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サプライズサマー・メモリアル

#ゴッドゲームオンライン #バズリトレンディ

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●「くぅ~疲れましたw これにて完成です!」
 突然現れ、何かをセクシーにファサーした見知らぬ誰か。
 猟兵ならばよくよく知っているけれど色々と謎のそのひとは、ポカーンとしているドラゴンプロトコルにテヘペロした後、黄色い三角形生命体と一緒に「ばいば~い」と姿を消した。
「ば、ばいばー……じゃない!」
 虚空に手を振り返していたドラゴンプロトコルは慌てて空中に手をかざす。
「あいつ何者だ!? いきなり現れて場の空気全部持っていくヤツなんて俺の知り合いにいな――あっでもあのキャンピーくんっていうマスコットかわいかった、また会えないかな。……よし、エリアマップ異常なし」
 表示したエリアマップはいつもと同じ青色基調。
 そこに表示されているエネミーマークの位置と数も、いつも通りだ。
「ワケがわからないけど良かった……いや~本当ビックリした、ハハハハハ――……はえ?」
 全然何ともなくなかった。
 エリア内に元々いたエネミーとは全く違うタイプのエネミーが発生している。それが鍋から溢れた水のようにドバドバ増えていく様に、ドラゴンプロトコルは目をゴシゴシしてみた――が、何も変わらなかった。しかも、発生の勢いは止まるどころかドバドバじゃぶじゃぶ、凄まじい勢いになっている。
「待て待て何だこれどうなってる!? ……えっ? 『ウェ~イ、オタク君見てる~? オタク君の大好きな月光珊瑚チャンは、ワイちゃんが出血大サービスドロップアイテムにしちゃいました~。みんな大好きなアレとアレ付きだゾ☆ イベントのご褒美はドがつく月光珊瑚海中グルメパーティ、略してドつか。チンして食べてね、チュッ』? ……うわ、続きがある。えーと……はあ!? 『イベント管理者はキミだ』!?」
 ドラゴンプロトコルは急にポップアップしたメッセージにわなわなと震えた。
 それは少しずつ収まって――。

「もうどうにでもなーあれ☆」

 いったん現実逃避する事にした。

●サプライズサマー・メモリアル
 夏はあっちこっちのジャンルでイベントが発生する、イベント盛り沢山の季節だ。日々忙しく世界を飛び回る猟兵には、水着コンテストという『何が何でもやる』イベントが馴染み深い。
 GGO世界にも夏イベントは各種存在していて、けれど、キャンピーくんと一緒にGGO世界へ現れた新し親分『バズリトレンディ』は『夏イベント少な過ぎ』と判定して、キラキラ光る粉をセクシーにファサー。
「それでね、すごい数のお化けと、ものすごくおっきなサメが登場して、ご褒美はグルメパーティなイベントが始まるんだ。|今日から《・・・・》」
 夏はお化けとサメなんだってね、ボク知らなかったと語るミルフィローズ・ドラジェ(薔薇彩シュガー・f43259)は、バズリトレンディの仕草を不思議そうに真似ていた。

 月光珊瑚。
 表面に淡い虹色の光沢がうすらと浮かぶ、ホワイトオパールに似た美しい珊瑚の名だ。
 武器や防具に触れさせると沈むように溶けてひとつになり、アイテムが淡い輝きを放ち初めたなら、それが月光珊瑚が持つ破邪の力が宿った証。
 物理攻撃を無効化する悪霊や死者型のエネミーへ攻撃が通るようになる、死者型に効果のある攻撃力が上昇する、持続系の毒ダメージを軽減する――といった恩恵が得られる。
 プレイヤーの手で採取するアイテムとして存在していた月光珊瑚は、海中に月の魔力が満ちる夏の数日間だけ入手出来る。月光珊瑚が存在する海中エリアが、種族関係なく誰もが自由に動き回れるようになるからだ。
 形も様々な月光珊瑚は、ゲームコンテンツ内でのインテリアとしても人気が高く、アクセサリーに加工し、『もしもの時の』携帯アイテムにするプレイヤーも多い。

 そんな月光珊瑚が、バグプロトコルのドロップアイテムになった。珊瑚のままドロップするのが基本だが、武器の形をしている事もある。そこもバズリトレンディの影響だろう。
 ちなみにイベント管理を引き継いだドラゴンプロトコルは、現実逃避の後に死んだ目でイベント管理に務めている。
「ボク達はイベント管理のお手伝いはできないけど、お化け……バグプロトコル達を倒せるでしょ? 一度でいっぱい倒すチャンスだから、キミ達にお願いしたいんだ。それとね。月光珊瑚の海が、とてもとてもキレイだったんだ」

 色々とデタラメな夏イベントが始まるけれど。
 珊瑚と海の美しさは、紛れもなく本物だから。


東間
 夏と言ったらアレですよアレアレのご案内に来ました。
 |東間《あずま》です。

●受付期間
 タグと個人ページ、X(https://twitter.com/azu_ma_tw)にてお知らせ。
 オーバーロードは受付前送信OKです。

●1章、2章
 まずは『夏といったら幽霊!』という事で深海ゴースト戦です。
 ウスイ本イベントの一般参加者並みの大群です。月光珊瑚が無くてもまあまあ攻撃は通るのでご安心を。
 ドロップした月光珊瑚の形状はご自由に!

 2章は『夏といったらサメ!』という事で突然のサメ戦です。
 とても巨大で、100人乗っても大丈夫でしょう。そしてとてもタフなサメであり地中も空中も泳ぎ回るトンデモシャーク。1章で月光珊瑚を十分に入手していれば、それを武器や自身に使う・または月光珊瑚の武器を使うと、ボスへのダメージ量やバステ付与成功率が大幅に上がります。

●3章
 夏といえば夏限定の絶景!
 という事で、淡く光る月光珊瑚が美しい、青く澄んだ海中でのグルメパーティです。
 洋食中心ですが、海の家的なメニューも豊富。冷たいスイーツも盛り沢山。
 ミルフィローズを始めとする当方のグリモア猟兵へのお声がけはお気軽にどうぞ。

●グループ参加:3人まで、オーバーロードは人数制限なし
 プレイング冒頭に【グループ名】をお願いします(【】は不要)
 送信タイミングは同日であれば別々で大丈夫です。
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びてお得。
 グループ内でオーバーロード使用が揃っていない場合、届いたプレイング総数によっては採用が難しい場合があります。ご注意下さい。

 以上です。
 皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 集団戦 『深海ゴースト』

POW   :    ばちゃばちゃ
【身体】で触れた敵に、【呪い】による内部破壊ダメージを与える。
SPD   :    ゆらゆら
戦場内に、見えない【海】の流れを作り出す。下流にいる者は【海流】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ   :    ごぼごぼ
【海水】を視界内の対象1体に飲み込ませる。吐き出されるまで、対象の身体と思考をある程度操作できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サマーのSは|恐怖《scare》のS
 突然のイベント告知は、イベント名と合わせて多くのプレイヤーを驚かせた。
 けれど『あの月光珊瑚を、コツコツコンコン採取しないでゲット出来る!』と、彼らはそれはもう喜んだ。
「エネミーがドロップするって事はさ、つまり経験値も入るから、レベリングも出来て一石二鳥だよなあ」
「しかも大量に発生してるんだろ? これは周回が捗るやつ。カンストまで貯めるわ」
「やり過ぎてぶっ倒れんなよ~」
 じゃれ合いながらイベント会場である青の世界に立った瞬間、ぼぉん、と鐘のような音と共に『月の海』とエリア名が表示される。
 すぐに薄れて消えゆくその向こうには、この時期しか見られない絶景が広がっていた。
 深く澄んだ青が遠くまでを満たし、彼方の空から降り注ぐ月光の波紋が砂の大地もプレイヤー達も――それから、様々な形で佇む月光珊瑚を幻想的に彩っている。

 鹿の角のように、木のように繊細に伸びる『枝』。
 重なりながら広がる『テーブル』。
 ふわふわとした輪郭の『キャベツ』。
 巨人が作ったお団子めいた、『かたまり』。

 ひとつの珊瑚がいくつもの形でもって海底に佇んでいる。今回が初めての月光珊瑚というプレイヤーはぴょんぴょん飛び跳ね、お次はごろんごろんとローリング。初めての感動を思い切り現していた。
「うーっわ! うーっわ! マァージでキレイ!」
「わはは、記念ローリングやめろって! あれだっけ、初めてなんだっけ」
「そうそう。あーでも、水晶窟は行った」
「あー、あそこもすごいキレイだよね。なあなあ、記念スクショ撮ろ」
「撮る!」
 急がず焦らず、まずは記念に1枚――いや3枚。
 撮ったものを早速確認してみれば、青い世界を背景にしっかりバッチリ撮れていた。
「おーいいじゃんいいじゃん」
「後でこっち送ってー」
「おけー。いやホント上手く撮れてるわ。海の青が何かこう、いい具合にキラキラしててさ」
「絶景って何もしなくても盛れるよなー……ん?」
「……あれ」

 キ ラ キ ラ ?

 2人は顔を見合わせた。
 照明になるものは海面の向こうにある月からの光と、それを浴びた月光珊瑚の白くらい。ここへの入口はもう一箇所あるけれど、それはスクリーンショットを撮ったのとは別方向だ。イベントも始まったばかりだから、奥の方に他のプレイヤーがいる可能性は無い。

 じゃあ
 あのキラキラは

 な に ?

 1人は慌てて望遠鏡を取り出し、もう1人は弓矢を構える。
 特定のアイテムや武器で使えるズーム機能で『キラキラ』を探し――、
「うわはははは!! ヤバイヤバイヤバイ、いくらなんでも多すぎ!!」
「ちょっと待ってマジなんコレ!? おいやってんなドラプロさん! やってんなコレ!?」

 視界をびっっっっっしりと埋める『深海ゴースト』に、1人は驚きと怖さのあまり笑いながら、もう1人はやけくそ気味に笑いながら叫んだ。
 他のプレイヤーもエネミーの数を認識し、同じように叫ぶ者がいれば、「宝の山!」と目をギラつかせウキウキダッシュをする者もいる。それぞれのリアクションを見せながら前進するプレイヤーの姿に、山のようにそびえる月光珊瑚の頂上にいたドラゴンプロトコルは、死んだ目でぼそりと呟いた。

「やってないし俺のせいじゃないし」


“サービスサービスゥ!”
“男の子ってこういうの好きでしょ”

 そう言ってくれそうなひとは、残念ながら、ここにはいない。
 
澄清・あくあ
「わっー!?」(殴打)
『なんかいたのです』(過去形)
きらきらでなの見に来たのですが、なんかいたのでとりあえず殴っておくのです。既に殴っちゃったのですが…

ってなると、目的だった珊瑚がポロリ。
長い三日月みたいで長い、不思議な形です。
「あ~…」
『なるほど~?』

仄暗い理由も、腕の不快感の理由も目的もはっきりしたところで
「たくさんきらきら、持ってるんですよね?」
『きれいな珊瑚と海が見たいのです!』

触った時にもらった呪いは腕ごとちぎって捨て
次は直で触れないよう光波で叩き割るのです!

戦ってたらさっきと似た長い珊瑚がもう一本。
試しに振ったら赤い斬撃がでたのです…?

