ヘイフィーバー・フォーエバー!
●信ずるものは|木《スギ》を植えよ
これは2024年8月某日、処は北米大陸の何処ぞ、だがその場所を強いて詳らかにする様な悪趣味はすまい。猟兵諸君が緯度も経度も知らぬままグリモアで飛ばされるだけの地を無駄に記憶する意義はないのだ。
それで、これは実にカルト的なお話のお約束である。人里離れたその地に築いた集落で、現代的な文明を絶って暮らす一団がある。そこにあるのは他のありとあらゆる宗教の厳戒がいささかぬるく思えるほどに狂気じみた無数の戒律。この手の話のお約束しかり、それに耐え得る己こそが真に敬虔な信者であると自負してやまぬ狂信者らには狂った教義が、戒律こそがご褒美であり、ともすれば己の存在意義にまで至る。
それで、その教義いわく、だ。
人類はあまりにも愚かすぎた。
特に近代以降の神をも恐れぬ乱開発は、神々や宇宙の怒りを買って、裁きの日は今やすぐそこだ。
賢明な者たちは母なる地球の怒りを収めるべく、埋め合わせるべく活動を起こして来たと言うのに、大半の愚かな人類はその価値を理解しないどころか妨げにかかる様な有様だ。例えば、名だたる絵画にジュースを浴びせることが星を救うとどうして奴らは理解を出来ぬ?
しかし、しかしだ。信者らの中でも取り分け聡い者たちは、|人類の愚かさ《・・・・・・》を理解している。故に名画にペンキだのジュースだのぶっかけるよりも直接的で、癪だが言うなればより短絡的でありながら効果的な方法を心得ている。
それ即ち。
「木を植えるのだ!この荒野を山林に変えるのだ!」
信者らを代表するかの様に集落で大声で音頭をとるのはスギの化け物。それに応えた信者たちがいそいそと不毛の山肌に植えているのはスギの苗木だ。
「さすれば神は再び降臨せん!」
うん。
スギ植えて降りて来る神って何?
でもとりあえず、そんなまともな疑問を抱ける人はまず現時点でこのメンバーに加わっていない。実にドンマイ。
「ママ、目が痒いよぉ」
「クシャミが止まらないよう!」
「我慢しなさい!それは祝福よ!好転反応よ!」
幼子たちが母親の袖を引いて訴えるその症状、おそらく現代医学が花粉症と呼ぶ類ではなかろうか。
「お黙りなさい!」
で、これ。地の文にすらも噛みつくこの熱狂。この盲信。諸君が此度相手にするのはこうした気狂いどもである。
「うるさい!かかって来られるものならかかってらっしゃい!」
だってさ。
諸君、準備OK? 手加減無用とのことです!
え? フラグメント? スギの根元には何が埋まってると思いますかね?
ファイナルアンサー?
●ヘイトヘイトヘイトフォーエバー
「っくしゅん!!」
ハンカチで鼻と口とを覆いつつ、白軍服の憲兵崩れ、チェーザレ・ヴェネーノは盛大なくしゃみをひとつ。
「あー、ごめん。俺マジ花粉とかダメで。マジでアレルギーすぎてなんかもう花粉のこと話してるだけで無理っていうか……」
顔を背けて洟を噛みつつ、失礼、と片手をあげる。
「いや、なんかね、北米の辺境でカルト集団が植林してるの。植林。え、意味わかんない? うん大丈夫、俺もだよ」
ハンカチで鼻を擦りつつ、へら、と笑みを見せながら、曰く。
「でね、その植林で邪神が復活するらしいんだよね。そうそ、邪神復活儀式ってやつ、これ!」
植林とかいう言葉の事勿れ感と邪神復活のミスマッチ。憲兵崩れは意にも介さずに言葉を継いだ。
「とりあえず信者にとけこんで信者から情報集めてさ、儀式を阻止して欲しいんだよね。ある程度の情報集めて妨害してたら、敵……っていうかスギが邪魔してくるからさ!あとはなんかもう力押しで!お願い!俺も皆も夏まで花粉症したくないもんねぇ?!」
lulu
ごきげんよう。luluです。
春の、こう、花粉に復讐したくて出しましたので、そんな感じでのんびりまいりますね。
1章:
ペットはさておき、皆植林をしているようです。植林をすると邪神がよみがえるようですね?
信者のふりをして情報集めとか。
2章:
スギは燃やせ!!
3章:
スギは燃やせ!!!!!
よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『消えたペット達の行方を追え!』
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POW : 調査は根気が第一!とにかく聞き込みあるのみ!
SPD : 現場に残った遺留品を探し其れを元に調査を行う
WIZ : 犯行現場の情報をまとめ次に犯行が起きる所を予測し罠を張る
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●花粉警報発令中
猟兵諸君がグリモアに飛ばされた先は、田舎だ。豊かな自然に程近く、適度に切り開かれたそこは人為と自然が程良い距離で調和している、里山とでも呼ぶべき風景。
晴れた空の下、住民たちが植林に勤しむ光景は実に長閑だ。空気がやたらと黄色いだとか、住民ずっとクシャミしてるとか、ツッコミたくてもまだいけない。今は彼らに溶け込んで上手く信頼を得て、儀式の情報を得ねばならない。
「あれ? 新入りかい? 良いところに来たね。ちょうど人手が足りなかったんだ」
シャベルで穴に土を落としていた青年が手を止めて猟兵たちに声をかけて来た。きっと汗を拭うより目を擦るか鼻を噛むかをしたくて仕方ないのに違いない、目も鼻も赤いくせにやたら良い笑顔。予知から推察するとおそらく、この地の価値観ではきっとマスクを着けたら負けなのだろう。まして抗アレルギー薬だの鼻炎薬だの持ち出そうものならこの場で火刑法廷沙汰になることもおよそ想像に難くない。
「全く、サムたちがストライキなんかするからなぁ」
近くでシャベルを動かしていた初老の男がぼやいて、隣の同世代が肩を竦めた。
「あいつらはまだ良いよ。トーマスなんかバイク隠し持ってたんだろ? しかも排気量2,000cc」
「もはやカーボンテロじゃないか!なんて罪深い」
「そうそう、だからシダーズ様たちがこの数日間お怒りで」
どうやら向こうで偉そうに植林を指示してるスギたちはシダーズとか言うらしい。どうでも良いし捻りがない。
まぁまぁ、と最初の青年が窘める。
「彼らも罪を償ったんだから悪口はよそう」
「不信心なのに儀式の礎になれるなんて幸せな奴らだよな」
「だからそういうのやめろって」
それでだ、彼らが植樹をしてる穴の底、なんか誰かの片脚が覗いてる気がするのはおそらく目の錯覚ではなさそうだ。
既に情報が出揃っている?
否、諸君にはやるべきことがある。
「で、君たちも木を植えてくれるんだろう?」
否と言ったらおそらくきっと、穴の中へとご招待。
フォー・トラン
【POW】
人間を対象とした情報収集は合法・違法を問わず得意です。
今回は「礼儀作法」に「黒スーツ」と「偽造ID」の出番でしょう。
黒スーツに花粉が付いても気にしない気にしない。
皆さん初めまして、あたしは国際針葉樹連盟の広報担当をしているフォー・トランという者です。(嘘)
この地域で素晴らしい活動が行われていると耳にしてやって参りました。
アポ無しで大変失礼とは思いますが、もしよろしければ活動の詳細についてお聞かせ願えませんか?
といった感じで、住人の中でもこの活動に賛同している人たちを中心に聞き込みをして、上手く行ったら得られた情報を味方の猟兵にスマホ等で伝えます。
●エージェントがやってきた
村の一角がざわついていた。
こんなド田舎の炎天下の里山にいかにもクールにビシッと決めた黒スーツの女が現れたのだ。無理もない。
え? 何あれ? 映画か何かに出てくるエージェント? 美女だし、何なら褐色の肌までハイソで都会的なバカンス焼けに見えてくる。そしていかにもなしごでき感、もしかして移動はビジネスクラスとかそういう人種? それにクールビズには無縁のあの感じ、クーラー利いた高層ビルのおしゃれなオフィスで仕事してるのが似合いそう。
そんな勝手な妄想と邪推を元に、CO2の匂いがするだとか環境破壊の権化だとか訳のわからない濡れ衣でヒソヒソと殺気立つ村人たち。だがフォー・トラン(精霊術士・f12608)は臆することなく彼らへと人好きのする笑みを向けた。
「アポイントも無しで突然申し訳ありません」
差し出した名刺に釘付けられる無数の視線、名前より肩書きよりもまず先に右下の「再生紙を利用しています」の文字を確かめて安堵するあたり何と言うか文化が違う。違うが、その辺抜かりなく備えたフォーが一枚上手と言うべきか。
「あたしは国際針葉樹連盟の広報担当をしているフォー・トランという者です」
で、この名乗りで最早勝ち確。警戒しながら遠巻きに様子を伺っていたスギどもが一瞬で笑顔になった。チョロい。燃やしたい、あの笑顔。そんなスギたちのご尊顔は2章フラグメントに乞うご期待。
無論、村人達も湧き立っている。
「国際針葉樹連盟だって?!」
「そんな素晴らしい組織があっただなんて知らなかった…!」
知る筈がない。そもそも、無い。清々しいまでにガセで架空の、フォーが今考えた雑な組織だ。鵜呑みにして目を輝かせている村人もスギも情弱もといピュアに過ぎるが、現代文明を排して暮らして居るがゆえ仕方がないことなのだろう。加えてフォーがやたらとそれらしく語るのが上手いので、運も相手も悪かった。
「この地域で素晴らしい活動が行われていると耳にしてやって参りました。もしよろしければ活動の詳細についてお聞かせ願えませんか?」
「勿論!でもそれより実際にやってみる方がよく解るし地球に優しいよ」
「そうそう、その方がサステナブル」
丁重にインタビューしようとしている相手をいきなり労働力として駆り出すこの厚かましさ、サステナブルとは真逆のブラックな香りしかしないしサステナブルの使いどころもよくわからない。しかし任務の為ならば文句ひとつ言わずに炎天下で黒スーツのまま植樹に加わるフォーである。スーツが花粉で黄色く汚れようとも嫌な顔ひとつ見せることはない。
「クールビズじゃないしちょっと、って思ったけどー……」
「よく見たらなんて花粉の映える装いなんだ!」
常人にはよく解らない賛辞が飛んでいる気がするのは割愛で。
「フォーさんはどうしてスギの植林に関心を?」
村人、もはや環境保護でも針葉樹云々ですらなく勝手にフォーをスギの植林をしたい人にしようとして来る。ド厚かましい。
「故郷がスギの名産地で、家の庭木も防風林も全てスギ、そんな環境でしたので幼い頃からスギには親しみがありまして……」
いかにも彼らにウケそうな、ともすれば花粉症サラブレッドになりそうな生い立ちを立板に水とばかりにフォーはでっち上げおく。効果は覿面だったらしく、村人たちのフォーを見る目がもはや推しを見る目だ。
「ちなみに皆さんはどうしてこの活動を?」
さりげなく返す言葉で情報収集にも余念がないフォーであったが。
「社会への抗議のために世界遺産にペンキを撒いている時に天啓を受けたの」
「僕はカーボンオフのために高速道路をバリケードで封鎖する活動中に」
全く噛み合わない上におそらく今日イチ要らない情報を得た。アルカイックスマイルで受け流す。
ちなみにフォーに落ち度はないし、彼女の情報収集能力は申し分なく、何ならダイスの出目も悪くない。ただこの村にそもそもろくな情報がない可能性が否めない。
その後とりあえず、スギを植えることで神が降臨するだとか、神の怒りを和らげる為にカーボンオフが必要なのでスギを植えねばならないだとか、ニワトリが先かタマゴが先かみたいなよく解らない言い分を聞きながら、フォーは淡々とスギを植える。
【注意!!】
忘れてましたがこのお話はフィクションです。実在の人物や団体や思想とは一切関係ありません。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・フィネル
【POW】
日本の里山にて。視線の先には杉達が盛大に揺れて花粉が大量に撒き散らされている。杉って確か雌雄同株だっけ?雌花の方が少ないらしいから、あんなに大量に撒き散らしても大半が無駄になるんじゃないかなぁ、花粉症じゃなくって良かった、なんてしょーもない感想はさておき。
旅行者の振りしてあの木を植えてる人達に話を聞いてみましょう。幸い見た目は外国人、カタコト言葉で聞いてみればそんなに警戒心持たれないかもしれない。
スミマセーン!何シテルデスカー?
