ゴーストだって遊びたい~メガリス回収編~
●お墓では静かに!
心霊スポットといえば、と聞かれてぱっと思いつく場所は何処だろうか。
――まあ、多くはまず廃墟か墓地かの二択が頭に浮かぶだろう。
前者は既に人が訪れなくなった寂れた場所でありながら、稀にその雰囲気に惹かれた人が訪れる場所。
遠い昔日の軌跡を遺したまま、自然に呑まれ朽ちていく様は確かに風情があるといえる。
後者は既に人でなくなったものが眠る場所でありながら、度々に死者を弔う人が訪れる場所。
帰らぬ日々を想い、故人を想い、死者の安らかな眠りを願う。死者と生者の憩いの場ともいえよう。
いずれにしろ本来はどちらも静謐であるべきではないか。特に、後者は。
滅びゆく様に、亡くまでの生き様に
物語があるのはわかりはするが。
あの場所は恨み辛み募る亡霊たちが化けて出てくるだのなんだのと、尾鰭はびれ在らぬ噂を囁いて、肝を試しに荒らして騒いで、なぞ言語道断ではないかと思うのだが。
思うのだが!
――どうやら幽霊たちも悪ノリをしたいときが、あるらしい。
●でも本人たちが騒いでちゃあ仕方ないね。
「心霊スポットに
なっちゃったお墓に、行って、メガリス、回収してほしい。説明、するね」
白い浴衣でふわふわと死霊のように宙を漂う唯嗣・たから(忌来迎・f35900)がいくつかの操り人形を取り出して。毎度お馴染み人形劇の始まり、始まり。
事の経緯は大学生二人組が遊び半分でとあるお墓に肝試しに訪れたことから始まる。
まず、そのお墓は別に曰く付きでも何でもなく、ただ少々特殊な事情で亡くなった人間が弔われることもある程度の墓地だった。少々特殊な事情、とは――銀誓館学園の関係者とか、ゴースト関連の事件で犠牲になった学生とか、巻き込まれて亡くなった一般人とか。
そういった背景を知ったか知らないでか件の大学生二人組、此の世に未練を遺す幽霊が出るんじゃないかと酒の勢いのまま肝試しに訪れた。が、そもそも試す肝もなかったのか猫が物陰から飛び出しただけで怖くなって、脱兎の如く逃げ帰ったという。
そこまではよかった。全くよくはないが、まだよかったのだ。
その学生の一人が持っていた【手帳】に問題があった。
「どこで手に入れたかはわからない。けど、メガリス、逃げた時に落っことした。手帳が、メガリス。落とした場所が、ダメだった」
手帳の正体はメガリス【クノッソスの迷宮図】。
ぱっと見、ぐねぐね曲がった奇妙な罫線が描かれている手帳だが、その効果と落とした場所が致命的に相性が良すぎたのか悪すぎたのか。
クノックスの迷宮図の効果は、石・土・木が多く(……お墓は多いね)
人気の少ない(……お墓、普段は人気少ないね)狭い場所(……場所にもよるけど今回は狭い墓地だったんだ)を迷宮に化すというもの。そのかわり迷宮を越えると、持ち主にはとんでもない幸運が授けられるらしい。
「それを、とある学生のゴーストが、拾っちゃった。そのうえ、なんか、効果に気付いちゃった」
気付いちゃった。
「それで、普段、人が来ないから、つまらないって。心霊スポットとして、人を呼んで、遊びたいって。文化祭のお化け屋敷のつもり、みたい。肝試し? 迷路?、とにかく、付き合ってあげて。満足したら、返してくれるから。もし要るなら、持って行って、いいよ」
とは言え、一般人をご招待する訳にもいかないってことです。
まあ、ひとまずは幽霊たちと遊んであげてお墓迷宮をお墓に戻してあげましょう!
尚、幽霊のタイプは色々います。詳しくはMSコメント確認してね(メタい)
「ことが落ち着いたら……お墓参りも、いいかもね。もうすぐ、お盆だし」
なるーん
おはこんちばんは、なるーんです。
こんなメガリス依頼でいいのだろうか。
とりあえず、オブリビオンだって遊びたいシリーズ番外編!
