵なら祓えると信じているからだ。降り立つのは古戦場。亡霊が待ち受けるにはうってつけの死地に、猟兵は飛び込むのだった。


地属性
 こちらまでお目通しくださりありがとうございます。
 改めましてMSの地属性と申します。
 以下はこの依頼のざっくりとした補足をして参ります。
 今回はいにしえの中華世界にて、女傑と連戦していただきます。韓信の侵略は阻止されておりますためご承知おきください。

 この依頼はシリアス系なっておりますので、嬉し恥ずかしダメージは控えめとなっております。
 クールに切り抜けるもよし、あえてピンチプレイングを演出するもよし。仮に演出上ひどい目に合ったとしても、🔵は得られますしストーリーもつつがなく進行します。思いついた方はプレイングにどうぞ。
 基本的に集まったプレイング次第でどうとでも転がる仕様になっています。

 続いて、『神器』について補足をば。
 韓信配下は自身のユーベルコードの他に『神器』を使用します。『神器』の【渾沌の諸相】は秘匿されているユーベルコードをもう一つ持っている、というものです。もし「使用して欲しい」場合はプレイングで指定したり、説得を試みてもよいかと思います。

 では皆様の熱を帯びたプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『🌗歩練師』

POW   :    嘗て小鳥の囀りを聞く為造ったもの
自身の【呪詛符を二枚とも励起させ、イヤーデバイス】から極大威力の【武器や体に直接纏うこともできる仄白い赤光】を放つ。使用後は【全身が爛れ、呼吸にさえ凄まじい苦痛を伴う】状態となり、一定時間行動できない。
SPD   :    嘗て小川を渡る為造ったもの
速度マッハ5.0以上の【腰部スラスター噴射による悲鳴混じりの吶喊】で攻撃する。軌跡にはしばらく【空間にこびり付き定着した、白き悲鳴の残響】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
WIZ   :    嘗て果実の皮剥きに造ったもの
【苦痛を伴う白い呪詛を投与され腕が弑逆形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。

イラスト:久遠 勝己

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジズルズィーク・ジグルリズリィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 踊ろう。
 歌おう。
 この足も、体も、魂さえも、己のものではないのだから。

「あなたは、だれ?」

 私は、すなわち、すべての過去である。
 世界の外にあるすべての骸の海が、私である。

「あなたは、だあれ?」

 誰もいない荒野を歩いて、歩いて、壊して、犯して、破壊し尽くして。
 会いに行く。カタチなき群体のあの人に会いに行く。すべて、この世のすべてを、引き込むために。この世界のカタチを、なきものにするために。

「あなたは。だれ?」

 名乗らない。名乗れない。隠せない。隠していない。
 この動きだけが、手を取ってくれるあなたがいなければ、何者でもないのだから。
 誰か、私を、見つけて。これを見ている、あなたに届け。
佐々木・ムツミ
【アドリブOK・血飛沫舞う戦い希望】
うふふ、なんだかとても素敵な予感がするわ。
思うがままの殺し合い…アタシと友だちになれるかもね。

【戦闘】
一つ、アタシと踊ってみない?
死ぬまで一緒に…
(ニッコリ微笑みながら踊りの誘いを歩練師にかける)

一緒に殺し合いましょう?
誰かに命ぜられるでもなくね。
(ユーベルコードを発動させたムツミは無邪気に笑いながら告げる)
踊りたい、と思うのはキミ自身の意思でしょう?
自分の心のままに生きてみなよ。

殺し殺され、それがアタシの望むものだよ。
(相手の攻撃を交わし、時には受けながらも、ムツミの顔は笑顔のまま踊る。)



「だれ? だあれ? だれえ?」
「その質問に答える前に、一つだけ。そう、たった一つ――アタシと踊ってみない?」

 《佐々木流・無間の刃》を繰り出し、真っ先に古戦場を駆けるのは佐々木・ムツミ(ナチュラルボーンダークネス・f43858)。あたら夜の帷に幕を引くような、死合いを求め死地に飛び込みし、修羅。
 彼女の無間の刃は、死のエンゲージメントを対象に付与する、ダンスマカブルの誘いだ。すなわち隠しきれない屍臭と、狂気を宿した笑みを向ける理由はただ一つ、互いを殺すまで殺し合おうという、鮮烈なる密約。狂気を宿しし歩練師は首肯する。
 逡巡する敵、制止する味方、慮る理由やら事案やら。
 誰かって!
 どおでもいいよ! 終わりが来るまで、一緒にいるんだから!
 でも、強いて言うなら――!

「アタシはキミの友達さ、お互い踊り続けちゃおうよ~死ぬまで!!」
「あ……踊り、そう! ありがとう! そうね、死ぬまで! 死ぬまで!!」
「そう。一緒に殺し合いましょう?」

 あくまで優雅に。
 飛び込まず、膝を曲げて身体を沈める、それこそ裾を摘んで一礼するような優美な所作。見ようによっては大胆不敵。
 スラスターを噴かし、今にも爆速で突っ込んできそうな相手を前にして、必殺剣を繰り出す機会を窺っている。ムツミは戦闘狂ではない。一手一手が確実に相手を屠るだけの殺意を込めて刀を振るっている。その一刀に命すら込める、その覚悟で握った「物干し竿」は、たとえ死しても離さない。腕を引きちぎられればもう片腕で掴み、両腕が捥がれれば咥えてでも相手を斬る。
 そういう、誘いを行って、受けてもらえたのなら、それは朋友と何が違うのだろう。

「好きになれそう。少なくとも第一印象は」

 ――バツッ!!

 初撃は受けてやるつもりだった。悲鳴さえも置き去りにする、命知らずの突撃。理性があれば知らずしてリミッターをかけてしまうであろう、命綱なしのダイブである。受け止めてやらないのは、愛が廃る!

「ご……ぇ」
「ぎいぁ……ッ!!」

 もつれるような正面衝突に、刀が折れないように受け止めたムツミは噛み締めた口の端から血を漏らした。押し込まれ、地面に轍を作る。
 醜い声を出してしまった、その気恥ずかしい心地から、にっと口端を上げる。
 驚くべきことに、超加速により筋繊がズタズタになったはずの歩練師も、笑っていた。彼女なりの対話、それは笑顔を以て、愛を捧ぐようにぶつかり合うこと。どれほど歪んでいても、他人を知りそれに尽くすこと。相手を立てること。奇しくも、ムツミと同じく、相手を慮って、彼女は狂いながら笑った。

「ガァっ」
「それは悪手」

 望むのは、殺し殺されだ。
 一方的な鏖殺など、合意のない行為そのもの。そんなのパパが知ったら失望しちゃうじゃないか。
 自分ができることは相手に求めて当然。相思相愛は対等の関係からしか生まれない。このフェアでシンプルなメカニズムを解さない世界に、ムツミは時折辟易する。
 そして、一番重要なのは、愛は冷めたら終わり。
 ……ムツミの「愛」は失意と死別による失恋の連続である。関係性は連続と断続の螺旋、しかし失意はある。ないわけがない。人は命を奪う生き物だ。利己的に、一方的に、そしてムツミは愛ゆえに。食べるため、満足するため、自分であるため。愛ゆえに殺す、愛ゆえに我あり。それを闇と呼ぶ者もいる。自分は胸を張ってありのままの己を誇るのだが。
 嗚呼、今宵もまたその歴史につまらない一頁が刻まれるのか。
 一握りで頭を擦り潰せる鉄爪で無理やり、唇を奪おうとする相手には、横薙ぎの一振りを浴びせる。どれほどファーストコンタクトが良くてもエスコートは最悪。百年の愛も一夜で冷めるというもの。一閃。首を飛ばすか、さもなくば上半身、あるいは受けようとした得物をそのまま切って捨てる勢いで振り抜く。

 ――ザンッ!!

 噴き出る血霧。視界が真っ赤に染まる。
 ぐちゃり、ぐちょ。
 柔らかい肉の感触が、柄に伝わってくる。

「い゛ッ……?!」

 苦痛を上塗りし、噴水めいた血、鉄臭さが広がり、蜘蛛の巣のように広がった仄白い異物をカモフラージュする。白き悲鳴の残響が細く、しなやかに伸びて、ワイヤートラップのようにムツミを喰んだ。もう少し踏み込んでいたら、逆にこちらがミンチになっていただろう。そのまま腕の力だけで強引にフィニッシュ!

「ぎぃいい、ガァアッ!!」
「ん、っしよ! っと!」

 手応えは確実に愛別を告げている。首と胴とをさよならして、普通の人体構造であるならば。
 ムツミの眼前に広がる光景に、目を疑った。
 ぼこぼこと内側から溢れてくる粘性泡。餅ともスライムとも、この世のものと思えない悍ましさが肉の袋を突き破って内側から溢れているかのよう。そんな屍蝋めいた粘体が亡き別れした両方を繋ぎ止め、止まった心臓を愛撫する。細胞に、血管に、筋骨に、脳に至るまで渾沌の諸相に支配された彼女は、たとえ終わりを迎えようとも、野望は潰えない。オブリビオンの執念を目の当たりにし、闇である少女は舌を巻く。
 互いに負った手傷は、死には遠く及ばない。否、確実に命を奪ったからこそ、自身の殺傷力が数段落ちたことを実感する。
 萎えたわけじゃない。むしろ、沸々と湧き上がってくるこの想いは、熱く激って仕方ない。まだ踊れる。

「へえ」

 死――。
 そして、蘇生……! それによる、死合いの解除。命すらチップにして、この死亡遊戯を楽しみ尽くす気概。必要なのは火力ではなく覚悟であった。改めてムツミは笑った。心の底からの笑みだった。こんな機会、ない! しゃぶり尽くす、骨の髄まで。

「いいね。惚れ直しそう」

 だってカラダはまだ動く。ココロがもっとと愛を叫ぶ。それは、そう! だって、だって愛に際限なんてないのだから!

成功 🔵​🔵​🔴​

ネフラ・ノーヴァ
そうだね、踊りに誘うとしようか。
恭しくボウアンドスクレープ。手を握れば輪舞、そして剣舞。
地を疾り空を駆ける、踊りも戦いも等しく美しく混然と。
この技で死を与える事は敵わずとも、死線に触れれば痛苦もやがて歓喜へと高まるもの。さあ、貴公の想いを曝け出すと良い。



「この舞踏に、貴公の想いを曝け出すと良い」

 左手を横に、右手を体の前に、ボウ・アンド・スクレープ。
 ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)は誰かと問われたならば、それをより多くの者に知ってもらうためと答えるだろう。手を取る相手がうら若き新芽なら尚更のことだ。数多世界で語り継がれる武勇伝こそが、彼女の存在証明。

「さあ、手を」

 カーテシーで応えた歩練師の手を掴み挨拶代わりの《閃血惨花》を繰り出す。
 ブラッド・ブルーティッシュ・ブロッサム・ソロ。手ずから血棘の刺剣を振るい、植えたる獲物に死の華を咲かせる妙技。その一手目。

「が……グッ!」

 抜くスピードは刺す時のそれよりずっと早い。
 そのままI字バランスのように垂直に真上に蹴り上げる。さながら天目掛けて伸びていく若木の如く吹き飛んだ敵は、そのまま反射結晶に弾かれる。空中ピンボールで加速しながら、空中に磔にされた。飛び散る血飛沫が真紅の花弁となって艶やかに花開く。

「激しいリズムはお好きかな」

 二撃目、デュオ。荒々しく突き立つ刺突は、空を割いて光を求めて伸びていく枝葉。悪意を持つ敵からすれば絶望の過程を具に見る所業であろう。
 目で追うのも難しいほどに加速した敵の弱点を寸分違わず串刺しにし、勢いのまま振り回す。

「がぁああッ!」
「ほう……ならこれはどうだ」

 蓄積された加速度を、腰部のスラスターで相殺する。そのまま赤光を纏った爪撃で反抗してみせる。ネフラの軟玉の肉体に爪の殴打が当たれば、けたたましい音と火花を散らして、古戦場に今度は花火が散った。暗がりに一瞬映った顔は笑っていた。
 苦笑でも失笑でも、ましてや嘲笑でもない。死線に触れれば痛苦もやがて歓喜へと高まるもの。この輪舞と剣舞はその橋渡しをするものだ。
 曝け出せ、その被殻に包まれた本性を抉り、外気に晒してみせよう。
 肉を喰み、骨を砕く感触を刺突剣に感じながら、ネフラの心は恍惚の境地にあった。貴公は、どうだ?

「美しく散る花となり、舞い散れ!」

 蜂の巣にされて出血量と痛みで意識すら覚束ないだろう。思いの丈を吐き出すほどの感覚を与えられているだろうか。ここが戦場でなく、事態が逼迫していなければ、もっと別の手段もあった。風景を語らい、貴公の望みを別の形で語らせることだって……!

