ダーティ・ゲイズコレクターは間に合わない
ダーティ・ゲイズコレクター
下記の内容で夏休みノベルの作成をお願いします!アレンジ・改変、問題ありません!大歓迎です!
●シチュエーション
デビルキングワールドに住む幼馴染の仕立て屋「エクサイト」にコンテスト用の水着を注文していたダーティ
いつもならもうとっくに完成の連絡が来るはずなのにいつまでたっても連絡がないので家に行ってみたら
何とエクサイトはデビルキングワールドで流行中のダーク・インフルエンザで寝込んでいた
水着が間に合わなかったことを涙ながらに謝罪する幼馴染を慰めつつ
看病と店番を買って出るのであった
●プレイング
うーん、もうすぐ水着コンテストが始まるんですが、まだエクサイトちゃんからの連絡がないですね・・・
いつもならとっくの昔に完成の連絡が来るはずなんですが・・・
もしかして何かのトラブルだったり?電話しようかな・・・いやいや作業の邪魔をするわけには・・・
う~~~我慢できません!直接会いに行きましょう!
(エクサイト・テーラーに着いたが扉には「CLOSE」の看板が掲げられていた)
あれ?今日は営業日ですよね・・・?これはいよいよ何かあったに違いありません!
(駆け足でエクサイトの家に向かい呼び鈴を鳴らしたが反応がなく、エクサイトから渡されていた合鍵で家にはいるダーティ)
お邪魔しま~す・・・エクサイトちゃ~ん?いますか~?大丈夫ですか~?
(寝室に入るとベッドの上で熱に浮かされながらもダーティの方を向き微笑んで挨拶するエクサイトが目に入り慌てて駆け寄る)
どどどどうしたんですか!?エクサイトちゃん!ってすごい熱!
え?ダーク・インフルエンザにかかって1週間以上こんな状態!?
お医者様には診断してもらっているから後はお薬を飲んで治るのを待つだけ・・・ですか
(するとエクサイトが泣きながらダーティに謝りだすのでダーティが慌てふためく)
エクサイトちゃん!?どうしました!?どこか痛みますか!?
え?水着が完成しなかったのが申し訳なくて?
コンテストよりエクサイトちゃんの病気を治すことが一番大事です!
それから完成した水着で二人でビーチに行って皆の視線を二人占めしちゃいましょう!
だから今はゆっくりと体を休めることに専念してください!
じゃあ今からご飯の買い出しと準備、それとお洗濯にお部屋の掃除をしますね!あとお店の仕事も私でできる範囲でさせていただきます!
気にしないでください!今までお互い困ったときは支え合ってきたじゃないですか!
今は私が助けるターンなので
次はエクサイトちゃんが皆に注目される服を作って、私を助けてくださいね!
●水着コンテスト
夏と言えば水着コンテスト。
それは猟兵にとっては最早常識であった。
この時期、あまたある世界の一つにおいて猟兵たちは夏の祭典こと水着コンテストに参加するために大忙しである。
コンテストの日取りに間に合わせるために多くの雑事を片付け、事件を解決する。
そして、ちょっと気になるウェスト周りやスタイル維持も忘れない
いやまあ、生命の埒外である猟兵にスタイル維持、という観念があるのかと言われたら……一部は関係ないだろう。
ともあれ、オブリビオンに関連した事件の解決に走り回っていれば、自ずとスタイルは維持されるので何の問題もないのである。
そう、最も問題であるのは水着の新調である!
これが最重要にして最難関!
だが、ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)には秘策がある!
