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アイドル・イン・ザ・スカイ

#ブルーアルカディア #戦後

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#ブルーアルカディア
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#戦後


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●羽ばたけ、アイドルの空!
「お前を貰う」
「え、変態? ストーカー? 悪質ファン? これが芸能界の闇!?」
「待て! 私が欲しいのはお前の身にある……」
「やっぱり私の体が目当てなのね! やめて、私は清純派永遠の13歳で売ってるの! そういう営業はしないんだから!」
「だ、だから違うと……ええい、元より会話などするつもりはない。ともかく、貰っていくぞ!」
「きゃー!」

●沈めろ、ギャグの沼!
「というお話でしたわ」
 ゾンビーヌ・ロッテンローズ(元カルト組織「リビング・デッド魔導会」の腐薔薇姫・f40316)が言った。つまりどういう話だよ。
「ブルーアルカディアにおいて、平和な浮島でのオブリビオンによる強奪行為は今も止むことなく起きているそうですわ。まあ、わたくしそもそも現役時代を知らないのですけど」
 アルカディア争奪戦が終了しても、屍人帝国やオブリビオンは現れ続ける。それは巨大帝国の残党だったり新興の小勢力など色々種類はあるが、それによる浮島の襲撃、強奪事件は未だ変わらず起き続けているのだ。
「で、今回は一人のオブリビオンがあるエンジェルを標的に強奪事件を起こすようです。オブリビオンの名は『クルーリュ』という男性のオブリビオン。彼は高貴な出自のエンジェルであり、気高い自分に相応しい翼を求め翼ある種族を見境なく襲撃、その翼を切り落とし自分のものとしているようですわ。彼にとっては良い翼だけが価値あるものであり、翼であっても自分に合わなければゴミとして切り刻み、そもそも翼のない存在は虫けら以下とみなしていますわ」
 翼であるならエンジェルに限らず、魔獣や異界の存在もターゲットとなるようだ。また彼自身も背に翼は持っているが、そもそもそれも本当に自前のものかは疑わしい。
「で、彼のターゲットとなっているのがアルエルというエンジェルの女性ですわ。体は小柄なものの不釣り合いなくらいに大きい翼を持ち、それがクルーリュの目に留まってしまった模様で。全く、こちらも男なら色々話の組み立て甲斐もあったものを……」
 ぶつぶつ文句を垂れるゾンビーヌ。とにかくそのエンジェルを助けに行けばいいのかと聞けば、彼女もとりあえずは同意する。
「ええ、まあそうなのですけど、これから向かえば敵襲よりだいぶ前にアルエル様に接触できます。なので、彼女が行おうとしていることを手伝って差し上げると後事が楽に進む、と予知に出ていますわ。何を行うかと言いますと、彼女のソロライブの手伝いで」
 どういうことかと促されると、ゾンビーヌは続ける。

「まずこのアルエル様、デビューしたての新人アイドルだそうで、この度野外ライブを一人で行うつもりのようですわ。ただ正直知名度は全くないので、鳴くのは閑古鳥ばかり。野外ステージは入場自体は無料なのですが、なかなかそれでもお客はいないようで」
 アイドルと言っても所詮は少し規模の大きなストリートミュージシャンレベル。なかなか現実は厳しいようだ。
「なので、彼女のライブに協力しお客を多く呼んでファンをつけてあげてくださいまし。呼び込みをしたり一緒に歌ったり物販の売り子をしたり、あとサクラになってもいいかもしれませんわね。アイドルなんてそんなものでしょう」
 どうやらこの陰キャゾンビはアイドルに何か偏見があるようだが、ともあれライブを盛り上げ彼女の人気をまずはあげてほしいということだ。

「で、ライブが盛り上げられたらそこにクルーリュが襲撃してきますの。それでアルエル様に翼を寄越すよう迫るのですが、この際多くのお客を呼び込めて盛り上げてますと、クルーリュに対し人の壁として立ちはだかってくれますわ」
 確かにそれならアルエルは守れるだろうが、代わりにギャラリーが危険にさらされないだろうか。
「ええ、ただこのクルーリュという方、相当昔に滅びた帝国の出身なようで、集まった方々のノリや空気にどうもついていけないみたいですの。ドルオタ的熱狂が高まってるところに飛び込んだ結果ギャグ時空的なものに巻き込まれてしまうというか、うろたえて初動を迷ってしまうようですわ」
 予知では相手がアルエル一人だったのでなんとか襲撃を続行することもできたが、多数の|ギャラリー《ドルオタ》に囲まれてしまうとさすがに対処に困ってしまうようだ。
 ……つまりこれネタ依頼だな?
「まあ結局のところ戦闘にはなるのですが、相手が気圧されている所に先制の一撃入れるとかすれば戦いを大いに楽に進められるでしょう。あるいはいっそファンと一緒に彼を振り回す方に回ってもいいかもしれませんわね」
 何もなければクールで冷酷、かつダークでスプラッタなイケメン敵だが、そんな空気を微塵も出させないまま沈めてしまえと言うことか。
「ついでに言うとアルエル様、実はけっこう強いです。マイクは|D.D《武器》だし|彼女が扇動《スターライト・リヴァイヴァー》すればファンたちもガチ戦力に変えられるレベルです」
 それでもあくまで彼女は武力でなく歌とダンスとパフォーマンスでのスターを目指しているし、流石にそもそもボス級オブリビオンと真っ向から戦えるほどではない。

