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Plamotion Summer Training☆

#アスリートアース #ノベル #猟兵達の夏休み2024 #プラクト #五月雨模型店

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ニィナ・アンエノン




●君が思い描き、君が作って、君が戦う
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』。
 それはプラスチックホビーを作り上げ、自身の動きをトレースさせ、時に内部に再現されたコンソールを操作して競うホビースポーツである。
 思い描いた理想の形を作り上げるというのならば、たしかに『プラクト』は心・技・体を兼ね備えたスポーツ。

 プラスチックホビーを作り上げ、フィールドに投入し自分自身で動かす。
 想像を育む心、想像を形にする技術と、想像を動かす体。
 そのいずれもが欠けてはならない。どれか一つでも欠けたのならば、きっと勝利は得られない。

 ――とまあ、そんな前置きは良いとして。

 その『プラクト』の第二回世界大会『ワールド・ビルディング・カップ』を制したチーム『五月雨模型店』のメンバーたちは忙しない夏休みを送っていた。
 それもそのはずである。
 彼らは小学生という年齢ながら並み居る世界代表チームを下して優勝したのだ。
 となれば、当然彼らの生い立ちであったり、非公式競技であるがゆえの掘り下げや普及にと一役買わねばならないのはある意味で有名税のようなものであったことだろう。
 だが、問題はそこではない。
 世界大会後、こうした多くの雑務をテキパキとこなせるチームメンバー『ツヴァイ』が行方不明になっているのだ。
 いや、行方不明というのはちょっと大げさな言い方かもしれない。
 連絡が取れなくなっているのだ。
 故に、チームメンバーたちは、それぞれができることを、とそれはもう大変な思いをしているのだ。
『アイン』と呼ばれる少女はサイン入りプラスチックホビーの組み立てに追われていたし、『フィーア』はよくダークリーガーとの戦いで手伝いに来ていた猟兵と共にキャンプに向かっている。

 じゃあ『ドライ』少年は、というと……。
「夏はやっぱり合宿だよね☆」
 ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)と共に『プラクト』夏合宿にやってきていた。
 いや、ニィナが着いてきたというか、彼女に連れられてきた、というか。
 どっちが正しいのだろうか。
 他のメンバーたちは各々予定があったりいそがしかったり、というのは前述した通り。
 即ち、これは二人っきりなのである。
 少年は思った。
 本当にこれは大丈夫なやつなのだろうか、と。
「合宿……いや、どう考えてもキャンプ場では!?」
『ドライ』の言葉にニィナは、チッチッチ、と指を振って笑む。
 ニィナの行動全てがなんていうか魅力的に思えてならない。それくらいニィナは美少女なのである。
 なにせ、彼女はプラスチックホビーのメーカーとコラボレーションしたこともあるアイドル的な存在なのだ。
 人懐っこい笑顔は花が咲くようであるし、トークは軽快そのもの。フットワークは軽くて、ファンにも分け隔てなくファンサービスをしてくれる。
 そんなものだから、彼女とコラボしたメーカーの美少女プラモデルは飛ぶように売れてスマッシュヒットを打ち出している。
「違うよ、『ドライ』君☆ 此処はコテージって言う所。うん、でもまあ、広く言ったらキャンプ場だけどね☆」
 細かいけど違うんだよ、とニィナがコツン、と『ドライ』の額を小突く。

「こんな立派な場所をよく確保できたな、ニィナお姉さん!? そっちのほうが俺は驚きなんだけれど!?」
「えー? スマホでパパッと予約しただけだよ☆」
 かんたーん、とニィナは胸を張る。
 確かにコテージであれば『プラクト』の要であるプラスチックホビーを組み上げるには適した場所であると言えるだろう。
 キャンプ場でプラスチックホビーを組み立てる、というのはできないことはないし、やったこともある。
 けれど、やはりコテージのような電源や机、そうした設備が整っている場所の方が適していると言えるだろう。
「さ、行こ行こ☆」
「あっ、ちょ、待って……!」
「早く早くぅ☆」
 ニィナは『ドライ』の手を引いてコテージに駆け出す。
 彼女に引っ張られるようにしてコテージに入れば、そこは檜の香る内装だった。
 備え付けられているキッチンでは調理もできるし、リビングにはソファとテレビもある。二階は寝室になっているのだろう。階段の向こうに部屋が並んでいるのだ。

