富士山に現れしブレイズゲート(ご当地怪人風味)
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「かつての時代、様々な異常現象に覆われたダークネスはびこる迷宮化建造物は『ブレイズゲート』と総称されていたんだ」
久々の案内の感覚を探りながら。自分の元へ集ってくれた猟兵に頭を下げたのは、元武蔵坂学園所属のエクスブレインであった浅間・千星(Stern des himmels・f43876)。
彼女の口から飛び出した『ブレイズゲート』は、2028年10月末には全て消滅すると考えられている。しかし今、オブリビオンによって『突発的なブレイズゲートの発生』が引き起こされることが予知された。
「…… この小さな『ブレイズゲート』の内部がどのような状況になっているのかについては、申し訳ないが一切の予知が得られなかった」
しかし、これだけははっきりしていることがある。
『オブリビオンはこのブレイズゲートを利用して『何らかの企み』を成そうとしている』。そしてボス角のオブリビオンを倒せば、この『ブレイズゲート』は消滅する。
このことを説明して千星は告げる。
「皆にはご足労をかけるのだが、突如として現れた小さな『ブレイズゲート』を探索し、最終的にはボスを倒してきてほしい」
現場は、サイキックハーツの、最近山開きが行われた静岡側富士山五合目登山口。この入山受付所に小さな『ブレイズゲート』が現れるという。
「皆が『ブレイズゲート』に足を踏み入れると、まず、何体かの富士山ペナント怪人が皆の行手を阻むだろう。こいつらを倒しながら真相へと進みいってほしい。すると今度は最後の一体と称する富士山ペナント怪人が現れて、皆に勝負を挑んでくると思う」
この怪人は、富士山を世界一美しいと思っている。
まぁ、富士山はほぼ円錐型で。山頂から裾野までの流線を『美しい』という気持ちは怪人でなくても抱くとは思う。しかし、『富士山が世界一美しい』という思想の押し付けはやはり看過できない。
「面倒だと思うが、『富士山に匹敵する、いや、それ以上美しい『自分』』をアピールして、こいつをコテンパンの再起浮上状態にしてほしい。すると、奥の方から現れるのが……」
おフランスベルサイユ怪人。
こいつもベルサイユ宮殿や庭園のバラは世界一美しいと自画自賛している。故に、日本でも美しい山とされる富士山に目をつけたのであろう。
「こいつがボスということは『地位の高いエスパーの元に現れ、バラ色の光で洗脳して『おフランス戦闘員』にする』ために、ブレイズゲートを利用しているという見立てで間違いないだろうな」
全くご当地怪人は今も昔も……。と額に手を当て呆れ顔の千星だったが、再び真剣な表情で猟兵たちに向き直った。
「このおフランスベルサイユ怪人は『ご当地幹部』という地位にある。故に危険度は作戦級とされているので、油断は禁物。心してかかってほしい」
そう告げて千星は、集まってくれた猟兵の顔を見回して。
「猟兵も灼滅者同様に、歴戦の猛者と聞く。ご当地怪人たちの目論みを阻止すべく、皆の力をぜひお貸し頂ければ幸いだ」
よろしく頼む。と自信満々の笑顔は、猟兵たちを信頼している証でもあった。
朝奈ひまり
かなーりご無沙汰しました。はじめまして、お久しぶりです。
朝奈ひまりと申します。
サイキックハーツ、ご当地怪人と聞いて、気がついたらオープニングを作っていました。
よろしくお願いいたします。
背景が都会ですが、舞台はサイキックハーツ、静岡側富士山五合目です。
第一章:富士山ペナント怪人
富士山が世界一だと思っている怪人です。
ブレイズゲート内をうろうろしていますので、見つけては倒し、見つけては倒しして、ブレイズゲートの深層を目指してください。
第二章:びっくりドッキリ技能対決
最後に一体生き残った富士山ペナント怪人が、皆さんに『美しさ』勝負を仕掛けてきます。
皆さん自身の美しいところをアピールして、怪人をギャフンと言わせてください。
麗しい美貌、髪がすごいさらさらツヤツヤ、瞳がキラキラ、脚線美……等の見た目でも、誰にでも優しい、困っている人を見たら放って置けない……等の心の美しさ等でも構いません。
第三章:おフランスベルサイユ怪人
ここのボスで、フランスはベルサイユ宮殿を世界一美しいと思っています。
ご当地幹部なので相当強いです。
このご当地怪人を倒せば、ブレイズゲートは消滅します。
久しぶりのシナリオですが、どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『富士山ペナント怪人』
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POW : 富士山ダイナミック
【富士山の美しさを語る】【富士山の文化的地位を語る】【富士山の海外客人気を語る】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 富士山ボルケイノ
自身が装備する【富士山ペナント】から【火山弾】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【富士山観光願望】の状態異常を与える。
WIZ : 富士山クリーナー
レベル×1個の【富士山のどこかに落ちているゴミ】を召喚する。各々、「投擲武器、時限爆弾、自身の立体映像」のどれかに変形できる。
イラスト:風馳カイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ここは富士山五合目。
眼下には富士山麓の街々の夜景がキラキラと煌めき、さらに遠く駿河湾には大型船舶がポツリポツリと灯をともしながら目的地の港を目指している。
猟兵がテレポートで導かれた場所は、富士山五合目の入山受付所。プレハブ造り小屋は富士山夜間閉鎖に伴い照明は消され、駐車場を含めて人の気配はない。
ここ富士山は、夏山シーズンに弾丸登山を決行する|エスパー《一般人》が後を絶たないため、今年度から五合目に続く林道を含め、夜間閉山を敢行するという。
別に彼らが、落石や滑落、急な天候変化による低体温床などで死ぬことはないのだが、環境問題や密度的な問題が大きことが主な要因だ。
そんな事情はさておき、ここ富士山五合目にブレイズゲートが現れたとあっては、野放しにしておくわけにはいかないのである。
アンカー・バールフリット
朝奈ひまりマスターにおまかせします。かっこいいアンカー・バールフリットをお願いします!
ウィットなジョークや韻を踏んだフレーズなどを好むスペルキャスター。ノリと勢いのお祭り好きな言動だが思考は意外と冷静。
仲間は「~君」呼び、敵は「呼び捨て」、婚約者は名前呼び。
西洋魔術師然とした黒ローブと三角帽子を纏い芝居じみたセリフを並べながら魔法の杖で殴打したりマジックミサイルを連射したりして多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはお任せ。よろしくお願いします!
