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新風は血飛沫とともに

#サイキックハーツ

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#サイキックハーツ


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●社長、かく語りき
『どんな困難があったとしても、挑戦していくことが大切なんじゃないですかね』
 スクリーンに投映された映像の中で、男がインタビュアーの質問に答えた。高価なキャスター椅子に腰かけ、やけに堂々としている。
『世の中を変える挑戦には困難が伴います。それが新しいものであるほど。ですが、斬新な発想こそが我々を良い方向へと導いてくれる。そう思いません?』
 彼がカメラの方を向く。目を覆う仮面のせいでわかりづらいが、口許には爽やかな笑みを浮かべていた。
 やがて椅子から立ち上がり、両手を広げる。迎え入れるようなポーズと優しい声色でカメラに呼びかけ、覗かせた歯がキラリと輝く。
『僕自身、様々な困難に見舞われましたが……こうして、斬新コーポレーションは再建を果たすことができました! 復活した今こそ、新たな人材を欲しているわけです!』

 インタビュー映像が暗い部屋に流れ続けていた。
 それを虚ろな表情で、スーツを着た人々が眺める。好待遇の求人に釣られてやってきた就活生や転職希望者たちだ。老若男女が集まる異例の会社説明会は、不気味なまでの沈黙に包まれている。
 画面の中の男が、ぴんっと人差し指を立てた。
『我々の仕事はただ一つ! 世の中を変えるような、斬新な殺人を提供すること!』
 爽やかなトーンから何一つ変化させずに男は続ける。
『ただ殺す時代は終わり。あなたの斬新な殺人アイデアを、我が社で披露してみませんか?』
 言葉に感銘を受けたのか、一人、また一人と席を立つ。パンフレットに記された住所に向かい、入社の手続きを済ませるためだ。
 その間にも、男の腕には奇妙な刃が巻きついていく。まるで布のように柔らかで、しかし表面には刃物の光沢を持つ特殊武装。これが自分の斬新な殺戮方法だと誇示するように、シュルシュルと動かしてみせた。
『斬新コーポレーションはあなたの殺人生活を応援します! 未経験でも問題ありません! 即日採用ですぐ殺せる……そんな我が社へのエントリー、お待ちしています!』
 再び、彼は口角を上げる。
『以上、社長の斬新・京一郎でした!』
 名乗りのシーンが流れた部屋には、もはや人は誰も残っていなかった。

●グリモアベース
 サイキックハーツ。
 全人類が寿命以外のあらゆる死を克服し、変革した地球へと突入した世界。極めて平和な社会を構築しているその世界でも、やはり事件は発生する。
「殺人企業の復活。それを食い止めてください」
 集合した猟兵に視線を巡らせ、木鳩・基(完成途上・f01075)が切り出した。
 立て続けに掲げた写真には、胡散臭い笑みを浮かべた仮面の男が写っている。
「斬新・京一郎。かつてサイキックハーツの世界に存在した企業、斬新コーポレーションの社長だったダークネスです。六六六人衆としても食わせ者で、会社として殺人集団を組織して殺人計画を次々企画、六六六人衆の古い慣習に風穴を開ける風雲児だったそうです」
 最終的には灼滅者によって倒され、斬新コーポレーションも壊滅するに至ったのだが……オブリビオンとして蘇り、復活を狙って密かに用意を整えていたようだ。
「今のところ、大きな動きはまだないですが……今も就活生や転職希望者に行方不明者が出ているらしくて。このままだと、また殺人集団が組織されて一大勢力になるかも。なので、そうなる前に叩くのが今回の作戦です」
 説明しながら、基は細かな説明を付け足していく。予知で観測した情報から事件の起きている都市を絞り込むことはできているが、京一郎が街のどこに潜んでいるかはわかっていないという。
「まずは情報収集をして、敵の本拠地を探ってください。会社に偽装して潜伏しているみたいなんですが、どこにあるかは掴めてなくて……でも、手がかりはあるんですよね」
 スマートフォンを何度かタップして、基は画面を猟兵たちに差し出した。端末の画面には、就職セミナーの告知がでかでかと表示されている。
「セミナーとか会社説明会とか、律儀にそういうの使って人を集めてるんですよ。セミナーの関係者に社員を潜ませて、自分の会社に誘導してるんです。最近流行りのエージェントサービスの利用者からも行方不明者が出てるみたいで。そこに探りを入れたら本拠地がわかるはずです」
 怪しいセミナーの情報を集め、背後関係を洗うもよし。あるいは様子のおかしい参加者に声をかけて揺さぶるもよし。自ら会場に乗り込み、参加者のふりをしたりセミナーごと破壊したりして情報を手に入れてもいい。
 そうして拠点を見つけられたら、次は拠点の強襲だ。勧誘されたエスパーたちは戦力にはならず、事件を解決できたら解放できるとの予測だが、厄介な手合いが相手側にいるそうだ。
「元斬新コーポレーションの社員が一緒に蘇ってるみたいなんですよね。名前は屑星・暁子。両手を鉄球に変化させるのが特徴なんですが、他にも斬新な殺しを求めていろんな技を使ってきます」
 斬新さを追求した結果か、複数体への分身も習得している。戦闘となれば集団で襲いかかってくるだろう。拠点強襲の際にこれは避けられない。
 さらに忘れてはならないのが、斬新・京一郎自身も危険なオブリビオンであるという点だ。
「危険度は★★、組織を統括して殺人計画を仕組むくらいですからね。持っている武装も独特で、何を仕掛けてくるか予想できません。こう……斬新なので」
 言うまいとしていたその言葉をまんまと言ってしまい、基は大きくため息をついた。首を何度か振って意識を改め、猟兵たちに目を向ける。
「人を殺すのに斬新も何もあったもんじゃないですよねー……そこんとこ、はっきりさせてあげてください。絶対に、復活を防ぎましょう!」
 ぎゅっと拳を握るとグリモアが輝く。眩しい光で包み込み、基は猟兵たちを送り出す。


堀戸珈琲
 どうも、堀戸珈琲です。
 一昔前のものをあえて発掘するのが好きです。

●最終目標・シナリオ内容
 『斬新・京一郎』を撃破し、斬新コーポレーションの復活を阻止する。

●シナリオ構成
 第1章・冒険『敵の痕跡を追え』
 第2章・集団戦『屑星・暁子』
 第3章・ボス戦『斬新・京一郎』

 第1章は就職セミナーや会社説明会が手がかりとなっています。何らかの方法で探りを入れて、敵の本拠地に関する情報を収集してください。

●プレイング受付
 第1章のみ断章はありません。
 第2章以降は断章の追加後に送信をお願いします。
 プレイング締切についてはマスターページやタグにて随時お知らせします。基本的には制限なく受け付けますが、状況によっては締切を設けます。

 それでは、みなさまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『敵の痕跡を追え』

POW   :    気合と根性で痕跡を探して歩く

SPD   :    敵が痕跡を隠蔽した跡を目敏く見つける

WIZ   :    通常の手段では視認できない、魔術的な痕跡を探す

イラスト:みささぎ かなめ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アルテミシア・ルッシュリア
斬新コーポレーション…噂には聞いていたけど、蘇るなんてね
ボクは武蔵坂に所属しているけど、高校生の見た目だからなぁ…

とはいえ、スーツを着るのもねぇ
ここはシャドウらしく、斬新コーポレーションの就活セミナー等に参加したソウルボードに干渉して情報を拾っていこうか

シャドウとしての力を使い、斬新コーポレーションに関与した就活生等からソウルボードの情報を拾っていく

シャドウとして、こういった精神から読み取るのは十八番って奴さ
どれどれ…おお、こういうことか

そんな風に呟きながら、情報を集めて精査していく



●闇払う闇
 とあるビルを見渡せる、薄暗い路地。
 そこに身を潜め、アルテミシア・ルッシュリア(月を示す影・f44022)は呟く。
「斬新コーポレーション……噂には聞いていたけど、蘇るなんてね」
 彼女が生まれた時点で斬新コーポレーションは既に灼滅されていた。まぁ、生まれて以後の戦いも無視して放浪していたから、存続していようが関係なかったかもしれない。何にせよ、過去の存在が復活したと聞けば、いくらか驚かされるものはある。
 不眠不休での殺人を奨励する狂気の企業。過去には内定者が被害者の首をオフィスまで持ち帰ろうとする事件まで起きたという。
 だが、自分の見た目は高校生相当だ。武蔵坂学園に所属していて社会的な後ろ盾はあるが、大人として接触するにはやや不自然ではある。一応、高卒就活生を偽ることもできたが——。
「やっぱり、スーツを着るのはなぁ」
 気怠く言うと、ビルの出口からぞろぞろと複数人の男女が出てきた。
 このビルの貸会議室で就活セミナーが行われるという情報を、アルテミシアは掴んでいた。張り込んで終わるのを待っていたが、彼らの様子を見るに勘は当たっていたらしい。目は虚ろで、どことなく活力がない。斬新コーポレーションの影響を受けた証拠だ。
「それじゃシャドウらしく、一仕事済ませようか」
 路地から出て、バラバラに離散しようとする就活生の一人に接近。スーツを着た女性の腕を掴むと、彼女はアルテミシアを睨んだ。
「微弱だけど……この殺意は確定だね」
 目を合わせ、アルテミシアは彼女の|精神世界《ソウルボード》に自身の意識を滑り込ませた。
 どす黒い景色を無感情に眺め、潜在する情報を読み取るために視線を巡らせる。
「精神から読み取るのは十八番って奴さ。さて、何を吹き込まれたのかな?」
 ソウルボードの情景から一つ一つ、アルテミシアは読み取っていく。
 現状への不満、それに付け込んだ殺意、残虐な発想。
 うんざりするほど陰鬱な感情の群れから、敵に繋がる情報を抜き出す。
「どれどれ……おお、こういうことか」
 頷き、頭に刻む。あらかた情報収集を終えたところで、アルテミシアはソウルボードとの接続を解いた。
 ふっと、掲げた掌に息を吹きかける。潜入するついでに回収した闇を払うと、女性は正気を取り戻した。
「他にも就活生はいたな。そこからも情報を集めよう」
 立ち去った複数人を追跡するため、アルテミシアは歩き出す。
 一歩ずつ、敵の足取りを追って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茂多・静穂
※連携・アドリブ歓迎

まさか斬新社長まで復活してるとか……ダイダロスベルト開発だけは本当に感謝してるんですけどね。丁度いいし新しいのが無いか本社行けたら探してみますかね

とはいえまずは探さないとですね。
◆18歳変身を使って高卒って感じで参加してみましょう。結局家に戻ったのでこういう就職活動ってしなかったなーとしみじみしながら参加者を観察。怪しそうな勧誘をしていそうな人を見つけたら声をかけてみて二人きりに。
二人きりになったらシャドウペルソナで相手の精神世界にシャドウペルソナを送り精神を壊しすぎないように刺激させ
精神が弱り斬新手先と分かったら触手型のトラウメンヴァッフェで◆拘束
本社の場所を吐かせますね



