白炎の|雷棲滅鬼悪《ライスメキア》
●|『白炎換界陣』《びゃくえんかんかいじん》
「なんと浅ましい」
陰陽師『安倍晴明』は、眼の前に立ちふさがる赤と青の斑色を持つ鋼鉄の巨人を見上げていた。
そう、浅ましいと呼ぶにふさわしい。
『対妖要塞』――社が変形して体高5m……百六十五寸はあろうかという姿に変貌しても、彼は眉根一つ動かさなかった。
むしろ、世のすべてを嘲笑するように唇を釣り上げていた。
「そして、なんと涙ぐましいものでありましょうか。その赤と青の斑。悪性と善性にゆらぎ、良心を得ることに力を費やすとは。『セラフィム』とは、なんとも遊びの少ない存在でありましょうや」
その言葉に赤と青の斑色を持つ鋼鉄の巨人に座す『雷棲滅鬼悪・永流姫』は毅然とした態度を崩さなかった。
確かに目の前の存在、陰陽師『安倍晴明』は恐るべき存在である。
だが、此処には『平安結界』と『対妖要塞』――『世羅腐威無』があるのだ。
如何に『安倍晴明』が生み出した『白炎換界陣』の白き炎が燃えがっても、己が背にかばう人びとを守り切る自負があった。
元より、この鋼鉄の巨人は人々を守るための力。
その力を十全に発揮できる。
「ああ、なんと愚かな。その力を攻勢に転ずれば星をも砕くことができましたでしょうに。なのに守るために転ずるとは。愚か、愚か、なんと愚かなのでしょう」
「人の善性を愚かと笑う。あなたはすべてを見下しているのですね。不変たる己が身がそんなにも……!」
「斯様な存在に成り果てた私に、あなたのような存在が語るとは、まさしく滑稽でありましょう」
「その口を開くことは許しません」
その言葉と共に『平安結界』を食らわんと燃え上がる白炎を押し止める、赤と青の熾火。
「燎火結界……『平安結界』を喰らい、歪めんとする『白炎換界陣』の内に新たなる結界を生み出しましたか。ですが、徒労でございましょう」
そういいながらも『安倍晴明』は笑む。
それはまるで新しい玩具を与えられた幼子のようであった。
「いつまで耐えることができますかな。『雷棲滅鬼悪・永流姫』。御身を引き裂き、その星の海の世に繋がる最初の一滴さえも遺さぬままに燃やし尽くせば……ああ、それはそれで愉しめるというもの」
白炎に反転していく『平安結界』よりあふれるは、数多もの妖たち。
それを阻むは赤と青の熾火。
今はまだ均衡を保っているが、間隙を突くようにして妖たちは変容した『平安結界』――『ブレイズゲート』の中を疾駆していく。
未だ取り残されたる人間を思うさまに殺し、食らわんとするために。
「『安倍晴明』!」
「素敵なお顔ですな。その表情を見れただけでも今宵は良しと致しましょう。人の営みに迎合した御身、なまじ良心など得るから懊悩するのです。それを後悔なされるも、誇らしげに抱くもご随意に。されど」
『安倍晴明』は嗤う。
「いずれも皆殺しでございます――」
●アヤカシエンパイア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。かつてサムライエンパイアの大いなる戦い、エンパイアウォーにて姿を表したオブリビオン、陰陽師『安倍晴明』が再びアヤカシエンパイアに現れ、秘術によって『平安結界』築かれた地方一つを妖あふれる奇怪な迷宮『ブレイズゲート』に造り換えてしまったのです」
『ブレイズゲート』、という言葉に反応を示す猟兵に目覚めた灼滅者もいたかもしれない。
それが偶然なのか必然なのかはわからない。
だが緊急事態であることは変わりないだろう。
「変貌した『ブレイズゲート』の内側は、多数の妖が無限に分裂と成長を繰り返しています。放置すれば、『ブレイズゲート』の外にまで溢れ出すのも時間の問題でしょう」
加えて、この『ブレイズゲート』の中には、止事無き身分の方『雷棲滅鬼悪・永流姫』とそれを守る坂東武者『雷棲滅鬼悪』と男装の麗人貴族『皐月』、さらには飲み込まれた人々が存在している。
この『ブレイズゲート』化された内部は物理法則を無視して広がる迷宮である。
しかし、『雷棲滅鬼悪・永流姫』は『対妖要塞』を変形させ、鋼鉄の巨人から放つ炎の結界でもって、飲み込まんとする白炎を防ぎ、その内に人々を守っているようなのだ。
「急ぎ、この『ブレイズゲート』に飛び込み、危険極まる迷宮を破壊しなければなりません」
だが、猟兵達は思う。
内部にて結界をもって守っているのならば猶予はまだあるのではないか、と。
「いいえ……あまり長くは保たないでしょう。『ブレイズゲート』にてはびこる妖たちは無限に分裂と成長を繰り返す特性を持っています。まずは、この迷宮内部にて結界の起点となっている炎を潰えさせんとする妖たちから、これを守らねばなりません」
そのうえであふれる大量の妖を撃滅し、『ブレイズゲート』の主として据えられたひときわ強大な妖を打倒しなければ、『ブレイズゲート』は消滅しない。
猟兵達はこの『ブレイズゲート』内でやらなければならないことは三つあることを理解する。
一つ、白炎を押し留めている結界である熾火を守ること。
一つ、熾火を潰えさえんとする大量の妖たちを撃滅すること。
一つ、迷宮の主として据えられた強大な妖を打ち倒すこと。
この三つを行わねば『ブレイズゲート』内に囚われた人々を救い出すことは叶わないだろう。
「どうかお願いいたします。今はまだ均衡を保っている結界ですが、何がきっかけで崩れるかわかりません。急ぎ対処しなければならぬことであること、危険な場所であることは承知の上です」
猟兵たちの力が必要なのだと彼女は頭を下げ、彼らを白炎燃え盛る『ブレイズゲート』へと送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
アヤカシエンパイアのとある平安貴族の邸宅と周辺地域を巻き込んだ陰陽師『安倍晴明』の『白炎換界陣』。
これによって周辺地域はすべて奇怪な迷宮『ブレイズゲート』に造り換えられました。
この『ブレイズゲート』内部には、未だ無事な人々が取り残されており、これを守る『対妖要塞』の主『雷棲滅鬼悪・永流姫』が結界にて持ちこたえています。
ですが、結界が砕かれるのも時間の問題でしょう。
『ブレイズゲート』に乗り込み、これを破壊するシナリオになっております。
●第一章
冒険です。
『ブレイズゲート』の内に張り巡らされた結界は、赤と青の熾火を起点として発生しています。
この内側に人々を守っているのが鋼鉄の巨人に変形した『対妖要塞』です。
ですが、大量に発生した妖たちが、この起点となっている熾火を潰えさせんとしています。
まずは、この熾火を守りましょう。
●第二章
集団戦です。
結界の破壊を阻む皆さんの存在に気がついた妖たちが大量に迫ります。
この妖は大量に分裂と成長を繰り返しており、無限のように湧き出しています。
キリのない戦いになりかねませんが、結界から飛び出してきた坂東武者『世羅腐威無』と男装の麗人貴族『皐月』たちと共に『ブレイズゲート』の主に据えられた妖への道を切り開きましょう。
●第三章
ボス戦です。
『ブレイズゲート』の主として据えられた妖との対決になります。
ひときわ強大な妖であり、苦戦は必至でしょう。
ですが、この妖を倒さねば『ブレイズゲート』は破壊できません。
活路を拓いた坂東武者たちに報いるためにも、これを打倒しましょう。
それでは、白炎盛る『ブレイズゲート』に飲み込まれた人々を救うために危険な迷宮に踏み込む皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『燎火結界』
|
POW : 自身が壁となって火を守る。
SPD : 消えそうな火を守る。
WIZ : 妖の呪術を見破り、対処する。
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それは奇妙な炎だった。
赤と青に揺らめく熾火。しかし、不思議と温かなものであるとわかっただろう。
何かを傷つけるためのものではなく、守るための力。
そのように思えた。
だが、その熾火に迫る妖たちがいた。
それが彼らにとっては、悪しきものであり、煩わしいものであると理解できているのだろう。
『ブレイズゲート』に飲み込まれて尚、他者を守らんとする力。
その源である熾火を次々と大量の妖たちが押しつぶし、踏みつけ、かき消す。その度に結界の力が弱まり、揺らいでいく。
「このままでは……」
「『永流姫』様! どうか、お下がりください。その力は御身を守るためにお使いいただかねば! このように領域を拡大されては長く保ちませぬ!」
男装の麗人貴族『皐月』の言葉に『永流姫』は頭を振る。
確かにこの『対妖要塞』が変形した鋼鉄の巨人は、己が身を守るものである。
しかし、それではダメなのだ。
「己が身一つ守り、他を犠牲にする。そんな力に何の意味がありましょう。人とは守り、支えることで己もまた助けられるもの。ならば、私が皆を守らねばならないのです」
「しかし!」
『雷棲滅鬼悪・永流姫』は頑なだった。
だが、その意志の頑なさがすべてを守れるほど強固であることには、悲しいかな、繋がることはなかった。
揺らぎ続ける結界。
やはり時間の問題であった。
この危険極まりない迷宮の中に踏み込むには、あまりにも突発的であった。
故に周辺の平安貴族たちも即座には動けない。
『皐月』は命運が尽きかけていることを理解する。だが、彼女は頭を振る。
「ならば、お命じください。我らは守るもの『世羅腐威無』、御身の望みに応えるものなれば」
「……苦労をかけます」
「いいえ。これが我らが使命なれば」
当然のこと、と『皐月』と共に坂東武者『世羅腐威無』たちは結界のうちにある人々を守るためにその力を振るい、援軍なき戦いへと身を投じるのだった――。
八秦・頼典
●WIZ
この前の一件の後に正一位に叙されたけど、色々と忙しく永流姫と皐月殿へ御礼を参る前に事件か
それに、また安倍晴明を騙る者の仕業と聞けば今度こそ尻尾を掴んでやろうとするのが探偵って奴さ
彼奴の足取りを追いたいのは山々だけど、まずはふたりと熾火の守りと行こう
や、久しぶり
大変そうだね
積もる話お互いにあるかもだけど、まずはこれをどうにかしないとね?
気が気でないふたりを余所に現場検分と行こう
ここを起点としてある無数の穴はさながら迷宮の入口
どの道ボクらはこの中を進まねばならないだろうし、ここからは絶えず瘴気を帯びた妖気が流れ込む、と
なら『凶方暗剣符』で流れを止めよう
これで少しは改善されると良いんだけどね
嘆息する。
己が身を縛るのは階位。
確かに己は貴族位階を駆け上がるものであった。
『正一位』
それこそが、平安貴族、八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)の持つ位階である。
平安貴族の中にあって天頂。
頂きに昇るものは多くのしがらみを得ることと同義である。
故に、頼典はそれを甘んじて受け入れる。
己は上手くやれているという自負があった。
だが、此度のような自体が頻発するのに対処するには、あまりにも敵の動きは早すぎた。
白炎が目の前に燃え盛っている。
『ブレイズゲート』と呼ばれる奇怪な迷宮。
妖の気配が無限に広がっているようにさえ思えてならない。
「これが陰陽師『安倍晴明』を騙る者の仕業か。なら、今度こそ尻尾を掴んでやらねばなるまいさ。これも探偵ってものの本分ってやつさ」
頼典はためらうことなく『ブレイズゲート』の中へと飛び込む。
広がる迷宮。
そしてその中で彼は見ただろう。
その赤と青の熾火を。
人目でわかる。これは結界だ。『ブレイズゲート』の中にあって、反転した『平安結界』を保つために生み出されたもの。
触れれば、これが温かなものであると知れるだろう。
誰かを守ろうとしている。
「そこにおられるのは、八秦卿であられましょうか」
その言葉に頼典は聞き知った声であると理解する。
振り返れば、そこにいたのは男装の麗人貴族『皐月』であった。
亜麻色の髪が揺れている。
「や、久しぶり。大変そうだね」
「ハッ、此度もご助力感謝致します」
「まあ、積もる話もお互いあるかもだけど、まずはこれをどうにかしないとね?」
「ええ」
頼典は近づく『皐月』の笑む。
だが、次の瞬間、頼典は己が手にした凶方暗剣符を『皐月』に突きつける。
「……何を」
「何を、とはこれ異なることを言う。君は『皐月』殿じゃあないな。妖」
頼典は己が手にした凶方暗剣符から飛び退るようにして距離を取る。そう、頼典は眼の前の『皐月』が本物ではないことを即座に見破っていた。
彼女はこのような緊急事態において、己に近づいてくることはない。
いつだって誰かを守るために戦う人なのだ。
それをただの女のように助力求めて近づいてくるようなことはしない。
「……色呆けかと思っていたが、どうやらそうではないらしいの?」
ぶれるようにして『皐月』の姿が揺らめく。
その奥に奇妙なる姿を見た。
長い手。
奇異なる姿。
「女性のことならば、ボクはちょっと詳しいのでね。その振る舞い以前に、君は血の匂いが染みつきすぎている。わからないものではないよ」
頼典は赤と青の熾火を守るように符を突きつける。
「そんなもの、焼け石に水だとは思わぬのかの?」
「だが、現に君を近づけさせていない。この結界を守る起点が、この熾火なのだろう」
「ふっ、なれば守りきってみせよ。如何に貴様が優れた者であっても、数の暴力には勝てぬまいからな」
その言葉と共に強大な妖の気配は消え、そして頼典は見ただろう。
己の道行きを阻む膨大な数の妖たちの青い炎を――。
大成功
🔵🔵🔵
源・絹子
かの高名な安倍晴明を騙るか。…いや、別世界の本人という筋もあるが。
今はそれどころではないな。
誰かを守るための炎は良いものよ。とても暖かい。
なれば、そこに付け加えよう。
巡る勾玉も使いつつ、鬼道妖仇じゃて。これで、状態異常力を高めよう。
そうして成すのは、浄化よな。妖にとっては、状態異常といってよいであろ?
これで、この熾火結界が少しでも強化されればよいのじゃが。
ブレイズゲートなぞ、無粋な。今まで守ってきたものを、簡単に奪えるとは思わぬことじゃ!!
白い炎が燃え盛っている。
そうとしか表現できない光景が眼の前にある。
『平安結界』にて守られたアヤカシエンパイアにて、その在り方を反転させるは『白炎換界陣』であった。
この白い炎の内に広がるのは『ブレイズゲート』と呼ばれる奇怪な迷宮。
蠢くは無数の妖。
この地域は陰陽師『安倍晴明』を名乗る存在によって『ブレイズゲート』へと変貌させられ、そこに暮らしていた人々毎飲み込んだ。
このままでは。
「妖に人々が喰らわれる、か」
源・絹子(狂斎女王・f42825)は、この惨状を知って深く頷く。
陰陽師『安倍晴明』を名乗る存在についても興味は尽きない。だが、今はそれどころではないのだ。
この白炎の内にて広がる迷宮にあって人々を守っている結界がある。
赤と青の熾火が揺らめいている。
これこそが人々を守る結界なのだ。
「誰かを守るための炎は良いものよ。とても暖かい」
人の営みは炎と共にあった。
原初の火が天よりもたらされたものであっても、自然に発生したものであっても、理由はどうあれ人の営みの隣りにあり、そして文明を灯すものとなったのだ。
故に赤と青の熾火を前に絹子は触れる。
優しいものだと思った。
「長く、長く生きてきた。いつだってそこに火はあった。不浄を祓うもの。なれば」
絹子の瞳がユーベルコードに輝く。
矜持がある。
鬼道衆としての霊力励起によって、誰かを、今いる世界を守るという誓いでもって赤と青の熾火を守らんとする。
「鬼道妖仇(キドウヨウキュウ)……来やれ、妖共よ」
絹子は熾火の前に立つ。
妖には浄化の力は彼らの力を減ずるもの。
故に彼女のユーベルコードは、彼女がそこにいるだけで浄化の力をためていく。
無限に増殖していく妖たち。
青い炎が揺らめくようにして絹子の周りを漂う。
「『ブレイズゲート』なぞ、無粋な」
これらは『平安結界』を裏返すもの。
この結界なくば、人々は妖の餌食となってしまうだろう。
たとえ、うたかたのように儚い人の世であったとしても、奪われる謂れなどない。
「今まで守ってきたものを簡単に奪えるとは思わぬことじゃ!!」
これを為した『安倍晴明』への怒りがこみ上げてくる。
ただ人が穏やかに暮らすことさえ許さない。
そればかりか、そうした平穏を引き裂くことで人々が悲しみと苦しみ、そして、それを為した『安倍晴明』に対する憎悪さえも愉しもうとする意思。
その悪辣なる存在を許してはおけぬと絹子は結界の力を強め、迫る妖の大群を前に対峙するだった――。
大成功
🔵🔵🔵
茂多・静穂
ブレイズゲート?
