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ビルド/IVI/シティ

#ケルベロスディバイド #IVI #五月雨模型店 #チャリティーイベント

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●建築する・組み立てる・造る
 デウスエクスの脅威は、いつだって地球から平和を遠のかせる。
 侵略とは即ち、意図すべきものがあるからこそ行われる物事だ。デウスエクスは永遠不滅であるが、生存エネルギー『グラビティ・チェイン』の枯渇に直面している。
 それは深刻そのものであり、それ故に地球は狙われ続けている。
『特務機関DIVIDE』は科学技術と魔術によって、これをなんとか退け続けているが、現状の地球は戦い続けることに特化し続けなければならない。
 それは人の心を荒ませるだけだ。
「荒んだ心で扱う兵器ほど敵ではなく仲間に牙を剥く。それ故に地球の人々には常に戦い続けなければならない決心と共に、心に『楽しさ』を抱いていてほしいのだ」
『特務機関DIVIDE』の長官、『アダム・カドモン』は言う。

「言うは易く行うは難し、だよねぇ」
 湾岸の決戦都市の管理者であり責任者でもある亜麻色の女性『エイル』博士はため息交じりに『アダム・カドモン』の言葉に頷く。
 概ね同意するところである。
 むしろ、彼の言葉通りに人々が戦うことだけに突き進んでいたのならば、彼らの心は早々に限界を迎えていたことだろう。
 だからこそ、その言葉の重みは人の進む足から枷を取り払うものであった。
「とは言え、報告した通りなんだよ。此方は決戦配備『セラフィム』を全て損失している。加えて、都市の大部分が破壊され、復旧するまでに多くの時間を要している。これをデウスエクスが放っておいてくれるわけがない」
「そのとおりだ。だが、『エネルギー供給システム』は無事なのは幸いだった。猟兵、ケルベロスたちの尽力のおかげだ。そして、そちらの状況が逼迫しているのは理解している」
「なら――」
 予算を、と『エイル』博士は言いたいのだろう。
 だが『アダム・カドモン』は、それを通信の向こう側で制する。

「ただねだるだけでは勝ち取れないのもまた事実。そして、向上なくばただ敗北を待つだけであることも……」
「わかっているよ。だから私からご提案させていただこうじゃあないか!」
「チャリティーイベントだ。わかっているのかね」
 訝しむ声色に『エイル』博士は大仰に頷いた。
「もっちろんだとも!」
『イベントの詳細はデータにて送信してあります』
 サポートAI『第九号』が『アダム・カドモン』へと詳細なデータを送ったのだろう。データを受信した『アダム・カドモン』はすぐさまデータの全容を受けて頷く。

「ただ再建するだけではない、と」
「そうさ。はるか昔より人の技術革新というのはトライ・アンド・エラーで積み重ねてきたものだ。そして、ブレイクスルーが起こる時というのは、逼迫した事態ではなく、多くの選択肢が生み出された時だ。多様性とはつまりそういうことさ。最も優れたる可能性に手を伸ばすことに飽くなき探求を持って相対する。それこそが!」
 人を未来へと突き進めてきたのだ。
 時にそれは滅びへの道かもしれない。
 ただ座して待つよりはずっといい――。

●ケルベロスディバイド
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。湾岸の決戦都市、と言えば幾度かデウスエクスの襲来を阻止すべく向かわれた方もいらっしゃるかと思います。今回は、その湾岸の決戦都市において『特務機関DIVIDE』長官『アダム・カドモン』さんより、チャリティーイベントに協力の要請を受けました」
 ナイアルテは、これがケルベロスディバイド世界の人々の平和な生活に繋がる大事な仕事であると理解しているようだった。

 しかし、猟兵たちは首を傾げる。
 チャリティーイベントとは言っても一体どんなイベントなのだろうか?
 ライブとか? それともパフォーマンスや、競技大会、もしかしたら漫才大会、音楽フェスなんかもあるやもしれない。
 そんな猟兵たちの考えとは裏腹にナイアルテは、にこりと笑む。
「『シティビルド・プレゼン・シュミレーション』です」
 なんて?
 長い。なんか長い横文字が聞こえた。
 すぐには飲み込めない。何が、なんて?
「言ってしまえば、ドラゴンの襲来、インフラ破壊工作、こうしたデウスエクスの脅威によって破壊され尽くした決戦都市を再建するにあたって、よりよく強固な決戦都市を生み出すためのプレゼンテーション大会と、決戦都市モデルのミニチュアを作成してのシュミレーション高いが、ガッチャンコしたチャリティーイベントです!」
 うん。
 うん。うん? つまり、どういう?

「このイベントはですね、簡単に言えば『僕私の考えた最強の決戦都市』です! そして、そのアイデアをプレゼンし、実際にミニチュア寸借の決戦都市を作り上げ、シュミレーションでもってどれだけデウスエクスの脅威に耐えられたのかを競う大会と言えばいいでしょうか」
 ふむ、と猟兵たちは頷く。
 自分が思う『最強の決戦都市』というのは、この世界に生きるものならば一度は考えるものだろう。
 だが、簡単には実現できない。
 だからミニチュア寸借の箱庭のようなモデル決戦都市を作り上げ、シュミレーションでもって防衛成果を競おうというのだ。

「まずはスケジュールは前夜祭、イベント当日、そして後夜祭に分かれています。まずは前夜祭の全世界生放送に参加したり、運ばれたはいいものの、未だ復興に時間が掛かり余っている物資を盛大に使ったお祭りを楽しむのもいいかもしれません」
 そして、チャリティーイベント当日は自分の考えた『最強の決戦都市』ミニチュアでのシュミレーション。
 その結果を受けて、湾岸の決戦都市は新たに復興と言う名を持って生まれ変わるだろう。
 イベントが終われば、後夜祭に繰り出して遊び回るのもいいだろう。
 今回はデウスエクスの襲撃も予知されていない。
 何の気兼ねもなく楽しめるイベントであると言えるだろう。
「これがきっとケルベロスディバイド世界の人々の平和な明日に繋がるイベントになることでしょう。皆さんのアイデアも、きっと……」
 明日の誰かのためになる。
 そう告げて、ナイアルテはケルベロスディバイド世界へと猟兵たちを転移させるのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はケルベロスディバイド世界ですが、デウスエクスの襲来が予知されていないチャリティーイベントシナリオになります。
『ドラゴンテイマー』の襲来、インフラ破壊作戦などデウスエクスが引き起こす事件によって壊滅的な打撃を受けた湾岸の決戦都市。
 復興には時間がかかります。
 しかし、人々の平和を思う心が戦うためだけに注がれるのまた望むものではないでしょう。

 ここに『シティビルド・プレゼン・シュミレーション』イベントが開催されることになりました。
『僕私の考えた最強の決戦都市』のミニチュアを作り上げ、シュミレーションでもってどれだけ防衛に成功したのか、そのスコアを競い合うイベントです。

●第一章
 日常です。
 前夜祭になります。
 湾岸の決戦都市に前日から転移すれば、あちこちで参加者たちが自分の考えた『決戦都市』構想を語り合ったり、またステージでは飛び入りのバンドやらコントなどが行われ、またそれ以外にもお祭り騒ぎになっています。

●第二章
 日常です。
 チャリティーイベント当日になります。
 ここで皆さんの考えた『最強の決戦都市』のミニチュアを使ってシュミレーションを行います。
 この防衛結果がスコアになり、再興のためのアイデアとして湾岸の決戦都市に組み込まれていくことでしょう。

●第三章
 日常です。
 後夜祭になります。
 前夜祭と同じくお祭り状態です。
 様々な催しが行われていますし、人々の笑顔が絶えないでしょう。
 共に競い合った参加者たちをねぎらうのもいいでしょうし、管理者であり責任者である『エイル』と構想を論議してもいいかもしれません。

 それでは再興に向けてどんな状況でも前を向く強き人々の心に宿る平和への思いと、それはともかくとして『僕私の考えた最強の決戦都市』構想でもってチャリティーイベントを盛り上げる皆さんの物語の一片となれますように、たくさんがんばります!
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第1章 日常 『前夜祭全世界生放送』

POW   :    他の参加者と一緒に夜通し浮かれ騒ぐ

SPD   :    ステージに上がり、当日への期待を盛り上げる出し物をする

WIZ   :    イベントの見どころを簡潔にまとめ、紹介する

イラスト:del

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 湾岸の決戦都市は盛大な盛り上がりを見せていた。
 転移した猟兵たちもそうであるが、ケルベロスたちも訪れた湾岸の決戦都市がこうも盛り上がっていることに驚きを隠せないかもしれない。
 この湾岸の決戦都市はドラゴンを操る謎の存在『ドラゴンテイマー』の襲撃を受け、なおかつ十二剣神の攻撃を二度も受けていた。さらにインフラを破壊すべくデウスエクスが襲来し、甚大な被害を被ってもいたのだ。
 なのに、誰もこの都市から逃げ出そうとする人々はいなかった。
 皆、逃げるよりも戦って明日を勝ち取ることを選んでいたのだ。
「やあやあ、よくきてくれたね。お祭りを楽しんでおくれよ」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士が猟兵とケルベロスたちを出迎える。
 この都市の管理者であり責任者である彼女は、にやりと笑う。

「だが、明日の『シティビルド・プレゼン・シュミレーション』も忘れないでおくれよ? この日のためにミニチュア出力機『五月雨模型店』を突貫作業の貫徹で仕上げたんだからね! それくらい諸君らの構想である『僕私の最強の決戦都市』には期待しているんだ。きっと私には思いつかない斬新なアイデアがあるはずだからね。きっと良いスコアが出ると信じてるよ」
 それじゃあ、明日までは楽しんでくれ、と彼女は亜麻色の髪を揺らして送り出す。
 前夜祭は世界中から寄せられた救援物資を使ってのお祭りが催されている。
 明日の本番に使うイベントステージではライブや多くの催しが順繰り行われている。出店も立ち並び、その光景だけでも楽しい。
 どうやら、『僕私の最強の決戦都市』はイメージと構想、そのデータなどがあれば、3Dプリンターのような出力機でミニチュアとして生み出され、シュミレーションされるようだ。

 その練ってもいいし、お祭りを楽しむのもいい。
 そうした自由からこそ多くの選択肢が生まれ、明日の人々の希望になるのだから――。
真・シルバーブリット
やぁ、エイル博士久しぶり!
あの時は非常事態すぎてオーバーヒートしちゃったけど、ご覧の通りバッチシ修理完了さ!

ふーん、これがミニチュア出力機『五月雨模型店』なんだ
イメージと構想、データさえあれば3Dプリンターのような出力機でミニチュアがシュミレーションされるなら、僕にいい考えがあるよ!(ドヤァ

ケーブルを差して貰ったらデータ送信!
僕が提案した『僕私の最強の決戦都市』は、交通インフラの見直しを兼ねたライドキャリバーの運用に特化させた環状道路網さ
神出鬼没なデウスエクスの出現で出動したライドキャリバーが各方面に対応出来て、平和な時は街の上げたレースイベントのサーキット場にもなるけど…どうかな?



 湾岸の決戦都市にて行われるチャリティーイベントの前夜祭は大いに盛り上がっていた。
 特設ステージでは有志のバンドや生放送を動画で配信する者たちだっている。
 彼らの『楽しい』と生命を謳歌する力こそが、経済を回す以上に地球全体の士気に直結するのだろう。
 それがわかっているからこそ、人々は壊滅的な打撃を受けた湾岸の決戦都市においてもまだ生きる希望を忘れていないのだ。
「戦うだけでは守れないのなら、それ以外のこともしなければならない。簡単に言ってくれるが、しかし」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、そんな人々の盛り上がりをみて笑む。
 簡単なことではない。
 けれど、それでも彼女は笑っていた。

「やぁ、『エイル』博士久しぶり!」
 そんな彼女の元にやってきたのは真・シルバーブリット(ブレイブケルベロス・f41263)だった。
 ライドキャリバーの車体に『エイル』博士は見覚えがあるようだった。
「こんにちは、ライドキャリバーの君。オーバーヒートの後のオーバーホールはちゃんとやったかい?」
「勿論さ。ご覧の通りにね! バッチシ修理完了さ!」
「あの女性の騎士は今日は一緒じゃないのかい?」
「たまには僕一人でお祭りに参加することだってあるさ。ところで……」
 シルバーブリットの言葉に『エイル』博士は頷く。

 特設ステージの端には、前夜祭が終わればステージ中央に運びこまれることになっているミニチュア出力機がある。
「ふーん、これがミニチュア出力機『五月雨模型店』なんだ?」
「ああ、君等が持ち込んだ『決戦都市構想』を元に再現し、さらにそれをシュミレーターにかけることでスコアを算出することができる」
「ふんふん、なら僕にいい考えがあるよ!」
 ドヤッ! とシルバーブリットが胸を張るような気配があった。
 にゅっと伸びたケーブルが出力機に差し込まれ、データを送信する。
 出力することはまだできないが、3Dデータが画面に浮かんでいる。これがシルバーブリットの考える『決戦都市』の形なのだろう。

「僕が提案するのは、交通インフラの見直しを兼ねたライドキャリバーの運用に特化させた環状道路網さ!」
「ふむ。デウスエクスの出現場所はどこかわからないが……それに対応するためかね」
「そう! デウスエクスは神出鬼没。なら、すぐさま対応できる機動力に特化したライドキャリバー部隊を各方面に発進させ、即時対応する力を向上さえるのさ!」
 なるほど、と『エイル』博士は頷く。
 面白い考えである。
 いまだデウスエクスの出現はグリモア猟兵のグリモア頼りである。
 どうしてもデウスエクスに対して対応するのが遅れてしまうことは否めない。その僅かな遅れを取りこぼさぬようにと、考えるのは自然のことであった。

「だが機動力だけではいかんともしがたいな。デウスエクスが黙ってやられてくれるとも限らない」
「だよね。そこが問題! でも、平和な時は街を上げたレースイベントのサーキット場にもなるよ! どうかな?」
「なるほどな。戦いばかりではない、平時の事も考えてのことか」
 シルバーブリットの提案に『エイル』博士は頷く。
「悪くない。まあ、今は前夜祭だ。もう少し考えて見てみるのもいいかもしれないな。ブラッシュアップ、というやつだ」
 これ以上の案がでなくても、明日になればスコアが出る。
 なにはともあれ、このチャリティーイベントを楽しむことこそが肝要なのだ。
 シルバーブリットは『エイル』博士と別れ、チャリティーイベントの前夜祭の賑やかさを十分に堪能するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日下部・香
長官の仰る通り、皆の心が戦いで荒んでしまえばどうなることか……。人々を楽しませるのも私たちケルベロスの役目! イベントを盛り上げるため、私も尽力しよう。
個人的にも、決戦都市の構想には興味があるしな。大学行ったらそういう勉強したいと思ってるし。

全世界生放送があるようだし、そこで明日のイベントについて紹介すれば盛り上げる助けになるかな?
紹介内容は、必要であればイベントの概略と、参加予定の人に頼んで意気込みやコンセプトを語ってもらうのもいいかな。
どんな『最強の決戦都市』が見られるのか、私も今からとても楽しみだ! イベントそのものもだけど、後夜祭もあるから皆さんお楽しみに! ……って感じでどうだろう。



『特務機関DIVIDE』長官『アダム・カドモン』の言葉を日下部・香(断裂の番犬・f40865)は湾岸の決戦都市にて行われているチャリティーイベントの前夜祭にて思い出す。
 彼は言った。
 荒んだ心が手にした兵器は敵ではなく味方に牙を剥く、と。
 それはその通りなのだろうと香は思った。
 だからこそ、ケルベロスは戦うだけではなく人々を楽しませることをも使命としている。
「イベントを盛り上げる為、私も尽力しよう」
 とは言え、彼女は大学受験を控えたケルベロスである。
 正直に言うとこうした前夜祭に参加している場合ではなかった。夏というのは受験生にとっては分水嶺である。
 少しでも多くを勉学の時間に割り当てなければならなかった。

 だがしかし、進学も宇宙よりの侵略者デウスエクスに敗北すれば、そもそもが無意味である。
 本末転倒にならぬように。
 加えて勉学もおろそかにならぬように。
 どちらもやらねばならぬがの高校生ケルベロスの悩みどころであった。
「さて、全世界生放送配信に切り替えて、と」
 香はインカムの感度と手にしたスマートフォンが繋がっているかを確認する。
 彼女はこれから全世界生放送配信にて湾岸の決戦都市にて開催されるイベントを多くの人に知ってもらおうと解説を始めるのだ。

