夏色リズミカル・バケーション
黒影・兵庫
下記の内容で黒影・兵庫(f17150)と播州・クロリア(f23522)との夏休みノベルの作成をお願いします!アレンジ・改変、問題ありません!大歓迎です!
●シチュエーション
故郷であるUDCアースの絶海の孤島にある学校のプールの掃除を頼まれたので快諾する黒影と、それに付き合うクロリア
雲一つない快晴の中で汗を流しながらデッキブラシで掃除をして終了し後は汚れた体を洗い流すだけというところで
クロリアから突然ホースで水をかけられ、水かけ遊びを提案され、そのまま二人とも笑いながらずぶぬれになるまで遊び続ける
●プレイング
・黒影
悪いね~!クロリア!せっかくの里帰りだってのにプール掃除の手伝いをお願いしちゃって!
プール掃除担当の人が夏バテで倒れちゃってて
虫さんや蜂須賀さまに任務ならともかくプライベートなことを頼むわけにもいかなくてさぁ~
お詫びに後で何でも言うこと聞いてあげるから勘弁してね!
俺がデッキブラシで掃除するからクロリアはホースで汚れを水で流してくれる?
じゃあはじめよう!
よーし、ざっとこんなもんかな!後は学校の人に報告して終わり!
お疲れ様!クロリア!ってうわっぷ!?
(突然頭からホースの水をかけられてびしょ濡れになる)
ク・ロ・リ・ア~!いったい何を…え?いうこと聞く権利を行使する?水かけ遊びに付き合え?
ほーぅそれはクロリアも水かけられる覚悟があるってことだよねぇ?
ホースを持っているからって油断していると…うりゃ!
(念動力でホースからの水を操ってクロリアにぶっかける)
へへー!どんなもんだい!おっと、本気になったかな?よーし!じゃあかかってきな!
播州・クロリア
下記の内容で黒影・兵庫(f17150)と播州・クロリア(f23522)との夏休みノベルの作成をお願いします!アレンジ・改変、問題ありません!大歓迎です!
●シチュエーション
黒影・兵庫(f17150)の内容と同じです!
●プレイング
あにさんの頼みとあらば喜んで
故郷とはいえ、とくに用事もありませんし、どうぞお気になさらず
なるほど、人手不足で手助けを依頼する相手が私しかいないと
ふふっ、あにさんに頼られるというのは心地が良いですね
え、何でも?それは楽しみです
私がホースで洗い流す係ですね、承知しました
大方終わりましたね。後は報告するだけで終わりですか
ふむ…えい(ホースの水を黒影の頭にかける)
水も滴るいい男になりましたね、あにさん
まぁまぁ報告前に汚れを洗い流す必要はありますし
それに後で何でも言うことを聞くとおっしゃいましたよね?
それを行使させていただきます
えーっと、私と水かけ遊びに付き合ってください!
むむ?私も水をかけられる覚悟は…まぁありますよ?
ですが私には身長に加えてホースを握っているという大きなアドバンテージを持っています
いかにあにさんといえど、これを覆す方法は…きゃうん!
(念動力で操られた水を頭からかぶってびしょびしょになる)
むぅー!やりましたね!ここからは本気です!