●就活体験記
 街の市民ホールで開催されている合同会社説明会。
 多くの就活生で賑わう会場を、どこか初々しさの残る女性が訪れた。
「まさか斬新社長まで復活してるとか……ダイダロスベルト開発だけは本当に感謝してるんですけどね。ちょうどいいし新しいのがないか、本社行けたら探してみますかね」
 気楽な雰囲気を漂わせ、茂多・静穂(千荊万棘・f43967)は受付へと向かう。
 意気込む静穂の姿はどこから見ても18歳の高卒就活生。だが、実年齢は25歳。18歳に変身し、参加者として説明会に紛れ込む作戦だ。受付を難なくパスし、静穂は場内に入った。
 雑多な音や声が混ざり合うが、同時に圧迫感と緊張感も覚える。プロレスのスーツではない、リクルートスーツの窮屈さも相まって息苦しい。
「結局家に戻ったから、こういう就職活動ってしなかったなー……」
 ごくりと唾を飲み込んで、鞄を握り直す。慣れない場所だが、だからこそ新鮮でもある。身体を震わせ、人の隙間を歩くように静穂は歩き出す。
「でも、こういう場所で大っぴらに勧誘なんてするんでしょうか?」
 通りがかる企業ブースを覗き見。怪しい誘い文句がないかと声かけにも耳を傾けるが、そもそもこの場合、何を怪しむべきなのか考えてみる。
 業務内容は流石に言えないだろう。ならば、いつものあの言葉——。
「斬新な我が社で、働いてみませんかー?」
 若いスーツの男が就活生たちに微笑みを向けている。
「それっぽいかも……?」
 集団に紛れ、静穂も話を聞くことにした。
「世の中の流れを変える様々なイベントを起こす! 目が醒めるような体験を、我が社で提供しましょう!」
「……物は言いようですね」
 だんだんと就活生たちからも活力が抜けているように見える。急いで前に出て、男に声をかけた。
「あのー、すみません。少し相談したいんですが……」
「はい、構いませんが」
「あ、かなり個人的なことで……よければ、話を聞かれない場所に」
「なるほど。まぁ、少しの時間であれば」
 男は静穂をブース裏に案内する。ここなら問題ないと、静穂は用意を整えた。
「それで、相談とは——」
 言葉を発しようとした男の額に、ぴたりと指を突きつける。
 瞬間、シャドウペルソナを発動。送り込まれた分身精神体が、相手の|精神世界《ソウルボード》を叩く。
「あ、がっ……!?」
「静かに。あなた、斬新コーポレーションの人ですか?」
 壊し過ぎない程度に。それでも、苦しみは絶えないように。
 そうすれば、やがて相手は口を割る。
「は、いっ……!」
「ありがとうございます。なら——」
 鞄から影が飛び出す。触手状のトラウメンヴァッフェが、容赦なく男を縛り上げた。
「本社の場所も教えてくれます?」
 ギリギリと、時間とともに拘束はキツくなる。いくら黙秘しようと最後には吐くだろう。
 微笑みを向け、静穂はそのときを待つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓬・白羽

殺人に斬新とか、そういうのないと思うけど
その辺りは考えるだけ無駄かな
とにかく止めないとだね

適当な就職セミナーに参加しよう
僕は今の職場が気に入ってるから転職する気はないけど
こういうのも社会勉強だ

えーっと、斬新は仮面の男だっけ
パンフや映像にそれっぽい男を使ってる企業があれば分かりやすい
そういうのが洗脳を仕掛けてきたらUC使用
こっそりと姿を消して、なるべく足音を立てないように行動しよう

一番洗脳効果がありそうなのは映像かな
だったら機材を日本刀でぶった斬って映像を終わらせる
そのまま姿を晒し、刀を突きつける
あの機材みたいになりたくなかったら、あなた達の会社について教えるんだ
……どっちが悪役か分かんないね



●ため息二つ
 微かに振動するエレベーターの中で、蓬・白羽(夜雨飛ぶ鳩・f43861)はため息をつく。
「……殺人に斬新とか、そういうのないでしょ」
 口にしてから、その辺りは考えるだけ無駄かな、とも思えてきた。正論をぶつけてどうにかできる相手ではない。完全に、常軌を逸している。
 とにかく止めなければ。改めて決意したところで、エレベーターの扉が開く。
 ビルの入口からエレベーターでフロアを昇り、到着したのは就職セミナーの会場。場内は広く、かなりの企業が出展しているようだ。半ば圧倒されながらも、白羽はブースとブースの間にある通路へと入っていった。
「僕は今の職場が気に入ってるから転職する気はないけど……こういうのも社会勉強だ」
 普段の散歩の延長として、新鮮な景色を眺めて歩く。世の中いろいろな会社があるものだと頷きつつ、標的である斬新コーポレーションの気配を探す。
「えーっと、斬新は仮面の男だっけ。パンフとか映像とかにそれっぽい男を使ってたら分かりやすいんだけど……」
 出発前に伝えられた特徴的すぎるシルエットを探す。開放的なこの場所で表舞台には出てこない可能性もあったが、視界の端にそれらしいものを発見した。
『斬新であれ。我が社の社訓はそれに尽きます』
 足を止める。
 通りがかったブースのモニターで、ある映像が流れている。ろくろを回してインタビューに答える男の顔には、最先端を行き過ぎた仮面があった。
「あれか」
 目だけを動かして映像とブースの様子を探る。モニターの設置されたテーブルの横には担当者らしき男の姿。そしてモニターの前には、椅子に座った多数の転職希望者。身じろぎもせず、映像に見入っている。
「うん、間違いない」
 確信し、白羽は懐に手を入れる。隠し持っていた日本刀を握ると、自身とそれを黒が包む。闇のオーラで視覚嗅覚での感知を遮断して、ゆっくりとブースに近づいていく。
『世界中の人間が超人になっても毎日は退屈。もう一度、斬新な変革が必要です』
 斬新社長の声がブースに流れる。
 椅子の隙間を、画面に釘付けの人々の隣を、白羽は往く。
『さぁ、僕と斬新な世の中を——』
 耳障りな言葉はモニターとともに、真っ二つに斬り伏せられた。
 残骸が、テーブルから床に落下する。衝撃の音で我に返り、担当者は血相を変えて残骸に駆け寄った。
「なっ、何が起こって——」
「あなた、斬新って奴の手先なんだよね?」
 刀が男の首筋に置かれた。姿を晒し、白羽は淡々と彼を威圧する。洗脳が解けて正気に戻った転職希望者たちについては、片手を口許に添えるハンドサインで沈黙を促した。
「あの機材みたいになりたくなかったら、あなたたちの会社について教えるんだ」
「は、はいぃっ……!」
 これで目的は達成。少し気を緩めて、改めて辺りを見回す。
 斬られた機材。脅された担当者と黙らされたその他大勢。
「……これじゃ、どっちが悪役か分かんないね」
 また一つ、白羽はため息をついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギュスターヴ・ベルトラン

石焼パパイヤとか言ってた頃と変わってねえの、逆に斬新じゃなくないか?
…ま、胡乱で怪しい何か探せっていうのは目的が分かりやすくていい

そういうわけで、出番だぞカラス
UCで影業をカラスに変えて飛ばして上から怪しい奴を探す
あいつは悪を嗅ぎつける力があるから、ヤベーのを探すには打って付けだ
説明会やらの担当してそうなのがいれば…居たわ

カラスにそいつの動向を監視させる
いくら斬新が社是としても、説明会担当者が一度も会社に戻らないなんて事はないもんな
少なくとも本社と連絡は取るだろ
オレはカラスを通して、その担当者の向かう場所と会話内容を聞き漏らさなければ良い

――ああ、でも主よ
悪の道は、なぜ栄えるのでしょうか?



●「見ている」
 ビルの屋上にサングラスをかけた男が一人。
 鉄柵に体重を預け、どこを見るでもなく景色を眺める。呆れを息として吐き出して、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は声を零す。
「復活しても斬新斬新って……石焼パパイヤとか言ってた頃と変わってねえの、逆に斬新じゃなくないか?」
 あれ何年前だよ——記憶を辿ろうとして、時間がかかりそうなのでやめておいた。
 改めて、ギュスターヴは眼下に広がる街を見渡した。何軒ものビルが経つ都市で会社を特定しろと言われても無理難題に近いが……相手の奇抜な主義のおかげで手早く済みそうだ。
「……ま、胡乱で怪しい何か探せっていうのは目的が分かりやすくていい」
 足元に視線を移す。
「そういうわけで、出番だぞカラス」
 影は揺らぎ、一羽のカラスが内側から飛び立つ。大きく空を旋回し、ギュスターヴから遠く離れていく。ギュスターヴも鉄柵に寄りかかるのをやめ、片手をこめかみに当てた。
「始めるか」
 自身の視覚をカラスと接続。航空写真のような画角の街が、視覚情報として流れ込む。
 カラスには悪を嗅ぎつける力がある。何か企む人間を探すにはうってつけだ。しかも今回は服装からも絞り込める。
「説明会やらの担当してそうな、フォーマルな格好の奴がいれば……居たわ」
 降下し、カラスが電線に止まった。
 狙い定めたのは、ベンチに座るオフィスカジュアルを着た女。鞄を脇に置き、何かのファイルを見て電話している。
「……もう少し、近づけ」
 こめかみに当てたのとは逆の手を、上から下へ鈍く動かす。
 指示を受け、カラスは地面に降りる。ベンチの裏に回り込み、声の届く距離で静止させた。
『——はい、説明会の方は終わりまして。参加者全員、入社希望とのことです』
 普通ならありえない結果に、ギュスターヴは確信を覚える。
 何度か相槌を繰り返した後、彼女は立ち上がった。
『では、一旦帰社して次の説明会の用意に入ります……もちろんですよ、斬新社長。私、二十四時間働けますので』
「だろうと思ったよ」
 いくら斬新が社是でも、変更すれば回らなくなる制度もある。企業としての体裁を保つなら、最低限企業らしく動くのが筋。説明会担当者が一度も本社に戻らないなんてことはないし、少なくとも本社とは連絡を取るはずだ。
「それを白昼堂々やったら情報が筒抜けになるんだが……教育不足かね?」
 しかし、その方がこちらには好都合。
 カラスを飛翔させ、歩き出した女を尾行する。このまま追跡してもいいし、本社の場所を聞き取れたらそれだけで目的達成といえる。
 ひと段落して、ギュスターヴは天を仰いだ。
 ダークネスの復活、乱される平穏。
 再び戦いの舞台に舞い戻った彼は、見ているだろうその人に問いかける。
「——ああ、でも主よ。悪の道は、なぜ栄えるのでしょうか?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エン・ジャッカル
サイキックハーツ。初めて来る世界のはずですが、何だか懐かしいという感覚がありますね。UDCアースと似てるからかな?

