【SecretTale】真実を求めて Side:S
●今回の調査メンバー
諜報部隊『オルドヌング』。
ヴォルフがある理由から立ち上げた上位調査人と上位戦闘員からなるこの組織。
現在離反したメルヒオールや|世界の敵《リベリオン・エネミー》として認定されたエーミールに対するあれこれを副リーダーのカスパルが考えている最中であり、その補助としてオスカーとローラントが手伝っていた。
そんな折にやってきたのは、司令官システムの1人スヴェン。
彼はある場所の調査を行いたいたかったのだが、|調査人《エージェント》の同行が必須とエルドレットに言われてしまい、一番の顔見知りでもありお隣さんでもあった|調査人《エージェント》オスカーのもとへ訪ねて来たのだ。
「ええんやけど、何処行くん?」
「オレの家だ。フェルゼンが何故ああなったのかを調べに行く」
「……ってことは俺も強制帰宅やねぇ……。マルーに連絡入れとこ……」
「ああ、そうしてくれ。エルドレット曰く、あなたの家も調べられるようにするためだと言っていたからな」
大きなため息をついて、オスカーは一旦席を外す。実家であるアビスリンク家は現在執事長のマルクスのみが滞在しており、帰るときは連絡を入れないと怒られるからだ。
その合間にもカスパルとローラントの2人は何故今更になってヴェレット邸を探るのか、とスヴェンに聞いていた。フェルゼンが変容したとして、家に帰ってるなんてことはないんじゃないか? とも。
だがスヴェン曰く、フェルゼンはああ見えてマメな子供だったから、実家の方に日記などを残している可能性が高いと言う。
スヴェンには幼い頃のフェルゼンと過ごした記憶は|何故か無い《・・・・・》が、それでもかなり几帳面な性格だから幼い頃に何か残していてもおかしくはないだろう、と。
「日記、勉強用ノート、他にも様々な物品を残している……そう踏まえて、オレは一旦帰ってみるかと」
「ふーむ。そしたらローも連れていきます? 人手は欲しいっしょ?」
「そうだな。あの家はオレやオスカー君、猟兵の方々の手を借りたとしても調べるには時間がかかる」
「確かめっちゃ広かったよなぁ……ほなそういうことなら手伝いに行きます」
「助かるよ」
感謝の言葉を述べると、スヴェンはすぐさま司令官システムに割込みの連絡を入れ、オスカーとローラントの指令を指定。カスパルの補助からヴェレット邸調査へと変更させた。
「オスカー君、あなたの家の調査権限はもらえたかな?」
「マルーが兄貴から連絡もらってたそうで、一応俺とマルーが同伴やったらオッケーって」
「では、オレとローラント君でオレの家を。オスカー君とマルクスでそちらの家を調査だな。猟兵の方々にはどちらかを選ばせておく」
そう言ってスヴェンは再び司令官システムに割り込みを入れ、猟兵達に調査権限を付与。これで猟兵達には2つの家を調べる権利を与えられる形になった。
●アビスリンク邸
学業専門都市『ヴィル・アルミュール』の一画にある、アビスリンク邸とヴェレット邸。
どちらもそれなりに大きな屋敷となっており、現在はアビスリンク邸の執事長であるマルクスがどちらの屋敷も掃除している状態だ。
今回は二手に分かれての調査となるため、オスカーはスヴェンとローラントと分かれた後に自宅の鍵を開け、帰宅する。
「おかえりなさい、オスカー様」
「ん、ただいまぁ。このあと猟兵さん達来るから、来たら案内したげてねー」
「はぁい。何処を調べますかねぇ……?」
「兄貴の部屋と研究室、あと書庫くらいかな。親父の部屋は別によさそう」
上着を脱いでラフな格好に戻ったオスカーは、一旦自室に戻ってメールなどの確認を済ませてから調査の準備に取り掛かる。
途中、いつでも食事休憩が取れるようにマルクスに軽食の準備をしてもらい、水分補給も可能なように麦茶なども用意してもらっておいた。
●ヴェレット邸
時同じくして、ヴェレット邸ではまずすべての部屋の窓を開ける作業から始まった。
というのも長らく室内の掃除をしていなかったせいでホコリが溜まっており、前回のマルクスの掃除だけでは完全に取り除くことが出来なかったようだ。
「しかしまあ、えらい妙な間取りしてはるんやなぁ」
ローラントが気になったのはその家の間取りだ。玄関から入ってすぐに見えるのはリビングへの扉と、2階へ上る階段、そして奥へ続く廊下。
奥へ進めば図書室やスヴェンとその妻ザビーネの部屋があり、まるで玄関から隠すかのような間取りにローラントも不思議がっていた。
だがこの間取りにした理由は至極単純なもので、ヴィル・アルミュールの町並みが直ぐ側の玄関側よりも、多少空を見やすい奥側にスヴェンやザビーネの部屋を配置することで、より星を見やすくしたのだそうだ。
「玄関側に部屋を配置すると星がほとんど見えないのでね、この土地」
「あっそう言う理由!? 何処まで星が好きなんスヴェンさんって!?」
「自分で土地を買って家を立てて星を見やすくするぐらいには好き……かな……」
「ガチ勢!!!」
そんなヴェレット邸では調べられる場所はいくつもある。
フェルゼン&キーゼルの部屋、図書室、スヴェンの部屋、その他様々な場所。
広い土地に広い屋敷を建てたものだから、スヴェンとローラントだけでは探索も大変だ。
フェルゼンが変貌してしまった理由。彼がミメーシスと呼ばれる|侵略者《インベーダー》に肉体を奪われることになった原因。
それらを探ることが、今回の目的である。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第10章。
今回はスヴェンやフェルゼンの実家、ベルトアやオスカーの実家に行きます。
なお第10章は2作に分かれており、先に「Side:E」に参加している場合はこちらでの採用は不可となります。
「Side:E」が完結した場合のみ、同時参加が可能となりますのでご注意ください。
シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/
