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ジャスティス様が見てる

#サイキックハーツ #ご当地怪人


「グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
「グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
 さわやかな朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
 グローバルジャスティス様のお庭に集う乙女達が、今日もアフリカンパンサーのような無垢な笑顔で校門をくぐり抜けていく。
 汚れを知らない心身を包むのは、赤い腕章をつけた漆黒の制服。
 ガイアパワーが高まるように、毎食にご当地名品を頂くのがここでのたしなみ。
 もちろん、コンビニエンスストアの量販食品を買い食いするようなはしたない生徒など存在していようはずもない。
 私立暗黒ジャスティス女学園。
 令和六年創立のこの学園は、グローバルジャスティス様のためにつくられたという伝統あるご当地怪人系暗黒校である。
 都内某所。武蔵野の面影を未だに残している緑の多いこの地区で、グローバルジャスティス様に見守られ、幼稚舎から大学までの一環教育が受けられるご当地怪人の園。
 時代は移り変わり、灼滅者たちが世界を制圧した今日でさえ、十八年通い続ければ温室育ちの純粋培養ご当地怪人が箱入りで出荷されるという仕組みが未だ残っている貴重な学園である。

「というわけでさ」
 オズワルド・ダンタリオン(f43848)は猟兵たちに笑いかけた。
「みんなには、いまからこの学園をつぶしに行ってもらうよ」
 言いながら、オズワルドは猟兵たちの前に掲示したスクリーンへと映像の投影を開始した。
「攻撃目標は通称『私立暗黒ジャスティス女学園』。元々はカトリック系の女子校だったらしいんだけど、今年に入ってから復活ダークネスオブリビオン たちに乗っ取られててね。闇堕ち促進学園にされちゃってるみたいなんだ」
 私立暗黒ジャスティス女学園。
 グローバルジャスティス様を示す『G』のエンブレムを校章として掲げ、至るところにグローバルジャスティス様の立像や肖像画が飾られたお洒落な洋風建築の校舎の中ではご当地怪人のダークネス教職員たちが学園に通う少女たちを立派なご当地怪人に闇堕ちさせるべく日夜ダークネス教育に励んでいるのだという。
 元々はカトリック系の女学校だったのだが密かに復活ダークネスたちに乗っ取られてしまい、現在では無垢な少女たちに暗黒洗脳教育を施すダークネス学園と化している。
「ここままほっとくと学校の子たちが完全に敵の手駒に変えられちゃうからね。早いとこ学校から敵を追い出して子供達を救ってほしいんだ」
 オズワルドは端末を操作し、画面を切り替えた。
「……ただ、まあ。話はそう簡単じゃない」
 そこに映し出されたのは――ご当地怪人幹部、アメリカンコンドルの姿!
「ご当地怪人幹部、アメリカンコンドル。暗黒ジャスティス女学園の教務主任だ。君たちは現場に入り込んだら、すぐに迎撃しに出てくるだろう」
 スクリーンの中でアメリカンコンドルの映像が動き出す。
『ズィー!! そんなんじゃダメデース!! そんな腑抜けたゼーレでは、明日のワールドを背負って立つ立派なご当地怪人になれまセーン!!
 さあ、もう一度イッヒと一緒にリトライネ! あの夕陽に向かって今からrunning! 心のmuscleを鍛え上げるのデース!!』
「はいっ! アメリカンコンドル先生!」
『返事は『ハイル!』デース!』
「ハイル!」
 熱血指導! 指導を受ける女生徒が涙を流しながらアメリカンコンドルと共に校庭を走り出す!
 否、よくよく見ればアメリカンコンドルは資料に残された当時の記録からやや異なった姿であった。
 アメリカ国旗をイメージしたとおぼしき赤・白・青のトリコロールカラー衣装のカラーリングが、赤・黒・黄の三色へと変更されているのだ!
「恐らくだけど、このアメリカンコンドルは別のダークネスの影響を受けているものと考えられる。彼にしてはだいぶゲルマンだからね」
 むしろ今の彼はゲルマンコンドルと呼ぶべきではないか。オズワルドは苦笑いした。
「……とはいえ。面白いヤツに見えるけど、あれでも世界を脅かしていた上位層のダークネスの中のさらに上澄みだ。甘く見て遊びに行くつもりで挑めば君たちでも返り討ちにあう可能性はある。じゅうぶん注意していってくれ」
 オズワルドはスクリーンを閉じた。
「ただ、この事件はアメリカンコンドルをやっつけたらそれで終わりってワケじゃない。実は学校の中には女子生徒に紛れたダークネスが何人も潜んでいるんだ。敵は君たちがアメリカンコンドルと戦っている間に周囲を固め、そこから包囲殲滅作戦で君たちを襲う作戦を立てている。……それを撃退できたら、この作戦を考えた黒幕が現れるはずだよ。そいつをやっつけたら、学校のことを後処理して万事解決……ってところかな」
 作戦はアメリカンコンドル打倒だけではない。むしろその裏に潜んでいる黒幕を倒すことが目標なのだ、とオズワルドは言い添えた。
「かなりの強敵としかも連戦になる。重ねて言うけど生半可な気持ちじゃ行かないことだ。足元掬われかねないからね」
 説明は以上。質問ないね、とオズワルドは猟兵たちを見回す。
「それじゃ、よろしく頼むよ」
 そうしてから、オズワルドはグリモアを掲げた。
 弾ける光が猟兵たちを包み、現地へと転送してゆく。

 かくして、任務は幕を開けるのであった。


無限宇宙人 カノー星人
 ごきげんよう、猟兵イェーガー。鉄は熱いうちに打つ主義。カノー星人です。
 サイキックハーツです。よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『アメリカンコンドル』

POW   :    空母『スイミングコンドル2世』
レベル×1体の【アメリカンご当地怪人】を召喚する。[アメリカンご当地怪人]は【アメリカ】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    フューチャーインサイダー
【まるで未来を見て来たかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ブラックマンデーリーマンショック
【胸のドルマーク】から【ブラックマンデー光線】を放ち、自身からレベルm半径内の敵の【預貯金を破壊して、精神】だけを攻撃する。
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「ホワッツ!! 灼滅者スレイヤードモがカチコミに!?」
 アメリカンコンドルは昼食のホットドッグを放り出しながら叫んだ。(なお、暗黒ジャスティス女学院の学食においてはドイツ産ヴルストにザワークラウトを利かせ、ドイツ産ライ麦パンで挟んだゲルマンホットドッグがご当地パワーを高める食品として毎日提供されている)
「シャイセ……! よもやイッヒたちのグローバルジャスティス様復活計画を察して邪魔しに来やがりマシタか! にっくき連中め!」
 ダークネス洗脳教育によって猟兵たちを悪い奴らと誤認した暗黒女生徒たちが悲鳴をあげながら逃げ惑う中を、教務主任としてアメリカンコンドルは駆け出した。
「ヴァルテン! 落ち着きなサーイ! ズィーユーたちのことは必ずイッヒミーが守りマス! 生徒諸君は全員講堂に集まるのデース!」
「えっ、アメリカンコンドル先生は!?」
イッヒミーの仕事はズィーユーたちを守るコトデース! ズィーたちはグローバルジャスティス様の新たな御世を作り上げる大事な命! 灼滅者スレイヤーどもに渡すわけにはいきまセーン!」
 アメリカンコンドルは言葉巧みに女生徒たちを誘導し、避難を促した。アメリカンコンドル先生の指示に応じて、女生徒たちは講堂へ逃げ込んでいく。
「フーッ……あとは任せマスよ、理事長ティーチャー!」
 これで、もし自分が倒れてもあとは“理事長”がなんとかうまくやってくれるだろう。アメリカンコンドルは頷いてから校庭――猟兵たちがカチコミをかけてくるその場所へと向かった。
アレ・・のせいで本調子アメリカンでナイのが惜しいデスが……それでもイッヒミーはご当地幹部、アメリカンコンドルデース!」
 走るアメリカンコンドルの身の裡で、サイキックエナジーユーベルコード出力が高まる! その戦闘出力は幹部の肩書に相応しい強力なパワーだ!
「さあ、来るならイクラでも来なさい灼滅者スレイヤードモ! 一人残らず返り討ちにしてヤリマース!!」
 かくして――ご当地幹部アメリカンコンドルは、猟兵たちを迎え撃つ!
クレセント・ブライト
無限宇宙人 カノー星人マスターにおまかせします。かっこいいクレセント・ブライトをお願いします!先にプレイングを書いた方と合流可能です

『歌はいいよね。』
 ヤドリガミの聖者×サウンドソルジャー、17歳の青年です。
 普段の口調は「不思議君(おいら、~さん、だねぇ、だよ、だよねぇ、なのかい?)」、時々「生真面目(俺、あなた、~さん、だ、だな、だろう、なのか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、公序良俗に反する行動はせず一般人にも気を付けます。
あとはおまかせしますのでよろしくお願いします。


太目・乃子
【SPD】で勝負。

心情
人は死んだらそれでおしまい。(例外は色々あります)
その人が自分を生き返らせてくれって言ってたの?
あとドイツ風味のレオナルド・ダ・ヴィンチってどうなの?それでいいの?

戦闘
UC【援護射撃】を使用し、乃子の射撃をあえて回避させることで味方の戦闘を有利に運べるように立ち回ります。
「人質を取ったりしないのは評価できる」
「当たる気がしない、けれども」
「私は、一人じゃない!」

ボスの考察とか
「ドイツ風味、再生怪人、ゲルマン……」
「あのラグナロクダークネスが……?」
(事前にサイキックハーツ世界の歴史の本を調べました)

連携・アドリブなどお任せします。


佐々木・ムツミ
アメリカンコンドル?それともゲルマンコンドル?
いまいちキャラが安定してないよねー。
まぁこれが普通のダークネスだったらいい先生なんだけど、
復活ダークネスじゃしょうがないしやっちゃおっかな?

敵の動きを注意深く見切ったうえで攻撃を回避しつつ
一瞬のすきを突いて必殺の斬撃を打ち込む…これに限るわね。

燕返し!その名の通り飛ぶ鳥を落とす一撃よー!
あーでもコンドルって鷹の仲間だったっけ?
まぁ同じ鳥つながりってことでいいかな?



「サア! どっからでもかかってくるがいいデース!! イッヒミーは逃げも隠れもしまセン!」
 暗黒ジャスティス女学園の校門と昇降口の間に設けられた、薔薇の花咲く庭園。
 グローバルジャスティス様のお庭と呼ばれるその場所に、アメリカン コンドルは立つ。
「いまichイッヒって言った?」
 ドイツ語だよねあれ、と佐々木・ムツミ(f43858)は眉をひそめた。
「……言った」
 太目・乃子(f40815)は頷く。
「えっと……アメリカン、なんだよねぇ? カレ」
 クレセント・ブライト(f06868)は苦笑いした。
「なんだったっけあのダークネス。アメリカンコンドル? ゲルマンコンドル?」
 いまいちキャラが安定してないよねー、とムツミは苦笑いした。
「アメリカンコンドル……またの名を、鴉天狗。……ああ見えて、かなりの実力者」
 乃子は冷静さを崩すことなく敵の姿に向かう。
 乃子はここサイキックハーツ世界との縁は薄い猟兵であったが、この世界の事件に挑むにあたってしっかりと予習してきていた。
「ご当地怪人勢力のさいごの決戦まで生き残り……直接のとどめは誰も刺せなかった」
 コメディアンめいた言動とは裏腹にご当地怪人幹部アメリカンコンドルの戦闘力と戦績は相当なものだ。当時の最終決戦では灼滅者たちがおよそ50人がかりで挑んだが,それだけの戦力をもってしても斃しきれなかった記録が残っている。
「それ、どうやってやっつけたんだい?」
「記録によると……大首領グローバルジャスティス、が斃れたことで、運命をともにしたと」
「へー……じゃ、強いんだ。あいつ」
 瞬間、ムツミの表情が変わった。
 ムツミは灼滅者だが殺戮を求める六六六人衆の父と強者を求めるアンブレイカブルの母に育てられた生育歴をもっており、その影響がために彼女の気質と感覚はむしろダークネスに近い。
「じゃあ……楽しめそうかな」
 獲物を前にした狩人のような熱を帯びた眼差しが、アメリカンコンドルに注がれた。
「フン……。イッヒミーたちのコトをよく勉強してきているようデース。デスが、歴史書の記述と現実の脅威は違うというコトを教えてあげマース!」
 構えたアメリカンコンドルの両手で、鉤爪が鋭く光った。
イッヒミーに力を与えてくれた友のタメ……。グローバルジャスティス様の望む平和な世界のタメ……そして、この世界の未来をしょって立つ生徒たちのタメ! イッヒミーは負けるワケにはいきまセン!」
 そして、咆哮! 気迫と共にアメリカンコンドルの躯体へとサイキックが満ちる!
「うーん……案外熱血教師? まぁ、これが普通のダークネスだったらいい先生なんだけど……」
 ムツミは苦笑いした。
「人質を取ったりしないのは評価できる」
「根は悪い人じゃないのかもしれないけどねぇ……」
 しかして、それは奴を取り逃す理由にはなるまい。乃子とクレスは戦闘態勢へと入り、アメリカンコンドルへと対峙する。
「復活ダークネスじゃしょうがないからね! やっちゃうしかないよ!」
 そしてムツミは剣を抜き放つ。――大太刀、物干し竿! 斬馬刀にも見紛う巨大なひと振り!
シャイセShit! 小癪な灼滅者スレイヤーどもめが! ならば生まれ変わったイッヒミーのパワー、冥途の土産に見せてやりマース!」
 対し、アメリカンコンドルはその翼を広げ高く舞い上がった。
「オオオオオッ!!」
「いっくよー!」
「うん……!」
「あいよぉ!」
 ――そこから急降下しての急襲! 猟兵たちは迎え撃つ構えを見せ、かくしてここに戦端は開かれる!