ここは|灼滅者《スレイヤー》がお相手しよう。
「標高が高いだけあって、星がすごく近いな……」
グリモアベースから転移され、砂地に足を下ろしたアンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・f43884)。愛用の三角帽子を押さえながら、ふと自分の頭上に広がる満天の星を見上げてふと笑みを零したけど。
今度は、婚約者であるグリモア猟兵が示した件のプレハブ小屋を、青い瞳をやや険しくさせて見据えた。
「……ここだな。千星が言ってたブレイズゲートは」
アンカーはレザーグローブを嵌めた指先で、プレハブ小屋の引き手に指を引っ掛け力を込める。
おそらく普段の夜であれば、鍵がかかって開かない扉であろう。しかし今日に限っては鍵がかかっている気配もなく、まるでこの場を猟兵が訪れることを予見していたかのようにスッと開いたのだ。
「入って来いということか。――久々のブレイズゲート。戦いの感覚を取り戻すにはちょうどいい」
ブレハブ内部とは思えないような構造へと変化した室内を見据えて口角を上げたアンカーは、ブレイズゲートと化した小屋へと足を踏み入れた。
その時だった。
アンカーの足元に、富士山のどこかに落ちていそうなゴミが転がってきたのだ。
「こんなところにゴミが……」
と、手を伸ばそうと身をかがめると、聞こえてくる。
刻む秒針の音と、鉄の匂い。
「っ、時限爆弾!?」
そう思うが刹那、富士山のどこかで落ちていそうなゴミ型時源爆弾が激しい音を立てて爆発したのだ。
だが、アンカーの足が出るのがわずかに早かった。爆発を起こす直前に時限爆弾を咄嗟に蹴り飛ばしたのだ。
後一瞬判断が遅れていたら、ブレイズゲート潜入早々、爆発により屋外へ弾き出されるところだった。
アンカーは背にしているプレハブのドアを閉めるや否や、さらに険しい表情で室内を見回した。すると爆発の煙の向こうから、何やら頭部が二等辺三角形のやつが姿を現したのだ。
「お出ましのようだね。ダークネス。――いや、オブリビオン」
普段より低く威圧的に言葉を発せば、三角形のやつ――富士山ペナント怪人は、手にしているゴミを放り上げながら、
「富士山は日本一、いや、世界一美しい! さぁこの美しさの前に平伏すがいい。お前も富士山親衛隊にしてやろうか!」
とケタケタ笑いはじめた。
山を護衛して何になるのか。とか、そもそもそれを富士山が望んだのか。とかいうツッコミは、まぁそこら辺に置いといて。
「親衛隊? 私が護衛するのは、ただ一人さ」
アンカーが利き手に出現させたウィザードロッドの柄を握り込むと、真新しいグローブが微かに甲高い音を立てる。
「全く、相変わらずだなご当地怪人。お前たちの目論みは全てお見通しだ。ここは|灼滅者《スレイヤー》がお相手しよう」
さらに手に力を籠めれば、ロッドに封じられたサイキックの鳴動が腕に伝わってくる。
「――いざというとき頼りになる魔法の杖! 唸れ運動エネルギー! 大きく振りかぶって……」
宣言通りに振りかぶればロッドのサイキックが解除され、アンカー自身の魔力と腕力と共に、ロッドヘットの宝石が赤い軌跡を描き――。
「――フォースブレイク!」
叫び声と共に、富士山ペナント怪人をぶん殴り飛ばしたのだ。
殴り飛ばされた富士山ペナント怪人は「グローバルジャスティス様に栄光あれ」とか叫んだかは定かではないが、ぶっ飛ばされて空中で爆発四散した。
何はともあれ、まず一体灼滅。
アンカーは短く息をつくと目の前に開けた深層へと繋がるフロアを見据えながら、歩を進めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、世の中には『1富士2アヒル3茄子』という言葉があるように富士山は世界一かもしれないが、すぐ後ろにアヒルが迫っていることを忘れてもらっては困るって、アヒルさんそれ2鷹じゃありませんか?
それに初夢で見たら縁起のいいものだったような?
ふええ、つべこべ言ってないで灼滅するぞってどうするんですか?
恋?物語で後ろから接近して……、
……攻撃ですか?
ふえ?アヒルさんを富士山ペナントの上に立たせて世界一の座をアヒルにするって、そんなの効くんですか?
それに近づくまでに見つかりませんか?
世界一だと慢心しているから周りなんか見てないし、世界一の座を奪われれば精神的な大ダメージって、そんな作戦でいいんですか?
富士山五合目入山受付所のプレハブ小屋の内部は、まるでダンジョンのように入り組み不穏な気配すら漂わせていた。
そんなブレイズゲート内を行くのは、両手で摘んだ帽子のつばをギュッと自分の両頬に寄せながら、あたりをキョロキョロ見回して歩を進めるフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆》はまだ終わらない・f19557)。
ずっと昔、こんな感じの場所を誰かと歩いたような気もしなくもない。だけどその記憶はまだ霧の向こうだ。
そんな思い出せない誰かの代わりにフリルと共にブレイズゲートを進むのは、アヒルちゃん型ガジェットの『アヒルさん』。
だがこのアヒルさん。その可愛らしさとは裏腹に、フリルの頭の上で頻りに彼女の頭を突いている。
「ふええ……『世の中には『1富士2アヒル3茄子』という言葉があるように富士山は世界一かもしれないが、すぐ後ろにアヒルが迫っていることを忘れてもらっては困る』って……。アヒルさんそれ『2鷹』じゃありませんか? それに初夢で見たら縁起のいいものだったような……」
と小首を傾げたフリルは、突然はっと息を飲むと近くの段ボールの陰に隠れた。
目の前に二等辺三角形頭のオブリビオン――富士山ペナント怪人を見つけてしまったからだ。
「ふええ。アヒルさんどうしましょう……。もういましたぁ……」
フリルと富士山ペナント怪人との距離は20メートルほどあっただろうか。だけど人見知りのフリルにとって、オブリビオンと目があっただけでも恥ずかしさと怖さを感じてしまう。
だけど、フリルの頭の上でアヒルさんがタンタンと足を踏み鳴らした。
「ふええ……『つべこべ言ってないで灼滅するぞ』って……、どうするんですか?」
震える声でフリルが尋ねると、アヒルさんはぴょんぴょん跳ねて何か伝えてくる。
「『……恋? 物語』で後ろから接近して……、……攻撃ですか? ふえ? それで『アヒルさんを富士山ペナントの上に立たせて世界一の座をアヒルにする』って、……そんなの効くんですか? それに近づくまでに見つかりませんか?」
見つかったらうまく立ち回れる自信もない。
不安で涙目のフリル。そんな彼女を励ますかのように、アヒルさんは彼女の頭の上で仁王立ち。
「『世界一だと慢心しているから周りなんか見てないし、世界一の座を奪われれば精神的な大ダメージ』って、そんな作戦でいいんですか?」
そう言われれば、勇気も湧いてくるような気がして。
フリルはグッと拳を握って気合を入れると、ダンボールの影からそぉっと姿を現した。富士山ペナント怪人は未だこちらに背を向けていて、近づくには絶好のチャンスだ。
足音を立てないように、衣擦れの音にも気をはらって。
そろり、そろーり。
そうしたらもう、フリルの意のまま。ユーベルコードを効かせるまま。
「だ、だーれだ?」
突き出した腕にアヒルさんを渡らせてあげれば、アヒルさんは富士山ペナント怪人の頭の上に。
これで世界一の座はアヒルさんのものだ! とドヤ顔のアヒルさんだったが。
富士山ペナント怪人が頭上のアヒルさんに気がついてしまったのだ。
「ふええ、アヒルさんっ」
フリルは咄嗟にアヒルさんを助けようとした。助けようとして。怪人の命でもあるペナントをものすごい握力でグシャリと丸めてしまったのだ。
その突然の屈辱的な出来事二連発に、富士山ペナント怪人が「ギャー!!」と叫び声を上げた。
叫ぶ声にフリルがびっくりして手を離した次の瞬間、くしゃっと丸めたペナントがばっと広がり、放出されるのは火山弾。
「っ!」
これは当たったらやばいやつ。
フリルは咄嗟にアヒルさんを抱っこすると、さっきまで潜んでたダンボールの影まで一直線で戻ってきた。あとはアヒルさんをギュッと抱いて、噴火が収まるのを待つ。
やがて。
そろりと様子を伺えば、富士山ペナント怪人はそのばに仰向けで倒れていた。
「ふええ、これが俗いう憤死ってやつですか? アヒルさん」
フリルに尋ねられて、アヒルさんは満足げにうんうん頷いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
湧玉・水守
富士山が素敵なお山なのはその通りだけど…みんなに迷惑をかけるのは相変わらずなの、ご当地怪人!
怪人が復活するならヒーローも復活するのがお約束なの、静岡の平和を乱す悪者は許さないんだ!