今回の現場は『ヴェレット邸』がメインとなります。
ヴェレット邸はマップが公式HPトップ下部に記載されますので、ご確認ください。
調査可能場所は『スヴェンの部屋』『フェルゼン&キーゼルの部屋』『図書室』『???』が主になります。
その他、ネタ情報も満載な探索箇所がございますので、ぜひともホームページをご確認ください。
また今回お隣さんである『アビスリンク邸』にもお邪魔することが可能です。
こちらはマップはありませんので必ずしも訪れる必要はありませんが、小さな要素は隠されています。気になる方はどうぞ。
探索可能場所は『ベルトアの部屋』『ベルトアの研究室』『書庫』です。
その他、調べてみたいものがありましたらプレイングに記載ください。
整合性が取れれば、リプレイとしてお返しいたします。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Mission-10 SvenSide
シナリオのクリア条件
ヴェレット邸の調査
ヴェレット邸調査 フラグメント内容
POW:隠されたものがないかを細かく調べてみる
SPD:複数の部屋を調べてみる
WIZ:事前に必要なものを思い浮かべて調べてみる
****
●ヴェレット家の日常
「そういや結構広い家ですけど、なんでこんなとこ買おう思ったんです?」
ふと、ローラントが気になったことをスヴェンに問いかける。
ヴェレット邸とアビスリンク邸はヴィル・アルミュールの中でも住宅街エリアと小学部エリアの境をまたぐように建っており、なんとも不可思議な位置取りになっている。
そのため小学部エリアで勉学に励む子供達がヴェレット邸やアビスリンク邸を物珍しそうに見ており、場合によっては『箱庭研究』の研究者の家として紹介されているのだとか。
その問いかけに対してスヴェンは最初は『星の観察に適した場所を探していた』と答えたが、徐々に眉間に皺を寄せていく。
どうやら本来の事情とはまた違う事情でこの土地を購入したそうで、スヴェンの顔つきが一層怖い表情になっていた。
「フォルカーが買えとうるさくて買ったんだった……」
「えぇ……自分で決めたんちゃうんですか……」
「星を見れるいい場所があると聞いて買ったんだが……ヤツは……ここらの地質を調査したいが故に……!!」
だんっと壁を叩いて悔しそうにするスヴェン。どうやら隣の家の主に言いくるめられて土地を購入したようで、本来土地の購入はする予定はなかったのだそうだ。
が、星の観察にはめちゃくちゃ適している場所だし、何より広く購入出来てしまったので手放すに手放せなくなって今に至るのだと。
「まあ……ザビーネも……趣味の薬草栽培が出来て嬉しそうだったから……離れられなくって……」
「あー、なんかスヴェンさんってヴォルフさんに負けへんぐらいの愛妻家っすよね。そういう写真とかも残っとるんかな~」
「やめっ、やめろ!! 恥ずかしくてオレがもう一度死ぬから探そうとするな!!」
「そう言われたらなんか探したなる~」
ちょっかいをかけるように、ローラントが室内を探して回る。
この家の過去を全てさらけ出そうと言うように……。
●アビスリンク邸の日常
「それにしても、兄貴の部屋ってホント……こう……なあ」
「ええ、はい。そのままにしておけって言われてますが、僕としてはそういうわけにもいかず」
「ごめんなあ、ホンマ」
えっちらおっちら、室内の本をまとめては読みやすいように片付けていくオスカーとマルクス。
巻数の並びが違っていたり、異世界の言語が揃わない本が並んでいたりとこれまた部屋主のクセが強く出ているため、猟兵達が来たときに備えて整理整頓をしていた。
しかしその最中、オスカーは本棚の前に異質な色の床があることに気がついた。
ベルトアの本を片付けている中でこれまで見たことのない、一部分だけが違う床。円形に出来た、そこだけ時間が止まっているかのような床に彼は首を傾げていた。
「んんー……? マルー、これ何か兄貴から聞いてる?」
「その床ですか? そういえば例の論文を仕上げた後にその辺りで何かしていたような……」
「例の論文て?」
「あのほら、『ゲート構築と呪術について』の本ですよ。何かしていたというのは覚えているんですが、何をしていたのかまでは思い出せなくて……」
眉間に皺を寄せ、過去ベルトアが何をしていたのかを思い出そうとするマルクス。
しかし30年以上前の出来事故にほとんど思い出すことが出来ず、結局ベルトアがそこで何をしていたのかまでは思い出せなかった。
ただ『ゲート構築と呪術について』の本が関わりあるというのは間違いないらしく、本をそこに持ち込めば何かが起こるかもしれないとのこと。
「ふーむ。まあ絶対調べろってわけでもないし、一応ヴォルフさんには連絡いれとこかぁ」
「お願いします」
ぽちぽちと携帯端末片手に、連絡を取り合っておいたオスカー。
その話を聞いたヴォルフは猟兵達に必要であればジャックから『ゲート構築と呪術について』を借りることが出来るようにしておくと連絡が入ったのだった。
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・ジャックより『ゲート構築と呪術について』の本が借りられたため、持ち込むことが出来ます。
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響納・リズ
では、私はヴェレット邸のフェルゼン&キーゼルの部屋に参りましょう。
……もしかしたら、フェルゼン様の幼き頃の可愛らしい姿が見られるかも、だなんて、ちっとも思っていませんですわ! あっと何でもありません。
まずは、棚にあるもの、アルバムとかがないかを見回りながら、調査を進めてまいりましょう。日記とか出てきたら良いのですが……。
どちらかというと、フェルゼン様の思い出の品が出てきてくれると嬉しいですわね。
そういえば、あの???の部屋、どこにもつながってないのですが、まさか、この部屋で隠し通路とか隠し部屋とか……ありませんわよね?
