【SecretTale】真実を求めて Side:E
●復讐者の登場
スヴェンが自宅のあるヴィル・アルミュールへ向かってるその一方で、セクレト機関では警報が鳴り響いていた。
|侵略者《インベーダー》襲来と同じ警報音ではあるが、|侵略者《インベーダー》ではない存在が敵としてやってきたと。
「……想定された最悪のシナリオだな」
司令官室にある、セクレト機関本部外を映し出すカメラモニターを確認して、エルドレットが呟いた。
外にいるのはたった2人。それも、戦闘員達が困惑してしまうほどの者達。
諜報部隊オルドヌング所属、コードネーム《黄昏の賢者》エーミール・アーベントロート。
同所属、コードネーム《トリック&スピードスター》メルヒオール・ツァーベル。
『|世界の敵《リベリオン・エネミー》』として認定された者と、それに付き従う者がセクレト機関に刃を向けてきたのだ。
「ドレット、どうする」
ヴォルフの問いかけにエルドレットは悩んだ。
彼らはコントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》によって長く生きており、更には諜報部隊オルドヌングの所属であるため戦闘経験は現存している戦闘員よりも豊富だ。
故に、戦闘員を出したところで彼らは簡単に戦闘員達を戦闘不能にするだろうし、何より出撃を命じられた者達の心にも多大な傷を与えかねない。
ならば、対応するのは自分か、あるいは同等の力を持つ者が出るのが答えとなる。
戦闘員を失わず、なおかつエーミールとメルヒオールどちらも現場から退ける方法ともなれば、特に慎重にならなければならない。
たとえ司令官システム内で協議されたとしても、誰もが同じ答えに辿り着く。
そんな中で、エーミールが口を開いた。
高性能なカメラは彼の言葉をもしっかりと捉えており、その言葉は司令官室内に響き渡った。
『どうせ、見ているし聞いているんでしょう? エルドレット。私がここに来た意味は、もうわかっているはずです』
「……ミル……」
『私が|兄さんの代わりに《・・・・・・・・》復讐を遂げます。兄さんがなし得なかったことを、私が』
「…………」
エーミールの言葉に対してエルドレットは何も反論ができなかった。
彼がエルドレットを恨む理由も、復讐を遂げたいと思う気持ちも、全て自分が招いたことなのだからと。
だけど、だからといってセクレト機関そのものにも敵意を向けるのは違う。個人間の問題に機関は関係がない。
ならば何故エーミールは機関に敵意を向けたのか。その答えを出したのは各カメラのチェックをしていたヴォルフだった。
「おそらくフェルゼンのヤツからの指示だろうな。アイツの姿はここには見当たらねェが……」
「……だな。《|妨害《サボタージュ》》でカメラに映らないようにしてるかもしれねえ」
もう一度モニターに視線を向けて、エルドレットは拳を握りしめる。
|侵略者《インベーダー》・ミメーシスに肉体を奪われたフェルゼンが今も何処かでこの光景を見て、そしてエーミール達に『何か』をやらせようとしている。
その『何か』が把握できない限りはエーミール達を完全に退けるわけにもいかず、延々と彼らと戦い続けることになるのだ。
「それなら、マリアネラと一緒にこっちで解析を続ける。ドレット、お前は……」
「流石に俺は外に出る。リヒに替えの身体準備するように言っといて」
「……わかった、けど壊されるなよ。いくら替えがあるからと言っても、死ぬ感覚は脳に伝わるんだからよ」
「わかってるよ。……行ってくる」
手をひらひらと振って、エルドレットは司令官室の外へ出る。
少しだけ憂いの表情を浮かべた後、彼はそのまま廊下を走り抜けてエーミールとメルヒオールのもとへと向かうのだった。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第10章。
世界の敵『エーミール』と彼に付き従う『メルヒオール』との戦いになります。
今回のシナリオは戦闘描写が書きたくて出してますので、戦いだけでも! という方にオススメです。
なお第10章は2作に分かれており、先に「Side:S」に参加している場合はこちらでの採用は不可となります。
「Side:S」が完結した場合のみ、同時参加が可能となりますのでご注意ください。
シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/
今回の現場は『南西諸島海岸』。
セクレト機関本部のすぐそばにある海岸での戦い。第1章での戦いの場所です。
遮蔽物のない平原での戦いとなりますので、遮蔽物が欲しい方はエルドレットまでご連絡を。
エーミールはナイフでの近距離戦を、メルヒオールはコントラ・ソール《|創造主《クリエイター》》によって作った銃による狙撃を行います。
詳しくは後ほど断章に記載されるフラグメントをご確認ください。
2人はプレイングで指定されたユーベルコードと同じ能力値のフラグメントでお相手します。
この戦いには協力者として『エルドレット・アーベントロート』が参戦します。肉弾戦での戦いです。
彼は全てのコントラ・ソールを利用できるため、戦闘で必要な物がある場合はお声がけください。