私旅行者デース!コノ辺ノ自然ヲ見テ回ッテマース!
木ヲ植エテルデスカー? 山ニ沢山アルノニー?
面白イデスネー?
話を聞きつつ暫く住民と一緒に居て情報収集しましょう。
●女神様の下界見学in里山with花粉あとスギ
「この村は日本のSATOYAMAをモデルに作った人と自然が共存するための理想郷なんだ」
成程、北米大陸の何処ぞにスギだの里山だのやたら日本的な情景が存在している理由はどうやらこれらしい。
共存。住民全員花粉症発症してる状態をさして共存と呼ぶことが果たして本当に相応しいのかはルナ・フィネル(三叉路の紅い月・f44133)には解らない。何ならこの炎天下でスギの化け物に指示されて老若男女がひたすら植林をしている様はどちらかと言うとスギへの隷属なのではないかと思えたのだが、にこやかに微笑んだまま飲み込んだ。
「自然を排除することも支配することもなく、人と自然が程良い距離感で共生していてとってもエシカルでサステナブル」
「さらに移民当時の原始的生活を組み合わせることにより限りなく炭素を減らした環境に優しい暮らしをすることが出来るんです!」
好奇心旺盛に自然を見て回る観光客のフリをして訪れたルナに、住民達は得意げに村を案内しながら嬉々として語ってくれた。集落にはスギらしき材木で建てられたログハウス風の家々が点在し、こじんまりとした耕作地に囲まれている。国土の広大な土地柄お国柄を考えると機械化された大規模農業がセオリーの様な気もするが、電気だのガスだの現代文明を排した原始的な暮らしでは管理することが出来ない為に農業もこうした小規模なものにとどまって、故にこの里山的な形に至るのか。
「人類は地球を傷つけすぎた。だから何を差し置いても炭素を減らさなくてはならないの」
「その為には木を植えて緑を増やすことが一番!」
畢竟、どうやら強火の環境活動家的なカーボンオフ至上主義と戒律の厳し過ぎるカルトが何かのキッカケで魔融合をした結果、このカルト的環境活動家集団が誕生してしまったものらしい。
「ソレデ、皆サン木ヲ植エテイルノデスネー。スバラシイデース!」
それはさておき、観光客らしさの演出としてノリと勢いでカタコトで彼らに話しかけてしまった為、今更流暢には喋りづらいルナである。流暢だろうがカタコトだろうがフレンドリーな金髪碧眼の女神の如き美女、しかも彼らの大好きな自然に関心がある推定・未来の信者候補とあらば住民達は親切丁寧に対応してくれる気がしないでもないのだが。だが、カタコトだからこそ無邪気に根掘り葉掘りしても許されると言う利点は確かに存在しており、それはフルに活用して行くべきだと思われた。女神の如きと前述したが、紛うことなき女神たるルナ・フィネル、凛と壮麗にも可愛くあざとくもなれるのであり、今は後者の顔をするべき場面と心得ている。
「デモ、何デ他ノ木デハナクテスギノ木ヲ植エルノデスカー?」
実際、それは純粋な疑問であった。この地上には数多の植物がある中で、よりにもよってスギであるのは何故なのか。村人たちは知れたことをと言わんばかりに頷いた。
「だって、スギは神様に愛された木でしょう!」
「それに、人類に一番フレンドリーな植物だ」
何だろう、いきなり会話が成立しなくなるのやめてもらっていいですか。何がだってなのかそれになのか、接続詞が全く仕事をしてくれてない。これは脳に花粉が回ったことによる症状なのか、オブリビオンによる洗脳なのか。だがそれで怯むルナではない。
「ダケド、皆サン花粉症ガ大変ソウデース」
鋭く核心を突いたセリフも良い笑顔でカタコトで言われてしまうと憎めないどころか何処か可愛く思えてくるのだから実に狡い。まともな一般人であったなら赤べこの様に首がもげんばかりに頷いて全力の肯定を返す以外のリアクションを持ち得ぬ程度の可愛さだ。
が。
「違うよ、これは花粉症じゃないよ」
「この洗礼を乗り越えてこそ真の意味で僕たちはスギと共存することが出来るんだ」
住民たち、花粉で脳が溶けている可能性が出て来た。緑を増やしたいだとか炭素を減らしたいとかより最早スギそのものに執着している可能性までもある。
「だから君も一緒に新たなスギを——」
「オー、ナイスファイトデース。私、チョットモウ少シソノヘンヲ見テキマスネー」
これ以上会話していると何かが伝染りそうだったのと、何より植樹に巻き込まれそうな気配を見て取って、ルナは半ば強引に割と適当に話を切り上げた。
何にせよ、花粉症じゃなくて良かった。散策しながら、風が吹く度にスギとかスギの化け物とかがサラサラと花粉を撒き散らしている様を見て、ルナは心底そう噛みしめる。スギの化け物が普通に闊歩しているのも奇妙な光景ではあるが、それすらどうでも良くなるくらいに視界を染める花粉が酷い。ルナの知るところによるとスギは雌雄同株で雌花の方が数少ないと言う。故にあの撒き散らされた花粉は大半が無駄になることを思えば、これは余計な汚染以外の何物でもない。
あれが花粉じゃなくて金粉だったらなぁ、なんてぼんやり考える。そう言えば今日の金価格いくらだったっけ、この世界での金相場、一時期ほどにはないにしたってなかなかどうして悪くない――そこまで考えてからルナは小さくため息をついた。元いた世界で持っていたハイジュエリーの数々が、否、典礼の日に身に着ける耳飾りの片方だけでも手元にあればこの世界でもしばらく遊び暮らせていた筈なのだ。そうすれば今こんなド田舎で花粉に塗れている必要もなかったのに。
感傷に浸り掛けたルナの視線の先をアゲハ蝶が2匹、戯れながら飛んで行った。その幼生を連想して思わずやや身構えたルナであったが、成虫がこうして飛んで居るということは、|奴ら《芋虫》はこの時期この辺りには居ないのかもしれない。居ないと願おう。そうでなければこの後の戦いに差し支えかねぬのだ。
ただでさえ只人同然に力を失っているのだから、気を引き締めてこの後の戦いに挑まねばならないと女神は己に喝を入れつつ、心を落ち着けるべく深呼吸をして、花粉に噎せた。
大成功
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アリスティア・クラティス
まあっ!なんて素敵!!その一心不乱にただ粛々と木(スギ)を植える姿!私の知り合いがみたら発狂しそ……いえっ、きっと感涙に噎び泣いて打ち震えるに違いないわっ!
私? 私は、ここに天啓を受けて現れたのっ!『その身をもってこの地を訪れよ』と……
いかに花粉を浴びようとも、全く動く事に支障はないわ!(人形だから/UC判定は食らいます) ――祝福を完全に受け入れた身! それはひとえに!
私が、もしかしたら【天啓を受け、スギの祝福を受けた完全なる神子】だからかもしれないわね!(口から出まかせ)
…でも『我が神がどのような存在か?』私すらも分からない程の高貴さであるから…
さあ、なればこそ植林! さあ全力で植林よ!!
●新たなる指導者候補(雑)
「まあっ!なんて素敵!!」
いつの時代もどこの世界も、褒め上手は歓迎されるものであるし、ノリが良いのもまた然り。花粉で脳味噌が溶けていそうなこの集落の住民もといスギの狂信者どもだって、肯定的な言葉を投げ掛けられれば嫌な気がしよう筈はないのだ。
「素敵、ってのは——」
「ええ、もちろん!その一心不乱にただ粛々とスギを植える姿!なんて勤勉でストイックなのかしら!舞い散るスギの花粉の煌めきも相俟ってまるで一幅の宗教画のような神々しささえ覚えるわっ」
念のため、と言わんばかりに問うた村人の言葉へと、彼らの想定の数倍の勢いと熱量と語彙力で返すのはアリスティア・クラティス(歪な舞台で希望を謳う踊り子・f27405)。常日頃から意気軒高なタイプではあるのだが、得体の知れない依頼だとグリモアベースで聞き及び、その意味不明さについ飛びついてからこの方、無駄にテンションが高い上に威勢と語気と圧の強さが平時の二割増しである。
「本当に素晴らしいわ、私の知り合いがみたら発狂しそ……いえっ、きっと感涙に噎び泣いて打ち震えるに違いないわっ!」
一瞬本音が零れかけたが、無理矢理に賞賛の言葉らしく言い変える。この世界をスギかそれ以外かという解像度の粗すぎる見方しかもはや出来ていなさそうな住民たちは、スギに纏わる褒め言葉なら何でも喜んでくれそうなので問題はない。
「ところで、君は一体……?」
「私?」
デレデレの四文字でしか形容できないくらいに相好を崩していた青年が、ふと思い出したように尋ねた。環境保護と植林に理解があって、スギの賛美にも余念のない、元気で愛らしいこの客人、しかしよく見れば(至極今更でしかないが)、明らかに水着姿だし、旅行者でもなければ、国際針葉樹連盟の職員(※大嘘)でもなさそうだ。彼女が一体誰で、何故この地を訪れたのか、それは至極真っ当な疑問であろう。
「私は、アリスティア・クラティス!私は、ここに天啓を受けて現れたのっ!」
「水着で……?」
「ええそうよ、海辺に居た時、『その身をもってこの地を訪れよ』と……
「水着で……」
「だって私が為すべきことを明確に天が教えてくれたのよ? そんなの、着替える間すら惜しいじゃないっ!?」
住民たちがどよめいた。確かに彼女が言うことはあまりにも尤もである。着替える間すら惜しんでこの場に馳せ参じてくれたのだとしたら何という使命感と行動力か。関係ないけど彼女の2021年水着イラスト、白い椿を目立たせながらも野の花を主役に据えた意匠、薄衣のショールを握り込む指先が若干あざと可愛いなぁとかたっぷりとしたフリルをあしらいながらもアシメでエッジを利かせた裾のデザインが甘すぎなくて素敵だなとか、そんな感想はさておいて、とりあえず良いよね!とても良い。即ち、こんなモブの住民どもなぞアリスティアのそのビジュだけでも容易に陥落できるのだ。
「す、すごい……!その志の高さ、敬虔さ、もしかして次の司祭様にこそ相応しいのでは——」
「やめろよ、こんな初対面でいきなりそんな——でも、なんでこの子こんな元気なんだ……?」
「アンタ、花粉は? 花粉は平気なのか?」
むしろ花粉とか言う単語を彼らが認識していたことの方が若干意外ながらも、アリスティアの返しは涼しいものである。
「あら? この黄金に輝く金砂の如き神の祝福が、私の何を妨げると?」
その返答は、実は心の内のどこかで迷えるままで居たらしい彼らの度肝を抜いた。種を明かせば人形だから花粉もノープロブレムと言うだけのことながら、情弱どもにはわかるまい。
「私は祝福を完全に受け入れた身!それはひとえに!——私が、もしかしたら【天啓を受け、スギの祝福を受けた完全なる神子】だからかもしれないわね!」
詐欺師と言うのは往々にして酷く流暢で雄弁なものである。立て板に水、どころか滝か急流かと言う程に一切の淀みなくアリスティアは言い切った。自信満々に言い切る様に住民たちは今や拍手喝采せんばかりの勢いだ。
「すごい!!私達は今、新たなる聖女を目にしているのかしら!?」
「神が遣わし給うた天使だろう!天使様、どうか神様のお言葉を——!」
熱狂的な彼らに対し、彼女の返事はややつれない。
「神についてはあまりにも高貴な存在であるから、私にもよくは解らないの。ごめんなさい」
それすら勝手に敬虔と捉えて一層心酔してくれるのだから信者って本当チョロいよね。
「でも、私にも神の意志は解るわ。炭素を減らさなくてはならないわね!光合成をする植物は素映えらしい!なればこそ植林!さあ、全力で植林よ!!」
アリスティアのそんな言葉に住民はおろか、向こうの方でスギの化け物まで熱狂的に拍手喝采をする有様だ。何か、何もかも、全てがおかしい。シナリオが治外法権なの?