一応、隅々まで入念に調べておきましょう。
少々浮足立ってるのは、気のせいですわ
●Case.1 幼い頃の彼ら
学業専門都市『ヴィル・アルミュール』の一画にある、ヴェレット邸。そこに訪れた響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)は、一言挨拶を入れて玄関を通り抜ける。
少し不思議な間取りのヴェレット邸にリズは少し驚きながら、まずは目的であるフェルゼン&キーゼルの部屋について聞いてみる。
「ああ、それなら2階の方になる。オレも久しぶりに入るから現状がどうなっているか知らないんだよな」
「まあ、そうでしたの? でしたら、ご一緒にいかがでしょう?」
「そうだな……そうしよう。あの子が書いた論文もあるだろうし、読んでみたい」
「フェルゼン様の論文……とても気になりますわね!」
目をキラキラと輝かせて、スヴェンと共に階段を上がっていくリズ。軋む板の音だけが響きながら2階へ上がると、ローラントが箒で廊下の床を掃いているのでそれを任せてフェルゼンとキーゼルの部屋へ。
フェルゼン&キーゼルの部屋は、双子が一緒に過ごす分色々なものが残されていた。
とはいえ教育に対しては少しだけ厳しかったスヴェンとザビーネの采配によって本が多く残っており、双子のどちらがより勉強熱心だったかがよくわかった。
「こちらがフェルゼン様の机でしょうか?」
「そうだな。……エルドレット曰く、あの子は幼い頃はよく本を読んでいたそうだ」
ひとつ、フェルゼンの机の傍にあった本を手に取り、ぱらぱらと中を読み進めたスヴェン。その本は大人でも難しいと称される物理学の本であり、フェルゼンはこれを何度も幼い頃に読んでいた形跡があった。
もともとフェルゼンはおとなしい子供だったそうで、キーゼルとは違い外で遊ぶよりは室内で本を読む方が好きだった子供。それぞれ顕著に差が出ていたが、いつの間にか2人共学者の道に進んでいたのだそうだ。
「フェルゼン様は何が得意だったのでしょう?」
「物理学だな。確か、あの子は箱庭世界の研究の際にも物理学を主にして世界を成立させていた……はず、だ」
少しだけ、歯切れの悪い回答をするスヴェン。というのも彼には幼い頃のフェルゼンやキーゼルと過ごした記憶がなく、箱庭研究のときにもほとんど表に立つことがなかったことから司令官システムの誰かに話を聞いて情報を獲得している状態となっている。
なぜ記憶がないのかとリズが問うても、スヴェンはわからないとしか答えられない。己の脳に傷がついているか、あるいは誰かが消去しているか。それらは定かではないと。
「……と、すまない。オレの記憶よりも、フェルゼンの豹変の原因を探らなければな」
そう言って、スヴェンは調査に乗り出していく。同じようにリズも室内を見渡して、棚や机などの調査を始めた。
「……わあ……」
幼い頃のフェルゼンは机の上に家族写真を置く子だったようで、少しだけ色褪せた写真が立てかけられている。まだ顔に紅を入れていない純粋な可愛らしい子供のフェルゼンと、活発そうな子供のキーゼル。優しそうな表情で今と殆ど変わらないクマの残る表情のスヴェンと、幼いマリアネラを抱いたザビーネの姿が残されていた。
ただ、気になるのはその写真が撮られた時期。写真立てを外してみると、裏面には撮られた日が記載されており、今より46年前――つまりフェルゼンとキーゼルが4歳ぐらいの頃の写真となっていることがわかった。
だというのに、フェルゼンの右目は……|重瞳ではない《・・・・・・》。まだキーゼルと同じように赤い目だけが残されており、最初から彼の目は重瞳ではなかったことを知らしめていた。
「ということは……」
キョロキョロとあたりを見渡して、次に目をつけたのは本棚の中のアルバム。幼い頃の写真、学生の頃の写真と様々織り交ぜられたものがあるならば、重瞳になったタイミングもわかるのではないか、と。
いくつかの写真を確認してわかったのは、フェルゼンが片目を隠すようになったのは6歳を過ぎてからのこと。まだスヴェンとザビーネが生きている頃には既に片目を隠すようになっており、その頃から重瞳になったと推察できる。
しかし紅の方はアルバムを見てもいつ付けられたかはわからない。若かりし頃のフェルゼンは紅をつけていなかったことから、推察できるのは『ここしばらくのことではないか?』ということぐらいだった。
「ふむ……エルドレットもいつからだったかは忘れているみたいだしな。そのうちわかるだろう」
「そうですわね……」
●Case.2 隠すために作られた
「……あら?」
ふと、机の上に乗っていた本をいくつか避けている最中、リズが合間に挟まっている手紙を見つけた。
手紙は差出人などもなく、シーリングスタンプで封がされている状態。しかしあまり劣化していないことからこの手紙は最近書かれたものではないか? とリズは推察した。
「どうしましょう、こちらのお手紙……」
「……ふむ。開けてみる他ないだろう」
「では……私が開けてみます」
スヴェンの許可を取り、手紙の封を開くリズ。恐る恐る開いてみると、中には2枚の手紙が入っていた。
1つは少しボロボロになった、幼い子供が書くような文字で書かれた手紙。もう1つは新たに書かれたもののようで、綺麗な便箋だ。
まずは綺麗な方の便箋。どうやらフェルゼンからの手紙のようだが、少し文字の書き方がいびつなものだ。まるで支配から逃れる恐怖を滲ませたような、そんな書き取り方をしている。
これを読んでいる誰かへ
私は今、ミメーシスと呼ばれる異星の生物によって肉体を奪われている。
奴らの目的は侵略。『母』と呼ばれる存在をこの世界に呼び、星を手に入れるつもりだ。
だが、まだ呼ぶに至れていない。奴らの『母』の身体がない故に。
私の中のミメーシスは、『母』たる存在の肉体をエーミール殿にしようと画策している。
《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の存在。エルドレット先生への怒り。
それらがあるからこそ、彼の身体は『母』たる存在を定着させることが出来るのだと。
これを読む誰かへ。どうか、この目論見を止めてくれ。
私が、まだ『フェルゼン・ガグ・ヴェレット』である間に。
この凶行を止める術の|1つ《・・》は、この家のある場所に隠した。
それは父様にしかわからないだろう。
どうか、止めてくれ。私を。
「……これは……」
フェルゼンからの手紙だと推察できるそれは、スヴェンから見ても現在のフェルゼンからのものだと断定できた。特徴的な筆跡が、ミメーシスでは真似が出来ないものだからと。
「だが……オレしかわからない場所か」
そう呟いて少し考え込んだスヴェン。ふとリズがこの家の間取りマップを見せてもらった時、スヴェンとザビーネの部屋の間にある不思議な空間があったことを思い出し、そこにあるのではないかと指摘した。
位置的にもフェルゼンとキーゼルの部屋から行けそうな気がするが、と辺りを見渡したが……特にそのような場所はなく、スヴェン曰く『あの部屋はオレの部屋の本棚の裏から行ける』ということを教えてくれた。
「だが、そちらの古い方の便箋を確認するのが先だろうな」
「そうですね。……でもこれは……」
子供ながらの拙い文字でリズは解読に手間取ってしまったが、スヴェンの解読も共にあったためスラスラと内容を読み解くことが出来た。
手紙だと思われたそれの中身は幼い頃のフェルゼンの日記。もともと日記帳に書いたもののようだが、破り取って手紙とともに挟んでいたようだ。
エルグランデれき2156ねん 8がつ27にち
今日はマリィのたんじょうび。かあさまとキーゼルとマリィはケーキをかってくるって、でかけた。
ぼくはとうさまといっしょにおうちにいて、でも、おほしさまは見ちゃダメっておこられた。
どうしてダメなんだろう? っておもったけど、見たかったから、見る!
エルグランデれき2156ねん 8がつ28にち
きのう、ぼくはベランダでたおれてたってキーゼルが言ってた。
なにがあったのかは、ぼくもおぼえてない。ただ、ずっと右目がいたい。
びょういんにいったけど、よくわかんなかった。おいしゃさまも、わかんないって。
右目、どうしちゃったんだろう。
エルグランデれき2156ねん 8がつ29にち
右目がすごいことになっちゃった……。
目がみっつある!!!!!!!!!!!!!
