モフィンクスの冒険~白いにゃんこと夢のバカンス~
幻武・極
【モフィンクスの冒険】
第7話 モフィンクスサマー・in2022?
アルダワののんびりモフモフゆるキャラ災魔のモフィンクスの1匹がちょこっとやる気を出し……夢の世界へと足を踏み入れてしまいました。
そして、夢の世界の散歩はまだまだ続きます。
モフィンクスが飛び込んだ次の夢は、
照り付ける太陽、どこまでも続く白い砂浜。
……その先はあらゆるものを分解する雲海が続くブルーアルカディアの浮島でした。
どうやら、屍人帝国の領地の浮島でオブリビオンたちが夏休みを満喫しているようです。
時期的に違うだろとか、もう死んでいるんですけどや、まだ骸の海から滲み出ていないとか……そういった声が聞こえても夢の中だから仕方ありません。
モフィンクスはブルーアルカディアのオブリビオンとの交流を深め、
モフィンクスの冒険は続く。
登場するブルーアルカディアのオブリビオンは幻武・極のブルーアルカディアの宿敵やあなたのブルーアルカディアの宿敵、またはブルーアルカディアの公式敵から選んで登場させてください。
今回は執筆していたら長くなってしまったMS様の為に3000文字まで用意してありますが、区切りのいいところで区切っていただいて構いません。
オムニバス形式で続けていくノベル企画になりますので、納品後にタグで#モフィンクスの冒険 と付けてください。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
ほんのちょっぴりやる気を出して、散歩へと繰り出したモフィンクス。
とてとてのんびりと歩いていたら――なんと、気づけば夢の中。それでも構わず歩を進めていれば、
『モッフ……?』
視界が一瞬にして白に染まった。直後、溢れるばかりの陽の光を受けて、モフィンクスは反射的に前脚で顔を覆――おうとしたが、残念ながら脚が短すぎて届かない。
けれど、心配は無用だ。元から――実は自身でもすっかり忘れていたが――開いているのかどうかも分からぬくらい、眼は細い。気を取り直してひとつ息をつくと、モフィンクスは改めていつもよりほんのり瞼を上げてみる。
『モ……フィン……!』
あたり一面に広がるのは、どこまでも澄んだ青だった。
穏やかで茫々たる蒼天と蒼海。思いのほか熱くはなく、寧ろさらさらと心地良い足許の砂浜。あちらこちらに見える柔らかそうな雲は、まるで戯れるように空や海にも浮かんでいた。
楽園と呼ばれる場所は未だ知らないが、もしかするとこのような場所なのかもしれない。美しい漣の音色に聞き入りながらそんなことを思っていたモフィンクスは、不意に聞こえてきた声に振り向いた。
『ぷはっ!』
『凄いにゃん! 素潜りの最高タイムだにゃん!』
『本当かにゃん!? やったにゃー!』
波打ち際にいたのは、真っ白な翼を生やした猫たちだった。傍に摘まれている数冊の本やランタンは、恐らく彼らの所持品だろう。
人間たちの話では猫は水が苦手と聞くが、どうやらオブリビオンはそうでもないらしい。そもそもが骸の海から生まれた存在だからだろうか。
『にゃ? お前、誰にゃ?』
『ここじゃ見かけない顔だにゃん』
『|モフィン、モフモッファ《余は、モフィンクスなり》。|モフフィン《そなた等は》?』
堂々と胸を――その体型的にあまりポーズの変化は見られないが――張って答えたモフィンクスに、猫たちも愉しげに返す。
『僕らは“ウィングにゃんこ”だにゃん』
『才能ある若者を、勇士へと導くお仕事してるんだにゃー』
『今日はオフだから、海に遊びに来てるにゃ』
『|モフッファモフン《仕事をしているのか》……|モッフモファン《偉いのだな》』
自分も“迷宮の守護者”という職に就く身として、仕事の大変さは理解しているつもりだ。今はこうして長めの休息を取っているけれど、アルダワの地下迷宮にいるときは、遭遇したアルダワ学園生に出すための“謎”のストックを増やすべく、日々研鑽を積んでいる。
……どこかから「そう言って大半は寝落ちているのではないか」という声が聞こえたような気もしたが、コメントは差し控えておく。
とにもかくにも、褒められた猫たちは嬉しそうに眸を細めた。
『話が分かるやつだにゃ!』
『そうにゃー。僕らは偉いんだにゃ!』
『この間も、新たな勇士を導いたんだにゃん!』
