ケツァールマスク、再び飛来せり
#サイキックハーツ
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●マスクが隠すもの
都内繁華街地下にあるスポーツジム。そこにあるリングの前で一人の女が胸を張っていた。
「時代は変わり続けていく。その中で生き残るために優れたものは取り入れていかねばならない。他流や武器、そして人外の戦法であってもだ! それこそが新たなる|自由な戦い《ルチャ・リブレ》!」
堂々と言うその女。高露出のコスチュームに鳥を模したマスクを被ったその姿は、メキシコのプロレスラー『ルチャドーラ』のものか。
「ここに集った才ある者たちよ、私と共に新しい時代の『最強』を目指そうではないか!」
女の宣言に場が沸き立つ。その異常とも言える興奮は、女の言葉がただの鼓舞ではなくもっと奥深い『魂』を捉えている証か。
「そしてその為に必要なもの。それは堅実な鍛錬に他ならぬ。師範代よ!」
女の声に答え、もう一人高露出な衣装をまとった仮面の女が前に出る。
「稽古をつけてやれ」
「はいな、師範!」
その声に答え、師範代の女は門下生と組み合い始めた。
肉と肉のぶつかる音がリングに響き、汗が飛び散り肉が揺れる。
「ふふふ、いいぞ。ぶつかった数だけ強くなる。そして我らは最強の団体となるのだ!」
「ええ、そうですね、強くなりましょー! ……師範よりも、ね」
マスクの奥に秘めた視線。そこに僅かに剣呑な光を宿らせ、女は門下と組み合うのであった。
●マスクを暴くもの
「こんにちは、サイキックハーツの世界で事件っす」
新たな世界の名を出し挨拶するグリモア猟兵ミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)。今日の装着者は褐色肉体派ギャルのアカリ・ゴールドだ。
「ここは一般人も皆エスパーってのになって全ての悪いことがなくなった世界だったんすけど、ダークネスっていう昔の悪い奴が一斉に蘇ってまた世界を壊そうと企んでるみたいっすね」
シルバーレインやエンドブレイカー同様、多数の異能者が世界の悪を排し平和を勝ち取った世界。しかしオブリビオンとなった悪はそのような世界でも現れ、他と同じように世界をまた蝕み始めたのだ。
「ダークネスの名前は『ケツァールマスク』。アンブレイカブルっていう格闘家のダークネスで、メキシコプロレすのルチャ・リブレっていうスタイルで戦うみたいっす」
アンブレイカブルとは武を競い合い、己を高める武闘派のダークネス。己の道や誇りを持つ者も多くいる種族ではあったが、その根底にはその武に他を巻き込まぬことを厭わぬ闇が常にあった。
「こいつは生前そうしてたみたいに、才能のある人をスカウトして自分のプロレス団体に加えてるっす。たださすがに以前ほど大っぴらにやるんじゃなく、まずは地下団体として旗揚げし、これはと思う者をスカウトして己の手勢として抱え込むつもりみたいっす」
かつてはダークネスこそがこの世界の真の支配者であったが、それが滅ぼされた以上かつてのような大々的な活動は流石にできない。
「既にケツァールマスクは一定の配下候補を獲得、洗脳も着々と進んでるんすけど、その中に一人だけ、相手がだれか分かって潜入してる人がいるんす」
予知にかかる前に入っているなら猟兵ではあるまい。とすれば。
「この人は元|灼滅者《スレイヤー》で、生前のケツァールマスクのことも知ってるっす。その人が配下になって潜り込んで、ケツァールマスクの動向を探ってるんす。まずは団体に潜入してその人と接触して欲しいっす」
|灼滅者《スレイヤー》、それはこの世界における異能者。なればダークネスに関する知識もあるだろうし、敵の正体を知っていてもおかしくはない。
「リングネーム『ヌードルマスク』と言う名前の女性で、元|灼滅者《スレイヤー》の実力を活かして師範代役を任されてるみたいっすね。なんで、まずは皆さん門下生としてこの人と稽古して欲しいっす。その中で猟兵について教えたり、逆に灼滅者《スレイヤー》について教わったりしてくださいっす。主に体で」
彼女自身は猟兵でないが、近しいものに覚醒者がおり存在だけは知っているらしい。
「お互い十分に理解しあえたら、時は今とばかりに彼女もケツァールマスクに反旗を翻すんで、一緒に戦ってくださいっす。見た目通りのルチャ・リブレスタイルで空中殺法や投げ技が得意っす。自分のスタイルに自信を持っていて、敵の攻撃はどんなものだろうと構わず体で受け止めプロレス技で返すっす」
彼女は現代の基準に置いての危険度はそこまで高いものではない。だが、それでもその実力は相当なもの。当時の灼滅者《スレイヤー》に幾度となく刺客を送り込み、強敵として立ちはだかった相手なのだ。過去の残滓などと油断すれば瞬く間にリングに沈むことになるだろう。
「で、無事に倒せたら団体も解散、一般人たちも洗脳が解けて帰ってくっす。依頼はこれで終わりなんすけど、元々現場は繁華街、それもラーメン激戦区とかいうところにあるんで、ちょっと食事でもして帰ったらいいんじゃないっすかね」
ちなみにヌードルマスクもその名の通り大のラーメン愛好家らしい。彼女に聞けば周囲の店についていろいろ教えてくれるだろう。
「なんかマスクとか格闘とか色々シンパシー感じる奴ではあるんすけど、やっつけなきゃならないのは間違いないっすね。それじゃみなさん、よろしくお願いしますっす」
ミルケンはそう言ってグリモアを起動し、再び闇満ち始めた世界に猟兵を送り出すのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。今回はサイキックハーツでのシナリオになります。
蘇ったアンブレイカブル『ケツァールマスク』が一般人を集め再びプロレス団体を作ろうとしているので、先に潜入している灼滅者《スレイヤー》に接触し彼女と共に敵を倒してください。
第一章では灼滅者のバトル講座。件の灼滅者が師範代として稽古をつけてくれます。皆様も門下生として灼滅者の戦い方を学んびつつ、その中で自身が猟兵であるとこっそり彼女に明かすことで協力体制を築いてください。ケツァールマスクも稽古は見ていますが、世界中全てがエスパーとなったこともあり多少無茶をしても『凄い才能のあるやつ』くらいにしか思いません。
第二章では『ケツァールマスク』とのボス戦。彼女はルチャ・リブレというメキシコプロレスのスタイルで戦います。投げや空中殺法を駆使するほか、正面からの攻撃を無効化しそれに合わせたプロレス技での反撃も行います。自身はプロレススタイルを貫きますが、相手がどんな技を使おうとそれ自体は否定しません。また灼滅者も協力してくれますので、上手く使ってください。
第三章では繁華街でラーメン屋巡り。ラーメン激戦区らしく様々な味、種類の店があちこちにあります。また灼滅者は大のラーメン好きらしいので、聞けば色々教えてくれます。もちろん一人や仲間内のみで開拓したり、事前リサーチの上有名店に行ったりこの世界出身ならば既に馴染みの店があるということにしてもいいでしょう。この章に限ればお呼びいただければミルケンも同行します。ボディのご指名も可。
以下灼滅者詳細。
リングネーム『ヌードルマスク』。年齢は20代前半ほど。灼滅者のストリートファイター×殺人鬼。
褐色肌にお団子頭で、筋肉質で太い四肢に大きな胸という体形。戦闘スタイルは中国拳法主体ながら他の格闘技の技や武器術も織り交ぜるオリジナルスタイル。猟兵ではないがその存在は知っている。
具体的な外見はというと、http://tw4.jp/gallery/?id=78682 これに4年分ほど肉増ししてラーメン丼模したマスクを被せた感じ。
つまり作者の旧作PCのNPC化第二段。
それでは、プレイングをお待ちしています。
第1章 日常
『灼滅者講座!』
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POW : 力を見せる
SPD : 技術指南
WIZ : 知識の共有
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「よく来たな! 有望そうな若手が集まってくれて嬉しいぞ!」
繁華街地下にあるスポーツジムで、新規入門者を前に鳥のマスクの女が歓迎の声をあげる。高露出のコスチュームから見える体は豊満ながら鍛えられており、その肉体の力強さをこれでもかとアピールしていた。
「諸君らはこれより最強に向かう道を歩き始める。その手段は一にも二にも鍛錬あるのみ!」
女の宣言に、別のマスク姿の女が前に出る。
「はいどーも、師範代のヌードルマスクでございます。新入生の皆さんはまずワタシと訓練して貰います」
中華風味を感じさせる姿の通り、拳を掌に突き合わせ挨拶してくるヌードルマスク。
豊満、筋肉、高露出、マスク姿と共通項の多い二人の女。だが、両者には決定的が違いがある。
一人は過去から蘇ったダークネスであり、一人はそれを狩るべく地下に潜った|灼滅者《スレイヤー》という決定的な違いが。
早速リングに上がり待ち構えるヌードルマスク。恐らく彼女は新規の門下生がケツァールマスクに利用されないよう、肉体言語での説得をもって少しでも洗脳を遅らせるつもりなのだろう。それが灼滅者として彼女が己に課した役目なのだから。
だが、その役目を負うのは既に|それ《灼滅者》だけではない。能力者、エンドブレイカー、ケルベロス……そしてそれら全てを包括するもの、猟兵。
新たな仲間の技をその身で学び、己が存在と意思、そして力をまずは相手に教え伝えるのだ。
宮比神・うずめ
◎アドリブとかおまかせ
えっちなこと→✕
ヌードルマスク…?
なにしてるの?
え?てか、マジでなにしてん?
ぇぇ…
…イイエアカノタニンデス、シラナイヒトデス
とりあえず、組手をすればいいのかな?
ヌードルマスク『さん』
組手しよう!組手!
とりあえず、組手をしながらヌードルマスクさんが手に入れた情報でも聞いてみるんよぉ?
怪しまれないように常に動くことを考えて、踊るようにヌードルマスクさんが防ぎやすそうな攻撃ばかりしてみたり、とか
……ちょっと味気ないね
ヌードルマスクさん、激しくするんよぉ
手の内見せたくないから、ユーベルコードは使わずそのまま、攻撃しよっと
猟兵たちに先んじてダークネスの下に潜入していた灼滅者、ヌードルマスク。猟兵たちの最初の使命は新人として彼女に稽古をつけてもらいつつ、猟兵が来たことを彼女に暗に理解させ協力体制を布くことだ。
その一番手である宮比神・うずめ(舞うは鬼の娘・f43833)は。
「ヌードルマスク……? なにしてるの? え? てか、マジでなにしてん? ぇぇ……」
なぜかめっちゃドン引いていた。
そして彼女を前にしたヌードルマスクも。
「え、何で……えぇ……どういうことなの……」
マスク越しでも分かるくらい狼狽えていた。
彼女は猟兵がここに来ることは知らされていないが、猟兵の存在自体は知っている。その理由は、彼女に近しい灼滅者が猟兵に覚醒したからだ。そして、うずめも元灼滅者の猟兵である。つまり……
「……イイエアカノタニンデス、シラナイヒトデス」
うずめもこう言ってることだし、これ以上は言うまい。
「とりあえず、組手をすればいいのかな? ヌードルマスク『さん』、組手しよう! 組手!」
他人行儀な敬称を強調しつつ、うずめはヌードルマスクとぶつかり合う。
踊るような動きからの打突を繰り出し、相手からの反撃も踊りの動きで躱す。
そうして数度拳を交差させてから一度強く体ごと突っ込み、組み合う形になって体を密着させる。
「……で、どこまで分かってるん?」
小声でそう尋ねるうずめ。するとヌードルマスクも顔を近づけ、小声で返す。
「あー……とりあえずコスプレとかじゃなくてマジで本人っぽいですねあれ。さすがに昔みたいにダークネス即量産とかはできないみたいです。あと昔みたいに8人がかりじゃないとだめってこともなさそうですけど……ただ昔見なかった技ができるようになってますね。見切り効果はもう効きません」
彼女が調査したケツァールマスクの情報をうずめは聞く。いつまでもくっついていても不自然と一度飛びのいて離れ、怪しまれないように踊る動きからまた相手の受けやすい打撃を繰り返す。
しばらく技と受けさせる攻撃ばかりを続けていたが、互いに様子見程度の戯ればかりでは動いていても心は盛り上がらない。
「……ちょっと味気ないね。ヌードルマスクさん、激しくするんよぉ」
お遊びはここまでとばかりに、一気にスピードを上げ鋭く突き込むうずめ。ヌードルマスクはそれを腕を交差して受け止めるが、その筋肉質な体がぐっと沈みその打撃が今までとは日にならぬ重さであることを示す。
「……はい、もちろん。これから大変になりますから、ちょっとでも強くなっとかないとですね」
今度はヌードルマスクの側からも強く踏み込み、強烈な一打を放った。うずめは今までよりもさらに大きな動きで宙を舞ってそれを外し、さらにはその流れから回転蹴りを放って攻撃姿勢の儘のヌードルマスクを攻める。
その蹴りはヌードルマスクの肩口を捉え、ぱぁんと鋭い衝突音を響かせた。
(手の内見せたくないから、ユーベルコードは使わずそのまま、攻撃しよっと)
そう思いながらひらりと着地するうずめ。この組手もケツァールマスクは見ているし、今聞いただけでも彼女は昔と一味違う力を身に着けているようだ。
ならばこちらも新たな力のお披露目はもう少し先にとっておき、今は準備運動の時間とすべきか。
「そういえば、しばらくこういう運動してなかったんよぉ」
実戦から遠ざかっていた体を伸ばし、あの時の感覚をそこに蘇らせる。
新旧の力振るう時を前に、うずめは『相方』共々その身を十分に仕上げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!
肉体言語はそこまで得意ってわけじゃあないけど、潜入ならまかせておいて
【ミラード・クローゼット】でプロレス団体に合わせた衣装とマスクを手に入れて、完全に溶け込んでみせるよ!
ヌードルマスクさんとの手合わせは、正直に組みあったら完全にパワー負けするよね
ただ、ヌードルマスクさん以外には気づかれないように、こっそりと糸を絡めてバランスを奪っていこうか
……無論、これでヌードルマスクさんにはこっちが猟兵だってことに感づいてもらうのも狙いかな
気付けてもらえたら、後は組みあいで密着してる時にこっそりと情報交換していこう!
リン・ベルナット
アドリブとか大歓迎だよ!
平和な世界を脅かす悪いダークネスはスポーツヒーローとしてもなんとかしなきゃだね!
まずは協力者の人と接触、だね!
動きやすいアンフィスーツに着替えたら、【念入りな準備運動】!
稽古の前にはしっかり体をほぐさなきゃだし、肉体派の敵との戦いが待ってるから入念にやっていくよ!
準備ができたらガッツリぶつかり合うような激しい稽古をしていくよ!
密かに猟兵であることを知らせるのも重要だけど、灼滅者の戦い方っていうのも気になるしね!気合い入れていくよ!