ゴーストだって遊びたい~メガリス回収編~です。
因みに銀雨は9割知りません。詳細拾えない可能性が高いので予めご了承ください。
●やれること
第一章:お墓迷宮をクリアする。
どうにかこうにかお墓迷宮をクリアしてください。
色々な幽霊が話しかけてきたり、驚かしてきたりします。以下よりチョイスorダイスロール。
・おじさん、おばさん(井戸端会議な感じで話しかけてきます)
・幼いこども(ホラー味強くなります)
・件の手帳拾っちゃった学生幽霊(しょうもない驚かしをしてきます)
第二章:お墓参り。
お墓参りです。
以上、よろしくお願いします!
第1章 冒険
『心霊スポットの謎を追え』
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POW : 身体を張って調べる
SPD : 文明の利器を駆使して調べる
WIZ : 魔力を活用して調べる
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建依・莉々
「ばっちり理解した。驚かせばいいのね。(ぐっ)」違)
化かす・驚かせる・怖がらせるなら、どろんバケラーにお任せ♪ のっぺらぼうから爆走生首まで、手広くひゅーどろんしちゃいます♪ あ、物理系でげんこつ(+怪力)、触手(+捕食)もあるよ♪ BTだから、天井からぴちゃん、なんてのもできるし♪ ふふふ、ばりえーしょんほうふっ♪ え? 驚かされるほう? ・・・ま、いいよね?
相対する幽霊は、ダイスロールでお願いします。どのタイプであれ、役割逆転、追いかけ回そうとします。相性良さそうなのは、学生? あと幼児は女の子ならお揃いかも?
「ふふふ♪ ホラー味なら負けない♪」
【手帳】は・・・十分楽しんだら回収します♪
●誰も止める人はいなかったんだ
「ばっちり理解した。驚かせばいいのね!」
此度も遊びに来てくれてありがとう!
ブラックタールの可愛い可愛い女子小学生、建依・莉々
(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)ちゃんがグリモア猟兵の話を聞いてぐっとサムズアップした。
本来は此処で止めるべきなのがグリモア猟兵……である筈なのだが。
少女(外見年齢12歳、但し価値観は人外)と幼女(外見年齢9歳、但し思考能力は6歳で止まってる)をかけあわせたらどうなるかというと、だな……?
「……! いいと、思う! それ、楽しそう!」
一般的に考えて~とか普通に考えて~とかそんな常識に凝り固まったものなど、幼心は知らんのである。
幼心は自由だ。何物にも縛られていないのだ。好奇心は鳥の翼のように羽ばたくものなのだ。
そもそも件の大学生からは、お化け役やりたい! とか言われていないのだ。幼女への依頼が曖昧なのが悪い。
どんな驚かせ方がいいかな? こんなのはどうかな……?
夏の日差しにも負けないキラキラと輝く少女たちの瞳。蝉時雨も声を潜めんばかりに楽し気な笑い声が弾む。
――くすくす、ふふふ。
そんな少女たちの影は人の形を留めていなかった。
●それではお墓迷宮へ!
「いってきまーす!」
グリモア猟兵に見送られて莉々ちゃん、元気に墓場迷宮へ!
墓場迷宮は無機質な石の壁と天井で覆われていて、暗くはないがほんのり明るい。床は玉石がじゃりじゃりしていたり、土がそのままだったり、草が生えていたり、迷宮で迷子になった様子の虫さんがぴょっこり顔を出していたり。
そんな墓場迷宮をてっくてっく進む莉々ちゃん。
真っ赤なランドセルをリュックサックがわりに、足取りはタップ・ステップ&スキップ! るんるん鼻歌歌う莉々ちゃんのテンションはまるでピクニック!
(ふふーん♪ 化かす・驚かせる・怖がらせるならどろんバケラーにお任せ~♪)
そんな楽し気な少女を驚かせんとしてそろりそろりと迫る影が二人。ダイスの女神様が差し向けた刺客はおじさん&おばさんの二人組でした! 二人組はひそひそ、こそこそ、どう驚かせようかと内緒話。本当はお喋りしたいだけで、お化け役みたく驚かせたりとかそんなつもりはなかったんだけど……。
(あらあら、あらあら。なんて可愛いお嬢さん! 遊びに来てくれたのかしら? 嬉しいわぁ~!)
(はっはっは、それなら期待に応えないとなぁ! 泣かせないように程々でいくか!)