「シャアアアアッ!!!」
 瞬間、風が吹き荒んだ。
「く、っ!」
「うわ……!」
「おおっとぉ!?」
 それは急降下する身体を神通力によって巻き起こした旋風で加速させ、駆け抜ける勢いと共に両手の鉤爪と最新鋭戦闘機めいた翼で斬撃を見舞うアメリカンコンドル烏天狗の秘技、天狗翼斬!
「これだけではありまセーン!!」
 音速にも達する加速度でもって猟兵たちの間を切り裂きながらすり抜け――たかと思いきや、すぐさま反転! アメリカンコンドルは再び風を呼び込み、猟兵たちへと暴風を浴びせかける! 『天狗の惑わし』と呼ばれたサイキック攻撃だ!
シュテルベンダーイ! 灼滅者スレイヤー! 我が悲願、グローバルジャスティス様復活のための礎となるのデース!!」
「なん、て、攻撃だよぉ……!」
 吹き荒ぶ風の刃に刻まれながらも、クレスは歯を食いしばって耐えた。
「ふふ……ふ! なるほど……! これは…………強い!!」
 ムツミの目は爛々と光輝く。それは求めていた強者との殺し合いを目の前にして感じたアンブレイカブル譲りの喜悦であった。
「グローバル、ジャスティス……」
 その一方、乃子は呟く。
「ねえ、烏天狗、さん」
 そうしながら、乃子は空を舞うアメリカンコンドルの姿を仰ぎ見た。
「なんデスか?」
「人は死んだらそれでおしまい、だよね」
「……なんのハナシデス?」
 不意に紡がれた言葉に、アメリカンコンドルは怪訝な顔をする。
「その人が………自分を生き返らせてくれ、って、言ってたの?」
「……!」
 乃子が見た記録では、ご当地怪人たちの信奉するグローバルジャスティスとは高潔で偉大な人物であった。
 灼滅者スレイヤーとの戦いの決着も、穏やかな表情で迎えていたはずだ。
 それが、本当に復活などを望んでいるのか。
「シャラップ!! グローバルジャスティス様はイッヒミーたちの希望なのデース!」
 聞く耳持たぬとばかりにアメリカンコンドルは再び風を吹かせた。
「そして、サイキックエナジーさえ集まれば……! あの男・・・なら! イッヒミーを蘇らせたように、グローバルジャスティス様を再生させることも不可能ではないはずデース!!」
 アメリカンコンドルはゲルマンカラーの衣装をたなびかせながら、再び猟兵たちを襲った。
(ドイツ風味、再生怪人、ゲルマン……!)
 乃子はアメリカンコンドルの翼を躱しながら、この事件の奥に潜む存在が何者なのかを類推する。
「あのラグナロクダークネスが……?」
 そして乃子はあるひとつの存在にいき当たった。
「ラグナロクダークネス!? それってもしかして!」
 更なる強者の存在が示唆され、ムツミの目が輝きを増す。
「……それ、誰のことなんだい?」
 この場でただひとり、サイキックハーツ世界に縁の薄いクレスが困惑していた。
「あ、ごめん。あとでちゃんと説明する……」
 乃子は謝った。
「フン! 感付いたようデスね……デスが、奴の邪魔はさせまセーン!」
 しかして、更なる暴風! アメリカンコンドルの放つ風がまたも猟兵たちに襲い掛かる!
「……でも、その作戦がうまくいったとして……ドイツ風味のグローバルジャスティスってどうなの? それでいいの? あなたたち、ご当地怪人軍団じゃなくてゲルマン怪人軍団になっちゃわない?」
「シャラーーップ!!! イッヒミーが敢えて目を背けていたことを!!!!」
 アメリカンコンドルが激昂した。
「小娘が! さっきから言わせておけばくだらないことばかりベラベラと!」
 そして、その狙いを乃子へと定める!
「まずはズィーユーから血祭りデース!」
 シュテルベンダーイ! 加速するアメリカンコンドル! ぎらり輝く鉤爪が、乃子の首筋を狙う!
「――ちょっと待った!」
「ムッ!」
 しかして!
「さっきからその子とばっかりお話ししちゃってさ…………あたしともりあってほしいんだけど!」
 アメリカンコンドルの爪撃を、ムツミが遮ったのだ。掲げた物干し竿の刃で爪を受け流し、翼刃の勢いを削いでいたのである。
「この小娘、ダークネス……!? ……イヤ、違う! 何者デース!」
 ムツミの瞳の奥に宿った色濃い闇の気配に、アメリカンコンドルは困惑する。
灼滅者スレイヤー、佐々木ムツミ! ……あ、でも半分ダークネスみたいなものかも?」
「……苛立つジョークデス!」
 裂帛! アメリカンコンドルが押し込み、ムツミを力ずくで後退させる。
「っと……やっぱすっごいチカラだね。ドキドキしちゃう!」
 ざぁ、っ! 靴底が地面に擦れる感覚。体勢を立て直しながら、ムツミは笑った。
「マーダーども……いやアンブレイカブル? チッ、どの道マトモな灼滅者スレイヤーではないようデスね!」
 ぎらり光る爪! アメリカンコンドルは素早く前進しムツミへと仕掛ける!
「おっと……!」
「ナヌ!?」
 だが、ムツミは巧みな体捌きでそれを躱してみせた。
「……“見切った”よ、そのサイキック!」
「ムウ……!」
 ムツミはここまで防戦一方と見せかけながら、アメリカンコンドルの攻勢を注意深く観察しその攻撃の軌道とクセを見切っていたのだ。
 既にアメリカンコンドルの攻撃はムツミにとって避けられぬものではなくなっていた。
「ならばァッ!! ミーの本気を見せてやりマース!!」
 激昂に叫ぶアメリカンコンドル! 高まるサイキックエナジー。その攻撃が苛烈さを増してムツミへと攻め寄せる!
「……おおっと、それ以上はやらせないよぉ?」
「ムゥ……!?」
 しかして瞬間、アメリカンコンドルの周囲で空気が爆ぜた。
「La,La,La……♪」
 弾けたのは竪琴ハープの音色。空気を満たしてゆくのは、響き渡る歌声!
「なん、デスか! この音はァッ!」
「♪――――それは、昔々の物語。遠い昔のおとぎ話」
 それは、クレスの奏でた歌であった。
 無論それは単なる歌ではない。奏でる指先に、歌う声帯に、響く音色に満ちた力が重なり合い、歌曲とともに生み出されるユーベルコードだ!
「グオ……ッ! シャイセ! こんなムジークミュージックで、このアメリカンコンドルが……!」
 その歌は、太古の昔より人類史を紡ぎ続けてきた人々の歴史を歌い上げる人類賛歌の叙情詩!
 ――奇しくも、人類を苦しめその歴史を歪めてきたダークネスたちに対して強烈な反抗カウンターの意志を示す一曲であった!
「ムウウゥ……ッ!」
 プレッシャー! 音に乗せて広がるユーベルコードの力にアメリカンコンドルが僅か怯む。
「いま、だ……!」
 その隙を逃すことなく、乃子は手にした小銃を掲げ引き金を引いた。ダダダダダ、ッ! 乾いた銃声と共に吐き出される弾頭がアメリカンコンドルへと向かう。
「シャイセ!!」
 だが、アメリカンコンドルはクレスのユーベルコードにプレッシャーを与えられながらも素早くその身を翻して乃子の銃撃を躱していた。
イッヒミーを侮らないでくだサーイ……!」
 アメリカンコンドルは乃子を強く睨む。
「やはり小娘、ズィーユーから血祭りデース!!」
 そして、再び広げた翼で翔けた。
(……来る!)
 迫るアメリカンコンドル。瞬き一つの時間もかからず、その爪と翼の刃は乃子へと届くだろう。
「けど…………」
「死になサーイ!!」
 眼前。光る鉤爪。振り下ろされる一瞬。
 ――しかして乃子は、その双眸を強く見開いたまま叫んだ。
「私は、一人じゃない!」
 そのときである!
「……だからさあ!」
 刹那、銀光!
「あたしのこと、無視しないでよねっ!」
「ムオッ!」
 振り上げられた物干し竿の刃が、再びアメリカンコンドルを遮った。
「チィイ、ッ!」
「えっへへー……逃げちゃ嫌だよ?」
 ぎらと光る双眸。血気に逸るムツミの眼差しが、アメリカンコンドルの姿を追う。
「おのれ……! なかなかやるようデスね、灼滅者スレイヤーども……! どうやらイッヒミーに油断があったようデース!」
「ま、おいらはその……すれいやー? ってのじゃなくて……猟兵なんだけどねぇ」
 奏でるハープの音色。広がるユーベルコード出力。爆ぜるエネルギーがアメリカンコンドルをふたたび襲う。
「私も、ケルベロス……」
 ダダダダダ、ッ! 乃子もまた引き金を引く。迸る火線がアメリカンコンドルを追いかけた。
「イェーガーだかケルベロスだか知りまセンが、どれにせよイッヒミーのパワーでまとめて全員やっつけてしまえば――」
 予想外に押され始めている。危機感を募らせたアメリカンコンドルは、その身にふたたびサイキックエナジーを高め――
「――それは、あたしたちのこと見くびり過ぎじゃないかな?」
「……ナヌ!?」
 背後から、底冷えのするような声を聞いた。
「後ろから、失礼!」
「ぐぉ、ガァッ!!」
 斬撃。
 鋭く重たい刃が、振り抜かれる。
「こ、ッれ、は……!」
「――――燕返し」
 ひゅ、っ。血振りの動作。ムツミは物干し竿の刃を鞘へと納める。
「その名の通り、飛ぶ鳥を落とす一撃よ」
「ば、かな……!」
 痛みに呻くアメリカンコンドルが、傷口を抑えながら膝をついた。
 クレスと乃子がアメリカンコンドルを抑え込んでいる間、ムツミは密かにアメリカンコンドルの死角へと回り込んで必殺の一撃を叩き込む隙を伺っていたのだ。
 そうして、今。その秘剣のひとつが、アメリカンコンドルの躯体へと刻み込まれたのである。
「ク、ッ……!!」
 苦悶するアメリカンコンドル。しかし、アメリカンコンドルは震えながら立ち上がり、態勢を立て直した。
「デスが…………この程度で……こんなダメージで! ミーを斃したと思わないでくだサーイ!!」
 叫ぶアメリカンコンドル。
 その身体に無視できぬダメージが与えられたのは明白であったが、しかしてまだその姿は健在であった。
「ふーん……これで平気なんだ。ワクワクしちゃうね」
 ムツミは哂った。
「でも……この学校の子たちのためにも、私たちだって負けられない」
「だねぇ。とにかく根競べといこうかぁ?」
 乃子とクレスもまた戦闘態勢を維持し、アメリカンコンドルへと対峙しなおした。

 ――かくして、戦いは続く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

弓落・高寿
「そうか…手前にも手前の矜持があるのか…」
アメリカンコンドルと対峙すると何かを悟り、そして姿は変われどもアメリカン魂を忘れない彼に宇宙生まれ平安育ちの己の境遇を重ね…

「……としんみりするか!訳分かんねえことばっかほざきやがって!!
大体なんなんだよ『私立暗黒じゃすてぃす女学園』って!!げるまんなのにあめりかんって!」

依頼とはいえ、続けざまにぶつけられる単語の訳の分からなさ、理不尽さ。その怒りに任せ、キラキラな神器を振ってキラキラなモーションと共におぞましい触手を召喚し、一斉にけしかける。訳の分からないこと続きで怒りと精神消耗度が反比例。ストレスは右肩上がり。もうどうにでもなーれ。


淳・周
何だかんだでグローバルジャスティスとの決戦の時ですら直接は勝ててねえからな。
油断ならないのは百も承知…だが、アタシにできるのは今も昔も真っ向勝負!
鍛えた力で今度こそ倒して見せる!

爽やかな挨拶してんじゃねー!
何やってんだ烏天狗!ヤンキー根性忘れたか!ドイツ語混じってんぞ!
ゲルマンの影響にやられてるとか向上心はどこ行った!と一気に捲し立てつつUC起動!
格闘戦用外装形成、装着!
ご当地怪人共は真っ向からぶっ潰す!
…おいこれ本当にアメリカンご当地怪人か?ゲルマン化してねえか?
帰属すべき地を見失った怪人なんぞに負けはしねえ。
皐月燃え上がらせて真っ向暴力で叩き潰しアメリカンコンドルをアッパーでぶっ飛ばすぞ!



「アメリカンコンドルか……」
 淳・周(f44008)は唸った。
 ――思い返せば当時の彼らご当地怪人勢力との最終決戦時。第6ターンで周はアメリカンコンドル烏天狗そのものとまみえている。
 その時の戦いでは、周は仲間たちごと薙ぎ払われた立場であった。
「……あんときのアイツは、たしかに強かった」
 勢力の、種族の存亡そのものを賭けた退路なき最終決戦であったが故か。あのとき戦ったアメリカンコンドルには、鬼気迫るものがあった。
「そんなに強かったのか?」
 弓落・高寿(f44072)は周を睨む。
「ああ。……そもそも、あんときの灼滅者アタシらダークネスヤツらの間には相当な実力の隔たりがあったからな」
 周は頷いた。
 灼滅者としてアメリカンコンドルに対峙したそのとき、当時の灼滅者たちの個人戦闘力レベルの最大値は90程度。対し、アメリカンコンドルの個人戦闘力は――およそ1300。
 戦場に吹き荒れたアメリカンコンドルの攻性サイキックの威力を、周はいまだに覚えている。
「なるほど……強敵なんだな」
「油断ならないのは百も承知、ってワケさ」
 周は強く拳を握る。
 ぱし、と音をたてて、周はその拳を掌へと打ち付けた。
「だが、アタシにできるのは今も昔も真っ向勝負!」
 その双眸には、雪辱と言う名の火が灯る。
「鍛えた力で今度こそ倒してみせる!」
「……へぇ、気合入ってんな。いいじゃねえか。そんなら我も手ぇ貸すぜ」
 高寿は周の瞳の中で燃える激情に共感を示した。
「ああ、よろしく頼む!」
「おうよ!」
 突き出した周の拳に高寿は拳をぶつけて気合を分かち合う。
 ――かくして、二人は戦場であるグローバルジャスティス様のお庭へと足を踏み入れるのであった!

「グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」
 二人の姿を見るにつけ、右手を高く掲げたゲルマン式敬礼とともにアメリカンコンドルは叫んだ。
「爽やかな挨拶してんじゃねー!」
 周は真っ先に文句をつけた。
「シャラップ!!」
 アメリカンコンドルが負けじと怒鳴り返す!
「いいデスか、ズィーユーたち。立派なご当地怪人ダークネスを排出するためには、子供たちの思想を矯正する暗黒洗脳教育は欠かせまセン。そして、その暗黒洗脳教育の基本こそがこのグローバルジャスティス様を称えるチャントなのデース!!」
「何言ってんだアイツ……?」
 高寿の表情が苦虫を噛み潰した。
イッヒミーは暗黒洗脳教育の指揮を執る教務主任として、この私立暗黒ジャスティス女学園を導いてゆかなければならないのデース!」
「待てや烏天狗!!」
 周が叫んだ。
「お前なんでさっきからドイツ語混じってんだよ!! ヤンキー根性忘れたか!」
「黙りなサイ! これにはやむにやまれぬ事情があるのデース!」
「ふざけんなよ!! ゲルマンの影響にやられてるとかさぁ……向上心はどこ行った!」
「さっきからなんなんだよげるまんってさあ!!」
 理解の追っつかないわけのわからない会話に、高寿が悲鳴を上げた。
「フン……。デスが、ズィーたちに理解を求めるつもりはありまセン。何故なら灼滅者……ズィーたちはここで死ぬからデース!!」
 アメリカンコンドルはゲルマンカラーの衣装をはためかせながらその手を掲げ、ぱちりと指を弾く!
「来なさい、イッヒの誇るアメリカン怪人軍団よ!」
「ウォーッ!! ハンブルグーッ!!」
「フランクフルターッ!!」
 アメリカンコンドルのコールに応じて、戦場へとアメリカン怪人たちが乱入する! 暗黒ジャスティス女学園の教師や用務員として潜り込んでいたアメリカンコンドル配下のアメリカンご当地怪人たちだ!
「ブルッブルッブルッ……お呼びですか教務主任! このハンブルガー怪人にお任せくださいブルグ!」
 ドイツ発祥のハンブルグステーキをバンズに挟んだハンブルガーをパワーの源とするハンブルガーマンたち!
「フルーッフルッフルッ! 我々アメリカン怪人軍団の手にかかれば灼滅者どもなど造作もないフルター!」
 同じくドイツ発祥のフランクフルトソーセージをパンに挟んだフランクフルター・ホットドッグをエネルギー源にするフランクフルター・ホットドッグ男の集団! そこに並び立ったのは、アメリカンコンドル配下の恐るべきアメリカン怪人軍団であ
「待てや!!!!!!!!!!」
 ここで周は地の文をひっぱたいて物言いをつけた。
「なあ、おい。おい!!! 烏天狗!!!」
「なんデース!? 藪からスティックに!!」
「こいつら本当にアメリカンご当地怪人か?」
「本当デース!! ちょっとゲルマン味が混じっただけデース!」
「やっぱゲルマン化してんじゃねえか!!!!!」
 ふざけんなよ!! 周が半ギレする。
「ブルッブルッブルッ……弱いフンドほどよく吼えるブルグ」
「フルーフルッフルッ!! 我々の力を畏れている証拠フルター!」
 その姿に、アメリカン怪人軍団がせせら笑った。
「フフフ……。流石は我がアメリカン怪人軍団デース。ちょっとゲルマン味が混じったくらいなんてことありまセン!」
「“ちょっと”か!?」
 もうどう見ても完璧にゲルマン怪人じゃねえか! 周は容赦なくつついた。
「黙りなサイ!! なんデスかゲルマン味が入ったくらいでガタガタとやかましい! 姿が多少変わったとて、イッヒたちの胸にはアメリカンのゼーレが熱く燃えているのデース!!」
 アメリカンコンドルは強弁した。
「……あー、えっと……」
 一方、高寿はショート寸前であった。
 平安アヤカシエンパイア育ちの高寿にとって、アメリカンだのゲルマンだのの外つ国の概念は存在しない。
 『ご当地怪人』なる連中が土地の文化の産物や地勢の概念を存在の根幹や戦闘技術の根幹に置いている奴らである、ということ自体は彼女にもおぼろげに理解できてこそいたが、正直なところゲルマンもアメリカンも彼女の知識の外にあるものだ。本当になにを言っているんだか高寿には理解できない世界の会話だった。
 だが、それでもすこしだけわかったことがある。
「そうか……手前にも手前の矜持があるのか……」
 話の内容から類推するに、この『あめりかんこんどる』なる鳥の妖怪は、『げるまん』なる奇天烈な概念に染められているのだろう。
 しかし、この鳥妖怪はげるまんになりながらもその存在の本来の根幹である『あめりかん』であることを忘れることなく、その魂を輝かせているのだ。高寿はそう解釈した。
「なるほどな……あめりかん鳥妖怪。我、手前のことがすこしだけわかった気がするよ」
 高寿は仄かに目を伏せる。
 ――彼女は平安アヤカシエンパイアに育った弓落の家の息女だが、その本来の生誕のルーツは宇宙スペースオペラワールドに在る。
 宇宙と平安のふたつのアイデンティティをもつ彼女は、いま目の前にいるこの鳥妖怪もまたげるまんとあめりかんのふたつのアイデンティティに悩んでいるという事実に共感し、己の境遇を重ねようと
「するわけねぇだろうが!!!!!!!!!!!!!」
 高寿は地の文を蹴飛ばして叫んだ。
「ふざけんじゃねえぞ、手前ら!!!!」
 高寿はもう限界であった。
「黙って聞いてりゃさっきから延々訳分かんねえことばっかほざきやがって……大体なんなんだよ『私立暗黒じゃすてぃす女学園』って!! 意味がわかんねえよ!!!」
「は???? 我々ダークネスを示す『暗黒』と偉大なる大首領グローバルジャスティス様のお名前から『ジャスティス』を頂いた素晴らしい名前デスが???」
「うるせえ!!!! 知るか!!!」
 怒りの咆哮がアメリカンコンドルの反論を封殺する。
「ア゛ーッ!!! クソ、もうダメだ。もう我慢できねぇ!!」
「奇遇だね、アタシもだよ!」
 とうとうブチギレた高寿の横に並び、周が苦笑いした。
「全員ぶっ潰す!!」
「ああ、いくぞ!」
 かくして、ユーベルコードの力が爆発する!
「おおおおっ!」
 瞬間、周は炎を纏った。――瞬間、燃える緋色は鎧と化す! 紅炎装纏オーバーヒート
「はあああああっ!!」
 続けざま、高寿は怒りに任せて杖を振りかざす! 綺羅夢河杖プリンセス・ロッドから溢れる☆きらきら☆の光。光の中から現れる奇怪な触手群!
「ブルッ!? なにブルグかあの気持ち悪いのは!!」
「ギエーッ食われるフルトーーーッ!!!」
 びちゃびちゃと粘ついた音をたてながら広がった触手群が一斉にゲルマンアメリカン怪人軍団へと襲い掛かる!
シャイセShit!! ……怯むなデース!! アメリカン怪人の意地を見せなサーイ!!」
「オ、オオッ!」
「ハイル・ジャスティス!」
「グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」
 そのおぞましさに一時は戦列を乱しかけたゲルマンアメリカン怪人軍団であったが、アメリカンコンドルは鋭く声を飛ばして怪人軍団の士気を高める。勇敢さを取り戻したゲルマンアメリカン怪人軍団は、鬨の声をあげながら触手群へと向かって前進した。
 ――しかし!
「なめんじゃねえぞッ!」
「グアーッウエルダン!!!」
 が、ごッ!! ――衝撃! 打撃の威力にハンブルガーマンが吹き飛んで爆ぜる!
「ナヌ!?」
「思った通りだ。てめぇら、あん時・・・よかぜんぜん弱ぇ!」
 無論、その拳を打ち込んだのは周である。
 ハンブルガーマンを撃破した周は素早くダッシュしながら次なる敵との間合いを詰め、更に一撃! フランクフルター・ホットドッグ男の胸郭を撃ち抜いてこれも爆散させる。
「な、なんだ……! なぜ我々がこうも容易くブルグ!?」
「簡単なハナシさ。ブレてんだよ、お前らは!!」
 困惑する怪人軍団の中を更に突き進み、周の拳がまたもハンブルガーマンを打ち砕いた。
「ゲルマンなんだかアメリカンなんだか……帰属すべき地を見失った怪人なんぞに負けはしねえ!」
「そうだそうだ! 手前らみてぇなワケわかんねえ連中にやられてたまるかよ!」
 周の攻勢と同時に高寿が呼び込む触手群もさらに勢いを増した。快進撃! 二人の攻撃がゲルマンアメリカン怪人軍団を打ち崩してゆく!
「おのれ! ならばこれでどうデスか!」
 その状況に対応すべく、アメリカンコンドルはその背で翼を広げた!
シュテルベンダーイ!!」
 瞬間、加速と共にアメリカンコンドルは飛び込む! その翼を刃と成し、敵を切り刻む必殺のサイキック戦法・天狗翼斬!
「……!」
 そのとき、周の瞳が細まった。
 向かい来る殺気。疾った風。風切りの音。迫る刃――周は、この攻撃を知っている。
 だから今。今回は、周は間に合った。
「ッ、でえいッ!!」
「ナヌ!?」
 交錯の瞬間、周は迎撃の拳を打ち出していたのだ。
 飛び込んで来たアメリカンコンドルの頭部を、顎下から打ち上げるように。拳を叩き込む。
「……雪辱成功、ってトコかね」
「シャイセ!」
 たまらずアメリカンコンドルは攻撃を中断し、後方へと飛び退った。
「逃がすかッ!!」
 そして、高寿は怒りと共に触手の展開を増やし、アメリカンコンドルを追う。
「クッ……多少の弱体化は受けているとはいえ……! なかなかやるようデスね、いまの灼滅者は!」
 苦々しく呟くアメリカンコンドル。その身体には既に無視できないダメージが刻まれていた。
「待てッ!」
「逃げる気かよ、烏天狗! そうはいかねえぞ!」
 後退してゆくアメリカンコンドルを追って、二人は走り出す。