(アドリブ歓迎、お好きに動かして大丈夫です)



 あのバズリトレンディが『ちょちょいのちょいですやで~』なノリでこさえたと噂の夏イベント。そのトンデモっぷりに一般プレイヤーは驚き、怯え、大笑いしてと様々なリアクションを見せ――。
「わーっ!?」
 すぐ隣にぬぼぁと出てきた深海ゴーストの多分顔だろうそこへ藤色のグーがめり込んだ。
『なんかいたのです』
「とりあえず殴っちゃったのですが、今のは敵で合ってます? うう、腕に何か嫌な感じが……」
 澄清・あくあ(ふたりぼっちの【原初の一】・f40747)はオレンジの目を丸くしたまま、ぜーぜーはぁはぁ。あくあの疑問に、蒼色のあるまは緩やかに頷いた。
 きらきらだから見に来ただけなのに、一般プレイヤーを殴打していたら開幕暴力沙汰で大変な事になるところだった。胸を撫で下ろす2人の前で幽霊は消え――何かがポロリ。ゆっくり沈んでいくそれを受け止めるのは簡単だった。
 見た目は長い三日月のよう。掌の上で転がすと、僅かな光を受けたそれが白い表面に纏う虹色の光沢をゆらりと踊らせる。どこか不思議な形のそれに、2人は揃ってピンと来た。
「あ~……」
『なるほど~?』
 仄暗い理由と腕に残る不快感。理由も目的もはっきりした2人の表情が、楽しげな空気と一緒に明るくなっていく。そこへと幽霊達が青い濁流めいて迫るのだが――。
「たくさんきらきら、持ってるんですよね?」
『きれいな珊瑚と海が見たいのです!』
 そちらを向いた2人の瞳と表情は海中を青く彩る幽霊以上。触った時に貰ってしまった呪いだって、スライム娘のあくあは腕ごとちぎってポイッ。
「直で触れないようこれで叩き割ればいいです!」
『ズバズバやっちゃうのです』
 構えた光波が2人を照らす。殺到した幽霊はその輝きを隠そうとするようで――けれど『きらきら』と『きれい』を求めるスライム娘には敵う筈もない。左右に両断される、頭部と体がサヨウナラ、右肩からズバッと斜めに等々、問答無用で倒されて――ポロリ。
『あれ、さっきのと似た珊瑚です?』
「これも長いです……えいっ」

 ただの何となくで、試しに振っただけだった。
 なのに赤い斬撃が出たものだから、

「わーっ!?」

 本日二度目のびっくり声が、青い海に響き渡る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜・泰然
嵐(f36333)と

確かにゴースト系は専門だが
何もこんなクソ暑い時期に湧くこと無いだろ
海中っていう点は不幸中の幸いか
水の中でも腐るものは腐るが…この世界じゃ無縁な話か

光が届きづらい深度まで潜ってUC発動
傷は修復するし何より体の形だって無くなる
呪い殺せるもんならやってみろ

ただこの姿だと戦い方が雑になるんだよな
全身で握り込んでの[怪力][除霊]で何とかなるだろ
嵐、そこにいると巻き込むぞ
言わんこっちゃない…っていうかオイ
お前の攻撃までこっちに当たってるじゃねえか!
[激痛耐性]で誤魔化して、UC効果で修復

月光珊瑚はドロップしたそばから回収
拾い食いするな
どうせ後で飯を山ほど食うんだろうが


邨戸・嵐
泰然(f38325)と

美味しいご褒美があるって聞いたからねえ
幽霊退治は専門家に任せるに限るってことで
泰然もオマケで涼めばいいんじゃない?
君って暑いと腐っちゃいそう

乱戦ってあんま得意じゃなくてさ
お零れで点数稼がせて貰おう
君が沈む後を気配を殺して追って
取り零された敵たちを狩ろうか

泰然を警戒する敵に忍び寄ってUC
仲間に知らされる前に仕留めてしまいたい
海流の罠で動きにくいの、いっそ避けるのは諦めて
泰然を盾にする形で対応
今の君は随分頑丈みたいだしねえ
俺のUCの代償も被って貰うんだから、君の余波を受けるのは享受しよう
…アッ、けっこう痛い

月光珊瑚を拾っては眺めて
ねえ、これちょっと美味しそうじゃない?



 海中にいくつもの音が響き、光が生まれる。武器や魔法による攻撃が作るそれが、バズリトレンディプロデュースのイベントに引き寄せられた膨大な深海ゴーストが原因だと邨戸・嵐(飢える・f36333)はちゃんと理解しているけれど。
「遊園地みたい」
 楽しげに細めた目線をちらりと隣にやれば、杜・泰然(停滞者・f38325)の黒い目が普段以上に光をなくしていた。
「オイ」
「美味しいご褒美があるって聞いたからねえ。幽霊退治は専門家に任せるに限るってことで」
 よろしくねと笑う声に、溜息の音が重なる。泡になってごぼりと音を立てるのではなく、海中でも問題なく溜息として現れているのは、このエリアが元々持つ『今だけの特性』なのだろう。
「確かにゴースト系は専門だが、何もこんなクソ暑い時期に湧くこと無いだろ」
「じゃ、泰然もオマケで涼めばいいんじゃない? 君って暑いと腐っちゃいそう」
「水の中でも腐るものは腐るが……この世界じゃ無縁な話か」
 二度目の溜息をこぼした男は、そよぐ札の下、黒色の視線を先へと向けていた。
 遂に『酷』がつくようになった昨今の暑さを考えると、海中という点は確かに不幸中の幸いではあった。しかも『月の海』と呼ばれるここは、今だけ陸にいる時のように自由が効く。全身は確かに海水で包まれていて、見上げた先にも海面があるというのにだ。
「……」
 その更に向こうでは、揺らいでふにゃふにゃの輪郭になってもなお輝く月がある。
 ゲームの世界でも、あの輝きの理由が太陽ならば――。
「あ、もっと潜る?」
「ああ」
 短く返した泰然の姿が、海面から射し込む光から遠ざかる。
 もっと先へ。もっと下へ。それに合わせて深海ゴースト達が宿す黒や青の密度が増すが、泰然は気にしない。波紋の揺らぎがひどく朧気になり、薄れて――月光珊瑚の色も、光も音も沈むような暗く深いそこに足がついた瞬間、自分の符を捨てた。
 幽霊達は、男が何をしたか解りはしない。標的の輪郭がほどけ、崩れ、形というものをなくしても、設定されたままに『泰然』だった|標的《化け物》へ殺到し――最初に触れた幽霊の頭が、圧縮された。
「呪い殺せるもんならやってみろ」
 触れられたばかりのそこはもう、傷などなくしている。ただ。
「どうしても雑になるな。まあ、」
 こうすれば、何とかなる。
 全身で握り込まれた幽霊が頭だけでなく体中をべこべこに潰れ、潰れたそばからしゅわりと泡の粒になって消えた。
 それが、次から次へと暴風めいた勢いで展開している。聳える月光珊瑚の後ろから覗き見た嵐は、その凄まじさで目と口の両方に弧を描いていた。
(「幽霊も流石に警戒したかな」)
 ユーベルコードによって形をなくした泰然がいるだろう場所、見えない暴力から少し距離を取っている。それでも海の死者は呪う事を諦めない。
(「ゲームのキャラ……モンスターってのも大変だねえ」)
 凄い乱戦だ。得意でないそこに飛び込み参加する気はどうしても湧かない。かといって、全てを泰然に任せるつもりもなかった。取りこぼされた幽霊を狩るくらいは――この瞳が輝いている間に、十分こなせる。
 無謀にも泰然に近づく1体に忍び寄って、後ろから刃物でざくり。
 鮮やかな殺戮は目の前の幽霊をもう一度殺し、すぐ次の幽霊に同じものを贈っていく。
 形なき怪物だけではない。気付いた幽霊達の意識がもう1人の標的である嵐に向いた。目も鼻も口もない、命の残り滓がかろうじて光ってるような頭が自分を見たのに気付き、嵐は無言で目を細める。今までなかった海流を覚えたのはその時で、しかもオマケがあった。
「嵐、そこにいると巻き込むぞ」
「あ、」
 言わんこっちゃない。呆れた泰然はまた1体を握り潰して除霊して――ざくり。感じた痛みに振り返れば真後ろで消えゆく幽霊――と。
「ごめぇん」
 輝く瞳。笑って謝る、同行者。
「オイ、お前の攻撃までこっちに当たってるじゃねえか!」
「動きにくかったからいっそ避けるの諦めようと思って。それに今の君は随分頑丈みたいだしねえ。ほら見なよ、盾にされたのにもう直ってる」
「お前がやったんだろうが」
「あはは」
 そう笑うけれど、使ったユーベルコードの代償も被ってもらっている。ここは自分も何か――そうだ。余波を受けるのは享受しよう。嵐はそう決めて、
「……アッ、けっこう痛い」
 泰然が結構な痛みの耐性持ちだった事を思い出していた。
 その足にコツンと当たったものがある。視界の端で朧気に浮かんだ白色は例のドロップアイテムだ。テーブル型をして重なる月光珊瑚はクレープ生地に似ていた。
「ねえ、これちょっと美味しそうじゃない?」
「拾い食いするな。どうせ後で飯を山ほど食うんだろうが」
「はーい。……」
 カリッ。
「オイ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ?この先は危ないですか?
1歩踏み入れれば、そのまま海流に飲み込まれてしまうって、アヒルさんありがとうございます。
それにしても、目に見えないのによくわかりましたね?
ふえ?アヒルさんにかかれば水の流れに乗ることなんて容易いって、アヒルさんはアヒルさんでしたね。
まるで、目に見えない迷宮のようです。
それでどうしますか?
ふえ?アヒルさんが先導して深海ゴーストさんの上流に案内するから、気付かれないように近づいて恋?物語ですか、わかりました。
深海ゴーストさんを倒したら月光珊瑚を手に入れましょう。



 深海ゴーストが海中を滑るように舞う様は、マンタの群れを眺めているようだった。
 あまりの数に目を真ん丸にしていたフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)だが、あちこちで戦うプレイヤー達を見ているうちに月光珊瑚の陰から出ようとし――て、アヒルさんからのストップに目をぱちぱちさせる。
「ふえ? この先は危ないですか?」
『ガア。グワグワッ、グワワ』
 1歩踏み入れれば、そのまま海流に飲み込まれてしまう。アヒルさんの言葉を証明するように、他の所では勇ましく挑んだプレイヤーが洗濯物のように、上へ下へと何度もくるくる回されていた。見ているだけで酔いそうな光景に、フリルは顔を青くして引っ込む。
「ありがとうございます。それにしても、目に見えないのによくわかりましたね?」
 海中に生じた流れは、泡や海藻などの何かしらを含んでいなければ認識するのは難しい。自分が向かおうとした先に見えていたものも、群れて舞う幽霊だけだった筈。するとアヒルさんが得意げに胸を張った。
「ふえ? アヒルさんにかかれば水の流れに乗ることなんて容易い……そうでした、アヒルさんはアヒルさんでしたね」
 けれど、生み出された海流は目に見えない迷宮のよう。悩むフリルに、アヒルさんがまたもグワグワガアガア。フリルは目を丸くし――こくりと頷いた。


 幽霊の群れが海中を滑るように舞う。光を内包した青いシルエット達が作り出す『流れ』は、プレイヤーを囚える牢であり幽霊達の守りでもある。縦横無尽に流れるそれに捕まったなら、ひとたまりもないだろうけれど。
「えいっ……!」
 作った流ればかり見ていた幽霊達の、更に上。現れたフリルの攻撃は狙い通り全てが命中し、少女の目の前で幽霊達が弾けるような勢いでバンッと散った。目の前が一気に開けた驚きを浮かべた顔が、ふわあ、と笑顔になる。
「アヒルさんの作戦、上手く行きましたね……」
 アヒルさんの先導で敵の上流に向かい、気付かれないよう背後からそろりそろり、からのユーベルコード。見事ハマった結果は、アヒルさんの楽しそうな鳴き声と――きらきらとドロップし始めた、月光珊瑚へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュイ・ロティエ
*今年の水着コン衣装で参加

夏はおばけとサメなの?竜神さま
念話で竜神さまにひっそり話しかけつつ
(リュイを守護する翠緑竜の幻影。おじいちゃんと孫のような関係)

今年はボクも冒険者さんたちと同じく夏を楽しむぞって
海のイベントを覗きに来たけど何か起こってるみたいだね?

わぁ、いっぱいの深海ゴーストさんだ
おばけさんはヒトを怖がらせるのがお仕事だからね
でもこんなにいっぱいじゃ、どっちかというと驚いちゃうかも?

ふむふむ、ゴーストさんには物理攻撃が効かないんだ
月光珊瑚っていう限定アイテム、ボクも使ってみよう!

ちょうど持ってきた青空ビーチボールに纏わせて
狙い定めて当ててみるよ
竜神さま、追い風をお願い!