「世界のみんな、今日紹介するのは、ドラゴンの蹴撃を受け、さらにインフラ破壊作戦を阻止した湾岸の決戦都市にて行われるチャリティーイベント……今回行われるのは『シティビルド・プレゼン・シュミレーション』だ」
 香の動画配信のコメント欄が沸き立つようにして流れていく。
 多くの人々が注目しているようだった。
「このイベントは『僕私の最強の決戦都市』の構想を発表する場でもあるんだ。私も大学に入学したら、決戦都市の勉強をしたいと思っていたから、興味津々だ」
 香はイベントの概要を動画で説明していく。

 イベントのステージでは今、ライブが行われているがステージの端にミニチュア出力機『五月雨模型店』が備わっている。
「明日は参加者の考えた『僕私の最強の決戦都市』をミニチュアに出力してシュミレーションしてスコアを競い合うんだ。どんな『最強の決戦都市』が見られるのか、私も今から楽しみだ!」
「ふむ、君は参加しないのかい?」
 カメラの前に割り込んできたのは、亜麻色の髪の女性『エイル』博士だ。
 この湾岸の決戦都市の管理者であり、責任者でもある。
「私?」
「ああ、君も進学すれば、そうした勉強をしたい、ということがを耳にしたのでね。少なからず構想があるのならばぜひとも参加してくれたまえ」
「素人だけれど大丈夫なのか?」
「素人であろうと玄人であろうとアイデアは歓迎だ。確かにこの決戦都市は被害甚大で復興もまだ目処が立っていない。けれど、皆のアイデアを盛り込んで、再びデウスエクスたちに破壊されないような強固な決戦都市にしたいと思っている」
 だから、と彼女は言う。
 香は頷く。
 その心持ち同じだ。
「そうだな。明日のイベントに間に合うようなら、みんなも参加してみるといい。後夜祭もあるから皆さんお楽しみに、だ!」
 そうして動画配信を香は締めくくる。
 少し緊張したが、少しでもこれで決戦都市のアイデアが集まるといい。
 いつだって一人で地球の人々は戦ってきたわけではない。ケルベロスだって同様だ。
 なら、香は思うのだ。

 この決戦都市の明日は、世界中のみんなが一時でも戦いを忘れ、競い合ってこそ構築されていくものだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
五月雨模型店……どっかで聞いたよーな名前ですねぇ。
偶然ってヤツですかね?
それより決戦都市構想ですよ!
この間のデカい爬虫類共をみる限り、あいつら空からド派手に登場するのが好きみてーですからね。
ボクのデータをこの出力機に送って、あったら嫌な対空兵器を片っ端から作らせるですよ!
敵がデカけりゃデカいほど、誘導ミサイルとかより単純に重い物ぶつける兵器の方がコスパ良さそうですよね。
後は勿論航空戦力の発着場です!
この間は一機しか残ってなかったですけど、セラフィムがまたいっぱい作られたら必要ですからね。
空からの敵を地上に降ろさずやっつける、がコンセプトです!
地上の敵だって、空からなら攻めやすいはずですよ!



 ミニチュア出力機『五月雨模型店』。
 その名にファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は聞き覚えがるようだった。
 どこかで。
 どこだったか。
 自身の出身世界クロムキャバリアではないことだけは確かだ。
 なら、どこで。
「……ああっ!」
 頭に浮かぶのはアスリートアースのとある商店街。
 戦闘機のモックアップ、即ち、寸尺の小さな模型を取り扱う生業をしていた店、その店名だった。
 亜麻色の髪の店長の顔を思い出す。
「偶然ってヤツですかね?」
 ケルベロスディバイド世界でも聞くことになるとは思ってもいなかったためにファルコは、これが偶然であろうと片付ける。

 それにしても奇妙な符号である。
 チャリティーイベントに参加しようとやってきてみれば、前夜祭は侵略にさらされているとは思えないほどに賑やかである。
 争い絶えぬクロムキャバリアと似て非なるものであるとファルコは感じただろう。
「この間のでかい爬虫類どもを見る限り、あいつら空からド派手に登場するのが好き見てーですね」
 今回参加するイベントは『僕私の最強の決戦都市』構想をシュミレーションしてスコアを競うものだ。
 なら、とファルコは考える。
「空から来るんなら、対空兵器はいっぱい必要ですよね。対空ミサイル、誘導ミサイル……うーん」
 ファルコは以前戦ったドラゴンを思い出す。
 アレだけの巨体である。
 ミサイルの爆発は恐らく龍鱗によって防がれてしまうだろう。
 効果が薄い、となれば、やはり取れる選択は一つ。

「単純な質量兵器」
「そう、それです! って、おわっ、なんで急に後ろに立ってやがるですか!?」
 ファルコの背後にいたのは、亜麻色の髪の女性『エイル』博士であった。
 彼女はこの決戦都市の管理者であり、責任者でもある。
 出力機の近くで構想を練っていたファルコに興味を持ったのだろう。
「いや何、面白いことを考えているんじゃあないかと思ってね」
「そりゃ、イベントに参加するんです。ちょっとは考えるでしょーよ。対空兵器もそうですけど、この間の『セラフィム』、またあれをたくさん作るってんなら」
「発着場か」
「そうです。航空戦力があるんなら、飛び立つ場所がなければ意味ないんですよ。迅速に飛び立つことができてこその戦力でしょーが」
 ふむ、と『エイル』博士は頷く。

 この湾岸の決戦都市固有の決戦配備『セラフィム』。
 あれはキャバリアと同じ体高と機能を持っているようだった。ただし、弱い。デウスエクスに真っ向から戦ってはすぐさま破壊されてしまう。
「『セラフィム』事態の性能は要改善ですが、周囲の環境を改善すれば、地力を底上げできるはずですよ」
 ファルコは、それに、と続ける。
 自分の『決戦都市』の構想は空から敵を地上に降ろさずに打倒することをコンセプトとしている。
 地上部は市街地。
 前回の戦いのように市街地、人々の生活の基盤に被害が出るようでは復興にも時間がかかりすぎる。
「万が一地上に敵がおりても、空からなら攻めやすいはずですよ!」
「となると、君は『セラフィム』の対空、対地能力を高めた上で、いつでもスクランブルで飛び立てる機能を保たせたいというのかな」
「性能云々は後回しでもいいですけど、それでも戦場を地上から空に移せば、被害は抑えられるはず」
 第一に考えるのは、戦えぬ者たちの安全。
 ファルコの言葉に『エイル』博士は頷く。
「では、明日のイベントまでその構想をブラッシュアップしておいてくれたまえ。期待しているよお嬢さん――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまーーすっ!!
はい、メイド参上ですっ
エイル博士、本日もお元気そうで何よりです
第九号様、お願いがあります
そろそろハッキングを仕掛けてエイル博士のプライベートを抜こうと思っています
誰がやべーメイドですか

さて
前夜祭となれば盛り上げるのが吉
盛り上げるといえば音楽
つまりルクス様の出番
吉と出るか凶と出るか……あ、狂ですかね?
楽しみに耳栓しておきます

それにしても『五月雨模型店』、ですか
あの『しあわせなゆめ』のような世界
その『名』に|意味《力》があるのなら
この世界に『ゆめのような』イメージを創り出す事も容易いのでしょう
憂国学徒兵のような『何か』を作るのも一興ですね


ルクス・アルブス
【ステルク】

(雄叫びも何もかも遮って)
『エイル』博士、ほんとですね!
『僕私の最強の決戦都市』を作っていいんですね!

言いましたね、言いましたよね、やっぱなしはなしですからね!

にたぁ(わるいわらい

そんなこと言われちゃったら、もうするしかないじゃないじゃないですか。

なにを、って……そんなもちろんコンサート会場ですよ!
これはもう、まじそんがすくえあながーでんみたいなの作るんです。
そしてみんなの士気爆上がりのコンサートを行うんですよ!

お客さんは、会場に来てくれた人を【必殺の生演奏】で確保して、
しっかり最後まで聞いてもらえますよ。

『エイル』博士とステラさんはご招待枠(強制)です。
こないと配信しますからね!



「もがもがもがもがーっ!!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はいつもの雄叫びを上げようとしていた。
 だが、そんな雄叫びをインターセプトするようにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は亜麻色の髪の女性『エイル』博士に食いついていた。
「『エイル』博士、ほんとですね!『僕私の最強の決戦都市』を作っていいんですね!」
「あ、ああ。ただし、ミニチュアからだけれど」
「いいんです! 言いましたね、言いましたからね、やっぱなしはなしですからね!」
 ルクスは凄まじい勢いであった。
 ステラがいつもの雄叫びと共に『エイル』博士につんのめる勢いで詰め寄るよりも早く、ルクスが食い気味で掴みかかっていたのだ。
 そんでもって、にたぁと悪い笑みを浮かべていた。暗黒微笑というやつである。多分違うな。

 意欲的、と捉えればそうなのだろう。
 しかし、ちょっと勢いがおかしい。
 メイドの勢いを殺して尚、押し分けてくるほどの力がルクスにあるのは、なんていうかいつもの立場が逆転しているようであった。
「むぅっ、まさかの雄叫びインターセプトとは! いえ、気を取り直して、メイド三場ですっ。ご挨拶はやめられなとめられない止まらない! 本日もお元気そうで何よりです」
「あ、ああ」
 ステラのルクスに負けないほどの勢いに『エイル』博士はタジタジであった。
『博士、圧されてます』
 サポートAI『第九号』のホログラムにステラは顔を向ける。

 真剣な眼差しであった。
「『第九号』様、お願いがあります」
『何なりとお申し付け下さい』
「そろそろハッキングを仕掛けて『エイル』博士のプライベートを抜こうと思っています」
「やば」
 ルクスは思わず素に戻った。
 それくらいステラの発言がやばかった。
『プライバシーの侵害は認められません。加えて、『エイル』博士の日常は敗北の連続です。合コンに参加すれば一人だけ年がないわーと言われ、酩酊状態で猫にさえ敗北を喫する始末。正直見るに絶えられません』
「ちょいちょい。何を勝手なことを言っているんだい。私がいつ敗北したと? そんなバカなことがあるわけがないだろうほんとうにもうなにをいってるんだろうねこのさぽーとあーてぃふぃしゃるいんてりじぇんすはははははッ!」

 そんな『エイル』博士はさておいて、ルクスは悪い笑みを再び浮かべる。
 彼女の考える決戦都市構想は。
「ずばり、コンサート会場にしちゃおうというんですよね」
「んなぁ!? なんでそれを!」
「ルクス様と言えば、すぐにそれですから。大方、前夜祭の盛り上がりを見て触発されたのでしょう。盛り上げると言えば音楽ですからね」
 つまり、ルクスの出番というわけである。
 まあ、吉と出るか凶と出るかは、まあ博打である。なんなら凶ではなくて狂のほうかもしれない。
「楽しみに耳栓しておりますね」
「聞く気ないですよね!?」
「まだ私も生命が惜しいです」
「生命が!? なんでそんなことになるんです!? 皆さんの士気を爆上げするだけですよ!?」
「それが、です」
 ルクスは、そこまで言われては後に退けない。
 この場に集まった人々を必殺の生演奏(ヒッサツノナマエンソウ)で迷路の中に取り込んでしまおうかと画策する。
 これなら絶対に最後まで聞いてもらえる。
 やばい。
 鼓膜をぶち抜くつもりである。例外なく。

「『エイル』博士とステラさんはご招待枠です。来ないと配信しますからね!」
 どんな脅し文句だろうか。
 だが、ステラの思索は演奏という現実を拒否するように遠くに飛んでいた。
 そう、彼女が思うのは『五月雨模型店』という名である。
 ケルベロスディバイド世界においては、ミニチュア出力機の名。
「あの『しあわせなゆめ』のような世界。その『名』に|意味《力》があるのなら、この世界に『ゆめのような』イメージを創り出すことも容易いのでそふ」
 ふむ、とステラは考える。
 もしかしたら、明日のイベントにて彼女なりの構想がでてくるのかも知れない。
 それは明日の楽しみの一つになるだろう。
 そんなステラにルクスは体を揺さぶって駄々をこねるように告げる。
「いいですか! 絶対ですからね!」
「あーはいはい」
「あきらかな生返事――!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
いや五月雨模型店って…アインとかいねーだろーなー?

「エイルちゃんやっほ☆これはメルシーも作っちゃうぞ☆勿論作るのは…神機決戦都市ジャパニアだー☆」

https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=50380
「こんな感じで神機達で守るんだぞ☆」
おめーは何やってるんだー!?あほかー!?

…あー…それなら僕は…

エイル博士のと被るだろうが…そうだな…セラフィムシックスと合体機能付きのプロメテウスが配備された決戦都市だ。
僕が知る限りのデータをエイル博士に提供するぞ。

必殺技はプロメテウスバーンだ!デウスエクスが出現したら即座に補足して駆け付けて焼き払うぞ!

強敵には合体して巨大化して場合によっては|ケルベロス《猟兵》が直接乗り込んで操作出来る!

他にも白騎士型のセラフィムとか黒騎士型のセラフィムもいるぞ!

ま、最強かどうかは知らねー

…これが許されるか分からねーから事前にナイアルテにも確認

可能なら
セラフィムシックスの記録をエイルに提示。

…ま…気まぐれだ

作れるなら作ってみたらいい



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)はケルベロスディバイド世界、チャリティーイベントの行われている湾岸の決戦都市の特設ステージの脇に備えられていたミニチュア出力機『五月雨模型店』を見ていた。
 ロゴが刻まれている。
 何度読んで見ても『五月雨模型店』と刻印がなされている。
「いや『五月雨模型店』って……」
 カシムには、その名に覚えがあった。
 他の世界を知る猟兵であるからこそであっただろう。
 その名はアスリートアースの商店街の片隅に居を構える模型店の名前だったからだ。
 これは偶然だろうか? それとも必然なのだろうか?
 どちらかはわからない。

 けれど、奇妙な符号を感じずにはカシムはいられなかったのだ。
『エイルちゃんやっほ☆』
『メルシー』が目ざとく亜麻色の髪の女性『エイル』博士を見つけて、早速声をかけている。
「ん? ああ、君たちも明日のイベントに参加するのかい?」
「ああ、まあな。お祭りをやってるんで物見遊山だけれどな」
『メルシーも『僕私の最強の決戦都市』作っちゃうぞ☆ 勿論造るのは……神機決戦都市じゃパニアだー☆』
『メルシー』の言葉にカシムの顔がひきつる。
『神機をたくさん用意して都市を守るんだぞ☆』
「おめーは何やってるんだー!? あほかー!?」
 そもそも前提になる神機がない。
 この湾岸の決戦都市固有の決戦配備として『セラフィム』と呼ばれる自立人型戦術兵器があるが、今は全機が先立っての戦いで破壊されている。
 加えて言うなら、この決戦配備『セラフィム』にはカシムたちの知るところの神機ほどの性能はない。

『メルシー』の提案は、もとよりこの決戦都市の構想の上位互換。
 しかし、その性能がどうあっても底上げできないのであれば、正直下位互換のままでしかない。
「やはり人的被害を出さぬために自律させたのが問題なのかも知れないが、それは譲れなくてね」
 どうあっても『エイル』博士は有人機にしたくはないようだった。
 それもそのはずだろう。
 デウスエクスは強大そのものだ。
 猟兵であっても、ケルベロスであってもいまだ永遠不滅のデウスエクスは滅ぼせないのだ。
 一般人が乗る有人機など生命を徒に散らすだけでしかない。
 人々にその覚悟がないわけではないだろうが、しかし生命と覚悟を天秤に掛けた時、どうしても『エイル』博士は有人機を是とできなかったのだ。
「あー……それなら僕は、こう考えているんだが」
 カシムはきっと己の考えが『エイル』博士とかぶるだろうと思った。
 しかし、それは彼女にとっては驚愕なるものだった。

「一体で無理なら、合体すればいいんだよ!」
「合体!?」
「そうだ。一体一体は弱くても、合体すれば強くなる! 必殺プロメテウスバーンだ!」
「いや、それは『セラフィム』の胸部砲口の名称だけども! が、合体!?」
「お約束だろうが!」
 そう言ってカシムはクロムキャバリアで海に沈んで消滅した巨神『セラフィム・シックス』のデータを示す。
 確かに『セラフィム』と似通っている。
 だが、機体の出力が明らかにおかしい。
『セラフィム・シックス』のような大出力を『セラフィム』は得られない。