 まあとにかく、依頼としてはオブリビオンに襲われる一般人を助けるというものだ。そこを忘れなければ何とかなるはずと、ゾンビーヌは転移を開く。
「それではいってらっしゃいませ……そうだ、囲いのドルオタたちが彼に分からせのおしおき(性的な意味で)とか、あるいは懲罰に護衛対象が嫌がっているような裏営業を彼にやらせるとかなら……!」
 明らかに予知の説明より生き生きした様子で妄想を垂れ流し始めたグリモア猟兵を横目に、猟兵たちはさっさと転移をくぐるのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。今回はブルーアルカディアでのシナリオになります。

 第一章では新人ソロアイドルの野外ライブを盛り上げてください。一緒に歌ったりバンドやバックダンサーとしてサポートする他、外での呼び込みや宣伝活動、また観客として彼女の歌を聞いて盛り上がるのも自由です。ただ本人より目立たないように一応注意。歌ってる歌はアイドル的なやつで、歌唱力自体はそこそこうまいです。

 第二章では『クルーリュ』とのボス戦。彼は己の高貴な体に適合する”翼”を探し求めて、残忍な殺戮を繰り返すオブリビオン……ですが古い時代の出身なせいで現代のドルオタとかギャグ空間とかそういうのの耐性が超絶低いです。アイドルや前の章で呼び込んだ観客と共に彼のクールで二枚目なスタンスを滅茶苦茶に崩してやるほどに戦いやすくなります。一応実力自体は結構高く、また翼を持っている相手を優先的に狙う傾向があります。

 一章、二章ともエンジェルのNPCが登場します。以下詳細。

 “背中と心に大きな翼”アルエル(自称永遠の13歳) エンジェルのディバインウィザード×サウンドソルジャー(SH)。
 自称の年齢相応に小柄で童顔だが、不釣り合いに大きな翼を持つピンク髪の美少女。売り出し始めのアイドルで利用料の安い野外ステージでライブを行おうとしている。現時点では無名もいいところだが、歌唱力やダンス力(それと戦闘力)は上々。性格は明るく前向きで全力投球だが少々勢い任せかつ思い込みが激しい。

 基本的にコミカルシナリオです。敵の本来の設定はダークですが、多少無茶なことをしてもギャグ補正的なもので簡単に死人は出ないかと。

 それでは、プレイングをお待ちしています。
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第1章 日常 『大空の海に響く音色』

POW   :    演奏、歌声を聴く

SPD   :    演奏に参加する

WIZ   :    舞い踊る

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ブルーアルカディア某所にある小さな浮島。そこにある野外ステージの横の控室で、演者が休憩を取っていた。
「うぅ……全然お客さんが来ない……」
 彼女の名はアルエル。自称永遠の13歳の出たてのアイドルだ。彼女は色々な手段(健全なものに限る)で溜めたなけなしの費用でこの野外ステージを借りてソロライブを行っているが、いかんせん知名度がなさ過ぎて気にかけてくれるものがいない。今終わった第一ステージも、彼女と閑古鳥の対バン状態であった。
「……まだまだ、始まったばかり。こんなんで負けてらんない! 私はアイドル! 人に希望を与えるために、まずは自分が希望に満ちてなきゃ!」
 どんな有名人だって最初は下積み。そう、あの屍人帝国をなぎ倒した猟兵たちだって、最初は得体の知れない冒険者扱いだったのだ。
「……実物見たことはないけど!」
 次のステージに向け気合を入れ直すアルエル。確かに観客はいないが、別にここは無人の孤島ではない。有無を言わさぬ常識外れな集客力があれば、島中から観客が来てくれるはずなのだ。
 そう、依頼を受けここにやってきた猟兵たちが、今からステージに出ようとする彼女にその常識外れを少し貸してやりさえすれば。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、アイドルの方ですかぁ。
宜しくお願い致しますぅ(礼)。

人を集めるのでしたら、利益とインパクトが有ると良いですかねぇ?
【豊饒佳饌】を発動し[料理][グルメ知識]を強化、『FTS』から『鉄板等の調理器具』と『丸のままの牛や魔獣』を出して焼き始めましょう。
そして、看板に『野外ライブのお客様にお肉無料配布』として宣伝しますねぇ。
『丸焼き』には時間がかなり必要ですが、『FKS』の「操速結界」で焼き時間の速度を調整すれば対応可能ですし、強化した[料理]と[グルメ知識]が有れば、肉質に合わせた焼き加減や味付けの調整も問題有りません。

その他、相手役等が必要であればお手伝いしますぅ。



 例え観客がいなくても次に挑もうと、控室からステージへ出ていこうとする無名アイドルアルエル。その彼女に、突如として声がかかった。
「成程、アイドルの方ですかぁ。宜しくお願い致しますぅ」
「ひゃいぃっ!?」
 誰もいなかったはずの場からの突然の声。それにアルエルも思わず奇妙な声を上げてしまう。
「あ、ごめんなさい、こちら関係者以外立ち入り禁止です。プレゼントなどは事務所を通して……」
 何でも一人でやってる彼女に所属事務所があるのかも怪しいが、とりあえずは営業用の調子で相手を追い出そうとするアルエル。
 だが、そもそも自分で言った通りここは関係者以外は入れない。いくら無名で観客もほとんどいないとはいえアイドルライブなのだ。簡単に部外者が入れるわけはない。
 そう、今現れたのは|運命に選ばれし者《予知に引っかかったオブリビオン被害予定者》の元に現れ関係者になりに来る存在、猟兵なのだ。
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は手伝いに来たことを端的に告げ、集客のための作戦を考える。
「人を集めるのでしたら、利益とインパクトが有ると良いですかねぇ?」
 客を呼びたければまずは気にしてもらわなければ始まらない。そしてその上でその場に留めたいなら、それをするだけの理由が相手になければならないのだ。
 そしてそれは集める側も同様。健全な営業をモットーとするアルエルの希望に合い、かつるこる自身の得意分野でもあるところ。それは。