…それにしても、敵のケツァールマスクも協力してくれるヌードルマスクさんもマスクをつけてるんだね。私もなにか被ったほうが良いのかなぁ?
リカルド・マスケラス
「この世界のプロレスはどんなもんっすかねー」
色々な世界を渡り歩いた身としては、気になるところっすかねー
【霧影分身術】で適当な身体(イラスト群あたりから適当なもの)を作成し、狐の仮面をつけておく
「よろしくっすよー」
得意技はリングロープからの【ロープワーク】を駆使しての【空中戦】だが、そのほかのスタイルも【グラップル】【怪力】でだいたいこなせる
ヌードルマスクとはロックアップからの技の掛け合いからで事情をかくかくしかじかと肉体言語で説明すればいいっすかね
「プロレスっていうのはある種のエンターテイメント。みんなを笑顔にさせるものっす。それをみんなに教えてくるっすよ」
と、彼女の手伝いをするっすよ
初っ端からまさかまさかの邂逅を果たしてしまったらしいヌードルマスク。しかし、考えようによっては彼女に猟兵の来訪に対しての心の準備ができたとも見ることができる。
改めて覚悟を決めたと思しきヌードルマスクの前に、今回の新入生がずらりと並ぶ。
「この世界のプロレスはどんなもんっすかねー」
「運動前の準備は大切だからね!」
「お仲間ですよ~? 仲良くしてねぇ♪」
各々に用意したらしいリングコスチュームを纏った新入生たち。カンフー着姿に狐面を付けたリカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)に、ケツァールマスクの色違いのような黒いスリングショット風コスチュームとマスクのサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)、そして臼さ0,01mm以下かつ固定もされておらず体の多くが露出したスーツのリン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)。もちろんいずれも猟兵である。
三人の姿はまさに新人レスラーとして違和感のないものだが、いずれもそれぞれユーベルコードや自前の装備を持ち込んだものである。
いわば全て猟兵の力の一端を纏っての姿。それをもって、三人はヌードルマスクと向かい合った。
「はい、それでは最初の訓練始めましょー。まずはあなた、来て下さい」
最初にご指名を受けたのはサエ。その声に答え、リングに上がって互いに向かい合う。
「師範と同じ格好ですね。ファンなのですか?」
軽く聞いてきているようだが、同時に洗脳の度合いを測ってもいるのだろう。もちろん猟兵としてここにきているサエは洗脳などされているわけではないが、そう思われているということはサエの格好は上手く場に溶け込めているものだということでもある。
一方でサエの方もヌードルマスクを観察する。
(正直に組みあったら完全にパワー負けするよね)
相手は歴戦の灼滅者だという話だし、その中でも肉体派の力を持つという。レベルの高い猟兵であっても|純粋な腕力《POW》は低めのサエでは単純な力比べでは不利を取りそうというのは向かい合って分かった。
だがケツァールマスクも後ろで見ている以上、いきなり大っぴらに猟兵としての力を使うのも憚られる。とりあえずまずは正面から組み合ってみるが、予想通り相手の力は強くすぐに押し込まれてしまった。
「格好の割に力は……?」
そのまま押し切ろうとするヌードルマスクだったが、何かの違和感を覚え手を止める。
掴んでいた手を握り直し、改めて相手を下に崩す方向に力を込めるが、やはり十全に力が入らず腕力で劣ると見たサエを崩すことは出来なかった。
その秘密は、サエが組む時に巻き付けた狐糸「舌端」。髪に偽装したそれはサエの長い髪と紛れて視認しづらく、気づいた時には的確に急所を絡めとられている。
「ははぁ、なるほど……あなたもそういう」
巧みな鋼糸使い、そしてその使い方からヌードルマスクもサエがどういうものか察したようだ。
それを引っ張り、相手がバランスを崩し自分に凭れてきたところで小声で会話をはじめる。
「これがあなたの『|必殺技《ユーベルコード》』ってやつですか?」
「そうじゃないよ。これはただの装備と技。UCは|これ《衣装》を出したほう」
ユーベルコードの効果は戦闘のみに非ず。猟兵の自由なスタイルをヌードルマスクに伝え、代わりに相手の情報も貰う。
「色々あるんですね……我々もいくつか恃みにする力はありますが、一つの技を一辺倒に使うのはどんな陣営でも避ける傾向があります。見切り効果とか言うんですが、要するに同じ動きを避ける傾向があるんですね。その影響は今は大分薄れてるんですが、癖でそう動く可能性も無きにしも非ずかと」
彼女が言うに、かつては灼滅者ダークネス問わず同じ技を繰り返すのは悪手中の悪手だったらしい。恐らくその癖はまだ残っているだろうと、ヌードルマスクはそう伝える。
怪しまれない程度に情報を交換した後、サエは力負けする体を装って足を崩し一旦ヌードルマスクから離れた。
「はい、じゃあ次の人。随分気合入ってるみたいですね」
次に指名を受けたのはリン。彼女はサエが組み合っている間も【念入りな準備運動】を行い自身の体を整えていた。
「稽古の前にはしっかり体をほぐさなきゃだし、肉体派の相手との戦いが待ってるから入念にやっていくよ!」
そう言うリンの体はまさに準備万端。豊かながら筋肉のしっかりついたしなやかな体を見せつけるようにリングに上がり、一気にヌードルマスクとぶつかった。
「おっと、これは……!」
褐色の肉体がぶつかり合い、互いの汗が飛び散る。リングを蹴ったエネルギーがロスなく体を伝い、ぶつかった相手にそのまま衝撃として流れ込んだ。
その勢いにヌードルマスクも思わず体を少し引く。
「これは中々才能のある人ですが、さて……」
今度は力比べから僅かに体を外し、伸びた腕を取るヌードルマスク。そのまま関節を極めようとするが、十全にほぐされた体はバネのようにしなって捕まえることを許さずするりと抜け出した。
技術としては不思議なものではない、極めて高い身体能力と運動センスというだけ。だが、灼滅者たるヌードルマスクの体すら押し、その掴みを抜けるそれは最早異能の域と言ってもいいレベル。
「じゃ、少し……試させてもらいますよ!」
今度はヌードルマスクの方から密着し、リンの胸に手を当てる。何事かと思わずリンがそちらを見ると、突如その手が光を放ち、激しい衝撃となってリンの体を吹き飛ばした。
「おっと!?」
明らかに打撃ではない、気功波のような技。しかしその攻撃にも、リンは空中で姿勢を制御しロープに背中から接触、その反動で体当たりを返した。
全身を固め、筋肉の塊の用な体となってヌードルマスクはそれを受ける。
(密かに猟兵であることを知らせるのも重要だけど、灼滅者の戦い方っていうのも気になるしね! 気合い入れていくよ!)
身体能力で気の技さえ返せる肉体。それもまた猟兵の力ということを伝えつつ、速と力の両極を行き来する相手の戦法をリンも身で学ぶ。
二つの褐色の肉による対話に猟兵と灼滅者であることは自ずと伝わったが、それでもリンには疑問が一つ。
(……それにしても、敵のケツァールマスクも協力してくれるヌードルマスクさんもマスクをつけてるんだね。私もなにか被ったほうが良いのかなぁ?)
ルチャ・リブレは素性隠しなどの理由でマスクレスラーが多く、またこの場で一緒にいる仲間もマスクを付けている者がいる。それに自分も倣うべきかは、師範代はまだ教えてはくれなかった。
「さて、最後は貴方です。うちは男女平等がモットーなんで、遠慮なくどうぞ」
最後にリングに上がるのはリカルド。彼は並んだ三人の中で唯一の男性だが、それで姿勢を変えるつもりはヌードルマスクにはないようだ。
「よろしくっすよー」
リカルドの方も特に気負った様子もない。だがそんな緩い雰囲気とは裏腹に、彼は素早く後方へと飛び退った。
そしてそのままロープにぶつかり、その反動を利用してのラリアット。
「その見た目でそれですか!」
カンフー衣装からのプロレススタイルにツッコミを入れつつ、ヌードルマスクは彼の手を取って体を沈める。そしてその勢いを利用して一気に背負い投げし、リカルドの体が宙に舞った。
だが、今度はリカルドはなんとロープの上に着地。そのままトランポリンかのようにその反動を使い、バク宙からのムーンサルトプレスを叩き込んだ。
ヌードルマスクもそれはまともに体で受け、押し倒される形で倒れ込む。
「いきなり空中殺法とは……やっぱり『素人』じゃない感じで?」
起き上がりながら言うヌードルマスク。その言葉の意味を察しながら、リカルドも立ち上がって構えを取る。
「そのほかのスタイルもだいたいこなせるっすよ」
それに応えるようにヌードルマスクも掴みかかり、がっしりとロックアップ。力比べの体制からお互いの顔を近づけ、他の猟兵もやった密談モードに入る。
「あなたはどっちかっていうと、攻撃技な感じで?」
「んー、どっちかって言うと、体づくり?」
実はリカルドの体は【忍法・霧影分身術】で作られた仮初のもの。それを示すように開けられた体にヌードルマスクが蹴りを入れてみれば、確かにその感触は肉を蹴ったものではない。
「なるほどなるほどー。でも、そう言うのでも……」
今度は鋭い足払いがリカルドの足元を刈る。リカルドは相手の意図を察してあえてそれを避けないでみたが、分身の足がばっさりと切られ一瞬体と断絶された。
その隙間を見せないよう、バランスを崩された体でリカルドは膝をつきながら分身を修復させる。
「斬撃のような……ってかガチ斬撃っすね」
「治すのも難しい殺人技ってのもありまして……」
サイキックでも修復困難なほどのダメージを与えることを重視した技もある。相手をKOで済ますか確実な死を与えるか。その選択肢を持っていたのが灼滅者でありダークネスだとヌードルマスクはその身で伝えた。
「はー、なるほど。ちなみに……」
屈んだままの姿勢で呟くリカルド。
「俺の本体、こっちだったり」
「は?」
彼の本体である|狐面《ヒーローマスク》の方から声を出し、それに驚いてヌードルマスクが固まった所に華麗なサマーソルトキック。
下あごを蹴られよろけるヌードルマスクの前で、リカルドは華麗に着地する。
「いや、マジですか……マスクマンってそっちの意味ですか」
「プロレスっていうのはある種のエンターテイメント。みんなを笑顔にさせるものっす。それをみんなに教えてくるっすよ」
驚きと感激、それこそがプロレスが見せるべき『光』であり、そこに『闇』は必要ない。あまりにも多様すぎる猟兵となり得る種族の一端を見せつつ、リカルドはリングを降りた。
三人との手合わせが終わり、ヌードルマスクはケツァールマスクへ向き直る。
「いやー……この人たち、皆ちょっとすごすぎますね。今回は豊作ですよ、師範」
予想をはるかに超える『新人』が『この世界』に入ってきた。ある種掛け値なしのその言葉を、師範代はその身に受けた衝撃の余韻に浸りつつ伝えるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
大変そうですが、やってみますぅ。
装備持ち込みと『隠した状態で力を伝える方法』を兼ね、【綰閒】を発動し各『祭器』を体内に収納、『身体能力』として機能を使える状態にしておきまして。
格闘技の団体として衣装の指定が有れば従い、無い様であれば普段通りで参りますねぇ。
『用意された衣装が入らない』等も有りそうですが(遠い目)。
『手刀』を刀に見立て『剣術』の動きを応用した[カウンター]主体の武術でお相手しまして。
ヌードルマスクさんの攻め手に合わせ『FMS』のバリアや『FES』の結界等、普通の格闘術では有り得ない『守り方』で『異能』の存在を伝え、折を見て耳元で「猟兵です」と告げますねぇ。
リングに上がる以上はリングコスチュームというのがいる。ケツァールマスクのように際どい改造を施したものやヌードルマスクのような拳法着をベースにしたものなど、この団体では割かし自由は効いた。
もちろん普段の練習からそれを着用する必要こそないが、試合デビューを考えれば用意は必要である。
「師範、どーしましょう、あれ……?」
「うむ……私のを上下に分ければ上はギリギリ先端がかかるか……腰は前垂れに師範代のそれを垂らして貰ってだな……」
次の入門希望者についてケツァールマスクとその件で話し合うヌードルマスク。彼女は灼滅者のはずなのだが、今回は本気で相談しに行ってるっぽい。
「えーと、じゃあそう言う方向で用意しますので……お待たせしました」
とりあえずの方針が決まったらしく、ヌードルマスクは夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の待つリング上へ戻って来た。
「はい、大変そうですが、やってみますぅ」
とりあえずは普段の格好のまま、練習を始めることになるるこる。ヌードルマスクはまず組み付いて体を崩そうとするが、重量級のその体はしっかりと地についてなかなか動かない。
「なるほど、単になまって膨れただけの体じゃなさそうですね」
るこるの極めて豊満な身体を何度か揺すって体感を確かめてから、ヌードルマスクは今度は少し離れて拳法スタイルの構えを取った。
「じゃ、今度はこっち行きますんで、できるならやり返していいですよ」
そこから素早く拳を打ち込むヌードルマスク。その拳を、るこるは片手で打ち上げるように弾きつつそのまま手刀で相手の胸を切るように打った。
「格闘……じゃなくて剣術ですかね?」
腕を刀と見立てたその動き方を観察し、ヌードルマスクはるこるの戦闘スタイルをそう言い当てる。実際るこるは歴戦の猟兵であるが拳で殴り合うことはほとんどなく、何かしら武器を使った戦いの方を得手としていた。
だが、武器相手に素手で平然と渡り合う猟兵がいるように、灼滅者もまたそう。ヌードルマスクは拳を力強く握ると、るこるの手刀に正面から殴る形で打ち付けた。
「基本技ですが……練度を高めればこうもできます」
その拳は触っただけで分かるほどに固い。サイキックハーツ由来のユーベルコード【鋼鉄拳】はストリートファイター、そしてその|闇の側面《ダークネス》であるアンブレイカブルの基本技であり、彼女が特に使い込んだ技の一つでもあるのだろう。
今は訓練で軽く打っているが、もし実戦であるならこれを正面から受けるのは確実に愚策。
それ故るこるは、その鉄の拳を別のものに当てることで止めた。
「おや? これは?」
ヌードルマスクの拳には確実に何かを殴り軋ませた感触。だが、その拳はるこるの体には届いていない。
それはるこるの用いる防御兵装『FMS』のバリアと『FES』の結界。だが、兵装そのものはその場には一切出ていない。先の待ち時間の間にるこるは【豊乳女神の加護・綰閒】を発動、自身の使用する兵装を体内に収納しそのまま使えるようにしていたのだ。
武器を体内にしまったまま使うという異能を見せ、そしてそれを最初の練習で用いる者。
その正体を確かめるべく頭突きを使って顔を寄せて来た相手の耳元で、るこるが囁く。
「猟兵です」
それを確認したヌードルマスクは、最後にるこるの胸元に一撃拳を放ってから離れた。
「なるほど、これは色々と伊達じゃなさそうですね。おかげでこちらの準備が手間取りそうですが……ま、そこは間に合えばということで」
その重厚な体はこけおどしではないと笑うヌードルマスク。そしてその身に纏うべきコスチュームの用意が『本番』に間に合うのか。それはまだ分からないことであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
エッチな下着だけの姿で応戦。
楊・美虎を筆頭に様々な格闘家との【戦闘知識】と
【学習力・見切り】でヌードルマスクの攻撃を
【受け流し】背後を取って右腕での【怪力・捕縛】から
【属性攻撃】の雷を纏った左手で乳頭や股間を弄ぶ首絞めエッチ
反撃の気配を【第六感】で察知したら
『無情なる刻』で30.6秒の時止め。
殺さない程度の【生命力吸収】で寿命消費を相殺しつつ【慰め・早業】
時が動き出せば、蓄積した快楽が爆発して連続絶頂♥
この世界の住人は通常攻撃無効と聞いたから
苦しみや快楽も感じないのか
UCを乗せた攻撃なら効くのか試させてもらったわ
私が猟兵かダークネスかって?