みんなエスパーになったから登山も安全にできるようになったけど、お山への敬意を忘れちゃいけないの
ということで登山装備はしっかり揃えて入山!
こらーっ!ゴミを投げちゃダメなの!
いくら自分が捨てたものじゃなくても拾ったなら持って帰るの!
お前達の富士山愛なんてそんなものなの!恥を知るの!
怪人達のガバガバご当地愛にダメ出しをして士気を削ぎながらも相手を観察
UC【殲滅執刀法】!『ご当地グッズ』のさくら棒でしばき倒してやるの!
湧玉・水守(湧水のご当地ヒーロー・f43817)は静岡東部のご当地ヒーロ。故に、富士山とともにあると言っても過言ではない。
だからか、富士山にブレイズゲートが現れ、ご当地怪人が|エスパー《一般人》を戦闘員に変える企みを行なっていると聞いて、いてもたってもいられなかった。
「富士山が素敵なお山なのはその通りなの。だけど……みんなに迷惑をかけるのは相変わらずなの、ご当地怪人! それに、怪人が復活するならヒーローも復活するのがお約束なの、静岡の平和を乱す悪者は許さないんだ!」
頬をぷくっと膨らませながら、プレハブ小屋内部――ブレイズゲートを進んでいく。
水守が憤るのは、何もオブリビオンにだけではない。
身の危険を感じることなく登山できるようになったからといって、富士山への敬意を払わないマナーを守らないエスパーたちにも憤っている。
だからか。
水守の装備はしっかり夏山富士山登山スタイルである。
その様子でしばらくブレイズゲート内を歩いていた水守だったが、曲がり角で運悪く怪人と出会してしまった。
「出たな灼滅者。お前も富士信仰者にしてやろうか!?」
富士山ペナント怪人が手にしているのは、菓子パンの空袋。それをまるでピッチャーによな投球フォームで振りかぶって投げてきた。
「ひゃっ」
水守は寸でのところで避けたけど、怪人が放ったゴミは向こうの壁にめり込んでいる。
これがもし当たっていたら……。
水守は思わずごくりと生唾を飲み込んだ。けど、これだけは言っておかなきゃならない。
「こらーっ! ゴミを投げちゃダメなの! いくら自分が捨てたものじゃなくても拾ったなら持って帰るの!」
青い瞳でキッと富士山ペナント怪人を見据えてしかれば、水守に叱られた富士山ペナント怪人は「え、えっ」と戸惑い始める。
「お前達の富士山愛なんて、そんなものなの! 恥を知るの!」
ガバガバご当地愛はダメ出し対象。
静岡東部をホームとしている水守にとって、富士山はご当地も同然なのだ。
だが、富士山ペナント怪人も言われっぱなしではなかった。
「ななな……、何を言うか! 我の富士山愛は誰にも負けない!」
そう叫んで逆上するなり、召喚したゴミをポンポンポンポンと水守に向かって投げてきた。
「うわっ、ひゃ、きゃっ」
水守が小さく叫び声を上げながら放物線を避けるたび、どすん、どすんと床に壁にめり込んでいくゴミ砲丸。
「……これじゃ埒が開かないの……。『ご当地グッズ』のさくら棒でしばき倒してやるの!」
水守はゴミ砲弾を避けながらも富士山ペナント怪人をじっくり観察し、ついに|死の永却点《ホロウ・デス・ポイント》を見出した。
この発見にかなり時間を要したが、これで後に続く仲間たちも有利に戦えるはずだ。
「お前の弱点は、そのペナントなの!」
チャンバラもできそうなほど長いピンクのふ菓子『さくら棒』を手にして走り出した水守は、怪人の目前で床を蹴って飛び上がる。そして上段の構えから『さくら棒』を一気に振り下ろした。
ぐしゃりと音を立てたのは、『さくら棒』ではなく、ペナントの方。
「ひぎゃぁぁぁ!」
ご当地愛を否定された上にペナントも叩き潰された富士山ペナント怪人は、水守が『さくら棒』を振り抜く勢いそのままに破れ、四散爆発した。
「……全く、口ほどにもないの!」
水守は後に残る煙をパッパと払うと、さらに深層に進むべくブレイズゲート内を進み始めるのであった。
成功
🔵🔵🔴
加陽・詩帆
復活ダークネス…いや、オブリビオンっつーのか?
ま、何でもいいさ
悪さするっつーんなら、退治すんのが俺達灼滅者の役目だ!
サイキックハーツ大戦の時は、戦え無かったが…やっと俺の番が回ってきたって事だ
猟兵って奴等もいるみてーだが、俺達の世界だ人任せにはしねえぜ!
さあ、いくぜ!
てめえ等の好きにはさせねえ!
ロケットハンマー『烈火』を担いでブレイズゲートへ!
ペナント怪人を見つけるそばから、仕掛けていくぜ
ファイアブラッドの炎で『烈火』に火を入れて始動だ
轟炎駆動!
燃え盛るハンマーで横殴りにして、ホームランだ!
その大層なペナント、燃やしてやるぜ!
語るばっかじゃ、殴られてばっかになるぜ?
こちとら、暴れたりねえんだよ
皆から少し遅れてブレイズゲートの扉を開け放ったのは、とりどりの色の髪を夜風に靡かせた加陽・詩帆(灼熱の獣・f44003)。
「こン中にいるっつーのが、復活ダークネス……いや、オブリビオンっつーのか。ま、呼び方なんて何でもいいさ。悪さするっつーんなら、退治すんのが俺達|灼滅者《スレイヤー》の役目だ!」
得物であるロケットハンマー『烈火』を担いだ詩帆の胸を焦がすのは、先の大戦――サイキックハーツ大戦のこと。
本当は自分も戦いに赴きたかった。
だけどそれは叶わずに終戦を迎え、世界は悲しみのない世の中へと移行していった。
それはとても善いことなのかもしれない。だけど平和と引き換えに詩帆は、この胸のヒリつきのやり場を失ってしまった。
だが今、復活ダークネス――いや、オブリビオンがこの世界の各地で暗躍を始めたと知ってしまった以上、立ち上がらない選択肢は詩帆にはなかった。
「……やっと俺の番が回ってきたってことだ! 猟兵って奴等もいるみてーだが、俺達の世界だ。人任せにはしねえぜ! さあ、いくぜ! てめえ等の好きにはさせねえ!」
得物の柄を握る極彩色に彩られた爪で飾られた手がぎゅっと鳴らして気合一閃。詩帆はブレイズゲートへと踏み込んで行く。
どのくらいブレイズゲート内を歩いただろうか。
異様な気配がして立ち止まり、青い瞳をさらに鋭くさせながら後ろを振り向けば。二等辺三角形頭の怪人が詩帆と目を合わせるなり、早口で捲し立ててきた。
「富士山は美しい円錐形の日本一の山である。その稜線の美しさから、人々に愛され歌人もこぞって富士山の歌を詠み、画家も富士山を題材とした絵画を多数描いてきた。また、日本中にある『富士見』という土地の名が示すように、皆、米粒ほどの富士を拝んではありがたがったとされるのだ。また富士講という文化には――」
富士山の偉大さを語るにつれ、自身を強化している富士山ペナント怪人。
だが、そんな御託をゆっくり最後まで聴いてやる詩帆ではない。
ファイアブラッド由来の炎を『烈火』に入れて走り出した。
「語るばっかじゃ、殴られてばっかになるぜ? ――いくぜ『烈火』! 最大駆動だ!」
すると『烈火』の白い頭部分に青白い炎が宿り、それはさらに赤く赤く燃え盛る。
「その大層なペナント、燃やしてやるぜ!!」
富士山ペナント怪人の目前で『烈火』を振りかぶり横殴りにすれば、その体は衝撃と共に燃える炎に包まれて吹き飛ばされ、怪人らしく四散爆破した。