「スヴェン様、これって……!」
「……決定的証拠、と言っても過言ではないな」
幼い頃のフェルゼンの日記によって露呈されたのは、フェルゼンが重瞳となったであろう瞬間が記されたものだ。
エルグランデ歴2156年は今より44年前。フェルゼンの年齢から逆算しても、目を隠し始めた6歳頃の写真とほぼ一致するため、まず間違いなく6歳の8月29日には重瞳となったことが判明した。
「……44年前……というと、確か流星群が起こった年でもあった、はずだ」
「はず、というのは……」
「すまない……記憶が消えている以上、直前の流星群の周期からの逆算だ。後に司令官システムで照合する必要があるな……」
眉根を寄せて少々考え込んだ様子のスヴェン。44年前の8月頃には何があったのかを何度か考え込むが、記憶が失われている以上思い出せることは少ない。
そうなると残るは、フェルゼンが残したという『ミメーシスを止める術の1つ』を回収することなのだが……ここでローラントが廊下からひょっこりと顔を出して、お手伝いをお願いしてきた。
「ごめぇん、俺じゃ届かへんとこ出たぁ」
「あらあら……では残りの探索は他の方にお願いして、お掃除をしたほうが良さそうですね」
未だに埃の多いヴェレット邸。
それらを隅々と掃除することで、何かしらの発見があるかもしれないと少し浮足立つリズなのであった。
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・フェルゼンが重瞳となったタイミングがわかりました。
→エルグランデ歴2156年に彼は重瞳となっていたようです。
→その年には流星群が起きていたかも……?
・???の部屋に入る手段がわかりました。
→スヴェンの部屋の本棚を調べることで入れるようです。
→フェルゼンはこの部屋に『ミメーシスの凶行を止める手段』を残しているそうです。
***************************************
大成功
🔵🔵🔵
唯嗣・たから
ゲームの、調査ターン、みたいで、どきどきする。
たから【スヴェンさんの部屋】、調べるね。
木を隠すなら、森の中。本を隠すなら、本の中。
本棚、調べる。本は、情報の海。記録の海。
スヴェンさんの記憶の穴を埋める、何かが、あるかもしれない。
小さい頃、過ごした記憶がないのは、ちょっと、違和感。
日記とか、研究記録とか、ないかな。隠し部屋への、仕掛け、とか。
小さなクロたちと探すよ。
家宅捜索、ごっこ。GOー!
…ベッド、ふかふかかな。ちょっともふもふ、してみよう、かな。
そういえば、誰かがいってた。ベッド下は、男の子の、お宝があるって。
あるかなー…あるかなー…?
●Case.3 情報隠すなら本の中
「とんとんとーん! スヴェンさーん!」
「ナターシャから連絡は受けている。どうぞ」
「おじゃま、します!」
ヴェレット邸にお邪魔して、スヴェンの部屋へやってきた唯嗣・たから(忌来迎・f35900)。木を隠すなら森の中、本を隠すなら本の中ということで、一番大事な情報があるであろうスヴェンの部屋に案内されていた。
どんと積み上げられた本の数々。いくつもの本棚があるが、どれも彼が集めた宇宙に関する本ばかり。
その他には当時を生きた研究者の論文、己で考察を練り上げメモしたノートなどが存在しており、生きていた当時のスヴェン・ロウ・ヴェレットという人物は勤勉だったことが伺える。
「……でも、やっぱり、スヴェンさんの記憶、ないの、変……」
だけど、たからにはやはり違和感しか持てなかった。スヴェンという人物がこれだけ研究熱心で、ノートを残すような人物ならば記憶が抜け落ちるということはありえないだろうと。
それなら、日記や研究記録をこの本の山から探し出してみるのはどうかな? と提案を上げた。記憶がなくても、なにかの手がかりが残されているかもしれない、と。
「オレとしては構わないが……当時のオレは何を残していたか……」
「たぶん、いっぱい、残ってると、おもう! フェルゼンさんの、お父さん、だもん!」
「……ああ、なるほどな。確かにそうか」
フェルゼンが幼い頃に日記を残していたことを考えれば、父であるスヴェンもまた日記を残していた可能性が高いと考えたたから。子供というのは親がやっていることを真似する事が多いため、きっと、幼いフェルゼンも真似をしたのかもと。
そういう探しものなら任せて! と、たからはユーベルコード『エージェントごっこ』を発動。カラクリ人形のクロ達を呼び寄せると、スヴェンの部屋のあちこちを探して回って! とお願いをしてみた。
するとクロ達、数体はごそごそとベッドの下に潜り込む。
それに気づいたスヴェンは最初は首を傾げたが、ぬるりとクロ達と共に出てきたピンク色の表紙に大声を上げ、素早くクロ達からその本を取り上げた。
「わ"ぁ"ーーーーー!!!???」
間一髪でたからの目には入らなかったものの、それが『男の子のお宝』であることに気付いたたからは目をキラキラと輝かせ、本当にあったんだ……! と声を上げた。
その後スヴェンはすぐさまピンク色の表紙の本を黒のゴミ袋で包み、念入りにテープで止めてたからの目につかないようにゴミ箱へと捨てる。こんなイケナイものは見てはならないと言うように。
「むぅ。お宝、みつけたのに」
「アレは調査に必要はないもの。特にあなたには刺激が強い」
「むぅ」
ちょっと唇を尖らせ、拗ねた様子のたから。しかし次にクロが見つけたものを見て、再び目を輝かせた。
彼女が見つけたのはスヴェンの日記。この中に消えたスヴェンの記憶の手がかりになるものがあるんじゃないかと、早く開いてほしいとスヴェンにねだった。
中に書かれているのは……スヴェンでもたからでも想像することの出来なかった、失われた記憶の欠片。44年前、何が起こったのかを事細かに書き記したものだった。
エルグランデ歴2156年 8月23日
本日未明、異種族との交信に成功。種の名は『ミテラ・ミメーシス』。
星から星へと渡り歩く種族のようで、エルグランデという星に興味を持っていた。
こちらからの情報を与えたところ、一度考えると告げ連絡が途絶える。
エルグランデ歴2156年 8月24日
午後、ミテラ・ミメーシスとの交信。
彼らの目的は種の繁栄。故有って星から星を渡り歩いているようだ。
エルグランデの星を見に来てみたいと、使徒を送ると連絡があった。
オレの仕事の兼ね合いから、エルグランデ歴2156年8月27日に来るように伝えた。
エルグランデ歴2156年 8月26日
午前、ミテラ・ミメーシスとの交信。
使徒を送るのは良いが、座標とオレの姿を知らないとのことで連絡有り。
場所はこの家の庭、会うのは青髪の男であることを伝える。
エルグランデ歴2156年 8月27日
午前執筆。
夜にはミメーシスの使徒が到着する。
子供達には夜に外に出ないよう、注意を促さなければ。
そう言えば今日は流星群でもあったし、気をつけなければ……。
××××××歴21×6年 ×月×9日
うそだ。うそだ。うそだ。うそだ。うそだ。うそだ。
何故だ。何故、なぜだ。なぜだ。なぜ。フェルゼン、なぜ、おまえが。
外に出るなと、あれほど言ったのに。
××××××歴215×年 ×月××日
ミメーシス。おまえたちは、なにをたくらんでいる。
おまえたちの目的は、なんだ。
×××××××××××× ×××××
罪の名は『外へ求めた強欲』
――日記はここで終わっている。
フェルゼンがミメーシスに肉体を奪われてしまったきっかけ。
それを作ったのは紛れもない、スヴェン・ロウ・ヴェレット本人だった。
「スヴェン、さん……」
たからはそっとスヴェンの手を取って、彼が揺らぐのを防ぐ。司令官システムの向こう側でもざわついているのだろう、彼の頭では整理がつけられていないようだ。
……だが、ここに書かれていることは紛れもない事実。スヴェンが宇宙との交信を始めた結果ミメーシスとの繋がりを作り、フェルゼンの身体を奪わせてしまった。それは揺るぐことはない。
それなら。今、たからがやることは何か?