……両方よ
(ケツァールマスクに情熱的な視線を向けつつ)
次に来たのはドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)。彼女もケツァールマスクやヌードルマスクと同様高露出な姿ではあったが、コスチューム的なものではなく下着姿であった。
「無理に肌出し衣装着なくてもいいんですが……まあ、そのうち用意しますよ」
衣装の用意ができなかっただけと思ったのだろう、高露出であることにはさして驚かず、ヌードルマスクは軽い一撃を放った。
それをドゥルールは手で受けるが、続けてヌードルマスクの連撃がそこに被せられる。
そのスピード主体の攻撃を上手いこと受け流していく姿に、ヌードルマスクは感心したように言う。
「ちゃんとどこに打ってるかは見えてるみたいですね……それじゃ、こっちはどうでしょう?」
一旦引き、腰を落としての大振りな一撃。防御を崩すその一撃を、ドゥルールは当たる瞬間に後ろに跳んで最低限の衝撃に抑えることで防いだ。
その回避先に、ヌードルマスクが飛び掛かる。拳法から一転、プロレス式のラリアットで首元を狙う。
だがそれにもドゥルールは素早く対応。当たる瞬間の腕を上手く受け流し、そのまま後ろを取ってヌードルマスクを抱きすくめた。
そして右手で彼女の首を捕まえながら、左手で胸や股間を弄り回す。ドゥルールお得意のセクハラプレイだが、指先から電撃が走っているあたりで器用に異能を使えることをアピールするのも忘れない。
「うちはそっちの興行は一応やってないんですよねー……師範のあの格好じゃ説得力ないかもしれないですけど」
実際、格好はともかくヌードルマスクの戦闘スタイルは中国拳法ベースの総合格闘技であり、その戦闘能力も遊びの域では済まされない。そしてケツァールマスクはそれ以上だろう。
ヌードルマスクが体を前に倒し、背負い投げを駆けようとした。その瞬間。
「未来さえ、私には追いつけない」
ドゥルールが【無情なる刻】を発動、自分以外の時間を30.6秒だけ停止させた、
その間に行うのは投げの外しと、先とは比較にならないヌードルマスクへの恥辱責め。もちろん時間が止まっている以上それに彼女が何か反応することはない。
そして、時は動き出す。
「っっっっっっ!!!??」
体をがくがくと痙攣させ、巨大な胸を激しく揺らすヌードルマスク。それでも膝をつかず踏ん張ったのは彼女の体力が高いからか、あるいは何か別の理由でもあるのか。
「……超スピードとか催眠術とかでは断じてねーのは分かりますが……まさかね?」
いかに灼滅者やダークネスでもそのような技を用いる者はいなかった。ユーベルコードの自由さはそれを知らぬ世界の者の想像をはるかに超えることを、ヌードルマスクは文字通りにその身に刻まれていた。
「この世界の住人は通常攻撃無効と聞いたから苦しみや快楽も感じないのか、UCを乗せた攻撃なら効くのか試させてもらったわ」
そして全ての苦痛が取り除かれたという特異極まる世界への実験。過ぎた薬は毒になるのか、どこまでが通常攻撃の範疇に収まるのか。あるいはこの世界の住人自身完璧には把握し切っていないのかもしれないそれだが、とりあえずUCの影響が僅かにもあるなら他の世界と同様の効果が得られるらしく、そしてそれ故にユーベルコードを得たダークネスの復活が世界の危機となっているのだろう。
「わけわかんねーですね、あんた何なんです?」
「……両方よ」
猟兵かダークネスか、そう問われたと取ったドゥルールはケツァールマスクに情熱的な視線を向ける。その視線に込められた意図は果たして伝わっているのか定かではないが、その強敵はいくらでもこいという笑みを浮かべるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
オブリビオンの企みをぶち壊して
海へ還すぜ
いつもは大剣やギターで戦ってるけど
素手の戦い方をプロから教えてもらうってのは
いい機会になりそうだ
行動
俺は猟兵だ
オブリビオンを倒すためにきた
だから遠慮なく稽古をつけてくれ
素手の戦いにはあんま慣れてない
基本的なとこから頼むぜ
ダークネスに対する灼者の戦い方ってのを教えてくれ
この後のケツァールとの戦いで
早速役にたつかも、だろ
本気で取り組み
稽古しながら基本の動きや技を着実に身につけていく
っと
あんたの動きの拍子は最初からわかってたけど
何とか体がついて来れるようになってきた
いい師範代だな
稽古をサンキュ
ハードだったけど充実感あるぜ
この後のラーメン屋も楽しみだな(ぐっ
多くの猟兵がこの地下格闘団体に入門し、師範代から最初の稽古をつけて貰ってきた。
だが、その目的は皆同じ。
「オブリビオンの企みをぶち壊して海へ還すぜ」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)のこの気概が、猟兵全員の目的を端的に表していた。
だが、それを表すのはまだ早い。
「いつもは大剣やギターで戦ってるけど、素手の戦い方をプロから教えてもらうってのはいい機会になりそうだ」
この団体自体は様々な技術の使用や吸収に肯定的ではあるが、あくまで体裁は格闘団体。ボスも稽古相手も格闘家ということで、灼滅者流の格闘術を予習も兼ねて学んでおきたいところだ。
「素手の戦いにはあんま慣れてない。基本的なとこから頼むぜ」
「はい、では」
拳を突き合わせ、素早くジャブから当ててくるヌードルマスク。剣だけでなくギターまで武器にしているということは相応に異能を振り回す経験があると見たのだろう、最初から勢いは早く一般人に見切るのは難しい速度だ。
もちろんこの世界は強弱の差はあれ誰もがサイキックを持つ。その程度でケツァールマスクの警戒を呼び起こすことはない。あるいはちょっと腕自慢で調子に乗った新人と見られたのか、鼻っ柱でも折ろうというのかもしれない。
その速さは対処は難しいが、普段の戦い方もあってダメージ覚悟の移動は慣れている。相手の拳を身体で受けつつ、ウタは強引にヌードルマスクに肉薄した。
「俺は猟兵だ。オブリビオンを倒すためにきた。だから遠慮なく稽古をつけてくれ」
手加減無用と、近づいた時に囁く。
「ダークネスに対する灼滅者の戦い方ってのを教えてくれ。この後のケツァールとの戦いで早速役にたつかも、だろ」
彼女に教わりたいのはこの世界での基本的な戦い方。相手の行動の予習にもなり、自身の鍛錬や相手の合わせるためのヒントにもなる。
ならばとヌードルマスクが入れてくるのは、重い剛拳と軽く早い連打の繰り返し。先に他の猟兵にも説明していた通り、この世界の者はかつての癖もあって単調な戦法を嫌うのだろう。
しかし、その軛はもう解けている。癖を抑え込めるような状況なら相手もやり方を変えてくるかもしれない。ましてケツァールマスクは『新たな戦い』を標榜しているのだ。
その為にもまずは基礎を覚え、そしてその上で相手の応用に対応できるようにする。その為にウタは本気でヌードルマスクとぶつかり、特に|ストリートファイター《アンブレイカブル》の戦い方を辞林の身にリズムとして覚えさせる。
そして強弱の店舗が噛み合った、その時。
「だあっ!」
相手の強い打ち込みに合わせるように横に動き、空いた体に一撃を放つ。それはヌードルマスクの脇を捉え、激突音と共にその身を揺らがせた。
「見切られないようにしてたつもりですが……やりますね」
「あんたの動きの拍子は最初からわかってたけど何とか体がついて来れるようになってきた。いい師範代だな、稽古をサンキュ」
頭で分かっていても体が対応できるかは別。しかしそれも慣れれば十分合わせ能うもの。そのやり方は『本番』にも通じるはずと、ウタはヌードルマスクに礼を言う。
「ハードだったけど充実感あるぜ。この後のラーメン屋も楽しみだな」
運動の後の食事はうまいもの。ハードな『運動』の後ならなおさらと、ウタはその食事前にあるものをちらと見るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
イン・フナリア
良い身体のお姉さんに稽古つけてもらえて、帰りは美味しいもの食べられる、嬉しい依頼だねぇ
元灼滅者の師範代、私みたいな淫魔でも猟兵なら認めてくれるかなぁ
あとプロレスって服装自由で大丈夫かなぁ、靴とかは拾えなくて裸足なんだよねぇ
大目に見てもらえると良いけど、稽古やるのに絶対ダメってところは何とかするよ
雰囲気良いから充分昂りそうだけど、いきなり槍を出すのは変だろうしやめとくねぇ
小さい身体の割に力持ちだって、分かってもらえるように稽古頑張るよ
教えてもらえる技はちゃんと覚えて使えるようになったところを見せて、下心だけで来てるわけじゃないって信じてもらいたいなぁ
能力を隠さず使えればもっと戦えること、稽古の合間にこっそり伝えとく
あとは身体をぶつけ合って、昂り過ぎないように気を付けないといけないねぇ
格闘団体師範代であるヌードルマスクは顔こそ隠してはいるが、筋肉のついた体に大きな胸とかなりの好スタイルだ。そして彼女は大のラーメン好きでもあり、依頼後は現場周辺のラーメン店を案内してくれるという。
「良い身体のお姉さんに稽古つけてもらえて、帰りは美味しいもの食べられる、嬉しい依頼だねぇ」
この依頼においての余禄に、イン・フナリア(蘚淫魔・f43874)は素直に喜んだ。
だがもちろんただでそれを貰えるわけではない。その為には猟兵としての仕事をきちんとこなさねばならないのだ。
「元灼滅者の師範代、私みたいな淫魔でも猟兵なら認めてくれるかなぁ……あとプロレスって服装自由で大丈夫かなぁ、靴とかは拾えなくて裸足なんだよねぇ」
彼女は猟兵として新人というだけでなく、光当たる世界の住人へと変じたばかりの|ダークネス《淫魔》。生活基盤と呼べるものすらまともになく、本人の嗜好もあって着るものすらほとんど持っていなかった。
「あー、大丈夫ですよ。裸足でやる格闘技なんていくらでもありますから。それにまぁ、今やダークネスなんて希少種族状態ですし、強くなって損はないでしょう」
この団体では服装については、鎧やプロテクターのような明確な防具でもない限り自由。あるいは命懸けの実戦ともなればそれすら許容されるかもしれない。着る方にすらこうなのだから、脱ぐことにおいてはほとんど制約はないと言っても良かった。
そしてダークネスと人の主従は今や逆転しており、また淫魔は元より他種族に依存せねば生きられずダークネスの中でも弱いとされていた存在だ。強くなろうとする気をもってリングに上がるのは何もおかしな話ではない。
稽古やるのに絶対ダメってところは何とかするつもりでいたインだったが、その答えに一安心。なら遠慮なくということで、ヌードルマスクの豊かな肉体へと躊躇なく飛び込んだ。
相手の体にしがみつき、力比べをするように組み合う。小柄なインの顔がちょうどヌードルマスクの胸に埋まり、その感触でインの心は昂っていく。
その興奮に連動して装備である槍が現れそうにもなるが、いきなりそれを出すのも変だろうとやめておく。ただその代わりとばかりに、ヌードルマスクの体を強く抱きしめ己の怪力を示した。
「おっと、これは……かなりやりますね」
小さな体に合わぬその剛力に、引き剥がそうにも上手くいかないヌードルマスク。小さな体に込められた力が大人以上というのは、灼滅者である彼女には身近なものでもあっただろう。
そしてその力をもってすれば、違うダークネスの技であっても学び使いこなすこともできよう。
「こうして組み付いてくるなら……こっちに派生もできますかね?」
ヌードルマスクがしがみつくインを自ら抱きしめ、胸でその顔を挟み潰す。そしてそのまま足を払って前方に倒れ込み、インをマットに押し倒した。
激しい衝撃がインの体を揺らすが、頭部は逆に胸の柔らかい感触が全方位を包みこれでもかというくらいに圧迫されていた。
「戦いの流れの中で相手に組みつけたら、しめる以外にも手はあるのですよ」
気が昂りそうになっていた所にヌードルマスクがその胸を開くと、インの後頭部が軽くマットに落ちる。つまり胸をクッション代わりにしていなければ、頭を思い切り叩きつけられていたということだ。
「地獄投げ、といいます」
技名を言いながら立ち上がるヌードルマスク。ユーベルコードにならなかった技もある。しかしそれも猟兵が己の力を持って使えば、相手を攻める手の一つに昇華しうる。
それを実践すべく、インも立ち上がり再びヌードルマスクに組み付いた。
「さて、次はどうしますか?」
再び胸に顔を埋めるような体勢になる。今度は押し倒しを警戒して足をしっかり踏ん張るが、ヌードルマスクも同じ手を使うつもりはないのか今度は押し倒そうとしない。
インは体をぐっと寄せ、手を上げてヌードルマスクの胸を掴んだ。体の拘束が外れたところで抜け出そうとするが、それより早くインは手に力を籠め、掴んだ胸を起点にヌードルマスクの体を持ち上げた。
そしてそのまま、さっき自分がされたように相手を前に押し倒す。体格差のある相手が軽々倒れていき、その肉の厚い体がリングに倒れた。
「これでいい、かなぁ」
片手は胸を掴んだままだが、もう片手は相手の背中に差し入れて庇っている。つまりこれを外せば、殺す気の危険な角度で相手を倒せるということだ。
教えてもらえる技はちゃんと覚えて使えるようになったところを見せて、下心だけで来てるわけじゃないということを示して見せる。そしてインは体を少し前にやり、ヌードルマスクに顔を近づけた。
「能力を隠さず使えればもっと戦えるよ」
猟兵としての力は本気じゃない。ましてやオーバーロードまで用いた状態であれば、この程度実力の半分も見せていない状態とも言える。
「おっそろしい子ですね……あ、言っときますけど、別に胸使わなきゃならないわけじゃないですからね?」
まだ胸を掴んだままの片手に触れながら、本気か冗談か分からない調子で言う。
そして再度立ち上がり、今度は角度を変えてのぶつかり合い。肉の触れ合いに昂りすぎないように気を付けながら、インは彼女の体と技をその身で学んでいく。
抑えたものを発散するとき、それはもうすぐそこまで来ていることを、その淫魔の体は敏感に感じ取っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ケツァールマスク』
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POW : ケブラドーラ・コン・ヒーロ
掴んだ対象を【ルチャリブレ】属性の【風車式バックブリーカー】で投げ飛ばす。敵の攻撃時等、いかなる状態でも掴めば発動可能。
SPD : プランチャ・スイシーダ
自身の【情熱を籠めた大ジャンプ】から極大威力の【プランチャ(ダイビングボディアタック)】を放つ。使用後は【相手の上に覆いかぶさった】状態となり、一定時間行動できない。
WIZ : ケツァールポーズ
【怪鳥を思わせる腕を広げたポーズ】を構える。発動中は攻撃できないが、正面からの全攻撃を【鋼の如く硬く、豹の如くしなやかな肉体】で必ず防御し、【プロレス技】で反撃できる。
イラスト:Ryoji
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
格闘団体の新人として師範代と稽古を積んだ猟兵たち。
「いやー、皆さん本当に予想外でした。合格なんてもんじゃないですね。これだけあればもういいでしょう」
その相手となったヌードルマスクは、そう言いながらリング上から団体代表であるケツァールマスクの方を向いた。
「師範、今までお世話になりました。正直あなたのことは嫌いじゃないです」
ケツァールマスクをじっと見るヌードルマスク。
「でも、しょーがないです。あなたはダークネス……今風に言うならオブリビオンで、ワタシは|灼滅者《スレイヤー》。でもってこの新人たちは今噂の猟兵さんでして」
その裏切りに、ケツァールマスクは笑って答えた。
「ははは、なるほど、そう言うことだったか! お前が私に忠誠などないのは分かっていたさ。|代表《最強》の座でも狙っているのかと思っていたが、なるほど目的は首のほうだったか!」
豪快に笑い飛ばすケツァールマスク。武を求めるアンブレイカブルである彼女にとっては、従順な配下より野心溢れる反逆者のほうがよほど好ましいのだろう。
その言葉に、ヌードルマスクはマスクにかけていた手を外す。
「分かっちゃうのが嫌ですねーその気持ち。それじゃワタシも最後までこのままお相手しましょう。ケツァールマスク! このヌードルマスクがその翼もぎ取って地に落としてくれましょう!」
プロレスのマイクパフォーマンスの如く宣言するヌードルマスク。それを受け、ケツァールマスクは軽やかに跳躍しリングへ降り立った。
「笑止! 我が最強への飛翔は誰にも止められるものか! 反逆者ヌードルマスクよ、王に逆らったことを後悔させてやろう。そして新たなる覇者を名乗らんとする者共よ、お前たちも最強に至るための足場となるがいい! 私の名はケツァールマスク! 誰よりも自由に舞い、戦う女!」
ライトに照らされ、リング上で豊かに実った体と分厚い筋肉、そして輝く肌を堂々と見せつけるケツァールマスク。
新たなる世界への挑戦者、猟兵よ。過去より舞い戻った怪鳥を再びリングの底に押し戻してやれ!
サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!
さーて、ここからが本番だね
あたしはあたしなりに仕掛けさせてもらうよ!
ケツァールマスクの色違い衣装を用意したし、ここは敢えてケツァールマスク側についた反逆者の中の裏切り者って演技をしようかな?
その時に敢えてケツァールマスクに体を品定めさせて、パワータイプじゃない事も印象付けておこっ
裏切者として、他の人から攻撃を受けて追い詰められるけど……、それは全部【雌伏妖狐】の為の下準備!
ケツァールマスクにタッチを求めれば、多分無防備に近づいてくれるよね?
溜めに溜めたパワーで増大した身体能力で、最初にケツァールマスクにそこまで力が無いと思わせていたのも合わせて、最大級の一撃を狙うよ!
宮比神・うずめ
◎WIZ/アドリブとかおまかせ
よぉーしっ、準備運動も出来たし早速ボコボコにしちゃおうかなっと
近づいて…あ、これ正面からぶつかっちゃ駄目な奴じゃん
えっと、追い詰めないように間合いに注意してケツァールマスクの背面を取るように素早く回りこんでっ!
早速ユーベルコードを発動させて、卑怯かもしれないけど背面から、攻撃して浄化射撃の天地開闢光を撃ち込んでやるんよぉ!
正々堂々と戦いたいけど、ウチ、プロレスラーじゃないし
悪いとは思うけどお上品に戦う必要もないしなぁー。
(また、素早くケツァールマスクの背面をとって可能なら攻撃)
ついにリングインしたケツァールマスク。その前で、猟兵たちも準備万端といった面持ちだ。
「よぉーしっ、準備運動も出来たし早速ボコボコにしちゃおうかなっと」
宮比神・うずめ(舞うは鬼の娘・f43833)は体を伸ばしながらリングに上がる。その隣にいるのは、ケツァールマスクの下に師範代として潜り込んでおりたったいま反旗を翻した元灼滅者ヌードルマスクだ。なぜか微妙に目を合わせないようにしている二人に加え、さらにもう一人。
「さーて、ここからが本番だね。あたしはあたしなりに仕掛けさせてもらうよ!」
ケツァールマスクの色違い衣装を纏ったサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)。彼女も猟兵という身分を明かしたが、なぜか彼女はケツァールマスクの隣に立った。
「この格好してみて思ったんだけど……ケツァールマスク、あなたの味方をさせて貰う!」
そしてまさかの裏切り宣言。それにうずめとヌードルマスクは揃ってあっけにとられるような顔をし、ケツァールマスクも首を傾げた。
「どういうつもりだ? だがその身体で何ができる?」
隣に来たサエの体に触れ、それを検分するケツァールマスク。サエの体は確かに大きな胸を持つ豊満なものだが、ケツァールマスクやヌードルマスクと違い筋肉で厚みがあるわけではない。ヌードルマスクとの鍛錬でも力負けする様子は見せていたが、やはり腕は細く力勝負には向いてなさそうだ。
「まあ、大方何かの作戦だろう。私は如何なる挑戦でも受ける」
灼滅者も闇堕ちという手段こそあれど、最初から裏切ってくるものは見たことがない。だが相手の策が分からないのなら暴く瞬間まで好きにさせるのがプロレスショーとしては最適と、ケツァールマスクは彼女の寝返りを受け入れた。
そして始まる2対2のタッグマッチ。まずはうずめがケツァールマスクと対峙すると、ケツァールマスクは両腕を堂々と広げ体を見せるポーズを取った。
「こがケツァールポーズを突破することができるか!」
惜しげもなく曝け出された豊かで分厚い体は彼女の力強さをこれ以上なくアピールする。
「そんじゃーカミ様の御力、お借りします!」
その体にうずめは【神薙の神子(うちばーじょん)】を発動して前から近づいてみるが、間合いに入った瞬間に即座に足を止めた。
「あ、これ正面からぶつかっちゃ駄目な奴じゃん」
一見すれば防御を自ら捨てているようなそのポーズだが、迂闊に攻撃をかければそれは全て鋼の如く硬い体に止められ、豹の如くしなやかな肉体に逆に捉えられることになるだろう。
うずめは素早く後ろを取ろうとするが、回り込んだ瞬間ケツァールマスクはポーズをとき、バックナックルで急襲をかける。勢いある拳をとっさにうずめは舞うように飛んで避けるが、その瞬間にはケツァールマスクは再びうずめと向かい合いポーズをとっていた。
うずめとケツァールマスクが睨み合ってる間、隣ではサエとヌードルマスクが向かい合う。
「えーと……よく分かりませんが、とりあえず行きますね?」
まだやや困惑気味ながら、ヌードルマスクがサエに攻めかかる。まずは稽古の時と同じように組み合ってみるが、やはり単純な腕力には差がありサエは簡単に崩されてしまう。
そのまま強引に押し潰す形で体勢を崩し一度マットに倒してみるが、やはりそれにも大きな抵抗はせずサエはそのまま倒れ込まされた。
ヌードルマスクはプロレスを意識してかサエの真意を測りかねてか追撃はせず、サエを立ち上がらせて自分を攻めるように促す。
それに答えてサエがパンチを打つがやはりそれも威力はなく、簡単に取られてそのままアームブリーカーで再度倒されてしまった。
「一体何を考えているのか……だが調べるのはお前を捉えてからだ!」
サエのその様子を訝りつつ、ケツァールマスクはうずめを捉えようと掴みかかる。ケツァールポーズからの羽ばたくような飛び掛かりでうずめを捕まえ投げ技に移行しようとしているが、うずめはひらひらと避けて何とか掴まれるのを避けていた。
「正々堂々と戦いたいけど、ウチ、プロレスラーじゃないし」
うずめの狙いはケツァールマスクの背後。その為何度でも回り込みをかけ、死角からの浄化射撃の天地開闢光を撃ち込む機会をうかがうが、ケツァールマスクは素早く反応し中々背中を見せてはくれない。
その横で、サエの戦いはワンサイドゲームとなっている。
ヌードルマスクはサエに対して引き起こしてからのヘッドバットやボディスラム、レッグギロチンに四の地固めと徐々に激しくなっていく攻撃を浴びせていくが、サエはそれに全く抵抗をせずされるがままになっていた。
プロレスラーのように体を固めて受けているのではなく、受け身もまともに取らずにダメージが丸ごと通る危険な被弾。
猟兵とそうでないものという本来力の差があってしかるべき者同士ながら、サエの体には明らかな負傷が増え始めていた。
やがて何度目かのダウンの時、サエはケツァールマスクに手を伸ばす。
「ちょっと、変わって欲しいかな……」
ケツァールマスクはサエのその姿に、うずめから視線をそらさないまま近づいてきた。
「本当に何を考えているのか……その負傷は演技ではあるまいし……」
ケツァールマスクが味方の手によってボロボロになったサエに助けの手を差し伸べた、その瞬間。
「いい夢見れたかな? もう覚めるけどね♪」
突如としてその手を無視してサエが立ち上がり、ケツァールマスクの頭部に強烈な拳を放った。その威力はケツァールマスクが見立てたサエの腕力からはかけ離れた重いもの。
「ぐっ……!」
まさかの一撃に思わずケツァールマスクも揺らぐ。
皆がいぶかしんでいた通り、サエの寝返りは作戦の内。その上で徹底的にヌードルマスクに痛めつけられたのは、【雌伏妖狐】の威力を上げるためであった。
自ら望んで不利を作ることで力を上げる。アンブレイカブルが好む修行の精神をそのまま技まで昇華させたようなユーベルコードは、かつてのサイキックにはないようなものであった。
揺らいだケツァールマスクに、うずめがさらに追撃をかける。
「うおぉぉぉっ!!」
だが、ダメージを振り払うようにケツァールマスクは咆哮、堂々と体を広げケツァールポーズをとる。勢いが乗っていたうずめは止まることができず、その腹筋に攻撃を当ててしまった。
「そんなもの……効かん!」
そのまま吸い込むような掴みから、うずめをベアハッグに固めるケツァールマスク。サエがそこにカットに入るが、ケツァールマスクは即座に手を離しサエを掴んでしまった。
「とったぞ……|ケブラドーラ・コンヒーロ《風車式バックブリーカー》!」
サエを肩に担ぎ、回転しながらの叩きつけ。その勢いに背骨と三半規管を一度にさえは攻められる。
「……今なんよぉ!」
その回転中に一瞬背中が自分の方を向いたのを見逃さず、うずめはそこに天地開闢光を放った。
「ぐうっ……!」
「悪いとは思うけどお上品に戦う必要もないしなぁー」
怯んだ所に体からぶつかっての追撃。うずめの執拗な背中責めにケツァールマスクはサエを取り落とし、そこに好機とばかりにヌードルマスクが飛びついて相手の脚を取って4の字に極めた。
そしてそこにサエが立ち上がり、ケツァールマスクに駆け込む。
「お前の力など……」
ケツァールマスクは今空いている腹に力を籠めそこで受ける姿勢を見せる。
「そうおもうなら、受けてみて!」
その腹に、サエは肘から倒れ込んだ。腕は細くともユーベルコードのたっぷり乗った肘が腹筋をぶち抜き、さらにそれに呼応するよううずめがもう一度背中に強烈な光線を当てた。
「ぐぅぅぅっ!!」
体の両面からの攻めに、ケツァールマスクはポーズをとることもできずダウンする。
寝返り、背面狙い、三体一と自由を超えて無法とも言える乱戦が、ここから続く熱闘のゴングとなったのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
お二方が、ダークネスと灼滅者の技術をお見せ頂けるなら。返礼に『外の技術』をお見せしましょう。
『FAS』で飛行、『FMS』のバリアで他の方々が巻込まれない様周囲を覆い隔離しまして。
【闢華】を発動、『祭礼の女神紋』により『祭器』共々、全身を『絶対物質ブラキオン』に変換しますねぇ。
『輝石』の無いこの場で『絶対物質』破壊は不可能、『投げる』ことは出来ても『ダメージ』は受けませんし、『FGS』の重力結界による跳躍制限と『FPS』の探知、『FIS』の転移を併せれば回避も可能ですぅ。
後は『FRS』『FSS』の[砲撃]を主体に、此方に意識が向いたらヌードルMさんに不意打ち願いましょう。
先の稽古で、ヌードルマスクは猟兵に対し灼滅者流の戦い方をレクチャーした。そしてケツァールマスクは、相手がどのような形で来ようと誇りと信念をもって己のダークネス式プロレススタイルを貫くつもりでいた。
「お二方が、ダークネスと灼滅者の技術をお見せ頂けるなら。返礼に『外の技術』をお見せしましょう」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は新しき世界の敵味方の流派を教えられた例として、数多の世界で戦う者のスタイルをもって相手せんとリングに上がった。
そしてそのまま、『FAS』を背負い宙へと浮く。
「うわ、飛ぶんですか……」
ヌードルマスクが若干驚き気味に言っている。能力者などと同様飛行能力を持つ灼滅者は基本的におらず、飛んで戦うということが選択肢にないのだ。
その上で、周囲に『FMS』のバリアを張ってリングを隔離する。ハイレベルな戦いに蚊帳の外となっているが、既に洗脳されつつあるエスパーや一般門下生もこの場にいるのだ。
「リングを光物で飾るとは、猟兵という奴はプロデュース業もやっているのか?」
それに対してはケツァールマスクが不敵に笑って言った。彼女は元々積極的に一般人を狙うことこそないが、戦いに巻き込むこと自体には何ら躊躇はない。戦いの余波に巻き込まれて傷つくようならその弱さが悪いと考えるのは、武を至上とするアンブレイカブルとしてはある種真っ当な精神とも言えた。
そしてその輝くリングの中で、ケツァールマスクは飛翔する。
「空は|鳥《ケツァール》の領域! とうっ!」
ロープをバネに高く跳躍したケツァールマスク。その足がるこるの豊かな胸を蹴り飛ばす瞬間に。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
るこるは【豊乳女神の加護・闢華】を発動、全身を『絶対物質ブラキオン』へと変化させた。ケツァールマスクの鋭い蹴りがるこるの胸を確かに捉える。だがそれは僅かに揺れることすらなく、るこるの体全体を横に押しのけるだけに留まった。
「なにぃっ!?」
足に帰る激痛と、明らかに金属を蹴った時の感触。拳だけを鉄に変える鋼鉄拳とは違う、明らかに防御に向いた技だ。
「なるほど、守りを固めるか……ならば、こうだ!」
ケツァールマスクは再び飛翔。今度はその太い脚でるこるの顔を挟み、空中で一回転して脳天からキャンバスへと叩きつけた。
首に全ての重量がかかる危険なフランケンシュタイナー。だがそれも、るこるは平然と起き上がる。
「『輝石』の無いこの場で『絶対物質』破壊は不可能ですのでぇ」
ブラキオンを砕く唯一の手段は、アックス&ウィザーズで猟書家の遺した『輝石』を用いること。それのないこの世界で、それを砕くことは不可能と言えた。
「アンブレイカブルに対して随分生意気言ってくれるね……じゃあ、こいつでどうだい!」
今度は地をかけ、るこるに組み付こうとするケツァールマスク。その逞しい腕がるこるを捉える瞬間に、るこるはリングの逆サイドに瞬間移動しそれを回避した。
「なんだとっ!」