「けっこーいいね☆ 奮発した甲斐があったね☆」
「みんなも来れたらよかったのにな! ……ん? ニィナお姉さん、ちょっと待ってくれ! 奮発?! 俺は少しもお金を……むぐっ」
「だーめ☆ こういうのは、にぃなちゃんにお任せなんだよ☆」
 口を塞がれた『ドライ』が少しバツの悪そうな顔をする。
 気恥ずかしいのかもしれない。
 今日此処に夏合宿にやってきたのは自分だけだ。となれば、本来のメンバーの数を考えてニィナがコテージを用意してくれたのは言うまでもない。
 となれば、利用料金はそれなりのはず。
 けれど、ニィナは気にするなという。気にするなというのが無理な話なのは言うまでもない。
「でもだな!」
「うーん……じゃあ、夏合宿中は、にぃなちゃんにずーっと構うこと☆『ドライ』くんが気にするっていうなら、それでチャラにしちゃお☆」
「えぇっ!?」
 それはそれで大変な気がする。
 そうでなくてもニィナは猟兵たちが『プラクト』におけるダークリーガー事件の折から『ドライ』と特訓をしたり、ペアをくんで戦ったりと接点が多い。
 嫌なわけではない。
 むしろ、光栄なことである。

 けれども、ニィナは見ての通り美少女である。
 アイドルと言っても差し支えのない女性であり、『ドライ』からすれば高嶺の花のお姉さんなのだ。
 どうしてか自分のことを気に入ってくれている。
 嬉しくないかと言われたら嬉しいに決まっている。
「だめ?」
 ニィナが小首をかしげている。
 じぃ、と見つめる緑色の瞳を見れば『ドライ』はもう降参するしかなかった。
「……わかった! 俺も男だ! 約束はきっちり果たす! それがニィナお姉さんの規模うなら!」
「わぁい☆ じゃあ、早速かまってかまって~☆」
「うわぁっ!? 急に抱きつかないでくれ!?」
 顔を真赤にしてニィナの早速スキンシップに『ドライ』は圧されっぱなしである。
 とんでもないことである。

 ぎゅうぎゅうと抱きつかれながらも、なんとかちゃんと合宿をしなければ、と『ドライ』はニィナを抱きとめてから真っ赤な顔のまま頭を振る。
「ニィナ、お姉さん、その、ちゃんと合宿を」
「わかってるよ☆ じゃあ、まずはコテージのお庭で自然環境一体型のフィールドを体験しよ☆」
「そんなものがあるのか?」
「うん、メーカーさんからどこでも『プラクト』勝負ができる『ポータブルフィールド』の試供品のフィードバックも頼まれてたんだよね☆」
 その言葉に『ドライ』はなんだ、しっかりとした理由があったのだと胸をなでおろす。
 ちょっと胸が、ジクとしたがよくわからない感覚だった。

「じゃあ、まずはそれからだな!」
「『ドライ』君には負けないぞ~☆」
「望む所!」
 ぽい、とカプセルみたいなものをニィナは庭に投げる。
 するとカプゼルが展開し、六角形の形をしたフィールドがまるで折り紙を開くようにして展開していくのだ。
「これが……『ポータブルフィールド』……! すごいな! これなら本当にどこでも……! しかも、草原フィールド! これって!」
「展開した場所の特徴を再現してるんだね☆」
「すごいな! 本当にすごい! すごい!」
 年相応にはしゃぐ『ドライ』にニィナは微笑むだろう。
 なんだかんだ言っても、やっぱりこういうところが『ドライ』の良いところだ。

「じゃあ、軽く一戦行ってみよ~☆『レッツ』――」
「――『アクト』!」
 その掛け声と共にフィールドに投入されるのは二人のプラスチックホビー。
『ドライ』は彼が世界大会でも使っていた『セラフィム』型である。
 青と赤のカラーリングは塗り直されて黄色を主体するものになっていた。本来の彼の機体カラーリングなのだ。
 対するニィナは……。
「……!? ニィナお姉さん!?」
「そうだよ☆ ほらほら、どう?」
 フィールドの中に立っているのは、メーカーコラボの美少女プラモデル『ニィナ』である。
 彼女のプロポーションを参考にした大ヒット商品である。
 あまりにも売れたものだから、バージョン違いも発売される運びにもなったことは、言うまでもない。