●夏はいつだってそこにあるけれど
季節は巡る。
いつだって時の流れというのは人の都合というものを一切考えてくれない。
むしろ、そうであるべきだとも思えるけれど。
とは言え、と黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は思う。
UDCアース、絶海の孤島。
そこが兵庫の故郷であった。
一つ、頼まれてはくれないだろうか、と数日前に彼は孤島の学校から連絡を受けたのだ。
内容は簡単なものだった。
学校にあるプールの掃除だ。
どうやら、連日続く猛暑というか、酷暑と言うか、あまりにも厳しい太陽の熱視線にプールの掃除を担当するはずだったものが夏バテで倒れてしまったのだ。
「それは大変です! 熱中症ではないのですか!? え、違う? ただの夏バテ? あいや、それでも油断は厳禁ですよ! 汗は出ていますか? 水分補給は!?」
兵庫は真っ先に担当の者の健康状態を心配する。
夏バテ、と一括りにしては痛い目を見る。
いつだって体調というのは急変するものであるからだ。
「そうですか。どうかお大事になさってくださいね! いえ、プール掃除、どんと任せておいてください! バッチリしっかり綺麗にしておきますから!」
そんな安請け合いをしてしまった兵庫は連絡を受けてから少し考える。
簡単に言ってしまったが、故郷の学校のプールは、それなりに大きい。
長さは50m。
幅はコースがいくつあったかな、と記憶を辿るがちょっとあやふやであった。
まあ、普通に5レーン以上はあるだろう、というのが兵庫の目算であった。
となると。
「一人では無理だな」
うん。
頭の中の教導虫も、でしょうね、と頷いている。
熱中症には気をつけて、といった自分が無理をして倒れてしまっては、連絡をくれた方に余計な責を負わせてしまうだろう。
それは兵庫にとって本意ではない。
幸いにして頼れる人物というのは、少なくない。
だが、兵庫はちょっと考えた。
虫さんに水に関連する仕事をさせるのは、ちょっと、と思う。
すべてが水に強い虫ばかりとは限らない。
「あれ!? 意外と人脈が使えないですね!?」
『そりゃそうね。誰でもと連れて行くわけにはいかないし。事情を知っていて、なおかつ黒影がお願いし易い人物となると……』
もう、一人しか思い浮かばなかった――。
●律動は鼓動に
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は久しぶりの故郷の土を踏みしめて感慨深いと思いを馳せていた。
空を見上げれば眩しいくらいの晴天。
日差しがジリジリと肌を焼くようであったけれど、クロリアは嫌いではなかった。
夏は生命が燃える季節である。
虫たちの活動は活発になるし、今も遠く聞こえる蝉の声はまさしく生命の合唱のようでもあったのだ。
「情熱の赤、いや、橙でしょうか」
身に伝わる音の振動にクロリアは一つ伸びをして息を吐き出す。
そうしていると、道の向こう側から兵庫が歩いてくる。
いつもと変わらない笑顔だった。
「クロリア! 悪いね~! せっかくの里帰りだっていうのに」
「あにさん。いいえ、里帰りのついでと思えば、そんなに悪い気はしないのです」
「そう? プール掃除なんて面倒だろう?」
兵庫の屈託のない笑顔にクロリアはホッとする。
故郷に帰ってきた、というのもあるが、一番ホッとするのは『あにさん』こと兵庫の笑顔だった。
「あにさんの頼みとあらば喜んで。それに帰ってきた、というのが一番の用事なので」
「他に用事はないのか?」
「ええ、なので、どうぞお気になさらず」
そうかーと兵庫は頷く。
とは言え、貴重な休日、夏の長期休暇の一日を拘束してしまったことに気後れしてしまっているようだった。
そういう生真面目さもクロリアにとっては好ましいものであったことだろう。
そうでなければ、彼の頼みを此処まで快く受けることもなかったのであろうから、これも兵庫の人徳という意味ではそうであった。