大袈裟に止まり、きょろきょろと辺りを見回すケツァールマスク。パフォーマンスも入った動作だろうが、瞬間移動するという相手も見たことはなく見失ったのは間違いない事だろう。
そして、るこるを見つけてケツァールマスクは再びかけだす。その上で今度こそその両手がるこるを捉えた。
そのままるこるに首、腕、足を絡め、友にリングに倒れる。るこるはプロレスに詳しくないが、『FPS』の探知でケツァールマスクが何を狙っているのかは分かった。
「こいつは効くだろう!」
そのまま転がろうとするケツァールマスク。三半規管を攻めるローリングクレイドルで、相手の戦意を削ごうとしているのだ。それに対し、るこるは『FGS』での重力操作で抑えつけることで回転、さらには彼女の得意とする空中殺法までもを抑え込んだ。
武器や防具ではない道具の使用。それも灼滅者は補助的にしか使うことはしなかった戦法だ。
そしてもちろん、攻撃も。
空中にならBBだ『FRS』と『FSS』の砲撃が、ケツァールマスクを襲った。
「私の体を……なめるなぁっ!!」
それを堂々と自らの体で受ける。無効化のケツァールポーズでこそないが、体で受ける覚悟を決めたレスラーの体は頑健だ。
圧巻の攻撃が過ぎ去り、ケツァールマスクの体が露になる。露な肌が焼けてはいるが、その生命はまだ燃え盛っていた。
「ふ……猟兵なにするものぞ……!」
得意げにるこるを見るケツァールマスク。だが、その上に影が差す。
「それでは、どうぞぉ」
「師範、貰いました!」
空中から降ってくるヌードルマスクのフライングボディプレスが、ケツァールマスクを叩き潰した。
灼滅者にとって、己と敵以外は全て守るか逃がさねばならぬ弱者であった。だが、猟兵にとってはそれ以外の者も時に己すら成せぬことすら成す仲間となり得る。それはまさにブラキオンを砕く術を伝えてくれた者たちがそうであったようにだ。
「いいね……これが私を、もっと強くする……」
猟兵の戦いを身に刻まれながらも、不敵に笑いながらケツァールマスクはマットに倒れるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
実体の無い分身で攻めれば勝ち目は十分あるっすけど、それじゃ互いに納得いかないっすよね
「さ、真正面から行くっすよ!」
身体は誰か(ヌードルマスクあたり?)から借りるか実体のある分身を作る
【ロープワーク】【空中戦】【怪力】【グラップル】あたりでルチャ・リブレの応酬を繰り広げる
「どこまでも自由!それがルチャのいいところっすね」
相手のUCで自分の身体を回転させられる時に、その時の勢いを加速させて技を抜けると共に上空へと蹴り上げ、こちらの【猛狐落下勢】で仕掛けにかかる
「悪いけど、そちらのフェイバリット対策はさせてもらったっすよ」
反撃できないように【捕縛】し、そのままマットに叩きつける
鍛えこんだケツァールマスクのスタミナはこの程度ではまだ切れない。再び立ち上がった彼女の前にいたのは、見慣れぬマスクを被った見慣れた女だった。
「どうした、イメージチェンジか?」
師範代として己の下につき、灼滅者として反旗を翻したヌードルマスク。その名の通りラーメン丼を模したマスクを被っていた彼女だが、なぜか今は狐の面を被っていた。
「知っているとは思うが、マスクを変えるということは存在そのものを変えるということ。そのつもりでやっているのだろうな?」
特にルチャ・リブレに置いてマスクというのはその本人の象徴に等しい。マスクを剥がれるということは覆面レスラーとしての死を意味するし、アレンジの域に収まらぬマスク変更を行えばそれは別人になるということなのだ。
「ええ、もちろんっす」
そして、まさにその通りであると男の声が答えた。今ここに立っているのはヌードルマスクではない。ヒーローマスクリカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)とそのボディであった。
「さ、真正面から行くっすよ!」
まずはリカルドが正面から駆け寄り、掴みかかる。ケツァールマスクはそれを僅かに横に躱しつつリカルドの腕を取り、走る勢いのままにロープに投げつけた。
リカルドはロープに衝突するが、その反動を利用して再び突進。そこからのクロスチョップが今度こそケツァールマスクを捉え、その体を大きく揺らがせた。
しかしケツァールマスクもさるもの。それでダウンするようなことはなく、反撃としてリカルドを素早くつかみ再度ロープへ投げつける。そして今度はそこからの反撃を許さず、その胸にドロップキックをぶち当て相手をダウンさせた。
そして両者ともに素早く立ち上がり、共にロープに走る。一瞬早くリカルドがロープの上に立ち、ロープに手をかけていたケツァールマスク目がけて飛びこみダイビングニーを決めた。
やはり飛び技こそルチャ・リブレの花とばかりにその膝はクリーンヒット。ケツァールマスクは再びマットに倒れる。
「どこまでも自由! それがルチャのいいところっすね」
ルチャのすばらしさをリング上で声高に叫ぶリカルド。それに応えるように、ケツァールマスクの手がリカルドの足首を掴んだ。
「全く、その通り!」
そのまま勢いよくケツァールマスクが立ち上がる。結果リカルドの足は高々と持ち上げられ、逆さ吊り状態にされてしまった。
「これが私の必殺技!」
高々と宣言しながらリカルドを振り回し、その勢いのまま掴んで風車式バックブリーカーの形に持っていこうとするケツァールマスク。
回転の勢いこそがこの技の魅せ所とばかりに大振りに力強くリカルドがぶん回されるが、その瞬間こそリカルドの狙っていたものであった。
「凄い馬鹿力っすね……おかげでいけるっす!」
その勢いに合わせ体をねじることで、リカルドはケツァールマスクの掴みを強引に外した。
さらにそれだけではなく、その回転に自分の足を合わせることでケツァールマスクに強烈な回転蹴りを見舞う。それはしっかりした重量があるはずのケツァールマスクの体を跳ね上げ、空中に高々と回せた。
「狩りの仕上げに入るっすよ!」
それを追ってリカルドも跳躍。空中でケツァールマスクの体を捉え、腕と足を掴んだうえで胴を踏みつけるような形を取った。
「悪いけど、そちらのフェイバリット対策はさせてもらったっすよ」
如何にしなやかな肉体と鍛え上げられた剛力を持っていたとしても、空中で全身を固められてしまっては反撃どころか受け身もままならない。
「これが自分のフィニッシュホールドっす!」
|外すことも受け身もできない《高威力高命中》の姿勢で、ケツァールマスクの体はマットに叩きつけられた。大きな音と共に固めのリングが陥没し、ケツァールマスクの半身が埋まる。
そして技を外しその横に立ったリカルドが、体となって戦ったヌードルマスクと同調を説く。
ヌードルマスクはその手で狐面を外し、勝者の姿を見せるようにその|面《リカルド》を高々と掲げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
《蒼翼の闘魂》を発動。
【真の姿:蒼き鷹】としてリングインですわ
攻撃を見切り、致命打を避けた上で肉体を張って受け、
功夫を生かしたプロレス式打撃で反撃し、投げを打つ
ダウンを奪ったらヒップドロップで踏みつけてアピール!
試合を作ることを意識し盛り上げます
ケツァールのバックブリーカーを受け切り
最後は限界突破し立ち上がり組み付いて
7年前豊島区のある公園で行ったかつての戦いの折
私達が最後に放った技が、これでしたわね
今日もフィニッシュとしてみせます!
渾身のパイルドライバーでマットに沈ませますわ
「ブルーバード・ドライバーッ!」
今度は「さらば」は言いません、麗しき密林の幻鳥
時の彼方でまた。良い試合をいたしましょう
アンブレイカブルケツァールマスクの最期、それは2017年10月のころであった。
幾度となくけしかけた配下を全て退けられ敬愛する師や多くの同胞も失った彼女は、己の最後の舞台としてリング上で71人もの灼滅者を次々と相手取り、その果てにレスラーとして誇り高く死したのだ。
そしてその最後の相手となったのは、赤松・鶉なる灼滅者であった。
「ほう、お前は……!」
オブリビオンとなって再び蘇ったケツァールマスク。その前に忘れもしないその姿が現れた。
「お相手いたしますわ。この「蒼き鷹」が!」
蒼き鷹と名乗るその猟兵はユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)。しかしその姿は、忘れもしない己に引導を渡したあの灼滅者であった。
己の命を奪った相手の姿に、しかしケツァールマスクは怒りや恨みなどない。
「いいだろう、過去を乗り越えねば未来へは進めん! 蒼き鷹よ、お前を踏み私は先へ飛ぼう!」
良い戦いができるとの確信、ただそれだけを胸に、ケツァールマスクは宙を舞った。
空中で一回転してからの踵叩きつけ。それをユーフィは両肩で受けた。
その足を取って押し返すように投げると、ケツァールマスクはリングに手をついて回転し体制を整える。
そして再び構えを取ったケツァールマスクに、ユーフィは強く踏み込んで聖剣付きを放った。
「ふん!」
その拳を己の胸で堂々と受けるケツァールマスク。そこに畳みかけるように、回し蹴りから空手チョップ、さらに連続パンチと功夫の動きを取り入れたプロレス技を次々と浴びせかけた。
「くっ……!」
さしものケツァールマスクも怒涛の連撃に体が揺らぐ。そこに強く踏み込んでの発勁を叩き込めば、ついにケツァールマスクが仰向けにダウンした。
その横にユーフィは堂々と立つ。そして起き上がらないケツァールマスクにゆっくり尻を向けた後、飛び跳ねながら思い切り尻から落ち強烈なヒップドロップを浴びせかけた。
あまりの衝撃にケツァールマスクの四肢がマットから跳ね上がる。その上で、ユーフィはケツァールマスクに跨った状態で両手を上げて大きくアピールした。
そのアピールがちょうどひと段落する頃に、ケツァールマスクが唐突にブリッジ。その腹筋と背筋の力で、座っていたユーフィを跳ね飛ばした。
不意を突かれたように転がってしまうユーフィ。もちろんやろうと思えば瞬時に立ち上がることもできるが、そんな何をしているか分からないほどの早い動きは決してしなかった。常に試合を作ることを意識し盛り上げることを念頭に戦っているユーフィ。先のヒップ時にすぐ立たなかったケツァールマスクも恐らく同じ考えなのだろう。
倒れたユーフィの脇を、ケツァールマスクがしっかりとつかんだ。
「さあ、宙を舞う時間だ!」
そこから豪快にぶん回し、ユーフィを逆さにする。その回転の勢いが残るまま持ち上げ、膝立ちとなりながら自分の膝にユーフィの背骨を勢いよく叩きつけた。
あまりの衝撃に、ユーフィの息が思わず詰まる。これはプロレスであると同時に猟兵とオブリビオンの殺し合い。例え魅せを意識していても、攻撃そのものには容赦はない。
ユーフィもそれは承知の上。切れそうになる呼吸と悲鳴を上げる体が限界を告げているが、これは必ず受けきると心に決めていたことだ。
そして10秒が過ぎる、その少し前。ユーフィの心が限界を突破し、肉体を動かして傍らに立つケツァールマスクに素早くしがみついた。
「7年前豊島区のある公園で行ったかつての戦いの折。私達が最後に放った技が、これでしたわね」
それは灼滅者とケツァールマスクの因縁が終わった日。誇り高きレスラーを冥府……今なら分かる骸の海へ送った戦い。
「今日もフィニッシュとしてみせます!」
ケツァールマスクの腰を掴み一気に逆さにする。
「ブルーバード・ドライバーッ!」
七年前のあの日と同じように、渾身のパイルドライバーがケツァールマスクをマットに沈めた。
ユーフィが手を離すとケツァールマスクは一度逆立ちのようになり、そして下半身をマットに倒れ込ませる。
それを見届けユーフィは勝ち名乗りを上げるよう両手を高く上げるが、その時の心は七年前とは全く違うものだ。
「今度は「さらば」は言いません、麗しき密林の幻鳥。時の彼方でまた。良い試合をいたしましょう」
ケツァールマスクはまだ息絶えていない。オブリビオンとなった彼女は、己と同じように確かにあの頃より強くなっていた。
そしてもしこの後彼女が倒されても、オブリビオンである以上何度でも骸の海から還ってくる可能性があるのだ。
それは喜ぶべきことか、忌むべきことか。ともあれ次があることを確信しつつ、蒼き鷹はリングを降りるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リン・ベルナット
アドリブとか大歓迎だよ!
レスラーらしい筋肉に凄まじいオーラ!まさに強敵って感じだね。でも、私もスポーツヒーローとして負けていられないよ!運動だけじゃなくて格闘技だって得意って所を見せてあげるね!
戦うとなると相手のダイビングボディアタックをなんとかしなきゃだよね。ダメージも大きいし食らっちゃったら相手の下敷きになるから大変!
よし、決めた!ここは【スプリント・タックル】の出番だね!
相手がジャンプしようとする一瞬のタイミングを見計らって、短距離走で鍛えた瞬発力のあるダッシュで一気に近づきタックルしちゃうよ!
組み付けたらそのまま寝技で行くよ!ヒーローとして犯人制圧のためのグラップルだって得意だからね!