 ――ば……づンッ!

「フ、三撃……くっ?!」

 空間にこびり付いた、濁った屍蝋が意志を持って牙を剥く。反射結晶の隙間に忍ばせていた罠か何かだろう。語る手段は戦いしかないという意思表示。受けて立とう、それが望みなら舞い踊る、折れ朽ち果てるまで。
 血みどろになった左腕に金色の光が灯る。腕そのものが発光しているのではないかと見紛う極彩色の煌めきが、罠もろとも穿つ。

「ガハッ?!」

 ケモノのような呻き声をあげて歩練師は墜落した。そして即座に起き上がってくる。自分の力で再起すればまだ幸せであったろう。上半身を振り上げるように無理やり引き起こされる姿は、踊りは踊りでもデクの操り人形の悲壮感を覚えさせる。
 ネフラはそれでも彼女を尊重する。一度手を取ると決めたのなら、その意志は曲げない。輝石は曲がらず欠けず、輝きを放ち続けることに価値がある。未だこの一手で死こそ与えることはかなわずとも、いずれ死ぬまでそばに寄り添い続ける不朽の輝き。
 それが私だ。覚えて、逝くといい。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
大変な状況ですが、放置も出来ませんからねぇ。
お相手致しますぅ。

『FLS』で『FPS』を召喚、歩練師さんの情報を把握しまして。
『FMS』のバリアで周囲を覆い『無視しての突破』を阻害、『FRS』の[砲撃]で牽制を。
歩練師さんが攻撃に回ったところで【月衣奏】を発動、『祭礼の女神紋』により『祭器』共々全身を『女神の鏡』に変換すれば、『仄白い赤光』が『女神の鏡』で『|防げない条件《同質の加護or肥大系状態変化》』を満たしていない以上、放射・近接の何方に使おうとも『無効化&反射』が可能ですぅ。
彼女が行動不能になった時点で【月衣奏】を解除、各『祭器』の攻撃を集中し[追撃]しますねぇ。



「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて御贄を捧げましょう」
「ガ……?」

 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が繰り出す砲撃の嵐を掻い潜り、肉薄する歩練師に繰り出した無数の女神の鏡の牢獄。無数の鏡で彼女をドーム状に包囲し逃げ道を封じると、砲撃による飽和攻撃で消耗させながら、無敵化による反撃封じを行う。
 曰く凡ゆる攻撃を吸収し、複製して放つという代物である。これが決定打になり得る状況に持ち込めば、どれほど高威力の攻撃を受けようと何も脅威ではない。遍く、その悉くを蹂躙するのみだ。
 彼女は嘆息し、大変な状況だとばかりに口端を下げた。しかし、それ即ち打開できない苦境だというわけでもない。むしろすでに分析は終了している。
 攻撃者の鏡像が、赤光を放ってくる姿は圧巻であったろう。

「ぐ……げ……ッ」

 もっとも、彼女自身己の能力を過剰に使用し、仮に身に纏って防御に運用したとしても行動不能になるほどの激痛を伴う能力行使である。
 全身が酷く爛れ、血反吐を溢して蹲る。神の化身と思しき神聖な肉体を曝け出しているるこるとは極めて対照的だ。笑っている敵に対しるこるはおよそ油断らしい油断のない真剣な眼差しを湛えている。
 オブリビオンマシンである哪吒や韓信大将軍本人ならいざ知らず、強いと称されながら能力使用にリカバリーを考慮していないデメリットを負っているなど、何かしら欠陥を抱いていると断言して良いだろう。その欠陥など気にする必要もない。
 祭器と同じような神器などと謳っている【渾沌の諸相】もほぼ不発のようだ。

「油断なく攻撃して参りましょう」

 ぷるぷると肉体を震わせる。それは身動きを取れなかった、否、取らなかったるこるに自由が戻ったことの証。歩練師の稼働限界に合わせて解除した【月衣奏】であったが、すでに甚大なダメージを受けた相手には、むしろ攻撃を集中して撃破を目指した方が効率的だ。
 彼女にとってこれは仕事の一環でしかない。こんなにも対照的な存在であるのに、ある意味では、境遇を無視して呼び出された歩練師と同じ、目的のために手段を選ばない、同種の境遇であるといえる。そんな二人が出会った時に導き出される結論は至極簡単だ。頭を使い、策を講じ、取りうる戦術をシミュレーションして完璧に対応する。
 バーチャルキャラクターらしい瑕疵のない理論と戦術で、強大とされていたオブリビオンを追い詰めていく。その圧倒的な勝利は、戦場に並び立つ他の猟兵を鼓舞する結果となっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

古賀・茉莉
ふむー、なんともやるせない状態になっておるのかな?
不安定ではあるけど切に求めているようにも見えるね。
気合を入れますか!
すべてさらけ出させたほうがよさそうな感じ。
九死を使うよ、攻撃というより武舞といった感じで、もちろん攻撃もするけども!
速く動くものを無差別なら九死はうってつけだね。
何が聞けるのか…分からないけど吐き出せないのはつらいだろうし。
自分を見つけてほしい熱烈な攻撃だね!
あなたの踊りが破壊ならばボクを壊してみたら?
簡単には壊されてあげないけどね。
ボクが誰かを知りたいならもっと踊ろう?
優雅なダンスとはいかないけども、血なまぐさいのも悪くはないよ?
だんだんボクの血のによる化粧が濃くなる。
ここまで想われるあの人もなかなか大変そうだよ。
どのみち消耗戦なのは避けられなさそうだし、遠慮なく踊り明かそう。
ボクのはらわたすら腹の裂け目から見え隠れするほど。
見つけてほしいなら、もっと激しくボクを求めて?
キミの目じゃなくて心が見たいものは、何かな?
体も心もキミのものじゃない?
求める心はキミのものだよ?



 ――ギュウウゥ……ギリッメキィ……!

「ぐっ……お、ごぉ……!!」

 古賀・茉莉(人間の殺人鬼・f33080)の細首を、今にもへし折りそうな膂力で掴み上げ、冷ややかな目線をくれる歩練師。
 あなたの踊りが破壊ならばボクを壊してみたら? そう朗らかに笑っていたから……あまりに隙だらけだったその少女に、彼女は笑いながら手をかけた。気合十分に挑んだ茉莉の覚悟を嘲笑う、狂気の笑み。不安定ではあるけれど、どこか何かを切に求める気配すらある敵相手に、決着はすぐにつけるべきだと焦りを帯びていたのもあった。

 ――ギュウウウゥゥ……!!! グギッ!!

「うぐうううぅぅっ?!」

 首がさらに締め付けられ、茉莉は仰け反りながら、目を見開いた。ツインテールが不規則に揺れる。

「ぐっ……!! お、おぇ……!!」

 顔が青白くなり、舌がこぼれる。明らかに、危険な兆候だった。
 だが今の彼女にできることは今までと変わらない。どれほど血なまぐさくても、全身全霊の踊りを見せなければ。
 力による拘束を、さらに強引な力押しで無理やり引き剥がしていく。筋肉ははち切れそうなほどに引き絞られ、今にも断裂する寸前まで追い詰められたが、なんとか歩練師の縛めを振り解いてみせた。

「ぇ……ぇ゛ほッ……簡単には壊されてあげないよ。もっと叫んで、声を聞かせて?」

 聞こえない。そんな叫びじゃ。心の底まで支配されても、その衝動の根源まではあなたのモノのハズだから。匂いだって、仕草だって、その所作だって染みついたものだろう。
 その訴えかける瞳の全てが嘘だというのなら、せめてその網膜に焼き付くくらいの鮮烈な舞を刻んでやる。茉莉は負傷してなおその傷が化粧なのだと笑って戦闘を継続する。
 彼女の衝動を引き出すべく、茉莉は舞うのだ。
 繰り出すのは攻撃というより武舞として扱う《九死殺戮刃》。息もつかせぬ連続攻撃だが、ステップとして使えば卓越した、手捌きとして使えば目にも捉えられぬ、組み合わせれば武闘であり舞踏でもある絶技に昇華する。

「……あなたは……」
「遅い遅い!」

 突き出してきた爪に乗り、その勢いで高く跳躍。両足を横に大きく水平に広げつつ、両手に握った刃を脳天目掛けて振り下ろす!

 ――ザンッッ……!

「く……ぐッ」

 ごぷりと血の塊が喉奥から迫り上がってきた。
 先手を打った茉莉より、先に歩練師の爪が振り上げられ、一気に茉莉の胸上部、胸骨のすぐ隣に突き立った。柔肉を抉られる感触はいかほどか! 果たして肋を突き破って深々と先端が胸腔内へと埋まった。

「は……や……あ゛え゛っ!」

 血に次いで、間抜けた声を出した。ああ、刺された! そう思った。軽率な言葉だったとは思わない。しかし! 現に! 実際目に見えて胸に爪が刺さっている。しかし、鋭利な爪の逆襲は一瞬で、音もなく深々と刺されたため、痛みどころか刺された感触がしなかった。だから明らかに刺さってるのに刺さってないのでは、とさえ思った。

「あなたの、こと、教えて? なかみぉ、を、おしえ、てぇええっ……!」

 しかし、歩練師はもはやその体の制御を外部に委ねているかのように、情け容赦なく捉えた獲物を切り刻む。己が受けている負傷に一切の感傷なく、ノコギリ引きみたいにザクザクと切り開きながら鋭利な爪を下に降ろした。
 途中、バキバキ! と肋を割り開き、肺は破られ、心膜も裂かれて心臓も傷付いた。血がみるみる溢れ出る。
 そして、追って来たるは茉莉の全身に走った体内を切り割られる激痛。

 ――ぐちゅっ! ぐりゅっ! ぐちぃっ!

「かっは、んぎぎぎぃ……ッ!?」

 歯を食い縛るが、許容できる痛みを超えられてしまう。歯の隙間から血と涎とがだらだらと垂れ、艶かしく顎を伝って、つつうと糸を引きながら落ちる。
 その爪は今度こそ茉莉の踊り出す肉体を掴んで離さない。生きたまま体を裂かれるという地獄におぞましい悲鳴をあげ、しかし途中で茉莉は気管から上がってきた鉄臭い粘液が喉にぐっと詰まり、詰まったような音を立てて血の塊をごぽりめ吐いてしまう。刻まれた肺腑に溢れた血が堪らず逆流してきたらしかった。
 苦悶が折り重なって来る中で正常な状況分析などできるハズもない。
 だが、嬉しかった。
 ボクを見ている。互いに消耗し合う中で、互いの腹を文字通りに探り合って、遠慮なく踊り明かす。

「はぁ……げふ、ゴホッ……キミも……見つけてほしいなら、もっと激しくボクを求めて……っ?」
「――ぎぃい、がァアあっ!!」

 《九死殺戮刃》の斬撃は止まぬ嵐のように降り注ぐ。歩練師は血みどろの肉塊に成り果てようとも、その一心だ。目の前の敵にむしろ爛々とした瞳の光をぶつけて、巧みに致命の一撃を防ぎながら茉莉の左上腕に手を伸ばして握って、捻った。
 めぎり、べきりと、音。

「くぅあぁぁぁっ?!」

 呆気なく折れた腕に、さらに無理やり外的に加えられる力。人体はその緻密な構造から、壊れれば容易に戻らないし、痛みはまた別の痛みに作用する。砕けた骨が筋繊維を傷つける。たった今ささくれて折れた骨がズレて、中の筋に食い込み刺さったのだ。筋骨を犯される電撃的な痛みに、茉莉は絶叫しながら海老反りになった。
 歩練師の足がダンスのステップを踏むように踊って、逃れようとする茉莉を地面に縫い付けるように拘束する。大地に縫い付けられた感覚で、茉莉は自由の効かない全身に痛みを余すことなく感じてしまう。
 霰もないセパレートの衣装。抉られ、剥き出しとなっている前面のあたたかい血と肉。抉って欲しそうに匂い立つ股ぐら。
 その全てを、激しく求めるのは、心の叫びでもあった。

「ひああっ! あぁぁぁ!」

 心の赴くまま、踵を下腹部へと突き刺す歩練師。子宮と膀胱が同時に、そして一瞬にして潰され、血の混じった小水が反射的にぷしっと噴き出した。
 暴力。その先にある命の瞬きと、ありのままの茉莉を求める心を、穢された茉莉は肯定した。
 その手と手を取り合った血みどろの舞踏会は、両者の合意で始まったのだ。終わる時は、その命の絶える時だと信じて、互いが互いをしゃにむに求め合う。
 ここまで想われるあの人もなかなか大変そうだよ、と茉莉は朦朧とする意識の中で舌を出した。

「あぁあ……ハァ……さあ、これからだよ……キミはどうする? もうたくさん?」

 共に苦悶の声を漏らし、半ば共鳴しコーラスするように傷つけ合う。
 この場合の負傷は、きっと愛し合うことと同義であろう。
 胸を開かれ心膜を傷つけたその後は、さらにその下へと狙いを定める。下腹を足で押さえつけたまま、巨大な爪の先で、臍を穿る。鋭利な指先が勢いよく突き刺さり、性感と激痛で思わず失禁してしまった。

 ――ぷしっ! ちょろろろ……!

