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その予知の果てに待つ者は

#サイキックハーツ

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#サイキックハーツ


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 ――グリモアベースの片隅で。
「ぐっ……あっ……!」
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が呻きを上げると同時にその双眸を蒼穹に光らせる。
 そうして頭の中に流れ込んでくる情報を掴み取るや否や、胸元にしまっていたタロットが輝き、自らの周囲に現れるのを見て。
「予知には、予知を……か」
 そう紡いだ優希斗が言の葉を聞いた猟兵達が彼の所に集まってきたのを見て、皆、と優希斗が微笑みかけた。
「……サイキックハーツ。嘗てダークネス達によって支配されていたその世界に現れるオブリビオンの存在が視えたよ」
 ――けれども。
 その笑みに微かに翳りが浮かんでいる様に見えるのは気のせいであろうか。
 猟兵達がそれぞれの表情を浮かべて自分を見てくるのを確認しつつこうなるか……と優希斗がそっと息を漏らした。
「今回、俺が視ることが出来たのは、サイキックハーツ世界のとある町を、ロード・クロムが襲い、エスパー達に大規模な被害を出そうとしている事件だ」
 ――そのロード・クロムを操る者が後ろにいる。
 その者の名を淡々と紡ぐ優希斗。
「この事件の裏に居るのは……うずめ様。昔、ある場所で灼滅者達によって灼滅された、そんな相手、何だけれどね」
 ――そのうずめ様がエスパー達を殺戮する。
 と見せかけて、本当のうずめ様達の狙いは……。
「……ロード・クロムもそうなんだけれど。本当の狙いは猟兵である皆だ。この町で大きな被害がエスパーに出ることが予知されれば、皆が出撃してくることを、うずめ様は既に予知しているんだ。……けれども」
 ――そう、けれどもだ。
「それによって多くの人々が犠牲になるのは避ける必要がある。だからこそ、皆には至急現場に向かい、先ずはロード・クロムを撃破して欲しい。そうしたら……うずめ様が用意した敵の軍勢が姿を現すだろう」
 ――それは、嘗てロード・クロムが強化したデモノイドのナイト達。
「ともあれ、だ。彼等を撃破しなければ、皆はうずめ様と対峙することも出来ないだろう。いずれにせよ、うずめ様達は、元から目障りな皆を誘き寄せ、そして倒すために姿を現している。人々の避難も勿論大事だが、何よりも……」
 ――その言の葉と、共に。
 現れたタロットの一枚……『皇帝』の正位置を示して、猟兵達に微笑む。
「……誰1人欠ける事無く勝利して、無く生きて帰ってきてくれ。どうか皆、宜しく頼む」
 その、優希斗の言の葉と共に。

 ――蒼穹の風が吹き荒れると同時に……猟兵達が姿を消した。


長野聖夜
 ――その予知を越えた予知との戦いを。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 とうとう出てきましたね、サイキックハーツ。
 と言う訳で、今回は皆様に存分にオブリビオン達と殴り合って貰います。
 取り敢えず町についてですが、一般的な都市部の住宅街位のイメージです。
 避難場所などは、お任せ致します。
 第1章のプレイング受付は下記となります。
 プレ受付:オープニング公開後~6/30 9時頃まで。
 もし予定に変更があれば、タグかマスターページにてお知らせ致します。

 ――それでは、良き戦いを。
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第1章 ボス戦 『ロード・クロム』

POW   :    クロムソード
【双剣】から【金属化を与える特殊デモノイド細胞】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[金属化を与える特殊デモノイド細胞]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
SPD   :    クロムナイト
召喚したレベル×1体の【武装デモノイド「クロムナイト」】に【クロム合金製の武器や鎧】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
WIZ   :    クロムウェポンズ
無機物に【ロード・クロムのデモノイド細胞】を憑依させて【クロム合金製の武器】を生やし、生物の様に使役する。大きい無機物ほど使役難易度は上昇する。

イラスト:キリタチ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

赤城・碧
「サイキックハーツ……デモノイド……うずめ様……『俺』は聞いたことのない言葉のはずなのに、何故だ。何故こうも聞き覚えがある……頭が痛むな。」

ユーベルコード発動して斬撃と爆発のともなった衝撃波を無数に送る。斬撃の伴った【衝撃波】と爆発による【範囲攻撃】で【2回攻撃】を達成しつつ、闇と風の【属性攻撃】も上乗せ。

相手からの攻撃は【第六感】と【見切り】で無理やり避ける。

「俺は、こいつを知っている……?」


ウィリアム・バークリー
新たな世界のオブリビオン。いきなり強敵のようですね。
だからといって、臆しているわけにはいきません。
ロード・クロム! これ以上の狼藉はぼくら『第六の猟兵』が許しません!

氷の「属性攻撃」を「武器に魔法を纏う」ことで『スプラッシュ』に付与。
クロム卿の双剣と真っ向斬り合いを演じます。
クロム細胞をばらまく素振りを見せたら、そこが狙い目。その隙をついて、鎧の隙間に『スプラッシュ』を突き込みます。

あなた方ダークネスが、猟兵を標的にしてくるのが異様に早い。それも、あなたの後ろにいるうずめ様とやらの予知能力ですか?

情報を引き出すように見せかけて、Stone Hand。身体を拘束して『スプラッシュ』で断ち切る!


朱雀門・瑠香
全ての人が寿命以外で死ななくなった世界・・・・・・しかしオブリビオンには無意味となれば助けねばなりませんね!
避難は他の方に任せて私はあのクロムとやらの相手をしましょう。
なんか懐かしい感じがしますけど何故でしょうね?いえ、今は気にしてもしょうがないですね。
周囲の地形を利用して相手の攻撃を遮蔽しながらダッシュで接近。こちらに飛んでいた細胞は武器で受けておき浸食が広がり切る前に相手の懐に入り込むことを優先して破魔の力を込めた一撃で切り払います!

元より引くつもりはないのでしょう?ならせめて私自身で終わらせてあげます。たとえそれがその場しのぎにすぎなくとも・・・


館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎

…グリモア猟兵に、何があった?
まさか…いや、今は憶測で語るのは危険だな

オブリビオン…この世界風に言うとダークネス、か
世界が違っても、オブリビオンによる犠牲は見逃せない
ただ、叩き斬るだけさ

クロムソードの軌道を「視力、見切り」で見極めながら回避するが
特殊デモノイド細胞は暫く残り続けるんだよな
「オーラ防御」で直に触れないよう対処しておく

途中ロード・クロムの闇に触れ指定UCが勝手に発動
一瞬、爆発的な力に酔いそうになるが、呑まれたら戻れなくなるとも直感
以後は短期決戦を狙い「ダッシュ、地形の利用」で一気に接敵し
「怪力、2回攻撃、鎧砕き、部位破壊」で双剣と鎧を砕きながら斬り倒す!


クローネ・マックローネ
NG無し、絡みOK、アドリブ歓迎
【POW判定】
真剣口調で話すよ

|過去の《サイキックハーツで過ごした》記憶が戻った事で、|ロード・クロムやうずめ様達《ダークネス》についての情報も思い出してきているよ

アナタは…レアメタルナンバーのデモノイドロード、ロード・クロム
所属は朱雀門高校、朱雀門掌握後は爵位級ヴァンパイア陣営につく
配下のデモノイドに『鎧』を装備させて強化する能力を持っている、だったね
…うん、大分思い出してきたよ
数年ぶりの再会なんだ
|灼滅《ころ》してあげるよ、|ロード・クロム《ダークネス》

ワタシは主に|一般人《エスパー》の【救助活動】を行うよ
一般人への攻撃は身体を【硬化】させたワタシとデモノイドちゃんがなるべく【かばう】ようにするよ

UCは『ワタシの悪魔砲兵部隊』
射撃型デモノイド達による溶解液弾の【弾幕】で遠距離から攻めるよ
ある程度の距離を維持するようにして、クロムソードの直撃を避けるよ
手が空けばワタシもネクロオーブによる中・遠距離攻撃で攻めるね
技能は【エネルギー弾/弾幕/誘導弾】を使うよ


司・千尋
連携、アドリブ可

情勢把握できてないんだけど猟兵狙ってどうするんだ?
敵も予知があるって面倒だな


基本的にはエスパーの防御や避難誘導優先
住宅街だと周囲の建物も守った方がいいのか…?
避難場所があるならそこへ誘導、防衛する

攻撃は『月夜烏賦』を使う
近接・投擲等の武器も使い
早業、範囲攻撃、2回攻撃など手数で補う
死角や敵の攻撃の隙をついたりフェイント等を駆使
確実に当てられるように工夫
敵以外には当てないようにする

敵の攻撃は結界術と細かく分割した鳥威を複数展開し防御
オーラ防御を鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
割れてもすぐ次を展開
回避や防御、相殺する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
エスパー達への攻撃は最優先で防ぐ


彩瑠・姫桜
ここがサイキックハーツ、なのね
初めて訪れたはずなのになんとなく既視感を感じるのは
私の故郷と同じ現代地球だからなのかしら

ともあれ、ブランクありすぎて色々久しぶりだけど、守るための戦いなのだし
仲間と連携しできる限り臨機応変に
ダメージ与えられるように頑張ってみるわね

ロードクロムが使役してくる無機物が単体なのか複数なのかはわからないけれど、
本体以外に面倒なのが出てるならそっちを相手して力を削いでいった方がいいと思うから

UCで自己強化した後、前に出て戦うわ
敵の攻撃は[第六巻][武器受け]で直接ダメージを避け、動きを観察し[情報収集]する
弱点の目星をつけたらドラゴンランスで一気に[串刺し]にするわね


レイ・アステネス
アドリブ、連携可

懐かしい名前だな…
私の知っているものとは厳密には違うのかもしれないが

実戦は久し振りだから足手纏いにはならないように気を付けようか
指示があるならそれに従おう


避難場所に使えそうな場所がないか周囲を探しながら
ジャッジメントレイを使い後方支援に徹する
範囲は狭いが多少は役に立つだろう

エスパーの避難を優先するが
敵が近い場合は装備武器等も使用し攻撃もする
ダメージを与えられるとは思わないので行動阻害を狙う
敵を観察して行動を予測し邪魔をするように動く

悪夢の「影」を影業のように使い、武器に当て逸らし回避や防御する時間を稼ぐ
細胞に直接攻撃は可能なのか?武器の生際を狙ってみよう
必要なら声かけ等も行う


ビスマス・テルマール
話は聞かせて頂きましたが、それはある意味エスパーの方々を人質にとっている様な物ですよね

わたし達猟兵が目当てで、こうしてエスパーの方々の危機を頬って置けないのを解っていて

◯POW
悪質ですが、敢えて乗りましょう
房総半島のご当地ヒーローとして

開幕オーバーロードで真の姿に

他に場に同席してる猟兵がいれば
『団体行動&集団戦術』で連携し

『オーラ防御&激痛耐性』で備え
『空中戦&推理移動』で駆け
房総半島のなめろうの『ご当地パワー』
を込めた『誘導弾&エネルギー弾&弾幕』の『一斉発射』をロードクロムやデモノイド細胞にばら蒔き

遠距離や、残存のデモノイド細胞及びUCを使った範囲近距離攻撃を『第六感』で『瞬間思考力&見切り&残像』で回避

隙を見て、なめろうの『ご当地パワー』全開で『早業』UC発動、なめろうスプラッシュ・サイクロンでクロムとデモノイド細胞ごと『鎧無視攻撃&鎧砕き&斬激波&範囲攻撃』ですっ!

貴方のデモノイド細胞と
わたしの『ご当地パワー』
どちらが打ち勝つか、尋常に勝負ですっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎

ふむ、ここが新しく繋がった世界というか。
…いやな、身内の一人(『静かなる者』)が、何やら既視感持っとって。

しかし、やることは変わらぬ。わしは霹靂に乗り、機動力を確保しつつ。黒燭炎での薙ぎと突きであるな。
金属化はマズイので、四天霊障による攻性結界も貼っての阻止もな。

予知されておろうが、わしらのやることは変わらぬからなぁ。
止められるものは、止めてみせよう。


霹靂「クエッ」
機動力確保のために、低空飛行スレスレ。


有城・雄哉
【WIZ】
アドリブ大歓迎
連携は可能なら
可能なら現地合流したという形で参加希望
服装は黒のライダースーツ

ここ1年、灼滅されたはずのダークネスが蘇り、エスパー達を襲っている
俺も何度か対処しているし、今回も通報を受けて対処するつもりで駆けつけたが…
…復活したのがロード・クロムだと!?

既に何名かが交戦開始しているようだが
明らかに学園生じゃないのが何人かいるな
誰に依頼されて駆けつけたのかは気にはなるが
考えるのは後にして先にエスパー達を避難させなければ
公民館や学校が近くにあれば、そこに避難誘導し安全を確保しょう

避難が完了したら、俺も参戦
即刻殴りたい衝動を抑えながら、死の永劫点を見極めるためロード・クロムを観察する
時間はかかるが、もし見極められれば…確実に手傷を負わせられるからな

見極めたら指定UC発動し、死角から強襲
クロムウェポンズと化した無機物を「グラップル」で捌き叩き落としながら
死の永劫点に向けて真っ直ぐメリケンサックを嵌めた拳を突き出す!
ロード・クロム!!
貴様はここで、再び灼滅されろ…っ!!




 ――その問題の住宅街に辿り着く少し前で。
「……此処がサイキックハーツ、なのね」
 そう彩瑠・姫桜が妙な既視感を覚えながらポツリと呟くのに、そうだ、と青い瞳と金髪の男が深々と首肯した。
「改めて良く来てくれたな、猟兵達。私がこの様な形で君達を現場に案内する事になるとは思っていなかったが」
「そうですね。新たな世界、サイキックハーツ。いきなりの強敵相手に市民への被害が出るなんて最悪の事態が起きるよりも前に、貴方の様な現地の灼滅者と合流できたのは幸いでした、レイさん」
 そうウィリアム・バークリーが軽く謝辞を述べるのに、それならば幸いだ、と微笑を浮かべて首肯するのは、レイ・アスネテネス。
 ――|灼滅者《スレイヤー》
 今のサイキックハーツを救った英雄達の1人であるレイの様子を見て、けれどもよ、と司・千尋が皮肉げに肩を竦めた。
「此処の情勢把握が正直、俺には良く出来てないんだけれどよ。俺達……いや、お前達も含めてか。オブリビオンが猟兵狙って如何するんだろうな?」
 その千尋の問いかけに。
 レイがさて、と苦笑を零す。
「元々、この世界の支配者は復活ダークネス……ああ、今はオブリビオンだったな。そのオブリビオン達が、私達の世界の支配者だった。であれば、支配していた場所を取り返すために行動を起こすと言うのは、まあ、有り得る話ではあるが……確信がある訳では私も無いな。……っと、如何した、館野?」
 そう千尋に説明をしていたレイが、そうふと問いかけたのは。
(「……あいつに、何があった? まさか……」)
 そう難しい表情で少しあるかなしかの何とも言えないグリモア猟兵の表情を思い出していた、館野・敬輔。
 そのレイの問いかけに、敬輔はいや、と軽く頭を横に振る。
「なんでもないよ、レイさん。……少し、気になることがあっただけだ」
 ――そう言えば、このレイと言う人物は……。
 ふと、ある事を思いつき敬輔がレイへとそれを口の端に乗せて問おうとする直前で。
「先程、彼から話は聞かせて頂きましたが、ロード・クロムのやり方は、ある意味でエスパーの方々を人質に取っている様なものですね。わたし達猟兵が目当てて、こうしてエスパーの方々の危機を放って置けないのを解っていて」
 敢えて現状に対する問題提起をしてみせたのは、ビスマス・テルマール。
(「……何て悪質な手、なのでしょうか……」)
 そうビスマスが内心で思うその間に。
「とは言え、全ての人が寿命以外で死ななくなった世界……それでも、オブリビオンには無意味となれば、助けない理由もありませんがね!」
 そう何時になく気合いを籠めてそう言の葉を紡いだのは、朱雀門・瑠香。
 そんな瑠香の中にも、如何してもしつこく自分の中に感じ続けている懐旧の様な『何か』がある。
 そして、それは……。
「……サイキックハーツ……デモノイド……うずめ様……『俺』は聞いたことの無い言葉の筈なのに、何故だ。何故こうも聞き覚えがある……? くっ」
 頭痛を伴いながら、流れ込む様な何かを感じ取っていた赤城・碧も同様なのであろう。
 いや、碧の感じているそれは……。
「……あいつと同じ様な現象なのか」
 そう敬輔が小声で囁き返す、その一方で。
「……そうだね。でも、それはきっとワタシが|思い出した《・・・・・》記憶とも密接に結びついていると思うよ、赤城さん」
 そう淡々と、真剣な口調で言の葉を紡いだのは、クローネ・マックローネ。
「……わし、と言うか、我等の内の1人……孝透もまた、この地に関しては既視感を持っていると、わしの中で告げてきているな。じゃが……お主の様にそこまではっきりとは言えないそうだ」
 そのクローネの呟きに、愛グリフォン霹靂に乗り込み低空飛行を続けながら、そう応えたのは馬県・義透――を構成する四悪霊が一柱――『侵す者』馬舘・景雅だった。
(「やはり何処となく彼等の面影を持つ者達は、その様な懐旧を感じるのだな。いや、それもだが……」)
 |瑠香《・・》や|姫桜《・・》、|碧《・》を中心とした者達の様子を観察し、義透の言葉を聞きながらレイが内心でそう思いつつ、さりげなくクローネに問う。
「君は、マックローネだったな。と言う事は、君も奴の存在について知っているのだな」
 そのレイの興味深げな口調でのそれに、まあね、とクローネが微笑と共に首肯する。
「|この世界《サイキックハーツ》に戻ってきたからかな。此処で数多の敵を|灼滅《ころ》した記憶も少しずつ思い出してきているよ。今回の敵……ロード・クロムや、その背後にいるうずめ様の情報も思い出してきている感じだね」
 そのクローネの確固とした言の葉に。
「そうか」
 とレイが静かに首肯した、丁度その時。
 不意に、ごそごそと武装したデモノイド達らしき姿を認めて、思わず目を細めていた。
 未だ武装デモノイドとしても名高い『クロムナイト』達は、住宅街に進軍を開始している最中。
 正しく人々を避難させ、彼等と接敵するには適切なタイミングでもある。
(「まあ、予知とはそう言うものだがな」)
 そうレイがグリモアベースと呼ばれている武蔵坂学園とも繋がったその場所を思い出して微笑んだところで。
「……俺達が来ることまで計算に入れて準備をしておくことが出来る相手とはね……。敵にも予知があるってのは、面倒な話だな」
 そう千尋が苦笑と共に摺り足で前進しながら、無数の鳥威を展開し、その全てに焦げ茶色の結界を張り巡らして、住宅街と人々の守りを固め。
「……避難所としては、私達が来た方向にあった小学校の体育館が妥当だろうな。人々の避難には私が回ろう。何せ、最近になって武蔵坂学園に招集されたのでな。未だ、実戦の勘が鈍っている」
 そう微苦笑と共に告げるレイのそれに。
「まっ……俺は守るだけでも割と一杯一杯になりそうだ。他は任せたぜ、お前等」
 そう皮肉げに肩を竦めて応える千尋の言葉を聞いて。
「ワタシも出来る限り、|一般人《エスパー》を守る様な位置取りを心がけるよ。勿論、援護はするけれど」
 それに同意する様に言の葉を紡ぐクローネの其れを聞いて、では、とウィリアムが。
「ええ、防御と避難は任せましたよ、レイさん、千尋さん、クローネさん。……行きますよ」
 そう告げてロード・クロムと彼の召喚した数百体の『クロムナイト』達を見るのを見て。
「……行け――叢雲乱閃――」
 そう小さく碧が呟くと、ほぼ同時に。
 抜刀した妖刀≪黒百合≫の刀身を大地に擦過させ……それを跳ね上げるた、その瞬間。
 闇と風の綯い交ぜになった颶風が685発の斬撃の波と化して、現れたクロムナイト達を纏めて切り払わんと襲い掛かった。