“夏はおばけとサメなの? 竜神さま”

 リュイ・ロティエ(翡翠の守護者・f42367)からひっそり話しかけられた翠緑竜の幻影が、考える仕草をする。お化けはともかくとしてサメのほうはわからない、という竜神の声は、髪を飾る桃と空色の朝顔にも届いただろうか。
 そっか、とリュイは頷いて眼下を見る。木の如く聳える月光珊瑚の上は、状況を把握するのに丁度いい。海底ではあっちこっちで武器と魔法と青くキラキラとした何かが入り乱れて賑やかだ。
(「今年はボクも冒険者さんたちと同じく夏を楽しむぞって、海のイベントを覗きに来たけど……何かが起こってるみたいだね?」)
 珊瑚からひょいと飛び降りる。海中であって、けれど地上とは違う軽やかさで落ちていけば、青いキラキラの姿形がよく見えてくる。
「わぁ、いっぱいの深海ゴーストさんだ。おっと」
 早速こちらへ来た1体をひらりと躱す。手らしきものが触れたのは、髪を飾る朝顔と揃いの花を咲かせた、柔らか緑のサーフパンツだけだ。
 海底へと降りたリュイの目が、頭上で渦を作るように泳ぐ幽霊達を映す。おばけとは、御伽噺でもホラーでもヒトを怖がらせる事が殆どで、それが彼らの仕事だ。――けれど。
(「こんなにいっぱいじゃ、どっちかというと驚いちゃうかも?」)
 ね、竜神さま。
 すると、幽霊達がぐるぐる泳ぐのをやめた。おや、と見上げるふたりを沢山の幽霊が見下ろして――ぎゅんっ! 一斉にふたり目掛け海中を翔けてくる。
 リュイはすかさず翠玉が寄り添う竜の杖を構え、いの一番に突っ込んできた幽霊の顔だろうそこへ思い切り振り抜く。しかし思ったほどの手応えがない。目をぱちくりさせたリュイだが、目の前にどこからか漂い落ちてきたキャベツ型の月光珊瑚を見て思い出す。
「ボクも使ってみよう!」
 その杖にかと問う竜神にリュイは笑顔で「ううん」と首を振り、ちょうど持ってきた青空ビーチボールへぴとり。ミルクへ沈むように月光珊瑚が溶け込んですぐ輝き始めた丸い青空を、幽霊の群れへと向け杖をしっかり握り込む。
「竜神さま、追い風をお願い!」
 ビーチボールが指先から離れた瞬間、傍らからどうっと力が溢れた。
 森のみどりに輝く風と共に青空が翔ける。それは狙い通り、群れて巨大魚の如きシルエットとなった幽霊達のど真ん中を貫いて――ぱんッ。青い群れが弾けて消えたそこに、いくつもの白が花びらのように舞う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギュスターヴ・ベルトラン
サイキックハーツ以外の世界ってほぼ知らねえし、バカンス…んんっ、勉強がてら行ってみるかと思ったんだ
…可哀想なイベント管理者とかいう切ないのを見せられた

しょうがねえな…除霊と悪魔祓いはエクソシストの嗜みだ
多少の助けにはなってやる

幽霊に攻撃する前にロザリオを握り、主へ悪しきモノからの守護と浄化の祈りを捧げる
呪いは確かに痛ぇが、主からの賜りし恩寵…呪詛耐性のおかげで持ちこたえられた

――天主の彼を治め給わんことを…やべ、想像より数多いな!
…聖句省略!神敵必滅ビーム!!
蒼い世界が金と白で埋め尽くされる程の閃光による神聖攻撃だ
素直に天へ召されよ

…で、十字架の形したこれが月光珊瑚か
ふーん…悪くねえな?



 サングラス越しに見る初めての|世界《GGO》は、不思議な庭園やミュージアムに迷い込んだようだった。呼吸も身動きも不自由ない海の中、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は大小様々な月光珊瑚を眺める。
(「ここがゲームの中とはな。サイキックハーツ以外の世界ってほぼ知らねえし、バカンス……」)
 んんっ。
 ぽろりとはみ出た単語を咳払いで消し、勉強がてら行ってみるかと思った世界を改めて見る。ここはまだ安全なのか、プレイヤー達の勇姿とイベントエネミーである深海ゴースト達の動きを観察出来ていた。それと。
「わあ~深海ゴーストがたくさ~ん、お星様みた~い、きゃっきゃっ……………………はーぁ……俺もあいつらぶっ飛ばしたい……」
 ハイライトのない目ではしゃいだかと思えば、ぼそりと本音を吐き出したドラゴンプロトコルからギュスターヴはそっと視線を外し、海底へと飛び降りる。着地後に先程までいたそこを見上げれば、ドラゴンプロトコルが何かブツブツ言いながらパネルを操作しているのが見えた。
「イベント管理者ってあんな可哀想で切ないもんなのか? しょうがねえな……除霊と悪魔祓いはエクソシストの嗜みだ。多少の助けにはなってやる」
 ロザリオを握り、月光届く海底から主へと捧げるのは、悪しきモノからの守護と浄化の祈り。自分目掛け飛び込んでくる幽霊達をじっと捉えるその体に、目に見えた変化はないけれど――。
「っと……! 成る程、こいつが呪いか。確かに痛ぇ。……けど、それだけだ」
 躱す時に受けたそれは、主から賜りし|呪詛耐性《恩寵》を超えるにはあまりにも薄い。ギュスターヴは不敵に笑い、再びロザリオを握りしめる。
「――天主の彼を治め給わんことを……やべ、想像より数多いな!」
 げえっと顔を顰めながらもエクソシストは冷静さを失わない。
 何せこういう時は、コレがある!
「聖句省略! 神敵必滅ビーム!!」
 数え切れないほどの金の光芒が青い世界を眩く染め上げた。輝きに宿る神聖攻撃は、例え省略されていても威力を欠片も損ねる事なく、深海ゴーストを綺麗さっぱり滅したのである。目の前をはらりと舞った幽霊の名残りをギュスターヴは目で追い、そっと十字を切った。
「海を彷徨うのではなく、素直に天へ召されよ。……で、これが月光珊瑚か。ふーん……悪くねえな?」
 十字架の形で現れた点も悪くない。
 笑うエクソシストの掌で、透き通った白色に淡い虹が舞った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

うわーーー!櫻っ!!
おばけ!おばけきた!
むう……こ、怖くないんだからな!これは……ちょっとびっくりしただけ、なんだからっ
僕だって、旅をしてちょっと強くなったんだ
魔法だって上達したってところ、櫻にもみせるんだ
から!
夏の海に漂うたくさんの海月みたいなおばけを睨む

それに……月光珊瑚、僕もほしいもん!
僕の魔力とも相性がいいと思うんだ
櫻にも可愛い形のをとってきてあげる!
褒められればふふんと胸をはって
力を込めて歌唱する

歌うのは「望春の歌」

夏にも桜を咲かせてあげる!
海水を飲んでもすぐに吐き出して、歌い続けるよ!

あっ珊瑚!
手に入れた珊瑚は桜の枝のよう
ふふー、櫻の珊瑚と交換こ
簪にしてくれるなんて嬉しいな


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

うふふ
久方ぶりのかぁいらしい悲鳴に笑みが深まるわ
リルったらやっぱりお化けが苦手なのねぇ

私は元々陰陽師の家の出、霊を斬るなどおちゃのこさいさいよ
さり気なくリルを背後に庇いつつ
奮い立つようにおばけを睨む姿もかぁいらし

旅の成果を見せてもらうわよ!
あなたの欲しい珊瑚なら気合いをいれてとってこなきゃ

奏でられる歌を背に
刀を抜いて

綺麗な桜を咲かせましょ!

浄華、駆け出したなら生命力喰らう神罰宿した斬撃を薙ぎ払い
ゴーストを斬り祓う!
リルの歌と共に戦うのは久しぶり
変わらぬ安心感を感じるわ!

綺麗な珊瑚、手に入れてあげなきゃね!
折角だもの!リルから貰った珊瑚は簪にするわ
私からは…塊の珊瑚を桜型に彫ってあげる!



 バズリトレンディの手でアレをソレされた『月の海』は非常に賑やかだ。歴戦のプレイヤー達が範囲攻撃で景気よく深海ゴーストを一掃し、別の所では、悪霊退散を叫びながら近接戦闘を挑んだプレイヤーが海流にもみくちゃにされている。
 そんな賑やかさに、猟兵であるリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)も華を添えていた。
「うわーーー! 櫻っ!! おばけ! おばけきた!」
 悲鳴という華に、びたんと抱きつかれた誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)はにっこり笑顔。
「うふふ。そうねぇ、お化けがたっくさん」
 久しぶりに聞いたリルの悲鳴は可愛らしい。実に染みる。
(「リルったらやっぱりお化けが苦手なのねぇ」)
 変わらない所に目を細めながら、さり気なくリルを背後に庇う。深海ゴーストがどれだけ大量にいようとも、櫻宵は元々陰陽師の家の出。恐ろしくはないし、霊を斬るなどおちゃのこさいさいなのだ。
「むう……こ、怖くないんだからな! これは……ちょっとびっくりしただけ、なんだからっ」
「勿論わかってるわよリル。びっくりしたリルもかぁいいわ」
「ほ、本当だよ櫻! 僕だって、旅をしてちょっと強くなったんだ。魔法だって上達したってところ、櫻にもみせるんだから!」
 櫻宵の後ろから隣へ。心臓はまだちょっとドキドキしていて、尾鰭も少しぴるぴる震えている。けれどリルの目は、夏の海を漂う海月の群れめいた幽霊達をしっかり睨んでいた。その目が、海底に点在する月光珊瑚に向く。
「それに……月光珊瑚、僕もほしいもん! 僕の魔力とも相性がいいと思うんだ。櫻にも可愛い形のをとってきてあげる!」
「あら、嬉し」
 奮い立つように睨む姿は、やっぱり可愛らしいのだけれど。
 櫻宵は瞳を煌めかせ、刀を握る。
「それじゃあ、旅の成果を見せてもらうわよ! あなたの欲しい珊瑚なら気合いをいれてとってこなきゃ」
 互いの為に、月光珊瑚を。同じミッションを胸に、2人は青い輝きを内包した幽霊達へと向かう。目に映る敵の数はとてつもない。けれど、震えていた尾鰭は海水を強く叩き、胸には幽霊への恐れではなく誇らしさが満ち、ふふんと胸を張っていた。
「夏にも桜を咲かせてあげる!」
 月光の海の空気を静かに吸い、力を込め唇から紡いだ歌声は、柔く、優しく、暖かい。人魚の歌声に触れた青い世界が喜びに震え、響く音が透明な煌めきと春の輪を広げていく。真珠のような泡と、清らかな色の桜の花吹雪。父へのだいすきが沢山詰まった歌声は幽霊達を囚え――離さない。
「流石ね、リル」
 幽霊達はすっかり人魚の歌の虜だ。櫻宵はくすりと咲い、月光の海を舞台に奏でられる歌を背に鞘から刀を抜いていく。
「さあ、綺麗な桜を咲かせましょ!」
 夏の海に、春を。
 海底を蹴って駆け出した櫻宵の姿は、春風のような軽やかさで幽霊達の傍へと辿り着く。何体かが、未だ夢心地といった様子でかくりと頭を櫻宵に向けた。その頭が、一度に海中を舞う。光を抱えた青い襤褸はたちまち解け、一切の穢れを残さず、桜舞う海の青へと溶けていった。
 斬り祓った幽霊達を視界に、櫻宵はすぐさま次の一太刀を放つべく構える。その耳には、リルが紡ぐ歌声が変わらず届いていた。
(「リルの歌と共に戦うのは久しぶり……でも、あの頃と変わらない安心感を覚えるわ!」)
 より磨きのかかった黄金の旋律が、戦場も、心も、きらきらと照らしてくれる。その輝きは、頭上を泳ぐ新手達が持つ青よりも、ずっとずっと明るい。旅を終えて戻ってた人魚の歌声の、なんて眩しいこと。櫻宵は嬉しそうに咲い、海底を蹴った。
「綺麗な珊瑚、手に入れてあげなきゃね!」
 昇り龍のように上へと飛びながら刀を閃かせる。海の青と春の桜、ふたつの色に刀の紅色が鮮やかに舞えば、死してなお残る幽霊達の存在そのものを刀が喰らい尽くし、神罰と共に薙ぎ払った。
 櫻宵を中心に春の嵐が起き、幽霊達の姿が一斉に散る。桜の花びらに青い欠片が混じって、遠ざかり、消えていく。――そこに、柔らかな白がぽつりぽつりと混じり始めた。
「あっ珊瑚!」
 月光を受けてきらりと輝いた1つ、桜の枝に似た月光珊瑚は、両手で受け止めたリルの表情をふんわり綻ばせた。やった、可愛い珊瑚だ。
「ふふー、櫻っ。珊瑚交換こしよ」
「ええ、交換こしましょ! リルの珊瑚は枝なのね。私の珊瑚は塊よ」
「ころころしてるね。櫻の珊瑚も可愛いや」
「ふふ、ありがと。そうだわ、折角だもの! リルから貰った珊瑚は簪にするわ」
 このまま簪として使っても、簪らしく整えて使っても、どちらも櫻宵に似合うだろう。
「簪にしてくれるの? 嬉しいな」
「私からは……塊の珊瑚を桜型に彫ってあげる!」
 櫻宵の言葉にリルの目が瞠られ――柔く甘く、綻んだ。

 共に春を咲かせて手に入れた、月の海の贈り物。
 そこにはきっと、破邪の力以外の幸せも、たっぷり宿っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
うわっ文字通り大量発生だなぁ
知ってるぞ、まんいんでんしゃってやつみたいな感じだ
しかも触れると面倒…ってことは
やっぱ、最大効率で真ん中まで行ってドーンじゃね?
アレスにドヤっとした顔で提案
大丈夫だいじょ〜ぶ
まっすぐ、道を作るから
そんじゃ、切り開くんでその他よろしく!

歌で身体強化して靴に風の魔力を送るそれから少し腰を落として力を溜めて
スタンバイOK
それじゃあ、あの星まで突っ走るぜ…!
【蒼ノ星鳥】をまっすぐ前へ!
その鳥を追いかけるように走り出し
付近の敵に光閃を飛ばす
敵を斬り、ただ、前へ
いい感じの場所…星までアレスを導くことだけ考えて

ははっ!数が多い分爽快だな!
なんだか楽しくなってきてた!
破顔しながらたくさんの敵の中心へ
そんじゃアレス!どーんとよろしく!
言いながらさっと身をかがめてアレスの剣が当たらない位置に

剣で薙ぎ払われて浄化されてく敵は
一周回ってきれいっつーか
アレスの攻撃がきれいつーか
特等席の眺めだなぁ!

もしドロップ品の中に水鉄砲みたいな形の珊瑚があったら拾う
夏満喫って感じ!


アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎

本当に夏といえば幽霊なのかい…?
電車よりも多いような…って、ちょっと待て
まさかあの大群に突撃するつもり…なんだね、その顔は…!
思わずため息一発…けど、揺るぎない信頼も感じてるから
―分かったよ
何処か岩場があればそこから大群達の状況を把握
中心への目印にと大群上空に赤と青の星の光を浮かばせる
(さりげなく彼に霊的防護を付与して準備完了)
さあ、あの星を目指して
お供致しましょう。…なんてね

脚鎧に光の魔力を充填し共に駆けよう
セリオスに霊が触れてこないように
切り拓かれた道に沿ってオーラ防御展開
地面から光を壁の様に一気に噴出し
剣から衝撃波『光閃』を狼の形に変えて叩きつける
僕が幽霊の波を跳ね返す防波堤となろう

君って奴は本当に…
(楽しいと伝えてくる笑顔もまっすぐで
この状況に恐怖を感じる隙間なんて無いな)

中心に辿り着ければお望みのままに!
周囲の大群を薙ぎ払い、海底から天へと光を繋ぐ様に
【新星剣】を放つ!

珊瑚も回収していこうか
ん?これは武器型…いや、パラソル…?何故…?
…今日は何だかご機嫌だね?



 月光が降り注ぐ海中に浮かび上がる珊瑚達のシルエットは、石で出来た森のようだった。
 様々な形と大きさで存在し、創り上げている光景は、『月の海』と呼ばれるエリアに相応しい。――今は、深海ゴースト大フィーバーで青い煌めきと物理・魔法攻撃飛び交う賑やかスポットと化しているけれど。
 そんな光景に、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)とアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は揃って目を丸くしていた。
「うわっ文字通り大量発生だなぁ。知ってるぞ、まんいんでんしゃってやつみたいな感じだ」
「本当に夏といえば幽霊なのかい……? それに電車よりも多いような……」
 明かりに困らないほどいる幽霊達が乗った満員電車。――10両編成がいくつあっても足りないのでは?
「しかもだぞアレス、触れると面倒……ってことは」
「『ことは』?」
 続く言葉は何だろう。小さく首を傾げたアレクシスにセリオスは頷き――ドヤッ。
「やっぱ、最大効率で真ん中まで行ってドーンじゃね?」
「って、ちょっと待て。まさかあの大群に突撃……」
 途端、ドヤ顔にキラキラが追加された。
「するつもりなんだね、その顔は……!」
「大丈夫だいじょ~ぶ。まっすぐ、道を作るから。そんじゃ、切り開くんでその他よろしく!」
 きらきら輝く目にアレクシスは思わず溜息を一発。けれどセリオスが浮かべたきらきらと共に紡がれた言葉から、揺るぎない信頼も感じていたから。
「――分かったよ」
 溜息の後にくしゃりと笑い、それじゃあ、と周囲に目をやって。大樹の如き枝型の月光珊瑚を指して「セリオス」とだけ言うと、よりきらきらを増した笑顔がこくこく頷いた。

 少しして、海と幽霊の青ばかりだった空間に赤と青の星が灯る。
 それを見たセリオスの目が、表情が、楽しげに煌めいた。歌で風を纏わせていた両足が、ざり、と砂粒の海底を押す。
「それじゃあ、あの星まで突っ走るぜ……!」
 少し腰を落とした姿勢から放った斬撃が、炎の鳥となって月の海を真っ直ぐ翔けていく。星の尾が遠くなる前にセリオスも走り出し――その隣に、見慣れた金色が並んだ。
「さあ、あの星を目指してお供致しましょう。……なんてね」
 大丈夫。光が、風に並ぶ力をくれているから。
 海の空に赤と青の星が輝く中、地を黒鳥と陽光が駆けていく。炎の鳥が切り拓いた道をアレクシスの守護がしっかりと支えれば、一足先に到達した炎の鳥に灼かれた幽霊達がセリオスに触れる事は叶わない。
 火の粉に幽霊の名残である青がきらきらと混じって消えて――その向こうから、どばあと次が押し寄せた。
 けれど地中から迸った光が2人が駆ける道をより強固にし、輝く壁を光の狼が飛び越える。狼に激突された幽霊達が派手に地面へ叩きつけられるのを見て、セリオスが駆けながら笑った。
「ははっ! 数が多い分爽快だな! なんだか楽しくなってきてた!」
 地面を蹴る瞬間に風の力をより咲かせて、跳ぶ。そのまま敵の中心へ飛び込んでいった横顔は、楽しいと伝えた言葉そのままの彩を浮かべていて、この状況にアレクシスが恐怖を感じる隙間なんてどこにも無かった。
「君って奴は本当に……」
 細められる朝焼け空に、ぱっと星空の目が向いた。
「そんじゃアレス! どーんとよろしく!」
「お望みのままに!」
 さっと身を屈めるタイミングも完璧なセリオスが望んだ通り、アレクシスは敵群の中心にて周りを盛大に薙ぎ払った。
 幽霊の姿がはらはらと解けながら青い光と共に消えていく。暗かった海が、元の輝きを取り戻していく。浄化されていく様をセリオスはただ双眸に映し――感じていた“きれい”に、答えを見つけて破顔した。
「特等席の眺めだなぁ!」
 アレクシスの揮う剣の切っ先がそのまま天を指していく。
 瞬間、光が海底と天を繋いだ。
 夜と海底と、深海ゴーストの群れ。黒と青が重なって出来た闇が、膨大な光の一撃によって斬り拓かれる。月の海からその先へと迸る光は周囲の幽霊全てを等しく呑み込んで――光が天へと昇って消えた後。海の青に、白い欠片が舞い始める。
「ははっ、すげぇな! 海ん中なのに雪が降ってるみたいだ! お疲れアレス!」
「ありがとう。君もね、セリオス。……これが、例のドロップアイテムなのか……」
 月光珊瑚。
 この海に在る珊瑚であり、バズリトレンディ・プロデュースによる夏イベントの報酬。
 改めてここがゲームの中なのだと実感しながら、月の海に降る月光珊瑚へと手を伸ばす。降ってきたものを受け止め、海底に落ちたものを拾い――そんな中、アレクシスは砂の海底から覗く白色を掴み上げ、首を傾げた。
 掴んだそこは緩やかなカーブを描いていて、月光珊瑚と同じ色をしている。これもドロップしたものだと思っていたのだけれど。
「ん? これは武器型……いや、パラソル……?」
 しかもちゃんと開閉出来るようになっていた。
「何故……?」
 慎重に開閉を繰り返してみる。――スムーズな手応えがあった。
「……何故?」
「どうしたアレス? おっ、月光珊瑚の傘だ」
 毒の雨が降る場所があったら大助かりだよな、なんてセリオスは笑い、海底の砂を両手でざかざかと掘る。
「確かこの辺りに……あ、あった!」
 こつん、と指先に触れたそれをウキウキで掴み上げたものは確かに月光珊瑚だった。その形は夏のレジャーでお馴染みの――。
「水鉄砲かい?」
「だな。夏満喫って感じ!」
(「……今日は何だかご機嫌だね?」)
 首を傾げて、けれど彼が楽しいなら、とアレクシスにも笑顔が浮かぶ。

 ――その時だ。
 月光降り注ぐ月の海が、再び闇に染まり始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『突然』の『サメ』

POW   :    噛み付く
噛み付きが命中した部位を捕食し、【対象のステータス】を得る。
SPD   :    仲間を呼ぶ
【突然】大量の【サメ】を降らせる事で、戦場全体が【鮫の縄張り】と同じ環境に変化する。[鮫の縄張り]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    どこでもシャーク
【鼻先】で長さ1万÷レベルmの洞穴を掘ると、終点が「同じ世界の任意の場所」に繋がるワープゲートになる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フカヒレ・フォルネウスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サマーのSは――|サメ《shark》のS!
 深海ゴーストが全て倒された事で、『月の海』は本来の景色を取り戻していた。しかし澄んだ青い世界は、数分と経たず闇に覆われていく。それと同時、かすかに聴こえてきた厳かでシンフォニックな音楽に、プレイヤー達はボスの出現を察知した。
「暗くなるギミックかよ……一体どんなボスが? HPバー早く早く!」
「海だし巨大なマンタとかタコじゃない?」
「俺はデカ過ぎて上半身しか表示されない骸骨を推すね!」
「あー、幽霊繋がりね」
「幽霊船もよくないですか? 骸骨船員付きとかどうですか?」
「雑魚付きボス? ふーん、攻略し甲斐があるじゃん……」
 プレイヤー達はそれぞれの武器を構えて警戒しつつも、和気あいあいとした雰囲気だ。
 夏イベントの初戦、大量過ぎるエネミー戦を共にして生まれたラフな連帯感は、控えめだったボス戦BGMのボリュームが通常となっても変わらない。彼らのテンションは、深海ゴーストとは比べ物にならないボスのHPバーを見て上昇し――、

「「「「と、『突然』の『サメ』!!?」」」」

 ドストレートな名前に仰天するプレイヤーをよそに、テーブル型の月光珊瑚が作る山向こうから悠々と現れたボスの姿は、バーの左上に表示されたボス名の通り、とってもサメだった。
 ――ただ。

 爛々とした赤色の目や、覗く牙のひとつひとつが人の頭より大きいなあとか。
 色はサメによくある灰色なんだけど、どう見てもサイズがサメじゃないんだよなあとか。
 いきなりサメを降らせてきたりワープしそうな気がするんだよなあとか。

 海面向こうの月を隠すほど大きなサメの登場に、プレイヤー達はそんな予感でいっぱいになっていた。
 が、彼らは正しく『プレイヤー』だった。嫌な予感が存在していた彼らの心は、あっという間に巨大で強大なボス戦到来の高揚感と、経験値と月光珊瑚がっぽりゲットの予感で占められる。

「倒せば能力値足りなくて装備出来なかったアレ絶対装備出来るハズ! うおおーっ! お前に恨みはないがここで死んでもらうぞサメーーーッ!!」
「私も私も! 月光珊瑚でお家をフルコーデさせてもらうわ……!」
「俺の『全身月光珊瑚装備』の為! カマボコになれーーっ!!」
「そこはフカヒレじゃない?」

 こうして、戦いの火蓋は切って落とされた――!
 
澄清・あくあ
「さすがに反則です…」
『どうしましょ…』
あの大きなサメには普段の光波が通らなさそうとは
やらずと感じた

そしてふとよぎる謎の斬撃
「だめでもともと!」
『やれることはやるのですー!』
先ほど拾った長い三日月の様な月光珊瑚2本へふたりがそれぞれ波紋エネルギーを通してみる。

陽光と月光が混ざり、合わせたら1つの大剣になりそうな、透けた刀身の2対の直剣へ変わった
「すごいです!」
『なんかすごいですー!』
さっきの|斬撃《光波》も私達の|光波《パルスブレード》より、効きそうです。

二人で二対の剣を携えて
|血に惹かれる海の獣《けもの》を狩る夜は始まったばかりの様です
(アドリブ大歓迎、お好きに動かしてください)



「突然のサメが何だ! こちとらプレイヤーやぞ!」
「攻撃出来るなら倒せるって事! うおおー!」
 それぞれの熱い思いを口にボスへ挑んでいくプレイヤー達。その勇姿を前に、あくあとあるまは困り顔で巨大サメを見上げていた。
「さすがに反則です……」
『どうしましょ……』
 あのボスには使い慣れた光波の一撃は通らない予感がひしひしとする。顔を見合わせる2人の表情は、暗くなった海中と同じくらい晴れなかった。
 けれど、脳裏にふと鮮烈な赤がよぎる。深海ゴーストを蹴散らしたあの、謎の斬撃だ。

 あれなら?
 いけるのでは?

 その確証は、ないけれど。

「だめでもともと!」
『やれることはやるのですー!』
 月光珊瑚へ2人がエネルギーを通した瞬間、珊瑚がその形を変えていく。陽光と月光が混ざり、細い三日月めいた姿は直剣へ。新たな姿を得た月光珊瑚は、2つ合わせたなら1つの大剣となる予感を魅せながら、透けた刀身をあくあとあるまの双眸にキラキラと映した。
「すごいです!」
『なんかすごいですー!』

 これなら!