 そんな彼女のプラスチックホビーは正しく夏に相応しい水着姿であった。
 紺色を主体として白とピンクの差し色。
 サンバイザーを被ったニィナそっくりの美少女プラモデルは、彼女の動きを追従するように、よく知る彼女を再現していたのだ。
「……いつ見ても凄い再現度、いや、完成度だな!」
「もう、『ドライ』君のえっち☆ そんなにジッと見たらダメなんだぞ☆」
「ちがっ、いや、クオリティの話を……!」
「隙ありだよね☆」
 水鉄砲型の武装から放たれた水の弾丸が『ドライ』の『セラフィム』へと叩き込まれる。
 完全なる不意打ちだった。

「やったな!」
「ふふん☆ まだまだにぃなちゃんには追いつけないね? これ、勝ったほうが負けた方に何でも好きな、めーれーできることにしよ☆」
「言ったな! 負けないぞ!」
 フィールドの中で行われる駆け引き。
 二人の『プラクト』におけるプラスチックホビーの動作、その実力は伯仲していた。
 互いの攻撃の隙を見破り、攻勢に展示、また盛り返す。
 互いが互いのクセをよく知っているからこそできる、まるでエキシビションマッチのような高度な戦い。
 これが何処にも配信されていないのが惜しいと思われるほどの名勝負を繰り広げ、そして……。
「そこだ!」
『ドライ』の『セラフィム』が構えたスナイパーライフルの一撃が『ニィナ』にぶつかり、その体がフィールドに落ちる。
 胸部の奥にあるユーベルコード発生装置に衝撃が走り、システムがダウンしたことで『ドライ』の勝利が確定したことを告げるアナウンスが響き渡る。

「あ~あ、負けちゃった☆」
「やった! まだまだニィナお姉さんには師匠面できるな!」
「もう、いつまでも大きな顔はさせないぞ☆」
 そんなふうに子供らしく二人はその後も『プラクト』勝負を続ける。もうすっかり昼を過ぎてしまって、お腹が、くぅ、と可愛らしく鳴くので二人は我に返って笑いあった。

「お腹空いたね☆ 何か食べよっか!」
「ああ、良い試合だった。本当に!」
「ねー。バーベキューの食材も持ってきたから手伝ってくれる?」
 ニィナは『ドライ』に勝って、そう『めーれー』するつもりだったのだろう。けれど、『ドライ』は笑顔で頷く。
 もう『めーれー』のことは忘れてしまっているのかもしれない。
「任せておいてくれ! 火を起こすのは得意なんだ!」
「じゃあ、早速やろー!」
 そんなふうにして二人だけの夏合宿は楽しく過ぎていく――。

●肝試しは定番なので
 バーベキューを終えて、片付けまで終えたニィナと『ドライ』は、もうすっかり日が落ちて夜になっていることに気がつく。
 楽しい時間というのは本当にあっという間に過ぎていくものだ。
 なんだか日が落ちると、もう今日はおしまい、という気分にさせられてしまう。
 だが、それも普段ならばの話だ。
 そう、今日から二泊三日の夏合宿!
 普段ならば咎められるような夜ふかしも許される! いや、許されるというか咎めるものがいない、というのが正しいだろう。
「ねえねえ『ドライ』くん☆」
「ん? 何? ニィナお姉さん」
 食器を共に片付けていたニィナが『ドライ』の肩をちょんちょんと叩く。
 エプロンを取ったニィナはなんだかいたずらっぽい顔をしている。
 あ、これは絶対良からぬことを考えているときの顔だと『ドライ』は直感した。

