Romanttinen kesälento
●夏の夜空に包まれて
どこまでも空が続く世界、ブルーアルカディア。時刻は夜。
見渡す限り広がる星空の中に一艇の船が飛んでいる。
この日の為に用意したのは空を飛ぶ、全長30m程の本格的なキャラベル帆船。
船首では鉄道車掌の姿をした魔導ゴーレムが自動操縦しており、何かあっても安心だ。
二人は帆船のお泊り用スペースの中、ふかふかのベッドの上で仲良く横になっていた。
静かに瞬く星々と雲海以外には何も無い、文字通り2人だけの世界。
「果てなく続く雲海と満天の星……ふ、幻想的で美しい光景ではある。」
クリストフ(f16927)が言う。
「星空……、星空って何か感じるものがあるなぁ…。」
ガラス張りの様に透明なドーム天蓋から星空を見上げて、ユスミ(f19249)。
「|Niin on, mutta sinä olet vielä kauniimpi, Jusumi.《そうだな、だがユスミの方がもっと美しいぞ。》」
そっとクリストフがユスミの顎に優しく指を添える。
「|Ä...Älä sano mitään noloa...《は…恥ずかしいこと言わないで…》」
ユスミは少し頬を火照らせながら、恥ずかし気にクリストフから視線を外した。
「ふ、事実なのだから仕方があるまい?」
それをクリストフは容認するかの如く、微笑む。
「しかしユスミと出会い早3年か……」
初めての瞬間はいつだったか。
クリスマスの日に肩を抱き寄せたのが転機であったか。
「もう3年も経ったんだ。まだ1年くらいかと思ってた…。」
「そろそろ頃合いだ、改めてこの言葉を送ろう。ユスミ、|Tuletko vaimokseni?《私の伴侶となってくれないか?》」
クリストフがユスミを抱き寄せていく。
「は、伴侶って…!」
「言うなれば結婚だな。お互いの愛を公の前で、永遠のものであると認めさせる。」
「結婚結婚って…、まだ早いって言ってるのに……。」
ユスミはまた顔を赤らめた。
「む?しかしユスミも今年で15、別段早いという程でも……義母殿も16だったと聞くぞ?」
ユスミの義母のエミーリアは16で意中の殿方と婚姻を結んだのだ。
「ま、ママが16才なら…、ボクだって一緒でいいじゃない…。」
しどろもどろと毛布に顔を埋めるユスミ。3年付き合っている仲だが、未だに引っ込み思案が強い。
「くくく、成程?では来年ならば良いのだな?」
「…あぅ…」
墓穴を掘ったかのように、ユスミは再度顔を赤らめ、顔を深めに毛布に埋めた。
「あぁ、そういえばこれもあった。」
そう言うとクリストフは一枚の紙を取り出した。
いつかの誕生日に頂いたパスチケットだ。
そのフリーパスのチケットは――
「一度だけ、なんでも望みを叶えてくれるとの事だったな。」
「え…、う、うん…。」
そうユスミが言った傍からクリストフが動く。
「私の望みならば簡単だ……|Jusumi, Haluan sinut.《ユスミ、お前が欲しい。》」
毛布を伝って、ユスミの上に覆いかぶさるように抱き寄せる。
「ふ、魔王が人の法に縛られてばかりというのも可笑しな話だろう?」
クリストフはユスミに熱い口付けを交わした。
「…………。」
ユスミはそれを抵抗する事無く受け止めたのだった。
●眠りの後、魔王は微睡むかのように
UDCアースにもありそうな夏の大三角の星がロマンチックに通り過ぎる夏の夜。
「…すぅ…すぅ…」
「……む、眠ったか。」
更けてきた時の中、先にユスミが目を閉じる。
パジャマ姿で可愛くしなだれ、いつもと違う表情を見せるユスミ。
人見知りが可愛い彼女の寝顔が、今、無防備にクリストフの目の前に姿を見せている。
空の旅は快適に。
室内は夜の風を受ける事は無いが、外から船に当たる夜風の揺れが心地好く伝わってくるようだ。
「ユスミ、魔法は時として星を見るのであったな。」
ぼふっと静かな音で、改めてクリストフは寝床の枕に体を預け、天蓋の夜空を見上げる。
「どうだ?北欧の冬の星を見る娘よ、夏の星空は新鮮か……?」
「……んぅ……」
心地よく寝息を立てながら、クリストフの方へとユスミは寝返りを打つ。
「そうか」
クリストフはその顔を見て、そっとユスミの髪に手を添えた。
手入れの届いた、治らぬ癖毛の残る綺麗な髪に。
「……いつでもいいのだぞ。来年と言わずともな……」
その額に、まるで眠りについた娘を安心させるかの様に、クリストフは再び口付けを行った。
「この夜だけには終わらん。浴衣のユスミも、秋のユスミも、冬も、再び訪れる春も、全て私とユスミのものだ。……この空は朝日も絶景らしい……」
そう言って、改めてクリストフはユスミを抱き寄せ、顔をくっつけるかのようにして、目を閉じた。
夏の一幕、魔王と少女の、二人だけの星空は、いつまでも続くかのように二人を見守っていた。
成功
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