「ひぎぃッ!? あ゛あ゛あ゛……ッ」

 スタイルのいい太ももを生暖かい液体が伝い、足元に水溜まりを作った。
 爪が蠢くたび、お腹を貫く静かな音。それは内臓がプチッ、ブチュッと潰れる音であった。腹部を襲う苦痛、腹を掻きむしりたくなる疼痛、身体を突き破られたかのような凄まじい激痛。事実、外から割り開かれているのだ。
 目を見開き絶叫した茉莉だったが、その叫び声は歩練師が噴き出したおびただしい量の血によって掻き消された。割り開かれつつある肉体は生命の営みを喪失しつつある。それでも応戦している茉莉のナイフの連撃により、歩練師は茉莉以上に血みどろだ。爪を抜きそのまま血まみれの拳を腹へ振り下ろす。内臓が何ヶ所も破裂し、腹に大量の血が溜まっている事もあり水枕を殴ったような生々しい音が響く。

 ――どポン……っ!!

「ぐはぁあ?! ゴボ、オゴォ?! ゲボォ……」

 そのまま茉莉の腹に突き立てた爪をぐるりも回した。ビリっと電撃的な激痛が朦朧としてた少女を襲う。
 傷口から血が溢れ、古戦場に広がっていく。許容範囲を遥かに超えた痛みの暴風に晒された茉莉の端正な顔は、力が抜けたように口を半開きにして瞼が半分下がっていた。口の端から血混じりの泡立った唾液を溢した。
 しかし鮮烈な痛みは気絶すら許さない。悶絶する茉莉の腹をビーッと開き、腸を掴み出した。生臭く饐えたような臭いが広がる。引き摺りだした腸を歩練師の爪の先に串刺しして引っ掛けるとクルクル巻きだした。ずるずると長い腸が巻き取られ、そのまま引き摺り出されそうになるのを、茉莉は半狂乱になりながら阻止する。
 爪がハラワタを掻き回すたび、火傷しそうなほど熱い臓物がヌメッて指先に絡みついてくるたまらない感触。自然と笑った。笑って狂い果てていた。激しく彼女を求めるあまり、どこか逆に冷静に、狂っている己を自覚したのだ。手を取り合って踊り明かして伝播した狂気の、その果てに。
 腹部の神経群が集まった腹膜を破る。その時茉莉の喉が詰まった蛇口のような音を立てた。
 胎の奥から魂がまろび出たんじゃないかと勘違いするくらいにげえげえと吐き出す。肺腑にまで到達した刃が、確実に命そのものを蝕む。痛烈な感覚だけが彼女に生を実感させるのだ。そんな原始の衝動が、歩練師に辛くて苦しい現実を直視させる手段だと信じて。だって、まだ生きている。

「く……ぐっ、ごぼぉっ!」

 生きている。殺し合っている。
 その生を目一杯に享受して、痛みでスパークした脳内がそれでも僅かな間隙に生の実感を募らせる。
 僅かに赤みががかった白。桜色に近いプリっとしてテラテラと濡れた腸が、とぐろを巻いて切り開かれた腹からはみ出していた。
 抑え切れぬ笑いを零しながら、再び揉み合いになって、その拍子に上下が逆転する。哀れな女だと、同情の余地のある敵だと、茉莉は傷つきながらもそうは思わない。血化粧で全身を彩りながら、しかし壊れかけた心の求める先をしっかり気づいたから。

 ――ずぐっ……!

「……吐き出してよ。もっと、全部、全部……!」

 戦いの中で、分かり合えた。抱き合うように凭れて、共に刺し貫いてぐしゃぐしゃになりながら、笑い声が重なり合い、やがて一つとなるだろう。
 もし、この場に闖入者が現れたのなら、命の保証なんてできやしない。

成功 🔵​🔵​🔴​

支倉・錫華
踊る、かぁ。
これでもいちおう一通りの教育は受けているし、
ダンスとかも潜入のときに必要なスキルのひとつとして身につけてはいるけど……。

今回はそういうことではなさそうだよね。
ドレスに身を包んだ優雅なダンスではなく、死線を越えるような激しい『踊り』を。

そういうことだよね。
わたしもそっちのほうが得意と言えば得意。だからあなたに応えるよ。

【ナズグル】に【Hammer】を装備した陸戦仕様にしたら、今回は【歌仙】のみを構えるね。

手を取り合う代わりに、剣を合わせたら、そこからは死と隣り合わせの時間。
美しいかどうかはわからない。優雅ではないかもしれない。
それでも、見るものが目を離せなくなるような、死線の上での踊りで魅せよう。

相手の攻撃は【アウェイキング・センシズ】で見切りつつ、
こちらの攻撃は一撃必殺の思いを込めて、打ち込んでいくよ。

相手に止められても躱されても、それはそれ。
最後に立っているのがどちらかわからないけれど、最高の『舞』の時間をあなたに届けてあげる。

もちろん負けるつもりなんてないけどね。



 驚くべきことに、眼前のこの敵は、全てを奪われてなお、確固たる信念で向かってきているらしい。
 事実、家族を奪われ、己の命を奪われ、己の自由意志を奪われ、それに伴う身体をも奪われている。にも関わらず、この世界を恨むどころか、むしろ愛している節さえあった。己の苦境を抱えてなお、その表現方法が破壊しかないにしても、大いなる目的のために己の全てを踏み躙られてなお、世界に対する害意や敵意はないのではないか。
 相対した支倉・錫華(Gambenero・f29951)は万感を込めてこう呟く。

「踊る、かぁ……」

 励起する感覚任せに体を動かすのも一興。
 これ幸いと、神経や筋肉にまで張り巡らされた、糸とも粘体ともつかない仄白い異形に操られて、身体の修復と戦闘体勢への移行を行う歩練師。何度斬られ突かれ犯されようとも、己の意思とは関係なく戦闘を継続させられる虚無感。焦点の合わない目線で、ナズグルに視線をくれる。
 彼女は天に向けて、爪を掲げていた。応えるように剣を合わせる。
 錫華のドレスは重厚な鋼。手を取り合う代わりに、剣を合わせて、隣に寄り添うは頬を撫でただけで命を吹き飛ばす死の風。優雅なダンスではなく、死線を越えるような激しい踊りの方が、得手だから。
 求め合い、応え合う。

「そろそろ、始めようか?」

 全てが見えている錫華には、その全てを一刀で終わらせる力がある。
 歌仙を構えれば手加減などできない。少なくとも始めれば即座に、一閃で終わらせる覚悟であった。長々と戦いを続けるつもりはなかったし、一挙手一投足その全てを一瞬に注ぎ込んで舞い、斬るつもりであった。

 ――ガギイィッン……!!

 ガコン、ガコンと響く重低音。戦場内に木霊する巨大な機械の駆動音は、振り切った歌仙を弾かれた錫華の乗機ナズグルのものに他ならなかった。黒の乗り手、不死なる戒律の幽鬼とも恐れられるキャバリアの豪剣を、オブリビオンとはいえ生身の存在が力任せに弾いたのだ。
 美しいかどうかはわからない。優雅ではないかもしれない。
 今、このひと時で所作への余裕は消し飛んだ。
 振り翳した歩練師の巨爪が、白い悲鳴の残響を空間へと残す。さながら具現化した斬撃が空中を自在に飛び回ると、ワイヤートラップの如くナズグルへと絡みつこうとする。十字砲火さながらの攻撃を受けながらも、天性の戦闘才能を持つ錫華は、瞬時に体勢を整えてその大半を腕部の天磐で防ぎきってみせた。

「言ってなかった? 全部、見えてるって」
「ガァああッ!!」

 華麗に攻撃を凌ぎ切った彼女は、その巨体を自身の体そのもののように操って、生身の体格である歩練師に反撃を開始する。もし正真正銘の生身の人間であったなら巨大な金属の圧力に耐えられるはずもなく、まるで新鮮なトマトのようにブチュリと潰され、紅い飛沫をまき散らしながら肉塊へと変わり果てたことだろう。振り払われた歌仙は金属火花を激しく散らして、再び一進一退の攻防を演じてみせる。
 仕掛けられた幾重もの罠を避けるついでに飛び上がっては、着地の際に踏み潰そうとする。

 ――ボゴォ!

 周囲に響き渡る地響き。鋼鉄の巨体が空を裂き、一度跳ね上がったと思うと、重厚な音を伴って古戦場へと降り立った。
 その瞬間、大地が揺れ、凄まじい衝撃波が周囲に広がる。乾いた地面はたちまち割れ、砂塵が舞い上がる中、巨大なクレーターが形成される。

「かわせる? これが、Hammerの脚力――機動力」

 そんな声すらかき消すほどの轟音と砂煙。崩れ落ちる瓦礫の音が響き渡り、かつての戦場の静寂が破られる。
 機械の関節が軋む音が冷たく響き、ナズグルの眼がキィンと光る。
 無言の威圧が周囲を支配し、その存在がもたらす破壊と支配の予兆を歩練師がは肌で感じた。意識のあるなしに関わらず感じた強烈な威圧感に、戦場の空気が一瞬で凍りついたのを所感したのだ。しかしそれも一瞬。すぐさま闘志を漲らせ歯軋りする。

「ぐ……ギィ……!!」

 量産型とはいえ、ナズグルの性能は極めて高水準だ。オブリビオンマシン相手であっても引けを取らないだろう。しかし、この機動力を十全に発揮しているのは錫華の操縦技術あってこそ。彼女の手にかかればどれほど凡庸な機体であってもエース級のパワーを引き出されることであろう。
 そもそもあの自律型オブリビオンマシン「哪吒」でさえ陸戦量産型であったのだ。機体の性能だけで戦局の全てが決まるのだとしたら、この世からとっくに戦争などなくなっている。
 全天モニタに映る僅かな違和感を察知、抜かりなく身構える。

「がぁあっ!」
「んく!? くっ、それなら、次……!」 

 第六感とも言うべき本能でかろうじて躱わしたものの、盾を持つ右腕が根本から軋む。幸い計器異常はない。が、どこか亀裂が入ったかもしれない。完璧な間合いで敵が死角から斬りかかったのは砂煙によるジャミングによるものだ。もし注意散漫にしていては機体の腕を持っていかれたことだろう。
 錫華は天才的な剣捌きで、体格の小さく目標としてはあまりに素早く動き回る歩練師に着実にダメージを与えていく。相手に止められても躱されても、それはそれ。そういう割り切りの良さがあと一歩の踏み込みを可能とするのだ。
 攻撃は最大の防御でもある。彼女の研ぎ澄まされた感覚は、機械センサーよりも早く敏感に変わる戦況を分析した。

 ――ゴウ…………ゴゴゴッ!!

「次は何……?」

 地鳴りの音。震える大気。異常を検知したアラートが頭上を示して喧しく鳴り響く。地形の変わった周囲を一面黒く染め上げる、突如の影。
 圧倒的な質量で薙ぎ払われた意趣返しだろうか。歩練師が元より得手としている「発明」の息吹は、傍目には瓦礫やガラクタにしか見えないような散乱物を駆使して、巨大な隕石のようなモノを作り上げた。放置すれば戦略衛星を作り出す、と予知された存在だとしても、錫華は予備知識込みで驚きを禁じ得なかった。予測と物理法則のどちらもを大きく超えている。
 なればこそ、であるからこそ、予想を大きく超えた「最高」の果てにある「舞」の境地を信じて、Hammerの車輪を全速力で回転させる。

「絶望がどれほど大きくても……!」

 より大きな絶望には、より大きな影が現出する。
 錫華は自身を影そのものだと自負している。ゆえに、どれだけの脅威が眼前に現れたとしても、決して自分の存在は揺るがないのだと実感しているのだ。
 ぎゅうと握る操縦桿。コクピットの中に籠る呼気。全ては戦場という舞台を思う様、縦横無尽に駆けるための布石。舞い、踊るように戦場を踏み締め、蹂躙する。その一心で実体剣・歌仙を振るう。

 ――キン……ッ!!