白炎換界陣?
安倍晴明?
いやもうスリーアウトじゃないですか
絶対あのクソダサファッション外道王じゃないですか…他の世界になんてご迷惑かけてやがるんですか!
いや、とりあえず今は目の前に集中しましょう、うん
巨大メイガス「ハートバインド」に首から下を一体化した状態で参戦
要はあの迫る大群からアレを守ればいいわけですね
なら私向けです!
UCを発動し迫る妖たちを真正面に捉えてその攻撃をメイガスと私の体で受け止めます!
んんっ、すっごいボコボコのギタギタにされてるぅ!
ありがとうございました、ではお返しです!
受けた衝撃を倍加しメイガスの拳から放射
大群を熾火近くから吹き飛ばします
他方向の群れも連続対処!
陰陽師『安倍晴明』。
その名を知る者たちがいる。いや、『安倍晴明』の名は三十六ある世界においても多く知られるところの名であったことだろう。
しかし、その名に特別性を見出す事のできるもの達がいる。
「『ブレイズゲート』?『白炎換界陣』?『安倍晴明』?」
茂多・静穂(千荊万棘・f43967)は、己が耳を打つワードに眉根を寄せる。
言葉を紡ぐ度に首を傾げる。
こき、こき、と首の骨が鳴る。
「いやも、スリーアウトじゃないですか」
そう、彼女は知っているのだろう。
陰陽師『安倍晴明』が如何なる存在であるかを。
「絶対あのクソダサファッション外道王じゃないですか……他の世界になんてご迷惑をかけてやがるんですか!」
静穂は怒り心頭であった。
しかし、彼女は頭を振って冷静になる。
そう、今は『安倍晴明』ではない。『安倍晴明』がしでかした始末をつけることが優先だった。
『ブレイズゲート』は彼女たち……灼滅者たちにとっては馴染み深い言葉であったかもしれない。
白い炎が燃え盛る用に見えるという奇怪な迷宮。
このアヤカシエンパイアにおける『平安結界』を裏返すようにして喰らう『ブレイズゲート』に巻き込まれた人々がいる。
生み出された『ブレイズゲート』はこの地域周辺の人々を飲み込んでいる。
そして、その中で赤と青の熾火による結界が唯一人々を守っている砦となっているのだという。
「なら、私はあれを守ればいいんですよね!」
迫るは妖の大群であった。
かつて『ブレイズゲート』でもそうであったように、多くの妖たちが増殖し成長しているのだ。
「なら、私向けです!」
巨大メイガス『ハートバインド』に埋まるように搭乗した状態で静穂は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
自身の反応速度を強化し、自身の肉体でもって迫る妖を受け止める。
攻撃は出来ない。
しかし、彼女が正面に捉えた妖の突撃を尽く受け止めるのだ。
「痛みは受けるのみならず(ペインズアブソリュートカウンター)!」
そう、彼女はあらゆる妖のこうげきを己の肉体で受け止め続けているのだ。
滅多打ちであった。
それはもう類を見ないほどに取り囲まれての妖たちの突撃。そのいずれもを静穂は避けなかった。
「んんっ、すっごいボコボコのギタギタにされてるぅ!」
なんだか悦んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
相当な痛みが走っているはずだ。
だが、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「ありがとうございました! では! お返しです!」
身に受けた突撃をサイキックエナジーで倍加した拳が衝撃波となって放たれる。
赤と青の熾火を背にしながら静穂は迫る大群を一気に吹き飛ばす。それはあまりにも理外なる一撃であったことだろう。
そう、静穂は己が攻撃を受ければ受けるほどに彼女の被虐精神は高められるのだ。
あまりにも理不尽なるユーベルコード。
それによって妖たちは静穂に近づくことすらままならず、その高められた衝撃波でもって撃退されるしかなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
桐藤・紫詠
エイル……数多の世界で共有される名……そしてサイキックハーツにおける『白の王』と称されている清明ことセイメイ……
しかし今は時間が惜しいです
――『炎は消える』、『人々は命を落とさない』
それを複合し……
――炎天の 消える時には 人はあり
紡がれた『指定した事象を『否定』する事象を起こす詩』が紡がれて『炎が消える事によって人々の生命は失われずに済んだ』という『炎と人々の落命の否定』を成す
ブエル……恐らくあの悪魔はダークネス『ソロモンの悪魔』だったのでしょう
となれば……案外と、因縁はあるのかもしれませんね……アヤカシエンパイアとサイキックハーツは
止事無き身分の方『雷棲滅鬼悪・永流姫』。
彼女の存在は秘されてきた。
その姿を見た者は多くない。ほとんどが社の簾の奥に座しているばかりであったし、坂東武者『世羅腐威無』と呼ばれる集団が警護についている物々しさは、彼女は只者ではないことを示していた。
そして、数多の世界を知る猟兵たちの中には、彼女の名前……その音に聞き覚えのあるものいたかもしれない。
『エイル』
時に名前を換え、しかし、何かのつながりを感じずにはいられない名前である。
初めてその名が確認されたのはクロムキャバリアであり、その名を持つ亜麻色の髪の少年がブルーアルカディアでも確認された。
桐藤・紫詠(黄泉詩の皇族・f42817)は、そんな情報を知ったのだろう。
「『エイル』……数多の世界で共有される名……そしてサイキックハーツにおける『白の王』と称されている『安倍晴明』こと『セイメイ』……」
何かつながりがあるのか。
それとも違うのか。
考え方がはあっているのか。
彼女の頭の中には思考が渦巻く。
「ですが、今は時間が惜しいです」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
平安詩浄土変・否定を否定する詩(ヒテイヲヒテイスルウタ)は、彼女の言葉をもって事象に否定を突きつける力である。
すなわち、今の彼女が望むのは二つ。
「――炎天の 消える時には 人はあり」
読み上げる歌によって、ユーベルコードの輝きは、迫る妖の放つ炎をかき消す。
如何に結果に阻まれているとは言え、『ブレイズゲート』に巻き込まれた人々の生命が掛かっているのだ。
彼女の読み上げた詩は、事象を否定する。
それによって妖の攻勢を阻むのだ。
守るべきは結界を維持するために必要な赤と青の熾火。
これを失っては『ブレイズゲート』内にて人々を守る結界を維持できなくなってしまうのだ。
故に紫詠は迫りくる大群の妖たちに向き直る。
熾火を守りきっても、あの大群を処理しなければならない。そして、『ブレイズゲート』の主として据えられた強大な妖も討たねば、この戦いに終わりは見えないだろう。
「いくつもの因縁は、因果と呼べるものへと転ずるのでしょう」
|『悪魔』《ダイモン》と呼ばれた存在。
他世界の大いなる戦いにも現れた『ブエル』なる|『悪魔』《ダイモン》もまたサイキックハーツに因縁を持つオブリビオンであったのかもしれない。
「アヤカシエンパイア、サイキックハーツ……骸の海に浮かぶ三十六世界。如何なるつながりがあるのだとしても」
紫詠は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
彼らが齎す滅びを否定しなければならない。
世界を滅ぼすのがオブリビオンであり妖だというのならば、己達はそれを阻む戦士なのだ。
それは滅びに囲まれた世界であっても平穏に生きる人々を守るための戦いでもあるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
武富・昇永
({早馬・餓狼黒鹿毛}で駆け抜けながら{伏竹弓・勲功必中撃抜弓}で熾火に近づく妖を騎射する)
『皐月』さま!『永流姫』さま!御久しゅうございます!
お初に目にかかる!『雷棲滅鬼悪』どの!
俺は青天井の昇り鯉!武富・昇永!
皆様の御身が危ういと聞き取る物も取り敢えず馳せ参じました!
俺が来たからにはもうやつらの好き勝手にはさせません!
熾火を絶やさんとする不埒な輩なぞ箒で掃うかのように散らして見せましょうぞ!
(騎乗したまま武具を{妖切太刀・御首級頂戴丸}に切り替え抜刀するとUC【出世道・雑兵首まとめ狩り】で敵を攻撃する)
さぁ向かってくるがいい!妖ども!
貴様らの首が跳ね飛ぶたびに俺の立身出世の道が拓けるのだ!
武富・昇永(昇鯉・f42970)は颯爽と疾駆する。
彼が駆るは『早馬・餓狼黒鹿毛』であった。その速度は凄まじきものであり、結界を維持する赤と青の熾火に迫らんとしていた妖の群れを瞬く間に騎乗より射掛けることでもって撃滅せしめていた。
「『皐月』さま!『永流姫』さま!」
彼は結界の内部にあり、そして維持するために鋼鉄の巨人に変形した社を認め、馬上にて一礼する。
そう、あれなる鋼鉄の巨人を昇永は知っていた。
かつて、止事無き身分の方『雷棲滅鬼悪・永流姫』よりの文によって妖に対処するために赴いた際に彼は知ったのだ。
あれなる巨人こそが守りの要。
今も白炎に飲み込まれた周辺地域に残された人々を守るために、ああやって結界を維持しているのだろう。
故に駆けつけた。
周辺の平安貴族たちが状況を飲み込むための時間を彼は惜しいと言わんばかりに早馬によって駆けつけたのだ。
いの一番に、となれば止事無き方にも覚えよろしかろうという打算がないのかと問われれば、それもあると応えるだろう。
だが、民草のために、守るために力を振るう『雷棲滅鬼悪・永流姫』に昇永は好感を持っていた。一度は自らの身を守るだけの力と猟兵に助力を要請したことも快く思わな方が、しかし、心を改めたのだ。
彼女は救わねばならない方だと。
己が身を顧みぬ者ならば、これを守るのが己の務めと結界に彼は呼びかけた。
「武富卿、よくぞ駆けつけて下さいました」
「御久しゅうございます!」
「堅苦しい挨拶は抜きと致しましょう。ですが、これだけは言わせて下さい。ご助力感謝いたします」
「なんの! 俺は青天井の昇り鯉! 武富・昇永! 皆様の御身が危ういと聞き、取るものも取り敢えず馳せ参じました! 俺が来たからにはもう奴らの好き勝手にはさせません!」
昇永は己が弓を掲げて見せる。
その上昇志向の塊用な姿に『雷棲滅鬼悪・永流姫』は変わらぬものだと僅かに笑むようだった。
斯様な窮地にあって、笑む余裕が生まれたことは喜ばしいことだった。
「なれば、ご照覧あれ! これなるは、出世道・雑兵首まとめ狩り(ゾウヒョウクビマトメガリ)!」
昇永は大張り切りであった。
ユーベルコードに輝く瞳。
手にするは『妖切太刀・御首級頂戴丸』。対するは妖の大群である。
「さぁ向かってくるがいい! 妖ども!」
大見得を切るようにして昇永は、その巨大化した太刀を振りかぶる。凄まじい膂力を要するであろう大太刀を彼は振るい、横一閃によって迫る妖の群れを一刀両断してみせるのだ。
飛び散る妖たちの首。
その光景に昇永は笑む。
そう、妖の首が飛ぶ度に己の立身出世の道が拓けるのだ。
この活躍はきっと『雷棲滅鬼悪・永流姫』も目を留めてくださることだろう。となれば、さらなる位階へと叙されることもあるだろう。
「どんどん来るがいい! この結界の要たる熾火は何人たりとも潰安ことは出来ぬとしれ!」
昇永は、掲げた太刀を妖へと向け、その名が示すように位階駆け上がることが確約された未来へと邁進するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
いろいろとなぁ、見て回ることにしてるんだが。この世界は初めてだな。
しかし…やることがえげつないっての。
熾火の結界を守ればいいんだろ?
なら、少しでも浄化の可能性にかけてみるか。
凍炎不死鳥は、ちょうど浄化作用持っててな。それが高速で動いて、できるだけ広い範囲に浄化属性を齎すように。
しっかし、元気に飛び回ってるな、凍炎不死鳥のやつ…そんなに飛びたかったか。
…炎ってのは、厄災をもたらす側面もあるだろうさ。
だがな、こうして寄り添う面もあるんだよ。だから、俺様もここに来た。
俺様も、そういうようになれたんだからな。
多くの見聞を広めること。
それが自分の役目であり、役割であろうと思える。
猟兵に覚醒した時、それを自覚した。
ゲーム世界ゴッドゲームオンラインにて発生した存在であっても、他世界は驚きと発見に満ちている。
「これは……なんとも。やることがえげつないっての」
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)はアヤカシエンパイアなる世界に訪れるのは初めてであった。
滅びた大地より隔絶する『平安結界』。
この結界の中でのみが人々の生存圏。そして、この内部にて人々は妖の存在も、すでに結界の外の大地が滅びていることも知らぬのだ。
全ては平安貴族達によって維持された危うい世界。
だからこそ、その『平安結界』を喰らい、反転する『白炎換界陣』はヒトの所業ではなかったのだ。
陰陽師『安倍晴明』による策動。
これによって、この周辺の『平安結界』は裏返り、人々を飲み込んだ奇怪な迷宮へと変貌しているのだ。
既のところで内部に結界を張り直して人的被害を免れているが、しかし、それも時間の問題であったことだろう。
『ブレイズゲート』と化した周囲からは妖が大群となって迫っている。
人々を守る結界の要、赤と青の熾火を潰えさせんとしているのだ。
「この結界の要、熾火を守ればいいんだろ?」
なら、とヌグエンは己が使役する凍炎不死鳥の力を頼みにする。
凍炎不死鳥の癒羽(ゲローフラマ・フェニックス・サーナーティオ)は、それ自体が浄化の羽となってあらゆる毒性や、不肖を癒やすのだ。
ならば、結界をも修復することができるかもしれないのだ。
「おいおい、あんまりにも元気がよすぎやしないか」
ヌグエンは己の指示によって飛び回る凍炎不死鳥の速度に目を見開く。
「そんなに飛びたかったのか」
答えは帰ってこないが、それでも飛ぶ様を見ればわかるところである。
しかし、迫る妖の大群はなんともしがたい。
このままでは時間とともに結界がすり潰されてしまうだろう。
「……炎ってのは、厄災を齎す側面もあるだろうさ」
炎一つとっても、今回の事件を見れば多くの側面を見せる。
滅びを齎す炎。
他者を守る炎。
ぬくもりを与える炎。
不浄を祓う炎。
多くの側面を持つのは、その力の多面性そのものであった。
「だがな、こうして寄り添う面もあるんだよ」
だから、とヌグエンは己が力の発露を示す。
この凍れる炎は他者を傷つける力に違いあるまい。脅かす力だ。強大過ぎる。わかっている。
だが、この力の使い方を謝らなければ、他者を守ることもできよう。
「だから、俺様もここに来た」
戦いは、過ちによって災禍へと堕す。
ヌグエンは示す。
己もまた他者を守る存在になれたように、以下に白炎が人々を落といれるのだとしても、きっと別の炎がこれを守るだろうと。
そのためにヌグエンは迫りくる大群から熾火を守るように立ちふさがるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
守る力、か。
どんな逆境でも折れねえ、何があっても自分を失わねえ、自分より劣った奴だからって踏みつけにしねえ。そういう力には、正直憧れがある。
生憎おれはちっぽけなただの人間だから、そういう力が今の自分にあるんかどうか実感は無えけど……それでも、出来ることはやりてえな。
ともかく、どんどん増える妖を何とかしなくちゃな。怖ぇけど。
熾火を消すために寄って来るんなら、熾火を中心に罠になるモンを張りゃあいい。
迫りくる妖をUCで攻撃して、ついでに五感を奪ってまともに動けねえようにする。
勿論妖にも五感を封じられたくらいじゃなんともねえ奴もいるだろうから、そういう奴は〈スナイパー〉ばりの一撃で狙い撃ちだ。
憧憬にも似た思いがある。
守る力。
それは己のためではなく他者のために振るう力のことを言うのだろう。
強き者が弱き者を助ける。
勧善懲悪とも言うべき世界のあり方を今も夢想する。
そうであって欲しいと願うからこそ、その力は尊ばれるものであったし、憧れるものであった。
「どんな逆境でも折れねぇ、何があっても自分を失わねえ、自分より劣った奴だからって踏みつけにしねえ」
そういう力に憧れがあるのだと、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は戦いに際して恐れを抱きながらも、しかし憧憬の力を見上げることをやめられなかった。
自分がどんな人間なのかを嵐は知っている。
ちっぽけであるし、力がお世辞にも強いとは言い難い。
猟兵としての力だって、そこまで強いとは自分では思えない。
自分が恐れを抱いてしまうのも、変えようのない性分であるのかもしれない。
「……それでもできることはやりてえんだ」
嵐は己の背に守る赤と青の熾火を見やる。
あれは温かな力だ。
守るための力。
この『ブレイズゲート』となった『平安結界』にあって、それでも他者を守るために張り巡らされた力だ。
これを守りきらねば妖たちは人々を喰らうだろう。
そんなことはさせてはならない。
無為に生命が奪われてはならない。
これ以上己が感じる以上の恐れを他者に味あわせてはならない。
「怖ぇけど!」
迫る大群を前に嵐の瞳がユーベルコードに輝く。
手にした『ブルースハープ』に息を吹き込む。
旋律が走るようにして『ブレイズゲート』の内部へと伝わっていく。
それは奇妙な響きの音波であった。
「――!?」
妖たちは目を見開く。
ぐるり、と視界が回ったかと思った瞬間、視界が真っ黒に染まったのだ。
いや、染まったのではない。
失われたのだ。
見えない。何も聞こえない。何も感じない。
一体どういうことなのかわからないが、しかし妖たちはあの奇妙な音が響いた瞬間、このような事態に放り込まれてしまったのだ。
「我が奏でるは魔笛の旋律。惑い、狂い、捻じ曲がれ」
伝承幻想・魔笛ノ旋律(ワンダーファンタズム・ウィキッドメロディ)。
それが嵐のユーベルコードだった。
彼のユーベルコードは妖の五感を消失させ、彼らをその場に押し留めたのだ。
もがくように大地で手足をばたつかせる。
「うまく嵌ったみてえだな」
嵐は妖の大群が混乱に陥り、こちらに向かうことすらできない姿を認めて息を吐き出す。
とは言え、このままでいいわけがない。
『ブレイズゲート』の主に据えられている妖を倒さねば、この奇怪な迷宮は消えない。そして、この内部に囚われている人々の安全も確保できないのだ。
なら、己が進むべき道は、もっとも恐ろしいものであろう。
「だからって立ち止まっていられるかよ」
恐れを抱く者が唯一保ち得るカードは、唯一つ。
恐れに立ち向かう。
ただそれだけなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
『永流姫』と『皐月』さんは、ステラさんへの対応があったかすぎます。
いいんですよ、もっと塩対応で。
だってほら、ステラさん、『エイル』さん絡むとドMですから、
塩対応でも十分喜びますからね。
っていうか、あまりあったかな対応すると、呼吸止まりますし、
と、そんなことを練乳チューブを咥えながら虚ろな目でぼそぼそ言っていたら、
いきなり名前を呼ばれてちょっとびっくり。
(あっこれ、ユーベルコードのやつだ)
と、なんとなく以心伝心。
すかさず【PA-Acoustics】を取り出して、ステラさん愛の叫びをアンプで増幅。
今日の鼓膜破壊はステラさんの雄叫びですよー♪
わたしも【皇帝賛歌】で効果倍増させますけどね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!