――決まっている。解決策を、手に入れるのだ。
「スヴェン、さん! 隠し部屋の入口、一緒に、探そう!」
ぎゅっと手を握りしめて、彼を現実へと引き戻す。終わってしまったことは元に戻らないのだから、それなら、新しいことをやるために前へ進もうよと。
その言葉に、彼はどれだけ救われただろうか。己が罪を知ってもなお、彼女が手を取ってくれたのならば。
「……ああ、そうだな」
やるしかないなら、やるだけだと。光が失われていた彼の緑眼に火がついた。
●Case.4 凶行を止める術
「本棚、仕掛け……」
むむぅ、と眉根を寄せて唸っているたから。既にスヴェンの部屋の本棚から???の部屋へ行けることは知っているため、あとは仕掛けを解くだけなのだが……その仕掛けとやらがわからない。
スヴェンもまた同じように悩んでいたのだが、ふと、2人は同時に本棚に入っている本の中に1つだけ違う物があることに気づいた。宇宙の本の中に並んだ、宝石の本だ。
「宇宙の本、じゃない!」
「と、いうことは……」
宝石の本を手に取り、ぱらぱらとめくるスヴェン。至って普通のページが続くだけだったのだが、あるページ……ペリドットのページに辿り着くと手が止まり、彼は何かを呟く。
その呟きに反応するように、本棚からカチリと音が鳴る。同時にゆっくりと本棚が横へとズレていくと、隠された部屋への扉が姿を表した。
「中、何があるの?」
「……入ればわかるよ」
そう言うと、たからが通りやすいように扉を押さえてあげたスヴェン。その先に広がるのは小さな間取りの中に机がぽつんと置いてある部屋……なのだが、なんだかとても暗い。太陽の光が入ってこないからだろう。
しかし、それだけではないような気がするとあたりを見渡していたところで、スヴェンは机の下を探り……床下の扉を開けた。
「こちらへ。フェルゼンが残したものは、おそらくここにある」
「すごい。秘密基地」
「ふ……あなたから見れば、そうだろうね」
子供ながらの感想にほほ笑みを浮かべ、スヴェンは先にたからを地下室へと下ろしてあげた。
光の入らない地下室。スヴェンが灯したランタンの火だけが唯一の明かりとなり、室内を照らす。
ゴツゴツとした石の壁、ひんやりと冷たい石の床。誰が用意したのかさえわからない部屋は鉱石が並ぶ棚がいくつも置いてあるだけ。
灯火を受けてキラキラ輝く鉱石。そのどれもが名札をつけられており、ここを用意した人物はかなり几帳面だったようだ。
綺麗な鉱石に目を奪われているたから。しかし次の瞬間、目の前の石から声が発せられて思わず後ろへと飛び退いた。
『やあ、この声は届いてるかな。同志諸君』
「!?」
「……ゲラルト殿?」
『お、聞こえてるのか。スヴェンおじさん、俺もいるよ』
「ベルトア君まで……??」
突然聞こえてきた声に驚きを隠せないたからとスヴェン。棚の扉を開き、声が聞こえてくる鉱石がどれかを探り当てて彼らとの対話を始める。
かいつまんで話すと、彼らは既にフェルゼンがミメーシスに身体を奪われていることを知っていた。そしてそれを教えてくれたのは、他の誰でもないフェルゼン本人。
数年前からとある手法でベルトアに向けて手紙を送り届けており、それをゲラルトも共に読んで凶行を止める手段を用意してくれたようだ。
『アイツが暗号文で俺に連絡をくれたんだ。ゲラルトはその途中を見に来たって感じ』
『一部、俺のコントラ・ソールでなければ読めない部分もあったからな。苦労した』
「でも、フェルゼンさん、止める手段、ここにある、って言ってた。それは?」
『それはだな|嬢ちゃん《レディ》。キミが今手に持っている宝石、それが止める手段の|1つ《・・》になるんだ』
「これ? ぴかぴか、してる」
声の聞こえる宝石を掲げ、灯火の光を反射させて遊ぶたから。意味を考えようとしたスヴェンに対し、ベルトアが1つの答えを導いてくれた。
――この石は箱庭世界に繋がるゲートを開くための鍵。
――ミメーシスの『母』たる存在を箱庭世界へ封じ込めるための、鍵の1つだと。
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・ミメーシスがフェルゼンに取り付いた原因が判明しました。
→過去のスヴェンによって引き起こされたようです。
→NPCの情報が更新されます。詳しくは公式ページ→その他→キャラ紹介よりご覧ください。
・『箱庭世界への鍵』を手に入れました。
→現状、使うタイミングはありません。
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大成功
🔵🔵🔵
瞳ヶ丘・だたら
初めまして、だな。
あたしは瞳ヶ丘。部外者だが、部外者ゆえの視点も必要だろう。
スヴェン・ロウ・ヴェレット……ヴェレットで構わないか?