 ――轟!
 放たれた白き光を思わせる風と漆黒の斬閃に彩られた斬撃の波が、個別に速度を変えて、召喚されていたクロムナイト達に襲い掛かる。
 其れに合わせる様に千尋が鳥威を展開しつつ自らの瞳を金色へと変化させて輝きを伴わせた青白く光り輝く刀身持つ小太刀、月烏と漆黒の短刀、烏喙を投擲するのを見て。
 黒のライダースーツを纏った青年が、そっと嘆息を1つ零す。
 既に住民の避難や救助活動が始まっているのは幸いであろうか。
 其の住民を守る様に展開されている無数の鳥威と焦げ茶色の結界、更に敵の進行を食い止める様に凡そ、155体の……。
「射撃型デモノイド!? あれがエスパーを守っていると言うのか……?!」
 本来であれば、ダークネスの中でも既に滅びた種族である筈の射撃型デモノイドが一斉射撃でダークネス達の進軍を止めている光景は、流石に予想外ではあったが。
 気を取り直すように頭を横に振りつつ青年は改めて状況を整理するべく思考を開始。
(「……この1年、灼滅された筈のダークネスが蘇り、エスパー達を襲っている」)
 其れに対して自分も何度か対処をしてきたし、今回も通報があって駆け付けたつもりだが……。
 今、千尋が投擲武器を解き放ち。
 クローネの召喚した射撃型デモノイド達が射抜いている敵の姿を目の端で捕らえた青年は、思わず息を飲んでいた。
「なっ……復活ダークネスが近接型クロムナイトと……ロード・クロムだと!?」
 そう思わず息を飲んでいる青年に。
「有城」
 千尋の鳥威に守られながら、周囲の人々を避難させていた灼滅者……レイに呼びかけられ……青年、有城・雄哉がひゅっ、と息を飲んだ。
「……アステネスさん?! 如何やって、此処に!? それと、既に交戦している彼等は一体……?!」
 その雄哉の問いかけに。
 落ち着け、と言う様にレイが静かに頭を横に振り、言の葉を紡ぐ。
「君が来てくれたのならばありがたい。元々、私達灼滅者……猟兵を狙ってオブリビオンが現れたのだが、其方との戦いに多くの者が気を取られていてな。人々の避難の手が足りない以上、君にも手を貸して欲しい。ロード・クロム達の本当の目的は私達、猟兵の様だからそれでも大丈夫かもしれないが、万が一はある」
 そうレイが状況を説明し、協力を求めてくるのに対し。
「……アステネスさんの事だ。ある程度避難所には目途をつけているんだろう?」
 逡巡しつつも雄哉が首肯して問うのに、レイがああ、と人々を誘導しつつ、自分達が向かってきた道を指し示した。
「丁度私達が来た方向に学校がある。一先ず、其方に人々に直ちに避難する様に呼びかければ、問題は起きないだろう。頼むぞ、有城」
 そのレイの信頼に。
 雄哉が仕方ないとばかりに同意しつつ……ところで、と言の葉を紡いだ。
「猟兵に……オブリビオンだったか? 一体、それは……?」
 その雄哉の問いかけに。
「そうか。未だ、君の生活圏には完全に浸透していないのか。まあ、日も浅い以上、致し方ないか。去年の5月に蘇ってきた復活ダークネス達は、今はオブリビオンと名を改められ。私達灼滅者と共に向こうで交戦している|世界中《・・・》を渡ってオブリビオンと戦う者達は、『猟兵』と呼称を変えている。そういう意味ではこうしてオブリビオンと戦っている私達も猟兵に覚醒した者、と言う事になるな」
 そのレイの説明に。
 成程、と短く諒解して雄哉が人々の避難をするべく動き出した。
(「出来ればロード・クロムをさっさと殴り飛ばしてやりたいが……」)
 それよりは先ずは一般人達の避難誘導が先だろう。
(「誰の采配か、情報かは分からないが……アステネスさんが状況を此処迄きちんと説明して協力を要請してくる以上、情報のリソースは確かな様だな」)
 思いつつ雄哉はレイと共に千尋の防御による支援を受けながら、人々を誘導し続ける。
 ――必ずロード・クロムを撃破すると、決意を固めながら。


「……この懐かしさは、私の故郷と同じ現代地球だからなのかしらね。……ともあれ、ブランク在り過ぎの影響か色々と久しぶり過ぎて、中々勘が鈍っているわ」
 自らの身に、『白燐蟲』を纏わせながら。
 姫桜が愛槍のschwarzとWeißの二槍を以て、碧の解き放った風と闇の斬撃波に斬り捨てられたクロムナイトの残骸を乗り越え槍を回転させつつ振るう。
『白燐蟲』によって覆われた二槍が巻き起こした衝撃の波が、射撃型デモノイド達の一斉射撃及び、碧の斬撃による攻撃から免れたクロムナイト達に追撃を掛けるその間に。
「……この世界風に言うと復活ダークネス……オブリビオンによる犠牲を見逃す訳にはいかない。此処で叩き斬る」
 そう敬輔が言の葉を紡ぎながら、その腰にある黒剣を抜剣。
 同時に、赤黒く光り輝くその刀身で大地を抉り、衝撃の波を生み出した。
(「……この世界のエスパーは、物理攻撃を完全無効にするらしいが……このオブリビオン達も、そういう能力を持っているのだろうか?」)
 そう微かな疑問と不安が敬輔の脳裏を掠めるが。
「大丈夫だよ、館野さん」
 レイや千尋が主になって整然と避難している住民達の背を守る様に自らの皮膚をナノマシンアーマーで硬化させながら。
「仮にワタシたちの物理攻撃が通じないと言うエスパーと同じ法則をこの世界のオブリビオン達が持っていたとしても。痛みや、衝撃、苦しみは、|感じるんだ《・・・・・》。だから、ワタシ達がユーベルコードを乗せずに攻撃をする事は、無駄にも無意味にもならない」
 そう敬輔のサバイバル仕様スマートフォン越しにその知識を愛用スマホで伝えつつクローネが射撃型デモノイド達に号令を下す。
 下された号令によって敬輔の解き放った衝撃の波によろめいていたクロムナイトを射撃型デモノイドが射抜き、クロムナイトを溶解させていく。
 その様子を霹靂の背に跨った義透が空中から見下ろしつつ、警戒を続けていた……その時だった。
『やって来ましたか、灼滅者達』
 その言葉と共に。
 上空の義透に向かって跳躍しながら、双剣を振るうのは、全身を漆黒と青に塗り潰された鎧を覆ったデモノイド・ロード。
 そのデモノイド・ロードの双剣による見事な剣捌きに対して、義透は咄嗟に四天霊障を起動。
 |彼等《・・》の無念により張り巡らされた攻性結界が、ロード・クロムの双剣から発される特殊デモノイド細胞を絡め取った、その時。
「……ロード・クロム……! 其処に居ましたか!」
 その叫びと共に。
 住宅街を守る様に千尋が展開していた鳥威の影を縫う様に大地を疾駆していた瑠香が上空に向かって跳躍し。
「いりゃぁぁぁぁぁっ!」
 気合一声、神速の突きを脇から解き放つのに気が付いたクロムナイトが、義透の四天霊障を無理矢理解いた右の血錆の浮いた白刃の長剣で受け止め。
「……嘗て、私が所属していた朱雀門の学園と同じ名を持つ者が、この様な卑怯な振る舞いをすると言うのですか!」
 咆哮と共に白剣に乗せて瑠香の物干し竿・村正に自らのデモノイド細胞を這わせて、瑠香を金属化させようとしているその気配に気が付いて。
「そんなことをさせる訳にはいきませんっ! なめろうパワー……オーバーロード!」
 硬質な美少女型クリスタリアンであったビスマスの顔に、一瞬で何処か、何かのロボットを思わせる仮面が嵌め込まれ。
 全身をクリスタルの水晶の様なドレスに身を包み込まれたビスマスが、右手のなめろうフォースセイバーを銃型に変形させて引金を引く。
 刹那、解き放たれた光の房総半島なめろうパワーを浴びた無数の光弾が数百に分裂する様に撃ち出され、ロード・クロムの体を穿った時。
『……続けて襲ってくるのは、まさかロード・ビスマスだとでも言うのですか……?!』
 そう誰に共なく呟き、僅かに身じろぎ、その瞳を真紅に眩く光り輝かせるロード・クロムに対して。
「おぬしにとって、テルマール殿がどう言う存在であれ、わし等にとっては仲間であるよ」
 そう呟くや否や、不意に義透が霹靂をロード・クロムの足下に滑り込ませる様に飛翔させ。
 足下から、黒燭炎に纏わせた成長を続ける雷でその白剣を絡め取り。
 雷撃を流して、白剣の刀身を折ったのに合わせるように。
「例え、あなたが何を言おうとも……なめろうを捨てること無く進んだわたしは、その過去を、可能性を乗り越えた『わたし』です!」
 そう叫ぶと同時に。
 ビスマスがなめろうご当地パワーを全開にして、銃型に変形させていたなめろうフォースセイバーから光線を発射。
 義透に破壊された白剣を再生しながら、その光線を咄嗟に左の青光纏った剣から放出した特殊デモノイド細胞でそれを相殺しつつも、微かに戸惑う様子を見せるロード・クロムの姿を見て。
 ――ロード・ビスマス。
 その名前がクローネの脳裏を軽くパチン、と叩く様に過ぎり、同時に成程、とビスマスがどう言う存在であるのかを感じ取り、内心で呟く。
(「なめろう怪人に憧れるだけで自分の無かったデモノイド・ロード、ロード・ビスマス。でも、そのなめろうへの憧れを捨てること無くそれを貫き続けた可能性の1つが……」)
 目前で、なめろうフォースセイバーから銃撃を撃ち込む|彼女《・・》だとでも言うのだろうか。
 ふと自らの脳裏を掠めた思考が少しだけ面白くなって思わず微笑を浮かべつつ、射撃型デモノイド達に指示を下しながらロード・クロムへと淡々と話しかける。
 既にレイ達によって住民の避難は完了し、千尋が建造物さえも守る様に無数の鳥威を張り巡らしている以上、クローネも戦闘に参加することに躊躇はなかった。
「……アナタは……レアメタルナンバーのデモノイドロード、ロード・クロム。所属は朱雀門高校で……朱雀門掌握後は爵位級ヴァンパイア陣営に付いた存在」
 そのクローネの何処か歌う様な言の葉に。
『……私の事を良く覚えている様ですね。流石は灼滅者……いえ、猟兵でしょうか?』
 ビスマスの存在と攻撃に驚愕を覚えていたが、既に我に返ったロード・クロムがビスマスの銃撃と義透の追撃を受けながらも、一端落下する様に地面へと着地し、周囲に特殊デモノイド細胞を散布しながらそう返した。
 その着地の瞬間を狙って。
「……俺は、お前を知っている……? 少なくとも、お前を倒す理由は――ある」
 そう問いかけると、ほぼ同時に。
 碧が最初の一撃で撥ね上げた、妖刀≪黒百合≫をその場で真っ向両断に振り下ろすと。
 今度は三日月型の斬撃の翡翠と漆黒纏う685の波がロード・クロムを全方位から園体を叩き斬らんと襲いかかった。
 その碧の斬撃……それも個々の速度が違い、緩急自在故に対応の難しいその波を受け止める為に周囲の建物へと自らのデモノイド細胞を憑依させようとした……その時。
「隙ありですね……! Stone Hand!」
 自らの愛剣ルーンソード『スプラッシュ』の剣先をロード・クロムの足下に向け。
 短い詠唱と共に黄色い光を光線の様に解き放つウィリアム。
 その黄色の光の線が、ロード・クロムの足下に刺さった……その時。
 不意にそこに向かって周囲の竜脈の気が一気に収束し。
 ――ゴボリッ! と。
 岩石で出来た大地の精霊の腕が大地から生えて、ロード・クロムの両足をがっちりと掴み取り。
 ――更に。
「慄け、咎人。今宵はお前が串刺しよ!」
 嘗て、母が良く語り聞かせてくれた物語――或いは、この世界での真実?――の中で母が叫んだと言うそれを叫び。
 姫桜が、全身に纏った白燐蟲をschwarzに纏わせてその破壊力を上昇させて、鋭い漆黒と白が混ざり合った刺突を繰り出した。
『っ!?』
 それは自らの両足を大地の精霊の岩石で出来た腕に掴み取られて、身動きの取れないロード・クロムの胸を穿ち。
 そこにウィリアムが宝石『フロストライト』から放たれる無限の霜を纏わせた氷の細剣と化した『スプラッシュ』で。
「行きます!」
 その鎧の隙間を貫かんとその剣先を突き出している。
 突き出されたウィリアムの刺突による一撃が自らの急所でもある鎧の隙間を狙っているのを見抜き。
『簡単にやられるつもりはありませんよ』
 その言の葉と共に。
 未だ辛うじて動く左手の長剣を掲げる様にしてウィリアムの『スプラッシュ』の刺突に何合も刃を叩き付けて、その刺突を相殺するその間に。
「隙在りなんだから!」
 更に踏み込む様にして、
 今度は白燐蟲をWeißに纏わせた姫桜が、眩く光り輝く白輝と共に、返す刃の要領で刺突をすかさず繰り出していた。
 繰り出された姫桜のその一撃が、ウィリアムの『スプラッシュ』の刺突を受け止め、青光纏う左の長剣の側面を捉えた、その直後。
 ――パキンッ!
 とまるで水晶が砕ける様な甲高い音と共に、今度は左の長剣が叩き折られた事実に、ロード・クロムがその鎧越しに輝く赤い双眸に一瞬、動揺を揺蕩わせるも。
『それでも……ロードたる私がこの程度で破れるとは思わないことですね』
 そう自らを叱咤する様に呟くと同時に、自らのデモノイド細胞を利用して無機物でもある自らの双剣を瞬く間に修復しつつ、岩石の精霊の腕を振り解いてバックステップ。
 後退して距離を取りつつ周囲の瓦礫……無機物へと自らのデモノイド細胞を憑依させて無数のシミターの様な鋭刃を作りだし、一気に射出する。
(「……自分の周囲にある無機物ならば生物の様に使用できるというの……?!」)
 ある意味で出鱈目とも取れる無数の鋭刃が自分達を斬り裂かんとその研ぎ澄まされた牙を振り下ろそうとした……その時。
「……頭が痛む。痛むが……それをやらせるわけには行かない……!」
 そう呻く様に呟きながら。
 碧が妖刀≪黒百合≫を横一文字に一閃し、685の闇と風を混ぜ上げた漆黒の颶風の風の力をより強化した魔法剣を繰り出した。
 嵐の様に強化された漆黒の颶風と化した残撃の衝撃波が、それらの鋭刃を叩き落とした、その瞬間を狙って。
「そこ……!」
 漆黒のオーラ防御を張り巡らした敬輔が滑る様に前屈みになって肉薄し、後退する姫桜やウィリアムと入れ替わる様に肉薄し、下段に構えた黒剣を撥ね上げる。
『未だです……!』
 その敬輔の赤黒き剣の軌跡を見切ったロード・クロムが蘇生した血鯖が血錆が僅かに浮く白銀の刀身持つ長剣と競り合う様にぶつかり合い。
 ――キーン!
 と澄み切った鋭い音が戦場に響き渡ったその直後だった。
(「……っ?!」)
 ――まるで、誰かに、何かに導かれるかの様に。
 デモノイド……それも『ロード』と呼ばれる者達がその心に抱く深き闇……『悪』を、金属化させる特殊デモノイド細胞に乗せて、敬輔の中に流れ込ませたのは。
 同時に絶大なる悪の力の奔流が敬輔の心の中に凄まじい漣を巻き起こした――その時。
「……! 駄目だ、踏ん張れ! そうしないと……|堕ちるぞ《・・・・》!」
 不意に背後から青年――この時の敬輔はそれが雄哉とは知らない――の鼓膜を叩く様な声が聞こえるも。
 その雄哉の警告の意味を、|重み《・・》を知るよりも前に。
 敬輔が飲み込んだ『悪』の心と共に爆発的な『闇』と『力』が彼の全身を侵食した。


 ――自らの全身に張り巡らされる万能感。
 同時に敬輔の瞬く間に真紅に染まり、自らの体が気付かない間に金属化していき、更に全身から黒き闇を思わせる焔が迸り始めていた。
(「……嗚呼、この力は……」)
 ――知っている。
 それは、自らのあり得た可能性……それを自らの『力』として覚醒させる時にも使うことの出来る『吸血鬼』の力。
 その中にロードの持つ『悪』の心と金属化の性質をも飲み込んだ自らの体が、肌が、みるみる内に黒金を思わせる色へと変貌していく。
 ――同時に『真の姿』となった時に自らが纏う赤黒い血の引いた線の走る漆黒の鎧が、敬輔の体を覆っていく。
 ――此は、恐らくヴァンパイア化と、真の姿化の中間点とも言える場所。
 でも……此処で奪われ、飲み込まれ、消えゆくもの。
 それは――。
「それに飲み込まれれば、最悪、|二度と帰れなくなる《・・・・・・・・》っ! それ以上は……っ!」
 そう叫びながら姿を現した雄哉が、敬輔の脇を駆け抜け、メリケンサックを填めた拳をロード・クロムに向けて叩き付ける。
 その正拳の一撃がロード・クロムに衝撃を与え、一瞬、その身を怯んだところを。
「見逃してやるほど、わしも甘くはないのでな。館野殿に今、起きている恐らくは闇堕ちと呼ばれる現象が、如何に危険なものかは、|我等《・・》にも本能的に分かる」
 その呟きと、共に。
 戦闘の経験は数多あれど、その経験の勘が取り戻されていないのか、動きが明らかに自分達より鈍い雄哉を守る様に。
 雄哉に向かってロード・クロムが振り下ろした斬撃を相殺せんと義透が黒燭炎の先端から無数の成長する雷撃を迸らせて、ロード・クロムの左の剣を叩き折ったところで。
「おいおい、館野。……それでもう二度と元の姿に戻れなくなって終わり。……何て、つまらない話を俺に語らせるつもりじゃ無いだろうな?」
 そう何処かからかう様な皮肉げな警告を投げかけながら。
 千尋が自らの人形、月烏を構えさせた『宵』と鴗鳥を構えさせた『暁』で、自らの本体、結詞の糸が短くなるのを感じながらも、容赦なく間断無き連続攻撃をロード・クロムに繰り出させるのに合わせる様に。
「他者に危険が及ぶと我武者羅になるところは相変わらずの様だな。安心したぞ、有城」
 レイが『トラウメンヴァッフェ』を帯状にして射出。
 放たれたレイの一撃が、雄哉の一撃で僅かに怯み、千尋の操る『宵』の斬撃と、『暁』の殴打でよろけるロード・クロムを絡め取り、その動きを鈍らせたところに。
「させないわよっ!」
 姫桜が再生させた長剣とデモノイド細胞を纏わせた白刃で断ち斬ろうとした雄哉とロード・クロムの間に二槍を十字に構えて割り込み、振り下ろされた長剣を受け止め。
「畳みかけますよっ!」
 そこに空中を踊る様にスカートを風に靡かせながら滑空したビスマスが、なめろうフォースセイバーから無数の光弾を連射した。
 それは時間にして、1秒にもならない、一瞬の連携波状攻撃。
 溜まらず蹈鞴を踏み、忌々しげにロード・クロムが呻く。
『ぐっ……灼滅者……っ!』
 その赤く光輝く瞳は、今、正しく戦況の流れを変えた、雄哉とレイに憎々しげに叩き付けられ。
 それでも尚、抗う様に周囲の無機物に自らのデモノイド細胞を憑依させようとした……瞬間。
「そろそろ潮時だろう。|灼滅《ころ》してあげるよ、|ロード・クロム《ダークネス》」
 その唇に微かな嘲笑を浮かべながら。
 クローネが、自らのネクロオーブから、無数の漆黒の弾丸を連射。
 目にも留らぬ早さで撃ち出された無数の漆黒の弾幕の嵐が、雄哉達に反撃したロード・クロムの動きを阻害した……その瞬間。
「あなたのデモノイド細胞と、わたしのご当地パワーとどちらが打ち勝つか、尋常に勝負ですっ!」
 その怒号の様な咆哮と共に。
 ビスマスが、自らの全身から溢れ出すなめろうご当地パワーを全開にしてフォースソードを超巨大な光剣に変形させて唐竹割に振り下ろした。
 振り下ろされたその一撃が、クローネによって侵食を阻まれたロード・クロムのデモノイド細胞を光輝く旋風をもって纏めて粉砕し。
 同時に折れた剣と未だ残った剣を交差させて咄嗟に防御態勢を取ったロード・クロムの体を真っ向から斬り裂いた。
『ぐっ……まさかご当地パワーに目覚めたロードの力がこれほどまでとは……!』
 そうロード・クロムが呻きつつ自らの体を侵食していくなめろうパワーに侵食されつつも、態勢を整えようと後退しようとした、刹那。
 ――お兄ちゃん!
(「……伽耶……!」)
 自らの妹の声が脳裏の中で弾けた敬輔が、全身を悪の力で覆われ、目前のロード・クロムの様な姿と化しつつ、犬歯を異様に伸ばし、瞳と髪を真紅に染め上げながら首肯する。
「分かっている……此に飲み込まれたら……僕はもう、二度と皆と一緒に|居られなくなる《・・・・・・》」
 ――そして、自分の家族を奪ったオブリビオン達と同様の悪事を為す『ダークネス』の同族と化す事になるのだろう。
 それだけは避けねばならぬと直感的に理解した敬輔が真紅の瞳でロード・クロムを睨め上げながら、真紅に染まった黒剣を横薙ぎに振るう。
 その今までの3倍以上の火力と黒焔纏う黒剣による一閃が、ロード・クロムの上半身を横一文字に断ち斬った――その瞬間。
「あなたとて、元より引くつもりはないのでしょう? ならばせめて私自身で終わらせてあげます」
 ――例え、それが。
「その場しのぎに過ぎなくとも……!」
 その何処か狂おしいばかりの感情を籠めた叫びを上げて。
 瑠香が敬輔の一撃によろけたロード・クロムの側面に滑る様に肉薄し、物干し竿・村正による神速の突きを再び解き放った。
 その側面からの神速の刺突を深手を負っているロード・クロムが躱わせる道理も無く。
 それが鎧の隙間に入り込んでその身を貫くと同時に、115回の目にも留らぬ神速の斬撃の乱舞が、ロード・クロムの内側からその体をズタズタに斬り裂いたところに。
「止められるものは、止めてみせよう、わし達がな」
 そう告げて。
 霹靂から降下する様に飛び降りながら、黒燭炎……成長する雷纏う漆黒の槍で、義透画ロード・クロムの身を貫き。
 ――パリン!
 と言う音と共に、その頭部を破壊したその瞬間を狙って。
「止めを刺すわ!」
 ――キラリ、と。
 そんな姫桜の心象風景を代表するかの様に。
 或いは……ロード・クロムの急所が何処であるのかを囁きかける様に。
 姫桜の銀の腕輪……桜鏡に嵌め込まれた玻璃鏡が玻璃色の輝きと共に、ロード・クロムの鎧の隙間……心臓の1点を指し示す様にしているのを感じ取り。
 ――己が白と黒の二槍を同時に突き出し、ロード・クロムの心臓と胸を同時に貫いた。
 鎧を貫通して、破壊された自らの体がゆっくりと光となって消滅していくロード・クロムの様子を見ながら、ふと、ウィリアムの脳裏にそれが過ぎる。
(「本当は情報を聞き出すフリの為の罠だったんですが……」)
 既に勝敗が決して居るのだから、わざわざそこを斟酌する必要もあるまい。
 そう判断を下したウィリアムが、自分の脳裏に浮かび上がったそれを粛々と諳んじる様に続けた。
「……貴方方復活ダークネスがぼく達猟兵を標的にしてくる速度が、異様に早いですね。……それもあなたの後ろにいる、うずめ様とやらの予知能力ですか?」
 そのウィリアムの問いかけに。
『……答える必要は……ありませんね……。うずめ様も既に準備は出来ているでしょうから……』
 そう嘲笑を浮かべて。
 完全に光と化して消えゆく、ロード・クロムの姿を一瞥して、雄哉がポツリ、と呟く。
「ロード・クロム、灼滅完了……か」
 その雄哉の言の葉と同時に。
 敬輔の姿が元の人間へと戻った……その直後。
「いや……未だ、終わりじゃ……無い」
 そう呻く様に碧が軽く額を抑える様にしながら断言するのを聞いて。
「ああ……そうだな」
 そう義透が同意して、霹靂に乗って前方を見据えて見たものは。
 ――レイや雄哉、クローネにははっきりとした見覚えが。
 ――姫桜や碧には何処か懐かしさが。
 そして……瑠香にはどうにも嫌な予感が拭えぬと同時に、何か憐れみを感じさせる『騎士』達の群れであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『クロムナイト・ソード』