メイド参上しましたっ!
永流姫様に、皐月様!ここはメイドと勇者にお任せくださいっ!
しかし安倍晴明の捨て台詞
人の営みに良心……やはりエイル様の行き着く先は……セラフィム?
ともあれ永流姫様がこの地にて『人』と共に生きる事を選んだとて
『エイル』様に変わりはなく
ならばメイドが奮闘するには十分です!
ルクス様!こういうシーンにはめちゃくちゃ耐性のありそうなルクス様!
ちょっと私、今から愛を叫びますので後の細かいことはお任せします
せーの
エイル様のー!!!! 香りがしまぁぁぁぁぁぁすっ!!!!
|【押しかけメイドの本気】《誰がやべーメイドですか》!!
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!」
『ブレイズゲート』に響き渡る声。
それは妖たちの上げる奇怪な声よりも鮮烈であり、それらを切り裂くようであった。
一言で言えば、強烈なインパクトがあった。
誰だ?
この叫びは誰が上げている?
もはや言うまでもない。
毎度おさわせしております。
「メイド参上しましたっ!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)ことメイドである。いや、ステラことメイド。逆であるというツッコミがルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)から入りそうであったが、彼女は練乳チューブを咥えていた。
チューブの口をガジガジしている。
「『永流姫』様に、『皐月』様! ここはメイドと勇者にお任せ下さいっ!」
ステラの言葉に結界の全面に立つ鋼鉄の巨人に座す『雷棲滅鬼悪・永流姫』は微笑む。
心底安心したような表情であった。
「心強きご助力感謝致します。どうかこの結界の維持にご協力いただきたく存じ上げます」
「御拝命致しました!」
ステラは鼻息荒くふんすふんすと拳握りしめていた。
その姿にルクスは正直やべーな、と思った。
というか、『雷棲滅鬼悪・永流姫』はとてもやさしい。あったかすぎると言ってもいい。
「いいんですよ、もっと塩対応で」
ルクスは思わず言葉にしていた。
なんていうか、ステラは『エイル』が絡むと、ドがつく感じのMなのだ。
塩対応でもステラは喜び勇んで大変なことになるだ。
ルクスはいつものことなので練乳チューブをかじりながら、虚ろな目でボソボソと告げる。
その言葉が耳に入っていたのだろう『雷棲滅鬼悪・永流姫』はなんとも曖昧な表情を浮かべることしかできないでいた。
そういう微妙な空気の中にあってなお、ステラはいつもどおりであった。
「しかし『安倍晴明』の捨て台詞。人の営みに良心……やはり『エイル』様の行き着く先は……『セラフィム』?」
考える。
人の営みに迎合したのが『雷棲滅鬼悪・永流姫』であり、悪性と善性に揺れる良心を保ち得るのが『セラフィム』であるというのならば、アヤカシエンパイアにおける男装の麗人貴族『皐月』とは如何なる存在なのか。
「ともあれ、『永流姫』様がこの地にて『人』と共に生きることを選んだとて、『エイル』様に変わりなく。ならば、メイドが奮闘するには十分です! ルクス様!」
その言葉ルクスはビクッと肩を震わせる。
さっきまで虚ろな目でもう吸い上げても吸い上げても練乳が出てこないチューブをガジガジしていたルクスはびっくりしたが、同時にこれはユーベルコードの要請だな、と理解する。
なんとなく以心伝心出来ている所が、相棒感あってよいよね。
「ルクス様! こういうシーンにはめちゃくちゃ耐性のありそうなルクス様!」
ステラが示すのは、結界を維持する赤と青の熾火に迫る妖の大群であった。
これを排除しなければ、結界内部の人々を守れない。
故に、熾火を潰えさせるわけにはいかないのだ。
「ちょっと私、今から愛を叫びますので後の細かいことはお任せします」
「今なんかヤベーこと言いましたよね?」
「問答無用! せーの!」
せーの、じゃないが、とルクスは思ったが、皇帝讃歌(コウテイサンカ)によってステラの叫びに指向性をもたせる。
あの叫びがこちらに向いたら鼓膜と三半規管がないなってしまう。
それを防ぐために結界めいたものをステラの両脇に生み出し、指向性を保たせたのだ。
「『エイル』様のー!!!! 香りがしまぁぁぁぁぁっす!!!!」
二回目であった。
炸裂した叫び。
押しかけメイドの本気(マワリトノニンシキノチガイ)とも言うべき炸裂する叫びは、一瞬で大群を吹き飛ばす。
いや、吹き飛ばしたのではない。
一斉にドン引きさせたのだ。
何あの、なに?
そんな妖たちの反応にルクスはさもありなん、と思った。
だが、指向性を持つことでロスなく放たれたステラの叫びは妖たちを混乱させる。
愛? 愛ってなんだっけ?
そんな具合に妖たちは混乱しきり、ステラの愛に膝をつくしかないのだ。
「愛は勝つのです!」
「いえ、主にステラさんのヤベー感じに混乱しているだけだと思いますけど」
「愛は勝つのです――!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
地域一帯をブレイズゲートに飲み込む…厄介だな…
…幸いなことに防衛機構というか結界の一部が生きてるようだしこれを守るよう動くか…
…赤と青の熾火が起点…これを守らないといけないみたいだな…
……【新世界の呼び声】を使用…ここら一帯を私の仮想現実と交換してしまうか…
…『燃えさかれ』と熾火の力を増幅して…向ってくる妖達に『止まれ』『動くな』と命令をして動きを止めたり鈍らせたりして…
…そこを(居るなら坂東武者達と連携しつつ)黎明剣【アウローラ】と術式装填銃【アヌエヌエ】で打ち倒していくとしようか…
…ひとまずはこの調子で守りに専念しながら数を減らすとしようか…
陰陽師『安倍晴明』が『平安結界』を反転させ、食らわせることによって生み出した『ブレイズゲート』は白炎が燃え盛るようなさまを見せていた。
内部に踏み込めば、そこは奇怪な迷宮。
そして大量の妖たちが蠢く人外魔境であった。
「地域一帯を『ブレイズゲート』に飲み込む……厄介だな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は改めて、『安倍晴明』の『白炎換界陣』が恐るべき力であることを知る。
『平安結界』はアヤカシエンパイアを支える結界である。
すでにアヤカシエンパイアの結界の外は滅びている。どうなっているのかも定かではない。
しかし、この結界内部では穏やかな暮らしが流れているのだ。
全ては平安貴族達によって維持されているのだ。滅びに際しても、涙ぐましくも結界を維持しつづけ、営みを続けているのだ。
これを食らわんとする悪意がある。
「……幸いなことに防衛機構というか、結界の一部が生きているのか」
『ブレイズゲート』の一角。
そこに座す鋼鉄の巨人を前面に、その背後に広がる結界は、赤と青の熾火によって飲み込まんとする白炎を退け続けている。
「……とは言え、時間の問題か。結界の起点、赤と青の熾火を守らないと……」
メンカルは即座に状況を理解する。
猟兵たちがやらねばならないことの一つ。
まずは結界の起点を潰そうとする妖たちから、これを守らねばならないのだ。
「新たなる世界よ、換われ、染めろ。汝は構築、汝は創世。魔女が望むは万物統べる星の声」
指先がなぞるは眼の前の空間。
メンカルのユーベルコードによって構築された仮想現実と空間が交換される。
新世界の呼び声(ハロー・マイワールド)によって、仮想現実世界は、メンカルが最上位者である。
すべての権限は彼女が保ち得る。
そして、彼女が示す。
「……『燃え盛れ』」
赤と青の熾火がメンカルの言葉によって膨れ上がり、その力を強めていく。そして、その燃え盛るさまを見て妖が殺到する。
まるで誘蛾灯だな、とメンカルは思っただろう。
あの熾火を妖は消さずにはいられない。
だが、消されれば結界は維持できない。なんとも矛盾したことである。
「……『止まれ』」
一言告げる。たった一言。
それだけで最上位者であるメンカルの命令に妖たちは逆らえない。
「……ッ!!」
「……一先ずは、守りに専念させてもらおうかな」
彼女は手にした黎明剣『アウローラ』を構える。
未だ坂東武者の集団『世羅腐威無』は結界から出てこない。まだ準備が整わないのかもしれない。
ならば、とメンカルは動きを止めた妖たちを翻る剣でもって打ち倒し、彼らが飛び出してくるであろう道筋をつける。
ここからは長い戦いになる。
なにせ、この奇怪な迷宮『ブレイズゲート』には妖が無限とも言えるほどに大量に出現してくるのだ。
猟兵たちが『ブレイズゲート』の主として据えられた妖を打倒するまえ持ちこたえなければならない。
故にメンカルは彼らが十全な力を発揮できるようにと己が生み出した仮想現実世界でもって妖の数を減らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
「さて、テスタロッサをかっ飛ばしてブレイズゲートとやらに乗り込んでみたが…」
SPD
「何処もかしこも妖だらけ。確かに時間が無さそうだ。急いで合流しないとな」
おっと…あんたは坂東武者の主さんだったか?久しぶりだな
これもひとつの縁って奴かね。微力ながら助太刀に来たぜ
それが例の熾火かい?…成程ね。不思議と暖かくて力が湧いてきそうな、そんな光だ。
猶更これ以上消させる訳にはいかないな。
本命を叩く前にまずは安全確保だ。ホルスターから雷鳴を取り出し、迫りくる妖に狙いを定める
さあ、こっから反撃の狼煙を上げようじゃないか!
アドリブ歓迎
視界の端に流れるは白炎。
奇怪な迷宮『ブレイズゲート』は、どこを見ても白炎に囲まれ、大量の妖たちが蠢く魔境そのものであった。
宇宙バイクにまたがった星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、勢いよく『ブレイズゲート』に飛び込んだのは良いものの、あまりの数の多さに辟易するようだった。
「何処もかしこも妖だらけ」
だが、嘆いている時間はあまりにも少ない。
敵の狙いは『ブレイズゲート』の内側に残された人々を守る結界の起点、赤と青の熾火を潰えさえることである。
「確かに時間はなさそうだ。急いで合流しないとな」
祐一は宇宙バイク『テスタロッサ』を駆り、妖の群れを蹴散らしながら結界の前面へと飛ぶ。
あの結界の前面は鋼鉄の巨人が立っている。
恐らく、あの鋼鉄の巨人が結界を生み出している源でもあるのだろう。
赤と青の熾火は、囲うための起点。中継点とでも言えばいいか。
「おっと……あんたは坂東武者『世羅腐威無』の主さん、だったか?」
「ええ、ご助力感謝いたします、猟兵の方。心強くあります」
「久しぶりだなっていう挨拶は抜きにしたほうがいいな。これも一つの縁ってやつだ」
微力だなが、と笑う祐一に鋼鉄の巨人に座す『雷棲滅鬼悪・永流姫』は頭を振って笑む。
「その御力こそが我らには必要なのです。どうか我らが民をお救いください」
「任せておきな! とりあえず、あの熾火を守ればいいんだな?」
「はい。あれなるは結界の起点。かき消されれば、結界覆う力も弱まってしまいます」
祐一はなるほど、と思った。
熾火は冬の寒さを和らげるような不思議な温かさを感じるようだった。
「なおさらこれを消させるわけにはいかないな!」
ホルスターから熱線銃を取り出し、祐一の瞳がユーベルコードに輝く。
迫る大量の妖たち。
どうやら妖たちは、この熾火に引き寄せられているようだった。
まるでこれを消さねばならぬという欲求にかられているようでもあった。
「どうしてお前らがこれを消したいのかは知らないが……結界の中にいる人達を危険にさらすわけにはいかねーんだよ!」
炸裂する冬雷(トウライ)の一撃。
熱線銃より放たれる一撃が一直線に伸び、迫る妖の群れを穿つ。
その一撃の強力さは言うまでもない。
「お見事でございます」
「まだまだ。こっから反撃の狼煙を上げようじゃないか!」
その言葉に応えるように結界の内部から鬨の声が響き渡る。
勇ましき声であった。
祐一は振り返る。そこにあったのは、青き熾火を身に宿す坂東武者『世羅腐威無』を率いる男装の麗人貴族『皐月』の姿があった。
亜麻色の髪が揺れ、その黒い瞳がまっすぐに妖の大群の奥に座す『ブレイズゲート』の主を睨めつける。
祐一は知るだろう。
これが彼の言った通り反撃の狼煙である。
ここから打って出る。
そして、『ブレイズゲート』の主たる妖を討つ。これこそが己たちに課せられた使命。
迫りくる妖を見やり、祐一はやってやろうじゃないかと己が熱線銃を構えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『青鷺火』
|
POW : 青の吐息
【口から吐く炎の吐息】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【青い炎】で攻撃する。
SPD : 燃え上がる翼
【青白い輝きを纏う翼】が命中した対象を燃やす。放たれた【輝く】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 五位の火
【怪しげな青白い光】を放ち、命中した敵を【幻惑と青い炎】に包み継続ダメージを与える。自身が【仲間と飛翔】していると威力アップ。
イラスト:某君
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
結界の内側から、青い熾火が揺らめく。
それは坂東武者の集団『世羅腐威無』たちが憑依合体によって力を得た姿でもある。
陣頭に立つは男装の麗人貴族『皐月』であった。
亜麻色の髪が揺れ、黒い瞳が奇しくも同様に青き火を身に宿す妖の群れを睨めつける。
結界の中より彼らは飛び出し、結界を維持する鋼鉄の巨人に座す『雷棲滅鬼悪・永流姫』に膝をつく。
「『世羅腐威無』、支度整いましてございます。我らが不手際を猟兵の方に補って頂いたこと、感謝の念に絶えません。ですが、これよりは我ら『世羅腐威無』も戦います」
「オオオッ!!!」
勇ましき咆哮が坂東武者『世羅腐威無』たちから湧き上がる。
その声を受けて迫る妖の群れ『青鷺火』は笑う。
如何に勇猛果敢なる者たちがそろおうとも、己たちの数を見ろと見より放つ青い炎と共に周囲を飛び舞う。
「恐れることはございませぬ。我らが皆さまの活路を開ます。御覧ください。あれなるは、この奇怪な迷宮の主」
『皐月』が示すは、青い炎の奥に揺らめく影。
あれが『ブレイズゲート』の主に据えられた妖なのだと猟兵達は理解する。あの妖を討てば、この『ブレイズゲート』は消滅する。
そのための道を拓くために『世羅腐威無』たちが協力してくれるというのだ。
「征きましょう。『戦いに際しては心に平和を』――」
桐藤・紫詠
ええ、行きましょう!