詩帆はその最期をニヤリともぜず見送って、再び『烈火』を肩に担いで歩み始めた。
「――こちとら、暴れたりねえんだよ」
彼女の六年間の空白を埋める戦いは、まだ始まったばかり――。
大成功
🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
斯様な切掛で富士山に来る事になろうとは
純粋に登山を楽しみに来たかったのだが、此れも仕事だ
「ニコ・ベルクシュタイン」として、務めを果たしてみせよう
山にゴミを捨て置く輩がそもそも悪いというのはさて置き
俺の眼前に転がってきたゴミこそが敵の攻撃、という事だな
何に変形しても良いように、何時でもダッシュからのジャンプで
回避出来るように備えておこう
其の勢いに任せてUC発動、俺の力の根源をご覧に入れようか
箒に乗ってペナント怪人の頭上を取り
急降下しつつ「Bloom Star」で思い切り殴りつけてくれよう
なお頭部は狙わないでおいてやろう、せめてもの慈悲だ
杖を手にしたら全力で殴りつけるのが魔法使いの流儀らしいからな
「斯様な切掛で富士山に来る事になろうとは……」
山の涼風に白い短髪を揺らしながら呟いたニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)は、僅かばかりの郷愁を胸に感じていた。
此処、サイキックハーツはニコの故郷。――と言っても、まだ真新しい懐中時計であった頃の話。
おそらく。初代の持ち主も戦地や拠点で、数多斯の山を見上げたことだろう。若しかしたら、平和になった後に斯の山へと赴いたかも知れない。
その時も自分は、主人の懐中に共にあったことは確かで。
ニコはわずかなヘッドライトの列が連なる登山道と、奥の山頂を眼鏡の奥の赤い瞳で見つめるが――。
「……純粋に登山を楽しみに来たかったのだが、此れも仕事だ。『ニコ・ベルクシュタイン』として、務めを果たしてみせよう」
そう決意を込めてブレイズゲートへと足を踏み入れたのは、25分程前のこと。
入り組んだ廊下を行き、なぜか存在する地下へと続く階段を下り、出くわした富士山ペナント怪人を四散爆破させていよいよ深層部へと辿り着いた。
ここまで来ればあとばボス戦か。と得物を握る手に力を込めて肝を据えた矢先、ニコの眼前に空きペットボトルが次々と転がってきた。
こんな屋内に不自然な転がり方をしてきた空きペットボトルは、きっとご当地怪人の攻撃なのであろう。
そもそも山にゴミを捨て置く輩が悪い、という根本はさておき。ニコは敢えてペットボトルが転がってきた方へと走り出した。そして、透けて見えるペットボトル内部に炎が宿った刹那、タンと床を蹴って時限爆弾と化したペットボトルを飛び越える。
ニコは背後で次々に爆発していくベットボトルに一瞥もくれず、その駆ける勢いのまま、首元を飾るリボンに指をかけて唱える。
「――百年の時を経て今此処に甦れ、我が力の根源よ!」
すると、先ほどまでのスーツ姿が一変。――落ち着いた赤い色の大きな三角帽子には七色の星型の花を飾り、同色のケープマントと桃色のフレアスリーブ、首元に結ぶ大きなリボンを靡かせた『赤い魔法使い』の姿に変身した。
其れはニコの初代の持ち主――この世界、サイキックハーツの『ニコ・ベルクシュタイン』の姿。
利き手に現れたウィザードロッド『Bloom Star』の魔力も増し、心なしか杖に絡みつく星形の花がさらにキラキラと輝いている。
その変身の最中に富士山ペナント怪人を見つけ、自分の傍に魔法の箒を出現させる。
「俺の力の根源をご覧に入れようか」
革靴から変わった赤のロングブーツで地面を蹴って箒に飛び乗り、その勢いのまま富士山ペナント怪人の頭上を取る。
「せ、世界一の富士山よりも高く飛ぶな!」
此奴のいう富士山は、ペナントに描かれている富士山であろう。
「ならば頭部は狙わないでおいてやろう、せめてもの慈悲だ」
無慈悲な表情でそう呟くなり、ニコは急降下ののちに怪人の背を『Bloom Star』のロッドヘッドで思い切り殴りつけた。
「ごふっ……!」
背を思い切り殴りつけられた富士山ペナント怪人は、殴られた勢いのまま前のめりにつんのめり壁まで転がると、その場で四散爆破する。
怪人の最期を見送りながらニコは、『Bloom Star』に付いた穢れを払うかの如くぶんと一回振ってみせた。
「杖を手にしたら全力で殴りつけるのが、魔法使いの流儀らしいからな」
杖は鈍器。彼もそういう闘い方をしたのだろうか。
ニコは胸元に手を当て、初代持ち主に想いを馳せた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『びっくりドッキリ技能対決』
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POW : 溢れんばかりの情熱をぶつける
SPD : 凄まじいまでの器用さを発揮する
WIZ : 知恵と工夫で乗り切ってみせる
イラスト:del
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ブレイズゲート深層部。
富士山ペナント怪人をバッタバッタと打ち倒してきた猟兵の前に現れたのは、このブレイズゲートの主人――ではなく、まさかの富士山ペナント怪人だった。
富士山ペナント怪人はそのペナント頭をすっかり項垂れさせている。
「……|灼滅者《スレイヤー》――いや、|猟兵《イェーガー》というべきか……。よくも我が同胞たちを無惨にも亡き者にしてくれたな……。おかげで我にはもう富士山愛しか残っていない……」
弱々しく語り出した富士山ペナント怪人は、数多の仲間を失った悲しみからすでに戦意を有していないようにも見える。だが、未だその胸に、そのペナントに、富士山愛を熱く熱く滾らせていた。
だがその愛ゆえに――ご当地怪人の発想はいつも斜め上。
「――我々を打ち倒すということはだ、貴様らは富士山よりも美しいものを持っているということ。――我らが誇り・富士山よりも美しい貴様ら自身を、我に見せつけろ!!」
と、この怪人も御多分に洩れずに素っ頓狂な提案を仕掛けてきたのだ。
さぁ、|灼滅者《スレイヤー》――いや、|猟兵《イェーガー》よ。
君は自分の美しさを示し、この哀れな怪人を仲間の元へと送ってやれるのか――?
*天の声より。
皆さん自身の美しいところをアピールして、怪人をギャフンと言わせてください。
容姿や心、声や感性……、ご自身にまつわる美しさならなんでも大丈夫です
また、『美しい+【技能名】』と、美しいを頭につけて言葉になる技能を織り込んでいただくと、プレイングボーナスが加点されます。
フリル・インレアン
ふええ、あの、アヒルさん。
別に美しさに拘らなくてもいいですよ。
アヒルさんなら、かわいいの技能で十分だと思います。
ふえ?私が恥ずかしがってばかりいるから、かわいいの技能が1レベルもないって、それは今年になってようやく習得できるようになったんですからしょうがないじゃないですか。
アヒルさんの美しいダンス『アヒルの湖』を見せてやるって、それは『白鳥の湖』なんじゃないですか?
