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惨劇は井の頭公園で

#サイキックハーツ #7/11(木)8:30までプレイング受付中です。

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#サイキックハーツ
#7/11(木)8:30までプレイング受付中です。


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●井の頭公園の演奏会
 それはささやかな|演奏会《ライブ》だった。
 井の頭公園の一角で、集まった若者たちが楽器を手に、音楽を奏でようとしているのだ。
 その中に、ひとりの少女がいた。
 何の変哲もない、目立たない、どこにでもいそうな少女である。
 それこそが異質だが、それに気づく者はいない。|そのように振る舞っている《・・・・・・・・・・・・》のだ。如何にエスパーであろうが見破れるはずもない。
 そしてバンドメンバーは、ことごとく彼女に脅され、手駒にされているのだ。
 徐々に集まってきた観客を見て、|彼女《・・》は言った。
「ああ……それなりにいて良かった」
 瞬間、惨劇の幕が開けた。
 正体をあらわした少女――魔弾の射手は、楽器ケースに偽装したガンケースから短機関銃を取り出して引き金を引く。恐ろしいほどの早業だった。
 肉が爆ぜ、血が飛沫き、弾丸が荒れ狂う。
 公園はたちまち阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

●グリモアベースにて
「……サイキックハーツの世界でまた事件が起こる。よかったら力を貸して」
 銚子塚・静歌(サイレントキラー・f43965)は言うと、移動式ホワイトボードに貼り付けた地図やら写真やらを目で示した。
「……事件現場は、井の頭公園。まだ事件は起きてない。うまくいけば周りの人も救けられるかも」
 静歌が言うには、ライブをするバンドメンバーにダークネスが紛れ込んでいるのだという。名は、魔弾の射手。
「……彼女は上手く一般人の中に紛れ込んでる。観客が集まってきた時、魔弾の射手は武器を取り出して一般人を射殺してしまう」
 そうなる前に介入し、魔弾の射手を倒したいところだが、殺る満々で待ち構えていたら流石に|魔弾の射手《かのじょ》も気づいてしまうだろう。バンドメンバーは脅迫されている。恐怖による洗脳だ。彼らも異常を察すれば魔弾の射手にそれを伝えるだろう。
「……だからまず公園に先回りして、ぶらぶらしていて。井の頭公園……昔から灼滅者がよく足を運んでたみたいね」
 言うと静歌は、事件が起こるおおよその時間を伝えた。
 それまでは、遊んでいられるということだ。
 ボートに乗ったり、小物を売る露天を散策したりと、それなりに出来ることはあるだろう。
「……魔弾の射手が武器を取り出す直前に介入して、戦いを挑んだりすれば、そのまま戦闘に突入できるはず」
 その際、周囲の人々に避難を促してあげるといいかも知れない。
「……魔弾の射手を倒したら、バンドメンバーも恐怖から解放される。そのあとは、公園のまわり……吉祥寺とかの街めぐりをしてみたらどう……?」
 カフェめぐりとかインスタ映えする激辛ラーメン店などに足を運んでみてもいいかも知れない。
「……そんな感じ。よろしく」
 言うと静歌はグリモアを起動させた。


相馬燈
 サイハと言えば井の頭公園と勝手に思っている相馬燈です。
 井の頭公園でライブしようとしているバンド(演奏許可は得ているらしい)に、ダークネス『魔弾の射手』が潜んでいます。これを撃破するシナリオとなります。
 その他にも日常パートがあります。
 今回の危険度は戦術級(危険度★)となります。

●第一章
 魔弾の射手が姿をあらわすまでのあいだ、公園内を巡るのはいかがでしょう。
 ボートに乗ったり、手作りアート作品を扱う露店を見て回ったりできます。
 他にも公園で出来ることを色々。
 尚、井の頭自然文化園は範囲外となります(前にもどこかで言ったなコレ……)。

 ライブ(という名の惨劇)が始まる時間はおおよそわかっていますので、それまでの間は園内の散策を楽しめるでしょう。
 魔弾の射手が武器を取り出す前に介入して、戦いを挑むなどすれば、そのまま戦闘に突入できるはずです。

●第二章
 正体をあらわした魔弾の射手と戦う章になります。
 魔弾の射手は猟兵の介入があればそちらを優先して攻撃しますが、下手に立ち回ると周囲の人々に被害が出るかもしれませんので、少しばかりご注意ください。

●第三章
 公園周辺の街巡りをしたりできます。カフェとか激辛ラーメン屋とか……街にあるものなら大抵いけそうです。が、公序良俗はお守りください。

 それでは、お目に留まりましたらよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『いつかの痕跡を|擦《 なぞ 》る』

POW   :    歩いて、触れて、全力で思う

SPD   :    見て、話し合い、感じるままに想う

WIZ   :    振り返り、調べ、静かに憶う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 変わるものもあれば、変わらないものもある。
 快晴に恵まれた井の頭公園には、この日、大勢の人々が足を運んでいた。如何に超常の力を手に入れようと、公園で憩うという人々の精神性は変わらないようだ。
 広々とした井の頭池を囲むように、新緑に包まれた遊歩道はあり、ボート乗り場もそれなりに盛況だ。池には何艘かのアヒルボートが浮かんでいる。
 マーケットエリアでは手作りのアクセサリーを売る露天もあり、そちらも大いに賑わっていた。
 これからこの地で惨劇が起こるなど、殆どの者は思いもしない。
 猟兵たちだけが、それを知っているのだ。
緋薙・冬香
井の頭公園か……よく武蔵坂学園のマラソン大会で来たわね
なんで着ぐるみ着ていたのかは今もって謎なんだけど
何考えていたのかしらあの頃の私……
まぁともあれ
のんびり散歩でもしましょ

違う世界の井の頭公園も同じ雰囲気なのに
この世界だけ特別に感じるのはやっぱり青春を過ごした世界だからかしら?
まぁこの前まで忘れていたんだけど
思い出したのが良いのか悪いのかはさておき
自分のルーツに戻れたのは良い事としましょうか

こういう時はペットのわんことか
戦友とかがいてくれると嬉しかったりするんだけど
そこまでは高望みかしらね?
彼女は今頃、何をしているのか……また会いに行けたら嬉しいわね
不義理は私の方なんだけど、ね?(微苦笑)



 月日は巡り、世の中は大きく動いた。
 人も、その営為も、社会構造もまた、かつてとは様変わりしている。
 けれど変わらないものもある。
 緑豊かな井の頭公園の風景が、そのひとつだ。
「井の頭公園か……よく武蔵坂学園のマラソン大会で来たわね」
 遊歩道を歩きつつ、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は広がる景色を見て回っていた。見慣れた風景が刺激するのは思い出したという過去の記憶だ。桐香、いや冬香は腕を組むようにして、暫し立ち止まった。
「……なんで着ぐるみ着ていたのかは今もって謎なんだけど、何考えていたのかしらあの頃の私……」
 マラソン大会といえば、武蔵坂学園の恒例行事である。10月末に開催され、ハロウィンの時期とも重なっていたので……もしや仮装も兼ねてとか、そういう理由だろうか。
「違う世界の井の頭公園も同じ雰囲気なのに、この世界だけ特別に感じるのは――」
 視線を移せば、井の頭池に浮かぶアヒルボートが見えた。
 これもまた変わらぬ光景だ。
「やっぱり青春を過ごした世界だからかしら?」
 馴染みがあり、思い入れのある場所であるからこそ、特別感がある。人の心というのは不思議なものだ。その記憶というものも最近まで忘れていたことなのだけど。
 ――思い出したのが良いのか悪いのかはさておき。自分のルーツに戻れたのは良い事としましょうか。
 スラリと長い足を動かして歩き始める冬香。その横を、リードに繋がれた犬が飼い主を引っ張って駆けていった。ペンブロークのコーギーだ。
 ――こういう時はペットのわんことか、戦友とかがいてくれると嬉しかったりするんだけど。そこまでは高望みかしらね?
「|彼女《・・》は今頃、何をしているのか……また会いに行けたら嬉しいわね」
 思い浮かべたのはかつての戦友だろうか。それとも――。
 木々の天蓋、その先に広がる青空を見上げながら、冬香は眩しげに微苦笑を浮かべた。
「不義理は私の方なんだけど、ね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
ここが新たなる世界、サイキックハーツか…
私の世界で当て嵌めれば全人類がケルベロスに覚醒したような世界のようだが、超人的な力に目覚めたとしても牙無き者に変わりなし
ならば世界は違えどケルベロスの一人として、井の頭公園の雑踏を練り歩きながら見極めよう

装備一式は『ケルベロスコート』を羽織ることで隠す
…初夏に暑苦しいコート姿とはと思うが、そこは世界の補正でなんとやら
公園のイベント情報が記載されている掲示板によれば、件のライブまでまだ時間がある
ぶらりと青空マルシェを巡って…おや?
同じ屋根の下で寝食を共にする見慣れた顔が居たな
普段なら礼儀よく挨拶するが、まるで私を知らないような素振りだったな…尾行してみるか