さて、イベントを利用して就活生や転職希望者を殺人集団に誘導してるようですし、私も参加者として乗り込んで情報収集を試みようと思います。

まずは転職に熱心な青年としてそれぞれの説明会に参加し、社員にある質問をしてみます。

「普通の仕事が物足りなく感じてしまったので、見たこともない斬新な仕事に転職してみたいと思っているのですが、そういう仕事はありますか?」

一般的な社員なら難色を示す可能性が高いはずなので、違う反応をした社員には影を追わせて偵察してみます。もし当たりであれば仲間と共有します。





●あなたに相応しい仕事
 他の車両に混ざって、一台のバイクが道路を駆ける。
 ヘルメットのシールド越しにエン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)は街を眺めていた。
「サイキックハーツ……初めて来る世界のはずですが、何だか懐かしいという感覚がありますね。UDCアースと似てるからかな?」
 世界が位置するのはUDCアースと同じく地球。街並みもそれほど大きくは違わない。
 敵が日常のイベントを使って侵食してくるのも似ている。今回は敵がそういうものに固執しているからだろうが——そんなふうに考えているうちに、目的地が近づいてきた。
 バイクを駐車場に停め、会場となっているビルに入る。目的の階では大規模な就職イベントが開かれていた。これはマンツーマンで企業から話を聞く形態のイベントらしい。
「何気に慣れない場所ですね……とにかく、調べますか」
 各企業のブースに入り、まずは話を聞いてみる。あくまで転職に熱心な青年という体面を崩さないためだったが、旅をして生きてきた身としてはどの仕事にも興味を惹かれるところがあった。
 社員からの話が終わり、質疑応答へ。穏やかな顔で、エンは尋ねる。
「私が仕事を探しているのは、普通の仕事が物足りなく感じてしまったからなんです。なので、見たこともない斬新な仕事に転職してみたいと思っているのですが……そういう仕事はありますか?」
 こう聞かれては、流石の社員たちも難色を示すしかなかった。苦笑いしたり黙ったり。なんとか言葉を言い換えて「そういう意味では斬新かもですね!」と返す社員もいたが、食ってかかるほどの勢いではない。
 礼をしてブースを出る。自ら斬新を謳う会社は少ないんだなと考えながら、エンは次々とブースを移っていく。
 今度目の前に座ったのはにこやかに微笑む中年男性。一通り業務の説明をして、彼は切り出した。
「そういえば……あなたは今、何をして過ごされているのですか?」
「私ですか? 実は世界を旅してまして。というのも、普通の仕事をするのに飽きたんです。次に転職するなら、斬新な仕事がいいなと——」
「斬新と言いました?」
 男の目付きが変わった。空気の変化をエンも感じ取る。
「斬新でしたら是非とも我が社がオススメですよ! 紹介した業務の他に斬新な仕事もありまして、きっとあなたもお気に召すかと——」
「あ、すみません。予定があるので失礼します」
 スマートフォンを確認する素振りを見せ、礼をしてエンは離脱。去り際に振り返ると、男は物惜しそうにこちらを見ていた。
「明らかに様子が変でしたね……しばらく、観察してみましょう」
 エンの影から狼が現れ、人の隙間を掻き分けて先ほどのブースへと接近する。ブースの机に狼が潜り込んだところで、早速呟きが聞こえた。
「彼は即戦力だと思ったんだが……まぁいい。何人か人材は確保した。斬新社長にも良い報告ができるだろう」
 名前を聞き、エンは確信する。
「このまま追跡すれば拠点の場所も分かるでしょうか」
 尻尾は掴んだ。あとは辿るだけ。
 怪しまれないよう会場を出て、離れた場所でエンはそのときを待つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天羽々斬・布都乃

『ほほう、斬新な殺人とな。
天羽々斬流陰陽術なら斬新な殺人を提供できるじゃろうな。
布都乃よ、就職して借金を返すというのはどうかのう?』
「いなり、私、怪異やオブリビオン以外に手をかけるのはちょっと……」
『――冗談じゃ、真に受けるでない。
じゃが、これは調査に使えるのう』

いなりの言葉にほっと一息。
先祖から受け継いできた技術を殺人などに使うわけにはいきません。
けれど、いなりは勝手に会社説明会に応募してしまって――

『こやつは天羽々斬布都乃、陰陽師じゃ。
陰陽術で呪い殺したり、剣術で鮮やかに殺したり、
未来を視て相手を事故死させたりできるぞ』

得意技のアピール、事実なのですが、なんとも複雑な心境です……



●逸材現る?
 斬新を謳う怪しい会社のパンフレット。
 道端でそのページを捲る子狐・いなりを、天羽々斬・布都乃(未来視の力を持つ陰陽師・f40613)は黙って見ていた。
『これ自体は至って普通の会社案内じゃが……ふむ、斬新な殺人とな。天羽々斬流陰陽術なら斬新な殺人を提供できるじゃろうな』
「いなり、何を……?」
 怪訝な顔を浮かべる布都乃にいなりは悪戯っぽい笑みで返す。かつて強大な力を持っていた妖の側面が、垣間見えた気がした。
『稼げぬ陰陽師稼業、回らない首。何故そこまで正義に徹する必要がある? 布都乃よ、ここに就職して借金を返すというのはどうかのう?』
「いなり、私……」
 突如伸びてきた悪魔の誘いに、弱々しくも声を張る。
「怪異やオブリビオン以外に手をかけるのはちょっと……先祖から受け継いできた技術を、殺人などには使えません」
『——冗談じゃ、真に受けるでない。無論、布都乃ならそう答えると思うておったぞ』
 返答を聞いてほっと一息。
 きっと、いなりも試したのだ。そうでなければ、人を殺して金銭を得ようなんて提案をするはずがない。自分の役目を再認識させてくれたいなりの姿を探す。
 いなりは公衆電話に入り、受話器に声を吹き込んでいた。
『もしもし、お主ら斬新コーポレーション? 紹介したい人材がおるのじゃが』
「あ、あの……?」

 数時間後。
『こやつは天羽々斬・布都乃、陰陽師じゃ。陰陽術で呪い殺したり、剣術で鮮やかに殺したり、未来を視て相手を事故死させたりできるぞ』
「ほほう……!」
 ある建物の一室。抜いた剣を両手に握り、布都乃は棒立ちになっていた。
 目の前には大人たちが並んで座り、長机を挟んで布都乃を凝視している。
「なんでこんなことに……!」
『辛抱せよ布都乃、これも潜入調査じゃと思え』
 小声でやり取りしている間も、大人たちは興味深そうに布都乃を眺めていた。
 いなりが勝手に会社説明会に応募した結果、半ば面接のような形で接触することになってしまった。斬新コーポレーションの社員たちは布都乃を殺人鬼として高く評価しているらしい。
 一通りの技巧を見せると社員たちはさらに夢中になり、自分たちだけで相談を始めた。
「呪殺能力があればいろんなイベントが起こせるな」
「面倒な相手は斬り殺せばいいし」
「何より未来視ですよ未来視! それとなく誘導するだけで死のバリエーションが増えますよ!」
「はぁ……」
 得意技が褒められているのを、布都乃は複雑な心境で聞いていた。普段こういう機会はないから嬉しいかもと思いそうになるが、人殺し扱いされているのでたまったものではない。
「いや、迷っている場合じゃない!」
 リーダー格の社員が立ち上がり、布都乃に近づいて握手を求める。
「布都乃さん、是非とも我が社に入社してくれ! 君は逸材だ!」
「検討しておきます……」
 手を握り返すと、社員は封筒を渡してきた。
「ここに本社の場所と紹介状がある! 我が社の希望になってくれ!」
 熱く背中を押され、布都乃たちは解放された。
 とりあえず、拠点の場所は分かったわけだが。
『……布都乃、本気で就職はせんよな?』
「絶ッ対にしませんよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠藤・修司
寿命以外で死なないなら、こんな怪しい会社で働く必要ない気がするけど
死ねないから働かないといけないのかもしれないな……

就職セミナーを渡り歩いて情報を集めてみよう
自分の能力を生かせるやりがいのある仕事はないかと言いながら
意識高い転職希望者という体で怪しまれないよう行動しよう

向こうから声をかけてくるなら、興味があるフリをしてパンフレットを貰うし
そうじゃなければ怪しい動きをしている参加者の後をつけて、隙を見てパンフレットを奪うよ

うわ、結構待遇いいんだけど……
ノルマはちょっと大変そうだけど、福利厚生しっかりしてるなあ
……って、こんなブラック企業、どうせ口だけだよ
入ってみたら、休みが取れないとかあるんだよ



●真っ黒に向かって歩く
 これまで回った就職イベントで手渡されたパンフレットを眺める。
 業種は多様、数も多い。これらを無視し、甘い話を持ちかけてくる企業に足を運ぼうとする理由を遠藤・修司(ヒヤデスの窓・f42930)は考えていた。
「寿命以外で死なないなら、そんな怪しい会社で働く必要ない気がするけど……いや、逆か。死ねないから働かないといけないのかもしれないな……」
 パンフレットをしまい、到着したばかりの会場に修司は入る。自分と似た年代の転職希望者がパネルで仕切られたブースに入っては出ていく。
「見た目は浮いてないし、自然に映るよう立ち回るかな」
 襟を今一度正して、近くにあったブースの社員に話しかけた。
「すみません、転職活動を始めたばかりなんですが——はい、自分の能力を生かせるような、やりがいのある仕事を」
 声のトーンは上がり切らないが、言葉はせめてハキハキと。企業情報を集めて回る意識の高い転職希望者という体を取って、応対する社員の様子を観察して回る。
 渡り歩くうちに、あるブースが目についた。
 話を聞き終えた参加者が、ふらふらとそこから離れる。注意していなければ分からないだろうが、他とは異なる雰囲気を発していた。
「……少し、近づいてみようか」
 修司が接近すると、それに気付いた社員がにこりと笑みを向ける。
「こんにちは。転職先をお探しですよね?」
「はい。そちらの業種は?」
「そうですねぇ……人材派遣とイベント企画の兼業、でしょうかねぇ。詳しくはこちらのパンフレットに」
 そんな業種の兼ね方があるかと思いながら、修司はパンフレットを受け取った。社名は違うが、やたら斬新を推したコピーが嫌に目立っていた。
 少なくとも、必須な情報はこれに書いてあるだろう。洗脳のトリガーが不明な以上は離れた方が賢明だと、修司は頭を下げて会話を打ち切った。
「すみません、他のブースも回りたいので。では」
「あぁっ、もう少し聞いていっても——」
 追い縋るような社員の声を無視し、その場を離れる。
 会場からも退出しながら、回収したパンフレットを捲る。会社や業務の紹介を何となく見ていたが、雇用条件の項目になって指が止まった。
「うわ、結構待遇いいんだけど……」
 流し見した仕事内容からするとノルマは少し大変そうだ。だが、それを補うような給与と賞与、福利厚生。斬新を謳うだけあって制度面も最新なのだろうか?
「……って、こんなブラック企業、どうせ口だけだよ。入ってみたら、休みが取れないとかあるんだよ」
 現実は甘くない、と修司は文字を睨みつける。
 そういえば、グリモア猟兵から受け取った資料に過去の斬新コーポレーションの情報があった。取り出して、社長の発言を確認してみると——。
「『正社員から派遣社員まで、24時間365日眠らず働く』……? ブラックどころじゃないな……」
 ダークマター級の実態に閉口しつつも、修司は本社の住所に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『屑星・暁子』

POW   :    鉄球殴打殺人術
自身の【両手】を【巨大鉄球】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    斬新企画会議
【斬新コーポレーション】製の【斬新な殺人用凶器】を創造する。これを装備した者は、創造時に選択した技能1つを100レベルで使用できる。
WIZ   :    斬新戦術
敵より【戦い方や殺し方が斬新】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。

イラスト:風見屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●本社襲撃、再び
 それぞれが手に入れた情報を照合し、猟兵たちは斬新コーポレーションの位置を特定した。
 オフィス街にある、十階建てほどの高さのビル。ここが現在、斬新コーポレーションの本社となっているようだ。自社ビルを手に入れるほどの勢力になったというわけではなく、解体途中のビルを乗っ取って拠点化し、自分たちの力で修復したと考えるべきだろう。
 このビルを足掛かりに急成長されても困り者だ。猟兵たちは早速、ビルの内部へと突入した。

「おやぁ? お客様ですかぁ?」
 ビルに入ると、ツインテールの若い女が出迎えた。ニコニコと、顔にビジネススマイルが貼りついている。
 きょろきょろと、彼女は猟兵たちを見回す。警戒して構える猟兵たちに対し、女はやたら軽率ともいえるほど身軽に動く。
「入社希望者でも取引先でもないですねぇ、あなたたち……あぁそうか! 灼滅者と……猟兵って人たち? 初めて見た! 斬新!」
 敵と察した彼女は表情を曇らせるどころか、にっかりと満面の笑みを浮かべた。
 パチンと指を鳴らす。女は爆発的に増え、瞬く間に猟兵たちの頭数を上回った。
「私、斬新コーポレーション社員筆頭、屑星・暁子! せっかく蘇ったのに、黒杉人事部長もパートの銭洗さんもいなくって……だから私が、斬新社長の次に偉いんですよぉ!」
 明らかに経験に見合っていない役職に思えたが、暁子は突如、両腕を巨大な鉄球に変化させた。他の暁子も同じように各々の武器を手に取る。斧、大剣、ギロチンに……掃除機まで。ナンバー2に相応しい実力者なのは間違いないらしい。
「今、労働力が圧倒的に足りてなくってぇ……就活生の青田刈りもしてるけど、私が増えて補うしかないんですよぉ。うちに転職してくれたら、命を助けるついでにボーナスも出すんですけど……どうです?」
 両手を合わせるように鉄球を打ち合わせ、ガキンと音が鳴る。
 猟兵たちが固辞してスカウトを蹴ると、暁子はまた狂ったように笑う。
「あはは! ですよねぇ! でも、今日みたいな日のために斬新な殺人企画たくさん考えたんです! あなたたちにプレゼンさせてくださいよぉ!」
 集団で、大量の暁子が襲いかかってくる。
 迎撃するため、猟兵たちはそれぞれの武器を手に取った。
アルテミシア・ルッシュリア
随分と中間層がオブリビオン化していないんだね……二人、か
アーカイブ、とやらに選ばれたのかな?

UCで四大シャドウの内、クラブを統べる『絆のベヘリタス』の『分割』と『結合』の操作を再現したUCで対応
分身……いや、分割存在を真似するなら、このUCだね
瞬時に分割存在を一体に『結合』させ、そのままその結合した一体を『肉体と生命を『分割』する』形で灼滅

四大シャドウのサイキックを、生き残ったシャドウが再現して六六六人衆に披露するのは中々に『戦い方や殺し方が斬新』、だろう?
シンプル故に取り回しがきくからね、斬新なやり方を編み出すのも奥深いのさ

そう言いながら分割存在を『結合』しそのまま『分割』して両断していく



●継いで、纏めて引き裂いて
 敵に囲まれてもなお、アルテミシアは平静を保っていた。
「随分と中間層がオブリビオン化していないんだね……二人、か。アーカイブ、とやらに選ばれたのかな?」
 推測してみるが、当の本人は気にもしていないだろう。瞳に殺意を滾らせ、暁子たちが突っ込んでくる。
「何してるんですかぁ!? 突っ立ってるだけなら殺しますよぉ!?」
 棘の付いた鉄球がアルテミシアに迫る。顔のすれすれを鉄球が掠めるに収めても攻撃の手は止まない。周囲にいる次の暁子が飛びかかってきて、鉄の塊をぶん回す。
 それでもアルテミシアは避け続けるが、反撃に転じようとはしない。
「あなた全然斬新じゃなーい……斬新じゃないなら早く死ねよッ!」
 正面から突っ切って、暁子がアルテミシアに鉄球を振り下ろす。
 それを視界に捉えたまま、アルテミシアは敵に尋ねた。
「君は『絆のベヘリタス』を知ってる?」
「……はぁ?」
「だろうね。君は名前を知るまでもなく、灼滅されたみたいだから」
 アルテミシアに直撃するはずだった鉄球が停止する。鉄球単体が止まったのではなく、暁子自身が動きを止められていた。
 突如、動きの停止した暁子に周辺の暁子が統合されていく。身体を突然寄せ集められ、無理やり一体に纏められたように。
「何が起きて……!?」
「簡単だよ。分割存在を『結合』した。そして、この能力は——」
「あ、が……!?」
 暁子の額の中心にヒビが入り、そのまま二つに裂ける。分断された身体はボロボロと靄となって崩れ、生き残っている暁子たちを強張らせた。
「『分割』もできる。君の肉体と生命を『分割』した」
 四大シャドウ、絆のベヘリタス。クラブを統べる、かつて強大な力を誇っていたダークネスだ。その能力、『分割』と『結合』の操作をユーベルコードにて再現し、叩きつけたのである。
「四大シャドウのサイキックを、生き残ったシャドウが再現して六六六人衆に披露する……なかなかに斬新な殺し方だろう?」
「く、くうぅ……まだプレゼンは終わってませんッ!」
 だらだらと冷や汗を垂らしながらも、暁子たちは懲りずに突撃してきた。だが、小手先の斬新戦術など取るに足らない。
 『結合』し、『分割』する。集まったところを纏め上げ、束ねてから両断。
 この技は、シンプル故に取り回しが利く。斬新なやり方も編み出せる奥深い技だ。
「突っ立ってるだけなら、殺すよ?」
 無慈悲に言い放って、最後の暁子を灼滅させる。
 階の敵を全滅させ、アルテミシアは上へと急ぐ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茂多・静穂


面白い
ならたっぷりプレゼンして貰いましょうか!

形が自在のヴァッフェントラッフェを防御形態の◆武器受けで鉄球や斬新な戦い方へ応戦
数撃防御したり鋼の肉体で受け耐えてからため息
生憎鉄球の六六六ならこっちは四八〇位の強烈なの喰らって重傷になった事あるんです
あれに比べたら貴方全然ですね
では次は私の戦い方のプレゼンです!

◆武装召喚で巨大メイガス「ハートバインド」を召喚
首から下をメイガスで包み完全拘束
あっ、いい、自分を縛り付けて戦うの久しぶりにいい!
UCも発動し強化
拘束状態でも私の意志で動かせるトラウメンヴァッフェやハードバインドの格闘に攻撃力や勝負勘強化を乗せて敵を攻撃していきます

あー。キモチ良かった♪



●その戦術、唯一無二にして
 上階に控えているだろう斬新社長を目指し、猟兵たちは突き進む。
 次のフロアに上がり、暁子の集団に往く手を阻まれる。
「あはは! まだまだ企画のストックは尽きてませんよぉ!」
 頭のネジが外れたように笑って接近する暁子たちに、静穂もまた笑みを返した。
「面白い……なら、たっぷりプレゼンしてもらいましょうか!」
 自ら敵集団の中へ飛び込む。斧、大剣、金属バット。凶器のフルコースが静穂に振り下ろされる。だが、攻撃はいずれも彼女には届かない。
 変幻自在のヴァッフェントラッフェ——それが振られた武器を捌き、受け流す。
「どうしました? この程度ですか?」
「はい! ぶち抜きの斬新をお届けします!」
 声は下から聞こえてきた。
 床を破壊し、暁子が下のフロアから無理やり静穂の懐に潜り込む。跳び上がった勢いを殺さず、がら空きの胴に鉄球の乱打乱撃を叩き込む。
 打ち上げられるように吹っ飛んだ静穂を眺め、暁子は笑い声を響かせた。
「死んだ死んだ、絶対に死ん——」
「あの、本気でやってます?」
「……え?」
 空中で姿勢を整え、静穂は綺麗な着地を決める。腹を手で軽く払ってから、大きくため息をついた。
「生憎、鉄球の六六六人衆ならこっちは四八〇位の強烈なの喰らって重傷になったことあるんです。あれに比べたらあなた……全然ですね」
「なっ……なんですってぇぇぇ!?」
「では次は、私の戦い方のプレゼンです!」
 青ざめる暁子をよそに、静穂の背後に巨大な武装が召喚される。
 シャドウハンター専用サイキックメイガス——『ハートバインド』。
 反撃を予想し、暁子たちは身構えた。故に直後、虚を突かれる。
 ハートバインドは静穂の首から下をすっぽりと呑むように、完全拘束したからだ。
「あぁ、うん、そう……この感覚ッ!」
「えっ、えぇっ!? なんで、なんで自分を!?」
「全身縛られる感覚、たまらないッ! 最高ッ!」
 狼狽える暁子たちに静穂は肉薄。まっすぐ突っ込んできたハートバインドに対応できず撥ねられ、圧倒的な火力に何体かが消し飛んだ。
 しかも図体に反して切り返しは異様に速い。コマのように旋回し、静穂の意思に応じて伸長したトラウメンヴァッフェが敵を纏めて薙ぎ払う。
 応戦する個体もいるが、何故か攻撃が通らない!
 そして静穂本人はというと。
「あっ、いい、自分を縛り付けて戦うの……久しぶりに、いいッ!」
 縛られる悦楽に、骨の髄まで浸りきっていた。
「ざ、斬新……っていうかもうこれは違う何か——」
「楽しい時間は……ここからが本番ッ!」
「ひぃっ!?」
 それから、静穂の猛攻はしばらく続いたという。

 静まり返ったフロアで、武装を解除した静穂は大きく伸びをした。
「あー……キモチ良かった♪」
 爽やかな気分で静穂はフロアを去る。
 そこには巻き込まれた暁子たちが倒れていたとか、いないとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エン・ジャッカル
そ、掃除機?ギロチンもどう使うのか気になりますが、掃除機でどう戦うのかが一番気になる…。流石は斬新コーポレーションというべきか…。

いずれにせよ、この数に、この力量。私だとあっという間にやられるでしょうね。相棒(アヌビス号)と合体して戦うことにします。

いくら仲間たちが強くても数の暴力を受けると厳しいかもしれないので、仲間たちの援護を重点に立ち回ろうと思います。
立ち回りとしては相棒の装甲を頼りに前衛に立ってシールドガンで敵の攻撃を捌き、仲間たちが攻撃を仕掛けるタイミングに合わせて援護攻撃で敵への妨害を狙います。

また、可能であればギロチンや掃除機でどう戦うのか拝みたいところですね。気になるので…。




ギュスターヴ・ベルトラン

おう、元|灼滅者《スレイヤー》で現|猟兵《イェーガー》の客だ
|復活ダークネス《オブリビオン》のプレゼンを見せて貰いに来たぜ

ちなみにオレが今回の戦闘で使うUCはジャッジメントレイ
お前らもよーく見知った、斬新さのない攻撃だ
ただしいつもより閃光が強めに出力してる攻撃だ
目が潰れそうだろ?
視覚が塞がれちまえば繰り出されてる攻撃が斬新かそうでないか、完全に判断しかねるもんな?

目潰しが奏功したならば、後は影を使うだけ
ジャッジメントレイを使った後ならば、影は暗く濃くいやまさる
行け、|カラス《Miserere nobis》
考えが浅い、そこの自称社員筆頭を打ち倒せ

じゃ覚えときな、基礎を疎かにするからそうなるんだ



●プレゼンとフィードバック
 どれだけの数を打ち倒そうと、暁子の群れは尽きそうにない。
「下の私は斬新じゃなかったみたいですねぇ……だったらお客様には、もっと斬新を浴びてもらいますよぉ!」
 階に辿り着いた猟兵たちをケタケタ笑う暁子の集団が迎え撃つ。
 ポケットに手を突っ込んだ威圧するような立ち姿で、ギュスターヴは敵を睨んだ。
「おう、元|灼滅者《スレイヤー》で現|猟兵《イェーガー》の客だ。|復活ダークネス《オブリビオン》のプレゼンを見せてもらいに来たぜ。で、なんだその武器は?」
 暁子が手にした武器はどれも独特だ。形状の特殊な斧や大剣はまだいい。ギロチンを木枠ごと担いでいる個体や、掃除機の吸い込み口をこちらに向けている個体もいる。
「戦う気あんのかよ……」
「気になる……! あれでどう戦うんでしょう……!」
 ギュスターヴが言葉を零したすぐ後ろで、まじまじと敵の武器をエンは見つめていた。顎に手を添え、ぶつぶつと予想を呟き続ける。
「ギロチンをどう使うのかも気になりますが、掃除機でどう戦うのかが一番気になる……戦闘になったら変形するのでしょうか? それともそのまま使う? 他の武器も他に類を見ないですね……流石は斬新コーポレーションというべきか……」
「猟兵の先輩、悪いが観察してる時間はなさそうだ」
 ギュスターヴが構えると、エンも戦場全体に意識を切り替える。
 エンが興味津々で見つめていた武装を携え、暁子は一斉に突撃を開始した。
「そのようですね。では、実戦の中で確認するとしましょうか!」
 立ち位置をスイッチするように、エンが前線に飛び出す。追随するように疾駆するアヌビス号がパーツ単位に分かれ、エンの身体と合体する。
 この数にこの力量。自分単体ではあっという間にやられてしまうだろう。強敵と対峙するのであれば相棒との共闘は必須だ。
 装甲を纏い、エンは改めて敵集団を見た。武器を握った暁子たちはすぐそこまで接近してきている。
「鎧に変形するバイク……斬新ですねぇ! 新商品にしたいくらいです!」
「それはどうも。なら、『これ』も気に入りますよ!」
 迫りくる敵に向かって腕を振り上げる。重厚なシールドが振り下ろされた斧を弾き、光波の噴出によって吹き飛ばす。下段から斬りかかってきた大剣も対処は同じ。盾で捻じ伏せ、薙ぎ払った。
「あはは! 結構結構! でも、これよりは斬新じゃないですねぇ!」
 近接攻撃を仕掛ける暁子の背後で、ギロチン持ちが得物を床に置く。蹴って横向きにして紐を切れば——ギロチンの刃はまっすぐ真横に射出された。
「なるほど、射撃武器……! ですが!」
 巨大な刃へ拳を振り抜く。先に到達した光波が刃を脆くし、堅固な装甲がそれを粉砕する。
 刃はただの砕けた金属となって宙に散る。
 まさに狙い通りだと、エンの背後を取った暁子が笑う。その手には掃除機があった。
「吸って——吐く!」
 掃除機のスイッチが入る。吸引音が鳴り響き、砕けた刃を残さず吸い取った。
 エンが振り返ったときにスイッチは再度押され、吸ったすべてを筒から排出!
「うっ……ぐっ!?」
 超高速の礫がエンを切り裂く。シールドを交差させ自身へのダメージ減少を狙うが、肌を裂かれる痛みに悶えた。
「盲点でした……! 吸ったなら吐く、それがその掃除機……!」
「その通り! 掃除機の当たり前を見直した逸品です!」
「ありがとうございます、なかなかいいプレゼンでした……! では——」
 得意気に自慢する暁子の肩を踏みつけ、割って入る。敵の注目が自分に集まったのを認識し、空中へ躍り出たギュスターヴは指を鳴らす。
「ここからは目も口も、閉じてもらおうか」
 その指先から、眩い光が放たれた。光は辺り一面を白に塗り潰す。それは瞳に対しても同様で、ギュスターヴを見上げていた暁子は皆一様に目を瞑らざるをえなかった。
 何も見えない光の中で、暁子たちの身体は焦がされていく。光の当たる部位が焼かれ、突き刺さるような激痛に変換される。一方で、先ほど攻撃を受けたエンの傷は癒えていった。
「がああっ……!? 何、何なの、この光は……!?」
「ジャッジメントレイ。お前らもよーく見知った、斬新さのない攻撃だ」
「ジャッジメントレイ……!? これが……!?」
「ただし、いつもより閃光を強めに出力してある。目が潰れそうだろ?」
 着用しているサングラスを外せば、次に目が潰れるのは自分。それほどまでに強い光だ。自分の術で自分の目が焼けるなんてクッソだせぇよなとギュスターヴは心で毒づきながらも、計略の成功に安堵する。
 エンが敵を呼び寄せたところに光を放ち、相手の視界を塞ぐ。これで敵は斬新か否かを判断できなくなった。あとは畳みかければいい。
「眩い光の中で、影は暗く濃くいやまさる。闇の中より黒い……なんて言っても、お前らには見えねぇか」
「攻撃……! 見えなくても、防御なら——!」
「させません! 援護します!」
 手を鉄球に変えて構えようとした暁子たちに、回復したエンがシールドガンで射撃する。薙ぐような攻撃に、集団全体が大きく体勢を崩された。
 見逃さない理由はない。
「今です!」
「あぁ。行け、|カラス《Miserere nobis》」
 ギュスターヴの指示を受け、一羽の影が光を泳ぐように飛翔する。
「考えが浅い、そこの自称社員筆頭を打ち倒せ」
 敵の身体を影は貫く。翼は鈍器となり、嘴と鉤爪は刃物となる。叩いて斬って、飛び回っては急旋回するカラスに暁子たちは何もできない。
「じゃ、覚えときな。基礎を疎かにするからそうなるんだ」
 これにて、プレゼンとフィードバックは完了。
 改めるなら骸の海で。
 そう告げられるまでもなく、暁子は一人ずつ姿を消していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蓬・白羽


プレゼンされた側が死んじゃったら、誰がそれを伝えるのか
でもそういうのって都市伝説でもあるよね
荒唐無稽な殺人計画には荒唐無稽な都市伝説で応えよう

語るのは奇妙な駅の物語
迷い込んだ女性が大変な目に遭った話
あなた達にも追体験してもらおうか

無人駅なのに突然電車が動き出したり
助け船を出してくれた人が実は怪物だったり
あるいは鉄砲水が突然流れ込んでくるとかもね
そういう滅茶苦茶なことが起こる駅の話をしよう
うまく話に合わせた都市伝説が出てくれればいいんだけど

迫る攻撃は肉体変異の硬化と激痛耐性で誤魔化しつつ
楽しい都市伝説達に敵の対処をお願いする

残念ながら女性は無人駅から出られなかった
ここがあなた達の終着駅だ



●終着駅
 手に凶器を握り締め、プレゼンだ斬新だと暁子たちが息まく。彼女らを前にして、道を阻まれた白羽は素朴な疑問を呟いた。
「プレゼンされた側が死んじゃったら、誰がその出来を伝えるんだろう……でも、そういうのって都市伝説でもあるよね」
「はぁ? どういう意味ですかぁ?」
「ほら、あるでしょ。死人に口なしっていうのに、人づてに語られる物語って。それに心当たりがあるんだ……これは、奇妙な駅の物語。迷い込んだ女性が大変な目に遭う話。あなたたちにも追体験してもらおうか」
 荒唐無稽な殺人計画には、荒唐無稽な都市伝説で応えよう。
 薄暗い部屋の中、白羽は語り出す。
「ある夜のこと。仕事を終えた彼女は、いつも通り地下鉄の駅に入った。改札を抜けて乗り場へと向かっているとき、違和感を覚えたんだ——周りに人間が一人もいない。不安定な蛍光灯、水捌けの悪い通路。何ら変わらぬ景色のはずなのに、その日はいやに不気味だった」
 白羽の声が染み入るように広がると、部屋の雰囲気が一変する。薄ら寒さを肌で感じ取って、暁子の一人が叫んだ。
「おかしい……何か変ですよぉ!?」
 白羽の語りはなおも続く。
「場所を確認しようと彼女は携帯を取り出した。でも、それすら捕捉されていた。画面には『非通知』の文字。着信が入ったんだ。少し取り乱していたのもあって、彼女は電話を取ってしまった」
 そのとき、暁子の耳元で声がした。
『あなた、死にたいですね?』
「……えっ?」
 返答した瞬間、暁子の首がごとりと落ちる。靄となって彼女は消え、他の暁子にも焦燥が伝播していく。
「は、早くあいつの話を止めろッ!」
「恐怖のあまり、彼女は携帯を落として走り出した。もし迂闊な返事をしていればどうなっていたか……おっと」
 暁子たちが一斉に白羽に攻撃を仕掛ける。振られた鉄球や鈍器を何とか避けるが、多勢に無勢。歯を食い縛り、人造灼滅者由来の肉体変異で打撃を耐え凌いだ。
 痛みを誤魔化して、白羽は言葉を紡ぐ。
「走っていると、T字路に差しかかった。前方にエレベーター、左に下へ向かう階段。地上に出る手段だと喜んだのも束の間——赤い水が、どっぱーん」
 白羽の背後から水流が湧き上がり、敵集団へと覆い被さる。不意の鉄砲水に対応できず飲み込まれ、暁子たちは部屋の壁に叩きつけられた。
 咳き込む暁子たちをよそに、白羽の語りはクライマックスへと差し掛かる。
「咄嗟に階段へ逃れて駆け降りると……ホームがあった。そこに電車も停まっていて、彼女はそれに飛び乗った。ほっと、胸を撫で下ろす。しかし、彼女はミスを犯した」
 扉の締まる音がした。連続する四角い窓、座席とつり革。
 気付けば、暁子たちは電車の中に閉じ込められていた。
「どこへ向かう電車かを確認していなかったんだ」
 揺れが生じ、電車は動き出す。叫びながら凶器による攻撃を暁子たちは繰り返すが、窓は割れない。即ち、出られない。
 出られないまま、電車は出発する。
 一体どこへ?
「残念ながら、女性は無人駅から出られなかった。彼女にとっての終着駅になってしまったんだね。そして、あなたたちの終着駅でもある……あれ、もう誰もいないみたいだ」
 聞き手の消えた部屋を眺め、白羽は語りを終えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

隣・人
良いわ……!
私が本当の『斬新』ってやつを教えてあげる……!

そう、重要なのは如何にして殺すのかって事よ。ええ、得物なんてのも獲物なんてのも、如何だって良い。たとえばバットで撲殺するなんて在り来たりじゃない? じゃあ、これなら如何かしら!
バットを地面に立てるようにして、柄の部分に額を当てるようにして、その場でぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる……。行くわよ、これが私の斬新な戦術――ぐるぐるバットをしてから脳天をカチ割る!!!

……あ、待って。すっごい目が回るしかなり気持ち悪い。いやでも大丈夫、継続すればするほど私は強くなるしなんとかなる。さあ、行くわよ。私の殺人技芸、文字通り喰らいなさい!

うっ……おぇ🌈



●虹色をぶち撒けて
「アンタらの戦いっぷりを観察させてもらったけど、結局八割くらい鉄球と鈍器で斬新じゃないわね」
 カラカラとバットを引き摺って、一人の殺人鬼が敵集団に啖呵を切る。
 名前を隣・人(22章39節・f13161)。サイキックハーツと接続し、欠けていた思考のネジを取り戻した存在だ。
 潰してきた(文字通りの)頭数は暁子よりも多いが、そんなことを暁子たちは知る由もなく。喧嘩を吹っ掛けられ、暁子は揃って騒ぎ出す。
「じゃあ何ですかぁ!? あなたの方が斬新だっていうんですかぁ!?」
「そうよ。そうやって食ってかかるんなら——いいわ……! 私が本当の『斬新』ってやつを教えてあげる……!」
 ぶんっとバットを振り上げ、彼女は威圧的に目を開く。その風格に暁子たちが気圧される中、持論について語り始める。
「そう、重要なのは如何にして殺すのかってことよ。ええ、得物なんてのも獲物なんてのも、如何だっていい。たとえばバットで撲殺するなんてありきたりじゃない?」
「た、たしかに……」
「じゃあ、これなら如何かしら!」
 ガァン! とバットを勢いよく床に突き立て、柄にぴたりと額を当てた。
 何をしでかすのかと警戒する暁子の前で、彼女は回転する。
 ぐるぐる、ぐるぐる。その場でぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる……。
「えっ、ぐるぐるバット……?」
「その通り。これが私の斬新な戦術——ぐるぐるバットをしてから、脳天をカチ割るッ!!!」
 急加速。渦巻きのように回転し、軸となっていたバットが外れる。回転を持続したまま彼女は暁子の集団に迫った。
 一閃。前に固まっていた暁子の頭が一瞬で叩き潰される。退く暁子の悲鳴を聞いて、血の付着したバットを振り上げた。
「どう? これがぐるぐるバットの威力よ! さぁさぁさらにもう一発、次は全員逃がさな——」
 台詞の途中で込み上げてきたのは、猛烈な吐き気。
 クソザコ三半規管が根を上げている。だが、ここで吐いては格好が付かない。
 再びバットを床に突き立て、額を当てて回り出す。
 ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。
 すっごい目が回るしかなり気持ち悪い。地球の自転速度がギア上げたのかってくらい。いやでも大丈夫、継続すればするほど私は強くなるしなんとかなる。なんとかなるんだってば!
「……ああああっ!!」
「や、やばっ……でも、この間に!」
 暁子が一斉に近づいてくるのを足音で知る。
 もう自分がどこを向いているのかは分からない。それでも、引きつけに引きつける。
 回転が最高点に達した瞬間、バットを両手持ちに切り替えた。
「さあ、行くわよ……私の殺人技芸、文字通り喰らいなさい!」
 ボールを打つように敵の頭をカチ割って回る。ガンガンガンと衝撃が連続し、接近してきた暁子を次々仕留めた。
 バタバタと敵が倒れる中心で、彼女はただ独り、ふらふらと立つ。激しく息をしながら、にぃっと笑う。
「ははっ、なんとかなったわ……まぁ当然……うっ……おぇ——」
 最後の最後で虹色をぶち撒けて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠藤・修司
わあ、どう見ても新人ぽい人が一人で切り盛りしてる
絶対これダメな会社だ……