 そしてしばし。『野外ライブのお客様にお肉無料配布』の看板を見て入ってきた客で、会場は賑わいを見せていた。
 るこるは【豊乳女神の加護・豊饒佳饌】を発動し、料理の知識と技術を増強。それをもって作った大量の肉料理で、周囲へのアピールをしていたのだ。
 何しろブルーアルカディアでは取った魔獣は焼いて食うものというのが常識。そして食べきれないほどの獲物を取ってしまった場合、それを周囲に配るのもよくあることだ。
 そして肉に惹かれて集まった者の耳には、ステージで歌うアルエルの歌声が聞こえてくる。食べている間も基本的に耳はフリーなのだから、お互いが邪魔になることもない。
「みなさーん、食べてますかー!?」
 そしてステージ上でのアルエルのマイクパフォーマンス。
「お口とお腹に大きなお肉、いっぱいですかー!? ステージにいるのは私、背中と心に大きな翼、アルエルでーす! お肉で幸せになった心の中に、ちょっとだけ私の名前も入れてってくださいねー!」
 元気いっぱいのアルエルの自己紹介に、もちろん全員が注目するわけではない。何だあれ程度に一瞥するだけの者や、他に見るものがないから何となく眺めているだけという感じの者もいる。
 だが、それでいいのだ。とにかく存在を認知してもらうこと、下積み時代はそれだけで十分成果と言えるのだ。そしてもちろん、中には彼女にしっかり注目し、歌に聞き入る客もいる。
 お陰でガラガラだった席も最前列部分はすでに満席。彼女に声援を送る客も出始めて来た。
 曲が終われば交流タイムとしてステージ下に降りてくるアルエル。向かうのは、今回の目玉としてるこるが焼く魔獣一頭の丸焼きだ。
 最初から段取りしていたわけではないので普通なら間に合うものではないが、そこは猟兵。装備パワーで丸焼きでありながら部位ごとに合わせた味付けと焼き加減の調整も完璧だ。
「これはおっきい……ちょっとチャレンジしてみます!」
 背中の翼を大きく広げ、丸焼きと大きさ比べをしてみるアルエル。彼女のトレードマークである巨大な翼が羽を散らせながらばっと広がり、周囲からちょっとした歓声が沸き上がる。
「魔獣に負けない大きな翼……って言いたかったけど、負けてませんよね? ね!?」
 ちょっとわざとらしくギャラリーに振るアルエルに、笑い声も上がる。それに乗り、調理スタッフ役として隣で焼いていたるこるも少し声をかけてみた。
「相手役等が必要であればお手伝いしますぅ」
「いえいえ、私後ろの大きさで勝負してますので! いえ汚い意味じゃなくて! ていうかキャッチ的にごめんなさい!」
 体の後ろにあるものの大きさがキャッチコピーの彼女的に、逆方向についているものが大きすぎるるこるはちょっと相手役として荷が重いようだ。ちなみに言うまでもないかもしれないが、彼女の前面は軽量級である。
 そんな彼女にトーク面でも意外とアイドル能力があるのかもしれないと思いつつ、るこるは巨大肉を使ってアルエルのライブに人を呼ぶのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!

うーん、あたし自身じゃなくてアルエルちゃんを目立たせてあげないと意味ないよね
だったら今回はあたしのキャバリア「メルク・フィクター」の出番かな!

【アクラナティヴ・ムーブ】で彼女のステージにしたり、バックダンサーにしたりで注目を浴びせちゃおう
大きさは正義だし、メルクの液体金属の装甲ならいい感じの演出もできるはず!
あ、あたし自身もメルクを遠隔操作しつつバックダンサーをやるから、衣装くらいは考えておこっかな♪