「ここが新たなる世界、サイキックハーツか……」
 多くの苦しみが克服され、悲劇が最小限度に抑えられた世界。
 楽しげに行き交う人々や子どもたちの笑顔を見て、まさに平穏という言葉を体現したようだと、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は思う。
「私の世界で当て嵌めれば、全人類がケルベロスに覚醒した世界とでも言おうか」
 エスパー。超能力者。それは言わば死を遠ざけた定命者たちだ。
 そうした者たちが天寿を全うできるとすれば、それは限りなく理想に近しい在り方と言えるのかも知れない。
 けれど。
 今やそのような理想も砂上の楼閣だ。
「超人的な力に目覚めたとしても牙無き者に変わりなし」
 オブリビオンの侵食の前に、猟兵ならざる者たちは無力。守らなければ、一方的に蹂躙されるだけだ。灼滅者たちが掴み取った平穏は、いとも容易く覆ることとなる。さながら積み木を崩すかのように。
「まだ時はあるな」
 井の頭池をぐるりと囲む遊歩道を歩きながら、ジークリットは呟いた。剣や鎧などの装備一式は、纏うケルベロスコートに隠されている。かつてこの世界にはバベルの鎖なる概念もあったが、ジークリットが纏うのはそれとはまた異なる、日常に非日常を溶け込ませるツールである。
 ――初夏に暑苦しいコート姿とは、とも思うが。
 猟兵はどんな外見でも人々に違和感を与えないということもあり、注目を集めてはいないようだ。
「件のライブまでまだ時間があるか」
 園内のイベント掲示板には、タイムスケジュールの書かれた紙も貼り付けられていた。それによれば、まだ事件発生までそれなりに時がある。ジークリットは露店の並ぶエリアに足を運ぶことにした。
「ほう、なかなかの活況だな」
 青空の下のマルシェ――アートマーケッツと銘打たれたその区域には、様々な店が連なっていた。絵画を売る店があり、似顔絵を描く絵師があり、キラキラしたアクセサリーや、この時期ならではの風鈴を売る露店もあった。
「……おや? 見慣れた顔が居たな」
 露店を見て回りながら興味深げに歩いていると、ふと見知った顔を見つけた。挨拶をしようとしたが、向こうは彼女を知らないというように背を向けて行ってしまう。
「尾行してみるか」
 言って、ジークリットは歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々木・ムツミ
【アドリブOK・母(佐々木・シロミ・f43934)と参加】
フンフフンフフン♪
きょーうは楽しい殺戮の日~♪
エスパーも殺せないし、ダークネスにも人権があるもんね。
その分過去のダークネスって好きに殺せるのがとっても嬉しいよねぇ♪

それで、ママはどうして付いてきたの?
…なるほどね。観客として見に来たってことね。
それじゃあママにばーっちり見せてあげちゃうもんね!
どれだけ私がつよーくなったかをね!

…もちろんママも一緒でいいよ。
ママと一緒に戦えたら…それはとっても素敵なことだと思わない?

その時は…一緒に抹殺しちゃお!


佐々木・シロミ
【アドリブOK・娘(佐々木・ムツミ・f43858)と参加】
お父さんはお仕事が忙しいらしいから娘と一緒に行くことにするわ。
井の頭公園はとてもきれいなところね…
灼滅者の人と一緒に見に行けるというのもなんだか面白いわ。

…なんで付いてきたかって?(ムツミから聞かれる)
実をいうとね…私は娘の晴れ舞台を見たいとずっと思ってたのよ。

ムツミは私の力と、お父さんの技をずっと教わってきたんだからね。
お母さんに見せてちょうだい。あなたの|灼滅 《殺し》を!

…でも、私もアンブレイカブルだから戦ってるところを見てたら我慢できなくなるかも。
その時はごめんネ!(両手を合わせて謝る。その手から凄まじい音が聞こえた



「井の頭公園はとてもきれいなところね……」
 本格的な夏も近づく緑豊かな井の頭公園に、佐々木・シロミ(ダークネス「アンブレイカブル」の女房・f43934)は足を運んでいた。ライブ会場近くのベンチに一緒に座っているのは、娘である佐々木・ムツミ(ナチュラルボーンダークネス・f43858)だ。
「灼滅者の人と一緒というのもなんだか面白いわ」
 武蔵坂学園には井の頭キャンバスなんていうものもあるくらい、灼滅者にとって井の頭公園は身近な憩いの場であった。それは今でも変わらないらしい。

(「お父さんはお仕事が忙しいらしいから――」)
 常識というモノからすれば異質な関係の伴侶を思いつつ、シロミは隣に座るムツミを微笑むように細めた目で見遣る。楽しげな鼻歌とともに、両足をパタパタさせている娘を。
「フンフフンフフン♪ きょーうは楽しい殺戮の日~♪」
 陽気な調子とは裏腹に、ムツミの紡ぐ言葉はなかなかに過激で物騒なものである。まるで地を這う虫を楽しんで踏み潰す子どものよう。
「エスパーも殺せないし、ダークネスにも人権があるもんね」
 母であるシロミもまた|そう《・・》 なのだが、人権というものがムツミにとってどれほど意味があるのか――それはさておき、
「その分過去のダークネスって好きに殺せるのがとっても嬉しいよねぇ♪」
 そしてそれは今を生きる人々を救ける行為にもなる。
 大手を振って殺し合えるのだから楽しくないわけがない。
「それで、ママはどうして付いてきたの?」
 日差しにキラキラと照り映える井の頭池を眺めつつ、ムツミは訊いた。
「……なんでかって?」
 笑みを含むシロミもまた、広々とした池を見つめていた。
「実をいうとね……私は娘の晴れ舞台を見たいとずっと思ってたのよ」
 当然ながらそれは尋常一様のパフォーマンスなどではない。
 殺し合い。命の取り合い。それが、それこそが|娘《ムツミ》の晴れの舞台なのだ。
「……なるほどね。観客として見に来たってことね」
「ムツミは私の力と、お父さんの技をずっと教わってきたんだからね」
 しみじみというシロミが、隣合うムツミに糸目を向ける。
「お母さんに見せてちょうだい。あなたの灼滅を!」
 無邪気に笑みを返して、ムツミはぐっと両手を握りしめた。
「それじゃあママにばーっちり見せてあげちゃうもんね! どれだけ私がつよーくなったかをね!」
 力はただ持っているだけでは意味がない。存分に振るい、制御しなければ。それはこの世界の灼滅者にとっても、大切なことと言えるだろう。
 灼滅者とダークネス。コインの裏表のように、両者は表裏一体である。
「……でも、私もアンブレイカブルだから……戦ってるところを見てたら我慢できなくなるかも。その時はごめんネ!」
 シロミが手を合わせる。

 瞬間、悲鳴が響いた。

 立ち上がり、弾かれるように駆け出す二人。
「……もちろんママも一緒でいいよ」
 走りながら言うムツミのきらきらした瞳には邪気がない。純粋なまでの殺戮衝動。それが今にも解き放たれようとしているのだ。
「ママと一緒に戦えたら…それはとっても素敵なことだと思わない?」
 だから、ムツミはとびきりの笑顔を見せ――そして言った。
「一緒に抹殺しちゃお!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【WIZ】
……なんだろうな、オレ、この世界を知ってる気がする……

つっても、今はこの依頼に集中しねぇとな

時間になるまでライブ会場の近くでスタンバイするか

……暇だな、Cronosでこの世界のこと少し勉強してよう…

…まさか、銀誓館学園とエンドブレイカー達以上に死が遠い世界を実現したって灼滅者たち、どれだけ完全勝利をもぎ取ったんだよ…

……ん?今一瞬、見覚えのある名前が…って、くそ、そろそろか
今は救えるものだけに集中しよう…!



 さえずる鳥の声。
 楽しげな人々のさんざめき。
 木々の天蓋から差す木漏れ日が、土を、そして道を照らしている。
 はしゃぐ子どもたちが駆け回り、ベンチで休む老人がいて――緑豊かな公園には紛れもない平穏があった。
「……なんだろうな、オレ、この世界を知ってる気がする……」
 井の頭公園通りを歩いて園内に足を踏み入れたアトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)は、ぽつりと呟いていた。
 過去の記憶が無い。
 それがアトシュの現状である。
 それなのに、この世界の光景は、彼の失われたはずの記憶に訴えかけるものがある。まるで|幻肢痛《ファントムペイン》のように。失われた記憶が、今も|そこに在る《・・・・・》と訴えるかのように――。
 ふるふると、アトシュは顔を振った。
「つっても、今はこの依頼に集中しねぇとな」
 この平穏を、黒々とした闇に塗り潰させるわけには行かない。
「さて」
 アトシュは愛用するゴーグル――Cronosを装着・起動させた。そして視界に表示された園内の地図をさっと確認する。
 ライブ会場は所定の場所のみで許されているらしく、場所を探す手間が要らないのは好都合だった。
 アートマーケットを通り、ライブ会場にほど近いところにあるベンチにアトシュは腰を下ろす。
「……暇だな、Cronosでこの世界のこと少し勉強してよう……」
 Cronosが表示できるのは、地図情報だけではない。今や当たり前に手に入れることができるようになったこの世界の歴史――支配、抵抗、勝利、変革の歴史が、四角く切り取られたウインドウに幾つも浮かぶ。
「……まさか、銀誓館学園とエンドブレイカー達以上に死が遠い世界を実現したって灼滅者たち、どれだけ完全勝利をもぎ取ったんだよ……」
 他と比べてみても、全人類が|超人類《エスパー》 となったこの世界はかなり特異的だ。
「……ん? 今一瞬、見覚えのある名前が……」
 視界に映る数ある情報の中から、無意識的に、アトシュはそれを拾っていた。けれど、それについて考えたりする時間はもうない。
 気付けば、犯行時刻が迫っている。
「って、くそ、そろそろか。今は救えるものだけに集中しよう……!」
 悲鳴。
 そしてアトシュは人々の前に飛び出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『魔弾の射手』

POW   :    殺戮の魔弾
【あらゆる概念を死に至らしめる魔弾 】を宿した【|短機関銃《サブマシンガン》】で、1秒間に100回攻撃する。強力だが1回ごとに命中率が下がる。
SPD   :    影業使い
【|短機関銃《サブマシンガン》の射撃 】を浴びせつつ対象に接近し、【影業による刺突や斬撃】で攻撃する。同時に、敵の攻撃は【残った影業】でパリイ可能になる。
WIZ   :    イドの二重身
【影業】で触れた対象と同じ戦闘能力を持ち、対象にだけ見える【ドッペルゲンガー】を召喚し、1分間対象を襲わせる。