「おいおい、なんだい、このでたらめな出力は。この決戦都市のインフラを支えている『エネルギー供給システム』そのものを積まないと再現できないぞ?」
 こんな機体を量産なんてできない、と『エイル』博士は肩を竦める。
「だから合体だよ。機体の炉を並列出力してぶっ放せば、行けるだろ!」
「暴論過ぎる!」
 それに制御が難しすぎる、と彼女は言うが、カシムは笑う。
「なんなら猟兵かケルベロスが乗り込んで制御すればいいだろ!」
「ま、なんなら他のキャバリアのデータも参考にしてだな……」
 カシムはあちこちから集めてきたであろうデータを『エイル』博士に手渡す。
「いや、どう考えても機体性能が違いすぎる……一体どれくらいの技術世代差があるというんだ、これは……」
「ま、気まぐれってやつだ。これを目指して作れるんなら、作ってみたらいい」
「……参考にはしてみるが」
 恐らく無理だ、と『エイル』博士は言う。
 現行の技術、魔術を組み合わせても、この性能に到達できない、と。
 口惜しいが、と言う彼女を見てカシムは彼女が口惜しいという感情で終わらぬ者であることを知っている。
 なら、何の問題もないと賑やかな前夜祭に身を投じるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

『五月雨模型店』…はてねえ?偶然でしょうか…?とか考えてたんですがー。まあ、陰海月にひっぱられましてー。

ここのお金、貯まる一方なので…使いたいんですよねー。
というわけで、陰海月に予算多めなお小遣いを渡しましたー。出店で使うようですね。


陰海月「ぷきゅ!」
お祭りだぁぁああ!出店!周る!
焼きそば、いつもより多めな三人前モグモグ。
リンゴ飴は、霹靂の分も買う!
霹靂「クエ」
友の食欲が爆発してる…。あ、リンゴ飴美味しい。



 ミニチュア出力機『五月雨模型店』は、今回のチャリティーイベントには欠かせぬものであった。
『僕私の最強の決戦都市』。
 その構想をミニチュア化して出力し、シュミレーターに掛けることによってスコアを競い合うイベントが湾岸の決戦都市にて行われている。
 出力機はイベントステージの端に設置されている。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は、その出力機に刻まれている『五月雨模型店』の文字に首を傾げる。
「はてねえ? 偶然でしょうか……?」
 アスリートアースのある商店街の片隅にある模型店。
 それが『五月雨模型店』なのだ。
 その名がどうしてケルベロスディバイドでミニチュア出力機に冠せられているのだろうか?

 むしろ、どうしてこのような名前をつけるに至ったのだろうかとも思ったのだ。
「変わった名前だと思ったんだろう?」
 振り返るとそこにいたのは亜麻色の髪の女性『エイル』博士であった。
 確かに気になる。
「ええ、まあ」
「硬化させるレジンが雨だれのように落ちて積層していく様から五月雨、と。そしてミニチュア出力に特化した機械だからね、模型店と付けたのはエスプリってやつさ」
 案外単純な理由だった。
 だが、今一腑に落ちない。
 偶然とだけで片付けられない奇妙な符号がそこにあったように、猟兵である彼らは思ったかもしえない。
 
 しかし、そんな『疾き者』の腕を引っ張るのは触腕とくちばしであった。
「ぷきゅ!」
「クエ」
『陰海月』と『霹靂」であった。
 一匹と一頭がぐいぐいと『疾き者』を急かすようにして引っ張っているのだ。
「あ、これ、ちょっとまってください」
「ふふ、どうやらお祭りの方に興味津々のようだ。まあ、いいさ。どうか楽しんでおくれよ。それもまた諸君らの役目でもある。戦うものが目一杯楽しんでいる姿を見せれば、戦えぬ者も安心する」
 常に最前線に立って戦うのがケルベロスであり、猟兵だ。
 そこに罪悪感を感じなくて良いように日常を謳歌することもまた責務であった。
 加えて、この世界で戦う者には多額の報酬が振り込まれる。
「ええ、たしかに。此処のお金が貯まる一方なので……」
「はは、なら経済を回してくれたまえ。盛大に使ってね!」
 笑う『エイル』博士に『疾き者』も苦笑いするしかなかった。
 しかし、そんな『疾き者』の袖を引っ張り続ける『陰海月』と『霹靂』。
 早く、早く、とさっきから急かされっぱなしである。

「わかりましたから。はい、お小遣いです」
 そう言って手渡すお小遣いはいつもよりも予算多め。
 前夜祭だけあって多くの出店が立ち並んでいる。
 これならば十分に彼らも楽しめるだろう。
 はしゃぐゆに『陰海月』と『霹靂』が駆け出していく。
 まるで出店を全て制覇するんだと言わんばかりの勢いである。
 焼きそば、りんご飴、たこやき、カキ氷。
 季節は夏。
 なら、食べ物はいっぱいである。
 味付けの濃いものばかりであるが、この暑さである。汗にて排出されたミネラルを補給するには丁度いいかもしれない。
 なんてことを考えながら『疾き者』は孫めいた彼らのはしゃぐ姿を見て、静かに笑みを浮かべるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

わーいお祭りだー!

チャリティー?
ついに予算が…
かあいそ!クラファンする?

うんうんやっぱり大砲だね!
おっきーいのを作ってあのロボットくんを撃ち込むんだよ!
えねるぎーおーばーどらいぶ!って感じで敵に当たったとき爆発するんだよ!
貫通タイプとか空中さく裂タイプとか大陸間弾道タイプとか色々バリエーションも用意しておかないと!
禁断のアトミックボムタイプとかも!

こうして世界は滅ぶんだね…世紀末だね…
ボクもいっぱい悲しいよ!
楽しそう!



「わーいお祭りだー!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の視線の先にあるのは湾岸の決戦都市におけるチャリティーイベントの前夜祭の光景だった。
 まるで夏祭りのように出店が立ち並び、イベントステージではライブや催しがなされている。
 どんちゃん騒ぎというのならば、きっとそうなのだろう。
 だが、これは前夜祭である。
 明日は『僕私の最強の決戦都市』構想を持って行われるシュミレーションイベントが待ち受けている。
 その上後夜祭まであるというのだから、長丁場になりそうだった。
「それにしてもチャリティー?」
 この湾岸の決戦都市はドラゴンの襲撃に加えて、インフラ破壊作戦の標的にもされて壊滅的な打撃を受けていた。
 幸いなことにインフラの要たる『エネルギー供給システム』は無事であったが、それ以外がまだ復興が成されていないのだ。
 それくらいに被害が甚大であると言えた。
「ついに予算が……かあいそ! クラファンする?」
 最後の一騎の『セラフィム』も特攻自爆させたロニが言えたことではないが、しかしまあ、デウスエクスの襲撃から護られたと思えば安いものなのかもしれない。

 そして、ロニは腕組して考える。
 決戦都市を復興するにあたって、さらなる強固な守りを得るためにアイデアを募るイベントなのだ。
 自分の神智とも言うべき智識を持ってすれば、容易いかもしれない。
「うんうん、やっぱりまずはは大砲だね!」
 火力こそパワー。
 おっきければおっきいほどいいのだ。
「大口径! そんでもってあのロボット君を打ち込むんだよ」
 つまりはカタパルト的な?
「えねるぎーおーばーどらいぶ! って感じで敵に当たった時爆発するんだよ!」
 それは別に決戦配備の自律人型戦術兵器じゃなくても、ただの砲弾でもいいのではないだろうか?
「そんなのロマンがないよ! 貫通タイプとか空中炸裂タイプとか大陸間弾道タイプとか色々バリエーションも用意しておかないと!」
 それこそミサイルでよくない?
 なんで?

「禁断のアトミックボムタイプとかも!」
 どう考えても良からぬ砲口にロニの思考が飛躍している気がしないでもない。
 完全にロマンが先行して基幹部分が置いてけぼりにされている。
「こうして世界は滅ぶんだね……世紀末だね……」
 ロニはしゅんとしていた。
 自分で想像して、自分で落ち込んでいるのである。
「ボクもいっぱい悲しいよ!」
 いや、なんか十分……。
「楽しそう!」
 そういうところは神の気まぐれであった。
 世紀末であろうがなんであろうが、人はたくましく生きていくのである。それはアポカリプスヘルと呼ばれる世界を知っているロニからすれば、ますますもって楽しそうな世界であるように思えたのかも知れない。
 生きる人々にとっては溜まったものではないかもしれない。
 けれど、それでも人は生きていくのだ。
 そのたくましさこそが人の強さであり、生命の輝きであるとロニはキャッキャするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨河・知香
最強の決戦都市ねえ…レギュレーション次第で変わってくるだろうけど。
ケルベロスとか猟兵がいない場合で考えるのがいいかい?

この湾岸決戦都市に作るって事で海底に隠す形で長距離砲設置するのはどうだろう。
都市内にあったら襲撃で纏めて壊される、海の底なら隠せる上にもし壊そうとしても向こうの戦力分散になる。
都市構造自体はなるべく建物を低層で地上波フラットに、地下に掘り進む形でビルを作ってシェルター組み合わせれば避難もいけるんじゃないかねえ。
…猟兵とかいるならこう、ジェットパックと人間大砲組み合わせて都市内のどこでも一方通行で空から急行できる仕組みもアリかもしれないねえ。
あとはヘリとか。

※アドリブ絡み等お任せ



 最強の決戦都市。
 それは多くの要因が絡み合うものであったことだろう。
 一概に決戦都市と言っても多くのバリエーションがある。立地も要素の一つであろうし、その決戦都市にて存在する決戦配備の種類もまた同様である。
 チャリティーイベントの行われている湾岸の決戦都市は、最強のデウスエクス種族ドラゴンによる襲撃と連続してインフラ破壊作戦の標的にもなった都市である。
 その被害は、インフラの要である『エネルギー供給システム』を守りきれたとは言え、市街地などの被害は甚大そのもの。
 いまだ復興の目処が立っていない。
 だからこそ、チャリティーイベントでもって資金を得て復興を短縮しようというのだ。

「最強の決戦都市ねえ……」
「興味あるかい?」 
 チャリティーイベントのメインである『シティビルド・プレゼン・シュミレーション』の告知を見て、雨河・知香(白熊ウィッチドクター・f40900)は呟く。 
 そんな彼女に湾岸の決戦都市の管理者であり責任者である亜麻色の髪の女性『エイル』博士が呼びかける。
「ん? ああ、レギュレーション次第で変わってくるだろうけど。ケルベロスとか猟兵がいない場合で考えるのがいいかい?」
「いいや。デウスエクスとの戦いにケルベロスや猟兵の存在は不可欠だ。パラメーターとして一定のステータスを持った猟兵、ケルベロスの出現が認められているよ」
 その言葉に知香は一つ頷く。
 立地から考える。
 ここは湾岸の決戦都市である。
 つまり、海に面した領域がある、ということだ。

「技術的に可能なら、なんだけれど、戦うことになるフィールドの外……つまりは湾岸部の利用は可能かい?」
「ん? ああ、無論だよ。とは言え、あまりにも広範囲にはできないが」
「なら、湾岸部の海底に隠す形で長距離砲を設置するのはどうだろう」
「迎撃武器、ということかな?」
「そうなるね。都市部にあったらたしかに敵の襲撃に即応できるだろうさ。けれど、デウスエクスにまとめて破壊されてしまう。迎撃システムを分散しておいておくのはメリットもあるとおもうけれどね」
「……ふむ。確かにその通りだね。敵が迎撃システムの破壊に意識を向ければ」
「敵戦力がおのずと分散される」
 加えて、知香はアイデアを捻出する。

「都市構造自体はなるべく低層にして地上をフラットにすれば海底に隠した長距離砲の射線を確保できるだろう」
「市街地の居住区の確保も必要なのだが、それはどうするね」
「地下に掘り進める形でビルとシェルターを組み合わせれば、避難の動線も確保できる。後は、猟兵、ケルベロス戦力があるなら、ジェットパックと人間大砲の組み合わせで都市内どこでも一方通行だが、空から急行できる仕組みもありかもしれない」
「諸君らは、何かをこう遠くに飛ばすのが好きだな。似たような提案は他の猟兵も言っていたが……だがまあ、それは人の原初たる欲求なのかもしれないな」
 投石、矢、弾丸、ミサイル。
 人の進化の過程には、何かを遠くに飛ばして敵を撃滅するという手段が常に傍らにあったのだ。

 それは自分より強大な敵を力で劣る人類が屠るために取った選択の一つだったのかもしれない。
「あとはヘリとか」
 むしろ知香にとってはそれが本題であったのかもしれない。
「ヘリ、か。確かに多くの人員を迅速に、また的確に運ぶには必要かもしれないな」
「機動力もね」
 知香の笑顔に『エイル』博士は笑う。
 これが彼女の本命だな、と。
「なら、明日のイベントで有用性をシュミレーションしてみてくれ。面白い結果がでそうだ」
 そう言って、『エイル』博士は検討を祈ると知香と別れる。
 ブラッシュアップまでまだ時間はある。
 前夜祭の賑やかさを背に知香は己の構想を更に練り上げていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソニア・コーンフィールド
へー!面白い装置あるんだね!
最強とか聞くと何だかうずうずしちゃう…!
想定としては普通の人間大か倍ぐらいのデウスエクスの群れの襲撃で考えて防衛を…纏まらないからまずは楽しんじゃおう!
歩いてたらいい感じに纏まるかもだしねー。

という訳で前夜祭楽しみつつ町のあちこちを歩いてみる。
どういう所が無事な感じで逆はどんな感じか。
復旧の早さも重要になるだろうけど…今回の趣旨的には耐えた後はあんまり考えなくていいのかな?
ステージとかコントとかも賑やかでいいよねー。
何かこう、メカニック的な面白い出し物あったら興味津々に色々聞いてみたいかな?
セラフィム…うーむ、難しそうだけど理解頑張ってみる…!

※アドリブ絡み等お任せ



 ミニチュア出力機『五月雨模型店』。
 それは湾岸の決戦都市にて行われているチャリチャリの肝でもあった。
 データを送信すれば、ミニチュアを出力しシュミレーションに掛けることができる。デウスエクスの襲来と、迎撃。
 ミニチュア上でそれを検討し、ドラゴンの襲撃とインフラ破壊作戦を防いだが壊滅的な被害を被った湾岸の決戦都市の復興を発展させるためのイベントだ。
「へー! 面白い装置があるんだね!」
 ソニア・コーンフィールド(西へ東へ・f40904)は、ミニチュア出力機を物珍しげに見つめる。
 これで出力したミニチュアがシュミレーションによって実際のデウスエクスの襲来に対してどれだけ有効であったかのスコアを競い合うイベントは、ソニアをうずうずさせた。
 だって、最強とか言われたらうずいてしまうのはドラゴニアンの性とも言えるものであった。

「うーん、敵デウスエクスの想定はどんなものなんだろう? 人間大かな? それとも倍くらいの大きさかな? 単体? それとも群れ?」
 考えがまとまらない。
 想定するものがはっきりしていないのは、デウスエクスの襲来がいつだって予測不能であることにも似ていただろう。
 悩むソニアに亜麻色の髪の女性『エイル』博士が近づく。
「君も明日のイベントに参加してくれるのかい?」
「んえ? え、あ、うん。せっかくだしね!」
「そうか。それは助かるよ。敵性デウスエクスの想定はね……」
「あー! いいよいいよ! そういうのも込み込みだってわかってるからさ!」
「そうかい?」
「うん、せっかくのお祭りなんだもの。フェアにやったほうが楽しいよ! 良いアイデアがでないかなって前夜祭ので店を見て回ろうと思ってるんだ!」
 その様子に『エイル』博士は頬をかく。

「すまないね。無粋を働くことろだった。前夜祭、どうか楽しんでおくれ」
「うん、ありがとう!」
 ソニアは前夜祭の出店通りへと駆け出していく。
 それは同時に湾岸の決戦都市が今どのような状況であるのかを確認する意味もあった。
 ドラゴンとインフラ破壊作戦の標的になっても、なんとか、この決戦都市は壊滅に至っていない。壊滅的なダメージを受けているが、崖っぷちでも踏み堪えることができたのだ。
 なら、これまでのこの湾岸の決戦都市はどこが強かったのか。
 逆に何処が弱かったのか。
 それを考えるべきだと思ったのだ。