プレゼンとか本当に止めて欲しい……
おや、“僕”が何か言いたそうにしてるね

『新人なら経験不足だろうから、粗探ししてネチネチ突いてやればいいのさ』
それちょっと気の毒じゃない?
まあいいけど……敵だし……
人格交代して【UC使用】

『斬新な殺し方というのは、具体的にどんな利点が?』
『曖昧な答えじゃ、こちらも納得できかねるね』
『ところで、御社は灼滅者に倒されたそうだけど、人材の質が悪いのでは?』

……聞いてる僕まで辛くなってきた
まあ向こうも嫌そうにしてるし、冷静さは奪えたかな
その隙に“僕”には引っ込んでもらって、炎の魔弾で攻撃するよ



●「質問なのですが」
 一階から現在の階まで、待ち構える暁子の集団を突破してきた猟兵たち。
 社長室を前にして彼らを迎え撃つのもやはり暁子だ。
「よくここまで来れましたねぇ! ですが、斬新社長には会わせません!」
 自らの数を増やして働く暁子を眺め、修司は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「わあ、どう見ても新人ぽい人が一人で切り盛りしてる。絶対これダメな会社だ……」
 役職は受付から秘書まですべて兼任しているのだろう。自分がその立場なら即刻辞表を書いている。過酷な労働環境にもかかわらず、暁子は耳障りな笑い声を響かせた。
「あはは! プレゼンの弾はまだまだありますよぉ!」
「えぇ……プレゼンとか本当に止めて欲しい……」
『いいじゃないか。聞いてやるだけだろう?』
 頭の中で声が囁く。異世界の自分、それもうんと性格悪い自分だ。クスクス笑いを声に含ませ、彼は修司に提案する。
『新人なら経験不足だろうから、粗探ししてネチネチ突いてやればいいのさ。見るに企画は勢い任せ。少し突くだけでぐずぐずに崩れて、自信もきっとなくすだろうよ』
「それちょっと気の毒じゃない? まあいいけど……敵だし……」
 ヒヤデスの窓に触れ、目を瞑る。
 人格交代。
 目を開き、修司は微笑を浮かべた。微妙な変化ながらも、普段の修司ならあまりしない表情だ。
 そんなことには気付かず、暁子たちは凶器を握る。企画も最後の最後、なんだかコンセプトの見えない武器ばかりが揃う。
「とくとご覧あれぇ! 私たちの斬新な攻撃を——」
「その前に、一ついいかな?」
 挙手した修司に暁子たちの足が止まる。
「この分野は素人なんだけれども……斬新な殺し方というのは、具体的にどんな利点が?」
「……えっ」
 刺すような鋭い質問に、暁子たちはダラダラと汗を流し出す。顔を引き攣らせ、肘で突っつき合って回答権を押し付け合っていた。
「えっと、ほら、斬新だと敵の意表を突けるし、殺す側のやる気も上がりますし」
「だったら既存武装の改造で事足りる。これはプレゼンなんだろう? 困るなぁ、そういうのは。曖昧な答えじゃ、こちらも納得できかねるね」
「はい……」
「ところで、御社は灼滅者に倒されたそうだけど、人材の質が悪いのでは?」
「……うぅっ」
 暁子の一人が笑顔のまま目に涙を溜め始めた。それをきっかけに、動揺は敵全体に広がっていく。
『……聞いてる僕まで辛くなってきた。“僕”、そろそろいいんじゃないかな』
「仕方ないな。今日はここまでにしといてあげよう」
 異世界の自分が引っ込み、肉体の主導権が修司に戻る。戻っても敵のどんよりムードは続いているわけで、気まずいのには変わりない。
「まぁ、元気出しなよ。いきなりにしては上手くやれてた方だって」
 励ますが、それはそれ。無銘の杖を、修司は暁子たちに向けた。
「でも、社長さんには会わせてもらうよ」
 発射された炎の魔弾が暁子たちに飛ぶ。着弾と同時に焔は爆ぜ、集団を散り散りに吹き飛ばす。
「次は中身を詰めてきますぅぅぅっ!!」
 斬新な断末魔を上げる暁子を見送り、修司たち猟兵は社長室の扉を開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『斬新・京一郎』

POW   :    斬新ツイストクロース
【斬新な体勢からの一撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【斬新ダイダロスベルト】で繋ぐ。
SPD   :    斬新斬撃斬
【斬新なポーズ】【斬新なファッション】【斬新な攻撃方法】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    斬新アーマリングクロース
対象を【殲術道具斬新ダイダロスベルト】で包む。[殲術道具斬新ダイダロスベルト]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【刃状の布】と、傷を癒やす【手当て布】を生やす。

イラスト:sasai

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●カリスマは蘇る
 社長室に突入した猟兵たちは、まず最初に驚かされた。
 応接室を兼ねた広々とした空間。黒い革製のソファーやガラスのローテーブル、古い木製のデスクとこれまた革製のキャスター椅子が高級感を演出する中、斬新・京一郎こと斬新社長は——。
「待っていたよ! 灼滅者と……猟兵のみんな!」
 天井に立っていた。
 脚に巻きつけた刃を天井に突き刺し、支えているようだ。
 反応がないのを見て、斬新社長は笑いながら床に降り立った。
「なかなか斬新な登場演出だと思ったんだけどなー、ヴァンパイアでもないのに天井にいるって。まぁいいや、君たちがここまで来れてるってことは屑星君は灼滅されたみたいだね。あーあ。名前の通り、期待の新星だったんだけどな~」
 軽々しく言い放ち、斬新な仮面——もとい斬新なサングラスを押し上げる。猟兵たちの表情を読み取ってか、斬新社長は言葉を付け足した。
「本音を言うと、僕は彼女のこと覚えてないんだよね。元社員だっていうから雇ったけど、あの働きじゃ給料は出せないね。もう払う必要ないけども!」
 あらゆる意味でのブラックジョークを言ってケラケラ笑い出す。
 どれだけ見た目がふざけていようと、彼は殺人鬼・六六六人衆の有力敵。過去には多くの一般人を組織犯罪に巻き込んだ外道でもある。
 息を吸うと、斬新社長は自らの武装を構えた。腕から幾重にも伸びる殺戮帯、ダイダロスベルト。灼滅者が使用するかの殲術道具は、彼の武装の切れ端から開発されたものだ。
「久々の死闘となると、なんだか札幌を思い出すねー。本当に嫌な記憶だ。だから僕、それなりに焦ってはいるんだよ? 勢力拡大前に本社を襲撃されるとは、僕も運がないね」
 台詞に反して、顔には余裕が貼りついている。経営者故の胆力か、微塵も隙を見せない。
「じゃあなんでそんなにヘラヘラしてるのかって? この状況から勝ったら斬新だろ?」
 復活した殺人企業、斬新コーポレーション。
 悲劇を繰り返さないために、猟兵たちは武器を手に取る。
ギュスターヴ・ベルトラン

こいつが居るってのは、ちゃんと分かってたんだ
でも見た瞬間思わず「うわ出た」って口に出ちまった…

とはいえ、侮って相手できるオブリビオンなんて居ない
どうやって攻撃を仕掛け…敵が布に包まれやがった!
ダイダロスベルトは攻防一体が売りみたいな厄介なとこあったな…ああ、布クソ邪魔だな!

…現状、相手は装甲と隠密力増加、さらに攻撃と回復を備えてる
ならば|カラス《Miserere nobis》、敵が…悪がどこにいるかを嗅ぎつけろ
カラスが場所を示したならば、UCを発動する前に主への祈りを捧げる

オレが敵に言うのは、この一言だけ
――あなたの罪に罰を

あとは主の慈悲たる閃光によって、何もかもが切断されておしまいだ



●我は主とともに
 ちゃんと分かってはいた。ビルの最上階で待ち構えているのが喧しい斬新野郎だとは。
 しかし姿を見た瞬間、その言葉はギュスターヴの口から反射的に零れ出た。
「うわ出た」
「おいおい酷いな。でも、挨拶としては斬新で結構!」
 喋らせるきっかけを与えてしまったと、ギュスターヴは口許をさらに歪めた。いざ戦うとなってもとことん調子を崩されそうだ。
 とはいえ、侮って相手できるオブリビオンなどいない。腰を落とし、構えを取って敵の様子をうかがう。どうやって攻撃を仕掛けるか、観察に徹する間に斬新社長が床を蹴った。
 ギュスターヴに接近すると同時に、その身体は布に覆われる。一瞬にして、強固な鎧が斬新社長を包むように構築された。
「なっ、身体を布で包みやがった!」
「ダイダロスベルト、アーマーモード。持っている必殺技は最初から使う……その方が合理的で、しかも斬新だ」
「言うと思ったよ畜生。そういや、ダイダロスベルトは攻防一体が売りみたいな厄介なとこあったな……」
「君、セールスポイントを理解してるね。じゃ、今度は身をもって強さを味わってもらおうか!」
 にやついた斬新社長の顔が徐々に背景に溶けていく。舌打ちをしてギュスターヴも攻撃に備えるが、手掛かりらしきものは一切掴めない。
 背後から、風を切る音が聞こえた。
「そこか!」
 振り向き、迫りくる布の束を避ける。頬を掠めた布束は刃と同様の光沢を持ち、直線上にあったソファーをズタズタに切り裂いた。
 伸び切った布を目で追えば、そこには斬新社長の姿。咄嗟に反撃に転じ、ギュスターヴは敵の胴へと指先を向ける。閃光が炸裂するが、斬新社長は腹の立つ笑みを保っていた。
「……ああ、布クソ邪魔だな!」
「ピカッと光った程度じゃ僕は止められないよ。流行の波ってのは激しいからね!」
「うっせぇ! 意味分かんねぇこと言うな!」
 ギュスターヴが声を荒げても斬新社長の猛攻は続く。気配を潜めて死角から攻撃。反撃が決まっても重厚な装甲と手当て布の回復によって無駄になる。
 このままではいずれ捕捉される。波に乗る敵を沈めるには強烈な一撃を叩き込むしかない。焦燥に駆られながらも、ギュスターヴは使役する影に指示を発した。
「|カラス《Miserere nobis》、敵が……悪がどこにいるかを嗅ぎつけろ」
 影から飛び出したカラスがギュスターヴを軸にして旋回する。
 やはり敵の姿は見えない。
 静かな室内。ギュスターヴが神経を尖らせる中、カラスが特定の方向を示すように鳴いた。
 沈黙したまま指先を向ける。これが外れれば刃の餌食だ。
 どうか、主よ。祈りを捧げ、ギュスターヴは口を開く。
「——あなたの罪に罰を」
 慈悲たる閃光が、空間そのものを切断する。そこにいた斬新社長をダイダロスベルトごと切り裂き、後ろへ大きく吹き飛ばした。
 立ち上がろうとして、斬新社長は膝を突く。相当なダメージを受けたはずだが、それでも笑いを覗かせた。
「……よく狙いを外さなかったね。どんな斬新な手を使ったのかな?」
「お前に言わせりゃ古風な手だ。主を信じる……それで十分なんだよ」
 篤い信仰心を宿し、ギュスターヴは戦闘を続行する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルテミシア・ルッシュリア
薄情だけど、まぁ生粋の六六六人衆ってそんなものだよね
UCを駆動させ、シャドウブレイドを構えながらダイダロスベルトを見切って攻撃を開始

過去の歴史に存在したあらゆる『武器』……ダイダロスベルトも例外じゃない
この世界に存在していたあらゆる『武器』が奪った知的生命体の総数
その数に比例して……あらゆる『武器』の召喚による『戦争』を、君に叩き付ける!