個人的にはその|機体《からだ》についても気になるが、まずは任務を。
方針は「広く浅く」だ。
重要な箇所は所縁あるものが調べていることだろう。
空振りだとしてもそれ以外の場所を回って、万一の見逃しを潰しておきたい。
具体的にはリビングや浴室、物置だな。一応だけ空き部屋も覗きはする。
それと……アルファードから噂の書籍を借りてきた。
あたしも技師として、また呪法に縁ある身として興味深く思う。
《|呪術師《マーディサオン》》とやらの意見も聞いてみたい。時間が許せば隣家に邪魔しよう。
●Case.5 部外者の目線
「お邪魔するよ」
「いらっしゃい。あなたのことはエルドレットから連絡を受けているよ」
学業専門都市ヴィル・アルミュールにあるヴェレット邸。そこへ訪れた瞳ヶ丘・だたら(ギークでフリークな単眼妖怪・f28543)はまず、家主だった男スヴェン・ロウ・ヴェレットと出会い、軽く挨拶を交わす。
彼女が訪れた理由は、部外者だからこその視点も必要なのではないか? というもの。スヴェンやローラントといった2人では気づかないような部分に気づけるかもしれないということで、ジャック・アルファードを通じてこの世界へと訪れた。
「個人的にはその|機体《からだ》も気になるが、まずは任務を」
軽くスヴェンの身体――機械の身体についても調べてみたいと考えたが、それに関しては本調査が済んでからとなった。
だたらの方針は広く浅くの方針。
ヴェレット邸は広いため、各所をそれぞれ調べていては時間がかかる。そこで彼女は他の猟兵達が調べていない場所――リビングや浴室、物置などを調べていきたいと告げた。
「空振りだとしても、万が一ということもある。見逃しがないように潰しておきたい」
「なるほど。ならばまずはすぐそこのリビングからになるか」
そう言ってスヴェンは玄関すぐの扉を開き、リビングに案内する。リビングは生活感が残されているものの、長らく誰も使っていないからか埃が舞っているのがよく分かる。
リビング&キッチンでは丁度ローラントが掃除をしていたため、彼とも協力して周囲を調査。色々と古いものが出てきてはスヴェンが昔話を語ったりしてくれた。
すると、だたらは妙な機械をキッチンで見つける。最初はただの飾りだと思っていたが、キッチンを調査するとこの家には包丁や鍋といった調理器具がないことに気づいたのだ。
「これは……」
複数の筒がつながった円柱型の大きな機械。パッと見た感じミキサーのようにも見えるが、下部に複数の排出口があることからミキサーとはまた違う。使い方がよくわからない奇妙なものだった。
ちなみにこの機械はヴェレット邸では必須級の機械『ご飯つくれーる君』。ザビーネ、フェルゼン、マリアネラの3人が|料理が苦手《デスコック》ということもあって、毎日のように使っていたのだとか。
「これがあったおかげで、オレは今を生きてるんだ……」
「……深くは聞かないでおこうか」
既に1度亡くなっているとは言え、スヴェンがこう呟くということは……昔のヴェレット家の食事事情は色々あったのだと、だたらは察してしまうしかなかった。
次に訪れたのは洗面所兼脱衣所からの浴室。そこそこ広めの浴室で、広々とした湯船があるため風呂に浸かるときものんびり出来るのが特徴のようだ。
が、スヴェンは眉根を寄せている。というのもこの浴室、家の位置取り的に星が全く見えない住宅街側に配備されており、たとえ窓があったとしても星が殆ど見えないというスヴェンにとっては致命的な位置取りをしているのだ。
「ヴェレットは星を見るのが好きだと聞いたが」
「ああ好きだ大好きだ。というか星そのものへ飛んでいきたいぐらい好きだ。この身体になったのだから今からでも宇宙に飛んでいけないかと思うほど大好きだオレの存在価値は宇宙にとってはシケたものではあるがオレにとっては宇宙は偉大なる存在価値があって」
「はいはいスヴェンさん、だたらさん困ってはるから落ち着こな~」
急に始まる高速詠唱。急にローラントに止められた高速詠唱。それぐらい星に関しては大好きなようで、|宇宙偏執狂《バーサーカー》とあだ名がつく理由にも納得がいってしまう。
じゃあ家を建てたときに浴室と1階空き部屋を逆にしたら良かったのでは? とツッコミを入れたが、スヴェン曰く、家の間取りを決めた時にザビーネの部屋に近くならないようにということで決まったのだそうだ。
「奥方の部屋には何が?」
「薬草類を飼育している。……今は……どうなってるかわからない……」
視線をそらしながらバツが悪そうな表情を浮かべたスヴェン。
長らく飼育が放置された薬草類。それが部屋の中でどうなっているのかは……想像に難くないわけで。
他にもヴェレット邸様々な部屋があるが、ふと、だたらはあることを思い出した。
ジャック・アルファードが預かっていた研究書籍――『ゲート構築と呪術について』のことを。
●Case.6 ゲート構築と呪術について
「ああ、そうだ。アルファード……ジャック・アルファードから例の書籍を借りてきた」
そう言って取り出したのは、黄土色の本。ベルトア・ウル・アビスリンクが著者となっている研究書籍『ゲート構築と呪術について』の本だ。
これを隣のアビスリンク家に持ち込めば何かがわかるかもしれない。そう思って、ジャックから借りてきたという。
「ふむ。となれば……」
スヴェンは何かを思案すると、だたらを連れて外へ。隣の家にすぐに行けるように作られた扉を通らせ、彼女をアビスリンク邸へと送り届ける。
「ヴェレットは行かないのか?」
「権限が降りていなくてね。身体のためにも、オレはこちらに残る」
「そうか。何か分かり次第、連絡しよう」
セクレト機関の頂点にある司令官システムの1人と言っても、権限がなければ隣の家に入ることすらままならないのがこの世界の理。故にスヴェンはだたらにアビスリンク邸での調査を任せ、ヴェレット邸での掃除を続けることになった。
「いらっしゃいませ。お話は聞いていますので、こちらへ」
「ああ、失礼するよ」
アビスリンク邸の執事長マルクス・ウル・トイフェルに連れられて、ベルトアの研究室へと足を運んだだたら。オスカーとマルクスによって片付けが終わったためか、すっきりとした室内がお目見えする。
だが、そんな室内でも不自然に変わっている床の色が目を引いてしまう。円状に抜け落ちた色はまるでそこだけが時が止まっているかのようで、何のために残されているのかがわからなかった。
しかしだたらはこの場所に到達した途端に、この場所で預かった書籍を読んだらどうなるか、というちょっとした興味が浮かんだ。著者の研究室であるならば、何かしらが施されていてもおかしくないかもしれないと。
実際『ゲート構築と呪術について』の本は開いてみても何も記載のない真っ白なページが続いている。著者のベルトアが何らかの方法で中身を読ませないようにしているのであれば、著者の研究室の特定の場所でしか読めないようにしている可能性もあるわけだ。
「2人は離れておいてくれ。あたしが中身を読んでみるよ」
そう言って、円状に色が抜け落ちた地点に立って本を開いただたら。最初は何も書かれていない、真っ白なページが続くばかりだったが……しばらく本を開いたままにしておくと、文字がじわじわと現れた。
事細かに書かれた、エルグランデという世界に存在する《ゲート》の構築方法。呪術――もといコントラ・ソールと呼ばれる力の正体。この世界においてもっとも繋がりの深い2つの事象についての研究が、ベルトア・ウル・アビスリンクがもともと行っていたもののようだ。
「兄貴なぁ、最初はコントラ・ソールという力を研究してたんや」
「タイトルにもなっている呪術のことか。これは《|呪術師《マーディサオン》》とやらとは違うのか?」