イラスト:もりさわともひろ

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠秋月・信子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●戦いの幕開け
 井の頭公園の一角に悲鳴が響き渡る。
 それは黒髪の少女が楽器ケースから取り出した|短機関銃《サブマシンガン》を構えたからであり、猟兵たちが、まるで盾になるかのように少女と観客たちの間に割って入ったからでもあった。
「邪魔が入ったっていうの……?」
 信じがたいという面持ちで少女――魔弾の射手は呟いていた。彼女が驚愕するほど、猟兵たちは、ごく自然に人々の中に紛れ込んでいたのである。そしてここぞと姿をあらわした。
「最悪……」
 この状況では一般人を狙うことはできない。そう彼女は即断する。
 下手に動けばそれだけで隙になる。てあれば……今は眼前の障害を排除する他無い。
「いいわ、皆殺しにしてあげる」
 魔弾を駆使する恐るべき射手が、その銃口を猟兵たちに向けた。
アトシュ・スカーレット
【SPD】
だーれが邪魔だってんだ
ここの人らにとって邪魔なのはテメェだ

【武器に呪詛を纏う/呪詛/禁呪/鎧無視攻撃/斬撃波】をメインに戦うか

短機関銃の弾丸を【見切り】して、斬撃波で纏めて呪い尽くすわ
生憎、それ自体は素で出来るしな

指定UCで影業の攻撃を観測したら【気配察知/結界術/自動防御】で防御するぜ
勿論、周りの人たちに被害が出ないように可能な限り対処して行くぞ

アドリブ、共闘大歓迎



「だーれが邪魔だってんだ。ここの人らにとって邪魔なのはテメェだ」
 |短機関銃《サブマシンガン》を構えた魔弾の射手――その青い瞳に映ったのはアトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)だった。
 平穏を破り人々を虐殺しようというオブリビオンの凶行を、許すわけには行かない。救えるものは救う。絶望は塗り替える。それがアトシュの一つの行動理念だ。
「まさか察知していたとでも言うの?」
 絶妙なタイミングで割って入られたことに魔弾の射手は当惑した。だがそれも束の間、羽虫でも払うかのような素早さでアトシュに銃口を向ける。
「死んで」
 短く告げて、少女は引き金を引いた。全力を発揮すれば秒間100発以上を吐き出すことさえできるその短機関銃は、そこいらの武器とはわけが違う。鋼鉄さえも穿つであろう銃弾がアトシュに殺到しその体を蜂の巣にする――。
「遅いんだよ!」
 ――が、それは彼が超常の存在でなければの話だ。そう、弾丸の猛射を|見切って躱す《・・・・・・》なんて芸当、常人に出来るはずがない。
 Fragarach――二刀一対の双剣型偽神兵器、その剣閃が呪詛を帯びた斬撃波を生じさせる。
 たちまち腐食した弾丸が速度を失ってパラパラと地に落ちた。
 ――周りの人たちに被害が出るのは避けてぇからな。
 しかしそれで|射手《かのじょ》の攻撃が終わったわけではない。ここまでで尚、牽制なのだ。
「体勢を崩した……幾ら素早くても、これで!」
 接近する魔弾の射手。
 そしてアトシュの周囲を取り巻くように展開する影、影、影――!
 それが影業と呼ばれる武器であることを知っている猟兵はもはや少なくないだろう。自在に形を変える影は槍となり剣となり、アトシュに斬りかかる。
 が、
「来るのは分かってたぜ!」
 結界術による自動防御。
 影の槍、影の剣が結界を破るも、既にそこにアトシュはいない。
「嘘……!」
 当たらない。
 これだけ包囲しても、一度たりとて致命的な傷を与えられない!

 |希望への軌跡《シュトラーサ・ホッフヌング》。

 未来視の魔術で10秒先の攻撃を予測するユーベルコードが、アトシュの武器であり、守りであった。
「今度はこっちの番だ!」
「させない!」
 影業から飛び出していた影の剣、そして槍が守りの態勢に入る。
 けれどFragarach――二刀一対の双剣型偽神兵器を手にしたアトシュが、斬、斬、斬! と黒き影の剣や槍を斬り飛ばしていく!
 そして――偽神兵器、連結。
「喰らいな!」
 たちまち大剣と化したFragarachが、魔弾の射手を袈裟に斬り裂いた!

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々木・ムツミ
【アドリブOK・母(佐々木・シロミ・f43934)と参加】
ふっふふーん♪もしかして六六六人衆かな?
うちのパパも装備にはこだわるタイプなんだよね。鉄砲とか。
だから、そっちの動きもよーく見させてもらうわね。

マシンガンなら命中精度はいまいちかしらね~♪
ならこっちは空中機動で弾丸の動きを撹乱させていくよ~
そして至近距離になったらまっすぐ武器で受け止めつつ
つばめがえしで一気にぶった切ってあげる!

…って、ママはあたしがピンチに見えたの?
もう、結局戦いたくてしょうがないんじゃない!

…でもそれってとっても素敵なことよね!


佐々木・シロミ
【アドリブOK・娘(佐々木・ムツミ・f43858)と参加】
あれって…ダークネスなのかしらね?
…なんか雰囲気が違う気がするけれど…
まぁとにかく…叩き潰せばいいわけよね。

…まずは娘の活躍をじっくり観察させてもらうわよ。
思った通り、あの子は素質があるわ。
さすが灼滅者…そしてわたしたちの娘。
でももしもムツミがちょっと追い込まれてそうかな?と思ったら
さっさと割り込んで私も参加させてもらうわ。

敵の攻撃を認識阻害で狙いを狂わせて…
気合の全力ビンタよ!

なーんて、結局我慢できなくなっちゃった。ごめんなさい。

でも素敵よ。私も久しぶりに…全力で戦いたくなっちゃった!



 短機関銃が火を噴いた。
 特徴的な連続音とともに|発火炎《マズルフラッシュ》が瞬き、無数の弾丸がバラ撒かれる。
 オブリビオンの扱う|主武装《メインウェポン》だけあって、フルオート射撃で瞬時に弾が尽きるなんてことはないらしい。猟兵たちを牽制すべく、魔弾の射手は小刻みに連射を続ける。
「ふっふふーん♪ もしかして六六六人衆かな?」
 襲い来る銃弾を避けながら、佐々木・ムツミ(ナチュラルボーンダークネス・f43858)は快よげな笑みを浮かべていた。
「うちのパパも装備にはこだわるタイプなんだよね。鉄砲とか」
「何を言って……」
「だから、そっちの動きもよーく見させてもらうわね」
「あれって……ダークネスなのかしらね? ……なんか雰囲気が違う気がするけれど……」
 一方、やや離れた位置から娘が戦う様子を観察しているのは、佐々木・シロミ(ダークネス「アンブレイカブル」の女房・f43934)だ。
 いま、この世界には、猟兵の真の姿がオブリビオンとして出現するようになっている。元となった猟兵とは全くの別ものだが、ダークネスという概念が彼らの出現に関与しているのだとも言われている。
「まぁとにかく……叩き潰せばいいわけよね」
 眼前で繰り広げられる魔弾の射手と|娘《ムツミ》との、熾烈な戦闘。
 その光景を研いだ刃のように細めた目で観ながら、シロミは無意識に拳を握りしめていた。

「マシンガンなら命中精度はいまいちかしらね~♪」
 弾丸をバラ撒くことで命中率を担保するのがサブマシンガンだ。それ故に対処法はある。ムツミは舞い踊るような空中機動を見せながらそう思う。
 その動きは人体の構造、その限界に近い――否、超越しているようにさえ見える。魔猫のような靭やかさで身を捻り、弾丸を避ける。
「……素早い……!」
 魔弾の射手とて棒立ちでいるわけではない。
 地を蹴って疾駆し、走りながら引き金を引く。
 殺到する弾丸。
「そんなんじゃ当たらないよ♪」
 ベンチの背に手をつき、跳び箱のように跳んでムツミはそれを躱した。その過去位置を弾丸が通り過ぎ、井の頭池に、小さな水柱が幾つも上がる。
 秒間に100発。
 あのMP5が秒間13発ほどであるとも言うから、如何に度外れた発射速度を有しているかが分かる。
 その弾丸はしかし、未だにムツミを捉えてはいない。
 あらゆる概念を死に至らしめる魔弾だ。
 当たってはいけないことを、本能でもムツミは理解していた。

「思った通り、あの子は素質があるわ。さすが灼滅者……そしてわたしたちの娘」
 その身のこなしは、確かに自らが教え込んだものが活かされている。だがそれだけではない。命のやり取りをする中で、ムツミはセンスの片鱗を見せ始めていた。灼滅者としての、そして相手の生命を奪う殺人鬼としての才能の片鱗を。
「甘く見ないで!」
 短機関銃を操る魔弾の射手も、ここに来てムツミの動きに順応しようとしていた。変則的な動きを見せるムツミだが、まだ間合いを詰めることができていない。何しろ獲物である|大太刀《ものほしざお》と銃との間には圧倒的なリーチ差がある。
 魔弾が木の幹を穿ち、枯死させていく。
 ハラハラと舞い落ちる木の葉。
 その中をムツミは駆け跳ぶ。
 そして魔弾の射手が射線に入ってきた彼女にサブマシンガンを構えた。
「捉えた!」
「させない」
 刹那、魔弾の射手の耳に、声と足音が届いた。
「……!?」
 優れた反射神経で、魔弾の射手は咄嗟に回避する。
 が、戦闘に割り込んだアンブレイカブル――シロミはそれを読んでいたかのように、更に踏み込んで腕を振りかぶっていた!
「そんな……!」
 避けたはずなのに。
 そう言いたげに少女が目を見開く。
「避けきれないでしょう?」
 歩法による認識の阻害。
 魔弾の射手はそれにより惑わされていたのだ。
「えーい!」
 体勢を崩した瞬間を狙って繰り出した母の全力ビンタが、魔弾の射手の肩口に直撃して独楽のように回転させながら吹き飛ばした!
「チッ!」
 ザザザと地を抉るようにして衝撃を殺す魔弾の射手。
「ごめんなさい、結局我慢できなくなっちゃった」
「……って、ママはあたしがピンチに見えたの?」
 シロミはただ笑ってみせた。
 母らしいと言えばらしい、様々な意味を込めて。
「――素敵よ。私も久しぶりに……全力で戦いたくなっちゃった!」
「もう、結局戦いたくてしょうがないんじゃない!」
 でも、とムツミは口の端をいっそう吊り上げる。
「それってとっても素敵なことよね!」
 射撃が止んだ瞬間を見計らい、一直線に距離を詰めるムツミ。
 手にした大太刀――即ち物干し竿を目にも止まらぬ速さで振りあげれば、接近を防ごうと放たれた銃弾がすべて弾かれる。大太刀は同時に、魔弾の射手を斬り上げてもいた。
 まさかそんな芸当ができるなんて。
 ここまでの立ち回りは様子見に過ぎなかったのか――。
「ぐっ……」
 魔弾の射手が斬られて体勢を崩す。
 これで終わり?
 まさかそんな。
 |そんなことあるわけがない《・・・・・・・・・・・・》。
「これがあたし流の殺人術よ!」
 目を見開いた魔弾の射手めがけ、大太刀が跳ね返ってきた。
 それこそは、物干し竿と呼ばれる刀を振るった剣豪の代名詞。
 即ち――燕返し。
 いやムツミが自らの工夫を加えた、我流『燕返し』である。
 自らは銃弾を防ぎつつ、最も避けがたい方向から斬撃を加える攻防の手。それは天性の才に、培った殺人術を加えた妙技だ。
「あぐ、ッ……!」
 渾身の振り下ろしが、魔弾の射手の体を深々と斬り裂いた!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋薙・冬香
おでましね
闇堕ち姿というべきか、オブリビオンというべきか
過去でもないのにオブリビオン、不思議な感じね?
この辺りに謎があったりするのかしら?

ともあれ

戦いの合図は昔ながらに告げましょう
『|Erzahlen Sie Schrei?《悲鳴を聞かせて?》』
ここからは死をもたらす時間よ?

あらゆる概念を死に至らしめるとしても当たらなければ
『ベシュトラーフング』を広範囲に展開
結界のように広げて弾丸を斬り捨てる
というかこの場合、盾にした『ベシュトラーフング』も
触れたら死んじゃうのかしらね?
それでも私が前に進む時間は

一瞬の隙を突いての早業
背後に回り込んで『ナール』での一突き

「冬の香りがもたらすのは貴女の終焉よ?」



「おでましね。闇堕ち姿というべきか、オブリビオンというべきか」
 短機関銃を構えた魔弾の射手――その眼前に、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は立った。銃口を向けられても怯まないのは、それだけの場数を踏んでいるから。
 迂闊には仕掛けられない――魔弾の射手もそう判断したか、引き金に手をかけながらジリと革靴で地を抉った。達人同士が向き合って死合うように。

 ――過去でもないのにオブリビオン、不思議な感じね? この辺りに謎があったりするのかしら?
 日を浴びて冬香のメガネのレンズがキラと輝いた。その奥にある瞳は、針のような視線を放ち、敵を窺う。いや、この少女がオブリビオンとして眼前に立っている理屈を、冬香は見抜こうとしていた。
 オブリビオンは失われた過去の具現だ。
 然しながらいま目の前にしている敵の様相は、今まで視てきた存在とは異なる。
「邪魔するなら撃ち殺すだけよ」
「そう。当然のことだけど、それなら容赦はしないわ」
 言うと冬香は息を吸い、戦いの合図となる言葉を告げた。

『|Erzahlen Sie Schrei《貴女の悲鳴を聞かせて》?』

 スレイヤーカードというモノがある。
 それは封印されし力や武装を解き放つ為のツールであり、鍵となる合言葉は灼滅者にとって戦いの嚆矢そのもの。それを彼女は口にしたのだ。
 そうして、僅かに首を傾げるようにしながら冬香は微笑んだ。
「ここからは死をもたらす時間よ?」

「なら貴女が死んで……!」
 アサルトライフルとは異なり、取り回しが良く小回りが効くのが|短機関銃《サブマシンガン》の利点である。携行弾数は少なく命中精度が高くないのが欠点ではあるが、魔弾の射手は巧みにリコイルを制御しつつ冬香の人体急所に弾丸を送り込もうとする。
「悪いけど、そう簡単にはね」
 刹那、十の指が躍った。まるで虚空を撫でるように。
 |『私刑』《ベシュトラーフング》の名を持つカーボン製の黒糸が網となり銃弾を食い止め――弾け飛ぶ。
「っと、これは当たりたくない威力ね? 後で修繕できればいいんだけど」
 もちろん、その場に留まっている冬香ではない。
 稼ぐのは一瞬。ほんの一瞬だけ。
 それだけあれば攻撃に転じることはできる……!
「消えた……!?」
「反応がいいわね。でも、残念。少し遅いわよ」
「……!」
 息を呑んだ魔弾の射手の足元で、影業を起動した。まるで自動防御機構のような反応速度だ。しかしその影から刺突や斬撃が繰り出される前に、冬香は少女の懐に飛び込んでいた。

「冬の香りがもたらすのは貴女の終焉よ?」

 耳元で囁くように冬香は告げて。
 |『愚者』《ナール》の名を持つ鈍色に輝く鎧通しが、少女の闇を――その奥底にある罪そのものを狙って貫いた!

大成功 🔵​🔵​🔵​

華奈月・里恵
人の笑顔を掻き消して、音楽をこんな使い方をして…
その「邪魔」って言葉、そっくりそのままお返しなのっ!

ロケットハンマーの噴射を活かした【空中機動】で近距離を保ちながら戦闘するの。
射撃はジグザグに飛びながら避けて、もし当たったとしても体はダークネスに【肉体変異】しているから、多少は平気かな。

近くで戦うから影業も避けられないかも、その時はとにかく手に持った武器で【吹き飛ばし】て蹴散らすの。
それでもコピーされたならUC発動、力量差で圧倒してそのままオブリビオンに肉薄
上空に【吹き飛ばし】て、【空中機動】で追いかけて地面に叩き付けてトドメを狙うよ。

「この世界に絶望を持ってくる人達は…こうなのッ!」



「本当に、邪魔……!」
 心底苛立たしそうに魔弾の射手は歯噛みした。まだ戦える。けれど、観衆を殺戮してサイキックエナジーを回収するという目論見は失敗に終わりつつあり、業腹なことに、未だ誰一人として魔弾に斃れた者はいない。
 その事実に|魔弾の射手《かのじょ》は唇を噛む。
 そして今、眼前に、またひとりの猟兵が立ち塞がった。
 華奈月・里恵(空を追って猫は歌いながら・f43983)――人造灼滅者の少女である。
「人の笑顔を掻き消して、音楽をこんな使い方をして……」
 構えるは飛行特化型のロケットハンマー。
 金色の双眸は爛々と闘志に輝いている。
「その『邪魔』って言葉、そっくりそのままお返しなのっ!」
 ハンマーから凄まじい噴射炎を放って。
 里恵は飛んだ。
 Far awayの名を冠するロケットハンマーは小柄な体を軽々と宙に運び、里恵はさながら砲弾のような勢いで魔弾の射手へとカッ飛んでいく!
「速い――!」
 もちろん、魔弾の射手も素早く迎撃せんとした。銃を構え、狙いを定め、引き金を引く。その間、一秒にも満たない。そして秒間に100発という常軌を逸した銃弾の嵐が里恵に襲いかかる!
「簡単に当たったりなんてしないのっ!」
 弾丸の軌跡を読み、ロケットハンマーの角度を変えて再噴射させる里恵。高く飛び上がって初撃を回避すれば、魔弾の射手が見越し射撃するように引き金を引く。
「逃げても無駄よ!」
「……それでもっ!」
 里恵は空中で身を捻った。直撃する筈だった弾丸は、殲術黒衣を切り裂いていく。僅かな痛み。それが魔弾に抉られた痛みであることを感覚して里恵は僅かに顔をしかめる。
 ――ダークネスに肉体変異しているから、多少は平気。
 常人の肉体であれば傷口からたちまち壊死していくほどの、死をもたらす魔弾である。それをものともせず、怯みもせず、里恵は猛然と距離を詰める!
「近づかないで!」
 だがここに来て魔弾の射手はまだ迎撃手段を持っていた。影業である。少女の足元に広がったタール状の影が、剣となり槍となり、また里恵の武器を模したハンマーとなり迎え撃ったのだ。
「蹴散らしたいけれど……!」
 決め手とはならない。
 即断した里恵は魔弾の射手の頭上を通り過ぎながら、生命維持用の薬物を自らに打った。
 シリンジ内の大量の薬液が里恵の体に押し流されていく。
 明らかな|過剰摂取《オーバードーズ》。
 その金色の瞳が怪しく輝いた。
 急旋回。
「まさか……!」
「そのまさかなの!」
 闇堕ちだ。
 自分の中のダークネスに肉体を明け渡す行為と云われるそれは、里恵に爆発的な戦闘力の向上をもたらした。一瞬おきに削られる寿命。けれど構いはしない。死をもたらす弾丸がその身をえぐろうとも、里恵の突進は止まらない!
 一振りで影業を吹き飛ばすロケットハンマー。
「この世界に絶望を持ってくる人達は……」
「が、ぁっ……!」
 振り上げが魔弾の射手を冗談のように宙に浮かせて、里恵はロケット噴射で急上昇。
「……こうなのッ!」
 そして回転を伴うハンマーの一撃が、オブリビオンの少女の体を地面へと叩きつけた!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
●SPD