「無事な場所は……インフラの要だね。『エネルギー供給システム』を中心に湾岸を有する立地……逆に市街地へのダメージが特に酷いね」
 加えて、この湾岸の決戦都市固有の決戦配備である自律人型戦術兵器『セラフィム』。
 先立っての戦いで全機が破壊されてしまっている。
 デウスエクスは脅威そのものだ。
 永遠不滅である存在なのも大きな要因だ。一度撃退しても、すぐにまた来襲する。
 なら、ソニアは考える。
 攻撃を受けることは最早避けられない。なら、復旧の速さも重要になるだろう。けれど、今回の趣旨を考えたら敵の来襲に耐えた後のことは考えなくていいのか、とも考えてしまう。

 目に見えるステージはライブ、コント大会が終わり、今度はメカニックの祭典のような催しが行われている。
 壇上では、声をかけてくれた亜麻色の髪の女性『エイル』博士が、この決戦都市に配備されていた自律人型戦術兵器のスペックを解説しているようである。
「ふーん、体高5m級の人型戦術兵器で、無人機なんだー」
 名は『セラフィム』。
 赤と青のカラーリングをした戦術兵器はデウスエクスに単体では叶わず、また真っ向勝負では完全に力負けしてしまう。
 だからこそ、ケルベロスたちのサポートに徹しているのだろう。
 無人機なのは、人的被害を抑えるため。
 人型であるがゆえに汎用性は高そうである。
 明日のイベントのシュミレーションで、この決戦配備の強化案や運用案を提案してみるのも面白いかも知れない。
「でも、理解難しそう。でも、頑張ってみよう!」
 諦めないことがケルベロスたちの良いところだとソニアは知っている。
 なら、自分もまた諦めない。
 そう誓うようにソニアは明日のイベントの向けて己の構想をブラッシュアップしていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『特務機関のチャリティーイベント』

POW   :    周りの人々を巻き込み、全力で楽しむ

SPD   :    事前に計画を立て、スムーズに会場を見て回る

WIZ   :    派手な宣伝を行い、人々の注目を集める

イラスト:del

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「それでは開催しよう」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士がイベントステージにてたち、中央に備えられたミニチュア出力機『五月雨模型店』を示す。
 彼女がまずはエキシビションマッチとして自身の『最強の決戦都市』構想をインストールし、ミニチュアの決戦都市を出力する。
 あっという間に出力された湾岸の決戦都市のミニチュア。
 周辺立地条件も細かく再現されたミニチュアを掲げ、巨大なモニターに映し出されれば、人々のどよめき声が上がる。
『エイル』博士が構想したのは、電磁バリアをドーム状に形成する装置を市街地部分に設置した決戦都市だった。

「前回、襲撃を許したドラゴンとの戦いを経てやはり守るべきは市街地であると判断した。デウスエクスは生存エネルギー、グラビティ・チェインを欲している。それは無論、諸君らに宿るもの。殺して奪うほか無い……となれば、やはり諸君らの盾となるシステムを構築しなければならない」
 シェルターも無論、用意されているようである。
 電磁バリアは、そもそも人々の生活の基盤である市街地を破壊させないようにするためのものだった。 
 そして、襲来するデウスエクスを市街地の外に誘導するための方策。
「まあ、論ずるよりもみてもらうのが良いだろう」
 彼女の言葉と共にミニチュアがシュミレーターに掛けられる。
 モニターには、そのシュミレートの様子がつぶさに映像化されていくのだ。

「……ふむ。電磁バリアの出力は群れのデウスエクスには破れないようだね」
 確かに無数のデウスエクスたちが電磁バリアを破れず、市街地から離れて誘導されていく。それを追い立てるようにコースを限定するのが決戦配備の自律人型戦術兵器『セラフィム』であった。
 問題なく彼女の狙いはデウスエクスを引き離すことに成功していた。
 だが、次の瞬間、空より飛来した寄り強力なデウスエクスの個体によって電磁バリアが砕かれてしまう。
「やはり、電磁バリアは強大な個体を前にしては無力、か」
 迎撃システムがバリアを貫通したデウスエクスに向けられるが、ケルベロス、猟兵たちの到着を待つまで持ちこたえることはできなかった。
 破壊されていく市街地。
 敵戦力を上手く分断し、到着したケルベロス、猟兵たちが強大な個体デウスエクスに注力できるという点は評価できるものであったが、やはり市街地への被害は少なからずでてしまう。
「スコアは65点、か。なんとも地味であるが、このようにスコアが算出される。無論、これは一端に過ぎない。参加者の皆の構想もまた優れたものであると言えるだろう。どうか期待してもらいたい」
 その言葉を持って、チャリティーイベント『シティビルド・プレゼン・シュミレーション』が開催され、人々は未来における自分たちの住まう決戦都市が如何なるものに発展するのか、大いに興味を持ち、盛り上がりを見せるのだった――。
日下部・香
決戦都市の構想とか素人だし緊張する……けど、より良い決戦都市の構築に繋がるなら!
博士もアイデアは歓迎だって言ってくれたしな。

私が提案するのは|おとり《デコイ》としての無人区画を備えた決戦都市。
デウスエクスの攻撃を防ぐのが難しいなら、攻撃先を変えさせられないかという試みだ。優先的に狙われるよう、防衛配備に手が回ってない居住区に偽装したり、決戦配備を運用する重要拠点に見せかけたりな。
遅かれ早かれおとりだとバレるだろうが、|猟兵《ケルベロス》到着までの時間稼ぎにはなるだろう。

本当に釣られてくれるのかという懸念はあるし、情報が漏れればそれまでだけど……この機会にシミュレートする分には悪くない、と思う。



 未だ学を修めるには足りず、道の半ばとも言えばそうなのだろうと自覚できる。
 日下部・香(断裂の番犬・f40865)はケルベロスいディバイド世界のケルベロスである。この世界に対する思い入れは人一倍ある。
 彼女の生真面目な性格は、己が浅学であることを認め、また足りぬものが多くあることを自覚することから始めた。
 それは緊張に繋がる。
 ましてや、自分が『ビルドシティ・プレゼン・シュミレーション』のエキシビションを除けば、一番手であるということが更に緊張感を煽るものであった。
「素人が場違いじゃないだろうか」
 緊張で指先がかじかむ。
 けれど、亜麻色の髪の女性『エイル』博士入った。
 どんなアイデアだって歓迎する、と。

 それはもしかしたら、自分のアイデアがこの湾岸の決戦都市に良い発展をもたらすかも知れないという可能性を示すものであった。
 例え、自分のスコアがよいものではなかったのだとしても、、それが礎となってより良い決戦都市を生み出し、人々を守るのならば一時の恥を得ることなど、むしろ容易いことだと彼女は思っただろう。
「だいじょうぶかい?」
『エイル』博士の声が聞こえる。
 遠く聞こえるような気がしたけれど、香は頷く。
「だいじょうぶだ。君の構想は素晴らしいものだ。自身を持っていくと良い」
 さあ、と彼女に示されてミニチュア出力機『五月雨模型店』に香はデータを打ち込む。

「私が提案するのは|おとり《デコイ》として無人区画を備えた決戦都市」
 示されるのは、決戦都市のマッピング映像。
 出力されていくミニチュアには、彼女の言葉通り無人区画が生み出されている。
 それはまるで空洞のような箇所であった。
 戦力的に見れば全く無意味な区画。
 余白を残す余裕は決戦都市にはない。どの区画も漏れなくデウスエクス迎撃のための装置や装備が敷き詰められている。
「ふむ、つまり」
「そう、デウスエクスの攻撃を防ぎの難しいなら、攻撃先を変えさせられないかという試みだ」
「なるほど。空洞なのは仮に破壊されても此方としては痛手ではない、ということか」
「優先的に狙われるような工夫をしなければ、敵もバカじゃあない。たとえば、敵が優先的に潰したいのは……」
 香が示すのは、決戦配備といったケルベロス、猟兵たちに利となる施設だ。
 もしくは防衛配備の手が回っていない居住区。

 デウスエクスは此方の手をさかせるために敢えて、そこを攻撃するだろう。
 シュミレーションでもデウスエクスの群体がそうした香の用意したデコイスペースへと誘導されていく。
 面白いくらいに誘導されているのはなるほど、『エイル』博士の発案した電磁バリアと組み合わせれば単調にならないで済むだろう。
 だが、遅かれ早かれデコイスペースだとデウスエクスにバレたのか、群体は後帰るように行動を開始する。
「ふむ。敵に勘付かれるよりはやく、敵の単体での戦闘力に長ける強力なデウスエクスを猟兵、ケルベロスが短期決戦で打倒する、と」
 シュミレーションでは、デコイスペースに誘導されたデウスエクスたちがまごついている間に、猟兵ケルベロスが強大なデウスエクスを打ち倒している。

「見事に時間稼ぎができているな」
「あくまでこれはシュミレーションだ。だからこそ、不手際もあるだろうし、敵に情報がもれていたら元の木阿弥になってしまう」
 香の懸念に『エイル』博士は頷く。
「だが、このデコイスペースはデッドスペースにはならない。予備の倉庫としても使えるだろうし、緊急時のシェルターにも使える。なるほど。無駄なく無駄なく、と我々は思ってきたが、こうした余白を遺したやり方というのは非常に面白い」
「まだ不肖の身だが、それでも何か貢献できないかと提案させてもらった。上手く行くかはシュミレートだけではわからない。現実とは異なるかもしれない」
 それでも可能性を示すことができたはずだ、と香がもたらしたミニチュアの決戦都市の構想は今回のシュミレートでは人的、物的被害もほぼゼロに抑えられている。

 非常に高い評価を受けたのは、デコイスペースの有用性だった。
「スコア87点か。もう少し行くと思ったが、確かに君の言う通り敵に情報が漏れればデコイとして活用できないデメリットもある。けれど、面白い発想だ。もしも、このまま進学するのならば……」
『エイル』博士は香の手を取って笑む。
「どうか勉学に励んで欲しい。君の発想は素晴らしいものだ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
さぁ、本番ですね!
先走ってアイディアを出し切っちまったですけど、まだ工夫は出来るですよ!
まずはとにかく対空兵器です。
色々あるですけど、装甲やら表皮やらが硬い敵を低コストで傷付けるなら……やっぱりバカデカい矢とか槍みたいなヤツですかね。
エネルギーをバリアに回しても、火薬かなんかでどかんとやればイケるですからね!
セラフィムにはその傷口を狙わせたり、地上戦の為に待機させておいても良いですね。
後はその電磁バリアを攻撃に転用するとかどうです?
敵が多けりゃ守れば良いし、デカいのが一体出て来たらバリアのエネルギーを集中してぶつけるですよ!ボクのよーに!
どうやるかって?それはボクじゃなく科学者の考える事です!



「幸先の良いスコアとなったね。この調子で頼んだよ、みんな」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士の言葉に観客たちはどよめくようだった。
 長らく侵略者との戦いの歴史を紡いできたケルベロスディバイド世界。その中で余裕という言葉は人々の意識から失せていたものだったことだろう。
 だからこそ、猟兵、ケルベロスの出した『僕私の最強の決戦都市』構想は斬新さをもたらすものであった。
 会場の空気が温められていく。
 工夫とは逼迫した事態にあっては、どうしても人の心を圧迫する。
 けれど、余裕があれば楽しさを呼び込むものなのだ。

 猟兵とケルベロスたちの発想は、彼らに余裕という心の余白を生み出すものであったし、またその余白にこそ楽しさを引き込む。
 その呼び水となるようにファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)はスラスターから白煙を噴出させながらイベントステージ降り立つ。
 その登場演出に人々は歓声を上げた。
「本番行くですよ! ボクが提案する決戦都市構想はこちら! 目ぇかっぽじってよぉーくみやがるといーです!」
 出力されるミニチュア都市。
 シュミレーションに掛けられた瞬間、生み出されるのはハイウェイ道路に偽装されたカタパルトデッキであった。
 それだけではない。

 デウスエクスの襲来によって電磁バリアが展開される。
「ふむ、電磁バリアか。しかし、エネルギーの供給は十分とは言え、他の迎撃機構に割くエネルギーが失われてしまうかも知れないが……」
「エネルギーが足りないってんなら、エネルギーによらないもので贖えばいーんすよ!」
 ファルコの言葉と共に迎撃機構から放たれるのは石の礫ような……もっと言えば原始的なものだった。
 そう、それは戦いによって生み出された瓦礫。
 それを圧縮した砲弾であった。
 はるか昔の歴史にならうのならば、投石機。
「なんて原始的な! だが、それでもエネルギーは使うだろう?」
「いいえ、例えば火薬を使えばエネルギーは消費しないです。でもまあ、それでも数に限りはあるので過信はよくねーですが! それに!」
 カタパルトとなったハイウェイから飛び出すのは無数の決戦配備『セラフィム』であった。

 航空戦力として推力を強化されたであろう『セラフィム』たちが一気に飛び出し、襲来したデウスエクスと交戦している。
 とは言え、その性能はいまだデウスエクスを単騎で打倒できるものではない。
 故に、『セラフィム』の行動は空中機動によるデウスエクスの翻弄と撹乱に重きをおいているようだった。
「確かに守りは固く、撹乱によって攻めがたいものとなっているが……攻撃がおざなりになってはいないか? ケルベロスや猟兵の到着を待つ、というのも選択肢の一つではあるが、攻勢がおざなりになっては」
「そこで電磁バリアを攻撃に転用するのです!」
 現れる強大なデウスエクス。
 瞬間、電磁バリアが解除され、ハイウェイのカタパルトが変形する。

「電磁バリアのエネルギーをカタパルトに集約! 集積された瓦礫を圧縮した質量弾をセットです!」
 ファルコの瞳が輝く。
 カタパルトが電磁加速した質量弾が強大なデウスエクスに投射される。
「全てはこのための布石か」
「電磁バリアがどうせ強大なデウスエクスに破られるなら、出現と同時に先制パンチを食らわせてやるんですよ! そうすりゃ、どんな敵だってふらつくでしょーよ!」
 ファルコの言葉通り強大なデウスエクスが巨大な質量弾の直撃を受けてふらつく。
 そこに『セラフィム』を伴った猟兵、ケルベロスがユーベルコードを叩き込み、これを撃滅するのだ。

 スコアは89点だった。
 防御と一点突破の攻撃性能。
 これが評価された点だろう。単一の機能を保たせるのではなく機能をフレキシブルに切り替えていく機構は確かに面白い発想だった。
「カタパルト、質量弾、電磁加速。なるほど。確かにこれまでにない迎撃機構だね。面白い」
「でしょう! ま、実際にどうやるのかはわかんなかったですけど、科学者である『エイル』博士の技術力ならどうとでもなるってもんです!」
 ファルコはイベントに集まった観客たちに彼女を示し、また同時に『エイル』博士もファルコの発想を讃え、拍手を共に受けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

お祭りだよ!エンターテインメントだよ!
じゃあもっと盛り上がっていかなきゃね!

●物事は実演が一番!UC『歪神』使用
はーいまずは夢空間にみんな招待してシミュ画面と本物の決戦都市をリンク!
そしてー…魔竜皇ファイナル・ダーク・ドラゴンくん召喚!
それに対し決戦都市は浮上!
はいここでBGMー!
東地区は左腕に!西地区は右!南は脚に!後はなんかそれっぽく人型に見えなくもない感じに変形!
じゃじゃーん!機動人型決戦都市!変形完了いっけー!

パンチ!キック!
そして奥の手…地球のグラビティ・チェインを大量に消費してしまうファイナル・グラビティ・キャノンでドーーーンッ!!
ふぅ…どうだった!?



『シティビルド・プレゼン・シュミレーション』というチャリティーイベントのメインは盛り上がっているようだった。
 猟兵、ケルベロスのもたらした発想はシュミレーションをもって人々に多く認知されることとなった。
 それによって多くの人々が自分もと発想の翼を羽ばたかせる。
 確かに戦いに関した事柄である。
 専門家に任せるのが本当はよいのだろう。
 けれど、専門家たちの視野は逼迫した事態に徐々に狭窄していく。
 そこに他の人々の自由な発想を咥えることで打開策……ブレイクスルーだって起こり得ることを端的に示していたのだ。
 それに気がついた人々が、自分もと考えるのはケルベロスディバイド世界にとって有益な事柄であっただろう。

「ならさ、お祭りだよ! エンターテインメントだよ! もっと盛り上がっていかなきゃね!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はユーベルコードを発現する。
「物事は実演が一番!」
 発現したユーベルコードはロニの全知全能の力を復活させる。
 イベント会場に集まった人々を権能によって夢の空間へと引っ張り込む。
 招待とも言うが、有無を言わさぬところがロニらしいと言えばらしかった。
「な、なんだなんだ!?」
「どこここ!?」
「さっきまでイベント会場いたよな!?」
「お、おい、あれをみろ!!」
 人々は空を見上げる。
 そこにあったのは、巨大な翼を広げるデウスエクス種族ドラゴンであった。

「ど、ドラゴン!?」
「そうさ! ええと名前はなんだっけ、魔竜皇ファイナル・ダーク・ドラゴンくん! だったかな!」
 ロニは戸惑う人々を前にして決戦都市を浮上させながらBGMを流す。
 なんで?
「な、なんか音楽流れてるんだけど!?」
「いやに壮大!?」
「ファイナルシークエンス、ゴー!」
 ロニの言葉と共に浮上した決戦都市が変形していく。
 東西南北の地区がそれぞれ人型の腕部、脚部に変わっていくのだ。なんで?