ケツァールマスクの肉体はただ豊かなだけでなく、しっかりと鍛えられ十分な筋肉がついている。さらにはその全身から、覇気とも闘気とも言える赤いオーラが目に見えるほどに湧き出していた。
「レスラーらしい筋肉に凄まじいオーラ! まさに強敵って感じだね。でも、私もスポーツヒーローとして負けていられないよ! 運動だけじゃなくて格闘技だって得意って所を見せてあげるね!」
リングインしたリン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)は、向かい合っただけで分かる相手の力量に息をのむ。
だが、向かい合ったケツァールマスクも感心したようにリンの体を見て唸っていた。
「そこまで鍛えこむのは容易ではあるまい。その体の厚みと太さでありながら無駄がなく、己の体重を吹き飛ばせる力がある」
リンもまた恵まれた豊かな体と、鍛え上げた筋肉がある。競技こそ違うが互いに通じ合うものがあるのか、二人の女は互いの姿にしばし見とれた。
しかし、そこから思うのは互いにいい勝負が出来そうだということ。両者はリング中央でぶつかり合い、互いの体を体で確かめあった。
「いいな、期待通り……!」
「さすがのパワーだね!」
ロックアップからの押し合いはしばらく拮抗したものの、少しずつケツァールマスクが押し込み始める。どうやら上半身はややケツァールマスクに分があるようだ。
そこで無理に押し返そうとはせず、リンは横に躱すように引いて相手を受け流す。相手が前のめりになった所で足を高く上げてハイキックを叩き込むと、ケツァールマスクはそれに押されるように前につんのめった。
手応えを感じるリン。だが、後ろから蹴られるということはレスラーにとっては振りの一種だと言わんばかりにケツァールマスクはそのまま前進。ロープに飛び込むと体を回して反動をつけ、跳ね返ってラリアットでリンを急襲した。
「危ない!」
如何にリンの体も鍛えてるとはいえあれをぶち当てられたら危険。凜はとっさに相手の腕をバーに見立て、走り高跳びの要領で跳び越えそれを躱した。
「おっと、随分やるじゃないか……だが、こいつはかわせまい!」
ケツァールマスクが天を高々と指さす。そのパフォーマンスから、リンは最も警戒していたものが来ることを予感した。
(あれはなんとかしなきゃだよね。ダメージも大きいし食らっちゃったら相手の下敷きになるから大変!)
黙って出せば当たる目も増えようが、観客を意識するなら期待を高めることも必要かもしれない。競技者としてはそれに応えてやりたいところだが、必殺をみすみす喰らってやれるほど弱い相手ではないのは今のぶつかり合いで分かったことだ。
「よし、決めた!」
取る手を決めると同時に、ケツァールマスクが沈み込む。そしてその足をばねに跳躍戦とした瞬間、リンの下半身もまた爆発した。
「素早く組み付くよ!」
ダッシュとグラップルを組み合わせた【スプリント・タックル】。リンの鍛え上げた全身の筋肉を最大限生かしたその技能が、いざ宙に舞わんとしたケツァールマスクの足をがっしりととらえた。短距離走で鍛えた瞬発力のあるダッシュは跳躍より早くケツァールマスクを捉える。上半身がケツァールマスクなら、下半身はリンに分があったと言えよう。
いかなケツァールマスクと言えど地を離れた瞬間を捉えられては抵抗もできず、そのままマットに引き落とされた。そしてそのまま倒れるケツァールマスクに絡みつき、リンが全身を極める。
「そのまま寝技で行くよ! ヒーローとして犯人制圧のためのグラップルだって得意だからね!」
背中に乗ってから足で足を挟んで締め、さらに腕を顔に回して締め上げる。リンの脚の筋肉で締められればそれも拘束に留まらない攻撃になり、またケツァールマスクが上半身を反らしてもリンはそれを絶対離さないという勢いで腕を締め身体を押し付ける。がっちり決まったSTFが、|ケツァールマスク《怪鳥》を|マット《地べた》に抑えつけていた。
「相手の得意を潰すのも戦いの内だからね!」
そのまま相手が脱力するまで、力ある肉体の絡み合いは続くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
SPD
数の暴力に騙し討ち。
やはり相容れないわね
UCの影響下なら技能も通じるようだし『天賦の才』解放。
ヒーリングフィールド【医術・祈り・結界術・全力魔法】に
私とケツァールマスクで二人きり
傷が癒えたでしょ?
正々堂々タイマン勝負よ
オーバーロードで背中に黒炎の翼。
プランチャを【見切り・怪力】で受け止め
吸血鬼の【回復力】とヒーリングフィールドの癒し
【継戦能力・激痛耐性・気合い】で耐え
覆い被さられたまま後ろに倒れ
【捕縛】の抱擁で彼女の行動不能を維持しつつ
【念動力】で互いの服を【引き裂き・解体】
お尻を愛撫しつつ
舌を絡め、乳頭や花弁を擦り合わせ
媚毒【呪詛】体液に塗れ合う。
結界内に充満するフェロモン【誘惑・催眠術】が闘志を情欲に変える
自由に舞う鳥は美しい。
故に|世界《とりかご》は広い方が良い。
|第2の骸の海《わたし》と一緒にイキましょ♥
【化術】で肉棒を生やし【串刺し】
結界を解き【衝撃波】で天井を【地形破壊】
繋がったまま【空中浮遊・空中機動】で飛翔し
【空中戦】で【慰め・乱れ撃ち】ながら【生命力吸収・大食い】
「数の暴力に騙し討ち。やはり相容れないわね」
ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は他の猟兵がとった手段にそう言うが、ケツァールマスクはマスクの奥で馬鹿にしたような眼になる。
「数の暴力? それを名乗りたければせめて三桁はつれてこい。それに|テクニカ《ベビーフェイス》同士のお上品な小突き合いなど誰が見る」
プロレスはショースポーツであり、ルチャ・リブレもそれは変わらない。また強大なダークネスに対しては一時的に超強化された灼滅者が100人以上でかかることがしばしばあり、ケツァールマスク自身もかつては71人の灼滅者を相手取って倒れている。かかってくる数の多さや手段の選ばなさは、そのままそのダークネスの強さに対しての敬意とも言えた。ダークネス式プロレスとはショーであり格闘技であり殺し合いなのだ。
そんなケツァールマスクを、ドゥルールはリングに結界を張ることで隔離する。さらにその中に回復魔法を張り巡らせることで、ケツァールマスクの傷さえ癒し始めた。
「傷が癒えたでしょ? 正々堂々タイマン勝負よ」
その言葉に、だかケツァールマスクはさらに不機嫌そうな声色になる。
「なぶり殺しにするつもりか? 正々堂々が聞いてあきれる。|トペ《場外攻撃》を封じたのはまあ戦略として見てやってもいいが、ここより前の試合を全て茶番にしたら観客から野次ではすまん。試合としても死合としても、こんなもの認められんな」
ドゥルールの行為をここまでの戦いとそれを楽しんだ自分への侮辱と取ったか、マスク越しでも見えるこれまでにない険しい表情でドゥルールへと飛び掛かった。
一切の遠慮のないボディプレスが、ドゥルールに振ってくる。ドゥルールはオーバーロードの証たる黒炎の翼を広げ、その強襲をじっと見た。
そして、隕石の如きブランチャが、ドゥルールを叩き潰した。リング全体が揺れるほどの衝撃に、ケツァールマスクのこの技への本気度がうかがえる。
ドゥルールもただ待っていたわけではない。相手の動きをぎりぎりまで観察し、全身を固めたうえで致命傷になる部分は外す。それでもダメージは甚大であり、その体に押し倒されるように後ろに倒れた。
「……なるほど、このためか」
その巨大なダメージも、ドゥルールがリングに敷いた回復魔法で少しずつは癒えていく。【天賦の才】で補われた防御術で一流レスラーの必殺技をその身に受けてもKOに至らない固さをその身に備え、倒れなければ回復の技で少しでも傷を癒していける。
回復効果でこちらの攻撃を耐え続けるつもりであっても、それ以上の攻撃を与えればそれは無意味。固いリングに体ごと叩きつけられたブランチャの反動が抜けるのを待つケツァールマスク。そしていざ追撃と立ち上がろうとした瞬間、その体は下に引き戻された。
「何!?」
組み敷かれたドゥルールはケツァールマスクの体にしがみつき、立ち上がることを許さない。フォール負けがある試合ではない故に寝た状態で相手を釘付けに出来る状態で、ドゥルールはケツァールマスクのコスチュームに手をかけていた。
そしてそのまま、ケツァールマスクの服を切り裂く。
「何の真似だ!」
それにケツァールマスクは怒りの声を上げる。だがそれに構わず、ドゥルールはケツァールマスクの体に自分の体をこすり付けた。
尻や胸、股間などから催眠をかけ楽しもうとするドゥルールだが、ケツァールマスクにそれの利きは悪い。怒りが催眠を跳ね除ける形になっているのだろう。
それでも、オーバーロードとユーベルコードの力で最低限の効果は保証出来ている。動けないケツァールマスクを持ち上げ、ドゥルールは宙に舞う。
「自由に舞う鳥は美しい。故に|世界《とりかご》は広い方が良い。|第2の骸の海《わたし》と一緒にイキましょ♥」
「籠などと言っている時点で貴様の本音は透けて見えている! 我が|自由《リブレ》は誰にも奪わせん!」
そこから空中でケツァールマスクを貫き、辱めるドゥルール。そしてそのまま天井を破壊し、彼女を連れ去ろうとする。
「あのー、ここ賃貸なんで、そういうのやめて貰えます?」
それを何をやろうとしているのか察したらしいヌードルマスクがリング際から止めた。彼女の言うことなど聞く意思はドゥルールにはないが、地階であるここで天井に穴をあければ上階のものが落ちてくるし余計な被害も出かねない。そうなれば色々面倒と、ドゥルールはケツァールマスクを貪ることに集中する。
「最初からそれを押しだせば……まだ認めてやったものを!」
この生命力吸収はドゥルールの得意技。これに繋ぐ流れでマッチメイクしていればと言いながら、ケツァールマスクの心は折れない。
最初から受けていた回復によって残った力でケツァールマスクはドゥルールから強引に離れ、心折れぬままリングに落ちて膝をつくのであった。
成功
🔵🔵🔴
イン・フナリア
雰囲気も最高だねぇ、もっと昂っちゃうなぁ
何事も我慢して溜めてから一気に出すの、いいよねぇ
というわけで解放しちゃおう、【誘惑華園の聖槍】で突撃だぁ
素早く回り込んで死角から貫く、なんて簡単にいかないよねぇ、相手は歴戦の猛者なんだし反応されそう
掴み合えるような間合いまで詰められたら刺すのは難しいなぁ、短くて扱い易くはあるけど槍だからねぇ
それなら教えてもらった地獄投げ、決めちゃおう
槍を手放して勢いはそのまま、その大きな胸をしっかり掴んでマットにどーんとやっちゃうよ
胸じゃなくてもいいっていうのはそうなんだろうけど、私が掴むのに丁度いい位置にあるからねぇ、仕方ないよねぇ
更に昂るだろうし時間かけて楽しみたいけど、密着し続けてたら間違いなく反撃されちゃうなぁ
サッと離れて槍を拾って、今度こそ貫くよ
イン・フナリア(蘚淫魔・f43874)はヌードルマスクとの稽古中から『昂る』という発言を度々してきた。そして練習より本番の方がより昂るのは言うまでもない。その『本番』の意思を示すかのように、インの手には稽古中は封印していた『誘惑華園の聖槍』が握られていた。
「雰囲気も最高だねぇ、もっと昂っちゃうなぁ。何事も我慢して溜めてから一気に出すの、いいよねぇ」
上がってくるインをケツァールマスクは手招きする。
「我慢などする必要はない。お前の全て、ぶつけてこい」
武器を使うのが本領ならそれを用いることこそ彼女にとっても望ましい所。許しも得た、とばかりにインは稽古では封印していた本来の力を解放する。
「楽園の守護、遍く軛を解き放つ力を、此処に」
武器と同名のユーベルコード【誘惑華園の聖槍】。全身をバニラのような甘い香気で多い、己の精神の昂りに比例する戦闘力と飛翔力を与える技。
その飛翔力をもって高速でケツァールマスクの周囲を飛び、死角を狙って急襲する。
「甘いな!」
リング上で軽やかに跳躍し、それを回避するケツァールマスク。三次元的な動きを得意とするルチャドーラなだけあって、空中戦への対策は万全だ。
「なんて、簡単にいかないよねぇ」
相手は歴戦の猛者、ユーベルコードをもってしても楽に倒せる相手ではないと見ていたが、その見立ては間違いではないとインは確信する。
そしてケツァールマスクは素早くインの動きを追い打撃を出して来るが、その威力は決して高くない。これは恐らく牽制。少しずつ距離を詰めてくる狙いは他にあるとインは見た。
「掴み合えるような間合いまで詰められたら刺すのは難しいなぁ、短くて扱い易くはあるけど槍だからねぇ」
武器を手にすることの大きなメリット、それはリーチの拡張。それに優れた槍は武器の王様とも呼ばれるが、一方懐に入ってしまえばそのリーチはそのまま枷となる。まして武器をも超える格闘術を修めたケツァールマスクだ。武器を持っているから有利などということは全くなかった。
それが分かっているからこそ、インは学んだ技がある。それを活かすべく、インはリングに降りあえて相手の狙う間合いへと飛び込んでいく。
「来るか!」
槍での突進と見たか、それを取ろうと待ち構えるケツァールマスク。だがインは槍を手放し、素手となってケツァールマスクへと掴みかかった。
先走って空を切った手を交わし、インはケツァールマスクへと飛び掛かる。その狙いは、ケツァールマスクの大きな胸だ。
「胸じゃなくてもいいっていうのはそうなんだろうけど、私が掴むのに丁度いい位置にあるからねぇ、仕方ないよねぇ」
そう言いながら、ケツァールマスクへとかかるのは強烈な力。10000km/hを超えるスピードは頑健な身体さえ崩すエネルギーとなってケツァールマスクを押し込み、その勢いのままにその身体を後ろに押し倒した。
「これは……!」
戦いの流れからの危険な掴み投げ。それが何なのか|アンブレイカブル《ストリートファイターの闇》であるケツァールマスクはよく知っている。
「教えてもらった地獄投げ、決めちゃおう」
ヌードルマスク直伝の地獄投げが、ケツァールマスクをリングへ叩きつけた。練習と違い庇い手など一切ない、相手の頭を固いリングにダイレクトに叩きつける殺人技がケツァールマスクの頭部を揺らす。
「う、ぐっ……!」
本式のルチャ・リブレでは頭から落とす技はルール上禁止とされているが、武器や魔法すら容認されるダークネスの戦いにおいてケツァールマスクはその程度の事に文句は付けない。だが一方どうしてもその辺りの耐性は隙があるのか、意識が揺らいで次の行動が遅れてしまう。
「だが、ここなら……!」
密着しているなら自分の間合いでもあると体の上にいるはずのインを掴もうとするが、すでにそこには何もなかった。
「更に昂るだろうし時間かけて楽しみたいけど、密着し続けてたら間違いなく反撃されちゃうなぁ」