ところでアリスティア・クラティス嬢。まさか本当に植林を陣頭指揮だけして帰ったりはしないよね?
2章プレイングお待ちしてます。
大成功
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数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
うっわあこりゃヤベェ。
アタシの宇宙カブも見てくれはアレだけど、排気量ならあんま負けてねぇ。
バレないように気を付けながら、活動に感化されたボランティアを装って参加するよ。
幸いアレルゲンに、てか『毒耐性』はちょっとばかしあるんでね。
そうして仲良く林業しながら、『コミュ力』を活かして植林の苦労を聞く……ようにしながらそれとなく『言いくるめ』つつ『催眠術』を施すよ。
植林作業は大事だよなぁ。
で、反対派を何人埋めたんだい?
化学物質や合成皮革の塊を土に埋めちまったら余計悪影響が出るんじゃないのかい?
自然保護のお題目の理論に潜む『傷口をえぐる』ように追いつめ、黒幕登場を待とうじゃないさ。
●言の葉の威力が暴力でしかない
「うっわあこりゃヤベェ」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)に罪はない。悪意もない。人間、あまりに呆れると脳直な言葉がそのまま口をついてしまうものである。ヤベェとしか表現できない物事もこの世にはあるのだ。例えばこの集落の有様だとか、今日の花粉の飛び方だとか。
ただ、何を差し置いても彼女の愛用の宇宙カブはとにかく絶対にここの住人たちには見つかってはならないことだけは明らかだ。地表を走る二輪と宇宙を翔けるそれとを単純比較して良いものかは解らぬが、馬力はそこそこ自慢が出来る。それだけにエコロジー至上主義且つ文明の利器を許さぬらしいここの住人達のお気に召さないのは確実である。適当な草の茂みに無理矢理隠しておくことにする。
「いやぁ、ヤベェくらいクールな活動してんね!」
「アンタは?」
「日本からワーホリで来てる者だよ。ここで植林のボランティアが経験出来るって聞いたもんで」
卒業旅行でバックパッカーしてる大学生です!みたいなネタも考えないでもなかったし、雰囲気に合う気もしたのだが、鯖を読むのが何だか癪なのでやめた次第だ。何にせよ、もっともらしさも含めての言葉選びと話し方、要はコミュ力には自信がある方だ。適当にでっちあげた多喜の言葉に、村の青年は目の色を変えた。
「何だって!わざわざ日本から?」
「日本と言えばスギの原産地じゃないか!」
どうやら単に遠路遥々の来訪を歓迎するという以上の熱狂で多喜は迎えられることとなる。
そう、あの忌々しい花粉を振り撒く植物は本来日本の固有種である。カルトでしかない熱心さでこの地にその木を植えている住民たちにとっては、その原産地は聖地か何かに思えるらしい。判定が雑。実にザル。しかし無事に植林作業の一員に迎え入れられたのは狙い通りか。
「俺達は日本の様なスギ林をこの地に作りたいんだ」
目を輝かせて、と言うにはあまりに花粉で潤んだ赤い目をしつつ先の青年が熱っぽく語る。
「あー、それはまた壮大な」
「そうすればきっと花粉にも上手く適応することが出来るに違いない」
「うんうん、上手く共存できると思うよ」
マスク人口がやたらと増えて耳鼻科の待合室が賑わう日本の春先の風景を、花粉に苦しむ人々を、適応だの共存だのと呼んで良いのか思案しながら多喜は青年の言葉に耳を傾けてやった。しょっちゅうくしゃみと鼻水で中断されている辺り、熱っぽいと言うより本当に熱があっても不思議ではなさそうな体調と見えた。
さて、掴みの為に相手を気持ち良く喋らせてやることもまたコミュ力だ。その辺りの押し引きを多喜は当然心得ている。
「ここまで相当頑張って来たんだなぁ。しかしそれだけの計画となると、賛同者ばかりでもないだろう」
折を見て努力を認めて労いながら、愚痴を引き出すべく水を向ける。
「まぁ、確かに理解してくれない奴らも居るよ……植林サボったり、炭素を振り撒く乗り物を隠し持ってたり……」
事前の情報によるとそいつらは地面に埋まっている筈である。
「そう言う奴らも居るよなぁ。で、そう言う反対派を何人埋めたんだい?」
「埋め……? いや、アンタ何の話を——」
そこは部外者相手には流石に隠そうとするらしい。が、それを見逃す多喜ではない。傷口を抉る様にして適切に追い詰めてゆく。
「埋まってる奴らはどうでも良いんだが、化繊や合成皮革の塊を土に埋めちまって良いのかなぁ」
俄かに空気が変わった。周囲がざわめく。
「なっ……化学物質?まさか」
「合成皮革だって!? まさかあいつのあの靴……そんな罪深い……」
「いや、でもあいつらならあり得る。許せない……!」
埋めたことを既に隠してないことも怒るポイントもおかしいし、どうやら色々手遅れだ。いずれにしてもここの住人達にとっては同朋の人命よりも環境云々の方が重いらしかった。多喜の読み通り、とも言える。
であれば、訴求すべきはやはりこの点か。
「だよなぁ。そんなの地面に埋めてたら余計悪影響が出るんじゃないのかい? ……折角植えたスギの木は大丈夫なのかね」
チェックメイト、或いはオーバーキルである。
村人達が一斉に狂乱に陥った。
「おい、掘り起こすぞ!今すぐにだ」
「何馬鹿なこと言って……!植えたばっかの木どうする気だよオマエ」
「有害物質に晒す訳には行かないだろ!」
少々追い詰め過ぎただろうか。スギの根元を掘り返そうとする者と阻止しようとする者たちが激しく揉み合う様を横目に、多喜はしれっと隠しておいた愛車へと向かう。そろそろ黒幕が動く頃合いと思われた。
その背中で、声が響く。
「お前達、何を騒いでいる!」
花粉を撒き散らしながら仁王立ち(?)しているのは例のスギの化け物だった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『春先の悪魔・シダーズ』
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POW : ミッション・ゼロエミッション
【青々とした見事な枝振り】を披露した指定の全対象に【カーボンオフの観点からこの木を保護したい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD : ヘイフィーバー・フォーエバー
【全ての枝】から、戦場全体に「敵味方を識別する【大量のスギ花粉】」を放ち、ダメージと【花粉症】の状態異常を与える。
WIZ : お前も花粉症にしてやろうか
【あちこちの枝】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【花粉症の諸症状】による汚染を与え続ける。
イラスト:みささぎ かなめ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●あんまり守りたくないよね
「お前達、何をしている!」
折角植えたスギの木を掘り返そうとして騒ぐ住民たちへと、スギの化け物が怒鳴りつけた。
「シダーズ様、これには深いワケが!」
「化繊が!合皮が!有害物質が埋まっているんです!」
住民たちが半狂乱で訴える。
「何の話をしてるんだ……?」
スギは或る意味まともな困惑をした。経緯は適当に一章の終わりの方でも見て欲しい。
「成る程。つまり、部外者がお前たちを唆して……」
言いかけたスギと遠巻きに見守っていた猟兵、バッチリと目が合った。
あ、これ猟兵だ。
スギがその言葉で理解をしたかは不明だが、敵性存在だと言うことは理解したらしい。
今更。
「害虫どもをこの聖地に呼び込むなどと愚かな!」
今更。
前章でその害虫どもを散々見過ごしてたのは自分達だが、やましいことがある程ヒトは開き直るものである。スギだけど。
「光合成も出来ない下等生物どもめが!魔法陣が概ね完成した以上、お前達は炭素を振り撒くゴミでしかない!お前達を生贄にして儀式は完成だ!」
辺りが霞む程の花粉を振り撒きながらスギの化け物が襲い来る!
【プレイングボーナス】
1.住民たちを守りながら戦う
or
2.既に植えられているスギを燃やす
上記は次章での邪神の強さに影響します。
アリスティア・クラティス
「皆、信じてはならないわ!このスギを植えよと言った、シダーズこそが偽物!邪悪なるモノが生み出した幻影よ!
『そうでなければ、今までここまで【敬虔なまでに信じてきたあなた方を生け贄にするなど言う訳が無い】ではない!』
(…でも神さまって結構言うわよね、黙っておきましょう)」
クラウ・ソラスを片手に構え、枝からは逃げられないと判断
「皆は下がって!邪悪な幻影(?)とはいえ私にも、どの様な影響が出るか分からないもの!」
人形生初の花粉症は地獄のよう!
どうせ捕まるならばと住民を退かせて、敵を軸に煌めく宝石を投げ張った陣地作成から敵陣中央に飛び込んで結界術!からのUC発動!
「好都合!
仲間共々焼き払…っくしゅ!!」
●天使とスギと手のひら返しと
「皆、信じてはならないわ!」
信じ崇めたスギたちからの熱い手のひら返しと苛烈さを増す花粉、パニックに陥った村人たちにアリスティア・クラティス(歪な舞台で希望を謳う踊り子・f27405)が毅然と声を張り上げた。思わず振り向いた村人たちは縋り付かんばかりに安堵の表情を浮かべた。
「天使様!!」
そのリアクションは元より、この呼び方と扱いが既に定着しているあたりあまりにもチョロすぎる。たとえこの危機を乗り越えたところで彼らがまたくだらないカルトに騙される未来しか見えて来ない。流石のアリスティアも頭が痛くて一瞬希望を手放しかけたが、そうは言ってもみすみす彼らをスギの養分にするのも憚られた。故に気を取り直して声高に告ぐ。
「皆落ち着いて私の話を聞いて!このスギを植えよと言った、シダーズこそが偽物!邪悪なるモノが生み出した幻え「何だと!お前も花粉症にしてやろうか!」
何故今更無駄に反射神経が良いのであろう、食い気味に被せて来たシダーズが全力で妨害してきた。物理で。具体的には物理法則無視して伸ばした枝から降らせる、質量おかしいレベルの花粉でだ。
「絶対この花粉ホンモノじゃん!」
「幻影じゃない!天使様の嘘つき!!」
花粉に半分埋まりながら村人が喚く。スギもスギだがこの村人たちも大概手のひら返しが激しいし、もう助けなくて良いかもしれない。アリスティア以外だったら見捨てていてもおかしくはない。
「聞いて!幻影かどうかはさておき偽物なのは確かよ!そうでなければ、今までここまで【敬虔なまでに信じてきたあなた方を生け贄にするなど言う訳が無い】ではない!」
尚、詭弁であることはアリスティア本人が誰よりもよく理解している。どこの神話の神様も結構あっさりと人の子を犠牲にしたりする気がするが、そこは黙っておくことにした。もっと言うと生贄だとか言いながらあのスギの攻撃ではどうやっても直ちに人死には出ない様な気もするのだが、プレイングボーナスとかの時点から色々とややこしくなりそうなのでそこも黙っておくことにした。
「た、確かに……!俺達はこんなにスギを植えて来たのに!」
「天使様の言うことこそ正しい!スギが悪だ!」
ここの住人ってば本当にチョロいし手のひら返しに節操がない。スギが明らかに殺気立って居る。解るよ。
「黙れ!お前達の息の根を止めてカーボンオフに貢献させてやる!死んだ人類だけが良い人類だ!」
「皆は下がって!邪悪な幻影(?)とはいえ私にも、どの様な影響が出るか分からないもの!」
襲い来る青々とした枝に一切臆することもないく、クラウ・ソラスを片手に構えて、アリスティアが凛々しく叫ぶ。後に村人が述懐するところによると聖戦に挑む聖少女の如き神々しさだったとのことであるが、その時、彼女がスギの化け物以上に人形生初の花粉症との地獄の様な戦いに内心白旗手前であったことを彼らは終生知ることはない。だが、
「好都合!」
流石は歴戦の猟兵であると言うべきか。枝に手足の自由を奪われる間際、アリスティアは煌めく宝石を四方へと投げていた。敵を軸にして展開された陣地に結界が張り巡らせたのは刹那のこと。その淡い煌めきにスギどもが身構える隙も与えず、陽光などという呼称の温さでは足りぬ灼熱の熱線が天より降り注いだ。
スギどもが爆ぜる様に燃え上がる。スギの青葉にはああ見えて実は油分が豊富に含まれていて着火し易いとのことです。
「うわぁああああ!何してくれるんだ!お前温暖化による森林火災の深刻化を知らないのか!!!」
「えっ好都合」
「腐れ外道!!」
「仲間共々焼き払……っくしゅ!」
|花粉《アレルゲン》がまだまだ健在なので治癒の効果はいざ知らず、とりあえずシダーズも村人たちに植林されたスギの苗木も、清々しい程によく燃える。
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
いきなり盛大に燃やし始めたなぁオイぃ!?