「でも、他にお手伝いを頼まなかったのですか? 私だけとは、珍しい気もするのですが」
「ああ、任務ならともかく、これってプライベートなことだろう? 流石に頼むのは気が引けてさぁ~」
兵庫は、これがひどく個人的な事情である、と認識しているようだった。
クロリア的には、彼女の知る蜂皇族の新女王へと手伝いを頼んでも良かったのではないかと思っていた。
だがまあ、兵庫としては女王という肩書を持つ者に、流石にプール掃除手伝って、とは言えなかったのだろう。
陽炎立つようなアスファルトを歩む。
この会話は他愛もないものであったけれど、クロリアはちょっとうれしかった。
人手不足で真っ先に声がかかったのが自分である、という自負もあったし、兵庫に頼られるのは心地がいい。
「そうだ。ならさ、お詫びに後でなんでも言う事聞いてあげるから勘弁してね!」
この通り、と拝むように手を合わせて頭を下げる兵庫。
笑いがこみ上げてきそうだった。
そんなに頼み込むようにしなくっても、クロリアは兵庫の頼みだったのならば、大抵のことは二つ返事で快諾するだろう。
意図したことではなかったが、こうして兵庫から『なんでも言う事聞く』から、と言われたのならば棚からぼた餅の気分であった。
得した気がしてならない。
「ふふっ、そんなに大仰にしなくっても。あにさんに頼られているだけでも嬉しいですのに」
なんでも、とは。
本当になんでも、なのだろうかと思考を巡らせる。
「それは、楽しみです」
「お手柔らかにね。いや本当に」
「ふふ、それはあにさんの出方次第では?」
「怖いこと言う!」
そんなやり取りとともに二人は学校へとたどり着く。
懐かしさもあるかもしれない。
変わっていないな、とも思うかも知れない。
学校の施設というのは、すぐさま入れ替わるものではない。何年か、十数年かで新しくされるものなのかもしれないが、兵庫たちの知る学校のプールはあまり代わり映えしないものであった。
「水はもう抜いてあるから、これでゴシゴシってやるだけさ」
「はぁ。でも結構青海苔といいますか、藻が多く繁殖していたんですね。滑りそうです」
「だろ。だから、最初はこれ!」
兵庫は用意周到と言わんばかりにデッキブラシだけではなく、長靴も用意していたのだ。
それもクロリアのサイズに合うものを。
だが、クロリアはおもむろに上着を脱ぎ始めた。
「おわっ!? 何してんの!?」
急に上着を脱ぎ始めたクロリアに兵庫は慌てる。
掌を前に突き出して、見ないように顔を逸らしているのがいじらしいと言えば、いじらしい。
「何って、あにさん。掃除というのは汚れるものです。ましてや、プール掃除。水を使うでしょう。となれば、濡れるでしょう」
「だからって、脱ぐかな!?」
「あにさん。みてください」
「なにを!?」
兵庫はあまりのことにびっくりして目を頑なに瞑っていた。
そんな彼の手を取ってクロリアは言う。
「ほら、見てください。今年の水着ですよ!」
兵庫が目を開けると、そこにあったのはクロリアの水着姿であった。
ホッとしたのもつかの間である。
「まぎらわしい!」
「あにさん、油断しましたね? ふふーん、やりました!」
「やりました、じゃないよ。まったくもう。でも、準備がいいな。俺も用意してくればよかった……」
兵庫は作業服であるツナギを着ていた。
如何にプール掃除とは言え、夏の日差しは強烈である。
肌を露出すれば、日焼けしてしまう。
たかが日焼けと言っても、軽い火傷状態になってしまう。それは皮膚の下にある神経を傷つけるものであるし、避けねばならないことでもあった。
「水着は似合っているけどさ、ちゃんと上からシャツ一枚着るんだぞ?」
「はーい。それで、まずは何を?」
「ああ、俺がデッキブラシで擦るから、クロリアはホースで汚れを排水溝側に流してくれる?」