POW   :    クロムソード
自身の【ロード・クロムより与えられた武具】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[ロード・クロムより与えられた武具]は【想定外の過負荷】により破壊される。
SPD   :    クロムミスト散布
【動きを封じる「金属粒子の霧」】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【硬化凝集した霧によって封印】した部位の使用をレベル秒間封じる。
WIZ   :    クロムシャイン
全身に【クロム鋼の輝き】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【伸びる腕】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。

イラスト:させぼのまり

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 大量のクロムナイト達の群れは、その住宅街に自分達が潜入した反対側にある小山の方から、猟兵達の方へと進軍してきていた。
 そのクロムナイトの群れの最奥から、|声《・》が聞こえ、猟兵達の鼓膜を叩く。
 ――うずめ様は言いました。
 ――此処に集いし猟兵達を皆殺しにしなさいと。
 響き渡るうずめ様達の声に応える様に。
 クロムナイト達が全身から凄まじい殺気を放ち始めている。
 もし此処でクロムナイト達の進軍を許せば、体育館に避難させたエスパー達もただではすまないだろう。
 エスパー達を守る為には半ば背水の陣と言う状況で、猟兵達は現れたクロムナイト軍を迎え撃つべく戦闘態勢を整えた。

 *********************
 第2章のルールは下記となります。
 1.住民の避難は完了して居る為、クロムナイト軍に戦場を突破されない(判定が失敗にならない)のであれば、住民達の安全は保障されます。
 2.住宅街の建造物を守りながら戦うことは、その後、エスパー達が無事に帰ってくることを考えると意味がありますので、プレイングボーナスになります。
 3.戦場は『住宅街』です。エスパー達を避難させた『体育館』は、戦場外となります。
 4.クロムナイト達が接敵したところから戦闘は開始となります。その為、『遠距離』からや『戦場外』からUCで一方的にクロムナイト達を蹂躙する事は出来ません。

 ――それでは、良き戦いを。
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【POW判定】
今回も真剣口調で話すよ

ダークネスについては武蔵坂学園が保有するのと同レベルの知識があるよ
ワタシは死霊術士…|死者《灼滅者/ダークネス》の力を使う者だからね
知識だって、力の一つだよ
…まあワタシの場合は、それだけじゃあないんだけどね

ロード・パラジウムが|灼滅された《死んだ》時は配下のデモノイド達が暴走していたけど…このクロムナイト達はそうはなっていないね
オブリビオン化したからかな?
…それとも、仇が目の前にいるからかな?
まあどちらでもいいか
どうせこれから、全滅させるんだから

UCは『ワタシの六六六人衆達』
ここまで接近されると、射撃型デモノイドだと厳しいか
その上建物を守りながらとなると…近距離での対人戦に長けた子達がいいね
そういう訳で、六六六人衆の集団を呼び出すよ
住宅街の建造物を【鉄壁/硬化/かばう/回復力】で守りながら、【団体行動/集団戦術/大軍指揮/怪力/切断/範囲攻撃】でクロムナイト達を攻め立てるね
ワタシもドスソードによる近接攻撃主体で攻めるよ


フェル・オオヤマ
・心境
ここが灼滅者達が戦い守り抜いた世界でござるかぁ
よし!私も頑張るぞ!

「誰1人欠ける事無く勝利して、無く生きて帰ってきてくれ」でござるかぁ

…なんでだろう。優希斗殿の言葉にものすごく頷いてしまうのは。

・行動
他キャラの邪魔にならないように行動します

・攻撃
先手必勝!敵が散開して味方が巻き込まれないように位置調整
[銀の星]を構えて【高速詠唱】!
ユベコ[我竜・月渦氷陣]を発動!【魔力制御/凍結攻撃/属性攻撃】の技能を使用!
なるべく多くのクロムナイトを削って撃破を狙っていくよ!
それでも動こうとするなら体育館に近い敵から[神穿ツ竜ノ顎]のガトリング弾で【弾幕/制圧射撃】で仕留めていく!
何が何でも体育館には近づけさせないんだから!

・防御
敵からの攻撃は回避優先だけど回避不可な時や味方を庇う必要がある場合はビームシールドの[両義宿手【寂滅護】]を構えて【かばう/受け流し/挑発/盾受け】の技能を使用して防ぎます
足や翼が封じられたらひたすら挑発して敵の意識を自分に向けさせます


他キャラとの連携・アドリブ歓迎


ウィリアム・バークリー
お互いに引く理由も下がる理由も無し。ここで止めて見せます、クロムナイトの進軍!

「全力魔法」「範囲攻撃」氷の「属性攻撃」でActive Ice Wallを展開。
金属粒子の霧も、他の攻撃も、前線を形成するよう配した氷塊で、全部「盾受け」して受け止めます。
氷塊は砕かれた端から新しく生成。
氷塊は最初の横一線から、徐々に両端を前進させて敵群を囲むように動かします。
完全に包囲して戦場を限定しましょう。

攻撃は「凍結攻撃」の「衝撃波」を放ち、少しずつダメージを与えます。
金属粒子の霧と言ってはいますが、実際は微細な金属粉でしょう。都合よく凍るとは思っていません。ただ、噴射器官を凍らせれば、少しは楽になりますね。


ビスマス・テルマール
【なめろう茸】
ロードクロムの次は、大群のクロムナイトの群れ……一歩間違えれば、忌む存在の言う様にクロムや彼らの様に

そうなっていたかもしれませんが
アメリさん、有難うございます
そうですね、今はうずめの思惑をこの手で潰し、エスパーの方々の帰る場所を守らなければっ!

◯POW
開幕オーバーロードで真の姿の上に
『早業』UC防御力重視発動でナメロウスクィーゼを装着

敵の塞き止めと建造物を守りながら戦うなら、この形態ですね

【イカドリルロケットビット】を『オーラ防御&属性攻撃(重力)&ご当地パワー(イカのなめろう)&結界術』込め『念動力&操縦』で155個展開

アメリさんや皆と『集団戦術&団体行動』連携しつつ、半数は建造物の防護
半数は『第六感』で『見切り&受け流し&ジャストガード』で防ぎ、防ぎ切れないのは『残像』回避

低空『空中戦&推力移動』で撹乱しつつ【光学烏賊螺旋ロケット】で『怪力&ご当地パワー&貫通攻撃&鎧無視攻撃&&鎧砕き&2回攻撃』込め鎧ごと

防戦範囲も限りがあるかもしれませんが

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


アメリ・ハーベスティア
【なめろう茸】
デモノイドやロード……それにビスちゃんが忌み嫌っていたアレなのですか?アメリはビスちゃん、心根も強いよいこだと思うのですよ?

ともあれ、わるいこの親玉さん(うずめ)がアメリ達を誘き寄せ倒す以上に何を考えてるか解りませんが

エスパーさん達の命も帰ってくる場所も守るですよ一緒に。

◯POW
アメリは【アンチファル】と言う『武器に乗って空を飛ぶ&空中戦&推力移動&サーフィン』の様に飛び回り【地竜の翼】に『オーラ防御&激痛耐性』で備え

『第六感』で『見切り』回避と被弾は『鉄壁&ジャストガード&怪力&受け流し』

皆と『集団戦術&団体行動』連携

【アイスマッシュブロウ&トロンマッシュ】を『高速詠唱&多重詠唱&オーラ防御&結界術』で重ねたキノコ『全力魔法&弾幕&範囲攻撃』で

弾幕の壁を展開
わるいこ達の妨害し

隙見て敵一体にスーパーよいこランドの『早業&ご当地パワー&気功法&功夫&怪力』込めたUCで吹き飛ばし
他のわるいこに

吹き飛ばす方向には気をつけて

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎、ビスちゃんとの関係はリンク元


司・千尋
連携、アドリブ可

帰ってきた時に家全壊してたら
どんな気持ちかはモノでも分かる気がするぜ
ちょっと気合い入れて防衛するか


今回は防衛に専念
住宅街の建造物をメインに仲間も援護していくぜ

攻防は基本的に『翠色冷光』を使用
回避されても弾道をある程度操作し追尾させる
近接や投擲等の武器も使い
早業、範囲攻撃、2回攻撃など手数で補う
範囲内の敵や建造物を壊しそうなものは全部撃ち落とす

撃ち落とせない時や仲間への援護は
細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用


お前達少しは加減しろよな
動かないとはいえ防衛するの大変なんだぞ


彩瑠・姫桜
住宅街の建造物を守りながら戦うわ
だって、住民の…エスパー達の「帰る場所」であり、「日常そのもの」だもの
いくら命が無事でも、帰る場所が壊れてしまったら本当の意味で守ることにはならないと思うから
絶対に守り切って見せるわ…!

基本は可能な限り前衛に出て、近接した敵を[串刺し]にしていくわ
可能ならドラゴンランスを回転させて旋風を起こし、[範囲攻撃]伸びる腕の妨害を制止させられるか試してみる
敵の攻撃は[武器受け]で受け流していくつもり

仲間とは可能な限り連携し、全体状況把握に努める
必要に応じて仲間を攻撃から[かばう]わ
体力消耗しているようならUC発動させて回復を試みるわね

※以下は可能なら採用してください
さくらえ(f44030)とはこの場が初対面

(父とそっくりな、どうにも見覚えのある人物に戸惑いの表情
パパ、と呼びそうになったのをどうにか飲み込む
相手の反応からこの世界の灼滅者らしいと知るも、
ひとまずは戦闘に集中とばかりに自身の両頬を叩き)

お願いだから怪我しないでよね!
じゃないとママが悲しむんだから!


彩瑠・さくらえ
*可能なら現地合流での途中参戦として参加希望

うずめ様…に、クロムナイト?
いまいち状況が読み取れてないけれど、敵からこの場を守ることが急務だよね
復活ダークネスと戦ってる人達いるなら、
微力だろうとなんだろうと、加勢させてもらうよ

敵と戦っている他の味方(猟兵達)と連携
戦闘状況を見て足手纏いにならないような立ち回りを意識

敵への攻撃は[鬼の手]に風を纏わせ殴りつけ、UC発動
敵の動きを観察した上で少しでも敵の戦力を削ぐことに尽力
敵からの攻撃は[オーラ防御]と[受け流し]で可能な限りダメージ軽減させる

※以下は可能なら採用してください
姫桜(f04489)とは初対面

(現在は戦線からは退いている妻と見目がそっくりな女の子
叱咤されれば驚きはすれど、「ママ」という女の子の言葉に
一つの可能性に辿り着けば、ふ、と笑み)

…ダークネスだって復活するくらいだし、
今って何が起こったって不思議じゃないんだよねぇ

大丈夫だよ、姫桜(確信を持って名を呼び)
今のところ君より力は及ばないかもしれないけど
それなりに戦闘経験はあるんだから


赤城・碧
「アオくんはちょっと休んでて!私がいくよ!」

第2人格の椎名・白に交代して、ユーベルコード発動、魔法少女ムーンホワイトになって戦うよ!

街を守ることも重要なら飛び道具は近距離でも狙い外すと危ないし、今回は拳だけで戦おうかな。【拠点防御】、【継戦能力】で街を守りながら、【残像】で撹乱しながら戦ってこ。【オーラ防御】、【見切り】で攻撃は防御と回避も余念なくやっていきたいね。

(「……アオくんはまだみたいだけど、私は思い出せた。」)

(「私は月代って名前のアオくんのビハインドだった。それがどうして今はアオくんと体を共有してるかは分からないけど。」)

「私はアオくんが好き。これだけはなにも変わらない!だから!」


朱雀門・瑠香
数が多い・・・・住宅街に浸透しきる前に一体でも多くを仕留めないと!
ダッシュで前に出て敵集団をひきつけます。
敵の武器は厄介ですけど武器受けではじきながら根気強く耐えていき砕けるまで凌ぎます。
敵の武器が壊れたら新しく用意される前に破魔の力を込めてまとめて薙ぎ払います!
貴方達の戦いはここで終わりです。ゆっくり眠りなさい・・・・・


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…さっきのが、闇堕ちか
この世界と繋がった際、遭遇した灼滅者が
『己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力!』
と言っていた理由が…少しわかった気がする
まだ、意識に少し全能感が焼き付いている気がするけど
振り払って僕本来の戦い方をしよう

指定UC発動
クロムミスト散布をできるだけ受けないようにすべく
クロムナイトたちの間を「ダッシュ」+高速移動でジグザグに走り抜けながら、撹乱しつつ金属粒子の霧を避けよう
同士討ちになってくれればラッキーなんだけど…

隙を見て黒剣で「2回攻撃、怪力」で片っ端からクロムナイトを斬り捨てる
生憎、予言めいた言葉通りにしてやる義理はない
貴様らはここで散れ!!


有城・雄哉
【POW】
アドリブ大歓迎
連携は可能なら

うずめ様、だと…っ!?
といってもあの声はおそらく、俺らが新宿迷宮の最深部で遭遇し灼滅した『巫女』のほうだろう
それなら、ここまで用意周到に対灼滅者…対猟兵の準備を整えているのも納得だ
…なら、ますます阻止しなければ

学園を離れてから、ずっとひとりで戦い続けて来ていたからな
他者とうまく連携がとれるかは自信がないが
…今はやれることをやろう

クロムソードで武具の威力を強化してくるだろうが
避けてしまえば武具も無用の長物になる
「ダッシュ」でクロムナイトの懐に潜り込みつつ密着し
鏖殺の気から冷たくどす黒い「殺気」を放ちクロムナイトを動揺させながら武具の一撃を回避したい
殺気は奴らのそれと相殺出来れば万々歳になりそうだけど

懐に潜り込んだら、指定UCで拳の威力を3倍に
命中率も3分の1になるが、その上で密着し少しでも命中率を上げて
至近距離から「グラップル」でメリケンサックを嵌めた拳を急所に叩き込む!

貴様らにエスパー達は殺させない!
ここで全て灼滅してやる!


馬県・義透
引き続き『侵す者』にて

住宅街であるからな、壊すわけにはいかんて。
故に、ここにて止めてみせよう。

やることは簡単よな。接敵なれば近距離…つまりはわしの領域であるからな!
霹靂とともに、集団へ突っ込む。わしは黒燭炎をUCつきで薙ぎ払うし、霹靂喪飛び続けておるからな。
さらに、内部の…『静かなる者』が、四天霊障伝って押しつぶしからの過冷却攻撃しておるな…。
さて、わしは炎であって、熱いのであるが。そちらの動きは、どうなるであろうか?3分だったら、どのみち武具が壊れるらしいしの?


霹靂「クエッ」
低空飛行続けてる。雷結界での攻性結界してる。


レイ・アステネス
アドリブ、連携可

凄い数だが本番前の肩慣らしには丁度良いだろう
久し振りだから加減は出来ないかもしれないが


攻撃は指定UCと片喰や冬青を使い
仲間が狙った敵を優先的に狙い確実に数を減らす
連携や仲間の攻撃等の隙を消すように意識して行動
敵の攻撃後の隙や武具が破壊された瞬間を狙ってみようか
必要なら声かけ等も行う

攻撃しても敵にダメージを与えられない場合は行動阻害を狙う
敵を観察して行動を予測し邪魔をするように動く
足手纏いになるようなら後方へ下がり
支援に徹する

防御は冬青に任せるが
自分で対処出来そうな場合は回避や片喰で受け流す
回避する事で建物が壊れる場合は防御する
なるべく住宅街への被害は少なくなるように気を付けよう




 ――その小山の方から降りてきている大量のクロムナイト達を空から見下ろしながら。
「……誰1人欠ける事無く勝利して、生きて帰ってきてくれ、でござるかぁ」
 そう何処か懐かしげに、一方で……何かに懇願するかの様に。
 この戦場へと自分達を送り出す際に彼が告げた言葉を思い出しながら、何処か感慨深げにフェル・オオヤマがポツリ、と呟くのに。
「急に如何したんですか? フェルちゃん」
 そう自らの家に代々伝わる闇の竜の牙で出来た大剣、『アンチファル』に乗って、下方のクロムナイト達の所へと向かうビスマス・テルマールの所へと滑空しようとしていた、アメリ・ハーベスティアが微かに首を横に傾げると。
 フェルがそっと自らの胸を押さえる様にして、いや……と小さく頭を横に振った。
「……優希斗殿のあの言葉が酷く……私の胸に響いて、物凄く頷けてしまったから」
 そう銀の瞳をそっと細める様にして、何処か懐かしげに言の葉を紡ぐフェルの脳裏を過ぎるのは、嘗ての戦いの|記憶《・・》であろうか。
 自らの脳裏を過ぎるそれを思い、フェルが嘗ての事に想いを馳せる一方で。
「……さっきのが、闇堕ちか」
 その時に自らの全身を駆け巡った全能感の余韻が未だ微かに焼き付いている様に感じながら、冷汗を垂らして館野・敬輔が嘆息を零す。
(「成程、この世界と繋がった際、遭遇した灼滅者が言っていた理由が……さっきので、少しだけ分かった気がする」)
『己の闇を恐れよ。然れど恐れるな、その力!』
 あのシャドウハンターの娘の言う通りだ。
 自身の闇に取り込まれる事を恐れなければ、あの状態から戻れなくなる。
 けれども恐れること無くその力と向き合わなければ……。
「私達はオブリビオンと戦うことも出来なかった」
 その敬輔の内心を見透かしたかの様に。
 そう何処か懐かしげな口調でレイ・アステネスがそう呟き、そっと苦笑を零していた。
「とは言え、私達が闇に堕ちても尚、命を賭す覚悟が無ければ、今の世が生まれ落ちていることも無かっただろう。私も私が堕ちた時の記憶は残っているが、その覚悟を持つが故に、識ることが出来たこともある」
 そのレイの懐旧を交えた懐かしげで何処か思い出深い表情で言の葉を紡ぐ姿を見て。
(「……『贖罪』のオルフェウスと、『慈愛』のコルネリウスの対デスギガス戦による、共闘関係……当時のシャドウ大戦の現状のことか」)
 何処か含むところを感じながらも、そう内心で有城・雄哉が嘆息するその間に。
「アナタがダークネスだった時の名は、『ミゼン』だったね。その名前には記憶があるよ」
 そう自らの脳裏に収められている記憶のページを捲りながら、コクリとクローネ・マックローネが首肯したその時。
「……っ」
 先の戦いの時から酷い頭痛に襲われていた赤城・碧がその頭痛と疲労からか、不意にその場に頽れそうになる。
「ちょ……大丈夫!?」
 その碧の様子に気が付いた彩瑠・姫桜が咄嗟に碧に手を差し出し、彼を支えようとした、その時だった。
「あっ……大丈夫だよ、アオくんは記憶の混乱が激しそうだから、ちょっと休んで貰っているだけだから!」
 不意に、碧の声がハキハキとした溌剌な声と化し。
 同時に、短く仮揃えられた白髪と白無垢なワンピース……いや、それともウェディングドレス……? を纏った娘に姿が変わり、えっ、と姫桜が思わず息を飲んだ。
「ちょっ、あなた……? 一体、碧さんは如何したの?」
 自分の手の中でいきなり魔法少女モードに変身した碧に、姫桜が戸惑いを隠せない様子で問いかける一方で。
「私? 私は……」
 と、碧……否、椎名・白が姫桜に返事を返そうとした、丁度その時。
「成程、お主はどうやら、|我等《・・》と似た様な存在なのだな? 1人の人間の体の中に複数の人格が宿る……。まあ、わし達は悪霊だが」
 クェッ、と愛グリフォン『霹靂』が一鳴きするその首をポンポンと軽く叩いてやりながら、馬県・義透――を構成する四悪霊が1柱『侵す者』――馬舘・景雅の問いかけに。
「うん、そうだね、私は椎名・白って言うんだ」
 ――此処では、もう1つの名前を名乗った方が良かったのかな?
(「……アオくんは未だだけれど、私は思い出せた……その名前を」)
 そう内心で確認する様に小首を傾げる碧……否、白だったが……。
「あなたが、どの様な方であったとしても、わたし達と共に戦ってくれるというのであれば、構いません。宜しくお願いします、白さん」
 そう早速と言った様子で全身をクリスタルの水晶の様なドレスに身を包んだ真の姿の、儘、その小手を身につけた手で握手を求めるビスマス・テルマールのそれに。
「ありがとう! ビスマスさん!」
 そう笑顔で姫桜から離れた白が、ビスマスの手を握り返し、その場に返している。
 そんな白の様子に何かのロボットを思わせるクリスタルの仮面越しに微笑んでから、ちらりとビスマスが踵を返してクロムナイトの群れを見る。
 同時に口の中で『Namerou Hearts Squeese !』と小さく呟くや否や、真の姿と化したビスマスの全身にガシャン! ガシャン! と言う機械音と共に……。
 ――イカ型鎧装ナメロウスクイーゼを身に纏い、何か背後で爆発する様な音が立ち、ついでにシャキーン! と言う音が何故か戦場に響き渡った。
 それらの一連の変身バンクが終わった時。
 気が付けばイカ型鎧装備形態に変形を遂げていたビスマスが……。
「……ロード・クロムの次は大量のクロムナイトの群れ……ですか」
 そうそっと嘆息する様に呟いているのを聞いて。
「まあ、お互いに引く理由も無いですし。尤もと言えば、尤もな動きですね。とは言え、この戦場全体に聞こえたあのテレパスの様な声の主……うずめでしたか? それに関しては結局分からずじまいでしたが」
 ウィリアム・バークリーが軽く頭を横に振るのに、恐らく、と雄哉が口を挟んだ。
「あの声は俺達が新宿迷宮の最深部で遭遇し灼滅した『巫女』の方だろうな。であれば、此処まで用意周到に対灼滅……いや。対猟兵の準備を整えているのも納得だ」
「へぇ。お前達がそのうずめ、とか言う奴等も灼滅したのかよ。大したものだ」
 その雄哉の説明に、愉快そうに口の端に笑みを浮かべた司・千尋が軽く肩を竦めてそう告げた時。
「……そう言えば、ロード・パラジウムが|灼滅された《死んだ》時は、配下のデモノイド達が暴走していたけれど……あのクロムナイト達はそうなってないんだね。此もやっぱりオブリビオン化したからかな?」
 死霊術士……|死者《灼滅者/ダークネス》の力を使う者……本当の理由はそれだけでは無いが……であるが故に培われた知識を思い起こしながらのクローネのそれに。
「如何だろうな……。或いは、あのクロムナイト達にとってはうずめこそが本当の主で在り、ロード・クロムはその先遣隊として私達に挑んできた、と言う可能性もある」
 そうレイが簡単に返事を返すのを左から右に聞き流す様にしながら。
 朱雀門・瑠香は、じっ、とクロムナイト達へと、何処か憐れみを感じさせる光を籠めた眼差しを向けていた。
「……この世界では、デモノイド達はヴァンパイア達の尖兵として扱われていた、と聞いていますが、それは本当の話ですか?」
 その瑠香の問いかけに。
「……そうだな。確かに、それはある」
 瑠香に何らかの面影を……或いはそれは、ビスマスに向けているものにも近いかも知れないが……感じ取りながらのレイの説明に。
「……戦うことでしか己を見出すことの出来なかった兵隊達……。故にヴァンパイア達にも尖兵として扱われていた……ある意味では哀れな者達、と言う事ですか」
 そう誰かに聞こえるかどうか分からない、囁き声で呟く瑠香をちらりと見遣りつつ。
「……一歩間違えれば、あのわたしの忌む存在や、ロード・クロムや彼等の様にわたしもなっていたかも知れない……そう言うことなのでしょうか……?」
 そうビスマスがもうあと数秒もあれば接敵するであろうクロムナイト達の方を見遣りながら、微かに不安げに呟くと。
「そんなことないですよ、ビスちゃん」
 上空から。
『アンチファル』という大剣にサーフボード宜しく搭乗していたアメリが呼びかけてくるのに、上空へと顔を上げるビスマス。
 その眼鏡の向こうの金の瞳のアメリとビスマスの視線が交差したその直後……。
 アメリはにっこりと笑った。
「あれがデモノイドやロード……それにビスちゃんが忌み嫌っていたあれなのだとしても。アメリは、ビスちゃん心根も強いよいこだと思うですよ?」
 そう微笑んで告げるアメリの言の葉に。
「……アメリさん、ありがとうございます」
 そう短くビスマスが礼を述べたところで。
「……そろそろ来るぞ」
 此方の会話の一部始終を待ってくれていた訳ではないのであろうが。
 肉薄し、もう間も無く戦闘が開始するであろう射程に入ることを霹靂の上から物見をしていた義透が確認の様に告げるのに。
「ああ、了解だ。……一応言っておくけれどよ、建物守るのも結構大変だから、お前達少しは加減しろよな? 動かないとは言え、防衛するの、割と大変なんだぜ?」
 そう何処か冗談めかした口調で千尋が無数の鳥威を展開しながら告げて、早々に周囲に焦げ茶色のオーラを纏ったそれを展開し、建造物を守る様にしているのに。
「ええ、勿論よ。だって此処は、住民……エスパー達の『帰る場所』だし、『日常そのもの』だもの」
 ――例え、どれ程命が無事であったとしても。
 帰る場所が壊れてしまっていたら、本当の意味で守ったことにはならないだろう。
 そんな姫桜の呟きに、白が勿論! と笑顔で頷き。
「大丈夫ですよ、千尋さん。こう言う状況です。当然ぼくも、守りに転じますから」
 そう告げて。
 白と緑色の綯い交ぜになった魔法陣を空中に複数描き出し、纏めて輝きを伴わさせる、ウィリアムのその様子を見て。
「……では、皆さん、後ろはお任せしますよ。私は……突撃するのみです!」
 その言の葉と、共に。
 瑠香が一足先にだん、と大地を蹴ってクロムナイトの群れに疾駆するその様子を見て。
「! 瑠香さん、1人で特攻ぶっかますのは得策じゃ無い!」
 その後を追う様に敬輔が咄嗟に黒剣を抜剣。
 白い靄を全身に纏い、瑠香を追い越さんばかりの勢いで飛び出していく、その後を追う様に。
「私達も急ぐわよ、白さん!」
「うん! そうだね! 行こう、姫桜さん!」
 その敬輔達の後に続く様に、白と姫桜も飛び出し。
「さて……此処まで近接された以上、射撃型デモノイド達じゃ厳しいね。此処は……近距離での対人戦に長けた子達でいこうか」
 その言の葉と共に。
 口元に微かに妖艶な笑みを浮かべたクローネが自分自身のネクロオーブ★に漆黒の肌持つ色っぽい女殺人鬼の姿を映し出し。
「では……久々の戦闘だ。私も肩慣らしと行こうか」
 そう、何処か愉快げに微笑を零した、その刹那。
 ――不意に、クロムナイト達の群れの中心部から半径122m以内のクロムナイトを巻き込む様に、氷と冷気を伴った竜巻が巻き起こり。
 それが、クロムナイト達の動きを見る見る内に鈍らせていく様子を見て。
「さて……奴等はどの位持つのかな?」
 そう何となく愉快そうな笑みを浮かべながら。
 レイが、自らの姿を巨大な杖を持ち、仮面の様な黒い花で顔を覆い。
 同時に、全身を普段の白服から見る見る内に何処か高貴さや優美さを感じさせるローブをブラックスーツの上から羽織ったかの様な姿をしたのを見て。
「……! アステネスさん、それは……!」
 思わず雄哉が息を飲むのを見て、レイが微かに笑った。
「此だけの戦力があるのです。1分も掛からないでしょう! さぁ、行きますよ、皆様!」
 そう何か何処か態とらしく放たれた愉快げな宣言が、戦いの合図となった。


 ――と、その一方で。
(「この気配……誰かが闇堕ちしたのか……?」)
 クロムナイトと猟兵達が瞬く間に交戦状態に入ったその様子を少し離れたところから食い入る様に見ながら青年が走る。
 ――クロムナイト達の側面から。
 確かに、自らの中のダークネスの部分がサイキックハーツと化しているため、現在では、ダークネス人格に全てを奪われると言うことは起きないだろう。
 此は、自分達灼滅者は勿論、エスパーである一般人達にも当てはまる事だ。
 だが、闇堕ちしたままで居続けると言う事は、『ダークネス』の姿の儘で自らが固定されてしまうと言う事。
 そうなってしまえば……その者はある意味で日常への回帰が極めて難しくなる。
(「今はダークネスの一部は僕達と、共にあるけれども」)
 ――と、そこまで考えたところで。
 先程脳裏に響いた声を思い出し、その男はしかし、と誰に共無く呟いた。
「うずめ様……と、クロムナイト? とは、どうにも掴み取れる状況ではないな……」
 ――しかし、しかしだ。
 不意に既に戦闘状態に突入している155体の六六六人衆や、瑠香達の近くで……雄哉が、そして……ミゼンが共に戦っている姿を認め、彼は直ぐに状況を飲み込み。
「雄哉さん、レイさん!」
 その言の葉と、共に。
 自らの腕を鬼と化したその男が、自らの腕に風を纏わせ、肉薄しながらその場で一閃。
 その鬼の腕と共に、『魔神「カミガカリ」』と化した男が横合いから殴り飛ばす様に解き放った風纏う天地開闢光が戦場を包み込み、クロムナイト達の一部に亀裂を入れる。
「……この力は……」
 その男が横合いから解き放った光を見て取ったフェルが銀色の宝石の装飾が施されている長杖『銀の星』を下方に突きつけ。
 そのまま水色と翡翠色の綯い交ぜになった魔法陣を描き出すと同時に竜巻を解放した姿の儘に青年を見遣り、驚いた様に息を飲んだ。
(「この状況下で、偶然誰かが訪れると言う事も無いわよね。って事は、彼も間違いなく、灼滅者……!」)
 そう内心でフェルが呟き。
「皆! 更に仲間が援護に来てくれたわよ!」
 咄嗟に上空からそう声を張り上げて援軍の到着をフェルが告げるのを聞きながら。
「……と言うか、この光と気配って……!」
 先程の風光の一撃から感じた懐かしい気配を思いだし、その人物の方に向かって行こうとするクロムナイトの胸に拳を叩き付ける雄哉。
 続けざまにどす黒い鏖殺の気で、クロムナイト達の注意を自らにする様に仕向けながらのそれに合わせる様に。
「此処は確実に落とさせて貰おうか」
 轟! とレイが漆黒の殺気に混ぜ合わせる様に解き放った黒焔が踊る様に舞い、確実に敵を屠りつつ、新たに現れた人物の方を見て。
「久しいな、彩瑠。こう言う形で君と出会うのも、やはり縁のなせるものなのか?」
 そう何処か愉快そうに告げる、ミゼンの姿を取ったレイのそれに。
「……彩瑠……?」
 その前方でschwarzとWeißを竜巻の様に旋回させて、旋風を巻き起こしながら、姫桜がそう呟くと。
 ――キラリ、と。
 まるでそんな姫桜の胸中を現すかの様に……姫桜の填めている銀の腕輪……桜鏡に嵌め込まれた玻璃鏡の鏡面が振動するかの様に輝いた。
 そんな、姫桜の胸中を漣立たせる気配に気が付いているのか、いないのか。
 レイにその名を呼ばれ、雄哉に思わず息を飲まれた自らの体にカミを下ろした男、彩瑠・さくらえがにっこりと微笑んだ。
 ――その微笑みの一方で、何故か少しだけ米神に怒り印を浮かべている様に見えるのは、果たして、雄哉の気のせいであろうか。
「久しぶりだね、雄哉さん。それから……未だレイさんで良いんだよね、ミゼンさん?」
 自らの血液を消耗し、少し血の気を失わせながらのさくらえのそれに、ふっ、と思わずミゼンの姿と化したレイが微笑する。
「何、未だこの姿になってほんの少しだ。そもそも彩瑠の魔神『カミガカリ』姿とて、そう長くは持たないのだろう?」
 そう何処か愉快そうな笑声の混ざったレイの言の葉と、ほぼ同時に。
 瑠香と敬輔を突破してきたクロムナイトが、ロード・クロムによって与えられた銃を持って、さくらえを撃ち抜こうとするが。
「Active Ice Wall! やらせませんよ!」
 そう叫んだウィリアムが発動した無限にも等しい氷塊の盾が、懐かしの再会をしている3人を守る様に防御を重ね。
「それっ!」
 その次の瞬間には、魔法少女ムーンホワイトと化した白が、白い残像を引きながら肉薄して、正拳を叩き付けていた。
 問答無用の白の拳に吹き飛ばされて戦闘不能になったクロムナイトを気にも留めず、レイがその手の大きな杖を空中で一閃。
 振るわれたその杖から解き放たれた黒焔が、自分達とやや突出している感のある、瑠香の間に亀裂を入れようとしていたクロムナイト達を焼き払っていき。
 その空いた空間を一斉に漆黒の肌を持つ色っぽい殺人鬼達が駆け抜けながら、クロムナイト達を文字通り『惨殺』していく。
「積もる話は山ほどあるけれど……取り敢えず、今はそれどころじゃ無いね」
 そのクロムナイト達を惨殺していくクローネの召喚した六六六人衆達の存在を見て、思わず驚愕と苦笑を交えるさくらえのそれに。
「そう言うことだ。私も時間があまりないのでな。先ずは、クロムナイト達をさっさと殲滅するとしようか」
 そう告げたレイのその言の葉に。
「全く……!」
 と雄哉が何とも言えない様子でくしゃくしゃと自分の頭を掻き回す様にしてから頭を振ると、雄叫びを上げて、姫桜達と共に、猛攻へと転じた。


 ――その圧倒的な快進撃は、空中からでも続いている。
「はぁぁぁぁッ!!! 学校も、住宅街も、あなた達に一切傷つけさせないんだから!」
 その雄叫びと、ほぼ同時に。
 神穿ツ竜ノ顎……竜の頭部を模した多機能バスターライフルをガトリングモードに切り替えて、そこから無数の銃弾を叩き付ける様に解き放つフェル。
 上空から氷と冷気を伴った竜巻を巻き起こし、それに次々にその身を凍てつかされ、熱を奪われていたクロムナイト達を撃ち抜きその身の動きを止めさせたその瞬間を狙って。
「一気に焼き払わせて貰う。此度の戦いは、わしの領域でもあるからな!」
 そう何処か胴間声の様ながっしりとした言葉と共に。
 無限に成長する雷を纏った黒槍、黒燭炎を霹靂の上から一閃する義透。
 解き放たれた無限に成長する雷の力込められた炎が、フェルの魔術によって凍てついていたクロムナイトを装備した武器毎纏めて薙ぎ払っていく。
「クエッ!」
 霹靂がそんな義透を守る様に雷の迸る結界を張り巡らして、クロムナイトからの銃撃などに備えているところに。
「今は先ずうずめの思惑をこの手で潰し、エスパーの方々の帰る場所を守らなければっ!」
 叫びと共に、真の姿の上からイカ型鎧ナメロウスクイーゼ装備形態と化しているビスマスが全部で155個のイカドリルロケットビットを展開、内、半分を防衛に回し。
 残りの半分を高速で移動させて、そこから無数のビームの驟雨を解き放っていた。
 解き放たれたビスマスの召喚したイカドリルロケットビットからの光線が次々にフェルと義透に灼滅されたクロムナイト達の屍を踏み越えて、肉薄しようとしてくるクロムナイト達を撃ち抜くその間に。
「その意気ですよ、ビスちゃん」
 轟、と【アンチファル】を加速させて降下する様に肉薄しつつ、自らの【地竜の翼】を羽ばたかせながら。
 アメリが、キノコ氷型の冬の風物詩「アイスマッシュブロウ」と活雷茸「トロンマッシュ」の2つの茸を掛け合わせて弾幕を展開。
 弾幕による牽制に応じる様にガトリング型の武装を装備したクロムナイト達がアメリの居る場所全体に無数の銃弾をばらまこうとするが。
「悪いな。此処から先は通行止めだぜ」
 そう何処か皮肉げな口調でそう告げて。
 鳥威に焦げ茶色のオーラを纏わせて都市を守り続けていた千尋の指から無数の青い光弾が解き放たれ。
 その青い光弾の群れに紛れさせる様に。
 青白く光り輝く小太刀『月烏』と、漆黒の短剣『烏喙』と共に投擲し、それらをフェイントに青い光弾がクロムナイトを撃ち抜いたその瞬間を狙い。
「行きますっ!」
 叫びと共に、ビスマスが強化状態も壊す光学烏賊螺旋ロケットを発射すると。
 発射されたロケット砲が千尋の光弾や数々の武器で撃ち抜かれたクロムナイト達に直撃し、纏めて粉砕。
 木っ端微塵になったクロムナイト達の残骸を飛翔する様に最大加速させたアメリが……。
「さあ、アメリの拳に籠めた京都の宇治抹茶のチョコのキノコの山の大地の力、その身で受けてみるのです!」
 その残骸の雨の中をアンチファルを加速させて吶喊して突破して。
 同時に突然、ビスマスが起こした大爆発の影響で身動きの取れなくなっていたクロムナイト達の1体に肉薄し、発勁を叩き込んだ。
「吹き飛ばす方向には気を付けて!」
 その言葉と同時にそのクロムナイトを投げ飛ばすアメリ。
 ちぎっては投げの要領で投げ飛ばされたクロムナイトが、瑠香と敬輔の背後を狙わんとしていたクロムナイト達に着弾し……。
 ――ドカーン!
 と言う激しい爆発音と共に、纏めてクロムナイト達の一団を一掃している。
「なっ……何!?」
 その突然の後方での大爆発に一瞬、泡を食う敬輔だったが。
「……数が多いですね。敬輔さん、兎に角クロムナイト達を纏めて薙ぎ払うのが先ですよ」
 その言葉と共に。
 瑠香が最初の一撃を下段から撥ね上げる様にして振るった物干し竿・村正を、今度は大上段から振り下ろす様に叩き込む。
 振り下ろされた物干し竿・村正から解き放たれた斬撃の一撃が漣の様に戦場に広がっていき、フェルの竜巻の範囲から辛うじて逃れたクロムナイト達を纏めて叩き斬るのを見つつ。
(「……お兄ちゃん……」)
「ああ、勿論だ」
 自らが全身に纏う白い靄たる『少女』達の言葉に首肯して。
 敬輔が黒剣を横一文字に振るうと、敬輔を中心として、瑠香のそれに勝るとも劣らぬ斬撃の波が放出され、ミストを展開しようとしていたクロムナイト達を纏めて薙ぎ払った。
 ――その、薙ぎ払いでも尚、辛うじて生き延びたクロムナイトの数体が。
 負ける訳にはいかぬ、と言う様に高速で移動する敬輔と走ることを絶やさぬ瑠香、そして白い残像を引きながら走り回る白の動きを纏めて止めようとするが。
「そんな行動が、ぼく達に通じるとでも思っていましたか?」
 そう言葉を紡ぐと同時に。
 無数の氷塊を戦場全体に展開していたウィリアムが、パチン、とすかさずと言った様に指を鳴らすと。
 程なくして一部の氷塊が細かく砕けて無数の雹の礫と化して、そのまま叩き付けられる様にクロムナイト達を霧ごと凍てつかせたその瞬間を狙う様に。
「そこだよっ!」
 叫びと共に白が相手の懐に飛び込み、白きオーラ纏った拳を振るっている。
 白の超威力を持った拳は、ウィリアムの氷塊によって氷の彫像と化したクロムナイトを容赦なく粉々にしていた。
 パッキン! パッキン! と言う小気味よい音と共に。
 そうしてクロムナイトを一掃しながらも、白は自らの胸中に宿るそれに自らの冷静な部分を向けている。
(「……アオくんは、未だみたいだけれど」)
 そんな白の想いに応えるかの様に。
 淡く優しい風が軽く吹いて、そっと彼女の衣装の端を風に靡かせ。
 その優しい風の向こうに少し温もりの様な、懐旧の様なそれを感じた白が微かに寂しげな笑みを浮かべていた。
(「私は、月代って名前の、アオくんの|ビハインド《・・・・・》だった」)
 ――ビハインド。
 それは、愛する者を失った人がその悲しみのあまりに、自らの力の半分を割いて、失った愛する者達の魂を、サーヴァント化させたもの。
 その碧のサーヴァントであった白が……今、此処で魔法少女ムーンホワイトと化している白の|原型《オリジナル》。
 ――そんな、彼女が……。
(「どうして、今はアオくんと体を共有しているのかは分からない」)
 ――けれども。
 そう、けれども此だけははっきり言える。
 それは……。
「私は、アオくんが好き。此だけは何も変わらない! ……だから!」
 ――だから、苦しみ、悩んでいる今のアオくんの代わりに、私が戦う。
 魔法少女として……そして、アオくんと同一の体を共有する『白』として。
 そう内心で自らの誓いを……決意を、意思を確認して。
 白が白き残像を曳きながら、敬輔と瑠香の周りで僅かに生き残っていた、フェルの竜巻によって凍てついたクロムナイトを叩き割った。


 ――30秒位であろうか。
「もう少し、頑張らせて貰うからね!」
 そう咆哮すると共に。
 フェルが右手に構えた銀の星を、ホバリングしながらヒュン、ヒュン、と軽くその場で竜巻の軌跡を描く様に振るうと。
 その軌跡が青と翡翠色の粒子と共に、ぽろぽろと地面に滴る様に落ちていき。
 ――轟!
 と言う鋭い音と共に、もう一箇所に新たな氷と冷気を伴った竜巻を巻き起こした。
 巻き起こされた氷と冷気を伴った竜巻が、一気に形勢が不利になったクロムナイト達を追尾する様に追い。
 暴風と化してその内側に取り込んで、見る見る内にクロムナイト達の体から大量の熱や存在力を奪い取っていく。
 ――その熱を、存在力を奪われて、激しく消耗したクロムナイト達に。
「今だよ、皆」
 嗾ける様にクローネが叫んだ時。
 クローネの召喚した155体の六六六人衆が丁々発止に動き始めた。
 その一部は、フェルが夢の中で出会った魔法使いの使っていた魔法の我流でアレンジした氷と冷気伴う竜巻で凍てついたクロムナイト達を解体し。
 その内の一部は、ビスマスとアメリの動きに連携して、ビスマスやアメリが掻き乱したクロムナイトの群の中に紛れ込み。
 瞬く間にその手に持つナイフで死角から肉薄して急所を抉り、或いは断ち斬り、灼滅している。
 そうやって、瞬く間に六六六人衆に解体されていくクロムナイト達と言う、あまり見慣れない光景に、奇妙な違和感を覚えながら。
「この!」
 雄哉が素早く前傾姿勢になって、長剣で袈裟に自らを断ち斬らんとしたクロムナイトの懐に飛び込むと同時に、その手を鋼鉄化させて貫手で粉砕。
 通常の3倍の破壊力を持つその拳は、それだけ大ぶりになる分、攻撃が外れる可能性も上がるのだが。
「私が有城の攻撃の弱点を見抜けぬ筈が無いだろう?」
 そう不敵に微笑んだミゼンの姿をしたレイが、片喰を鎖状に変形させて、容赦なくクロムナイトを拘束し、雄哉の攻撃を確実に直撃させていた。
(「……長いこと戦っている様に思えるけれど……此でも未だ30秒強位、なんだよね」)
 そう思いながら自らの血を失い、更に血の気を失いながらも、笑みを絶やすこと無くさくらえが天地開闢光を解き放つと。
 解き放たれた光に撃ち抜かれ、クロムナイト達が瞬く間に消えていく。
 だが……秒単位で血液が消耗され、結果として、貧血による微かな目眩をさくらえが覚えた、その刹那。
「!」
 誰もが、油断していたわけではいなかった。
 だが、それでもここは戦場。
 偶然と呼ばれるそれが、折り重なる事がある。
 それは、1体のクロムナイトが全身にクロム鋼の輝きと共に、自ら伸長させた腕でさくらえを捉え。
 もう1体のクロムナイトが、己が装備した長剣で、さくらえを袈裟に切り捨てようとする様なその瞬間が。
 そしてその様子を、クロムナイトの1体を槍で刺し貫き、止めを指した瞬間にその目の端で捉えて。
「パ……!」
 本当に思わず、と言った様に。
 姫桜が思わず『パパ』とさくらえに呼びかけるより早く、大地を蹴って。
 クロムナイトとさくらえの間に割り込む様に飛び込んで、その二槍を十字に構えてクロムナイトの攻撃を防御して。
「……お願いだから、怪我しないでよね! じゃないと、|ママ《・・》が悲しむんだから!」
 そう絶叫の様な、叫びを姫桜が上げると言う、偶然の積み重ねの結果による必然が生み出されたのは。
(「あっ……しまっ……!」)
 姫桜は、本当に思わず、と言う様に張り上げた自らの声に気が付いて、思わず恥ずかしそうに顔を赤らめる。
 ――本当は、ずっと気にしていたし、頭では分かっていた筈だった。
 レイや雄哉……|この世界《・・・・》の英雄――灼滅者達が、親しげにさくらえと話している声が聞こえたその時から。
 ……分かっていた筈なのだ。
 今、自分が咄嗟に守ったその男……さくらえと言う名のその男が。
 ――自分の父とそっくりな、この世界の灼滅者に過ぎないと言う事は。
 それでも……姫桜のその叫びを聞いて。
 思わず、と言った様にさくらえがにっこりと微笑む。
「ありがとう。助かったよ、|姫桜《・・》」
 それは、未だ幼いさくらえの娘の名前。
 その自分の娘と、同姓同名で……さくらえが傷つけば、ママ……|妻《・》が悲しむのだと断言した目前の妻にそっくりな女の子が……。
 ――|異世界《・・・》の、自分と彼女の娘が成長した姿なのだと、さくらえには確かに確信できた。
(「……ダークネスだって復活する位なんだからさ。今って|何が起こっても《・・・・・・》不思議じゃ無いんだよねぇ」)
 こう言う、緊迫した状況なのは重々承知しているけれど。
 それでも思わず、自分の前に立ちはだかって、自分を守ってくれた姫桜の姿を見て、さくらえは目尻を和らげ、ふふ、と思わず笑ってしまう。
「……確かに、今のところ君より力は及ばないかも知れないけれど、でも……それなりに戦闘経験は僕もあるんだよ、姫桜?」
 そう口元に穏やかな笑みを称えて。
 自分の――恐らく|異世界《・・・》で異なる生を歩んだ自分と妻の娘であろう姫桜の背に、そう穏やかにさくらえが呼びかけた、丁度その時。
「……そろそろケリを付けた方が良さそうだな」
 内心で今どの位の時間が経っているのかを考えていたミゼンの姿をしたレイが黒焔を解き放って周囲のクロムナイト達を焼き払うのに。
「そうだね。私も、優希斗さんが言ってくれた様にあなた達、|皆《・》が誰1人欠ける事無く帰ってきて欲しい。だから……っ!」
 その言の葉と、共に。
 上空から下の状況を見て、何が起きているのかを感じ取ったフェルが神穿ツ竜ノ顎の引金を引いて。
 無限にも等しい光弾を連射して、残存のクロムナイト達を貫くのに応じる様に。
 二槍をひゅっ、と軽く引いた姫桜が小さく息を吸って。
「絶対に。誰一人として欠けさせなどしないわ。だから白燐、お願い。あなた達の力を貸して!」
 己が誰1人欠けさせない、と言う決意を秘めた雄叫びを姫桜が上げた……その瞬間。
 ――かっ、と
 姫桜の全身から、数多の白燐蟲からなる閃光が迸った。
 迸った閃光が戦場全体に配置されたウィリアムの氷塊の盾に乱反射し。
 戦場の全域の『猟兵』達にその力を響き渡らせた……その時。
「おおおおおおおっ!」
 その閃光を全身に浴びた敬輔が、赤黒く光輝く刀身持つ黒剣を振るい、一気に残存のクロムナイトを薙ぎ払い。
「さて……後は纏めて焼き払うだけじゃな」
 フェルの氷と冷気の嵐で凍てつき体力を奪われていたクロムナイト達に、義透がその手の黒燭炎から成長する無限の雷を解き放ち、クロムナイト達を痺れさせ。
「行くよっ! アオくん……見ていてねっ!」
 そう叫んだ白が肉薄して、クロムナイトを殴り飛ばしてその全身を粉々に砕けば。
「やれやれ……漸く終わりか……長い様で短く、短い様で長く感じた時間だったな」
 そう呟いた千尋が口の端に皮肉げな笑みを浮かべながら、青い光弾を撃ち出し、クロムナイト達を撃ち抜き。
「後少しですよ、ビスちゃん」
 そう優しく告げたアメリが、既にウィリアムの氷塊に動きを取れなくなっていたクロムナイトを捉えて投げ飛ばせば。
 投げ飛ばされたクロムナイトが周囲のクロムナイトとぶつかり合って爆発の花を咲かせ。
 それでも尚、未だ動くことが出来るのであろう。
 諦めるな、とばかりに複数のクロムナイトがアメリを狙おうとするが。
「そこです!」
 その時にはビスマスが再装填した強化状態も壊す光学烏賊螺旋ロケットを発射して、アメリが撃ち漏らしたクロムナイト達の中心に着弾させ。
「行って下さい!」
 それと同時に、70以上のイカドリルロケットビットから一斉にイカのご当地なめろうパワーを得たビームを連射して、瞬く間に先の爆発で瀕死となったクロムナイトを射貫いていた。
 それでも尚、僅かに生き残ったクロムナイト達には。
「残念だけれど、アナタ達は此処で終わり。アナタ達のお役目はもう終わっているんだ」
 そうクローネが淡々と愉快げに言葉を紡ぎながら。
 自らが呼び出した六六六人衆にその死角から刃を振るわせてクロムナイトを分解した上で、自らも肉薄しドスソードをクロムナイト達の鎧の隙間に差し込む様に突き出し止めを刺して。
 ――そして。
「あなた達の役割は、もう終わりました。……せめて、安らかにおやすみなさい」
 そう、何処か哀れむ様な、悲しげな言の葉と共に。
 瑠香が物干し竿・村正を横薙ぎに一閃して解き放った衝撃の波が……本当に僅かに残っていた最後のクロムナイトんの生き残りを叩き斬り。

 ――クロムナイト……哀れな武装デモノイド達に一先ずの安らかな眠りを……終焉を齎す事に成功するのだった。


「フム……ミゼンの儘にならずにはすんだか」
 ――そのミゼンの姿から、元の姿へと自らが戻るのに頷きながら。
 レイが特別驚いた様子も無くそう呟くのを聞いて、敬輔が思わず嘆息と安堵の篭もった溜息を漏らす。
(「あれ程、俺には戻れなくなると感じた闇堕ちをああも簡単に使いこなすなんて……」)
 ――と言うより、それ自体が『灼滅者』の特性なのだろう。
 そう考えると、やはり大きく『種』としての在り方が違うのだと思い知らされている様な気がして、敬輔は思わず嘆息を零した。
 ――が、何もレイの闇堕ちに対して、思うところがあるのは敬輔だけでは無いらしい。
「……いや、俺みたいな人造灼滅者ならまあ、未だ分かるが……アステネスさん、もう少し闇落ちは使いどころを考えろないと……。正直、肝が冷えたよ」
 そう雄哉が何とも言えない表情で息をつくのに、何、とレイが微笑を浮かべる。
「君達がいたからな。多分、私が戻れなくなるよりも先に決着を付けられるだろうと信じていたんだ」
「それは、そうかも知れないけれどね……」
 そうさくらえも苦笑を綻ばせつつも目頭を押さえる様にして軽く頭を横に振る様子を見て、姫桜はやはりこの人は、|父《・》とは違う人なのだと悟ってしまう。
 ――それでもどうしようも無い位の、懐かしさや慕わしさを感じてはしまうけれども。
(「パパ……」)
 実際に家に居た頃は、とてつもなく口うるさく、色々と面倒な父親だと、正直思っていたけれども。
 でも、こうして自分の父親によく似た違うさくらえを見ていると、そこに抑えようのない慕わしさを感じてしまうのは、変えようのない現実で。
 そんな事を考え、何だか悶々としている様子の姫桜を見ながら。
「まっ……何はともあれ、誰1人欠ける事無く進むことが出来て良かったでござるなぁ」
 漸く一段落した、と言わんばかりにフェルがそっと安堵の息を漏らしつつ降りてきた。
 目前に現れたドラゴニアンの女……実は初対面……のフェルを見て、ビスマスがそう言えば、と一礼を1つ。
「あなたとは始めまして、でしたよね? アメリさんと一緒に来て、気が付けばすっかり馴染んでいるかの様に一緒に戦っていましたから、特に気にしていませんでしたが」
 そのビスマスの問いかけに。
 いやぁ、とフェルが少しだけ気恥ずかしそうに鼻を掻いていた。
「サイキックハーツという世界は殆ど初めての経験でござるが、此処は何というか……拙者の故郷に似ていると感じてしまったでござるからな。後、彼の言葉にとても共感していた事もあるでござるし」
『彼』とは此処にフェルや自分達を送り出してくれたグリモア猟兵の事であろう。
 まるで、その人物の言っていた言葉の意味を、その重みをサイキックハーツ出身では無いにも関わらず知っている様に感じられるフェルのそれに、成程、とクローネが首肯した。
「そうか。フェルさん、そう言えばアナタは、|もう一つの世界《ケルベロスブレイド》からやってきた竜人だったんだっけ?」
 そのクローネの何気ない問いかけを聞いて、フェルが微かに驚いた様に目を見開くが。
「まあ、その通りでござるな、クローネ殿」
 そうフェルが何処か生真面目な表情を浮かべて首肯する様子を見て、成程、としたり顔で首肯を返すクローネ。
 そんなクローネのフェルに抱く共感の姿を見て、ほう、とレイが興味深げに、さくらえが成程、と少し感心した様な表情になり。
(「……外の世界は、本当に広いな」)
 そう雄哉が内心で呟くその間にも、まあ、と千尋が皮肉げに肩を竦めた。
「取り敢えず建造物はバークリーの氷塊や、テルマールのイカドリルロケットビットって言ったっけ? あれから放出されるバリアもあったお陰で、ほぼ無傷ですんだけれどよ。未だ、本命との戦いは終わっていないって事で良いんだよな?」
 その千尋の何処か愉快そうな問いかけを聞いて。
「そう言うことですね。現地の雄哉さん、さくらえさん、レイさんが気にしているわるいこの|親玉さん《うずめ》とは未だ決着が付いていないんですからね。でも、エスパーさん達の命は勿論、帰ってくることが出来る場所も守り抜けたのは良かったですよ。ねっ、ビスちゃん?」
 そうアメリが少し上目遣いになってビスマスに問いかけるそれを聞いて。
「そうですね。アメリさんの言う通り、エスパーの方々が無事に帰ることが出来る場所の安全を完全に取り戻す為にも、わたし達を狙ったうずめを早く倒さねばなりませんね」
 そうコクリとビスマスが首肯する様子を見て、成程、とさくらえがビスマスの方を興味深げに見ている。
(「……姫桜と同じで、こう言う可能性の1つもあったんだよね。ビスマスさんは」)
 そんなさくらえの内心の呟きに気が付いたのか、居ないのか。
 ちらりとビスマスがさくらえを見遣るその間に、先ずは、と白が切り替える様に言葉を紡いだ。
「うずめを倒さないと行けないんだよね。私達が」
(「アオくん、貴方は必ずわたしが守ってみせるからね」)
 そう白が内心で自らと今は人格を交代している碧への想いを誓いに変えて、そっと言葉にして紡ぐそれに。
「その通りだな。わしの中にいる我等を構成する1人でもある『静かなる者』もうずめとは決着を付けねばならぬ、と、そう囁いておる。……奴等クロムナイトも、3分ももたなかったしな」
 そう霹靂の上から義透……『侵す者』が返事を返している。
 その義透の中の『静かなる者』……梓奥武・孝透が、その言葉に全くだと言う様に『侵す者』に首肯しているのを感じながら。
「では、皆で後はあのクロムナイトとやらが姿を現した小山の方へと向かえば良いのだな?」
 そう確認する様に義透が問いかけるのに。
 多分そうでしょうね、と言う様にウィリアムが首肯しながら。
「いずれにせよ、このクロムナイト達が現れたあの山の方にうずめはいるのでしょう。それがオブリビオンである限り、ぼく達がこの手で倒すべきです。況してや……そのうずめがぼく達を殺せ、と彼等に命じたのであれば尚更です」
 そう締めくくる様に呟いたそれにそれぞれの表情を浮かべて首肯した猟兵達は最後の敵の元へと向かう。

 ――この事件の元凶であるうずめ様……奇しくも雄哉が言った、嘗て灼滅者達によって灼滅された、『うずめ様』の巫女が待つのであろう、その小山の方へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『うずめ様の巫女』

POW   :    死の預言
予め【戦闘中に行う内容を敵に告げておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    苦痛の預言
自身の【語った預言】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    滅びの預言
【自身の刺青】から1体の強力な【巨大な鬼の幻影】を召喚する。[巨大な鬼の幻影]はレベル秒間戦場に留まり、【膨大なサイキックエナジーの波動】で攻撃し続ける。

イラスト:Laruha

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――猟兵達が、辿り着いたその場所で。
『うずめ様は言いました。此処にいる猟兵達と、全ての者達に裁きの光を与えよと』
 そううずめ様の巫女が、その名の通り、うずめ様からの預言を言の葉にした、その直後。
 ――突如として、戦場全体を眩い無限にも等しい光のレーザーが覆い尽くしていく。
 それは、触れればエスパー達であっても立ち所に焼き尽くされる程のユーベルコード……否、サイキックと彼女達が呼んでいるものだと直観し。
 猟兵達が、それぞれの表情でうずめ様の巫女を見据えているのを見て。
『うずめ様は言いました。この地の全ての者達を、猟兵達ごと焼き尽くしなさいと』
 ――何処か、何か含みのある表情を見せながら。
 薄ら笑いを浮かべて告げるうずめ様の巫女に、猟兵達は突撃する。

 ――うずめ様を倒す、そのために。

 *****************
 第3章は下記ルールで運営致します。
 1.エスパー達の避難及び、建物の防御は無事に完了致しましたので、『うずめ様の巫女』が居る本拠地に乗り込む事になりました。結果として、この戦場においては、エスパー達の保護や、建物への被害を考えないで頂いても大丈夫です。
 2.うずめ様の巫女の使うUC:POWで行う行動は、断章で実際に台詞になっていること以外の行動の可能性もございます。光線自体もサイキックによる攻撃なので、これにどう対応するのかはお任せいたします(光線による攻撃への防御は、どの能力値のUCで戦う場合でもプレイングボーナスになりうる可能性がございます)
 3.尚、うずめ様の巫女が行う|行動《・・》は、猟兵達を殺すことです。その為SPDで戦う場合、今まで勝ち続けてきた猟兵の皆様に敵対するという|不利《・・》な行動を常に行い続けているものと判定します。

 ――それでは、良き戦いを。
アルテミシア・ルッシュリア
うずめ様の巫女……|うずめ様《ソウルボード》を分割して一人一人に与え、全人類がサイキックハーツに至ったのが、罪だとでも?

そう思うなら、それを否定するなら、どちらでもないなら
結果は変わらない――スペードを、オルフェウスを代行して言おうか
彼女は、それを成すのが目的だった筈だから
――『この世の全ての罪は、ひとつ残らずボクの物である』、と

瞬間『一つ残らず自分の物にしたこの世の全ての罪』……其れは即ち『サイキックハーツ世界に存在している全ての存在』と接触しているに等しい
そして世界に存在する『ボクが武器とみなしたもの』……その光のサイキックを、操作して君に帰してあげよう

UCについては『UCへの無効・複製・吸収・貫通・反射能力』……思えば、オルフェウスは『|罪深き刃《ユーベルコード》』について把握していたのかな?
いずれにせよ……これで最後だ

UCを貫通し無効化し反射して『死の預言』を突破
どんな預言だろうと|預言《UC》その物を封じられれば意味はない

そう言ってうずめ様の巫女のサイキックを操作しトドメを刺す




 ――住宅街の方から、猟兵達が辿り着くよりも少し前に。
『うずめ様は言いました。此処にいる猟兵達と、全ての者達に裁きの光を与えよと』
 突如として戦場を走った眩く光り輝く光線。
 その光線を目の当たりにしつつ、アルテミシア・ルッシュリアが問いかける。
「うずめ様の巫女……。君は|うずめ様《ソウルボード》を分割して一人一人に与え、全人類がサイキックハーツに至ったのが、罪だとでも?」
 そのアルテミシアの問いかけに。
『うずめ様は言いました。この地の全ての猟兵達と全ての者達に裁きの光を与えよと』
 ただ、そう預言の言の葉をうずめ様の巫女が告げている。
 自らのユーベルコードを発動させるよりも前に解き放たれた光線にその身を灼かれつつ此は、とアルテミシアは軽く頭を横に振った。
(「此は……何をどう思っているのかどうか、さっぱり分からないね」)
 ――それは否定でも無ければ、肯定でも無く。
 即ち、どれなのかも分からない、と言う事がよく分かる。
(「此処まで話が通じない相手、と言うのも珍しいね」)
 焼け焦げた自らの身を顧みながら、不敵に笑うアルテミシア。
 けれども――どれなのかが分からないとしても。
「結果は変わらない――少なくともボクには、シャドウとして、スペードを、オルフェウスを代行して言えることがある」
 ――きっと、それを為すことこそが、彼女の目的だった筈なのだ。
 真偽の程については、今では定かでは無いけれども。
 それは……。
「この世の全ての罪は、ひとつ残らずボクの物である」
 それは、嘗てソウルボード・スペードエンドでオルフェウスとグレイズモンキーの会話として、|灼滅者《・・・》達が見た光景――予兆。
 その予兆の中でオルフェウスがグレイズモンキーに伝えたとされる、その言葉の一人称を変えた、そんな言の葉。
 それを歌う様にアルテミシアが告げながら、その手にスペードの刻まれたタロットを握りしめ。
「月よ示せ。全ての心に宿る罪。其れを引き受け罪深き刃に干渉する事こそ贖罪の本懐。我が罪深き刃を以て、全ての罪を許し給う」
 そう言の葉を締めくくり、自らのユーベルコードを発動させた。
 ――|預言《UC》そのものを封じ、反射し、貫通させる事の出来るそれを。
 その想いと共に、口の端にアルテミシアが勝利を確信した笑みを浮かべたその刹那。
 不意に、アルテミシアを灼いていた光線が反転し、それがうずめ様の体を灼き。
 その一方で……。
『うずめ様は言いました。全ての猟兵とこの地にいる者達を叩き潰せと』
 そう淡々と諳んじる様に薄ら笑いを浮かべながら言の葉を告げると共に。
 自らの手を鬼と化させたうずめ様の巫女が容赦のない拳の一撃を放つ。
 それは、鬼の如き膂力で解き放たれた一撃。
 咄嗟の攻撃で在り、自らの武器と見做す暇も無かったアルテミシアにとっては、あまりにも強烈な、そんな一撃。
 その衝撃はイミテーション・チェーン……嘗て自らが纏っていた存在した鎖型の永続型結界膜を独自のサイキックで模倣し再現したそれでも、その衝撃は完全に抑えきれず。
「……がっ!」
 ドシン、と全身を叩き付けられる様に大地に伏せたアルテミシアがその痛みと衝撃のあまりに意識が闇に包まれていくその中で。
 ――ふと、アルテミシアの脳裏には、こんな思考が過ぎっていた。
(「……オルフェウスは|罪深き刃《ユーベルコード》について把握していたのかな?」)
 ――その問いに対する解が出るよりも先に。
 アルテミシアの意識が深い闇に閉ざされると同時に、彼女の姿が戦場から消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

赤城・碧
「白、もう大丈夫だ。ありがとう。おかげで『思い出せた』」

「俺はデモノイドヒューマンだった。」

「月代というビハインドがいた。」

いつの間にか手にしたスレイヤーカードを展開

「そうだ、俺は、灼滅者だったんだ。『咲け、黒百合』!」

そして過去も今も変わらぬもの……我が妖刀

「黒百合、お前知っていたな?相変わらず食えないやつだ。」

「思う存分暴れて来い。真の姿……いや、闇堕ちだ。『狂い裂け、黒百合』」

『召喚に応じ参上しました、我が主。……お帰りなさい。』

『これを言うのも久方ぶりですね…。我が名は《黒百合》。この身全てが一振の刀と識りなさい。』
《黒百合》時、口調丁寧語、二人称名字呼び捨て

光線は私と相性が悪いですね。【オーラ防御】や【第六感】、【見切り】、【武器受け】でなんとか誤魔化しましょう。速やかに接敵して、【フェイント】、【だまし討ち】で狙いを悟らせないようにしつつ業鵠滅閃…頭から股にかけて袈裟斬りして思考力を奪って予知の抑制、可能ならこれで彼女のサイキックも一時的にでも封印したいですね。


フェル・オオヤマ
・心境
うずめ様の予言とやらは成就させはしない!
そして私たちが予言しよう!「お前は3度目の灼滅を迎える」と!