 2人が巨大サメを見上げたと同時、ぐんと体をくねらせてプレイヤー達を振り落とすのが見えた。そのまま巨体は力強く一回転し、凶悪な牙が並ぶ口を大きく開いて吼える。ドラゴンのような咆哮が海中をびりびり震わせて――。
「何もない……?」
「いやでもボスだし何もないって事は……うわーっ?! たたた退避もしくは防御ーッ! サメが降ってくる!」
「はぁー!?」
『え、サメ?』
「降ってくるです?」
 あるまとあくまは目をぱちくりさせ頭上を見た。確かにいくつもの影が迫ってきている。海中に入った瞬間、凄まじい速度で迫る姿は間違いなくサメであったし数だって文字通り大量だった。けれど月光珊瑚の剣を手にした2人が選ぶのは。
「いくですよー!」
『せーのっ!』
 2対の剣を迷わず真っ直ぐ、思いっ切り、振り下ろした。
 放った斬撃はサメの雨も巨大サメも纏めて喰らい、海中でぐるんぐるんと踊らせる。2人は海底を蹴り、自由を奪われたサメからサメへ難なく跳び移りながら、弱点を適確に貫いていく。
 |その終わり《ボス》へ至るにはその他の数が多いけれど、仕方がない。
 |血に惹かれる海の獣《けもの》を狩る夜は、まだ、始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ!?さ、サメさんです!!
それに大きいです。
ふえ?ボスなんだから当たり前ってそういえばそうでした。
それにしてもあんな大きなサメさんに嚙みつかれたら、そのまま丸のみにされてしまいそうです。
ふえ?そうなれば、私のステータスの臆病や不幸が付いて弱体化できるって、そんなのは嫌ですよ。
それは置いといてって、アヒルさんが急に真面目になりました。
あのサメさんはサメさんを降らせるなら、こっちはアヒルさんを降らせるんですか?
アヒル真拳っていやな予感しかしません。
ふええ、なんで仲間攻撃はオフなのに自身攻撃はオンなんですか!!



「ふええ!? さ、サメさんです!!」
 驚きのあまり、いつも以上に目を真ん丸にして声を上げたフリルの心は、ボスの大きさにも圧倒されていた。普通のサメはもっと、こう――ふええ。あの大きさはクジラに迫れるのでは? あわあわするフリルをアヒルさんがやれやれ顔でつつく。
「ふえ? ボスなんだから当たり前ってそういえばそうでした。それにしても……」
 ぐるぐると海中で大回転。自分の意思ではなく|獲物《猟兵》の攻撃によるそれに、サメの真っ赤な目が不気味に光ったように見えた。びっしりと並ぶ歯の間から黒い靄がぶしゅりと溢れる。――怒っている。
「あんな大きなサメさんに嚙みつかれたら、そのまま丸のみにされてしまいそうです」
『ガアガア、グワ~ワ』
「ふえ? そうなれば、私のステータスの臆病や不幸が付いて弱体化出来る――って」
 戦いを見ていて判ったボスの性能。噛み付きで標的のステータスを得る力は、上手く利用出来ればこちらへの有利になる。けれどあの規格外サイズ過ぎるサメに噛みつかれるなんて。
「そんなのは嫌ですよ」
『グワッ』
「“それは置いといて”って……ふえ? アヒルさんが急に真面目に……あのサメさんはサメさんを降らせるなら、こっちはアヒルさんを降らせるんですか? 使うのはアヒル真拳……ふえ」
 いやな予感しかしなかった。
 けれど相手はアヒルさん。フリルのNOが聴こえても、それを聞いてくれるアヒルさんではなく――結果。

『ガア!』
「ふええ……!」
 アヒルさんが指定した通り、ぎゅんぎゅん泳ぎ回るサメをフリルは震えながら指す。
 自分へ新たに向いたターゲットとユーベルコードの気配にサメが俊敏に反応するがその僅か数秒も、そしてサメの周囲も、無数のガジェット・アヒルさんが埋め尽くした。海中が一気にファンシーさを増すが、『月の海』を泳ぐアヒルさん軍団は、サメの凶悪さにも負けないシャープかつスピーディ。四方からの突撃とくちばし突きは流星瀑布の如くサメを圧倒した。巨体は衝撃で何度も後退し――、
「ふええ、なんで仲間攻撃はオフなのに自身攻撃はオンなんですか!!」

 フリルの抗議にアヒルさんはどこ吹く風。
 ふええな悲鳴がアヒルさん色と共に響く中、あまりの猛攻にプレイヤー達はただ見守るしかなかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

邨戸・嵐
泰然(f38325)と

サメって美味しくないんだっけ
それじゃ齧るより料理してからの方がいいか
滅多に使わないチェーンソーを担ぎ出して
久し振りなんだから助手をお願いねえ
バラしたら食べられるようにしてくれる?
エ、俺は料理とかしないよ、ひとが作ってくれたものの方が美味しいし

まずはUCで耐久を上げて
多少の反撃は甘んじて、敵の正面から飛び掛かる
大振りの攻撃と武器の音で意識をこっちに向けさせて
君が呪毒を撃ち込む隙を作ろう
どこから来るか分からなくても、喰いかかる一瞬を捕らえるなら簡単でしょ
ぶつ切りにしてあげる

次は料理人を探さなきゃならないねえ
ほんとに食べるかはそのひとの腕次第かな


杜・泰然
嵐(f36333)と

食う気満々かよ…まあ良いが…
俺が料理するように見えるか?
自分が食う分ぐらいどうにかしな

お前が大振りな武器使うなんて珍しい
それなら俺は援護に回らせてもらうか
嵐の目立つ動きに敵の意識が向いてる間
元の姿に戻ってパイルバンカー装備の上でUC使用
武器がこれだからどうしても単体攻撃にはなるが
嵐を狙って突出してきたサメを一体ずつ貫いて
呪毒で回復遅延させる
環境適応で相手も多少はバフが掛かってるだろうけど
治らない傷を抱えて動き続けられるやつはそういないだろ

あとの解体は嵐に任せた
俺は人体専門だからな
…そもそもそいつ、食って良いサメなのか?
まあお前に限って腹壊すこともないだろうが



 カマボコ、フカヒレ。――唐揚げ、フライも追加。
 プレイヤーの一部が叫んだボスへの『何が何でも倒してやる』が詰まった美味しい単語。いくつか聞き取れたそれに嵐はゆるりと笑い、隣からの溜息――無形の怪物続行中の泰然へその笑みを向けた。
「サメって美味しくないんだっけ。それじゃ齧るより料理してからの方がいいか」
「食う気満々かよ……まあ良いが……」
 なんせ、こっちが呆れた程度で嵐の“食べてみよう”は引っ込まない。やれやれと語る泰然の表情は泰然本人にも見えず、けれどその呆れ顔は、嵐が担ぎ出したチェーンソーを見て小さな驚きを浮かべた。
「久し振りなんだから助手をお願いねえ。バラしたら食べられるようにしてくれる?」
「俺が料理するように見えるか? 自分が食う分ぐらいどうにかしな」
「エ、俺は料理とかしないよ、ひとが作ってくれたものの方が美味しいし」
 それじゃ。『ちょっとそこまで』の気軽さで海底を蹴る。と同時に、全身を流れるように撫でた『何か』が覆い尽くした。
 形も並びも綺麗に揃った|それ《蛇の鱗》はヒトには無いものだが、嵐に気付いたサメには関係がない。イベント戦ボスであるソレには、目に映ったものは獲物か獲物でないかの違いだけ。そしてサメにとって嵐は他プレイヤーと同じく獲物で――けれど。
「三枚おろしとかわかんないし、とりあえずバラそうか」
 嵐から見たサメもまた獲物なのである。
 という事で振り上げた一撃はサメの肌を乱暴に斬り裂き、肉もぶちぶちと斬った。しかしバラすには足りない。思い切り頭突きを返された嵐の体は浮き上がり、枝型珊瑚にぶつかりそうだった背中を泰然が受け止めた時。2人の視界は突然真っ白になった。もうもうと舞い上がるそれはサメが鼻先でがすがすと掘った海底の一部。非常にきめ細やかな砂粒だ。
「隠れたな」
「隠れたね。ま、すぐ出てくるでしょ。HPバーってやつはまだ出てるし」
 最初の挨拶も派手にかましておいたから――猛スピードで地中を泳ぎ回る不穏な音がふいに途切れて、静かになって――数秒の間の、後。何もなかった筈の右側から突っ込んできたサメに、嵐は静かに目を細めた。
「おかえり」
 見えなくても、どこから来るかわからなくても、自分を|ターゲット《獲物》と見ているのなら待てばいい。そして。
「ぶつ切りにしてあげる」
 喰い付きにきた一瞬を捕らえるくらいは、簡単な事。
 更にパワーを増し騒々しくなったチェーンソーが、巨大サメと激突する。びっちりと並ぶ牙とチェーンソーの刃の鍔迫り合いは、暗い海中に赤い火花を生み出した。
 目の前にいる獲物に届きそうで届かない現状に、巨大サメの目が不気味に輝く。
 どぼんどぼんと何かが海に落ちる音がしたのは、その直後だ。
「サメが降ってきたぞ!」
「またかよ!?」
 一時退避だガードだとプレイヤー達が声を上げるさなかも、降ってきたサメは凄まじい速度で迫る。1秒における僅かな動作を誤れば、何体ものサメに噛みつかれ、多段ヒットであっという間にHPはゼロになるだろう。その範囲に嵐もいて――そこに、パッと|新手《泰然》が表示された。
(「……ように、見えるんだろうな」)
 ボスであるサメの意識は目の前の嵐に。その嵐に、ボスが呼んだその他大勢のサメが向かっている。数の上ではまあまあ不利だが――1体ずつ倒せばいい。
 顔面に。脳天に。土手っ腹に。後ろへ回り込んで、むんずと掴んだ尾鰭の根本に。
 泰然は元の姿に戻って即装備したパイルバンカーを次々叩き込んでは、自身の能力に比例した強度の呪毒にまみれた傷を刻みつけていく。
 大きく欠けた頭部も。酷く抉れた腹部も。
 それから、今にもちぎれてサヨナラしそうな尾鰭も。
 泰然が与えた傷はサメ達が持つ回復力を深く深く蝕み、元の泳ぎから残酷に遠ざける。
 ――それは、ボスである巨大サメにも刻まれていた。片鰭の付け根の肉を大きく抉られたサメは、獰猛な牙が並ぶ口から黒い靄を荒々しく吐き出しながら泳ぎを止めている。
 真っ赤な目が2人を見ていたのは恐らく、ほんの数秒。
 けれど強烈な殺気の後、サメは大きく身を翻して距離を取ってきた。それと入れ替わるように他のサメが向かってくるのを2人は堂々と眺め――ひょい、と泰然は片手を上げ、指先で嵐とサメ軍団を順番に指す。
「あとの解体は任せる。俺は人体専門だからな」
「はいはーい。次は料理人を探さなきゃならないねえ」
 よいせと紐を引っ張られたチェーンソーが荒々しい音を轟かせ始めた。暫くはまた――あの巨大サメが倒れるまで、この音は続くだろう。
「……そもそもあいつ、食って良いサメなのか? まあお前に限って腹壊すこともないだろうが」
「ほんとに食べるかはそのひとの腕次第かな」


 ――腕のいい料理人がいたらいいよね。
 ――|ここ《海の中》にか?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ギュスターヴ・ベルトラン
ウワーッ!でけえ鮫!!
ええい、しょうがねえ…バフとしてさっきの十字架月光珊瑚をロザリオ替わりにして強く祈ることにする

――あなたがたが信じて祈り求めるものなら、何でも与えられます
――つまり経験値と月光珊瑚です、ゲームプレイヤーたちよ…

変な思考が挟まったがUCを強めに発動させるには充分だ
鮫の縄張りと化した場に、退魔の魔法陣を敷き弱い鮫には退場してもらう

で残ったのがアレ…第六感で探すまでもないデカさだ
攻撃の為、頭上に浮いてたHYMNEに月光珊瑚のバフ付けデッカ
なんとかクジラ級クソデカリンスラじゃん…バフってこんな効果だっけ
…斬り落とすんならこれでいいか!

それじゃあ鮫は大人しく、はんぺんになれーッ!



「ウワーッ! でけえ鮫!!」
 ボスを見た瞬間ギュスターヴは叫んでいた。
 “ものすごくおっきなサメ”だと聞いていた。しっかり聞いていた。――が、アレは“ものすごくおっきな”にも程があるのでは? サメを超えて古代生物では?
「ええい、しょうがねえ……」
 度肝を抜かれたとはいえ自分は灼滅者であり猟兵だ、いつまでも驚きにまみれたりはしない。
 ギュスターヴは手にしたままの十字架月光珊瑚をしっかり握る。アレやソレやの手順を踏んではいないがこれもまた十字の形をしたもの、ロザリオの代りはしっかり務めてくれる筈だ。ここに集った全ての戦士の為、ギュスターヴは強く祈る。

 ――……えますか……聞こえますか、プレイヤーたちよ……
 ――あなたがたが信じて祈り求めるものなら、何でも与えられます

「うわーっ!?」
「脳内に直接声が!」
 何それ知らん、怖。
 もしやこれも月光珊瑚の力だろうか。ザワザワしながらも動き続けるプレイヤー達に、ギュスターヴは眉間に出来た皺を引っ込め、祈りを重ねる。この祈りはまやかしではない、信心深きプレイヤーには必ず加護が与えられるのだと。

 ――つまり経験値と月光珊瑚です、ゲームプレイヤーたちよ……

「信じます信じます!」
「勝つのは俺らだ!」
 闘志を燃やす彼らに対しボスも負けていない。咆哮を響かせ、海面向こうから大量の仲間を降らせ始めた。獲物で満ちた海中はサメ達にとっては縄張りだ。けれど眼前にとびきりの人参を吊るされたプレイヤーはゾンビよりしぶとい。何より。
「雑魚は退場してな」
 充分な発動条件を得て現れた退魔の魔法陣がサメ軍団を爆速でUターンさせた。脱兎ならぬ脱鮫の光景にギュスターヴは笑い、本星を見上げる。
「……第六感で探すまでもねえデカさだな。さて、月光珊瑚のバフ付けデッカ!?」
 頭上に輝く茨の冠がとんでもないビッグサイズになっていた。
 俺の知ってるバフとちがう。ドウシテ。
「なんとかクジラ級クソデカリンスラじゃん……バフってこんな効果だっけ。……斬り落とすんならこれでいいか!」
 何せ相手はバカデカシャーク。斬るものがデカければ使うものもそれに見合ったサイズがいい。と、いう事で!
「それじゃあ鮫は大人しく、はんぺんになれーッ!」
 遠慮なしの全力投擲。
 その一撃は太陽が闇を切り、光を取り戻すかのような――


『まあぶっちゃけるとだ』


 滅茶苦茶スカッとした。
 ドラゴンプロトコルは、そう語ったという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
さ、サメだー!?
すげーな夏…
これが夏っと噛み締めてたら目に入った珊瑚の
アレは…爆弾?みたいなもんだよな
ピカッと思いつきキラキラ顔でアレスに向う
コレを口の中とかに投げ込んだらすっげー痛いんじゃね?
同意を求めたらアレスからの提案
なるほどOK
爆弾を食べてもらおう大作戦だな
任せろ、中からも外からもドカンドカンやってやるぜ!
アレスが前に出てる間に歌で身体強化して下準備
いつでも思いっきり投げつけられるように
それから…さっき拾った銃もスタンバイ
アレスがつくるその瞬間に備える

…今だ!
噛み付くために開いた口めがけて思いっきり珊瑚の爆弾を投げつける
続けざまにいくつか投げて
さっと銃に持ち替え
テメェに直撃しそうなのは口を狙った1発だけ…だって?
ちゃあんと狙い通りだよ…!
【希焔の蒼灼星】が宿らせた炎が爆弾たちに着火する
…、ははやりすぎかもっ!?
おお…!
反射的にアレスの言葉通りしっかり首に腕を回せば
ふわっと浮き上がる体
…ふ、はは!…なあアレス
夏、楽しいな!
近くなった顔に満面の笑みを向ける
最高の夏だ


アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎

夏といえば突然サメが来るものなのかい…!?
こういう夏もあるのか…と困惑してると
セリオスの閃きに驚く
その珊瑚って爆発させていい代物なのか!?
…けれど、作戦としてもこの武器?達も恐らくサメに効果的だろう
それに…君の輝く笑顔にはいつだって応えたいと思うから
…僕が噛みつきを誘うから
君はそれをサメに喰らわせてくれ
|【貴方の青い鳥】《僕にとっての青い鳥》…セリオスの髪に触れてから
前線へ
閉じた傘に光属性を集中し
剣の如く振り抜き光の衝撃波を放って存在を示し
サメが泳いでくれば開いた傘にオーラ防御を展開
弾く様に受け流そう

噛み付かんとする瞬間を見切れば
傘を開いたまま惹きつけ…
セリオス!
傘から閃光を放ち怯ませ
後退し片手で彼を抱える
すまない、今から無茶苦茶な提案をさせてもらう!
飛ぶよ、セリオス!僕に掴まっていて!
傘を開き、爆風に乗って飛ぶ様に一気に爆発から離脱!
…傘で飛ぼうだなんて我ながら無茶苦茶だな…
セリオスをぎゅっと抱き寄せる
…どうやら僕も夏満喫とはしゃいでいたみたいだ
今なんて最高の心地だよ



 プレイヤー達の奮戦と猟兵達の攻撃によって、サメの巨体は傷で彩られていた。特に目立つのは斬撃でちぎれかけ、ブラブラしている片鰭だろう。凶悪顔でこちらに手を振っていると見えなくもない。
 それでもなお巨大サメは力強く泳いでいた。目は真っ赤に輝き、凶悪な口や体のあちこちからは黒い靄が勢いよく吹き出ている。――そんなサメが月光珊瑚の山向こうからぬうっと出てきたものだから、
「さ、サメだー!? すげーな夏……」
「夏といえば突然サメが来るものなのかい……!?」
 セリオスは叫び、夏というものに感心し、アレクシスは初めて聞く話に仰天した。
 夏――冷たいスイーツ、向日葵、鮮やかな青い空と入道雲。そして。
「ほ、本当にサメなのかい……? こういう夏もあるのか……」
 『夏』に入ってきた『サメ』で困惑するアレクシスをよそに、マンモスを追いかける古代人よろしくプレイヤー達がわあわあとサメを追いかけていく。
「これが夏か……ん?」
 新発見を噛み締めていたセリオスは、目に止まった白色にきょとり。拾い上げたそれはゴツゴツとした掌サイズのパイナップル――風の月光珊瑚で、しげしげ眺めていると、ふいにピカッと閃く。
「な、アレス。コレを口の中とかに投げ込んだらすっげー痛いんじゃね?」
「その珊瑚って爆発させていい代物なのか!?」
 ――待てよ。
 仰天したアレクシスだが、セリオスの閃きは作戦としても、武器としても――武器なのか少し心配になる果物感だけれど多分武器だろう――も、恐らくサメに効果的だ。それに。
「あれだけでっけえ口なら入れやすそうだよなぁ」
 素振りしているセリオスの輝く笑顔には、いつだって応えたい。
「……僕が噛みつきを誘うから、君はそれをサメに喰らわせてくれ」
「なるほどOK。爆弾を食べてもらおう大作戦だな。任せろ、中からも外からもドカンドカンやってやるぜ!」
 提案を受けてまたキラキラ輝いた笑顔にアレクシスは微笑み――指先が、セリオスの髪を優しく掬う。
「行ってくるよ」
「おう!」
 前に出たアレクシスの耳をセリオスの歌声が撫でる。力宿す歌声はセリオスの全身に行き渡り、泳ぐ巨大サメを映した星夜の目は不敵に笑った。
 前に出たアレクシスの手には、光を宿した月光珊瑚のパラソルがある。レジャーに冒険にと大活躍だろうパラソルも、アレクシスが揮えば、暗闇の海を斬り裂く衝撃波を放って伝説の剣の仲間入りだ。
 翔けた衝撃波の眩さと強さはサメをしっかりと引き付け、大きくUターンさせる。真っ赤な目は純粋な殺意で満ち、爛々としていた。
 溢れる殺意、規格外過ぎるサイズと暴力的なスピード。けれどアレクシスは笑みを浮かべ堂々立ちながら、パラソルを前に向け――ぽんっ! 開いた瞬間から展開した防護でサメのタックルを難なく受け止め、更につるりと受け流してみせる。
 軌道を変えられたサメは、自身のスピードをすぐには制御出来ない。何とかぐんっと方向転換してみせたボスの凶悪な赤眼が、再びアレクシスを捉える。それを受けたアレクシスは――こちらへどうぞと微笑み返した。
『――!!』
 サメが吼え、体中から黒い靄が勢いよく吹き出る。どうっと海中をゆくスピードの凄まじさは先程以上で、そのスピードに乗った巨体は一瞬でアレクシスの間近に至った。
 すぐそこで、口が開く。
 鋭く並ぶ、牙の列。
 目の前にある死の形。

「セリオス!」

 星の名前が響いた瞬間、死が、峻烈な光に覆われ形をなくす。

 海中に星や太陽の種が生まれたようだった。力強い輝きはサメの視界を容赦なく奪い――、
「今だ!」
 アレクシスに片手で支えられたセリオスの、心底楽しげな声と共に光の中を一瞬で翔ける『パイナップル』。歌声の強化を得た投擲は狙い違わず爆弾をサメの口へと届けた。更に爆弾追加というサービス付きだ。それから、もうひとつ。
「テメェに直撃しそうなのは口を狙った1発だけ……だって? ちゃあんと狙い通りだよ……!」
 セリオスは笑い、ぴたりと照準を合わせていた水鉄砲の引き金を引く。
 水鉄砲へ込めた魔力に、指輪から勢いよく芽吹いた炎と希望と光のルーンが合流する。真っ直ぐ迸った炎はパイナップルを包み、サメの口内を真っ赤に照らし――2人の至近距離で大爆発が起きる。
「……、ははやりすぎかもっ!?」
「すまない、今から無茶苦茶な提案をさせてもらう! 飛ぶよ、セリオス!僕に掴まっていて!」
「おお……!」
 反射的にアレクシスの首にしっかりと腕を回した瞬間、体はふわっと乗って――そのまま一気に舞い上がる。アレクシスにしがみついたセリオスの目は、その勢いできゅっと目を丸くなった。
 爆風を受け止め自分達を運ぶパラソルを、アレクシスはがっちり掴んだままのアレクシスは、セリオスの目が綺麗なまん丸から変わらないのを見て、小さな溜息をついた。
(「……傘で飛ぼうだなんて我ながら無茶苦茶だな……」)
 爆発のど真ん中から離脱するとはいえ、これは。ううん。
 反省を胸にセリオスをぎゅっと抱き寄せると、爆発のパワーが思ったよりも早く終息していく。現実のように何秒何分とかからないのはゲームならでは。パラソルの旅も、びゅーんとスピード感あるものから、ふわりふわふわと穏やかなものに変わっていく。
「セリオス、大丈夫だったかい?」
 そう声をかけると、セリオスの顔がゆっくりこちらを向いて。
「……ふ、はは! ……なあアレス。夏、楽しいな!」
 最高の夏だ。
 セリオスはすぐそこにある心配そうな顔へと満面の笑みを返し、目の前で咲いた笑顔の輝きに、今度はアレクシスが目を瞠る。それはすぐに温かな笑顔になった。
「……どうやら僕も夏満喫とはしゃいでいたみたいだ。今なんて最高の心地だよ」
「だろ? あっ、見ろよアレス!」

 大爆発が収まって静かになった海の中。
 ボスがいた所に月光珊瑚がドロップした様は白い花畑のようで――しゃららら、と鈴の音色と共に闇が退き、『月の海』に月光が帰ってくる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『パーティタイム!』

POW   :    ひたすら飲食を楽しむ

SPD   :    料理を作ったり買ってきたりする

WIZ   :    芸を披露する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サマーのSは……
 夜と海と、再び注ぐようになった月光が生む透き通った青に、月光珊瑚が宿す柔らかな輝きが加わる。海の青に滲む白色は穏やかで、『月の海』はイベントバトルが始まる前以上の美しさと幻想を見せていた。
 魚や亀もすいすいと現れ、ボスからドロップした月光珊瑚溜まりからは、透き通った紅色のエビもひょっこり顔を出して――聳えるほど大きな月光珊瑚からも、ほろりほろりと|人が芽吹いていく《・・・・・・・・》。
 月光珊瑚と同じ色をした彫像のような、何か達。まさかの追加エネミーかとざわつくプレイヤー達に、芽吹きたての者達がにこりと微笑む。
『初めまして。我々は月の人形。貴方達をもてなす為、バズリトレンディに創られし者です』
「バズ? 誰?」
『これより、皆様をドがつく海中グルメパーティへご招待致します。略してドつかです』
「……グルメパーティから後がハブられてない?」
『会場はこちら、月の海の海底となります。お好きなテーブル席をお選び下さい』
「うわいつの間にセッティングしたの!?」

 自己紹介や説明はしてくれるけれど、それ以上はなし――NPCらしさ溢れる彼らが左右にはけた先は大小様々な月光珊瑚に囲まれた広場だった。
 丸テーブルと椅子、更にカトラリーはつるりとした月光珊瑚製で、テーブルの中心ではメニューがちょっぴり浮きながら緩やかに回転中。それを開けば、ふっくらキューティなフォントで『全部ワイちゃんの奢りだゾ★』のメッセージと、パーティを彩るグルメが並んでいた。

●O!GO!RI! MENU
 三日月と星のクルトン浮かぶ、まろやかコーンポタージュ。
 ニンジンとポテト付きハンバーグ(トッピング→満月目玉焼き/三日月チーズ)
 胡椒とニンニクをがつんときかせた、分厚くてロックなステーキ。
 ぷりぷりイカを使ったシーフードパスタ(スープ/クリーム/トマト)
 旨々ハンバーガー(エビカツ&タルタルソース/ビーフ&チーズ)
 生地が薄めで耳がカリカリさくっ!なピッツァ(マルゲリータ/ペスカトーレ)
 具だくさん焼きそば(ソース/塩)
 お好み焼き、マヨネーズイラストのサービス付き(イルカ/タコ/エビ/クジラ/巻き貝)
 醤油タレを使った焼きホニャララ(とうもろこし/でっかいイカ/でっかいエビ)