 光速の斬撃はそのあまりの振りのスピードに、右腕から繰り出された巨大なエネルギーにより拳それ自体が輝き、蒼白い閃光を放ったかのようだった。
 速度とはすなわち力、その刃先が隕石に迫る瞬間、時が止まったかのように静寂が訪れる。
 そして次の瞬間、隕石は完全に両断され、無数の破片となって燃え尽きていく。残ったのは、ナズグルの足元に舞い降りた小さな灰だけだった。
 今まで幾多の敵を打ち破ってきた妙技は、ついに人工の隕石をも打ち砕いた。脅威であった隕石を両断した余波で生じた風が、古戦場の砂を舞い上げる中、ナズグルはゆっくりと立ち上がる。
 コクピット内で錫華は安堵の息をつきながらも、頭を巡る不安を拭えない。高まった心拍は、歩練師を葬るその時まで落ち着きを知らないだろう。

「そこっ……! これで決める」

 足元のエネルギー炉がさらに唸りを上げ、迫る殺気が機体を包み込む。そしてロボットの頭部に取り付けられたカメラが鋭く焦点を定めた先には、殺気の主が爪を振り翳して猛然と迫る姿であった。
 負けるつもりなんて、ない、それはどちらも同じことだ。
 一度の斬撃で届かなければ、二度の斬撃を一度で加えて魅せよう。大ぶりに横薙ぎに振るうのとほとんど同時に、高速で縦に剣を振り下ろす。それで勝負アリだった。閃光と爆発が起こした衝撃は凄まじく、機械仕掛けの巨爪を切り捨て瞬間に爆発を引き起こしたのは疑いようもなかった。爆風により吹き飛ばされる人影は彼方、追うまでもない。ない、はずだ。

「……え……?」

 彼女を切り飛ばすその刹那、錫華は己が見た光景を反芻し、その疑問を口に出してしまいそうになって動揺した。
 敵意でも、己の願いを聞き届けて満足した様子でもない。彼女は全身全霊で訴えかけて、それに応えたつもりだった。あの口元が歪めた形は、切なる願いのようだった。間違いなく届けられた最高の時間。その時が過ぎ去って、古戦場に吹き渡る一陣の血風。
 ……そう。戦いは、まだ終わってない。錫華が止めかけた歩みを進めるには、それで十分だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

東・御星
※本来は御星と美結、一組のコンビですが今回は御星1人です。

私には、嘗て願いがあった。
誰も欠けることなく皆が幸せになれる世界…そのためにこの境地まで至って、太極まで至って、行き詰った。
そして、私は嘗ての願いを手離した。
世界は1人で背負うものではないから、皆で作るものだから。
どんな欲望であったとしても、それは願っただけ叶えられるべき切なる願い。
ねえ、あなたの切に求めているものは何?
私のその全てを見せて?
血しぶきの中、踊り合かそう。
私としては珍しく近接戦に持ち込んでの舞踏。
この人の心を裸にするため血まみれになろうとも踊り明かす。
腸が抉れようと、熱烈なそれを受け止める。
そして最後に、想い伝える接吻を。



 完全無欠の世界。
 原初ともいうべき始祖が祝福し、太極まで至ってようやく、その大願の行き着く果てを、東・御星(破断創炎の閃鋼・f41665)は理解した。
 そして、行き詰まった。
 行き詰って、息が詰まりそうだった。
 全ての事象を観測し続け、数多ある可能性の道分かれを把握した全視のチカラ。そして認識した全てを救いたいと切望する全能の所業。

「ねえ、聞こえる? 聞こえているなら答えて……あなたの切に求めているものは何?」

 歩練師が仰向けに倒れている。
 彼女の知る限り、他の戦場にこのオブリビオンが出現した事象はない。ゆえに、他の可能性があるのかもわからない。ただ、血まみれに崩れて、心を折られ、魂さえも犯されている彼女に、応えるために。
 一人ひとりが尊重され、不平等が存在せず、全ての人が自分らしく生きることができる世界。
 個々の価値観や背景が受け入れられ、誰も孤立せず、支え合いながら成長できる環境。
 全員が物質的にも精神的にも破格の充実を得られる、過去への尊重と未来への配慮が成された社会。

「その全てを見せて?」

 どんな欲望であったとしても、それは願っただけ叶えられるべき切なる願い。
 一人ひとりが相互理解と協力を誓わなければ到底なしえないという当たり前のことに、御星はようやく気づいたのだ。世界は孤独に背負うものではないから、皆で作るものだから。彼女にとっての世界がここだけなら、まずはここから世界を始めよう。
 ずる、ずちゃ、と血濡れの音がする。彼女を打ち倒すのに相応の対価を支払ったカタチだ。近接戦に持ち込んでの舞踏、慣れないことはするモノじゃないなと自嘲する。今まで最適と最善を目指してきた自分からすれば信じられないような心境の変化なのだけれど、痛いものは痛い。

「同じだよね? 痛いのも、苦しいのも」

 肌が裂け、肺腑が抉れたような痛み、赤く染まる視界、ペラペラの表面だけのぶつかり合いではなく、心を裸にするため血に濡れた甲斐はあった。
 目を閉じて、今にもひとりでに動きそうな支配下にありながら、歩練師は待っているのがわかる。
 伝えや伝え、我が想い…其が総てを駆け巡らん……。

「ぁ……あぁあ……ッ」

 きっとどれほど絶望視していてもこの世界の美しさまでは疑えない。
 だから、この身が世界に致命的な打撃を与える前に、救ってほしい。
 舌を絡め、歯茎を舐め、啜り、それ一つが意思を持つかのように滑らかに絡まり合う。この《想ヒ伝ヘテ》くれるのは熱烈な口吻。言葉よりもリズミカルに、情動的に、伝達を超えて「重なり」合う。
 御星が見せた世界に、狂えし歩練師は静かに魅せられ、その手を取ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カシム・ディーン
UC常時発動
ひゃっはー!フィアの依頼だ!此奴はカシムさんも本気ださねーといけねぇよなぁ!
「ひゃっはー☆フィアちゃんに良い所見せないとね☆」

【情報収集・視力・戦闘知識】
中々ヤバそうな腕だが…だからこそ見切ってやる
その動きと構造と攻撃の方向性を冷徹に分析
【属性攻撃】
光属性
今回はスポットライトとして照らし
【念動力・空中戦・弾幕・スナイパー】
「ご主人サマー☆踊るんだぞ☆」
よりによっておめーとかよぉ!?
「照れちゃうご主人サマも可愛いぞ♥」
喧しい!
言いつつ飛び回り踊りながら念動光弾を叩き込み
フィアは僕の様な奴を受け入れた…そいつは僕にとってはとても嬉しい事だ
僕は実は下種野郎だしな
これでも好色なのは変えられねー
「メルシーの事もちゃんと受け入れてくれたのはとても嬉しかったぞ☆」
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・電撃】
舞ながらも電撃を纏って打刀で切り刻み焼きながら
鎌剣でも切り裂き
その武装や価値あるものを強奪
そして二人で歩練師を貪り尽くす
ヤるならヤられる覚悟はあるだろ
僕はねーが
「メルシーは後ろを味わうぞ☆」



「ひゃっはー! フィアの依頼だ! 此奴はカシムさんも本気ださねーといけねぇよなぁ!」
「ひゃっはー☆ フィアちゃんに良い所見せないとね☆ あ〜んでもでも待ちぼうけ過ぎて首がびろんびろに長くなっちゃったゾ☆」
「うおっ気持ち悪イどうなってんだそれ!」

 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は《対人戦術機構『詩文の神』》により「魔法少女モード」となったメルクリウス……メルシーと、やいのやいの騒いでいる。彼のそばにグリモア猟兵がいたならば、否、いたとしても、いつも通りだとしてツッコミはしなかったろう。彼の激しい「ツッコミ」を受けて白目を剥き鼻から血を流して悶絶するメルシーはどう贔屓目に見ても幸せそのものだ。煩悩が鼻から出ている。

「ガァア!」

 立て続けに猟兵からの攻撃を受けて満身創痍の歩練師は、肉体の内側から破損箇所を異形の白粘で修復し、再起動して襲いかかる。確かにその爪の殴打は強烈だろう。触れれば粉微塵になるかもしれない。

「中々ヤバそうな腕だが……ただそれは当たったらってだけの話だろ」

 鎌剣で斬り上げるような軌道でその爪を弾き飛ばすと、肘あたりからザグリと切断した。

「コイツは貰っといてやる。何かに使えそうだしな……」
「ぎぃ……ギィやアァアッ」
「おほぅ★ ご主人サマ今日は辛辣マシマシだぞ! 夜もハッスルハッスルぅ♪」

 怯んで動きを止めた胴体に、両手を携えて打ち出した渾身の念動光弾を叩き込む。連続で命中した念力の塊に、歩練師は錐揉みに回転しながら吹き飛ばされた。
 その手応えを感じて、右手の鎌剣を肩にかけて一旦立ち止まる。
 左手にはすらりと抜き放った、打刀。こちらは帯電し、強力な雷は彼が持つ多重属性を意味している。一度二度斬り飛ばしただけで終わるような敵ではない。彼女が全てを奪われた存在だというなら、それをさらに奪い返すのが盗賊の流儀だ。

「ちっ、なら今ここが黄昏だ。こいつの体を止めて、ヤるぞ」
「ちょ……ちょーいちょい。鬼畜モードに入るのもイいけど、ご主人サマー☆ 忘れてない? 踊るんだぞ☆ メルのここ、空いてますよ?」
「は? よりによっておめーとかよぉ、なんで僕が……!?」
「おっ照れてんのか? おっすおっす、照れちゃうご主人サマも可愛いぞ♥」

 どうにも締まらない気もするが、踊りの誘いを受け、それを以て応えること。それが死の舞踏であろうとも良いわけであったが、メルシーは一も二もなく親愛な主人とのデュエットダンスを所望した。
 この場合照れている、というよりはむしろ彼女のおねだり上手、といった気もするが、彼もまた青少年。悪い気は、しないのだろう。露悪的に努めているが、彼女はおちゃらけていても絶世の美女なのだ。そしてカシムを盲目的に崇拝している。
 ヤれといえばヤる、その生き方は変えられない。

「……受け入れた、か」

 目の前の敵は、どうあれ今の状況を受け入れて、こうして向かってきたのだろう。両手ごと爪を失っても爛々と目は輝き、焦げた衣装の下からは肢体を艶かしくむき出しにして、舌の先から涎を垂らしている。とても正気には見えないが、唆る肉体……というのはさておいて、そう、受容したのだ。
 甘んじて、この苦境に抗えず、受け入れてしまった。踊りを求めたことが、唯一の抵抗なのかもしれなかった。
 傷ついた肉体、その傷を無理やり修復させられる姿、体を支配する暴力的な熱情。
 正直、唆る。

「……僕は実は下種野郎だしな」
「知ってますわゾ。既ッ知知コンロ点火!」
「喧しい! ああいうのも守備範囲内でむしろイけるって話だ」

 カシムの中の誰かと重ね合わせて、クるものがあったのだ。彼女は僕の様な奴を受け入れた……慈母のように、愛妻として、そいつは僕にとってはとても嬉しい事だ。疑いようもない。そして、その愛では足りないくらいの好色家。一夫一妻などクソ食らえだ。

「メルシーの事も受け入れてとっても嬉しかったぞ☆ ご主人サマがワルかどうかは全部知ってて受け入れてるんじゃないかな」
「……わかったようなこと言うな」
「んででで鼻フックきぐぐぐ」

 悪童にして悪の花道を無人の荒野の如く縦横無尽に駆けていく。まるで舞にも踊りにも何の興味もなさそうに、それでいて歩いたその足取りが道になるのだと言わんばかりの電撃と念動の二属性乱れ切り。
 護符を、スラスターを、ついでに今し方斬り飛ばした腕も回収すると、取り憑いた渾沌氏の影響がないように念入りに念動力で覆い、掠め取った。おそらく残滓くらいのものなのだろうが、武装や価値あるものを強奪するのは盗賊として当然のマナーである。

「一番価値があるのは、ここだろ? あ? ヤるならヤられる覚悟はあるだろ。僕はねーが」
「メルシーは後ろを味わうぞ☆ ヤりたいことヤったもん勝ちだぞ♪」

 膝を曲げ、左右に開いた股。両膝をついたカシムが体を入れても無反応。露出させ、天へ向けて勃起した男根が女性器にあてがわれると、ピンク色の唇を噛んだ歩練師は瞼を固く閉じ背けるように顔を傾けた。手で覆い隠そうにもその腕はもはやない。あとはその覚悟を体に問いかけるだけだ、丹念に、執拗に。
 カシムが抽送しよう抱き抱えて持ち上げた隙に、メルは歩練師と地面の間にするりと転がり込んで、立派に生やしたソレをおもむろに突き上げた。

「ご主人サマがその気だったら……」
「だったら、僕の尻をそんな気色悪い目で見てたのか」
「ヒィン、マジ鬼畜な目線がクセになるぞ☆ 股間にキちゃう……」

 硬い男根が膣内に侵入する。出し入れすれば深い段差のカリ首が肉襞を擦る。ナカで交互に擦り合わされ内側がボコボコと抉られる感覚に、スイッチが入る。本気で感じ始める。子部屋が疼くのだ。孕みたいと脳に訴えてる。他ならないカシムの目には、彼女が欲情し始めているように映っていた。
 犯す者たちと犯される者。三人を照らす鈍い日の光は、古戦場に飛び散った激戦の跡でもある血痕と、ちぎられ打ち捨てられた歩練師の腕を浮かび上がらせた。
 羞恥を感じる心など、快感を感じる神経など、とうに失われているハズだ。にもかかわらずカシムという男を悦ばせるようにナカは熱く脈動し、ぬるぬると滴り落ちるほどの淫靡さを湛えている。

「結構イイな……そうだ歯を食いしばれ」
「未亡人相手に無理やり二人でなんて悪魔も真っ青な所業だよご主人サマ!」

 ――ずりゅっ……!