「ふええ、美しさ勝負……?」
フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、帽子のつばを摘むとぎゅっと自分の頬に引き寄せてしまった。
富士山ペナント怪人は、『日本一の高さを誇る富士山に勝て』というのだ。
何か自分のいいところ、美しいところはあるかなと探してみるけど、恥ずかしくて披露できない。
もじもじしているフリルの前に颯爽と現れたのは、アヒルさん。
可愛い表情を心なしかキリッと麗しくさせて、爪先立ちで何か踊り始めた。
「ふええ、あの、アヒルさん。別に美しさに拘らなくてもいいですよ。アヒルさんなら、かわいいの技能で十分だと思います」
アヒルさんを見下ろしながらフリルが助言すると、当のアヒルさんはぴょんぴょん跳ねてフリルに物言いたげ。
「ふえ? 『私が恥ずかしがってばかりいるから、かわいいの技能が1レベルもない』って? ……それは今年になってようやく習得できるようになったんですから、しょうがないじゃないですか……」
メタい発言が飛び出してきたが、新しい技能というものはなかなか組み込みにくいのも事実。
そんな困った表情で眉尻を下げるフリルを尻目に、アヒルさんは踊る。
「『アヒルさんの美しいダンス『アヒルの湖』を見せてやる』って……」
華麗なターン。乱れぬスピン。軽やかなジャンプに美しい着地。
その踊りを眺めていると、有名なバレエの音楽が聞こえてきそうだ。
「ふええ……それは『白鳥の湖』なんじゃないですか……?」
と、アヒルさんに突っ込んだフリルは、はっと息を呑んで目前の富士山ペナント怪人をそろりと見上げる。すると、富士山ペナント怪人が腕を組んでアヒルさんのダンスをじっと凝視しているではないか。
心なしか、難しい顔をしている。――いやそのペナントから表情を窺うことはできないのだが、難しい表情をしている、ように感じる。
これはもしかして、美しさ無し判定なのだろうか。
フリルは恥ずさしい気持ちを飛び越えて、富士山ペナント怪人と向かい合った。
「ふええ。あの、アヒルさんと私は一心同体なんです。ずっと一緒なんです。そんなアヒルさんがわたしのために踊ってくれてるんです。なので、アヒルさんのこの美しい(っていうか、むしろ可愛い)踊りで判定してもらえませんか? お願いします……」
恥ずかしさのあまり早口で捲し立ててしまい、フリルは帽子のつばを掴む手をさらにギュッと引き寄せて顔を隠してしまった。だけど、自分の代わりに美しさをアピールしてくれているアヒルさんの頑張りは、認めて欲しかったのだ。
だが、フリルの耳に飛び込んできたのは、意外な言葉。
「美しい……」
「ふえ?」
思いもよらない言葉に、フリルは思わず怪人を見上げた。
「……主人を思って踊るガジェット、ガジェットの頑張りを認めて欲しいと願う優しき心を持つ主人。実に美しいではないか!」
ふふふると感動に打ち震える富士山ペナント怪人。
そんなオブリビオンを尻目にアヒルさんは、フリルを見上げてえっへんとドヤったのであった。
成功
🔵🔵🔴
納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから10年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!
あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ
商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします
「今回のこまったちゃんお仕置き会場は、ここでよろしいんですの?」
富士山五合目登山口の入山受付所に現れたブレイズゲートの深層階。
お花を飾ったピンクのブーツで階段を降りてきたのは、まさかの布――いや、ブギーモンスターの納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)だった。
頭のお花のアップリケを揺らし、刺繍で可愛く飾られた知恵の布越しに手にした錆びたハサミの片っ方のような勇者の剣と殺戮刃物もリボンとお花で可愛くデコってあるが、これでここまでバッタバッタと富士山ペナント怪人をぶっ飛ばしてきたのだ。
ピンチンはきゅるんとした青い瞳で富士山ペナント怪人を目視するなり、
「あなたが最後のこまったちゃんですの? さぁ、ごめんなさいの時間ですわ」
と、お嬢様口調に関西弁のイントネーションを混ぜて、殺戮刃物の切先をピシッと富士山ご当地怪人を指した。
対する富士山ペナント怪人に戦意はない。もう孤軍奮闘で富士山を推す元気もないからだ。
「我にはもう、富士山を推す心しか残っていない。さぁ、お前が富士山よりの美しいと誇れるものを披露し――」
ろ。
と言いかけた富士山ペナント怪人はピンチンを一目見るなり、一瞬硬直。白手袋をはめた両手をワナワナと振るわせて戦慄させ始めた。
「ん、どうしましたの? ごめんなさいは両膝と両手をついてやるものですわ」
ピンチンは小首を傾げながらも両手に持った剣をチャキンと頭上でクロスしてみるけど、富士山ペナント怪人は、まだ打ち震えている。
「……お、お前のフォルム……」
「アタシのフォルム? アタシのフォルムがどうしましたの? まぁ、この布を被って十年経ちましたわ」
ピンチンが武器を手にしたままその場でくるんとステップを踏んで一回転すると、布の裾がふわぁと膨らみ、富士山ペナント怪人が「あぁぁ!」と恍惚の雄叫びを上げる。
「富士山!!」
なんと富士山ペナント怪人には、ピンチンの末広がりのフォルムが『富士山』のように見えてしまっているらしい。
「回転した時が一番顕著に富士山であることには疑いはないが、この頂上に咲く花は『コノハナサクヤヒメ』を模している。きっとそうに違いない! 猟兵の中にも富士山推しがいたとは! 富士山ペナント怪人、一生の不覚……!!」
自分の知らなかった世界に触れたかのような衝撃に、ガクンと膝両手両膝を床について項垂れる富士山ペナント怪人。
ピンチンは急に崩れ落ちたペナントの裏側を拝みながらも、何が起こっているのかちょっと考えたが。
「まぁ、土下座させたからよしとしますわ」
と、武器を下ろしてうんうんと満足げに頷けば、コノハナサクヤヒメに例えられた花もゆらゆらと揺れたのであった。
成功
🔵🔵🔴
ニコ・ベルクシュタイン
一番無くしてはならない「富士山愛」が残っている限り
貴様は立派なご当地怪人だと、俺は思うがな
ならば猟兵として受けて立とうではないか
指定UCで召喚した妖精さんに、話し相手を務めて貰う
なあ妖精さんよ、我が伴侶はどうやら「伴侶」という関係が
具体的にはどういう状況を示すのか、今ひとつ理解していないそうだ
俺としては生涯連れ添えればそれで満足なのだが
些かじれったくもあり……
此れはある種の「美しい【|青春《アオハル》】」と呼べるのではなかろうか?
さて、富士山ペナント怪人よ
俺の美しい青春模様について、貴様はどう思う?
ちなみに俺の伴侶とは、この妖精さんに姿形がそっくりでな
今年で何と12歳になったフェアリーだが……
猟兵たちの美しい友愛だとか、富士山愛(?)だとかを目の当たりにした富士山ペナント怪人のライフはゼロに近い。
「……世の中には富士山よりも美しいものがあるのか……自信がなくなってきそうだ……」
未だ土下座スタイルの富士山ペナント怪人を前にして、ニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)は頭を小さく横に振りながら「否」と声をかけた。
「一番無くしてはならない「富士山愛」が残っている限り、貴様は立派なご当地怪人だと、俺は思うがな」
なんと慈悲深い言葉であろうか。
まさか猟兵にこんな言葉をかけてもらえるなんて……!