「それでいいんですか? あにさん。私のほうが体が大きいんですから、そっちは私がした方がよくないです?」
兵庫は半眼になる。
確かに。
兵庫は人間の男性としては平均的な身長であるが、決して体格に恵まれた、とは言い難い体躯をしている。
かたやクロリアの身長は兵庫を越えている。
「……いいの。これは俺が請け負った手伝いなんだから。その手伝いをしてくれるクロリアに無理はさせられないだろ」
ほら、と兵庫はクロリアにホースを手渡す。
こう言い出したら兵庫はきっと聞かないだろう。
「承知しました。私はホースで洗い流す係ですね」
クロリアは頷いて干すを受け取り、水を出すべくポンプの方へと歩いていく。
兵庫はその背中を見送ってから、よし、とツナギをまくり上げる。
「頑固な汚れはしっかり落とさないとな。じゃあ、はじめよう!」
手にしたデッキブラシがプールの底を擦る。
こびりついた汚れ、青海苔めいたものがデッキブラシで取れるのはありがたい。
とは言え、まだまだこびりついている。
「あにさん、水流しますよ」
「ああ、頼んだ。こっちに頼む」
こすりつけた箇所に水が放たれ、プールの底面の色が除く。
水色の底面。
ああ、こんな色だった、と兵庫は過去を思い出す。
思い出、と言えば思い出である。
夏の頃は、このプールでよく泳ぎ倒したものだ。
今もこの学校に通う者たちがいるのだろう。彼らが気持ちよく夏を過ごせるように、と兵庫はデッキブラシで擦る手に力がこもる思いだった。
「よいっしょっと……」
「あにさん、水の量ってもう少し多いほうがいいですか?」
「ん? ああ、案外水でも流れ落ちるかもしれないから。口を搾って、水圧上げれば……って何してんの」
見れば、クロリアが口をすぼめている。
いや違う。
口ってそっちじゃない。
「あははっ、何その顔!」
「あ、笑いましたね」
「誰だって笑うだろ。なんだよ、それ!」
そんなやり取りをしながら二人はプールの汚れを落としていく。
日が昇り、日差しが強烈になっていく。
午前中に始めたのは良いものの、天頂に太陽が位置すれば、より一層夏の日差しは強烈さをましていく。
ジリジリと肌を焼くような痛みが走る。
「日焼け止め、汗で流れちゃうな……クロリアは平気?」
「ええ、大丈夫です。あにさんがシャツをって言ってくれて良かったです。あにさんも大丈夫ですか? あともう少しと言えば少しですけど、休憩は……」
「じゃあ、そこのペッドボトル取ってくれるか?」
はい、とクロリアがプールサイドのペットボトルを兵庫に手渡す。
スポーツドリンクであるが、すっかりぬるくなってしまっていた。
クロリアにも水分補給は怠らないように、と手渡していたが、クーラーボックスでも持ち込んでくればよかった、と兵庫はぬるくなったスポーツドリンクの濃い味わいに舌が少し粘つく感触に表情を歪ませる。
「これで大丈夫。一気にやってしまおうぜ!」
「はい。じゃあ、流しますね――」
●夏の日差しは色を変えて
結局、プールの掃除は一日がかりだった。
兵庫の思う以上にプールは広かった。幸いだったのは、汚れがそこまで頑固なものでなかった、ということ。
夕暮れに差し掛かる日差しであったが、少しも暑さが和らぐ気配はなかった。
クロリアもそれを感じているのだろう。
少し疲れたような顔をしていた。
「終わりましたね……後は報告するだけですか?」
「ああ、ざっとこんなもんだろう! 終わり! お疲れ様、クロリア!」
クロリアは自分よりもキツイことをしていた兵庫の方が元気そうなのが、少し不満であった。
手にしていたホースに視線を落とす。
まだ水はでている。
掃除が終われば、このままプールに水を張るのだろう。
明日にでもプールは満水になって、きっと訪れる者たちに涼をもたらしてくれるはずだ。
「……ふむ。えい」
「じゃあ、俺は報告をして……わぷっ!?」
兵庫の顔にぶつかるのは水流であった。
突然のことに兵庫は目をつむり、顔の汗を強烈な勢いで流し水流に慌てる。