秘策というか、幼馴染で今も仲良くしている仕立て屋『エクサイト』にコンテストに出るための水着を発注していたのである。
「む、むむむむ……!」
もう何も心配はいらない。
彼女に頼めばコンテスト用の水着は見事な仕上がりを持って納品されるであろうことは間違いなかった。
今年の水着は凄い。
それはもう浜辺の、否、アスリートアースの全視線をかっさらうこと間違いなしのデザインだったのだ。
三面図を進捗確認がてら『エクサイト』に見せてもらったが、それはもう素晴らしい仕上がりを予感させるものであった。
「む、むむむむ……?」
ダーティが唸っている。
そう、彼女が唸っているのはいつもならば『エクサイト』から水着完成の連絡が来ているはずなのに、いつまでたっても連絡が来ないからである。
どうしよう、とダーティは思う。
催促の連絡をしようか。
いや、でもちゃんと進捗確認のメールのやりとりはあったのだ。
しかし、それも数週間前のもの。
デビルスマートフォンこと、デビホンの連絡アプリ『DINE』のメッセージに既読がつかない。
「うーん、どうしたことでしょうか。水着コンテストまでもう日がないというのに……」
確かにダーティは思い悩んでいた。
水着コンテストの発注は『エクサイト』の普段の仕事ぶりを考えれば、未納はありえないことだ。
なのに、こうして遅れている。
もしかして、とダーティは己の思考が嫌な想像へと飛躍するのを感じたことだろう。
「も、もしかして何かのトラブルだったり?」
急な体調不良。
そうでなくても身内の不幸や、諸々のトラブルというは個人事業主にとっては常なるものである。
故に、ダーティは悩む。
なにかトラブルがあるのならば自分が解決したい。
けれど、これがもしもそうでなかったのならば、作業の邪魔をしただけに過ぎないのではないか?
あっちやこっちに飛ぶ思考。
ぐるぐると回る思考。
いずれもが彼女の脳にて周り、ついには限界を告げる。
「う~~~我慢できません!」
思い立ったが吉日。
行動に起こさねば何も結果は返ってこないのである。
ダーティは走った。
それはもう風のように疾く、稲妻のように鋭く。
白煙を上げながらダーティは『エクサイト』の経営する仕立て屋『エクサイト・テーラー』の店先へと走り込んでいた。
何事もなければ、『OPEN』の文字の看板がかかっているはずである。
そうであってほしい。
自分の嫌な想像が現実のものにならなければないい、とダーティは思ったのだ。
だが、現実は非常である。
「『CLOSE』!? えっ!? ええっ!? きょ、今日は営業日、ですよね? もう時間も、開店時間をとっくに過ぎてます! こ、これは」
いよいよもって『エクサイト』の身に何かが起こったのかも知れない。
こうしてはいられない。
来た時と同じようにダーティは駆けた。
それはもう疾風迅雷と言うに相応しい駆け抜け方であった。
信号無視に強引な車線変更、クラクションがパーパーと声援のように響き渡り、路地裏を駆け抜ければ、猫が驚き威嚇し、犬も吠たける。
「はぁ……はぁッ!」
普段ならば、こんなワルな違反行為やら迷惑行為をして自分が如何に優れたるワルであるのか悦に入るところである。
だが、ダーティはそんなことにかまっていられなかった。
眼の前には『エクサイト』の家。
恐る恐る呼び鈴を押す。
ぴんぽーん。
平均的な呼び鈴である。
だが、反応がない。室外機や電気メーターを指差し確認。
「いらっしゃいます、よね?」
でも反応がないのだ。
これは本当にいよいよというやつである。
ここで一つ特別アイテム。
テレレレッテレー。
あ~いか~ぎ~。
そう、合鍵である!
『エクサイト』は幼馴染であるダーティに合鍵を渡していたのである。
がちゃんこ。
音を立てて施錠が外れる音がする。幸いにしてチェーンロックは掛けられていなかった。まあ、掛けられていたとしても、デビルパワーで、ちょい、というやつである。
ダーティはそろりとドアを開けて足を踏み出す。
「お邪魔しま~す……『エクサイト』ちゃ~ん? いますか~?」
呼びかけにしてはあまりにも小声。
ささやき声めいた呼びかけであった。
これは伝説の寝起きドッキリカメラの手法であろうか! 否! ダーティは単純にもしも『エクサイト』が体調不良で眠っていたのならば、起こしてはまずいと思って差し足忍び足の上に小声で呼びかけたのだ。
無論、返事はない。
リビングにはいない。
なら寝室だろうか?
ダーティは『エクサイト』の姿を求めて寝室へと向かう。
するとドアの向こう側から唸るよな声が聞こえてくるではないか。
「『エクサイト』ちゃん!」
ドアを開ければ、そこにはデビルキングワールド名物、凍結地獄のアイスノンを額に乗せた『エクサイト』がベッドで息を切らしながら、ふうふぅと熱っぽい顔で此方を見ているではないか。
「ど、どどどどうしたんですか!?『エクサイト』ちゃん!?」
思わず駆け寄って『エクサイト』の額に触れれば、ダーティの掌にやけどを作ってしまうほどの熱!
あっつい!
ものすごくあつい!