 長い男根が熱く畝る膣奥を押し広げ、最果ての子宮口にぶつかる。
 歩練師は眼球が飛び出るほど瞼を見開いた。奥歯を噛む、並びの良い白い歯が剥き出しになる。
 パンパンとリズミカルに音が鳴った。勢いよく叩きつけるカシムの股間が女性器や尻にぶつかった音だ。

「んぎぃぃぃっ!! んっ、ぎっ、んんっ!!」

 秘所は、激しく腰を打ちつけられてくことによってバチュバチュとイヤらしい水音が響くほどに潤っていく。膣内は男の○○を促すように蠢き、その動きに合わせて敵であるハズの彼女の口から喘ぎ声が漏れだしていた。その背徳的なシチュエーションに、メルシーもまたスイッチが入り、男性のセックスシンボルがこの敵の中でギンギンにそそり立っていく感覚に打ち震える。
 燃え上がる女の本能に逆らうことが、この機神の心をも蕩かし、淫靡に堕としていく。
 もはや後ろだけで満足できるものか。正面のカシムが腰を打ちつけたのを見るや否や、素早く抜き去ったメルシーの股間に歩練師の顔が埋まった。

「ぶっげっ……!?」
「ほら、ちゃんと舌も使って! おいしそうにぺろぺろって舐めるんだぞ☆」

 歯を立てるような抵抗を咎めるようにして膣奥を突くカシム。この主従は他者を犯すためなら最悪のコンビネーションを発揮する。
 抽送のリズムはどんどん早くなり、ぱんぱんと景気よく未亡人のお尻が鳴る。

「ぢゅぼっ、も゛っ……!? おっぶっ……!」

 前髪が強く引っ張られ、口内の肉棒が喉奥まで入り込む。口での呼吸がほとんどできなくなり、目を見開いて歩練師はもがいた。果たして肺腑がこの敵にとってどれほどの意味があろうか。メルシーにとって彼女はもはや性欲をぶつけるだけの肉袋。反射的に肉棒に舌を絡め、舌の腹が幹をなぞるたび、支配欲が満たされる快感が脳をよぎる。彼女の電脳に、自身が神であるという自覚と、価値あるものを屈服させる悦びで満たされる全能感。
 その気になればマッハ飛行も可能な彼女は、この牝を壊し切らないように最大限配慮しながら、しかし尊厳という価値あるものを根こそぎ簒奪する。
 メルシーは対人戦術の極地にある、神である。

 ――ずちゅ!

「そろそろ……ご主人サマ……♪」

 頭皮から千切れそうなくらい強く前髪が引いて、喉にある逸物をさらに深くまで呑み込ませる。
 メルシーの口から溢れるのはそんな偉大な神である彼女が絆を感じる、魔盗賊。彼の底なしの欲望もまたムクムクと突くたびに増長し、欲望を叩きつけるような強烈な衝撃を連続させる。
 変えられてしまった、目覚めさせられてしまったのは彼女だけではない。出会うものの多くが、カシムという男に魅せられる。乗機も、敵も、冒険仲間でさえも。
 前後から肉棒でぐちゃぐちゃに突かれるのは、この敵が生きながらに百獣の王に喰われる草食動物であることの何よりの証拠。

「そう、そうだ! 僕も……おおおおお……!」
「ああ……出る、出るぞ♪」

 ――どピュッ、どぴゅルルっ……! どぴゅルルどちゅチュウううっ……!!

「おっごおおおォォ……?!」

 肉棒を銜え込んだ牝胎の奥底がびゅくびゅくと子種を搾り取り、爆発した白濁の奔流が口腔から喉壁を犯していく。牝の本能が精子を体の内へ奥へと導き、種付けを促すように蠕動していくようだった。
 耐えかねたのだろう。堪らなくなったのだろう。込み上げた絹を裂くような声音にならない絶叫が、寂れた古戦場をびりびりと震わせた。
 それが新たなる悲劇の呼び水となることも知らずに。苦しみと痛みは絡まり合って、連鎖する。悪童たちも鼻で笑うような、とびきりの悲劇を携えて……。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『邪仙『珪珪』』

POW   :    知りたい!!|調べ《解剖し》たい!!
【戦場内に撒いた自身の本性・粘菌】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【今まで解剖した生物の部位を生やした姿】に変身する。
SPD   :    死んじゃうなんて勿体ない!お薬あげるね!
【自らの手】で切り裂いた自身の【体内で精製・保存している仙丹】を食べさせることで、対象の負傷を治療し、【副反応での極度の興奮・多幸感から限界突破】による攻擊能力を与える。
WIZ   :    あたしが壊れても、『あたし』がいるから
自身が戦闘で瀕死になると【身体が崩壊し、戦場内の泥から新たな身体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:片吟ペン太

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は結・縁貴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 勿体無い、勿体無いと、古戦場に声が響く。
 邪仙『珪珪』は音もなくそこにいた。猟兵の誰にも気づかれず、突然、いた。
 猟兵に一瞥することなく瀕死でのたうち回っている歩練師の首を掴むと、喉奥まで手を突っ込んだ。当然口腔は裂け、血が噴き出て、白目を剥く。
 だのに、喜色に染まった顔は恍惚の感涙を流して悦びを表していた。仙丹を強制的に投与されたのだ。人間にとっての麻薬のようなもので、賜与されれば理性などガラス細工の脆さで粉々に砕け散る。
 そこでようやくくるりと立ち返って。

「やあやあ諸君、皆の衆! あたしは無敵の珪珪様だ。全部の生物を解き明かしたい! その一心でわざわざここに顕現したわけだけど、まさか邪魔なんてしないよね。まさかね! バラして調べたいだけの善良なあたしを、それでいて完全無欠のこのあたしを! 邪魔なんてね?」

 ぐい、と、歩練師が立ち上がる。
 立ち上がらされる。
 宙から吊られた操り人形のように、復元した呪詛符を励起させ、再構築したスラスターを駆動し、腕をゼロから作り上げてより歪にさらに巨大に変形させて、恍惚無私の狂戦士に生まれ変わらせた。

「はい完成。珪珪様スペシャル!」
「……あは、あははは……」
「知りたい! 調べたい! これは衝動だよ。本能と言ってもいい純然なものさ。あたしは、まずこの世界を一旦壊してその中を覗いてみたい。きっとドロドロでぐちゃぐちゃで見るに耐えないもんだろうね。構造、構築、系譜! その全てを詳らかに――」
「ひひひひぁハハハ……ッ!!」
「……え……え、え〜ぇ……壊れた? 壊れちゃった? 参ったな……合体するには時間がかかりそうだなンこれは……あー、あー勿体無い。時間が勿体無い。この子治さなきゃだからさ、今すぐどっか行ってくれない?」

 不定形の腕が奇妙に肥大化し、珪珪はしっしと手を払うように猟兵たちの方を向く。
 向いて、歯を剥いて、笑う。

「ン〜なんだい、その目は」

 両手を広げて、くるりとその場で回って、ぴしゃりぱしゃりと波紋が広がる。
 マグマのようにドロドロで、ぷくりと泡沫を浮かべて、髪を燃やして体を極彩色に輝かせて。
 まるで存在するだけでこの世界の当たり前の法則を弄ぶかのように、踊る。

「あんまり喧しいと、バラしちゃうぞ❤︎」

 珪珪が無造作に、突然に、攻撃を仕掛けてきたところで猟兵たちの時間はひとたび止まる。
 もし、歩練師の願いを――密かに隠し持っていた《ウィッシュダンス》に応えた者がいたとするならば、歩練師はキミたちに頼み事をするだろう。それは『助けて欲しい』、ただ一つだ。元より能力も性格も戦闘向きではなく、かつての帝とも添い遂げられず、珪珪との合体も望むものではない。もし万全のまま珪珪に喰われでもしたら……さらなる悲劇がこの世界に襲い来る。その前にトドメを刺すなり何なりで、助けて欲しい。この際救いになるのならどんな手段でもよいと。
 珪珪と呼応して襲いかかる歩練師は、静かに笑ったように見えた。

「あは、ア、はァなあたハハハ――ッ!!」
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
特に語ることも有りませんねぇ。
始めましょう。

『FAS』で飛行、『FPS』による探査を開始すると共に『FLS』の空間歪曲障壁を形成しまして。
『FIS』で範囲内に敵方不在の状態を作り【闉廱】を発動、『玉域』を形成しますねぇ。
此方は外部からの損害に加え『範囲内への侵入』自体の遮断が可能、粘菌のサイズであれオブリビオンである以上は例外ではなく、歩練師さんも同様ですぅ。
後は戦場を『FMS』で覆って『玉域』と併せ逃げ場を封じ、『FRS』『FSS』の弾頭を『焼夷弾』に換装し[砲撃]、『FDS』の[爆撃]と『FES』の『火属性の魔力矢』も併せ、炎と熱による殺菌消毒と火葬を行いますねぇ。



「……あれ? 近づけない」

 およそ百歩の距離から夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)に近接できなくなったのは、飛行している彼女が展開する『祭器』の帯びる加護、すなわち《豊乳女神の加護・闉廱》の効果である。
 邪仙『珪珪』は歩練師と連携し、己の構成体で接触する算段であったが、アテが外れたと言えるだろう。傍らの歩練師はぐらぐらと立ち尽くすばかりであり、これを敵視して「適応」しても意味を為すまい。
 やむを得ず見上げながら声を上げてみる。

「そんなに、自分の身が惜しいかい? 降りてきなよン〜触れ合いの中からしか、真理に触れる機会は生まれないよん」
「特に語ることも有りませんねぇ」
「……ん、ま、邪魔しないでくれるならいっか……? あたしがこの子を治せばいいわけだし❤︎」

 るこるが安い挑発を受け取るハズもなく、特に対策も思い浮かばなかったので、傍らの助手に手を伸ばそうとして、ふとその手が止まる。
 空が明るい。そして、熱い。
 炎が唸りを上げ、祭器の一つ魔装布「FES」が素早く魔力の矢を番え、解き放ったのだ。放たれた炎の矢が命中した箇所は穿たれ、瞬時に火が広がり、あらゆるものを灰に変える。

「ひぃっあぢゃぢゃぢゃアヅイィッ」
「逃しませんよぉ」

 歩練師もろとも分散して配置した祭器により構築した包囲結界で逃げ場はない。即座に次の矢を番え、神力を込められれば、紅蓮の光を放ち、爆発音。折り重なる悲鳴。炎に包まれ、倒れる他ない。
 燃え盛る戦場を見渡し、るこるはぷるぷると体を震わせて、一瞬の静寂を感じる。すべてが炎に飲まれ、浄化されていく、その「後始末」をつけるまで、彼女の連続攻撃は終わらない。弾頭を換装した三種の神器による焼夷弾と爆撃を間断なく雨霰と降らし、逃げ場を封じたところで致命の一撃を加えていく。

「無敵の珪珪様の命を減らすなんて罪なヤツ! 命を何だと思ってるんだ……!」
「ガ……ァッ、グゥ……」
「へこたれてないで穴でも掘ってくれない? どのみち空からは逃げられないわけだしさンまた来た?!」
「言ったでしょう。逃しませんとぉ」

 焦熱が二人の敵を存分に焼く。ひとまとめに焼き焦がされた二人が文字通り命からがらでるこるの爆撃から逃げおおせたのは、当初の戦闘地から幾分と離れた、地中経路を構築できた頃合いだった。
 一切の負傷を被っていないるこるが他の猟兵にはマネできないような大戦果を上げたことは、もはや言うまでもないことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々木・ムツミ
【アドリブOK】
あー、なんだかとっても仲良くなれそうな人と出会っちゃったなぁ~。
許されるなら人をバラしたいみたいな?うん、とっても似ているわー。

それじゃああたしもそうさせてもらっていいかな?

