涼菓のヴィアベル・タイヴァイス
●二度目の再会
瑞波羅・璃音(元離反NPC・f40304)は己が召喚獣として訪れた世界、ブルーアルカディアにて浮遊大陸の一つに訪れていた。
猟兵としての力に目覚めた彼女にとって浮遊大陸間の移動は容易いものであった。
目の前には嘗ての召喚者『おチビさん』。
「ねえ、『おチビさん』」
「……」
どうしてか召喚者であり、共に火炎竜討伐という激戦をくぐり抜けた相棒とも言うべき彼がなんとなく不服そうな顔をしている理由がわからなかった。
さっきからずっとムッスリしているのだ。
こうして夏の暑い日に再会したのに、どうしてそんな顔をしているのだろう。
「ねえってば」
「……選びたい放題なんだから、好きなの選べばいいだろ。アンタからどうぞ」
「やっぱり不機嫌よね? どうして?」
璃音は首を傾げてしまう。
彼と再会したのは半年以上振りであろうか。
もっと再会を喜んでくれてもいいようなものなのに。
それに加えて、この眼の前の景色。
氷菓……と言っても多くの種類が眼の前に並べられている。
そう、この大陸は火炎竜との激戦の地。
この地にあって璃音と召喚者である『おチビさん』は英雄的な扱いをされているのだ。
訪れるたびにチョコやら氷菓やらを山盛りに送られるようになってしまっていた。
「……言いたくない」
「なんでよ。せっかくこんなに氷菓をもらったっていうのに」
お腹が冷えるから一つだけ、と彼女は削られた氷の中にあんころ餅が入った抹茶風味の鮮やかな緑萌える氷菓の器を取った。
「ほら、『おチビさん』も選んで」
「……! それ! もう『おチビ』さんってほどじゃないだろ! 背ぇ伸びたんですけどぉ!?」
え、と璃音は思った。
もしかして、再開してすぐに身長が伸びたことに気が付かなかったから不機嫌だったのか。
「……アハハッ、なんだそんなことなの? もう、何よ」
「そんなことじゃないけど!?」
「いや、どれだけあなたの身長が伸びようが、あたしには『おチビさん』はいつまでも『おチビさん』よ?」
召喚されたあの日から、ずっと変わらないことだ。
小さくっても懸命に誰かのために尽くそうとする姿勢があったからこそ、璃音は彼に召喚獣として力を貸したのだ。
それは今も変わらない。
彼は今もそうやって誰かを助けているのだろう。
その最初の一歩、『おチビさん』だった頃を知っているのが、彼女にとっての小さな自慢の一つなのだから――。
成功
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