季節は夏真っ盛り。猟兵的には水着ギャル以外の人権がほぼ無くなる季節である。
そして、ここグリードオーシャンが一年で一番アツくなる季節である。
青い空、白い雲、広大な海――そして――。
『儂じゃ!!』
B B A――!!
説明しよう。
BBAとは、カクリヨファンタズムで何かと暗躍(?)している大妖怪『最恐・妖怪ババア』の愛称である。何故グリードオーシャンにいるのかは深く考えてはいけない。
カクリヨの夏といえば、お化け屋敷とかお盆に故郷へ里帰りとか万年そんな感じだ。夏だ海だ水着だヒャッハー!って感じでは全然ない。違う、もっと夏をエンジョイしたい……そんなBBAの魂は時空を超え、ここグリードオーシャンに流れ着いちゃったんだと思う。たぶん。
しかし浜辺の日ざしは想像を絶する灼熱であった。地元の若者も「今年はマジパネぇ」と言うぐらいだ、連日40度超の熱波はBBAには厳しい。
しかし!
『何のこれしき、紫外線如きにやられる儂ではないわァ! 若造共よ、|宴《フェス》の準備をせい! ここにB・S・Fの開催を宣言するぞ、ヒィーッヒッヒッ!』
B・S・F(ババア・サマー・フェス)――。
それはBBAによる、BBAのための、BBAの祭典。
全グリードオーシャンのお年寄り達が、UDCアースから落ちてきたここ「パリピ島」の海岸へ大集結し、ダンシングオールナイトする狂気の宴である。
『皆の衆、ヴァイブスはアガっておるかぁぁぁ!!』
「B・B・A!! B・B・A!!」
フェアリーから巨人まであらゆる種族の水着ババアが一体となり、ジャンプしながら拳を振り上げる。例え着地した時に腰を痛めようが今夜はパーリナイ。響き渡るBBA・コール――キャプテン・ゴーストババアが呼び寄せた魂がミラーボールの如くビーチを照らし、セイレーンババアが放つウォーターキャノンが年寄りに冷や水を浴びせまくる。
そして、その中心でこのパリピ島に伝わるメガリス「ウェイターンテーブル」を華麗にスクラッチする妖怪ババア――否。今のババアはDJ・BBAである。
『見よ、スーパーBBAチョップで鍛えし儂の神スナップを!』
音楽家ババア達が奏でる島の伝統音楽「パラ・パラ」のリズムに合わせ、メガリスから響くズンズンデュデュクシキュラドュキゴォみたいな、実に擬音化し難い音。
まさに千年の功から生まれる神的なリズム、そしてセンス……ゆえに今宵はババアではなく、ビー・ビー・エー様とお呼びするべきである。B・B・A!! B・B・A!!
冒険商人ババアが売りさばくBSF限定入れ歯ペンライトも売れに売れまくり、七色の入れ歯が夜のビーチを埋め尽くす。それは、海上からその光景を見た海賊達すら「えっ、この島のコンキスタドール、ヤバすぎ……」と思い、航路を変える程の輝きであった。
「次の曲は『CHU☆渚のシャーク・トルネード☆』か。パリピ島の連中は相も変わらず騒々しくてかなわぬわ。しかし……あのDJ・BBAなる婆、只者では無いな。なんという力強さよ。此れが|宴《フェス》……!」
近所の島でなんか酷い事件が起きていると聞き、現場に駆けつけてはみたもののすっかり後方腕組み猟兵と化していた深海の魔女ことマジョリカ・フォーマルハウトも、だんだんとBSFの空気に飲まれつつあった。
思わず入れ歯ペンライトをカチカチし、紫色に光らせたりしてしまう。そう、彼女も見た目は若いが、歴とした御年66歳の実は:ミーハーなババアであった。
「B・B・A!! B・B・A!!」
『まだまだァ! ハジケが足りん!! ここから最高潮に盛り上がってイくのじゃぁぁぁ!!』
「何、だと……!?」
入れ歯ペンラを振っていたマジョリカは目を疑った。
DJ・BBAが1680万色に光るゲーミング・バトルオーラを纏い、浮遊している――そしてそのまま、高速回転しながらレベル×100km/hの凄まじい速度で、BSFの会場をギュンギュン飛翔しまくる!
「あれはまさか! シャーク・トルネードを身体全体で表現しているのか……!?」
すっかり解説ババアと化したマジョリカは戦慄した。DJ・BBAの驚くべきフィジカル・ポテンシャル・そして大御所妖怪だけが持つ圧倒的スタアのオーラに――B・S・Fの盛り上がりは最高潮に達し、深海に潜んでいたクジラババア達が海からスプラッシュを噴射する。
「B・B・A!! B・B・A!!」
高まるコール&レスポンス。そしてババア海賊団が大砲から打ち上げた特大花火の輝きが、パリピ島の海を煌めかせ、集まったババア達から大歓声が上がるのであった。
なお、宴はこの直後到着したミカエラ・マリットにより無事物理的に閉幕する事となったが、肝心のDJ・BBAは超高速でカクリヨに帰ったようである。
頑張れミカエラ。諦めるなミカエラ。
たぶん来ないが、宿敵BBAを撃破するその日まで――!
成功
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