【戦闘】
巨大な剣を振り回しつつ一点、珪珪に狙いを定めて攻撃を開始する。
お互いに攻撃が通る範囲でひたすら攻撃を行うことになるだろう。
不意をつくような素早い斬撃を繰り出してみせる。

リミッター解除して普段よりも強力な暴力的攻撃でひたすらに攻撃を仕掛ける。

「お互い理解し合ったうえでの殺し合い。こういうのって本当に…素敵な事だと思わない?」



 ――ザシュ……!

「お゛うっ?!」
「あー……あーいけないなぁ」

 ゆらり、ぐらり、とムツミは揺れながら、しかし超然とした笑みで珪珪を見遣る。巨大な剣を振り回しつつ一点、珪珪にターゲッティング。こんな玩具を、こんな同類を、見つけて離すものかと笑う。

「なんだかとっても仲良くなれそうな人と出会っちゃったなぁ~。許されるなら人をバラしたいみたいな? うん、とっても似ているわー。ねぇ。ねえ! 聞いてもいい? 聞いてもいいかなぁ」

 血に塗れ、今なお臓腑と腕とを切り捨てて鉄臭さを纏う愛刀に口付けし、彼女は笑う。
 彼女の一閃を目で追うことなどできなかった。どころか、それを捉えられるものが果たしてどれほどいるだろうか。
 爛々と輝くオッドアイは宝石のように眩く、宙にはハートのエフェクトが浮かぶかのよう。初恋さながらの慕情、ではない。

「許されないと解剖せないなんて、不自由だねぇ……」
「……もう一回いいかな?」
「許しの必要な範囲に見える部分に、真理なんかないってことさ! そのぐっちゃんぐっちゃになって混ざった中身は、唆るけどね」
「グ……ゥ゛ルガぁっ!!」

 「物干し竿」の振り下ろしで袈裟懸けに斬られつつも、傍らの歩練師に連携させる。今や激しく傷ついた肉人形とはいえ彼女を全く無視するわけにもいかず、ムツミの殺人術であるところの斬り上げの追撃は、歩練師が受け止める羽目になった。
 剥き出しの胸ぐらに、獰猛にも直接邪仙『珪珪』は歯を突き立てた。
 実際には付着した粘菌で咀嚼しているに過ぎないのだが、ムツミに恐怖よりも興奮を覚えさせるには十分な所作であった。

「い……いねッ。それじゃああたしもそうさせてもらっていいかな?」
「ハナからあたし狙いか! 研究熱心だねぇ感心感心!」
「お互い理解し合ったうえでの殺し合い。こういうのって本当に……素敵な事だと思わない?」
「そうだねぇ、わかるのは、あたしだけでいいかな! 無敵の珪珪様をわかる子なんて、この世にどれだけいるのやら!」

 顔面がめこりと不気味に膨張。いつの間にか三本の黒い尾も生えていた。残忍を通り越した暴力性の発露は、珪珪がかつて屠り解剖し尽くした古代の伝説の暴獣そのものの姿を現出させていた。
 唾液のしたたる不吉な喉鳴り。双眸が充血し理性を塗り潰す。
 珪珪はお返しにとばかりに、自在に動く三本の尾で打突の嵐に滅多打ちにする。骨が砕けたような鈍い音の連鎖は、ムツミが捌ききれずに受けたことを意味していた。

「かっ……! げっ、ギぃッ……!」

 筋肉がボコボコと隆起し、苦悶するムツミを三方向から一斉に殴打した。大ぶりな大刀で尾撃の雨を躱す術などなかった。打突がことごとくクリーンヒットし、刀の柄を握ったまま空中でのけ反る。
 ああ。
 ああ……やっと楽しくなってきた。

「あっがッ……!? あああアっ……!!」
「手応えありだ……なァッ?!」
「あぁあ……あは♪ このまま踊り明かそうよ、死ぬまで!」

 ぶちん、ぶつんと。
 脳の中で何かが千切れた音がする。それは誰かが架してくれたリミッター。相互理解のため、彼女はその枷さえも意図的に外してみせた。
 血の滴る口周りを舐めて、鬱陶しそうにぶぅんと剣を振るうと、まるで最初から動きが見えていたかのように尾の動きを拘束する。
 一本はスパイクのついたブーツで踏みつけにし、一本は空いた左手で掴んで、もう一本は股下を通る鎖を巻きつけて縛り上げて。

「――燕返し」

 ――ザンッ……!!

 一閃、二筋の傷が刻まれる。
 V字の斬撃が珪珪の目にもとまらず、どころか地面に消えない跡を残して、凄まじい威力の余波を立ち所に見舞う。

「ひぎっ、ぎゃっ、ひぎいいい?!」
「手応えないなぁ〜♪ もっと抵抗してよ死ぬ気で!」

 古戦場に転がる瓦礫を吹き飛ばし、地面を貫き、遠巻きに眺めていた歩練師を押し潰す。動くか動かないか、生物か非生物かの区別さえなく、周囲のすべてを薙ぎ払っていく。お互いに攻撃が通る範囲でひたすら攻撃を行う。どちらかが止めようとも、止めさせたいとも思わない、永遠に続く時間。ムツミはスイッチが入ってしまった。この昂りを収めるには、生半可な慰めは逆効果だ。
 地獄絵図と化したこの世界に、ムツミを理解できるものなどただ一人。
 彼女のうちに眠る闇だけ。浅薄な闇をひけらかすだけの邪仙のお遊戯では、ムツミの濃く、深い闇の深淵に太刀打ちできるハズもなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネフラ・ノーヴァ
フフ、それほど触れ合いを望むなら叶えよう。
自ら半身をはだけ胸をなぞり挑発、黄金の血瘡を浮かび上がらせ刺剣を抜く。
肉を切らせて血を断つ戦い。奴が結晶や金属を食らうかは知らないが、食い切れぬほどに形態、情報を常に変化させてみせよう。
変身に伴う隙を見切って刺突、貴公の血は何色か。返り血を浴びれば仙丹の影響も受けて刻々と昂る。
掴んで、噛みついて、引き千切って、なお美しき終焉をくれてやろう。



 ――ガリィッ……!

「ごちそうさま❤︎ 珪珪様に直々に解剖される栄誉を噛み締めるといいよ」
「フフ、モノを食いながら喋るとは、お代わりを馳走してやろう」

 《黄金血瘡》を艶やかに晒し、自ら半身をはだけ、胸をなぞり挑発するネフラ。そのボディラインに放つ色香の破壊力に、邪仙『珪珪』は忍耐の二文字を捨ててむしゃぶりついた。己の肉体を構成する細胞でネフラの肩口を抉ると、そのまま咀嚼する。
 しかし、その興味の向く先は舌ではない。眼前に黄金の血瘡を浮かび上がらせ、欠損した肉体をも即座に修復してみせたネフラそのものにある。

「……おもしろっ」

 食べたものの見た目と味わいが違うことなど山ほどある。無双の勇士の見てくれで、中身は塵芥であることもあった。素養と結果があべこべの無駄だらけなんてこともザラだ。だから思う。解剖して、思う。勿体無い、勿体無いと、思うのだ。
 もっと効率的に、もっと真理に近づいて、無駄なく理想に近づけるのに。

「混ざり物め」
「フフ、口だけ称賛しているのかい? それとも心から称賛しているのかな。そこだ」

 ざぐり、とお返しにとばかりに鮮烈な剣技が珪珪の肢体を貫く。
 ネフラはその黄金の肉体を以て疲労やバッドコンディションを全て無視する。澄んだ黄金が遍く光を取り込むように、あらゆる不純を取り除く。しかし剣技に一切の曇りはない。むしろ真の姿を晒したことで注意を奪って相手の瞳を濁らせ、剣の技を冴え渡らせることだろう。

 ――ボォッ……!

 飛散する出血。珪珪の血が空気に触れた瞬間、凄まじい勢いで引火発熱した。

「とりあえず熱だよね〜お約束でいえば!」
「だが、血の進化は黄金に輝く!」

 眼前に燃え広がる炎、確かに金の性質を持つ鉱物であったならば被害は免れまい。
 血棘の刺剣は炎さえも容易く貫く。鋭く射抜かれたような剣捌きは、炎の渦をその場に作るように旋回して、瞬く間に霧散させた。血が燃えるような生物を解剖していた、という経験はネフラには効かなかったらしい。あるいはどのような存在であればネフラの有効打となるのか。弱点を突くだけでは足りない。

「ギィアアアッ」
「フフ……まとめて来るがいい」

 歯をむき出しにし、地面を爪で抉りながら猛攻を仕掛ける歩練師。抜群のコンビネーション、には程遠い。むしろ1+1にしかならず化学反応も起きえない荒々しい暴力の重なり合い。
 ガギィ、と細剣で受け止めても火花が散る。車と正面衝突したかと錯覚するほどの勢いにも、ネフラは優美さを崩さない。これは単に相手を打ち負かす戦いではない。打ち負かすにも流儀がある。外道には声高に叫び、問わねばならない。貴公の血は何色か! と。

「遅い!」

 迫る凶刃を一刀にて突き放すと、珪珪が次なる変身に伴う隙を見切って刺突を見舞う。その剣先が抉り出したのは、仙丹。
 珪珪の体内で生成されると思しき、超復活の神薬。
 くり抜かれた眼球にも、真球の宝石にも、ガラス玉にも見えるそれを、ふたたびくびれた肢体を晒しながら舌先に乗せ、ごくりと飲み込んでみせた。効能は目の前でみせたとはいえ、意趣返しにしてはいささかやりすぎではないか? 珪珪は、眼前の宝石人の行き過ぎた行為に理解が追いつかず、貫かれた体の修復もままならない様子である。すなわち、勝機到来。

「フフ、これはこれは」
「……この珪珪様に理解できないモノが、まだこの世にあるなんて」
「そこが限界、言うなれば果てということさ。さぁ、美しき終焉をくれてやろう」

 黄金の嵐とも形容すべき、絶え間ない連続剣技が敵を襲う。
 頭で理解を超えられ、敗北を決め込んだ邪仙に打つ手はない。容赦なく貫かれ刻まれ、かつて他者にしてきた行いの報いを受けることになったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カシム・ディーン
さて…流石に抱いた(犯した?)奴に頼まれれば…応えたくなるのが心情って奴だな?
「後でまた遊びたいんでしょご主人サマってば☆」
ま、それもあるがな?

【情報収集・視力・戦闘知識】
2人の動きと状態を冷徹に把握
UC発動
【念動力・弾幕・空中戦】
超絶速度で飛び回りメルシーは歩練師の動きを止め
カシムは珪珪の動きを封じ

そのまま体当たりで二人を一気に引きはがす!

メルシー
【浄化・医術】
このまま歩練師を抱きしめ…再び生やしてその身体を抱きながらその身を汚染から解放するように浄化

カシム
お前は色々調べたいようだな?だったらお前自身も調べられる覚悟はあるんだよなぁ?
という訳で超高速で切り刻み無力化してから服も刻み存分に貪り尽くす

そうだな…取り合えずお前の身体がどれくらい気持ちいいか調べてみようか

容赦なく注ぐが仙丹効果で即座に回復するもより劣情が高まり容赦なく捕らえ己の欲望をぶつけ続ける
その胸も口も味わい尽くし

世界を壊したいというなら自分が壊される覚悟もしねーとなぁ?
まぁ…僕はそんなんねーが…味合わせて貰うぜ?



