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それゆけアザラシ幼稚園

#獣人戦線 #戦後 #幻朧帝国 #【Q】 #ヨーロッパ戦線 #アザラシ

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●ほのぼの日和を守れ!
 街中に水路が敷かれた、まるで水浸しになったような都市。
 その一角。四角いプールにて、アザラシの子どもたちが泳ぎ回っていた。
 ここはアザラシ幼稚園。復興作業に勤しむアザラシたちに代わり、子どもを見守る場所だ。
「ちょっと! 泳ぐの速いよ!」
「お前が遅いんだよ! ほらっ、これやってみな!」
「うわ~っ! あんなに深く潜れてすごーい!」
 みんな階梯は0から2。身体の大きさはそれほど変わらず、ぷかぷかと水面に浮かんでいる。
 追いかけっこをしたり集まってお喋りしたり、プールにあるボールや浮き輪を投げ合ったり……。無邪気な笑い声がそこら中から聞こえてくる。この間まで戦乱に振り回されていた世界とは思えないほどに平和な光景だ。
「……ったく、ガキは元気でいいねぇ」
 プールを囲む柵に止まり、白い鳥が子どもたちを眺める。
 この幼稚園を管理しているサギの園長だ。
 園長といっても主な仕事は子どもの見守り。それと、子どもの遊び相手になってやること。
「えんちょー! いっしょに遊ぼうよー!」
「うるせぇ! 俺は忙しいんだよ!」
「いつもそこで見てるだけでしょ? だったらいいじゃん!」
「えっ!? えんちょー遊んでくれるの!?」
「そんなこと一言も言ってねぇ!」
 わいわいと子どもたちが集まってくる。遊ぶ約束は半ば決定事項となり、たじたじになってサギ園長はプールの上を飛び回った。

 平和な平和なアザラシ幼稚園。
 しかし、そこに魔の手が忍び寄る。
「随分と平和ボケした街ですねぇ……実験には、ちょうどいいでしょう」
 軍服の襟を正すと同時に、彼はアタッシュケースを握り締める。
 ケースの中には街を異形の都市に変える、禍々しい爆弾が入っていた。

●グリモアベース
 開口一番、ヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)は大声で言い放つ。
「今回のみんなのお仕事は、アザラシ幼稚園で子どもたちのお世話をすることです!」
 どういうことだ。
 疑問符を浮かべる猟兵たちに、ヴァンダは説明を足していく。
 オランダ、海辺の都市。アザラシたちが暮らす街が今度の冒険の舞台となる。
「みんな、幻朧帝国は覚えてる? そこの兵士さんが街に爆弾を仕掛けようとしてるんだ」
 影朧兵器『逢魔弾道弾』——爆破すると街すべてを「逢魔が辻」に変化させ、オブリビオンで溢れる異形の都にしてしまう。
 この爆弾が仕掛けられる前に街へ乗り込み、住人と協力体制を構築、罠を設置してこれを迎え撃つのが今回の作戦だ。
 であればなおさら、なぜ子どもの世話という経緯に?
「それなんだけどー……爆弾を設置できそうな街の中心部にあるのがアザラシ幼稚園なんだよ。ここで爆発させたら間違いなく被害最大! ヴァンちゃんも予知でちらっと見ましたし」
 というわけで、待ち構えるにはアザラシ幼稚園が最適らしい。
「子どもたちは遊び相手を大募集中っぽいよ。追いかけっこでもボール遊びでも、それか絵本の読み聞かせとかでも、みんなの提案するものなら何でも喜んでくれるんじゃないかな?」
 街はアザラシたちが移動しやすいよう、水路が巡らされている。幼稚園のプールから出て街に繰り出し、そこで鬼ごっこやかくれんぼをしても問題ない。近くにはお菓子屋さんやアイスクリームショップもあるそうで、何か買って食べてもいいだろう。
 そういえば、と猟兵の一人がヴァンダの格好を指摘する。
 ここまでずっと、ヴァンダは水着に麦わら帽子と夏真っ盛りな格好で説明を続けてきたのだった。
「絶対プールには入るし……みんなも着ていったら思いっきり泳げるよ? 別に水着じゃなくてもいいけどね」
 ちなみにアザラシたちが泳ぐ水路やプールはそれなりに深い。泳ぎが得意なら、一緒にざぶんと潜ってみるのもまた一興。
「まー、何をやっても園長さんが責任持ってくれるそうだし、自由にやってみるといいよ。その辺のお話は付けてきたので。それなりに事情ありげな感じだったけど、子どもたちには関係のない話だもんねぇ……」
 一瞬遠い目をしてから、にかっとした笑みをヴァンダは覗かせる。
「たしか、アザラシさんってまだ猟兵には未覚醒なんだっけ? そこの子どもたちもみんなと交流する中で、兆しみたいなものを見せてくれたりして。……いやー、割と可能性としては、ありえなくないかもよ?」
 そもそも、そこは子どもが元気に暮らす街。そんな子どもたちの日常を奪い去られるようなことがあってはならない。
「ま、細かいことはみんなに任せた! ではでは、行ってらっしゃい!」
 グリモアが瞬き、猟兵たちは水の街へと転移する。


堀戸珈琲
 どうも、堀戸珈琲です。
 かわいい動物が好きです。

●最終目標・シナリオ内容
 アザラシたちと交流し、『逢魔弾道弾』の起爆を阻止する。

●シナリオ構成
 第1章・日常『戦火の下の子供たち』
 第2章・ボス戦『???』

 アザラシたちの街での進行となります。
 第1章の結果が良いほど第2章を有利な状態で開始することができます。
 また第1章で獣人たちと仲良くなっていれば、第2章にて活躍してくれるかもしれません。

●NPC
 アザラシ幼稚園の子どもたちとサギ園長。
 子どもたちは階梯0~2で、子どもなのでそれほど大きくありません。遊びたい盛りです。
 サギ園長とは大人な話ができますので、何かあれば園長に言いつけてください。

●水着について
 プレイングに水着の記載があった場合、その水着を着て登場します。
 水着(2024)など、参加した水着コンテストの年とともにご記入ください。

●プレイング受付
 各章、断章の追加後に送信をお願いします。
 プレイング締切についてはマスターページやタグにて随時お知らせします。基本的には制限なく受け付けますが、状況によっては締切を設けます。

 それでは、みなさまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『戦火の下の子供たち』

POW   :    追いかけっこやかくれんぼ、元気に走り回って子供たちと遊ぼう!

SPD   :    戦争ごっこや兵隊ごっこ、子供たちと秘密基地を作って築こう!

WIZ   :    勉強も大事だよ?、青空教室を開いて子供たちと学ぼう!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●わいわいアザラシ幼稚園
「お前らが猟兵か。話は聞いてるぜ」
 到着した途端、猟兵たちは目つきの悪い鳥に絡まれた。
 プールでばしゃばしゃ水しぶきを飛ばす子どもたちを一瞥してから、サギ園長は猟兵たちに囁く。
「まぁなんだ。敵が来るとしてもガキの世話はしなきゃなんねぇ。俺もここのアザラシには恩があるからな。できれば俺とお前らの内々で処理したい。そのためにもガキは任せたぜ」
 街が襲撃されるとなっては一大事。もし猟兵たちが解決するならアザラシたちには秘密にしておきたいところ。
「泳ぐにしても外に出るにしても、責任は俺が持つ。戦ううえに世話までしてもらうんだ、金の都合もある程度付けておくさ。第一、ガキが喜ぶならそれで構わねぇよ」
 意外と子どもには優しいようだ。
 翼を広げてプールに振り向くと、サギ園長は子どもたちに呼びかける。
「おーいお前ら! 今日はお客さんのお兄さんお姉さんが遊んでくれるらしいぞー!」
 それを聞きつけ、アザラシの子どもたちがものすごい勢いで寄ってくる。
 目をキラキラさせ、尾びれをぱたぱた。
「ほんと!? 遊んで遊んで!」
「ねぇ何して遊ぶ? 何でもいいよ!」
 かなり元気いっぱい。これは振り回されそうだ。
 隣を見るとサギ園長がにやりとしていた。
 ……今日だけ子どもたちから解放されるのがよほど嬉しいらしい。
「あとは頼んだ。何かあれば呼んでくれ」
 猟兵たちを残し、バサバサとサギ園長が飛び立つ。
 とにかくここは——全力で遊びに付き合ってあげるしかない!
多々良・緋輝
アザラシの子供か…可愛いな
こんな奴らをオブリビオン化させる何て、目が腐ってんな幻朧帝国って奴らは

良し、姉ちゃんと鬼ごっこをしようか!
赤のビキニを着てアザラシの子供と一緒にプールでかくれんぼ等もする
UCで認識阻害を施すけど…アザラシ達に声をかけられたら勢いよく声を出すか

いやぁ負けた負けた!
一緒にかき氷を食べながらアザラシと遊んだ後、サギ園長からの連絡を待ちながら『お菓子を買い出しに行く』という体で街の散策と警らも行っていく
アザラシ達の笑顔と無邪気な姿を思い返しながら…