幻影使いで青鷺火の認識を惑わす幻影を作り出し、そこに気を取られている間にUCを発動
UCを妖の半分を対象として『猟兵の敵のみを汚染する世界の敵の毒』で汚染
理性を飛ばして『猟兵の敵』のみを襲う天上界の獣に変換していく
これで『猟兵の敵』のみを襲う天上界に……最も、過去猟兵との戦いでは有効打にはならないでしょうが
影の詩を謳い、そのまま妖のUC『五位の火』を幻影使いで天上界の獣と化した妖を誘って受け止め、そのまま残った天上界の獣を嗾けていく
さぁ、どう出ますかね――黄泉詩を謳いながら、紫詠は呟くのであった
結界の中から飛び出したのは勇ましき坂東武者たち。
憑依によって得た青き炎を纏う姿は、頼もしきものであったことだろう。
だが、奇しくも相対するは青き炎を灯す妖『青鷺火』であった。
怪しく笑いながらも、その青白い火は相対する者すべてを惑わすようであった。
「むだむだむだむだ。すべてがむだにして、むい」
「どんなにあらがっても、とうにほろびているのに」
抵抗を嘲笑うかのような『青鷺火』たちの声に桐藤・紫詠(黄泉詩の皇族・f42817)は頭を振る。
すでにアヤカシエンパイアの『平安結界』の外は滅びている。
滅びの大地が広がっているのは承知の上で尚、結界の中の穏やかな日々を守らんとするのが平安貴族である。
如何に告げられることが真であったとしても、立ち止まる理由にはならないのだ。
「ええ、行きましょう!」
彼女の瞳は敵を射抜く。
例え、己達を惑わす光があるのだとしても、紫詠はためらわない。
その瞳はユーベルコードに輝いていた。
意志に満ちていた。
負けてはなるものかという気概に満ちていたのだ。
「余は謡う、この世界を浄土とする為に。蜜なるは毒、毒なるは蜜。其れは世界の敵にとっては毒であり、世界の敵の敵にとっては蜜である」
平安詩浄土変・天上界の波羅蜜たる毒(テンジョウカイノハラミツタルドク)は、猟兵の敵――すなわちオブリビオン、妖のみを汚染する世界の敵の毒を発する。
「あ、が、ががっがが」
『青鷺火』たちの半数が紫詠のユーベルコードによって汚染され、天上界の獣へと変貌していく。
その瞳に理性はない。
あるのは、敵意のみであった。
敵を屠る。
猟兵の敵。
それを滅するためだけの意志に塗れ、獣へと変じた『青鷺火』たちは同胞たる妖へと襲いかかるのだ。
同士討ち。
だが、ここは『ブレイズゲート』である。
妖は無限に増殖し成長していくのだ。
半数を持ってこれを制するのだとしても、後から湧出するように『青鷺火』たちが迫りくる。
「有効打になりえませんか……」
「ですが、敵の勢いは削がれました。どうかお早く。我らが切り開かれた道は支えましょう」
坂東武者の集団『世羅腐威無』たちが、紫詠の進むべき道を示す。
そう、この道の先。
『ブレイズゲート』の主に据えられた大妖が座す場がある。
白炎に揺らめく影。
それこそが、この『ブレイズゲート』を維持している妖なのだ。
「頼めますか」
「こちらがお頼み申すところ。どうかお早く!」
「痛み入ります。では」
紫詠はそう告げて、切り開かれた道を往く。
己が詠う詩と共に。首魁たる敵を打倒さんと、青白い炎が立ち上る道をさっそうと駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
八秦・頼典
●SPD
何時見ても『世羅腐威無』の忠勇義烈さには関心するあまりだ
皐月殿の捜索、前回の対妖要塞攻防での妖の雑兵を相手に取った勇猛さは今も健在
そして、ようやく本物の永流姫と皐月殿と合流したようだね
彼らを信ずればここを任せても良いだろうが、群れの数が数だ
ここは手早く、板東武者らと皐月殿の手を借りながらとあやしてあげようじゃないか
燃え上がる翼…うん、妖しくも青白く燃える翼は優美だ
しかし、ボクの翼もまた鳴神の如く輝きをもってして、迷宮内に雷鳴を轟かそう
オン、『雷電の大鷲』
上空より迫る妖鳥へと雷電の疾さで輝きを輝きで掻き消す
世羅腐威無よ、弓を引け
迷宮を照らす稲妻の輝きを目印に妖鳥を射るのだ
じゃ、急ごうか
勇猛果敢。
その烈士の如き戦いぶりは、まさしく。
「忠勇義烈。感心するしかないな」
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は、憑依合体した青い炎と共に『ブレイズゲート』を駆け抜ける坂東武者の集団『世羅腐威無』の背を見やり、そう呟いた。
かつて見た彼らの戦いぶりを知っていたからこそ、此処を任せるに値すると頼典は判断する。
「どうかお早く、八秦卿!」
「ここは我らが抑えますれば! どうか大妖を討ち果たしてくださいませ!」
彼らの声に頼典は応える。
すでに彼が遭遇した男装の麗人貴族『皐月』に化けた妖は姿を消している。
結界を生み出し、守護している鋼鉄の巨人に座す『雷棲滅鬼悪・永流姫』と、その結界から出陣の用意が整って飛び出した『世羅腐威無』。
そして、これらの陣頭に立つのは本物の『皐月』であった。
黒い瞳が頼典とかち合う。
言葉はあまり必要ないかもしれない。
頼典は一つ頷く。
言葉をかわし、互いの意図を理解し合うという歌の詠み合いといったものは、此処には似つかわしい。
ならばこそ、頼典は背を向ける。
「しかし、妖の群れの数が数だ。ここは手早く諸君らの手を駆りながら妖をあやしてあげようじゃないか」
迫るは妖『青鷺火』の群れ。
どれだけ打ち倒しても、ここ『ブレイズゲート』においては、無限に湧出してくる。
キリがない。
故に、この『ブレイズゲート』の主に据えられた大妖を打倒さねばならないのだ。
青白く輝く炎を宿した炎が迫る。
その光景は美しいものであったが、恐るべきユーベルコードでもあったのだ。
「……妖しくも青白く燃える翼は優美だ。だが」
これが人々を傷つける。
許されることではない。
なればこそ、彼の瞳はユーベルコードに輝き、その体躯を稲妻の大鷲へと変貌させるのだ。
「雷電の大鷲(ライトニング・イーグル)、ここに推参。この雷鳴届かぬ場所はなく、轟きに恐れおののかぬ者は無い。オン!」
頼典が変じた稲妻の大鷲が戦場を飛ぶ。
雷鳴のごとき疾く戦場を駆け抜ける翼と輝きは、一瞬にして『青鷺火』たちの体躯をかき消す。
それは一瞬の出来事であったことだろう。
あらゆる速度を超越するかのような光の速度。
雷鳴轟けば、雷光はすでに敵を討ち滅ぼしているのだ。
「『世羅腐威無』よ、弓を引け。迷宮を照らす稲妻の輝きを目印に妖鳥を射るのだ」
その言葉に応える『世羅腐威無』たちが青い熾火を宿した矢を放つ。
まるで青い熾火の雪崩のように殺到する矢が次々と『青鷺火』たちを貫き、射落としていく。
しかし、これは場当たり的な攻勢でしかない。
ならばこそ、頼典は羽ばたく。
急ぎ、『ブレイズゲート』の主を打倒さなければならない。
「じゃ、急ごうか」
「八秦卿、頼みました」
『皐月』の言葉が背に飛ぶ。
その言葉を受けて頼典は笑み、美女の頼みならばと言わんばかりに大鷲の翼を羽撃かせ、一直線に白炎に揺らめく影へと飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
源・絹子
ふむ、行くとしよう。しかし、良い忠義よな。
そちらが数に物を言わせるのなら、その意味を無くしてしまえばよいな。
というわけで、『鬼道矢蹂躙』である。敵、炎で見失うことはないしな…自然と視認できようぞ。
それと、まあ別に焼かれてもよいのだがな?
それをすると、後でマユらに怒られるからな?
白鶴『マシマ』に乗り、その炎は避けさせてもらおう。
同じ青の炎といえど、『世羅腐威無』らの炎は人を守るためのもの。
それを絶やさぬために、妾はここにおるのじゃよ。
坂東武者の集団『世羅腐威無』たちの指揮は高い。
それほどまでに彼らの覚悟が極まっているということであろう。平安貴族たちが『平安結界』の維持に心血を注ぎ、民から遊び呆けていると指さされても、これこそが己が使命であると自負するように、彼らもまた同様だったのだ。
如何に『ブレイズゲート』によって『平安結界』が飲み込まれようとも、それでも民を守らんとする気概こそが彼らの最後の武器であったのだ。
「良い忠義よな」
源・絹子(狂斎女王・f42825)は、陣頭にて指揮を取る亜麻色の髪の男装の麗人貴族『皐月』の姿を見やる。
彼女とて覚悟しているのだ。
例え、己の生命が散るのだとしても、それでも民を守らねばと奮起している。
「なれば、応えぬわけにはいかぬのよな」
絹子は迫る大量の妖『青鷺火』を見やる。
その羽ばたきは青白き輝きとなって一斉に降り注ぐ。
燃え盛る『ブレイズゲート』。
迷宮となったその先に揺らめく影がある。
あれこそが己たちが打倒しなければならない、この『ブレイズゲート』の主に据えられた大妖である。
「敵が数に物を言わせるのなら、その意味をなくしてしまえばよいな」
ユーベルコードに輝く絹子の瞳。
長年生きてきた者の矜持。
それは他者を慈しみ守ること。
故に彼女の瞳は、空を飛ぶ『青鷺火』を捉え、鬼道衆としての霊力でもって生成した追尾矢を解き放つ。
「鬼道矢蹂躙(キドウヤジュウリン)である。妾の瞳に映る敵すべてを射ることができるのよな。逃れられると思うでないぞ」
放たれた矢が一瞬で『青鷺火』たちを貫く。
だが、消滅した妖は次の瞬間には分裂して増殖するのだ。
これこそが『ブレイズゲート』の恐るべき力である。
果がない。
いくら倒しても、次の瞬間には湧出しているのだ。
「なんとまあ……これはキリがないのう?」
「こちらはお任せを。我らが必ずや結界の死守を致しましょう。御身は」
「大妖を討て、と」
「左様でございます。我らが力では大妖を討つことは敵いますまい。恥を忍んでお頼み申すところ」
絹子は笑う。
何も恥じるところはない、と。
彼らは誰かのために戦える者だ。そんなものを笑うことなどしない。
「なれば、その青き炎を燃え盛らせよ。同じ青の炎とて、『世羅腐威無』らの炎は人を守るためのもの。ならば、妾はそれを絶やすのは惜しいと思える」
絹子は白鶴『マシマ』に乗り、頷く。
「ここは任せた。しばし、持ち堪えよ」
その言葉に坂東武者『世羅腐威無』たちは応える。
戦意高揚たる彼らの声を背に受けながら絹子は白炎の揺れる影へと飛ぶ。
そこに『ブレイズゲート』の主がいる。
「ふっ、いつの世もあのような者たちがいる。なればこそ、妾はここにおるのじゃよ」
それを、と絹子は誇らしげに思いながら白炎目指して一直線に『世羅腐威無』たちが切り開いた道を往くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
茂多・静穂
おや、しっかり準備はできたみたいですね。
ならこちらもここからは攻めに回らせて貰いましょうか!
流石にさっきカウンター技を諸に見せたからか、もう固まって突撃はしてきませんか
代わりにヒットアンドアウェイで燃やされてる!あつ、あつっ!あ、でもこの刺激も中々...と流石に耐えるのも時間の問題なので別の手段です
散らばって距離を取るのはむしろ好都合!
UCを発動!
私と合体しているメイガスの全身から周囲の戦場全てにデッドブラスターを発射!
敵味方識別でせらふぃむ?さんは対象外
そして仕留めきれなくても毒に加え翼を指定し◆部位封じすれば猟兵やせらふぃむさん達の追撃がしやすくなる
さあどんどん撃っていきますよー!