 突然の猟兵の協力により、アルエルのステージに蔓延っていた閑古鳥は駆除された。だが、主役のアルエルは出たての無名アイドル。このステージも最低料金で借りた格安のものだし、人も使えなければ余計な飾りつけなど一切ない。
「うーん、あたし自身じゃなくてアルエルちゃんを目立たせてあげないと意味ないよね。だったら今回はあたしのキャバリア「メルク・フィクター」の出番かな!」
 そのためサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は、自身のオブリビオンマシン『メルク・フィクター』を用いて野外ステージへと降り立った。
「ななな、何ですかこれ、超でっかいガレオノイドの人!? すみません、ステージへの乱入はご遠慮ください!」
 巨大な人型メカの登場で慌てるアルエル。だが彼女のバックで、メルク・フィクターは突如変形を始めた。
 装甲の液体金属を液状化、水のようにして辺りに流し始める。夏真っ盛りの暑い時期ということもありその見た目は清涼感満点だ。
 レールなしで水がループして流れるような形にしてステージを取り囲み、さらに後方には滝のように流れる膜状になる。ステージ全体を液体金属で覆うことで、安い野外ステージを季節に合わせた特注ウォーターステージへと変貌させた。
 そんな水に紛れ、サエはマシンから降りてアルエルの横に立つ。簡単に猟兵だと自己紹介すれば、既に一度手助けを受けている彼女はすんなり状況を受け入れた。
 というわけで、メルク・フィクターをいい感じに自由に使ってくれとアルエルに言う。何しろ大きさは正義だし、メルクの液体金属の装甲なら今やってる通りいい感じの演出もできるはず。
 さらには一部を人型のように立ち上がらせてバックダンサーにすることもできる。ボディの大部分をステージに割いているので小さく簡素なものしか出せないが、キャバリアがそのまま動けばアルエルより目立ってしまうのでこのくらいの方がちょうどいい。
 さらに、サエ自身も前に出る。
「どっちが本命かって? 今に答えは分かるよ!」
 【アキュラナティヴ・ムーブ】の効果でメルク・フィクターを操作しつつ自分も動くことは可能。というわけで自分もバックダンサーとしてステージに上がるが、そのついでに衣装も用意した。
 サエは普段はその豊満な体を見せるような高露出衣装を着ることが多く、それを活かした誘惑が最大の得意技だったりもする。だが、当のアルエルはそれ系の営業はしていないし、体形的にも|清純派《スレンダー貧乳》である。
 なので、ちょっと確認。
「どこまで脱いでいい系?」
「水着や可愛い下着くらいまでなら」
 アイドルたるものそれくらいは清純派でもやって当然。というわけで、用意してきた今年の黒ビキニで踊りだすサエ。布地は少し少なめだが、腰や手についたフリルが可愛らしさを加えており、夏のアイドルライブであればいやらしさも感じさせない。
 そして水しぶきをバックに、アルエルが飛び上がる。
「皆さん、今日はとっても暑いです! なので暑さに負けないよう盛り上がっていきましょう!」
 掛け声とともに羽を広げたのに合わせ、サエがメルク・フィクターを操作し水を炸裂させる。それと共にアルエルはいかにも夏らしい、アップテンポでハイペースな歌を歌い始めた。
「じゃ、折角水もあるので、用意していた第二衣装、ここでつかっちゃいます!」
 大きな翼を閉じて小柄な自分の体を包むアルエル。それが開くと同時にアルエルの来ていた衣装が脱ぎ捨てられ、水着風の少し露出高めの格好になった体が現れた。
 それに合わせサエは彼女の足元の水を大きく噴き上げる。足に触れる部分だけは金属にすることで足場となり、新衣装アルエルを水の柱で高々と持ち上げた。
「アルエルちゃんより目立たなければ……これくらいいいよね?」
 そして水を引っ込めて降りてくるアルエルにハグ。下品にならない程度に自分の大きな胸を軽く揺らしつつ、スレンダーな彼女と対比を作る。
 そして彼女の歌の盛り上がりに合わせ、ポーズを決めたり水を操作したりでそれに花を添えつつ自分もしっかりバックダンサーとしての役目を果たすサエ。
 真夏の野外に突如現れた水のステージは、暑さにうだる人々に元気を与えるアイドルを見事引き立てる舞台となっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『クルーリュ』

POW   :    |狂人の鋏《フースィゾー》
【2本の剣に分離する鋏 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    |害する鋏《ニュイールスィゾー》
【2本の剣に分離する鋏 】に触れた【血液】を、遮蔽物や迷彩に利用できる【対象の血液で出来た羽根】に変質する。
WIZ   :    |奪い取る鋏《アラシェスィゾー》
【人の背丈程の鋏 】が命中した対象を切断する。攻撃前に「【お前の翼を貰う】」と宣告すれば命中率上昇、しなければ低下。

イラスト:みづや由時

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フルール・ラファランです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの力添えにより、無人だったアルエルのライブ会場は大盛りあがりとなっていた。
 そこに、空から一つの人影が舞い降りる。
 長い髪に整った相貌、上等な仕立ての服に優雅な佇まい。まさに貴人と言うに相応しい美男であったが、手に携えられた大鋏とその背の翼は血に濡れ、凛々しき眼の奥か、は暗い狂気が隠すこともなく溢れていた。
 この男の名は『クルーリュ』。己に合う翼を探し翼持つ者を無差別に虐殺する狂える天使だ。
 男はアルエルの前に立ち、予知にあった宣言とやり取りを始める。
「お前を貰う」
「え、変態? ストーカー? 悪質ファン? これが芸能界の闇!?」
「待て! 私が欲しいのはお前の身にある……」
「やっぱり私の体が目当てなのね! やめて、私は清純派永遠の13歳で売ってるの! そういう営業はしないんだから!」
「だ、だから違うと……ええい、元より会話などするつもりはない。ともかく……」
 予知ではこの後強引に襲いかかり翼をもぎ取ろうとしたクルーリュ。だが。
「アルエルたんに何すんだ!」
 予知の段階ではいなかった、ステージ前列にいた観客たちが声を上げた。
「最低限のマナーも守れない奴がいるとファン全部の品位が疑われるんだ!」
「もしかしてお前ガチ恋勢か? アイドルの推し方分かってないだろ!」
 彼らもまたクルーリュを悪質なファンと見なし、正しいファン的見地に基いた糾弾をかける。
「な、何をいっているのだ……知っている言語のはずなのに、何を言っているのか全く分からん!」
 古い時代の生まれなクルーリュ。彼の生きていた時代にはなかった言葉を浴びせられ、どうしたものかすっかり困惑中。
 その隙に、アルエルも手に持ったマイクに仕込んだ|防犯装置《ディバイン・デバイス》をオンにしている。
「ありがとう、私、頑張るね! 応援よろしくお願いします!」
「まて、何をだ! 私はだな……!」
 客席に向けての健気感出したアピールに、観客からはまた歓声。そして攻撃を忘れるクルーリュ。
 さあ、このステージの影なる立役者よ。すっかり形無しでうろたえるこの|古のイケメン《前時代の年寄り》をどつきたおし、未来と実力(戦闘面含む)あるアイドルのステージを守れ!
サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!