なるほど、な
姿だけかと思ったが、振るう力も私が知っている|猟兵《知り合い》と同じという訳か
だが、あいつとは決定的に違う面がある
その力をどう使うか…だ
あいつは|超人《ケルベロス》である私にも遠く及ばぬ只の人間だが、猟兵としての力を他者の為に振るう意思があった
だが、お前は違う
力に溺れ、他者の命を踏み躙り、殺戮を愉しむだけの|存在《オブリビオン》だ
これがダークネスという物か私は分からんが、斬るべきモノに値するのは確かか

銃撃は脱いだケルベロスコートで視界を遮る事で逃れ、一気に距離を詰める
鞘より抜刀する剣は斬霊刀
ケルベロスの速さを前にして早急に照準を合わせるはおろか銃口も向け直せず、魔弾のイメージも満足に行かないだろうが…同じ能力を扱うのであれば影に注意だ
領域に踏み入った事で自動防衛機能のように働き伸びた影の槍や剣を斬霊刀で切り払う

何を驚いている?
言ったろう…お前とよく似た者を知っていると
再び間合いを詰めれば今度は影を壁上にして盾にし、解除と共に銃撃を与えるだろう
ならば、絶空斬で斬るのみだ



「なるほど、な」
 平穏な井の頭公園を、魔弾の射手は瞬く間に戦場へと変えてしまった。
 特徴的な銃声を響かせ、無駄のない身のこなしで猟兵に対抗する黒髪の少女。その戦い振りを金色の瞳に映しながら、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は頷いた。
「姿だけかと思ったが、振るう力も私が知っている猟兵と同じという訳か」
 サイキックハーツの世界では、如何なる理由によるものか『猟兵の真の姿』がオブリビオンとして姿を現す。ダークネスというこの世界特有の『邪悪な別人格』が関係していると云われているが――、
「|あいつ《・・・》とは決定的に違う面がある。それはその力をどう使うか……だ」
 他の猟兵たちが激戦を繰り広げている間、ジークリットはじっと敵の戦い方を観察していたのだ。僅かな間に過ぎないが、それで得心できた。
 あの天来の|銃使い《ガンスリンガー》との違いを。
 眼前の|魔弾の射手《オブリビオン》も銃器の扱いや、動き方は卓越している。さながら暴力の化身と言ってもいいほどに。だからこそ、違うのだ。

「邪魔するならまとめて撃ち殺すだけよ」
 猟兵たちがサブマシンガンの猛射に距離を取る。
 自然、ジークリットと魔弾の射手は向き合う形となった。

「お前とよく似た者を知っている。が、似て非なるもの、とはこのことか。あいつは超人である私にも遠く及ばぬ只の人間だが、猟兵としての力を他者の為に振るう意思があった」
「何を言って……」
 言うまでもないことだが、ジークリットの言う|彼女《フリーシューター》と眼前の敵は、全くの別存在である。しかし魔弾の射手は確かに動揺をきたしていた。ジークリットの眼差しに、そして紡ぐ言葉に、それほどの意志と確信が込められていたからだ。
「だが、お前は違う。力に溺れ、他者の命を踏み躙り、殺戮を愉しむだけの存在だ」
「だからなに。力を好きに使って何が悪いっていうの」
 敵の言辞にジークリットはフンと鼻を鳴らした。
「これがダークネスという物か私は分からんが、斬るべきモノに値するのは確かか」
 魔弾の射手は最早、言葉ではなく銃弾を以て返した。
 短機関銃が発火炎とともに無数の弾丸を吐き出す。殺到する銃弾。それは直撃すれば猟兵ですら穿つ猛射である。
 それよりもなお早く。射手の挙動を見切っていたジークリットはケルベロスコートを脱ぎ捨てていた。魔法の上衣が音を立てて翻る。
「目隠しのつもり?」
 バラ撒かれた弾丸がコートを穿つ。
 舌打ちした魔弾の射手は距離を詰めるか下がるかを一瞬考え、反射的にバックステップした。果たして、いやその予期を更に上回る速度で、ジークリットが疾駆する!
 地を滑るように身を低くして、一陣の風のように間合いを詰めるジークリット。抜刀するは斬霊刀。浄化の霊力を帯びて敵を打ち祓う、美麗にして究極の刀である!
「速い……!」
 ――やはり。
 ジークリットは心の内で頷いていた。
 ――ケルベロスの速さを前にして、早急に照準を合わせるはおろか銃口も向け直せず。魔弾のイメージも満足に行かないか……。
 そして|知っている《・・・・・》からこそ、ジークリットには次の手が予期できた。敵がその力をどう使うかも。
「そんな攻撃、止めて見せる!」
「やはりそう来るか」
 果たして魔弾の射手の足下――そこに在る影から槍や剣が飛び出した。銃火器の利点はその射程の長さにあり、如何に取り回しの良い短機関銃であろうと近距離では刃物の方が早い。だからこその影業であり、それは間合いを詰められた際に発動する自動防御機能でもあるのだろう。
「これしきの攻撃で私を止められると思ったか!」

 斬霊刀、一閃!

 眩い光が弧を描き上げ、防ごうと飛び出した槍や剣がただの一撃で吹き飛ばされる!
「嘘……!」
「何を驚いている? 言ったろう……お前とよく似た者を知っていると」
 もし完全な初見であったらこうも上手くは行かなかったかも知れない。出方を知っているからこその芸当でもあったろう。
 魔弾の射手が――彼女と瓜二つの顔が驚愕を呈する。
 その手をかざされるや、影が盾のように展開した。
 遮蔽物に身を隠して射撃態勢を整え、敵の急所に弾丸を送り込む。それも彼女の戦法だろう。リコイルを制御し、命中精度の低い短機関銃の威力を最大限に引き出す技を魔弾の射手は持っている。
 だがその挙動さえもジークリットは読んでいた。
 だからこその絶空斬だ。
「もはや斬るのみ」
 闇を祓う浄化の一閃は、黒々とした影の壁をも容易く断って。
 その奥で銃を構える魔弾の射手を遂に斬り裂いた!
「あ……」
 少女の手からサブマシンガンが離れる。
「やはりあいつとは違うな。自分のためだけに力を振るったお前の、これが末路だ」
 斬霊刀をブンと振るい、納刀するジークリット。
 背中から芝生の上に倒れた魔弾の射手は、そのまま黒い粒子となって消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ぶらり再発見』

POW   :    知る人ぞ知るおいしいお店を訪れる

SPD   :    なんだか妙にSNS映えしそうなスポットを訪れる

WIZ   :    珍しい雑貨を扱うお店を訪れる

イラスト:みささぎ かなめ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●井の頭公園近辺をぶらりと
 エスパーが扱う微弱なESP。
 その中には『周囲のちょっとおいしいお店や面白スポットを見つけやすくなる』ものも存在するという。救われた観衆や地元民に話を聞けば、猟兵たちは容易く地元の有名スポットについての情報を得られる、というわけだ。
 地元の声っていうのもなかなかどうして侮れないものである。

 或る人は言う。
「そうね、ナノナノショップなんてどう? 可愛いナノナノちゃんたちのぬいぐるみとか、マグカップとか、ナノナノに関係した色々なグッズが売ってるのよ。ふわふわハートクッションもおすすめ」

 また或る人は言う。
「俺のイチオシは激辛ラーメン屋だ。でも気をつけろ、奴ら俺たちが死なないのをいいことに辛さの限度を超えてきやがるからな。ジョロキア、ハバネロ、キャロライナ・リーパー……あれはスープという名のマグマだ」
 辛さも通常攻撃判定らしい。

 この他にも、猟兵たちは、様々な店やおもしろスポットの情報を得ることができるだろう。いっそ公園で缶コーヒー片手にゆったりするなんてのも、アリかもしれない。
 井の頭公園周辺を舞台とした、穴場探訪の始まりである。

※というわけで第三章は日常パートです。上記は一例なので、これというスポットがあればご指定の上、ご参加ください。井の頭公園周辺であれば、思い出の場所とかもアリでしょう。(いつものことですが、未成年の飲酒喫煙など公序良俗に反した内容は不採用になりますのでご注意ください)。
東・御星
恋人のディアナ・ランディール(f41918)と一緒に参加。
せっかくナノナノショップの情報を掴んだし、
何だかんだで可愛いものに弱いディアナと行かない手はない!

…というわけでやってきました、ナノナノショップ。
しばらく放ってしまったお詫びに好きなグッズを好きなだけ買っていいよ?と宣言し。うん、お財布は大丈夫、うん。
私達は猟兵。そもそも十分なまでの手当ては出てるはずだし。
そもそもこの世界の通貨は日本円……とはいえ、歴史はちょっと違うけど、事情を理解しない武蔵坂や役所でもないはず!
換金はしっかり済ませて…さてさてディアナは何を選ぶかな?
そして沢山のナノナノグッズにご満悦な彼女に笑みを浮かべるのでした。


ディアナ・ランディール
恋人の東・御星(f41665)と一緒に参加
「ナノナノショップですか?素敵ですね御星様行ってみましょう」
隣にいる恋人に伝えると、御星もうなずくため、二人でショップへ向かって歩き出す。

店内は聞いた通り、ナノナノのかわいらしいグッズやぬいぐるみでいっぱいだ。
可愛いものが好きなディアナは目を輝かせる
好きなグッズを好きなだけ買ってもいい。と言われ、おなじ買うならば、おそろいの物がいいか、それともぬいぐるみがいいかと悩みに悩んだ。
沢山のナノナノグッズの中から、ぬいぐるみと、二つおそろいのキーホルダーを持って御星の傍に戻っていって、さて、おそろいの物を見て、彼女はどんな反応を返すだろう。楽しみだ。



「ナノナノショップですか? 素敵ですね。御星様、行ってみましょう」
 井の頭公園の|一般人女性《エスパー》から聞いたのは耳寄りな情報だった。
 シルバーレインの世界ではモーラットがそうだが、この世界でナノナノはある種マスコットキャラ的な位置づけにある。そのグッズを取り揃えているとなれば、可愛いもの好きなディアナ・ランディール(鋼糸使いのドール/ビーストマスター・f41918)にとって、なんとも魅力的だ。
 窺うようなディアナの隣で、東・御星(紅塵の魔女//縁死、そして縁糸・f41665)は一も二もなく頷いた。
 ――せっかくナノナノショップの情報を掴んだし、何だかんだで可愛いものに弱いディアナと行かない手はない!
 御星もまたそんなふうに思っていたのだ。

 井の頭公園から出て、暫く一緒に歩いていくと、その店はあった。
 ナノナノのオブジェが店先で気持ちよさそうに手を広げている。自動ドアには、どうぞお入りくださいと言いたげに出迎えるナノナノの姿が描かれていて、二人が前に立つと左右にスライドした。
「「わあ」」
 店内の意匠に御星とディアナがほとんど同時に声を上げる。
 そこに広がるのはファンシーな世界。
 白とピンクのナノナノカラーを基調にした小綺麗な店だった。
 平台や壁棚には、もふもふな縫い包みを始めとしたナノナノグッズが所狭しと並び、天井からも、ふわふわ浮かぶようなナノナノの人形が吊り下がっていた。
「マグカップにコースター、トートバッグにキーホルダーもあるんだ」
 早速、御星が手近な棚を見て回る。
 変わり種としては、バッカルコーングミなんてのもあった。ソーダ味である。
「素敵なお店ですね! こんなに色々なグッズがあるなんて」
 両手を合わせて紫色の瞳をきらきら輝かせるディアナ。
「好きなグッズを好きなだけ買っていいよ?」
 しばらく放ってしまったお詫びに――楽しげな恋人の横顔を見て、そう御星は付け加えた。
「ありがとうございます、御星様」
 ディアナは、ふわふわハートクッションの手触りを軽く触れて確かめて。
 ナノナノのマグカップに目を留める。
 どれも手元に置いておきたくなるような可愛いらしいグッズばかりだ。

「うん、お財布は大丈夫、うん」
 大丈夫なはず。多分きっと。
 目移りしているディアナを横目に、御星はちょっとだけドキドキしていた。
「どうしましたか、御星様」
「ううん、なんでもない」
 ふるふると首を振る御星。
 ――私達は猟兵。そもそも十分なまでの手当ては出てるから。
 様々な世界を飛び回る猟兵は、どの世界でも概ね特別待遇を受けることができけれど……世界によっては当然、物の価値も通貨も違う。
 ――でもこの世界の通貨は日本円……歴史はちょっと違うけど。事情を理解しない武蔵坂や役所でもないはず!
 という推測はまあ正しかった。
 シルバーレイン世界にゆかりのある御星にとって、この|世界《サイキックハーツ》での買い物は日常の一幕と呼んでいいくらいには見慣れたものだ。
 そんなわけで事前に色々と算段をつけて、換金はしっかり済ませていた御星であった。ドキドキしつつさっきから値札も確認していたのである。そのあたりのエスコートにもぬかりはない。

 店内はなかなかに広い。
 雰囲気としては、テーマパークのお土産コーナーなんかが近いだろう。
 グッズが陳列された棚を二人で見て回りつつ、ディアナは思案する。
 ――同じ買うならばおそろいのものがいいでしょうか。やっぱりぬいぐるみは外せないですよね。
 見渡す限りのナノナノグッズは、やはりとても魅力的だ。デザイン缶入りのナノナノキャンディにクッキー、ボールペン、そして大きめのぬいぐるみなどなど。これだけの中から選ぶのは大変だけれど、悩むのもまた買い物の醍醐味というもの。
「……さてさて何を選ぶかな?」
 恋人の後ろ姿を見ていた御星は、ぱたぱたと戻ってきたディアナが抱えているものに目を向けた。
「こちらと、こちらなど如何でしょう御星様」
 それは、ディアナが一番気に入った、ふわもふなナノナノ縫い包み。そして、おそろいのキーホルダーだった。
 今度はディアナの方が少しだけドキドキする番だ。どんな反応を返してくれるだろう。
「可愛い。ディアナとおそろいね」
 嬉しそうに微笑む御星に、ディアナも微笑を返した。
 ナノナノが描かれた自動ドアに見送られて二人が店を後にする。
 おそろいのグッズを手に、睦まじく笑顔の花を咲かせて、二人は共に道を歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【SPD】
えーっと、喫茶店とかでのんびりしたいんだけど…
え、いい感じの場所がある?
んじゃ、そこ行くか

へー、いい感じの喫茶店だな
あ、コーヒー下さい(※実は:慣れる訓練中)

……さてと、さっきの見覚えのある名前っと…
……世界中に世界の真実を知らせまくった灼滅者の中に、オレと同名の灼滅者……?
……「英雄と呼ばれた学生の1人」ってのは、『父さん』の条件に当てはまるんだが…顔…は、うわ、似てるな…似てるらしいからな、オレと『父さん』…
…ちょっと年齢が合わないとか、色々気になる点はあるが、しゃーねぇ、学園に出向いて情報貰うか…

あ、コーヒーどうも…うっ、に、苦ぁ…!!(砂糖とミルク大量投入開始)



 猟兵の活躍で、井の頭公園に平穏が取り戻された。
 人々は、心からの感謝を猟兵たちに送り、なにかお礼ができないかと考える者も多かった。護られた彼らにとって、それはごく自然な思いの発露だったのだ。
「えーっと、喫茶店とかでのんびりしたいんだけど……」
 ならばと、アトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)はそう聞いてみた。顔を見合わせたその場の人々は、頷き、
「だったら近くにいい店があるよ」
「席も広いからゆっくり出来るんじゃないかしら」
 紹介されたのは、井の頭公園から徒歩五分のところにある個人経営の喫茶店だ。
「いい感じだな。んじゃ、そこ行くか」
 そんなわけで、アトシュは紹介されたカフェに足を運ぶことにしたのだった。

「へー、いい感じの|喫茶店《みせ》だな」
 古びた木目調の壁にテーブル、それに主張しすぎない観葉植物。天井のシーリングファンが空気を撹拌して、店内の空調を心地よく保っている。
 窓際のテーブル席に案内されたアトシュは、ぐるりと店内を見渡して、それから窓の外に広がる景色に目をやった。二階である。
 これから公園に向かうのだろうか、歩道には、親子連れなどの姿も見える。
 平穏は守られた。そう実感できる光景だった。
「ご来店いただきありがとうございます。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
 店主らしいエプロン姿の老紳士が声をかけてきた。
「あ、コーヒー下さい――」
 これも慣れる為に必要な訓練の一環だ。
 自然に伝えられたはず。そうアトシュは思う。
「かしこまりました」
 その証拠に、白髭の老紳士は笑顔を見せて奥へと歩いていった。

 アトシュはCronosを装着して情報を検索する。それは先程の続きだった。
「……さてと、さっきの見覚えのある名前っと……」
 履歴が残っているから、探すのは容易だった。
 更に深く調べてみる。
 やはり……。
 アトシュがゴーグルに覆われた目を軽く見開いた。
「……世界中に世界の真実を知らせまくった灼滅者の中に、オレと同名の灼滅者……?」
 間違いない。
 写真とより詳しいデータが視界に浮かぶ。
「……『英雄と呼ばれた学生の1人』ってのは、『父さん』の条件に当てはまるんだが……顔……は、うわ、似てるな……似てるらしいからな、オレと『父さん』……」
 失くした記憶と『本当の家族』――それらを探して数多の世界を巡ってきた。今回掴んだ情報はと言えば……まだ|欠片《ピース》が足りていないとアトシュは思う。それでも。
「……ちょっと年齢が合わないとか、色々気になる点はあるが」
「コーヒーでございます」
「あ、どうも」
 声にゴーグルをずらし、会釈して。アトシュは去っていく店主の後ろ姿を見送った。
 空調の効いた店内だから、湯気の立つコーヒーはちょうど良い。
 カップの|把手《みみ》に指をかけ、口元に持っていく。
「うっ、に、苦ぁ……!!」
 古風な個人経営の店で出されるコーヒーって、だいたい苦いものなのだ。
 それが好きな者もいるが、アトシュは思わず口を押さえて悶絶し、テーブルの上にあった砂糖とミルクを大量投入した。それでようやく飲めるようになり、ふうと一息。
「学園に出向いて情報貰うか……」
 日差しに照らされた街路を見下ろしながら、更なら手がかりを求めるべく、アトシュは考えを巡らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々木・シロミ
【アドリブOK・娘(佐々木・ムツミ・f43858)と参加】
やれやれ、終わっちゃったわねー。
どうしようかしら…もうこうなったら娘とひと勝負…

…ってそれはだめよね。
それじゃあムツミの行きたいところに好きに行ってちょうだいよ。
なるほど…激辛ラーメンがおすすめなのね。
それじゃあ私は挑ませてもらうわよ。一番辛いものをね!!

それじゃあ激辛ラーメン…いただきますー…

ごほごほっ!!この衝撃はまるで…
アンブレイカブルの拳…或いはミツオさん(夫の名前)の殺戮技を口の中に食らったような…

…なんて素晴らしいの!これはまるで過ぎ去りしダークネス同士の戦いの縮図だわ!
こうなったらまだまだ食べないと!


佐々木・ムツミ
【アドリブOK・母(佐々木・シロミ・f43934)と参加】
あたしは別にママと戦ってもいいんだけどねー…
今はそういう時代じゃないから、大人しくお店とかに行こうよ。

というわけで、おすすめの激辛ラーメンのお店に行こうか!
あそこに行くのははじめてだけどとても美味しそうだよねー。

じゃああたしはママよりも辛さを抑えたやつを…

くぅ~っ!すごい辛い!というか痛い!
これは何なの?六六六人衆の凶器みたいじゃないの!

なんだか久しぶりにこんな強烈な刺激が味わえた気分!
すごく気に入ったわ!このお店贔屓にさせてもらおう!



「やれやれ、終わっちゃったわねー」
 平穏が戻った井の頭公園で、佐々木・シロミ(ダークネス「アンブレイカブル」の女房・f43934)は一息ついていた。
 危険度★の敵。
 なかなかの相手であったが、まだ、戦い足りない――シロミはそう思う。
 アンブレイカブルとしての高揚がまだ冷めやらないのだ。
「どうしようかしら……もうこうなったら娘とひと勝負……」
 あたりを見回して、シロミはふるふると首を振った。
「……ってそれはだめよね」
 これが|人気《ひとけ》のない夜の公園とかであったならばまだしも、とシロミは思う。如何にエスパーであろうと、猟兵の行使する力の余波を受ければ無事には済まないのだ。
「あたしは別にママと戦ってもいいんだけどねー……」
 強力なオブリビオンと干戈を交えてなお、佐々木・ムツミ(ナチュラルボーンダークネス・f43858)にもまだ余裕があった。戦いこそ、殺し合いこそが歓び――それが愛する人ならばなおのこと。
 けれど、ムツミだって分かっている。
「今はそういう時代じゃないから、大人しくお店とかに行こうよ」
「ええ、それじゃあムツミの行きたいところに好きに行ってちょうだいよ」
 ムツミは、救けられた一般人がもたらした情報を耳にしていた。
「激辛ラーメン屋があるんだって」
「なるほど……そこがおすすめなのね。それじゃあ挑ませてもらうわよ。一番辛いものをね!!」
 挑戦。その言葉はアンブレイカブルの闘争本能を刺激する。

「らっしゃっせー!!」
「お客様二名ですかーではカウンター席にどうぞー!」
「お客様二名ご来店ー!」
「「「らっしゃっせーーい!!」」」
 ……というわけで、ムツミとシロミは仲良く激辛ラーメン屋へと足を運んでいた。黒を基調とした店内には空調が効いているけれど、それでもなんだか熱気が漂っている。それはラーメン道に邁進する職人たちの気合いによるものか、はたまた世界各地から取り寄せられた殺人的香辛料のためか。
「雰囲気あるわねー」
 シロミは目を細めたまま、ムツミと隣り合って座っている。思い返せば、店の前に鎮座していたのは棍棒を地に突きつけた鬼のオブジェだった。羅刹なんてダークネス種族もあるくらい、この世界で鬼は、恐ろしくも身近な存在だ。
「ここに来るのは初めてだけど、どれも美味しそうだよねー」
 テーブルに置かれたラミネート加工されているメニューにムツミは視線を落とす。
「地獄ラーメン? これがおすすめなのね」
 相変わらず糸目でにこにこしながらシロミが言った。

 メニューを眺める二人。
 等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、阿鼻 ――という順に辛さのレベルが決まっているようだった。八熱地獄である。

「それじゃ――阿鼻をおねがいできるかしら」
 メニューを取りに来た店員がシロミに糸目を向けられ、一瞬だけごくりと生唾を飲み、固まった。最高レベルに挑む猛者がそれだけ数少ないのか、それともその迫力に気圧されたのか……。
「じゃああたしはママよりも辛さを抑えたやつを……」
 ムツミは大焦熱を選んだ。
「あ、阿鼻と大焦熱入りましたァー!」
 一瞬、店内がざわめき、
「「「あざぁーーす!!」」」
 熱い店員の声が響き渡った。
 談笑しながら待っている母子の前にやがてラーメンどんぶりが運ばれてくる。
 ……火山である。
 もやしやチャーシューなどの具材が山となり、その下に広がるのは、ボコッボコッと泡立つマグマそのもののスープであった。赤い。真っ赤だ。エスパーや猟兵でもなければ匂いを嗅いだだけで悶絶しそうである。
 それでも、食欲をそそるのは不思議だ。
「いただきまーす」
 真っ赤なスープをムツミは一口。
 あれ、意外になんともない? みたいな顔を浮かべたのも束の間、次の瞬間、爆発的な辛さが嵐のように口の中を荒れ狂う!
「くぅ~っ! すごい辛い! というか痛い!! これは何なの? 六六六人衆の凶器みたいじゃないの!」
 食レポのコツは比較・対比にある。ムツミにそこまで言わせる時点で、どれくらいの辛さかわかろうというものだ。これは間違いなく|殺しに《・・・》来ている。
「ごほごほっ!! 」
 シロミはと言えば……噎せていた。
 何しろ彼女の立ち向かっている阿鼻地獄ラーメンの辛さは、文句なしの最高ランクだ。たとえば火焔茸なんてものは触れただけで(エスパーでない)人体にダメージを与えるものだが、その粉末をたっぷり混ぜ込んだのではと疑われるような辛さ、そして熱さであった。人体の構造上、如何に猟兵とて噎せるのは道理である。
 ふるふる震え始めるシロミ。
「この衝撃はまるで、アンブレイカブルの拳……或いはミツオさんの殺戮技を口の中に食らったような……」
 その姿に、カウンターの奥の店員が呆気にとられていた。
 阿鼻地獄ラーメンを口にして、平然と喋っている、だと……!
 それでも流石のムツミもシロミも汗をかいていた。
 もはや激辛ラーメンとの|熾烈な戦《ころしあ》いである。
 でもそれって――、
「……なんて素晴らしいの! これはまるで過ぎ去りしダークネス同士の戦いの縮図だわ!」
 シロミが言えば、
「なんだか久しぶりにこんな強烈な刺激が味わえた気分!」
 ムツミにとっても、素敵な体験に違いなく。
「すごく気に入ったわ! このお店贔屓にさせてもらおう!」
 この日、大焦熱と阿鼻地獄ラーメンを制覇した母子が出たことは、この店のちょっとした伝説となったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月影・木乃葉
ぶらり再発見…そういえば当時は使った覚えないESPですね…と当時を懐かしみながらゆったりと
井の頭公園近辺と言えば個人的にはマラソン大会の記憶が…
そう、あの汗と青春の走った……
いや、逃げようとして捕まった記憶しかないですね…


まぁそんなわけで武蔵坂歴のそれなりに長いですが意外とそういう穴場スポットを知らないなというボクはこう美味しそうなグルメを探して孤独旅を…
あっ、激辛は勘弁でお願いします

平和が崩れ始めた昨今
当時はもう使わないと仕舞込んでしまった殲術道具を整備中
その間に英気を養わねばですね…



「ぶらり再発見……そういえば当時は使った覚えのないESPですね」
 井の頭公園に足を運んだ月影・木乃葉(人育ちの仁狼・f43890)は、ゆったりと歩を進めつつ往時を振り返っていた。進歩により今はサイキックとの区別もつかなくなりつつあるESPは、かつて灼滅者の事件解決を大いに手助けするものだったのだ。サウンドシャッターみたいに使い勝手の良いESPもあり、中には余り使わないものもあったけれど。
「変わったものも多い、とは言え」
 井の頭池には、アヒルボートや普通のボートが浮かんでいる。エスパーとなった人々も人間としての本質は変わらない。笑いさざめく声も、なんとなく懐旧の情を掻き立てる。
 ――井の頭公園近辺と言えば個人的にはマラソン大会の記憶が……そう、あの汗と青春の……。
 毎年、10月末に開催されたマラソン大会は、武蔵坂学園の恒例行事であった。この公園も経路であったのだけれど、
「……いや、逃げようとして捕まった記憶しかないですね……」
 マラソンが億劫だと思う生徒がいるのは武蔵坂だって変わらない。途中で抜け出して遊びに行こうという者もいたのだ。あの時は魔人生徒会が主導となって、脱走者を捕まえるなんてコトもあった。
 苦笑が零れる。
 さて、このあとは何処へ行こう――。
 武蔵坂歴のそれなりに長い木乃葉であるが、
「意外と穴場スポットは知らないんですよね……」
 というわけで、公園内で憩う人々にグルメスポットを尋ねてみることにした。孤独旅だって、自由でいいものだ。
「グルメスポットか。俺のおすすめはラーメン屋だ。地獄の――」
「あっ、激辛は勘弁でお願いします」
 しゅんとするTシャツ角刈り男。
 辛いものが苦手な木乃葉である。
「それじゃ、スイーツバイキングなんてどうかしら」
 それを見て、妙齢の女性が言った。
「古今東西の色々なスイーツが味わえるのよ。みんな絶品で、ほっぺたが落ちそうになるくらい」
 もしかすると『おいしくなあれ』みたいな料理系ESPも使われているのかも知れない。
「それは良いかも知れませんね」
 頷き、木乃葉は礼を告げて歩き出した。
 井の頭公園は平穏そのものだ。この社会全体が、穏やかだった。一年ほど前までは。
 平和はまたしても闇に――そして過去に侵食されつつある。
 当時はもう使う機会がないと仕舞い込んでいた|殲術道具《キリングツール》を、いま木乃葉は整備し始めていた。
 また、戦いが始まるのだ。
 人々を守る力が、木乃葉にはある。
「今のうちに英気を養わねばですね……」
 守るべき平穏に包まれながら、木乃葉は思い、戦いに身を投じる決意を新たにするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
これで事件解決、か
あいつのダークネスであったならば、私のダークネスもまぁ居るのかもしれない
自分によく似た者と剣を交える…胸が熱くなるな

後は帰還するだけだが、まだ時間があるな…適当にブラつくとしよう
そうだな…まずは地元民から聞いたナノナノショップに足を運ぼう

|白饅頭《あいつ》に出会った時はディバイド世界にもナノナノが居ると知って驚いたものだが、この世界にもナノナノが居ると知ってもさして驚かぬものだ
土産にひとつ何か買ってやろうと思ったのだが…意外と種類が豊富だな

あれこれ見ていると自分にも何か買いたくなってくるが…かわいい物に目がない私としても、どれが似合うか迷う
ここは店員のお薦めでも聞こうとしよう



「これで事件解決、か」
 戦いを終えて、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は一息ついた。|彼女《・・》の姿を取ったオブリビオンは最早、影も形もない。
 真の姿を縁取った別存在――。
「あいつのダークネスであったならば、私のダークネスもまぁ居るのかもしれない」
 可能性としては大いに有り得る。存在する可能性も、今後、干戈を交える可能性も。
 もし|それ《・・》と対峙したら――そう考え、ジークリットは笑みを含んだ。
「自分によく似た者と剣を交える……胸が熱くなるな」
 まさに腕が鳴るというものだ。騎士たるもの、自分自身の似姿などに負けるわけにはいかない。
「さて、後は帰還するだけだが……まだ時間があるな」
 公園に有りがちな|時計台《モニュメントクロック》を見遣ってジークリットは言うと、ゆったりと歩き出した。地元民から得た情報の中に、気になるものがあったのだ。
「ナノナノショップとやらに足を運んでみるとするか」

『ナノナノショップへようこそ! どうぞごゆっくり~♪』
 自動ドアをくぐると、ナノナノのオブジェがアニメ声を発した。
 まるでテーマパークのお土産屋といった風情の店である。
 BGMなのか、ナノナノのテーマソング(!)らしいポップな曲が流れている。
「なるほど、ここが……」
 白とピンクを基調にした店内をぐるりと見回して、ジークリットは呟いた。
 ――あいつに出会った時は、ディバイド世界にもナノナノが居ると知って驚いたものだが。
 ジークリットにとって、ナノナノは馴染みのある存在だ。いっそ縁が深いと言っても良いのかも知れない。なにしろ、新たに踏み込んだこの|世界《サイキックハーツ》にもナノナノがいたのだから。喋るナノナノにも、もう驚くことはない。
「……意外と種類が豊富だな」
 知己に一つなにか買って帰ろうと思ったジークリットだが、バリエーション豊富なグッズに少しばかり目移りしていた。
 ぬいぐるみ、ふわふわハートクッション、マグカップにコースター、そしてトートバッグ。デザイン缶入りのナノナノキャンディや、変わり種としてバッカルコーングミ(ソーダ味)なんてものまである。
 ナノナノ白饅頭は……色々な意味でやめておこうとジークリットは首を振った。
「あれこれ見ていると自分にも何か買いたくなってくるが……」
 実は可愛いものに目がないジークリットである。
 でもこう種類が多いと、どれにしたものやら……考えあぐねて、店員にお薦めを尋ねてみることにした。
「定番はやっぱりぬいぐるみですね。あとはこちらのナノナノマスコットライトも最近の売れ筋です。あっ、ナノナノのプリントTシャツなんてどうですか? きっとお似合いですよ!」
 何を思ったか、その女性店員はナノナノの描かれたプリントTシャツをハンガーラックから持ってきた。
 これを着ろというのか……。
「さ、参考にするとしよう」
 買い物を終え、ナノナノが描かれた自動ドアを抜けて店を後にするジークリット。その手には、収穫物の詰め込まれた紙袋が提がっていた。
 何を買ったのか――それを知るのはジークリット(と店員)だけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋薙・冬香
ふぅ(のび~っと伸び)
何か、戦いそのものは全然平気だけど
『この世界』だからかしら?
変に緊張してたみたい

のんびり回りましょうか
もふもふがほしいもふもふ
しっぽは至高、うふふふ
でも昔はそんなにもふもふって好きでも無かったんだけど
変われば変わるものね

ナノナノショップねえ
そういえば、クリスマスの『伝説のナノナノさま』とかいたわねぇ
あれ、どうなってるのかしら?
……というか、今思い出したけど
|今の生活《猟兵》が基準になってたから忘れてたけど!
私、この世界でもモデルというか芸能事務所に所属してたような……?
サイキックハーツ大戦の後で、既にお仕事もしてたはずよね……?
あれ……もしかして私、結構ヤバいレベルで失踪してる??
えっと……5年くらい失踪してる???

ちょ、ちょっと世間様の認識確認してみましょ!?
あー…………(なんか絶望顔
い、今ならなんとか元に戻ったりしないかしら!
きっと猟兵の加護(違和感を抱かれない)とかで!

うん、ちょっと気分を落ち着けて
事務所連絡してみましょ……
お仕事残ってるといいのだけれどー……



「ふぅ」
 戦いを終えると、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は夏空に手を掲げるようにして伸びをした。強張っていた体がほぐれていくのを感じる。
 なんだか、変に緊張していたようだ。
「戦いそのものは全然平気だけど……やっぱり|この世界《サイキックハーツ》だからかしら?」
 数多の世界を渡り歩く冬香は、元灼滅者だ。そんな彼女にとって、この世界はやはり特別なものなのだろう。
「さてと、のんびり回りましょうか。もふもふがほしいもふもふ」
 せっかく日常を取り戻したのだ。よく戦ったし、癒やされねば。
 井の頭公園をゆったりと散策する冬香に、前から来たシェルティが人懐こくまとわりついてきた。連れているのは少年である。
「うふふ、可愛いわね。撫でてみてもいい?」
 照れたような頷きが返ってくる。
 冬香がもふもふな背中を存分に撫でてやると、シェルティは舌を出しながら心地よさげに目を細めていた。尻尾もブンブン振っている。
(「しっぽは至高、うふふふ」)
 その様子を見て冬香が微笑む。
 ――昔はそんなにもふもふって好きでも無かったんだけど、変われば変わるものね。
 良きにつけ悪しきにつけ、元々持っていた好みも、経験によって変わっていくもの。
「ありがと」
 お礼を告げると、少年が顔を赤くして会釈し、シェルティとともに駆け去っていった。
「ちょっとベンチで休憩しようかしら」
 そこはちょうど、木陰になっていた。
 どうもこの近くにショップがあるらしい。行き交う人々が、ナノナノの描かれた紙袋を持っているのも、ちらほら見える。
「ナノナノショップねえ」
 見覚えのある――というのもなんだかちょっと不思議な感覚だけれど。紙袋から顔をのぞかせるナノナノの縫い包みを見て、冬香は記憶を手繰る。
「そういえば、クリスマスの『伝説のナノナノさま』とかいたわねぇ。あれ、どうなってるのかしら?」
 クリスマスイブの日、学園にどこからともなく集まってくるナノナノたち。その中に特別な『伝説のナノナノさま』がいて、そのナノナノさまに祝福を受けたカップルは愛を永遠のものに出来るとかなんとか。
 当時は都市伝説なんて|事件《・・》も頻繁にあったが、ほんのちょっとだけ似たような風情も感じさせる学園の伝説なのだった。今もそんな言い伝えが残っていたっておかしくはない。
 幾つかの思い出がよみがえり、冬香の胸に一言では言い表せない感情が去来した……のも、束の間。

「……というか、今思い出したけど」

 ガタッとベンチから立ち上がる冬香。
「今の生活が基準になってたから忘れてたけど! 私、この世界でもモデルというか芸能事務所に所属してたような……?」
 連鎖的に引っ張ってきた記憶に思わず頭を抱えてしまう。
「サイキックハーツ大戦の後で、既にお仕事もしてたはずよね……? あれ……もしかして私、結構ヤバいレベルで失踪してる??」
 なんでいままで忘れていたんだろう――ふるふる震えつつも、あれから現在までどれくらいの月日が経過しているのかをおそるおそる計算してみる。
「えっと……5年くらい、失踪してる???」
 驚愕の事実であった。
「ちょ、ちょっと世間様の認識確認してみましょ!?」
 というわけで道行く人たちに声をかけ、雑談交じりにかるーく街頭インタビューをしはじめる冬香。確かに今の今まで声をかけられてもいなかったし、注目を集めてもいないようだった。完全に一般人に溶け込んでいた冬香である。いやそれはそれで、この事件を解決することだけを考えれば結果オーライだったのかも知れないが……。
 で、どうなったかというと……。

「あー…………」
 暫くしたあと、ベンチにはがっくり肩を落とす冬香の姿があった。その手には携帯端末も握られている。色々調べたらしい。結果は推して知るべし。
「い、今ならなんとか元に戻ったりしないかしら! ほら猟兵の加護とかで!」
 ……現実はなかなか厳しそうだ。
 でも暫くそうして気分を落ち着けていると、ちょっとだけ打開策と言うか、選択肢が浮かんできた。
「ひとまず事務所に連絡してみましょうか……」
 端末を操作して連絡先を探す冬香。
「お仕事残ってるといいのだけれどー……」

 色々な現実と向き合いながらも。
 冬香は、また一歩を踏み出そうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年07月12日


挿絵イラスト