傍から見れば莉々ちゃんは普通の女子小学生。おじさん&おばさんにとってそれはそれは可愛くってかまいたくなるお年頃である。それに小さい子に井戸端会議的なノリで話しかけたらきっと困っちゃうわ、とはおばさん談。
そんな訳で此処はコンセプトに従ってお化け役になって、シンプルに後ろから声をかけてちょっとだけ怖い顔して驚かせよう……!という話になった。
そろり、そろり。音がする足などとうにないけれど、気配がするような身体もないけれど、ましてやひそめる息もないけれど。それでもそろり、そろり。おじさん&おばさんは莉々ちゃんに近付いて……。
「おじょぉさぁああん……」
と声をかけました。そう、声をかけてしまったのです!
「はぁい~?」
くるり、振り向いた莉々ちゃんのお顔は。
「ぎゃあああ!?」
「きゃあああ!?」
なんと、のっぺらぼうだったのです!
「おじさぁあん、おばさぁあん、ねえ、わたし、お顔、お顔がないの。お顔が、ほしいの~」
うらめしやぁ、と続く筈のおじさん&おばさんの声は大絶叫に! そんな見事なリアクションを貰って、楽しくなっちゃった莉々ちゃん。怖~いお声と演技で追いかける! 追いかける!
逃げ惑うおじさん&おばさんを右に左に追いかけてみたり。二人が油断したところに、天井からどろ~んと逆さま姿で現れてみたり。どろりと溶けた姿で床から声をかけてみたり。
お化けのための墓場迷宮はすっかり莉々ちゃんによる莉々ちゃんのためのお化け追いかけ迷宮に!
「えへへ、楽しかった♪ さ、手帳さーがそ!」
そうして満足するまで散々追いかけまわした莉々ちゃん。ひゅる~りどろんと姿を消してしまったおじさん&おばさんを見送って、ニコッと可愛らしい笑顔を見せた。引き続き墓場迷宮のお散歩に勤しむ莉々ちゃん。
そんな莉々ちゃんをひっそり物陰で見ていた件の学生幽霊は、て、手帳ゴールに置いておこう! とぷるぷる震えていたという。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
Pow
くのっ、そす
むう。発音が難しいね
ともかく迷宮と云うことだ
残酷なメガリスではないけれど…いやでも迷ったらずっと出られないのか?
それは困り果ててしまうな
僕なんて壁が壊せなきゃ迷宮暮らしか?それは寂しい
壁に右手をつきずっと歩く
古式ゆかしいがこれが確実…だと良いけど
何せメガリスだしねえ
…
気が付くとおじちゃんおばちゃんがいる
最近暑いとかうちの子が歯を磨かなくて、とか
宿題する前に遊びに行くとか
年頃の女の子は難しい…
ん?
ああそれは気になるな
僕にも14になる娘がいて
え?食事ですか
まあ野菜と獣で…
話ながらも壁伝いに歩くのは忘れない
野菜をあげようと言ってくれたが遠慮しとこう
とにかく出口まで地道に歩こうかね
●わかる。発音むずい。
「くのっ、そす」
やや頼りなげな発音にこくりと頷くグリモア猟兵。
「むう。発音が難しいね」
難しい顔をする酒井森・興和(朱纏・f37018)にグリモア猟兵、同意するようにこくこくと頷いた。わかる、ちょっと発音難しいよね、クノッソス。ちょっと言いにくい。ソックスを入れ換えてノを足しただけなのに! 寧ろだからこそ、か? まぁ、とにかく!
「迷宮と云うことだが……迷ったらずっと出られないのか? それは困り果ててしまうな」
はい、つまりはそういうことですのでさくっとご対応お願いします!
●井戸端会議
「僕なんて壁が壊せなきゃ迷宮暮らしか? それは寂しい……が、壊すわけにもいかないしな」
墓場迷宮へと送り出された興和は、何処までも果てが見えなさそうな通路を見通しながら、ふむりと少し考える。墓場迷宮の元は墓地、壁は墓石の可能性もあるわけで。というか、よぉく目を凝らしてみれば壁や天井の色や材質にいまいち統一感がないし、なんだか墓石っぽい名残はやっぱりあるわけで。
「古式ゆかしいがこれが確実……だと良いけど。少し失礼する」
壁に向かって手を合わせるとぺたり、右手をつけた。所謂、右手法というやつである。とはいえ、残酷なものではないにしろ、相手する迷宮はメガリスによるものだ。常に変動していたりするかもしれないな、と若干の不安はあるものの、興和は壁伝いに迷宮を進む。
「おや?」
不意に壁から右手を離してしまわぬようにだけ気を付けながら、迷宮を進むこと暫し。ぴゅ~ん! と風を切るような速度で興和を通り過ぎるおじさん&おばさんの幽霊。実際、興和の髪がちょっと靡いたりしたのでものすごい速度だったっぽい。
(なにをそんなに急いでいるのだろうね?)