「な、なに!?」
「水も滴るいい男になりましたね、あにさん」
目を開けると、そこには悪戯っぽい顔をしたクロリアがホースの先を此方に向けていた。
流れる水が雫となって己のツナギをビシャビシャにしていたのだ。
張り付く生地が中途半端で気持ち悪い。
いや、それよりもクロリアに不意を突かれるようにして水を掛けられたことに兵庫は憤慨する。
「ク・ロ・リ・ア~! こんないたずらして一体何を考え……」
「あにさん。まあまあ」
「まあまあじゃないよ!」
本当にそうである。
濡れたツナギの上半身部分を脱いで腰に巻く。
中のシャツまでびちゃびちゃだ。だが、これは彼の汗によるものだった。それにプール掃除の汚れがあちこちに飛んでいる。
クロリアの放ったホースの水で多少は流れているが、まだ落ちきっていないだろう。
「報告をされる前に汚れを落としておかねばならないでしょう?」
「それはそうかもだけど、もっとやり方ってあるだろ!」
「ふふ、これが私のあにさんへのお願いです」
「え、何?」
兵庫はすっかり自分の言葉を忘れていた。
そう、彼は言ったのだ。
このプール掃除を始める前に、クロリアに『何でも言うことを聞く』と。
「まさか、これが?」
「はい、あにさん。私の水遊びに付き合って下さい」
今!? と兵庫は驚くしかなかった。
というか、もっとマシなお願いはなかったのだろうか。
水遊びになんて、別に『何でも言う事を聞く』ことに含まなくたって、付き合うのに、と思ったが、そこにまた水流が飛ぶ。
「わぷっ!? だから、ちょっと待ってってば!」
「いいえ、待ちません。なんでも言う事を聞くとおっしゃいましたよね? 私はそれを正しく行使しているだけですので、ええ」
なので! とクロリアは自分も汗の張り付いたシャツを脱ぎ捨てる。
えい、とまだ水の張っていないプールに降りて、ホースの口をキュッと絞って兵庫へと放つのだ。
強烈な水の流れは兵庫の上半身を濡らし、ぶつかった飛沫がクロリアへと飛ぶ。
黒い水着は彼女によく似合っていた。
いつのまにか揃いのサンダルを履いているのにも兵庫は気が付かなかった。きっと最初から彼女はこうするつもりだったのだろう。
確かに明日でも、プールに水を張ってからでも兵庫と水遊びをすることはできるだろう。
けれど、二人っきりではない。
他の誰かがいるかもしれない。
なら、今だけが兵庫を独り占めにできる時間でもあったし、千載一遇の好機でもあったのだ。
故にクロリアはこの機会を逃さない。
「ほらほら、あははっ!」
クロリアはホースの水を兵庫に掛けて笑う。
「わぶっ、わっ……くっ、クロリア、じゃあ、確かに『なんでも言うことを聞く』っていうのを聞くけどさ。クロリアも水をかけられる覚悟があるってことだよねぇ?」
「ふふ、すごんだって、あにさん。ホースは私が抑えているんですよ? あにさんは哀れ、このままずぶ濡れです」
その言葉に兵庫は、ちょっとカチンと来た。
妹分の勝ち誇った顔。
別に憎たらしいわけじゃあない。
単純にやられっぱなしが癪に障る、というだけの話なのだ。
故に兵庫は頭の中の教導虫から大人げないわよ、とたしなめられても頭を振る。
「いいえ、せんせー。これは大人としてクロリアにしっかりと教育をしなければならないという責任なんです!」
言い方、と教導虫が嘆息しているが、止めないということはやって良し、ということなのだろう。
兵庫は念動力を発露させ、クロリアが調子にのって自分に向ける水流を百八十度捻じ曲げる。
勢いに乗った水はクロリアの顔面を叩く。
「きゃうん!? な、なんです!?」
「ふっふっふ、ホースを持っているからって油断していると、そうなるんだよ!」
「あにさん、念動力使ったんですか!?」
「覚悟があるっていったろ!」
「確かに私も水をかけられる覚悟はある、と言いましたが! 念動力は反則じゃないですか!」