「ごめんね~……だーく・いんふるえんざ、もらっちゃったみたいでぇ~」
情けない涙声で『エクサイト』はふにゃふにゃと口を動かす。
いつもの声ではなかった。
弱りきった声。
よっぽど体調がキツイのだろう。
「い、一体いつからなんです!?」
「……一週間前、からぁでぇ~……」
「お医者様には!?」
診断はしてもらっているのだろう、ベッドサイドには処方箋と水がおいてある。
一週間もこんな状態なのだろうか?
今年のダーク・インフルエンザは辛い症状が続くと聞いていたが、ここまで『エクサイト』がへばっているのを見るのは久方ぶりであった。
まあ、悪魔であろうから死ぬことはないだろう。
裏を返せば、そんな頑丈すぎる最強の種族である悪魔でさえ、こんな状態にしてしまうほどに凶悪なウィルスなのだ。
「……おくすりは~飲んでいるから~……大丈夫だと思うんだけれどぉ~」
彼女の言葉は徐々に湿り気を帯びてきていた。
ダーティは、その言葉に胸を一先ずなでおろす。
お薬があるのならば、逼迫した事態ではないのだろう。
今は体がキツイだろうが、お薬さえ飲んでいたのならばきっと大丈夫だと思えたのだ。
「ごめんねぇ……ぐす、ぐすぐすぐす」
そう思っていたら、『エクサイト』が涙をポロポロこぼし出す。
止まらない。
止められない。
もう涙が滂沱のように溢れ出し、水流のようにベッドを濡らす。
危ない。
これ以上涙を流させると脱水症状……いや、その前に涙で部屋が浸水して溺れてしまうのではないかと思わせるほどに凄まじい水量を『エクサイト』は涙している。
「あ、あわあわ、あわわ! ど、どうしたんですか『エクサイト』ちゃん! 大丈夫ですよ! 私がいます! 心細いのはもうどこかに私がぶっ飛ばしておきましたから、安心して下さい!」
「違うの~……」
べそべそと涙を流しながら『エクサイト』は、しゃっくりをあげる。
「何が、一体どうして……? どこか痛いんですか?」
「……違うの……その」
彼女は瞳を伏せてダーティの手を掴む。
思った以上に弱々しい力だった。
「……ごめんなさいぃ~……水着、間に合わないぃ~……うぅ~~~!!」
ようやく気がついた。
ダーティは、まるで気にしていなかったが、『エクサイト』が気にしていたのは、ダーティから頼まれていた水着コンテスト用の水着の納品が間に合わないことに対して、だったのだ。
彼女は『エクサイト・テーラー』を一人で切り盛りしているスーパー仕事悪魔である。
だからこそ、妥協はできない。
デザインにも縫製にも。
故に、この状況で仕事ができるわけもなく、彼女が望み、ダーティに応えることのできるクオリティの納品ができないことに気がついていたのだ。
「そんな……コンテストより『エクサイト』ちゃんの病気を治すことが一番大事です!」
ダーティは一喝する。
そう、今日もこうやって彼女のお宅にやってきたのは、催促のためではない。
彼女のみを案じてのことだった。
はっきり言って、ダーティは自分のためだったのならば、あんなに疾く走ることはできなかっただろう。
タイムを測っていたのならば、デビルキングワールド最速レコードを叩き出していたことだろう。残念ながら非公式なので記録には残らない。
それほどまでに彼女の身を案じて、そしてダーク・インフルエンザにかかっているとは言え、無事を確認できて本当によかったのだ。嬉しかったのだ。
己の悪い想像が当たっていなかったことに対して、神様に感謝してもいいとさえ思っていたのだ。悪魔だけど。
「でも、でもぉ~……だーてぃちゃんのみずぎぃ、みたかったぁ~!!」
『エクサイト』が泣いている理由はシンプル・イズ・ベストであった。
そう、他の誰よりもダーティの水着コンテストの水着姿を見たかったのは『エクサイト』だったのだ。
視線誘導の悪魔たるダーティならば、あの水着を切ればコンテスト中の視線という視線を彼女のダイナマイトでグラマラスで、スーパーセクシーなボディに集めることができたはずなのだ。
それが叶わなかった。
自分の健康管理の甘さで。
でも、ダーティは頭を振る。
優しげなほほえみさえ浮かべていた。
「いいんです。水着の完成が遅れたって。コンテストに参加出来なくたって」
「……えぇ~……?」
「一番なのは、『エクサイト』ちゃんの作った水着を私が着るということなんですから! だから、今はゆっくりと体を休めることに専念して下さい!」