 かくして、アメリカンコンドルとの戦いは決着へと近づきつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

睦沢・文音
心情・語りかけ
「ダークネスが子を為せるようになること」それが、かつてグローバルジャスティスさんが掲げた正義でしたね。
超機械『受胎告知』によるアフリカンパンサーさんの懐妊も試行錯誤の一環でしょう。
ですが、グローバルジャスティスさんも持っていたというラグナロク能力『超機械創造』は、人類の文明がいずれ未来において到達するであろう超機械を創りだす能力とのこと。
ダークネスによる見えざる圧政の下でも、人類は超機械『飛行機械』に追いついて見せました。
スレイヤーとエスパーとダークネスが共存する今の世界なら、『受胎告知』に追いつき、追い越す事もいつかできるかもしれません。
この世界サイキックハーツよりも進んだ科学技術を持つ世界の助力を得ることも、今なら可能でしょう。

戦闘
語りかけを歌としてUC【子守歌】を使用します。
先読みしても語りかけの続きを理解させることで戦意を削ぎます。
「貴方達の 野望は今を生きる私達が引き継ぎます」
「だから、もう、お休みなさい」

連携、アドリブなどお任せします。


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……は?
おいちょっと待てヤァ怪人!
すっかり他の猟兵に(ツッコミの)先を越されてるけど!
完全に国籍が渋滞してるじゃねーか!!
ここは!日本の!武蔵野だろう!?
それをアメリカンだかゲルマンだか……地元住民を無視した基地建設はんたーい!
そう『コミュ力』で盛大に煽り散らすよ!
まあ正直こんなので奴が怯むとは思えねぇ、取り巻き怪人をけしかけてくるのは目に見えてらぁ。
けどなぁ、それで召喚するのは【アメリカ】属性の怪人どもだろ?
アンタのゲルマン魂はそこまで浅いもんだったのかい!?
ともかくこのカオスな状況を逆用して口撃しつつ、『電撃』の『範囲攻撃』で雑魚怪人ども諸共ぶっ飛ばすよ!


魔法術士・マジシャン
個性的ユニークな敵……
興味深い……

私はソロモンの悪魔の魔法使いで魔弾術士……
魔法を使うことには自信がある……

ドラゴンの使い魔に前衛を任せ、敵を私に近付けさせない様守らせる
私は魔法の箒に跨って箒飛行
魔力を魔力溜めし、マジカルロッドから魔法の弾丸を発射して氷属性攻撃する
攻撃の隙は、猫の使い魔ウイングキャットの攻撃でカバーさせる

賢者の石で魔力増強し、魔法「フリージングデス奥義」で攻撃する
瞬間全体攻撃のこの魔法なら、気が付く前に全身氷漬け……
たとえ未来を見て来ても、何をされたか分からないはず……

可能なら敵の氷漬け凍死体を持ち帰りたい……
素材を剥ぎ取ったり、魔法や薬の実験体にする……興味深い


秋風・葉月
やれやれ……今時再生怪人なんて1話の尺も稼げませんわよ?
おまけにアメリカにゲルマン混ぜて……あなたの『ご当地』は一体どこなので?それでも『ご当地怪人』でして?

【鋼鉄拳】を使い戦いますわ。
召喚される軍団をいなしつつ各個撃破。時折サイキック銃で牽制もしましょう。集団戦はヒーローものではよくある事、腕の見せ所ですわ。
アメリカンコンドル自体も無視しないようにはしつつ戦いましょう。ま、キリがなくなったり相手が焦ったところで狙うのが一番でしょうか?
ところでこいつら倒したら爆発するのかしら?

これでも灼滅者の1人、秋葉原のヒーロー。舐めないで欲しいですわね。



「S-H-I-T!!! 灼滅者スレイヤーどもぉッ!!」
 ――暴風、ッ!! 私立暗黒ジャスティス女学園に嵐が吹き荒れる!!
 ここに至るまでの戦いの中で傷ついたアメリカンコンドルは、半ば狂乱するほどに怒っていた。
「よくも、よくもよくもよくも! イッヒミーたちのジャマばかり!!」
 ゲルマンカラーの衣装を振り乱しながら、アメリカンコンドルは吼える。
「くっ……! 相変わらず、ものすごいサイキックエナジー……! さすが大幹部アメリカンコンドル!」
 吹き荒れる風に抗いながら、睦沢・文音(f16631)は呻いた。
「……ちょっと待てやァ!! あれのどこがアメリカンなんだよ!!」
 しかしてその一方。Ichイッヒってドイツ語言ってんじゃねえか! 数宮・多喜(f03004)は我慢できずに突っ込む。
「アメリカン、だけど、ゲルマン……? ……個性的ユニークな敵……」
 戦場へと参じた魔法術士・マジシャン(f44182)は、敵の巻き起こした暴風の中をくるくるときりもみ回転しながら回転する視界の先にアメリカンコンドルの姿を見た。
 べたんと地面に墜落してからマジシャンは起き上がり、帽子をかぶりなおしながらマジシャンはあらためてアメリカンコンドルに対峙する。
「興味深い……」
「たしかに、なかなかやるようですが……所詮、過去のダークネスでしょう?」
 マジシャンがアメリカンコンドルの存在に興味を持つ一方で、秋風・葉月(f44081)は薄く笑む。
「今時再生怪人なんて一話の尺も稼げませんわよ?」
「油断しないでください、ああ見えて……あの人、ものすごく強いです!」
 文音は3人に注意を促した。
 灼滅者として戦っていた現役のころ、文音もまたご当地怪人勢力との最終決戦に臨んでいた。大首領グローバルジャスティスそのひととまみえてすらいる。
 ご当地怪人勢力は見た目や言動こそコミカルでゆるい者たちが大多数を占めていたが、しかしてその組織力と戦闘力は油断できないものがある。文音はそれを実体験からよく理解していた。
「たしかにこの風はすげぇけど……!」
 吹き荒ぶ風は“天狗の惑わし”とも言われる高威力のサイキック攻撃だ。多喜も無数の強敵と対峙してきた猟兵であるが、彼女をもってしてもこの風の暴威を跳ね除けるのは容易いことではない。
「はい……。彼は元々日本のダークネス、“烏天狗”だったんです。この風を操る力もそこから……」
「あッ!? 日本人!?」
 なんだそりゃ、と多喜は仰天した。
「日本人なのに、アメリカンで……しかもいまはゲルマンなんですの?」
 何事ですのよそれ。葉月は呆れて肩を竦めた。
「あの方の『ご当地』は一体どこなので?」
「そうだよ! 完全に国籍が渋滞してるじゃねーか!!」
「シャラーーーップ!! これには深い事情があるのデース!!!」
 激怒! アメリカンコンドルが咆哮する!
「……ご当地怪人。本来なら、ひとつの『ご当地』に固執して、ちからを高めるダークネス……」
 その一方で、マジシャンはアメリカンコンドルへと更に熱いまなざしを注いでいた。
「けど、あのひとは日本とアメリカ、そしていまはドイツのみっつのルーツを組み込んだ……いわばゲルマンアメリカン烏コンドル天狗ともいうべき存在…………混沌のきわみ、ね」
 ――持ち帰りたい。
 せめて羽の一枚でも素材として回収しておきたい。
 マジシャンは目を輝かせながら呟いていた。
ズィーユーたち……!」
 そのとき、不意に風が止む。
「よくもイッヒミーをここまで苛立たせマシたね……!」
 瞬間、再び風が吹いた。
「ッ……!」
「これは!」
 否、吹き抜けたのは単なる風ではない。急加速と共に猟兵たちへと向かって飛び込んで来たアメリカンコンドル――その背に開いた鉄の翼だ!
シュテルベン!!ダーイ!
 天狗翼斬! 触れればたちまち両断される刃の風が、猟兵たちへと襲い掛かる!
「危ねえっ!」
「きゃあっ!」
 多喜と葉月は咄嗟に横へ飛び退いて躱す。
「フン……。運のいい奴らデス! デスが、ここから先はそうはいきまセーン!」
 アメリカンコンドルはぱちりと指を鳴らした。
「来なさい! 我がアメリカン怪人軍団!」
「ハンブルグーッ!!」
「フランクフルターッ!!」
 アメリカンコンドルの合図に応じて、校舎内からダークネスたちが現れる!
「ウオオオーッ!! 100%ビーフパワーッ!!」
 ドイツ発祥のハンブルグステーキをバンズに挟んだハンブルガーをパワーの源とするハンブルガーマンたち!
「お任せください教務主任! 我々のご当地パワーで奴らを血祭りに上げてやるフルト!」
 同じくドイツ発祥のフランクフルトソーセージをパンに挟んだフランクフルター・ホットドッグをエネルギー源にするフランクフルター・ホットドッグ男の集団だ!
 彼らはアメリカンコンドルが誇るアメリカン怪人軍団であった!
 黒・赤・黄色のゲルマンカラーを纏ったアメリカン怪人軍団は猟兵たちを威圧するように戦闘態勢の構えを見せる!
「ちょっと待て!!!!」
 ここで多喜が物言いをつけた。
「なんデース!?」
「そいつら本当にアメリカン怪人か!?!?」
「黙りなサーイ!!! ハンバーガーもホットドッグもアメリカのものデース!」
「じゃああのドイツ国旗みてーな色の衣装なんだよ!!」
「ちょっとゲルマン味が入っただけデス!」
「まあ、ハンバーグ……ハンブルグステーキもフランクフルトソーセージもドイツのものですからね」
「っていうことはあれ実質ゲルマン怪人なんじゃないの?」
「シャラップ!!!」
「ふたつの属性を兼ね備えたご当地怪人…………。……あれも興味深い」
「ええい、野暮な物言いはやめるブルグ!!」
「何にどう文句をつけたところで、お前たちが我々のアメリカンパワーで粉砕されるのはもう確定事項フルト!」
 怪人軍団がざわめき、いきり立つ! そして響くウォークライ。それとともに怪人軍団は猟兵たちへと押し寄せた!
「ふっ。数を揃えたくらいで私たちに勝てると思いまして?」
 だが、ここで葉月が前に出る。前進と同時に撃ち出すストレートの一撃! 拳がハンブルガーマンを吹き飛ばす!
「おのれ!」
「この程度っ!」
 続けて襲い掛かるフランクフルター・ホットドッグ男を廻し蹴りで撃退!
「集団戦はヒーローものではよくある事、腕の見せ所ですわ!」
「シャイセ!」
「怯むな! 奴らをブラッドフェスティバルにしてやるのデース!」
「そう簡単にいくかよ!」
「……行って。ドラゴン」
『ガオオオン!』
 鬨の声をあげながら雪崩れ込むように攻め寄せるアメリカン怪人軍団。
 対抗するように、多喜とマジシャンの使い魔ドラゴンが怪人軍団を迎え撃ちに飛び込んで、ここに乱戦の模様が幕を開けた。
「オオオオオオオッ!」
 そして――アメリカンコンドル自身も軍団と共に猟兵たちへと斬り込んでゆく!
「く、っ……! こいつ!」
「イッヒの実力を知らぬとは! ヒストリーのスタディが足りまセンね、灼滅者スレイヤー!」
「わあ、っ……!!」
 その一挙手一投足に強烈なサイキックを宿した幹部級ダークネスの実力は、決して侮っていいものではない。凄まじい加速とともに襲撃する翼と鉤爪は、鋭く猟兵達を責め苛んだ!
「なら……これで、どう……!」
 マジシャンがマジカルロッドを振りかざす。杖に収束した氷の魔法力が弾丸と化し、ばらばらと撃ち出された。
「グアーッ冷凍ブルグ!!」
「グアーッ低温保存!!」
 撃ち抜かれたハンブルガーマンやフランクフルター・ホットドッグ男たちは次々にその姿を氷像へと変えた。
 ――だが!
「フン……! デーモンどもデスか! 灼滅者スレイヤーの味方などして!」
 アメリカンコンドルはその身から強烈なサイキックエナジーを放ち、簡易な防壁として魔法弾を弾いたのだ。
「シュテルベン!!!」
 そして、反撃!
 怪人軍団だけであれば猟兵たちの力で蹴散らすことも容易であっただろう。しかし、そこに上位ダークネスであるアメリカンコンドルが混ざってくるとなれば話はまるで異なってくる。怪人軍団の激しい攻勢はさらに勢いを増しながら猟兵たちを襲った。
『ガオオオン!』
「……! ドラゴン……!」
 まずマジシャン使い魔のドラゴンが戦闘不能に追い込まれた。刻まれた傷を重く見て、使い魔ドラゴンは一旦後方へと退いてゆく。
「くっ……! こいつ、国籍メチャクチャなくせにたしかに強え!」
「再生怪人なのに、ここまでの実力とは……!」
 多喜と葉月も徐々に押されていた。
 アメリカンコンドル自体の戦闘出力の高さもさることながら、周囲を囲む怪人軍団が猟兵たちの行動を巧みに阻害してくるのだ。そのせいで猟兵たちはアメリカンコンドルのもたらす殺傷ダメージを躱しきれていなかったのである。
「HAHAHA……! 先程までの勢いはどうしまシタか!」
 調子づくアメリカンコンドル! その攻め手は更に苛烈さを増してゆく!
「……」
 ――そのときである!
「聞いてください、アメリカンコンドルさん!」
「……ナヌ?」
 ここで突如、文音がアメリカン怪人軍団を押し退けてアメリカンコンドルの前に飛び出したのである。
「思い出していただきたいんです。あなた達の目的を……目指すべき未来を」
「……何が言いたいデス?」
 訝しげな顔で、アメリカンコンドルは文音を見下ろした。
「『ダークネスが子を為せるようになること』……人類への圧政で闇堕ちを促すのではなく、ダークネス自身が命を繋げるようになる未来」
「……!」
「それが、かつてグローバルジャスティスさんが掲げた正義でしたね」
 文音の言葉とその口から出た大首領の名に、アメリカンコンドルと怪人軍団が静まる。
(……ところで、ちょくちょく出てくるけどグローバルジャスティスさんって何者なんだい?)
 その裏で、多喜はこっそり葉月に尋ねた。
(グローバルジャスティスは……私の先輩灼滅者スレイヤーたちが戦ってた『ご当地怪人』勢力のトップですわ)
(今だと……歴史の教科書にも載ってる……)
 同じくサイキックハーツ世界この世界にルーツを持つマジシャンも多喜へとそっと言い添えた。
「超機械『受胎告知』によるアフリカンパンサーさんの懐妊も試行錯誤の一環でしょう」
「……何が言いたいデスか」
「この『超機械』は、グローバルジャスティスさんの持っていたというラグナロク能力『超機械創造』……人類の文明がいずれ未来において到達するであろう超機械を創りだす能力が生み出したものでした」
「だから――」
「かつての時代!」
 口を挟もうとするアメリカンコンドルへと、最後まで聞け、と言わんばかりに。文音は力強く叫ぶ。
「ダークネスによる見えざる圧政の下でも、人類は超機械『飛行機械』に追いついてみせました!」
「……」
「ですから……スレイヤーとエスパーとダークネスが共存する今の世界なら、『受胎告知』に追いつき、追い越す事もいつかできるかもしれません」
「ナ、ヌ……!!」
 アメリカンコンドルたちに衝撃が走った。
(……どういうことだい?)
 首をかしげる多喜。
我々ダークネスは、子を成すことができず、繁殖するには……人間を闇堕ちさせて、ダークネスにするしかなかった)
 マジシャンが多喜に補足説明を加える。
(……だけど、唯一の例外が……ご当地怪人幹部のアフリカンパンサーと、その娘ドーター・マリア)
(ええと……教科書で読みましたわ。グローバルジャスティスはダークネスが生殖可能になる機械を作っていたと……)
「馬鹿な……! そんな、グローバルジャスティス様もいないというのに、そのようなふざけたたわごとが!」
「いいえ、可能性はあります」
 訝しむアメリカンコンドルを、文音は強く睨んだ。
この世界サイキックハーツよりも進んだ科学技術を持つ世界の助力を得ることも、今なら可能ですから」
「ナヌ……!!」
 ご当地怪人勢力の大首領、グローバルジャスティスの悲願であった人類の抑圧に依存せぬダークネスの繁栄は、今であればそれを叶えられる可能性があるのだ、と文音が主張する。
「だから……もう、こんなことする必要なんてないんですよ」
「……グローバルジャスティス様の、理想を……今の世界ならば、叶えられる……?」
 アメリカンコンドルと怪人軍団は愕然としていた。
 かつてその夢に殉じたアメリカンコンドルなればこそ、それがどれほど素晴らしき未来なのかは理解できる。
「貴方達の野望は、今を生きる私達が引き継ぎます」
 だから、もう、お休みなさい。
 ――そうして、文音は瞑目した。
「馬鹿な……! 本当なのかブルグ……!?」
「あ、アメリカンコンドル様! 今の話が事実なら……」
「シャラップ!!」
 アメリカンコンドルが怒鳴った。
「ズィーの言いたいことはわかりマシた……! デスが、それを聞いたとてイッヒがここで退く理由にはなりまセン!」
「ええ、そうでしょうね。……ですから、私たちも今は全力であなたたちを骸の海へと還します!」
 そして、文音が振り返る。
「皆さん! あの人たちは動揺しています。今が攻め込むチャンスですよ!」
「ああ!」
「ええ! いきますわよ!」
「……おっけー」
 かくして、ここにアメリカン怪人軍団との最後の交錯が始まる。
「いくよ……! 全力全開だあっ!」
、膨れ上がるサイキック! 握りしめた多喜の拳に、電光が満ちる!
「アメリカンだかゲルマンだか……地元住民を無視した基地建設! はんたーい!」
 多喜はアメリカン怪人軍団の只中へと飛び込みながら、その拳を地面へと叩きつけた。
「グアーッ通電!!」
「グアーッ感電死!!」
「グアーッ10まんボルト!!!」
 大地を伝って迸ったサイキックエナジーの電光は、爆発めいて広がりながらアメリカン怪人軍団をまとめて呑み込んでゆく!
「こっちも…………ドラゴンのぶんの、おかえし……」
 続けざま、マジシャンもまた手にした杖から魔法力を放射した。
 そこに紡がれる術式こそ――フリージングデス奥義! 絶対零度の凍気をもたらす上級の氷属性魔法!
「グアーッ凍死!!」
「グアーッぜったいれいど!!!」
「グアーッいちげきひっさつ!!!」
 広がる凍気にアメリカン怪人たちが悲鳴を上げながら固まり、次々に動きを止めてゆく!
 ――しかし!
「ファーーーック!! ナめるなよ、灼滅者スレイヤーッ!」
 電光と冷気を切り裂いて、アメリカンコンドルは飛んだ。
 その躯体は既に満身創痍とも言える状態であった。
 ここに至るまでの猟兵達との交錯で蓄積されたダメージは決して無視できるものではなく、今しがた浴びせられた雷と氷もダメ押しするように確実なダメージを与えている。
 しかし、それでも意地があった。
「オオオオオオオオオオオッ!! グローバルジャスティス様に栄光あれェェェッ!!」
 残る最後の力を振り絞り、せめて相討ちでも。灼滅者たちを撃ち下すべくアメリカンコンドルは飛ぶ!
「意地張れるのが……自分たちだけだなんて思ってんじゃないですわよッ!!!」
 そして――それを迎え撃ったのは、葉月であった。
「シュテルベン!!」
「だあああああっ!!!」
 突進するアメリカンコンドルめがけて、葉月は渾身の力で拳を打ち出す。
 激突の一瞬。力と力がぶつかり合った、刹那。
「……あとは、たのみマシたよ」
 アメリカンコンドルは激しい爆発を起こしながら消滅し、骸の海へと還った。
「……ッ、は……!」
 葉月は爆炎を振り払い、荒く息を吐き出してから勝利のポーズを決める。
「これでも私、ヒーローですの……舐めないで欲しいですわね」
 震える足で強がってから、葉月は一度深呼吸して態勢を整えなおした。
「やれやれ……初っ端からえらい強敵だったな。ここもこの先もっとヤバい奴がいるのか?」
「ええ。この学園といまのアメリカンコンドルさんのゲルマン化状況をみれば……間違いないでしょう」
 サイキックハーツ世界を知る猟兵たちの脳裏には、ある一人のダークネスの姿が思い浮かんでいた。
「ひえー……。なんかすごいなこの世界。こないだもすっげぇ爺さん出てきてたけど、あんな奴がごろごろいるのかぁ?」
「さすがにこんなひっきりなしに出てきてないですからね!」
 そこまで死と隣り合わせの青春じゃなかったですよ、と文音が訂正した。