こう言うコントラ・ソールがあるなら使って欲しい! という抽象的な効果のみでも、適したコントラ・ソールを使用して協力してくれます。
その他、何か確認したいことがありましたらプレイングに記載ください。
整合性が取れれば、リプレイとしてお返しいたします。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Mission-10 EmileSide
シナリオのクリア条件
『エーミール』および『メルヒオール』との戦闘
エーミール・アーベントロート フラグメント内容
POW:コントラ・ソール《|時間操作《クロノスタシス》》による強制時間停止からのナイフ攻撃
SPD:コントラ・ソール《|突風《ラファール》》による超速のナイフ攻撃
WIZ:コントラ・ソール《|賢者《ヴァイゼ》》による見切りからのナイフ攻撃
メルヒオール・ツァーベル フラグメント内容
POW:コントラ・ソール《|創造主《クリエイター》》による遠距離攻撃
SPD:コントラ・ソール《|狙撃手《シャルフシュッツェ》》による連続銃撃
WIZ:コントラ・ソール《|氷牙《アイシクル》》による氷系の遠距離攻撃
****
「来ましたね」
セクレト機関の本部の入口からやってきたエルドレットを律儀に見つめるエーミール。
自分が今一番倒したい相手であるエルドレットさえ出てきてくれるなら、機関には手出しするつもりはないようだ。
ナイフを片手に握りしめると、早速エルドレットとの距離を詰めて切りかかったエーミール。エルドレットに反撃の隙を与えないように体勢を崩す形で動いていた。
「おいおい、早速か? 気が早すぎるだろ、ミル」
「数多の脳と繋がりを持つあなたを倒すには、考えさせる暇を与えない。それが《|賢者《ヴァイゼ》》の導き出した答えです」
「つれないねえ、お前のコントラ・ソールは。なら、俺も同じようにやらせてもらうさ」
そう言って笑った瞬間に、エルドレットはエーミールの攻撃に対してカウンターを入れた。
連続攻撃によって崩れた体勢を立て直す方法を瞬時にコントラ・ソール《|賢者《ヴァイゼ》》で計算し、身体能力を向上させる《|傭兵《メルセナリオ》》で計算通りに身体を動かすだけ。
切りかかってきた瞬間を狙い、回避するように見せかけて回し蹴りを放つ。ただそれだけなのだが、エーミールへの反撃としてはこれで十分だった。
……だが予想外なのは、メルヒオールがエーミールの身体ごとエルドレットを撃ち抜いたことぐらいだろうか。
エーミールが不老不死となるコントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》を持つからこその、大胆な戦略。撃てども撃てども死なずの身体を持つ味方がいるからこそ放てる一撃は、エルドレットの足を貫き、エーミールの胸を貫いた。
「っ、お前ら……!!」
エルドレットは機械の身体を持つため、死なないという点では《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》と同格と言えば同格だろう。
ただ、彼らと違うのはエルドレットには痛みがない。神経というものは存在しないし、血というものは体内に流れるエンジンオイルぐらいだ。
だから余計に、彼は人の傷には敏感だ。
エーミールの身体から流れ出す血を見るだけで、長らく忘れ去っていた感覚が思い出されるほどに。
機械の身体となる前の痛みが頭の中に思い起こされるほどに。
「……兄さんが受けたあなた|達《・》から傷は、こんなものじゃない……」
ぽつりと呟くエーミール。背から胸にかけて貫かれた穴はみるみる内にふさがり、完全に元通りになる。
けれど彼は、それでもまだ足りない、兄が受けた傷はこんな小さなものじゃない、と焦点の合わないぐらついた視線で呟いていく。
《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》という力で死ぬことが出来ない身体。
それを持って生まれた兄たる存在の|燦斗《エーリッヒ》は、もっと苦痛を受けた。
その痛みを全てエルドレットに返すためにも、彼は、エーミールは動き続ける。
「本当に、最悪のシナリオだな……!!」
猟兵達が駆けつけ、彼らを退けるまで。
この最悪のシナリオは無限に巡り続ける。
――誰かの『目的』が果たされるまで……。
馬神・レイト
WIZ
アドリブ・連携歓迎
ここが別の敵がいる世界か、ここで失って記憶の手がかりがあるといいのだが…今はそんな事じゃないな
『一気に行くぜ、レイト!先陣は俺たちが切る!』
分かってるよシーグウルム、行こう!
敵は二人いる、けどこっちも協力者がいる、彼と合わせて戦おう!でも彼の戦い方はあんまり知らないから、そっちは彼に任せよ、俺たちはあの遠距離の奴を!
UC起動、<デュエリストカード>でシーグウルムを召喚!雷鳴旗槍『赤雷』を装備!さぁ[決闘]の時間だ!
『行くぞ、レイト!』
シーグウルムとの連携攻撃だ!
[電撃]全開、シーグウルムの雷の息吹との挟み撃ち
そして最後はシーグウルムに乗り、騎乗の[絆攻撃]だ!
