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烈火狂騒

#UDCアース #カットスローターズ #UDC支部襲撃

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 カツ、カツと靴の音が響く。
 ここは閉じられた空間。もう既に崩壊の始まるUDC支部の地下。

 彼の──否、“彼ら”のことを止められる存在は、まだここにはいない。

「ここから解放してあげた。贄も用意してやった。なら──わかるよね。」

 その視線は、まるで爆発が起こったかのように無惨にも崩れたコンクリートの壁と、その先に映る炎に向けられている。

『“竜” ───私達の目的を成し遂げるには、是非とも奴を『|持ち帰る《アーカイブ》』しなければ──』

「ああ。それさえ出来れば──僕達は最強さ。」

 少年の姿をしたそれは、闇へ向かって歩き出す。
 その顔に薄らと|嗤《え》みを浮かべて。




 「新しい事件を、予知したよ!」

 猟兵たちの前に立ち、明るい口調でそう話すのはグリモア猟兵のスィフル・ティエファシエル(須クヲ喰ラウ堕チ星ノ輝キ・f43301)だ。

 しかし、何か楽しいことでもあったのか、と言いたくなる程に元気な様子とは裏腹に、これから発される言葉の意味は重い。

 「UDCアースにある……UDC支部? ってのが一個落とされて、中にいた|UDC怪物《オブリビオン》達が脱走して暴れてるから、全部倒してきてね!」

 割と一大事である。
 とあるUDC支部の陥落、それに内部に収容されていたUDC怪物の脱走──本来ならばあり得ない、そしてあってはならないこと。
 恐らくは外部からの干渉があったのだろうが……。

 「じゃあ細かい説明をするよ! よく聞いててね?」

 スィフルは双骨尾をゆらゆらと揺らしながら話し始める。

 「まず、大量のUDC怪物が脱走して閉鎖されたUDC支部にグリモアで送るんだけど、近くにいっぱい下級のUDC怪物がいるから、そいつらの殲滅だね!」

 殲滅。
 もう既に施設が崩壊しているのなら、建物被害は気にしなくとも良いのだろうが、そこまで派手な手は取れないのだろう。

 「下級だからって油断しないでよ? こいつらはスライムなんだけど、石化させてくるんだよね……」

 スィフルの表情が若干苦い顔になる。…スライムに嫌な思い出でもあるのだろうか?
 軽く息を吐いて、続きを話す。 

 「石化は普通に治せるし、なんならそいつらを全滅させても治るけど、それでもただの有象無象って訳でもないから、気をつけてね?」

 具体的な警戒点を事細かに解説する気はないようだ。大雑把である。
 それくらい自分で考えろ、ということなのだろうか。

 「それで次に、カットスローターズ、っていう少年の姿をした敵を倒してもらうよ!」

 聞いたことのある、戦ったことのある猟兵もある程度は存在するだろう。
 素早い動きで近づいて、カッターナイフで切りつけてくる。

 「今回の黒幕みたいなものだけど…動きが速く、鋭い斬撃を繰り出してくる…でも、君たちなら多分倒せるよ! がんばって!」

 彼の目的は、彼が解放させ、他のUDCを食って成長した強力なUDCを『|持ち帰る《アーカイブ》』こと。
 これを阻止できなければ、向こうの勢力がかなり上昇することとなる。
 放っておけるはずがない。絶対に阻止しなければならない案件だ。

 「で、最後──ここのUDC怪物を全部喰い尽くして、めっちゃ強化された“竜”を討伐して終わり、だね。」

 UDCアースに、竜。
 今回のUDC支部はその性質上、人里からある程度離れた場所に存在している。
 だから、「最悪の場合」は地形の破壊もやむなしではあるのだが……やりづらい相手となるだろう。

 「純粋に速い、硬い、強いで隙がないし、炎を吐いて遠距離からも攻撃してくる。空を飛んでるから地上戦はちょっと不利……とまあ、普通に強いよ。」

 竜は力の象徴のような扱いとなることがしばしばある。
 威圧感のある風貌、空を翔ける翼、そして竜の息吹。
 竜鱗により生半可な攻撃は通らないし、そもそも当たらない。
 オールラウンドに強いのが“竜”という生物なのだ。それがスィフルのいう“めっちゃ強化”されたとなれば……厳しい相手になるのは間違いないだろう。

 「でも搦手とかはないし、ちゃんと正面から立ちはだかってくるからね。君達ならこの程度、乗り越えられるんじゃないかな? と僕は思うよ!」

 スィフルの信頼と期待の篭った眼差しが、猟兵達に向けられる。
 背中の翼をぱたぱたさせて、楽しそうに。

 「じゃあ案内するよ〜! 行き先はUDCアース、レッツ、ゴー!!」

 この空間に|極彩色の靄《グリモア》が満ちる。それは、壮絶な戦いが始まる合図だ。


カスミ
 どうも、カスミです。
 √EDENのやつとか水着コンテストとかで忙しかったですが、そろそろシナリオが出したくなったので出し ます。
 カットスローターズ君のものです。やっぱり純戦三本のUDCはいいですね……。
 では、前置きはこの辺に。本編の説明に参りますね。

 第一章
  ここでは石化を扱うスライムを倒してもらいます。
  正直状態異常が厄介なだけなので、警戒しつつもさっくり倒してしまいましょう!

 第二章
  カットスローターズ君との戦闘です。
  相手は多分“竜”が強化されるまでの時間を稼ごうとするので、思惑をぶっ壊してさっさと骸の海に帰ってもらいましょう!
  プレイングボーナスは…対人戦をちゃんとやれば何してもつくと思います。

 第三章
  「狂火竜レヴニレース」との戦闘です。
  炎を自在に操る竜です。
  単純に強いので、こちらも猟兵として単純な理不尽を押し付けてやりましょう!
  竜の圧に気圧されずに対抗したらボーナスがあります!

 基本的に「全部殺す!」「全部倒す!」で突貫してもボーナスがあるという……だいぶ戦闘に寄ったシナリオです!
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第1章 集団戦 『変質粘液『ストーンスライム』』

POW   :    粘液散布
レベル×5本の【石化】属性の【石化粘液】を放つ。
SPD   :    粘液分裂
【分裂したストーンスライム】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    粘液強襲
【石化した犠牲者】から【潜んでいたスライム本体】を放ち、【触れ包まれた箇所から石化する事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

山吹・夕凪
◆アドリブ歓迎

災いの種なるものを持ち帰る
如何なる思惑と願いあろうと、それは世界を壊すという事に他なりません
必ずや阻まねばと抜き放つ黒刀『涙切』の刃を見つめ

――しかし、竜とは奇妙な縁と業

「必ずや斬りて、『さいわい』へと繋ぎましょう」

故にと切っ先を向けるは、呪いの怪物たるスライム
下級とはいえ触れること危うき存在ですね

ならばとUC「黒白の風姿」を発動し、触れられぬよう疾走
凍て付く斬風を放って敵の動きを制しながら、心眼にて見定めるはその存在の核たるもの
霊魂の芯というべき急所を見抜く
如何に不定形の怪物であれ、存在の核とでもいうべき部分を破邪宿した刃で斬られれば只では済まない筈です