ふっふーん、あたしはただの可愛いバックダンサーじゃないんだよー
クルーリュのハサミを【狐の罠糸】の糸で攻撃で妨害していくよ
ファンの人たちを利用していくのもアリだろうけど、あんまり血が出ちゃったりしたらアルエルちゃんも悲しんじゃうよね!

まぁ、あたしの攻撃も妨害に徹してるから、決定打に欠けてはいるけど……
で、さっきからずーっとあんた、メルクのステージの上で暴れていたって気づいてる?
最後には【アキュラナティヴ・ムーブ】の効果で液体金属の質量を叩きつけて、身の程を知らしめてやろっか!
せめてもの情けで液体金属を翼の形に見せかけたら、満足して消えてくれるかもね!



 己の翼を求め飛来した古のオブリビオン、クルーリュ。冷酷かつ残虐に標的を切り刻まんとした彼は、全く知らない言葉に囲まれ次に取るべき行動を迷っていた。
「|偶像《アイドル》崇拝……ここは何かの宗教施設なのか……? ふん、ならば下賤の者共の愚かな信仰などゴミよ。その翼にだけ価値を認めるのみ」
 もしかしたらちょっとだけ合ってるかもしれない予想をしつつ、クルーリュは改めて鋏を振り上げようとする。
 だがその刃は何かに引っかかったように動かず、開くことはなかった。
「ふっふーん、あたしはただの可愛いバックダンサーじゃないんだよー」
 クルーリュの後ろから得意げに言うのはサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)。アルエルのバックダンサーにして、彼女の翼とステージを守るべく駆けつけた猟兵であった。
 彼女の手には『狐糸「舌端」』の端が握られ、その逆側はクルーリュの鋏にぐるぐるに巻き付けられていた。何しろ困惑中のクルーリュは隙だらけ。【狐の罠糸】を気づかれず巻き付けるくらい造作もなかったのだ。
「ファンの人たちを利用していくのもアリだろうけど、あんまり血が出ちゃったりしたらアルエルちゃんも悲しんじゃうよね!」
 今回はアルエルのライブ応援も任務の一つ。ファンたちもやり方次第で戦力にはなるという話だが、血なまぐさい事にはしたくない。それにもっと単純な話として、可愛いアイドルが悲しむ姿は見たくないものだ。
 そんなわけで戦闘開始前に武器を封じられたクルーリュだったが、やはりオブリビオンとしての力は上等。力尽くで巻き付いた糸を引きちぎり、鋏を開いてサエに襲い掛かった。
「翼も持たぬ虫けらめ、私の鋏で刻まれることを光栄に思え!」
 鋭い斬撃がサエを襲う。サエはそれを躱しながら再度糸を鋏に巻き付けるが、一度種が割れたからかクルーリュは鋏を分離させ双剣化、刃を当てることで糸を切断し再度の拘束を許さない。
「背を見せるがいい。翼なき憐れな貴様に血の羽をくれてやろう」
 その刃が煌めくと、その軌道に僅かに何らかの力が揺らいで見える。これはただの斬撃でなく、クルーリュのユーベルコード【 |害する鋏《ニュイールスィゾー》】。触れた血液を遮蔽物や迷彩となる翼に変える彼の凶器を体現するユーベルコードの一つ。自分に限らず誰かがかすり傷一つでも負うたびに場は敵の有利になっていく。それもまた、サエがファンたちを戦いに参加させなかった理由の一つであった。
 そしてその刃が自分を切ることもないように、何度斬られても繰り返し刃に糸を巻き付け、相手の斬撃を防いでいく。
「まぁ、あたしの攻撃も妨害に徹してるから、決定打に欠けてはいるけど……」
 それは確かに相手の斬撃を封じてはいるが、一方で相手を倒すための攻撃ではない。ならばやはりファンや意外と強いというアルエルに参戦させるのか。
「それでも構わない。本当に切るべきものが向かってきてくれるなら歓迎しよう」
 そうなれば、クルーリュはサエを捨て置いてアルエルを切り刻むつもりだ。果たしてこの膠着状態を打開する手はあるのか。
「……で、さっきからずーっとあんた、メルクのステージの上で暴れていたって気づいてる?」
 それは、ずっと前。クルーリュが飛来するよりも前から既にそこに仕込まれていた。
 アルエルのライブ会場となった水の舞台、それは全て『メルク・フィクター』の液体金属装甲が形を変えたものであった。
 そしてその舞台が、今元の姿を取り戻す。
「どっちが本命かって? 今に答えは分かるよ!」
 液状金属が元の姿に戻り、五メートルのキャバリアとなってその質量をクルーリュに叩きつけた。クルーリュはとっさに鋏を振り上げその装甲を切り裂こうとするが、血の流れぬキャバリアをいくら切り裂いたところで血の翼は現れない。
「身の程を知らしめてあげるね!」
 そのまま固体となったキャバリアが、クルーリュの体を押し潰した。
「ぐおぉっ……!」
 簡素な野外ステージに戻った舞台上に倒れるクルーリュ。相手がダウンしたのを見て、サエはメルク・フィクターを液体に戻す。
「せめてもの情けで液体金属を翼の形に見せかけたら、満足して消えてくれるかもね!」
 大きなしぶきとなって散ったメルク・フィクターは、クルーリュの背を大きな水の翼のような形となって抑え込んでいた。
 しかし、水の翼などいくら羽ばたかせても空を舞うことは出来ない。
「やったぁ! ありがとうございます!」
 地に伏す男の上を飛び越え、アルエルは本物の翼をはためかせサエに抱き着き感謝を全身で表すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。
窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける。