 余談ではあるが。
「……」
 できればアメリカンコンドルを持ち帰りたかったマジシャンであったが、アメリカンコンドル自体は爆散して消滅してしまっていた。
 ざんねん、とマジシャンは肩を落とす。
「……これでがまん、かな」
 そうしてから、しかたないなとばかりにゆるくかぶりを振って。マジシャンはなんとか残ってくれた冷凍ハンブルガーマンを不承不承テイクアウトすることにしたのであった。

 かくして。
 猟兵達は私立暗黒ジャスティス女学園第一の関門、アメリカンコンドルの打倒に成功する。
 そうして猟兵たちは黒幕の打倒を目指して先へと進んでいくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『朱雀門高校女子生徒』

POW   :    ブラッドウイング
【背中から】から【魔力の血】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
SPD   :    エアリアルスラッシュ
レベル×5km/hで飛翔しながら、【朱雀門高校式クルセイドソード】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ   :    ブラッディウインド
【血の翼】を使ってレベル×5km/hで飛翔しつつ【赤き血の風】を放ち、命中した対象全員の【生命力】を活性化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「アメリカンコンドル先生!!」
「ああ……なんてこと!」
「とってもいい先生でしたのに!!」
 アメリカンコンドルが爆死し骸の海へと還った次の瞬間。私立暗黒ジャスティス女学園の正面扉が開いた。
 そこから現れてきたのは、復活ダークネスオブリビオンとして再生してからグローバルジャスティス様の理念に共感し、私立暗黒ジャスティス女学園の一般生徒たちの洗脳と闇堕ちを促進するために先輩女生徒たちとして学園に紛れ込んでいた旧朱雀門高校のヴァンパイア女生徒たちだ。
 赤い腕章と学帽を付け足され軍服めいた様相となったその衣装は、彼女たちもまたゲルマン化の影響を受けていることを示していた。
「おのれ……よくもアメリカンコンドル先生を!」
「わたくしたちの未来にグローバルジャスティス様という希望を教えてくれた先生をよくも!」
 ヴァンパイア女生徒の集団は敵意を露わにしながら、その背に赤く翼を開いて猟兵たちを睨む。
「許しませんわ……!」
「アメリカンコンドル先生の仇を取りますわよ!」
「ええ! グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
「グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
 そして、声が唱和する!

 かくしてここに、次なる戦いが幕を開ける!
フェル・オオヤマ
SPD
・心境
恩師の敵討ちという訳か!だけど一般人を巻き込もうとした時点で貴方達を許す訳にはいかない!ここで倒れてもらうよ!

・戦闘
正門から出てきたね!纏まってる内に纏めて叩く!
マテリアルロッドを装備しつつ[我竜・竜尾氷月弾]を発動!正門から少し離れた場所に魔力塊が着弾するように尻尾でスパイクして魔力塊を放つ!
一つ覚えてから骸の海に還りなさい!固まって来ると出待ちされて一掃されると!
【凍結攻撃/風を操る】の技能を使用

敵も空を飛んで攻撃してくるのならかかって来い!空中戦なら私の独壇場だよ!
と挑発しつつ敵の攻撃を捌き時にはビームシールドで防ぎながらカウンターを狙います

他キャラとの連携・アドリブ歓迎


太目・乃子
【POW】で勝負。

心情
自分も一歩間違えれば、否、意図的にそうすることができるのならば確実に、両親をビハインドオブリビオンとして現世に縛り付けてしまっていただろう。大切な人にもう一度会いたいという願い自体は共感できる。
ゲルマンヴァンパイア軍人風女子高生……属性が渋滞を起こしてる。もうちょっとそぎ落とした方がいい。

戦闘
UC【ストライク・イェーガー】を使用し、敵群に対して射撃攻撃を仕掛けます。
2回の方向転換をしきった相手から狙い撃ちにします。
「速度は速くても、機動力が低い」
「そんな回避運動では、七面鳥撃ちにしかならない!」

連携・アドリブなどお任せします。



「アメリカンコンドル先生の仇よ!」
「グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
「グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」
 ざ――っ! 暗黒ジャスティス女学園の校舎から颯爽と飛び出す女子高生ヴァンパイアの集団!
「なるほど事態は把握した! 恩師の敵討ちという訳か!」
 その戦場へと至り、フェル・オオヤマ(f40802)は状況を把握する。
「ん……それだけじゃない」
 フェルの隣で太目・乃子(f40815)が銃を抜く。
「ここのオブリビオンの狙いは……大首領グローバルジャスティス」
「グローバルジャスティスぅ!?」
 フェルは仰天した。
 ――この世界での戦いに備えて、彼女もまた乃子と同様にサイキックハーツの歴史は予習してきている。
 グローバルジャスティスといえば、ご当地怪人と呼ばれる勢力の大首領。相当に強大な存在だったはずだ。
「……敵の目的は、それの復活ってこと?」
「そう言ってた」
 乃子は頷いた。
「ご当地怪人たちは……大首領グローバルジャスティスに、ものすごい忠誠を誓ってるみたい。さっきやっつけたやつもそうだった」
 悲痛なまでの覚悟を以って猟兵たちの前に立ちはだかったアメリカンコンドル。その姿を乃子は思い返す。
 これほどまでに慕われる人物だ。怪人たちにとっては、きっと大切なひとだったのだろう。
「……気持ちは、ちょっとだけわかる」
 失われたものを取り戻そうともがいてしまうその気持ちを、乃子は想う。
 自分とて、できるのであれば同じように“失ったもの”を求めていただろうから。
「あの子たちは怪人じゃないっぽいけど……取り込まれてるもんねぇ」
 いまここで猟兵たちに迫り来るダークネスはヴァンパイアたちであったが、身に着けた制服のゲルマン化度合いを見れば実質ご当地怪人であるとも言えよう。
「ま、そうだね。私もそういう気持ちはわからないわけでもないけど――」
 フェルはケルベロスコートの内側から、一振りの杖を引き抜いた。
 その杖先に、魔法力の光を灯す。
「だけど、一般人を巻き込もうとした時点で許すわけにはいかない!」
「それはそう」
「あなた方になど許されなくともぉっ!」
「わたくしたちにも、私たちの理想と正義がありましてよ!!」
 激昂。叫ぶ声と共に女子高生ヴァンパイアたちはその背に赤く翼を開いた。戦闘態勢だ!
「悪いけど、こっちにだってやるべきことがあるのさ!」
「うん。この世界も……わるいやつらの好きにはさせない」
 二人のケルベロスは、敵の動きに反応してそれぞれの手にする得物へと力を注いだ。
「纏まってる内に纏めて叩く!」
「了解……。それじゃ、まず牽制する」
 乃子が先手を打って引き金を引く。ダダダダダ、ッ! アサルトウエポンが火を噴いて、弾頭をばら撒いた。
「ちぃっ!」
「こんな豆鉄砲で――」
「おっと、そうじゃないんだ! 本命は……こっち!」
 銃撃に敵陣が怯んだ一瞬。その隙を逃すことなく、フェルは力を解放した。
「よいしょぉっ!」
 瞬間、極北の風が吹く。フェルの眼前で大気がぱきぱきと音を鳴らし、魔法力によって力が寄り集まりながらそこに青白く光る魔力球が形成された。
「いくよっ! 竜尾氷月弾グラキエススパイク!」
 フェルはその場でぐるりと一回転すると、ケルベロスコートの裾から突き出した竜尾をしならせ、力強く魔力球を弾き出した!
「ナヌ!? あれは……!」
「一つ覚えてから骸の海に還りなさい!」
 撃ち出された魔力球は急加速して飛んでゆき、ヴァンパイア女子高生たちの固まる学園昇降口へと着弾する!
「ア……!」
「固まって来ると出待ちされて一掃される、と!」
 爆ぜる魔法力! それは絶対零度の凍気となって周囲空間に吹き荒れた。巻き込まれた女子生徒たちが悲鳴をあげる間もなく氷像と化して砕け散り、骸の海に還ってゆく!
「ないすすぱいくー」
 一方、乃子は冷徹に引き金を引き続けていた。牽制用のアサルトウエポンから威力に優れるライフルへと持ち替え、フェルの魔法弾から逃れたヴァンパイアたちへと追撃を仕掛ける。
「シャイセ……!!」
 女子高生たちは口汚く叫び舌打ちした。
「ゲルマンヴァンパイア軍人風女子高生…………属性が渋滞を起こしてる」
「お黙りなさい!!」
「先生方の導きでわたくしたちはグローバルジャスティス様の」
「あー、そういうのいいから!」
 フェルは大きな声で叫んでヴァンパイア女子高生たちの台詞を強引にカットした。同時にその背で竜翼を開き、フェルは空中へと舞い上がる。
「ナヌ!?」
「空を飛べるのが自分たちだけなんて思わないことだね! ……くるならかかってこい! 空中戦なら私の独壇場だよ!」
 そして、フェルは剣を抜き放った。銀に輝く刀身! その柄で紅玉が赤く光る。
「おのれ……! わたくしたち相手に見え透いた挑発を!」
「乗ってあげるわよ!」
 対するヴァンパイア女子高生たちは、怒りと共に開いた翼を羽撃たかせてフェルを迎え撃ちに向かった。
「カッとなっても、いいことないよ」
 しかし!
「!」
「アァ、ッ!?」
 フェルのもとへと到達するより先に、ヴァンパイア女子高生たちは次々と墜落を始めた。
「ほら。動きが単純になってるから……そんなんじゃ、七面鳥撃ちにしかならない!」
 ガァン、ッ!! 吼える銃口。疾る弾頭! 撃ち抜かれたヴァンパイア女子高生が、悲鳴を上げて落ちてゆく!
「余計なものがおおすぎるんだ。もうちょっとそぎ落とした方がいい」
 渋滞してる属性もね、と呟いて、乃子はライフルへと次弾を装填した。――ストライク・イェーガー。ユーベルコードの領域までに達した銃撃戦闘の才覚! それが暗黒ジャスティス女学園の生徒たちを射抜いていたのだ。
「くっ……なんですの、この灼滅者スレイヤーども!!」
「こんな強さ……どうして!」
「あのさあ、もう何回も言ってるんだけど……」
 慄く女子高生の脇を通りすがり、すれ違いざまに一撃。また一人骸の海へと還しながら、フェルはうんざりした声で呟いた。
「私達……」
「ケルベロス、なんだよね」
 そして、もう一度銃声。

 ――かくして、女生徒たちとの戦いは幕を開ける。
 その先駆けの役目を果たし、ふたりのケルベロスはダークネスたちへと着実に痛手を与えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

睦沢・文音
【WIZ】で勝負!

心情
(オブリビオンとしてよみがえった以上、彼女たちもまた晴明同様サイキックエナジーを必要とせず生殖すら可能であるはずですが……)
(わざわざ告げるのは酷でしょうか)
あと外見と実年齢が一致しないのは元からですが、2018年からのブランクを経てエセ女子高生感がマシマシに……!
ゲルマンアクセサリーも加味すると、もはやそういうお店のコスプレ感が……!