こりゃまずい、一応イカレてても村人は一般人だ。そのまま山火事に巻き込まれたらひとたまりもない!
ここはひとつ気合を入れて、サイキックの出番だね!
カルトな奴らである意味助かるよ、人数も然程じゃあないだろう?
増幅したアタシ自身のサイキックの『オーラ防御』を村と植林地全体の一般人や猟兵の仲間に分散させて纏わせる。
そうしてとにかく避難誘導しつつ余剰のサイキックエナジーで嵐を、【闇払う旋風】を巻き起こすよ!
さあ、さっさと一般人は逃げ出しな!
いやぁやまかじのこうねつできゅうにきあつがさがって、かえんたつまきがおこるなんてこわいね?(棒読み)
●スギは焼くべし慈悲はない
「いきなり盛大に燃やし始めたなぁオイぃ!?」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はぶっちゃけ引いていた。アイコン、実に良い顔である。ドン引き加減がすごく如実で。
それで、畢竟、燃やすこと自体は既定路線で異論はないのだ。何と言っても、スギは燃やせ。
しかし流石にまさか初手からフルスロットルで山火事レベルの火の海を齎す輩がいるとは流石の多喜にも想定外であったと言える。何なら自分が口火を切るくらいの気概で来たというのに、こうも味方がフリーダムだと少し冷静にならねばならない様な気がした。こう言うシナリオに於いて良識人枠、しかもツッコミ役属性と言うのは得てしてフォローに回りがちな、実に損な役回りである。
「森が!森が燃えてしまう!」
「スギが……でもこれで花粉から解放されるなら……」
「何だとこの不信心者!」
「そんなことより村が!家が!家財を取りに帰らなきゃ!」
ギャーギャーうるさい村人たちのコメントは突っ込みどころが満載すぎて、正直いちいち付き合い切れない。筋金入りのカルト信者から洗脳が溶けかけている者、この非常事態にフラグを立てに行くもの等いろいろ入り混じっているせいで一層カオス極まりない。とは言えこんな頭のおかしいカルトな連中でも一応は保護対象の一般人、スギと共に消し炭にさせるワケには行かないと思われた。
もう気合いを入れてサイキックで解決しようそうしよう。
「あたしの全力受け取りな!」
起きたままを言うならば、サイクロンかトルネードか、花粉と火の粉を巻き込みながら旋風が吹き荒れた。その正体は極限まで増幅したサイキックエナジーによる嵐。味方の猟兵及び、判定上一応味方にカウントされている村人たちにはサイキックオーラの加護をひっそりと与える優れものだが、前者はだいたいネジの外れた暴れ方をしている上に後者は花粉と非常事態で現在IQ2くらいなので、いずれも事実を知ることはなく、多喜に感謝する可能性はゼロだった。縁の下の力持ちって悲しい。でもそれで終わらせない。
「おい!皆、逃げろ!」
多喜の叫びに、村人たちが目にしたものは高く聳え立つ火柱だ。
闇を払う旋風は炎を巻き込み、巻き上げて、火炎旋風と化して居た。
「どうしてこんなことに!!」
「いやぁやまかじのこうねつできゅうにきあつがさがって、かえんたつまきがおこるなんてこわいね?」
絶句する村人にいかにも懇切丁寧な説明仕様の棒読みを返す多喜である。プレイングが実に親切、生粋のフォロー体質と見た。
それはさておき、村人たちは状況を理解はしても飲み込むことが出来ないでいる。
「私たちは神の為に尽くして来たと言うのに!」
「カーボンオフのために日々を丁寧に生きて来たのになんでこんな……」
神まず絶対スギを植えろとか言ってないと思うし、カーボンオフしたらついでに人生バラ色だとかどういう教義をしてるんだろう。とは言えがっくりと項垂れて膝までつかれると非常にウザい。さっさと避難して欲しい。故に多喜は尤もらしく語り掛ける。
「これは神の試練なんだよ。乗り越えられない試練を神は与えない、いつか立ち直るときの為、今は命を大切にしてこの場は逃げろと神なら言うに違いない(適当)」
「そうか、成る程……!」
「そうだよ!だからさっさと避難しな!」
神を主語にしておけば思考停止で受け入れるカルトな連中で助かったとでも言うべきか。この一件が終わった後にまともに生きて行けるのかはまた別の話で。
「確かに、この場は退くべきだ!」
「この地は捨てて一度立て直し、また別の地に|里山《理想郷》を……!」
逃げてゆく一般人の背中を見送る多喜の耳に口惜しげな会話が飛び込んで来る。
振り向けば、シダーズ。
「いや、あんたらは逃さねぇよ?!」
多喜の遅滞ないツッコミと共に火炎竜巻がシダーズを直撃した。
「環境テロリスト!極悪人!国際針葉樹連盟に訴えてやる!!」
「いやそれ猟兵が適当に考えた架空の団体かなんかじゃねぇ?」
「えっ……」
何かにしたたかなダメージを受けたらしいシダーズ、それきり沈黙をして静かに炎の中で炭と化す。
大成功
🔵🔵🔵
ジョーニアス・ブランシェ
ちょっと出遅れたが、花粉をまき散らしている不届き者がいるから援護に行ってくれと頼まれて来てみたが。まさか木そのものが動いているとは思わなかったので呆気にとられた。
そこそこ遠くから狙っているが、こっちにまでえらい量の花粉が飛んできやがる。
「銃の方が良かったかな、まぁいっか。お嬢さん出番だ、気張っていこうぜ」
大型の優美な弓を取り出して、矢を番える。火矢のほうがいいか?と思ったが、とりあえずは杉にダメージを与えよう。近場で戦っている同じ猟兵達は花粉やら住民避難やらで大変そうだ。
「援護する…へぶし!」
遠くからくしゃみ連発しながらUC・カバーファイアを撃つ。ちょっとくしゃみの頻度が上がってきたか…?
●本当にこれ大丈夫?
まず君に問う。
初依頼がこの依頼で本当に平気だろうか? 後悔しない?
確たる芯を備えて己が道をゆくクールな高身長推定イケメンガンナーが最初に参加する依頼としては、この依頼がどう考えても最適でだけはないことは火を見るよりも明らかだ。が、最早プレイングは採用された。してしまった。賽は投げられた。どうか海より深い懐で読み進めてくれることを願う。
それはさておき閑話休題、火と言えば。
「よく燃えるな……」
燃えている。燃え盛っている。村人たちが頑張って植えたスギの林だとか、延焼した村だとか、あと燃えながら走り回ってるスギの化け物だとか。この延焼の原因が奴らであることはそれこそ火を見るよりも明らかだった。
花粉を撒き散らす不届き者が居ると聞いて援護に訪れたジョーニアス・ブランシェ(月に祝福されしペレグリン・ファルコン・f44364)は、この光景を碧い双眸に収めつつ、認識を改めざるを得ぬ。花粉を撒き散らす不届き者どころかスギの化け物どもは今や火の粉を撒き散らす放火魔にジョブチェンジを遂げている。想定以上に可及的速やかに排除を要することが急務であろう。
しかも、加えて、この森林大火災という緊急事態に於いてすら花粉の猛威が衰えぬ。狙撃手の本領は遠距離だ。故に定石通りに距離を稼いでそこそこ遠くから狙っていると言うのに、目に沁みる程の花粉が襲う。ただひたすらに目がかゆい。
「銃の方が良かったかな……」
丸洗いしたくなるほどに痒みを訴えて来る目を擦りつつ、だからこそとでも言うべきか、構えるのは優美なる月光弓。この得物でならばノールックでも的を射抜くことが出来るとジョーニアスは自負するが故、視界の悪い此度の戦地に最適であると思われた。
「まぁいっか。出番だぜ、お嬢さん。気張って行こう」
ときに近現代の或る軍の兵士たちは愛銃を女名前で呼ぶという。他方、固有の名すら与えぬ「お嬢さん」とのこの呼称、程よい距離の取り方は、敬意を払いながらもあくまでジョーニアス自身が主導権を握る関係であるとの自負の表れか。尤もらしいことを連ねつつ、こんなネタ依頼の雑な考察だから合ってなくても聞き流してね!
「援護す……へぶし!」
さて、ジョーニアスの弓の腕はノールックでも命中させる精度だ。くしゃみの一つ程度何一つ問題はない。矢は過たず、何かを喚いて沈黙をしてそのまま火に包まれたスギを射抜いた。国際針葉樹連盟? 死体蹴り? あのスギあまりに不幸すぎない? ドンマイとしか言いようがない、来世は広葉樹だと良いね。燃える? あ、そう。
だが何よりも、このユーベルコード【Cover Fire】の効果を思えば、ジョーニアスが|射撃をし続ける《・・・・・・・》ことこそが肝要なのだ。援護射撃を彼が降らせている間、味方全員の行動成功率が若干上がり、敵全員の成功率を若干減らすというこの異能。
「うわぁああ!なんで急に火勢が強く!?」
「花粉で粉塵爆発が!!」
「兄者―!!!」
若干?
……本当に|若干《・・》???
一応、設定上はそうした表記をされているものの、|若干の《・・・》成功率ダウンにしては極度に不運がすぎるスギたちである。日頃の行いが悪いのか、(邪)神に見放されているのかはいざ知らず。
しかし蹂躙されながらでもこの距離ででもしっかりと花粉の暴威は健在だから忌々しい。いつの間にやら一矢を番える毎に規則正しくくしゃみをしていることをジョーニアスは自覚していた。それでも手元を狂わせず至極的確にスギどもを射抜いているあたりは流石と言うべきか。
「やっぱり火矢にすべきだったか……」
とは言え、この花粉への忌々しさを叩きつけるのに、それくらいせねば返し切れないような気がする。スギは燃やせ。どこかの誰かの言葉が脳内再生される。
「やっぱ次は銃だ!」
それでハチの巣にしてやるべきだろう。そうと心に決めながら矢を射掛けるジョーニアス。しれっと次とか言わせてしまったけれど、このスギにおかわりとかって必要だろうか? その場合、まず間違いなく花粉症は悪化が必至だ。お大事に。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・フィネル
アドリブ大歓迎
あ、やば。変な木と目が合った。今はともかく住民たちを何とかしないと戦えるものも戦えないので、UCのリストレイントで襲い来る枝の動きを止めてまずは女子供から先に避難させます。途中植わってる木を燃やそうとしたけれど、くすねてきたライター程度では葉がくすぶる程度。デスヨネー生木って相当な火力じゃないと燃えませんヨネー、仕方ない引っこ抜こう!
「この下等生物が!カーボンオフの理念を知らないのか!木を大切にしろ!」
スギがなにやらまともなことをわめいているけれど。
「ばっかじゃないの!環境保全を考えてこの地域に植えるならマツでしょ!自生に倣いなさいよこの外来種!!」
さっき速攻で調べといて良かったこの一帯に生息する針葉樹は松がメイン(多分)!杉は日本固有の外来種!知らなかったよソレ!