富士山ペナント怪人はゆっくりを頭を上げるなり、ニコにペナントの表側を向け、「……猟兵……!」と声を震わせた。
だがここで、復活ダークネス――オブリビオンとの友情を芽生えさせるわけにはいかない。
この先のボスと対峙するためには、この富士山ペナント怪人を仲間の元へと送ってやる必要があるのだ。
もちろん富士山ペナント怪人も、ニコの披露する『美しさ』を見極めなくてはならない。
富士山ご当地怪人はヨロヨロと立ち上がると、見据える目はどこにあるのかという疑問はさておいて、ニコを見据えた。
「お前の『美しさ』を示せ」
「……俺の『愛』も伊達ではないところを見せなければならない。いいだろう、猟兵として受けて立とうではないか! ―― いでよ、我が|伴侶《イマジナリーウサミ》!」
メガネのブリッジを聞き手の中指でくいっと上げながら唱えれば、天に向けたニコの手のひらにふんわりと現れたのは、垂れうさ耳が生えたピンク色の可愛い妖精さん。
ぴこぴこパタパタ動く水色の羽も、頭に乗せたピンクのお花の冠も、おててに持ったうさちゃんスティックも、そして少しセクシーなお洋服も、バッテンおくちもジト目さえも全部可愛い。
「なあ妖精さんよ」
ニコが話しかければ妖精さんは、少し気だるげに答えてくれる。
「なんだ? どうしたニコ。シケシュタイン|面《ツラ》してんな? 話だったらこの俺が聞いてやらんくもないぞ」
えっへんどやっと胸を張る妖精さん。『シケシュタイン』という造語が気になるが、その尊大な態度も実に愛らしい。
「実は、我が伴侶の件なのだが」
少し深刻そうにニコは話を切り出せば、妖精さんは「あぁ!?」と声を上げた。
「またお前の伴侶の話か! ……いいよ、聞いてやんよ」
少しばかりうんざりげだが、話を聞いてくれるらしい。実は面倒見がいい!
「毎回申し訳ない。伴侶はどうやら『伴侶』という関係が具体的にはどういう状況を示すのか、今ひとつ理解していないそうだ」
「そりゃかなり鈍いな。けど、ニコがもっとガツガツシュタインで押せばいいんじゃねーのか?」
ニコの悩みを聞き、押せ押せと空中でジャブを打つ妖精さん。そんな勇ましい姿も実に愛らしい。
「いや、俺としては生涯連れ添えればそれで満足なのだ。無理を強いるわけには行かないしな。だが、些かじれったくもあり……」
「あぁ、もう、些かじれったいのは、こっちなんだがー!」
眉尻を下げてその胸の奥の柔らかな部分を吐露するニコ。一方の妖精さんは未だシュッシュとジャブ打ちをしている。
そんな二人の様子を見つめていた富士山ペナント怪人は、おそらくキョトン顔。
「……あの、我は何を見せられているの……?」
おずおずと尋ねれば、ニコが富士山ペナント怪人をじっとりと見据える番。
「察しが悪いな、富士山ペナント怪人よ……。俺の美しい青春模様について、貴様はどう思う?」
告げれば富士山ペナント怪人は、はっと息を呑むなりたじろいだ。
「なんと……! 我は知らず知らずに『美しい|青春《アオハル》』を目の当たりにしていたというのか……!」
ショックでペナントの富士山がポンと小噴火を起こす。
だが、サプライズはまだあるもので。
「……ちなみに俺の伴侶とは、この妖精さんに姿形がそっくりでな」
「マジで!?」
今の今まで灼滅者やエスパーなどの人間しか見てこなかった富士山ペナント怪人。人型の存在と妖精との異種愛がカルチャーショックで、ペナントに刺繍されている富士山の標高の数字がぐんぐんと急上昇していく。
だが、これで驚いてもらっては困る。
「しかも、今年で何と12歳になったフェアリーだが……」
ニコが伴侶の年齢をカミングアウトすれば、富士山ペナント怪人の驚きも最高潮。
「12歳!! ――愛はいろんなものを超えてきやがる……! 実に『美しい』ではないか……っ!! デートは是非、富士山でぇぇ!!」
と言い残し、ペナントの富士山を山体崩壊させるなり四散爆破する富士山ペナント怪人。
その爆風から妖精さんを守りながら、ニコは立ち込めた煙が晴れるのを待って、安堵の息をつく。
「……富士山デートか……」
呟いて、想像する。
きっと伴侶は、登山中もずっと自分の肩に座ったままなのだろうか。
だけどニコは、妖精さんを見つめてふと口角を上げた。
伴侶と二人で見るご来光や山頂からの景色は、きっと美しいだろう。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『おフランスベルサイユ怪人』
|
POW : 条約調印剣
【西洋剣】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : ベルサイユ薔薇フラッシュ
【マリー・アントワネット】の霊を召喚する。これは【パン】や【ケーキ】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 鏡の間展開
【美への意識】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【鏡】から、高命中力の【おフランス光線】を飛ばす。
イラスト:ばっじん
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
静岡側富士山五合目入山受付所。
眼下に麓の街明かりと伊豆半島、駿河湾を臨み、見上げれば満天の星と極わずかなライトの灯りがゆっくりと山頂を目指している。
一見平和に見えるこの世界。だがその平和は復活ダークネス――オブリビオンによって脅かされようとしていた。
一見だたのプレハブ小屋であるこの建物も小さなブレイズゲートと化し、恐ろしい企ての拠点と化している。
猟兵たちは富士山をこよなく愛する怪人・富士山ペナント怪人を退け、富士山よりも美しい愛を示し、いよいよ最深層へと進み行った。
そこで待ち構えていたのは、フランスはイヴリーヌ県、ヴェルサイユに燦然と建つ豪華絢爛な宮殿・ベルサイユの頭部を持ち、貴族風の衣装・アビ・ア・ラ・フランセーズに身を包んだ『おフランスベルサイユ怪人』。
おフランスベルサイユ怪人は、その姿に相応しいとは言い難いそこらへんの段ボールや資材を積んで作ったと思われる簡素な玉座に尊大な雰囲気で腰を下ろしていたが、部屋に踏み入ってきた猟兵を認識するなり、ゆっくりと腰を上げた。
「やっとここまで辿り着いたのかね、|灼滅者《スレイヤー》の諸君。――いや、今は|猟兵《イェーガー》といったか」
立ち上がれば、その
青と金が基調のバロック調の燕尾服は大きく膨らんだ袖と胸元のフリルスカーフが特徴的。
トップスは華やかなのにボトムスは白いタイツで、流々とした筋肉が浮かび上がっている。
翻した真紅の別珍マントは、サイドに毛皮、裾にはタッセルが施された逸品だ。
ふぁさっと金色の巻髪をなびかせて猟兵たちと対峙したこの怪人は、腰に帯刀していた剣を鞘から抜くと、
「富士山の美しさに誘われて山を訪れる登山客をおフランス怪人に変える――私の崇高な計画に水を差す輩には、ご退場願おうか」
と、剣の鋒を猟兵へと向けた。
フリル・インレアン
ふえ?富士山とフランスって何か関係があるのでしょうか?
「ふ」しか合ってないような?
ふえ?それを言ったら私も仲間って……。
そういえばそうでした!
まさか、記憶の無い私の本当の正体はご当地怪人さんだったなんて、それは嫌です。
ふえ?惜しいってアヒルさん何か知っているんですか?
教えてくださいよ、アヒルさん。
って、そんなことをしている場合じゃありませんでした。
あれ?あの幽霊さんは、武器が無いならお菓子とケーキで戦えばいいじゃないとか言ってそうなマリーアントワネットさんですね。
食べ物で戦うのはいけないと思います。
それは私も同じって、お菓子の魔法はちゃんと食べてるからいいんです。
今回は麩菓子に挑戦しました。
『おフランスベルサイユ怪人』に大剣の鋒を向けられたフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、驚くわけでも慄くわけでもなく、困ったような表情で「ふえ?」と小首を傾げた。
「…… 富士山とフランスって何か関係があるのでしょうか? 「ふ」しか合ってないような?」
うーんと悩むフリルの頭の上、アヒルさんはぴょんと跳ねてまた何かを訴えている。
「ふえ? それを言ったら私も仲間って……。 そういえばそうでした!」
富士山の『ふ』。
フランスの『ふ』。
そして、フリルの『ふ』。
三者の共通点は、『ふ』。
ということは、フリルの正体は、まさか……。
行き着いた思考の先にあった『答え』にフリルはさぁーっと青ざめるような想いだった。
アリス適合者であるフリルの故郷が、ここ、サイキックハーツだということまではわかった。だが、自分が一体誰なのかという本当に知りたい部分にまだ手が届いていないのだ。
そんな中で突如として浮かんできた、フリル・ご当地怪人疑惑である。……これは青ざめるって!