『ブレイズゲート』に降りしきるは雨のような青白い輝き放つ翼であった。
妖『青鷺火』たちの翼が羽ばたく度に放たれる翼は炎。
どれだけ打ち倒しても次から次に湧出してくるのだ。それが『ブレイズゲート』の特性であるというのならば、敵の強みはやはり数であった。
「いざ! 進め!」
陣頭に立つ男装の麗人貴族『皐月』の言葉に坂東武者の集団『世羅腐威無』たちは青い炎を纏う憑依合体によって妖を打ちのめす。
倒せないわけではない。
だが、無限に増殖し続ける『ブレイズゲート』においては分が悪いと言っていいだろう。
茂多・静穂(千荊万棘・f43967)は例え、彼らの準備が整っていても押し切られるであろうことを理解していた。
「なら、こちらもここからは攻めに回らせてもらいましょうか!」
静穂はメイガスと一体化したまま踏み出す。
先程まではカウンター攻撃ばかりをしていた。自分の被虐精神の高ぶりが、最高潮に達していたとは言え、こう何度も見せていては敵も理解するだろう。
故に妖たちの突撃はない。
静穂に対して有効なのは、それではないと学んだのだ。
「もえて、もえて、もえて」
『青鷺火』たちのケタケタと笑う声が空にこだまする。
放たれる翼が静穂の一体化したメイガスに炎となって打ち込まれる。
しかも、打ち込んでは空に飛び、反撃を受けないようにしているのだ。
「あっ、あつ、あつっ!?」
卑怯な! と静穂は思った。
だが、ジリジリとメイガスの装甲から伝わる熱。
このじんわりと広がっていく痛みも刺激的でなかなかよろしい。いや、むしろとてもいい。なんていうか焦らされているような気がする。
体の芯から温められるような刺激。
まるで体の奥にある萌芽を開かされるような、そんな……。
「って、そんな悠長な考えをしている場合ではないのでした! むしろ、散らばって距離を取るのなら、むしろ好都合!」
静穂の瞳がユーベルコードに輝く。
己の精神世界の深淵。
自らで覗き込む底には自身の暗き願望があった。手で掴む。己はこの願望のために生きているのだ。
「我が心の漆黒弾丸一斉放射(デッドブラスター・オリジナル・バースト)! さあ苦しんで縛られてもう攻撃は避けれません!」
炸裂する漆黒の弾丸。
宙を飛びながら、まるで蜘蛛の糸のように広がる漆黒。
影めいたものであり、幾重にも変容していくような縄。
それは『青鷺火』たちの体躯を掴みあげ、縛るものであった。
大地に失墜する妖たちを『世羅腐威無』たちが次々と打ち倒していく。
「かたじけない!」
「いえいえ、これも連携ってやつですよ」
雁字搦めにされた妖たちに再び空に飛び立つ力はない。
静穂は己の漆黒の弾丸によって『青鷺火』たちを捕らえ、失墜させ続ける。
「道は我らが拓きます。どうか、この迷宮の主たる大妖を!」
「任されました! 道すがら、妖を縛り上げておきます。処理はお任せしますね!」
静穂はメイガスとともに開かれた道をゆく。
その先にあるのは白炎に影揺らめく『ブレイズゲート』の主の姿であった――。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
ある意味こっからが本番だな。
『世羅腐威無』たちが協力してくれるんは勿論心強いけど、おれにとっちゃ怖ぇのは変わんねえ。
……大丈夫。独りで戦ってるんじゃねえんだ。そうだよな、クゥ。
(騎乗した焔纏う金獅子の鬣をそっと撫ぜて)
クゥの炎はあったかいけど、あっちの炎はそんなんじゃ済まねえな。
〈第六感〉と〈逃げ足〉を活かして、直撃喰らわねえように〈見切る〉。
奴さんが隙を見せたら、〈スナイパー〉ばりの一撃で叩き落とす。
勿論『世羅腐威無』も援けねえとな。
状況を見て適宜〈援護射撃〉を飛ばしたり、〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉を敵に浴びせてピンチを凌いだり。
俄か仕立ての連携だけど、なんとか形にしてみるさ。
ここからだ、と鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は己の兜の緒を締めなおすような思いであった。
確かに敵の大群は恐ろしいものだ。
けれど、己の背には坂東武者の集団『世羅腐威無』たちがいる。
青い炎と憑依合体した姿は勇ましい。
あのような己の生命を厭わぬ勇ましさに憧れがある。だが、どうあっても己は己なのだ。
この期に及んでも恐ろしさに尻込みしてしまう。
あんなに頼もしい味方がいるのに。
それでも恐れを抱いてしまう。
「……大丈夫」
「ええ、背はお任せあれ! 我らが皆様方の背中をお守り申す! 故に猟兵の方はどうか大妖、迷宮の主を打ち倒していただきたい!」
『世羅腐威無』の一人が嵐に告げる。
年若い。
己よりも年若いとわかる若武者。
「そうだよな。独りで戦ってるんじゃねえんだ。そうだよな」
嵐は頷く。
そして、その瞳がユーベルコードに輝く。
己の影より現れるのは黄金のライオン。焔纏う姿は煌々たる輝きを宿すようであり、この迷宮『ブレイズゲート』の闇を晴らすようであった。
「……力を貸してくれ、クゥ!」
咆哮が轟く。
それは雄叫びのようであった。
そして、坂東武者たちも、その勇ましき咆哮に合わせて鬨の声を上げる。
ここにあるのはただの武者達ではない。
勇ましき咆哮に後押しされるように勇猛果敢に戦う者たちだ。
嵐は、彼らの叫びを受けるようにして黄金の獅子に騎乗して戦場を疾駆する。
「お頼みします!」
「ああ、行ってくる!」
嵐は往く。
例え、青白い輝き放つ炎が雨のように降り注ぐのだとしても、己は独りではない。
『クゥ』だけじゃない。
坂東武者『世羅腐威無』たちもいる。
恐れは恥じるべきことだろう。けれど、誰もが踏み越えてきたものだ。
己が逃げ出さずにいられるのは、そんな彼らがいるからだ。彼らが戦うと行ってくれたから、ともに戦うるのだ。
「なら、我が涅槃に到れ獣(ア・バオ・ア・クゥ)! いくぜ!」
放つスリングショットからの一撃が『青鷺火』の額を射抜く。
「お見事でございます!」
「いや、いやいや! そんなんじゃねえよ! でも、いける……!」
嵐は『世羅腐威無』たちと連携しながら道を切り開いていく。
迫る妖の群れがなんだというのだ。どれだけ数が多くても、戦えているのだ。
嵐は『世羅腐威無』たちの背を狙う『青鷺火』を射抜き、白炎の向こう側に揺らめく影を見た。
「あれは……」
「あれなるは、この迷宮の主でありましょう! 猟兵の方、どうか!」
「わかった。あんたも」
気をつけて、とは言わない。どうせなら、こう言うべきだと嵐は思ったのだ。
「武運を!」
その言葉に『世羅腐威無』の若武者は、笑って応、と答えたのだ。その笑みにこそ嵐は背中押され、黄金の獅子とともに戦場を疾駆するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
「よっしゃ!それじゃあ、行こうか。この迷宮の主を倒しによ」
SPD
「その為にも、あんたら相手に時間を掛けてる暇はないんでね。速攻で突破させて貰うぜ!」
そう啖呵を切ると共にUCを発動。握り締めた手から生成された雷球を妖の群れに投げ込む
球が弾けるのと同時に軽業の如く引き抜いた流星と彗星で乱れ撃ち、先制攻撃めいた制圧射撃で蹴散らす
その鮮やかな色の翼を穴だらけにするのはちょっと気が引けるけれど…邪魔をするなら容赦しないぜ
『戦闘に集中してくださいね』わかってるってと言葉を交わしつつテスタロッサに騎乗
弾幕でこじ開けた妖の群れの穴に追加の雷球を投げ込みバイクを滑り込ませて迷宮の主への道を切り開く
アドリブ歓迎
白炎が揺れている。
奇怪な迷宮『ブレイズゲート』は妖達を無限に増殖させ、成長させる。
妖『青鷺火』たちの数がどれだけ打ち倒しても減っていないのは、そうした『ブレイズゲート』の性質があってこそだった。
如何に強力な存在も、無限に湧き出す妖の前にはいずれ鏖殺されるだろう。
恐るべきことである。
どれだけ熟達なる武者であっても、体力の限界というものがある。
「くっ……! キリがありませぬな!」
坂東武者の集団『世羅腐威無』たちは、青い炎と憑依合体を果たし、その力を増していた。
けれど、それでも無限に迫る妖の群れにジリジリと体力を消耗させられていた。
「やはり、乾坤一擲!」
「猟兵の方による迷宮の主の討滅!」
「よっしゃ! 任せておけよ!」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、彼らの言葉に応える。
この迷宮の奥に座す主、大妖を打倒しなければ、『ブレイズゲート』は消滅しない。
そして、このままではジリ貧であることも理解していた。
ならばこそ、大群の妖を突っ切って進まねばならないのだ。
「道は我らが切り開きましょう!」
「いいや、此処は俺に任せてもらおうか! あんたたちだって疲弊してるんだからな! 迷宮の主を倒すまでの時間、結界をあんたたちが支えなきゃならない。だったら!」
祐一の瞳がユーベルコードに輝く。
手にした雷の球体。
ユーベルコードによって生み出されたそれを祐一は『青鷺火』たちへと投げ放つ。
それは一瞬だった。
破裂音。
その音を聞くより早く迸る電撃。
サンダークラップと呼ばれる祐一のユーベルコードは戦場を絶えず帯電するスパークによって『青鷺火』たちを打ちのめす。
羽ばたく翼さえ麻痺するような一撃に次々と失墜していく『青鷺火』たち。
「しびれ、しびれ、しびれる、しびれる」
「その鮮やかな色の翼を穴だらけにするのはちょっと気が引けるけれど……邪魔するなら容赦しないぜ」
祐一は熱線銃で電撃によって失墜した『青鷺火』を撃ち穿つ。
『戦闘に集中してくださいね』
「わーかってるって。それじゃあ、みんな、任せたぜ」
宇宙バイクにまたがった祐一に『世羅腐威無』たちが頷く。
彼のユーベルコードで『青鷺火』たちの群れは飛ぶこと叶わず、大地にて立ち上がろうとしている。
「任されよ。これより結界の死守は我らが使命。猟兵の方は」
「ああ、迷宮の主をぶちのめして来る。それまで」
死ぬなよ、と祐一は互いの戦いがこれからであることを示すように拳を突き出す。
『世羅腐威無』の坂東武者は、その所作に戸惑ったようだが、同じように拳を突き出す。軽く触れる拳。
「さあ、行くぜ!」
それでいい、と祐一は笑って宇宙バイクとともに戦場を疾駆する。
目指すは白炎の影に揺れる大妖――!
大成功
🔵🔵🔵
武富・昇永
反撃の狼煙が上がったようだな!俺も機に乗じて妖の大軍に突っ込むぞ!
(UC【陰陽道・装着式神「縹糸威大鎧」】を発動し巨大化した{妖切太刀・御首級頂戴丸}で敵を薙ぎ払い{伏竹弓・勲功必中撃抜弓}の巨大な矢で直線上の敵の集団を一気に貫く)
『皐月』さま!前方の敵は俺にお任せを!
このまま全員一丸となってこの大軍を突き抜けましょう!
『皐月』さまや『世羅腐威無』たちは『雷棲滅鬼悪・永流姫』さまの矛であり盾であり心の支え!
全員無事にこの難局を乗り越えて初めて手柄と呼べるのですから!
結界の中から飛び出す坂東武者の集団『世羅腐威無』。
彼らの青い炎纏う姿は憑依合体によるものであった。
形勢は逆転……とは行かなかった。如何に反撃の狼煙が上がるのだとしても、ここは『ブレイズゲート』である。
妖たちは無限に増殖し、湧出してくるのだ。
キリがない。
どれだけ武勇に秀でた者がいたとしても、数の暴力の前にはすり潰されていく運命なのだ。
故に武富・昇永(昇鯉・f42970)は己こそが筆頭となって突き進まねばならない。
いつだって上昇志向に溢れた己の気概は、前進を是としている。
立ち止まることは停滞そのもの。
その停滞の中に沈めば、もがくことしかできない。
宙を掴むような手は、とっかかりさえ掴むことができないと知るからこそ、彼は裂帛の気合と共に戦場に己が声を響かせる。
「恐れ戦け! これぞ昇鯉吉祥の我が大鎧、縹糸威大鎧なり!」
ユーベルコードの輝きと共に御霊式神符が己の前進を覆っていく。
大鎧を纏う勇ましき姿。
その威容を持って昇永は陣頭に立つ。
傍らにある男装の麗人貴族『皐月』に昇永は頷く。
「『皐月』さま! 前方の敵は俺にお任せを!」
「頼みます! その切り開かれた道は、我らが守りましょう!」
「ならば、ご覧あれ! この大太刀の一閃を!」
握りしめた大太刀。
その横薙ぎの一閃は迫る妖『青鷺火』たちを切り裂く。
一撃。
薙ぎ払うという言葉がしっくりくるほどの一撃を見舞った後、昇永は己が弓を引き絞る。番えた矢は指を離せば宙を飛ぶ。
轟雷の如き勢いで飛ぶ矢は『青鷺火』たちを寄せ付けぬばかりか、一射によって道を作り上げるのだ。
「このまま全員一丸となって大軍を突き抜けましょう!」
昇永は思う。
『皐月』や『世羅腐威無』たちは確かに『雷棲滅鬼悪・永流姫』の手勢である。
矛であり盾。
それは言うまでもないこと。
けれど、それだけではない。
共に在る者がいてくれる。それがどんなに心強いことかを昇永は知っている。
だからこそ、彼らが生き残らねばならない。
「皆様は『雷棲滅鬼悪・永流姫』さまのお心の支え! なれば、全員無事にこの難局を乗り越えて初めて手柄と呼べましょう!」
昇永は叫ぶ。
それは己が妖に大喝するよりも彼らの耳に届くものであった。
命をなげうってでも守らねばならぬものがあることは、武者にとって誇りであろう。だが、その死を悼む者がいる。
涙する者がいる。
故に生きねばならない。
死ぬとわかっていても、最後まで生き抜いてこそ生命なのだ。
「故に俺は示しましょう! 我が一射が切り開いたのは敵への死地への道ではなく、活路であると!」
昇る。
昇っていく。天を目指して。
それが己であると示すように、輝かしき太刀の切っ先を白炎燃える影に座す迷宮の主へと突きつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
(はいらいとが家出した瞳でぼーっと空を見つめて)
鳥さん……。
そういえば、幸せの青い鳥っていましたよね。
|『青鷺火』《あの鳥》捕まえたら、練乳に不自由しない生活になれるでしょうか……。
え?おやつ?はーい。
はふ。ステラさんのごはんはいつも美味しいです。
甘さが身体に染み渡りますー
はっ!?
わたし何してたんでしょう?
ちょっと練乳は足りませんが、なんか元気出てきました!
それにしても『皐月』さんかっこいいですね。
ステラさんがヤバくなりすぎる前に、しっかりお仕事しないとです!
ステラさんが鳥さん墜としてくれるみたいですし、
わたしは堕ちた鳥さんをミンチにしていきましょう!
飛べない鳥は肉団子の材料だー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ふむ……やはり『サツキ』にも意味がありますか?
ですが、サツキ様はエイル様と対になる要素
後継、あるいは残滓……もしくはエイル様を変え得るもの?
この世界のセラフィムはどこへ行こうとしているのです?
この辺にしましょう、ルクス様が戻ってこれなさそうです
ルクス様ー?おやつですよー?あんバターどら焼きをご用意しました
ほら、元気出して、たくさんありますよ
さて充電が終わったところで参りましょう
久しぶりに『アンゲールス・アラース』を装着&飛翔
空を飛ばれると面倒です
『ウェントス・スクートゥム』展開
【テンペスタース・クリス】突撃します!!
突撃しつつ全員叩き落していきましょう
トドメはルクス様にお任せします
「ふむ……やはり『サツキ』にも意味がありますか?」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は思考を巡らせる。
なんか、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の瞳からハイライトが家出して虚ろな目になっているような気がしたが、気のせいだと思った。
ぼーっとしていたし、空を見つめている。
鳥さん……、と妖『青鷺火』を見上げて、思いを馳せている。ちょっとヤバい。
「そう言えば、幸せの青い鳥っていましたよね。あの鳥さん捕まえたら、練乳に不自由しない生活になれるでしょうか……」
ルクスの幸せって、そういうのなの?
もっとこう、あるでしょ?