己の槍技は昂りこそ力とするも、それで相手の必殺の間合いに留まり続けてはそれどころでないのは明白。
インは素早く離れて槍を拾い、それを高速でケツァールマスクに突き立てた。
「これが、お前の真の技か……!」
「たっぷり味わって欲しいんだよぉ」
教わった技と己の持ち味、その双方によって昂った槍が、女を貫き地に縫い付けていた。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
ヌードルマスクの指南を受けたんだ
尚更負けるわけには行かないな
ケツァールを海へ還すぜ
戦闘
戦闘スタイルを貫くってのは格好いいぜ
俺も見習わせてもらう
迦楼羅を炎翼として顕現
屋内だから限度はあるけど
宙を自在に飛行しながら
獄炎纏う焔摩天を振るう
攻撃の余波でリングロープを焼き切る
ちょいと邪魔だぜ
敵さんの地の利を潰しとかないとな
ケツァールの攻撃を
翼や爆炎噴出による高機動や
炎の紗幕の目眩しで回避したり
大剣で防御
受ける時は火力を更に上げて
掴まれないようにする
もし掴まれたら
バックブリーカーを炎の勢いで揺らして脱出したり
刀身からの爆炎で焔摩天を強引に動かして
その体制からケツァールを斬り裂こうとするぜ
投げられても爆炎噴出で踏み留まる
こんなカンジの攻防を繰り返す中
俺の攻撃がマスクを捉える
いい加減
あんたのリズムには慣れたぜ
流し込んだ地獄の炎で
爆発したり
操って
マスクが自分で自分を掴んで投げるよう仕向ける
その機に返す刃で両断
そのまま燃やし尽くす
事後
鎮魂としてギターを奏でる
安らかに、な
「ヌードルマスクの指南を受けたんだ、尚更負けるわけには行かないな。ケツァールを海へ還すぜ」
続けてリングに上がるのは木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)。その手には、鉄塊の如き剣が握られていた。
「ほう、お前は武器を使うか」
ウタの構えた鉄塊の如き剣、ケツァールマスクがそれを見て言う。だが、その表情は嫌悪や軽蔑などではなく、単純に興味で言っているだけのようだ。
「戦闘スタイルを貫くってのは格好いいぜ。俺も見習わせてもらう」
ケツァールマスクはどんな相手でも己のレスリングスタイルで受けて立つ。それは己のそのスタイルに絶対の自信があるからだ。ならば手加減するのは無礼と、ウタは自身の得意とするスタイルを変えずにそのまま相手に向かうつもりであった。
さらに『迦楼羅』を炎翼として顕現、地下の屋内ゆえさほど高度は取れないものの、その範囲内で宙を自在に飛行し剣を振るいケツァールマスクを攻撃した。
「このケツァールマスク相手に宙を舞うなど愚策!」
その動きをケツァールマスクは的確に捉え、ロープをばねとして使い跳躍。空中で体を捻っての強烈なローリングソバットが飛び回るウタを正確に襲った。
それに対しウタは大剣を構えて防御。さらにそこから相手に向けて爆炎を吹きつけ、その勢いで相手の打撃から離脱した。
一度着地しても即座にケツァールマスクはまた跳躍する。その正面に炎を幕のように張って相手の勢いを削ぎつつ、それとともに炎の中から大振りに切りかかった。
その大剣を、ケツァールマスクは空中で殴りつけて防御する。そのパワーは流石だが、流石にそこから反撃には移れずケツァールマスクはリングに落ちていく。ウタはそれを追うように下へと加速し、着地したケツァールマスクに振り下ろしをかけた。
「甘いな!」
着地の瞬間ケツァールマスクは回転し、そのまま剣に回し蹴りを放つ。それはまたも斬撃を跳ね飛ばし、自身の身を焼き切られるのを防いでいた。
「悪いが、あんたの翼を捥がせて貰う」
その剣を、蹴られた勢いのままウタは横に振りまわした。その先にあるのは、ケツァールマスクが何度も利用していたロープであった。
炎がロープに移り、焼き落としていく。プロレスを根底から否定するような行為にケツァールマスクは激昂……
「そんなもの買い替えればいい。本国に比べればよく持った方だ!」
など一切せず、即座に掴みに行った。何しろルチャのリングは基本質は高くない。地方興行など穴の開きそうなものが使われているほどで、リングの破損や破壊など一々気にしていられないのだ。
地を蹴り、ケツァールマスクはウタを掴みにかかる。ウタの張った炎がそれを押しとどめようとするが、ケツァールマスクはその身を焼かれながらも無理矢理それを突破、剣の間合いの内に入りウタの腕をつかんだ。
「いくぞぉっ!」
高々とウタを持ち上げながら気合の掛け声。そしてウタを激しく回転させ、背中を膝に叩きつけるべく思い切り振り上げた。
「させるかっ!」
それに炎を散らし、何とか抜け出そうとするウタ。その炎が顔にかかり一瞬ケツァールマスクが顔をしかめるが、振り下ろす勢いは止まらない。
「とどめだ!」
その背が膝につく、その瞬間に何かがケツァールマスクの胴を薙いだ。それは【熾】の炎で操作された大剣『焔摩天』であった。
本来は当たった敵を操作する能力だが、ウタは自分の剣にあてることで遠隔操作を可能としていたのだ。そしてその炎を剣を伝って今度はケツァールマスクへと流す。
「ぐおぉ!」
大きな爆破に思わずケツァールマスクはウタを離す。そのまま自分で自分を投げるよう操作もしてみるが、やはりケツァールマスクの精神力は高くそう簡単には言いなりにならない。
「いい加減あんたのリズムには慣れたぜ」
プロレスはショーであるが故に流れや緩急は必要。冗長なら観客は冷めるし、派手なパフォーマンスしかないのでは見どころが分からなくなる。それをヌードルマスクが教えた見切りのテンポと合わせれば、同種の力のあるケツァールマスクの動きも把握しやすい。
相手のペースが崩れた、こここそが差しどころ。
「エンマヤ・ソワカ!」
しっかりと握り直し大剣の一撃が、確とケツァールマスクに入った。それとともに炎が燃え上がり、ケツァールマスクをリングに倒す。
「見事だ、猟兵……二度ないと思っていた戦いができて私は嬉しいぞ……だが、満足はしていない……ヌードルマスクよ、団体の後処理は任せたぞ……」
倒れながらケツァールマスクは自らを落とした相手を称え、後事を反逆者でありながらある意味信頼できていた部下に預ける。
「この戦いは我が魂に刻まれた。次の飛翔はもっと高く飛べるだろう。その日まで! 猟兵よ、最強の看板はしばし預けておこう! さらばだ!」
オブリビオンとなった己の宿命を分かっているのだろう。次があることを彼女自身悟っているのかもしれない。そして華々しい爆発と共に、ケツァールマスクは昇天した。
ケツァールマスクの消滅を見届け、ウタはギターを奏で鎮魂歌を歌う。それはまさに勝者が行うパフォーマンスであり、また一時のものであろうとも彼女が安らかであれという願いであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『繁華街で遊ぼう』
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POW : 面白そうな店を何軒でもハシゴする
SPD : 馴染みの店を訪れ、遊興に耽る
WIZ : 落ち着ける店を見つけ、優雅にくつろぐ
イラスト:del
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちの戦いにより、ケツァールマスクは地下から飛び立つことなく闇の中へと還った。
それと同時に洗脳されていた門下生たちも正気に戻っていき、意識が曖昧なうちにヌードルマスクによって外に出され街中に散らばらされる。駅やタクシー乗り場などの交通機関やカプセルホテルなど、とりあえず身を寄せやすい所を選んで放り出されているのは一般人ケアのノウハウが灼滅者にもあるからだろう。
その処理を終えたヌードルマスクが猟兵たちの元に戻ってくる。
「皆さん、お疲れ様でした。聞いてたより全然強いですねー猟兵ってのは。おかげでこんなに早く片が付きましたよ」
恐らくもっと時間をかけて対策するつもりだったのだろう。灼滅者を超える猟兵の規格外ぶりには彼女も驚いているようだ。
「さて、仕事も終わりましたし、ラーメンでも食って帰りますか。この辺はかなり店が多くてですね、定番からキワモノ、老舗に新興、個人経営にフランチャイズにチェーン。味も醤油味噌塩豚骨魚介鳥白湯担々つけ……」
ヌードルマスクが絶え間なく語るように、ここはラーメン激戦区。およそ想像できる種類のラーメン屋は大体ある。さらにラーメンとはラーメン屋だけで出るものではなく、中華料理屋はもちろん居酒屋など他業種の店にも隠れた名物として置いてあることも少なくない。
あるいはこの世界出身ならそれは周知の事実として、すでにこの地域は開拓済みということもあるかもしれない。ヌードルマスク自身がまさにその一人であり、彼女に聞けば望みの一杯に案内してくれるだろう。
もちろんラーメンは一人で食うものというこだわりがあれば一人で食べてもいいし、追加の同行者が欲しければグリモア猟兵も呼べるという話だ。
夜は長い。仕事の後の一杯を存分に味わい、疲れた体にエネルギーを入れるといい。
リン・ベルナット
アドリブとか大歓迎だよ!
激闘だったけどなんとか倒すことができたね!お疲れ様!
いっぱい動いてお腹すいちゃったしヌードルマスクさんに美味しいラーメン屋さんに連れて行ってもらおう!
どういうラーメン屋さんに連れて行ってもらおうかなぁ…
激戦区っていうぐらいだから美味しいのが沢山あるだろうし…
そうだ!折角の機会だし普段食べないような激辛系とかに挑戦してみようかな?
そういう感じのラーメンを教えてもらってヌードルマスクさんと一緒に食べに行くことにするね!
もちろん食べるからには完食あるのみ!どんなに辛くても根性で食べきるよ!
いっただきまーす!
ケツァールマスクとの激戦を制した猟兵たち。
「激闘だったけどなんとか倒すことができたね! お疲れ様!」
リン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)が共に戦った仲間たちを労う。
そして、この後には一つのお楽しみ。
「いっぱい動いてお腹すいちゃったしヌードルマスクさんに美味しいラーメン屋さんに連れて行ってもらおう!」
今回の協力者である灼滅者ヌードルマスクは大のラーメン好きであり、この辺りのラーメン屋に精通しているという。
「はい、お疲れ様でした。何かお好みはありますか? この辺なら大体のものはありますよ」
ラーメン激戦区だというこの辺り。美味しい店というだけでも相当な数あるので、何がしか条件がないと逆に案内に困るほどだ。
その質問に、リンはしばし考える。
「どういうラーメン屋さんに連れて行ってもらおうかなぁ……激戦区っていうぐらいだから美味しいのが沢山あるだろうし……」
同業者が多いということは、特徴がなければ生き残れない。ただ美味しいだけではなく、何かしら存在するだけで目を引くようなもの、集客力が必要なのだ。
「そうだ! 折角の機会だし普段食べないような激辛系とかに挑戦してみようかな?」
そんな中でリンが思いついたのは、激辛のラーメンだ。リン自身特に辛いものが好きというわけではないが、折角詳しい相手がいるのだから知らないジャンルに挑戦してみるのもいいだろう。
そう言う感じのラーメンを教えて欲しいと告げると、ヌードルマスクは二つ返事で了解した。
「それならいいところがありますよー」
ということで連れてこられたのは、いかにも辛そうな赤い看板の店。そこでメニューの一番先頭にあるものを注文してみると、やってきたのは。
「うわ、赤い!」
真っ赤なスープに野菜主体の具材が乗っている。一見すると麻婆豆腐をかけたようにも見えるそれは、見た目からして全力で辛さをアピールしていた。
だがここで怯むわけには行かない。リンは覚悟を決め箸をとる。
「いっただきまーす!」
そうして食べてみると、確かにすさまじく辛い。強烈な唐辛子の味が口の中に広がり、涙と汗がにじんでくる。
「もちろん食べるからには完食あるのみ! どんなに辛くても根性で食べきるよ!」
気合を入れて食べていくと、辛さが和らぐことこそないがなぜか止まらない。そしてただ辛いだけではなく麺のコシ、野菜のうまみ、スープに溶け込むダシなどがしっかりと味わえ、これがただ辛いだけではない『美味しいラーメン』だということを告げてくる。
体は汗だらけ、着替えたはずの体操服も濡れて体に張り付くほど。もしかしたら戦闘中よりも発刊しているのではないかと思うくらいに体を上気させながらも、その激辛体験にリンは止まらない。
そうして、辛さに急かされるかのように一気に、いつの間にかラーメン一杯を完食してしまっていた。
「ごちそうさまー! 初めてだけどおいしかったー!」
笑顔で言うリンに、こちらも自分の分を完食し褐色肌に汗を浮かせたヌードルマスクが答える。
「それはよかった。ちなみに今のは並辛で、ここからどんどんレベルアップしていくのですがー……」
改めてメニューを見ると、さらに高ランクの辛さを誇るラーメンがずらりと。今ので十分からかったのだから、最高レベルなどどれほどになるか想像もつかない。
「そ、それは……」
どんな世界でも『最強』は半端じゃない。それを思いつつ、リンは店を出るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
「さて、こっちの世界のラーメンはどんな感じっすかね」
ヌードルマスクに有名なラーメンチェーン店とおすすめのお店を聞いて食べ歩き。【料理】の【世界知識】を深めに行くっすよ。身体は現地の人から借りるか【霧影分身術】あたりでラーメンを食べられるボディを作る
「材料や技術レベル的にはUDCアースあたりと差はないと思うっすけど、最大の違いは人類がほぼ不死身なのとESPっすかねー」
ここで料理を作ることになった時に、どんな料理が喜ばれるかも調べておきたいっすねー。寿命以外で死ぬことがなくなったから、健康度外視のラーメンとか多くなっていそうな気はするっすかね
「さて、次はどこに行ってみるっすかね〜」
サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!
せっかくだしヌードルマスクさんに良いラーメン屋を案内してもらおうかな?
誰かさんにがっつり痛めつけられちゃったし、その分美味しいお店に連れてってもらいたいかな?
あ、うちのUDCも腹を空かせちゃってるみたいだし、ハシゴ出来るなら全然いけるよー
どんどん巡っていきたいね♪
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
拉麺、良いですねぇ。
ヌードルMさんに桃姫さんもお誘いして3人で楽しんで参りましょう。
折角ですし、「デカ盛りチャレンジメニュー」のあるお店を順にご案内頂いても宜しいでしょうかぁ?