故に、擦れ違い様に一閃を



 ざり、と一歩足を踏み出せば、もはやここは日常に在らず。
 ここは、怪物蠢く神話の地、UDCアース。
 その、一つの戦場の姿。

 山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は感覚を研ぎ澄ませて、キリと真剣な顔つきで周囲を観察する。

 ──廃墟。まず真っ先にその言葉が思い浮かんだ。
 未だ建物としての機能は保っているものの、所々が崩れ、焼け落ちている。
 断裂された電線からはバチバチと火花が散り、暗い施設をその明滅で不気味に照らす、そんな建物の姿。

 スィフルという|少女《グリモア猟兵》に軽く話された内容を反芻しながら、油断などなく先へ進む。

 ──災いの種なるものを持ち帰る。

 ──それは如何なる思惑と願い在れど、世界を壊すということに他なりません。

 『|持ち帰る《アーカイブ》』、と言っただろうか。
 大きな戦力を持ち帰らせてしまった場合、その先に如何な被害が表れるかはわからない。

 ──必ずや、阻まねば──

 音もなく抜き放たれた、闇に馴染む黒刀『涙切』の刃を見つめ、大きく息を吐き出す。

 ──しかし、竜とは奇妙な縁と業。

 刀を見つめる瞳に、決して弱くない光が灯る。
 その身に宿る力を、全力で振うために。

 「必ずや斬りて、『さいわい』へと繋ぎましょう」

 そう言い放つ瞳が向かうのは、じわりと暗闇から染み出すように現れた──|粘性生物《スライム》。

 情報では、石化を操るとのこと、でしたか。
 なるほど、下級……単体の力は高くありませんが……触れること危うき存在ですね。

 夕凪の見込みは正しいだろう。如何に腕の立つ剣士だろうが、剣を振るう体が動かなければ、何も斬れはしない。それが重たい石となってあらゆる動きを阻害するなら尚の事。

 ならば、と。
 触れられると危険ならば、最初から触れられなければいい。

 触れられるより早く───斬り捨ててしまえばいい。

 ダン、と固いコンクリートの地面を踏み込み、一陣の風となりて、吹き荒ぶ吹雪となりて、駆ける。

 「黒き妖し刃の由来、花の由縁。」

 闇の中だろうと関係などない。吹き抜ける白き雪風は、闇も、スライムも、ただ等しく斬り伏せるのみ。

 「雪と戯れ、風に語りましょう」

 駆けていた足は、いつの間にか地から離れ、まるで舞うように、空を翔ける。
 華やかな装束が靡き、まるで残光を残すかのように。

 ただ、空間に一筋の。黒と白の、“線”が刻まれた。

 それは、ただの擦れ違い様の一閃だ。
 そして、見方を変えれば夕凪の剣を余す事なく表した、紛れもない「心の剣」のその姿。

 スライムが如何に不定形で、いくら斬りつけてもすぐに修復されてしまうような怪物であれ、存在の核とでもいうべき部分を、破邪を宿した刃で斬られれば──

 風が吹き抜けた跡には、もはや何も残ってなどいなかった。
 最初からそうであったかのように──

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドロ・ロッソ
「カットスローターズ…」
(戦うのも見るのも初めてだが、聞いた話だと厄介な思想を持つ連中らしいな)

そう考えながら崩壊した支部内の廊下を進むと石化した犠牲者に絡みつくストーンスライムを発見した
(強くはないが、下手に触れれば俺とて石にされかねんか。ならば…)
周辺に漂わせていた魔力でスライムを覆う
「触れなければよいだけだ」

UC『神威圧壊』を発動

覆った魔力で全方位からスライムを凄まじい威力で圧縮する
(不定形とはいえ、脳なり心臓なりに当たる核を潰せば死ぬだろう)



 暗い施設の中、カツ、カツとコンクリートを踏み締める音が響く。
 崩れ落ちた建物の隙間からわずかに差し込む光が照らす其の姿は、威厳のある黒髪の青年か。はたまた神々しくも恐ろしい龍神の姿か。

 アレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)は気負う事無く闇を進む。
 その顔に浮かぶ表情は、警戒と思案だ。
 思い起こされるのは、スィフルという|少女《グリモア猟兵》の話。

 「カットスローターズ……」

 ──戦うのも見るのも初めてだが、聞いた話だと厄介な思想を持つ連中らしいな。

 “カットスローターズ” ──強力なオブリビオンを解放した上で、強化させて『|持ち帰る《アーカイブ》』することを目標に掲げた、今回の事件の黒幕。
 その目的は定かではないが、世界の災いとなる存在であるオブリビオンを、強化させて使役するとなれば……

 厄介だ、という他ない。
 半分ではあるが“神”として、そのような行為など最初から許せはしないのだが。

 そこまで考えたところで、闇を見据えるアレクサンドロの眼に黒い不定形が映る。
 その傍には、苦悶の表情を浮かべている、研究員と思われる男の石像が。

 “ストーンスライム”

 確か、予知によれば石化を操るスライム、だったか。
 倒せば、石化は解除できるそうだが──

 目を細め、石像に絡みつくスライムを観察すれば、見たくなかった事実を見てしまう。
 石像が既に|割《・》|れ《・》|て《・》|い《・》|る《・》。残っているのは虚空に手を伸ばす上半身のみで、その下半身はおそらくバラバラに散らばっている石片なのだろう。

 ──遅かった、か。

 研究員のほぼ確実な死。それは普段なら悼むべきものなのだろうが、今は状況が状況だ。
 求められているのは、冷徹な状況判断だと、とっくに理解している。

 アレクサンドロの瞳が、仄かな光を湛える。
 付近の空間が陽炎のように、歪んでいく──

 ──強くはないが、下手に触れれば俺とて石にされかねんか。

 触れれば、石にされる。
 不定形故の対処のしにくさもあるだろう。どれくらい俊敏に動けるのかも、予想しかできない。

 多少、厄介だ。厄介だが──それだけだ。

 ならば───

 「触れなければよいだけだ。」

 静かにそう言い放つと、アレクサンドロの周りに漂う魔力の密度が跳ね上がる。
 そしてそれは全てアレクサンドロの思うままに操作され、スライムの周囲を覆い尽くし──

 ぐちゃり。

 アレクサンドロにより指向性を与えられた魔力の圧縮は音もなくスライムに迫り、いとも容易く其の不定形な体を圧縮し、圧壊し、圧殺した。
 凄まじい威力の圧縮だが、それをした当の本人は涼しげな表情。こんなもの、児戯にも等しいと言わんばかりに。

 「こんなものか。情報通り、対して強くはないな。」

 不定形生物に物理攻撃が効くかは不明だったが、流石に無敵というわけでもないだろう、との試行だったが予想通りと言うべきか、圧縮を続けた結果小さな宝石のような形になった“元スライム”を見やる。