「究極変形! じゃじゃーん! 機動人型決戦都市! いっけー!」
 人々の夢空間の中で決戦都市が人型巨大ロボットなって、デウスエクスであるドラゴンと組み合う。
「まさしくがっぷり四つ!」
「揺れる! なんだこれ!?」
「だ、だいじょうぶなの!?」
「わかんない! でもまあ、パンチキックだけだと絵面がしょぼいから! 奥の手!」 
 ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
 もはややりたい放題であった。
「地球のグラビティ・チェインを大量に消費してしまうファイナル・グラビティ・キャノンで……」
 集約されるグラビティ・チェイン。
 なんだかんだで、胸部の砲口に集まるグラビティ・チェインが光を放ち始める。

「ド――ンッ!!」
 炸裂する光の渦の中にドラゴンが消滅していく。
 その光景を夢空間で人々は見ただろう。
 あまりにも荒唐無稽の光景。
「ふぅ……どうだった!?」
 ハッ! と人々はイベント会場で目を見開く。
 寝てた!? と人々が顔を見合わせる。だが、不思議なことに全員が同じ夢を見ていたようである。
 これがロニの権能の力であった。
「……なんか、よくわかんなかった」
 あまりにも現実離れした光景であったため、人々は何がなんだかわからなかったようである。
 しかし、彼らの心には自由で大胆な発想が残るだろう。
 それがきっと今後の彼らがデウスエクスと戦う中で芽吹く何かとなることをロニは確信して、夢空間であるがゆえにスコアが出ない事実に気がついて、愕然とするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

コンサート会場に|ご招待《監禁》成功です♪
これできてくれたみなさまにたっぷり演奏を聴いて頂けますね。

決戦都市のコンセプトはもちろん音楽都市!

中央に野外音楽堂を配置して、
街中に演奏が届くようにしちゃうんです。

それよと、街の外壁の外に向けて、指向性のある増幅器をつけちゃいます。
そうすればデウスエクスが攻めてきても、音楽で魅了しちゃえますからね!

ということで、ステラさん、『エイル』博士、お試し行ってみましょう(バイオリンちゃきっ
この演奏さえあれば、連敗記録ストップですよ!

それでステラさんはなんでしたっけ?AI?
なんだかよくわかりませんけど『第九号』さんに任せておけばだいじょぶですよね。


ステラ・タタリクス
【ステルク】
さてルクス様は放置……
と思ったら捕まりました助けて死にたくない
世界を音楽で満たしたら幸せですが
デウスエクスは攻めてくるんですよ!!
どうにか対策を打たないと!!

うーむ
やはり『セラフィム』が要だと思うのですよね
いかにエイル博士が負け続けているとしても
第九号様――ノイン様が傍に居るならば
孤独の先の幸せは其処にある
ですがデウスエクスに勝てない
この矛盾を回避するには……負けなければいい
ええ、究極の時間稼ぎです
その為にはセラフィムに乗り手がいる
これまでの戦闘データをAI化できないものでしょうか第九号様?
知識の蓄積は経験にも勝る力となる
後はルクス様の音楽パワーと合わせて
ええ、AIは死にませんから



 チャリティーイベント当日、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)から逃れていた。
 ルクスの演奏会、コンサート会場にご招待という名の監禁の魔の手から必死に逃げおおせていたのだ。
 ロックオンされた時点で詰んでいる。
 というか、ルクスもまたチャリティーイベントに参加するのならば、どうやっても演奏を聞かざるを得ないのである。

「助けて死にたくない」
 ステラはガッチリとルクスにホールドされていた。
 演奏会はご招待制である。
 招待された時点で否応無しに演奏を効かねばならないのである。そして、それは何も知らぬイベント会場にやってきている人々も同様であった。
 何も知らないということは時として幸せなことである。
 これから行われる破壊音波という名の演奏は、人々の鼓膜と記憶になんかこうトラウマを刻み込むかもしれなかった。
「ルクス様、確かに世界を音楽で満たしたら幸せですが、デウスエクスは攻めてくるんですよ!!」
「もーわかってますよーステラさんー」
 本当にわかっているのかと疑わしくなる顔をルクスはしている。
「どうにか対策を打たないといけなんです!! わかっておられますか!?」
 わーぎゃー騒ぐステラを前にルクスは深く深く、頷いた。
「まあ、見ておいてくださいよステラさん! さあ、わたしの決戦都市を出力おねがいしまーす!」
 ルクスの言葉にミニチュア出力機が生み出した決戦都市がシュミレーションにかけられる。

 その決戦都市はある種、荘厳であった。
 中央に備えられた野外音楽堂。
 湾岸の決戦都市の中心には『エネルギー供給システム』がある。これを直下にあることを利用することで音楽堂をアンプの役割へと変貌させているようであった。
「ふむ、音楽堂」
 いまいち、人々はピンときていないようだった。
 確かに音楽は親しんだものである。人の心に寄り添うものであった。
「私の決戦都市コンセプトは、ご覧の通り音楽都市です! 攻めてきたデウスエクスたちに対して音楽で迎撃するんです!」
 一般的な人々は音楽はこころを癒やすものである、という認識が主立っていた。いや、たいていそうだろう。
 音楽=破滅と結ばれているのはこの場においては、ステラとルクスを知る者たちばかりである。

「中央の音楽堂だけではなく、市街地の外にも指向性のある増幅器をつけてます! これでデウスエクスが攻めてきても、音楽で魅了しちゃいますからね!」
「とは言え、どんな音楽で、だろうか? デウスエクスは確かに知性を有しているが、対話に応じる者たちではない。根幹にあるのは、グラビティ・チェインの簒奪という目的しかないのだから」
「だいじょうぶです! わたしの演奏なら!」
 ちゃき、とルクスはバイオリンを構えた。

 シュミレーション上ではデウスエクスは音楽では止まらない。だが、此処にルクスの演奏を加えると……。
「や、いや、いやです! 後生ですから!」
 ステラが喚くが|招待《監禁》は絶対なのである。
 響くは破壊音波。
 前夜祭で行われていたライブとはにても似つかぬ旋律。
 凄まじいまでの破壊の音に人々は耳を抑えた。抑えた掌の上からでもルクスのバイオリンの音は響き渡るのだ。
「この演奏さえれば、連戦連敗記録ストップですよ!」
 スコアは……演奏前は50点。だが、演奏後は計測不能となっていた。
 計器がルクスの演奏を図りあぐねていたのだろう。

「むぅ~なんですか、これ壊れてますよ!」
 ぷんすこしながらルクスは憤慨していた。だが、ステラはさもありなんと思っていた。観客の人々も同様であった。
 ステラはルクスと合作という形で決戦配備『セラフィム』の強化を提案していたが、お披露目するまえにルクスの演奏が全部持っていったのである。
 具体的には自律稼働であること、無人機であることを譲れない『エイル』博士の意志を尊重してAI制動の向上の提案であった。
「『セラフィム』には乗り手がいる。ですが、それを『エイル』博士が良しとしないことは十分理解しております」
「ああ、人的被害は絶対に避けなければならない。これは大前提なんだ」
「ならば、これまでの戦闘データを集約してAI化できないものでしょうか。サポートAI『第九号』様のように」
 その言葉に『エイル』は難しい顔をする。

「……できるだろうか」
「智識の蓄積は経験に勝る力となるはずです」
「検討はしよう。だが……」
 今はちょっと無理、とステラと『エイル』は至近距離で受けたルクスの演奏にダウンし、イベントは一時中座することになったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨河・知香
都市計画は難しいねえ。
まあアイデアを元にエイル博士がいい感じにしてくれるだろうし、気楽に提案させて貰うよ。

アタシが提案するのは生活拠点としての地上都市と非常時の区画分けされた地下都市とで分割しつつ地下で避難民を分散する決戦都市。
一か所に集まれば集中攻撃で砕かれる、なら分散してどこを狙うか迷わせつつ、群れでの侵入にはその区画に海から海水引っ張って来て足止めとか。
その上で海底に作った支援兵器合わせれば到着までの時間稼ぎ易いんじゃないか?
…あとはそうだねえ。
地上と地下の浅層は復旧速度優先できるように工法や建材を変えるとか?
復興中に再襲撃受けたらそれこそ滅茶苦茶にされるだろうし。

※アドリブ絡み等お任せ



 様々なアイデアを持った決戦都市構想がチャリティーイベントにて発表されていく。
 猟兵、ケルベロスの自由な発想は人々にも伝播していくようだった。
 一般人である彼らは確かにデウスエクスとの戦いに協力的だった。それは己たちが滅びの瀬戸際に立たされているからだった。
 逼迫していたからだ。
 否応なしに、せざるを得ないから。
 だが、今回のイベントで人々は、己たちのアイデアもまた自分たち自身のためになるものに変わるかも知れないという可能性の片鱗を見ていたのだ。
 戦いばかりに注力するばかりではない。
 時にこうしたイベントによって思考実験を楽しむこともまた、人々に戦いというものに対して『猟兵やケルベロスのように戦えないから』という負い目を打ち消す要因になりえることを示しているようだった。

 とは言え。
「都市計画は難しいねえ」
 雨河・知香(白熊ウィッチドクター・f40900)は思う。
 完璧な計画などこの世にはあり得ないのかもしれない。どこかが必ずほころぶし、歪む。
 そういうものだと知って入れればフォローもできるが、実際にどのようにして綻びが生まれるのかを知らなければ、フォローしようがない。
「まあ、気軽にね」
『エイル』博士は頭を振って笑む。
 このようなチャリティーイベントである。たしかに有意義であることに越したことはない。けれど、それでも楽しむ事ができたのならば、それが一番なのだ。
「なら、提案させて貰うよ」
 知香は頷き、出力機から生み出された都市ミニチュアをシュミレートに掛ける。

「アタシが提案するのは生活拠点としての地上都市と非常時の区分けされた地下都市とで分割しつつ、地下で避難民を分散する決戦都市よ」
 モニターに表示された決戦都市。
 確かにデウスエクスの襲撃は突然である。
 此方の準備など待ってはくれないだろう。だからこそ、有事にさいして戦えぬ者たちは避難するしかないし、時にケルベロスや猟兵たちの手を煩わせることになる。
 それは仕方のないことだ。
 だが、問題は、その避難した後のことである。

 避難するまでのことは多くの者が対処として考えるだろう。
 けれど、知香の考えはその先をゆく。
「一箇所に集まれば集中攻撃で被害が甚大になる。なにせ、敵の目的はグラビティ・チェインの簒奪。生存エネルギーである地球に住まう人々の生命なんだからね。なら、被害を分散させるために分割すれば、敵は何処を狙うべきかと逡巡するだろう」
 特に群体でデウスエクスが現れた場合、それは顕著だろう。
 一点突破しなければ、猟兵やケルベロスに対応される。即座にデウスエクスは判断しなければならない。

 けれど、分散された人々のいずれかをと意思決定されていなければ、そこに漬け込む隙があるはずだ、彼女は言うのだ。
「だが、それだけでは最小の被害……つまり、切り捨てなければならない部分もあるということか?」
「取りこぼさないわ。敵の侵入は常に地下。なら、この湾岸の決戦都市の立地を利用して……」
 シュミレーションでは地下に侵入を果たしたデウスエクスの区画が隔壁で封鎖され、そこに海水が流入している。
 なるほど、と『エイル』博士は頷く。
「海水での水攻めか」
「ええ、でも水攻めでどうにかできるデウスエクスではないでしょう。これはあくまで足止め。そのうえで」
 海底に作られた迎撃機構……長距離砲が起動する。そして、海水を満載した区画がデウスエクス毎、空に打ち出される。
 脅威の排除。
 それを一瞬で終わらせた瞬間であった。
 長距離砲の一撃が排出された区画を撃ち抜く。

「面白いな。敵を囲って撃滅する。だが、排出する、ということは」
「それだけ決戦都市としての機能を切り売りするようなものよね。だから、浅層は復旧速度を優先できるように広報や建材を変えるなどの改善点はあるわね」
 如何に復興中でも攻撃を受けたらたまらないから、と知香は頷く。
 確かに面白い発想である。
 スコアは81点を示している。
 防御、そして人的被害を抑えるための工夫。それ自体が時間稼ぎになっている点が評価されたようである。
「フォローありがとうね」
「なに、司会者の務めというやつさ。しかし、復旧速度を優先するという構想は面白い。参考にさせてもらうよ」
 そう言って拍手を受ける知香と共に笑むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

陰海月がねー、一緒に考えてくれたんですよー。
私たちは単純な武器に、ユーベルコードの力を付与して戦ってるんですがー。まあ、それの応用ですねー。
あと、火薬で槍を発射するものとか…道路を広く、ですかねー?
広い道路って、セラフィムも動きやすいでしょうし。猟兵の中には、大型の物を操る人も、巨人もいますからねー。
平時だと、物資輸送や救急搬送にも活用できますしねー。


陰海月「ぷきゅ!」
ワクワクしながら考えたよ!ぼくだって、守りたいんだ!



 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』と共にイベントステージに立つのは巨大なクラゲ『陰海月』だった。
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、ペアの参加であろうかとマイクを向ける。
「ペアで参加でいいのかな?」
「ええ。『陰海月』がねー、一緒に考えてくれたんですよー」
 その言葉の色は、正しく爺と孫の関係性を示すものであった。
 イベント会場の人々は、なんだかほんわかする思いだった。
 まあ、こういう参加者もいていいだろうと思わせるような雰囲気があったのだ。ある種、平和の象徴めいたものであった。

「私達は、いえ、猟兵の多くもそうでしょうが、武器にユーベルコードの力を宿して戦う者が多くおりましてー」
「ケルベロスもそうだな。彼らの力は永遠不滅のデウスエクスを撃退するのに必要不可欠の力だ」
『エイル』博士の言葉に人々も頷く。
「ええ、それで、今回はその応用ができればと思いましてー」
「というと?」
「先ほど、猟兵の方がおっしゃっていましたが、決戦都市のエネルギーは無限ではありませんでしょうー?」
 そのとおりだ。
 如何にインフラを支える要である『エネルギー供給システム』があるのだとしても、無限ではない。

 だからこそ、決戦都市の迎撃機構に回せるエネルギーというのは限度がある。
「たとえば、火薬とおっしゃられておりました。それとハイウェイなどの道路をもう少し広くしましてですねー?」
 ミニチュア出力機で生み出されたミニチュア都市。
 その道路は一般的なものよりも広くスペースが取られていた。
 ハイウェイ故に市街地の上をまたぐようにして配置されている。
「これほどの道幅ならば自律人型戦術兵器『セラフィム』も動きやすいでしょうし」
 加えて、と『疾き者』は続けようとして『陰海月』が鳴く。
「ぷきゅぷきゅぷきゅ!」
「翻訳しますとー、猟兵の中には大型の武装を操る方々も、巨人もいらっしゃいますからねー」
 そうした者たちが戦いやすい決戦都市にすることが『疾き者』たちの構想だった。
 人の生活が阻害されることになってはならないが、人のサイズに合わせていては決戦配備も十全に力を発揮できないであろうと考えてのことだった。

「しかし、平時では持て余すのではないかね」
「いえ、物資輸送や緊急搬送など、活用できる場面はいくらでもありますよー。そもそも渋滞緩和に道幅を広げることができるのがハイウェイの良いところですしー」
 シュミレーションでは、確かに『セラフィム』や大型武装を持つ猟兵ケルベロスが戦いやすくなっているように見えた。
 デウスエクスの撃退、という点から見れば戦う場を拡充するのは理にかなった構想であるように思えただろう。

 スコアは76点だった。
「ふむ。デウスエクスを侵入させない、その迎撃を成り立たせるために目が行きがちであるが、被害を拡大させないために戦う場を広く取って迅速に、という思想は考慮すべき点であるだろうね」
「ええ、戦いやすさ、というのはやはりデウスエクス相手には重要ですからねー」
「ぷきゅ!」
 他の参加者たちの案と合わせれば、よりよい構想となるだろう。
 ある意味で基礎の構想を固めたと言って良い。
 その事実と共に『疾き者』と『陰海月』は観客たちに拍手を送られるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソニア・コーンフィールド
頑張って考えてみたけど…どうかな?
シミュレーションだし、寧ろ悪い所見つかった方がいいよね!