勇士、と聞くとなんだか良さそうな印象を持つけれど、それはつまり、アルダワ学園の生徒たち“猟兵”なる者からすれば敵では? などと思ったものの、華麗なるブーメランを回避すべく、モフィンクスは考えるのを止めた。オブリビオンにとっての勇士であれば、即ちそれは心強い味方が増えたということ。良いことである。
『モフィンクスは、何しに来たにゃん?』
『|モフィ《余は》……|モフモッファ《散歩をしているのだ》」
『散歩?』
1匹の問いに答えると、もう1匹が空色の眸を燦めかせる。
『なら、僕らと遊んでいくにゃ!』
『ブルーアルカディアの良い所、色々教えてあげるにゃん!』
隣で両手を挙げてはしゃぐもう1匹へと、仲間たちもこくこくと頷く。折角の新しい世界だ。現地の案内を断る理由もあるまい。
『|モフ~ン《では》、モフッファモフン《お願いしようか》』
ぴこぴこと耳を揺らしながら頷いたモフィンクスに、ウィングにゃんこたちも歓びながらくるりと宙を1回転した。
✧ ✧ ✧
――小一時間後。
『……っ、モッファ……』
『もう疲れちゃったにゃん?』
『まだまだこれからだにゃー』
ぱたりと砂浜へ倒れ込んだモフィンクスに、ウィングにゃんこたちは小首を傾げた。ぱたぱたとモフィンクスの周りを飛びながら、ぴくりとも動かないその背を伺う。
『|モフファン《飛べるのは》……|モフッファモフモッフモファン《ちょっと有利すぎではないか》……?』
どうにか顔だけを上げて言葉を継ぐも、
『えー? そうかにゃー?』
『そう言っても、飛べるんだし……にゃー?』
『にゃん』
不思議そうに瞬く猫たちに、モフィンクスは再びがくりと顔を伏せた。
最初にやったのは、ビーチバレーだった。いつも3匹で遊んでいたという彼らは、「これで偶数だにゃ! チームが組めるにゃん!」とはしゃいでいたが、片や脚というリーチが長く飛行もできる彼らと、脚なぞ最早胴体にめり込んでいると言っても過言ではないモフィンクスとでは、最早話にもならなかった。一応、1匹は自陣にいるものの、2匹を相手に闘うには不利がありすぎる。
ネットを軽々超えて飛んだ子が、強烈な猫パンチとともに繰り出すアタック。それをどうにか身を挺してブロックするも、何度も喰らっていては地味に痛いし、疲労も募るというものだ。
見かねた猫たちが次に提案したのは、遠泳だった。
雲海に触ると分解されちゃうから気をつけるにゃん、などと恐ろしいことをさらりと言われたが、言ってもそこまでは辿り着くまい。
なにより、彼らよりも己のほうが身体は大きいのだ。体力では有利だろう。――そう思っていたころもあった。
けれど、またしてもリーチの差が勝敗を分けた。軽やかに犬かきならぬ猫かきをする彼らは、しかも翼は海上に出してはためかせて更に加速した。そうしてあっという間に大差をつけられたモフィンクスは、どうにかこうにか自力で浜辺へと戻ってきたのである。
『でも、悪かったにゃ』
『僕らだけ愉しくて、申し訳ないにゃ……』
『お詫びに、良いものあげるにゃん!』
お互い顔を見合わせて頷きあうと、ちょっと待ってるにゃん、と言い残して猫たちはぱたぱたと飛び立った。
こてりと身体を横たえて、暫くただただ寄せては返す柔らかな波をぼんやりと眺めていれば、いくらかは体力が戻ってきた。それと同時に、再び賑やかな声が聞こえてくる。
『お待たせしたにゃん!』
『モフィンクスのために持ってきたにゃん!』
『|モ《こ》……|フィン《れは》?』
ゆっくりと身体を起こせば、視線の先には色鮮やかな料理がずらりと並べられていた。中には、そのまま食すのであろう、果物と思しきものもある。
『ブルーアルカディア特産のスイーツだにゃん!』
『ささ、遠慮なく食べるにゃー』
『まずはこのスムージーから飲むにゃん』
ずずいと差し出されたグラスの裡、美味しそうな明るいオレンジ色に惹かれるままストローで啜れば、ひんやりしてしゃりしゃりとした食感とともに、甘味と酸味の絶妙なバランスが身体に染み渡ってゆく。
『モ……モッフィン!!!』
『気に入ったにゃん?』
『こっちもお勧めにゃー!』
パパイヤとパイナップルのサラダ、ドラゴンフルーツのビビットな赤にキウイやバナナを飾ったピタヤボウル、猫たちが手ずから剥いてくれた果物の女王たるマンゴスチン。
『|モフィ、モッファフファ《余は、満足なり》……』
数えきれぬほどの料理を味わったモフィンクスは、そうして暫しの間、猫たちとの食後のうたた寝を満喫するのだった。
成功
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