 これで、割れていない石像の一部は再び動き出すだろう。
 尤も、そんなものがこの施設内に存在するかは疑問が残るが……

 心の中で犠牲者にそっと手を合わせつつ、油断なく歩みを再開した。

 カツ、カツ、と、静かに靴の音だけが響く───

大成功 🔵​🔵​🔵​

クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
今回は真剣口調で話すよ

取り込んだ|死者《灼滅者/ダークネス》の記憶を自分の事の様に思い出す事ができるので、カットスローターズについてはかなり詳しいよ

…|固め《個人的な》趣味を楽しんでる余裕は無いね
今は|彼等《カットスローターと縫村》のところまで急がないと

UCは『ワタシのソロモンの雷』
どこに隠れようが、どれほど増えようが、不定形だろうが、戦場全域を敵味方を識別する攻撃を放てば問題ないでしょ?
敵の攻撃は【第六感/野生の勘/心眼】で避けるね
石化攻撃を受けた場合は【呪詛耐性/回復力/浄化】で治すよ



 僅かな音──足音や呼吸の音すら響かぬ静寂の中、クローネ・マックローネ(|闇《ダークネス》と|神《デウスエクス》を従える者・f05148)は施設を進む。

 その色は、黒。この場の暗闇によく馴染む、黒だ。

 気配を消して先へ進む。
 この先に何が──“誰が”待ち構えているのかをはっきりと思案しつつ──

 クローネが思い起こすのは、自らが取り込んだ死者の記憶。
 自らのモノとして強く結びついた、|警戒すべき敵《カットスローターズ》についての記憶。
 UDC支部の壊滅──彼らがこうも大きく動いたとなると、もはや余裕は無い。
 この先にうじゃうじゃと居るストーンスライムになど、構っている暇はないだろう。

 ──本来なら、少し|楽《・》|し《・》|ん《・》|で《・》行きたかったのだが──

 今は、そんな個人的な趣味を優先できない。
 早く、彼等のところへ急がなければ。

 そう思えば、できるだけ最速で──こんな雑魚、10秒で十分だね。

 感覚を研ぎ澄ませば、この施設の至る所に隠れ潜むスライムの位置が、手に取るようにわかる。
 効率良く、できるだけ最速で──全てを殲滅するには。

 ふわりと手を伸べれば、表れ出るのは光を放たぬ黒き魔法陣。
 光を吸い込む昏光を纏い、それはクローネの前方へ構えられる。

「さあおいで、ワタシの──ソロモンよ。」

 静寂の中、暗闇の中、それらを引き裂くように溢れた閃光と雷撃。
 バチバチと空気を震わせるそれは音よりも速く、通路上を駆け巡る。

 それを放つのは──魔法陣から現れ出ずる、ソロモンの悪魔。
 その全身に稲光を纏い、意のままに雷を操る──

「|ソロモン《彼女》の雷を受けて、無事で済むと───いや、今はそれより、急がないと、だね。」

 過剰な電撃を喰らい、暗闇に、物陰に、小さな隙間に、小さくなって潜んでいたスライムは弾け飛ぶ。
 弾けたその身体の一部ですら石化効力があるのだが──例えクローネが目を閉じていたとしても、当たる道理など有りはしない。

 スライムは殲滅した。この雷に逃げ場などないのだから、この雷を耐える筈がないのだから。
 なら、次は、彼等だ。

 直接姿を見ずともわかる。
 ワタシの中の記憶が叫ぶ。

 あの先に、彼等が居る──

大成功 🔵​🔵​🔵​

山吹・夕凪
まだスライムが残っているとは
触れられる訳にはいかないから、厄介なことこの上ありません
それも何処に隠れているかと不安であるのなら、前を進むどころか、研究員達の死を弔い、鎮魂を祈ることも儘ならない

ならば、悉くを討つべく黒刀『涙切』をゆるりと構え
ちりん、と鋭く響かせるは鍔飾りの彼岸花・夜綾
そうして一息の後、UC「影斬の余韻」を発動させながら、早業で疾風の如く幾度となく黒刃で空間を凪ぎましょう
十に二十、無数にと刻むは私の意志に従い、おのずと敵へと向かう真空の刃
これなら探す必要もないでしょう

真空の刃には、無形の躰を斬るべく凍結攻撃と破邪を乗せて

落ち着けば残骸となった支部と遺体へ
慰めの風を起こし、弔いを



 強く風が吹き付けた先──未だ続く暗黒の回廊に、もはや風の届かぬ闇に進むは山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)のその姿。
 スライムを一息に斬り伏せ、いざ向かわんとするは次の敵。カットスローターズと呼ばれる強敵の元へその足を進める。

 ──が、物事はそううまく進まないらしい。
 スライムは一掃したと、そうは思うが決して驕らず警戒を張り巡らせたが故気付いたのは小さな気配。
 ふと辺りをぐるりと見渡せば、数多の石像が乱立し、そして砕け散った痕があった。

 ──まだスライムが残っているとは。

 この石像の量、一匹や二匹ではないだろう。
 そして当然の如く──この石像は元研究者なのだ。
 疾うに慣れた眼に映るは恐怖に染まった石像の表情。
 いや恐怖だけではない。覚悟や決意を感じさせる顔立ちのものもある。

 その全ては、もう既に冷たく、動くこともないのだが。

 夕凪の心は揺れる。
 ここにいるのは、“死んだ決意”の持ち主なのだと。
 自らの心に宿すそれと何ら変わりない、猟兵の身に在らずしてこの怪物に立ち向かう者達の姿。
 そして──それを踏み躙る怪物の存在に。

 状況は想像より芳しくなかったのだ。

 もう既にここは、怪物たちの領域。

 攻撃の為に、防御の為に、触れることすら致命的な「石化」を呼ぶ、彼らは既に気配無く隠れ潜んでいる。
 こんな状況になってしまえば、前に征くどころか、彼らの死を弔い鎮魂を祈ることも儘ならない。

 ───ならば。

 チリンと唾を飾る鈴の音が響く。
 既に夕凪の心は、一切の波も立たぬ“凪”。
 何百、何千、何万と繰り返し、己を鍛え上げた刀に手を掛けて。

 一息の、静寂の末。

 ──ふわり、と、その優美な和装が風に揺れれば、もうそこに夕凪の姿は在らず。
 神速の剣閃は闇を縫い、影を斬り、幾度となくその黒刃が虚を裂く。

 チリン

 刀を鞘に納め、その鍔飾りがもう一度、清らかな音を奏でれば──
 音も無く、真空の刃は夕凪の心のままに飛ぶ。
 十や二十など半端な数は放たない。邪の全てを切り刻むまで、数えること無き刃が巡り、無形の体を幾重にも斬り刻む。