瞬間、ダイダロスベルトを多数召喚
斬新を切り刻む様に硬化させ、四肢の健を斬った後シャドウブレイドで心臓を突く

これがボクのシャドウとしてのやり方さ
斬新だったかな?
そう言って剣を振って血を払う



●シャドウとしての
「君、本当にあの社員に何の関心もないの?」
 戦闘の最中、アルテミシアは斬新社長に問いかける。
 シャドウの自分がここにいるのは、あるシャドウが同族意識を持ったからだという。それを他のダークネスも持つのか、何となく気になった。
「まったく」
 返ってきた言葉は酷く冷たかった。
「ウチは競争社会だからね。弱いんなら死んでも仕方ない。あーあ、っていうのは紛れもなく正直な感想だよ」
「そう。薄情だけど、まぁ生粋の六六六人衆ってそんなものだよね」
 問答の間にも、斬新社長はダイダロスベルトで自身の身体を包む。強化されていく相手を眺め、アルテミシアもシャドウブレイドを構える。実体のない影の剣は黒く揺れながらも、刃の向きは常に敵を捉えていた。
「そういう君はどうなんだ? シャドウにして人類の味方ってさ。僕としては二重に斬新で、とても楽しみなんだけどね!」
 斬新社長が接近し、同時に刃状の布を放つ。四方から隙間を縫うように迫るダイダロスベルトをアルテミシアは剣で弾き、細い部分を狙って包囲から脱出。相手を睨んでから、アルテミシアは姿勢を整える。
「本当に斬新なものが好きなんだね。分かった、とびきり斬新な技を見せてあげよう」
 シャドウブレイドをゆっくりと掲げ、斬新社長に狙いを定めた。
「過去の歴史に存在したあらゆる『武器』……奪われた命の業が、その『武器』を喚ぶ」
 アルテミシアの背後から、ダイダロスベルトが出現する。その数は膨張するように増加していき、すぐに数えられなくなった。
 ユーベルコード:|赤は暴を振るう最後の戦争である《マスタームーン・レッド・ウォー》。
 その効果により——世界に存在した『武器』を、それが奪った知的生命体の総数に比例するように召喚できる。
 この総数とは、いうまでもなく膨大な数だ。
「『戦争』を、君に叩きつける!」
 召喚されたいくつもの帯が、鳥籠みたく斬新社長を取り囲んだ。さっきの攻撃を何十倍ものスケールで再現していた。
 当然、逃げ場はない。
 ダイダロスベルトは敵を狙って殺到。絡まり合って硬化して、スクリューのような回転を伴って斬新社長を切り刻む。纏うダイダロスベルトの装甲を削るように突き破り、何本もの渦が四肢の健を切断した。
「——ッ!?」
 必然的に斬新社長の姿勢は崩れる。膝を突いて倒れたところを、アルテミシアは逃がさない。踏み込み、得物を握り締めた。
 目を見開き、左胸に向かって一突き。影が心臓を貫く感覚。手応えを覚え、アルテミシアは剣を引き抜いた。
 ぽたぽたと、影から血が滴り落ちる。床に転がる斬新社長へ、アルテミシアは再び問いかける。
「これがボクのシャドウとしてのやり方さ。斬新だったかな?」
 剣を振るい、払われた血が床に飛ぶ。不気味で美しい、赤い弧が描かれた。
 尋ねてから何秒か経って、笑い声が返ってきた。
「あぁ! 期待以上の斬新さだ!」
 オブリビオンに常識は通じない。素早く四肢と胸をダイダロスベルトで包み、斬新社長は立ち上がる。だが、ふらついているのが見て取れた。
「懲りないね。なら、『戦争』を続けよう」
 淡々と、剣を握り直す。
 何故自分がここにいるのか、その意味は分からない。今はただ、灼滅すべき相手を灼滅すればいい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓬・白羽


殺人鬼の会社が社員を大事にしないの、なんていうか……ありきたりだね
ブラック会社っていうのもありふれてる
斬新さを追い求めてる割にはよくある厭な会社だなぁ
色んな意味で潰してしまうのがみんなの為だね

相手は攻撃してくる時に不思議な体勢を取ってくるみたい
それって安定した体勢ではないよね
隙になるかも?

UCを使用して姿を隠そう
けれど消せない足音はわざと大きく立てる
敢えて相手に居場所を知らせて攻撃を誘発しよう
迫る攻撃は浮遊させた『幽境』を盾にして受ける
これでベルトで繋がれるのは僕じゃなくて幽境になるはず

相手の攻撃を凌げたら一気に接近
変な体勢を取ってるならすぐに回避には移行出来ないはず
日本刀で一気に切り払うよ



●ありきたり
 日本刀を鞘から抜いて構え、白羽はぼそりと呟く。
「殺人鬼の会社が社員を大事にしないの、なんていうか……ありきたりだね」
 実態は当然のようにブラック企業で、代替可能な部品のように命を扱う。一周して新しいようで、環境の劣悪な企業というのは世にありふれている。
「斬新さを追い求めてる割にはよくある厭な会社だなぁ。いろんな意味で潰してしまうのがみんなのためだね」
「なんとも的確な批評だ、今後の改善に活用しよう。アンケート協力者には斬新な一撃をプレゼント!」
 白羽の言葉をものともせず、斬新社長は腰を反らせて腕を伸ばす。独特な姿勢からはダイダロスベルトが繰り出され、肉を斬らんと白羽に迫る。
 横に跳んで布を避ける。背後にあった壁が爆破されたのを一瞥してから、白羽は斬新社長に視線を戻した。
「コンセプトはブレてるけど攻撃は一貫してる。隙がないね」
「来ないなら何度だって続けるよ。僕の斬新さみたいに、ダイダロスベルトは留まるところを知らなくってね!」
 冗談のような台詞に反して、斬新社長の勢いは止まらない。刃状の帯が何度も差し向けられ、白羽は攻めあぐねる。真正面から突っ込んでも切り刻まれて終わりだ。
 躱し、刀で弾く。何度も攻撃を凌ぐうちに、白羽はあることを発見した。
「攻撃するときに、随分と不思議な体勢を取るんだね」
 あるときは腰に腕を回し、あるときは脚を上げ、あるときはきゅるっと背中を向ける。不安定で不必要にも思えたが、それが攻撃のトリガーなのだろう。
「隙になるかも?」
 ならば、利用しない手はない。
 ぼんやりとした瞳で敵を見つめたまま、白羽は自身に闇のオーラを纏わせた。
 闇が、認識を遮断する。
「消えたか。それ自体は斬新じゃないね」
 相手の反応から姿を隠せたと判断し、白羽は移動する。対する斬新社長はその場で立ち止まり、腕組みしながら首を回した。耳を澄まし、痕跡を探る。
 足音が、自分を軸として旋回するように響いていた。
「詰めも甘い。出直しておいで!」
 振り向き際に攻撃を放つ。脚を大きく開いて繰り出された布は何かを爆破し、さらに拘束するように縛り付けた。
 口角を上げる斬新社長。
 その笑みを崩すように、白羽は結ばれたダイダロスベルトの脇から現れた。
「掛かった。案外単純だね」
「おいおい、斬新な手品だな! どんなタネを隠していたんだ?」
「別に。縛った相手をよく見てみなよ」
 ダイダロスベルトで繋がれていたのは、浮遊する鏡——幽境。
 認識を遮断できても自分が発する足音は消せない。それを逆手に取ってわざと大きく足音を立て、攻撃を誘発。その攻撃を幽境で受け、ダイダロスベルトで繋ぐ対象を幽境に固定した。
 相手は不安定な体勢。すぐに回避には移行できない。しかも武器を射出した直後で反撃は不可能。
 隙だらけだ。
「もらい」
 懐へと白羽が飛び込み、日本刀を振るう。横一文字に振られた刀で斬り払われ、斬新社長は後方へ吹っ飛んだ。
「斬新さばかり求めてるから、大事なときに足元を掬われるんだよ。それも、ありきたり」
 穏やかな声色で注意を飛ばしつつ、白羽は繰り返すように日本刀を構えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天羽々斬・布都乃

『ふむ、天井から登場とは斬新な敵じゃな。
布都乃も対抗して天井から逆さになって登場じゃ』
「いやですよっ!?」

スカート状の巫女服の裾を抑えながらいなりに文句を言い――
天羽々斬剣と布都御魂剣を構え勝負です!

『布都乃、敵は想像もつかぬ斬新な攻撃をしてくるようじゃ!
気を付けるのじゃ!』
「――視えています」

敵は、斬新なポーズ(ポーズはお任せ)と斬新なファッション(ファッションセンスはお任せ)と斬新な攻撃方法(攻撃方法はお任せ)で攻撃してきますが、未来視によって視えていれば斬新でも何でもありません。
すべて回避し、反撃で神剣を叩き込みます。