ーー生かしちゃおけねえな、あいつらの笑顔を奪うゲスなんざ



●略奪者に告ぐ
 プールで小さなアザラシの子どもたちがはしゃいでいる。
 水面にぷかぷか浮いてじゃれ合う姿に、多々良・緋輝(ロード・ヒイロタマハガネ・f44126)は心を癒されていた。
「アザラシの子どもか……かわいいな」
 だが、こんなにかわいいアザラシたちをオブリビオン化させようと目論む外道がいるらしい。細めていた目が少し、怒りに濁る。
「……目が腐ってんな、幻朧帝国って奴らは」
「ねぇねぇお姉さん! お姉さんも遊んでくれる人?」
 子どもアザラシに呼びかけられ、緋輝は表情を改めた。にっと笑みを作り、子どもたちに快活な声を返す。
「おう! 何でも相手になってやるよ!」
「え~? ヒレもないのに、ほんとにボクたちに付いてこれるの~?」
「言ったな? よし、姉ちゃんと鬼ごっこをしようか!」
 腕を回し、屈伸。既に赤のビキニを着ていて泳ぐ準備は万全だ。
 軽い準備運動を済ませ、緋輝はプールに飛び込んだ。派手に水しぶきが飛んで、アザラシたちがきゃあきゃあと歓声を上げる。
「じゃあお姉さんが鬼ね! よーい……ドンッ!」
 アザラシたちが方々に散るように泳ぎ出す。滑らかに泳いでいるが、子どもということもあってかそれほど速くない。
「それじゃあそろそろ……!」
 十秒数え、緋輝が飛び出す。寄生体由来の能力で、一気に前を泳ぐアザラシに追いつく。
「うわあああっ!? もう来てる!?」
「けど、お前もなかなか速いぞ!」
 タッチする直前で速度を緩め、ギリギリの勝負に。二人して騒ぎながら、最後は緋輝の手がアザラシの身体に届く。
「ほら、タッチ!」
「くぅう! 今度はボクが鬼だね!」
「あぁ。頑張れよ!」
 その後も白熱した鬼ごっこが続く。人気から緋輝が集中狙いされ、緋輝もそれに乗ってあげたので、ほとんどの時間は緋輝が鬼だった。

 ゲームは変わり、かくれんぼへ。
 次々と見つかっていったアザラシたちに対し、緋輝だけが見つからない状況が続いていた。
「お姉さん、どこに行ったのかなぁ……?」
 うろうろと水中を探し回るアザラシたちを、緋輝はプール底の遊具から密かに眺めていた。巧妙に隠れているだけでなく、認識阻害を使った本気の隠密だ。
 そろそろ頃合いかと思ったところで、アザラシたちが大声で叫ぶ。
「お姉さ~ん!? どこ行ったの~!?」
「もしかして、帰っちゃったの~!?」
 つくづくかわいい奴らだと微笑を零す。遊具の陰から出て、水面へ急浮上。
「心配すんな! オレはここだよ!」
「あっ、お姉さん見ーつけた!」
「おっと……これは一本取られたな!」
 互いに笑い、楽しい時間は過ぎていく。

「いやぁ、負けた負けた!」
 空になったかき氷のカップを片手に、緋輝は空を仰ぐ。周りではアザラシたちもアイスとは違った氷菓子に目を輝かせ、夢中になって食べていた。
 緋輝が立ち上がり、上着を羽織ってプールの外へと向かう。
「お姉さん、どこ行くの?」
「菓子の買い出しだよ。お前らよく食うだろ?」
「もっと食べていいの!? 行ってらっしゃい!」
 振られた前脚に手を振り返して、幼稚園の外に出る。緋輝は意識を切り替えた。
 サギ園長は何か掴めただろうか。こちらでも警戒はしなければいけない。敵のことを考えれば考えるほど、脳裏にはアザラシたちの笑顔が浮かぶ。
 無邪気に遊ぶあどけない子ども。
 何故、そんな代えがたいものを壊そうとする?
「——生かしちゃおけねえな、あいつらの笑顔を奪うゲスなんざ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

北・北斗
ヴォウッ、オゥッ、ヴォォオオゥ!!
『可愛い子供アザラシさんですねぇ』
さすがに体重差で気を付ける。ぶっちゃげ、ゾウアザラシの群れがいるところでは子育てで子供が大人アザラシ(♂)に潰される事例があるゆえに。
『眺めるだけでも満足ですけど、ボールで遊んでましょうかね』
赤いボールをアザラシと共にポンポン遊んでみたりする。
可愛くってたまらない。



●トドとアザラシと
 3メートル近い体躯を震わせ、プールサイドでトドが吼える。
「ヴォウッ、オゥッ、ヴォォオオゥ!!」
 視線の先には、プールをすいすい泳ぐ子どもアザラシたち。それぞれが元気に動き回っている。
 かわいい。あまりにもかわいすぎる。
 一通り歓喜の声を上げてから、北・北斗(遠い海から来たトド・f20984)はにっこりと笑みを浮かべた。
『かわいい子どもアザラシさんですねぇ』
 呟きが、テレパシーに乗って思考の外へ漂う。
 それがパチンとしゃぼん玉のように弾けたのか、子どもたちが一斉に北斗に気付いた。
「わ~っ! でっかいトドさんだ~!」
「すご~い! どこから来たの~? もしかしてもっと北の海~?」
 好奇心旺盛な子どもたちに北斗は囲まれる。この街でもトドの客人は珍しいようだ。これだけの大きさとなればなおさら。
『えっ、と……おいらは北斗。来たところは北の海ですけど、正しくはもっと遠くで——』
 北斗がまごついている間も子どもたちは活発に動き回る。瞳を輝かせ、北斗の近くをぐるぐる。なかには器用に身体をよじ登り、背中をつるーっと滑り台にする子も。
「わーいっ!!」
『あーちょっと! 危ないですよ!』
 テレパシーで言葉を響かせると、子どもたちの動きがぴたりと止まる。温厚な雰囲気の北斗にしては、少し張りのある声に聞こえたらしい。
『あの、うっかり怪我させるかもしれないので……できれば背中には回らないでほしいです』
 体重差には気を付けたいところ。
 ゾウアザラシの群れでは子育ての際、子どもアザラシがオスの大人アザラシに潰される事例もあると聞く。そうした事故を防ぐため、接するときもできれば一定の距離を保ちたい。
 背中を滑り台にして遊んでいた無邪気なアザラシたちも冷や汗をかいて離れる。北斗に向き直ると、伏せの姿勢を取るように頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!!」
『いいんです。遊ぶのはおいらも楽しいので……そうですね、気を付けながらでも遊べるものといえば』
 前脚でトン、と赤いボールを北斗は差し出した。北斗にも見劣りしない大きさのボールを真上に投げると、鼻先でトントン連続ヘディング。
『このボールで一緒に遊んでみます?』
「うん! やるやる!!」
『では……いきますよっ!』
 ヴォウッと北斗が鳴いて、プールに向かってボールを飛ばした。
 それを追いかけ、子どもたちが次々とプールに飛び込む。
 北斗の真似をするように大きなボールを鼻でつっつき、互いにボールを飛ばし合う。
「あっ! そっちに行ったよー!」
『ふふ、お上手ですねぇ』
 ときたま北斗にもボールが返ってくる。器用に鼻で突いて、ポンポンとラリーする。
 一生懸命にボールを飛ばそうとするアザラシたちに、北斗は微笑みを向けた。
 眺めるだけでも満足だったが、一緒に遊べば不思議ともっと癒される。
『いやぁ……かわいくってたまりませんねぇ』
 その後も楽しい時間を、北斗とアザラシたちは過ごしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルザ・ルーナマリア

【POW】2024水着
へー幼稚園ってのがあるんだな!
水棲な種族でなんとなく親近感も感じるし。
園長さんも大変そうだし、ちびっこたちと一緒に遊ぶとするか!

先に危ないものは預けて、と。
まずは元気に挨拶から!
小さい子に悪い習慣覚えさせちゃいけないしな。
いつもどんな風に遊んでるのか子供達に聞いて、それに沿うように遊ぶぞ!
どっちか言うと荒波に慣れてるからプールの凪はすこし物足りないけど遊び相手がいるなら楽しめるなー。
プールの底に宝物落として深く潜って拾い上げる競争とか水中キャッチボールとか…うん、楽しいな!
遊びの中でアザラシの子供達の得意そうな事とか観察したり、危ない事は避けさせるようにお世話楽しむぜ!