戦闘
UC【殲術再生歌】を使用し、味方と自分自身を強化して戦闘します。
「相手が自分たちを強化するのなら、それ以上に強化して打ち砕くまでです!」
「なんでもない日常を、守るための力を!」

連携・アドリブなどお任せします。


佐々木・ムツミ
【アドリブOK】
「アメリカンコンドルっていうけどさぁ、その先生結構ドイツ大好きみたいだったけど?」
ムツミは呆れ気味に答える。
果たして彼女らはドイツとアメリカ、どちらをご統治として崇めていたんだろうか…

「でもあたしはヴァンパイアとか大好きよ?血の匂いがプンプンするからね!」
そう言って踊るように刃を回しながら前衛に勢いよく飛び出す。
そしてその勢いでユーベルコードを発動させ、素早い斬撃を打ち込んでいく。

「まぁ、今回血を吸うのはあたしの刃だけどね!」
とても楽しげにムツミは、自分のダメージも気にすることなく刃を振り回し続ける。


淳・周
誰か改名される前に突っ込めや!
…いやほんと洗脳されてるにしても暗黒はねえだろ…元の名前も相当アレだったとかはないだろうし。
女生徒が完全に染まりきる前にサクラはさっさとぶちのめさねえとな!

朱雀門…懐かしいなオイ。
オブリビオンになっても学生ってとこになんだか悲哀を感じるが…それはともかく包囲殲滅狙ってるんだよな?
ならアタシの歌を聞いていきな!とUC起動し如月を掻き鳴らす!
音は全方位に響く。空だろうが反響して巻き起こした火炎旋風で焼き尽くすぞ。
赤き血の風だって蒸発させちまえば効果は多少落ちるんじゃねえか?
剣で斬りつけてくるなら長月にオーラ纏わせ障壁展開しつつ受け流し、ガンガン演奏を加速させていくぞ!



「グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」
「グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」
 ――鬨の声! 咆哮と共に校舎から溢れ出すヴァンパイア女子高生軍団!
「アメリカンコンドル先生の敵討ちよ!」
「灼滅者……私たちはお前たちを絶対に許さないっ!」
 ヴァンパイア女子高生たちは鋭い殺気を放ちながら、猟兵たちへと牙を剥く!
「おー……雁首揃えて出てきやがった。ありゃ元朱雀門の連中か?」
 懐かしいなオイ、と。淳・周(f44008)は睦沢・文音(f16631)の脇腹を肘でつついた。
「そうですね……。女学生でヴァンパイア。間違いないと思います」
 文音は頷いた。
「……オブリビオンになっても学生ってとこになんだか悲哀を感じるが」
「未来へ行けなかったダークネスたちですからね。……せめて、骸の海で安らかに眠っていてもらいたいものですけど……」
 それはそれとして。
「ところで当時から思ってたんですけど、ちょっと無理ある人混ざってません? 外見と服装がちょっと一致してない感じがするっていうか……」
「あー……」
 周はむつかしい顔をした。
 朱雀門高校。それはかつてサイキックハーツ世界に存在した学園であり、しかしてその正体は学校という閉鎖空間を利用し立場を巧妙に隠しながら暗躍するヴァンパイアたちの組織であった。
 朱雀門高校は学校という体裁で活動を行っているが故に、組織に所属するヴァンパイアたちの多くは学生という身分を名乗る。
 ――――しかして、その中にはどうしても学生を名乗るには無理がある者もいたのだ。
「その……外見と実年齢が一致しないのは元からですが、2018年からのブランクを経てエセ女子高生感がマシマシに……!」
 目ざとくそういう・・・・者を女生徒たちの中に見つけた文音は、変な笑いを漏らしながら呟いていた。
「まア、そういうことは言ってやんなよ。アタシらだってもういいトシんなっちまったからな。流石に笑えなくなってきたぜ」
 そう言う周は今年で29歳。もはや言い訳のできぬアラサーである。トシでイジるのはやめてやんなよと肩を竦めた。
「ねぇ、センパイたち」
 一方。
「あいつらって強かった?」
 佐々木・ムツミ(f43858)は無邪気な笑顔で二人に尋ねる。
「あー……強さで言やぁ、さっきの烏天狗の方がダンゼンだな。強い奴とやりあいてえなら、この後出てくる奴を楽しみにしてな」
「そうですね。当時なら私たちも苦戦しましたが……猟兵いまの私達なら、苦労する相手ではないと思います」
「そっかー……」
 ムツミはすこし残念がった。
「お前たち……ッ!!」
「なにを談笑しているのですか!」
「その顔に二度と笑みが浮かばないようにしてあげますわ!!」
 しかしてその一方、軍団を展開しながら進むヴァンパイア女子高生たちは戦意を高めながら猟兵たちを包囲殲滅する陣形を組もうとしていた。
「いずれ私たちの仲間となる後輩たちのために!」
「教務怪人の先生方が作り上げてくださったこの暗黒ジャスティス女学園のために!」
「ハッ! やってることはタチの悪いサクラのくせにむやみやたらと燃えやがって!」
「熱血しちゃってるってこと?」
「ヴァンパイアなだけに?」
「うるさーい!」
 展開する女子高生ヴァンパイア軍団! 軍勢は素早く広がり、猟兵たちを包囲した。
「生意気な灼滅者スレイヤーどもがっ!」
「わたくしたちの華麗なる戦略で叩き潰して差し上げますわ!」
 ダークネスたちが猟兵たちを囲んでせせら笑う。開いた赤い翼! 手にした剣を強く握りしめ、ヴァンパイアたちは攻撃態勢へと入る!
「気合入れてやがるな……!」
「ええ、気持ちを奮い立たせておたがいに強化しあってるみたいです」
 対し。
「で、その勢いで囲んで叩き潰そうって魂胆か……そんなら!」
 周はにやりと笑い、スレイヤーカードに封じた武具をその手の中に引きずり出した。
「向こうよりも熱くハデにやってやろうじゃねえか!」
 そこに現出せしは如月の銘を刻んだ一本のギター! じゃあん、と周は掻き鳴らす!
「……いいですね! セッションしましょうか!」
 応じるように、その隣で文音がデバイスを起動した。こう見えても本業サウンドソルジャーです、と文音はウインクしてみせる。
「よしきた! ここは合奏といくかい」
「はい!」
 周と文音が頷きあう。
「そんじゃ、ダークネスども! アタシらの歌を聞いていきな!」
「La――――――――――!」
 ギャアン、ッ! 音圧!
 周の鳴らしたギターサウンドが360°の全周囲へと響き渡る。音に乗せて、文音もまたシャウトした。
「いくぜェッ!」
「ハイ! ハイ! ハイハイハイ!」
 ソウルフルなビートに乗って、文音が拳を高く突き上げながらヴォーカルを盛り上げる。
 音に乗って広がる二人の熱いユーベルコード出力が大気を灼き、空気に熱を帯びさせた。
「まあ……!?」
「なんですの!? この下品な音楽は……!」
「悪趣味の極み!」
 ギターサウンドは女学園の生徒たちには少々刺激が強すぎる。音圧に慄くヴァンパイアたち。気炎に燃え上がっていたダークネス軍団は、叩きつけられた二人の演奏に勢いを殺がれつつあった。
「うるせえ! 下品も悪趣味もオメーらだって大概じゃねえか!!」
 何が私立暗黒ジャスティス女学園だよ! 誰か改名される前にこのネーミングに突っ込めや!
 周は心の底からそもそもなんなんだよこの学校はよ、と憤るやるせない気持ちを叩きつける。
「いやほんとマジでさ、学校の名前に『暗黒』はねえだろ……」
「そうですよね……。私だったら履歴書にこの学校の名前書くのちょっと嫌です」
 胡乱な顔で文音が頷いた。
「元の学校の名前何だったんだ?」
「少なくとも暗黒ジャスティス女学園よりは恥ずかしくない校名だとは思いますけど……」
「やかましいですわよ!!」
「フン! グローバルジャスティス様の理想の素晴らしさを理解できない無知蒙昧な灼滅者スレイヤー風情がよくも――」
 女子高生ヴァンパイアたちが周へと反論を叫ぼうとした――その時である。
「はいはい。油断してるとバッサリだよー」
「ぎ、っ!?」
 斬撃。振り抜かれた一文字の太刀筋に断ち切られ、ヴァンパイア女子高生の一体が骸の海へと還る。
「こ、いつ……!」
「ほらほらどーしたの? アメリカンコンドル先生の敵討ちするんじゃないの?」
 無論、その一撃を見舞ったのはムツミであった。
 血の翼で空を飛ぶヴァンパイア女子高生軍団へと向かって、ムツミは校舎の壁を蹴って三角飛びすることで間合いを詰めて刃の一撃を見舞ったのだ。
「よいしょっと!」
「ギャ……!」
 ムツミはヴァンパイア女子高生の一体を足場代わりに足蹴にすると、そこから更に跳躍して刃を構える。
「ま、そのアメリカンコンドル先生っていうのも……ドイツかぶれで生き方ブレちゃってたみたいけどね!」
「小娘っ!!」
「アメリカンコンドル先生の悪口なんて、許しませんわ!!」
「殺してやるわよ!!」
 集まる殺気! ヴァンパイアたちの敵意がムツミへと集中する。その手に握った剣とともに、女子高生軍団がムツミへと殺到した!
「おっととと……嫌われちゃったかな?」
 しかして一方、向かい来る殺意に対して――ムツミは、嬉しそうに笑う。
「でもあたしはあなたたち大好きよ? ……血の匂いがプンプンするからね!」
「なめるなあッ!!」
 激突! 交錯する剣と剣!
 押し寄せたヴァンパイア女子高生たちは入れ代わり立ち代わり掲げたクルセイドソードで斬りかかり突き込み薙ぎ払い振り下ろしムツミを抹殺しにかかる!
「あは!」
 ムツミはひどく愉しげに哂いながら、そのすべてを迎え撃った。
 しかしてひとり突出して敵の真っ只中に囲まれた状況。襲い来る敵の攻撃のすべてを流しきり無傷で勝利するのは、如何な猟兵であっても困難だ。
 躱しきれなかった刃がムツミの肌を裂く。受け切れなかった剣がムツミの頬に傷を刻む。流しきれなかった衝撃がムツミの身体を軋ませる。
「……ははは!!」
 だが、ムツミは心底からこの状況を面白がっていた。
 傷から生じた痛みがムツミの脳天を刺激する。聞こえる熱いメロディがムツミの背中を押し、その身体に力を与える。まだ斃れない。まだ満足するほど殺りあってない!
 いくつもの傷を負わされながらも、ムツミは僅かたりとも怯むことなく剣を振るい、ヴァンパイアたちを迎撃し続けた。
「こいつ……!」
「本当に灼滅者スレイヤーですの!? 我々ダークネスでなく!?」
「一応ね!」
 哂うムツミの異様さに困惑するヴァンパイアが、振り下ろす“物干し竿”に叩き切られた。
「やってんな、あの後輩!」
「私たちも負けてられませんよ! 音量ボリューム上げていきましょう!」
「ああ!」
 ギャンッ! 跳ねるピックが弦を揺らし、戦場に音楽の熱を広げてゆく。
「いいねェ、本職サウンドソルジャーがいると音の仕上がりが一段違うぜ!」
 弾けるシャウトは熱と炎にかたちを変え、灼熱の風と化してヴァンパイアたちに襲い掛かった。二人分の力が合わさった合奏ユーベルコードはきわめて高い出力を維持しながら周囲一帯を制圧してゆく!
「ア……!」
「隙ありっ!!」
 熱く奏でられた音圧にヴァンパイアが怯んだ様子を見せれば、その隙を逃さずムツミが食らいついてその首を討ち取る。
「いいぞ後輩! アタシらが盛り上げ援護すっからよ、そのままバンバン叩ッ切っちまえ!」
「無理はしすぎないでくださいね~!」
「わかってるって、センパイ!」

 私立暗黒ジャスティス女学園は、今や灼滅者スレイヤーたちによる熱狂の灼滅ショウステージと化していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

弓落・高寿
…え、本気で慕われてたのかよあの烏天狗…いや、手前ら目ぇ覚ませよ!あいつ見るからに妖の類いバケモンだったろ!先生って…おかしいだろ!

理解不能な訳の分からん敵を倒したと思えば続けて出てくるのも理解不能な言動のやつら。それならばこちらも理解不能なもの悍ましき触手をぶつけてやろうか。
こいつら触手、先のよりは弱いが数が多い。その癖追尾してくるという鬱陶しさに、空を舞えども集中力は乱されよう。閉口して、あるいは攻撃で地上に近付けばそこは我が剣で迎え討つ─。
…ところでこいつら触手が何かと言われれば、我にも分からん。なんか呼んだら来る。怖。


魔法術士・マジシャン
魔力を使うと、お腹減る……もぐもぐもぐもぐ

細身で小柄な見かけによらず滅茶苦茶大食い
冷凍ご当地怪人や彼らの持っていた食品を食べている

真の姿
悪魔の翼や尻尾生やす

そんなに繁殖したいなら、私が貴女達をママにしてあげる……えっと、『お前がママになるんだよ』……?
超魔法『受胎告知』を掛け、暗黒吸血JK達を懐妊可能な体に肉体改造する

悲願が叶い、愛する相手との子供を身に宿せる様になったのだから、散る事は無い……例え同性間でもおっけー
UDCシャーマンズゴーストやディバイドビハインド、死霊術士やオブリビオンマシン等、オブリビオンその物の猟兵やオブリビオンを使う猟兵なんて普通……

私と魂の契約して、使い魔になってよ?



