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湖を見つけて

#スペースシップワールド #ノベル #猟兵達の夏休み2024

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星詠・黄泉




「美しい景色だ……」

 スペースオペラワールドをはじめ、星々や世界を渡り歩く旅人、黄泉。
 彼女は今、旅先で通りがかったとある星にて、たまたま見つけた美しい湖を眺めていた。

 澄んだ水面に日光が反射するさまは巨大な鏡のようで、周囲には森と花畑がある。
 手つかずの自然が織りなす調和には言葉もない。こんな風景を見つけられるのも旅の醍醐味のひとつだ。

「そうだ水浴びするか」

 丁度この星の季節も夏。最近暑い日が続いているが、本日の日差しも絶好調で、立っているだけで汗が流れる。
 ここなら人気もなく、誰かの目を気にする必要もない。さっそく服を脱ぎ、湖に入ろうとする黄泉だが――。

「あっ……でもその前に体操するか」

 水浴びするのなら体操は大切だと、レントが言っていたのを思い出す。
 きちんと身体をほぐさないまま水辺に入るのは事故の元だ。最悪溺れる事だってある。
 黄泉の身体能力は常人離れしているが、それでも伴侶から受けた忠告を忘れる彼女ではなかった。

「一、二、三、四……こんなところでいいか」

 きっちりと準備体操を終えてから、改めて湖に入る。
 うだるような気温に比べて水温は低いくらいだが、火照った身体にはこの冷たさが丁度いい。

「気持ちいいな……」

 ひんやりとした水の感触を楽しみながら、汗を流し、身を清める黄泉。
 もし、覗き見をする不届者がいれば、天女の休息のような光景に目を奪われていたかもしれない。
 美しい自然の風景に、裸身を晒す女性の姿は、まさに一枚の絵画のごとしであった。

「ふう。いい気分だ」

 水浴びを終えた黄泉は湖から上がると、持って来ていたタオルで身体を拭いてから服を着る。
 存分にリフレッシュできたのか、あまり表情は変わらずとも清々しい雰囲気がうかがえる。
 しっかり拭いてもまだ水気を含んだ紫の髪が、どこか艶めかしかった。

「……レントやフォスと一緒に入りたかったな」

 ひと心地ついた彼女がふと頭に思い浮かべる相手は、かつての旦那と親友だった。
 桜花星流星人としてこの時代に転生してからもう長くなるが、それでも前世の記憶は忘れがたく。
 人造人間だった自分を受け入れて、共に冒険の日々を送った仲間達は、今なおかけがえのない思い出だ。

 少しだけセンチメンタルな気分になった黄泉――キュラ・ディールークは、しばし無言で湖を眺める。
 人の悩みなど知らぬまま、自然はありのままに美しく、全てを受け入れるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年07月29日


挿絵イラスト