グリモア猟兵が言うにはお化け屋敷じみた迷宮ではなかったか。そんな迷宮で出現する幽霊ならばお化け役と考えられるが、はてさて。通り過ぎた二人組はまるで、ひどく驚かされて逃げてきたという雰囲気。荒れる息などなかろうに、少し離れた前方でぜえぜえ肩で息をする二人組が気になって。
「そこのお二人、」
「ぎゃああああ!?」
「きゃああああ!?」
「っ!?」
声をかけたら大絶叫! かえって興和がびっくりする羽目になった。
話を聞いてみたらのっぺらぼうの女の子に追いかけ回されていた、という。話から伺える特徴から先に赴いた猟兵のよう。それは災難だったね、と声をかけてやればそこから始まる井戸端会議。止まらないおじさん&おばさんのマシンガントーク!
さっきの女の子、娘の小さい頃のようだったわ。昔と言えば聞いたかしら? 今は暑すぎてプールが中止なんですって。そうなのか、俺の娘が小さい頃は寒すぎてプールが中止になっていたのになぁ。それでね、この間、様子を見に行ったときにはすっかり大きくなっていて、娘が反抗期でパパが困ってるみたいなのよ! 宿題しないで遊びにいっちゃうし、年頃の女の子は難しいわねぇ!
「ああ、それはわかる。年頃の女の子は難しい。僕にも14になる娘がいて」
あらあら、多感な時期じゃない! 大変ねぇ。成長期なのに体型とか気にしたりしちゃうでしょう? あなた、食事とかどうしてるの?
「え? 食事ですか。まあ野菜と獣で……」
魚と果物も忘れちゃだめよーー? そうだぞ。ああ、折角だから兄ちゃん、俺ん家の野菜持ってくか?
「いや、お構いなく……」
(なんだか賑やかだなぁ……)
寂しさとは無縁な大層にぎやかな声が無機質な迷宮に木霊する。
マシンガントークの合間合間に相槌打ちながら、興和はてっくてっくと迷宮を進んでいった。
結局、おじさん&おばさんは出口にたどり着くまでその旅路を共にして。お別れする頃には、お喋りして大満足な二人は、興和を笑顔で見送ってくれたという。
大成功
🔵🔵🔵
レイヴァ・エレウネラ
pow
「心霊スポットかぁ。
キミたちはどんな手段でボクを驚かせてくれるのかな♪」
基本的に怖いもの知らずな性格だからそう簡単にお化けには驚かないよ。
むしろ怪現象が起きたらどこにお化けがいるか探し出したりするかも。
話しかけてくる霊に対してはボクも普通に会話してみたり。
そんな感じで散々楽しんだ後…
…あれ何しに来たんだっけ。
そうだ、手帳を見つけないと!
そんな感じで、最終的には目的通りに手帳を手に入れようとするよ!
●ゴーストだって遊びたい!
そして最後に墓場迷宮へと足を踏み入れた猟兵もとい女神レイヴァ・エレウネラ
(恐れ知らずな外界の女神・f44350)は――
「心霊スポットかぁ。キミたちはどんな手段でボクを驚かせてくれるのかな♪」
やっぱりこんなノリだった! ゴーストだって遊びたい! 否、遊びたかった! 主に驚かせる側で! ともう過去形でいうべきか。やはり、日々世界を渡りオブリビオンと戦う猟兵たちにとっては、ただ純粋に驚かせたいな~って悪戯しかしないゴーストはカワイイものになってしまうのかもしれない。
だって呪殺するわけでもないし。凶悪に呪詛るわけでもないし。ちょっと怖いお顔でうらめしやぁくらいで……ああうん、これは娯楽になっちゃうわ。だって人間が演じるお化け屋敷とかわらないもんね!
なんならレイヴァは神様である。UDCアースのこと日本においては、場合によって幽霊なぞより神の方がおそれられることすらある。ヒトコワホラーがあるならばカミコワホラーがあるのが日本である。
だからゴーストたちだって遠慮しちゃったりするんだわ!