「負けてなるものですか!」
「使命に殉じたアメリカンコンドル先生のためにもっ!」
 はためく真紅の翼――! ヴァンパイア女子高生たちは敵意を露わにしながら猟兵たちを取り囲む!
 それに対峙する弓落・高寿(f44072)は――
「……え?」
 困惑していた。
「まさか、本気で慕われてたのかよあの烏天狗……」
 あんな奇天烈な妖怪が『先生』扱いでああも仇討ちに燃える教え子たちがいる……? 高寿は信じがたい光景を前にしてひたすら戸惑っていた。
「ん……。アメリカンコンドルはものすごく実力のあるダークネスだったから……そんなに不思議はない」
 その後ろで、魔法術士・マジシャン(f44182)は先の戦いでアメリカン怪人たちから強奪したハンブルガーをもそもそ食みながら頷いた。
「だからって先生と慕うにゃ奇天烈すぎんだろアレはよ!」
「なんですって……! あなた、アメリカンコンドル先生を馬鹿にする気なの!!」
「許せない……! あんなに素晴らしい先生だったのに!」
 高寿の物言いにヴァンパイア女子高生たちが激昂する!
「いや、おかしいだろ!! 前ら目ぇ覚ませよ!」
 だが、高寿は負けじと言い返した!
「あいつ見るからに妖の類いバケモンだったろ!」
「んー……言ってしまえばわたしたちダークネスもだいたい『バケモン』だし……?」
 マジシャンはもそもそとフランクフルター・ホットドッグを齧りながら小首をかしげた。
「り、理解不能が過ぎる……! なんなんだよこの世界!」
 高寿の眉間に深く皺が寄った。
「フン……! グローバルジャスティス様のもとに集った先生たちの崇高な理念、あなたごとき凡俗の人間には理解できないのよ!」
「皆殺しにしてあげるわ。理解する間もなくね!」
 一方、ヴァンパイア生徒たちは一斉に剣を抜き放ち、二人を包囲するように陣形を形作った。
「ちっ……! どうやらもうやるしかねえようだな!」
「ん……」
 ごくん。(任意の数n)個目のゲルマンアメリカンご当地バーガーを食べ終えたところで、マジシャンは顔を上げた。
「……じゃ、やろっか」
 瞬間、マジシャンの背には蝙蝠めいた皮膜の翼が開く。続けて腰から伸びる悪魔の尾!
「ナヌ……!?」
「あの姿は……」
「あの小娘、まさか悪魔!?」
「なぜダークネスが灼滅者スレイヤーと一緒に!?」
 驚愕の声をあげるヴァンパイア女生徒たち!
 ――そう、マジシャンの正体はこの時代まで生き残ったダークネスの一人。ソロモンの悪魔と呼ばれる種族の者である。
「うわっびっくりした! てめぇもあっち側の連中か!?」
「種族はそうだけど…………立場は、こっち」
 驚く高寿にマジシャンは頷いて、その手の中に魔法杖ケリュケイオンを握る。
「えい」
 術式投射! マジシャンは杖を薙ぎながら魔法力を放った。たちまち形成される氷弾が飛礫となって女生徒たちに浴びせられる!
「く、っ……!」
「こんなもので!」
家畜ニンゲンどもなどに与した裏切り者がぁ!」
 しかして激昂! 恩師を討たれた怒りと仲間であるはずのダークネスが敵対者にいるという状況に怒る女生徒たちは止まらず猟兵たちへと迫る!
「……だーっ、もう!! うっせえなあ!!」
 だが、ここで怒っているのはヴァンパイア女子高生たちだけではなかった。
「ほんっとによぉ!! こっちは初めてきた世界だってのに……我の知らねー専門用語の話ばっかりしやがってさあ!!!」
 高寿が、キレていた。
「だあくねすだのすれいやあだのワケがわかんねえよ!!!」
 その瞬間、昂る高寿の声に応えるように空間に穴が開いた。
「ナヌ……!?」
「てめぇら全員、理解不能なわけわかんねぇモン浴びせられる方の気持ちにもなってみやがれ!!」
 そして、開かれた穴からは正体不明の怪生物の腕が飛び出す! おおおお! おおおおおお! 絶叫にも聞こえるおぞましい音を鳴らしながら、抉じ開けた穴より溢れ出した触手の群れはヴァンパイア女子高生たちを獲物を定めて襲い掛かった!
「なん……なんですかこれは!?」
「ナニコレェ!?」
「知らないよこんな武器ぃ!?」
 悲鳴が交差する! 今度は向こうが困惑する番だ。女子高生ヴァンパイアたちは理解不能な襲撃者の腕に慄き戦列を乱す!
「本当になんなのぉ?!」
「我にも分からん! なんか呼んだら来る!!」
 高寿はそこに生じた敵陣の綻びを見逃すことなく前進した。ダダダダダッ! 触手たちを足場代わりに踏みつけながら素早く駆け上がり、混乱で烏合の衆と化したヴァンパイアたちへと抜き放った剣を叩きつける! 輝く刃は夕月夜暁闇剣!
「なんなのよそれ……なんでそんなの使って平気なのぉ!?」
「我も怖い!」
 切り伏せたヴァンパイア女生徒を蹴飛ばして。しかして高寿は渋面で吐き捨てながら走った。
「なん、て、こと……!」
 ヴァンパイア女生徒軍団は既に総崩れになっていた。
 ここに至るまでの猟兵達との戦いで削られたその戦力はもはや多くは残っておらず、最後に残った者たちもこれで殆どが骸の海へと還されたかたちだ。
 触手の怪物と高寿の剣を逃れ、いまや五体満足な状態を残しているヴァンパイア女生徒たちはほんの二、三名にまで減っていたのである。
「このままでは……グローバルジャスティス様の理想が……!」
「ダークネス同士で命を繋いでゆける理想の未来が……!」
 最後の生き残りとなったヴァンパイア女生徒たちは手を取り合ってさめざめと泣き出した。
 そのときである。
「ダークネス同士で、命を繋ぐこと…………ふーん……ずいぶん大事にしてるんだね、その理想……」
 女生徒たちのもとへと歩み寄ったのはマジシャンであった。
 そして。
「そんなに繁殖したいなら、私が貴女達をママにしてあげる……」
 マジシャンはその手の中に魔法力ユーベルコード出力の光を灯す。
「……えっと、『お前がママになるんだよ』……?」
「……は?」
 何を言っているんだこいつは、という顔をして。ヴァンパイア女子高生たちは顔を見合わせた。
「まず、勘違いしてることがいっこある……」
 マジシャンは告げる。
「あなたたちは……いまは、正確に言うとオブリビオンで、ダークネスとはまた違った存在……」
「えっ」
「ええ……?」
「だから、前のあなたたちとはちょっと生命のルールが違う……だから、こういうことができる」
 次の瞬間、マジシャンは女生徒たちへと光を浴びせた。
「ギャアアアアアアアッ!!!」
「なに……何が起きて――!」
「……『受胎告知』だよ」
 『受胎告知』。それはかつての時代に生殖を行えぬダークネスが子を産み育てられる未来を夢見て作り出されたグローバルジャスティス製の超機械の名である。
 マジシャンは悪魔的な魔法技術力によってそれを模倣再現したのだ。
 ヴァンパイア女子高生たちが本来のダークネスであったならば絶望的な成功率の術式となっていたであろうが、いまの彼女たちはオブリビオン――すなわちユーベルコードによる影響を強く受ける存在である。
 故に――そのユーベルコードは、実用可能なレベルとして復活ダークネスオブリビオンの彼女たちに作用していた。
「この魔法で、あなたたちの悲願は叶う……。愛する相手との子供を身に宿せる様になったのだから、散る事は無い……例え同性間でもおっけー」
 マジシャンはぐっと親指を立てた。
「そんな……そんな安易な……」
「そんな都合のいい話……!」
「あるんだよ。そんな都合のいい話……いまの猟兵わたしたちならね」
 マジシャンは頷く。
「……でも、ただじゃないよ」
 しかして、すかさずマジシャンは女子高生ヴァンパイアたちへぐいと顔を近づけて迫った。
「ここで骸の海に還るか……私と契約して使い魔になるか、選んで」
 ここでマジシャンは悪魔的な選択を突きつけた。
 死か契約か、である。
「え……」
「まさか……グローバルジャスティス様を裏切れと!?」
「でも、望みは叶うよ」
「……!」
「……どういう話なんだよこれ?」
 ここで高寿がマジシャンのところに合流した。既に戦場内のヴァンパイアたちはあらかたが片付いている。
「うん。選んでもらってる……骸の海に還るか、私の使い魔になるか」
「脅迫じゃねえか」
「選べるだけ……温情」
 マジシャンは無表情のままぐっと親指を立てた。
 そうして、幾許かの沈黙を置いた後。
「……け、契約、します…………!」
 ――最終的に、一人のヴァンパイア女生徒が裏切りを表明した。
「おっけー……じゃ、魂の契約……しよ」
「じゃ、残りはやっつけとくからな」
「うん」
「くっ……グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」
 そして、契約に応じなかった最後のヴァンパイアを切り伏せて。ここにヴァンパイア女子高生たちは全滅を迎える。
「これで終わりか?」
「ううん。……まだ、気配がする」
「あー……まだやんなきゃならねえのか」
 まだこの理解不能な世界にいなくちゃならないのか。高寿はげんなりした。
「だいじょぶ。たぶん、次で終わる……」
「だといいんだがなあ」
 そうして、二人は作戦の次なる段階へと備えて態勢を整える。
 ――ここまで戦力を潰せば、そろそろ向こうも焦って黒幕が出てくる頃合いになるだろう。
 だが、敵の司令官ともなれば相応に強力な敵が現れる筈だ。
 高寿は今度こそまともな敵が出てきてくれよと祈りながら、鋭い眼差しで私立暗黒ジャスティス女学園の校舎を睨んだ。

 ――かくして生徒たちの中に紛れていたダークネスたちとの戦いはここに決着を迎える。
 だが、事件はまだ終わりではない。この奥には、まだこの作戦を計画した指揮官ダークネスが潜んでいるのだ!
 しかしてその黒幕も、ここまでくれば間もなく姿を見せることだろう。
 私立暗黒ジャスティス女学園を巡る戦いは、最終局面へと至る段階まできていた!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ゲルマンシャーク』

POW   :    パンツァーファウスト
【プロペラ戦闘機の翼】を生やしてレベル×5km/hで飛翔し、[プロペラ戦闘機の翼]を見た任意の対象全てに希望と戦闘力強化を与える。
SPD   :    ノーズプロペラアタック
【プロペラ】に【ゲルマン魂】を注ぎ込み変形させる。変形後の[プロペラ]による攻撃は、【大量出血】の状態異常を追加で与える。
WIZ   :    ゲルマン再生光線
自身の【サイキックエナジー】を代償に、1〜12体の【ドイツ風味再生ダークネス】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
👑11
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「よもや、アメリカンコンドルが斃れるとは」
 私立暗黒ジャスティス女学園の奥。理事長室の扉が開く。
「しかも、いま我々を襲ってきているのは10人にも満たぬ寡兵というではないか。……恐るべきことだ。灼滅者どもはあの時代・・・・とは比較にならぬほど強くなっているということなのだな」
 理事長室から現れたダークネスは、重々しく頷きながら歩き出す。
「だが、我は使命を果たさねばならない。我がここに蘇ったように、いま再びグローバルジャスティス様にご復活いただき、そして我らご当地怪人軍団の理想郷を現世に築かねばならない」
 校舎内の各所に飾られたグローバルジャスティス様の肖像画や立像に敬礼を捧げながら、その男は進む。
「そのためには……我は負けるわけにはいかぬのだ!」
 そして、暗黒ジャスティス女学園の扉が開いた。
「灼滅者どもよ! よくぞ来た! 我はここ私立暗黒ジャスティス女学園理事長にしてご当地怪人軍団四大幹部が一人……ゲルマンシャークである!!」
 ゲルマンシャーク!
 当時の戦いサイキックハーツに参戦していた灼滅者たちであれば、その名を知らぬ者のいない上位ダークネスだ。全国ご当地怪人選手権の開催、灼滅されたはずのご当地怪人ダークネスたちの復活事件に闇堕ちビームによる甚大な被害。そして新潟県で行われたゴッドモンスター大作戦……。そのカリスマ性と影響力は無数に存在したダークネスたちの中でも抜群に強い。
「灼滅者どもよ。我が計画をこれ以上貴様らに邪魔させるわけにはいかぬ」
 ゲルマンシャークは爆裂砲撃杖パンツァーファウストを構えると、猟兵たちに向き合った。
「我らの理想を阻む貴様らは、我が力でもって確実に排除する!」
 どるん、ッ! ゲルマンシャークの体内に響くエンジン音。ゼーレ機関が燃焼し、その躯体に力が満ちる!
「行くぞ! グローバルジャスティス様に栄光あれ!!」
 かくして、ここに私立暗黒ジャスティス女学園における最後の戦端が開く!
佐々木・ムツミ
【アドリブOK】
同じ灼滅者の先輩たちから聞いてるわよ。
ご当地怪人のつよーい幹部ってね。
あ、没後のグリュック王国の没落についても聞いてるんだけど聞きたい?

…ん、ムサシくんが話をしたいみたいだからバトンタッチしちゃうね!

【その台詞と同時に闇堕ち、六六六人衆『ムサシ』が現れる】
ゲルマンシャークさん、ボクたちダークネスはもう闘う時代を終わらせました。
グローバルジャスティスさんも認めてくれたんです。
…もうこれ以上戦う必要はないのではないですか?
(ダークネスにも関わらず、ムツミよりも穏やかな態度である)

戦わなければいけないんですね…ならば仕方ありません。
ダークネスの未来のためにも、倒します!


弓落・高寿
あ?げるまんしゃーく?お前が『ぐろーばるじゃすてぃす』じゃねえのか?
まぁ誰であれ、流石にここまで来れば手前らと同胞他猟兵に浅からぬ因縁があるのは理解した─
が、なんだ。訳がわからん事には変わりない。とりあえず一発殴らせろ。

今までの積もりに積もった苛立ちストレスの矛先を見つけてどこか嬉しそうな様子。そのまま勢いよく突っ込めば、相手の攻撃をあえて受け─あえて血を流しUC発動、視界が眩んだところをあえて素手でブン殴る。

一撃が効いたかはともかく、憂さ晴らしは果たしたので【包帯】で止血を行いながら反撃に備えて神器を構えようか。



「さあ、ゆくぞ灼滅者スレイヤー! このゲルマンシャークがお前たちを一人残らず葬り去ってくれる!」
 掲げられる爆裂砲撃杖パンツァーファウスト! ご当地怪人軍団大幹部・ゲルマンシャークが猟兵たちに対峙する!
「……あ? げるまんしゃーく?」
「あれ。どうしました?」
 ゲルマンシャークの名乗る姿を前にして、弓落・高寿(f44072)は得心がいかぬと首を傾げた。どうしましたかと佐々木・ムツミ(f43858)が訊ねる。
「いや……あいつが『ぐろーばるじゃすてぃす』じゃねえのか?」
「ああー、そういうこと?」
「教えてやろう小娘。グローバルジャスティス様のような大いなる存在は、その復活にも存在の維持にも膨大なサイキックエナジーを要するのだ!」
 ここでゲルマンシャークが説明に入った。
「……つまり?」
「いまこの世界のサイキックエナジー総量は以前よりも大きく増しているようだ。我々幹部級のダークネスがこうして復活できるようにな。……しかし、それでもやはり大首領たるグローバルジャスティス様を復活させるには不足している!」
 曰く――。
 現在のサイキックハーツ世界は、かつて身動き一つとることすら困難であった幹部級の上位ダークネスでもこうして活動できるほどに彼らのパワーリソースであるサイキックエナジーが満ちた状態となっているのだという。
 だが、それでも種族の頂点に立つレベルの者が復活するにはパワーが足りていないのだとゲルマンシャークは語る。
「故に我はここ暗黒ジャスティス女学園から我々ご当地怪人軍団の勢力を増やすことにした。そうして増強された我らが軍団でこの世界のサイキックエナジーを収集し、最終的にはラグナロクダークネスたる我の力でグローバルジャスティス様のご復活にこぎつける計画なのだ!」
「……あーっと、なに? どういう意味だ?」
 いまいち把握できない様子で高寿が首をひねった。
「んーっと……。いちばんえらい人を復活させるにはエナジーが足りないから、それを集めるために軍団人手を増やす計画だった……ってことかな?」
 ムツミが翻訳した。
「ってことは、このままほっといたらこいつ以上にワケわかんねえ親玉が出てくるっつーことだな?」
「そ。……まー、どんな計画だったとしても、どの道あたしたちがやることはひとつだけどね」
 しゃ、っ。金属の滑る涼やかな音。ムツミが“物干し竿”を抜く。
「ああ。ぶっ倒しゃいいってことだろ!」
 そこに並んで、高寿もまた剣をかざした。
「フン……。小癪な小娘どもめが。我が実力も知らずよく吼える!」
 ゲルマンシャークが殺気を纏う。猟兵たちとゲルマンシャークは、暗黒ジャスティス女学園の中庭の中をじりじりと動きながら互いに間合いを図り合った。
「知らねーな。まぁ誰であれ、流石にここまで来れば同胞ほかの連中と浅からぬ因縁だろってことはわかったが――」
「……ゲルマンシャーク」
 ムツミの口の端が、狩猟者めいた笑みに歪む。
「どれだけのダークネスか、ってハナシはさ。同じ灼滅者の先輩たちから聞いてるわよ」
 ご当地怪人のつよーい幹部、ってね。
 ムツミの双眸が細まり、獲物を狙うように光を灯す。
「……あ、没後のグリュック王国の没落についても聞いてるんだけど聞きたい?」
「必要ない。将を失った国がどうなるかなど、考えずともわかる」
「おい、次々新しい情報出すんじゃねえよ。我の理解がおっつかねぇだろ」
「おっと、ごめんね!」
「フン! ここまできて未だに余裕のつもりか……ならば、その思い上がりを糾してくれる!」
 そのとき、ゲルマンシャークの杖が火を噴いた。――パンツァーファウストとは即ち旧時代の戦争の際にドイツ軍が用いたロケット砲だ! ゲルマンシャークのかざした杖から炎の軌跡を描いて砲撃が飛び、激しく爆発する!
「おわ……っ!! なんだ、爆発した!?」
「あっぶな……! 記録見といてよかったー!」
 しかして二人はかろうじて爆風を躱していた。
 ――しかし!
「それで躱したつもりか!」
 ブロロロロロ、ッ! 鳴り渡るプロペラ駆動音! 煙と炎を裂いて、ゲルマンシャークが二人の目の前に飛び出す!
「ハアッ!」
「わ、あ……ッ!」
 突進の勢いを乗せて、ゲルマンシャークはパンツァーファウストを振り下ろした。痛烈な打撃――! ムツミは咄嗟に物干し竿で受ける!
「なるほど対峙した今ならばわかる。先の時代より随分力を増したようだな」
 ぎりぎりと音をたてて軋むパンツァーファウストと物干し竿。鍔迫り合いの様相だ。
「……だが、“勝てる”と思っているのならそれは思い上がりだ!」
「く、っ……!」
 競り合いを制したのはゲルマンシャークであった。膂力に弾かれ、ムツミの身体は中庭の地面へと投げ出される!
「同胞!」
「とどめだ!」
 ゲルマンシャークは杖を掲げ、追撃を打ち込もうとムツミへとにじり寄る――
 そのときである。
「……あー、ちょっとゴメンね」
 げほ、と咳込みながら、ムツミは笑って立ち上がった。
「えっとね、ゲルマンシャークのおじさん。……ムサシくんあたしのダークネスがさ、話をしたいんだって?」
「……ナヌ?」
 急な話の展開に、ゲルマンシャークが面食らった。
「だからここでいっかいバトンタッチ!」
「え? なんだ、どうなってんだ?」
 突然のことに高寿も戸惑っていた。
 ――その一方で、ムツミの表情が変わる。
 それはサイキックハーツ世界の灼滅者スレイヤーの身に起きる現象。その魂の奥に潜むもう一人の自分ダークネスの人格が表出する――闇堕ちだ。
「馬鹿な、闇堕ちだと?」
「……ゲルマンシャークさん」
 訝しむゲルマンシャークへと、『ムサシ』ムツミのダークネスが呼びかけた。
 血と闘争を求め本能に忠実に生きるムツミとは対照的に、ムサシは理知的で穏やかな雰囲気を纏っていた。
「ボクたちダークネスはもう闘う時代を終わらせました」
「ダークネスでありながら戦いを否定するつもりか?」
「あの戦いは既に決着し、過去のことになったんです。……グローバルジャスティスさんも、灼滅者スレイヤーを認めてくれたんです」
「ナヌ!? ……馬鹿な、在り得ぬ。そんなことがあるはずがない!」
「本当なんです。グローバルジャスティスさんは、人類に未来を渡しました。……既に決着がついた戦いを蒸し返す必要はないんです。もうこれ以上戦う必要はないのではないですか?」
「……」
 ゲルマンシャークはほんの僅か考え込むような様子を見せる。
 しかしてそれも刹那、ゲルマンシャークは再び杖を掲げながら叫んだ!
「なめるな、灼滅者スレイヤーごときに与する半端なダークネスが! ……グローバルジャスティス様がそのような選択をするはずがない。仮に本当にそうなのだとしても、我はグローバルジャスティス様から直接聞かぬ限りは認めぬぞ!」
「……やはりそうなりますか」
 激昂するゲルマンシャークが杖を掲げる。――薙ぎ払う一撃が武蔵を襲う!
「馬鹿野郎! いつまでお喋りしてるつもりだ!」
 だが、そこへ横合いから高寿が飛び込んだ。振り抜いた剣で杖の打撃を弾き、ゲルマンシャークを後退させる。
「すみません!」
「あの野郎、烏天狗と同じでフザけたナリのクセして半端ねえぞ。油断すんなよな!」
「はい……! ダークネスの未来のためにも、ここで彼を倒します!」
 二人は呼吸を整え、ふたたびゲルマンシャークへと対峙する。
「フン……! やってみるがいい!」
 ゲルマンシャークは掲げた杖から再び炎を吐き出した! 爆発! 中庭にまたしても炎が撒きあがる!
 だが、次の瞬間!
「うおおおおおおおっ!!!」
「ナヌ!?」
 ゲルマンシャークは驚愕した。炎の中を突っ切って、高寿が最短距離で間合いを詰めに来たのだ!
「いい加減ワケわからん話に飽き飽きしてんだよッ!! 憂さ晴らしの相手になりやがれッ!!」
 掲げる夕月夜暁闇剣! 高寿は渾身の力を込めて刃を振り下ろす!
「……甘いわ!」
「な……ッ!」
 だが――至近の間合いへと入った瞬間、ゲルマンシャークのプロペラが高速で回転し、丸鋸めいて高寿を迎え撃ったのだ!
「ぐ、ぁ……!!」
「このまま血祭りにあげてくれる! ズタズタになって死ぬがいい!」
 切り裂かれる高寿の身体! 傷口から激しく血が飛び散る――!
 ――――しかし!
「……かか、った、ぜ」
 その瞬間、高寿は哂った。
「ナ、ヌ……?」
 それと同時、ゲルマンシャークの身体が揺らぐ。
「なん、だ、これは……この、暗闇は――!」
「……そいつぁ、な。……ま、ちょっとした呪い……みてえなもんだよ」
 スペースオペラワールドに由来する高寿の肉体は、実を言えば常人と異なる点がいくつかある。
 そのうちの一つが彼女の血液だ。彼女の血は触れたものの精神を強制的に宇宙と繋ぐ作用をもち――高寿はその特質を、敵の五感を奪うための武器として扱っていた。
「グ、ヌ……! よもや、こんな目くらましで……」
 奪われた視覚にゲルマンシャークは惑った。
 高寿はその様子を見て――今日一番の笑顔を浮かべながら、その手の中にぎゅっと力を込めて拳骨をつくる。
「おう。我も今日一日そんな気分だったよ」
 そこから、一歩二歩三歩、としっかり助走をつけて。
「だから一発くらいは殴らせろよな」
 全力で、ブン殴った。
「グ、ゴ……!」
 拳の衝撃にゲルマンシャークが後退する。――効いている。猟兵たちの攻撃は着実にゲルマンシャークへとダメージを与えつつあった。
「……っしゃ。ちょっとすっきりした。……よし、こっからだ。同胞、たたみかけていくぞ!」
「わかっています! いきますよ!」
 高寿は血を拭うと気合を入れなおして剣を握りなおし、ムサシと並んでゲルマンシャークへと更なる攻勢を仕掛けてゆく。
「オオオオオオオオッ!!」
 だが、ゲルマンシャークとてサイキックハーツ世界の歴史にその名を残す大幹部。決して一筋縄ではいかぬ強敵だ!
 そうして暗黒ジャスティス女学園には炎と刃が乱れ舞い、激闘が再び幕を開けた。