 カシムとメルシーはにんまりと笑った。
 好敵手を前にする笑みでも、慈しみを湛えた笑みでもない。只管性的な搾取の対象として眼前の存在を見遣る、悪童の眼差しだ。「お前は色々調べたいようだな? だったらお前自身も調べられる覚悟はあるんだよなぁ?」と笑みを隠さず、どころか欲望すら露骨に押し出したまま《メルシー&カシム『ロバーズランペイジ』》で逆撃に転じる。高速機動からの連続攻撃、これで無力化し邪仙『珪珪』をいただく算段のようだ。

「ん? うぇ!?」
「そうだな……取り合えずお前の身体がどれくらい気持ちいいか調べてみようか」

 一閃、上下真っ二つになった肉体を持ち、その極彩色の下腹部に己の肢体を擦り付けようとする。
 自分が壊されていく、という恐怖を与えるお仕置きのつもりで、カシムは邪仙へ手を出した。セクハラ的スキンシップではあるが、それを見返す珪珪の目線は冷ややかなものだ。なにせ強襲により五体バラバラになるのを踏みとどまって、上下は泣き別れしている有り様である。そして、彼女にとってそれは甚大なダメージにはなり得ない。

「う……うう、こんなところで死んじゃうなんて勿体ない! あたしが失われるなんて世界の損失だと、そこのあの子も言っている」
「うわっ!」
「と思うよォ多分ね!」

 振り翳した爪、背後に迫る一撃。操り人形と化した歩練師が白い悲鳴の残響を空間に刻みながら、包囲するように襲いかかる。カシムから見れば止まってるような遅さだが、まともに受けては無傷で済まない。再びの高速機動で一旦距離を取る。

「ご主人サマ! 距離をとった途端に何か食べ始めたよ! もぐもぐたいむだね☆」
「お前は飛び回って動きを止めろ」
「ラジャったよ!」

 この戦いは命のやり取りではなく遊びだ。時間の許す限り「上玉」の女子二人を抱いて遊び回したい。できるならば屈服させてモノにしたい。「後でまた遊びたいんでしょご主人サマってば☆」とニシシと笑うメルシーの言葉に、カシムは鼻を鳴らす。
 ぽりぽりと仙丹を食んでいた珪珪は、上体と下体を「くっつけ」ると、頬を掻く。

「逆になんでヤれると思ったんだい。この無敵の珪珪様相手に」
「ご主人サマ! アイツ一丁前に倫理説いてるよ! ヤっちゃう? ヤっちゃお!」

 悪は悪でもメルシーは神機、言うなれば悪神とでも言うべき存在である。神である彼女が崇めるのは運命さえも弄び、手に入れたいと思ったものは手段を選ばず手に入れる盗賊王。悪童カシムらの前では生半可な悪人も形無しということか。そこにはモラルなど存在しない。あるのは純粋な欲望のみ。僕は欲張りなんです、と彼自身が言う通り……。
 先ほど散々味わった歩練師を羽交締めにし、身動き取れなくしたところで、カシムは体当たりを喰らわせた。
 空間に張り巡らされた、己が発した「残響」。空間に刻み込まれたような得体の知れない浮遊物へ歩練師を叩きつける要領での渾身の体当たり! その衝撃にミシミシと大気が揺れ、古戦場にこの世のものと思えない悍ましい悲鳴が響き渡る。これからすることは浄化だ。あらゆる苦痛と苦悶を絞り出した後、空っぽになった器へこれでもかとばかりに「浄化」の因子を注ぎ込む。

「あはぁ……アツくなってきちゃったぞ♪」

 耳孔へと舌をれるんと伸ばし、もはや興奮冷めやまぬ体で熱く激る欲情棒を生やしてグッズグズと擦り付ける。その艶かしさたるや天にも昇る心地で、歩練師が生娘であったならばその淫蕩さだけで即座に達していたことだろう。

「叫びを垂れ流すだけのその口も、使い道はありそうだ」
「ヒューッ☆ ご主人サマおにちくとかいて鬼畜だぞ♪」

 それが当たり前だと言わんばかりに下腹を露出させ、舌を出して喘ぐ敵に向け、高速で咽喉を貫いてみせる。ヤる気も、その覚悟もない珪珪の前に、歩練師の浄化を優先する。といっても彼の行為そのものに浄化の機能が備わっているわけではない。ただただ純然たる超速の破壊行為で無力化し、物言わぬ敵を性処理に使うだけだ。服も装備も刻んで貪り尽くすため。
 彼はそれを、己の当然の権利だと主張した。

「ヌルヌルであったかい……な」
「ん……っ、どんどんスパートかけちゃう☆」

 ここが戦場であることも、敵が慈悲の必要のないオブリビオンであるという免罪符が忘れさせてくれる。彼にとって都合のいい存在だった。思う様斬れて、思う様ヤれる、そんな存在を捨て置けるものか。
 ドクドクと己の下腹の血流がぐっと高まるのを感じると、一息に突き出し根元まで口腔へ押し込んだ。

「……もいっこ仙丹追加しとこっか」
「まだあるんだな?」
「んひッ?! あー……あー痛ゥ……ッ」

 果ててなお激る欲望は、分断したハズの珪珪に追いすがり、その手から仙丹をぶん取ることで成就する。そして、再燃する。珪珪の体内で精製・保存している仙丹を彼女の手を切断して奪い取ると、そのまま一息に飲み込んだのだ。副反応で湧き上がるのは極度の興奮と多幸感だが、元よりバーストした理性が堰き止められる欲などたかが知れている。
 彼の両手は片手にメルシーを、もう片手に歩練師を抱きしめて、そのまま鯖折りにせん勢いで組み伏せた。

「おぎょ、ご主人サマ、はげ、し……☆」
「踊り続けてやるよ、望み通り、今度は待ったなしだ」
「あ……ぎ……ぃ」

 暴力的に、不可逆的に、二人を犯し、喰らう。
 幸せの桃色に染まる視界は脳裏から分泌される快楽物質の過剰供給か。二人の美女を跪かせ、己に奉仕させる充足感。天上天下唯我独尊、間違いなく彼はこの戦場の王として降臨した。その命を縊るのも、命乞いさせるのも、命脈さえも手のひらの上。
 窘める臣下も、いない。今の彼は幸せの絶頂に在って神に等しいのだから。

「もっと奉仕しろよ、僕に」

 彼は笑っていた。紛れもなく幸せそうであった。その幸せを奪う権利は、誰にもない。襲いかかるには好機であるにも関わらず、珪珪は再生に努め反撃することを放棄しているようであった。歩練師には使い道がある。いずれ来たる真理の探究のため、ここは膝を屈してでも、やり過ごす必要があるのだから。

「痛テ……はー、あるんだねぇ、世にはまだわからないモノが」

 だから面白い……のだけれど、少なくとも今、珪珪にとって全く愉快でない状況であることは言うまでもないことであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

古賀・茉莉
解き明かすなら解き明かすなら自分の体を使えばいいんじゃないかな、身近で神秘的なものでしょ?
まぁ、いまのボクはもう半分くらいあなたの観さみたいものが見えてるかもしれないけどね。
手で腸を抑えているけどヌルヌルして、んうっ…。
つまらないでしょ、暴く前に見えてるんだから。

両手で双剣を構えるよ、お腹の傷は…まあ、しょうがないよね。
歩練師に意識が向かないようにボクをターゲットにさせるように挑発。
なんならはらわたを触らせてもいい。
腸を揉まれるのは気持ち悪いけど…勝手に体も痙攣する。

ところで、あなたは自分が「暴かれる」側になるっていう事を考えたことはないのかな?
その完全無欠、ボクが暴いてあげようか?
狩られる側の気持ちになったら…動けなくなったちゃうかもしれないね?

こいつを倒したら歩錬師さんは救われたらいいな、なんて考えながら。
暴き暴かれ、人体の秘密を確かめ合おうか?



「んうっ……」
「なぁんだ! ンまだ隠してるじゃないか! 頼りの相棒クンとの共同作業で捌いちゃおっと」
「く……つまらないでしょ、暴く前に見えてるんだから」

 珪珪は群体生物たる己が体で素早く茉莉を後ろから拘束すると、多幸感でハイになってる歩練師は挟み込むように茉莉を脅かす。彼女が手で下腹……腸を抑えているもヌルヌルしてその手つきは覚束なく、振り払えるような力を絞り出すことも難しい。
 凹ませていたお腹を修復しようと元の位置に戻った瞬間、お腹の動きに追従するように狙いを定めていた歩練師の大爪が、傷口を広げようと突き刺さり、茉莉は臍から感じる今までにない衝撃と、今度こそ完膚なく刺されたという現実感に、抑えきれない悲鳴の声を出す。

「い゙っ……ぎィッ……っ……あ゙っ……?!」

 普段から隠すことのない臍へ、鋭利な爪が突き刺さったまま、震え、耐えながら顔を下に向けて、自らの腹部を見る。臍が左右に裂け、突き刺さっている爪の形に沿って「く」の字に少し変形しているのが見えただろうか。
 抉ろうと爪の先がうねり、穿る。彼女のお腹に刺さっている鋭さを増した状態の先端が小腸に穴を空け、その先でうねうね動く感触が茉莉を襲うのだ。

「あ゙っ……!? や、やめっ……ボク、こっ……こわ、れ……っ!?」

 穿られるたびに激痛が走り、全身をヒリつかせると同時に今までにない快感も襲う。臍は性感帯の一つ、そこから爪で突き刺されることで、苦痛と共に一種の快感を得たのは間違いない。さらに容赦なく爪を奥へと突いていく。そのたびに彼女の身体はビクつくが、口はしっかりと閉じ、涙目になりながらも堪え続けていた。

「耐えるなあ……もういいや、一思いにヤっちゃって」
「ぎいィア!!」

 ――ぶぢぶぢ……ブヂィ!!

 そして、ついに、不意に、目を見開き、口から、腹から、そして背中から。そして誰も聞いたことがないような声を上げながら、大量の鮮血が迸る。

「ンぐっ……ぅぼっ……! ぁあ゙あ゙あ゙あ!! ォあ゙あ゙〜〜ッ!?」

 歩練師は狂ったような笑い声をあげる。
 腹パンチのような、めり込む打撃に、抉り込むように回しながら鋭い刺突を加えたような攻撃で、茉莉のお腹を刺し貫いたのだ。
 人体は金属を受け入れる形になっていない。
 貫通されたことで腹部内は圧迫され、息苦しさが増したのも一瞬。
 小腸や大腸の一部が裂け、背骨は砕け、爪は貫通して背中を破り、鮮血と共に顔を出した。その瞬間、ドバッと砕けた背骨の欠片や腹大動脈などの一部も顔を覗かせて、背後の珪珪に降りかかる。

「あ……ぁ゙……ボク……ぁ……が……」

 神秘を解き明かすなら、自分の体でやればいいと啖呵を切るつもりだった。しかし興味深げに降りかかった血肉を「喰らう」珪珪と、その狂気に付き従う歩練師に、退屈の二文字など存在しないのだ。
 はらわたを触られる感覚。ズブズブと入ってくるのは後ろから、貫通した穴の隙間を縫って、珪珪は後ろから、歩練師は前から爪で、挟んで茉莉を探求する。腸を揉まれるなんて気持ち悪いだけ……そのハズなのに、勝手に体も痙攣してしまう。間違いなく生命の危機に、交感神経が暴走し、がぼごぼと吐血で溺れそうになって視界が赤から白へと染まる。

「笑ってる。へぇ、あ。生きてる、的な感じ? その顔、なるほどね。その感情がどこから出てくるのか調べるまでは捨てるのは勿体無いや」
「……好き……に、なんて、させるもんか……」

 悔し紛れに焦点の合わない目を見開きながら、心中は自分の腹部を見て驚きを隠せない。ただでさえ下腹は裂かれていたのに、今や前後から貫通して鮮血が噴き出している。ウエストラインギリギリまでの太さがある剛爪が胸下から股ぐら近いところまでを真っ二つにしながら、ついさっきまで美しかった腹へめり込んで引き裂かれて、無惨に醜くなっているのだから。
 この時点で茉莉の意識は半ば消えかかっていたが、闇に沈もうとする彼女を救ったのは彼女自身の殺人鬼としての本能。
 殺意で繋ぎ止めようと意識が覚醒させられ、激しい痛みを感じながらも意識を完全に取り戻した茉莉は、言葉を発し続けていた。

「……その完全無欠、ボクが暴いてあげようか? 暴き合いの方が、真実に近づける、そう思わないかい」

 珪珪が、初めて恐怖する。
 今この瞬間にもゆっくりと肌の繊維質が切れていくおぞましい感覚が茉莉の全身に走る。もう身体を自分から動かすことができない手傷。両手、両足に巻き付つくように拘束している珪珪の触腕と、歩練師がお腹を串刺しにしたままにしている極太の爪に支えられながら、弓なりの形で涙と血、冷や汗を流し震えている、死に体の女。
 それに、恐怖、している。恐怖した?

「あ……暴くのは、このあたし!」

 珪珪は肥大化させた片手を挿入しやすい形状へ変化させると、股ぐらの方まで「伸ばし」て、表面の尖りで腟壁を傷つけつつ、奥へ奥へと押し込む。この狂気的な生存本能と殺戮衝動を抱える茉莉に、武骨な異物が腟内へ挿入されることに慣れているとは思えなかった。ゆえに、子部屋の入り口までやすやす到達すると、死の宣告を、胴体に開いた穴越しに宣言する。

「このまま引き摺り出しちゃおっか」

 知識欲をかなぐり捨ててむき出しにするのは、次なる拷問への欲望であった。
 群体である彼女にとって生殖能力は如何なるほどの価値があるのは不明瞭だが、少くともこの不敵な笑みを浮かべる存在に与える屈辱としては十分だろう。これで生を謳歌できるならしてみるがいいという挑戦でもある。
 「返し」をつけたまま抜こうとすると表面が子宮内の肉に引っかかってしまう為、押し込んだ時よりも強い力を加えて引き抜かなければならなかった。

「……げ、ぶ……歩錬師さんは……」
「あ?」
「解放して、あげて……無粋な邪魔要らずで、人体の秘密を確かめ合お……? い……い? 3秒だけ慈悲をあげるね」

 暴き暴かれ、傷つけ合う。生きたまま子宮を引きずり出される痛みは想像を絶し、大量の涙を散らして喚いてしまう絶望のハズ。にも関わらず他人を慮る余裕さえあるとは、一層の焦燥感を掻き立てた

 ――ずりゅ……!

 子宮の先が見え始めた頃合いで、珪珪は瞬間的な怪力を発揮して一気に腕ごと引き抜き、同時に赤く照り輝いた子宮が腟穴から飛び出して眼下に晒された。

「あ……ぎ……そ、んな……がフッ」
「ふんだ!」
「イ゛イ゛イ゛〜〜ッ?!!」

 焼け爛れたように腫れて鮮血に塗れる子宮を眼下に構え、力を加減する事無く、子宮を思いきり踏み潰した。ブニュッとした踏み心地。それに続き、踏み込まれた圧力で肉は弾け散り、彼女の子宮が断末魔の悲鳴をあげる。
 当然、子宮を潰された際のショックで凄惨な死を迎え……ることもなく、茉莉は生きている。
 腹胎に元々入っていた臓器の一部が垂れ下がり、普通は見れない内臓が顔を出してしまっているため、一層惨たらしくも、生は未だ十全だ。目を見開きながら痙攣で腹が突き上がり、まだ体内に残っていた大量の血が背と腹から噴水のように噴き出しびちゃ、びちゃと音を立てて地面に落ちる。

「ゔっ……ぐぷっ……! ごはっ……」

 珪珪は心理的にはもはや完全な敗者と成り果てながら、もはや身動き取れずにいた。自分自身の浅はかさを突きつけられたような心地で、それを恐怖と言っていいのかあるいは屈服と捉えてよいのか、影より迫る脅威への対処に全く追いつかなかった。

「あたしは……完全無欠の……」
「だから……暴いてあげたよ、そのハリボテ」

 名もなき殺人鬼の影が、慈悲の三秒を数えた後、無慈悲に刃を振り下ろす。
 あなたは自分が「暴かれる」側になるっていう事を考えたことはないのかな?
 言外に、そんな問いが投げかけられていたのだと気づいた時にはもう遅い。頭でわかるより先に身体には生々しい感覚が残っていたのであった。
 すなわち、影を通して現出した茉莉の捨て身の一撃が、珪珪の命脈を刈り取ったのだと。こんなハズでは、なんて後悔をしたのも遥か過去。

「こんな……あり得ない……ィ」
「ハぁ……ぜっ、ぐぶ……まだ、まだ……!」

 一歩歩き、身を揺するたびに大切なモノがこぼれ落ちていく。血みどろの古戦場を独り征く。ゆっくり、腹を抱える、進む。生きた証を、生きている証を取り落とさないように
 次いで、茉莉は歩錬師にも斬撃を与える。深々とドス黒い殺意を向けられて、狂気の中でも覚悟した。そんな覚悟の相手には無条件に裁きの剣を突き立てるのが《やがて訪れる死の刃》。悪に対する裁きは平等だ、まるで万人に訪れる死という終わりのカタチ。
 どちらが獲物で、どちらが暴く対象で、という当たり前の事実から目を逸らし続けた邪仙が迎える末路としては、あまりに当然の帰結であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

支倉・錫華
いるよね。
ただの『殺人衝動』に『研究』みたいな理由をつけて正当化してるの。
基本的に壊れてるんだけど、時々天才がいるから困るんだよね。
ま、どっちにしても迷惑なんでご退場願いたいけど。

でもその前に――。
一度刃を交えたなら縁もある。『歩練師』の願いを先に叶えてからにしよう。

とはいえ2対1はちょっと厳しいから……。

アミシア、わたしは|この子《ナズグル》の操縦に集中するから、サポートよろしく。
『しゃべってはいませんでしたが、ずっとしていましたけど?』

いや、そこで冷静にツッコまれても。気分だから。
『では……Yes.マスター。操縦はそちらに、チューンは機動5倍で管制します。装甲が半減するのでお気をつけて』

『歩練師』に【歌仙】で攻撃していくね。今度こそしっかり『助けて』あげるよ。
『珪珪』の攻撃は回避と【天磐】で凌いでいこう。

動力制御とかしない分全開戦闘できるし、2対2なら負ける気はしないね。

こんな助け方しかできないのは申し訳ないけど、
そこは『珪珪』もしっかり骸の海に還すってことで許してほしいかな。



 世界が回り、影が追従するように踊る。
 錫華は真剣な面持ちで操縦コンソールを叩き、珪珪と歩練師の攻撃を捌いていく。珪珪の巨腕はキャバリアを握りつぶし、歩練師の爪は金属を容易く両断する。当たれば、というもしもの話ではあるが、しかしその威力は折り紙つきである。にも関わらず、コクピットの錫華は思いを馳せていた。

「アミシア、わたしは|この子《ナズグル》の操縦に集中するから、サポートよろしく。いけるよね」
『しゃべってはいませんでしたが、ずっとしていましたけど?』

 打てば響くように、電子音ならざる流暢さよ返答。パートナーユニットであるアミシアが、一も二もなく承諾する。古戦場にいるのは目に見える存在だけではない。在る、とはたったいまこの場で結んだものも含む。一度刃を交えたなら縁もある。歩練師の願いを先に叶えるため、ナズグルは躍動する。

「このあたしは幾千幾万幾億の命! たった一人で戦うそちらに、負ける道理はないってわからないかな? あたしは無敵の――」

 ――ガァン……!

 実体剣が真っ直ぐに振り下ろされる。今までより数段スピードを上げた剣速が、空気をも両断する。

「なっ……」
「でも、こういうのは言ってこそじゃないかな? 気分だから」
『では……Yes.マスター。操縦はそちらに、チューンは機動5倍で管制します。装甲が半減するのでお気をつけて』

 パラパラと剣が持ち上がるにつれ、塵と化した瓦礫が舞う。まともに当たれば粉微塵。珪珪の軽妙な口ぶりはぱったり鳴りをひそめ、睨みつける。
 なんなのだ、コイツらは。
 何を以て邪魔をするんだ。完全なる生命が真理を探究する、その崇高な目的を、どうしてこうも!

「何をぶつくさ、言ってるのさ!」
「ギイィアアッ!!」

 悲鳴のような咆哮を上げ、空間に刻み込む蜘蛛の巣のように張り巡らされた残響。ワイヤートラップさながらに展開した攻撃を、歌仙の正確な斬撃が切り捨てていく。機動力だけでなく正確無比、死神が振り翳す鎌のように冷酷で、必ずやその命を刈り取るという強使命感が刀身へと宿っている。
 もはや小細工など無意味。そう悟った歩練師はスラスターを限界まで稼働させ突撃する。

「今度こそしっかり『助けて』あげるよ。覚悟はいい」

 全天周囲コックピットの中、決して届かない呟きをしかししっかりと噛み締めながら、言う。
 その覚悟を無駄にはしない。目を閉じ、ゆっくりと開く。この血風吹き荒ぶ古戦場において、結んだ繋がりを切り離す時が来たのだ。あの空間にこびり付いた糸は、彼女が望まない戦いに縛られている何よりの証左。で在るならば、断ち切れるのはこの一刀のみ。

「はああぁあッ!!」

 ――ザンッッッ!!

 突撃してくる適性存在に向かってHammerで立ち向かうように逆加速。刹那、すれ違いざまの一瞬で、一刀の下斬り伏せてみせる。
 断末魔の叫びと共に、白い血潮を飛び散らせ、見事に宿業を絶ってみせた。

「な……一撃……?!」
「次はあなたの番」
「く……っそ……」

 斬られた半身を珪珪は咄嗟に「喰らい」より適合した巨体を以て立ちはだかる。キャバリアと比べても遜色のない図体と膂力で、いよいよ形振り構ってない。
 妖しく輝く日輪のように、赤と青、極彩色に彩られた巨大珪珪は、勝ち誇ったように狂喜した。

「もとから2対2なら負ける気はしなかったけど、諦めてはくれないかな?」
「違うねェ! 幾億の命脈に、たった一つの命で勝てる道理はないのさ。単純な話だよ!」
「ああ……」

 ま、どっちにしても迷惑なんでご退場願いたいけど。
 それでもこんな外道に使われる命だったかと思うと、やるせない気持ちが込み上げてくる。とっとと解放してあげられたのがせめてもの救いか。もはや先ほどまでの切れ物と思える才覚は感じられない。己の全能感に溺れ、力を振り翳すだけの精神的弱者。きっと、ただの『殺人衝動』に『研究』みたいな理由をつけて正当化してる、幼い存在だったのだろう。
 返す言葉も思い浮かばない。話するだけ時間の無駄だ。

「こんな助け方しかできなかったけど、許してほしい」
「何の話!」
「こっちの……話だよ!」

 火花が明滅し、空気が打ち震える。巨腕と実体剣がぶつかり、空気が燃えて鳴動。直視できないような閃光に一瞬時が止まったかのようだった。
 片割れが消えた今、融合して殲禍炎剣の宝貝を復活させる望みも潰えた。ゆえにこの戦いは、眼前の敵を本能の赴くまま倒すという子供じみた願望に終始する。振り翳した暴力性の矛先に、錫華はたまたま選ばれたにすぎない。最後の戦いが始まった。
 Hammerを擦り切らせるまでに稼働させ、地面に轍を残しながら《脈動臨界チューニング》をフル稼働させる。

「ちょこまかとォッ」

 その動きは人の動きより早く、生身同士の戦いよりダイナミックで、まさしく機械巨人というべきナズグルの限界を超えたムーブであった。
 単にサイズアップしただけの邪仙は、その圧倒的猛攻に少しずつ追い詰められていく。
 一撃一撃が、重く、鋭い。反抗の芽を摘み取り、退路を断ち、戦況を支配する。決した大勢が覆ることはないように、抜群のコンビネーションが邪仙の思惑を超えた瞬間でもあった。
 ぐわりと舞い上がる巨体、そのまま前に突き出した足が、珪珪を蹴り飛ばす。

「こんなハズじゃ、ぐぅえッ?!」
「しっかり骸の海に還すよ。わたしは影だから、影ながら仕事を、責任を果たす」

 せめてこの祈りが、彼女を縛る呪いに届いて解き放ってくれますように。
 ぐっと大剣歌仙を鋭く構え直し、倒れてもんどり打つ珪珪に狙いを定める。
 彼女がいう完璧な生命であったとしても、完璧を凌駕して飲み込むのが影だ。どんな光も、塗り潰してしまう黒い影。何物にも染まらない、純然たる使命感。彼女の優れた戦術眼とアミシアの分析は、静かに眼前の巨悪の『弱点』に狙いを定めていた。

『最大出力いけます! 今です!』
「……いく!」

 黒いオーラを纏って、音を置き去りにするスピードで猛突進。スローモーションで向かってくる太刀。その末期の瞬間に、珪珪は恐怖した。斬られたら、死ぬ。斬られたら死ぬ?! 斬られたら、死ぬ、と! 哀しき邪仙は、奇しくも己が命の危機に関しては人一倍敏感であった。まるであれだけ他人の命を弄んだにも関わらず、己の命は惜しむかのように。

「ぁたしは、天才なンだあぁあああーッ!!」
「はぁあああッ!!」

 両手を前に突き出し、拒むように腕をクロスする。その勢いを少しでも止めようと、恐怖の声をあげて、硬化させた巨腕部をその刃にぶつける。そして、止まる。ほんの、ほんの一瞬だけ、インパクトが弱まる。やった、止まった。珪珪は笑った。
 ぴき、ぱき、ひび割れて。
 彼女の狂った喜びごと、錫華の使命を帯びた一刀が、すれ違いざま、粉々に打ち砕いた。
 続け様に、断末魔の悲鳴が戦場に木霊する。

「ぎゃあいぁあああ……ぁああッ?!」

 散々に命を嘲笑い弄んできた狂気の天才の末路、それにしては呆気ない幕切れである。
 空間に散り散りに消え、世界の裏側に溶けていくソレを、錫華は振り返りもしなければ目線をくれもしない。確かな手応えと温かな心残りを秘めたまま、コクピットの中天を見上げる。二つの命は葬り去った。あの遥かな天に、威圧するような星が再び浮かぶことはないだろう。脅威は確かに去ったのだ。
 感謝も、恩義も、褒賞もない。アミシアの労いの声が、そっと耳に響く。……それだけで十分だった。
 ――長かった、夜は、今明けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年03月09日
宿敵 『邪仙『珪珪』』 を撃破!


挿絵イラスト