まるでウインドウショッピングを楽しむように足取り軽く迷宮を進むレイヴァの後ろから、こそりこそりとついてくるのは手帳を拾った件の学生幽霊くん。脅かしたい! しかしなんかとても高貴な存在っぽいよ、あのお姉さん! みたいなゴーストになったからこそ相手の存在の違いがわかっちゃう感じである。
(でも、でも! 折角だからやっぱり脅かしたい!)
ごくり、仕草だけだが生唾を呑み込む学生くん。いよいよ覚悟を決めたようだ!
それはレイヴァが墓場迷宮を進んでいたときだった。ていうか、それしかできないんだけれども。
ふと、ぴちょんぴちょん、と水が落ちる音が聞こえる。おや? と首を傾げるレイヴァ。きょろきょろ周囲を見渡してみるけれど当たり前だが水場はない。
「どこからだろう?」
音のする方向に振り返ると、今度は背後からぴちょんぴちょん。ん~? と振り返るとまた背後から。
「これは……」
おちょくられてるか~? と思うレイヴァ。こうなったら絶対に音の原因を探さねば! 音は少しずつ少しずつ近付いている様子。暫く振り返り、また振り返るを繰り返して。いよいよ、ぴちょん、水滴が首にかかった。つまり、水は上から垂れている様子。
「そこだね!」
「わぁああ!? バレた、ごめんなさーーーーい!」
天井にはポルターガイスト現象を用いてペットボトルからお水を垂らす件の学生幽霊が。学生幽霊はレイヴァと目が合うと、バレたーとぴゅるり素早く逃亡する。追いかけるレイヴァ。そして暫く進むと――今度は別の怪奇現象が。
「これは……面白くなってきたね!」
女神様、めっちゃ面白がっていた。
こうして怖がるどころが楽しむ女神様とどうにか驚かせようとする学生幽霊の奮闘は出口まで続いたという。
大成功
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第2章 日常
『銀の雨降る地での墓参り』
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POW : あの頃から俺たちはどこまで成長したのかな……
SPD : あの人に伝えたい事がある、嬉しいことも悲しいことも
WIZ : 誰かの付き添いで来た。聞かせてほしい、あなたのこの人との思い出
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●なんだかんだ楽しかったらしい
「あ~楽しかった~!……あれ何しに来たんだっけ。そうだ、手帳を見つけないと!」
「あ、手帳そこです」
女神様に思いつく限りの怪奇現象を尽くあばかれ尽くしりした学生幽霊。白旗降参といった様子で両手をあげて、あっさりと出口に置かれた手帳を指さした。
外装は真っ白な手帳。中を開けてみればカレンダーのページすらなく、ぐねぐね曲がった罫線が走るばかりですっかり手帳の体を成していない、どちらかといえばノートのようなそれ。グリモア猟兵に聞いた特徴と一致していることから、これが件のメガリスで間違いないようだ。
さて、このメガリス。
残酷凶悪極まりないメガリスではないし、条件さえ一致しなければ迷宮化は発動しないのだから所持していても問題ない。もし、うっかり迷宮に迷い込んだとしても抜けてしまえばいいだけで、なんなら迷宮抜ける度に幸運のバフがかかるくらいだし、猟兵ならば如何様にも扱えよう。学生曰く、ものは試しと1ページ破って持ってみたところ、短い迷宮を攻略した後にちょっとの幸運効果があったそうだから、分割して持っていてもある程度の効果は見込める様子。メタい話が、アイテム化はご自由に★
ところで、迷宮化が解除された墓地はすっかりもとどおり。
燦々降り注ぐ夏の日差し。木漏れ日が木の葉の影で墓石をかざる。ぬるく湿った空気の中にひんやりとした空気が混ざるのは、墓地のあちらこちらから墓参りの待ち人を待つゴーストたちがちらほら姿を見せているからか。じーわじーわとさざめき鳴く蝉しぐれの合間に、お客さんだよ、珍しいね! なんて幼子たちがきゃいきゃいはしゃぐ。
そんないつもより少しだけ賑わう、ただの墓地。
縁がある墓に心当たりがあるならば、思い出語りに参るのもいい。縁がなくっても構わない、きっとゴーストたちは歓迎してくれるだろう。ゴーストたちのちょっとした悪ノリ悪ふざけの悪戯騒動は、解決したのだから――あとはどうぞ思いのままに。
酒井森・興和
今回のメガリスはまだ穏やかな方かねえ
所持者が無ければ銀誓館へ管理お願いしよう
…墓参りかあ
葛城の決戦で亡くした
興安嶺小父さんと姉さんを探して見つけてそのまま葛城の御山に埋めた