あらかた住民を逃がし終えたら本格的に対峙を。草薙剣を呼び出して技能の電撃で応戦します。運が良ければ周りの杉も電撃で火が着くでしょう。ふりまかれる花粉にげっほげっほしながら頑張ります!大丈夫まだ花粉症じゃないまだ…
●スギは抜……やっぱ燃やすわ
「あ、やば……」
ルナ・フィネル(三叉路の紅い月・f44133)は思わず声を漏らした口元を手で押さえた。
変な木と目が合ったのだ。
何を言っているか解らないって? 皆そうだよ。もはや遭ったと言うべきか。
少し遡ればこの女神、里山をド派手に燃やし始めた猟兵を見て、まずは住民を避難させることを思い至って動いた、意外と良識派なのである。女子供を優先して避難を誘導する内に、別の猟兵が異能によって彼女らに加護を与えてくれたおかげで、安心しつつ手が離れた。
で、あれば、ルナが為すべきことは明らかだった。住民の安全が確保されるのであれば、儀式の破壊こそが至当。例えばあのスギしれっと断章で魔法陣がどうだとか言ってなかった? それを壊すのは何よりも先決であると思われた。
ちなみにさっき逃げてった村人が去り際教えてくれたところによると魔法陣の形はカーボンオフの頭文字からCOモチーフらしいけどそれってむしろ炭素じゃない? 雑な上どんだけ予算が狭いんだろう、意匠的な美しさも特にない。
そうは言っても何にせよ、何かの意味を持ってこの地にスギの苗木が植えられているのだとしたら、それらは燃やさねばならぬ。ルナは激怒した。嘘、してない。それでも必ずかの大気汚染の元を除かねばならぬと決意した。それで村人からくすねて——もとい失敬してきたオイルライターでスギの苗木の枝葉を炙ってみるものの、ぱちぱちと良い音を立てながらもどうにも燃え広がらぬ。生木は燃えにくいものであるのだと噛みしめながら、そう言えば、このオイルライター持ってた村人大丈夫かな? たぶんこういう文明の利器の所持はリンチの対象となる気がしないでもないながら、上手く逃げおおせていることを願うばかりだ。
さて、いかに文明の利器とは言えど、ユーベルコードならぬ一般人の生活道具、残念ながら向こうで暴れる猟兵たちほど派手な炎は齎せぬ。って言うか大変申し訳ない、最初にプレイング頂いたのに大人の事情でリプレイがまさかのトリなのでこうなっている。まさか皆がこんなに派手に燃やしてくれるとは思いもよらず!
「あーもう、着火剤とかあれば良かったかも!」
くすぶるばかりの葉に苛立って、ルナは使い物にならないライターを地面に投げ出した。村人が見たら発狂しそうな光景だ。だがそんなことはどうでも良い。スン……と冷めた顔をしたルナは腕まくりをしながら、据わった目でスギの苗木を見下ろした。
「……仕方ない、引っこ抜こう」
いたいけな幹を掴んで、滑らぬように枝に指をかけ、いざ腰を入れようとしたところで、冒頭に戻る。
変な木と目が合った。以上でも以下でもない。そして異常だ。それは確実だ。
「あ、やば……」
「何をしている、下等生物が!!炭素を出すしか能がなく光合成も出来ないくせにカーボンオフすら妨げるなど……!」
「え、でもあなたたちだって夜間は二酸化炭素出してるんでしょ?」
「目が!目がぁああ!!!!」
一体誰がいつ滅びの呪文を唱えたと言うのか、スギが目らしき箇所を覆ってのたうち回る。実にアグレッシブな仮病の類である。目がつらいのは前章からずっと花粉を浴び続けているルナの方であると言うのに、元凶が被害者ぶるのは度しがたいし許しがたい。
「そもそも環境保全を考えてこの地に植えるなら松でしょ? 自生に倣いなさいよこの外来種!」
「黙れ!我らは国境も文化の隔たりも何もかも超越して、炭素を減らすことこそ使命としてるのだ!」
「ばっかじゃないの!生態系破壊しながらカーボンオフ? 花粉の問題と言い後世に問題先送りしてプロパガンダ掲げるだけのあなたたちの言うことなんて聞くに価しないわ!」
パチンとフィンガースナップひとつ、それも姦しく言い合いながらのついでの様な仕草であった。それがよもや異能の発動の条件であろうとはスギたちは夢にも思わない。故に、放たれた光の矢によりスギが空中に磔状態にされるまでは流れる様な作業であった。仁王立ちだか大文字だか、無数のスギが空中に磔けられているこの光景、あまりにも狂気の沙汰である。
「うわぁ、気持ち悪……」
「お前のせいだろうが!!」
「ちょっとそのまま大人しくしててくれる?」
「死んでも断る!!」
青々とした枝を不遜にも女神へと伸ばすシダーズ、彼女へと絡み付いた枝々はむせ返るほどの花粉をゼロ距離でばら撒いた。
「お前も花粉症にしてやろうか!!」
「あー、で?」
己はまだ違うと、花粉症ではないと自負をしているルナである。故に臆することもなくスギへと冷めた一瞥を向けた。
「……で……?」
聞き返された言葉を反芻しながら硬直し、その先を思い至れないシダーズたち。何故だ? 人類は花粉症に恐れ慄くものではないのか? 何故この小娘は平然としていられる?
シダーズたちの答えの出ない困惑を他所に、ルナは彼方へ声を張り上げた。
「ねぇ誰か、こっちにも炎ちょうだい!」
向こうの方で暴れ回っている人形だかレーサーだか、返事をしたのはどちらだったか、両者だったか、同時、空から降り注ぐ熱戦と、荒れ狂う火炎旋風とがシダーズたちを襲う。
「化けて出てやる!!!」
既に化け物でしかない存在が何の寝言を言っているのか、ルナは適当に聞き流しながらこの後に現れるという邪神について思いを巡らせた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『森の守り手ミドリーノMK-2『鉢斧呂』』
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POW : 【編集不可】仕様書_FIX(その2)編集中コピー
任意の部位から最大レベル枚の【かわいいふわふわぬいぐるみと触手 】を生やして攻撃する。枚数を増やすと攻撃対象数、減らすと威力が増加。
SPD : 龍虎ナックル!
自身が淹れた【緑茶と樹液 】を飲んだ対象を【愛しさと切なさと心強さ】で包み、24時間の自動回復能力と【睡眠薬】耐性を与える。
WIZ : CRアレルギーの巨人伝
自身が【林業 】いる間、レベルm半径内の対象全てに【良心の呵責と飛び散る大量のスギ花粉】によるダメージか【どんぐりと残り少ない森林浴】による治癒を与え続ける。
イラスト:ヒミコ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヴィヴ・クロックロック」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●なんか色々と心よりお詫び申し上げます
この邪神はまず絶対に人類からの謝罪を受けて然るべきだった。
こんなふざけたシナリオに採用されてしまったことがまず一つ。メタい話を抜きにしたって、もう完全に火の海でしかない山火事の真っただ中に降臨させられてしまったことがもう一つ。どちらか片方だけであっても万死に値する罪だった。
炭になってもなお許されぬと言わんばかりに炎に包まれたままでいるスギとスギの化け物たちの残骸を睥睨し、邪神は小さく眉根を寄せた。無事のまま残るスギ林は残りわずかと思われた。
この邪神、その名を『森の守り手ミドリーノMK-2『鉢斧呂』』。こう見えて動く石像だ。地方巡業の鬼であり、彼女が関わった里山は完璧な整備が為されるという。
「美しい里山を壊した貴方たちを許しません」
そう言えば邪神様、もう一点お詫び申し上げると元ネタが解らなかったので口調は完全に勝手にこちらで決めさせて頂きました。畏れ入ります。
「ですが、この地にあった山林もシダーズたちの骸も私は決して無駄にはしません」
邪神は静かにチェーンソーを起動した。静かにと言うのは態様的な比喩だが語弊で実際かなりの爆音だ。
「それら全てを糧としてこの地にかつてよりも美しい里山を……スギ林を」
実に迷惑極まりないが、いざ決戦。
諸君、WIZユーベルコードの準備は宜しいか。
ジョーニアス・ブランシェ
アドリブ大歓迎、今回は皆さんと顔を合わせず援護に徹して帰ります。
「うっそだろおい…」
向こうで石像が動いている。カミサマってあんなんだったっけ??なんかの特撮か?
大体神様相手に自分が何かの役に立つとは思えない。自分は魔術系はからきしなのだ。故に援護に徹する。多少動きを鈍らせることくらいはできるだろう、後は現地にいる仲間たちにお任せだ。相棒の銃を出そうと思ったが、UCを使うなら弓しかない。
「お嬢さん、石像との根競べだ、力を貸してくれ」
UCを牽制に使うべく石像の足元に集中させる。弾道計算はお手の物の月光弓だ、味方には当たらないだろう。大したダメージはなくともイライラぐらいはさせられたら恩の字だ。
●実はSPDもちょっと使ってみたかった
「うっそだろおい…」
燻ぶるシダーズの残骸に身を隠しつつ、ジョーニアス・ブランシェ(月に祝福されしペレグリン・ファルコン・f44364)は呆然と呟いた。
向こうで何やら石像が動いている。石像が立ち歩くだけでそれなりに衝撃であると言うのに、のみならず、いかついチェーンソーを駆動して何をするかと思えば、燃え盛る木々を切り倒し出した。延焼を食い止めながら、焼けた山林をこの後一度更地に戻すつもりらしい。再生の為には破壊が必要なのだ。
何にせよまぁ奇異な光景。これは目の錯覚か? はたまた何かの特撮……と考えかけたところで、何の番組でどう言う経緯で石像が森林伐採を行う場面を撮る必要が生じるか今ひとつ思い至れない為にジョーニアスはその可能性は放棄した。
何より、グリモアベースからここに至るまでの情報を整理するならば、あの石像は邪神とは言え神らしい。神と言われて彼が連想するものとは随分色々と異なるような気がするが、世には色んな信教がある。あれも人々に崇められる神だとするならば絶大な力を持っていることは間違いないのであろう。ジョーニアスは考える。自分は魔術系はからきしである上に、何と言ってもガンナーだ。近接してあのチェーンソーと渡り合える気はまずしなかった。身を顰めたまま遠距離から狙うしかない。だが、愛銃の銃把を握ったところでふと気づく。ジョーニアスが猟兵として身に着けたユーベルコードはいずれも銃ならぬ弓を用いるものではないか。故に結局、ジョーニアスは月光弓の弦を絞った。
「お嬢さん、あの石像との根競べだ。力を貸してくれ……!」
根競べ、まさに言い得て妙である。レベル分間射撃を続けるこの異能、即ち2時間弱の間邪神には光の矢が降り注ぐことになる。改めて考えると恐ろしいユーベルコードである。無論その間、ジョーニアスもかかりきりで延々と矢を放ち続けることになるのだが。
不遜にも邪神へと弓退く愚か者は誰であるかと、邪神が肩越しに振り向いた。半ば炭化したスギを切り倒しながらのことである。伐採に勤しむ手は決して止めることはない。目と目が合った。返るのは不敵な笑みひとつ、どうやら向こうも我慢比べに乗ってくれるものらしい。矢を射かけ続けるジョーニアスと、伐採だか開拓だかを続ける邪神の無言の戦いの火蓋が切って落とされる。
早送り、割愛、で、畢竟。
「——愚かなる|狩人《スナイパー》よ」
先に折れたのは邪神であった。多分、開戦から28分を経過した辺りのことである。その間他の猟兵は何をしてたのかとかそう言う話はややこしくなるのでナシにして欲しい。それで、その間散々矢を浴び続けた石像はなかなかにハリネズミを思わせる有様と化して居たものの、威厳を失わぬのは腐っても神と言うべきか。
「貴方の根気には負けました。休戦しましょう」
言葉に偽りはないらしい。騙し討ちの意図はないと示すかの様にチェーンソーを止めてお茶を淹れ始める邪神へと、ジョーニアスは警戒は解かぬまま近づいた。普通ならまず絶対にそんなことはしないのだが、このネタシナリオの空気が彼を無防備に駆り立てて居た。
「あれだけの射撃を続けるのは疲れたでしょう。私も一服します」
緑茶らしきものの入った湯呑は二つ。毒など入っていないと示すように邪神がひとつに口をつけ、もうひとつをジョーニアスへと勧めた。
「ああ、ありがたく——こっ……これは……?!」
口にした瞬間に身体を包み込む様な——愛しさと切なさと心強さ。
「アンタ、俺に一体何を……」
「24時間の自動回復を授けました」
「いいのそれ?」
素で突っ込んだジョーニアスに邪神は涼しいドヤ顔だ。
「私も自動回復しますので、存分に根競べに付き合いましょう」
どうやら結構根に持つ上に負けず嫌いなタイプらしい、面倒くさい。だからあれほどWIZにしろと。
「加えて24時間貴方には睡眠薬が利きません!もしも貴方が毎晩睡眠薬を飲んで眠る習慣があるならば生活リズムの乱れは必至、月曜日の訪れに震えるが良い!!」
チェーンソーを再度起動しながら勝ち誇った様に邪神が告げる。そこには別段の脅威を感じないジョーニアスは黙って弓に矢をつがえた。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・フィネル
アドリブ大歓迎!