●Case.1 |策略の流れ星《トリック&スピードスター》
「ここが別の敵のいる世界、か……」
異能力世界エルグランデ。その名を|ある男《ジャック》から聞き及んでいた馬神・レイト(通りすがりのカードデュエリスト・f43310)は失われた己の記憶を求め、その地へと降り立っていた。
だが、今は戦闘真っ只中。この世界を統治する組織・セクレト機関の長であるエルドレット・アーベントロートと、その組織を離反したエーミール・アーベントロートとメルヒオール・ツァーベルによる戦いが起きていた。
「なんか、今は記憶とかどうとか言ってる場合じゃなくなってた!」
『一気に行くぜ、レイト! 先陣は俺達が切る!!』
「わかってるよ、シーグウルム。……向こうの、狙撃手の方に行こう!」
レイトが視線を向けた先にいるのは、エルドレットとエーミールの戦いに釘を差すように銃弾を打ち込んでいくメルヒオールの姿。彼は2人の争いに混ざるつもりはないようで、遠距離からの支援に徹していた。
「ッ!?」
レイトの気配に気づいたメルヒオール。彼はレイトが猟兵であることを見抜くと、手に持っていた銃を捨ててコントラ・ソール《|氷牙《アイシクル》》による氷の防壁を展開。自らの姿を隠すように動き、視界を撹乱していく。
だがそれを見越したうえで、レイトはユーベルコード『デュエリストカード』を使用。デッキからカードを引き抜くと、そのカードの名を叫んだ。
「シーグウルム、召喚ッ!! このまま突き進むぞ!!」
『行くぞ、レイト!!』
その手に握られた|刃《カード》は、契約者のカード「雷鳴の契約者・シーグウルム」。そして装備カード「雷鳴旗槍『赤雷』」。2つのカードによって巻き起こる力はエルグランデでも類まれなる力となり、メルヒオールを圧倒していく。
赤の雷は氷の壁を貫き、まるでもとから『壁なんてなかった』と示すように壁に穴を開ける。一点集中によって放出された雷は大きな熱を帯びることで氷を溶かし、瞬時に水をも蒸発させるため穴を開けた。
たとえ、幾重に壁を重ねられてもそれは変わらず。メルヒオールの気力が続く限り、《|氷牙《アイシクル》》の発動は続き、氷の壁には穴が開けられる。
「テメッ、俺らの邪魔すんなや! エルドレットの大罪を、俺達が流そうとしてるってのに!!」
メルヒオールが叫ぶ。レイトとシーグウルムの発する雷の槍を《|氷牙《アイシクル》》で作った氷の壁で防ぎ、銃弾のように礫を飛ばして攻撃してくる。
メルヒオールは言う。これは、この戦いはエルドレット・アーベントロートへの断罪。数多の人の死を重ねて、数多の命を犠牲にして、130年もの間司令官という立ち位置に立ち続けた男への断罪だと。
「そんなこと、今この世界に来たばかりの俺達に言われても……なっ!!」
レイトが叫ぶ。事情を今ここで語られたところで、メルヒオールとエーミールを倒すことに変わりはないし、どんな事情があったとしても今この世界に来たばかりの自分とシーグウルムにとっては、後で聞きたいものであって。
レイトは言う。|降参《サレンダー》するならこれ以上の追求はなく、戦いを止めてからでも事情を伝えるのは遅くはないだろうと。
「……アンタ、通りすがりやないな? 誰の差し金や」
何かに気づいたメルヒオールは一度コントラ・ソールの発動を止めて、レイトに問いかける。誰が、この世界のことを彼に教えたのかと。
「ジャック。黒髪の、いい男さ」
レイトはその問いに対して真っ直ぐに答えた。ジャック・アルファードが、彼をこの世界に導いたのだと。
その答えに一瞬だけ表情をポカンとさせたメルヒオールだったが、その言葉が真実なのだとわかると、少し狂ったように笑い始めた。
「――クカカッ! そうかアイツがかぁ!」
何を思ってそう笑ったのかは、レイトにはわからない。けれどジャックが関与していることを知ったからか、メルヒオールは遠くで戦っていたエーミールに向けて声を上げた。
『この戦いは俺達だけのものじゃない』と……。
●Case.2 この世界の戦い方
レイトとメルヒオールとの戦いが続くことは、エルドレットとエーミールの戦いが続くことを意味する。
合間にもエーミールはメルヒオールを助力するためにエルドレットから距離を取ろうと動くが、未来を予測できるコントラ・ソール《|預言者《プロフェータ》》を持つ男からは簡単に距離を取ることは難しかった。
逆にエルドレットはレイトとの連携を取るために、彼が飛ばした雷をうまく利用してエーミールの動きを阻害していく。未来を予測できるということは、レイトの放つ雷の軌道さえも簡単に読み取れるのだから容易いものだ。
『レイト、あの赤い髪のヤツだけど』
「ああ、確か助ける人だっけ。どう戦うんだろうな……?」
メルヒオールに向けて雷を放ちながらも、少しだけエルドレットの戦い方が気になっていた様子のレイト。ちらちらとエルドレットとエーミールの戦いへ視線を向けていた。
「すばしっこいねぇ、ミル。俺の身体能力を受け継いだか、リヒの訓練がよかったのか」
エーミールからのナイフの攻撃を軽々と躱していくエルドレット。未来を予測するためか、大きく躱すときもあれば紙一重の差で躱すときもあるようで、その動きはエーミールに合わせて動いているようにも見えた。
反撃することもなければ、自分から攻撃を加えようとはしていない。まさに完全受け身の体勢で彼は動き続けている。
「黙れ、黙れ!! あなたの能力なんて、私は、私は……!!」
対するエーミールは怒りが彼の思考を塗りつぶしているようで、あまり周りが見えていないようだ。コントラ・ソール《|時間操作《クロノスタシス》》を駆使して瞬時にエルドレットの背後を取るように動いているが、それさえも未来予測の前には通じていない。