せめて墓をと作ったものの
僕には墓参りの習慣が無いからな…
さっきのおじちゃんおばちゃんは学生時分にお世話になっていた商店街の人たちを思い出したよ
ここの墓場の住人?かな
彼等のお墓にお参りしようか
あ、やり方を訊かないと
ふむふむ
線香と水と花を…
持ち合わせがないので水を掛けて
手を合わせる
成仏…言葉は知ってるが
僕には成仏とやらの概念に縁が無いねえ
まあいいや
お墓は死後の家みたいな物かね
時間もあるし草取りしてお墓を掃除して磨いていこうか
建依・莉々
アイテム化きぼー♪
「お墓参り? 故人を偲ぶ? ・・・分かった、やってみる!」
木陰に座って入道雲を見上げながら、故人を・・・うーん・・・思いつかなかったので、さっきのゴーストおじさん・おばさんを思い浮かべます。あの雲、おじさん・おばさんに似てるなーすっごく遊んでくれたなー楽しかったなー・・・あ、雲がマンモス肉に。おいしそー・・・おじさん・おばさんも美味しかったかな? ちょっとだけ囓らせてもらえばよかったかな? あ、雲がPみたいに。おいしかったなーオブビリオンだから、きっと又会えるよね、じゅるり。あ、あれもおいしかったな、また喰べたいな♪ じゅるじゅるり♪
莉々は「故人を偲ぶを覚えた」違)
●因みに、普段はマヨイガにいるよ
折角だから寄ってって! 家人がくるのもお盆だけで寂しくてな。なんて、まるで客人を招くようにおじさん&おばさんに案内されたのは、シンプルな墓石が寂し気に並んでいる墓地の端っこ。銀誓館学園関連の墓地だから管理はされているだろうが、少しばかりの草や苔がのびのびと生え茂っている。
ごめんなさいね、散らかってて。って興和と莉々ちゃんに笑うおばさんとおじさん。しかし――
「……墓参りかあ。僕には墓参りの習慣が無いからな……」
興和は、葛城の決戦で亡くした家族を御山に埋葬した過去がある。数ある遺体の中から家族を探して、せめてもと思って墓を作って埋葬したのだ。あれ以降、御山の墓を訪れてはいない。さて、今頃どうなっていることやら。
「お墓参りって、なあに?」
そして莉々ちゃんはそもそも墓参りというものを知らなかった。きょとりと首を傾げる。
興和と莉々ちゃん、人間に見えてしっかり人外だ。お盆とかお墓参りは人間の風習や習慣であって、二人には馴染みがないもの。つまり勝手がよくわからない。
参らなくていいのよ、少し話し相手して頂戴! なんておばさんは笑うけれども。そうはいかない、と首を振るのは興和。教えて教えてー! と興味津々に身を乗り出してたずねてくるのは莉々ちゃん。
おじさん&おばさんたち、やはり嬉しいのか、ありがとう、とお礼を一言。お墓参りの由来とお作法を丁寧に話してくれた。
「ふむふむ。まずは、線香と水と花を……」
「お線香とお花ないよ?」
「うん、水だけ掛けて手を合わせよう。ああ、その前に掃除をしようか。お墓は死後の家、みたいな物なのだろうから」
「そっか。幽霊だとお掃除できないもんねー」
二人はせっせと草を抜き、掃除道具で墓石を磨き、丁寧に苔を落とす。墓石はすっかりピカピカだ。
「あとは僕が捨ててこよう。休んでおいで」
「はーい! えっと、先に手を合わせて~っと」
ちまっと手を合わせた莉々ちゃん。興和は小さい莉々ちゃんを木陰で休ませて、ゴミをまとめる。わざわざありがとうねぇ、おじさん&おばさんの笑顔は晴れやかだ。
あらかた片した後、興和も手を合わせた。さて、と成仏を願えども。
「僕には成仏とやらの概念に縁が無いねえ……」
かまわんさ、まだまだ成仏する気ないからなぁ。そうねえ、孫の顔くらいは見てからじゃないとねぇ。カラカラ笑うおじさん&おばさん。
どういった経緯で亡くなったのかわからないけれど。不幸ではあった筈なのに、突然の家族との別れで悔しい思いをした筈なのに――まるで健在な人間と変わらず明るく在る二人に、興和は。
「人は――あなたたちは、逞しいな」
学生時分にお世話になっていた商店街の人たちの笑顔を思い起こさせて、懐かしさに微笑んだ。
(嗚呼、彼らは変わらず健在だろうか)
きっと突然会いに行っても、再会を喜んで歓迎してくれるに違いない――人と距離を取る興和ですらそう確信させる温かさを、二人に思う。だから多分、人が好きなままなのだ。
●そして、その頃
「故人を偲ぶってどうやるんだろう……? ん~と、とりあえず、やってみよっかな!」
木陰のベンチにちまっと座り、莉々ちゃんはまるでカキ氷みたいな入道雲を見上げながら【故人を偲ぶ】にチャレンジすることにした。足をぷーらぷーら。偲ぶ。偲ぶってなんだろう?