なんていうか、今のルクスは三億円宝くじ一等に当選しても、練乳を三億円分買い占めてしまいそうな雰囲気があった。
もっと、こう、あるでしょ? と二回聞き直したくなるくらいの感じであった。
そんなルクスを他所にステラは思考を巡らせていた。
バディがヤバいことになっているのだが、それはいいのだろうかというツッコミは多分届かない。
「『サツキ』様……『サツキ・ラーズグリーズ』様。『エイル』様の御子息。後継、あるいは残滓……もしくは『エイル』様を変えうるもの?」
彼女の知る『サツキ』は、『エイル』の息子であるということ。
『フュンフ・エイル』の血統は二つに分かれている。
一つは薄れ果てはいるが、しかし脈々と受け継がれてきたもの。
一つは直系。直近なる血筋。
願いによって分かたれた存在が『エイル』だというのならば、その後を継ぐ者がいる、という意味がわからない。
人の営みの中に紛れていことで変容するのか。
「この世界の『セラフィム』はどこへ行こうとしているのです?」
その言葉に応えるものはいない。
思考は尽きない。けれど、己に逸るべきことが在る。
「この辺に致しましょう。ルクス様ー?」
そろそろルクスが戻ってこれない領域にいきそうである。
「おやつですよー? あんバターどら焼きをご用意いたしました。ほら、元気だして、たくさんありますよ」
「え? おやつ? はーいもがー!?」
グイグイ押し込んでくる。
たくさんあるってそういうこと!? とルクスは思ったが甘さが身にしみる。
五臓六腑に浸透していく甘さ。
小豆のほんわりした甘さ。バターとの相性はバツのグンである。
もくもく。
ルクスはあんバターどら焼きを呑み込んで、一息つく。
「……はっ!? わたし何していたんでしょう!? ちょっと練乳は足りませんが、なんか元気出てきました!」
復活の勇者。
「充電は終わりましたか? それでは参りましょう」
「お二方、ご無事ですか!」
迫る大軍の妖を前に陣頭に立っていた男装の麗人貴族『皐月』が呼びかける。
彼女の言葉にステラは恭しく頷く。
「万事滞りなく整いましてございます。これより私どもは空より妖の大軍を打ちのめそうと思います」
「心強い限りです。では、地上は我ら『世羅腐威無』にお任せを。皆様の背に妖の力は及ばぬと保証いたしましょう」
『皐月』の言葉にルクスは、相変わらずかっこいいな、と思った。
そんな『皐月』の言葉にステラがちょっとやばそうになっていた。ルクスがやばくない時はステラがヤバいのである。
なんだこの凸凹バディ。
「ステラさん、ステラさん、顔がやばくなる前にしっかりお仕事しましょう!」
「なんですか、顔がヤバくなるとは。やばくありませんが?」
「いえ、絶対やばくなります。今は戦いに集中しましょう。私は鳥さんをミンチにしますから!」
「言ってることはルクス様のほうがヤバい気がしますが。ええ、空を飛ぶことに掛けては私が遅れを取るわけにはまいりません」
ステラが纏うは風の盾。
ユーベルコードの輝きと共にステラは飛ぶ。
それは突進と読んで差し支えのないものであったが、『青鷺火』たちは尽く退けられ、打ちのめされていく。
大地に失墜して立ち上がろうとしても、ルクスが迫る。
手にしていたのは鈍器という名のグランドピアノであった。重量による単純な一撃。
その痛烈な一撃は『青鷺火』たちを土塊に還すように拉げさせるのだ。
「飛べない鳥は肉団子の材料だー!」
「絶対ルクス様のほうがヤベーですよね?」
どう思います? とステラは『世羅腐威無』の若武者に尋ねるが、彼らは曖昧な表情を浮かべるしかなかった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
世羅腐威武達が足止めしてくれるうちに主を倒さないとね……
まずはで電子型解析眼鏡【アルゴスの眼】で最短ルートを予測…
重奏強化術式【エコー】で強化した【夜空を別かつ月閃の翼】を発動
低空で高速飛行して予測最短ルートをたどるとしよう
邪魔な敵は月光の羽根の射出と黎明剣【アウローラ】から魔力の刃を放つ事で排除…左右からの敵はすれ違いざまに翼で切り裂いて…
敵の輝く炎は羽根で迎撃と翼による防御で対処……
速度を殺さないことを最優先に多少強引にでも突破するとしよう…速ければ速いほど被害は抑えられるだろうからね…
急がなければならない、とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は理解していた。
敵は数が多い。
いや、多いという範疇にとどまらない。
此処『ブレイズゲート』において妖は無限に増殖し、成長していく。
そういう性質があるのだ。
恐るべき事だ。この『ブレイズゲート』にいる限り、どれだけ屈強なる武者であっても数によってすり潰されていく運命しかないのだ。
故に皆殺しであると『安倍晴明』は言ったのだ。
「『世羅腐威無』たちが足止めしてくれている内に主を倒さないとね……」
メンカルは電子解析型眼鏡『アルゴスの眼』で迷宮の最短ルートを算出する。
すでに多くの猟兵達が妖の群れを切り裂くようにして打倒している。
けれど、それは大海を切り裂くようなものであった。
どれだけ海を割る一撃を放っても、海はすぐさまに元通りになる。それと同じように『ブレイズゲート』において妖はすぐさま増殖して押し寄せるのだ。
「我らが死守してみせます。どうか猟兵の方は!」
『世羅腐威無』たちの言葉にメンカルは頷く。
「……なら、任せる。持ちこたえていて……」
「おまかせを!」
彼らの言葉にメンカルは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
己の魔力が体の内側から噴出する。
「満ち欠ける光よ、放て、羽ばたけ。汝は月晄、汝は照翼。魔女が望むは闇夜に輝く月灯り」
それは夜空を別つ月閃の翼(アルテミス・ウイング)であった。
翼状に形勢された高密度の月の魔力。
放出されたそれは、一気にメンカルの体躯から推力となって彼女を押し出す。
大地を蹴って飛ぶ様は、まるで嚆矢のようだった。
触れれば、敵を切り裂く翼の魔力。
手にした黎明剣『アウローラ』は斬撃を投射すれば、『青鷺火』の放つ青白い炎を切り裂く。
「むだ、むだむだむだむだ」
ケタケタと笑うようにして『青鷺火』たちが殺到する。
そう、彼女たちにとって、己はうたかたである。
どれだけ倒されても、すぐさま別の自分たちが生み出されていく。
だから、己が肉体を壁として猟兵の進撃を阻むことができる。
けれど、メンカルはその壁すらも強引にこじ開ける。
それができるだけのユーベルコードを彼女は有しているのだ。
「……それで止まると思った?」
メンカルは己が手にした『アウローラ』に月の魔力を注ぎ込む。
握りしめた柄から流入していく魔力は、刀身を輝かせ、放つ斬撃をさらに膨れ上がらえる。
「見事でございます! お早く!」
「……うん。ここは任せたよ。そちらも気をつけて。結界が破られたら、意味がないから、ね」
「抜かりなく!」
メンカルは『世羅腐威無』たちと言葉をかわして、振り返らずに飛ぶ。
そう、時間がない。
多く時間を掛ければ妖たちに利するところになる。
故にメンカルはためらうことなく、己が切り開いた道を『世羅腐威無』たちに任せて突き進む。
己が倒すべき敵。
白炎の向こう側にて座す影。
この『ブレイズゲート』の主に据えられた大妖。
これを打倒さんとメンカルは白炎切り裂き、その奥にある奇怪なる姿を見るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
じゃ、活路を開くか。その前に…ちょっとやることはやる。
【それはまるで矛盾存在】ってな。『世羅腐威無』たちが受け持ってくれると言うなら…怪我を防ぎつつ敵を倒すこれをやるのもいいだろ。
…たぶん、今は暖かいだろ、それ。
どれだけ燃え上がる翼があろうとも、それは当たらなきゃ意味がねぇ。
ついでに言うと、俺様の『凍れる炎』の今の形質は『雨』になってるからな…消えるか飲み込む可能性だってあるだろ。
で、俺様自体はこの間を駆ける。それが、今の俺様のやらなきゃいけねぇことだからな!
猟兵達は道を切り開く。
この白炎の揺らめく影の向こう、迷宮の最奥に座す大妖への道を。
この迷宮の主を打倒しなければ『ブレイズゲート』は消滅しない。そして、『ブレイズゲート』は妖たちを無限に増殖させ、成長させるという性質を持つ。
端から勝ち目のない戦いなのだ。
どれだけ倒しても端から湧出する妖『青鷺火』たち。
その翼が放つ炎を前に坂東武者の集団『世羅腐威無』たちは劣勢を強いられていた。
それでも果敢に戦い、猟兵たちが進むべき道を維持しながら、結界を守護しているのは、彼らの士気の高さゆえであろう。
「流石にがんばるな。じゃ、活路を拓く前に……やるべきことをやるか」
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は、ユーベルコードによって凍れる炎で出来た雲を発生させる。
それはまるで矛盾存在(ツメタクテアタタカイモノ)であった。
その雲は、空を飛ぶ『青鷺火』たちの体躯を凍結させる炎の稲妻でもって打ちのめし、坂東武者の集団『世羅腐威無』には生命力活性化作用のある凍れる炎の雨でもって傷癒やしていくのだ。
「これなるは、如何なることか……」
「傷が癒えていく……」
眼の前で起こったことに坂東武者たちは驚愕するばかりだった。
「お前らがここを受け持ってくれるってんなら、怪我を防ぎつつ敵を倒す。こうするのが一番いいだろ」
ヌグエンは、ぶっきらぼうにそう言って『世羅腐威無』たちの背を叩く。
「これが猟兵の方の御力か。なんと心強いことであろうか」
「まだこれで我らは戦えまする。ご助力感謝いたします!」
彼らはひたむきだった。
その背中をヌグエンは、いつだって羨ましいと思っていた。
己はそんな背中をいつだって押したい。
「この温かな炎があれば我らは皆様方の道を照らし続けることができましょう。どうか、お進み下さい。我らは此処にて持ちこたえまする。凱旋を照らす炎として!」
その言葉にヌグエンは頷く。
「任せたぜ。いっちょ行ってくるわ!」
「むだ、むだ! どうしてむだなことをする! わたしたちのほのおはむげんなのに」
『青鷺火』たちの嘲るような声が響く。
だが、ヌグエンは笑い飛ばした。
どんなに不気味な声だろうが、炎の翼を打ち込んでくるのだろうが、恐ろしくはないのだ。
なぜなら、ヌグエンは『世羅腐威無』たちの背中を見たのだ。
頼もしい、とは思わない。
けれど、たくましいとは思ったのだ。
果敢にも、懸命にも生きる者たちの背中は、いつだってヌグエンの手を動かす。
「ハッ、その程度で立ち止まるかよ。俺様も、あいつらも!」
ヌグエンはひた走る。
炎の雨が降りしきる中にあっても、ためらわず進む。
それは『世羅腐威無』たちも同様であったことだろう。守るために立ち向かう。どんな困難であっても立ち止まらない。
そんな気概を持つ者たちが、ただ恐ろしいだけの存在を前に臆することなど何一つない。
「立ち止まらないこと! それが、今の俺様のやらなきゃいけねぇことだからな!」
どけよ、とヌグエンは己の拳でもって襲い来る『青鷺火』を打ちのめし、白炎の揺らめく先にある大妖の影へと走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『山姥』
|
POW : 山姥鎌
【手鎌による四肢切断攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 山鎌颪
【首狩り手鎌】を手または足で射出する。任意の箇所でレベル×1個に分裂でき、そこからレベルm半径内に降り注ぐ。
WIZ : 首ひとつ寄越しな!
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【首】、否定したら【心臓】、理解不能なら【命】を奪う。
イラスト:蛭野摩耶
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
白炎のゆらめきは『ブレイズゲート』の主の強大さを示すようであった。
煌々と熾盛する炎を背に、主たる大妖『山姥』はいた。
奇妙な姿だった。
異常に長い腕。手にするのは首刈り鎌。
背負った籠に詰め込まれたのは人体であろう。
「なんとも情けない。無限に増殖できるっていうのに、この体たらく。まるで少しも役に立ちはしないじゃないか」
その大妖『山姥』は落胆するように、されど嘲笑うように首を傾げて唇を釣り上げた。
「だがまあ、いい。こうして上質な体持つ連中が来てくれたのだから」
それだけで十分元が取れたと言わんばかりに『山姥』は、その手を振るう。
首狩り手鎌は、その剣呑なる輝きを知らしめ、容易く人体を両断せしめることを予感させた。
「猟兵たちを滅ぼせば、あの姫の体は手に入る。首には興味ないさ。あの体にこそ意味がある。あの体躯。あの美しさ。それさえあれば、私は……」
訪れるであろう未来に対して『山姥』は恍惚とした表情を浮かべる。
猟兵達は、理解する。
この妄執にも似た感情こそが『山姥』のちからの源であると。
故に、ここで倒さなねばならない。
『ブレイズゲート』を破壊するために、そして何より、人びとを守るために――。
八秦・頼典
●WIZ
宣戦布告をした妖の元まで辿り着いたものの…何ともいみじき望みだ
まぁ、妖滅の血を持つ高貴な皇族を|平安貴族《ボク達》が隠蔽しているのはその為でもあるんだけどね
だからこそ、ボクはボクの役目を全うするだけさ
永流姫も皐月殿も貴様に渡しはしないさ
だが、正一位となったボクもまた、狙われる存在になりうるのかもしれない
首をひとつ寄越せと言われれば当然ながら拒否するが、これなるやり取りこそが妖の術
何が起きたか分からぬまにボクの首が、もしくは心臓が狩られるのだろうが、それは果たして本当にボクなのかな?
なぁに簡単なトリックさ
貴様が狩った者は『形代招来』で作り出した化身式神
その首が、心臓が、形代に戻るだけさ
恍惚たる表情を浮かべる大妖『山姥』。
異形なる体躯。
その長い手は、彼女が妖である証明であったことだろう。
「なんともいみじき望みだ」
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は、『山姥』が望むのが『雷棲滅鬼悪・永流姫』の体であることを知る。
なぜ、斯様な望みが妖から出るのか。
答えは自ずと導き出される。
そう、妖滅の血。
それこそが皇族が隠匿される理由である。故に、逆説的に『雷棲滅鬼悪・永流姫』もまた、それに類する類であるということが導き出されるのだ。
「人の望みというのは、いつだってそうだろう? どんな望みだって卑しいものさ。誰かより優れていたい。誰かより強くありたい。誰かより、誰かより、誰かより、と他者より優れたるものを望むのは人の望みとして至極真っ当さ」
『山姥』の言葉に頼典は頭を振る。
そうではない。
人の望みとはそれだけではない。
『雷棲滅鬼悪・永流姫』や『皐月』たちが美しく思えるのは、彼女たちが恵まれ、優れたるからではない。
その胸に秘めたる他者を思う心こそが美しいからこそ、その内面が外見にあらわれているのだ。
それをただ安易に流され、奪うことでしか得られないと思う心こそが、その醜さを示している。
「お前のような者がいるから、ボクはボクの役目を全うするだけさ」
「なんとするよ、猟兵」
「『永流姫』も『皐月』殿も貴様には渡しはしないさ」
「ふん、言葉だけではどうとでも言えるさ。首ひとつ寄越しな! その首がまだ胴とつながっていられるっていうのなら、その言葉も正しいだろうが!」
ユーベルコードが煌めく。
対象に要求する力。
『山姥』が求めたのは首。
それを頼典は当然否定する。人の身は脆弱である。首と胴が分かたれれば、当然生命は失われる。
だからこそ、否定するしかない。
「当然、拒否する」
「だろうね。だからこそ、お前は首を失うのさ!」
瞬間、頼典の首が飛ぶ。
胴と分かたれた首は、驚愕に見開かれた表情を浮かべていただろう。
「なあ、貴様はそれが果たして本当にボクなのだと証明できるかい?」
飛んだ首からではない。
声が聞こえることに『山姥』は狼狽する。
確かに首は刈り取った。なのに、どうして頼典の声が聞こえるのか。
「どうしてだ、どうしてまだ喋れる!?」
「なぁに簡単なトリックさ。言っただろう。その首は本当にボクなのだと証明できるのか、と。貴様が刈った者は、形代招来(カタシロショウライ)で作り出した化身式神なのさ」
ばらりと弾けるようにして頼典の体と首が形代へと代わり、散らばっていく。
そして、その一つ一つが式神となって『山姥』へと殺到するのだ。
「謀ったっていうのかい!」
「最初からそうだっただけさ。貴様が勘違いしただけ。さあ、いみじき望み持つ妖よ。貴様の願望は叶わない。なぜって?」
頼典は形代の嵐の中から姿をあらわし、その指を突きつける。
「陰陽探偵ライデンがいるからさ――」
大成功
🔵🔵🔵
桐藤・紫詠
首を一つよこせ、ですか
お断りですね
瞬間、余の心臓が奪われますが…しかし無駄
UCの効果で余が愛する平安の世と人々を守護する全ての存在を止まる事なく使役もしくは使用し続けている限り、決して死ぬ事はない…
そして、余は平安歌人
歌を紡ぐならば、確定された死ですらも覆す
相手のUCの効果が切れると同時に歌を詠んで奪われた心臓の時空を歪めて心臓を修復
同時に勾陳を呼び出して山姥を攻撃するべく使用と使役を
『無茶をするな、我の契約者は』
良いのです
妖の思惑を覆せるなら、心臓の一つや二つ抉り取られる位取り返しがつきます
『ブレイズゲート』の主に据えられた大妖『山姥』は、その異形なる姿を猟兵たちの前に晒す。
恐ろしげな姿はまさしく彼女が妖であることを示していただろう。。
異様に長い腕。
その手にした首刈り手鎌は、容易く人の生命を奪うだろう。
奪う。
それだけが彼女の本質であった。
「如何に猟兵と言えど、首もしくは心臓さえ奪えば!」
生きてはいられないだろう。
如何に生命の埒外であるのだとしても、こればかりは変わらない。
だからこそ、彼女の言葉は恐ろしい。
言霊とでも言うべきユーベルコード。
「その首を寄越しな!」
走る力。
それは容易く桐藤・紫詠(黄泉詩の皇族・f42817)に届く。
首を寄こせと言って、頷く者はいない。
故に、それはこのやり取り自体がユーベルコードの力にしてからくりなのだ。
「お断りします」
彼女の言葉が発せられた瞬間、紫詠の心臓は『山姥』の手にあった。
「アハハハッ! 馬鹿め! どんな手立てがあるのかと思えば、何の手立てもなく拒否したのかい!」
滴る血潮。
それを紫詠は見ていた。
呆然と、ではない。むしろ、冷静とも言われるほどの眼差しだった。
「ハハハハッ……ハ? おい、なんでまだ生きている。心臓が奪われているんだぞ?」
「ええ、別におかしいことはありません。たかが心臓一つ」
なんてことないことだというように紫詠は言う。
『山姥』は思っただろう。
ブラフか、はたまた先程の猟兵のように身代わりを立てたのか。
いや、違う。
己の手にあるのは真の心臓である。
だというのに紫詠は立っているし、当たり前のように言葉を発している。
なぜか。
「余が愛する平安の世と人びとを守護するすべての存在を止まることなく、余は死ぬことはない。決して」
「何を言っているんだい、お前は!」
「簡単なことです。余は謳う。平安歌人ですから。歌を紡ぐならば、確定された死ですらも覆す。これはすなわち平安歌人の常識」
わけがわからない。
紫詠は謳う。
ただそれだけで奪われた心臓が時空を歪め、その胸に収まるのだ。
『無茶をするな、我の契約者は』
現れたるは、鋼鉄の巨人、金蛇地神『勾陳』。
紫詠の眼前に現れ、その手に彼女を乗せる。
「良いのです。妖の思惑を覆せるのならば、心臓の一つや二つえぐり取られる位取り返しがつきます」
紫詠は告げる。
此処は、平安詩浄土変・永久に繋がる世界(トコシエニツナガルセカイ)。
己の死すら覆す言葉があるのだと示すように彼女は己が使役するオブリビオンマシンと共に『山姥』の勝ち誇る顔を歪め、その体躯を打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
源・絹子
で、その望みとやらが叶う目論見なのであろうが。
まあ、これだけの猟兵が集まっておるのじゃ。無理であろう。
ちなみに、妾も心臓はやらぬぞ?