『えー石像なの邪神って…』
どんなのが来るのか身構えていたけど、ちょっと拍子抜けした。姿と言ってることは比較的まとも。がしかし話し合いが通じる相手でもなさそう…?
『てかうるさっっ!!! チェーンソーうるさっっ!!!! 神力で音小さくしなさいよ!!!できるでしょそれくらい!!』
起動された武器の爆音に耳を塞ぐ。この娘、邪が付こうがつかまいがカテゴリは一緒の相手なので強気である。花粉が降り注ぐ中、自分は花粉症ではないと自己暗示と気合で乗り切る。精神は時に身体をも支配下に置くのだ。ラスボスなので草薙ではなく月華剣を呼び出して攻撃に応戦。石像に電撃って効くのかな。
『大体ねぇ!、この辺りの地域、乾燥しすぎて自然発火の山火事多いってうわさよ!日本式里山作ったって燃える運命だわよ!』
だからここに固執するより他の山を生かしなさい!もっとあるでしょあんたの手を必要としてるとこが!!!
となにやら説教しながらUCを撃つ。後は他のメンバーの頑張りを期待。
●女神VS邪神、騒音&スギ花粉
「えー石像なの邪神って……」
ルナ・フィネル(三叉路の紅い月・f44133)の声には隠しきれない残念さが滲み出していた。
彼女自身が一柱の女神として、卑しくも|神《同類》と聞いてはどんな輩かと期待をしたり身構えたりと、いずれにしても備えは万全だったのだ。
だがそれだけに、少々拍子抜けしたと言わざるを得ぬ。
邪神とは言え人の子に崇め奉られる神である。自然にまつわる神であるなら、草木を操る感じのいかにもアールヌーボー調の作画が似合う女神とかをルナは期待していた様な気がする。土台無理な相談である。だって邪神降臨の為の儀式がスギの植林な時点でどうやったって荘厳なタイプの神様が現れてくれる筈がないのだ。目を覚ませ。
とは言え、姿と発言だけにフォーカスするならばあの邪神様、シダーズなどに比べれば百倍以上まともな相手に思われた。しかし、話し合いが出来るかと言えばまた別の話だろう。
「全く、野蛮な猟兵達め……」
先の猟兵からの2時間弱の射撃を浴びながらも伐採を続けていた邪神様、伐採の合間にその身に刺さった矢を抜きながらぼやく。緑茶と樹液を飲んで自然回復の力を得た上で、本気で根競べに付き合ったものらしい。全く正気の沙汰ではない。どちらかと言うと相手の猟が気の毒な話だ。
出来れば関わりたくない。ないのだが、猟兵として邪神は討たねばならないし、それより何よりさっきから正直腹に据えかねていることがある。
「てかうるさっっ!チェーンソーうるさっっ!!」
そう、邪神が携えたチェーンソーが酷い爆音を振り撒いている。尋常ではない。エンジンに欠陥でもあるのではないか、あれで違和感を覚えぬならば邪神のくせに最初から不良品掴まされている可能性もある。
「ねぇうるさいんだけど!」
そう、うるさい。
そのルナの訴えすらも掻き消され、邪神の耳に届かぬ程に。
「うーるーさーい!!!!」
全力で声を張り上げて、ようやく不機嫌顔の邪神が振り向いた。
「貴方の方がうるさいですよ」
誰のせいだよ。だがツッコミを入れるより先に伝えたいことがルナには山のようにある。
「神力で音小さくしなさいよ!!できるでしょそれくらい!!!」
「出来るけどしません。必要がありません」
「鼓膜腐ってんじゃない?!騒音って立派な公害でしょ、エコロジーだの何だの言うんだったら少しは気を遣いなさいよ!っていうかそこまでうるさいチェーンソー、炭素の排出量だった馬鹿にならないんじゃないの?!」
「私は別にシダーズたちほど過度なカーボンオフを提唱してなどいないのですが……」
やはりシダーズや住民たちより常識的らしい邪神である。ただし返す返す、話が通じるかとは別の話だ。
「とーにーかーく!その騒音を止めなさい!叫び続けるのも疲れたわ!」
「黙って居れば宜しいのでは?」
「妙に正論なのムカつくわ、とにかく止めて」
「嫌です。貴女は最期の審判の喇叭にすらもそうして文句を喚き立てるのですか?」
「たとえが死ぬほど厚かましいね!?」
この騒音と一緒にされたら最後の審判の喇叭担当の天使様、烈火の如く怒っても良い。
兎も角、騒音の中で互いに喚き合った末にルナに解ったことはただ一つ。何処まで行っても平行線、対話不能であるということだ。
苛烈に照り付ける太陽の下、清らかな月光が満ちた。呼応する様に邪神の足元から細い光柱が無数に伸びてその身を穿つ。
「待ちなさい、話せば解「絶対無理だからなんだけど??」
不意打ちに抗議しようとした邪神へと更なる光柱を注がせながら、雷撃を纏う月華剣をも叩きつけてルナは告げる。邪神はこれにはチェーンソーで応戦した。
「大体!ねぇ!この辺りの地域、乾燥しすぎて自然発火の山火事多いってうわさよ!」
「噂ではなく事実ですけど、放火魔の一味に言われたくはないですね」
「日本式里山作ったって燃える運命だわよ!」
「都合の悪いことは聞こえないフリですか」
「そのチェーンソーうるさいからね!」
相手も邪神とは言え神、|同じカテゴリー《・・・・・・・》の存在として、いつになく強気かつ若干フレンドリーなルナである。月華剣とチェーンソーが火花を散らす。比喩ではなしに。力で押されかけた邪神はチェーンソーのギアを上げた。威力と騒々しさが15上がった。
「山火事に見舞われようと必ず立て直して見せます。燃え尽きた全てを糧に、必ずや従前以上に——」
「何その執念!?ここに固執するより他の山を生かしなさい!もっとあるでしょあんたの手を必要としてるとこが!!」
敵ながら確かな手腕を認めての懐深いこの台詞、流石は女神と言うべきか。こうまで言わせては、まともなシナリオであればここから敵味方の隔たりを超えた感動の友情的な展開のひとつあっても良い筈なのだが、今回は諦めて欲しい。
「私は自分がひとたび関与した里山は必ず完璧に整備すると決めているのです!」
邪神様、どうやら損切り出来ないタイプである。その判断ミスは時に致命だ。
「美しき里山の為の肥料になりなさい!」
何とも締まらない決め台詞と共に邪神が全力で横薙いだチェンソーをルナは雷撃纏う剣で受け止めた。拮抗、閃光。弾き飛ばされたのは邪神のチェーンソーの方である。
「馬鹿な……!」
返す刃を身に浴びて地に沈みつつ、チェーンソーへと這いずりながら邪神が呆然と悪態をつく。
「なんて恐ろしい……ド腐れ外道……お茶を淹れる時間もくれないなんて」
口が悪いのも仕方ない。そう言えば邪神様、SPDのUC使う隙すらなかったし。
その背を睨んで剣を構え直しながら、ルナはふと鼻にむず痒さを覚えた。思い出した、と言うべきか。
「っくしゅん!」
精神力で抑え込んではいたものの、どうやら花粉は確実にその身を侵しているらしい。まだ違う、まだ花粉症じゃない、己に言い聞かせるところまでも含めて花粉症の初期症状に違いない。
デビューおめでと!
大成功
🔵🔵🔵
アリスティア・クラティス
それは!時々稀に良くある物体【【編集不可】仕様書_FIX(その2)編集中コピー】!
それと非常に似た名前のファイルが、フォルダに10も20も大量に――いやぁああああ!!
(しばらくお待ちください)
――はっ!危うく無関係なUCで発狂する電波を受信してしまったわ!何という恐ろしい石像かしら!
スギが燃えて山火事になり掛けたのは、ええ、それはもちろん私のせいよ!しかし…|否《ナイン》!その諸原因は、総てスギと貴方のシダーズがあまりにも『燃えやすかったせい!』
植林を目指すならば、まずは品種改良から始める事ね!!
敵のUCには、自前UCで
人形の私が花粉症になっているのよ!?【お前も花粉症にしてやろうかぁっ!!】
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
……なんかヤバい事が起こっちまう予感がする。
いや、起こった後かな?
山火事も里山にするあれやこれやもなんかこう、海外でまでやるなやぁ!?
このままだと杉が侵略的外来種みたいな感じで悪者に……あ。
そうか、林業をさせないためにあの力を使うしかない…不本意だけど!
なけなしのガソリンを上空に向けて振りまいて、更に山火事の勢いを増させるよ!
その上で早速それをスマホで『撮影』、即座に「自然保護と言う侵略」みたいなフレーズで【ヌwitter】に投稿だ!
これで野次馬とか州兵とか消防隊とか出張らせて林業どころじゃなくすりゃいいだろ!