 如何にその体が形を為さないものとして。
 その存在すら許さぬ凍てつく力と破邪を乗せたなら。

 その刃に刻めぬ道理など──ありはしないのだから。


 荒ぶる風が収まれば、そこに残るのは残骸となった支部と、数多の遺体のみ。
 邪なる存在が居ないのなら、弔いもできる。

 遺体の元に、緩やかな風が吹く。
 これは、慰めの風。その意志は、必ず未来へ繋がるものだと伝える風。

 僅かな時間、目を閉じ死者を想ふ──

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『カットスローターズ』

POW   :    断裁ディバイダー
【カッターナイフ】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    疾風ダンスマカブル
【高速ステップ】で敵の間合いに踏み込み、【斬撃力を備えた衝撃波】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    九死カットスロート
自身の【瞳】が輝く間、【カッターナイフ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アレクサンドロ・ロッソ
【アドリブ歓迎】
「お前がカットスローターズか」
カーターナイフを持つ少年と会敵する
「無辜の民達を貴様らの下らん目的の為に傷付けるなど断じて許さん。さあ、手早くご退場願おうか」
奴らは時間を稼ごうとするだろうが、その思惑に乗るつもりは全くない
カットスローターズが素早く動くなら、それよりさらに疾く動けばいい
UC【紅輝四連】を発動
相手が動くより先に開いた神域への扉を通り、相手の眼前に飛び出す
「さあ、避けられるものなら避けてみろ!」



 崩壊した施設の中、僅かに差し込む月明かりに照らされて。
 その先に、少年はいた。
 コンクリートに囲まれ、薄埃舞う一角に背をもたれさせて。
 その手には、キラリと輝く何本ものカッターナイフ。
 大きく紅いその瞳は、来訪者を待っているかのように怪しく輝く──

「お前がカットスローターズか。」

 そんな彼に、一片の恐怖すらも抱かず、尊大に声をかけるのはアレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)だ。
 ほんの一瞬すら警戒を解くことなく、逆に値踏みするかのような視線に嫌気が差したのか、その少年──カットスローターズも目を細めて言葉を投げる。

「あぁ、そうさ、第六の猟兵さん。
僕達のコト、邪魔しに来たんでしょ?
僕としては、ちょっとくらいお話ししても良いんだけど…」

「下らんな。貴様等の時間稼ぎに付き合うワケが無いだろう。」

「時間稼ぎ? 面白い考えだね。…今直ぐお前を八つ裂きにしてやっても良いのにさ。」

 両者の間に殺気が満ちる。
 猟兵とオブリビオン。この両者の間に、平和的解決は有り得ない。
 それが猟兵としての性質であり、それがオブリビオンとしての性質故に。

 静かな施設跡。
 この場にいる2人のどちらかが一歩でも動いた瞬間、この場は戦場になるだろう。

「無辜の民達を貴様等の下らん目的のために傷付けるなど断じて許さん。
さあ、手早くご退場願おうか──!」

「言ってくれるッ!」

 先に一歩踏み出したのは、カットスローターズの方だった。
 血に濡れたカッターナイフを指の間に挟んで、目にも止まらぬ高速nステップで素早くアレクサンドロを自身の間合いに入れようと──

 ──だが、アレクサンドロの前でその行動は意味を為さなかった。

 日本の剣道に、後の先という言葉がある。
 相手が攻撃を出しそれを捌いた瞬間、もしくは相手が一歩踏み出し攻撃を放つ前に、それよりも素早く動いて極めるという戦術のこと。
 この戦術の利点は、相手の意識が攻撃に向かった一瞬の隙を叩けるということだ。

「遅い!」

「なっ!」

 カットスローターズが一歩踏み出した瞬間、アレクサンドロは神域への扉を通り、瞬間移動にしか思えない程の素早さで彼の前に現れ出たのだ。

 尤も、今回の場合は──相手が素早く動くなら、それよりさらに疾く動けば良いというある種力押しとも言える考えの下実行されたもの。
 自らが持つ大いなる力をそのまま振るう、それができるアレクサンドロだからこそ取れる戦術だ。

「さあ、避けられるものなら避けてみろ!」

 アレクサンドロの身体に、バチバチと真紅の雷光が満ちる。
 その身体に込められた膨大な魔力は、淡く紅に仄めいて──その矛先は、当然カットスローターズへと向けられる。

「ぐ、ハッ──!」

 ダダダン、と連続で鈍い音が響く。

 一発目。咄嗟のことで防御が間に合わなかった少年の鳩尾に、アレクサンドロの拳がめり込む。

 二発目。防御が間に合うも、その防御の上から吹き飛ばしてしまえば関係ないと、超威力の蹴りが襲う。

 三発目。死力を尽くし、アレクサンドロの体を蹴りつつ離脱しようとするカットスローターズに追い打ちの一撃を叩き込む。

 四発目はこの時点でカットスローターズが間合外に弾き飛ばされたせいで不発となってしまったものの、この時点で大きなダメージを与えられたのはいうまでもない。

 だが──元より素早い相手。
 今の不意打ちも、次からはうまく対処されてしまうかもしれない。

 それでも、アレクサンドロには、そしてこれから続くだろう猟兵たちには、攻撃を重ねる以外の選択は許されない。
 相手の思惑──時間稼ぎ──が達成されてしまえば、次に戦うのはもっと強大な───

「貴様等も、やられっぱなしでは不服だろう?
さあ、かかってこい。正面から捻じ伏せてやろう──!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
今回も真剣口調だよ

取り込んだ|死者《灼滅者/ダークネス》の記憶を自分の事の様に思い出す事ができるので、カットスローターズについてはかなり詳しいよ

カットスローター…それに縫村
アナタ達が時間稼ぎをしようとしている事はわかってる
だから…とっとと終わらせよう

時間稼ぎに付き合わず、可能な限り早く敵を倒そうとするよ

UCは『ワタシのソロモンの悪魔変身』
物理攻撃無効のこの姿ならとりあえず斬り殺される事は無いはず
防御体勢をとらず、攻撃にのみ集中するよ
稲妻の魔法とドスソードによる斬撃で攻めるね



 月明かりのみが辺りを照らす、薄暗く荒廃した施設の一角で──クローネ・マックローネ(|闇《ダークネス》と|神《デウスエクス》を従える者・f05148)が見つめる先、まるで刃物のような鋭い気配をした少年が。
 その紅い瞳をクローネの方へちらりと向けると、その気配がまた異なったものへと変化する。

 少年──カットスローターズは、クローネにとって既知の存在だ。
 取り込んだ死者の記憶をその身に宿すクローネには、脅威度も、思想も、手に取るようにわかる。
 だが、だからこそ──相容れない。

「カットスローター…それに縫村。
アナタ達が時間稼ぎをしようとしていることは分かってる。」

「へえ……それは、第六の猟兵だから、かな。それとも、別な理由?
教えてよ。君は僕達について“知ってる”目をしてる。」

 カットスローターズはその瞳を細めて、クローネに言葉を返す。
 だが、それもおそらく──目的の為。

 “時間稼ぎ”