 かくして、ゲルマンシャークとの決戦は始まったのである!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フェル・オオヤマ
POW
・心境
私はお前を灼滅しに来た猟兵だ!
これ以上好き勝手させる訳にはいかないよ!

・戦闘
…とはいえグローバルジャスティスを復活させるのが目的って言うけどどうやって復活させるのかな?
オブリビオン復活ダークネスの発生に繋がるかもしれない【世界知識/情報収集】を兼ねて質問しつつこっそり攻撃の準備をしておきます
返答に問わず【アンブッシュ】を仕掛けます

お前だけが空を飛べると思わないでね![紅炎の剣]を構えて空中戦を仕掛けます
チャンスが出来れば[我竜・竜覇火焔翔]を発動!私の闘志がそう簡単に折れると思うな!
【闘争心/空中戦/切断/激痛耐性/勇気】

他キャラとの連携・アドリブ歓迎


太目・乃子
【血反吐】
【POW】で勝負。

心情
あなたの能力でよみがえった存在は、あなたの能力によって歪んでしまう。
それでも、あなたの大切な人に生きていて欲しいの?

戦闘
UC【殲剣の理・不朽】を使用し、思い描く理想の姿・大人の姿を取る真の姿へと変身します。
絶対に人々を守り、自身も生還するという誓いを守るために、全霊をもって戦います。
致命傷や戦闘継続が不可能になるような負傷のみ避けて、攻撃に集中します。
「理想に共鳴する人が、首領さんを尊敬するのはわかる。一般人を洗脳して首領さんを崇拝させて、そこに正義があるの?」
「あなたに理想があるように、私にだって譲れない正義がある!」



「グゴゴゴゴ……! 灼滅者スレイヤーめがッ!!」
 怒りをあらわにするゲルマンシャーク。咆哮と共にその身の裡へとサイキックエナジーユーベルコード出力を高め、全身に殺気を纏う!
「おっと……残念だけど、私はお前の言う灼滅者なんかじゃないぞ!」
「そう。私たちは……」
 しかしてフェル・オオヤマ(f40802)と太目・乃子(f40815)は、ゲルマンシャークにも一歩たりとも退くことなく相対した。
「ケルベロ」
「お前を灼滅しに来た猟兵だ!」
 乃子の声を遮ってフェルが力強く猟兵としての名乗りを上げ、剣を抜き放ちながら構える。
「……」
 乃子は釈然としない顔でフェルをじっと見た。
「……」
「さ……さあ、いくぞゲルマンシャーク! これ以上これ以上好き勝手させたりなんかしない!」
「フン……。そのように息も合わぬ状態でよくも我に楯突こうなどと思えたものだ!」
 嘲笑うゲルマンシャークが、その両手に爆裂砲撃杖パンツァーファウストを掲げる。
「……息は、これから合わせる」
「そ、そうだよ! 現場判断アドリブは猟兵の十八番だからね!」
「ならばやってみるがいい! このゲルマンシャークにそのふざけた姿勢が通用すると思うのならな!」
 瞬間、爆発! パンツァーファウストから放たれたゲルマンエネルギー砲がロケット弾頭めいて爆発する!
「うわ……っ!」
「く、っ……!」
 燃え上がる炎に包まれ、二人は苦悶の声をあげた。
「フハハハハハ! どうだ、我がゲルマン魂の籠もった一撃は!」
 勝ち誇るように笑うゲルマンシャーク。しかしゲルマンシャークは油断なく次弾装填! 追撃を仕掛けるべく再び砲撃杖を構える!
 ――しかし!
「けほ、っ……! や、やられるかと思った……!」
「でも……死ねないからね」
「ナヌ!」
 煙る爆炎を切り裂いて、ふたつの翼が空へと飛び出した。
 竜人ドラゴニアンであるフェルはその背に竜翼を開き、また一方の乃子はサキュバス種の特徴である皮膜の翼で空中へと逃れ、致命傷を避けていたのだ。
 乃子サキュバスの翼は本来であれば飛行に適した形状ではないが――今の彼女・・・・であれば、その身に宿した魔法力を用いることでドラゴニアンであるフェルにも劣らぬ機動力での飛行を実現していた。
「……あれっ!? なんかでっかくなってない!?」
 気づいたフェルが素っ頓狂な声で叫ぶ。
「今日の私、ちょっと本気」
 そう。つい先ほどまで身長130cmほどで幼子であったはずの乃子は、今やフェルをも凌ぐ長身かつ豊満なスタイルの成人女性の姿へと変じていたのだ。
 【殲剣の理・不朽サバイブ】。――生きて帰る、という強い意志の力でもって、真なる力を引き出す乃子のユーベルコードである。
「フェアダムト! おのれ、小癪な猟兵どもめが!」
 空へと逃れた二人を見上げ、ゲルマンシャークが激昂して叫ぶ。
「ならば……この世界の空の覇者が誰なのかを貴様らに教えてくれよう!」
 しかして次の瞬間、ゲルマンシャークは二人を追って空へと舞い上がった。――もとよりゲルマンシャークのご当地怪人としての力は、旧ドイツ国の技術力――即ち機動戦力に由来する! ジェットとプロペラを回し、ゲルマンシャークは凄まじい速度でもって二人へと追い縋った!
「ヌゥンッ!」
「だ、っ……!」
 急加速! 凄まじい速度でもってゲルマンシャークはフェルに激突した。同時に薙いだパンツァーファウストでフェルを叩き伏せる!
「くらえ!」
「……!」
 続けざま、ゲルマンシャークは素早く反転し砲撃杖からロケット弾頭砲撃を放つ! 乃子はこれを辛うじて回避。躱された弾頭は暗黒ジャスティス女学園の中庭に着弾し轟音と共に爆発する。
「どうした! 息巻いていてもその程度か猟兵ども!」
「くっ、こいつ……さっきのアメリカンなんとかより強くない!?」
「さすが、大幹部なだけのことは……!」
 凄まじい戦闘出力に、二人は苦戦を強いられていた。空中戦はゲルマンシャークの得意とする領域だったのだ。巧みな体捌きと加速能力から繰り出されるアクロバティックな機動と撃ち出されるパンツァーファウスト砲撃が激しく二人を攻め立てた。
「貴様らと違い、我には崇高なる目的がある! ――そう、グローバルジャスティス様にご復活いただき、今度こそこの世界を我々ダークネスの楽園に作り替えるという素晴らしき未来への希望がな!」
 フハハハハハ! 哄笑と共にゲルマンシャークが叫んだ。
「グローバルジャスティスを復活、って……!」
 爆撃を逃れながらフェルが呻く。
「……その復活っていうのも、どうやるつもりなのかな?」
「愚問!」
 ゲルマンシャークが嘲笑った。
「ラグナロクダークネスたる我の力をもってすれば、滅び去ったダークネスを現世に呼び戻すことなど容易いこと!」
「なにそれ……死者蘇生の力ってこと!?」
 そんなの禁止カードじゃん、とフェルは声をあげた。
「そうだ! ……しかし、グローバルジャスティス様ほどの御方を呼び戻すには、相応のエネルギーが必要となる……そのエネルギーをかき集める人手手駒を揃えるために、この学園を我が支配下に置いたのだ!」
 プロペラの回転数を上げてゲルマンシャークがフェルに突進する。フェルは構えた剣で突進を迎え撃った。
「本当にできるの? そんなこと……」
 振り抜かれた砲撃杖の打擲をいなしながら、フェルは訝しむ。
「……できる。この世界の記録にも残ってた」
 乃子はそこに口を差し挟む。――乃子曰く。歴史書の記述によれば、ゲルマンシャークはその力で滅びた筈のダークネスをゲルマン再生怪人として復活させる能力を持っていたのだという。
「ゲルマン再生怪人って……あっ! ひょっとしてさっきの奴がゲルマンだったのって!?」
「そうだ。アメリカンコンドルの復活も我が力によるものよ」
 剣と杖が激しく打ち合い交錯する。その中で、ゲルマンシャークは己が御業を誇るように嗤った。
「けど……!」
 だぁんっ! 爆ぜるような銃声と共に大口径弾頭が疾る。乃子がフェルの援護に入ったのだ。銃撃を避けてゲルマンシャークは一時後退する。
「あなたの能力でよみがえった存在は、あなたの能力によってゲルマン化し……歪んでしまう」
「……」
「それでも、あなたの大切な人に生きていて欲しいの?」
「当たり前だッ!! グローバルジャスティス様こそ我々ダークネスの希望なのだ!」
 ゲルマンシャークは力強く言い切って、杖先から弾頭を打ち出した。花火めいて炸裂したロケット砲弾の爆炎が暗黒ジャスティス女学園の校舎を赤く照らし出す。
「たとえ多少の歪みがあったとしても……我らには、グローバルジャスティス様が必要なのだ!」
「うーん……頑固だね、これは!」
「ヌンッ!」
 炎を躱しながら、剣の柄を握りなおしてフェルは飛ぶ。ゲルマンシャークの喉元めがけて一気に飛び込み、振り下ろす斬撃一閃――弾かれた! 反撃をもらってフェルは高愛を余儀なくされる。
「明日を、理想を、未来を! 我々に示してくださったあの御方の存在は、いわば我々の希望!」
 ゲルマンシャークは再加速してフェルへと追撃を見舞いに行く――!
「理想に共鳴する人が、首領さんを尊敬するのはわかる……!」
 だが、そこに乃子が割り込んだ。ライフルそのものを杖がわりにしてゲルマンシャークの激突を受け止めながら、ぎりと歯を噛み鳴らして衝撃を堪える。
「だけど一般人を洗脳して首領さんを崇拝させて、そこに正義があるの?」
「邪悪で結構! もとより我々はダークネスだッ!!」
「あぐ……っ!」
 膂力が打ち払う! ゲルマンシャークは力任せに乃子を掴んで投げ飛ばし、暗黒ジャスティス女学園の中庭の地面へと叩きつけた。
「へえ……それじゃ、自分の立場が悪党わるいやつだって自覚はあるんだね」
「……ヌウッ!?」
 しかしてその瞬間、ゲルマンシャークは自らの背後に激しい熱を感じ取る。
「なら……やっつけられたって文句は言えないよねぇっ!」
「ナヌ……!!」
 そこにゲルマンシャークが見たのは、翼を広げた巨大な炎の竜であった。
 【我竜・竜覇火焔翔】。
 全身全霊の気迫によって炎を纏い、竜と化すフェルの秘技ユーベルコードである。
「はあああああーッ!!」
 そして、フェルはゲルマンシャークめがけて飛び込んだ。
「ヌウウウウウウーッ!!」
 だが、ゲルマンシャークはそれを真正面から受け止める! 燃ゆる翼を羽撃たかせ、炎の勢いを増しながら押し込むフェル。それを押し返そうと力を込めるゲルマンシャーク! ユーベルコード出力同士がぶつかり合い、激しく競り合った!
「オ、オオオオオッ!! グローバル、ジャスティス様に……栄光あれえぇっ!!」
 咆哮! 唱えるチャントにゲルマンシャークの出力が上昇する。天秤がゲルマンシャークの側へと傾こうとしていた――そのとき!
「あなたに理想があるように」
 だぁん、ッ!
「……ナ、ヌ!?」
 ゲルマンシャークの身体が、揺らいだ。
「私にだって、譲れない正義がある!」
 ――地上に落とされた乃子が態勢を立て直し、ゲルマンシャークを撃ち抜いていたのだ。
 慮外の方向からの奇襲めいた銃撃に態勢を崩したゲルマンシャークは、フェルとの競り合いからほんの刹那意識がブレてしまう。
「押、し……切るっ!!!」
「ヌ、ウウウウウウウウオオオオオオオオッ!!」
 その瞬間、趨勢は一気にフェルの側へと傾いた! 激しく燃える炎の翼。燃え上がったフェルの闘志が、ゲルマンシャークに打ち勝ち競り合いを制する!
「グア、ッ!!」
 結果、ゲルマンシャークはエンジン出力を低下させ、暗黒ジャスティス女学園の中庭へと墜落した。
「ハァー……ハァー……、シャイセ! おのれ、猟兵どもめ……!」
 その躯体には遂に亀裂が入り、猟兵達との戦いて蓄積したダメージももはや無視できぬほどのものになったことを示す。
「だが……まだだ! まだ我が身体にはゼーレ機関がある!」
 しかして、それでもゲルマンシャークは自らを鼓舞し立っていた。
「……やっぱしぶといね。さすが幹部って感じ?」
「でも……負けられない」
 だが、無傷でないのは猟兵たちも同じことだ。
 しかしそれでも、二人は戦う意志を失うことなくゲルマンシャークに対峙し続けていた。

 ――戦いは、続く!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

淳・周
やっぱりテメエかゲルマンシャーク!
新潟ロシア村でボコりたいと思ってたが十年越しに戦える日がくるとはな!
こっちも今の平和荒らすならブッ潰してやるよ!

可能なら他の猟兵と連携し油断せず畳みかける。
前にガンガン出て足止め、接近戦で敵を食い止めれば役に立つか?
変形後込みで鼻先のプロペラに注意。
勘と集中力で攻撃の軌道見切ってオーラ全開で展開した長月で受け流すようにガード。
スライディングとかで足元潜り攻撃し難いよう翻弄も織り交ぜる。
向こうの攻撃で出血したなら流れ出た血の炎も利用して目晦まし、どこかで隙が見えたらUC起動し一気に仕掛ける!
紅炎のラッシュでその固そうな頭ぶん殴ってボコボコにしてやるぞ!

【血反吐】


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

いけねぇいけねぇ、生徒さんたちをどうするか悩んでる間に黒幕がお出まししてやがった。
しかもなかなかどうして、余程の大物みたいだねぇ!
悪いね、アタシは灼滅者じゃあない。
サイキックは使うが第六の猟兵って奴だ、忘れるつもりでもその身にしかと覚え込ませたらぁ……戦いの傷跡って形でなァ!

相手にとって不足無し、最近ガソリンが高いのは気になるけど泣き言なんざ言っていられねぇ。
【人機一体】……モード、【天】!
手前ェがレシプロならこっちはジェットだ、エンジンの回転数でも張り合ってやらぁ!
超高速の『空中戦』で『電撃』を放ちながら『グラップル』を仕掛け、動きを止めにかかるよ!