「だーてぃちゃん~……!」
感激している『エクサイト』の頭をなでてからダーティは、よし、と立ち上がる。
「ちょっとまっていてくださいね。今から御飯の買い出しと準備、それとお洗濯にお部屋のお掃除をしますね!」
ものすごい音がした。
空気の壁をぶち抜く音。そう、それはダーティが音速を越えた瞬間であった。
『エクサイト』の家がたわむように揺れ、一瞬の後にまた盛大な轟音と共に揺れる。
「只今もどりました! さあ、『エクサイト』ちゃん! ダーク・インフルエンザなんてぶっ飛ばすための、スーパーデラックス・ザ・消化によいおかゆを作りますね!!」
早い、というレベルではなかった。
なんか時空さえ歪めているのではないかという速度でダーティはデビルスーパーへと飛び込み、流れるような動きで食材を吟味し、会計を済ませ、来た道を光速でぶっ飛ばして戻ってきていたのだ。
早すぎる。
そこからはもうすごいものであった。
なんかメイド服に着替えたダーティが一週間の間に積もり積もった『エクサイト』の部屋を片付け、洗濯を、おかゆを作っている間に全て済ませてしまったのだ。
視線誘導の悪魔らしい翻るメイド服のスカートや、お御足やらなんやらがあった気がしたが、今のダーティは光速のダーティである。
目まぐるしく動く彼女の動きを捉えられる者などいない。
そう、彼女がここまで動けるのは友達のため!
彼女は視線誘導の悪魔だが、友情に厚き悪魔なのだ。
ワルに憧れる悪魔たちからすれば、ちょっと褒められた行為ではない。
性根が良い子なのは如何ともしがたい。
誰もが友達のために看病をするとなれば、ワルでないことに目をつむるだろう。それくらい、悪魔という種族の根幹にあるのは善性なのだ。
「全部終わらせておきましたからね!」
「うぅ~ダーティちゃん、すごすぎるぅ~家事万能の悪魔~」
「ふふ、これも完成した水着で二人でビーチに遊びに行くためです! おそろいの水着を着て、ビーチの視線を二人占めしちゃいましょう!」
「わ、わたしも~……?」
あれを!? と『エクサイト』は思う。
ダーティには似合うかもしれないが、自分にはとてもとても、と思う。
けれど、ダーティの笑顔を見ていると、それも悪くないかな、と思ってしまうのだ。
友情とはワルから程遠いことだ。
悪魔である自分たちにとってはなおさら。
だけど。
それでも『エクサイト』はこの友情を手放したくない。
きゅ、と伸ばした手がダーティの手を握りしめる。
「ええ!『エクサイト』ちゃんが完治するまで、つきっきりで看病しますからね!」
「ありがとう~」
「気にしないで下さい! 今までお互い困った時は支えあってきたじゃないですか!」
ダーティは屈託なく笑う。
メイド服だからなんかこう魅力3割増であった。
「今は私が助けるターンなんです」
にこ、と笑うダーティの顔。
その笑顔をいつまでも見ていたい。叶うのならば、と思う。
でも、本当に彼女が笑ってくれるのは、自分の仕立てた水着をきてくれた時だ。
そして、それを彼女が望んでくれている。
なら。
「早く、治さないと、ねぇ~」
「慌てなくっていいですよ。次は『エクサイト』ちゃんがみんなに注目される服を作ってもらうターンなんですから。私を助けて下さいね!」
そう言ってダーティはまた『エクサイト』の頭を優しく撫でる。
デビルキングワールド名物、凍結地獄アイスノンを取り替えた箇所がじんわりと熱い。
ダーク・インフルエンザのせいじゃあないと思う。
ダーティの笑顔こそが、きっと特効薬。
その熱が『エクサイト』の身を苛むダーク・インフルエンザを熱でもって駆逐している頃なのだろう。
上がる熱はきっとそれだけじゃあないんだけれど。
それは胸に秘めて『エクサイト』はダーティに珍しく甘えるように手を握りしめ、ダーティもまた笑って彼女の手を優しく握り返す。
ここに美しきワルの友情がある。
けれど、それは秘されるべきもの。
秘されているからこそ尊いものであるとも言えるだろう。
そして、彼女が完治した時、デビルキングワールドビーチに全ての視線をかっさらう恐ろしいほどに魅力的な水着に身を包んだ二人組が現れたのだという――。。
成功
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