それでも予測を覆そうと時間を狂わせ続けるのは、ひとえにエルドレットへの恨みと怒りがエーミールを突き動かすからだろう。何度も何度も、手に握るナイフをエルドレットに振りかざす。
「す……げぇ……」
この世界のことはよく知らない。エルドレットのことも、エーミールのことも、全く何も知らない。
けれど、目の前で起きている|事実《たたかい》にレイトは少しだけ、ほんの少しだけ心が騒いだ。
自分が今まで見た戦いとはまた違った、読み合いの戦い。相手の思考の先を読み、相手がどう動くかを予測しながらの高難度の戦いが繰り広げられているのだから。
「よそ見してんちゃうぞコラァ!!」
そんな中でメルヒオールがレイトの視線の先に気付いた。自分との戦いの最中、別の戦いを見ている暇なんてあるもんかと叫びながら、氷の刃をいくつも作り出してレイトに向けて射出する。
「残念だったな。ちゃんとこっちも見ているさ!!」
振り向きざまに雷を当てて氷を溶かし、道を切り開いたレイト。シーグウルムに乗り付けると、メルヒオールに向けて絆の一撃を解き放ち……。
「……ん?」
その一撃がメルヒオールに当たると同時、レイトは|何か《・・》を見た。
何か、というのは彼にも、エルドレットにも、エーミールにも、メルヒオールにも形容出来なかったからだ。
近いもので言えば『視線』。この戦いをここにいる4人とシーグウルム以外の誰かが見ている。そんな気がしたのだ。
『どうした、レイト』
シーグウルムが問いかけるも、レイトはそれをうまく言葉にできない。この|何か《・・》が言葉に出来れば、この戦況を少し変えられるような……そんな気がしてならなかった。
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・この現場には『何か』がいるようです。
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大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
面子だけ見れば家族内の揉め事ではありますが、結果は世界の趨勢に関わりますからね。エルドレットさんに助太刀します。
とは言いつつも相手するには厄介ですね。
まずは守りから。
銃はスマートグラスのセンサーと連動した早期警戒AIで弾道解析。
当たる軌道ならば【念動力】で弾道を反らします。
近接は魔法剣【緋月絢爛】で【受け流し】て対応。
もっとも、近接はエルドレットさんが得意ということですから、基本お任せします。
おとなしく話し合うって感じでもないですし。
ここは煽っているギャラリーを何とかした方がよいですかね。
反撃はこの戦場に行います。
UC【乱舞雷花】を発動。
味方以外をすべて攻撃する設定で花びらを撒きます。
●Case.3 家族の戦い
セクレト機関の本部の前で、エルドレットとエーミールが戦いを繰り広げている。
傍から見ればそれは親子での争いにしか見えないが、本質を見ればそれは世界を壊すか守るかの戦いだった。
「面子だけ見れば家族内の揉め事……だけど結果は世界の趨勢に関わるから見過ごせない、と」
そこへ黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が遠目から戦いの様子を見つけた。エルドレットとエーミール、そしてメルヒオールの3人の戦いがどのようになっているのかを確認し、エルドレットへの支援を行うことに。
スマートグラス『ガリレオ』を使い、3人の動きを確認。ガリレオに搭載されたAIの計算によれば、エルドレットを煽るようにメルヒオールが銃撃を行い、体勢を崩したところでエーミールが一撃を入れるという形を繰り返している。
エーミールが指示を出さずとも、メルヒオールが良いタイミングで銃撃を入れることから彼らは念力や何かでの通信を行っていると考えられたが、AIの計算によればそれはなさそうだ。彼らはアイコンタクトだけでエルドレットと渡り合っているようだ。
「これは……メルヒオールさんの方を妨害したほうが良さそう?」
AIによる計算を確認した後、摩那は素早くメルヒオールの撃つ銃弾の軌道を解析。彼はコントラ・ソール《|狙撃手《シャルフシュッツェ》》の力を利用して、エルドレットに確実に当たるように銃弾の軌道を変更し続けているようだ。
それなら、同じように念力を利用して弾道を変更し、エルドレットを守ることが出来るのではないかと予測。一度放たれた銃弾に念力を送り、その軌道を変えてみる。
「エミさん、新手や!!」
弾道がズレたことで新たに誰かがやってきたと判断を下したメルヒオール。即座にエーミールに向けて注意を促し、自分の銃弾が使えなくなることを伝える。
素早くメルヒオールは自身の手にある銃を捨て、中距離用の銃に切り替えて周辺を調査。エルドレットとの距離を少し縮める形で前へと出向いた。
それに合わせて摩那も同じようにエルドレットに合流。魔法剣【緋月絢爛】でエルドレットに向けられた銃撃を全て受け流し、彼へのダメージを最小限にとどめた。
「近接は得意ということで、お任せしても?」
「ああ、そうだな。メルの銃撃だけでも弾いてもらえると助かる」
たったそれだけの言葉のやり取りだけで、エルドレットと摩那はお互いの動き方に了承を取ってそれぞれの相手を引き取る。
エルドレットはエーミールを、摩那はメルヒオールを。それぞれが対応しやすい形で動き回り、2つの敵を分断させた。
「チッ……!」
一方で引き剥がされたメルヒオールの方はと言うと、摩那が距離を詰めてくるせいでまともに動くことが出来なかった。
ガリレオから司令官システムに繋いで確認を取ってみると、なんと彼はコントラ・ソール《|狙撃手《シャルフシュッツェ》》による制約があるそうで、近接攻撃が一切出来ないとのこと。