 ここに来る前に聞いた言葉が脳内で反芻される。

「時間稼ぎには、付き合わないよ。……とっとと終わらせよう。」

 クローネの瞳に冷たい光が灯る。
 普段なら明るい声で口上を述べる「変身」すら、ただ一息、吐き出すのみ。

 バチリ、と、稲妻が弾ける。
 クローネの身体に、数多の雷電が纏わりつき、浸透し、改変し──その肉体を変じさせる。
 それは、まさしくソロモンの悪魔。
 敵に対する慈悲など微塵も持ち合わせてなどいない、大悪魔の姿だ。

「弾けて。」

 口調や声色に変化はなく、ただゆるりと手を伸べれば──途方もない力の電気がカットスローターズへと襲いかかる。

 だが、それは素早く避けられる。
 余裕というほどではないだろうが──このままでは向こうの“時間稼ぎ”を完遂されてしまうだろう。

 ──なら、避けることが不可能なくらい、電撃で埋め尽くすよ。

 クローネは目を閉じ、自らの力を集中させていく。
 バチバチと電気の弾ける音が聴こえても、強くなりゆく電光にこの周辺の影を消し去っても。
 まだ、足りない。これだけでは、まだ──

 カットスローターズもそれを察したのか、そうはさせまいとカッターナイフで切り掛かる。
 眼にも止まらぬ踏み込みで急接近し、脳か、心臓か、どこを斬ればこの災厄は止まるのかと、ただその身に深く切り込みを刻んでいく。

 だが、その程度でクローネの集中が乱されることはなく、ましてや滅びることはあり得ない。
 電光の身体は如何な傷も意味を為さず、その存在を斬るは魂を、魔力を斬ると同義なのだから。
 それを知らぬカットスローターズがいくら切り傷を刻もうと──

「──駆け巡って。」

 バリバリィッ!!!

 クローネの力が惜しみなく注がれた、膨大な電気をまとった珠が、割れる。
 それはその瞬間一際強い雷光を迸らせ、床を、壁を、天井を伝って全方向に致命の一撃を振り撒いた。

 無論その災厄はカットスローターズにも降り注ぎ──貫いた。

「がっ───」

 声を出すことも儘ならぬ、極高電圧の感電には、カットスローターズといえど対抗策などなく──その身を地に倒すに至る。

 だが、まだ生きている。
 その心は死んでいない。
 すぐに再び起き上がり、今度は同じ手も通用しなくなる。

「なら、何度だって、倒すまでだよ。」

 未だ、この凄絶な戦いは続く。
 猟兵か、カットスローターズか。
 どちらかが、真の意味で斃れるまで。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルゴ・ルスツァイア
アドリブ歓迎

こちらジェイド43、現着。

敵位置が分かっているなら話は早い。…対テロ訓練やっておいて正解だな。
いくら素早くても、屋内である限り敵の行動の自由度は少ない訳だ。
機動力の高い敵はこの手に限る。多数の手榴弾と共に|閃光手榴弾《UC》を投擲し動きを阻害。その隙を見逃さず、包み込む様にLR.35で撃ち抜こう。
情けも容赦も時間稼ぎに付き合う必要も無い。

目標を確認、排除開始。



「……こちらジェイド43、現着。」

 ザザ…と僅かな電子音を残し、小さく呟いたのはエルゴ・ルスツァイア(|強化継承体《インヘリット・クローン》・f40463)だ。
 瓦礫の隙間から微かに差し込む月明かりのみが弱々しく周囲を照らす、薄暗い施設を進めば──目的の場所へと。

 ──敵位置が分かっているなら話は早い。…対テロ訓練をやっておいて正解だな。

 自身の愛銃、LR.35を油断なく構えると、また一歩、足を進める。

 施設の奥、やや広まったホールのような場所の柱に寄りかかって、彼──カットスローターズが居るのは見えている。
 既に損傷が大きいように見えるが──その分だけ味方が頑張ってくれたのだろう。
 光量に合わせ調整された視界には、カットスローターズが既にこちらを観察するように見ているのが映る。

「やあ──第六の猟兵さん?
こんな夜分に、どうしたのかな?」

「……」

 敵は時間稼ぎを狙っている。
 情報にあったことだが──それは正しいようだ。
 ここは既に戦場そのもの。今も定期的に静寂を割く爆音が響き、安全という二文字とはかけ離れた場所なのだ。
 だというのに、悠長に会話から入るなど──

 エルゴの警戒を感じ取ったのか、カットスローターズにもピリピリとした殺気が纏われる。
 月の光を浴びたカッターナイフはギラリと輝き、その血に濡れた刃を主張する。

「はあ、誰も会話にすら応じてくれないか。…ははっ、冷たいね。」

 紅く、大きい瞳。
 美しいとも、不気味とも思える鮮やかな色彩。
 それが細く歪んだ時、彼が手に持つカッターナイフを握り締めた時、そして彼が一歩、踏み出した時──戦いの火蓋は切って落とされる。


 タン、タンと地面を踏み込む音を幾重にも響かせて、その動きを捉えさせぬよう、体を低くし駆ける。
 それがもし生半可な速度なら、容易に蜂の巣にできただろうが……

 彼の姿は──駄目だ、速すぎる。
 追いきれない……なら!

 ここまでの速度を出されると、狙った銃撃など殆ど不可能だろう。
 偏差撃ちも、当たる気がしない。
 銃器を持つ相手との戦い方を自分なりに確立している、強い動きだ。
 だが、それはエルゴとて同じこと。

 ──素早い相手との戦い方は知っている! くらえ──

 エルゴは腰から多数の手榴弾を取り出して、ピンを抜き、投げつける。
 それらは白熱、膨張し──その中の一つに紛れ込まれた|閃光手榴弾《スタングレネード》が、耳を塞ぐ程度では意味さえ為さぬ程の大音量と、瞳を焼き焦がすかのような閃光を撒き散らした。

「ぐあぁっ!!」

 突然の爆音と閃光に、手榴弾に対し十分な距離をとっていた2個関わらず、ずささと音を響かせつつ地面に倒れるカットスローターズの致命的な隙を、エルゴが見逃す筈もない。
 ジャキンとLR.35を構え的確に射撃を加えていく。
 転がるようにして何割かは回避されたしまうが、確実にその機動力を奪う鉛玉が打ち込まれ、ぼたぼたと地面に赤色を塗り広げる。

 カットスローターズが再び立ち上がるも、恐らく目と耳と、そして三半規管やその他諸々の感覚は潰れ、ふらりとよろめいている。
 酷く弱々しいが──彼の目的を知っているのならば、感じ方も変わるというもの。

 ただの猿芝居だ──何も感じる必要はない。
 今行うべきことは、目標に照準を合わせて、引き金を引くだけ。
 情けも容赦も時間稼ぎに付き合う必要も、無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山吹・夕凪
あなたがこの事件の犯人である殺人鬼
何を理由として災いを持ち帰り、何を為そうとしているのかは私は知りません
どのような想いと願いがそこにあるのかさえ
けれど、と構える黒刀『涙切』の刃先を静かに向けて

「あなたは死をばらまいた。此処で生きていた『さいわい』へと至る
道と未来を無惨に斬り刻み、数多を殺めた罪咎。私が斬らせて頂きます」

伴う思念体の揺らぎにも意識を向けつつ
至るは凪いだる心境、明鏡止水の域へ
そうして向ける心眼にて捉えるのは、今に動く肉体のみならず
見切る静中の動、実際に動き出す前に起きる気の流れ