「……良いことしよっか♡」
「絶対ろくでもないことだな!」
「本当だってば☆ 肝試し、しよ☆」
 ニィナはにっこり笑っている。
 肝試し。
 言うまでもないことであるが、肝を試すイベントである。身も蓋もない。
 夏の定番と言えば定番である。
 ある種、こういう機会でなければやることもないイベントであるとも言えた。
「近くの森の奥にね、社があるんだって☆ そこまで行って帰って来るだけ☆ ね? いいでしょ~☆ ね~ね~☆」
 ぐいぐいと『ドライ』の腕を引っ張るニィナ。
 色々当たっていることに顔を真赤にしながら『ドライ』は、あ、とか、え、とかなんとか行っていたが、なんだかんだズルズルと流されてしまうのだ。
 そうして、二人だけの肝試しが始まる。のだが。

「……確かに肝試しって言ったけど! なんで水着!?」
「えー?だって暑いんだもん! 今日は熱帯夜って言ってたし☆」
 そう、今の彼女は水着姿である。
 美少女プラモデルの時のようなスポーティな印象を与えるものではなく、白のビキニスタイルだ。
 布面積が大変少なく、なんだか薄っすら肌の色が透けて見えるような気がするのは『ドライ』の邪心故か。
 腰に下げられたホルスターには、護身用なのか水鉄砲が備わっている。
 いや、なんで護身用に水鉄砲?
 もっとこうあるでしょ、と思わないでもなかった。
 だが、ニィナはまるで気にしていない。
「暑い暑いから~☆ ね?」
「……虫刺されに気をつけような!」
「あん☆」
「虫よけスプレー振っただけなんだけど!?」
「いきなりだったから☆」
『ドライ』はやり返したつもりだったが、なんともニィナの掌の上で転がされているような気がしないでもない。

 とは言え、ビビってはいられない。
 自分は男の子! ニィナを前にして情けない姿は見せられない!
 そう張り切って、いや、気合を入れて『ドライ』は肝試しの森へとニィナと共に向かうのだが、そこからは試練の連続であった。
「ひゃあ~☆ あれなに? なんかカサカサ~って!」
 ぎゅう。
「ひゃん! 風が冷たいね、びっくりしちゃった♡」
 むにゅ。
「あ、あれかな、お社☆ わっ、思ったより立派ぁ♡」
 べたべた。

 そう、ニィナはわざとらしかった。
 怖がるにしても今じゃないでしょっていうタイミングで『ドライ』にくっつき、声を上げるのだ。
 少年『ドライ』は終始、顔を真っ赤にしていた。
 むしろ、幽霊が怖いとか、真っ暗闇が怖いとか、まるで考えられなかった。
 怖いのは、むしろニィナである。
「今なら『まんじゅうこわい』よりも『ニィナお姉さんこわい』になりそうだ!」
「え~もっと♡ ってこと?」
「違うよ!?」
 いや、『まんじゅうこわい』なら、それであってるが、今の『ドライ』はニィナのスキンシップと近すぎる距離感に困惑しきりなのだ。
 なんという幸運であろうか。
 ニィナのファンが見たら血涙を流しているだろうし、そこを変われ! と叫んでいることだろう。幸いなことにというか、不幸なことに、というか、そうしたものたちは此処にいない。

 くたくたになりながら『ドライ』は肝試しを終えてニィナと共にコテージに戻って来る。
 変に汗をかいてしまった。
「暑かったね~☆ シャワー浴びなきゃ☆」
「本当だ……シャツがべったりしている……」
「一緒に入ろっか♡」
「ぶふっ!? な、ななななっ!?」
 あまりにも大胆な発言に『ドライ』が慌てふためく。
 びっくりしすぎてやかましいくらいだ。
 ニィナのいたずらっぽい顔がニンマリと笑顔を作る。
「だって~『ドライ』くん、今日一日は、にぃなちゃんと一緒にいてくれるんでしょ? なら、シャワーも一緒じゃなきゃ♡」
「構うってだけだったはずだけれど!?」
「そうだっけ☆」
 まあ、いいじゃんね、とニィナは『ドライ』を強引に引っ張ってシャワー室に連行してしまう。
 水着を着ているから安心と言わんばかりに、これまたシャワー室で『ドライ』は大変な目にあうのだ――!