「つまり、振り払うぐらいは出来るけれど格闘技などは難しいと」
なぜそんな呪いのような状態になっているのかはさておいて、ここからどう反撃したものかと摩那は考え込む。エルドレットを守れて、かつエーミールとメルヒオールに同時にダメージを与える方法を考えた。
「――励起。昇圧、帯電を確認……」
考えた末に彼女は魔法剣【緋月絢爛】にエネルギーを集め、空を見上げる。
遠くの空に大穴は見えるが、概ね晴れ。曇り空が薄っすらと見える程度の空で、雨が降る様子はなく。
剣を天高く掲げると、『散開!』の一言でそれは始まった。
「おあああぁぁぁっ!?」
「うおおぉぉぉっ!?」
「ぎゃああああぁぁ!?」
辺り一面に広がるは、高圧電流を帯びた七色の花びら――ユーベルコード『|乱舞雷花《フルール・イリゼ》』による範囲攻撃。
敵と味方を識別するそれはエルドレットと摩那以外の2人の敵を攻撃するもの……。
「……んっ? |悲鳴が1つ多い《・・・・・・・》??」
そう、聞こえてきた声はエーミールとメルヒオール以外に、もう1つの声が聞こえた。最後の声に聞き覚えがあったかどうかは定かではないが、少なくとも敵であることは確かだ。
「マリアちゃん! 《|解析者《アナリスト》》のリソースをこっちに回してくれ!!」
エルドレットのその声に対し、司令官システムは割り込みを開始。エルドレットにコントラ・ソール《|解析者《アナリスト》》の使用許可が与えられ、即座に3人目の敵を割り出した。
●Case.4 隠されたモノ
「…………は?」
数分して、エルドレットの表情が焦りと不安定さを浮かべた。《|解析者《アナリスト》》による解析はうまくいったようで、その情報がエルドレットに伝わった……が。
「……なんで……なんで、|スーがここにいる《・・・・・・・・》?」
「えっ?」
その言葉に摩那も一瞬、エルドレットを見やる。その言葉が本当なら、じゃあヴィル・アルミュールに向かったはずのスヴェンはなんなのか。その疑問が残ってしまう。
けれど摩那には違和感があった。姿を隠している3人目がスヴェンだと判明したのなら、その姿を一向に見せないのはおかしいのではないかと。
「それにスヴェンさんとは繋がるんですよね? お声をかけてみたらどうなりますか?」
「あ、ああそうか。繋いでみる」
すぐさまスヴェンに連絡を入れたエルドレット。それを阻止しようと、3人目の敵は高圧電流を受けながらも必死で手を伸ばす。
だが司令官システムの処理速度は光速を超える。手を伸ばしてエルドレットを掴む瞬間には既にスヴェンとのやり取りは終わっており、3人目の敵がスヴェン本人ではないと確認が取れたのだから。
「と、いうことは……この隠れている敵は」
「多分、スーの姿形を真似てるヤツだ。……でも《|解析者《アナリスト》》ではスーだって判別されるんだよな……」
未だ、高圧電流を受けながらも妨害を試みようとする3人目の敵。それを助長するようにエーミールは高圧電流の中、身体が焼けようとも必死にエルドレットに手を伸ばした。
燦斗から移植されたコントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》によって死ぬことの出来ない身体を持つエーミール。たとえ何度高圧電流を流されて燃えようが、彼の身体は細胞の一つ一つが新たに作り出されて人の姿を形作る。
「……ぁ"……」
燃え尽きて、言葉にならない声を上げて手を伸ばして、それでようやくエルドレットに掴みかかっても攻撃するほどの力はなく。ただ、エルドレットに手を添えるだけ。
だけどそれを『攻撃』に転じさせたのは、3人目の敵。まるで念力で後押しするかのように、エーミールの身体を無理矢理に動かしてエルドレットに近づけさせた。
「……もう少し戦う必要がある、ってことか」
大きくため息をついたエルドレットは脳内で今一度、処理を演算。
情報を引き出すために、もう少し付き合ってくれと摩那に笑みを見せていた。
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・何かの正体が半分ほど判明しました。
→司令官システムによればそれはスヴェンであり、スヴェンではない『明確な敵』だそうです。
→姿が見えないため、意識的に攻撃するのは難しいようです。
→敵味方の識別範囲型攻撃であれば当たるようになっています。
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大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW
エーミール殿にメルヒオール殿……!
お二人と同時に戦うことになるとは……テンションが上がりマスネー!
HAHAHA!
ドントウォーリー、ワタシは立派な雇われソルジャー!
主義心情は気にしマセンシ、友誼を理由に躊躇うことはありマセーン!
楽しいバトルをエンジョイしマショー!
レイト殿と摩那殿が戦況を動かしてくれたので、戦い易くなってマスナ!
無差別攻撃となれば、ワタシのコントラ・ソールが有効であります!
大技を放つ前の準備を整えマース!
メルヒオール殿の遠距離攻撃には我が内蔵式火器の弾幕をお返しして対処!
エーミール殿の時間操作は、限界を超えたパワーで強引に強行突破!
ナイフ攻撃をファルシオンで受け流すスタイルを強行しマース!
エルドレット殿には、隙を見て光明などで目潰しによる猶予を作ってくだされば助かりマース!
隙を見出せば、戦場全域に《断罪者》を放ちマース!
推定スヴェン殿らしきサムシングを含めて、三名の敵に思う存分刃を降り注ぎマショー!
あ。対象は区別しないので、エルドレット殿は頑張って対処してくだサーイ!