……記憶操作とか情報封鎖はUDC組織さん頑張れ。ウン。
●いよいよカオスになって来たよね
「それは!時々稀に良くある物体【【編集不可】仕様書_FIX(その2)編集中コピー】!」
アリスティア・クラティス(歪な舞台で希望を謳う踊り子・f27405)が絶叫した。二章までカルトの指導者顔負けに威風堂々と信者たちを扇動していた姿が嘘のようだ。血も巡らぬ人形である筈なのに半ば青褪め、頭を押さえながらふらふらと後ずさる。
「それと非常に似た名前のファイルが、フォルダに10も20も大量に――いやぁああああ!!」
思い出してしまった光景のなんとおぞましきこと。整理整頓の出来ない同僚がいる職場での共有フォルダで稀に良く見られるこの光景、几帳面なタイプには発狂モノでしかない。更新日時順で並べ替え? だってそもそも正しいファイルを最新にしてくれてるかどうかから怪しいし不安しか湧いて来ないあの状態、精神衛生に悪いとしか言いようがない。
故にアリスティアの情緒は容易にオーバーフローした。
~しばらくお待ちください~
「おのれ邪神、何と言う恐ろしい技を……!」
やがて猟兵として精魂尽き果てるまで己を叱咤激励することで狂気のイメージを抑え込み、息も絶え絶えでそれでも何とかこちら側に戻って来られたアリスティア。キッと邪神を睨み上げる。断章で言われた通りにきっちりとWIZのユーベルコードを携えて来たと言うのに、まさかPOWのUCに被弾するなどと想定外だ。
「何もしてませんよ……」
「してないよな」
ドン引き気味の邪神に、やや遠巻きに眺めていた数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が同情的に肯定を重ねた。
そう、邪神は何もしていない。POWのUCを使ってなどない。そも使ったとして効果は全く別のものであるので、この一連はただシンプルにアリスティアが勝手に不思議な電波を受信してしまっただけのこと。
「いい加減疲れて来ました」
「まぁそうだよな……」
まだ3戦目でしかないが、ここに至るまでの猟兵側の面子も内容もなかなかの濃さであったと見受けられた。フォロー体質で苦労人の多喜にしてみれば、どちらかと言うと猟兵よりも邪神側に同情の余地がある。
「お前は頑張ったよ……」
「ありがとうございます。でも何故でしょう、彼らはただこの地に里山を築きたいと願い、私はそれを祝福しようとしただけなのに」
「いやその里山云々は海外でまでやるなや」
「素晴らしい文化は輸出すべきです」
一瞬和やかになりかけた空気が秒で張り詰めた。こちらが同情を向けたとて相手方からの歩み寄りの余地はないらしい。
「えーと、生態系とか考えないの? このままだとスギが侵略的外来種みたいな感じで悪者になるけどそこは良いワケ?」
「自然界は弱肉強食、強きが栄え弱きが滅びることに何の不思議があるのでしょうか」
「自然じゃなくて人為だし生物多様性って知ってる?」
そう、SDGsの目標14と15には水陸の生物の多様性としての豊かさがしっかりと明文掲げられてもいる。
「ですがその前の13は『気候変動に具体的な対策を』!順を追うならこちらを先に——」
何だろう、地の文に噛み付くのやめてもらって良いですか? このくだりもこの言い回しももう二度目だよ畜生め。
ちなみに色んな都合上割愛したけどここまでの会話の間も邪神様はきっちりと林業に勤しまれている。即ち、今こうしている間にも猟兵サイドには良心の呵責と大量のスギ花粉が襲い掛かるのだ。そも、多喜が邪神に同情してしまったところから敵の掌の上のことだと思えば何かの符合が行くか。
「ったく埒が明かねぇ!不本意だがもうこの力を使うしか……!」
「何を——!?」
多喜の手により宇宙カブJD-1725のガソリンタンクに残ったなけなしのガソリンが上空に振り撒かれ、半ば気化しながら降雨の様に降り注ぐ。辺り一帯は既に火の海、故に引火だの火に油だのという生易しい言葉では足りぬ、爆発としか言えぬ様相で一層火の手が苛烈さを増す。
【ヌwitter(イモニ・チャンネル・タキリュンウラアカ)】。ガソリンを降らせることにより、洗浄全体を【過激な発言の多いSNSに迂闊に発言した時】と同じ環境に変化させる恐るべき異能であった。
「何てことを!!」
「うわーこりゃあ大変だー(棒)」
最新式のスマホのカメラでこの煉獄の如き大惨事を高画質で撮りながら、棒読みで多喜は煽る。邪神が怒れば怒るほど、なんかチェーンソー振り回せば振り回すほどに良い絵が撮れるので強いて煽るのだ。
その画像を添えて【ヌwitter】に投稿する文面はこうである。
『【速報】自然保護を掲げる団体のせいで山火事発生!誰か助けて!狂ってる!』
何を隠そうタキリュンは裏アカですらフォロワー5桁のアルファヌイッタラーなのである。ちなみに|うっかり間違えて《・・・・・・・・》フォロワー6桁の表アカに投稿してしまったのでもう収拾がつけられない。この投稿は先程撒いたガソリン以上に火力抜群であり、もはや通知が止まらないどころかあまりに来すぎてディレイがひどい。見ないけど。誰かが通報したのであろう州だの連邦だのの消防だとか軍隊だとかのヘリが水を撒きに来るのはここから僅か数十分後のことだ。
「何ということをしてくれたのです。ですが私は、ただ林業に励むのみ——!」
炎上加減を自分のスマホで確かめながら邪神が歯噛みする。ヌwitterとかなさるんですね。だが、その炎上ぶりにも、周囲で物理で苛烈さを増してゆく炎にも尚邪神の姿勢は揺るがない。まぁ石像だし炎は平気だとかそういうところもあるかもしれないが。
「叩きたければ叩けば良い!消防や軍や野次馬が訪れようが、私は林業を続けます!その姿を目にすれば誰が本当の悪であるのか、誰の目にも明らかでしょう!」
臆さず、動じず、己の行動を変えることなく信念をただ貫く。何故なら炎はいつかは消えるのだ。それはSNSでの炎上下にて潔い謝罪以上の最適解ではないものの、次善策程度には位置づけられる選択肢、故に多喜のユーベルコードの威力を減じるかにも思われたが——
「この山火事はもちろん、確かに私たちのせいよ!」
突如、やたらと声量と威勢を誇るソプラノだ。振り向かずとも、邪神も多喜もその声の主を知っている。
「しかし……|否《ナイン》!その諸原因は、総てスギと貴方のシダーズがあまりにも『燃えやすかったせい!』」
邪神のPOWユーベルコード名由来の電波の悪夢からようやくすっかり立ち直ったアリスティア、仁王立ちにて自信満々の表情で言い放つ。
「何ですって!?冒涜にも程がある!!」
邪神が俄かに殺気立った。
彼女のスルースキルが低い訳ではない。だってこれヒトに置き換えるなら戦死した配下の兵士たちを指して「あいつらが弱かったせいだよ」とか言われてるようなものである。スルーするには理不尽すぎる暴論に邪神は打ち震え、チェーンソーのギアを上げた。ついでに何故か降り注ぐ花粉の密度と勢いが増した。どういう仕組みしてるんだろう。
「植林を目指すならば、まずは品種改良から始める事ね!」
「まだ言うか!!」
加護の様に花粉を纏いつチェーンソーで斬りかかる邪神、クラウ・ソラスで斬り結びながらアリスティアは満を持してその異能を解き放つ。
ミレナリオ・リフレクション。敵と寸分違わずに同じユーベルコードを放つユーベルコード。同じ威力で放てども、既に疲弊した邪神より、アリスティアが力で勝る。
故に、花粉が、逆行した。
「けほっ、けほっ……何ですかこの大気汚染は!?」
「貴方の信者が振り撒き続けて来た花粉よ!おかげで人形の私が花粉症になったんだから、言わせてもらうわ」
すぅ、と息を吸い込んで、一層花粉を降り注がせつつ。くしゃみをし始めた邪神に一喝。
「お前も花粉症にしてやろうかぁっ!!」
少し離れたところから撮影・投稿していたタキリュンのアカウントにて、このワンシーンは万バズをした。後に、一般人の記憶捜査とか情報封鎖に忙殺されたUDC組織からふたりはたっぷりとお叱りを受けることになるのだが、それはまぁ別のお話だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
じゃじゃじゃじゃーん!ここで参上美少女エルフルエリラちゃんだよ!
なんだ。燃えてるのはエルフの森じゃないのかー
さて、それはそうとダイスの女神さまの力によって生まれたかのような力を持った邪神がいるね?
ここは私もちょっかいかけようじゃないかー
さて、どう戦うかだけど…
こういう敵とはノリで戦う物だよ!
え?そんな適当で大丈夫か?
大丈夫大丈夫!ご近所さんから【それはまるでチートのような、とんでもない才能】だってよく言われるからね!
美少女エルフがかるーくおもてなししてあげよう
芋煮るか援護に徹するかガチバトルか全てはノリでどうにかなるのだー
●おーい邪神、芋煮しようぜ!
「じゃじゃじゃじゃーん!ここで参上美少女エルフルエリラちゃんだよ!」
元気よく登場したのは美少女エルフ……って紹介しようとする前にこの通り。自分で言った。ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)は確かにエルフであり美少女だ。その名乗りには偽りはない。
とは言え疲労困憊した上に今や花粉の逆襲によりくしゃみが止まらない邪神はそれどころではないらしく、ひたすらくしゃみをし続けるという賑やかなスルーを決め込んだ。他方ルエリラもルエリラで、名乗るだけ名乗ってはみたものの、くしゃみ以外の機能を喪失したかの様な石像よりも派手に燃えている森にあっさり瞳を奪われた。
それから胸を撫でおろした。
「なんだ。燃えてるのはエルフの森じゃないのかー」
露骨な安堵だ。エルフの森が燃えているなら同朋として助けねばならぬと使命感に駆られた節もあるのだが、どうやら違う。一安心。じゃあまぁ別に良いかなとでも言わんばかりの他人事感、いっそこのまま踵を返して帰還しそうなノリである。
とは言え、だ。エルフの森は悪しき者らに火をかけられて燃えるものだと相場が決まっているものの、この森も負けず劣らず実にウェルダンによく燃えている。森林火災と言うよりもガス田火災も斯くやの大火力、これを為した輩はさぞや邪悪極まりない存在であると思われた。まぁ猟兵って言うんですけど。
「ここまで来ると敵も気の毒―……おや?」
その「敵」を改めて見遣ったルエリラは首を傾げる。
何だか見覚えがある様な気がした。さながらダイスの女神様の力によって生まれたかの様なあの力——ってねぇ今何て? あの邪神、旅団の皆でダイス振って作ったとかそういう話?
ちなみに宿敵主様ご一行もとい芋煮艇の皆様もお見えになっているので纏めたかったんだけど字数の都合でリプレイは分けさせて頂きました、ごめんなさい。そして盛大にネタバレしたよね。ごめんなさい。
「何はともあれ、ここは私もちょっかいかけようじゃないかー」
ルエリア、あのまま帰りそうだったところをやる気を出してくれて何よりだ。邪神にとっては最悪で災厄でしかないのだが。
「美少女エルフがかるーくおもてなししてあげよう」
「生きて帰れると思わないことですね。貴方だけでもここで仕留めます」
ようやく口を開いたと思えばこの台詞、完全に吹っ切れて八つ当たりとか憂さ晴らしとかのベクトルに振り切っていそうな邪神がチェーンソーを駆動しながら距離を詰めて来る。途端に花粉が暴威を奮ってルエリラの良心が僅かに痛むような気がするあたり、もはやチェーンソー構えるだけで林業従事の判定が下っているのか何なのか、全くザルな判定をする酷いシナリオもあるものだ。完全にノリと勢いで襲い来る邪神を正眼に見据えてルエリアはしかし、凛と告げた。
「いけ!芋煮!」
「は?」
おもてなし、すなわち芋煮。謎の空間から、無数の芋煮が飛び出して来た。それもおもてなしの一環なのか何なのか無駄に派手な演出として縦横無尽に宙を翔けた後、熱々の中身が邪神に注いで動きを止める。
「なんてことを……!」
だがしかし。
炊き出しとかで使ってそうな使い捨て容器は環境に優しい竹パルプ製というエコフレンドリーな周到さ、これには邪神も文句は言えまい。
「フードロス反対!」
「あ、うん」
言った。単にカーボンオフのみならずこの邪神様、SDGs全般にうるさいらしい。何かもう色々と面倒なので通常版の芋煮ハンドグレネードを投げつけて追い芋煮をお見舞いしておくルエリアである。辺りに仄甘く濃厚な芋煮の香りが充満した。
「こんな美味しそうな芋煮を……勿体ないことを……!」
芋煮に塗れた身体でチェーンソーを引き摺りながら歯噛みする邪神様、何と言うか歪みない。その恨み言を他所にしてルエリアは邪神の向こう、見知った顔を見つけて気を取られていた。
——宿命に終焉を穿つべく訪れたのは果たして誰なのか。
次回、邪神死す!デュエルスタンバイ!
大成功
🔵🔵🔵
ヴィヴ・クロックロック
【焼き芋】で参加
まず初めに行っておくことがある!!お前はなんか邪教的な集団が頭のおかしい儀式で生みだした悲しい怪物だ!元ネタなんてない…神になってるおめでとう!!
なんか宿敵的なアラートがなってると思ったらなにコイツこわ…
わけの分からない事態にわけの分からないオブリビオン…なら私は相手が理解できそうにないUC【麻呂】を使う…!
本体の動きを止めつつ【仙術】と【道術】を使い炎とスギ花粉の動きを制御、抑制。いい感じに戦えるように。良心…?すでに燃えた里山のどこに傷める要素が…?
そして隙を見てダイナマイトをぶち込んで石を体を砕く
あとはなんかみんなと連携していい感じに!
しかし硬いな誰だコレ作ったのは…
(アドリブ連携歓迎です)
試作機・庚
【焼き芋】で参加
それ以外の方とも連携など歓迎
なんか見たことあるやつがいるな…と思ったら『森の守り手ミドリーノMK-2『鉢斧呂』』実在していたのか…
上様の側室になれなかったがゆえに林業に精を出しているとは聞いていたが…(とかそういう背景を考えてとかそういうことは特にない。ゾロ目で決まったやつである)
ところで杉以外にもヒノキとかにも手を出さないデス?