睦沢・文音
【WIZ】で勝負!

心情
『ご当地怪人のサイキックハーツ』たるグローバルジャスティスさんを再生するには、相応のサイキックエナジーが必要な様子。
ならば、今少しエナジーを無駄遣いしていただきましょう。
あと暗黒ジャスティス女学園への校名変更って文科省通ったんでしょうか?

戦闘
再生ダークネスを召喚させることでサイキックエナジーを消費させつつ、UC【「グラディウス」】を使用して召喚された再生ダークネスの攻撃力を100分の1にすることで脅威度を下げることを狙います。
「こちらの戦力の程は把握済みでしょう?中途半端な数では止められませんよ?」
「数が多くても止まる気はありませんが」



「やっぱりテメエかゲルマンシャーク!!!」
 淳・周(f44008)は強く拳を握り締めながら叫んだ。
「うーん、そうでしょうとは思っていましたけど……そうでしたね」
 だとおもっていました、と睦沢・文音(f16631)は頷いた。
 二人はどちらもサイキックハーツ大戦までの時代を駆け抜けた灼滅者スレイヤーだ。勿論、大幹部ゲルマンシャークについてもよく知っている。
「やっぱり知った顔かい?」
 あいにくとこの場では数宮・多喜(f03004)ばかりがその脅威を知らぬ猟兵であったが、しかして多喜は二人の反応と――ゲルマンシャークが放つ威圧感から、強敵の気配を感じ取っていた。
「ああ。ご当地怪人軍団の大幹部だ。メチャクチャ強いぜ」
 周が頷く。
「はい。ドイツのパワーを持つご当地幹部、ゲルマンシャーク……。その存在の強さからさまざまな事件を起こした強力なダークネスです」
「へえ……倒せたのか?」
「ああ」
「どうやって?」
「50人がかりで挑んで全力でボコった」
「わお」
「ですが、それだけの戦力差があってもあのときの勝利は奇跡的でした」
「なるほど……。なかなかどうして、余程の大物みたいだねぇ!」
「とんでもねえ強敵だって聞いてたんで、アタシもあんときゃまさか倒されるとは思ってなかったんだよな……お陰でブン殴る機会を逃してたんだが」
 周は鋭いまなざしをゲルマンシャークへと向ける。
「まさか十年越しに戦える日が来るとはな!」
「フン……。なめるなよ、灼滅者スレイヤーども! あの時は不覚をとったが、此度の貴様らは寡兵も甚だしい!」
 応じるように構えたゲルマンシャーク! 爆裂砲撃杖パンツァーファウストを掲げながら、ゲルマンシャークは猟兵たちに対峙する!
「たかだか2,3人の戦力でこのゲルマンシャークを倒せると思っているのなら、その思い上がりを糺してくれる!」
「そっちこそナめてんじゃねえ! あの頃とは状況が違うんだよ!」
「そうです、ゲルマンシャークさん! 今の灼滅者私たちは、あのころよりもずっと強い!」
「……まー、アタシは灼滅者ってやつじゃあないけどね。けど、修羅場くぐった数なら自慢できるほどあるよ!」
 相対する猟兵たちとゲルマンシャークの間で、空気が熱を帯びる。
「面白い。……ならば、やってみろ!」
 ――爆発! 爆ぜるパンツァーファウスト砲撃!
「その手は食うかよ!」
「すごい威力ではありますが……!」
 対し、猟兵たちは散会! 着弾地点から飛び出すように距離を取り、3人は直撃を避ける。
「それで逃れたつもりか!」
 バラララララララッ! 激しく唸るローター音! 鼻先で回るプロペラ! ゲルマンシャークは急発進し更に加速! 杖を掲げながら猟兵たちへと突進を仕掛ける!
「まずは貴様からだ、女!」
「望むところだテメエ!」
 激突したのは周! ゲルマンシャークの振り下ろす砲撃杖を打撃でいなし、踏み込んで放つカウンターのショートパンチ!
「ヌゥンッ!」
「ッ、ち!」
 ゲルマンシャークはそれを真正面から受けるが、すぐさま反撃! 力任せに砲撃杖で周を殴りつけて払いのける!
「我は大義によって立っている! 貴様らなどに負けるものか!」
「いたいけな女学生洗脳してるような悪党の何が大義さ!」
 横合いからの襲撃! 側面から多喜がゲルマンシャークへと飛び込んだのだ。勢いを乗せた跳び蹴りがゲルマンシャークを叩く!
「グローバルジャスティス様こそ正義だ! 我は無知蒙昧な人間どもを正しき思想で導いているに過ぎん!」
 しかしゲルマンシャークは蹴り足を片腕で受け止め、多喜を打ち払った。
「っかー! アタマが固いねえ!」
「テメエらにも理屈があんのはわかった。だがよ……!」
 しかして反対側の側面! 体勢を立て直した周が再び攻め込みにきたのだ!
「こっちだって都合があんだ! 今の平和荒らすならブッ潰してやるよ!」
 裂帛!! 気迫のこもった強烈な打撃がゲルマンシャークを打った!
「シャイセ!」
 舌打ちしながら僅かにたたらを踏むゲルマンシャーク。
「……グローバルジャスティス。やはりあなたたちの作戦はあの人の復活なのですね」
 激しい攻防の最中、文音は呟く。
「そうだ。この地にガイアパワーとサイキックエナジーを収集し、そのエネルギーと我がラグナロクダークネスの力によってグローバルジャスティス様にご復活いただくのだ!」
「……なるほど。読めました。いち種族の頂点ともなれば、復活にも相応のリソースが必要。洗脳教育はそのエネルギー集めの人手を増やすためですね」
「然り!」
「なら……!」
 ここで文音は駆け出した。
 ゲルマンシャークの方へ、ではない。暗黒ジャスティス女学園の校舎へと向かってだ。
「ナヌ! 貴様、どこに行こうというのだ!」
「決まってます! 生徒の皆さんを逃がすんですよ!」
「なんだとォ……! させるか、そのような邪魔を!」
 ゲルマンシャークは焦りを見せ、その敵意を文音の方へと向ける。
(……かかりました!)
 その最中、文音はちらと振り返り――
「おいおい! アタシらを忘れてんじゃねえぜ!」
「そうともさ! 邪魔させないはこっちのセリフだよ!」
「ヌウッ!!」
 ゲルマンシャークの前進を阻む仲間たちの姿を見た!
(ここまでは予想通り……! 次は!)
「おのれェ……! 仕方あるまい! ならば立て、我が生徒たちよ!!」
 ゲルマンシャークの前進は二人がかりの足止めを受けて止まる! だが、ゲルマンシャークには秘策があった!
 ゲルマンシャークはその身にため込んだサイキックエナジーを放ち、暗黒ジャスティス女学園の中庭へと叩きつけた――瞬間、立ち込める血煙! それもつかの間、その中から先ほど猟兵たちが灼滅したばかりの女学生ヴァンパイアたちが立ち上がる!
「グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
「グヌヌ……貴重なサイキックエナジーだが、やむを得ん! 生徒諸君、あの女を止めるのだ!」
「ハイル!」
 それはゲルマンシャークの能力――サイキックエナジーと引き換えに灼滅されたダークネスを復活させるゲルマン再生光線である!
 ゲルマンシャークの力によって復活したヴァンパイア女生徒たちは文音を捕らえるべく走り出す!
(……作戦通り!)
 だが、これは文音の作戦のうちだったのである!
 文音はわざと別行動をとる素振りを見せることで、ゲルマン再生光線の使用を誘ったのだ。――もし万が一この作戦が失敗し猟兵たちが退かざるを得ない状況になったとしても、敵の目的グローバルジャスティス復活に必要なサイキックエナジーの量を減らしてその計画を阻むために!
「逃しませんよ!」
「我々の理想を阻むならば、死んでいただくほかありませんわ!」
「そのふくふくとした美味しそうなお身体にはどれほどの血が流れていらっしゃるのかしらぁ!」
 双眸をぎらぎらと輝かせたヴァンパイア女生徒たちが文音めがけて飛び掛かる!
「私は……食べられませんよっ!!」
 文音は飛び込んできた女生徒を本で迎撃した。ハードカバー装丁の角ががつんとヴァンパイアの眉間を叩き怯ませる。
「なに!」
「抵抗する気ですか!」
「ええ、もちろん!」
 文音はヴァンパイア女生徒たちに対峙しながら、インカムマイク状のデバイスをスレイヤーカード内より引き出した。スピーカーからサウンドを鳴らし、文音はその声帯にユーベルコード出力を込める!
「♪ 誰もが 正義を信じて その手を汚した……」
 奏で歌うサウンドはケルベロスの世界に刻まれた戦いの詩、グラディウス! 響く音色に乗ってユーベルコードの力が広がり、ヴァンパイアたちに叩きつけられる!
「ナヌ……!?」
「なんです、この歌は……!」
「そこ、隙ありです! ちょあーっ!!」
 音圧に怯んだヴァンパイアたちへと文音は飛び掛かった。勢いを乗せられた固い装丁の角が振り下ろされ、ヴァンパイアたちをノックアウトさせる!
「なんだと……!?」
「こちらの戦力の程は把握済みでしょう? 中途半端な数では止められませんよ!」
 続けてヴァンパイアを倒しながら、文音は叫んだ。さらなる再生光線の使用を誘い、サイキックエナジーを枯渇させようという魂胆だ!
「ヌウウー……ッ!!」
 ゲルマンシャークは苛立った。自分が駆け付ければ、あの程度の灼滅者スレイヤー一人すぐに屠れるであろうに!
「行かせるかよ!」
「そうはいかねえぞ!」
 左右両側から襲い掛かる打撃の連打。多喜と周がそれを許さないのだ!
「ヅ、ッ……!!」
 そして、その交錯の最中――ゲルマンシャークは自らの躯体の内側で歯車の狂う音を聞いた。
 体内の駆動系の、非常に重要な部分が、破損したのだ。それはここに至るまでの猟兵たちとの激戦がゲルマンシャークの躯体へと積み重ねてきたダメージの成果であった。
「シャイセ……! このままではいかん、早急に傷を修復せねば……!」
 ゲルマンシャークは焦燥した。このまま持久戦に持ち込まれてしまえば、この戦い灼滅者スレイヤーどもに押し切られてしまうだろう。あの時のように・・・・・・・
「……ッ、オオオオオオオオオオオオ!!!」
 脳裏によぎったかつての敗北と自らの滅び。
 瞬間、その屈辱と無念の思いがゲルマンシャークを突き動かした。
「なめるなよ、灼滅者スレイヤーどもォッ!! この我が……大幹部ゲルマンシャークが、あの時と同じ二の轍を踏むと思ってか!!」
 ゲルマンシャークは激憤とともに体内のエンジンをフル稼働し、空中へと舞い上がった。
「死ぬのは我ではない! 灼滅者スレイヤーども、貴様らだッ!!」
 そして掲げる爆裂砲撃杖! ゲルマンシャークはそこから絨毯爆撃めいてロケット砲弾頭をばらまき始める! 爆発! 爆発! 爆発! ジャスティス女学園の中庭はたちまち黒煙と火薬のにおいに満ちる戦場と化した!
「うお……! なんだ野郎、いきなりブチギレやがった!」
「いや、ありゃとんでもねえな……だが、相手にとって不足なしだ!」
 爆炎を躱しながら多喜と周は上空のゲルマンシャークを仰ぎ見る。
 どうすんだあれ、と周は眉をひそめたが、その一方で多喜はにやりと笑っていた。
「いくぜ相棒!」
 その瞬間である。ヴォン、ッ! 響くバイクのエンジン音! 多喜に呼ばれて戦場へと駆け付けた彼女の愛車宇宙カブが、その側へと到着したのだ。
人機一体チャージアップ!」
 多喜が拳を掲げて叫ぶと、応じた宇宙カブがその躯体をばらばらに分割した。――マシンのパーツはそこからすぐさま多喜を中心にしながら、ヒト型の形を組み上げる!
「モード、ジェットドライブ!」
 かくして多喜は、愛車を鎧として身にまとう戦闘形態へと姿を変えた!
「うお、すっげえなそれ!」
「一緒に飛ぶかい?」
「ああ! いっちょ頼むぜ!」
「OK!」
 多喜は手を伸ばして周の手を握る。それと同時、多喜はジェット推進装置を吹かして空中へと飛び上がった。
「ナヌ……!? 我に空中戦を挑むつもりか!」
「おうよ! 手前ェがレシプロならこっちはジェットだ。速さでも高さでもエンジンの回転数でも張り合ってやらぁ!」
「そして、アタシは熱さとこの拳でテメエに勝つ!」
「戯言を……! ならば格の違いを見せてくれる!」
 バラララララッ! 激しく響くローター音! 加速するゲルマンシャークが多喜めがけて突進しにかかる!
「……よし、アタシを上に投げろ!」
「あいよ!」
 ここでまず多喜は強く腕を振り、周を直情に向かって高く放り投げた。
「フン、重りをなくせば我に対抗できると思ったか!」
「ああ、できるさ!」
 ガァンッ!! 激突! ――否、ぶつかってはいない。ゲルマンシャークの加速突進を、多喜は空中機動と体捌きで受け流したのだ。
「ナヌ……! ならば!」
 ゲルマンシャークは即座に反転した。素早く間合いを詰めながら砲撃杖でもって多喜に殴りかかる!
「ちいっ!」
 多喜は襲い来る砲撃杖の打撃を拳打で迎え撃った。後退や側面に回り込む機動を織り交ぜつつ、反撃の拳を打ち出してゲルマンシャークを牽制する。打撃と打撃の応酬! 校舎の上空で繰り広げられる打撃戦は一進一退、互角の様相を呈していた。
(ヌウ……、ッ! 出力が上がらぬ! この我が一対一で灼滅者スレイヤーひとり落とせぬとは、ダメージを受けすぎたか……!? 否、彼奴らが強くなっているのか!)
(こいつ……さすが大幹部だなんていうだけのことはある! 相当ダメージ入ってるのが目に見えてわかってんのに……強い、ッ!)
 互いに譲らぬ攻防戦。決着の見えぬ戦いに互いが焦れ始めた――そのとき!
「うおおおおおおおおおおっ!!!」
 ――燃ゆる星が、流れる!
「くらいな、ゲルマンシャークッ!!」
 無論、それは先ほど上方へと投げられていた周だ!
 ファイアブラッドである周は、その身に受けた傷口から勢いよくを吹き出すことで推進力を獲得し、ゲルマンシャークへと激突するコースをとって落下してきたのだ。
「……ナヌ!?」
 多喜との攻防の真っ只中であったゲルマンシャークは、回避動作に移るのが大きく遅れてしまっていた。
「ブチ砕けろォォォォォッ!!!」
「ぐオ、ッ……!!」
 落下による運動エネルギーをその拳に乗せ、隕石めいて周はゲルマンシャークへと激突する!
 ばぎゃん、と音をたてて。ゲルマンシャークの装甲が砕ける。――それと同時に、ゲルマンシャークはその躯体へと致命的なダメージが叩き込まれたことを理解した。
「ゴオオオッ! ば、馬鹿なァアアアッ!!」
「……っしゃ! 畳みかけろ!」
「OK!」
 周はついでとばかりにもう一発ゲルマンシャークに拳を叩きつけると、ゲルマンシャークの身体を蹴って地上へと舞い戻る。
 そして。
「お、のれ……一度ならず二度までも…………おのれ、ッ!! おのれ、おのれおのれおのれおのれッ!! おのれ灼滅者アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「恨み節やってるところ悪いけどさ……アタシは灼滅者じゃあない!」
 多喜はジェット推進を吹かして高度を上げる。
「サイキックは使うが、アタシは第六の猟兵って奴だ。忘れるつもりでもその身にしかと覚え込ませたらぁ……」
 ここで多喜はジェット推進の方向を変じた。
 上昇から、降下へ。地上へと向けて墜ちる速度にジェット推進の勢いを加えて、急加速とともに落下する!
「戦いの傷跡って形でなァ!」
 かくして輝く流星一筋。
「グ、オ、オオオオオオオオオオ、ッ!!! オオオオオオオオオオ、ッ!! ぐ、グローバルジャスティス様に……栄光あれえええええええええええええええええええッ!!!!」
 衝撃。一拍置いて、爆発。
 ――かくして、グローバルジャスティス復活を目論んだ再生ご当地怪人幹部・ゲルマンシャークの野望はここに潰えたのであった。

「……はーい。もう大丈夫ですよー」
 一方。
 講堂に集められた一般女生徒たちを、文音が救出する。
「あの……さっきからものすごい音が聞こえるんですけど、アメリカンコンドル先生は?」
「ゲルマンシャーク理事長先生も不審者対応に出られたって……」
「大丈夫です大丈夫。ぜんぶ悪い夢だったんです。すぐにもとの生活に戻れますからね」
「はい……」
 ――どうやら、生徒たちは随分ダークネスたちを信頼していたようだ。「暗黒ジャスティス女学園」というネーミングにも何の疑問も抱いていなかったのだという。
(あのご当地怪人たち、随分うまくやってたみたいですね……ひょっとして校名変更も文科省通ってたりするんです? いえ、しかし、というか。ここの子たちも純真すぎるのでは?)
 不安げな表情でアメリカンコンドル先生やゲルマンシャーク先生の無事を祈る生徒たちの姿に、これはだいぶ骨が折れそうですねと文音は事後処理に待ち受ける面倒ごとを想像して頭をくらくらさせたのだという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年08月26日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サイキックハーツ
#ご当地怪人


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト