『椿御前』~アヤカシエンパイア・浅草寺
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「『妖の裂け目』……!? 何故、神仏の加護が布を裂くように……!」
「おのれ、妖……! この『秘仏』守るける金龍山浅草寺に現れるとは一体何を目論んでいる!」
「妖は一体。恐らく牛鬼の類! なれば此処で我らが祈念を示すときぞ! この時のために我らは……ぎゃっ!?」
「あたいには『椿御前』って、大層な名前があるんだけどなぁ……まあいいや。酒の肴が足りないってんで、こうやってやってきたわけだけれど……」
「皆の衆! 如何に女性の姿をしていても妖ぞ! あの体躯、八尺はあろうか。あの太刀は……!」
「あー、デカイのはあたいが『暴食』の権化だからだけど。でもまあ、腹が減るんだから仕方ないよな。此処には肉の柔らかそうな年若い坊主共がいっぱいいるだろう?
ちょいとばかし分けてくれよ。
そうだな……二十四人位でいいよ。たったそれっぽっちで帰ってやるっていうんだから、あたいの優しさが身にしみるだろう?」
「『風雷神門』よ! この妖を退ける力を与え給え!!」
「お? なんだこの風は。それに稲光までしてやがる。ああ、なるほど。これが神仏の力を借り受けるユーベルコードというわけか。
これであたいの毒の息と呪いを封じる、と。
……なんとも健気だね。
このユーベルコードを体得するまで、一体どれほどの長い時間修行してきたのか。
けどまあ、なんとも無駄な修行だろうか。
非才たる身では、何も守れやしないっていうのに。できることは逃げ惑い、隠れ潜み、息を殺して嵐が過ぎ去るのを待つことだけ。
おっと逃げるなよ。
アンタにはあたいの酒の肴が何処にあるのか教えてくれねばならないんだから」
(暫くして)
「ぷふぅ……ちょっと味見するつもりが、思わず本気で食い散らかしてしまった。まったく、若い肉は柔くて血が滴っていけない。酒の肴と言えば、やっぱり干物だよな。
これが連中が必至に護っていたものか。確か『秘仏』とか言っていたっけ。
ははーん、なるほど。
即身仏に至る手前の修行者の肉体ってわけか。
どれ、ひとかじり。
……ッ!
これはこれは! 力がみなぎってくる!
伊達に長く険しく、死に至るほどの修行を仏法のためとは言え行ってきただけのことはある!
これを喰らい続ければ、きっと我が『暴食』も満たされるかも知れないし、満たされないかも知れない! まあ、どっちでいい! これがもっと食いたい!! もっと! もっともっともっとだ――!!」
成功
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