「……まさか、記憶の無い私の本当の正体はご当地怪人さんだったなんて、……それは嫌です」
涙目でふるふると小刻みに頭を振るフリル。
だが、アヒルさんは首を振るなり翼をパタパタと羽ばたかせた。
「ふえ? 『惜しい』ってアヒルさん何か知っているんですか? 教えてくださいよ、アヒルさん」
アヒルさんに真相を問いただすべく、フリルは自分の帽子の上のアヒルさんに手を伸ばすが、アヒルさんはぴょんと跳ねてフリルの手を逃れてしまった。
そんな最中。
ゴホン。と大きな咳払いが響く。おフランスベルサイユ怪人の咳払いだ。
「って、そんなことをしている場合じゃありませんでした」
今はこのブレイズゲートのボスとの戦闘中。
フリルがオズおずとおフランスベルサイユ怪人の方を見上げると、怖い顔(?)をした彼の傍に現れていたのは、装飾過多のドレスに細い胴体、大きな帽子に結い上げ髪が麗しいベルサイユ宮殿の主・マリー・アントワネット――の霊。
「あれ? あの幽霊さんは、武器が無いならお菓子とケーキで戦えばいいじゃないとか言ってそうなマリーアントワネットさんですね」
フリルが目を丸くして伺えば、マリー・アントワネットの霊は、「パンがなければパンもケーキも出してあげるわよ」と言わんばかりに、自身の周りにたくさんのパンやケーキを召喚しフリルめがけて一斉に投げつけてきた。
「ふええっ」
パンやケーキを頑張って避けるフリル。パンは当たれば痛いだけだけどケーキは色々汚れそうだ。
「ふええ、食べ物で戦うのはいけないと思います。ってアヒルさん。それは私も同じって? わたしのお菓子の魔法はちゃんと食べてるからいいんです」
と、パンやケーキの攻撃を避けながらフリルがユーベルコード『時を盗むお菓子の魔法』で出したのは、焦げ目が香ばしい麩菓子。
外はパリパリ、中ふんわりの美味しいやつだ。
「ふええ、今回は麩菓子に挑戦しました。怪人さんもよろしければ」
パンやケーキを避けながらもようやく辿り着いたフリル。おフランスベルサイユ怪人の目前に麩菓子を差し出すと、彼は訝しげに麩菓子を見下ろして、ハッと鼻で笑った。
「麩菓子? また地味な……。なぜ日本の菓子はこうも地味なのかね……っ」
おフランスベルサイユ怪人は、フリルが振る舞った菓子を『楽しまなかった』。故に彼の行動速度がぐんと遅くなったのだ。
「な……な、ん、だ。き、ゅ、う、に、か、ら、だ、が、お、も、く……」
「ふえ、アヒルさん、今です」
実はアヒルさんは、拷問器具。フリルが命じるとアヒルさんは、おフランスベルサイユ怪人のカーリーな頭に乗っかるなり、その鋭い嘴でドンドコ突っつき始めたのだ。
「い……イ、タ、タ、タ、! な、ん、だ、こ、れ、は、!!」
アヒルさんの攻撃に悶え苦しむおフランスベルサイユ怪人。
そんな彼を見上げながら、フリルは「ふええ」と声を上げた。
「おフランスベルサイユ怪人さんには、ぜひ麩菓子を楽しんでもらいたかったです」
麩菓子は、フランスと富士山とフリルと共通点、『ふ』を持っているのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
何だと……!?
では、富士山ペナント怪人たちは、貴様に利用されていたというのか!
彼らの富士山愛は本物だった、其れを踏み台にして
おフランス色に染めてしまおうとなど、断じて許せん
貴様には断頭台がお似合いだ、疾く灼滅してくれる!
……しまった、美への意識と言えば、富士山への美意識が抜けていない
此の侭では召喚された鏡から放たれるおフランス光線を喰らってしまう
駄目で元々よ、ダッシュからのスライディングで光線を躱したい
多少の被弾はやむを得まい、堪えて勢いのままジャンプだ
其処から【理を超える秒針】発動
其のご立派な脳天に踵落としを喰らわせてやろうではないか
万が一外しても、攻撃力を上げた俺の連撃は止まらぬぞ
先ほどまで『富士山ペナント怪人』に、美しい|青春《アオハル》をとくと披露し。同時に奴らの純粋な富士山愛にも触れて、敵ながら少なからずも感銘を受けた後だと言うのに。
「富士山の美しさに誘われて山を訪れる登山客をおフランス戦闘員に変える」
とどのつまり、富士山ペナント怪人すら騙くらかして、富士山を愛し山頂を目指す登山客を『おフランス戦闘員』にする。
目前の『おフランスベルサイユ怪人』は悪びれもせず、そう言い放ったのだ。
それはニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)にとって聞き捨てならず、到底許すことのできない言動であった。
「…… 何だと……!? ――では、富士山ペナント怪人たちは、貴様に利用されていたというのか!」
「……常に弱いものが利用される。それが自然の摂理。――貴殿もそう思わんかね?」
ふっと嘲笑いが漏れるなりニコは苛々と舌打ちをし、
「貴様……っ!」
と、『おフランスベルサイユ怪人』を睨みつけた。
「……彼らの富士山愛は本物だった。其れを踏み台にして『おフランス色』に染めてしまおうとなど、断じて許せん……!」
ぐっと握り込みわなわなと震わせていた両の拳を意図して開くと、現れたのは時計の長針と短針をそれぞれ模した大小二振りのルーンソード『時刻みの双剣』。
ニコは風切り音を立てながら長針を模した剣の鋒を『おフランスベルサイユ怪人』に向けるなり、眼鏡のレンズ越しに標的をしっかりと捉える。
「貴様には断頭台がお似合いだ、疾く灼滅してくれる!」
「――面白い。やれるものならば、やってみたまえ!」
ニコの宣言を受けた『おフランスベルサイユ怪人』は、ふぁさっとマントを翻すと、
「貴殿の美への意識はいかほどかな?」
と挑発するなり、ニコの目前に現れてしまったのは、立派なレリーフで飾られた鏡。
これはニコに対し『美への意識の感情を与える事』に成功した証。
「っ……しまった」
美への意識と言えば。先ほどまでの富士山への美意識が抜けていなかった。
伴侶と富士登山をする想像の中で、険しい山道を一歩一歩苦労しながら踏み締めて山頂を目指すことの美しさに少なからず想いを馳せてしまった。
そして、東の空から昇りくるご来光に目を細め、眼下に広がる景色にも美しいと思うのだろうと感じてしまった。
それに、富士山ペナント怪人の美しい富士山愛にも感銘を受けたばかりだ。
此の侭では召喚された鏡から放たれるおフランス光線を喰らってしまう……!