エネルギー供給システムから離れた所に避難場所作るのは前提、そっち潰されたら守れなくなるし。
大出力エネルギー直結で一時的にバリアの出力上げれるようにするのもいいかも?
で、この都市の目玉はやっぱりセラフィムだよね?
都市のあちこちに大エネルギー供給用のステーションと使い捨ての大出力武器設置して状況に応じて使えるようにするとかどうかなーと。
他には空中自由に飛ばして操作できるシールド…乗り物?みたいなのは追加武装でどうかな。
空中戦での足場あれば連携便利だよね。
あと避難誘導とかもできるかもだし!

※アドリブ絡み等お任せ



 ソニア・コーンフィールド(西へ東へ・f40904)は、湾岸の決戦都市のインフラを支えている『エネルギー供給システム』に着眼していた。
 とは言え、少し不安であった。
 確かにがんばって考えた。
 けれど、がんばったからといって結果がより良いものになるとは限らないのが現実であることもまた知っていることだった。
 だが、彼女は頭を振る。
 そう、これはシュミレーション。
 現実ではないのだ。なら、むしろ、と考えを改める。
「むしろ、悪いところが見つかった方がいいよね!」
「ああ、そのとおりだ。その前向きさが人のひたむきさでもある」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士の言葉に励まされて、ソニアは己の構想をミニチュア出力機から生まれたミニチュア都市をシュミレートに掛ける。

 彼女が大前提としていたのは『エネルギー供給システム』から離れた場所に人々の避難所を造ることであった。
 そもそも『エネルギー供給システム』を潰されたのならば避難した人々を守るどころではなくなるからだ。
 そして、『エネルギー供給システム』は、先日のようにインフラ破壊作戦を行おうとするデウスエクスにとっては此方の急所そのものだ。
 故に直結した大出力エネルギーでもってバリアの出力を上げることに注力していた。
「ふむ、先日の事件の教訓を早速活かす、と」
「うん、だってデウスエクスはまた狙ってくるでしょう? インフラがわたしたち地球人の急所だって理解したんだから」
 出力を上げたバリアは群体のデウスエクスでは破れないほど強固だった。
 単体で強大なデウスエクスが攻撃を繰り返せばわからないが、それでも一撃で砕かれるということはないだろう。
 もしも、仮に一撃でこの大出力のバリアを破壊できるとしたら、ドラゴンのような最強格のデウスエクスだけだ。

「直結して出力を得る、というのはいいな。都市全体を覆うようにして守るとどうしても点に弱くなる。この都市の場合は、急所を一点集中して守っているために硬い」
「そういうこと! で、この都市の目玉はやっぱり『セラフィム』だよね?」
 当然、自律人型戦術兵器でる『セラフィム』は人型であるがゆえに、人としての戦術を拡大して行うことができる。
 本来の人現大では運べぬものも運べる。
 ならば。
「大エネルギー供給用ステーションと使い捨ての大出力武器をケルベロスたちに届けるシステムも搭載しているよ!」
 状況に応じて、戦闘の行われている場所に『セラフィム』が届ける。
 これによってケルベロス、猟兵たちは間断なく補給を受けることができるのだ。

「敵の大戦力を前にしても即応できるという点は素晴らしいな」
「後は、追加武装で空中に自由に飛ばして操作できるシールドとかどうかな?」
「これは此方でコントロールするのかい?」
「緊急時はケルベロスたちが任意で操作できるようにしてあるよ!」
 シュミレーションの中ではデウスエクスの攻撃をシールドが受け止めている。
 味方の消耗を抑えつつ、敵を討つことに成功しているようだった。
「足場にもなるからね、避難誘導にも使えるよ!」
 ソニアの言葉通り、多くの武装を各種運用できる配置にしてある決戦都市の構想は、見事なものだった。

「正しく戦うための決戦都市、だな」
 スコアは88点。
 敵勢力に対する積極的な攻勢と要所を守ることに特化した構想が評価された形であろう。
「それでもやっぱりシュミレーションでも、市街地へのダメージは免れないね。ここが要改善点かな!」
 ソニアはそうした結果にも目を向け、次なる構想に思考を走らせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真・シルバーブリット
まずは論より証拠
僕のアイディアをシミュレートしてミニチュアに環状道路網を再現しちゃうよ
僕はケーブルを通して電子海を走るけど、コンセプトはライドキャリバーのライドキャリバーによるライドキャリバーならではの防衛機構だから、ジークもステラちゃんも乗せない条件でやるね

好条件すぎるのも面白くないし、エイル博士の判断で色んな状況を出しちゃっていいよ!
僕も臨機応変して|決戦配備《ポジションオーダー》で手近に居るセラフィムの援護や都市構造の変化で生まれるショートカットを利用して、デウスエクスが出現したポイントに急行してのタイムアタックを挑戦していくよ!



 真・シルバーブリット(ブレイブケルベロス・f41263)の構想はライドキャリバーたちによるデウスエクス襲来に対する即応的なものであった。
「論より証拠だよね!」
 彼はウキウキでミニチュア出力機に送信していたデータを更新する。
「では頼んだよ」
「まっかせておいて!」
 出力されたミニチュア都市を亜麻色の髪の女性『エイル』博士から受け取ったシルバーブリットはシュミレーションにミニチュア都市をセットする。

 開始されるシュミレーション。
 環状に配されたハイウェイ。
「そして! 僕も猟兵戦力データとして飛び込む!」
 この決戦都市の肝はライドキャリバー部隊である。
 シルバーブリットは、そのライドキャリバー部隊を指揮する隊長なのだ。
「それじゃあ、コンセプトを説明するね!」
 シルバーブリットはシュミレーションの中、映し出されたモニターから観客たちに呼びかける。
「この決戦都市のコンセプトはライドキャリバーならではの高速防衛網の構築! 確かに僕らライドキャリバーは人を乗せることを前提としているけれど、自律行動だってできる。緊急時には乗り手を待たずに飛び出さなければならない時だってある」
 だから、とシルバーブリットは、いつもなら己の背に乗せる二人のケルベロスのことを思う。
 けれど、今は違う。
 自分たちだけでできることがあるはずだと論ずるよりも証拠を見せようとシュミレーションの中、そのハイウェイを駆け抜ける。
「『エイル』博士、敵性データは加減しないでね!」
「ああ、他の面々と同じように群体のデウスエクス、単体の強大なデウスエクスのデータを条件にしているよ」
「オッケー! それじゃあ、始めようか!」
 シルバーブリットたちライドキャリバー部隊はデウスエクスが市街地に到達するより早く、ハイウェイ上にて防衛網を構築していた。
 環状に配されたハイウェイ。
 それ故に上空から迫るデウスエクスたちは狙い撃ちされる。
 まるで網目のようにデウスエクスたちは攻撃に翻弄されるようにして市街地に降り立つも、しかし、即応したライドキャリバー部隊と『セラフィム』の連携によって次々と撃破されていく。

「ふむ、決戦配備を最大限に活用しつつ、最大の速度をはじき出す、か」
「そういうこと! 僕たちが『セラフィム』より早く動ければ、戦いが長引いても他の猟兵、ケルベロスたちに消耗はないよね」
 であれば、デウスエクス戦力に対して消耗無しの猟兵やケルベロスをぶつけることができる。
 そして、ハイウェイが変形していく。
「コースチェンジ! これでどんな場所にも急行できるようにしてあるんだよ!」
 シルバーブリットがシュミレーション内部の変形したハイウェイを走り抜け、現れた強大なデウスエクスの元へと飛び込み、ユーベルコードを叩き込む。
 全ては速度。
 タイムアタックを行っているのかと思うほどに迅速にシルバーブリットはデウスエクスに対処していた。

「全ては速度、か。これならば確かに避難誘導する余裕はあるし、不測の事態にも対処できる」
『エイル』博士は、これまでの決戦都市が迎撃に特化したものであったが、こうしたアイデアで目まぐるしく変化する戦場への対応力もまた求められるものであることを理解しただろう。
「どう!? 結構撃退するの早かったんじゃないかな!」
 確かにシルバーブリットの構想は対応速度という点においては他の追従を許さぬものであった。
 スコアは88点をマークしていた。
「速度は申し分ないな。これも面白い結果だ」
「でしょー?」
 シュミレーションから帰還したシルバーブリットは満足げだった。
 これらのアイデアがきっと、湾岸の決戦都市を新たなる復興のステージに引き上げることだろう。
 それはきっとよりよい未来を示すものであったのだろう、観客たちからは拍手が降り注ぐのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『後夜祭に行こう』

POW   :    地元の特産品を使った料理をいただく

SPD   :    SNSでイベントの感想を探す

WIZ   :    他の参加者と楽しく歓談する

イラスト:del

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 チャリティーイベントに参加した猟兵、ケルベロスたちに万雷の拍手が降り注ぐ。
 彼らのもたらした構想は、必ず湾岸の決戦都市の復興に役立てられ、構想を受けた発展は必ずや強固な決戦都市を生み出すことだろう。
 それを予感させるほどに人々の顔は晴れやかなものだった。
 猟兵、ケルベロスたちだけではない。
 自分たちのアイデアも捨てたものではないのだと自覚するものたちが多かった。
 たとえ、この世界が侵略にさらされ戦いに明け暮れる覚悟を突きつけられるものであったとしても、人々は自分たちもまた戦う一員であることを自覚したのだ。
「今回はありがとう。代表して御礼を」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士は深く頭を下げて参加した猟兵、ケルベロスたちに礼を告げた。
 彼らのもたらした構想はデータとして湾岸の決戦都市の復興に組み込まれていくことを確約していた。

「後は後夜祭だね。まだ様々な催しが行われている。自由に楽しんでくれたまえ。それに、君たちの顔はイベントで知れ渡っているだろう。みんな快く歓待してくれるだろう」
 彼女は参加した者たちに構いたくて仕方ないというような人々を示す。
 ちょっとした有名人気分が味わえるかもしれない。
「まあ、付き合ってくれたまえ」
 そう言って『エイル』博士は猟兵、ケルベロスたちの背中を押すのだった――。
カシム・ディーン
うそ…だろ…間に合わなかったぁぁぁぁ!!

合体機構のセラフィムとか…攻撃とか防衛とかの役割を分けたり…各自データリンクして…連携も強化した強化セラフィム決戦都市とか作ってたのにぃぃぃ(ぐすんぐすん

「タイミング悪かったねぇ…メルシーも神機都市ジャパニア作ってたのにー☆」
それは却下だから問題ねーよ!
「酷い!」

あったま来たからとりあえずデータだけは渡しておく

合体機構と連携を強化して各状況においての臨機応変さも強化した代物だ

後は救命救急セラフィムとかで役割分担だな

そして大事なのは各機能を揃え合体の要になるリーダー機を配置
壊された時には即座に役割を引き継げる機能だな

基本防衛と足止めと住民の安全確保が主軸だ

という訳で屋台でやけ食いだ畜生め

しかし…此処でもセラフィムか…そしてエイル博士…なんかメリサの野郎を思い出しちまうな

んー…いっそエイル博士にあのシックス君の残骸を回収して渡してみるか…?どうにかなるとも思えねーがな

「気にしてるんだ?」
知らねーよあんなばっきゃろーなんぞ
ちょいと気になっただけだ



 凝り性である、ということは時に多くのものをもたらす美点でもあるだろう。
 しかしながら、何事にも期限というものがある。
 食べ物であれば賞味期限。
 仕事であれば締め切り。
 この世に数多溢れるものの多くは、たいてい、永遠ではない。
 そういう意味では。
「うそ……だろ……間に合わなかったぁぁぁぁ!!」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の叫びはチャリティーイベントが行われている湾岸の決戦都市にて悲痛さえ感じさせた。
 あまりにも無情。
 締め切りがあるがゆえに苦しまねばならないし、逆に言えば、それ故に起こってしまう悲劇というものがある。

 だがしかし、それは締切を課す者にも同様である。
「合体機構を備えた『セラフィム』とか!」
「そんなもの、本当に本気に造るつもりだったのかい」
「攻撃とか防衛とか役割を分けたり……!」
「わからないでもないが」
「各自データリンクして……!」
「それはもう元から『セラフィム』にはあるよ」
「強化『セラフィム』決戦都市とか作ってたのにぃぃぃ!!」
 カシムの目にも涙である。
 そんな彼を亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、なんとも言えない顔をして見ていた。
 いやまあ、締切に間に合わなかっただけで、そのデータが丸ごと大損で使えないということはない。

 そうしたデータはきっとこの後の復興に活用されるであろう。
 ただし、スコアは出ない。
 非公式なレコードとして残すしかないのだ。
『うんうん☆ タイミング悪かったねぇ……メルシーも神機都市じゃパニア作ってたのにー☆』
「それは却下だから問題ねーよ!」
『ひどーい☆』
 カシムと『メルシー』のやり取りを聞きながら、『エイル』博士は頷く。
 確かに問題は多くあるが、彼らは彼らなりに間に合わせようとがんばったのだろう。ただ、それが締め切りに間に合わなかっただけということだ。
「まあ、仕方ないことだよ。締め切りに間に合わなくて、というのは」
 仕事はいつだって予想外、予定外が起こり得るもの。
 だからまあ、締切を設けているのだが。
 ギリギリの仕事はいつだって、ギリギリ間に合うと、ギリギリ間に合わないの境界を綱渡りするもの。

「あったまきた! とりあえずデータだけは押し付けるからな!!」
 ぐいぐいとカシムはデータの入った媒体を『エイル』博士に押し付ける。
「受け取らないとは言っていないだろうに」
「合体機構と連携を強化した決戦配備のデータだ! 各状況においての臨機応変さも強化した代物だからな!」
 救命救急『セラフィム』なども考えていたようである。
『セラフィム』という一括りではなく、各分野に精通した機能を持つ『セラフィム』を部隊として編成するこうそうであるようだった。

 合体機構は絶対のようで、リーダー機を設定し、破壊されても機能とデータ、役割を引き継ぐようにしているようだった。
「できるできないかはわからないが、ありがたくもらっておくよ」
「おうよ! もらっとけ! っていうわけで僕ぁ、屋台で自棄食いしてくるわ!」
 ちくしょうめ! とカシムはぷりぷりしながらずんずか屋台へと進んでいく。
 屋台特有の甘辛い匂いがカシムの鼻腔をくすぐる。
『やっほーい☆ 焼きとうもろこし、たこ焼き、クレープ、きゅうりの一本漬け! 箸巻きにベビーカステラもあるよ、ご主人サマ☆』
「ええい、全部だ! 全部!」
 片っ端から制覇しようというのだろうカシムは、端から端まで屋台の食べ物を購入していく。

 あぐあぐと締切に間に合わなかった己の不運を呪いながら、少し考える。
『セラフィム』。
 この湾岸の決戦都市における決戦配備、自律人型戦術兵器の総称。
「しかし……此処でも『セラフィム』か…・・そして『エイル』博士……なんか『メリサ』のやろうを思い出しちまうな」
 男性と女性。
 性別はことなれど、容姿は似通っているように思えなくもない。
「んー……いっそ『エイル』博士にあの『セラフィム・シックス』の残骸を回収してワタシてみるか……?」
 他世界の海に沈んだ自壊したキャバリア。
 巨神と呼ばれた性能を持つ『セラフィム・シックス』の残骸からならば、ケルベロスディバイド世界の『セラフィム』を強化できるのだろうか?
 だが、どうにかなるとも思えなかった。

 他世界の技術をおいそれ持ち込んで、何事かが起きるかわからない。
 それは分の悪い賭けのようにカシムには思えたのだ。
『気にしてるんだ☆』
「しらねーよ、あんなばっきゃろーなんぞ」
 ただ、ちょっとだけ気にった、それだけの話しだとカシムは『メルシー』の言葉を切り上げ、また屋台にて購入した食べ物を勢いよくかっ食らうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真・シルバーブリット
【ケルチューバー】

ふふん!
こんなに拍手されるだなんて、僕も鼻高々だよ!