 定番からレインボーまで勢揃いの、シャリシャリかき氷。
 とってもジューシーな葡萄オンリープレート、アメシストとアレキサンドライトな輝き。
 苺ソースをかけたソフトクリームが絶品な苺たっぷり真っ赤パフェ(選べる海の巨大モンスタークッキー → サメ/タコ/イカ)
 顔パーツはチョコペンで耳はビスケット、ワッフルコーンの器に月光珊瑚風のメレンゲを添えご提供の、ビジュアルもフレーバーも多彩なアニマルフェイス・アイス(犬/猫/熊/兎/鳥/アザラシ赤ちゃんなどなど)
 しっとりチョコレートな海のタルト(波紋ゆらゆらターコイズブルー/オレンジ香る、グラデーション・サンセット/月の道浮かぶミッドナイトブルー)

 ソフトドリンクとソーダから選べる各種フロート。
 他、ジュースや紅茶、アルコール各種もあり〼。


『それでは戦士の皆様。どうぞ、心ゆくまでお楽しみ下さい』
 
邨戸・嵐
泰然(f38325)と

お待ちかねの時間と賑やかな会場に上機嫌
動いた分お腹もすっかり空いてるからねえ
ご飯食べさせるのが趣味なひとって最高

君はすっかり俺のこと分かってる
上から順に机に乗るだけ全部ってお決まりのオーダー
何回かに分けて頼むだけの分別はあるよ
泰然のかき氷、何の味なの?
美味しいなら俺も頼もうかな

しょっぱいものから平らげつつ
改めてメニューを眺めて首を傾げ、気になって給仕に質問
あのサメは料理してないの?
専門家が美味しくないって言うならやめておくけど
正直ちょっと気になってる

構って貰うために昼に出歩きもするけどさ
やっぱり夜闇と月は気分がいいな
ねえ、君、次も出掛けるときは夜にしようねえ


杜・泰然
嵐(f36333)と

やたら豪勢な会場を怪訝な顔で見つつ
良かったな、奢りらしいぞ…誰のかは知らんが

まあ、せっかくだからかき氷で涼ませてもらうか
味は別にどれでも…うわ、問答無用でレインボーにしやがった
見た目がうるせえな…
嵐はどうせメニューの端から端まで食うんだろ
かき氷の味?
こんなのどの色も砂糖の味だろ
味覚自体が鈍いからあんまり分かんねえが
食べるのも遅いから気付いたらすげえ色の水になってんな

やっぱりさっきの鮫も食う気か…
そもそも調理できるやつがここにいるのか?
あのNPC達がどこまで無茶振りに対応してくれるのか正直少し興味はある

夜の出歩きねえ…考えといてやる
少なくとも暑い内は、俺も夜の方が気分が良い



 透明感な青に、白い光の柱や網が、ゆらりゆらゆら。
 音もなく静かに揺れる月光は淡く輝く月光珊瑚も彩っている。『月の海』が創り出す今だけの風景を存分に使ったパーティ会場を、泰然の目がゆるりとなぞった。
(「やたらと豪勢だな」)
 怪訝の二文字が浮かぶ目、初対面の者が見てもわかるくらい上機嫌な嵐――ひと足先に席へついている同行者へ移った。
 嵐にとって『今』は、連続イベントバトルを終えて訪れたお待ちかねの時間。会場はよく知らない間に賑やかになっていて、動いたぶん腹はすっかり空いてと、心身共に準備万端だ。着席して即、テーブル中央でくるくる回っていたメニューも手にしている。あとは注文するだけだ。
「良かったな、奢りらしいぞ……誰のかは知らんが」
「誰でもいいよ。ご飯食べさせるのが趣味なひとって最高」
 メニューを見て笑む嵐の言葉にバズなんとかさんも『せやろ』と頷いている事だろう。
 泰然はメニューの上部に指先を引っ掛け、自分側へと軽く倒させた。テーブルの上にぱたりと寝そべる逆さま状態のメニューを覗くと、丁度いい事にデザートのページだ。
「まあ、せっかくだからかき氷で涼ませてもらうか。味は別にどれでも……」
「じゃあ泰然のかき氷これね」
「は?」
 問答無用でレインボーかき氷を指定した嵐は、不満しかない泰然をスルーして月の人形を呼んでいる。――メニューを開いてからまだ数分。泰然は嵐の指先が被ったままのかき氷を一瞥し、溜息をついた。
「見た目がうるせえな……。嵐はどうせメニューの端から端まで食うんだろ」
 すっかり自分の事を分かっている。
 嵐は双眸を細めながら一番最初のページを開いて、上から順に注文して――するすると下へ下へ。安心してよと、目と口が弧を描く。
「何回かに分けて頼むだけの分別はあるよ」


 かき氷の虹色が、月光珊瑚のテーブルを淡く染めている。塩焼きそばをある程度食べてから平たく厚いステーキを頬張って、口の中を肉の香りと旨味に染めていた嵐の目が月光珊瑚を染める虹色を暫し見つめ――すい、と硝子の器に収まるレインボーかき氷と、それを黙々と食べる泰然を映した。
「泰然のかき氷、何の味なの? 美味しいなら俺も頼もうかな」
「こんなのどの色も砂糖の味だろ」
「屋台とかのはそうだっていうよねぇ。ここのは違うんじゃない?」
「知るか」
 そもそも自分は味覚自体が鈍い。何味だと聞かれてもあまりわからない――のだが。
 泰然は何口目かを口に放り込みながら、眼の前のかき氷をじいと見る。
 味覚の鈍さに加えて食べる事も遅い自覚があるのだけれど、運ばれてきた時はキラキラしていたかき氷の色が――こう、あれだ。色と色の境目が更に溶け合い、混ざり合い、それが器の底に少しずつ溜まりつつあって――。
(「すげえ色の水になってんな」)
 あの部分は何味になっているだろう。味覚が鋭かったなら一口食べた途端眉間に皺が寄ったか、何だこれはと味を探って宇宙が広がったか。
 対する嵐は、次のしょっぱいやつをとソース焼きそばを楽しんでいる。塩焼きそばと比べて濃いめの味は、しょっぱさの中にほんのり甘みもあった。具材の肉も野菜も一緒に味わった後、ステーキも塩焼きそばも平らげて、運ばれてきたビーフ&チーズのハンバーグをばくり。
 そうして次々平らげていった嵐は改めてメニューを眺め、首を傾ぐ。
 ちょいちょいと指先を曲げてスタッフを呼び、気になっていた事をぶつけてみた。
「あのサメは料理してないの?」
(「やっぱりさっきの鮫も食う気か……そもそも調理できるやつがここにいるのか?」)
 嵐が正直ちょっと気になっていたそれ。呆れながらかき氷を食べた泰然は――NPC達がどこまで無茶振りに対応してくれるのか、正直少し、興味はある。
 2人の疑問と視線に、月の人形が微笑みながら頷いた。
『急遽入りました食材ですのでメニューには載っておりませんが、ステーキ、刺し身、カマボコ、兜煮といったメニューのご提供が可能です』
(「調理できるやつがいるのかよ」)
「味は? 美味しい? 美味しくない?」
『美味しいです』
「!」
 目をきらりとさせた嵐がオーダーしたサメ料理を待つ間。レインボーかき氷の山は、その名残を何色と呼ぶのかわからない様で硝子の底に残し、嵐はエビカツ&タルタルソースハンバーガーをばくりと一口。エビのぷりぷり感とソースのハーモニーを楽しみながら飲み込んで――ねえ、と口を開いた。
「君、次も出掛けるときは夜にしようねえ」
「夜の出歩きねえ……」
 構って貰う為、昼に出歩きもするけれど、やっぱり夜闇と月は気分がいい。そう言って愉しそうに細められる目に、泰然は周囲の青を見て――それから遥か頭上の月を見た。
「考えといてやる。少なくとも暑い内は、俺も夜の方が気分が良い」

 光と音と、熱。
 陽があるうちと比べれば、夜のそれはずっとずっと、マシなものだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

澄清・あくあ
「ほわ…綺麗…✨」
『いっぱいです~!✨』
用意してくれた料理は、ひとまずコーンポタージュを貰い、
「おいしいです♪」『あまあまです✨』
他にもおいしそうなのをつついてみるのです!

そういえば、なんとなく使ってたあの剣について聞いてみようかな
ドロップアイテム?だけど、月光珊瑚だと
多分|あの人《珊瑚のNPC》のだったと思うし、勝手に使っちゃったし…

え、くれるのです?導きの月光…?

「難しい事はわかんないけど…わかったよ」
『大丈夫。いつでも綺麗な光を見れるように、がんばるね』
(取得:赫月の組大剣)
(上記以外にもアドリブ絡み等大歓迎です。お好きに動かしてください)



 月の光と月光珊瑚の輝きが夜の海を照らし、どこまでも広がる透き通った青を教えてくれる。そこに月光の柱や波紋がひどく穏やかに揺れる様は、見ていて心地良さを覚えるかもしれない。あくあとあるまはというと――。
「ほわ……綺麗……✨」
『いっぱいです~!✨』
 あくあは周囲をゆっくりじっくりと見ながら、あるまは開いたメニューに並ぶものの多さに、それぞれの目を輝かせていた。
 メイン系にデザートにドリンクに――メニューを彩る文字を追えば追うほど、どれにしようかウキウキワクワクと迷ってしまう。
『ひとまずコーンポタージュを貰いたいのです♪』
「賛成!」
 仲良く揃った『すいませーん』に月の人形はすぐ来てくれた。やわらかな黄色で満たされた月光珊瑚製の皿――コーンポタージュ2人分が運ばれてきたのもすぐで、目の前にことりと置かれた“満月”に2人は目を輝かせ早速スプーンをくぐらせる。あーん、と頬張れば温かさと甘みがふんわりと広がった。
「おいしいです♪」
『あまあまです✨』
 三日月や星のクルトンはさくさくとして香ばしい。クルトンだけ味わってみたり、スープと一緒に味わってみたり。コーンポタージュを楽しんだ2人は次のメニューを決めようと、再びメニューを覗き込――んだところで、“そういえば”と顔を見合わせ、テーブルに立てかけていた剣をちらり。
 バトル中は幽霊から、ボス戦ではサメからどっさりとドロップしていたけれど――月光珊瑚という事は、多分、|あの人《珊瑚のNPC》のものなのでは?
 心配になりながら近くにいた月の人形へ慌てて確認した2人だが、笑顔での『大丈夫ですよ』にキョトンとなる。大丈夫? 本当に?
『どうぞそのままお持ち下さい』
「え、くれるのです?」
『はい。全ては導きの月光のままに……』
『導きの月光……?』
 ハテナを浮かべて月の人形を見ても微笑だけが返ってくる。2人は考えて――みたけれど、やっぱりわからなかった。
「難しい事はわかんないけど……わかったよ」
『大丈夫。いつでも綺麗な光を見れるように、がんばるね』

 ここへ来た事。
 月光珊瑚の剣を手に入れた事。
 わからなくてもそれだけは確かで――

“ 赫月の組大剣を入手した ”

 目の前に表示された白い文字に、2人はニッコリと笑い合う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギュスターヴ・ベルトラン
(無言でスレイヤーカードを展開し水着に着替え)
ぼくこういうカワイイの大好き!美味しければもっと嬉しい!
でも先に感謝を捧げないとね

――父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます
――あとバズトレもドつかありがとう…サメと幽霊はもういいです

注文はチョコ海のタルトをオレンジサンセットで…赤ワイン付きで…
あ、ミルフィローズさんだ
わーい、おつかれさまー(手を振る)
この間のお砂糖、ママン喜んでた!
贈って良かったなって思ったよ、協力してくれてありがとうね

わー、タルト来た!
舌触りがしっとりしたチョコにオレンジの爽やかさで本当に美味しい
この味わいに寄り添う赤ワインも良いよね…ぼく、今日頑張って良かった…



 パーティにはパーティに相応しい装いというものがある。
 という事でギュスターヴは黙ってスレイヤーカードを展開し、一瞬で水着に着替えた。テーブル中央でくるくるしていたメニューもぱっと取り、それはもう満面の笑みを浮かべる。
「ぼくこういうカワイイの大好き! 美味しければもっと嬉しい!」
 その言葉に、テーブル傍に控えている月の人形――口元にカイゼル髭のあるタイプがにっこり笑う。
『ありがとうございます、戦士。最高の味を保証致します』
「それは楽しみだな。でも先に感謝を捧げないとね」

 ――父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます
 ――あとバズトレもドつかありがとう……サメと幽霊はもういいです