「そっちは『コントラ・ソールの名称』やね。兄貴の書籍の方はコントラ・ソールそのもののことを指しとる」
「なるほど、少々興味が湧いてきた。このまま読み進めても?」
「ええよぉ。俺もマルーもわからんし」
オスカーの許可を取り、書籍の内容を読み進めていくだたら。研究書籍というだけあって、様々なコントラ・ソールの名称や能力内容などが出てきている。
対象に呪詛を貼り付ける《|呪術師《マーディサオン》》。コントラ・ソールを使い手からしばらく盗む《|盗賊《シーフ》》。己を味方だと思わせて騙す《|詐欺師《ベトリューガー》》などなど、いろいろなコントラ・ソールが散見された。
いくつか興味深い話があったが、中でも目を引いたのは『ゲートが作られた瞬間にコントラ・ソールが発生する』という研究結果だ。
研究書籍にはエルグランデという世界に穴が空いて別の世界と繋がったその瞬間、世界の破片が生物に乗り移ることでコントラ・ソールが作られるという実際の実験結果も書かれている。
ゲートの大きさに応じて世界の破片に眠る力も大きくなり、力に目覚めた者の能力に応じて新たな力として樹立する。これがコントラ・ソールの仕組みらしい。
この書籍のタイトルともなった『呪術』の名称は100年以上も昔の人々がコントラ・ソールという異質な力を『呪い』と捉えていたために付けられたものだということも、きっちりベルトアは記載を行っていた。
「仕組みを理解できなかった故の『呪い』か。なるほど、一理ある」
エルグランデの人々も、その昔はこのコントラ・ソールと呼ばれる力も理解できず『呪い』だと考えたとすれば、呪術だと呼ぶことも納得がいく。
この情報はきっちりと、スヴェンやオスカーを通して司令官システムにも届けられる。
……しかし、司令官システム側からは納得がいかない、といくつかの発言が降りた。
ゲートが作られた瞬間、ゲートの大きさに応じてコントラ・ソールが発生するというのなら……。
――死なず老けずの《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》というコントラ・ソール。
――この力が出来た瞬間は、どれだけ大きなゲートが生まれたのだ、と。
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・『ゲート構築と呪術について』が使用されました。
→以後、使用する必要はありません。
・『ゲート構築と呪術について』の内容が共有されます。
→ゲートが作られた瞬間にコントラ・ソールが誕生します。
→力の内容決定は『穴が空いた瞬間に出来た世界の欠片の大きさに比例する』形のようです。
→ゲートが大きいほど、強い力を入手する仕組みになっているようです。
→じゃあ、《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》が出来た瞬間は……?
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大成功
🔵🔵🔵
ナルニア・ネーネリア
・猫は猫なので人語は理解するけど喋らない
・お返事はにゃー
・猫たちは図書館など知らないのだ!
猫は猫なのでヴェレット邸を占拠すべき新・領地だと思って来た
猫は縄張り意識が強いのだ(えへん
どうやらそこそこ広い領地のようだ
他の部屋は下僕たちがいるっぽいので図書館に行こう
右見て…左見て…誰もいない、OK
よし、此処を猫たちの部屋とする!(どどーん
キャットタワーにできそうな棚がいっぱいある
高いところは猫たちのものだ
棚の間を跳んで床を走ってゴロゴロしてどったんばったん大暴れ!
なんか色々落ちたけど猫たちは知らにゃ
ついてきた下僕が何か見つけたりするんじゃにゃい?
猫たちは遊んでいただけでお役に立てるのだ、崇めるのにゃ
●Case.7 ここは猫のおうちです
そろり、そろりとナルニア・ネーネリア(GoGo★キャッツ・f41802)がヴェレット邸の廊下をとてとて歩く。
誰かいるようだけど、知らない。猫は新天地としてこの家を占領すべきだと判断したから来ただけで、なんか開いてるドアがあったからそこへと入った。
「にゃ」
「にゃむ」
右を見て、左を見て、誰もいないことを確認した2匹の猫。今日からここはナルニアとネーネリアの隠れ家となる。
なんかいっぱい本が並んでいるが、そんなの気にしない。だって遊びやすそうな場所、走り回らずにはいられない!
「ん、ドア開けっぱなしだったか」
図書室への扉が開いていることに気づいたスヴェンはそっと中へと入る。誰も入っていなかったはずだったが、と小さく呟いた後にどたどたと走り回る2匹の猫を見つけた。
猫たちはスヴェンの来訪に気にすることなく、高い棚を登り始めて積み上がった本をどさどさと落としていく。それが大切な論文だったり、高級な書籍だったりしても気にすることはなく。
「まあ、猫というのはそういう生物だからな。仕方な……ん?」
ふと、スヴェンが視線をやった先には何やら黒いノートがあった。表紙には何も書かれておらず、普通のノートとはまた違った厚みがあるものだ。
一体誰のノートなのかとパラパラとページをめくると……そっと本を閉じて、棚に戻した。どうやら|ルナール《キーゼル》の黒歴史ノートだったらしい。
「まあ、見つけたのがオレでよかったな、キーゼル」
「みゃー」
「ああ、うん。あなたが見つけたようなものか」
ナルニアが鳴くと、そっと柔らかに頭を撫でてあげたスヴェン。本人じゃなくてよかったな、と声をかけて咎めるようなことは言うことはなかった。
他になにか目新しいものはないかと探っていると、今度はネーネリアが戸棚から本を引っ張り出して落とし、スヴェンがそれを拾った。
ハードカバー装飾の少し古びている黒い本。見るからに昔の本だということがわかるが、タイトルは表紙には記載されていない。
「……ん?」
ぱらぱらと読み進めてみると、それは自分が書いた論文でもなければ、ザビーネやフェルゼンが書いたものでもない。かと言って参考書というわけでもなく、本来ならばヴェレット邸には置いていないはずの書籍。
その本のタイトルは『異世界鉱石旅』。著者の名は『フォルカー・ウル・アビスリンク』。
「……フォルカァーーーーーー!!!!!」
「みゃーーーーん!」
スヴェンがこれまでにないほどにキレた。めちゃくちゃキレた。それに反応してナルニアが一緒に高らかに鳴いた。
|自分の家《アビスリンク邸》に置いとけと言ったはずなのになんで|うち《ヴェレット邸》にあるのか、しれっと高いところに隠しておくなとか、いろいろ。
「よぉーし、あなたがそういうつもりならオレもオレの本をあなたの家に置いてやるからな覚悟しとけよルカ。あなたがやったことだ、あなたがそうしたのだ、オレもそうするだけだぞ断じてオレのせいじゃないからな」
ぶつぶつと早口で色々と言いながら、棚に片付けておいた自分の論文本をせっせと取り出すスヴェン。仕返ししてやると言わんばかりの様子で本を取り出すと、また一冊のノートが目に入った。
タイトルは『《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》について』。
著者はキーゼル・ルナ・ヴェレット。今はエレティック・リュゼ・ルナールと名を改めた、元コントラ・ソールの研究者による研究書籍が。
●Case.8 《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》
「うなぁ」
「にゃあ」
「はいはい、そこら辺はまだ掃除しとらんから気を付けて歩いてなぁ」