●おやすみもいっしょに
「はぁ……はぁ……」
 とんでもない目にあってしまった、と『ドライ』はぐったりしていた。
 シャワーを浴びて、リビングのソファに寝そべっている。
 何故ぐったりしているのかは、まあ、その、言うまでもないことである。
 年上のお姉さんであるニィナに振り回されっぱなしであったからだ。でも、それが嫌なわけではない。
 彼女と過ごすのはとても楽しい。
 最初は『プラクト』の操作の習熟、その特訓のためだった。
 彼女が用意したプラスチックホビーと自分が元々使っていたプラスチックホビーが似通った頭身だったことがきっかけだ。
 そこから徹夜で特訓をしたり、と彼女の生来の明るさや人懐っこさでどんどん仲良くなっていったように思える。

 だからこそ、『ドライ』はニィナのスキンシップがあると疲弊してしまうのだ。
 心臓が保たないのである。
「『ドライ』君☆」
「わぁっ!?」
 首筋にピタッとくっつけられるチューブ型氷菓の片割れ。
 はい、と手渡されるそれを受け取って『ドライ』は身を起こす。
「もっと普通に!」
「ごめんごめん☆ でも、きもちーかったでしょ?」
「それは、そうだけど……」
 にこっと微笑むニィナの瞳がトロンとしているのは、夜も更けてきたからだろう。
 流石に朝からはしゃぎ倒し過ぎたはずだ。
 ずーっとニィナはテンションが高かったように思える。
 それが夏合宿だからなのかはわからない。でも、同時に一緒に過ごしているからだったら嬉しいな、と『ドライ』は思うのだ。

 チューブ型氷菓を吸うニィナの唇を、ぼうっと見てしまう。
 子供っぽい性格性質を持つニィナだけれど、やっぱり年上の女性なのだな、と『ドライ』は年齢の差というものを実感してしまうのだ。
「おいしーね☆ アイス☆ やっぱりチョココーヒーフレーバーが至高だと思うんだよね☆」
「……うむ」
「……『ドライ』君、おねむ?」
「……う、ん」
『ドライ』も一日楽しんでいた。
 子供の体力とは言え、ニィナにつきっきりであれば多く体力を消耗したのだろう。シャワーで一気に疲れが溶けてでてきたのかも知れない。
 そんな『ドライ』の様子を見てニィナは笑む。
 いつもなら見れない姿だったからだ。

「寝ちゃう?」
「……明日も、ある、から」
「そだね☆ 明日も一緒にいてね☆ かまってね☆」
 約束だから、とニィナがふわふわ眠気に襲われている『ドライ』の小指をとって、指切りげんまんと約束を交わす。
 彼にとっては寝ぼけ眼での前後不覚の約束。
 それでもきっと『ドライ』はノーカウントにしないだろう。 
 そういう少年なのだ。

 ふふ、とニィナは笑む。
「……おやすみ、『ドライ』君☆」
 ニィナは彼の体を抱えると二階の寝室へと運ぶ。
 明日も、という約束をしたのだ。きっと明日だって楽しい一日になるに違いない。
 だから。
「今夜は寝かさないぞ♡『ドライ』君♡」
 むぎゅ、と『ドライ』の鼻がつままれる。
「――!?!? えっ、ぶはっ、なん……」
「夜はまだまだこれからなんだぞ☆ 1日中っていったら、明日の朝までに決まってるんだからね☆」
「え、ええええっ!?」
 強制的に目覚めさせられた『ドライ』の素っ頓狂な声が響き渡る。
 でも、ニィナは楽しげに笑うばかりだ。
 そう、今日という一日を終わらせるにはまだ勿体ない。

 夏合宿の今日という日は今日しかないのだ。
 毎日がかけがえのない一日。
 毎日が特別。
 なら、寝ている暇なんてないとニィナは、夏合宿一日目を『ドライ』と共に夜を徹して楽しみ続ける。
「だって勿体ないんだもん♡」
「可愛く言ってもダメだ!」
「だーめ♡」
 今の彼女を止めることができるのは勝負に勝った特権の『めーれー』だけ。
 だが、悲しいかな。
『ドライ』少年は、そのことをすっかり忘れていた。
「せっかく逃げ道を遺しておいてあげたのにね♡」
「え、なんて?」
「こっちの話☆ さ、一緒に楽しも――!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年08月11日


挿絵イラスト