●Case.5 今こそ断罪の時
「エーミール殿……メルヒオール殿……!」
エルグランデという世界を守る司令官システムの1人、エルドレット・アーベントロート。
猟兵という立場で共に戦った|世界の敵《リベリオン・エネミー》、エーミール・アーベントロート。
同じく猟兵という立場で共に戦ったエーミールの味方をする男、メルヒオール・ツァーベル。
まさかの状況となっていることに気づき足を止めていたバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。少しだけ身体を震わせると、キラキラの目で3人の元へと走っていく。
というのも、バルタンはそもそも雇われな兵士。主義や心情などは気にしないし、エーミールとメルヒオールが猟兵という立場で共に戦ったことがあったとしても、明確な敵ならば敵となって戦うだけだ。
「HAHAHA! お2人とは一度楽しくバトルしてみたかったんデスヨネー!」
走って駆けつけたバルタンは3人の戦いを分断するように、まずは軽く一発、内蔵式グレネードランチャーでアイサツ。着弾地点は大きく穴が開いたが、エルドレットとエーミールを上手く分離させることが出来た。
もうもうと上がる煙の中、エルドレットと合流したバルタン。エーミール達が再び近づくまでに2人でサクッと作戦を練り、その結果自由に動くことが決まった。
「っ、バルタンさんとなれば……!」
エーミールの標的が一瞬にして変わる。猟兵という存在が自分に刃を向けるとわかっている以上、エルドレットを倒すよりも先にそちらを対処しなければ、完全な勝利を得ることは出来ないと《|賢者《ヴァイゼ》》が告げていた。
「エミさん!!」
メルヒオールが素早く声を上げ、標的変更の合図を送る。彼はその手に持っていたアサルトライフルを素早くコントラ・ソール《|創造主《クリエイター》》で変貌させ、高台とバリスタを作成。高所からバルタンを狙う形でバリスタを射出し、彼女を足止めさせた。
同じく、エーミールはコントラ・ソール《|時間操作《クロノスタシス》》を使い、周囲の時間を強制停止。己のみが動く時間だけを作り出すと、バリスタの攻撃と挟み撃ちする形でバルタンにナイフを振り下ろす。
「させるかよッ!!」
だが、エルドレットが動いた。バルタンが事前に何かあれば目眩ましをして欲しいと伝えており、今がそのタイミングだと判断したのだ。
コントラ・ソール《|光明《クリダード》》による光はエーミールとメルヒオールの目の前で弾け、2人の視界を白に染め上げる。ただそれだけなのだが、攻撃を行う直前に弾けた光は十分に2人の攻撃を中止させた。
「これも戦略、これも作戦というもの! 少々強引デスガ、メルヒオール殿にはこちらをお返しデース!」
「なにいいいぃぃ!?」
咄嗟に目を瞑って光を避けていたバルタンは素早くエーミールのナイフをファルシオン風サムライソードで弾き飛ばし、目のくらんでいるメルヒオールに向けて内蔵式火炎放射器を使って広範囲に炎を広げ、《|創造主《クリエイター》》のリソースを割かせる。
ナイフを飛ばされたエーミールは感覚を頼りに蹴りを放つが、視界がまともではない状態で放つ蹴りはバルタンのいる方向とはまた逆の方向へ飛んでいく。
「さあ、これにて準備は完了。ここらで1つ、ワタシのコントラ・ソールをお見せしマス!」
そうして、バルタンはこの世界に来て手に入れたコントラ・ソール《|断罪者《シュトレーフィング》》を解き放つ。
己が断罪すべきだと判断したもの全てを、炎の刃、氷の刃、雷の刃、風の刃、闇の刃、光の刃といったいくつもの属性の刃で切り裂く力。
それは司令官補佐ヴォルフ・エーリッヒ・シュトルツァーの持つ、他者を断罪するためのコントラ・ソールだが……彼の《|断罪者《シュトレーフィング》》と少々違い、彼女の《|断罪者《シュトレーフィング》》は|敵味方区別なく《・・・・・・・》攻撃を行うという力なのだ!
「あっ、こちら対象は区別しないのでエルドレット殿は頑張って対処してくだサーイ!」
「え"え"え"え"!!?? ヴォルフのと違うのぉーー!!??」
ヴォルフと同じコントラ・ソールなら大丈夫か~と余裕そうな表情だったエルドレットは一転、急遽回避行動を開始。未来予知を行う《|預言者《プロフェータ》》で着弾地点を読んで逃げ続ける羽目になってしまった。
●Case.6 《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の謎
いくつもの断罪の刃が降り注ぐ。それは世界の敵となった者への粛清か、あるいは言うことを聞かなくなった|研究の子《コピーチルドレン》への叱責か。
赤の刃と黒の刃がエーミールを貫き、青の刃と緑の刃がメルヒオールを貫き……白の刃と黄金の刃が姿の見えぬスヴェンを模した敵を貫く。
合計780本の刃。それらが全て空から現れては、大地に突き刺さり消えていく。ここにいる|誰か《・・》の罪を裁くかのように。
「ぐ……っ……!」
「かはっ……!」
それでも、死ねない。|燦斗《エーリッヒ》から《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》を分け与えられた2人は死ねない。
罪を裁かれても、命を何度も断ち切られても、どんなに苦しんでも、死ぬことが出来ない。
切られても、粉々にされても、この世界から消されるほどの力を食らっても、彼らはその場で何度だって蘇る。
それはバルタンだってわかっているのだが……ここで一つの疑問が生まれた。
「……何故、彼らは死ねないのデショウ??」
コントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》が彼らを無理矢理にでも生かすのはわかった。だがその仕組みはどうなっていて、どうして彼らは何度も蘇るのか?
《|断罪者《シュトレーフィング》》による刃は彼らを粉微塵にまで消し去りもした。だというのに、しばらくすれば彼ら2人は何かを起点にして再び骨や内臓が形成されて、多少の傷は残るものの人の姿はもとに戻る。
肉体や周辺の時間を戻している、治療系コントラ・ソールだから、などの理由が考えられたが、そのどれもが『肉体の傷が塞がっていない』ことからこれらの力ではないことがはっきりと証明されている。
――ではコントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》とは一体何なのか。
治療でもなければ、時戻しでもない。謎に包まれたそのコントラ・ソールの力は……そもそも、何処から来たのか?