ローラントと合流したスヴェンは猫たちを彼に任せ、キーゼルの書いたノートを読み進める。
キーゼルが機関を追放されることになったのは約10年前。これは追放される少し前に始めた研究のようで、手書きの資料として残されていた。
ただ途中で追放処分を受けたこともあってか、満足な研究が行えなかったらしく最後の方は持論をメモしているだけのノートになっている。得られる情報も、キーゼル自身の研究に基づいて出てきた持論が主になっていた。
「……ふむ……」
セクレト機関に所属する研究者というのは、機関で用意された機器と他者のコントラ・ソールを使っての研究が進められる。それ故にキーゼルも《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の持ち主である燦斗に協力を得て様々な実験をしていたようだ。
ただ、あまりにも不可解なこの力は機関の力を持ってしても完全な解明には至れていないのが現状だ。誕生した経緯、名の通りの無尽蔵な命、|所有者に限りがある《・・・・・・・・・》等様々な不明点がノートにもちゃんと記載されている。
しかしこの記述は司令官システムにさえ提出されていないものだ。故にキーゼルのノートの内容をシステムに移送させなければならず、そのためにはキーゼル本人に連絡を取って移行する必要があった。
「今からマリネロに向かうには……流石に時間がないか」
ちらりと時計を見て、通り過ぎるネーネリアを見て、ここからマリネロへ向かう時間を計算するスヴェン。ゲートを使えば、と考えるが急用というわけでもないため許可は出ない。
そこでスヴェンは自身の司令官システムの繋がりを利用し、キーゼルに向けてメッセージを直接送ることにした。エルドレットやナターシャには事情を話して許可を得て、《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の謎を解くために。
>キーゼル。あなたの《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の研究ノートを見つけた。
>システムに保存してもよいだろうか。
>qうぇrぎgphb
>>構わないけど、最後の一文何??
>すまない
>猫がオレの後ろ髪に飛びついてきた。
>>猫いんの?
>>家に?
>家。調査中にbご9あrc
>>ヴォルフかヴィオット呼べば?
>それだ
……なんてやり取りが起こった後、ナルニアとネーネリアの保護をするためにヴィオット・ウィンストン・シュトルツァーが派遣された。
猫のいるところにシュトルツァーあり。その言葉通り、彼は手にいっぱいのおやつと玩具を抱えてナルニアとネーネリアを目一杯甘やかした。
「にゃー」
「ヴィオ君、掃除したんやから向こうで遊んだって」
「もちょっと、もうちょっと待って。こっちの黒猫ちゃんが鶏肉食べたい言うてはる」
「猫の言葉わかんの怖ない???」
「《|精霊猫《ガイストカッツェ》》の副作用……だろうな」
シュトルツァー家は《|精霊猫《ガイストカッツェ》》というコントラ・ソールのおかげで、猫とのやり取りには苦労しない。そのためナルニアとネーネリアの言葉も、この世界にいる限りであればわかるという。
おかげでおやつが何が好きで、どんな玩具が好きなのかも聞くことが出来ており、彼は完璧にナルニアとネーネリアの好みを差し出すことが出来ていた。
「怖いて。なんやねん」
「だがまあ、キーゼルの研究を確認できたのは助かったからな。このぐらいは必要だろう」
そう言って再びノートに視線を向けたスヴェン。保存準備が整った連絡が入ると、もう一度彼はノートを開いて研究内容について目を通し始めた。
……現在のエルグランデ歴は2200年。それを念頭に入れたうえで読み進める。
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研究対象:コントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》
保持者:エーリッヒ・アーベントロート コピーチルドレン研究被験者8名(7名障害あり)
調査内容
1.誕生経緯
エーリッヒ殿曰く『生まれた時から既に持っていた可能性が高い』とのこと。
彼の誕生日はエルグランデ歴2064年11月24日。 ←126年前!?
その頃に何かなかったか先生に聞いたところ、エレロの街上空に大きなゲートが出来たという。
そのゲートに多数の人々が飲み込まれてしまう事件も発生していたとも。
↑人数にして50人ほど飲み込まれたらしい。現代では考えられんな……。
2.ソール物質の低減
一度裂傷を作って確認してみたところ、体内の|低減は見られない《・・・・・・・・》。
故にこの力は全て外部のソール物質を使っていると見て間違いなさそうだ。
彼は完全に消え去ったとしても、再びこのエルグランデの大地に立つことが出来るというが……。
……だとすれば、どうやって『エーリッヒ殿を完全に再形成』している?
このあたりはなにか紐づけられているかもしれない。 ←ゲートと紐づけ?
3.コピーチルドレンへの影響
エーミール殿はエーリッヒ殿と変わらぬ《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》を手に入れた。
だが、それ以降……エミーリア嬢、メルヒオール、エーレンフリート、エーヴァルト、エーベルハルト、エードゥアルト、エーリックの8人は必ず何かしらの障害を抱えて定着している。
これは『《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》が正常に定着した』と考えるよりは『エーミール殿への定着時に何かが起こった』と見るべきかもしれない。
エーミール殿と同じ時期に研究を受けていたエミーリア嬢やメルヒオールに大きな障害が出ている中、完璧に定着するというのも何か引っかかる……。
↑定着した時期を聞く必要がありそう。教えてくれるだろうか?
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・《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》についてキーゼルの研究結果が記録されました。
→以後、必要であればこの情報を利用することが可能です。
→Side:Eでの使用も可能です。
・こちらのシナリオが終了しましたため、参加者はSide:Eへの参加が可能となります。
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『真実を求めて Side:S』 complete!
Next Stage →
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●Case.EX ネコチャン
「ああ~~~~~その姿ええですなあ、もうちょっとポーズ取ってもらえます??」
パシャパシャとシャッターを切る様子のヴィオット。
地面に這いつくばり、お猫様を見上げるように顔を向けて写真を撮り続けていた。
「ヴィオ君帰るよ。もう俺達許可あらへんのやで」
「あ"~~~!! 待ってご飯食べてるとこ撮"ら"せ"て"!!!」
「アカンって、リアさんに怒られる!!!!」
「あ"~~~~!!!」
ずるずるとローラントに引きずられ、ヴェレット邸を出ていくヴィオット。
なお、カメラの内容はヴォルフに『猟兵さんを勝手に撮るんじゃねぇ』と怒られたので全て消去することになりましたとさ。
大成功
🔵🔵🔵