あ、ヴィルトルートお嬢様だ
なうろーでぃんぐですわ~!(挨拶
ジークとステラちゃんだね
実は今夜チャンネルで放送予定の獣人戦線で撮影した動画編集がまだ終ってなくて、ナノと一緒に徹夜で追い込んでいるところだよ
夏休みの宿題を一日で終わらせようとしている感じだね
撮影日程もハジメちゃんが引き起こしちゃった戦後処理の問題で推してたようだし、そこは仕方ないかなー

放送予定時間までまだ時間があるし、それまで僕はライドキャリバー体験搭乗会でもやろうかなって
サイキックハーツじゃライドキャリバー達が社会貢献してるし、それを見据えた切っ掛け作りでもあるよ


ヴィルトルート・ヘンシェル
【ケルチューバー】

先日はダモクレス時代に戻ったかのような破壊に破壊の限りを尽くしましたので、どのような復興プランを打ち出すのか御見学させて頂きましたが…ええ、どれも深く|胸《コア》を打つものでしたわ
そして、お久しぶりですわシルバーブリット様…何時ものお二人組みは如何なされていて?

まぁ、ナノ様が付いておきながら…お嬢様たる者、常に余裕をもって優雅たれ
私の指先に溜まった汚れを煎じて飲ませてやりたいですわ、オーッホッホッホ!

あらシルバーブリット様…何て素晴らしいお考えを
ではその体験搭乗者第一号をエイル博士にお譲り致しますわ
実際に風となる事で改めて発見致すこともありましょうから、今後にも活かせましてよ



 チャリティーイベントを終えたイベントステージの上で拍手を浴びる真・シルバーブリット(ブレイブケルベロス・f41263)を始めとした猟兵、ケロベロスたち。
 彼らの構想はきっとこれからの湾岸の決戦都市において復興の礎となるだろう。 
 構想は骨子に。
 経済は血潮に。
 人々は血肉に。
 そうやって決戦都市は一丸となって、これまでもそうであったようにデウスエクスの襲撃に対して毅然と戦いを挑むことになるのだ。
 それは茨の道だろう。
 だれもが傷つくであろうし、生命が失われるかもしれない。
 けれど、そこにヴィルトルート・ヘンシェル(機械兵お嬢様・f40812)気高さを感じずには、いられなかった。

「なんとも深く|胸《コア》を打つものでしたわ」
 人々と同じくイベントステージを見上げるヴィルトルートは拍手を送る。
 その姿を認めたシルバーブリットが壇上からおりてくる。
 彼は拍手されたことに鼻高々だった。嬉しい、と思ったのだ。
「あ、ヴィルトルートお嬢様だ」
 ヴィルトルートの姿を認め、シルバーブリットはライトを点滅させる。
「なうろーでぃんぐですわ~!」
「なうろーでぃんぐですわ~! シルバーブリット様。お久しぶりでございますね。ら、いつものお二人組みはいかがなされて?」
 なうろーでぃんぐですわ~、はきっとケルチューブのお決まりの定型文、挨拶みたいなものなのだろう。

 二人のきやすいやり取りの後にヴィルトルートは彼がいつも共にしているケルベロスの姿が見えないことに首を傾げる。
「ああ、二人ならね、今ちょっと立て込んでいるみたい。実は今、チャンネルで放送予定の獣人戦線で撮影した動画編集が終わっていなくって、Pといっしょに徹夜でがんばっているみたいだよ」
「なんとまあ……」
「ヴィルトルートお嬢様は余裕そうだね?」
「ええ、お嬢様たる者、常に余裕をもって優雅たれ、でございますわ~」
「わあ、生お嬢様言葉~!」
「ふふ、私のマニュピレーターの先に溜まった汚れを煎じて飲ませてやりたいですわ、オーッホッホッホ!」
 高笑いが響き渡り、後夜祭を楽しんでいた人々がなんだなんだと顔を覗かせる。
 ヴィルトルートがお嬢様系ケルチューバーであることは全世界に発信されているため、知るところの者も多いだろう。
 どやどやと人だかりが生まれえつぃ舞う。
「ふふ、まるで夏休みの宿題を一日で終わらせようとしている最終日みたいな不二期だったよ! まあ、色々大変だったからね。編集も大変になるのは仕方ないんじゃないかな?」
「ともあれ、配信が楽しみですわね」
「うん、僕もまだ配信時間んまで余裕があるから……」
 ヴィルトルートは首を傾げる。

 どうやらシルバーブリットは後夜祭を楽しむよりもやることがあると言うのだ。
 何を、と思えば亜麻色の髪の女性『エイル』博士がやってくる。
「ん? どうしたんだい? 何かやるのかい?」
「うん、さっきのイベントでライドキャリバー部隊の有用性を見せたでしょ。せっかくだから、僕らライドキャリバーが社会貢献をもっともっとできるってことを皆に知ってもらいたいんだ。それで、ライドキャリバー体験搭乗会をしたいって思って……」
「まぁ! なんて素晴らしいお考え!」
 ヴィルトルートは感涙するようだった。
 ダモクレスなので涙はでないが、シルバーブリットの社会貢献に対する熱い思いを聞いて、これは応援しなければお嬢様ではないとさえ思ったのかも知れない。

「ふむ、構わないよ。これで地球人以外の種族に対する理解が深まるというのはよいことだからね」
「でしょ!」
 これをきっかけに多くの人々がライドキャリバーに対する認識を持てば、きっと多くの作戦行動ができるようになる。
 それだけではない。
 戦い以外の場でも自分たちがもっともっと働けるってことを示せるのだ。
「じゃあ、『エイル』博士、乗って!」
「え」
「なるほど。まずは管理者、責任者たる『エイル』博士から、と!」
「いや、私は」
「実際に風となることで改めて発見いたすこともありましょうから、さあ、さあ、さあ!」
 お嬢様は度胸ですわ、とヴィルトルートによって『エイル』博士はシルバーブリットに搭乗される。
 爆音を上げてハイウェイを疾走するシルバーブリット。
 そして、なんだか悲鳴めいた声が聞こえてきた気がしないでもないが、それは後夜祭の賑にかき消されるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
まぁボクはただただ思い付きを並べただけですけど、盛り上がったならおっけーです!
とにかくお祭りなんです、いつまでも戦う事ばっか考えてたら楽しくねーですよね。
腕も服も普段使いのに着替えて目一杯遊ぶですよ!
さて、どこの世界でもお祭りの時に屋台で売ってる食べ物は美味しいと相場が決まってんです。
焼きそば、りんご飴、かき氷、芋を蛇腹状に切って揚げたやつ。
正式名称が分かんねー屋台メシでも大好きですよ!
おっちゃん、たこ焼き10パック……はぁ?食べ切れるですって!
ボクは確かにナリは小せーですけど、大食いには自信あるんですよ!
嘘だと思ったら勝負です。
この屋台の材料全部食べて、ボクが最後の客になってやるですよ!



 チャリティーイベントは大いに盛り上がったようだった。
 決戦都市構想。
 それは言ってしまえば、机上の空論だ。
 如何にスコアを高くとっても、実際に襲来するデウスエクスにシュミレーション通りに効果があるかはまだ誰もわからない。
 けれど、それでも人々は、猟兵ケルベロスたちの示した構想に声を上げた。
 アイデアを出すこと。
 声を上げること。
 それもまた地球が一丸となって侵略者と戦う上で必要不可欠なことであると知ったのだ。
「いやー大盛りあがりでホッとしたぜ!」
「よかったよかった。お嬢ちゃんも堂々としていて立派なもんだったぜ!」
 屋台のおっちゃんたちにファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は往く先々で声をかけられていた。

 後夜祭。
 メインイベントが終わった後は、イベントが終わることを惜しむように皆思い思いに過ごしていた。
 ファルコもまたその一人だった。
「まぁ、ボクはただただ思いつきを並べただけですけど、盛り上がったならおっけーです!」
 ファルコは笑む。
 とにかくお祭りなのだ。
 確かにこの世界は宇宙よりの侵略者と戦い続ける運命にある。
 けれど、戦うことばかりをいつまでも考えていたら楽しくはない。だからファルコは目一杯遊ぼうと思ったのだ。

 イベントステージにたったのは猟兵として戦う姿。
 けれど、今の彼女は何処にでもいるような少女のようだった。年齢相応の衣服。戦いやすいだとか、機能がどうとか、そんなことは微塵も感じさせない服装。
 キャップを被った彼女は屋台の支払いをしようとウサギ耳のスマホカバーの端末を手に取る。
「おっちゃん、たこ焼き10パック……」
「おいおい、嬢ちゃん。流石にそれは欲張りすぎじゃあないのか? お使いならわかるんだが……」
 屋台のおっちゃんは、ファルコがすでに焼きそばやりんご飴、カキ氷に正式名称がわからないなんか、ソーセージを丸めたヤツとか、じゃがいもを螺旋状に切って揚げたヤツとかを両手にいっぱい抱えていたのだ。
 確かに心配になる量である。
 それ全部まさか一人で?

「はぁ? 食べ切れるですって!」
「いや、無茶だろ!」
 どう見てもファルコは10代にしか見えない。もっと幼くも見えるかもしれない。
 いくら食べ盛りだと言っても、無茶な量に思えた。
「ボクは確にナリは小せーですけど、大食いには自信があるんですよ!」
「……ならよ、後夜祭のあっちで大食い競争があるんだが」
 くい、と指差す方向にあるのは、メインステージとは別のステージ。
 そこでは飛び入り歓迎の文字が踊っていた。
 どうやら大食い競争が行われているようだた。
「あれに優勝できたら、いくらでもおっちゃんが奢ったる!」
「……! フフフ、言ったですね、言いやがったですね!? なら見せてやるですよ! あとで泣き言いっても知らねーですからね!」
 ファルコの闘志が燃え上がる。
「この屋台の材料全部食べて、ボクが最後の客になってやるですよ!」
 ファルコが指差すおっちゃんは、おう! と自信たっぷりだった。

 飛び入りで大食い競争に参加したファルコは見事に優勝をかっさらった。
 その食べっぷりは、その小さな体の何処に収まったのだろうかと思うほどであったし、またファルコはその後にたこ焼き屋の食材を全て平らげ、お腹をぽんとさする。
「ふふん、どうですか!」
「……み、見くびってたぁ!!」
「フンッ! ボクのフルパワーはまだまだですからね! さあ、端から端まで屋台全部食べつくしてやるですよ!」
 ファルコは、後夜祭を味わい尽くそうと続くお祭りを誰よりも堪能するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

『エイル』博士、なんてことを!?

あああああ、ほらー!
「つきあって」とかいっちゃうから、
ステラさんのテンションがアルティメットノヴァしてるじゃないですか!

これはヤバすぎます。圧で世界がカタストロフします。
(セラフィムさんとアイコンタクトして)
世界をあるべき姿に!

よしこれで崩壊は防げ……って。
なんでしれっとわたしまでやべー認定されてるんですか!?
わたしは人畜無害慈愛満載を画に描いた勇者ですよ!

ま、まぁなにはともあれこれでのんびり……してないですよね!?
ステラさん、圧、圧、圧が!
質問がマシンガン過ぎて『エイル』博士も『第九号』さんも、
これじゃ答える隙がないですから!

息継ぎしてくださーい!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
つ、付き合ってくれ!?(トゥンク
エイル博士、ついにデレましたか!?
メイドに一生付き纏われる覚悟が出来ましたか!?
痛い?!なにかセラフィムにツッコまれた気がする!?
誰がやべーメイドですか
そこの勇者の方がよっぽどヤバイ存在でしょう!?
|物理《勇者》と|精神《メイド》でやべーとかないですので

ともあれせっかくの機会ですので
エイル博士と第九号様と一緒にのんびりと過ごしましょうか
時に、私、『エイル様』には必ず聞いているのですが
エイル博士にとってセラフィムとはどういう存在なのでしょう?
何故セラフィムにこだわるのです?
あと何歳ですか?いえ答えなくて大丈夫です
この世界の熾火はどこにあるのでしょうね?



 亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、猟兵とケルベロスたちに後夜祭を楽しんでくれ、という意味で付き合ってくれ、と言ったのだ。
 それ以上の意味なんてない。
 言われた側も同様だっただろう。
 だが、その言葉に過敏に過剰に反応する者がいた。
 敢えて言うまでもないが、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)だった。
「つ、付き合ってくれ!?」
 トゥンク。
 いや、トゥンク、ではないが。
「『エイル』博士、なんてことを!?」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)……君もか。
 二人は『エイル』博士の言葉に大騒ぎしていた。
 それで大騒ぎできるのはこの二人くらいなもんである。

「『エイル』博士、ついにデレましたか1? メイドに一生付きまとわれる覚悟ができましたか!?」
 ステラのは鼻息が荒い。
 端的に言って怖い。
「あああああ、ほらー!『つきあって』とかいっちゃうから、ステラさんのテンションがアルティメットノヴァしているじゃないですか!」
「いや、わけがわからないが」
「これはヤバすぎます。圧で世界がカタストロフします」
 ルクスはユーベルコードを使用する。
 こんなことで世界調律(セカイチョウリツ)していたら、身が持たないのではないだろうか?
 だいじょうぶ?
「世界をあるべ姿に!」
 ごすん! とルクスの掲げた巨大音叉がステラの後頭部を殴打する。
 鈍い音が響きた割、ステラは目を白黒させた。
 視界に星が散るようであった。
「痛い!?」
「よし、これで崩壊は防げました。やべーメイドに音楽は特攻なんですよ!」
「誰がやべーメイドですか! そこの勇者の方がよっぽどヤバい存在でしょう!?」
「どちらも相応にアレだが」
「アレ!? なんでしれっとわたしもまでやべー認定されてるんですか!? わたしは人畜無害慈愛満載を絵に書いた勇者ですよ!」
 自分で言うのか。
「|物理《勇者》と精神《メイド》でやべーとかないですので」
「自分だけ関係ないみたいな顔をしないでくださいよ!」

 ルクスは自分もステラとひとくくりにされていることが不満でならなかった。
 どう考えてもステラの方がやばい。
 自分はマトモだと思っている時点で、相当なもんであるが『エイル』博士は空気を読んでただ頷くだけであった。
「時に、私、『エイル』様には必ず聞いているのですが」
「なんだい?」
「『エイル』様にとって『セラフィム』とはどういう存在なのでしょうか?」
 それはステラにとって重要なことだったのだろう。
『エイル』博士は首を傾げた。
「何って、決戦配備のための自律人型戦術兵器さ。あれを開発することが私の研究の主題だからね」
 確かに、研究者として、また同時に決戦都市の管理者、責任者として決戦配備を持ってケルベロスを支援することは彼女のできる戦いの一つなのだろう。
 だが、何故、そうまでして『セラフィム』にこだわるのか。

「あと何歳ですか?」
「ステラさん、流石に圧が酷いです」
 ルクスの言葉に『エイル』博士は笑う。
「それはトップシークレットにしておこうか」
「ほらー! 女性に年齢聞くなんて……」
「この世界の熾火はどこにあるのでしょうね?」
「だから息継ぎしましょうよ! なんで一気に聞いちゃうんですか!?」
「それはもう私の『エイル』様愛がとどまるところをしらないからです!」
 そういう問題かなぁ、とルクスは思う。
 けれど、『エイル』博士は白衣を翻して応える。

「その熾火というものが何かを比喩しているのかはわからないが、それはきっと希望みたいなものだし、人の生きる意志であるかもしれないように私は思える」
 なら、と『エイル』博士は言う。
「それはきっとこの地球に生きる人々の全てにあるんじゃないかい――?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

飛ぶ!走る!潜る!
変形合体決戦都市が採用されてボクも鼻が高いよ!
え?違う?そっかー
もう少し時間と予算が必要か―
地球のグラビティチェインたくさん使えばいけるってー!
あ、このチョコバナ美味し―!
あ、あっちのあれはなにー!?

大事なのは夢見ることだよ、そこを目指すことだよ
そうしているキミたちはとても面白いからね
そして必要なのはインスピレーション!

じゃあエキシジョンマッチ行ってみよう!
人型機動決戦都市!変形合体バージョンだー!
ビジネスホテルミサイルとか、商店街キックとか
工業地帯ファイアーとか
キミたちの発想は無限大だよー!もっと色々作って、未来を作り続けてボクを愉しませてねー!