「エルドレット殿ー! 何かご存知デショウカー!」
「俺に語らすな俺にーー!!」
バルタンが降らせた断罪の刃を今も必死で避けているエルドレット。敵も味方も無差別な刃の雨は自分のリソースを割いて回避するのが精一杯の様子で、《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の秘密は教えてくれそうもない。
そんな中、バルタンの前に透明なウィンドウが現れ、音声が届けられる。画面の向こうで何かを行っているその男は――。
『私から語りましょうか、バルタンさん』
「燦斗殿?!」
《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の真の所持者、エーリッヒ……もとい金宮燦斗。彼が知り得た《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の詳細を軽く教えてくれた。
コントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》。
無尽蔵という名前とは裏腹に、|ゲートを通った《・・・・・・・》他者の命を吸って生を得続ける力。
人の命を奪い、己の命に変えて、細胞の一つ一つをこの世界に根付かせるための力だと。
どんなに粉々になろうと死なない、どんなに時が経とうと老けないのは、エルグランデという世界やゲートとリンクして生きているため。
だから、エルグランデという世界は|世界の敵《リベリオン・エネミー》エーリッヒ・アーベントロートをこう称するのだと、燦斗は告げる。
――『生を捨てた怠惰の者』。
己の命ではなく、別の命で生きる者だと……。
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・エーミール、メルヒオール両名のダメージがかなり蓄積されています。
→次のプレイングの内容次第では、確保が可能となります。場合によっては逃亡します。
→なお《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》によって完全に殺すことは出来ません。
・姿の見えない敵は完全に消滅しました。
→バルタンさんの《|断罪者《シュトレーフィング》》によって粉々になりました。
・《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》の詳細が少しだけ判明しました。
→ゲートを通った他者の命を使って生を得る力のようです。
→死なず老けずの力にもちゃんとしたカラクリがありました。
→他にも隠されているようですが……?
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大成功
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アス・ブリューゲルト
「あの二人を何とかすればいいのだな?」
いつもは右手で剣を持つのだが、今回は左手に持ち変える。銃は右手。
障害物があれば、念動力と腕よりも力のある足(機械)で強引にぶち壊しながら向かって、斬りつけ、メルヒオールから確保を狙う。本命は剣ではなく、銃でのUC。狙うは足や腕。動けなくなったところで、念動力で縛り付け、さっさと仲間に手渡す。接近するエーミールも、足を狙って動けなくなったところで、捕獲を行う。
もしもの為に、外にアクアを待機させ、逃げようとするなら、その巨大な手で捕まえてもらおう。
「お前達に恨みはないが、これも任務なんでな。大人しくしてくれないか」
エルドレットとも協力し、常に全力で当たる。
●Case.7 新たな相手
「まだ、まだ……!!」
「しぶといねぇ。流石はリヒの弟というか、なんというか……」
大量の攻撃を浴びながらも、それでもなお食らいつこうというエーミール。ただただ怒りに促されるままに、彼はエルドレットに向かって突撃していく。
それに対してメルヒオールも殺意を片手に銃の引き金を引いて、エーミールを支援するようにエルドレットの足元を貫いて体勢を崩していった。
(流石に活動限界が近いかなー……)
エルドレット自身、これ以上の戦闘は限界が近い。機械の身体と言えど、オーバーヒート寸前の状態となっているからかそろそろ彼らに倒される可能性もあった。
だが、1つの銃声によってエーミールとエルドレットは一瞬のうちに距離を取る。メルヒオールが放った銃声とはまた違う、別の銃からの攻撃。3人共聞いたことのない銃声は一時的に戦闘を止めることに。
「誰やっ!!」
メルヒオールの声に対し、もう一発銃声。銃弾はエーミールとメルヒオールのみに向けられ、容赦なく降り注ぐ。
一度エーミールとメルヒオールはエルドレットから距離を取り、緊急の作戦会議の場としてコントラ・ソール《|創造主《クリエイター》》による壁を張り巡らせ防衛体制を取ることに。
「大丈夫か?」
その間にエルドレットに近づいたのはアス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)。事情を聞きつけた彼は一旦エルドレットを救出し、状況の確認を取っていた。
幸いエーミール達が作戦会議として壁を張り巡らせたため、アスとエルドレットも十分な情報交換を行うことが出来た。……エーミール達が限界ギリギリまで戦っていることや、エルドレットの機械の身体がオーバーヒート気味であることも。
「なるほど、あの2人をなんとかすればいいんだな?」
「ああ。……もうこの際、穏便にとかは言ってられねぇかな」
とにかく、エーミールとメルヒオールをどうにかすること。それがエルドレットの最終目標だとアスに告げると、彼はただ一言、『了承した』とだけ答える。
右手に銃を、左手に剣を。アスは普段とは違う構えを取り、エルドレットと共に作戦を手早く練った。
それから、数秒後。エルドレットが叫ぶ。
「――兄ちゃん、後ろだ!!」
「ッ!!」
目の前に作られた壁はカモフラージュ。本当の目的は、背後を取ることだったエーミールとメルヒオール。
同時に攻撃を仕掛けることでどちらかが当たれば良い方だったが、それは全てエルドレットのコントラ・ソール《|預言者《プロフェータ》》によって読まれており、寸前でアスもエルドレットも回避することが出来た。
素早く距離を取ったアスはエルドレットに視線を向けると、作戦開始の合図を送る。《|創造主《クリエイター》》による壁を形成してもらい、アスは己の姿を隠しつつエーミールとメルヒオールに向けての攻撃を続けた。