如何なる疾風の如き死刃とて、攻防の急所を見抜けば恐れるに足らず
後の先にて迎え討つのみ

高速ステップで踏み込むに合わせ、私もUC『白夜の剣姿』
都合四つ放たれる斬撃波を心眼で先読みし、刀ではなく身に纏う黒い剣風で悉くパリィ
剣刃の間合い至ればカッターナイフより疾くと黒刀を翻し、鋭き一閃を

「これは悲しみと涙を断つ刃」

如何なる災禍も、この黒刃の前では為せぬと
闇の魂を葬りましょう
死して抱く妄念もまた、魂魄の流す涙故に



 カツ、と硬いコンクリートの床を踏み締める音賀、仄暗い施設に響く。
 山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は、数多の敵を屠って尚──未だ程遠いと先へ進む。
 見渡せば、そこは広まったホールのような場所。
 そして、目的の──少年が居た。

「やあ、第六の猟兵さん。」

 目を細め、馴れ馴れしく口を開く少年──カットスローターズ。
 冷たいコンクリートの柱に背を預け、軽い雰囲気を纏っているが──その内面は全ての仕草と、雰囲気から感じられる全てと、乖離している。
 彼もまたオブリビオン故に、夕凪が心で感じる不快感は隠せるものではないが……例えそうだとしても、事前に知っていなければここまでの警戒と“殺す準備”をしたかと言われると、どうかわからないだろう。

 尤も──彼から感じられる悍ましい程の死の気配を感じれば、同じことだっただろうか。

「返事もないのかい? はは、つれないね。」

 夕凪は抜き身の刃を静かに持ち上げ、その刃先を向ける。
 返事としては、これが相応しいだろうと、視線を合わせる。
 あなたのような、殺人鬼には。

 ──何を理由として災いを持ち帰り、何を為そうとしているのかは私は知りません。

 静かに肺に空気を送り込んで、ゆっくりと吐き出す。
 その間もその鋭い瞳は絶えず少年に突き刺さり──油断などはない。

 ──どのような想いと願いがそこにあるのかさえ。

 けれど。
 私にも、譲れぬモノがある。

「あなたは死をばらまいた。此処で生きていた『さいわい』へと至る道と未来を無惨に斬り刻み、数多を殺めた罪咎。
──私が斬らせて頂きます。」

「全く、勝手に言ってくれるよ。
……俺が、お前を斬るのさ──!」

 夕凪が構えるは一本の刀。少年が構えるは幾本のカッターナイフ。
 両者の刃が、想いを乗せて振るわれるのだ。
 そこに優劣は存在せず、しかして無情にも勝負が付くのが戦の世界。
 互いが発した言葉など、何秒前のことだったか分からない程の静寂を超え──戦いの火蓋は切って落とされる。

 夕凪は相手の行動全てを見切り、後の刃にて斬り刻む静の刀。
 カットスローターズは相手の行動の全てを速度で抜き去り、先の刃にて斬り刻む動の刃。

 タン、と軽く地面を蹴り動き出すカットスローターズ。
 その速度は速く、疾く──しかして夕凪はその全てを捉える。
 相手の動き──筋肉の動き、力の流れ、呼吸、思念の揺らぎすら見て、至るは凪いだる心境。言の葉にて表すなら明鏡止水。
 如何なる疾風の如き死刃とて、攻防の急所を見抜けば恐るに足らず。

 カットスローターズの動きは視線で追える程度のものではなく、しかしその動きを先読みして視線を置くことならできる。
 床、壁、空中、天、全てを使った三次元機動だとしても、カットスローターズは夕凪が思い描いた動きをなぞる様に──

 ──壁を蹴り、床を駆け、一手遅らせ、四度の斬撃波。

 完全に読めているならば、如何様にも対処はできるというもの。
 力を抜き、刀を構えれば──風は舞い、冷気は満ちる。
 斬撃波を捉えるよう黒き剣風を纏わせ、その悉くを弾き返したその後に──隙を晒し、自ら間合に飛び込んだカットスローターズの姿。

 カッターナイフなど、間に合わない。
 翻した黒刀は、横一文字に鋭き一閃を──

「がっ……ごふっ…!」

 その刃が描いたのは、これまでのような黒と白ではない。
 脳に灼き付く紅色が、両者の姿を染め上げる。

「これは悲しみと涙を断つ刃。」

 キン、と刀を納め、言葉一つ残してこの場を後にする。

 如何なる災禍も、この黒刃の前では為せぬと。
 闇の魂を葬りましょう──死して抱く妄念もまた、魂魄の流す涙故に──

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『狂火竜エヴニレース』

POW   :    ビビッドレッド・スティンガー
レベル×1個の【鮮やかな赤色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    ヘルファイア・ファング
【噛みつき】が命中した対象に対し、高威力高命中の【火炎のブレス】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    オーバーヒート・ハープーン
【全身から超高熱の熱線】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・皇士朗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アレクサンドロ・ロッソ
【アドリブ歓迎】
「『竜』か」
眼前の竜に目をやる
数多の怪物共を喰らい、力に飲まれたのだろうか
その目に理知の光はなく、ただその力を振るわんとする狂気だけが灯っている

レヴニレースが凄まじい重圧を放つ
常人ならば、ただそれだけで絶命するだろうそれを受けた俺は、
──笑った
「狂気のあまり、|俺《龍にして半神》と|お前《力に溺れ、狂った竜》の存在の格の差すら分からなくなったか?」
そう言うと共に、さらにそれを超える重圧と神力を叩きつける
「貴様に竜の名は相応しくない。貴様の全て、父祖なる神の下に返すがいい」

レヴニレースの放つ鮮やかな赤の炎をUC【龍の吐息】でかき消し、そのままレヴニレースに叩きつけた



 地には瓦礫、空には炎。
 悍ましい程に轟き渡り、荒廃した施設の命を食らって羽ばたく『竜』
 信仰に裏付けされた邪神としての力。
 |この世界《UDCアース》においてあまりにも異質な、空想を形にしたようなその姿。
 空を翔り、地上を見下すその瞳に、もはや理性の色は無く。

『ギリリルルルリアアアァァァ!!!』

 贄を寄越せ。

 より多く、より上質な、贄を寄越せ。

 食わせろ。

 食わせろ食わせろ食わせろおおおお!!!!