「っ駄目で元々よ」
無意識の舌打ちの後、プレハブの簡素な床をヒールの高いブーツの足で蹴って駆け出したニコ。だが鏡には目を離すことなく、放たれたおフランス光線は咄嗟のステップやスライディング躱していく。
だが流石はご当地幹部の攻撃。
光線が当たった箇所からブワッと薔薇の花びらが舞い、なんか煌びやかになる。
これが命中したら、自分の服もロココ調になるのか? などと考える余裕もなくニコの足元に光線が及び、体が反射的に前へ高く飛んだ。
この勢いなら、いけるかもしれない。
鏡を飛び越えれば、『おフランスベルサイユ』のカールした頭が見えてきた。
「――其のご立派な脳天に踵落としを喰らわせてやろうではないか!」
ニコは利き足を高く上げる。するとブーツのヒールがまるで時を刻む秒針――いや、秒針よりも速く、宣言通りに『おフランスベルサイユ怪人』の脳天を貫いた。
「ぐあっ!!」
激しい衝撃に、頭を手で押さえ前屈みになる『おフランスベルサイユ怪人』。
一方のニコは華麗に着地してみせると、再び目前の敵をぐっと見据えて告げた。
「……富士山ペナント怪人の富士山愛も、この世界の人々の富士山愛も、護ってみせる!」
大成功
🔵🔵🔵
御茶清水・文敬
エスパー(一般人)のバス運転手兼、清水の緑茶を愛するご当地ヒーローだ。
UCはバスや緑茶を由来とした物が多い。活性化済の物をどれでも使って構わない。
UC以外の技能を使うような技名は玉露レイ・玉露ウェイブなど玉露を冠していれば何でも大丈夫だ。効能に関わらず適当に叫ばせといて欲しい。
あとUCによっては分身も出来る。上手く活用してくれ。
そして戦隊ヒーローと化している間は一人称が「私」に変化する。
出没するのは主にご当地怪人案件、それ以外でも人数不足なサイキックハーツのシナリオに是非使って欲しい。
日常シナリオでは飲酒可能だが基本的に緑茶を嗜む。
冒険シナリオでは自由に動かしてくれ。
アドリブ・連携共に歓迎だ。
富士山は、御茶清水・文敬(清水の玉露マン・f43819)のお膝元である清水の三保の松原とともに世界遺産にも登録されている。
その絶景故、この浜辺から望む富士山は浮世絵や絵画の題材となり、数多の歌人がこの絶景を美しいと歌ってきた。
「そんな富士山を食い物にして、登山客を『おフランス戦闘員』にしてしまう怪人がブレイズゲートを作り出してしまったとあっては、『清水の緑茶を愛するご当地ヒーロー』として、見過ごすわけにはいかない」
『おフランスベルサイユ怪人』と対峙する文敬は、バス運転手業務終わりの事務所内でこの事件を察知したのだろう、制服に制帽姿でここまでやってきた。
一方、パーマネントヘアを謎の風によって靡かせている『おフランスベルサイユ怪人』は、自身の傍に、かの有名な悲劇の王妃の霊を召喚させながら、告げる。
「美しい富士山が、美しいフランス文化と融合できるのだ。ご当地を愛するのであれば弁えたまえ。日本茶など紅茶に変えてくれる!」
穏やかな口調のその前では、王妃の亡霊が次々とパンやケーキを文敬に向かって投げつけていた。
「くっ……二人がかりで卑怯だぞ! しかし、これに当たってしまったら、本当にお茶が紅茶に変えられてしまうかもしれない……!」
もちろんそんなことはないのだが、その意気で攻撃を交わしていかなければあっという間に劣勢に立たされてしまうだろう。
だが、いつまでも逃げ続けているわけにもいかない。
覚悟を決めた文敬は革靴を鳴らして立ち止まると、緑茶の如き澄んだ緑糸の瞳で『おフランスベルサイユ怪人』を見据えた。
「――俺は一人じゃない!」
手のひらを前に突き出し叫べば、放たれるのは『超・玉露ビーム』。しかも分身化により『戦隊化』し、あっという間に2対5の優勢に立ってしまった。
爽やかで澄んだ緑色のビームは王妃の霊を一気に消し去り、『おフランスベルサイユ怪人』をも包み込んでしまう。
「な、なんだこの、ビームからほのかに香るコクのある甘い香りはッ!!」
ビームを受けて後ろへよろめいた『おフランスベルサイユ』怪人をキリッと見据える文敬――いや、清水の玉露マンは颯爽と告げる。
「これが私が愛する玉露であり、富士山が育むお茶の葉の力だ。そんな富士山を食い物にするなど、断じて許さない! 覚悟するんだな『おフランスベルサイユ怪人』!」
成功
🔵🔵🔴
クレア・フォースフェンサー
この世界にも富士山やベルサイユ宮殿があるのか
わしらの世界に似た世界がこうも存在するとなると何らかの意図を感ぜずにはいられぬな
閑話休題
富士山を訪れた登山客をおフランス怪人に変える――か
フランスにも様々な観光地があるが、なるほどおぬしはそれらよりも富士山の方が優れたエスパーが集まると思っているわけじゃな
加えて、それらフランス愛を持たぬ者達を洗脳し、自らの配下を水増ししようとは――おぬしのご当地愛も高が知れるのう
我が剣をもって、一度骸の海に還してやろう
そこでしっかり自分を見つめ直すのじゃな
光剣を構えて歩み寄る
敵の動きを見切り、一の太刀をもって敵の西洋剣を斬り払い、踏み込んで二の太刀を浴びせようぞ
「この世界にも富士山やベルサイユ宮殿があるのか。わしらの世界に似た世界がこうも存在するとなると、何らかの意図を感ぜずにはいられぬな」
美しい金髪を靡かせながら顎に手を置き金色の瞳を細めるクレア・フォースフェンサー(認識番号・f09175)は、UDCアースの出身。
シルバーレイン然り、サイキックハーツにも自分の世界に聳える山があり栄える国がある。
それが何を意図するかは、まだ手探ることは叶わないが。
閑話休題と呟いたクレアが目線を上げれば、目の前には貴族風のオブリビオン。すでに何戦かやり合ってかなりお疲れ気味だ。
だが闘志はまだ衰えていない。
「私はこの美しい山に惹かれた心美しいエスパーを選別して洗脳し、『おフランス戦闘員』として迎え入れたいだけだ!」
尊大な態度でそう告げた『おフランスベルサイユ怪人』は、自身の得物である西洋剣を掲げながら、クレア目掛けて駆けてくる。
あの剣に斬られたら、厄介なことになる。
直感で察したクレアも、自身の得物であるフォースセイバーを構え。
「富士山を訪れた登山客を『おフランス戦闘員』に変える――か。……わしの世界のフランスと、この世界のフランスが同じものであるならば。フランスにも様々な観光地があるが」
論じて、ふっと口角を上げた。
「……なるほど。おぬしはそれらよりも富士山の方が優れたエスパーが集まると思っているわけじゃな」
「なっ」
駆けながら動揺を見せる『おフランスベルサイユ怪人』。
「加えて、それらフランス愛を持たぬ者達を洗脳し、自らの配下を水増ししようとは――おぬしのご当地愛も高が知れるのう」
相手が動揺を見せた一瞬の隙をクレアは見逃さない。突進してくる宮殿頭が掲げた西洋剣を一の太刀を以って斬り払い、さらにもう一歩踏み込むや二の太刀で奴の特徴的な頭をかち割ってやる。
光剣の太刀筋は金色に輝き、一刀両断に斬られた『おフランスベルサイユ怪人』は身体をわなわなと震えさせる。
「わ、私の崇高な野望が……こんなところで……!」
「崇高な野望とは笑わせてくれる。おぬしのような不埒な輩は、一度骸の海に還してやろう。そこでしっかり自分を見つめ直すのじゃな」
そう告げたクレアが咄嗟に後ろへと飛べば、このブレイズゲートの主たる『おフランスベルサイユ』怪人は、ご当地怪人らしく爆破四散する。
戦いが終わったことを猟兵たちが認識する頃にはこのブレイズゲートも消滅し、後に残るはなんの変哲もないただのプレハブ小屋。
だが猟兵たちは、その手でしっかりと守ったのだ。
富士山を美しいと感じ、その頂を目指す多くの人々の夢や希望を。
大成功
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