「故人……故人……うーん、いないなぁ。あ、さっきのおじさんとおばさん! おじさんとおばさんが笑うとお日様みたいにキラッキラだったなぁー」
ゴースト、つまり幽霊。莉々ちゃんが知ってる幽霊はオブリビオンだから、敵対的だったり攻撃的だったり。あんなに友好的で明るくてキラキラした幽霊は初めてだった。お日様みたいな笑顔ってきっとああいうことだ。
「あー、みかんのカキ氷みたいで美味しそう! あの雲はマンモス肉みたい! 美味しそうだなぁー……」
キラキラの陽射しが目に眩しく、オレンジ色に輝いて。それがまるで
入道雲にたっぷりかかったみかんシロップに見えてしまったものだから、ぐぅ、と鳴るお腹。
おなかへったなぁ~と思いながら青いお空を見渡してみれば、嗚呼、まるでご馳走ばかり! 風に流れて次々と形を変える雲は、美味しそうな食べ物の姿に変身していく。カキ氷、マンモス肉、そしてわた飴――。
「おじさん、おばさんも美味しかったかなぁ……ちょっと齧らせてもらえればよかったなぁ……今から齧りにいってもいいかなぁ……」
食欲暴走特急モードの莉々ちゃんが降臨した。連想ゲームが不穏極まりだす。うん、多分、興和さんが全力で止めると思うよ。
「あ! あの雲、プロフェッサーみたい!」
プロフェッサーって……
「おいしかったなぁ。オブリビオンだからまた会えるよね。おかわり、できるよね」
ああ、うん、やっぱりモリアーティさんのことですね! じゅるり、と零れてしまいそうな涎をあわててハンカチで拭いつつ、莉々ちゃんうっとり。
「あの、カレーのときの女の子も美味しかったなぁ。また食べたいなぁ……そっか! 故人ってオブリビオンもそうだよね。だから、うん、きっとこういうことだよね! 故人を偲ぶ、を覚えたよ♪」
「うん、それは違うと思うんだよね」
「え、」
「うん」
いつの間にか傍にいた興和が冷静に突っ込む。二人の間に気まずい沈黙が流れるが――
「……おじちゃんおばちゃんからお礼にって、お蕎麦が美味しいお店を教えてもらったけれど……」
「行くっ♪ お腹減っちゃったぁ~」
「うん、行こうか」
(このままだとおじちゃんおばちゃんや此処のゴーストたちが食べられてしまいそうだからねぇ)
どんなお蕎麦があるかなー! たくさん食べれたらいいなー♪ とご機嫌な莉々ちゃん。すっかりお蕎麦に夢中になっている莉々ちゃんの様子にほっと安堵の息を吐く興和。
――そんな二人を墓石の影から見送り、興和に小さく手を振る幽霊たち。
幽霊たちは後に家族たちの夢枕にたち、こう語ったという。まさか幽霊になってまで怖い思いをすることになるとは思わなかった、と。
嗚呼、この夏は幽霊たちにとって忘れられない一夏になったに違いない。
因みにメガリスですが他に希望者はいなかったので、所有者は莉々ちゃんとなりました!
アイテム申請通るかわかりませんが、以下、ご参考までにどうぞ★
アイテム名:クノッソスの迷宮図
説明:一定の条件で迷宮を構築するメガリス。迷宮を抜けると幸運が訪れる。
技能:魔力溜め1、幸運1
大成功
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