●海獣遊び
「へー、幼稚園ってのがあるんだな!」
 開かれたプールを眺め、ウルザ・ルーナマリア(月に泳ぐ白き獣・f39111)は感嘆する。腰から生える海竜のような尾が、ウルザの背後でぐんっとうねった。
 シーベアルグは水棲の種族。街中に水路が巡らされ、水に満ちたこの都市はどこか居心地もいい。なんとなく親近感も感じる。
「園長さんも大変そうだし、ちびっこたちと一緒に遊ぶとするか!」
 頷き、ウルザは子どもと遊ぶための準備を始めた。

 プールサイドに現れたウルザを、アザラシの子どもたちが振り向く。
「あっ、シロクマのお兄さんだ!」
「でっかーい! でも、尾びれもあるよ~?」
「おーおー、早速元気いっぱいだな!」
 わいわいとアザラシたちに迎えられ、ウルザはにっかりと笑顔を返す。
 着用したのは波模様と錨がデザインされた水着。歩くたび、腰に巻き付けられた青の飾り布とベルト、貝殻のアクセサリーも揺れていた。ウルザの白い身体も合わさって、爽やかな海を思わせる。
 危険な槍やら剣やらは一旦預け、代わりにおもちゃの入った箱を持ってきた。
 けれど、まずは元気に挨拶から。
「おれはウルザ! 今日一日、みんなと一緒に遊ぶことになった! よろしくな!」
「ウルザお兄さん! よろしくお願いしま~す!!」
「よしよし。質問なんだけど、普段どんな風に遊んでるんだ?」
「えーっとね、プールで鬼ごっこしたり、遊具で遊んだりとかかな!」
「遊具?」
 水面にそれに類するものは見当たらないが、すぐに合点がいった。トンネルやドームなどがプールの底に沈んでいる。あれを潜ったり通り抜けたりして遊んでいるのだろう。
「なるほど……じゃあ遊具を使って、いつもと少し違った遊びをしてみようか!」
 ざぶんとプールに入り、ウルザが手に持ったおもちゃ箱をひっくり返す。
 ばらばらと、宝石——に似たガラスのおもちゃが水底に沈む。おもちゃは遊具の中にも入っていった。
「宝石拾い競争だ! どうだ、できるか?」
「もちろん! やるやる!」
「それなら……よーい、ドンッ!」
 ウルザの合図でアザラシたちが下に向かって泳ぎ始める。ずんっとした泳ぎはやや遅いが安定しており、遊具の穴も難なく通り抜けていく。
「水中だと結構滑らかに泳ぐんだな……よし、おれも!」
 ウルザも水中へ潜り、プールの底へ。
 日頃泳ぐのは荒波の中なので、凪のプールはどちらかというと物足りない。だが、ここには遊び相手がいる。アザラシたちと競争するように泳げば、自然と気分も乗ってくる。
「おーい、誰かを押しのけちゃダメだぞ! 仲良く泳ごうな!」
 我先にと遊具に入ろうとした子を諫めつつ、楽しい宝石拾い競争は続いた。

 しばらくして遊びは変わり、水中でのキャッチボールに。
「ウルザお兄さん、パス!」
 アザラシの一匹が前脚でボールを握り、くるんと一回転してウルザへ投げる。勢いの乗ったボールはまぁまぁな速度を伴っていた。水中での機動力は子どもながら驚かされるところもある。
 迎える姿勢を取って、ウルザはボールをキャッチ。
「ナイスボール! いい球だったぞ! そんじゃ、こっちからもパス!」
 力を調整しつつ、一匹のアザラシに向かって投げ返す。
 普段、これだけ水中で遊ぶ機会は少ない。ウルザ自身もすっかり楽しんでいた。
「……うん、楽しいな!」
 その気持ちを噛み締め、賑やかな時間は過ぎるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニオ・リュードベリ

【先輩後輩】
水着(2020)着用

ひゃあ!すごい!
なんていうか……すごいよ先輩!
アザラシちゃんがいっぱい!
今日はおねーさんとおにーさんが遊んであげるからね!

あたし達もプールに入ろう
そのまま街に繰り出しちゃおうか
ぐるっとお散歩してくるだけでも楽しいだろうし

ちっちゃいアザラシちゃんも泳ぐの上手だねぇ
迷子になる子とかはぐれる子が出ないように注意しなくちゃ
……あ!先輩!アイス屋さんある!
園長さんも許可してくれてるしアイス食べようよ!!

という訳で人数分アイスを買ってちょっと休憩
アザラシちゃん達、いっぱい食べるんだねぇ
それじゃあ帰り道も頑張って泳ごうか!
みんなで元気いっぱい進もう
帰るまでが遠足だもんね!


茜谷・ひびき

【先輩後輩】
水着(2020)着用

アザラシがいっぱい……そうとしか言えないな
大人として挨拶はきちんとしよう
今日はよろしく頼むぜ

そうだな、保育園の子が散歩してるのはUDCアースでも見かける
俺達も水路を一緒に進んでいこうか
という訳でお散歩タイムだ

流石アザラシ泳ぎが上手い
やんちゃな子とかが逸れないようにしないとな
……ニオ、引率者が一番興奮してどうすんだ
でも確かに、一度休憩しようか

アイスをアザラシ達に配ったら、水路の縁に腰掛け休憩
このアイス糧食なんだよなぁ、すごいよなぁ
元気なアザラシの様子には癒やされる
この子達を守るためにも頑張らないとな

……そのためには帰り道も頑張らないとだが!
気合い入れて行くか



●本日快晴、お散歩日和
 プールを遊び回るアザラシの子どもたち。
 無邪気にはしゃぐアザラシに負けない勢いで、ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は目を輝かせた。
「ひゃあ! すごい! なんていうか……すごいよ先輩! アザラシちゃんがいっぱい!」
「……それは見ればわかる」
 言葉にできない興奮の分だけ身体を動かすニオに、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)がため息をつく。
 どれ、とひびきも視線をプールへ。どこを見てもアザラシ、アザラシ、アザラシ。今まで見たことのない光景に圧倒され、ニオと同様に言葉を失った。
「うん、アザラシがいっぱい……そうとしか言えないな」
「ねー? そうなるでしょー?」
 にぃっと笑うニオに対してそっぽを向いて、ひびきはプールの縁に立つ。
 大人として挨拶はきちんと。興味を持って集まってきた子どもたちに向き直った。
「俺はひびき。こっちは後輩のニオだ。今日はよろしく頼むぜ」
「今日はおねーさんとおにーさんが遊んであげるからね!」
 凛々しい顔をして呼びかけるひびきの後ろで、ニオがひらひら手を振る。
「わ~い! ねぇねぇ、何して遊ぼっか!」
「ん……それは特に考えてなかったな」
「はいはい先輩! あたしにアイデアが!」
 手を挙げるニオ。発表するようひびきが示すと、ニオは幼稚園の外を指さした。
「今日はみんなで街にお出かけしてみよっか! どうかな?」
「お出かけ!?」
「うん! お出かけしたい!」
 これには子どもたちも大賛成。
 かくして、ニオとひびきによるお散歩タイムが始まった。

 水路は他の街での道路みたく、そちらが主要な道になるように作られていた。幅は広く、大勢で通っても十分な余裕がある。
「あのビルってどんなお店なんだろ~?」
「おーい! 迷子にならないように、おねーさんについてきてね!」
「は~い!」
 あらゆるものに興味津々なアザラシたちに、ニオは集団の先頭から呼びかけた。
 黄色の浮き輪に身体を通し、ニオ自身も街を眺めながらぷかぷか進む。フリルの付いた水着は元気いっぱいな彼女にぴったり。浮き輪に乗っかって、前方確認をしつつアザラシたちを優しく先導する。
「先輩! そっちは大丈夫ー?」
「あぁ、大丈夫だ」
 子どもたちを挟んで反対側。
 ぞろぞろニオについていくアザラシたちを見守るのはひびきの役回り。
「保育園の子が散歩してるのはUDCアースでも見かけたけど……大変だな、これ」
 子どもはすぐにあっちこっちへ行こうとするので常に気が抜けない。
 黒に赤のラインを引いたパーカーと水着の組み合わせが、漆黒の肌に似合っていた。普段は服に大方隠れる朱殷の刻印も今日ばかりは露出している。だが、右手と両脚に巻きつけた包帯は、水に入るときすら取らないでいた。
「待てー!」
「へへっ、こっちだよー!」
「おっと、脇道には入るなよ!」
 やんちゃ坊主たちが追いかけっこを始めたところを、ひびきが身体を使って急いで制す。いつ誰が飛び出すかわからない状況では、のんびりお散歩とはいかなさそうだ。
「ちっちゃいアザラシちゃんも泳ぐの上手だねぇ」
 子どもアザラシに翻弄される先輩をニオが微笑ましく見つめていた。その表情に唇を尖らせつつも、ひびきは首を縦に振る。
「流石アザラシってところだな。子どもでも泳ぎが上手い」
 頭を覗かせちびちび進む子どもたち。引き続き見守って、ひびきはニオに問いかけた。
「そういやニオ、俺らはどこに向かってるんだ?」
「え? どこにも向かってないよ」
 自信満々に言い切るニオに、ひびきが目を瞬かせる。
「ぐるっとお散歩してくるだけでも楽しいかなーって!」
「……まぁ、散歩ってそういうもんか。けど、来た道くらいは覚えて——」
「あ! 先輩! アイス屋さんある!」
 ひびきの言葉をニオの大声が遮る。街の一角に見えた青いテントのアイスクリームショップに見惚れ、振り返ってひびきに催促。
「アイスだよアイス! みんなでアイス食べようよ! 園長さんも許可してくれてるし!」
「……ニオ、引率者が一番興奮してどうすんだ」
「アイスー!?」
「食べよ食べよ! 絶対食べたい!」
 アイスの興奮はニオからどんどん広がっていき、収集のつかないアイスの大合唱に。
 元よりダメと言うつもりはなかったが、どちらにせよ無視するのは無理だろう。
「たしかに、一度休憩しようか」
「やったー!」
 大喜びでニオとアザラシたちは店に向かっていく。泳ぐのが一段と速い。その様子をゆっくりと、ひびきは追いかけた。

