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ティタニウム・マキアの打水

#サイバーザナドゥ #ノベル #猟兵達の夏休み2024 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

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#巨大企業群『ティタニウム・マキア』


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ステラ・タタリクス




●唐突と言えば唐突
 夏!
 刺激的な日差しは人の欲を燃え上がらせるものである。
 亜麻色の髪の男『メリサ』は海辺のセーフハウスにて、ぼんやりしていた。
 過去形なのがすでに物悲しいし、彼がどのような事態に陥っているのかを示すに容易いものであったことだろう。
 そう、お馴染みのアレである。

「『メリサ』様の情欲がすんごいことになっているのではないかと思いまして! もしくは夏の気配に開放的になっているのではないかと! なので!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、品を作った。
 それはそれは見事なプロポーションである。
 脚線美、というのならばきっとこういう事を言うのだろうという右となボディラインであったのだ。
 その足がちょいちょいと『メリサ』の背中をつついているのである。
「なので、じゃないけど」
「今年は『これ!』という水着が用意できなかったものですから、思い切って『メリサ』様に選んでいただきたいと思いまして!」
 ありったけを持ち込んだのかよ、と『メリサ』はげんなりしていた。
 眼の前には布の山である。
 これではデザインがどうとか判別することもできやしないのである。

「これから水着ショーをいたします」
「嘘でしょ」
「え、水着より私の裸が見たいと? もー、『メリサ』様ったら❤」
「シームレスに脱ぐのやめてくんない!? 一言も言ってないんだけど!?」
 しれっと脱ぎ始めるメイド。
 やべーメイドである。
 こっちの都合などお構いなしである。
 この押しの強さにいつも『メリサ』は大変な労力を削がれているのだ。

「で、その胸元に張り付いている紙は?」
「ま、『メリサ』様ったら目ざといですね。流石です❤」
「否応なしに見せつけられてるんですけどぉ!?」
「これはですね、婚姻届です❤」
 そんなこったろうと思った、と『メリサ』は婚姻届を奪って破る。
「あん❤」
「変な声出さないでくれるかなぁ!?」
 確かに『メリサ』は悪くない。
 けれど、彼が奪った婚姻届は脱いだメイドの胸元を隠していたものである。それをビリビリのビリビリにしたのならば、どうなるかなんて言うまでもない。

 そして、タイミング悪く『オルニーテス』と『ケートス』がやってくるのだ。
 図ったようなタイミングであった。絶妙とも言えたし、最悪とも言えた。
 第三者からすれば、『メリサ』がステラに無体な行いをしたように見えただろう。いや、絶対見えている。
 そうとしか見えていない。
 なぜなら、計算していたから。
 ステラの脳内計画書の通りにことが運んでいるのである。ヤバすぎる。
「……サイテー」
「……」
 二人の冷ややかな視線。
『メリサ』は死を覚悟した。いやな覚悟の仕方である。

「はぁ、で、今回は何なの?」
『オルニーテス』と違って『ケートス』は冷静だった。
「流石は『ケートス』様。お呼び立てして申し訳ございません」
 ステラは恭しく一礼する。
 しれっと水着をすでに着込んでいるところからして、このメイドのヤバさが一層際立つというものである。
「いえ、以前此処にお邪魔した際に、侵入が雑でしたので」
「今、侵入って言った?」
「尻拭いできないんなら、最初から入り込むのやめてほしいんだけど?」
 バチっている。
 火花が散っている。
『メリサ』は女の戦いに、隅っこに行くしかなかった。

「いえ、これは『メリサ』様の壮大な作戦なのです。私を招くことで『ケートス』様、『オルニーテス』様の三美女の水着を見るというあまりにも大胆な」
「そんなわけないけどね!?」
「サイテー」
「サイアク」
 しっかり自分たちの水着を隠しているのが生々しい。
 いや、本当に! と『メリサ』の弁明は届かなかった。

「わかっておりますよ。私には。『メリサ』様の深謀遠慮たる思惑は。なにせメイドですので」
「わかってないと思うけど!」
「いえ、『メリサ』様が雌伏の時に入られてから……」
「あんたの言いたいことはわかっているよ。けれどさ、『ティタニウム・マキア』はもう死に体だ。元からだけれど」
『メリサ』の瞳がステラを見ていた。
 じっ、と。
 その視線にステラは身が芯から熱くなるような思いだった。
 いつも人を煙に巻くような所作や言葉ではない。
 まさか?
 え、まさか? とステラは思った。
 この雰囲気! この場で自分を押し倒すやつでは!? え、『オルニーテス』も『ケートス』もいるのに?
 ドキンコする胸の高鳴りにステラは瞳を伏せた。
 顎をちょっとくいっと上げたところからして、もう言わずとも己が求めているところのことを『メリサ』が察してくれているだろうと思えたのだ。

 触れる指先。
 顎が持ち上げられている。
「前にも言ったかもだけど『ティタニウム・マキア』は滅びの定めを延命しただけさ。それはそれとして」
 ボッシュートね。
 その呟きが聞こえた瞬間、ステラは以前と同じように抜けた床から滑り落ちていく。
「あーん『メリサ』様のいけずぅぅぅ――」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年07月21日


挿絵イラスト