「一本しかないホースを抑えている時点で反則もないだろ!」
「むぅー!」
不意をついてのホースの一撃。
だが、それを兵庫は躱して、きれいになったプールの底面を走る。。
危ないわよ、と教導虫が言うが兵庫は長靴を装備しているのだ。
これは別に汚れに滑る底面への対処だけではない。
グリップの聞いた長靴の底が、きゅっ、と小刻み良い音を立てて兵庫をターンさせ、念動力で持って集めた水球を掲げる。
「水ならそこら中にあるからね!」
「やりましたね! あにさん! ここからは本気です!」
クロリアは闘志みなぎる顔でホースを掴んでいる。
対する兵庫は腰を落として体勢を低くする。
そう、水流は放物線を描く。
ならばこそ、的を搾らせないように相対する面を狭く、小さくするのは定石であった。
「本気になったな? よーし、じゃあかかってきな!」
「望むところです! あにさんをびしょぬれの濡れ鼠にしてやります!」
飛ぶ水流。
これを躱す兵庫。
飛び散る飛沫の一粒ずつに表情の違うクロリアの顔が浮かぶ。
どれもが楽しげな顔だった。
日が徐々に落ちていくが、二人の歓声は響き続ける。
今日という一日は、確かにプール掃除というつまらない用事に潰されてしまったかもしれない。
けれど、二人はそれでもよかったと思うかも知れない。
だって、こんなにも楽しいのだ。
まるでご褒美のような時間だとクロリアは思ったかもしれない。
ちょっと大人げないというか、子供っぽすぎることをしてしまっているという自覚はある。でも、兵庫との時間はかけがえのないものだ。
水が飛ぶ度に兵庫の顔が歪む。
ちょっとおもしろいし、かわいい。
「わぶっ、このっ!」
念動力で必死に水をかき集めて自分にぶつけてくる。
火照った肌を冷ますような水の冷たさに声が上がる。
「っひゃ、もうっ、お腹ばっかり狙うの無しにしてください!」
「しかたないだろ、そこが一番的大きいんだから!」
「そういう事言わないで下さい!」
体格差があるからかもしれない。
普段なら怒る所かもしれない。でも、いいや、とクロリアは思う。
だって楽しいし。
それに何より標語が笑っている。
それで十分。それでいいのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
兵庫はびしょ濡れになりながら、荒い息を吐き出す。
クロリアも同様だった。
「や、やりますね、あにさん……」
「そっちこそ……ってもう真っ暗じゃん!」
兵庫はいつしか二人の水掛け遊びに夢中になりすぎて、とっくに日が暮れてしまったことに気がつくのだ。
「やりすぎましたね」
「いや、本当だよ……でも」
「はい。あにさん。楽しかったです。お願い聞いてくださってありがとうございました」
「お安い御用だって。じゃあ、報告して……」
まったく、と教導虫が頭の中でため息をつく。
休みだからと好きにさせていたけれど、好きにさせすぎた、と。
途中からふたりとも声が届かないくらいに夢中になっていたのだ。
『監督不行き届きって怒られないかしら』
「大丈夫です、せんせー! しっかり仕事は終わらせてありますから!」
『報告も仕事のうちでしょうに』
「確かに。でも、クロリアが喜んでくれましたから」
クロリアが帰り支度をしているのを見て、兵庫は優しげに笑む。
いつも控えめな妹分が、こうやって我を出してくれたことは喜ばしい。
だから、怒られるのは自分だけでいい。
彼女の夏の一日が、楽しいものであったのならば、それで。
兵庫はプールから上がるとクロリアが待っていた。
「あにさん、一緒に怒られにいきましょー」
「報告、報告ね!」
「そうでした!」
そんな仲の良い兄妹のような二人は、夏の星空瞬き、学校の明かりつく用務員室へと、しっかり怒られに向かう。
これも得難い夏の思い出だ――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