私と桃姫さんでしたら、「デカ盛りメニューのはしご」も問題ないと思われますので。
出来れば、「違う味のメニュー」で回れると有難いですぅ。
一応【極天豊艶体】による『|特性《常駐型スキル》』をオープンにしておきますねぇ。
私は確定、桃姫さんもおそらくお誘いすれば「チャレンジメニュー」、ヌードルMさんは食事量が不明ですので、無理のない範囲で、ですねぇ。
一時的にお腹は膨れますが、気にせず食べ歩きと行きましょう。
宮比神・うずめ
POW/アドリブとかお任せ
ないと思うけどえっちなのは→✕
うぅ…、魔人化しまくったせいで、もうふらふらなんよぉ
そんじゃーヌードルマスクさん、ラーメン屋梯子しよっ!おすすめのラーメン屋さん教えて教えて♪
あ、でもウチ、餃子も食べたいし炒飯も食べたいかも。梯子したいからそれぞれおすすめのお店で頼もう
梯子梯子、ズルズルすすってガツガツ食べるんよぉ♪
なに、食べてもちに変わるだけなんよぉ
……お腹に堪らないはずなんよぉ(自分のお腹をぷにっとしつつ)
か、帰ったらちょっとダイエットしなきゃね
当分ウチが御飯作る時はアッサリしたものが、多くなると思ってね(ニッコリしながら)
真夜中の繁華街。そこを団体でうろつく者は多い。その多くは、次の店を求めて移動する集団だろう。
ここにもまさにそれを目的にした集団があった。ただ一つ違うのは、ここの者たちの目的は酒ではなく、ラーメン店の梯子だということだ。
オブリビオンとなり蘇ったダークネスとの激戦を制した一団は揃って空腹。事前の話通り、ラーメンに詳しいという協力者の案内でいざ食事という所であった。
「うぅ……魔人化しまくったせいで、もうふらふらなんよぉ。そんじゃーヌードルマスクさん、ラーメン屋梯子しよっ! おすすめのラーメン屋さん教えて教えて♪」
いかにも空腹といった調子で宮比神・うずめ(舞うは鬼の娘・f43833)が言う。
「誰かさんにがっつり痛めつけられちゃったし、その分美味しいお店に連れてってもらいたいかな?」
サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)もそれに乗り気だ。彼女は先の戦いで作戦と使用UCの関係上ヌードルマスクにボコボコにされており、それを盾に少し意地悪く彼女に迫る。
「拉麺、良いですねぇ」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も楽しげに言う。その身はヌードルマスクやケツァールマスクもはるかに凌駕するほどの豊かさ。それに見合う食事量は推して知るべしだろう。ついでに同量の肉が後ろからもう一つついて来ているが、これについては後述。
「さて、こっちの世界のラーメンはどんな感じっすかね」
続いて言うのはリカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)。戦いではヌードルマスクに憑依して戦った彼だが、今回は練習時と同様に【霧影分身術】を使い食事可能な男性の分身をだしてボディにしていた。
「そうですねー、お勧めは色々ありますが、どんなのがいいでしょーか?」
案内人であるヌードルマスクが言うと、リカルドが答える。
「そうっすね、有名店もいいんすけど、なんかチェーンみたいなのも行ってみたいっすね」
料理の世界知識を深めに行きたいということで、ここはあえて日常に浸透しているだろうチェーン店を希望。それに従い一同が最初に行ったのは、京都発祥のラーメンチェーンであった。
「材料や技術レベル的にはUDCアースあたりと差はないと思うっすけど、最大の違いは人類がほぼ不死身なのとESPっすかねー」
現代日本のある異世界なら同じようにあるチェーンだが、そこに明確な違い……具体的には寿命以外で死ぬことがなくなったので、健康度外視のラーメンとか多くなっていそうな気はすると聞いてみるリカルド。
「それならちょうどいい。それではこの、『超こってり』……の裏メニュー『超々こってり』なんてどうでしょう」
元々こってりしたのが有名で、一部店舗に隠しメニューとして超こってりがあった。そして元々濃さと不健康さを逆に売りにしていたこともあり、その先のメニューが誕生したようだ。
「うおぉ、これは……なんか半分固体っすね」
その濃さは最早ゲルの領域。うまいのか……と聞かれれば好みは分かれようが、濃い味好きには相当好まれるだろう。
「なるほど、やりすぎても死なないから思い切ったのができるってことっすね」
個々人の好みもあろうが、極端好きはより極端に走る、という傾向があるのかもしれないとリカルドは思った。
一杯を食べ終えても、なお終わらない。むしろ梯子酒……もとい梯子ラーメンは一軒目が終わってからがスタートだ。
「折角ですし、「デカ盛りチャレンジメニュー」のあるお店を順にご案内頂いても宜しいでしょうかぁ?」
次に要望を出したのがるこる。彼女の食べる量が相当なのは見ればわかることと、ヌードルマスクは頷く。
「はいはい、そういうのもありますよー。では次はこちらで」
次に案内されたのは有名なラーメン、つけ麺の店。チェーンではなくのれん分け形式なのだが、こちらは基本的に大盛無料となっている。
「あ、うちのUDCも腹を空かせちゃってるみたいだし、ハシゴ出来るなら全然いけるよー。どんどん巡っていきたいね♪」
サエは早速一番の大盛を注文し、連れているUDCと一緒に食べていく。一食分を分け合う形になるので一人で食べているようにも見えるため、店側からも注意は入らない。
その盛りでも3玉分はあるのだが、その上である5玉、10玉となると流石に有料。しかしそれをも超える量になると、今度はチャレンジとして食べきればまるごと無料になるというものがあった。
もちろん食べ残せばその分割り増し付きで支払い。だがそれを、るこるとヌードルマスク、そしてもう一つの巨肉分までが注文されていた。
着丼したラーメンは魚介醤油のベーシックな味だが、上に載ってるチャーシューは10切れ、卵も計3つ、ネギすら一本丸ごと使ってるんじゃないかという程だ。
そしてそれを、出された者は一気に食べていく。
「……で、そろそろ聞いてもいいでしょーか。このデカ肉なんなんです?」
「そうですねぇ、今回の依頼を紹介してくれた方の一員と言いますか……」
るこるが連れていたのはグリモア猟兵ミルケン・ピーチのボディの一人花園・桃姫。ヌードルマスクの遠慮のない言葉に桃姫は憮然とした表情になる。
「何ですかこの口の悪いアカリみたいな人……」
だがその食べる勢いは凄まじく、またその勢いで揺れる肉もヌードルマスクを凌駕するサイズ。もちろんるこるもサイズ、勢い共にそれを上回る勢いであり、その肉揺れに吸い込まれるかの如くラーメンが消えていく。
結局普通サイズのラーメンを頼んだ面々と、るこると桃姫が巨大ラーメンを食べ終わるのはほぼ同時。それに少し遅れてヌードルマスクが食べ終わる形で、この店での食事は終了となった。
「さて、次はどこに行ってみるっすかね〜」
「あ、でもウチ、餃子も食べたいし炒飯も食べたいかも」
店を出てからのリカルドの言葉に、今度はうずめのリクエスト。ならばと連れていかれるのは中華料理店だ。
「ここは餃子が素敵でしてね。普通の餃子もいいのですが、棒餃子やエビ餃子、ジャンボ餃子なんてのも……」「梯子梯子、ズルズルすすってガツガツ食べるんよぉ♪」
次々並べられる餃子を食べていくうずめ。
「こうして比べてみると分かるけど、やっぱラーメンと中華湯麺って違うものなんすね~」
食べ比べてリカルドの感想。冷やし中華は中華じゃない、なんて言われることもあるが、やはりラーメンも一口に括れはしないほどに多様ということが改めて分かる。
「なに、食べてもちに変わるだけなんよぉ……お腹に堪らないはずなんよぉ」
自分のお腹をぷにっとつつきつつ呟くうずめ。隣ではまたもこの店最大級のメニューをすごい勢いで食べるるこると桃姫、そしてその腹と乳が見えるためそれよりはまし……と思いつつも。
「か、帰ったらちょっとダイエットしなきゃね。当分ウチが御飯作る時はアッサリしたものが、多くなると思ってね」
ニッコリ笑ってヌードルマスクに告げる。依頼当初からそれっぽい感じは出していたが、やはりこの二人はそういう関係だったようだ。
「じゃ、じゃあ……今日は目いっぱい楽しみますか?」
「一時的にお腹は膨れますが、気にせず食べ歩きと行きましょう」
「はい、気にしてはいけません」
しれっと言うるこると桃姫。るこるはUC効果でいくらでも食べられるし、桃姫は自分への言い訳が得意技なので仕方なし。
「そうだねぇ、じゃあここまでになかったのって言うと……塩とかかな? あとカレーヌードルとか、そういうちょっと変わったのもあるよね」
サエもUDCとシェア状態なので、一食当たりの取り分は少ない。むしろフェスかビュッフェの少量食べ歩きに近い感覚なので、ある意味最も健康的に食べ歩きを楽しめているかもしれない。
「いやー、そちらもやる気満々ですね。そちらは?」
「もちろんっすよ」
リカルドももちろん乗り気だ。
そのまま次々全員で希望を出しつつ、繁華街中のラーメンを食べ尽くすが如く梯子は続くのであった。
大成功
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イン・フナリア
ラーメンは、ヌードルマスクのお姉さんが食べるのと同じのが欲しいなぁ
この辺りって来た覚えがないし、詳しい人が好んで食べるものにハズレはないと思うし
辛いのも濃厚なのも平気、かなり運動してるし、今ならどんな大盛りでもいけそうだよ
一緒に食べるだけじゃなくて、お姉さんとは色々お話したいんだよねぇ
そんなマスク使ってるくらいラーメン好きなのはどうしてなんだろう、とか
普通に稽古つけてくれて、技を教えてくれたけど、ケツァールマスクとの一戦、どう評価してくれるのかな、とか
これからも蘇ったダークネス、オブリビオンと戦い続けるつもりなの、とか
私は、私に優しくしてくれた人の味方だからねぇ
必要なら、お姉さんの敵を全力で刺しに行くから、遠慮なく頼ってくれると嬉しいなぁ
一緒に戦って仲が深まる展開、やっぱり昂っちゃうよねぇ
大人数での食べ歩きが終わった後、ヌードルマスクはまた別の店にいた。
「ラーメンは、ヌードルマスクのお姉さんが食べるのと同じのが欲しいなぁ。この辺りって来た覚えがないし、詳しい人が好んで食べるものにハズレはないと思うし」
そう言ったイン・フナリア(蘚淫魔・f43874)を連れてきたのは一見すればバーのような店。
実際メニューには各種酒類やそれに合うつまみのようなものが多数乗っていた。だが、そのメニューの多くのページははラーメンに使われていた。特に押しているメニューなどは一杯に1ページ使って解説するなど、ただ置いているのだけでなく主力にしていることが分かるような表記の仕方であった。
「辛いのも濃厚なのも平気、かなり運動してるし、今ならどんな大盛りでもいけそうだよ」
オーバーロードを用いての稽古と実践。猟兵としての力を十二分に出し切った今日は、運動量と消費も限界一杯。小さな体だがそれを気にする必要などないと言わんばかりに、大盛濃い味なんでもこいとヌードルマスクに告げた。
「ははぁ、なるほど。それでしたら」
それを聞いてヌードルマスクが選んだのは、具材の多い味噌ラーメン。産地厳選の味噌を使ったブレンド味噌で、具材も炙りチャーシューに細切りの白髪ねぎ。卵も黄身の色が濃く、また味を濃くするため焦がし脂も入っているという店自慢の一杯らしい。
それを可能な限りの大盛にしつつ付け合わせにライスと餃子、それにせっかくなのでと一品料理も少々加えてラーメンコースの出来上がりだ。
それを食べれば、今日一日良く戦ったインの体に栄養が染みる。濃い味の味噌が面に絡んで上ってきて、それをおかず代わりにライスを一口。さらに一見ラーメンに似つかわしくないラスク風のパンも、味噌スープを付けて食べてみると意外なほど合う。
そんな食事を味わいつつ、インは一日つきあったヌードルマスクに話を向けた。
「一緒に食べるだけじゃなくて、お姉さんとは色々お話したいんだよねぇ」
「はい、なんでしょう?」
ヌードルマスクも自分の分を食べながら応じる。ちなみに彼女は戦闘が終わってからもずっとマスクを被りっぱなしであり、まずはそこから質問。
「そんなマスク使ってるくらいラーメン好きなのはどうしてなんだろう」
「ラーメンが好きになった理由ですか。実はよく覚えてないんですよね。もう気が付いたら好きだったというくらいで。ワタシのスタイルのベースは中国拳法なんですけど、もしかしたらそれより早くラーメン好きだったかもしれないくらいで」
気づけばラーメンと共にあったという彼女の人生。そしてそんなラーメンと戦いの人生であった彼女に聞きたいのは、新たに戦いの世界に入った自分のこと。
「普通に稽古つけてくれて、技を教えてくれたけど、ケツァールマスクとの一戦、どう評価してくれるのかな」
たった一日であるが師弟関係でもあったのだ。彼女に因って伝授された技をケツァールマスクとの戦いで用いたが、それについてどうだったか。
「ええ、とても驚きました。あっという間に教えたことを実戦で用いれるのはもちろんですが、それに自分の戦い方を自然に組みこめてるのがよかったですね。あなたは槍遣いみたいですが、その槍を囮にして投げに行って、そこから本命の槍攻撃を改めて……センスあると思います」
闘技者としての視点からインを褒めるヌードルマスク。その始点はやはり|現役《猟兵》でないとはいえ彼女も戦う者ということか。
では、そんな彼女に最後の質問。
「これからも蘇ったダークネス、オブリビオンと戦い続けるつもりなの」
戦いの主体は猟兵へと移った。それでも戦い続けるつもりなのか。
「ええ。戦える範囲では。結局それしか知らないもので」
彼女自身丁度今のインくらいの年齢から戦いを始めていた。なら、たとえ時代に取り残されようとそれしかないと。
彼女との会話の中、インは改めて相手の事を思う。
「私は、私に優しくしてくれた人の味方だからねぇ」
淫魔であるインは他人との関係なくしては生きられない。だがそれは八方美人でなく、明確に好き嫌いあって、好きなものを大事にしたい。
「必要なら、お姉さんの敵を全力で刺しに行くから、遠慮なく頼ってくれると嬉しいなぁ」
言い方は少し物騒だが、こんな言い回しは戦いに身を置く者なら慣れたもの。
「それは頼もしい。もしかしたらこれからもお世話になるかもしれません……頼りにしてますよ」
そう言って手を出すヌードルマスク。その後ろでどっしり構える大きな肉玉に少し目を奪われつつも、インもその手を取る。
「一緒に戦って仲が深まる展開、やっぱり昂っちゃうよねぇ」
「ええ、ワタシも共に、昂らせていただきたく」
ともに昂り合える仲間がいて、敵がいる。|ダークネス《淫魔》でありながら猟兵となった自身のこれからが『昂り』に満ちることを信じ、インは固くその手を握った。
こうして、時の彼方からにじみ出てきた闇の幻鳥は羽ばたくことなく消えた。だが、それは新たな闇との時代を告げる一番鳥ともいえた。
平和の極まり切った世界。その時代は、儚くも崩れ始めたのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