◆戦闘
射撃(愛用は詠唱銃だが、様々な銃器を使い分けている)と魔術による広範囲攻撃が主。
魔力の操作に長け、射撃の腕も確か。
作戦次第では、闇色の武器を召喚(UC【異界の剣の召喚】)して前衛を務めることもある。

◆特技
・情報収集
・機械の扱いにも魔術知識にも精通している

◆UDC『ツキ』
闇色の狼の姿をしており、魂や魔力の匂いを嗅ぎ分けての追跡や索敵が得意。
戦闘は鋭い牙や爪で敵を引き裂き、喰らう。

◆口調
・シン→ステータス参照
(※使役は呼び捨て)
・ツキ→俺/お前、呼び捨て
だぜ、だろ、じゃないか?等男性的な話し方



 翼を奪い取りに来たはずなのに意味不明な言葉に翻弄され、力尽くで奪おうとすれば叩きのめされてしまったクルーリュ。そんな彼の前に一人の男が現れる。
「随分苦労なさっているご様子ですね」
 男の名はシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)。冷静に話しかけてきた相手に、クルーリュも顔を上げた。
「お陰様でな……だが翼持たぬ虫けらに労わられるほど落ちぶれてはおらぬ!」
 ようやくまともな会話ができたことで、クルーリュも本来の調子を取り戻す。だが、それはつまりボス級である彼がまともな戦いをしてくるということ。振り上げた鋏を双剣のように分離させ、クルーリュはまずはシンを切り刻もうとした。
 シンはそれを一歩引いて避けるが、さらに鋭い追撃を繰り出しクルーリュは相手を逃がさない。得意の射撃間合いに持ち込みたいが、クルーリュの実力は高く簡単にはそれを許してくれない。
 そうしているうちに、素早い切っ先がシンに掠り、血を噴き出させる。そしてその血は地に散ることなく、そのまま宙で固まり射線を塞ぐ障害物と化した。
「どうやら貴様は離れたがっているようだからな。虫けらの願いをかなえてやるほど私は優しくない」
 その障害を周囲に飛ばし、クルーリュはシンを囲い込む。離れることを許さず、また前に散らした障害で射線も乱す。相手の得意を瞬時に見切り対策を取るクルーリュの実力は、やはり相当に高いということか。
「しばし待っていろ、この虫けらを排除したらすぐその翼を切り刻んでやる」
 クルーリュは囲みの外にいるアルエルに告げる。アルエルは心配するような視線をシンに向けるが、シンは微笑んでそれに答えた。
「いえ大丈夫、すでに道は見えています」
 落ち着いた声。それを信じるというように、アルエルは力強く頷く。
 そしてその言葉をすぐに実現せんと、シンは血の囲みの中を一歩前に出た。
「苦し紛れか……」
 それを自棄で接近戦を挑んだと見たクルーリュは二つの刃をきらめかせ待ち受ける。だが、その踏み込みは刃の間合いの外で止まった。
「混沌よ、我が命に従い、立ち塞がりしモノを断て!」
 そして、その場に魔法陣が現れる。その中央から、闇が固まったかのようにしつこくの槍が高速で伸びた。
 それは散らされた障害物の間を真っ直ぐ抜け、クルーリュの体へ届く。
「がっ……!」
 まさかの一撃に、クルーリュは胴部を貫かれ頽れる。
「ご慧眼。確かに僕は射撃と後半以降劇が得意です。ただ、それ以外ができないとは言ってません」
 この戦いはシンの最大の得意分野には持ち込めない状況だった。だが、最大でなければ勝てないほどシンの手札は少なくなかった。
「それともう一つ。あなたのような方に大事な友人の翼を見せてあげる義理もありませんので」
 そして、シンの使役する梟の姿の精霊「ノクス」をこの場に呼ぶこともしていない。敵は翼あるものなら無節操に襲うという。例え勝算あれど、大事な仲間をそのようなものの目に曝したくはなかった。
 調子を取り戻したとて結局は勝てぬ。狂気と傲慢に奢る天使はその事実に貫かれたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キノ・コバルトリュフ(サポート)
キノキノ、キノが来たから
もう、大丈夫だよ。
キノノ?キノだけじゃ心配だって?
マツタケ!キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!
トリュフ!!キノ達の活躍を見せてあげるよ。
シメジ?キノが苦戦はありえないけど、その時は一発逆転を狙っていくよ。
キノキノ、みんなよろしくね。