 甘いミルクの風味が口の中で広がる。
 落っこちそうになる頬を押さえ、ニオはカップアイスに舌鼓を打っていた。
「おいしい! やっぱり夏はアイスだよね!」
 浮き輪は店の壁に立てかけ、水路の縁に座ってアイスを楽しむ。
 その隣で、ひびきもオレンジのアイスバーを咥えていた。
 テントの日陰、脚は水に晒している。涼やかな場所でアイスを噛んで飲み込めば、爽やかな酸味が瑞々しく喉を通っていく。
「このアイスも糧食なんだよなぁ……すごいよなぁ」
「ほんとほんと! これも植物由来なんてびっくり!」
 クリームをすくったスプーンを不思議そうに眺め、ニオはそのまま口に運ぶ。また「おいしい!」と唸る彼女を横目で見てから、ひびきはアザラシたちに視線を送った。
「冷たい! おいしー! 冷たい!」
「……おかわりってしてもいいのかなぁ?」
「急いで食べたらキーンってなっちゃった……!」
 アイスを手に、各々が様々に楽しんでいる。世界共通で子どもはアイスが大好きだが、まだまだ食べ足りない子も多そうだ。
 はしゃぐアザラシに、またニオが笑みを零す。
「アザラシちゃんたち、いっぱい食べるんだねぇ」
 おいしそうにアイスを食べるアザラシを見つめていると、なんだか心が解れてくる。何でも純粋に楽しもうとする姿に、ひびきも自然と癒されていた。
「この子たちを守るためにも頑張らないとな」
「そうだね!」
 いつの間にかニオのカップの中は空に。
 浮き輪を持ってざばんと水路に飛び込み、元気よく声を張った。
「それじゃあ帰り道も頑張って泳ごうか! 行こ! 先輩!」
 あぁそうか、とひびきは考える。行きがあるなら帰りもある。当然ここまでの苦労もまだ片道分あるわけで。
 それについては宣言通り頑張るしかない。
 息を深く吸って吐き、ひびきも水路に入った。
「……気合い入れて行くか」
「しゅっぱーつ! 帰るまでが遠足だよ!」
 ニオの明るい声とともに、一同は帰路につくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アーネスト・シートン
アザラシさん、ものすごく可愛いのに、子供って事は、更に可愛さ爆発ですね…えぇ。
ゴマフアザラシ、ワモンアザラシ、ゼニガタアザラシ、ハイイロアザラシ、クラカケアザラシ、モンクアザラシ、ヒョウアザラシ、ゾウアザラシ…大小色々いますね。(バイカルアザラシは…この前の戦争の時のバイカル湖の情況から見るに、絶滅してる気がするんですけどね…絶対に許さんよ、ダークセイヴァー)

さて、かわいいアザラシさんと遊ぶために来たといってもどうやって遊びましょうかな??
イルカさん呼ぶにもプール小さいですし。
んじゃ、子供の事故防止も兼ねて子育て経験のあるアザラシさん(大人のメス)12頭呼んで遊びましょうかね。
わたくしも、ちとばかし大きいボール(水に浮きやすいビニール製ボール)を幾つも投げ入れて遊んでいきましょう。

サギ園長…語弊感がありますが…
あ、いつもご苦労様です。
「うーん、ねぇ、何か来るとおもんだけどねー!」
あ、バナーくん、何か感じ取られたんですか。

…おそらく、オブリビオンが来ますね。

アドリブ歓迎



●プロにお任せあれ
 プールを泳ぎ、追いかけっこをするアザラシの子どもたち。
 動物好きにとっては夢のような景色。プールの一角に立って、アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は眼鏡の奥にある目を細めた。くねくねと独りでに大きなリスの尻尾も動く。
「アザラシさん、ものすごく可愛いのに……子どもってことは、さらにかわいさ爆発ですね……えぇ」
 かわいさに心を掴まれながらも観察は続ける。
「大小いろいろいますね。この街……単一種のアザラシさんで構成されているのではなく、いくつかの種のアザラシさんが協力し合っているのですね」
 動物についての造詣が深いアーネストにとっては、模様や身体の特徴から種類を当てるなど朝飯前。幼稚園にいるアザラシたちはまだまだ子どもで体長や体表の様子に大きな差はないが、それでもたしかに違いはある。
 白い体に浮かぶ黒い斑点模様がかわいいゴマフアザラシ。
 その隣を泳ぐのは波打った丸い模様が特徴のワモンアザラシ。
 やや黒っぽい体に雪がかかったようなゼニガタアザラシは船のおもちゃを追いかけている。
 体の上下で黒っぽい部分と白っぽい部分が緩やかに分かれているハイイロアザラシ、一方で黒の体に太い白線を引いたようなクラカケアザラシ。二匹は水面でお喋り中。
 ややふてぶてしい顔でモンクアザラシは日光浴をしている。元は暖かい海に住んでいるからだろうか。
 少し大きい子も何匹かいる。笑うと鋭い牙を覗かせるのはヒョウアザラシ、名前の通り鼻が長いのはゾウアザラシだろう。だが、小さい子とも上手くやっているようだ。
 微笑んで眺めていると、何やら違和感を覚えた。ヨーロッパならいてもいいはずの種がいない。
「バイカルアザラシの子がいませんね……いや、致し方ありませんか……」
 獣人世界大戦で見聞きしたバイカル湖の情勢を思い出す。血に満ちた湖はとても生物が住める環境とはいえない。そこをルーツとする生物種もまた同じ。絶滅してしまったとしてもおかしくない。
 まだ憶測に過ぎないが、もしも絶滅していたなら——。
「絶対に許さんよ、ダークセイヴァー……!」
「リスのお兄さん! お兄さんもいっしょに遊ぼ!」
「おおっと! そうでしたそうでした」
「みんな! リスのお兄さんも遊んでくれるって!!」
 燃え上がりかけた怒りを胸の奥にしまって、アーネストはプールに近づく。
 よろしくお願いします、と頭を下げると、大小様々なアザラシたちはパチパチ拍手で迎えてくれた。引き続き期待のまなざしを向けてくれる子どもたちに、アーネストは苦笑して顎を擦った。
「さて、かわいいアザラシさんと遊ぶために来たといっても……どうやって遊びましょうかな??」
 やはり誰か呼び出すのがいいか。しかしイルカを呼ぶにはプールが小さい。
 ならばここは、とアーネストは頷いた。
「餅は餅屋、アザラシさんにはアザラシさんといいますからね。というわけで……お願いします!!」
 アーネストの後ろから登場したのは、12頭の大人アザラシ。どことなく大らかな雰囲気を発しているのは、母親になった経験がそうさせているのだろうか。
「わ~っ! お母さんみたいな人!」
「事故防止も兼ねて、経験者の方がいいと思いまして。すみませんね、急に呼んで」
 子どもたちの騒ぎ声の中、申し訳なさそうにアーネストが言う。その言葉に母親アザラシたちはふるふる首を振った。久々の子育ての機会にやる気は十分のようだ。
 次々と母親アザラシがプールに飛び込む。はしゃいで寄ってくる子どもたちを迎え入れ、それぞれの遊びに付き合うために動き出す。
「鬼ごっこね! 追いつけるかな~?」
「この輪っか……むずかしいね!」
「ごろごろ楽し~いっ!」
 水中で鬼ごっこをしたり、フープを回したり、プールサイドでごろごろ回ったり。
 子どもが怪我をしないように遊びに参加して、ほんの少しの工夫でもっと遊びを楽しく。
 流石は経験者。個性の異なるアザラシの子どもたちであってもお手の物。
 母親も合流し、幼稚園は一つの群れのようになった。微笑ましい光景にまた心を癒されつつ、アーネストも準備を始める。
「上手くいっているようですね。では、わたくしも」
 やや大きめのビニール製のボールを何個も取り出し、腕に抱える。プールのぎりぎりまで近づいて、アーネストは思いきりボールをぽーんと放り投げた。
「投げ返してみてください! いつでもいいですよ!」
「言ったな~! それじゃ……えーいっ!」
 水に浮かぶボールを前脚で取り、子どもたちがプールサイドへと投げ返す。鼻や尾びれで打って返す子もいた。
「おっと! はいっ! いいコースですね!」
 方々から飛んでくるボールに走り、受け止めてからまた投げ返す。とんでもなく山なりに飛んだかと思えばかなり手前に落ちたりと、毎回軌道は読めない。
 しかし、アーネストも猟兵だ。このくらいなら対応できる。
 手で弾いたり、ときには尻尾で包んだり。
 その後もアーネストは母親アザラシとともに、子どもアザラシと遊んで過ごした。

 しばらくして。
「おぅ。問題なさそうか」
 子どもたちと遊ぶアーネストの頭上を飛んで、サギ園長が幼稚園の柵に止まる。
 世話を母親アザラシに任せ、アーネストはサギ園長に状況をうかがうことにした。
「あぁ、どうもサギ園長……と呼ぶと、語弊感がありますが」
「しゃーねぇだろ。俺だって好きでこの名前なんじゃねぇよ」
「はは、それはすみません。何にしても、いつもご苦労さまです。今のところ問題はありませんよ。そちらは?」
 冗談を交えながらも尋ねる。サギ園長はプールを一瞥してから、囁くように答えた。
「悟られないよう住人に聞いて回ったが、街に見かけない奴がいるそうだ」
「それって……!」
「ねぇねぇ、ぼくもそんな気がしてるー!」
 アーネストの腕を駆け上り、肩に辿り着いたハイイロリス——バナーテイルが両手を上げて主張する。
「おや、バナーくん。どうしました?」
「ぼくもおもんのー! ちょっとだけ! うーん、ねぇ、何か来るとおもんだけどねー!」
「つまり、何か感じ取られたんですか」
「うん! よくない何か!」
 こういうときのバナーくんの勘はよく当たる。間違いなく、敵がそこまで来ているに違いない。そう考え、アーネストは真剣な表情でサギ園長に向き直った。
「ありがとうございます、バナーくん。サギ園長、いつでも避難できるよう用意を」
「そうか、来るか」
「えぇ……おそらく、オブリビオンが来ますね」
 アーネストの呟きは、ほどなくして現実のものとなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『内治・三六』