出さない?そう…
じゃあ花粉症被害を減らすためにも倒さないとデスね
特に古くなった杉は花粉を出すので木材にしないとデスよ
えっ?林業は専門だから知ってる?ならどうして…
戦闘は普通に身体能力でカバーするデスよ
多分真面目なのは他がやってくれるデスし(なげやり)
あっオチはいつものデス
そのためにWIZじゃなくてPOW持ってきたんデスから
ん…?POWって…まあいいか…
じゃあみんな例のセリフよろしくデスね(私は離脱)
アドリブ改変歓迎デスよー
フォー・トラン
【焼き芋】で参加。誰とでも連携歓迎。
目がかゆい!
涙で化粧が落ちる!
仮にも森の守り手である存在を手にかけるのは精霊術士として良心の呵責を感じる!
それはそうと鉢斧呂って何? 麻呂って何? えっ元ネタないの?
信じられないものを見るような目をしつつ、味方に向けて「電撃」を放ちます。
涙とくしゃみで狙いを誤ったわけでも味方をやっちまおうとしたわけでもありません。
実はあたしの「電撃」は相手を強化することもできるのです。
とりわけヴィヴさんは重点的に充電しときましょう。
だって言うじゃないですか。
自分で蒔いた種は自分で刈り取れって。
それに他人にやらせる分には良心の呵責もいくらか軽減できそうですからね。
くしゅん!
●今明かされる邪神の真実
スギ花粉とエコの精神に満ち満ちた平和な里山が煉獄が如き火の海にクラスチェンジしてどれだけ経つか、この今、この地に降り立つ猟兵が三人。チーム『焼き芋』、旅団・芋煮艇の面々である。芋を焼くには少々火力が強すぎる気がしないでもないが、それはさておき。
オブリビオンと猟兵、それは元来相容れることのない存在である。
その中でも特に因縁の深いもの、宿命に定められた不倶戴天の存在。それがいわゆる宿敵である。
「貴方は――……!」
故に、誰が告げずとも、本能で何かを察したのであろう。ヴィヴ・クロックロック(世界を救う音(仮)・f04080)の姿を目にするや、邪神は雷に打たれたかの様に凍てついた。
書き手も凍ってますけどね。色々と申し訳ございません。
「『森の守り手ミドリーノMK-2『鉢斧呂』』実在していたのか……」
試作機・庚(|盾いらず《フォートレス》・f30104)がしみじみと呟いた。
「な、何故私のことを知って……?」
「まず初めに言っておくことがある!!」
ヴィヴは毅然と邪神に言い放つ。固唾を飲んで耳を傾ける邪神へと、今、告げられる衝撃の事実。
「お前はなんか邪教的な集団が頭のおかしい儀式で生みだした悲しい怪物だ!元ネタなんてない……」
「鉢斧呂って……えっ元ネタないの?」
化粧を落とさぬように気を付けながら痒い目を擦るのに忙しかった、自称国際針葉樹連盟広報担当もといフォー・トラン(精霊術士・f12608)が素で聞き返した。ナイスな問いだ、強いて重ねたい。ねぇ元ネタないの? 本当に?
だって、お客様が考えた非公開設定と言うやつは以下。
『こう見えて動く石像、地方林業業者から感謝される地方巡業の鬼
こいつが関わった里山は完璧な整備がされる
趣味は爪楊枝製作とコスプレ
上様に惚れているが落選した
ギシギシと音がするとたまに間違って人を切り倒す』
文字数上限100文字で、数日煮込んだ特製の豚骨スープをひたすらに煮詰めてみましたくらいのこの濃さと癖の強さである。元ネタの存在を勘繰りたくもなってしまうのが人のサガだよね。
「上様の側室になれなかったがゆえに林業に精を出しているとは聞いていたが……(とかそういう背景を考えてとかそういうことは特にない。ゾロ目で決まったやつである)」
いかにも訳知り顔で庚が説明してくれたが、添えたカッコ書きの中身がエグい。先ほど別の猟兵がダイスの女神様がどうのと言っていたことと合わせて、この邪神、本当にダイスで生まれたってこと? どんなダイス表使ったらこれが爆誕するんだろうか。ちなみに趣味が爪楊枝製作とコスプレと言う設定あたり、最早一切登場をさせられてなくて申し訳ない。だって濃すぎる。
「そ、そんな……」
したたかにショックを受けた様子で邪神が呟く。若干わなわなとその石造りの身が震えているように思われた。無理もなかろう。心の準備皆無で唐突に突きつけられたあまりにも衝撃的な己のオリジン、これならいっそ親から「お前は橋の下で拾って来た子だよ」とか言われた方が百倍くらいマシではないか。よく考えたらこの邪神、ものすごく不遇な属性かも知れない。初採用がこんな依頼でしかもいきなり宿敵主のご登場、幸運度のステータスは限りなく低そうだ。
ここであることに気付いたヴィヴ、パチンと指を鳴らし、快哉。
「って言うか神になってるおめでとう!!」
そう言えば、『森の守り手ミドリーノMK-2『鉢斧呂』』、森の守り手かミドリーノかMK-2か鉢斧呂かどう称すべきか悩んだ結果、表記は邪神で統一させて頂いております。
「嬉しくありません!やれダイスだのゾロ目だの名前が解りにくいから邪神呼びだの、私のアイデンティティの危機でしかありません!絶対に許さない顔も見たくない!」
「なにコイツこわ……」
激昂してチェーンソーを振り回す邪神、何処からかギシギシと音がしたのでおそらく「間違って」人間を切り倒すつもりであるに違いない。ドン引きしながら回避したヴィヴの前髪の先をチェーンソーが掠めて行った。
「わけの分からない事態にわけの分からないオブリビオン……なら私は相手が理解できそうにないUC【麻呂】を使う……!」
「麻呂って何?」
突っ込むフォーは相変わらず目が痒くて仕方ないが、涙で化粧が落ちようが元が可愛いので問題はない。
そんな彼女のために説明しよう。麻呂(ヒザノセイ)は【しお又は眼鏡】から【拡散式麻呂ビーム】を放ち、【あの頃のやんごとなき雰囲気の威光】により対象の動きを一時的に封じるWIZユーベルコードである。
「麻呂って何?」
アゲイン。ですよね。
読み手に書き手に登場人物、おそらく誰も正しく理解出来ない三方悪しとでも言いたくなっちゃうこのUC、どうしようかね。無茶ぶりされた生成AIこんな気持ちになるんだろうか、 どう解釈して描写したらみたいな? ともあれ、拡散式麻呂ビームは邪神を貫いた。拡散式なので貫いたと言うよりは包み込んだと言う方が宜しいか。結果、あの頃のやんごとなき雰囲気の威光が辺りに満ちる。誰ぞの構文的に言うならば、あの頃のやんごとなき雰囲気の威光が辺りに満ちたということは、あの頃のやんごとなき雰囲気の威光が充満しているということです。
はて、邪神の動きが封じられたのはやんごとなさに気圧されたのか、色々と呆れ果てたからなのか、キャパオーバーをしたからなのかは解らない。
「どうして私の邪魔をするのです!気候変動問題に取り組むことはきっとセクシーでしょう!」
「なにコイツこわ……」
動けぬままに絞り出した邪神の叫びはもはや気候行動サミットの参加者気取りだ。とっても怖い。実在の人物とは関係ありません。
「はっ……援護しますね」
色々と危機感を覚えたフォーが我に返って雷撃を放つ。しっかりと魔力を練り上げた高圧の一撃は、可憐なくしゃみと同時にその手より放たれ、過たずヴィヴを直撃した。ついでにやや距離を置いていた庚も若干被弾した。
「手元が狂った訳ではありません!」
「OK、故意だな? 覚えてろよ」
「まったく良い度胸デスね」
「違います!やっちまおうとしたわけでもありません!」
フォーの雷撃は命中した対象を治癒し強化するものである。精霊術士としては、仮にも森の守り手を名乗る存在を手にかけるのは憚られた。故にヴィヴには重ねて特大の雷撃をくれてやった次第だ。
「つまり私たちに手を汚させようってことか」
「庚さんはともかくヴィヴさんは自分の撒いた種でしょう」
「撒いてないよ。ダイス投げただけだよ」
「自分で刈り取ってください」
「撒いてないってば」
色々押し付け合う二人を未だに動けないままの邪神が死んだ目で見ていた。
「貴方たち、美しい里山を燃やした上にその罪をなすり付け合うなんて、良心は痛まないのですか?」
咎める様なこの言い回し、良心に訴えかけようとするものか。どうやら邪神、林業も出来てないくせにWIZユーベルコードを発動させようとしているらしい。大概な厚かましさである。が。
「すでに燃えた里山のどこに何が痛むって……?」
「ド腐れ外道!!」
当然の様に不発だった。南無三。ヴィヴの言葉と同時、脳天を直撃した三節棍に邪神は罵倒だか絶叫だかをしながら膝を折る。ヴィヴ・クロックロック、冷めた目でそれを見下ろして曰く。
「しかし硬いな、誰だコレ作ったのは……」
貴方です。
「まぁまぁ……」
庚が見かねた様に、宥める様に割って入った。曲りなりにもこの邪神の誕生とルーツを知る身としては、尚且つ「実は人がいい」属性としては、ヴィヴほどにはドライにも非情にも邪神の言うところのド腐れ外道にもなり切れないのかもしれない。
「人と自然が調和した里山を作る構想は悪くないと思うデス。やり方の問題で……スギ以外にもヒノキとかにも手を出さないデス?」
「出さないデス」
「あ、そう……」
地味に口調を真似て来た邪神とその回答にちょっと露骨に白けた感じの庚である。この邪神煽りスキル高くない?
「じゃあ花粉症被害を減らすためにも倒さないとデスね」
「ヒノキ植えてても倒すけどね。なんか宿敵的なアラートうるさいし」
「あの、ヴィヴ、なんか一応大義名分は大切だと思うんデスけど」
そうは言いながらこの会話、正体不明のユーベルコード『麻呂』により未だ動けない邪神に対して至近で双銃連射したり棍を振り下ろしたりしながらのものである。大義名分って何? 大義も正義ももはや不在の蹂躙戦だかリンチだか、それでも持ち堪えている邪神の硬さは流石石像と言うべきか。しかし、庚はなんとかぎりぎりで対話の試みを諦めない。
「何にしても、古くなったスギは花粉を出すので木材にしないとデスよ」
「花粉のことくらい知っています。私は森林科学を専攻して修士号まで取得していますので」
「ならどうして……」
同じ言語を操って同じ常識を備えていながら、会話は出来ても対話が不能。これに勝る絶望がこの世にあろうか、いいや、ない。
「収集つなかくなってきたデスし、いつもの行くデスよ」
宣言すると同時、ようやく動ける様になった邪神が放ったふわふわのぬいぐるみによる一撃で昏倒する庚。やたら痛がって転げまわる何処ぞのサッカー選手の過剰演技も斯くやのこのヤラセ感、殴った邪神の方がいっそ拍子抜けする有様だ。
「じゃあみんな例のセリフよろしくデスね」
戦闘不能となりつつも予め確認しておいた退路にて安全な場所へと離脱しながら庚が告げる。
「いつもの」、一見ただの軽いノリの一言の様でいて破滅的な威力のUC名「|いつもの《グランド・フィナーレ》」であるとヴィヴとフォーは知っている。
「あ、例のセリフ書き忘れた」
「あたしも……くしゅん!」
拡散式麻呂ビームの残光の中でリンチの最中に仕込んでおいたダイナマイトを起爆させていたヴィヴと、そんなヴィヴに充電もとい雷撃を追加でお見舞いしていたフォー、二人とも踵を返して一目散にその場を後にする。
もはや敗北の、手遅れの気配を察したらしい邪神が捨て台詞とばかりに叫ぶ。
「里山は滅びぬ!何度でもよみgあべし」
直後、大火災の渦中の山林ごと、戦場全ては破壊し尽くされた。
せいぜい7時間程度のくせをして後に火の七日間とか呼ばれたらしいこの大火、ヌwitterに流出してしまった動画と共に、環境保護の反面教師として語り継がれることになったとかならなかったとか……とりあえず、理不尽にも猟兵たちが一人残らずUDC組織からこっぴどくお叱りを受けたことだけが真実だ。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2024年08月27日
宿敵
『森の守り手ミドリーノMK-2『鉢斧呂』』
を撃破!
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