…まあ奪われるわな。あとでマユらに怒られるどころか…うむ、説教こーすというやつ。
うん?生きておるよ。何せ鬼道衆じゃからな、不死が当たり前である。
そして…妾に血を流させたな?であれば充分。【皇血槍蹂躙】である。
うむ、妖に皇族の血は劇毒であるからなぁ。食らうと共に、それはそれは激痛が襲おう。
どのような手段を使おうと、ここで潰えると知るがよいよ。
妖『山姥』のユーベルコードは恐るべきものである。
要求し、それが認められなければ首か心臓を、もしくは生命を奪う。
そこにはルールしかない。
決定的なルール。
単純であるが、しかし強制力を持つもの。
斯様な力を持つがゆえの『ブレイズゲート』の主。
絶対に負けることのない力を持つがゆえに、彼女はこれまで数多の生命を奪ってきたのだろう。
「なのに、なぜ」
彼女は狼狽えている。
己の能力は絶対。
しかし、それが通用しないものたちがいる。
いや、違う。
通用はしているのだ。だが、その通用したルールをすり抜けてくるものたちがいる。
あるものは形代でもって身代わりを立て、あるものは歌でもって事実を覆す。
そして、今、まさに心臓を引き抜いてもなお当然のようにたっている者がいる。
「まあ、生きておるよ」
源・絹子(狂斎女王・f42825)は、あっけらかんとした態度で己が心臓を持つ『山姥』に言う。
「なぜ生きている!」
心臓を抜かれて生きていられる存在などいない。
猟兵のユーベルコードを使用している気配もない。なのに、絹子は当然とばかりに立っているのだ。
「心臓だぞ! 心臓を抜かれてなんで生きていられる!」
「それは妾は鬼道衆じゃからよ。不死が当たり前である。まあ、言い換えれば死ぬことができないとも言えるがの」
理屈になっていない。
不死であるから、死ねない。死なないのではなくて、死ねない。
このような道理通らぬ者がいていい訳が無い。
「馬鹿なことを! そんなもの……、ッ!?」
「ああ、妾に血を流させたな? であれば、これで十分よ」
絹子の瞳がユーベルコードに輝いている。
そう、彼女の血は妖滅の血。
妖に対して毒そのものたる血。その流れる血潮を持って、彼女は血濡れの槍を生み出し、『山姥』を取り囲んでいるのだ。
「やれやれ、マユらに後で怒られるどころか……うむ、説教こーすというやつであるな。まあ、いいじゃろう。人を救うために身を張るのが我が役目よ。なれば、何者にも我の体は自由にできぬ」
己の意志もまた同様である。
他者のために己の身がいくら傷つこうと構わない。
なにせ、死なないのだから。
「そんなことが! あって、たまるか!」
「あるのよな。それに、どのような手段を使おうと、ここで潰えると知るが良いよ。その望みとやらが叶うことはない」
その言葉と共に包囲した血濡れの槍が一斉に『山姥』を貫く。
激痛が走り抜けるだろう。
その血は妖滅の血。
皇族の血で生み出された槍である。
「ぎゃ、ああああっ!?」
叫び声が聞こえる。
だが、絹子廃棄を吐き出すのみである。これまで得てきた激痛から比べれば些細なもの。
まだ死なぬ程度の傷しか与えていないのだ。
これから訪れるだろう『山姥』の運命を思えば、それがまだ序の口であることを彼女は告げるばかりである。
「遅いか早いかだけの違いだけでしかないのよな。では、思い知るが良い。あまたの民草の生活を巻き込み、己が願望だけを叶えようとすればどうなるのかを――」
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
最後の最後でまたすげえのが来たもんだ。そんなの無理やり奪い取ったって、本当の意味で自分のモンになるわけじゃねえのにさ。
……うん。最後の敵はいっとう怖ぇってのがセオリーだけど、肚括らないとな。
鎌だけで四肢を削ぎ落とすとかぞっとしねえな。
速さも正確さも大したもんだけど、得意の霊感ヤマ勘〈第六感〉を活かしてしっかり〈見切る〉。
避けさえすれば反撃のチャンスがあるはずだ。
自分じゃ動きを止められねえんだろ? お節介だろうけど、止めてやるよ(……と、《針の一刺、鬼をも泣かす》の霊針を無防備な部位に突き刺す)
動きが止まるにせよ止まらねえにせよ、痛みでまともな戦闘行動は取れねえだろうから、そこに一撃を叩き込む。
手に入れたい。
他より優れたるものを手に入れたい。
自分が何者かになりたい。
名のあるものになりたい。
特別になりたい。
その欲求を大妖『山姥』は奪うことで満たそうとする。
「私は奪う。奪って我が物にする。そうすれば、きっと私は特別なものになる。だから!」
膨れ上がる狂気。
『山姥』は首刈り鎌を握りしめた。
異様に長い腕。そのリーチは恐るべきものであろう。
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、やはり恐ろしいと思った。
「最後の最後でまたすげえのが来たもんだ。けど!」
恐ろしさはある。
けれど嵐の足は震えていなかった。
恐ろしいという感情は嵐のように心の中にある。けれど、それでも彼は言い放つ。
「そんなの無理矢理奪い取ったって、本当の意味で自分のモンになるわけじゃねえ!」
「知ったことか! 奪えば私のものだ!」
鬼気迫る表情を浮かべて『山姥』が踏み込む。
振り上げた首刈り鎌は、まるで三日月のようにひらめいて嵐へと入る。
嵐は見ていた。
恐ろしいからこそ、しっかり目を見開いてみていた。
目を瞑れば、それだけ恐ろしさが増す。
だから、目を見開く。見開いて、真正面から見つめて、その軌跡を知る。
「お前の手足も奪ってやる!」
斬撃の嵐だった。
けれど、嵐は身を翻して躱す。恐ろしく疾いけれど目にも止まらないほどではない。嵐はそれを理解して歯の根を抑え込むように食いしばって踏み出す。
「ぞっとしねえな。けどさ!」
「動くな! 手足が落とせないだろう!」
「そんなの御免被る!」
嵐は初撃をなんとしても躱さねければならなかった。
初撃を受ければ、そのまま雪崩のように鎌の斬撃が己を襲い続けるからだ。だからこそ、嵐は初撃にすべての意識を集中させていた。
かすめることもさせなかった。
恐ろしいから見る。
恐怖を得ることが恥なのではない。
恐怖を見てなお、そこから目をそらすのが恥なのだ。
故に嵐は踏み出す。
手にした針。
長年使い込まれた持ち主の思いが己が手に宿る。
「その動き、初撃を外すと自分じゃ止められなくなるんだろ? おせっかいだろうけど、止めてやるよ」
その一撃は、針の一刺、鬼をも泣かす(ペインエディター・ペインブレイカー)かのようであった。
手にした針はただの針ではない。
思い宿した霊針なのだ。
突き立てられた一撃は、ただの一刺し。
けれど、『山姥』にとっては致命的であった。
「こんな、針の一刺しで、私が!」
「この針は肉体を傷つけない。ただ、アンタの抱えている心を穿つ。アンタが抱えているのは、他者を羨む劣等感だ。だから、おれは、それを穿つ!」
引き抜いた針。
その穿った一刺しの穴から漏れ出すのは『山姥』を支え、そして狂わせた劣等感であった。
「そんなもの抱えているだけじゃあ、ダメなんだよ。それをなにかに変えなくちゃあ、何も得られない。何者にもなれない!」
だから、と嵐は動きの止まった『山姥』へと一撃を見舞い、『劣等感』ばかりに振り回されるなと告げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
現地妻とか……人聞き悪くないです?
でも『あの姫』って、もしかしなくても『永流姫』のことですよね。
体目当てとか、そんなこと言うと……あー、ほら-。
ステラさんがスーパーステラさんになっちゃってるじゃないですか。
せっかくの綺麗な紫髪が、オーラでふぉんふぉんいいながら金髪になっちゃってますよ!
って、ボケスルーですか!
でもかなり本気でキレてるのは解りますね。
いつもとは別ベクトルでやべーです。
だいぶシリアスなのに、わたしが練乳なくても動けるくらいですよ!
でも今日は、トップオブやべーでいいと思います。
思いっきりサポートしますから。やっちゃってくださーい!
って、やべーは増やさないでくださいね!?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ふーむ?
やはりこの世界のエイル様は謎が多い
少なくともフュンフ・エイル様は通り過ぎた後でしょうか
……ん?もしかして皐月様は隠し子疑惑?
また!現地妻が!!いるというのですか!!!
正妻の座は私のものです
ですがそれよりもまずはこの事態
……あ゛?(ガチギレ声)
なんといいました今?首はいらない?
全身揃ってエイル様にきまってるでしょーが!!
俄が舐めた事言ってると細切れにしますよ!!
誰がスーパーやべーメイドですか!!
ルクス様のボケに付き合っている余裕はないようです
【いかなる時もメイドたるもの】
美人メイドの実力をお見せしましょう!!
誰がトップオブやべーメイドですか!!
お前もやべーにしてやりますよ!?
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は怪訝な顔をしていた。
大妖『山姥』の言葉。
彼女が求めているのは『雷棲滅鬼悪・永流姫』の体。
その首を狩り、己が首と挿げ替える。
それが彼女の大きな目的なのだろう。だが、なんのために? 喰らうためではなく挿げ替えるために。それが何を意味するのかステラは理解できなかった。
「やはり、この世界の『エイル』様は謎が多いのですね。少なくとも此処に『フュンフ・エイル』様はいない」
ならば、どういうことか。
鋼鉄の巨人闊歩する世界と同じように、後継がいる、ということだろうか。
『皐月』――『サツキ・ラーズグリーズ』のように。
「……ん? もしかして『皐月』様は隠し子疑惑? また! 現地妻が!! いるというのですか!!!」
飛んだ。
メチャクチャ飛んだ。
飛躍した。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、あまりにも人聞きが悪い、と思った。
「いくらなんでも飛躍しすぎでは? むしろ、風評被害がひどくないですか?」
「問答無用! 正妻の座は私のものです」
ヤバいメイドだった。
あの目をしたステラに正論は通用しないということをルクスはよく理解していた。
「ですが、それよりもまずはこの事態」
ステラは『山姥』を見やる。
彼女が求めているのは『雷棲滅鬼悪・永流姫』の肉体であるという。
首はいらない。
必要なのは体のみ。
「……あ゛?」
濁った声であった。
喉から出た音にルクスは、あー、ほらー、と天を仰ぐ。
そんな事言うから、ステラがヤベーメイドから、スーパーヤベーメイドこと、スーパーステラになってしまった。
「せっかくのきれいな紫髪が、オーラでふぉんふぉん言いながら金髪になってるじゃないですか。おそろいですね!」
そういう問題であろうか。
だが、ステラは構わなかった。耳に届いていないとも言えるかもしれない。
「全身揃って『エイル』様に決まってるでしょーが!」
「馬鹿め。最初から分かたれているものに全身もクソもありゃしないだろうが! 価値もわからず追いかけ回すだけのものに何がわかるってんだい!」
放たれる首狩り手鎌をステラは、手にした二丁拳銃から放たれた弾丸で弾いた。
火花が散って、その閃きが闇を照らす。
一瞬般若面が見えたような気がしたのはルクスの気のせいだった。気のせい。気のせい。
ボケをスルーされたことも堪えたが、ステラがヤベー方向に本気でブチ切れあそばせしていることだけはわかったのだ。
だいぶシリアスである。
でもなんかこう、キャットファイト的なあれになっているせいで、練乳いらずである。
「いつもこうだといいんですけど」
「にわかが」
「は?」
バチっている。
別の意味で火花が散っている。ルクスは、でもまあ、いっか、と思った。
この調子、この調子。
「ステラさん、今日は思いっきりサポートしちゃいますから、やっちゃってくださーい!」
「細切れにしてやりますよ。あと誰がスーパーヤベーメイドですか!!!」
「怒る所そこですか!? というか、聞こえていたんですか!?」
「メイドイヤーは地獄耳です。さあ、ルクス様、そのボケに付き合っている余裕はないようです。いかなる時もメイドたるもの(ダレガヤベーメイドデスカ)、主人様を感じることが出来れば、それはパワーでございます」
「なにそれ!?」
「自分メイドの実力をお見せしましょう!!」
「トップオブヤベーですね。最後までたっぷりやべーです」
「頭イカレてんだね」
「やかましいですね、にわか風情が。お前もやべーにしてやりますよ!?」
火花散る戦場。
ルクスはステラと『山姥』の熾烈なる戦いを見やり、こうはなりたくないな、と思った。
だが、安心してほしい。
端から見たらルクスも十分そっちがわである――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…(山姥の首から上に姫の体を想像)…バランス悪くない?
やっぱ全体調和って大切だと思うんだよねぇ…え?そうじゃない?
…その首よこせ…えー…その件に関しては前向きに検討しているところなのですが…まず首だけなのか頭も含むのか…
(ゆっくり喋って要求にたいする返答をめっちゃ引き延ばす)
…引き延ばしているうちに【崩壊せし邪悪なる符号】で相手のUCを解除…そしたら結論出して否定しよう…
…あとは術式組紐【アリアドネ】で山姥を拘束…黎明剣【アウローラ】に炎の魔力を付与して拘束した山姥を切り裂くとしようか…
「……バランス悪くない?」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『ブレイズゲート』の主である『山姥』の言葉を聞いて、山姥の頭が『雷棲滅鬼悪・永流姫』の体に乗っている姿を想像した。
どう見てもバランスが悪い。
何を目的として、それを求めているのかはわからない。
けれど、美しさ、優れたるを求めているのならば、それはあまりにも児戯めいた目的だとメンカルは思わずにはいられなかった。
すべてが最良のパッチワーク。
理屈で言えば、最高の体となるのだろう。
己が思う最高。
それを揃えれば、当然最高の存在となれる。
あまりにも浅慮。
「……やっぱ全体調和って大切だと思うんだよねぇ……」
「モノの価値もわからぬ者がうそぶく! 私が求めているのは!」
「そうじゃないの……?」
メンカルは、じゃあ何のために求めているのかと思う。
優れたるものは確かに他者の関心を買うものである。けれど、それ以上でも以下でもない。
「その首を寄こせェ!!」
ユーベルえコードが走る。
到達する力。
けれど、メンカルの首は飛ばず、心臓もえぐられていなかった。
「……その件に関しては前向きに検討している所なのですが……」
「何を言っているんだい」
「いや、まず首だけなのか頭も含むのか……」
メンカルの言葉はあくまで言葉だ。
『山姥』のユーベルコードが言葉を起点にしているのならば、言葉でのやり取りが力を増幅させるのだ。
拒否してもしなくても対象に傷をつける。
理解できなくても生命を奪う。
そういうユーベルコードなのだ。
ならば、ここでメンカルが選ぶのは理解を拒むのではなく、受け入れること。しかし、首肯しないことであり、また同時に否定しないことだった。
そう、先延ばし。
彼女が求めたのは猶予だった。
先延ばしこそが『山姥』のユーベルコードを留めるものだった。
「首とは頭のことだ。首級のことだろうが! そんなことさえも知らないというのか」
「……文化の違いだってあるだろうからね。そのユーベルコードの弱点は、認識させなければならないということ。理解不能ならば生命を奪うかもしれないけれど、理解を拒んでいない状態ならば……」
引き伸ばすことができる、とメンカルは崩壊せし邪悪なる符号(ユーベルコード・ディスインテグレイト)によって、彼女のユーベルコードの情報を分解する魔術でもって相殺したのだ。
霧散する力。
すでにメンカルは次なる一手を放っていた。
術式組紐が『山姥』の体躯を縛り上げた。身動きが取れずに戸惑う彼女を前にメンカルは踏み込む。
「……お前の敗因は、たったそれだけ」
メンカルに先延ばしという猶予、その時間を与えたことが敗因。
翻る黎明剣『アウローラ』の剣閃が炎を宿し、その一撃を刻み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
茂多・静穂
生憎、現役灼滅者の時代に無限に湧く敵がいるブレイズゲートなんて何回も回ってるんです
今更その程度では猟兵としては新人の私だって怯みやしませんよ
ましてやここには援護してくれる人たちも大勢いるんですから
相手が視認できた時点でUCを発動
山鎌颪は流石に受けすぎると死にそうですからメイガスやトラウメンヴァッフェの防御形態で◆武器受けしできるだけ特に首などの急所には受けないようにガード
そろそろですかね?