POW   :    気にする事ありませんよ。あれらはただの材料です。
【小銃や間に合わせの武器など 】で武装した【兵士もしくは捕虜】の幽霊をレベル×5体乗せた【軍用トラック】を召喚する。
SPD   :    せっかくなので、これより臨床実験を開始します。
【試験管から飛び出た液体 】からレベル×1個の【蟲の群れめいた粒子】を召喚する。[蟲の群れめいた粒子]に触れた対象は【一時的発狂もしくは幻聴など】の状態異常を受ける。
WIZ   :    何と、素晴らしい技! 忘れない様に記録しますね。
敵のユーベルコードを【実験記録用ノート 】に呪文として記録し、戦闘終了まで詠唱で使用可能。敵を倒せば戦闘後も永続。

イラスト:樹華チョコ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠羆嵐・来海です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●それゆけアザラシ幼稚園
 最初に気配を察知したのはサギ園長だった。
「おいお前! そこで何してんだ!」
 柵から飛び立ち、プールの裏手へ。異変の発生を悟り、猟兵たちも後に続く。
 サギ園長と対峙するのは、薄汚れた白衣を纏った階梯4のトラ。アタッシュケースから手を離したトラは、猟兵たちを品定めするように眺めた。
「あなたたちが猟兵? 例の世界渡りの? 興味深いですねぇ……実験させてくださいませんか?」
 くつくつ、不気味に笑っている。軍服を着ていることから幻朧帝国の手先だと推測できた。ならばあのアタッシュケースは影朧兵器『逢魔弾道弾』。
 敵と認識し、猟兵たちは武器を構える。トラは変わらず微笑を浮かべていた。
「申し遅れました。私、内治・三六と申します。察しの通り『逢魔弾道弾』を作動させるため、やってきました。退屈な任務だと思っていたら……面白い素体がたくさん! オマケでいいデータが採れそうです!」
 どうやら話は通じないらしい。こちらを体のいい実験対象とでも思っているようだ。
 ならば力づくで止めるしかない。
 両者が衝突する、その寸前。

「そこまでだ~!」
 背後から聞こえたのは子どもアザラシたちの声。
 くちばしを大きく開き、サギ園長はアザラシたちに取って返す。
「何やってんだお前ら!? どうやって出てきた!? 水門は……開いてない!?」
「園長さんにはないしょだったんだけど~……じつは、プールとおそとは細い抜け道があるんだよね~!」
「がっ、だぁっ……!? とにかく、危ないから幼稚園に戻ってろ!」
「もどらないよ!」
「なんでだっ!?」
「そいつ、悪いやつなんでしょ?」
 子どもアザラシが三六を見つめる。頬を膨らませたり舌を出したりと、思い思いに敵意を発していた。
「お父さんが言ってた! 街がこわれて『ふっこうちゅう』なのは、『ちょうたいこく』のせいだって!」
「そんなのがまた街に来てるなら、おっぱらってやるんだ!」
「つよいよ、あたしたち! この街を守るの!」
「そんなわけ……んんっ!?」
 反論しようとサギ園長が面食らい、言葉を失った。
 子どもたちから、オーラのような何かを感じる。発せられる気配は猟兵のそれに似ていた。
 ……一緒に遊んだから、覚醒の片鱗を覗かせているのだろうか?
「待て待て! だとしてもお前らをそのまま戦いには出せん! だが……気持ちは伝わった! おい猟兵!」
 サギ園長が声を張る。
「遊んだならわかるだろ? こいつらの得意なことが! それを引き出せたら、その力はあいつを上回るかもしれん!」
 改めて、猟兵たちは地形を見渡した。

 この街はほとんど水に覆われている。水路が主要な道となっており、陸地はわずかしかない。自分たちも敵も、橋や飛び石、水路の端のわずかな通路くらいしか立てる場所がない。
 だが、アザラシなら。それも狭い場所を通れる子どもなら、ほとんど縦横無尽に地形を移動できるかもしれない。幼稚園と水路を繋いでいたような抜け穴を、子どもたちがさらに把握している可能性もある。
「いいか、必要時以外は俺がしっかり押さえておく! けど、もしもこいつらの力が必要なら……いつでも協力できるはずだ!」
「うん!」
「見せつけてやるぞ~!」
 やる気満々なアザラシたち。
 対する敵も、戦闘への意欲を狂気に満ちた目から覗かせていた。
「興味深い、興味深い! 是非とも記録させてくださいよッ!」
 それゆけ猟兵、それゆけアザラシ幼稚園。
 明日の平和を守るのは君たちだ!
多々良・緋輝
まったく、しょうがない奴らだ……
無垢な闘志に破顔しながらUCを発動
こいつらに傷や苦しみを与える訳にはいかねぇ!

ソロモンの悪魔『アモン』の紋章の反転紋章を灯し、そこから総ての苦しみを消滅させる赤い万能金属をアザラシ園児の数だけ生成
お前ら!これを持っていろよ!
苦しみの原因となる概念・存在のみを奪うその万能金属を持っていれば、実験記録用ノートへの筆記によるコピーという『いずれ『苦しみの原因』となる事象』をも吸い取る
やはり勝つには先手を打つ事だな

安全を確保したアザラシ園児達の攪乱で実験記録用ノートへの筆記を妨害させ、園児達を下がらせた後『玉鋼のバトルガントレット』でオブリビオンを殴り倒す!



●不条理を殴り飛ばして
 水面に頭を覗かせるアザラシたちを見やって、緋輝は微笑を零した。
「まったく、しょうがない奴らだ……」
 無垢な闘志、恐れ知らずの勇気。
 果敢に敵と戦おうとする子どもたちに破顔して、指先を空中に向けた。
「こいつらに傷や苦しみを与えるわけにはいかねぇ!」
 指を走らせれば、軌跡が宙に刻まれていく。
 ソロモンの悪魔『アモン』の紋章——を、鏡写しのようにした記号。
 反転紋章。描き切ると、紋章から金属塊がいくつも射出された。真紅に覆われた金属は放物線を描き、アザラシたちの真上へと落下する。
「お前ら! これを持っていろよ!」
「これな~に?」
「苦しみの原因を奪う万能金属だ! それさえ持ってりゃ怪我しねぇ!」
「すご~い!」
 水路から跳び上がり、アザラシたちは金属を次々キャッチ。大事に前脚で抱えて水中に戻るアザラシに、苦しみの拒絶が発動する。
「苦しみの原因を奪う……なんとも面白い技ですねぇ!」
 背後から起こった敵の声。緋輝が振り返った。
 下卑た笑みを浮かべ、三六はノートを手に取る。くつくつ笑いながら、記録のためにペンを振り上げた。
「分析、解析……! 本当に苦しみを排除するか、私にも試させてくださいよぉ!」
 三六のペンが紙に触れる、その寸前。
 紙の数センチ上でペンが止まる。三六がどれだけ力を籠めようと、ペンは少しもノートに近づいていかない。
「苦しみを奪うんじゃねぇ。苦しみの『原因』を奪うんだ」
 驚愕に顔を歪める敵へ、緋輝は淡々と告げた。
 万能金属の効果はダメージの無効化に留まらない。苦しみを発生させる概念・存在へ干渉し、作動の可能性そのものを捻り潰す。
 当然、ノートへの記録行為にも干渉可能。敵が技を利用して優位に立ち回るという苦痛を、発生段階から排除した。
「やはり勝つには先手を打つことだな」
「なるほど……! では、記録の対象を変えるまで——」
「それが間に合えばいいけどな」
「はい……?」
 緋輝の発言の意味を掴みかねる三六の真横から、子どもアザラシの群れが飛んできた。
「とつげきぃー!」
「ぐはっ!?」
 水路内の抜け道を通って人知れず移動。安全の確保された無邪気なアザラシたちは、何にも怖気づくことなく敵に体当たりをぶちかました。
 ノートが吹っ飛び、三六が薙ぎ倒される。べしゃんと地面に倒れた三六は、近づいてくる足音を立て続けに聞いた。
「下がれお前ら!」
「オッケー!」
「決めちゃえ! お姉ちゃん!」
「あぁ! 任せろ!」
 水路を泳いで撤退するアザラシと入れ違いになるように、緋輝が細い通路を駆けて三六に接近する。
 両の拳を打ち合わせれば、ガァンと金属の音が響く。玉鋼とヒヒイロカネ——その合金によるバトルガントレット。硬度は説明するまでもない。
「そこを動くなよ!」
 通路から飛び移り、三六のいる足場へ。
 体勢の崩れた三六に避ける術はない。
「これは、まずい——」
「歯ァ食い縛れ!」
 大きく引いて振られた腕が三六に突き刺さる。がはっと息を吐いて、その身体が軽々飛んだ。ガントレットに覆われた拳を構え、緋輝は敵を睨んだ。
「ようやく掴んだ平和だ。何も奪わせねぇよ、お前みたいな屑にはな」
 凄む緋輝の背後で、アザラシの子どもたちが歓声を上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