「さあ、次はどんな斬新な攻撃ですか?」
『布都乃、容赦ないのう……』



●限界
 斬新な登場演出を回想し、いなりはマイペースに言う。
『ふむ、天井から登場とは斬新な敵じゃな。布都乃も対抗して天井から逆さになって登場じゃ』
「いやですよっ!?」
 思ったよりとんでもない提案に、布都乃は反射的にスカート状の巫女服の裾をぎゅっと抑えた。天井から逆さになろうものなら、と想像して頬を赤らめる。
 だが、そもそもそれに何の意味があるのだろう。
「っていうか、斬新さを真似して何になるんですか!?」
『それもそうじゃな』
「僕としては嬉しいんだけどねー。斬新な僕のフォロワーが増えてくれるっていうのはさ!」
 布都乃といなりのやり取りに割り込むように、斬新社長が接近する。
 敵の声に思わず振り返り、二本の剣を握る手に力が入った。
「しまった! 普通に戦いの最中でした!」
『布都乃、敵は想像もつかぬ斬新な攻撃をしてくるようじゃ! 気を付けるのじゃ!』
「大丈夫です、敵の攻撃はすべて——」
 布都乃の右目が金色に輝き、未来の情景が視界に反映される。
 敵はファラオのように腕を交差させ、そのままダイダロスベルトで全身を包み、床と水平になるように跳んでドリルのように突撃してくる!
「——視えています」
 正面で構え、敵が腕を交差させるのを捉えた。その瞬間に横へ跳ぶ。直後、斬新社長が回転しながら布都乃のすれすれを飛んだ。
 斬新な攻撃が不発に終わり、体勢を整えるためにダイダロスベルトを解除する。そこを狙って布都乃は斬りかかった。振り下ろされた剣が斬新社長の胴を裂く。
「君、なかなかやるね! 僕の斬新な攻撃を予測していた、そんなふうに見えたよ」
「はい! 私にとってあなたの攻撃は斬新でも何でもありません! もう一度やってみせてもいいですよ!」
『おい、布都乃!』
「なんですか? 今かなり大切な場面なんですが」
 突然、いなりが布都乃を呼び止めた。声色から、いなりが伝えようとしているのも真面目な内容のようだ。
『何度もあやつの攻撃を繰り返させるな! そのうち限界が来るぞ!』
「限界って……何のですか? 敵?」
『分らんが限界は限界じゃ!』
「いなり、今回ばかりは真剣に戦わせてください。さあ、次はどんな斬新な攻撃ですか?」
『布都乃、容赦ないのう……』
「ご要望とあらばお披露目しよう! 何度でもね!」
 斬新社長が攻撃に移行しようとする。再び、未来が布都乃の頭に流れ込んだ。
 オペ前の医者のように手を掲げ、それを上へ突き出す。するとダイダロスベルトは敵の腕に纏わりつき、布の先端が天井を貫いて伸びていく。数秒後、天井から雨のように刃状の布が降ってくる。
 これは躱せそうにない。
 なら、攻撃される前に突っ込んで未来を変えるしかない。
 そう判断を下し、布都乃は床を蹴った。
『布都乃、そのままシメになる攻撃をするのじゃ!』
「そのつもりですけど……何故ですか?」
『これ以上続けても『斬新な』で全部省略される気がするからじゃ!』
 いなりが何を言っているかは分からないが、とにかく布都乃は走りながら剣を構えた。
「よく分かりませんが、好きにはさせませんよ!」
 振るわれた二本の剣、繰り出された斬撃が斬新社長を吹っ飛ばす。
 それは敵に痛手を与えると同時に、知らない誰かを救ったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠藤・修司
何が斬新だか……
ブラック企業なんてありふれてるし
企業として殺人をするってのも別にそう目新しいものでもない
その武器だって灼滅者達が量産しちゃってるしさ
昔は斬新だったのかもだけど、今となっては退屈なものでしかないね

とはいえ、あの武器は間合いが読みにくい
炎の魔弾を牽制で放ちつつ、捕まらないように距離を取って動くよ

こちらの動きを掴まれだしたか
それじゃあそろそろ……

星をつくり、呪文を唱える【UC使用】
人格を切り替えつつ、他の“僕”達にも戦って貰おう
変わるタイミングは“僕”に任せて臨機応変にね

七不思議の怪談、式神、テニスボール、雷の魔弾
どれもその世界だとありふれた技だけど、これだけあれば物量で押せるだろう



●掛け算をしよう
「何が斬新だか……」
 文句の混ざった呟きを修司は漏らす。続けざまに杖を斬新社長に向ける。零と無限の記号を象った装飾が相手へと突きつけられた。
「ブラック企業なんてありふれてるし、企業として殺人をするってのも別にそう目新しいものでもない。その武器だって灼滅者たちが量産しちゃってるしさ」
 もはや一点物ではなくなったダイダロスベルトが、容赦なく修司を狙って放たれる。柔軟に軌道を変えて斬り刻もうとしてくるそれをどうにか避け、修司は杖を振るった。
 炎の魔弾が発射され、その後も追い打ちをかけるように炎は飛ぶ。しかし斬新社長は不敵な笑みを零すと、ダイダロスベルトを曲げて易々と魔弾を防いだ。
「昔は斬新だったのかもだけど、今となっては退屈なものでしかないね。君の斬新なところって結局何なのさ?」
「こりゃ手厳しいね! でも、斬新さってのは日々更新されていくものだ! 今が退屈なら明日斬新になればいい! 会社が軌道に乗ったらやりたいことが山ほどあるんだよね!」
 腕を掲げれば、布が修司を包むように広がる。巨大生物の噛みつきにも見えるその攻撃を、修司は咄嗟に後ろに跳んで回避した。
 退屈ではあるが、あの武器は間合いが読みにくい。距離を取って動いているにもかかわらず、アドバンテージを帳消しにするように伸長する。
 魔弾を放っての牽制を繰り返していたが、こちらの動きを掴み始めたらしい。眼鏡の奥の淀んだ目で、修司は敵を睨む。
「それじゃあそろそろ……」
 右手の指で空中に、一筆書きで星を描く。走らせた指が同じ地点に戻ったとき、呪文を唱えた。
「頼んだよ、“|僕《みんな》”」
 修司の意識が落ちる。杖を支えにずるりと膝を突いた。
 隙を晒したと判断し、斬新社長は一斉にダイダロスベルトを差し向ける。
 攻撃が届く直前、刃物のように硬化した布は、それがただの布であるかのように切り落とされた。
「へぇ、これが斬新コーポレーションの社長か。灼滅者の先輩から聞いた通り、変なサングラスだなぁ」
 若々しい喋り口で修司が話し出す。驚く暇もなく、斬新社長は自身の真横に視線を投げた。
 鋏を持った不気味な女が、予備動作もなく斬新社長に襲いかかる。
「ベタな七不思議だね! 悪いがその程度じゃ驚かないよ!」
「だったら、こんな妖はどうだろう?」
 鋏を振り回す女を相手する敵の背中が切り裂かれた。
 黒猫と八咫烏がそれぞれの爪を構えて仕掛ける。挟み撃ちの構図になり、斬新社長は防戦一方に。その様子を見つめる修司の手には、印が結ばれていた。
 これは何だ。都市伝説ではない、もっと古い何かか。
 正体を考える斬新社長の顔面に、突然テニスボールが直撃する。
「があッ!?」
「特に回転のないボールだ。そう驚くものでもないよ!」
 パチッと笑顔を弾けさせ、くるっと修司はラケットを回した。
 それを手放し、持ち替えたのは最初持っていた無銘の杖。元の修司に似た仏頂面を浮かべ、杖を両手持ちで構える。
「どれもその世界だとありふれた技。だけど、これだけ揃えば斬新だろう?」
 くるくると翻弄するように入れ替わる人格と技。当然相手も追いつけていない。
 バチバチと杖の先端で雷が蓄積し、やがて魔弾となって放たれる。
「……別に、僕まで斬新を求めるつもりはないんだけど」
 コンビネーションを経て斬新となった雷撃が、敵を一方的に焦がすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茂多・静穂
相変わらず斬新な人ですね
どうも、直接は初めてですね
まずは……ダイダロスベルト開発ありがとうございます!
灼滅者時代は貴方の死後
大いに愛用させて頂いておりました!
流石に使いすぎて今は壊れちゃったんですが

なので貴方を倒して
その残骸か会社の在庫を貰っていきますね
開発物への感謝と貴方を倒す事は別問題ですので♪

メイガス装備で戦闘開始
グラップルの構えから敵を観察
強化した反応で斬新な攻撃方法を見切り必ず正面になるように体を動かす
愛用したと言ったでしょう
ダイダロスベルトの予備動作やその後の方向もある程度読めますよ!

流石、元獄魔大将
強化してもやばい痛みでしたが
耐えましたよ!
メイガスの拳に倍加したパワーを乗せて攻撃



●所有者戦争
 追い詰められながらも、次々と目を見張るような挙動で技を繰り出す斬新社長。
「相変わらず斬新な人ですね」
 その姿を視界の中心に置き、静穂も戦闘に割って入る。
 布を身体を纏わせる敵へ、静穂は深々と頭を下げた。
「どうも、直接は初めてですね。まずは……ダイダロスベルト開発ありがとうございます! 灼滅者時代はあなたの死後、大いに愛用させて頂いておりました!」
「なんだ、弊社製品のユーザーだったのか!」
「だいたいそうですね! 流石に使いすぎて今は壊れちゃったんですが」
「それは残念だ。だけどもウチは返品もリコールもやってないよ~?」
 斬新社長も腕を組み、しばし談笑。
 和やかな雰囲気の最中、静穂の肉体がハートバインドで拘束される。音を立てて武装が起動し、感じる締め付けに静穂は笑みを浮かべた。
「なのであなたを倒して、その残骸か会社の在庫をもらっていきますね! 開発物への感謝とあなたを倒すことは別問題ですので♪」
「斬新な脅し文句だね。生産ラインはまだないからこれは一点物だよ。死に際にサインでもしてあげようか?」
 実質的な抹殺宣言に笑い声で返し、斬新社長は先手を取る。
 腕を振り下ろし、背から刃のような布が放たれた。布は大きな流れを構築し、魚群のようにうねって迫る。
 構えを取り、ハートバインドが動く。食い入るように攻撃を捉える静穂の意思を汲み、小刻みに位置取りを変える。迫る布の群れに対して正面を取った。
「何故避けない?」
「すべての痛みは私のものですから!」
 鋭利な布が静穂とハートバインドに突き刺さる。歯を食い縛り、痛みを全身で浴びる。その間も静穂の口角が上がり続けていた。
 受け止めた布束を掴もうとしたところで、一度それらは引っ込む。
「尋常じゃない硬さだ! 一回じゃ貫けないね!」
「あはっ……どこから来ても、受け止めてあげますよ!」
「言ったね。じゃあこれはどうかな?」
 タクトのように斬新社長が指を振る。すると蛇みたくダイダロスベルトは持ち上がって、間隔をバラつかせて静穂へ殺到した。
 正面で構えるなら、時間差攻撃には対応できないだろう。
 斬新社長がそう判断して放った攻撃の一つ一つに、静穂は対応していった。
「愛用したと言ったでしょう。予備動作やその後の方向もある程度読めますよ!」
 刺さる布を両腕の拳で掴む。全弾攻撃は命中しているわけだが、受けた痛みは被虐精神へと変換され、力の根源となっていく。
 最後の攻撃を受け止め、布束のすべてが文字通り静穂の手中に収まる。悶絶しそうなほどのダメージに唇を噛んだが、同時に快楽に疼いてもいた。
「流石、元獄魔大将。強化してもやばい痛みでしたが……耐えましたよ!」
 布を握ったメイガスの拳を合わせ、引っ張る。
 釣り上げられたように斬新社長を引き寄せ、宙を舞う彼に向けて拳を握った。
「倍返し、受け取ってください!」
 返答を待たずして、ハートバインドの拳が斬新社長に叩き込まれる。
 受けた痛みをサイキックエナジーで倍加、その威力が乗った拳。無事でいられるはずがない。
 短く悲鳴を上げ、斬新社長が吹っ飛ぶ。あまりの威力にサングラスが砕けて素顔も覗く。それでもなお、風雲児は笑っていた。
「かつての灼滅者、そして猟兵……まだまだ斬新な刺激がある! 世界はさらに動くぞ! 次はもっと、斬新な事業計画をしよう!」
 巨大な野心を最後に発露して、その身体は靄となって消える。
 ガシャンと、持ち主を失ったダイダロスベルトがそこに落下した。

●新たな時代へ
 かくして、斬新コーポレーションは再び壊滅。
 このダークネスたちもまたオブリビオンとして蘇るかもしれない。不可解だが、今はそういう時代になってしまった。
 しかし、それでも——引き起こされるはずだった悲劇は、起きる前に灼滅された。
 サイキックハーツの新時代。猟兵が悪を滅する限り、それは平和なものであり続けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年07月22日


挿絵イラスト