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銀の流星に響く音

#ケルベロスディバイド #ノベル #猟兵達の夏休み2024

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北十字・銀河




 ――チリン。
 風に乗り、涼やかな音色が聴こえてくる。
 小さな町の路地、夏の休暇を過ごそうと訪れた故郷に似たこの世界で、北十字・銀河はふと足を止めた。
 見れば古民家の軒先から、此方に視線を向ける人物がひとり。

『――おひとつ、いかがですか?』
 掛けられた声は風鈴の音のように涼やかで、澄んだ声だった。
「へぇ、風鈴か。懐かしいな」
 銀河は興味深そうに、風鈴売りの少女の傍にある色鮮やかな硝子の風鈴たちを眺めた。
『興味持ってくれた? でもね。私が売る風鈴は普通のものとはちょっと違うの』

 風鈴売りの少女は語る。
 自分の風鈴は、そのモノに宿る音色と色彩を映し出す。
 ――そう、だから。
 今はあなただけのお話が必要なの、と風鈴売りは静かに小首を傾げてみせた。

「なるほど、逸話か……では、俺の身の上話でもいいかい?」
 もちろんと風鈴売りが微笑むと、銀河は縁側に腰を下ろしぽつぽつと言葉を紡ぐ。

『命のある限り生きて、多くの人を助ける』
 剣の師匠でもあり初恋だった人との、約束の言葉だ。
 けれど彼女は、俺を庇って命を落としてしまった。

 銀河は思い返すように一度目を伏せ、落ち着きながら続きを話す。

 ――故郷の世界では、大きな戦いが何度も起きた。
 助けられなかった命も、絶望も沢山味わった。
「そんな俺に、彼女との約束……本当に人を助けられるのかってね」

 一度は諦めかけた事もあったけれど、人々からの感謝の言葉を糧に、再び前を向くことが出来た。
 そんな時だ、こちらの世界に来る手段が見つかったのは。
 故郷とは似ていて、けれど別の世界。
 だが平和になったあちらの世界とは違い、この世界ではまだ戦いが終わっていなかった。

「また、繰り返される。そう思ってな」
 気付けば、鍛錬に励んでいた。また人々を守れる力が欲しいと。
 そして今度は……大切な人たちを守りきれるように。

 ――チリン。
 風鈴の音に、銀河ははっと顔をあげた。
「少し、喋りすぎてしまったか……?」
『いいえ、そんなことは』
 思わず口が軽くなってしまったと銀河は微笑を浮かべつつ、参考になっただろうかと風鈴売りに問い掛けた。
『はい、とても。聞かせてくださってありがとうございます』

 色とりどりの硝子風鈴の中から、そのひとつを手にとって。
 風鈴売りはそっと銀河へ手渡した。

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 銀降響
 澄んだ藍色に銀の流星が降る硝子風鈴。響く音色は懐かしく、優しい音を奏でて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年08月16日


挿絵イラスト