 それは夢のような光景であった。 
 超巨大な人型ロボット。
 決戦都市が変形して生まれた巨神の拳がうなりをあげる。
 大地激震して踏み出す一歩は、ただそれだけで驚天動地たる光景であったことだろう。
 迫るデウスエクスがなんぼのもんじゃい、と巨腕振るえば、たちまちのうちに敵を打ちのめす。
 吹き飛ばされたデウスエクスは星の彼方。

 いや、夢である。
 完全に夢である。
 どう考えても夢である。
「飛ぶ! 走る! 潜る!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は夢想する。
 変形合体決戦都市が採用された未来を夢見ていたのかも知れない。
「強い! ボクも鼻が高いよ!」
「いや、何を言っているんだい?」
「え、違う?」
 ロニは夢想の果てから戻ってきて、目をパチクリさせた。
 いやはや、夢の世界というのは現実世界と違って時間の流れが早いこと! なんかもうすでにロニの中では変形合体決戦都市は実現されるものであったのだ。

「仮に採用されても、予算と時間が膨大にかかることは言うまでもないだろう」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士の言葉にロニはそっかなーと首を傾げる。
「地球のグラビティ・チェインたくさん使えばいけるってー!」
「流石に無茶では?」
「あ、このチョコバナナおいしー!」
 ロニはもう話を聞いていなかった。
 子どもの夢想めいた構想であったが、しかし、ロニは構わなかった。
 それ自体がどれだけ荒唐無稽なものであったとしても、思わないことには始まらないのが人である。
 空を飛ぶということも、嘗ての人からすれば誇大妄想の類であった。
 けれど、思うことで動き出した者たちがいたのだ。
 その思いの力は、人々に空の世界すらもたらしたのだ。

「あ、あっちのはあれなにー!?」
 人の話を聞かないロニはあっさりと議論を投げ捨てる。
 だって、大事なのは夢見ること。そこを目指すことだ。
 どれだけバカにされたって、諦めさえしなければ叶うものもあるのだ。
 そんな人間たちを見ているのがロニは面白いと思ったのだ。
 必要なのはインスピレーション。
「じゃあ、エキシビションマッチ行ってみよう!」
 その言葉と共にロニはユーベルコードを発露する。
 再び広がる夢空間。
「人型機動決戦都市! 変形合体バージョンだー!」
 ロニの言葉と共に現れる巨大な巨神。
 ビジネスホテルはミサイルコンテナに、商店街は脚部に配され、キックの威力を上げる。胸部の工業地帯は有り余る熱でもってファイアーを放つ。

「とんでもない光景だな……これは夢か? いや、夢だな」
「夢でもなんでも、発想は無限大だよー! もっと色々作って、未来を作り続けてボクを愉しませてねー!」
 ロニは笑う。
 人が生きること。
 それは時に滑稽であるように思えただろう。
 要所、局所で起こる悲劇だって、人生を俯瞰から見れば喜劇。
 故に神性たるロニにとって、人間一人ひとりが観劇の演目そのもの。
 もっと生きて、生きて、生き抜いて、その先にある輝きこそがロニの求めるものなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

さて、どんな形になるのか…そこも楽しみですねー。
そして、後夜祭も賑やかなのですねー?

陰海月に後夜祭用のお財布渡しましてー。都市構想の御駄賃も含めてますよ。
ええまあ、一番お金使うとなるとねー。

そして、陰海月は霹靂と一緒に、元気よくいきましたねー。可愛いですー。


陰海月「ぷきゅ〜?」
後夜祭の屋台!楽しみ!行きたい!あれ?いつもより予算多いなぁ?
あ、こっちは霹靂!お友達だよ!!
霹靂「クエ」
友が人気だ。そして、友の食欲はいつも通り…!



 様々な猟兵、ケルベロスたちのアイデアが上げられたチャリティーイベント。
 イベント自体は大いに盛り上がった。
 しかし、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はわずかに気になることがあった。
 それは己たちがもたらしたアイデアがどのような形となって湾岸の決戦都市に反映されるのだろうか、ということである。
 ネガティヴな感情ではない。
 楽しみだ、とさえ思った。
 これからまたデウスエクスの襲来があれば戦わねばならない。
 戦うための思考ではあったけれど、それでもそうしたものが命を守る行いになるのならば、少しくらい楽しんだっていいのだろう。
「後夜祭も賑やかなのですねー?」
 前夜祭もそうであったが、イベント後の賑も相当なものであった。

 この湾岸の決戦都市には多くの物資が届けられている。
 ケルベロスディバイド世界は、常に宇宙からの侵略者デウスエクスの脅威にさらされている。けれど、戦うばかりでは立ち行かない。
 こうやってガス抜きのように人々が楽しまなければならないのだ。
「ぷきゅ~!」
 眼の前には後夜祭の屋台を楽しみにしていたのであろう『陰海月』がゆらゆらと揺れている。きっとお小遣いの催促であろうことが伺える。
 全身から後夜祭の屋台に行きたいという意志が発露しているように思えた。

「はいはい、慌てないことですよー。ちゃんと都市構想の御駄賃もありますからね」
 仲良く、と『疾き者』が言うと『陰海月』はヒポグリフの『霹靂』を伴って、ぴゅーっと足早に屋台へと飛び込んでいった。
 なんとも現金なものだろうか。
 だが、それは子供らしいということである。そうした彼らのらしさを大切にしたいとも思った。
 否応なしに子供は大人になっていく。
 大人になれば、世界全てが楽しいことばかりではないことを知るだろう。
 そうなった時、子供時代に得たものこそが大人担った彼らを支えるものであろう。
「気をつけるんですよー」
 可愛いものである。
 贔屓目が過ぎるかもしれない。
 けれど、偽らざる思いであることもまた事実だ。

「クエ」
『霹靂』の声に『陰海月』がついていく。
「わ~……」
 そんな『霹靂』の姿に現地の子供らの視線が集中している。
「きゅ!」
 身振り手振り。
 これは自分の友達だと示しているのかも知れない。
 ヒポグリフや巨大なクラゲというのは、猟兵の効果もあって人々に違和感をあたえないものであるけれど、子供らにとってはやはり見慣れぬもの故に興味を惹きつけるのかも知れない。
「これなーに?」
「なんかぷるぷるしてる!」
「ふわふわだー!」
 子供らは子供らしい興味本位と恐れ知らずに『霹靂』と『陰海月』にまとわりついていく。
「なんとも大人気なことですねー」
 それを遠く見守りつつ『疾き者』は笑む。
 今は子供かもしれない。
 けれど、きっと彼らは大人になっていく。それまで見守るのもまた自分の役目だと『疾き者』は思いながら後夜祭の楽しい雰囲気が彼らを包み込む光景を見やるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨河・知香
ソニア(f40904)と

やっぱり考えることは沢山あるねえ。アタシ一人じゃ浮かばない案も沢山あったし。
さて、後夜祭はのんびり楽しむとするかねえ。
…そういやソニアは前夜祭で結構回ってたんだっけ?
面白いの何かあったかい?
…セラフィム、ねえ。やっぱり人型機動兵器ってのは浪漫なのかねえ。
いや拘るのも理解できるけどさ。
そういやエイル博士はどうしてるのかな。
やっぱりそのまま改良プランを作ったり休む間もなく研究…むしろ効率落ちそうだし、嫌がらないなら祭りに誘って連れ回し…程ではなくとも休息して貰いたいかねえ。
あとはこの都市の素敵な所、エイル博士的にどんな所なのか個人的に聞いてみたいね。

※アドリブ絡み等お任せ


ソニア・コーンフィールド
知香ちゃん(f40900)と!

いやー楽しかったね!
いろんなアイデア見てるとこう、探求心とかわくわくするよね?
私的には超古代の神秘とかそういうのがメインだけどこういう未来的なあれこれもたまらない…!
あ、前夜祭で色々巡ったから紹介するねー。
あっちの展示でやってるのがセラフィムって兵器だよ。中に人はいないけどAI操縦でなんかすごいの…!
もうちょっと理解できてたら詳しく説明できるんだけど…あ、エイル博士こんばんはー!
後夜祭楽しんでるかな?
まだまだ都市作りの改善案はたっくさんあるみたいけど、いつかは全部どうにかできる日が来ると信じて…!
でも今日ばかりは休みでいっぱい楽しみましょー!

※アドリブ絡み等お任せ



「いやー楽しかったね!」
 ソニア・コーンフィールド(西へ東へ・f40904)の言葉に雨河・知香(白熊ウィッチドクター・f40900)は頷く。
 同じ気持ちだった。
 決戦都市の構想。
 そのプレゼンテーションとシュミレーション。
 二人のも足らいた構想というアイデアは、素晴らしいものだったことだろう。
 とは言え、知香はやっぱりと思う。
「考えることは沢山あるねえ。みんなのアイデアもアタシ一人じゃ思い浮かばないものもたくさんあったし」
「だよねーいろんなアイデア見てるとこう、探究心とか、わくわくするよね?」
 ソニアは普段ならば興味が向く先が先進的なものよりも、遺跡や古代といった考古学的なものに向かうところであった。
 けれど、こうした多くの人々のアイデアが飛び交う未来を思う思考もまた、たまらないものがあった。

「そういや、ソニアは前夜祭では結構回ってたんだっけ? 面白いの何かあったかい?」
「もちろん! あっちのほら、展示で突っ立ってるのが『セラフィム』のレプリカだって!」
 ソニアが示す先にあるのは体高5m級の戦術兵器。
 人型であり、赤と青のカラーリングの装甲を身にまとっている。
 名を『セラフィム』と言い、この湾岸の決戦都市固有の決戦配備を担当している。
 これを開発しているのが亜麻色の髪の女性『エイル』なのだという。
「……『セラフィム』、ねえ」
「そう、中に人はいないけれど、自律行動が取れるんだって。それで決戦配備に対応しているんだっていうから汎用性が高いのかもね! なんかすんごいよね!」
「やっぱり人型機動兵器ってのは浪漫なのかねえ」
 知香はよくわからないな、とレプリカを見上げる。先日の連続した事件で、配備されていた『セラフィム』は全て破壊されてしまっていた。
 それ故に新たな機体が製造されているはずである。
 ソニアはもうちょっと理解できていたら、詳しくスペックやらを説明できるのにな、と思っていると、通りがかったのは亜麻色の髪の女性『エイル』博士であった。

「あ、『エイル』博士こんばんはー!」
「ん? ああ、君等はイベントに参加してくれた猟兵だね。今回はありがとう。諸君らのおかげで盛り上がったよ」
「それはよかった。てっきり休む間もなく改良プランに取り掛かっているのかと思ったけれど」
 知香の言葉に『エイル』博士は笑む。
 確かに、と彼女は多忙の身である。けれど、後夜祭を楽しまないのは野暮であろうと、今日ばかりはとのんびりしているのかもしれない。
「まだまだ都市作りの改善案はたっくさんあるみたいだけど」
「ああ、君たちのお陰で一般人の人々からもアイデアの寄稿が早速届いていてね。これを精査して、シュミレーションにかけていくつもりだよ」
 後夜祭が終わっても、続いていくものがある。
 それがわかってソニアは笑むだろう。
 全部をどうにかできることは、まだ遠い未来だろうけれど、それでもいつかは、と思うのだ。

「まあ、イベント後だしね。働き詰めっていうのは効率が落ちる。休息っていうのは必要だからねえ」
「ああ、それは重々承知しているさ。君たちも楽しんでいてくれるのかな?」
「もっちろん! 今日ばっかりはお休み! いっぱい楽しみましょー!」
「邪魔しては悪いと思ったんだが……そういうのならば、時にはハメを外すのもいいだろうね」
「そりゃそうさ。戦いばかりではなく、楽しむ心がデウスエクスと戦う日々を支えてくれているんだからね」
 知香の言葉に『エイル』博士は頷く。

「せっかくだ、この都市の素敵なところ、案内してもらおうじゃないか」
「お、それを私に言うかね。ならば!」
 指を打ち鳴らす。
 空より突風を伴って現れるのはサポートAI『第九号』に制御された新たなる『セラフィム』であった。
 赤と青の装甲。
 アイセンサーが輝き、三人を抱えて飛翔する。
 見下ろすは、湾岸の決戦都市。
 後夜祭の明かりだった。
「私が一番素敵だと思うのは、この都市で戦いの日々にも負けず、諦めず、弛みなく生きることをやめない人々だと思う。この灯火の一つ一つに彼らがいる。そう思えるから」
「がんばれるんだね!」
 ソニアの言葉にその通りだと頷く『エイル』博士。

 星空の輝きに負けぬ、人々が抱く熾火のような明日を望む灯火。
 それこそがこの湾岸の決戦都市の最大たるものであると二人に示し『セラフィム』は飛ぶ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日下部・香
色んな決戦都市の構想が見られて楽しかったな。
さて、帰って勉強しないと。英単語帳とかは持ってきてるけど、やっぱ家でやりたい。これもまた未来のため、受験生は今が頑張り時だからな。

あ、博士。イベントでは励ましてくれてありがとうございます。結構緊張してたんですけど、おかげで発表をやり切ることができました。
博士の電磁バリアもすごかったですね! ああいった配備が皆の命を守って、私たちが戦いやすくしてくれてるんだなって。改めて実感できたように思います。一時的にでも自分も『考える側』になったからですかね。
これからここがどう再興されるのか……アイディアを形にするのってすごく大変だと思いますけど、応援してます。



 チャリティーイベントの終わったイベントステージから離れて、日下部・香(断裂の番犬・f40865)は少しだけぼんやりしていた。
 衆目の前で自分の決戦都市構想をプレゼンテーションする。
 それは彼女にとって経験という大きな財産になっただろう。
 この経験は他の誰でもできるものではない。
 彼女だけが持ち得た経験だ。
 とは言え、だ。
 ぼんやりとしてばかりはいられない。

「……帰って勉強しないと」
 確かに様々な決戦都市の構想が見られたのは楽しかった。
 だからこそ、今まさに彼女の心の中にある学習意欲というものが高まっていた。
 しなければならないからとする勉学よりも、したいと思った主体性のある勉強の方が身に収まって根付くのと同じで、今こそ香は自分が何故大学に進みたいと思ったのかを自覚するだろう。
 今の彼女はケルベロスでるが受験生でもある。
 開いた時間に少しでも英単語を頭に叩き込もうと持ってきた単語帳を開く。
 いや、と思い直す。
 やっぱり家で集中したい。
「うん、帰ろう」
 香は後夜祭の賑やかさに背を向ける。

 あの賑やかさを護るための多くを得るために自分は勉強するのだ。
 そんな香の背中に声がかけられる。
「おや、もう帰るのかい?」
 振り返ると底に板のは、亜麻色の髪の女性だった。
「あ、『エイル』博士」
「やあ。少しは楽しまないと損だよ?」
「受験生だから。少しでも勉強しないと。あ、イベントでは励ましてくれてありがとうございます。結構緊張してたんですけど、おかげで発表をやり切ることができました」
「なに、君が本来の力を発揮しただけのことさ。いつだって、誰かに背中を押して貰えるというのはありがたいことだ。それが君のような有望な若者であるのならば、年経た私にできることは、その背中を見送ることだけだ」
「そんなことないです。博士の電磁バリアもすごかったですね!」
 香は本当にそう思っていた。
 スコアはエキシビションということもあって、辛目の判定であったが、香は『エイル』博士を黒い瞳をまっすぐに見つめていた。

「参ったな」
「ああいった配備が皆の生命を守って、私達が戦いやすくしてくれるんだなって。改めて実感できたように思います」
「君たちケルベロスが生命を張って戦ってくれているんだ。できることはなんだてやるさ」
 香は頷く。
 今日、彼女は二つの視点を手にれた。
 一つはケルベロスとして戦う視点。
 もう一つは、そんなケルベロスを支援する視点。
 この二つをえたからこそ、彼女は『考える側』を実感できたのだ。

「これからここがどう復興されるのか……アイデアを形にするのってすごく大変だと思いますけど、応援してます」
 香の言葉に『エイル』博士が頷く。
「私も、君のような頼もしい若者と知り合えて嬉しかった。勉学に励みたまえ、とは言ったが体には気をつけるんだよ」
 そう言って手を差し出す彼女に香は頷く。
 握った手は暖かった。
 この暖かさがきっと繋がって、大きな力になっていくのだと思える。
 それが地球に生きる人々の強さだと実感し、香は明日に駆け出していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年08月17日


挿絵イラスト