 おかわりあるわよ?とイマジナリーバズトレが脳内に登場しかけても、神の手が脳外へポイしてくれる。おかげで何にするかスムーズに決められた。
「注文はチョコ海のタルトをオレンジサンセットで……赤ワイン付きで……」
 まずはこれで。注文を終えたギュスターヴはデザート到着を待ちながら、何となく周りに視線を向け――同じように注文を終えた所らしきミルフィローズとぱっちり目が合う。
「あ、ミルフィローズさんだ。わーい、おつかれさまー」
「やっほーギュスターヴくん、お疲れ様ー」
 和やかに手を振りあった所で自然とギュスターヴの口から飛び出したのは、あの日の続き。顔に浮かぶ笑みは朗らかだ。
「この間のお砂糖、ママン喜んでた! 贈って良かったなって思ったよ、協力してくれてありがとうね」
「わぁ、良かった! ボクの方こそ、お手伝いさせてもらえて嬉しいな。ありがとう」
 一歩進めたその先。贈り物の次の行動。帰り道。そこへ至る確かな足がかりを得たギュスターヴの朗らか笑顔に、お待たせしましたと月の人形が映り込む。
「わー、タルト来た!」
 鮮やかな橙から優しい紫に変わるサンセット。切り取った一口分を口元に寄せた時に香ったオレンジが、しっとりとした舌触りと共に爽やかに口内を満たしていく。赤ワインを飲めば、その味わいへ理想的な様で寄り添ってくれるものだから、ギュスターヴの口からは大満足の息がこぼれた。
「本当に美味しい……ぼく、今日頑張って良かった……」
 タルトもワインも、心身に染みる。
 頑張った事の正しさを証明するように、目のハイライトを取り戻したドラゴンプロトコルも美味い美味いとハンバーグを頬張っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、これ全部バズリトレンデイさんの奢りなんですか?
すごいです。
ふえ?こういう時はシェフを呼べ……じゃなくて支配人を呼べって。
アヒルさん、それじゃあクレームみたいじゃないですか。
バズリトレンデイさんはあちこちでイベントを作っていて忙しいですから、お礼は心に込めていただきましょう。

さて、アヒルさんは何を注文したんですか?
苺たっぷり真っ赤パフェですか。
もちろん、クッキーはサメさんですか。
私はしっとりチョコレートな海のタルトですね。
月の道浮かぶミッドナイトブルーです。



 ほんわりと優しい光を宿した月光珊瑚に囲まれて、輪郭を滲ませ柔らかく揺れる波紋を浴びながら過ごす『月の海』海底でのグルメパーティ。そのメニューは、バズリトレンディが『ドがつく』と名付けた通りの豪華さで、メニューを見たフリルの目は無邪気に輝いた。
「ふわぁ、これ全部バズリトレンデイさんの奢りなんですか? すごいです」
 上から下へ。左ページから右ページへ。きらきらしながらメニュー名をなぞるフリルの隣席、積まれたクッションの上に座っていたアヒルさんが、ガアガア鳴いて翼をぱたぱた。曰く、
「ふえ? こういう時はシェフを呼べ……じゃなくて支配人を呼べって。アヒルさん、それじゃあクレームみたいじゃないですか」
『ガアガア、グワッ』
「呼びませんよ。それにバズリトレンデイさんはあちこちでイベントを作っていて忙しいですから、お礼は心に込めていただきましょう」

 ありがとう猟兵……そのお礼は心も世界も超えてワイちゃんに届くんだゼ☆

 と、バズリトレンディがウインクしながら親指を立てキラッとしていそうな間。フリルは小さく心弾ませつつメニューにしっかり目を通してから、控えめに手を挙げて月の人形を呼ぶ。
『はい、何でしょうか戦士よ』
「あ、あの、すいません。えっと、これをお願いします……」
 フリルが指したものに月の人形が笑顔で頷く。無事に注文出来てホッとしていると、アヒルさんがメニューをぴょいっと取っていった。あ、と目を丸くしている間に、アヒルさんはフリルと同じように翼で指して注文を済ませている。
 失礼致します、と月の人形が礼儀正しくテーブルを離れてから、フリルはアヒルさんに尋ねてみた。ずばり。
「アヒルさんは何を注文したんですか?」
『ガアガア』
 苺たっぷり真っ赤パフェ。もちろん、クッキーはサメ。
 答えたアヒルさんからの『グワッ』――フリルは? に、フリルはちょっぴり笑顔を浮かべてテーブルに頬杖をついた。
「私はしっとりチョコレートな海のタルトですね。月の道浮かぶミッドナイトブルーです」
 実物はどれくらい青いだろう?
 答え合わせの時を待つ少女の目を、『月の海』の青と白が優しく彩っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
24年水着着用

キラキラとテーブルの上を見つめ
アレスにテーブルに誘われてハッとした
そうだな!いっぱい食わないと
奢りのご飯を山ほど食べちまうなんて悪いことしてる気分だ…あ!
思いついてアレスにサングラスをかける
ふふん、そういう雰囲気上がらねえ?
うまいものを食い尽くす悪い組織だ
いっぱい食べるぞ

まずハンバーガーから
ん〜うまい!
コレはアレスに分けてやろうなんて考えながら他の料理に目をやる
ステーキもうまそうだし
焼きホニャララも気になるし…
って思ってたらアレスからスッと差し出される皿
丁度食べたかったって喜びは
更に差し出された皿をみてまんまる目に
もぐもぐ…ごくん、エスパーか!?
びっくりしたけど
ふふっ、アレスは俺にいつも美味しいをくれるなぁ
作ってくれたものも
選んでくれたものも
全部美味しくて全部幸せ
だから…アレもコレもはんぶんこだ
ふふ、いっぱい食べれるし幸せ2倍でうれしいな
最後はソーダフロートを受け取って
コレは…半分はむずいっていうか…
半分にするためのストローをみて飲み込んだ
ちょっと照れる!


アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎
24年水着着用

ドつか…某親分さんらしいな
僕達もパーティを楽しもうか
恭しくセリオスを席へと導こう
パラソルも席の近くに立てて…ん?サングラス?
僕も着けるのかい?
悪い組織って…
(正直あまり慣れないが…
…今日は『夏』に浮かれてしまおうか)
仰せのままに、我が君。…なんてね

美味しそうに食べる彼に目を細めながら僕も料理に舌鼓
(…あの料理が気になるのかな
ああ、あれも好きそうだ)
彼が見ていた料理や甘味達を差し出していくと
…驚く顔が可愛らしくて
緩みそうになる頬を手で隠す
超能力者ではないよ
僕はただ、君に料理を作る時のように、君に美味しいを届けたいと想ったんだ
…美味しそうに食べる君の笑顔だって
いつも僕の心をあたたかく幸せに満たしてくれてるよ
綺麗な海底も美味しいご飯も
君とたくさん味わえて…僕の幸せも2倍だ

最後にソーダフロートを…セリオス?
黙る彼に首を傾げ
…ストローを見て理解した
これは…
僕のソーダフロートと乾杯しようか
(…ストローの形のせいだろうか
何故だか頬が熱い
サングラスでは…隠せられないかな)



 ドがつく月光珊瑚海中グルメパーティ、略して『ドつか』。
 グルメパーティの席をご用意しない某親分らしい略し方に、アレクシスは笑みを浮かべながら隣を見る。ひと足先に『ドつか』を楽しんでいるプレイヤー達のテーブルは、どれもご馳走で彩られて賑やかだ。そこを見つめるセリオスの瞳は、いつも以上にキラキラとしている。
「僕達もパーティを楽しもうか」
「っと、そうだな! いっぱい食わないと!」
 テーブルに誘われハッと肩を跳ねさせたセリオスへと、アレクシスから片手が差し出される。恭しい導きの続きは、椅子を引いての「こちらへどうぞ」。
 サンキュと笑って座ったセリオスは、アレクシスが月光珊瑚のパラソルを席の近くに立てかけるのを眺めながら、テーブル中央で回転し続けていたメニューを手に取った。開けば数ページに渡ってご馳走の名前が綴られていて、その全てが奢りというから驚きだ。
「奢りのご飯を山ほど食べちまうなんて悪いことしてる気分だ……あ!」
「え?」
 ぴかっと閃いてすぐ、アレスアレスと呼んでこちらへ向いた端正な顔へ――すちゃっ。
 青と紫が揺れる鮮やかな丸いレンズ。色彩の深さがほんのり増した視界。セリオスが掛けていたサングラスを掛けられたアレクシスは、きょとりとしながらテンプルを指先でなぞった。
「サングラス? 僕も着けるのかい?」
「ふふん、そういう雰囲気上がらねえ? うまいものを食い尽くす悪い組織だ」
「悪い組織って……」
 黒地に金刺繍が見事な上着を海流にそよがせながら、セリオスは笑う。オリエンタルな今年の水着は、“美食について知りたいのならば黒鳥を尋ねろ”なんて物語が似合いそうだ。
 対するアレクシスは、白に金装飾を使った海辺の守護騎士、または王子様を思わせる水着姿。そんな出で立ちの今、サングラスを掛けられ組織に誘われる図は新しい物語が始まりそうで――んん、とアレクシスは小さく唸った。悪い組織。正直あまり慣れないけれど。
(「……今日は『夏』に浮かれてしまおうか」)
 メイン、デザート、ドリンク。奢りメニューを見ていたセリオスが、ぱっとこちらを向いて笑う。にーっと笑うその目が、無邪気に煌めきながら胸のワクワクを伝えてくる。だから。
「いっぱい食べるぞ」
「仰せのままに、我が君。……なんてね」


 悪の組織ことセリオスがまず目をつけたのはハンバーガーだった。つやつやパンズに厚めのビーフ、とろりと色を添えるチーズ。レタスも挟まれてとビジュアルは満点だが、さて、そのお味は? セリオスはかぶりつき――。
「ん~うまい!」
 ビーフとチーズはなかなかいいパンチをしているし、それらを挟むパンズも香ばしくて美味い。コレはアレスに分けてやろう、なんて考えながら食べ進めるセリオスは、他の料理チェックも忘れない。なにせ今日は、うまいものを食い尽くす悪い組織なのだ。
(「ステーキもうまそうだし、焼きホニャララも気になるし……」)
 ――という具合に、テーブルを飾るご馳走からご馳走へと移る視線は守護騎士系幹部もといアレクシスにしっかりばっちり観測されていた。
(「……あの料理が気になるのかな。ああ、あれも好きそうだ」)
 ステーキ皿をスッと差し出せば、そうそう丁度こいつが食べたかったんだと喜び輝く目。そこへ焼きトウモロコシとイカも続き、更にはスイーツの皿も――となった所でセリオスの目はすっかり丸くなっていた。
 お手本のような驚き顔を『可愛らしい』と正直に伝える事は出来なくて、その代わりに頬に覚えた緩んでいく感覚を、アレクシスはさり気なく手で隠す。
「エスパーか!?」
「超能力者ではないよ。僕はただ、君に料理を作る時のように、君に美味しいを届けたいと想ったんだ」
 その言葉で、ナイフとフォークを手にしていたセリオスのまん丸目が、ふにゃりと綻んだ。
「ふふっ、アレスは俺にいつも美味しいをくれるなぁ」
 作ってくれたものも。
 選んでくれたものも。
 全部美味しくて全部幸せ。
「だから……アレもコレもはんぶんこだ」
「……美味しそうに食べる君の笑顔だって、いつも僕の心をあたたかく幸せに満たしてくれてるよ」
 いつも。いつでも。
 今までも。
 ――これからも。
 互いを映した目が共にふんわり和らいだ。セリオスは溢れるほどの幸せを顔に浮かべながら、食べ応え抜群なステーキにフォークとナイフを入れていく。
「ふふ、いっぱい食べれるし幸せ2倍でうれしいな」
「そうだね。綺麗な海底も美味しいご飯も、君とたくさん味わえて……僕の幸せも2倍だ」
 うまいものを食い尽くす悪い組織は、食べれば食べるほど幸せが増えていく。
 組織活動の締めを飾るのはしゅわしゅわ炭酸が気持ちいい、美しい色を湛えたソーダフロート――なのだけれど。自分のものを受け取ったセリオスが急に黙り、アレクシスは首を傾げた。
「セリオス?」
 けれど、ストローを見て沈黙のワケを理解する。
 セリオスは唇をぎゅうと閉じた。
(「コレは……半分はむずいっていうか……」)
 アレもコレもはんぶんこだと笑いあった後であっても、この、半分にする為のストローの形はさすがにちょっと何というか『難しい』を余裕で超える『至難』では? |この形《はぁと》はある種のトラップでは?
「その……僕のソーダフロートと乾杯しようか」
「お、おう! そうだな、乾杯しようぜ乾杯!」
 グラス同士が気持ちのいい音を立ててすぐ、セリオスは半分にする為のストローの片方に口をつけた。もう片方をどうぞなんて絶対出来ないけれど、それでもこれはちょっと――そう、ちょっと照れる。
 アレクシスは頬に熱を覚えながら、口をつける。この熱はストローの形のせいかもしれない。サングラスでは――隠せない気がした。


 いつもと違う鼓動のリズム、頬の熱。
 はんぶんこに出来ない、同じもの。
 そんな2人を、『月の海』だけが変わらない青と白で彩っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月01日


挿絵イラスト