北・北斗
さすがに子供アザラシの抜け道は通れないから(普通に大きさの都合)、いつも通りに空を浮遊するトド。

『ん??…もしかして、こいつがオブリビオンかな??』
種族・虎…にしちゃ、やせてるよねぇ。
こういうのは行動も注意しないと。

『アザラシたちの住むこの地を汚そうなんてェ、そうはさせないですよぅ!』
何か蟲の大群が出たら、即座にUC・超重力領域を展開して一気に潰す。
もちろん、このオブリビオンも含めて。
そんで、蟲には【属性攻撃】で口から水を浴びせる。
その後、北斗は空高く上がって、自分がダメージを受けないギリギリ狙って、高空から一気にオブリビオンに【重量攻撃】で圧し潰す。



●超重力・超重量
 ふよふよと、茶色い巨体が空を飛ぶ。
『流石に子どもアザラシの抜け道は通れませんからねぇ』
 反重力のサイキック能力を活かして北斗は浮遊。空を泳ぎ、幼稚園から最短距離で現場に到着する。
 どうやら既に事態は動いているらしい。
 水路の足場で構える猟兵たち。その後ろにはアザラシの子どもたちとサギ園長。
 反対側で猟兵と対峙するように、細身のトラが立っていた。
『ん?? ……もしかして、こいつがオブリビオンかな??』
 上空から状況を眺め、北斗は敵を睨んだ。
 トラにしては痩せている。間違いなくフィジカルでは攻めてこない。
 何か仕掛けてくるタイプだ。行動には注意しないと——そう考えつつ、宙でくるりと身体を一回転させる。
『何にしても、止めないとですねぇ』
 巨大な尾びれを力強く動かし、空気の中を一気に突っ切る。凄まじい突風を発生させ、北斗は足場の一つに降り立った。
「ヴァウッ、ヴォオオオオッ!!」
 トドの咆哮が辺りに轟く。
『アザラシたちの住むこの地を汚そうなんてェ、そうはさせないですよぅ!』
「このトド、空から……!? 面白い、早速実験といきましょう!」
 北斗が着地した衝撃でずれた眼鏡を直し、細身のトラ——三六は笑みを零す。多少傷ついた服の砂埃を払い、同時に脚のホルダーから試験管を抜き取った。
「これより臨床実験を開始します!」
 複数の試験管を地面に投げて叩き割る。液体が飛散し、蟲みたく蠢く粒子が解き放たれた。
 蟲は瞬く間に広がり、前面から壁のように迫る。
「トドさん!!」
「あぶないよーっ!!」
 背後から子どもたちの声がする。
 振り返らず、殺到する蟲に目を向けたまま、北斗は叫ぶ。
『せっかくなんですが、実験はもう十分なんですよぅ!』
 鳴き声が響き、蟲の大群が水面に叩き潰された。上から殴りつけるような圧は後方で構えていた三六にも働き、抗えず地面に這いつくばった。
「うぐッ……身体が、動かない……!?」
 |超重力領域《ハイパー・グラヴィティ・ゾーン》。
 超高負荷の重力領域を展開し、敵の動きを封じる技。
 領域の展開を認識してから、北斗は水路へ飛び込んだ。
『さっさと帰ってもらいますよぅ!』
 旋回するように泳ぎ、頭を出して口から水を噴射。勢いのある放水に、押し潰された蟲の群れも散り散りになっていく。
 すっかり綺麗になった水路を見て、ふぅと北斗は一息つく。さらにそこからもうひと頑張り。
 もう一度ぐるぐると水路を泳ぎ回る。泳ぐスピードはどんどん速くなる。いよいよ最高速度というところで思いきり尾びれで水を蹴り、北斗は空中へと飛び出した。
 空高くまで上昇。次第に重力に引き戻され、落下が始まる。鼻先を地面に向け、足場に伏せた三六へと突っ込んでいった。巧みに重力を操作して着地衝撃の回避を狙いつつも、勢いは殺さない。
『おいらの重さ……耐えられますかねぇ?』
 空から降ってくる北斗に三六も気が付いた。まるで隕石が飛来するかのような迫力に、急いでその場から逃れようとする。だが、動けない。超重力に身体を固定されている。
 動物の中でもトドはかなりの重量を持つ。
 オスのトドの体重は——1000キロを優に越える。
「うっ……ぐああああああああッ!?」
 細身の身体を、真上から北斗の巨体が押し潰した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニオ・リュードベリ

【先輩後輩】

アザラシちゃん気合十分だね!
あたしもアイス食べて元気いっぱい!
みんなで力を合わせて街を守ろう!

でもやっぱりちびっこを戦わせるのは気が引けちゃうな
だからおねーさん達に力を分けてくれない?
ほら、みんなあたしの近くに集まって
先輩も!
みんなで約束しよう
「無事にこの戦いを切り抜けてまた一緒に遊ぼう」って!

みんなの意思を一つにしてUC発動
アザラシちゃんは園長さんとお友達を守ってね
敵はあたしと先輩がぶっ飛ばすよ!

幽霊の相手はあたし
『伸びる影法師』で迎撃しつつなるべく足止め
多少のダメージは【激痛耐性】で誤魔化して
『アリスランス』でトラック目掛けて【ランスチャージ】だ!
先輩、あとは本命をお願いね!


茜谷・ひびき

【先輩後輩】

まさかちびっこ達も勇猛果敢に出てくるとは
俺達も負けてられないな
ああ、この街を守るぞ

ニオのUCのおかげで俺達もアザラシ達も強化できるな
これであの子達は自分の身を守れるだろう
前に出て無茶するのは俺達の仕事だ

『朱殷の刻印』を起動しUC発動
ニオがある程度幽霊を片付けるまで、俺はアザラシ達の方に流れ弾がいかないか注意しておく
必要なら『鉄塊剣』を盾代わりにしておこう

チャンスが見えたらUC発動
ニオが受けた物理的なダメージだけじゃない
アザラシ達が戦いの光景を、戦争の光景を前に受けた心の傷
それも振り払えるように力を籠める
俺が狙うのは内治一人だ
高めた炎を鉄塊剣に乗せ、渾身の【怪力】と共に食らわせる!



●約束
「いけいけ、がんばれ~!」
「負けないで~!」
 戦場とは思えない和気藹々とした声が響く。
 応援で、ときにはもっと直接的な援護で、子どもアザラシたちは猟兵を支えていた。
「アザラシちゃん、気合十分だね!」
 アザラシたちを振り返り、ニオが微笑む。恐れることなく元気爆発。サギ園長がなんとか抑えているが、もし園長がいなければ自由奔放に戦っていただろう。
「まさかちびっこたちも勇猛果敢に出てくるとは……」
 予想以上の勇敢さに、ひびきはやや呆気に取られていた。心配して眺めるひびきに、ニオが隣から話しかける。
「これは負けてらんないね! あたしもアイス食べて元気いっぱい! みんなで力を合わせて街を守ろう!」
「元気さで張り合ってどうする……けど、確かに俺たちも負けてられないな」
 両手をぐっと握ってエネルギッシュなニオに、ひびきは思わず苦笑い。そうして柔らかくなった表情のまま、静かに決意を呟いた。
「ああ、この街を守るぞ」
 芯の通った強い言葉に、ニオも隣で頷く。少しの間だけ沈黙を挟んでから、アザラシたちに向かって大きく手を振った。
「みんなー! あたしたちの近くに集まってー!」
「なになに~!?」
「さくせんかいぎ~!?」
 呼ばれた途端、アザラシたちが一斉に泳ぎ出す。サギ園長を揉みくちゃにしながら、ニオとひびきが立つ水路の足場の周囲に集合した。何をするのか興味津々、相変わらず目もキラキラだ。
「それで!? なにすればいいの!?」
「うーんと……みんなには、園長さんとお友達を守ってほしいかな」
「えーっ!? 守るだけ!?」
「ごめんね! やっぱり、みんなを戦わせるのは気が引けちゃうっていうか……」
「守るのも戦いの大事な仕事だ。俺たちが全力で戦うために、全力で自分たちを守ってくれ」
 謝るニオの後ろからひびきが補足を入れた。『大切な仕事』という言葉を聞いて、不満げだった子どもたちもやる気を取り戻す。
「わかった! がんばって守るよ!」
「うん、頼んだ! ……それともう一つ。おねーさんたちに力を分けてくれない?」
「わける~? どうやって?」
「ほらみんな、手を出して。先輩も!」
「……俺もか?」
「当たり前! みんなの中の一人だよ!」
 ひびきの腕を引っ張り、ニオは全員で緩い円陣を組ませた。それぞれの手と前脚が重なって、ニオの手はその上に置かれる。
「無事にこの戦いを切り抜けて、また一緒に遊ぼう! 約束だよ!」
「お~!」
「やくそく~!」
「……約束、だな」
 ニオの合図で全員の手が上がる。意思が一つになった瞬間、下卑た笑い声がした。
「美しい結束ですねぇ! その力がいかほどのものか、私に見せてくれませんか?」
 不気味な微笑をたたえ、三六が水路の足場に立つ。
 手を打ち鳴らせば、三六の真上に架かる橋に影が現れた。ブレーキ音と小銃の揺れる音を鳴らし、軍用トラックが停車する。荷台の幕の内側からは何人もの兵士の霊が飛び出した。
「……みんな!」
「うん! おにーさんとおねーさんもがんばって!」
 水に潜り、アザラシたちが後方に下がっていく。
 それを見届けてから、ニオとひびきは敵の軍勢に向き合った。
「さて、やっちゃおうか」
「約束までしたからな」
「そうだね! あいつらぶっ飛ばすよ、先輩!」
「ああ。守るのがあいつらの仕事なら、前に出て無茶するのは俺たちの仕事だ」
 ニオは白銀の槍を、ひびきは鉄塊の如き巨大剣を。
 武装を構える二人を前に、三六はゆっくりと片腕を上げた。
「まぁ、そう身構えないで。所詮、ただの銃ですよ」
 号令が発され、兵士の幽霊たちがトリガーを引く。放たれた銃弾の雨に対し、ニオの足元に広がる影が膨らむように蠢いた。
 自在に伸びる影法師は攻撃を受け止める壁となり、弾丸は次々とあらぬ方向へ飛ぶ。
「まだまだ! 絶対に……あの子たちのところには行かせない!」
 ニオが叫び、刃のように影が鋭く尖る。水路に飛び込んで接近を図る兵士の幽霊を串刺しにして、追撃を躊躇させた。
 ある程度は影の範囲。包むように防御も迎撃はできるが、大規模に展開した軍勢が相手では対応しきれない部分もある。
 銃弾が、ニオの頬を掠めた。痛みに影法師が揺らぎ、後方への射線が通る。
 容赦なく発射された弾は、横から割り込んだ金属の塊に遮られた。盾のように鉄塊剣を構えたひびきが囁く。
「大丈夫か、ニオ」
「先輩! ……うん、大丈夫!」
「心配する必要はなかったみたいだな。俺も思わず身体が動いたが……どうもあいつら、思ってるより弱くないみたいだ」
 ひびきが一瞥した方をニオも見た。乱れた戦況により聞こえなくなった声が聞こえてきた。
「おねーさん、がんばって!!」
「やくそく、守ってよ~!!」
 たくさんの兵士がそこにいるのに、アザラシたちは応援を続けている。高まった能力で水から飛び出し、宙をくるくる。勇気に満ちた声援に、ニオも釣られて笑顔になった。
「もっと元気になってるな……ユーベルコードの効果か?」
「たぶんね。やっぱり、あの子たちには負けてられない!」
 激痛を噛み殺し、ニオは迫る軍勢に視線を投げた。
 水面へと影が伸び、前兆なく膨張する。水をひっくり返すように膨れ上がり、大勢の兵士が一緒に巻き上げられた。
 隙が生じる。トラックを守る者は誰も居ない。
「約束は……守らないと!」
 トラックを狙い、アリスランスを投擲。投げられた槍は回転を伴い、蓄積された勢いで車両に深く突き刺さる。
 瞬間、爆発。爆風に吹き飛ばされる兵士の幽霊を見上げ、ニオはひびきを振り返った。
「先輩、あとは本命をお願いね!」
「任せとけ!」
 鉄塊剣を肩に担ぎ、ひびきが走り出す。爆破の混乱に乗じて幽霊たちの間を駆け、狭い通路を抜ける。
 三六の足場に飛び乗り、剣を相手に突きつけた。危機的状況にもかかわらず、敵の口角は吊り上がっている。
「猟兵の力、これほどとは……!」
「何がそんなに楽しいんだ?」
「何って、これほどの力を目の当たりにできることですよ。いやはや、素晴らしい——」
「街を襲ったことには何もなしか?」
 胸元に刻まれた朱殷の刻印が起動する。曼荼羅のような紋様に、焔のような紅蓮が灯っていく。
「子どもですら、これ以上街が壊れないよう動いてた。怖かったろうに、立ち向かってた。そうなることを考えてたのか?」
「それは私の知った話ではありませんねぇ」
「そうかよ。だったら教えてやる」
 鉄塊剣が火炎を纏う。威力として加算されるのは、仲間が負った心身の傷。
 ニオが受けた物理的ダメージ——加算対象は、それだけに留まらない。
 アザラシたちがこの戦いの光景で負った恐怖。戦争の光景を前に受けた心の傷。
 重い剣を両手で握り、ひびきは構えた。握る手には力が籠る。
 無垢な子どもが受けた傷を振り払い、焼き切るために。
「痛みを、この炎で——食らわせる!」
 踏み出し、ひびきが剣を振り上げる。
 怪力によって振られた剣は、深い傷を灼熱の炎とともに三六へと刻みつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウルザ・ルーナマリア

うわー!露骨に怪しい…これが変質者ってヤツか!
いやエージェントってのは分かってるけどこう…話が通じない感じがやべー気がする!
絶対に捕まる訳にはいかねえな…街も壊させねえぞ!

水路を活用して水中から攻撃。
トラックで狭い水路に飛び込む訳には行かねえだろうし兵士とかの幽霊飛び込ませるのも武装した状態できびきび動くのやりづれえだろ。
アザラシの子達にはあの危ないトラには近づかず、遠くからちくちくボールとか投げて妨害して危なくなったらすぐ潜って避難するよう伝えておくぜ。
タイミングの見極めはサギ園長頼んだ!
んで敵に隙ができたら銛や爪の先端向けてUC起動!
氷網で捕縛して水に引きずり込んだりフルボッコにするぜ!



●獣の領域
 幻朧帝国の手先と接触し、戦闘により追い詰めつつある猟兵たち。
 激戦の続く水路にて、ウルザは対峙する敵・三六に顔を顰めた。
「うわー! 露骨に怪しい……これが変質者ってヤツか!」
「変質者とは失礼な! 私はただ、あなたたちで実験がしたいだけです!」
「やっぱり話が通じねぇ……!」
 幻朧帝国のエージェントだというのはウルザにもわかっている。ただ、それを抜きにしてもいろいろ怪しさ満点だ。
 白衣の裏に覗く実験器具に、いつまでも絶えない不気味な笑み。
 いくら話しても噛み合わない会話も合わせて、ウルザは確信する。
 こいつはやべーやつだ。
「絶対に捕まるわけにはいかねぇな……街も壊させねぇぞ!」
「大胆な宣言ですねぇ。しかし残念、使い捨ての駒なら用意が大量にあるのですよ!」
 三六が片腕を掲げると、水路の端に一台の軍用トラックが出現する。荷台から続々出てくる兵士の幽霊を捉え、ウルザはアザラシたちを振り返った。
「おい! あのトラと幽霊には近づくなよ! 危なくなったら水に潜るんだ!」
「そんなぁ! ぼくたちも戦うよ!」
「大丈夫、遠くからでも戦う方法はあるだろ? それと、サギ園長!」
「どうした?」
「空から戦況を見て、敵に隙ができたら教えてくれ!」
「……承知した」
 サギ園長が飛び立ち、子どもたちもあたふたしながら攻撃の用意に取りかかった。
 これでいい、とウルザが前を向く。兵士の幽霊が水路に移り、こちらに接近しようとしている。
 小銃を構えて射撃しようとする兵士へ、ウルザは牙をひん剥いた。
「お前ら……どこでおれと戦おうとしてるか、わかってんだろうな!」
 発射された弾丸を避け、ウルザはそのまま水路に飛び込む。
 尾を動かして水中から肉薄。幽霊といえど地形の影響は受けるらしく、手足をばたつかせて立ち泳ぎしていた。武装していれば素早くは動けない。格好の餌食だ。
「隙だらけだぜ!」
 水面へ急浮上。ウルザの手に握られた三叉銛が兵士の胴を貫く。浮上の勢いで兵士の身体が水路から浮き上がり、他の兵士たちも攻撃を察知する。
 しかし、そこにウルザの姿はない。敵が見失った一瞬を突き、ウルザは水中から兵士を連続で仕留めていく。
「水の中なら敵はいねぇな!」
「ウルザお兄さんにつづけー!」
「えーい!」
 敵軍の注目が水路に集まる中、アザラシたちが横並びになって顔を出す。ぽーんとボールを打ち上げ、跳び上がって尾びれでスマッシュ。
 ボールは水路脇に控えていた兵士たちに直撃。ボトボトと敵兵が水路に落ちる。
「ウルザ! 今ので地上の敵が消えた! 一気に攻めろ!」
「よっしゃあ! 任せとけ!」
 サギ園長からの合図を受け、ウルザは水を蹴って加速する。点在する兵士たちの間に立つ三六に狙いを定めると、足場まで近づいて水上へ飛び出す。
「なっ、どこから……!?」
「へへっ、捕まえたぞ!」
 三叉銛の先端を三六に向ける。瞬間、銛の先からは冷気が放出され、冷気は氷の網となって三六を閉じ込めた。突き刺さる針に相手が悶えたそのとき、ウルザは網ごと三六を水に引きずり込んだ。
「がぼっ……!?」
「さぁ、ここからが本番だ! 覚悟しとけよ!」
 拳、脚、尻尾。目にも止まらぬ連撃が三六に叩き込まれる。一発一発が重く、速い。
 最後に三叉銛を握り込み、距離を取ってからウルザが突っ込んだ。
「もうこの街に手を出すな!」
 三六の腹に銛を打ち込んで、水上へ打ち上げる。
 街に降りかかった不条理は、大きく空へと吹き飛ばされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アーネスト・シートン
獣人がアザラシさんを狙っていますか…
ただねぇ、その大量虐殺兵器を使う時点で我慢の境界線超えているんですよねぇ!!
さすがにそのエゴは見て見ぬ振りできませんからね!!
虎にしては、あからさまにやせ細っているんで、体力型じゃないと思いますし、確実に注意しますよ。
軍用トラックをだしてきますか…はい、そうですか。
子供たちは隠れてください。
M.S.L.…高威力モード!!(攻撃力重視)
徹甲弾装填、くらえ!!(トラックに無慈悲なほどに穴をあけまくる)
(クイックドロウ)
炸裂弾装填、くらえ!!(トラックごと兵士の亡霊を爆裂で吹き飛ばす)
(クイックドロウ)
聖別弾装填(破魔)、くらえ!!(兵士を消失させる)

あなたには、これをお見舞い(滅竜銃)しておきます。
竜変身すると街ごとやっちゃいそうなので、さすがに避けましたが、あなたには一切の加減不要と判断いたしましたので。
確かにわたくしは動物好きですけど…あなた、結構人型に近いフォルムで、なお且つ非人道兵器を出してきたので、殺す気のない気分が吹っ切れました。
終わりです。



●憤怒の砲撃
 猟兵とアザラシたちの猛攻により、敵は確実に消耗しつつあった。
 肩で息をする三六が、ふらつく身体を震わせる。酷く傷ついていながら、顔から笑みは絶やさない。
「ここまでの抵抗とは……! 来た意味があったというものですよ……!」
「うわ~! あのトラさん、まだやる気だよ~!」
「なんか、目も怖くなってるような……」
 眼鏡の奥から鋭い眼光を飛ばす三六に、アザラシたちも怯え始める。
 ここまで戦闘に参加していただけで民間人の子どもとしては凄まじいが、相手の威圧感に圧倒されようとしていた。
 視線を遮るように、アーネストがアザラシたちの前に立つ。にっこりと、敵とは対称的な優しい微笑を子どもたちに向ける。
「よく頑張りました。あとはわたくしに任せて、隠れていてください」
「えっ……大丈夫なの?」
「もちろんですよ。向こうもかなり疲れています。すぐに決着はつきますよ。そういうわけで、サギ園長」
「応よ。離れるぞ、お前ら」
 羽ばたいたサギ園長に先導され、アザラシたちが戦闘の現場を離れる。心配そうに振り向く彼らに手を振り返し、アーネストは三六に向き直った。
 その顔に微笑みはない。穏やかながらも、確固たる敵意があった。
「さて、あなたの狙いはアザラシさんでしたか。いつもなら、動物が相手だと心苦しいのですが——」
 三六の片手に握られたアタッシュケースを、アーネストは睨む。
「ただねぇ、その大量虐殺兵器を使う時点で我慢の境界線超えているんですよねぇ!!」
 怒号が響く。
 この街に住む幾多もの命、それを無に帰す道具だ。そんなものを軽々しく使おうとしている。到底許せるはずがない。
「あなたが黙って帰るなら見逃したかもしれませんが——流石にそのエゴは見て見ぬ振りできませんからね!!」
「ほほぅ。具体的にはどうするんです?」
「決まっているでしょう?」
 両手に握り締めたM.S.L.——マルチプルスナイパーライフルを、静かに構える。
「あなたを殺して止めるんですよ」
「なるほど、面白い! であれば、その方法を拝見いたしましょう!」
 高笑いを交え、三六が腕を掲げる。
 三六が立つ水路の足場へ、トラックが音もなく出現した。水の上を走って停止した車両の荷台からは、ぞろぞろと兵士たちが降りてくる。虚ろな顔がこの世の者ではないことを示す。
「何、これらは他愛もない実験台ですよ」
 少なく見積もっても数十人、下手すれば百人規模。
 頭数で上回られてもアーネストは表情を変えなかった。
「軍用トラックを出してきますか……はい、そうですか」
 淡々と状況確認を終える。
 敵はトラにしては明らかに痩せ細っている。体力型ではないだろうし、何を仕掛けてくるかは予想ができない。警戒が功を奏して、冷静な対処へと繋げていた。
 弾丸を装填し、ライフルを弄る。攻撃の用意を隙と認識し、兵士が突撃。相手の小銃が火を噴くより速く、アーネストは銃口を突きつけた。
「M.S.L.……高威力モード!! 聖別弾装填、食らえ!!」
 引き金を引く。
 放たれた弾丸が兵士の群れを貫き、消し飛ばす。実体がないはずのそれに干渉した銃弾は、通常のものと差異があった。
「死人だろうが関係ありません。そこを退いてもらいます」
 冷淡に言い切り、再び銃を構え直す。今ので第一陣は崩したが、敵兵はまだまだ残っている。
 勢いに任せて兵士の霊が突っ込む。容赦なく胴を狙って射撃する。
 聖別弾は兵士たちを易々貫通。弾丸に刻まれた破魔の効果が霊体に作用し、複数体をまとめて浄化した。
「こんなものではありませんよね?」
 立て続けに銃口の方向を変える。先の一撃で祓えなかった兵士たちを迎撃。詰め寄られても銃弾をステップで避け、その最中も反撃を繰り出す。
 こちらに向かって殺到していた兵士が大きく数を減らしている。これを好機と捉え、アーネストが前へと走る。
 走りながら弾倉を交換。急停止し、ライフルを地面と水平に握る。
 照準は軍用トラックを狙っていた。
「徹甲弾装填、食らえ!!」
 何発も連続して銃弾が打ち込まれる。握る獲物をマシンガンのように操り、撃っては構えてを繰り返す。
 運転席、荷台、車輪。銃撃が装甲を突き破り、無慈悲なほどに穴だらけにした。窓ガラスは砕け、接合部を砕かれドアが外れる。ズタズタに破れた幕が自重でさらに引き裂かれ、穴の開いたタイヤと歪んだホイールは無惨に潰れる。
 アーネストの憤りを叩きつけられ、トラックは廃車同然の姿に。
 であれば最後は焼き払うのが筋というもの。
「仕上げといきましょう!」
 弾倉から徹甲弾を乱雑に抜き取って、別種の弾丸を組み込む。徹甲弾が地面に落ちるそのとき、既に射撃の準備を終えていた。
「炸裂弾装填、食らえ!!」
 銃口から撃ち出された弾丸が空を切り、穴だらけのトラックに突き刺さる。弾が鉄塊と衝突した瞬間、弾の中心に光が灯った。
 爆炎がトラックを呑み、次いで起こった爆風が周囲の霊を吹き飛ばす。一瞬の爆裂のあとには、燃え盛る車両と徐々に姿の薄くなる兵士たちしか残らなかった。
 戦闘の残骸を乗り越え、アーネストは三六の前に降り立つ。流石の彼といえど、この結果は予想していなかったらしい。先ほどまでの笑みは、やや引き攣ったものに変わっていた。
「はは……これは随分な結果で……」
「実験の方はもうよろしいですか?」
 笑いの消えた表情で、アーネストは三六に詰め寄る。相手の胸にリボルバーを突きつけ、引き金に指を置く。
「あなたにはこれをお見舞いしておきます。滅竜銃と呼ばれるもので、名前の通りドラゴンなどに対して使うものです」
「ど、どうしてそんなものを私に……?」
「徹底的に潰すためですよ」
 息を吐き、アーネストは続ける。
「竜変身して蹂躙する、というのもできたんですがね。それをやると街ごとやっちゃいそうなので、流石に避けました。しかしそのくらい、あなたには一切の加減は不要だと判断いたしましたので」
「非効率ですよ、そんな過剰な……! そうだ、私も動物ですよ! 動物が相手だと心苦しいのでは!?」
「えぇ、そうですよ」
 頷くアーネストに三六の顔が綻ぶ。
 だが、滅竜銃はより強く三六の胸に突きつけられた。
「たしかにわたくしは動物好きですけど……あなた、結構人型に近いフォルムですよね? なおかつ非人道兵器を出してきた。殺す気のない気分が吹っ切れました。殺さない理由はありません」
「ま、待て——」
 三六の呼びかける声を遮って、銃を握る手を振り上げる。繰り出されたアッパーは三六を軽く宙に浮かべ、アーネストとの間に距離が生じた。
「終わりです」
 引き金を引く。
 銃口から火炎が激しく噴出し、三六の身体を滅ぼす。
 断末魔が絶えると、街に物々しい音は二度と鳴らなくなった。

●どんどこアザラシ幼稚園
 猟兵とアザラシたちが脅威を撃退して数日後のこと。
「待て待て~!」
「わ~! 君、泳ぐの速くなった!?」
「へへん、こんなことだって!」
「うわっ、そんな深く潜って……! でも、それならわたしも!」
 アザラシ幼稚園は以前と変わらない活気に満ちていた。
 猟兵にも負けない超人的な力は見せなくなり、せいぜい運動能力と元気が前より増している程度に留まっている。
 子どもたちの様子をじーっと観察するサギ園長も、あれは何だったのかと頭を捻っていた。
 猟兵覚醒への前兆なのか、そうでないのか。
「……ま、いいか。平穏な日々に戻れたんだからよ」
「サギ園長~! 遊んで遊んで!」
「うるさいぞ! 今のお前らと遊ぶとな、めちゃくちゃ疲れるんだよ!」
「いいじゃんそれくらい~!」
 わいわいと、幼稚園に賑やかな声が飛び交う。

 戦争ばかりの獣人世界にもたらされた平和。
 次の時代を担う子どもたちの日常は、猟兵たちにより守られた。
 街に遊びに行くことがあれば、アザラシの子どもたちは尾ひれを振って大歓迎してくれるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月06日


挿絵イラスト