会話や防御で時間を稼いだ間に
貴方の精神世界を私のシャドウペルソナで破壊して貰ってました
その執着が貴方の力なら精神からその源を揺らがせるまで!
精神への損傷で手鎌の命中精度が乱れた隙に接近
メイガスの拳でぶん殴り!
『ブレイズゲート』を茂多・静穂(千荊万棘・f43967)はよく知っていた。
彼女の世界、サイキックハーツにおいては数多くの灼滅者たちが挑んだ場所でもあった。
迷宮も多種多様。
仕掛けも無数にあっただろう。
そして、無限に増殖するダークネスたち。
何回も、何十も何百も、それこそ何千と巡ってきたのだろう。
それだけの自負が彼女にはあったのだ。
「今更、この程度で猟兵としては新人の私だって怯みやしませんよ」
白炎揺らめく迷宮に彼女は走る。
敵を認識した瞬間、彼女はユーベルコードを発露する。
先手必勝。
他の猟兵たちによって、『ブレイズゲート』の主である『山姥』は消耗している。
此処で畳み掛けるべきなのだ。
「ましてや、ここには援護してくれる人たちも大勢いるんですから!」
輝くユーベルコードと共に空中を翻るのは首刈り手鎌だった。
『山姥』のユーベルコード。
放たれた首刈り手鎌は恐るべき切れ味を有して静穂と一体化したメイガスの装甲を切り裂く。
「おおっと!? これは洒落にならない感じの斬撃ですね!?」
たった一撃。
かすめただけでメイガスの装甲が引き裂かれている。
恐るべきことである。流石にこれは死ぬ、と静穂は理解する。
確かに彼女の被虐精神は旺盛なものであったが、死ぬは違う。死ぬくらい痛い、ならばまだいいのかもしれないが、死んでは元も子もない。
故に彼女は己の首や急所だけを守るようにメイガスの腕部で覆う。
「受けてばかりで勝てるものかよ!」
「ですよね~……あっ、あっ、斬撃の振動が体の真芯に響きますよ~!」
「化かしあいがしたいってんなら! 一昨日来るがいいさ!」
「いや~そうじゃないんですけどね?」
「何を言って……!?」
がくり、と『山姥』は膝をつく。
何が起こったのかわからないのだろう。そう、静穂のユーベルコードはすでに始まっていた。
彼女の分身精神体。
それが『山姥』の精神世界へと飛び込んでいたのだ。
いつの間に? それはすでに彼女がガードを固めたときにはすでに『山姥』の精神世界へと侵入を果たしていたのだ。
「あなたの行動原理は、劣等感なのですね。劣っている、と言われたことも思ったこともないのに、他者の優れたるものを許せなかった。許容できなかったんですね。ありのままの自分、なんていう都合のいい言葉すらなかったんでしょう」
静穂は踏み込む。
メイガスの拳が握りしめられた。
「それゆえに執着! 他者を羨むことしかできなくなっている。そして、それが手段ではなく目的にすり替わってしまっている。だからこそ!」
精神世界で、その源を揺らがせたのだ。
ありのままの自分を受け入れること。
変容することを受容すること。
たったそれだけで、人の精神は自由になれるのだと説く言葉が『山姥』の精神世界を破壊したのだ。
「簡単でしたよ。それ以外しかなかった人にそれ以外を見せることは!」
振るい上げたメイガスの拳が鉄槌のように落とされる。
それは、これまで数多の生命に手をかけたことへの贖罪、その罰であるというように『山姥』の体躯を打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
「随分おっかない事を言うじゃないか。綺麗な誰かに成り代わりたいってか?知らんけど」
SPD
「悪ぃが武者の主さんも姫さんもやらせはしないぜ。ここがあんたの終着点だ」
BRTで先制攻撃しつつ騎乗ったままのテスタロッサを走らせる
分裂する手鎌は厄介だがバイクの機動力をもってすりゃ範囲外まで逃げるのは難しくないし
瞬間思考力で手鎌を分裂する前に素早く撃ち落とせばいい
手鎌に対処しつつ雷鳴で山姥に攻撃するぜ
強烈な衝撃波を伴った2回攻撃を受け続ければたまらず体勢を崩す筈だ
そしたら拳銃格闘術の連続コンボを仕掛けて最後にUCを加えた零距離の溜め撃ちで吹き飛ばす
「巻き込まれた人びとの怒りを思い知りやがれ!」
アドリブ歓迎
叩き込まれた拳に押しつぶされるようにして『ブレイズゲート』の主『山姥』は倒れ伏す。
けれど、彼女は血潮溢れさせながら立ち上がっていた。
ぽたぽたと落ちる血の色はどす黒い。
それが彼女のこれまでを示すようであった。
「羨ましい。妬ましい」
そう、それだけだった。
他者を羨むばかりの感情。己という存在のすべてを見もしないで、他者にばかり目を向けてしまう悪癖。
故に劣等感ばかりが彼女の中で育っていったのだ。
他者が羨ましい。
他者のようになりたい。
その感情が彼女を突き動かしている。
「奪えば、私のものだ!!」
「随分おっかないことを言うじゃないか」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、その言葉に思う。だから奪うのか、と。自ら保ち得るものを磨こうと考えないのか。
手っ取り早く、己は何も失わずに何かを得たいと思うばかりなのかと。
上っ面だけ取り繕えればいい。
本質なんて誰も見やしないし、見向きもしない。努力は見せたくない。みっともないから。
そんな『山姥』の本音が透けて見えるようであった。
「綺麗な誰かに成り代わりたいってか? しらんけど」
「何もわからぬ若造が!!」
咆哮と共に放たれる首刈り手鎌。
それを祐一は宇宙バイクを駆り、翻るようにして飛ぶ。
確かにあの一撃は恐ろしいものだ。どこまでも追いかけてくるようでもあった。
しかし、その鎌を熱線銃で即座に撃ち落としながら、祐一は言う。
「悪ぃが、武者の主さんも、姫さんもやらせはしないぜ」
「黙れ! 私が手に入れるものを阻むものなど、すべて殺し尽くしてやる! 邪魔をするのなら!」
さらに分裂する首刈り手鎌。
その数に祐一は辟易する。
面倒この上ない。ヒステリックな『山姥』の叫びが祐一は苦手であったかもしれない。
けれど、冷静でもあった。
眼の前で『山姥』が冷静さを失っている。
当然、猟兵たちのこれまでの攻勢も効果を及ぼしているのだろう。
けれど、彼女はそれ以上に己の中にある劣等感に苛まれている。
優れたるものこそ、彼女の求めるものであった。
他者を羨み、己にあるものを見もしない。誰にも注目されないから、注目されている誰かになりたいと思うのは、人として自然な欲求だろう。
「やり方を間違えたら、結局同じなんだよ。どんなに羨んでも、それが原動力になって前に進んでいくやつもいる。けれど、あんたは歩みもしていない。自分は立ち止まっているのに、置いていかれていると思い込んじまっている。自分の歩む速度が遅いせいだと思いコンじまっている」
祐一は、その瞳をユーベルコードに輝く瞳で見下ろす。
「あんたは立ち止まってるだけだ。歩きもしない。踏み出しもしない。そこに佇んで、前往くものたちの背中を見るばかりだ。その先が苦境に塗れていて、厳しく険しい道だと知っているからだ」
だから、奪おうとする。
誰かの成果物を奪うことでしか、己の存在を正当化できない。
奪うことが、己の特権であり、己が強者である証明であると思い込むことしかできない。
そこに価値などない。意味などない。
「黙れ! 私は、奪うものだ! 奪えば、わたしのものだろうが!!」
「巻き込まれた人びとの怒りを思い知りやがれ。あんたの望むものは手に入らない!」
放たれる冬雷(トウライ)の一撃。
充填された熱線銃の一撃は、『山姥』を打ち据えるだろう。
「ここがあんたの終着点だ」
炸裂するエネルギーの奔流を祐一は見下ろしながら、つぶやくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
なるほど、山姥か。何となくだが、聞いたことがある。でもな、それだけだ。
滅ぼされるのは、俺様たちじゃなくてお前の方だからな!
四肢切断攻撃な。素早いが、それ故の弱点があるだろ。
俺様が見切って避けたら、そのまま続くだけのものになる。エネミー設定でもよくやる。
そこへ、【組合員の手助け】の時みたく、見えねぇドラゴン魔力をプレゼントってな!
見えねぇから避けようがねぇし、まだそっちの攻撃は続いてるなら、避けることすらできねぇだろうが。
はは、穴をつくってのが、こういうのの攻略法なんだよ!
猟兵のユーベルコードが爆発を引き起こし『ブレイズゲート』の主である『山姥』の体躯を吹き飛ばす。
長い腕がだらりと血を流しながら垂れ下がる。
だが、ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は見ただろう。
まだ、と理解した。
「うぉっと!」
迫る首刈り手鎌の斬撃。
恐ろしいまでの速度。
だが、来るとわかっていたのならば躱すことも出来ただろう。
素早い。疾い。
確かに脅威だ。けれどヌグエンは、よくあることだと切って捨てる。
「なるほどな。だが、それだけだ」
「何がだ! この私を、ただのそこらのものと一緒にするな!」
振るわれ続ける斬撃。
だが、そのいずれもがヌグエンには届いていなかった。
精彩に欠く。そう断定するに値する程度の動きしか彼女にはできていない。それほどまでに猟兵たちの攻勢は苛烈だったのだろう。
だからこそ、思う。
「滅ぼされるのは、俺様たちじゃなくてお前の方だ!」
「滅びるものか! 私は、この白炎の中で!! もっと優れたるものを得て、お前たちを!」
だが、届かない。
どんなに恐ろしげに喚くのだとしても『山姥』の攻撃はヌグエンには届かない。
初撃を躱したからだ。
彼女の斬撃は初撃さえ躱せば、あとは自分では止められない。後は斬撃攻撃が続くだけだ。
「よくやる。俺もエネミー設定に困ったら、そうする」
あくまでゲーム世界での話だ。
けれど、ヌグエンにとってはどちらも一緒だ。故に、『山姥』の攻撃モーションは単調であるとさえ言えただろう。
「だったらぁ!!」
「いいや、無理だって。そういうふうになってんだからよっと!」
ヌグエンはユーベルコードに寄るドラゴンの魔力を放ち『山姥』の体躯を打ち据える。
己が放つ魔力を『山姥』は切り裂けない。
そして、打ち据えられた体躯は吹き飛ぶ。
もしも、彼女が攻撃を中断できていたのならば、己の攻撃だって躱すことはできただろう。けれど、彼女の攻撃はまだ続いていた。
「はは、穴をつくってのが、こういうのの攻略法なんだよな」
ヌグエンは笑う。
自分が組合員の手助け(ギルドスタッフノテダスケ)をしていた時のように、ゲームプレイヤーたちもこんな気持だったのかと思う。
確かに『山姥』は掛け値なしの大妖なのだろう。
けれど、攻略法さえ見つけてしまえば、ヌグエンにとってエネミーと変わらない。
「この程度で私を! 伏服させたつもりかい!」
「だから、言っただろ。これは滅ぼすか滅ぼされるかなんだ。そして、滅ぶのは、お前の方だ」
二度目だ、と言うようにヌグエンはドラゴンの魔力でもって『山姥』を打ち据え、彼女を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
武富・昇永
『永流姫』さまのお身体を欲するとは烏滸がましいにもほどがある!
狙うなら俺の体にしろ!
俺もお前の首が欲しいのでな!
さてここまで『皐月』さまも『雷棲滅鬼悪』たちも欠けることなく進んでいるな!
つまり大手柄まで目前というわけだ!
ふふふ!滾ってきたぞ!
({護廷式神・出世魚ブリ}で敵の攻撃を受け止め視界を塞いでいる間に{転身式神・多忙冠者}に『欲望解放』で溢れた出世欲を注いで『存在感』を強化し囮にする)
まるで猪だな!だが早さと勢いだけでは欲しいものは手に入らんぞ!
目標まであと一歩、そんな時こそ冷静さが必要なのだ!
冥途の土産に見せてやろう!流れるように勲功を得る我が妙技を!
(UC【出世道・勲狩り連撃】発動)
欲しい。
優れたる物が欲しい。
誰にも負けない優れたるものが。確固たる物が欲しい。誰も手の届かない至高なるものが欲しい。
その欲求は劣等感から来るものであったが、しかし『山姥』は己を見ていなかった。
自らが保ち得たであろう手札を見もせずに、他者に憧れ、羨望し、奪うことしかしてこなかった。
一度も自分を見ていなかった。
ただ優れているものを何の苦労もなく、ただ欲するばかりであった。
得たい、という欲求だけで、己が何かをしないといけないという考えさえ浮かばないのだ。
そこに至るまでの道程などに興味は露ともない。
功名心もただ、得られればいいのだ。それが何であるのかも、何を為したのかも関係ない。
ただ、己が敬られたい。
優れたものだと認められたい。
それだけなのだ。
「それは、私のものだぁあああああ!!!」
猟兵たちの攻勢を前に『山姥』は自暴自棄のように腕を振り回しながら、狂気に満ちた顔のまま『雷棲滅鬼悪・永流姫』を襲わんとひた走る。
迷宮の中を、主であることを放棄しても構わぬと言わんばかりであった。
しかし、そこに立ちふさがるのが、武富・昇永(昇鯉・f42970)であった。
「『永流姫』さまのお体を欲するとは烏滸がましいにもほどがある!」
彼の瞳がユーベルコードに輝く。
『平安結界』が『ブレイズゲート』に飲み込まれるという惨事に見舞われて尚、民草も坂東武者『世羅腐威無』たちも、『皐月』も『永流姫』も欠けることなく事態は終息に向かっている。
ならば、これは大手柄である。
昇永は己が身の内が滾るのを感じただろう。
この事件が解決すれば、おのれはきっと叙されるだろう。それを思えば、ますます力が湧いてくる。
上昇志向の塊。
それが昇永という猟兵なのだ。
「ふふふ! 滾ってきたぞ! さあ、狙うなら俺の体にしろ!」
「お前の体なぞ、いるものか!!」
「そうか! だが、俺はお前の首がほしいのでな!」
振り下ろされる首刈り手鎌を己が式神が受け止める。出世魚を模した式神は、その鱗で持って手鎌の刃を受け止めていた。
「なぜ、この程度が断ち切れぬ!」
「ははは! それはそうであろうよ! これは俺の出世欲の権化! 己が欲求が高まれば高まるほど頑強になるものよ! 俺は青天井の昇り鯉! その程度で断ち切られるものか!」
火花をちらしながら式神と手鎌が互いに弾かれて飛ぶ。
「まるで猪だな!」
「黙れぇぇぇ!!!」
「だが、速さと勢いだけでは欲しいものは手に入らんぞ!」
そう、昇永はこれまで駆け上がってきた。
平安貴族としての階位もそうであるし、己が力を高めるための修練もまたそうである。
だからこそ、知っている。
これは努力とも言えないものだと。
努力を努力と認識していると、どうしたって報われたいと思う。思ってしまう。
だが、昇永は、それさえも凌駕する出世欲で己をコントロールする。
目標は確かに掲げられるべきものだ。
だが、だからこそ。
眼前に迫ったからこそ、冷静さが必要なのだ。
情熱の傍らには常に冷静に物事を見極める目が必要なのだ。
故に、昇永はユーベルコードに輝く瞳でもって『山姥』を見据える。
「冥途の土産に見せてやろう!」
彼は弓を構える。
番えるは、勲功必中撃抜弓の矢。
放たれれば交差した首刈り手鎌さえも砕き、『山姥』の肩を射抜き、その体躯を迷宮に縫い留めるのだ。
「流れるように!」
そして、昇永が駆る早馬が縫い留められた『山姥』へと突進し、その臓腑を叩き潰す。
血潮が飛び、されど昇永は止まらない。
鞍の上から飛び立ち、最上段に構えるは、太刀。
「武功を得る我が妙技を!」
出世道・勲狩り連撃(イサオガリレンゲキ)。
その最上段から振り下ろされた妖切太刀・御首級頂戴丸の斬撃は『山姥』の体躯を切り裂く。
「なぜ、だ、わたしと、おまえ、何が、違、う……」
「奪うばかりだからよ。俺は、得る為に手を伸ばす。誰かのものに、ではなく。俺自身のために」
故に、と昇永は太刀を横一閃に振るう。
落ちるは首級。
『ブレイズゲート』の主の首級を得て、昇永は白炎が立ち消え『ブレイズゲート』の消滅と共に戻る『平安結界』にて、勝利を示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