シモーヌ・イルネージュ(サポート)
「苦戦してるようだな。手伝うよ」

クルースニクのデスブリンガー×宿星武侠
口調:「ざっくばらん(アタシ、アンタ、か、だろ、かよ、~か?)」
一人称:アタシ
特徴 さばさばした性格 快楽主義者 大食い 自信に溢れた表情

黒槍『新月極光』で戦おう。
基本は【怪力】を生かした力任せの攻撃。
相手を勢いで【吹き飛ばし】て、壁や地面に叩きつける。

数が多ければ【なぎ払い】をして対応する。

防御は槍で【武器受け】。またはサイバーアイによる【見切り】で対応。
甲冑でも受ける。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用可。

ぶっ飛ばしていこう。



 本気の戦いでも後れを取ったクルーリュ。しかし、どうせなら完膚なきまでに相手の意気を挫いてやりたい所だ。
 そう誰かが思ったかは知らないが、次に現れたのは中々に奇想天外な猟兵であった。
「キノキノ、キノが来たからもう、大丈夫だよ」
 奇妙な挨拶と共に現れたのはキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)。色白の可愛らしい少女であるが、その頭には巨大なキノコが被せられていた。
 彼女は『キノコつむり』というピュアリィの一種。エンドブレイカーにおいてかつては人と敵対する種族であったが、今は人類の一種として共存している女性のみの種族である。
「私は背中に大きな翼、あなたは頭に大きなキノコ! 二人で一緒に頑張りましょう!」
 それに気づいたアルエルが早速キノをゲスト的に歓迎し挨拶と歓迎の言葉をかける。そしてギャラリーもそれに盛り上がり、二人に対して歓声を送る。
「また、わけのわからないのが増えおった……」
 それを見て頭を抱えるクルーリュ。そしてそんな彼を見下ろすもう一人の人物が。
「何事も楽しくやろうぜ」
 色々悩みすぎなクルーリュにそう声をかけるのは、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)。
「楽しくだと……このような理解できぬものどう楽しめと言うのだ!」
 クルーリュは顔を上げてそう抗議する。その余裕のない様子に、シモーヌはやれやれと言った様子で首を振った。
「考え過ぎだと思うんだけどねぇ。アタシは考えるのあんまり好きじゃないけどさ」
 考えるときは考えるが、基本は自他ともに認める脳筋なシモーヌ。そんな彼女からとしては、分からないなら深く考えなければいいのにと思う所だ。
 そんな状況だが、流石にクルーリュもいつまでも凹んでいるわけにもいかない。気を取り直して立ち上がり鋏を構えれば、その狂気と威圧感に場の空気が一瞬で凍りつく。
「私の成すべきことは変わらぬ……お前の翼を貰う」
 自分の目的を思い出し調子を取り戻すクルーリュ。その冷たい視線がきっとアルエルを射抜いた。
「マツタケ! キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!! トリュフ!! キノ達の活躍を見せてあげるよ」
 しかしその空気をキノが再び砕く。キノはアルエルの前に立ち、その頭部の傘からピンク色の靄……胞子を大量にばらまいた。
 どこか甘い匂いのするそれは会場中に広まり、その場の全員の鼻孔をくすぐる。
「あ、あまい……」
 アルエルが少し自分の手を舐めたその時。
「うおおおおお、ファンサありがとー!!」
 その仕草に会場中が湧いた。歌ったわけでもないのにこの盛り上がり。キノの撒いた【ベルベット・パフューム】の好印象と興奮効果がファンの反応を増大させているのだ。
「い、今の何に喜ぶ要素があるのだ……?」
 やっぱりその辺りは理解できないクルーリュ。だが、それでも強引に踏み込んで鋏を振るいアルエルを狙う。
「地に這いし影よ。我に従い我を守れ」
 その踏み出す足元から影の塊が飛び出し、クルーリュの足を貫いた。香りとファンの反応に戸惑う所に、シモーヌの【影朧隠爪】が忍び寄り時を狙っていたのだ。
 シモーヌがさらにそこに力尽くでの槍の振り下ろしを重ねる。怪力で振り下ろされた武器は圧倒的な質量の塊となり、クルーリュを地に縫い付けた。
「ぐ、っ……!」
 翼を求める彼に対して地面に叩きつける攻撃は特に精神を削る。相手の歯噛みした様子を見て、キノはアルエルにも水を向けた。
「キノキノ、みんなよろしくね」
「ぶっ飛ばしていこう」
「分かりました!」
 それに答え、アルエルは自分の武器であるマイクを取り出す。
「皆さん、大きな翼で受け止めます! 大きな声援、お願いでーす!」
 アルエルの声にファンたちが大声で歓声を上げる。それがマイクに反響し、【ディバイン・サンダー】となってクルーリュに降り注いだ。
「私の、翼が……!」
「いや君のじゃないでしょ」
「シメジ? 嘘はいけないね」
 背に受けるダメージに呻くクルーリュに、二人の冷たい口撃が追加で突き刺さるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かに、独特な面の有る業界ですからねぇ。
大人しくご退場願えます?