 響き渡る竜の咆哮。
 だが、そんなものなど意にも介さぬ存在が居た。

 邪神としての、竜としての力。
 しかし、そんな|贋《・》|作《・》の力など、取るに足らぬ、と。

「──『竜』か。」

 アレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)は眼前の竜を静かに見据える。
 |知り合い《スィフル》が言うには、此処に居た数多の怪物共を喰らったとのことだが──アレクサンドロの瞳に映るのは、ただ哀れな竜の姿だ。

 余る力は、身を滅ぼすというが……成程、確かに。
 その目に理知の光はなく、ただその力を震わんとする狂気だけが灯っている。

 レヴニレースが、眼前に佇むアレクサンドロに向けて大きく咆哮し、それと同時に凄まじい重圧──殺意が放たれる。
 常人ならば、ただそれだけで絶命するだろうその咆哮を受け、暴力衝動に染まった瞳を覗いて尚、アレキサンドロは───笑った。

「くく、狂気のあまり、|俺《龍にして半神》と|お前《力に溺れ、狂った竜》の、存在の“格”の差すら分からなくなったか?」

 アレクサンドロが、その力の一端を解放する。
 受けた力を超える重圧。そして、その全てを見透かし震えさせるような“神力”を見せつける。
 これが“龍”だと。紛い物のお前程度ではどれだけの贄を喰らったとしても届かぬ領域なのだ、と。

「貴様に竜の名は相応しくない。貴様の全て、真祖なる神の下に返すがいい。」

 レヴニレースが鮮やかな赤い炎を纏い、溜め、吐き出すとするならば。
 アレクサンドロが放つのは──紅。
 見た目だけのものではない。アレクサンドロの、神としての力を象徴する紅色は、正面から相対する者へ圧倒的な力を見せつける。

 それは、極めて原始的な──恐怖。
 本能が、魂が、この紅を最大限に恐れ、遠ざけようとする。

 それが、正常な魂を有しているならば。

『キュリリリリリイイイィィィ!!!』

 UDCアースの怪物共は、互いを喰らう。
 力には意志が、意志には悪意が或る。
 狂い、混ざり、正気を失った竜に、その恐怖は無い。

 鮮やかな赤と、深く鋭い紅が正面から衝突し──赤だけが、弾け飛ぶ。
 届いたのは紅。

 根源たる紅はその身を滅ぼし尽くし──否、起こる筈だったそれは起こらなかった。

「──再生か。己が竜であることすら、竜の誇りすら忘れたか。」

 狂える竜を動かすのは何も竜の精神だけではない。
 もはや呪いとなってその身を蝕む数多の化け物の意志が、その身が朽ち果てるのを許さない。
 既に元の姿を取り戻しつつある竜は、再びその咆哮を空へと響かせる──

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルゴ・ルスツァイア
アドリブ歓迎

目標確認、地対空戦、広さは十分と。
圧倒的な”個”を、優秀な”数”で対抗する。……何ともまあ、燃えるじゃないか……それ位しか能が無いけどな。
じゃ、行こうか。

ダミーを展開すると同時に散開、ジャンプキットの機動力を活かして噛みつきを回避し、高精度の連携で四方八方から手榴弾やLR.35の銃撃をかける。
こんなサイズだが、出力次第でキャバリアの装甲すら貫ける銃だ。
つまり、盾は無いが鉾は有る。後は、連携次第だ。

2、3失っても良い。ダミーに食い付かれても自爆する気概で行こう。



 疾うに崩壊し、土煙をあげる施設の上で、空に轟く咆哮が響く。
 それは、自身の強大さを誇示する威嚇のようなものか、それとも、矮小な人間や怪物共を嘲笑っているのだろうか。

 今──この竜は、ここに存在する他の何よりも強大な存在になりつつあるのだろう。
 単独では──抑えることはできるかもしれない。損傷を与えることはできるだろう。

 だが、竜の討伐──骸の海へと還すことは? 

 エルゴ・ルスツァイア(|強化継承体《インヘリット・クローン》・f40463)にはその想像が浮かばなかった。
 ありったけの弾丸をぶつけても、手榴弾を投げ込んだとしても、硬い鱗に包まれた巨体は傷つきこそすれ斃れはせず。
 竜の息吹も、巨体による突進すらも、一つ喰らえば致命傷。

 だが、それは──エルゴが単独で挑んだ時の話。

「目標確認、地対空戦、広さは十分と。」

 土煙と立ち昇る豪炎の先に、竜は居る。
 今はエルゴを捉えてはいないが、交戦している気配もなし。一つ手を出せばその牙はエルゴに向くだろう。

「──圧倒的な“個”を、優秀な“数”で対抗する。……何ともまあ、燃えるじゃないか……それくらいしか能が無いけどな。」

 だが──エルゴには仲間がいる。
 それは、共に戦う猟兵達のこと。
 単独で倒せないなら、群で当たればいい。
 仲間達は、そう簡単にくたばるような存在ではない──“信頼できる”存在だから。

「じゃ、行こうか。」

 ザリと砂っぽくなったコンクリートの表面を踏み締め、駆け出すと同時にひとつの武装を開放する。

 【|複製分隊《ダミースクワッド・システム》】──自身と等しい性能のダミーが4体現れ、限られた範囲内ではあるが自立行動し連携が可能となるユーベルコード。

 事前に決めてあったのか、合図もなく散開し油断なく竜へ迫る。
 当然竜とてそれを見過ごすこともないのだが──振り下ろされた爪は、急速に迫る顎門は、エルゴやダミーには届かず虚空を切り裂く。

 そして行われるのは高い精度に完成された五人の連携だ。
 放つ銃弾に途切れはなく、包囲網に抜けはなく、それでいて単調ではない包囲射撃。

『グル、ギリリリアアアアァァァ!!!』

 ただの銃弾ならその鱗を貫けないと考えたか、それとも混ざり合う意識が防御を捨てたか、竜は吼え突撃を繰り返そうとする──が、エルゴの放った銃弾は竜の鱗を貫く。
 エルゴの銃──LR.35はキャバリアの装甲をも貫ける特別製だ。鉄の大鎧さえ貫くこの銃弾、竜の鱗如き何するものぞ。

 竜の体から血が流れ、赤い肉体を紅く染めれば──否、竜は再び己の肉体を躍動させ、エルゴのクローンを一体ずつ葬っていく。
 高速の噛みつきに、火炎のブレス。エルゴの装備も貧弱では決してないが、それらを防げるほどではない。

 ならば──どうせ散るダミーなら、最後にこんなものはどうだろうか?

