湖を見つけて
「美しい景色だ……」
スペースオペラワールドをはじめ、星々や世界を渡り歩く旅人、黄泉。
彼女は今、旅先で通りがかったとある星にて、たまたま見つけた美しい湖を眺めていた。
澄んだ水面に日光が反射するさまは巨大な鏡のようで、周囲には森と花畑がある。
手つかずの自然が織りなす調和には言葉もない。こんな風景を見つけられるのも旅の醍醐味のひとつだ。
「そうだ水浴びするか」
丁度この星の季節も夏。最近暑い日が続いているが、本日の日差しも絶好調で、立っているだけで汗が流れる。
ここなら人気もなく、誰かの目を気にする必要もない。さっそく服を脱ぎ、湖に入ろうとする黄泉だが――。
「あっ……でもその前に体操するか」
水浴びするのなら体操は大切だと、レントが言っていたのを思い出す。
きちんと身体をほぐさないまま水辺に入るのは事故の元だ。最悪溺れる事だってある。
黄泉の身体能力は常人離れしているが、それでも伴侶から受けた忠告を忘れる彼女ではなかった。
「一、二、三、四……こんなところでいいか」
きっちりと準備体操を終えてから、改めて湖に入る。
うだるような気温に比べて水温は低いくらいだが、火照った身体にはこの冷たさが丁度いい。
「気持ちいいな……」
ひんやりとした水の感触を楽しみながら、汗を流し、身を清める黄泉。
もし、覗き見をする不届者がいれば、天女の休息のような光景に目を奪われていたかもしれない。
美しい自然の風景に、裸身を晒す女性の姿は、まさに一枚の絵画のごとしであった。
「ふう。いい気分だ」
水浴びを終えた黄泉は湖から上がると、持って来ていたタオルで身体を拭いてから服を着る。
存分にリフレッシュできたのか、あまり表情は変わらずとも清々しい雰囲気がうかがえる。
しっかり拭いてもまだ水気を含んだ紫の髪が、どこか艶めかしかった。
「……レントやフォスと一緒に入りたかったな」
ひと心地ついた彼女がふと頭に思い浮かべる相手は、かつての旦那と親友だった。
桜花星流星人としてこの時代に転生してからもう長くなるが、それでも前世の記憶は忘れがたく。
人造人間だった自分を受け入れて、共に冒険の日々を送った仲間達は、今なおかけがえのない思い出だ。
少しだけセンチメンタルな気分になった黄泉――キュラ・ディールークは、しばし無言で湖を眺める。
人の悩みなど知らぬまま、自然はありのままに美しく、全てを受け入れるのだった。
成功
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