まあ、退いてくれるならこのようなことはされないと思いますので、いつの間にか『警備』の腕章を取出して着用、お相手しましょうかぁ。
本当は制服に着替えた方が良いのでしょうが、体型面の問題が(遠い目)。

『FAS』により飛行、『FMS』のバリアでアルエルさんとファンの方々を保護しまして。
状況柄、流れ弾に加えて砲撃音でアルエルさんの声が阻害されても問題ですし、近接での[空中戦]でお相手しましょう。
『FBS』を展開し逃亡を阻止、『刀』を抜き【皍劊】を発動し脇構えに構えますねぇ。
【狂人の鋏】はどれを選択しても『近接で斬る』能力であることは共通、近接に対し後の先を取って先制攻撃可能な【皍劊】であればまず対処可能ですぅ。
『一時無敵化』と『万象を斬る』性質を活かし、彼の『鋏』の破壊を一撃目、流れで踏み込み本人を斬る二撃目の[2回攻撃]で一気に斬りますねぇ。

アイドルものの戦闘シーンに近いですし、アルエルさんに歌って頂いても?



 元々ブルーアルカディアには縁薄そうな文化な上、相当昔の生まれであるクルーリュにアイドル業界の事は理解できない。
「確かに、独特な面の有る業界ですからねぇ。大人しくご退場願えます?」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、そんなについてこれないなら帰ればいいと冷たくクルーリュに告げる。
 とは言えどんなに困惑しても目的だけは忘れないクルーリュ。言っても退いてくれるようなことはないというのは承知の上ということで、るこるはいつの間にか出した『警備』の腕章をつけクルーリュを強引につまみ出しにかかる。
「本当は制服に着替えた方が良いのでしょうが、体型面の問題が」
 何しろアルエルの身長すら超える乳回り、服は基本何がしかの手段で特注する必要があり、世界、種類を問わずその場での調達は困難を極めるのだ。
「ある時は謎の肉焼きスタッフ、ある時は無敵の警備員、しかしてその正体は! お腹とお胸に大きなお肉、夢ヶ枝・るこる猟兵です!」
 そのるこるをアルエルが自分のキャッチフレーズを改変した形で紹介する。大きな部位がついていることが売りの彼女としては悪意はないのだろう。
 その身体を、『FAS』のオーラの翼を背負い飛行させるるこる。その姿を見て、クルーリュは気を取り直して嘲るような表情を浮かべる。
「実体無き偽の翼か……虫けらが背負うに相応しい浅ましさよ。その肉ごと切り裂いてやろう」
 翼のみに価値を見出すクルーリュにとって、翼の形をしただけの飛行具は軽蔑の対象となるのだろう。自らの翼を広げるこると同じ高さに上がると、鋏を二つに分離させ双剣のようにして切りかかった。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『飛将の加護』をお与え下さいませ」
 それをるこるは【豊乳女神の加護・皍劊】で迎え撃つ。確かに後に抜いたはずの刀は、クルーリュの斬撃より早くその刃を迎え撃った。
 美しい装飾を持つ鋭い刃の鋏が、打ち合った刀に綺麗に折り取られる。血に濡れてはいても|人体部位《他者の翼》すらも容易く微塵に刻めるほどの鋭さを持つ鋏が一方的に競り負けたことに、クルーリュは驚愕の表情を浮かべた。
「何と……!?」
 さらに落下した剣先が何かに弾かれる。周囲に配置された浮遊戦輪『FBS』が、逃れ得ぬ檻として周囲に配置されていた。
「ふ……貴様を刻む程度、一つあれば十分よ!」
 残った刃を振るい、さらにるこるに切りかかる。近接に先制を取れる斬撃で一刀を落としてなお、その動きは鋭く早い。
 狂気に染まった美男子がかける一気呵成と、それを迎え撃つ女性。その絵面に、アルエルはマイクをとった。
「皆、心の翼を広げて!」
 ファンたちへの呼びかけから、アルエルの歌が響く。アップテンポで勇ましく、しかし軽やかで可愛らしい。アース系世界でのサブカルチャーでは戦うアイドルも珍しくないが、まさにその主題歌になりそうな歌。
 戦闘のバックにオープニングテーマのアレンジをかけるのはいわゆる『処刑用BGM』の定番だが、それが歌詞入りで曲そのままとなるとラスボスや幹部級との決戦などの重要な戦いに使われるもの。
 彼女たちを守るための『FMS』のバリアの光に照らされた彼女の歌は【スターライト・リヴァイヴァー】となってファンの熱狂、そしてるこるの戦闘力さえも強化した。
 砲撃を控えたこともあり、その声は空中までよく届く。敵の命と狂気、そしてアルエルの未来の栄光を切り開くため、万象を斬る刃が振るわれた。
「私は、翼を……!」
 それは残ったもう一本の刃諸共クルーリュを両断。その背から刃が触れていないはずの翼が根元から取れ、そして体と共に血の羽となって空に霧散した。
 歌の終了と共に大歓声が上がり、それに包まれながらるこるも降りてくる。
「ありがとうございます……私、これからもアイドルやってけそうです!」
 そのるこるに、アルエルはマイクに乗せて心からの感謝を叫ぶ。
「皆、私、これからも希望を背負って飛びます! 背中と心に大きな翼、永遠の13歳アルエルどうか、応援よろしくお願いします!」
 そして観客へもライブの締めとしての決意表明の挨拶。それと共に響く歓声に乗って彼女がこの蒼穹の空を飛ぶことを、るこるも拍手しながら願うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月01日


挿絵イラスト