 竜の口内で炎に包まれたダミーは、装備に詰め込んだ大量の爆弾を誘爆させ──ドン、と。

『ギャリリルルルァァァ!!!』

 エルゴの包囲網はダミー一体減ったところで崩れるはずもなく。
 包囲射撃は、確実に竜の体力を、装甲を、削っていく──

大成功 🔵​🔵​🔵​

柳・依月(サポート)
俺は柳依月、UDCアースの大学生だ。……だが、実は人間じゃない。妖怪だ。それでも俺は人間が好きで人間と共にある。彼らの日常を守る為、てのが俺の戦う理由になるのかな。
戦闘時は基本仕込み番傘での近接戦だが、中長距離や支援に回る時などは呪髪糸や禍魂による呪いなんかも使用する。
非戦闘なら情報収集が得意だ。主にネットだが、聞き込みとかもする。【化術】も得意だからな。

以下PL
ギャグ系の状況でもノリはいい方です。
 UCは指定した物をどれでも使用し(詠唱ご自由に)、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。



 カツと靴の音を響かせて、柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・f43523)は番傘の隙間から空を見上げる。
 土煙と黒灰に塗れ、空は見えないが──その代わり、響き渡る咆哮と共に見えるのは“竜”。
 その身体は赤く、吐く炎は赤く。

『グオオォォァァァ!!!』

 腹の奥まで響くような、低く強い渦巻く感情を声に乗せて。

「話は聞いてたが……ファンタジーは専門外だぞ……」

 依月は人の形をしているが人間ではなく──その実妖怪の一種だ。

 だが、人と共に歩み、彼らの日常を守る──その為に依月は剣を取る。

「ま、やるだけやるしかないかねぇ」

 ここはUDCアース。
 UDC施設ということもあり、人気のない森の奥に存在してはいるものの──竜の翼で飛んだなら、すぐにどこかの街へぶつかるだろう。
 そうなれば──多くの人が死ぬだろう。

 依月には退路はない。
 妖怪故に、“物語”故に──人の身を持ちながら人としての死すら曖昧な故に。

「竜──別に俺を喰らおうが、燃やそうが、知ったこっちゃないんだがな?」

 竜は吼える。
 刀を構え、しかして攻撃する気配の見えぬ不気味な男へ。
 それは威嚇か? それとも不気味さ故の恐怖か? もしそうなら──

 随分と、俺なんかよりよっぽど──“人間らしい”な。

「俺は呪うぜ、お前の全て。 ──墜ちな。」

 依月は黒い糸のような、『呪髪糸』を放つ。
 それは炎に燃えても尽きることはなく、竜の翼に絡みつき、機動力を奪う。
 翼を封じられた竜など、ただ地を這う蜥蜴と変わりなく。

「月に叢雲、花に風……そううまくはいかないものだぜ?」

 最後には、炎さえ操ることも封じられ。

 一歩、また一歩と接近し──音もなく。


 その身に深い切り傷を、幾重にも刻みつけた。 

成功 🔵​🔵​🔴​

山吹・夕凪
この烈火こそ、災いの元凶
最早、持ち帰られる事はなくとも、捨て置けない世界の脅威

しかし、それが竜とはやはり奇妙な縁
妖刀に連なり、誰かを救うべくと『さいわい』の路の始まりと同じモノ
ならば、それもまたひとつの起点
何かへと繋がる重要なひとつに思えるのですから
「必ずや討ちましょう。この度は私の力で」


空を飛びながら火を噴かれるのは何とも避けたい処
廃墟という周囲の建物、残骸を早業で飛び回りながら回避
特に火炎を吐かれないように攪乱も兼ねて、竜の下を潜り抜けるなど四方八方へと跳びましょう

そうして埒があかないと竜が苛立ち、噛みつきから始まる敵の技が来れば、それこそ好機
急降下する竜へと放つの破邪の霊気を乗せた風を操る術
凍結攻撃を乗せた冷たき疾風を『涙切』から放ち、その眼を凍て付かせて視界を奪い、その牙の狙いを狂わせましょう

刹那で至るは凪の心境、無念無想
『夜渡りの太刀』にて噛みつきを身躱してカウンター
竜鱗さえも透過する黒刃にて、心眼で捕らえた急所――逆鱗へと妖魔殺しの一刀を

烈火と竜の災禍
骸の海へと流れ逝きなさい



 さらりと美しい白髪が風に揺れ。

 土煙舞う、豪炎の包む、戦場には──似つかぬ風貌の女性が一人。

 ただ、その気配は鍛え上げられた達人のそれで。

 山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は油断なく、瓦礫の側で空を見上げる。

「この烈火こそ、災いの元凶──」

 見上げた先には、猛る焔を従えて、渦を巻くように空を羽ばたく、“竜”。
 もう既に、彼らの思惑は阻止した。
 だが、それはこの場が収まったという意味では断じてない。

 彼らが残した、最悪の置き土産。

『グルルリリャアアアァァァァ!!!』

「──しかし、それが竜とはやはり奇妙な縁。」

 竜の咆哮にも臆することはなく。
 澄んだ水色はただ一点のみを見つめる。

 それは烈火の竜であり、それは過去の情景であり。

 ──妖刀に連なり、誰かを救うべくと『さいわい』の路の始まりと同じモノ。

 手を腰に差した刀へ置き、目を閉じる。

 ──ならば、それもまたひとつの起点。 何かに繋がる重要なひとつに思えるのですから

 「必ずや討ちましょう。この度は私の力で──」

 再び開いた瞳には、強く灯る意志の光。
 瓦礫の影という、ある程度安全な場所を離れ、竜の近くへと駆ける。


 空を飛びながら火を吹かれるのは流石に避けなければならないが、そもそもこちらの攻撃も大抵は届きすらしない。
 仲間の攻撃によって鱗という装甲が一部剥がれていはするが、それでも必殺の一撃には届かない。

 相手とてこちらを滅ぼすために動く。
 今の竜が何を想っているか知らないが──化け物達を喰らって得たその力、竜の意思一つでまとめるには大きすぎるだろう。

 ならば──攻撃のチャンスが来るまで。その身を顕にするその時まで攻撃を誘い、避け続けるのみ。

 タン、と軽くコンクリートを蹴りながら、まるで風のように。
 戦場を縦横無尽に跳び回るなら、竜の単純な攻撃など当たるはずもなし。

 ブレスなら、上空から地面までの距離次第では軽く避けられる。
 焔を操り周囲を燃やしたとしても、風を読めば被害は軽微になる。

 さて、この千日手。先に折れるのは──竜。

『ギリリュラアアアアァァァ!!!』

 その巨躯を躍動させ、はるか上空から地面へと向けた急降下、そして鋭い牙による噛みつきが夕凪を襲う──!

 ──だが、それこそが夕凪の狙い。

 埒が開かないと竜が苛立ち、自身を危険に晒してまで直接攻撃するべく地に降りた、その一瞬がこそ好機──!!

 夕凪は竜と相対してから初めて、刀を抜く構えを取る。

 ただひとつ狙うは──急降下の速度、相手の力、その全てを利用したカウンター。

 焔に塗れて灼けつくほどに高温な戦場を、一陣の氷風が吹き抜ける。
 それは相対するものを凍て付かせる冷たき疾風。

 竜の眼は凍り付き、正しく夕凪を捉えることができない。
 それでも、と気配を頼りにした突撃を繰り出してくるならば。

『澄み渡る思いを、夜を渡る月と化して』

 刹那で至るは凪の心境、無念無想。

 竜が衝突する瞬間、ひらりと身を躱せば眼前には竜の逆鱗。
 逸話で、知識で、そして心眼で知るその部位は──竜種が持つ、致命的弱点。

「烈火と竜の災禍。──骸の海へと、流れ逝きなさい。」

 ──無念無想・夜渡の太刀

 全力で、最速で、振り抜いたその一太刀は竜の速度と質量も乗り、傷ついたその身を、綿を切るかのように軽々と斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年08月31日


挿絵イラスト