「チッ……! 何処に隠れた……!」
メルヒオールにとってこの条件下はかなり厳しいものとなった。《|狙撃手《シャルフシュッツェ》》は弾丸の軌道を変えることが出来るコントラ・ソールだが、当てる対象が見えづらくなってしまっては銃弾を何処へ当てればいいか修正が効かず、普通の銃弾として飛ぶしかなくなってしまうからだ。
だが逆にアスにとってはこの状況は最高の状態だった。自分の姿が認識出来なくなりエルドレットに集中するようになったエーミールとメルヒオールに向けて、ユーベルコード『CODE:サジタリウス』によって強化された愛用の銃による一撃を確実に命中させていく。
狙うは、彼らの足や腕。彼らを殺すことが目的ではないのだから、この程度で十分だ。
「――狙った獲物は逃さない。お前達に恨みはないが、これも任務なんでな」
「ッ……!!」
引き金を引いて、エーミールの腕を狙い、メルヒオールの足を狙い、エルドレットを守り抜く。
それが彼に与えられた任務。手を抜くつもりもなく、全力で彼らを止めに行くのだ。
●Case.8 戦いの終わり
やがてエーミールとメルヒオールの《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》による復帰力が減ってきたところで、エルドレットとアスが2人を捕縛する。
事前にアスが足を貫いたおかげか彼らの動きは鈍っており、縄で腕と足を縛られても抵抗する様子は見せなかった。
「あーっと、これも縄と一緒に縛ってくれ。メルは《|創造主《クリエイター》》持ってるから」
「これは……?」
「コントラ・ソールの使用を感知して電撃を流すやつ。ホントなら首につけるんだけど、まあ今回は腕の方に」
メルヒオールが脱走手法を持つため、黒の輪を一緒に巻いてくれと頼むエルドレット。アスはこの世界に来たばかりでまだよく理解していなかったため、エルドレットの言うがままに輪をメルヒオールに取り付けておいた。
「さて、と……」
諸々が終わり、エーミールとメルヒオールの前に座り込んだエルドレット。ヴォルフや燦斗が来るまで話をしようやと、目の前にストローを挿したカフェオレを2人に差し出した。
「……何のつもりですか」
「何って、親子水入らずの語らい」
「バカなんですか? 私が、あなたと何を話すと言うんですか」
ぷい、と顔を背けるエーミール。メルヒオールはというとカフェオレをずるるると飲みながら、ごろんと地面を転がって2人の会話を待っていた。
そんな中、アスは何故そんなにもエーミールがエルドレットを殺そうとしていたのかの疑問点を述べる。まだ来たばかりとは言え、何度も何度も倒されて立ち上がるその姿は一種の狂人とも思えたからだ。
アスの疑問にはきちんと答えるエーミール。しかし何故か、それまであったはずの『怒り』が身体の中から消え失せており、今はもう、どこかすっきりとしていると彼は答えた。
「兄さんをこの男は見殺しにした。見殺しにした上で、今もなお父と名乗っていることが許せなかった。その怒りが私の中にあった……はず、なのに……」
「いつの間にか、消えたと?」
「……ええ。先程までは、本当に、頭の中が煮えたぎるほどだったのに……」
理由は不明だが、現状エーミールとメルヒオールがこれ以上暴れ出すことはなさそうと判断したエルドレット。とは言えもう一度襲われる可能性を考慮し、2人を懲罰房へと送りしばらく様子を見ることになるという。
エーミールの怒りが消え失せた理由。彼が『怒り』を有することになった理由。
彼の『怒り』の原点の話。戦闘中に現れた謎の存在。様々な情報が流れては精査する必要が出たため、今一度情報精査の時間が必要だとエルドレットは呟いた。
「……まあ、ミルの怒りについては俺は心当たりあるんだけどね」
そんなことを小さく呟いて、エーミールにカフェオレを飲ませてあげたエルドレット。
アスはそんなエルドレットの様子に少々不思議な感覚を覚えたような気がした。
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・エーミールとメルヒオールが捕獲され、懲罰房へ送られました。
→しばらくの間、彼らは懲罰房から出ることが出来ません。
→シナリオ中で会話したい場合は宣言がなければ向かうことが出来なくなりました。
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『真実を求めて Side:E』 complete!
Next Stage →
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●Case.EX ■■■■■
「ああ、やっぱエルが勝ったか」
司令官システムとの繋がりを一時的に絶ち、1人外の様子を眺めていたナターシャ・アイゼンローゼが小さく呟く。
既にわかりきっていたことだというように、彼は笑っていた。
猟兵達の存在がある以上、エルドレットが負けることはないだろうと考えていたらしい。
けれど1つだけ、ナターシャが予測できていなかったことがあった。
「……エーミールの怒りは、やっぱりあの事件を知っているからだとして……|何故今更怒りを覚えた《・・・・・・・・・・》?」
そう、エーミールの怒りの理由。ナターシャも何故エーミールがエルドレットに向けて怒っているのかはよく知っているし、いつも愚痴のように聞かされているので相応の怒りがあったことはわかっている。
だが、何故『今』その怒りを爆発させてしまったのか。それがわからないのだ。
「お前はなんかわかるか? ■■■■■」
誰かに向けて問いかけたナターシャ。その言葉に対して、誰かは『ffktoq@izt4q/<eZf[e4ont@vz94』と言葉にならない言葉で返す。
それを簡単に理解しているのか、ナターシャは『そうか』と答えて……色々と悩む様子を見せた。
「それがマジだとすると、次は誰が狙われるかね。予測は立てられるか? ■■■■」
『2%.p@y<3.efckaa67』
「あー、やっぱりその辺りか……。他には?」
『d@'Zh<3.]<ck2qlm32@uetm』
「おおう、そこもか……」
いろいろと、誰かから言葉を貰ったナターシャは考えて……そうして一つの結論を生み出した。
『これ、俺1人じゃ考えるの無理だわ!』と……。
大成功
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