・前提
味方の邪魔及び不利になるような行動は取りません

・攻撃
基本は惨殺ナイフで攻撃!【ダッシュ/傷口を広げる/切り込み】の技能を使用
味方の疲労・ダメージを感じたら[銀の星]を構えてUCの[我竜・月光氷嵐]を発動!召喚された鬼の幻影ごと凍てつかせつつ味方の立て直しを試みます【高速詠唱/魔力制御/凍結攻撃/風を操る】の技能を使用

誰一人欠ける事無く、全員無事に生きて帰る!その誓いは果たす!

・防御
うずめ様が予言をしたり味方に揺さぶりをかけるような事を言おうとしたらわざとチェーンソー剣を鳴らして妨害を試みます【音響攻撃】
それが通じない及び味方の不利になると判断した場合は妨害は中止

防御手段及び光線対策
回避を優先
回避が不可及びピンチな味方が狙われた場合はビームシールドを構えます【かばう/受け流し/挑発/盾受け/勇気/激痛耐性】技能

どうした!そんな攻撃じゃ私は倒れないよ!

他キャラとの連携・アドリブ歓迎


クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【WIZ判定】
今回も真剣口調で話すよ

過去に取り込んだ|死者《ダークネス/灼滅者》の魂から力を引き出す、それがワタシの能力
だから|この世界《サイキックハーツ》のことを、この世界で生まれ育った者の様に話せるんだ
…要は、|うずめ様の巫女《アナタ》の事もある程度は知っているって話
その|予言《クチ》で言えるなら言ってみなよ
自分は猟兵に勝利できる、ってね

UCは『ワタシの刺青羅刹合体』
ワタシの『|精神《ナカ》』から過去に取り込んだ|死者《ダークネス》の魂…『黒龍』の刺青を持った女羅刹を召喚し、合体して羅刹形態となるよ
近距離では『鬼神変』した片腕による【肉体改造/怪力】攻撃と刺青『黒龍』の【捕縛】能力で、中・遠距離では『神薙刃』による【風を操る/ホーミング/切断】攻撃で攻めるよ
敵からの攻撃は【鉄壁/硬化/霊的防護/オーラ防御/激痛耐性/回復力】で耐えるね

ワタシの中で|魂《刺青羅刹》が言ってるんだ
アナタの刺青が欲しい、ってね
…奪わせてもらうよ、アナタの命ごと…!


ビスマス・テルマール
【なめろう茸】
貴女がわたし達を呼び寄せる為に、わざわざエスパーの方々に……ロードクロムやクロムナイトを差し向けて

挙げ句、その予言から考えて
この状態からわたし達以外に被害を拡げる事を考えていませんか?何を企んでいるか知りませんが

そうはいきません

◯POW
『早業』オーバーロード&UC発動
予言の光線には『オーラ防御&結界術&炎耐性&電撃耐性&属性攻撃(鏡)』込め【なめろうオーラウォール・キャンサー極光壁(以降、極光壁と略)】で『第六感』で『見切り&ジャストガード』し、うずめに『受け流し』

二つ目の予言が炎の類いなら
極光壁に付与する『属性攻撃』を氷結に変え凌ぎ『念動力』で【極光壁】を『操縦』し房総半島の蟹の『ご当地パワー』込め『2回攻撃&鎧無視攻撃&シールドバッシュ』お見舞い

皆と『集団戦術&団体行動』連携
状況により変身を重ね傷の治癒と【極光壁】の数と身長(大きさ)増しつつ

攻守一体を仕掛け
【ディメンション・なめろうブレイカー&ジュリンプル・グレネドフォード】の『一斉発射』を

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


アメリ・ハーベスティア
【なめろう茸】
うずめ…年齢的におねーさんなのか、おばさんなのか解りませんが、アメリ達を呼び寄せる為に、エスパーの皆さんを巻き込みわるいこ三昧

スーパーよいこの名にかけて
ここで終わりなのですっ!

◯POW
予言通りの巨大な光線なら
『高速詠唱&全力魔法』の【トロンマッシュ】の『弾幕』ベースの『属性攻撃(鏡)&炎耐性&電撃耐性&オーラ防御&結界術』を『範囲攻撃』展開

『第六感』で『見切り』皆守りつつ『ジャストガード&鉄壁&受け流し』するのです

もし雷でも茸は雷の衝撃や音で分裂する性質

【トロンマッシュ】ベースなら

熱や炎なら弾幕結界の軸を【アイスマッシュブロウ】に

皆と『集団戦術&団体行動』連携し【アンチファル】と言う『武器に乗って空を飛ぶ&サーフィン&空中戦&推力移動』

スーパーよいこランド名物
ヒアウィーきのこの『ご当地パワー』を
込めUCのエリンギ、舞茸、シメジのなめろう斬を攻撃力重視で『怪力&2回攻撃&居合い&斬撃波』で

キノコのなめろうのレシピは
壮行会でビスちゃんに教わったです
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ウィリアム・バークリー
先制攻撃に「凍結攻撃」を乗せた「結界術」で防御。

あなたがうずめ様の巫女というわけですね。
長年の宿敵である|灼滅者《スレイヤー》ではなく、まだこの世界に到達して日が浅いぼくら猟兵を狙った行動、理由があれば聞きますが。どうせ、うずめ様がそう言ったからなんでしょうね。
狂信の輩に行動の理非を問うても埒もなし。灼滅者の流儀に従って、こう言いましょうか。あなたを灼滅します。

「全力魔法」氷の「属性攻撃」「凍結攻撃」で、Freezing Coffinで氷の鎖を生成。鬼や木々などの障害を避けながら、うずめ様の巫女に氷の鎖を叩き込みます。体術も大したものですが、一旦当たれば凍結は早い。皆さん、集中攻撃を。


司・千尋
連携、アドリブ可

うずめって奴なのかと思ったら
本人じゃなくて巫女なのか?


攻撃は基本的に『翠色冷光』を使用
回避されても弾道をある程度操作し追尾させる
近接や投擲等の武器も使い
早業、範囲攻撃、2回攻撃など手数で補う
敵に回避されないよう広範囲爆撃とかもしてみるか


光線含む敵の攻撃は結界術と細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
オーラ防御を鳥威や自身に重ねて使用し耐久力を強化
割れてもすぐ次を展開
回避や防御、迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用

焼き尽くすってことは光線以外にも炎とかもあるのか?
どんな攻撃がきても余裕をもって回避できるように身体から少し離して展開しておくぜ
無理なら盾受けや武器受け等も使い防御


朱雀門・瑠香
この人が言っていることの意味がよく分からないけど被害を抑えるにはこの人を倒さないと!
言っている内容がどうあれ私は相手の懐に入らないと意味がないですしこのまま一気に行きますね。
予言の内容は分からないけど空から降り注ぐ光なら見える以上斬ってしまえばいいですし・・・
降り注ぐ光は私に当たりそうなやつだけ切り払いながらダッシュで接近。彼女が何か言う前に懐に入りこんで破魔の力を込めて斬り祓います!
いつかまた出てくるのでしょうけど今回はここまでですよ、うずめ様!


館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎

狙いは俺たち猟兵か
理由は気になるが、抗わない理由はないな

預言を口に出せば、それがそのまま攻撃になる?
だとすると…何が起こってもおかしくないな
巫女に対して思うところがある者もいるようだし
俺は防御に回ろう

指定UC発動し、戦場にいる猟兵全員にエネルギー障壁を展開
さらにその上から「オーラ防御」を重ね、さらなるダメージ軽減を図る
その上で攻撃の前兆を「視力、戦闘知識」で観察して「見切り」、巫女の攻撃を回避していこう
もし攻撃手が大ダメージを受けそうだと感じたら、「武器受け」で受け流すことを前提に躊躇なく「かばう」
俺自身に攻撃の機会が訪れたら、「2回攻撃、怪力」で叩き斬ろう


レイ・アステネス
アドリブ、連携可

うずめ様か…
相変わらず刺青に興味があるのだろうか?


攻撃は指定UCと片喰や冬青を使う
連携や仲間の攻撃等の隙を消すように意識して行動
必要なら声かけ等も行う

身体能力が増大しても精神世界はどうかな?
君の精神世界を見せてもらおうか
召喚した分身精神体に精神世界を攻撃させる
うずめ様の魂を直接攻撃出来ればいいが難しければ周囲にあるもの等何でも良いから破壊する
可能ならどんな精神世界なのか等調査したいが…

攻撃しても敵にダメージを与えられない場合は行動阻害を狙う
敵を観察して行動を予測し邪魔をするように動く

防御は冬青に任せるが
自分で対処出来そうな場合は回避や片喰で受け流す
光線等は回避が無理なら防御する


彩瑠・姫桜
真の姿解放(姿変わらず)

(うずめ様の言葉を聞けば睨みつけ)
貴女がこの世界をどう見てるかはわからない
でも、貴女の思う通りになんか絶対にさせない

うずめ様は仲間にまかせ、鬼の幻影などの他戦力を削いでいくわ
回復と防御の護り中心に立ち回り、
手が空くならドラゴンランスで敵を攻撃していく

裁きの光は[オーラ防御]と掛け合わせでUC発動
光に光をぶつけて有効になるかはわからないし、戦場全体での対応は難しいけれど
せめて私の手の届く範囲くらいは光の攻撃の防御と回復ができるように立ち回るわね

パパ(f44030)と連携できるようなら
戦力削減の攻撃役はパパに任せて
私は盾役として防御に回るわ
戦闘全般の経験は確かにパパの方があるのかもしれないけど
オブリビオンとの戦い方と立ち回りは多分まだ私の方が上だから
パパはもちろん一緒に戦ってくれている仲間も倒れないようにカバーするのが私の役目よ

盾役になることに今何かいうのはなしよ
言われても聞かなかったことにするわ
パパだって全然人のこと言えないし
ほら、考え事しない、よそ見しないの!


彩瑠・さくらえ
姫桜(f04489)と連携
うずめ様への攻撃は他の仲間に任せ
鬼の幻影などの付属戦力を削ぐことに集中する

攻撃中心で可能な限り前へ
UC使用しスタンを狙いながら戦力削いでいく
物理攻撃は[鬼の手]での[受け流し]をメインに立ち回るよ
少しは勘どころが戻ってきたしさっきよりは多少マシかな

裁きの光は[オーラ防御]で対応
姫桜の対応に効果プラスできたら御の字かもだね

うずめ様の言葉に、ふと思い出したのは
かつて目にしたこのとあるうずめ様灼滅に関する新宿迷宮戦の報告書の内容
『うずめ様は言いました。罪人達に裁きの光をと』
目の前にある、含みのある嫌な笑みを浮かべるうずめ様が発した台詞と
当時の報告書で目にした台詞が重なる
あの時の「罪人」の部分が、猟兵に置き換わっていることがなんとなくひっかかった
猟兵のことは正直まだよくわからないけれど…何かしら関連がないとはいえないのかもしれない

(考え事しない、よそ見しない、には笑って)
そうだね、その通りだね、姫桜先輩?
でも、姫桜もあんまり無茶しないでくれるとおとーさんうれしいなー


有城・雄哉
【WIZ】
アドリブ大歓迎
連携は可能なら

やはり…そうか
新宿迷宮の最深部で灼滅した『巫女』と同じ風貌か
なら、もう1度灼滅するまでだ
うまく連携できるかはわからないが…

「肉体変異」でダークネス形態に変化し指定UC発動
蒼穹の「オーラ防御」を纏った上で鬼の幻影の攻撃をClear blue-sky Shieldで受け流しながら死の永劫点を見極めよう
見極めるまで時間はかかりそうだが、見極められれば回復は事実上阻止できる
発見次第、死の永劫点の位置を猟兵達に伝えた上で「ダッシュ」で『巫女』の懐に飛び込み
「グラップル」で死の永劫点を殴り…否、手刀で切断しよう

…気になることがある
灼滅前のうずめ様の『巫女』の目的は、一貫してうずめ様の復活だったはず
だが、オブリビオンとして蘇った『巫女』は、最初から灼滅者…否、猟兵を殺そうと手を打っている
…これが、復活ダークネス…オブリビオンとして蘇るということか?

それ以上に怖いのが、今回猟兵達を派遣した者の予知能力だな
『巫女』のそれすら凌駕する能力…か
いったい…寄越したのは誰だ?


馬県・義透
第二『静かなる者』に交代
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林 霊力使いの武士

かつて、一の姉上たる『風花』が言っていました。妙な夢を見た、と。
それに、このうずめ様の巫女がいましたね…。

であれば。由縁ある者の弟として、立ち向かいましょう。UCで時を止めるは、『うずめ様の巫女』で固定。
優勢な敵に立ち向かう、はたしかに不利行動ですね。ですが、それでも155m半径を一瞬で動くは難しいでしょう。それも、二本の矢の着弾点は、少しずらしてますので。
ええ、氷雪属性霊力矢の射掛けでも攻撃はしますよ。

防御に関しては、内部三人の四天霊障でのオーラ防御+結界で考えますか。
三重属性(風、炎、重力)ですよ。




 ――その光に包み込まれて、誰かが居なくなった、その直後。
「……てっきり、目前の奴がうずめなのかと思っていたんだがよ。実は、本人じゃ無くて、巫女なのか?」
 その姿を認めた司・千尋が後方からやや皮肉げな笑みを浮かべて、目前のうずめ様の巫女を見つめながら問いかけるそれに。
「ああ……そうだ。やはり……とは思っていたけれど、あの目前の『巫女』は……」
 そう有城・雄哉がその時の記憶を掘り起こして、自らの青い瞳を軽く細めるのに。
「……そうだな。私達が新宿迷宮戦で灼滅した、うずめ様の巫女そのものだ。しかもこの光線が如何に危険なものか……良く覚えている」
 そうレイ・アステネスが雄哉の言葉に同感の意を表明するのに、そう言えば、と彩瑠・さくらえが懐かしそうに目を細めた。
「そうか。あの時うずめ様の巫女を灼滅したのは雄哉さんやレイさん達の班だったね」
 その時に受けた報告と、後に上がってきた報告書の内容を思い出し、微かにその赤い瞳を細めたさくらえのその言葉に。
(「パパと話している|灼滅者《スレイヤー》の雄哉さんとレイさん、この相手と大分因縁があるみたいね……」)
 等と少しだけ懐かしそうに目を眇めているパパ……それは、この世界のさくらえ……との思い出話を聞きながら、彩瑠・姫桜がそっと嘆息する。
 ――と、その間に。
『うずめ様は言いました。此処にいる猟兵達と、全ての者達に裁きの光を与えよと』
 そう目前のうずめ様の巫女が呟くと同時に、うずめ様の巫女の頭上に眩い光輝を伴う巨大な光の球体が姿を現し。
 その闇を切り裂く光輝の如き球体から無数の光線が戦場全体を焼き払わんと迸り始めた。
「……! 狙いが俺達猟兵なのは分かっていたが……此方が準備を整える暇も無く攻撃してくるか……! ……まあ、俺達を狙っているんだ。俺達に斟酌してやる理由は無いだろう……! ならば、俺達も抗わせて貰う!」
 その言の葉と共に館野・敬輔が自らの片耳を飾るそれに触れたその直後に。
「って言っても館野。それを起動させるには少し時間が掛かるだろう? なら、その間は……」
 敬輔が何をするつもりか察した千尋が無数の鳥威に焦げ茶色のオーラを纏わせて仮初めの防御の盾を作り上げ、敵からのレーザーによる射撃への防御を展開し。
「……うずめ様の巫女とやらですね。長年の宿敵である|灼滅者《しゃくめつしゃ》ではなく、未だこの世界に到達して日が浅いぼくら猟兵を狙ってくるとは……!」
 その千尋の展開した鳥威に合わせる様に、ウィリアム・バークリーが自らの宝石『フロストライト』から永遠に降り続ける霜を氷の精霊達と共鳴することで空中に展開。
 同時に薄い膜の様な霜の降りた結界を戦場に張り巡らし、千尋の鳥威と焦げ茶色の結界に絡み合わせる様にして防御を展開。
「これで、少しの間は時間稼ぎが出来る筈です……敬輔さん!」
 そのウィリアムの呼びかけに応える様に。
「ああ……良いだろう。魂達よ! 彼の蒼盾の導きと共に、味方を守る盾となれ!」
 そう敬輔が言の葉を紡いだその瞬間。
 彼の『グリモア』……普段は、蒼い丸盾の耳飾りとして右耳に身につけているそれを外すと同時に結界を展開。
 ――それは、まるで蒼穹の空を思わせるかの様な澄み渡ったエネルギー障壁。
 放たれた蒼穹のオーラの様なエネルギー障壁がうずめ様の巫女の解き放ったそれの威力を大きく弱めた、丁度その時。
「碧くんは、私が……!」
 そう椎名・白が呟くと同時に、デュオリボルバー【イフリート】&【ウンディーネ】……双子銃を抜いて、応戦しようとした時だった。
「――白、もう大丈夫だ」
 その言葉と、共に。
 先程まで白の姿をしていた、赤白・碧が青い瞳と黒髪の青年男性の姿に戻り。
「ありがとう、白。お陰で……『思い出せた』」
 そう自らと共に在る、白……嘗ては月代と名付けた、ビハインド……自らのポテンシャルを犠牲にして魂を再構築した娘と交代しながら。
 その手に、何時の間にか握りしめられていた碧のスレイヤーカードを見て。
「……成程。有城殿や、アステネス殿、さくらえ殿達や、そして嘗て戦ったダークネスと邂逅したが故に記憶を取り戻した、と言う事ですか」
 その言の葉と共に。
 先程まで『侵す者』馬舘・景雅……として猟兵達と共に戦い続けていた、馬県・義透。
 その義透と言う人格術式を構成した四悪霊が1人――『静かなる者』梓奥武・孝透がその手に白い雪の様に純白の弓……白雪林を構えてそう微笑むのに。
「案外、ワタシみたいに、過去に取り込んだ|死者《ダークネス/灼滅者》の記憶や魂の力に引き起こされる様に呼び出されたのかも知れないよ。まあ、スレイヤーカードが姿を現した、と言う事は、赤白さん、アナタも……」
 そうクローネ・マックローネが微かに笑みを含んだ口調で問いかけてくるのに。
「ああ、そうだ。俺は元々、デモノイドヒューマンだった」
 そう碧がその時の事を思い出し、そっと青き瞳を眇める様にしている様を見て。
「……デモノイドヒューマン。それは先程、目前のわたし達を呼び寄せるために、態々エスパーの方々に差し向けた、ロード・クロムやクロムナイト達が闇堕ちしなかった場合の|灼滅者《スレイヤー》の方々達の事ですね……」
 自らの顔に何かのロボットを思わせる仮面を嵌め込み。
 全身をクリスタルの水晶の様なドレスに身を包み込んだ『真の姿』形態の儘のビスマス・テルマールがそうポツリ、と言葉を紡ぐと同時に。
 ――『True Form Final Wall Biscancer!』
 どこからともなくそんな鎧装駆動音が鳴り響き、ビスマスの被っている仮面の目前に文字列として現れるとほぼ同時に。
 ガシャン、ガシャン! とビスマスの真の姿の上から次々にオプションパーツの如く次々に装着されていく蟹座型鎧外装に覆い尽くされていくその姿を見遣りながら。
「……ビスちゃん……」
 それは、そっとビスマスを労るかの様に、
 先の戦いでのロード・クロムやクロムナイト達と戦っていた時の彼女の胸中に兆していたであろう複雑な想いを案じる様にそっとアメリ・ハーベスティアが大丈夫、と言う想いを込めてビスマスの肩を叩いていた。
 ――そんなビスマスの複雑な胸中や、アメリ達の想い、そして……碧が本当の自分を思い出したその事実を見ながら。
「更に俺には、今、俺と共にある白……月代と言う、ビハインドも共にいた」
 ――それは、碧にとって愛しき者。
 その月代との思い出を想い――同時に自身がデモノイドヒューマンだった事を口に出して確認しながら、碧が自らのスレイヤーカードを天へと翳す。
「……そうだ。俺も、|灼滅者《スレイヤー》だ……『咲け、黒百合!』」
 その碧の言の葉と共に。
「召喚に応じ参上致しました。我が主……お帰りなさいませ」
 碧のスレイヤーカードが展開されると同時にその姿を現した漆黒の一刀――それこそ、嘗ての自分の相棒でもあった妖刀『黒百合』から声が漏れてくる。
 その『黒百合』の言の葉に、微かに碧はやや恨みがましげに目を細めた。
「全く……黒百合、お前、知っていたな? ……相変わらず食えない奴だ」
「お褒め頂き恐縮です、我が主。あなたがお帰りになるのを心よりお待ちしておりました」
 その<<黒百合>>の言の葉に。
 碧がやれやれ、と言う様に軽く頭を振り、碧が言葉を紡ぐ。
「思う存分、暴れてこい。真の姿……いや、ある意味では闇堕ちとも言えるか。行くぞ……『狂い咲け、黒百合』」
 その碧の合図を受けて。
 碧の持つ愛刀が、全てを了承しているかの様に自らの人格を持って、碧と言う名の『器』に自らを入れ込み。
「……此を言うのも久方ぶりですね……。我が名は<<黒百合>>。この身全てが、一振の刀と識りなさい」
 そう何処か妖艶な口調で微笑んだその時には、碧の左腕は『デモノイド』へと変貌され、更にその右手に構えられた<<黒百合>>から漆黒の瘴気が溢れ出していた。
 そんな、碧の今の姿を言葉も無く思わず見つめながら。
「……皆、それぞれに事情を抱えているんだよね」
 そうフェル・オオヤマがポツリと呟き、それでも、と軽く頭を横に振る。
 ――互いの想いや、事情や、運命の交差と共に。
 この運命に抗い、切り開くこと。
 それこそが……自分達猟兵達の本当の戦い。
 そして、そんな猟兵達である自分達を滅ぼす為に、この様な所業に身をやつしたうずめ様の巫女を。
「私達は、絶対に許さない! だから、此処に予言する! うずめ様の巫女とやら……お前はここで、『3度目の灼滅を迎える』のだと!」
 そうフェルが宣言し、同時に自らの銀色の宝玉が杖の先端に嵌め込まれた美しき長杖、銀の星を天に掲げ。
「風よ! 氷よ、舞え!」
 そうどこか誇らしく猛々しい詠唱を放った――刹那。
 戦場全体を包み込まんばかりの蒼白く優しく、けれども何処か激しく輝く|吹雪の嵐《ブリザード》が戦場を包み込まんと吹き荒れていく。
 ――それは敵には吹雪によるダメージを。
 そして味方には……優しく輝き照らす月光の如き優しき光を捧げ、世界を覆い尽くす、温かで慈悲深き光を注いでくれる。
 その光と共に死神の如く冷徹な吹雪にその身を覆われ、微かにその身を震わせる様にしながら。
『うずめ様は言いました。愚かなる猟兵達に裁きの光をと』
 その呟きと、共に。
 敬輔の展開した蒼穹の結界を更に上回る様な強烈な光線の嵐を、うずめ様の巫女は叩き付ける様に解き放った。


 解き放たれた無数の光線を慎重に蒼穹の障壁を張り巡らした敬輔のそれでやり過ごし、被害を最小限に抑えながら。
「あなたの言っている事の意味はよく分かりませんけれど、これ以上誰かへの被害を見逃すわけには行きません! それもまた、サクラミラージュにおいて、朱雀門の名を持つ現当主たる私、朱雀門・瑠香の為すべき事です!」
 その叫びと共に。
 サクラミラージュ朱雀門家現当主、朱雀門・瑠香が敬輔の蒼穹のオーラによって10分の1近くまで威力の抑えられている光線を切りながら走る。
「瑠香さん! 単独で吶喊されたら守り切れない!」
 敬輔が自分の範囲外になってしまいそうになる瑠香の様子に気が付き、慌ててその後を追って走りながら蒼穹のオーラの上に漆黒の結界を重ね合わせる一方で。
「……貴方がこの世界をどう見てるかは分からない」
 そう姫桜が自らの青い瞳を鋭く細めて睨み付けながら、真の姿を解放しつつそううずめ様の巫女に向けて呼びかけている。
「でも、この世界を、この世界の人々を、貴女の思う通りに何てさせられない」
 その確固たる決意の籠められた姫桜の言葉に呼応する様に、姫桜の纏う気配が変わる。
 その姿・形こそビスマス達の様に変わることは無いが、その気配は――。
(「闇堕ち……とは少し違う気がするけれども……姫桜が纏っている気配が明らかにさっきまでの気配とは違うんだよね」)
 そうさくらえが内心で呟きながら、敬輔達の後を追う様に吶喊。
「うずめ様は言いました。この地に居る全ての猟兵達を滅せよと」
 そのさくらえの突撃に気が付いたのであろう。
 無数の迸る光線を夢中で掻い潜るように肉薄してくる敬輔やさくらえ、瑠香に応じる様に自らの両腕をまるで悪鬼の如く巨大化させる。
 その様子を見て、クローネはやっぱりね、と思わず笑っていた。
「……刺青羅刹としてだけでなく、予知や預言によって、『刺青羅刹』を追い、この世界で初めて生まれ落ちたエスパー達をデモノイドロード達に襲わせたうずめ様。あの時、アナタが求めていたのは何だったのかな?」
 そう軽い挑発をかけるクローネの中で。
 ――ドクン。
 と、|それ《・・》が小さく囁き駆けてくる。
(「奪いたいんだよね……勿論、分かっているよ」)
 ――それは……『黒龍』の刺青を持つ、女羅刹。
 嘗て|灼滅者《・・・》達が灼滅した、とある刺青羅刹の魂の欠片……。
 同時に自ら漆黒の『黒龍』の刺青持つその女羅刹と合体したクローネが、その腕を巨大な鬼の如き腕に変貌させていく中で。
「……いずれにせよ、もう一度灼滅するまでだ」
 その言の葉と、共に。
 巨大な筋肉姿の男……嘗ての自身の『ダークネス』形態へと変身した雄哉が雄叫びと共に、肉薄しながらその目を鋭く細めている。
「ダークネス形態……成程な」
 その雄哉の姿を見て、思わず微苦笑を零したレイが。
 巨大な鬼の腕と化した両腕で目前まで肉薄してきていた瑠香達への攻撃を見て冬青……本来は自らへの危機に自動反応するその帯を解き放って瑠香達を支援しながら。
「さて……どんな預言や、身体能力の増大があったとしても……君の|精神世界《ソウルボード》は如何なっているのかな?」
 そう口の端に愉快そうな笑みを浮かべて。
 レイが自らが解き放った片喰……顎を開いた大蛇の如き姿をした影にうずめ様の巫女の頭部にかじり付かせると同時に精神世界……『ソウルボード』へのアクセスを行うと。
『……っ! うずめ様は言いました。無作法な猟兵達の全てを滅しなさいと』
 突然深遠なる闇を覗かれた衝撃からか、うずめ様の巫女が微かにその振るっていた鬼の腕の動きを鈍らせたその瞬間を狙って。
「そこだね」
 さくらえが刺青羅刹と合体し、1人の『黒龍』持つ刺青羅刹と化したクローネの解き放った漆黒の鬼を思わせる巨大な腕を振り回すのに合わせる様に。
 ――自らの片腕を鬼の様に巨大化させて、問答無用でその腕を叩き込んだ。
 凄まじい鬼の膂力を伴う、クローネとさくらえの巨大な鬼の腕の一撃に。
『がっ……!』
 と喀血して、うずめ様が僅かによろめいたその隙を見逃すこと無く。
「行きます!」
 続けざまに瑠香が物干し竿・村正による神速の突きを解き放つ。
 さくらえの鬼神変の一撃によってその身を大きく傾がせていたうずめ様の巫女に、瑠香の神速の突きを避けられる筈もなく。
 その強烈な突きに胸を穿たれると同時に、128回の高速斬撃が解き放たれ、うずめ様の巫女が大きく傾ぐが。
『うずめ様は言いました。この数の猟兵達を1人残らず滅ぼしなさいと』
 その言の葉と、共に。
 うずめ様の巫女の体が強化され、更にさくらえの一撃によって穿たれた傷を癒すと同時に、その動きが一段とキレがましたのを見て。
「……確かに優勢な敵に立ち向かうというのは、不利な行動ですよね」
 そう義透――『静かなる者』がその名に恥じぬ物静かな眼差しでうずめ様を見つめながら白雪林をゆっくりと構えている。
 ――それに続けて。
「行きます!」
 その雄叫びと、共に。
 真の姿の上から……蟹座型鎧装ビスキャンサーを装着したビスマスがなめろうオーラウォール・キャンサー極光壁を展開しつつ肉薄し。
 自らの伸長を2倍……全長3m程に化させたビスマスがその身に刻み込まれた極光壁に房総半島の蟹のナメロウパワーを籠めたそれを解き放った。
 房総半島の蟹のなめろうご当地怪人パワーの籠められた極光攻性防壁から解き放たれた雷と迸る光線を鏡面で弾いたそれが、うずめ様の表皮を灼いた瞬間を狙って。
「うずめ……年齢的におねーさんなのか、おばさんなのか分かりませんが、アメリ達を呼び寄せるために、エスパーの皆さんを巻き込みわるいこ三昧。そんな子は、アメリのスーパーよいこの名にかけて、ここで終わりなのですっ!」
 そう叫びを上げると共に。
『アンチファル』にサーフィンボードの如く搭乗し、空を泳ぐ魚の様に戦場を飛行するアメリが、自らの故郷……ブルーアルカディアの『スーパーよい子ランド』名物ヒアウィーきのこのガイアパワーを籠めた活雷茸「トロンマッシュ」を軸にした雷撃の弾丸を連射。
 解き放たれた無数の雷の槍が、フェルの空から差し込む優しき月光に包み込まれる様に加速し、それが続けてうずめ様の巫女を穿つと同時に。
「この調子でしたら、割と簡単に倒せそうですね」
 そう呟き。
<<黒百合>>と化した碧がたん、と優美な足取りで大地を蹴って肉薄、その体を一閃しようとするが……。
「……いえ、やはりこの程度で終わる様な器ではありませんか」
 そうその気配に気が付いて、ぽつり、と碧が呟き漆黒の残像を曳いてうずめ様の巫女を攪乱した……その刹那。
 アメリとビスマスにその身を撃ち抜かれていたうずめ様の薄ら笑いが愈々持って深めながら。
「……うずめ様は言いました。猟兵達を殺すためには、此だけでは足りないと」
 そう告げると共に、うずめ様の巫女の左腕に刻み込まれた刺青が怪しい輝きを発し。
 同時にビスマスと同等か、それ以上に巨大な鬼の幻影がその姿を現し、膨大なサイキックエナジーの波動を解き放ってきた。
「……っ!」
 そのまるで暴威とでも言うべき凄まじいサイキックエナジーの奔流が、フェルの召喚していた氷と冷気の魂と大激突。
 凄まじいサイキックエナジーと蒼白く輝く吹雪の嵐がぶつかり合って爆ぜ、氷嵐が欠片となって砕け散っていく様を見て、雄哉とレイの表情が俄に厳しくなる。
「裁きの光雨に加えてうずめと同等以上の刺青羅刹を新たに召喚……。どうやら、此は……」
 その雄哉のうずめ様の巫女を倒すための、死の永劫点(ホロウ・デス・ポイント)を探りながら、Clear blue-sky Shield――蒼のWOKシールドを構え、敬輔の蒼穹の結界を強化しながらのその呟きに。
「あの時と同じく、本気になったと言う事だな。……皆、気を付けろ。これからが本番だぞ」
 嘗て今、戦場に降り注ぐ光線とほぼ同じそれを見たことのあるレイが、実感を伴った声で真剣な警告を放つのを聞いて。
「はっ……そうこなくっちゃな」
 そう微かに愉快そうに口の端に笑みを浮かべた千尋が、その人差し指から青い光弾を撃ち出しながら、鳥威の焦げ茶色の結界を一際強め。
「それでも此処で、止まる理由もありません。今日杯の輩に行動の理非を問うても埒もなし。故に|灼滅者《スレイヤー》の流儀に従って、こう言いましょう。うずめ様の巫女……ぼく達が、あなたを灼滅します」
 そうウィリアムが粛々と宣言をするのと合わせるように。
 己が左人差し指で天を、右人差し指で地を差しながら空中で構えた手を。
 1回転させる様にしながら、空中に白と緑色と水色の綯い交ぜになった魔法陣を描き出し始めた。


「これからが本番という訳ね……! 彼の言うとおり、誰1人欠かす事無く、全員無事に生きて変える! その誓いは果たすんだから!」
 その咆哮と共に。
 自らが作り上げた蒼白く輝く吹雪の嵐を圧倒的なサイキックエナジーの奔流で破壊したうずめ様の巫女の召喚した巨大な鬼の幻影に向けて、神穿ツ竜ノ顎を突きつけ、その引金を引くフェル。
 ガトリングモードに切り替えていた神穿ツ竜ノ顎から無数の銃弾をばらまき、その巨大な影の幻影を牽制しながら。
「今だよ! 姫桜さん!」
 そうフェルが叫んだのを聞いた姫桜が、すかさず鬼の幻影の懐に飛び込む様にしながら、二槍を振るう。
 敬輔の蒼穹の結界の範囲からは如何しても離れてしまい、先程とは比べものにならない程の出力を持った光線にその身を灼かれそうになるが。
「悪いな。こう見えても俺、彩瑠とはそこそこ付き合いがあるもんでね」
 そう口の端に皮肉げな笑みを浮かべて。
 千尋がバラバラに展開していた鳥威を結詞で結んで蜘蛛の巣の様状に編み上げた巨大な傘の様な結界を作り上げ、それを姫桜の上空へと翳す。
 翳された巨大な蜘蛛の巣の様な鳥威の結界の上に滑り込ませる様に放たれたのはアメリの【トロンマッシュ】の弾幕ベースの鏡を思わせるガイアパワーによって練り上げられた防御壁。
 それらによって上空からの光線のダメージを最小限に抑えて貰った姫桜が。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
 と叫びと共に巨大な鬼の幻影を貫き、その身を微かに捩らせた瞬間を狙って。
「此処だね」
 続けざまに、たん、と横っ飛びしながら姫桜に続いたさくらえがその腕を鬼と化させてその一撃を問答無用で鬼の幻影に叩き込む。
 叩き込まれながらもなお、膨大なサイキックエナジーを、今度は強大な鋭刃へと化させて鬼の幻影が仕掛けてきた、丁度その時。
『うずめ様は言いました。この程度では猟兵達を皆殺しにするにはまるで足りないと』
 そううずめ様の巫女が淡々と紡ぐと同時に、うずめ様の巫女が全身から解き放ったのは無数の神薙ぐ刃。
 同時に、今まで以上に圧倒的な速度と膂力を発揮して、一気に瑠香達を振り切り、守りの要となっている敬輔にその鬼神化した腕を叩き付けようとした……その時だった。
「この時を待っていましたよ。こう見えて私のね、1の姉上たる『風花』が言っていましたから。妙な夢を見た、と。その中に、あなたの様なうずめ様の巫女がいましたとね……」
 ――だから。
「その由縁ある者の『弟』として、私もまた、立ち向かいましょう」
 そう静かに言の葉を紡ぐと同時に。
 義透が、それまでじっくりと狙いを定めていた2本の霊力で作り上げた龍型時空型凍結矢の内の1本を、ひょう、と放つ。
 解き放たれた義透の1本目のその矢が放物線を描いてうずめ様の巫女を射貫き……更にその周囲のうずめ様の時間を止めようとするが。
『うずめ様は言いました。次に来るであろう矢を避けなければ、自らの死は避けられぬと』
 そう預言を口に出して自らの身体能力を一段と引き上げて。
 155mを優に越える距離を跳躍し、義透の攻撃を回避しようと務めるうずめ様の巫女に。
「いえ……あなたはどうやら、勘違いをしている様ですね。私が射ったのは……|2本《・・》の矢です」
 そう微笑を浮かべて呟いた義透が射っていた2本目の矢が、うずめ様の着地したその場所から僅かに離れた所に突き立った刹那。
 ――ビキビキビキビキビキ……!
 まるで、そうなることが分かっていたかの様に時と共に、うずめ様の巫女の着地点が凍てついていき、うずめ様の巫女の時間を凍結させていく。
『……! うずめ様は言いました。時を止められても尚、動くことが出来ると』
 そう告げて静止した筈の時間を振り切り、拳を振るわんと欲したうずめ様に向けて。
「今ですね……!」
 気が付けば、ウィリアムが描いた魔法陣を明滅させて、自らの周辺の大気から、146個の鎖の環を持つ巨大な大蛇を想起させる氷の鎖を形成していた。
 その巨大で長大な氷の鎖を撃ち抜かんと、うずめ様が罠の様に張り巡らした光線がウィリアムを射貫かんとするが。
「……甘いですね。バークリーさん達に気を取られすぎて、私の存在を忘れていましたか」
 その言の葉と、ほぼ同時に。
 碧……<<黒百合>>が、義透達が生み出した『うずめ様の巫女』の時を静止させた戦場に潜り込むと同時に上段から袈裟に<<黒百合>>を振るう。
 その碧と、白……そして<<黒百合>>の意志が渾然一体となって放たれたその一撃が、うずめ様の巫女の頭から股にかけてを斬り裂き。
『……?!』
 まるで、急に巫女として不意にうずめ様の声が聞こえなくなってしまったかの様な動揺の表情を浮かべるうずめ様の巫女。
 動揺からか、うずめ様の巫女が解き放っていた光線が一時的にとは言え雲散霧消していったそのタイミングを狙って。
「行け……! Sleep in the Freezing Coffin!」
 そう高らかにウィリアムが命じると。
 それがまるで分かっていたかの様にすっ、と足捌きのみで碧が後退と入れ替わる様に大蛇の如き氷の鎖がうずめ様の巫女を縛り上げ見る見る内にその身を凍てつかせていく。
『……っ!』
「皆さん……今ですっ!」
 義透とウィリアムの時間を止める矢と氷の鎖に締め上げられ、その体を氷の棺の中へと閉じ込められていくうずめ様の巫女の姿を見ながら叫ぶ、ウィリアム。
 そのウィリアムの叫びに応じて、フェルがすかさず銀の星を天に翳した時。
 ――サイキックエナジーとの凄まじいぶつかり合いによって消失していた蒼白く輝く吹雪の嵐が再び戦場を覆い尽くした。
 その吹雪の嵐と共に、天空より差し込む美しく、見る者に慈愛を与える月光の恩寵が、猟兵達の攻撃力を強化させ。
 ――そこに。
「だああああああああっ!」
 瑠香が雄叫びと共に凍てつき、動きを止めたうずめ様の巫女に向けて物干し竿・村正による神速の突きを解き放とうとした、その時。
「……見えた! 皆、うずめ様の巫女の心臓を狙え!」
 すかさず、と言った様に。
 遂にうずめ様の巫女の死の永劫点(ホロウ・デス・ポイント)を見定めた雄哉が叫びを上げながら、自らの拳に力を込めて、大地を蹴る。
 前傾姿勢の儘走った雄哉が拳の形を手刀に変えて、その死の永劫点を貫く様に手刀を突き出すと。
『がはっ……?!』
 全く身動きが取れなくなっているうずめ様の巫女が大量の喀血で戦場を血に濡らし。
 続けざまに雄哉からの助言を受けた瑠香が物干し竿・村正を軽く手首で翻す様にして、神速の突きでうずめ様の巫女の心臓を貫き。
「はあああああっ!!!」
 絶叫と共に、128回の破魔の力込めた目にも留らぬ斬撃を解き放ち、心臓内部から、うずめ様の巫女をズタズタに斬り裂いていく。
 その鮮烈な斬撃に傾ぎながらも尚、『うずめ様の預言』を血反吐を撒き散らしながらも唇に乗せ、自らの時間を凍結させ、己が体を閉じ込める氷の棺を溶解させようとしたのを見て取って。
「渾沌の極地、特と垣間見て貰いましょうっ!」
 その叫びと、共に。
 房総半島の蟹のガイアパワーを自らの用意した蟹型なめろうから引き出しながら、ビスマスが自らの張り巡らす極光壁の鏡面を凍てつく刃に切り替えて。
 その極光壁で押し込む様にして、凍てつくうずめ様の巫女がその氷の溶解から逃げられれぬ様に追い込みながら。
「……行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 雄叫びと共に、ディメイション・なめろうブレイカー改に装備された砲台からなめろうパワーに溢れた大量の固定光学ミサイルと海老型アームドフォートに房総半島海老型ご当地パワーを籠めた、無数のマイクロプラズマグレネードを一斉掃射。
 放たれた数多のミサイル群とマイクロプラズマグレードが炸裂しご当地パワー全開で輝かしい海の幸色の爆発と閃光にうずめ様の巫女を巻き込んだところで。
「今です! スーパーよいこランド名物。ヒアウィーきのこのご当地パワーを……ビスちゃんがやっていた様にこの刃に籠めて!」
 その叫びと共に。
 搭乗し、サーフィンさせていた『アンチファル』にエリンギ、舞茸、占地の沖膾……そして、地元名物、ヒアウィーきのこのご当地パワーを籠めた茶色の輝き纏う大地の力と化させると同時に。
「……なめろう|斬《ザーン》、ですぅ!!!!」
 アメリが咆哮と共に逆袈裟に『アンチファル』の刀身を振り下ろす様に滑空しながらその刃を振り抜いた。
 その大地のガイアパワーの込められた逆袈裟の一閃を後押しする様に、月光が『アンチファル』の刀身を煌めかせ。
 ――その斬撃がうずめ様の巫女を<<黒百合>>とは逆に左肩上から右脇迄を切り下ろしたのに合わせる様に。
「……漸く傾いだか。僅かだけれど、この間に……斬る!」
 その言の葉と、共に。
 それまで回避と瑠香達前衛の護衛に徹していた敬輔が赤黒く光輝く刀身持つ黒剣を下段から撥ね上げる様にうずめ様の巫女を斬り上げ、返す刃で唐竹割。
 その敬輔の連続した斬撃に思わずよろけたうずめ様の巫女に向かって。
 ――『黒龍』の刺青をその背に刻み込まれたクローネがその腕を巨大な鬼の様に変異させて正拳の要領で突き出していた。
「ワタシの中で|魂《刺青羅刹》が言っているんだ」
 アナタの刺青が欲しいってね……!
 その意志の込められたクローネの抜き手の要領で突き出された巨大な鬼の腕と化したその一撃が。
 雄哉が見抜いていた『死の永劫点』を貫こうとした……その直後。
 ――轟!
 そのクローネを叩き斬ろうとするかの様に。
 無数の神薙ぐ真空の刃がギザギザの刃と化して、側面からクローネを襲った。
 ――その凄まじいサイキックエナジーの奔流から生み出された神薙刃の一撃に。
「誰1人、あなたにやらせるものか!」
 咆哮と共に自らの理想と真実を顕現させし両義宿手【寂滅護】を翳してクローネとうずめ様の巫女の召喚した鬼の幻影の解き放った無数の真空の刃に割って入り、それを受け止めるフェル。
 凄まじい斬撃による衝撃の余波が敬輔の張り巡らした蒼穹の円形の盾をも破壊して、フェルの体を大きく傷つけるが、それでも、フェルが激しい闘志と無垢なる想いを込めた銀の瞳を怒らせて叫ぶ。
「如何したの! そんな攻撃じゃ、私は倒れないよ!」
 そのフェルの雄叫びが、まるで引金となったかの様に。
 クローネの一撃がうずめ様の巫女の心臓を穿ち、うずめ様の巫女の|時間《・・》を止めていた。
 ――けれども……。
 

『……うずめ様……は……言い……まし、た……。例え、刺青を……食らわれてでも……猟兵達に、裁きの光を……与え、よと……』
 そのうずめ様の巫女の末期の叫びにも等しい預言。
 然れど、そのうずめ様の巫女の正しく『命を賭した』預言に呼応する様に無数の光線が上空から降り注ぐ。
 降り注ぐ今までで最大出力の全てを灼き尽くす裁きの光条に対して、千尋が無数の鳥威を展開し。
 更に、自らの全力を振り絞ってうずめ様の巫女に確かな一撃を叩き込んだビスマスが、咄嗟に千尋の鳥威に重ねる様に極光の壁を複数展開。
 それでも尚、勢い衰えぬ光線に気が付いた義透が続けて自らを除く3人……『疾き者』、『侵す者』、『不動なる者』……風と、炎、と重力を操る|我等《・・》による四天霊障の結界を重ねがけして、その光線の威力を辛うじて押さえ込みつつ嘆息する。
「……此は窮鼠猫を噛む、とでも言うべきでしょうか。死の間際に、時間凍結された空間に要るにも関わらず、これ程の力を振るうことが出来るとは……」
 ――流石に、『風花』が夢に見たといううずめ様の巫女と呼ばれるだけの存在は、伊達では無い、と言う事ですね……。
 そう内心で義透が思いながら、風雪林に再び2本の龍型時空凍結矢を構えて、未だ存在している『うずめ様の巫女』が召喚した巨大な鬼の幻影に標的を定めている間に。
 3重の結界に合わせる様に、自らの周りに玻璃色の結界を展開して、先程クローネに向けられた神薙ぐ刃の一部を払い落としたさくらえが、ふと思う。
(「うずめ様は言いました。此処にいる猟兵達と、全ての者達に裁きの光を与えよと、ね」)
 それは報告書ではあるが、嘗ての新宿迷宮戦――うずめが『神』を降臨させるべく事変を起こしたあの件で――うずめ様がした預言を目にしているが故に感じた違和感。
(「あの時、うずめ様を灼滅したレイさんや雄哉さんは、この裁きの光条を降り注がれた時、この様に言われていた」)
『うずめ様は言いました。|罪人達《・・・》に裁きの光をと』
 ところが今回のうずめ様の巫女は『罪人達』ではなく、明確に『猟兵達』に、その預言の部分を置き換えていた。
 ――正直に言えばさくらえは、雄哉と同じく『猟兵』と言う存在の定義を熟知している訳ではない。
 だからこそ……何かしら関連がないとも……。
 そう思わず思考の淵に沈み込み、一瞬、最期の光線からの一撃への全力での防御に意識を持っていかれていたさくらえに向けて。
 ――クローネにも放たれたサイキックエナジーで構築された無数の神薙ぐ刃が迫る。
「……!」
 既にうずめ様の巫女に止めが刺されているにも関わらず、まるで|怨霊《・・》の様に襲ってくる幻影の解き放ったサイキックエナジーで生み出された刃にさくらえが目を見開いた時。
「戦闘全般の経験は確かにパパの方があるのかも知れないけれど……!」
 ――それでも、オブリビオンに対する立ち回りにおいては。
「私の方が上なんだからっ……!」
 その叫びと共に。
 一瞬千尋にアイコンタクトを送りながら、自らが駆られた激情に呼応する様に、姫桜が腕に嵌め込んだ銀の指輪に取り付けられた玻璃鏡……『桜鏡』がその鏡面を輝かせ。
 その目前に強固な玻璃色の結界を張り上げながら、schwarzとWeißを十文字にして構えてさくらえと刃の間に姫桜が割り込み。
 その神薙ぐ刃の勢いを削ぐが、それでも尚、姫桜を斬り裂かんと最大出力を殺しきれなかったそれを見て。
「久しぶりだな。……こいつを使うのは」
 そう口の端に皮肉げな笑みを浮かべて。
 千尋が、自らの本体……結詞の先端に取り付ける様にした一枚の懐鏡を、衝撃に押し切られそうになっている姫桜の目前に投擲する。
 投擲された懐鏡……双睛の鏡面から膨れ上がる程の眩い紫色の光が発せられ、それが姫桜の張り巡らした障壁を一段の高見に撥ね上げて神薙ぐ刃を跡形も無く雲散霧消させた。
その様子を見たうずめ様の巫女の遺した幻影が一瞬怯む様に動きを止め。
同時にさくらえも微かに驚いた様に一瞬目を見開くのをちらりと流し目で見て。
「……ほら、考え事しない、余所見しないっ! 今の私達は、パパ達よりも盾役には慣れているんだから!」
 そう怒りとも心配とも取れる咆哮と共に、ぐっ、とお腹から自らの力を込めていく様に全身に力を迸らせて、轟、と周囲に白燐蟲の群れを展開し始める姫桜の様子を見て、思わず微苦笑を零しながら。
「そうだね、その通りだね、姫桜先輩?」
 そう首肯する様に呟くと同時に。
 頭上からフェルの銀の星から迸る月光の加護を受けて、姫桜の背後から飛び出しながら、鬼神と化させた右腕を横薙ぎに振るうさくらえ。
 更にそのさくらえの一撃に合わせる様に、義透が番えていた時間を凍結させる矢を2本、同時に発射。
 発射された2本の龍型時空型凍結矢が未だ、大量のサイキックエナジーを宿しているのか、それを爆発させんとする巨大な鬼の幻影を射貫き。
 その動きを……時間を凍結させられた瞬間を狙って、さくらえが横薙ぎに振るった巨大な鬼の腕の一撃で、鬼の幻影の左腕を砕いたその刹那。
「お願い、皆と一緒に帰る為にも……私達に力を貸して……白燐蟲!!」
 その姫桜の叫びに応える様に。
 ――カッ!
 と白燐蟲達による白く眩く光り輝く閃光が、戦場を覆い尽くした。
 その閃光を浴びて、うずめ様の巫女の心臓を貫いたクローネがその刺青羅刹化した腕を横薙ぎに振るう様にして、うずめ様の巫女の左腕に刻まれた刺青を喰らわんとしながら。
「さて、アナタ達……鬼の幻影への止めは任せたよ?」
 そう口の端に何処か愉快げな笑みを浮かべて、クローネが姫桜の閃光を浴びながら、言葉を紡いだ、その刹那。
「……幻影の中にもソウルボードがあるとは流石に思えないから、此処は、確実な追撃の方が良いだろうな」
 そう口の端に微笑を込めて。
 悪夢の『影』を宿して漆黒に染め上げた片喰を黒き大蛇へと変形させて、その顎でさくらえに砕かれた左腕を食らって、その腕を切り飛ばし。
「やれやれ、今回はそこそこ人使いが荒くねぇか、彩瑠?」
 そう何処か諦めた様に軽く頭を横に振った千尋が、自らの指から、青い光弾を発射しながら、くいくい、と軽く周囲に展開した結詞を引いてみせる。
 それに呼応する様に何時の間にか鬼の幻影の背後に回り込んでいた宵が月烏を、暁が鴗鳥を構え。
 更にフェルの氷と水のブリザードの中で差し込んでくる月光の加護を浴び、ユーベルコードにまで昇華されたその青白い閃光の一閃と鈍器による攻撃が、うずめ様の幻影の背を切り裂き、その体に打撲傷を負わせ。
 続けて発射した青い光弾が、巨大な鬼の幻影を射貫いてその身にビクリ、と引き攣りを起こさせる姿を見て。
「アメリさん!」
 すかさずビスマスが呼びかけつつ、さくらえと姫桜がその場を離れた瞬間を狙って海産物ご当地パワー全開のスタングレネードとミサイルを一斉掃射。
 フェルの月光を浴びてその勢いをより増したその攻撃が次々に鬼の幻影に着弾、爆発の花を咲かせているところに。
「一緒にいくのですよ! フェルちゃん!」
 それに合わせる様に、アメリが『アンチファル』をひらりと空中で宙返りさせて進路を転進させて。
 そのまま大気切り裂く波に乗るかの様に肉薄しながら、ヒアウィーきのこのなめろうを初めとしたご当地パワーを込めた大地の刃で幻影を叩き斬ったところに。
「絶対に皆と一緒に帰る! その誓いは……必ず果たす!」
 その雄叫びと共に。
 肉薄したフェルが快刀路希 フェンリルカスタム――それは、絶望を切り開き希望への活路を見出す刃――を突き出し、幻影の心臓を抉る様に斬り裂いたところで。
「……所詮、あなたは幻影に過ぎません。ですので……この刃で、うずめによって生み出されたサイキックの固まりたる貴女を断ち斬ります」
 そう滑らかに言い聞かせる様に言の葉を告げて。
 碧……否、<<黒百合>>が大上段から漆黒の妖刀にして、ある意味では自分自身でもある、狂い咲いた、<<黒百合>>を袈裟に振るう。
 その碧の漆黒の一閃が、巨大な鬼の幻影の頭部から左下脇腹迄を大きく斬り裂いた時。
 ――巨大な鬼の幻影の機能や能力そのものを完全に断ち斬られた鬼の幻影が悲鳴も何も無く、跡形も無く消失していった。
 クローネがその身に宿した『黒龍』の刺青持つ羅刹の魂が……うずめ様の巫女の魂に刻まれた刺青を食らった事に悦びの声を上げるのを感じ取りながら。


 ――シン、と静まりかえった戦場で。
「取り敢えず、此で|灼滅《ころ》せたってところになるのかな」
 既に『黒龍』の刺青持つ羅刹との合体を解除したクローネが軽く肩を竦めながら、誰に共なく問いかける。
「そうですね。これで一先ず、このうずめ様の巫女の灼滅は完了。この地域のエスパーの皆さんを守ることが出来て良かったと思います」
 真の姿とその上から纏っていた蟹型鎧を解除して。
 美少女姿のクリスタニアン形態に戻ったビスマスのそれに、そうですね、ビスちゃんと『アンチファル』を着陸させて飛び降りたアメリがそっと笑って。
「ビスちゃんに教わった、キノコのなめろうのレシピ、とても助かりました。やっぱり、ご当地のパワーを練り込むと全然出力が違うんですね」
 そう言って、ヒアウィーキノコのなめろうを取り出して一緒に食べようという風に誘ってくるアメリに微笑みビスマスも一緒になめろうを食べ始める。
 そんなビスマスとアメリの姿を見て、和やかで弛緩した空気が漂うのを感じた<<黒百合>>から碧へと戻った碧がそっと胸元に手を当てて微笑んだ。
(「……白、<<黒百合>>……此からも宜しく頼む」)
 そう内心で呟く碧。
 一方で、和やかにしているビスマス達の姿に微笑ましいものを感じながらも、微かにその赤い瞳に迷いの様な何かを称えている青年もいる。
 それは……。
「彩瑠、如何した?」
 そのさくらえの様子に気が付いた、レイがさりげなく水を向けると、やや浮かない顔の儘にさくらえが軽く頭を横に振った。
「いや……うずめ様の巫女のあの言葉が気になって。……レイさんや、雄哉さん達は、実際に、あの光線を使用してきたうずめ様の巫女と戦っていたよね?」
 そのさくらえの問いかけに。
「……ああ、そうだな、彩瑠さん。確かに僕達は、あのうずめの使った力を目の当たりにしたことがある。あの時は確か、『神』を自らに下ろすとか何とか言う話だった筈だが……」
 そう考え込む様な表情を浮かべながらの雄哉の呟きに。
 さくらえが軽く1つ頷き、あの時、と雄哉とレイに向けて言葉を続けた。
「雄哉さん達はあの当時、うずめ様の巫女に『うずめ様は言いました。|罪人達《・・・》に裁きの光をと』、言われていた、と僕は報告書で読んでいるんだけれど……」
 そのさくらえの確認に。
 ああ、と雄哉が用心深く首肯し、同時にレイが成程、と何とはなしに興味深げに微笑を浮かべて話を引き取る。
「今回、うずめ様は、私達にこう言っていたな。『うずめ様は言いました。此処にいる|猟兵達《・・・》と、全ての者達に裁きの光を与えよと』と」
 さくらえの懸念に、何か思い当たることがあったのだろう。
 微妙ではあるが、明白に異なるその預言の内容を確認したレイに頷いたさくらえがもし、と言葉を続けた。
「僕の気にしすぎなら良いんだけれどね。只、正直僕には、『猟兵』と言うのが、雄哉さんと同じで、未だ良く分かっていないから」
「……確かにそうだな。言われなければ気付かないが、言われてみると少し気になるところでもある」
 さくらえの説明に、既にダークネス形態から人型に戻った雄哉も少し気に掛かったか、眉根を寄せて考え込む様な表情になりつつ、レイに問う。
「アステネスさんは、さっきうずめの|精神世界《ソウルボード》に潜り込んでいたよね。その時、何か気になる様なものは見えたのか?」
「いや、有城。あまりにもうずめ様の巫女の|精神世界《なか》は複雑怪奇過ぎてな。言葉で表現するのは難しい、私達でも理解しがたい何かに覆われていて、何も覗き視ることは出来なかった。……まあ、行動に表れる表層思考を読み取り、そこで精神的な動揺を刻み込んで、動きを阻害することは辛うじて出来たが」
 そう軽く頭を横に振りながらのレイの返答を聞いて。
 雄哉とさくらえが益々考え込む様な表情になると。
「……それについては、多分私達の方が仮説を組み立てることが出来ると思うわパパに、雄哉さんに、レイさん」
 その言の葉と共に。
 大人3人が角突き合わせて考えているのその場所に割り込む様に入ってきたのは、姫桜とウィリアムと敬輔と義透と瑠香と千尋とフェル。
「……確かに、有城殿や彩瑠殿は現地で合流した方々です。少し私達について説明はした方が良さそうですね」
 姫桜と共にやってきた義透のそれに、まあ……と瑠香が微妙な表情を浮かべて、軽く頭を横に振る。
「私は、あまりそう言う説明が得意ではありませんから。何かあれば捕捉はしますが、基本的に聞いているだけですよ」
 そんな瑠香の身も蓋もない言葉に思わず苦笑を零す姫桜。
 けれども、今、目前に居る|異世界《・・・》の自分の娘である姫桜は、さくらえ達よりも『猟兵』としての経歴が長い。
 であればこそ、彼女の言葉には説得力があったし、また、純粋に興味が湧いたので。
「それならば説明して貰っても良いかな、姫桜、それから皆さん?」
 そう、さくらえが代表する様に問いかけてきたのを聞いて。
「では、先ずはぼくが分かる範囲になりますが、簡単に説明しましょう」
 さくらえのそれを引き取る様にウィリアムが首肯し、自らの記憶を辿る様にしながら話し始めた。
「先ず大前提が1つあるのですが。ぼく達はこの世界……サイキックハーツと呼ばれる此処に辿り着く前に、とある猟兵と会う機会がありました」
 そのウィリアムの説明に。
 敬輔が、ウィリアムの更なる説明よりも先に、腰に帯びていたくすんだ闇に包まれた様に見える、漆黒のトマホークを抜く。
 その刀身に刻み込まれた|復讐《アヴェンジャー》と言う言葉を見て、雄哉が何とも言えない複雑そうな表情を見せながら。
「……それは?」
 と問いかけると。
 敬輔がそれに1つ首肯し、これは、とウィリアムの言葉を引き取る様に口を挟んだ。
「『はじまりの猟兵』。そう呼ばれる者達が使っていたとされる武器の1つだ。俺達は、貴方達も含めて、『六番目の猟兵』と呼ばれている」
「……『六番目の猟兵』?」
 聞き慣れぬ単語を聞いて、さくらえが微かに驚いた様に息を飲むのに、そうよ、と姫桜が首肯で返す。
「私達は、『六番目』なの。だから、その前に二~五番目までの『猟兵』が存在している。もう皆、オブリビオンになってしまっているらしいけれどね」
 その姫桜と敬輔の言葉にレイやさくらえ達が思わず顔を見合わせるのを確認しながら、ウィリアムが続けた。
「ぼく達は、先々月の此処とは異なる異世界での戦いで、『はじまりの猟兵』と呼ばれる既に|世界の敵《オブリビオン》と化してしまった少女と遭遇しました。その時、彼女は言ったのです。『世界ははじまりの猟兵のことを、『罪深き者』と呼ぶ様になった、と』」
 そのウィリアムの解説に。
 さくらえが微かにはっ、とした表情を浮かべて、それじゃあ、と言葉を紡ぐ。
「……多分、君達……いや僕達『猟兵』も『罪深き者』と世界からは呼ばれる様になっている可能性もあると言う事なのか……」
 そのさくらえの確認に。
 事実として、と敬輔が軽く頭を横に振りながら話を続ける。
「俺達の使用する、この世界ではサイキックと呼ばれている力……俺達はユーベルコードと呼んでいるけれども……これを漢字に当てると、『|罪深き刃《ユーベルコード》』になる。と言う事は、俺達猟兵もまた、『罪深き者』と|世界の敵《オブリビオン》からは認識されていると考えた方が良いだろう」
「……成程。では、オブリビオンとして蘇った『巫女』である彼女は、最初から僕達灼滅者……否、猟兵を殺そうと手を打ったのは決して偶然ではないと?」
 そう考え込む様にしながら問いかけてくる雄哉のそれに。
「少なくとも、全く無関係とは言えないでしょうね、多分。そもそも私達から見ればオブリビオンは世界の敵。あちらから見れば、私達が『罪深き者』であれば……不倶戴天の宿敵、と言う事にもなるから……」
 そうそっと嘆息する姫桜のそれ。
 ――それでも、邂逅したオブリビオン達の中には……如何しても傷つけることが出来なかったオブリビオンもいた。
 その当時のことを思い出した姫桜の心に漣だったものを象徴するかの様に、彼女の銀の腕輪に嵌め込まれた玻璃鏡の鏡面が漣立つ。
「……それが復活ダークネス……いや、オブリビオンとして蘇る、と言う事なのかも知れないな……」
 その姫桜の複雑な表情と様子には敢えて何も触れず、自分自身が引っかかりを覚えた部分を強調する様に言葉にする雄哉。
 その雄哉の誰に共無く語りかけられたそれにまあ、と千尋が肩を竦めて苦笑を零した。
「どちらにせよ、今此処であれこれ考えたところで、何かが分かるって訳じゃないと思うぜ? いずれにせよ、うずめをお前等の言葉で言うなら灼滅だったか? 出来たんなら、取り敢えず今はそれで良かった、と思っとくのが吉じゃねぇの?」
 そう割り込む様に千尋が告げるのに。
「……それもそうだね。それに……うずめ様の巫女のニュアンスが報告書で見た時のそれと異なっていたのも、決して無関係では無いのかも知れないと感じられただけでも収穫としておいた方が良さそうだ」
 そう微苦笑を零して呟くさくらえのその言葉を引き取る様に。
 そう言えば、と雄哉が少し話題を変える様に、先程とは少し異なる表情を浮かべて敬輔達猟兵を見ながら、言葉を続けた。
「……本当に僕がある意味で怖いのは、今回館野さん達猟兵を派遣した者の予知能力かな。……『巫女』のそれすら凌駕する予知能力なんて……」
 その雄哉のさりげない問いかけに。
「エクスブレインがサイキックアブソーバーから情報を掴めれば、割と不可能ではないと思うが……気になるか?」
 そうレイが微かに愉快そうに告げるのに。
 流石に少々ぎょっ、とした表情を浮かべた雄哉がアステネスさんは、と問いかける。
「今回の件を予知していた者に会っているのか? と言うか、エクスブレインって、それは……」
 その雄哉の言の葉に。
「いずれにせよ、優希斗殿との約束を、誓いを守り切ることが出来て良かったでござるよ。本当に――良かったでござる」
 ――と。
 それまでじっと姫桜達の話に耳を傾けていたフェルが不意に安堵の息と共に、何気ない調子でその名前を告げると……。
『えっ……?!』
 雄哉とさくらえが思わず、と言う様に驚愕の表情を浮かべて顔を見合わせ、慌ててフェル達に詳しく事情を聞こうとするよりも先に。

 ――蒼穹の風が吹き荒れて、誰1人欠かす事無く、戦場に現れたフェル達猟兵をグリモアベースに帰還させるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年07月15日


挿絵イラスト